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特開2025-155183注入管継手構造及びトンネル補助工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155183
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】注入管継手構造及びトンネル補助工法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20251006BHJP
【FI】
E21D9/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058821
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】間野 真至
(72)【発明者】
【氏名】小野 航
(72)【発明者】
【氏名】岡部 正
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054FA02
(57)【要約】
【課題】多数の注入管のそれぞれに対して注入圧送管を接続し、取り外す作業が必要とされているトンネル補助工法において、施工作業の労力を大幅に低減し、効率化を図ることができる。
【解決手段】定着材吐出孔が周壁に点在形成され且つトンネルの地山200に打設される補強管100の口元に定置される一方のコネクタ1に、補強管100に内挿される複数の注入管3に定着材を導入する複数の導入管部11が設けられ、導入管部11の各々に逆流防止用の逆止弁12が設置され、一方のコネクタ1と接続される他方のコネクタ2に、複数の注入圧送管5の各々に連通されている複数の導出口部22が設けられ、他方のコネクタ2の導出口部22が、一方のコネクタ1の導入管部11のそれぞれに対応して着脱自在に係着される注入管継手構造。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着材吐出孔が周壁に点在形成され且つトンネルの地山に打設される補強管の口元に定置される一方のコネクタに、前記補強管に内挿される複数の注入管に定着材を導入する複数の導入管部が設けられ、前記導入管部の各々に逆流防止用の逆止弁が設置され、
前記一方のコネクタと接続される他方のコネクタに、複数の注入圧送管の各々に連通されている複数の導出口部が設けられ、
前記他方のコネクタの前記導出口部が、前記一方のコネクタの前記導入管部のそれぞれに対応して着脱自在に係着されることを特徴とする注入管継手構造。
【請求項2】
前記導出口部のそれぞれが対応する前記導入管部に対応配置されるように、接続方向に対する前記他方のコネクタと前記一方のコネクタの周方向の位置を合わせる位置合わせ部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の注入管継手構造。
【請求項3】
前記一方のコネクタに、前記補強管の内周壁との摩擦で定置される栓材が周設され、
1個の前記注入管に対して複数個の前記導入管部を接続する合流管が前記栓材と前記注入管との間の前記補強管内に配設されることを特徴とする請求項1又は2記載の注入管継手構造。
【請求項4】
定着材吐出孔が周壁に点在形成された補強管を長手方向に連結しながらトンネルの地山に打設して、連結補強管を前記地山に打設する第1工程と、
複数の注入管に定着材を導入する複数の導入管部が設けられ、前記導入管部の各々に逆流防止用の逆止弁が設置されている一方のコネクタと、複数の注入圧送管の各々に連通されている複数の導出口部が設けられている他方のコネクタとから構成され、前記他方のコネクタの前記導出口部が、前記一方のコネクタの前記導入管部のそれぞれに対応して着脱自在に係着される注入管継手構造を用い、前記他方のコネクタに接続されている前記一方のコネクタに取り付けられた前記複数の注入管を前記連結補強管に内挿すると共に、前記連結補強管の地山から一部が突出した端末補強管の口元に前記一方のコネクタを定置する第2工程と、
前記注入圧送管、前記他方のコネクタの前記導出口部、前記一方のコネクタの前記導入管部、前記注入管を介して定着材を構成する薬液若しくは定着材を注入し、前記連結補強管の周囲に前記定着材吐出孔から定着材を吐出させる第3工程と、
前記導出口部を前記導入管部の係着から離脱させて前記他方のコネクタを前記一方のコネクタから取り外す第4工程と、を備えることを特徴とするトンネル補助工法。
【請求項5】
定着材吐出孔が周壁に点在形成された補強管を長手方向に連結しながらトンネルの地山に打設して、連結補強管を前記地山に打設する第1工程と、
複数の注入管に定着材を導入する複数の導入管部が設けられ、前記導入管部の各々に逆流防止用の逆止弁が設置されている一方のコネクタと、複数の注入圧送管の各々に連通されている複数の導出口部が設けられている他方のコネクタとから構成され、前記他方のコネクタの前記導出口部が、前記一方のコネクタの前記導入管部のそれぞれに対応して着脱自在に係着されると共に、前記導出口部のそれぞれが対応する前記導入管部に対応配置されるように、接続方向に対する前記他方のコネクタと前記一方のコネクタの周方向の位置を合わせる位置合わせ部が設けられている注入管継手構造を用い、前記他方のコネクタと離脱状態の前記一方のコネクタに取り付けられた前記複数の注入管を前記連結補強管に内挿すると共に、前記連結補強管の地山から一部が突出した端末補強管の口元に前記一方のコネクタを定置する第2工程と、
前記位置合わせ部で位置合わせして、前記他方のコネクタの前記導出口部を前記一方のコネクタの前記導入管部のそれぞれに係着し、前記他方のコネクタを前記一方のコネクタに接続する第3工程と、
前記注入圧送管、前記他方のコネクタの前記導出口部、前記一方のコネクタの前記導入管部、前記注入管を介して定着材を構成する薬液若しくは定着材を注入し、前記連結補強管の周囲に前記注入材吐出孔から注入材を吐出させる第4工程と、
前記導出口部を前記導入管部の係着から離脱させて前記他方のコネクタを前記一方のコネクタから取り外す第5工程と、を備えることを特徴とするトンネル補助工法。
【請求項6】
前記第2工程において、前記連結補強管の軸線に沿って延びた状態となり且つ前記複数の注入管の各々が係合されているガイド部材によって、各々の前記注入管の相互間の距離が前記注入管の長手方向に亘って維持されている状態となるように、前記ガイド部材及び前記複数の注入管を前記連結補強管に内挿することを特徴とする請求項4又は5記載のトンネル補助工法。
【請求項7】
前記端末補強管の外周に、定着材の漏れ出しを抑制する凸条が周設されていることを特徴とする請求項4又は5記載のトンネル補助工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの地山に打設される補強管に定着材を注入する注入管を接続する注入管継手構造及び注入管継手構造を用いるトンネル補助工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山岳トンネルの構築で切羽前方の地山補強を行う際に、補強管を複数直列に接続して地山に打設していくAGF工法のようなトンネル補助工法が用いられている。AGF工法では、図9及び図10に示すように、地山401の前方上方又は外周に向けて定着材吐出孔403を有する補強管402を複数本直列に接続して打ち込んで連結補強管404を構成し、長尺の連結補強管404から定着材を注入し、定着材を地山401に浸透させて固結領域405を形成する。補強管402を打ち込む際には、トンネル空間Tにおいて、ドリルジャンボ406の削孔用アーム407のガイドセル408上に内部に削孔ロッド409が内挿された補強管402を搭載し、ガイドセル408上で削孔ロッド409が連結された削孔機械410を前進させることにより、削孔しながら補強管402を引き込むようにして地山401に打設する。
【0003】
そして、補強管402及び削孔ロッド409を根元近傍まで地山401に打設したところで、後続する別の補強管402及び削孔ロッド409を連結する作業を行うことにより、長尺の連結補強管404を地山401の穿孔411に打設する。長尺の連結補強管404の打設後には、連結補強管404から削孔ロッド409を抜き出し、連結補強管404に複数の注入管412を内挿し、連結補強管404の内部に注入管412から定着材を注入し、補強管402の定着材吐出孔403から周囲の地山401に定着材を吐出し、地山401に定着材を浸透させて固結領域405を形成し、地山401を補強する(図10参照)。
【0004】
定着材を注入する際には、穿孔411の口元に穿孔411と端末の補強管402との隙間を閉塞する口元コーキング413を設け、長さが異なる複数の注入管412を結束バンド414で束ねたインサート管415を連結補強管404に内挿して端末の補強管402の後端部に管端コーキング416を設ける。端末の補強管402の外側に位置する、インサート管415を構成する各注入管412の後端部にはY字状の合流管417が設けられ、合流管417の一方の分岐管部と他方の分岐管部には二液反応型定着材を構成する第1薬液と第2薬液が注入圧送管を介して注入ポンプでそれぞれ注入される。各々の合流管417から注入412に注入された定着材は、各注入管412の先端部に設けられたスタティックミキサー418で第1薬液と第2薬液の混合・攪拌が促進され、連結補強管404の内部に吐出され、定着材吐出孔から周囲の地山401に吐出される。
【0005】
このようなAGF工法では、施工作業の労力を低減する提案がなされており、例えば特許文献1では、第2の補強管の先端部に円筒状カプラを取り付け、第2の補強管を第1の補強管に差し込む動作により、第2の補強管の先端部の円筒状カプラを第1の補強管の後端部に嵌合連結できるようにし、補強管相互の連結に要する労力を低減できる提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第7410631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、AGF工法は、切羽直近の支保工から斜め上方の地山401に向けて多数の長尺の連結補強管404を打設し、それぞれの連結補強管404に長さが異なる複数の注入管412を挿入して定着材の注入を施し、これから掘削する地山領域を傘で覆うように補強するものである。そのため、定着材の注入の際には、多数の注入管412のそれぞれに対してウレタン等の薬液を注入する注入圧送管を接続し、定着材の注入完了後には、それぞれの注入管412に対して接続された注入圧送管を取り外すという、多大な労力と時間を要する人力作業が必要となる。更に、AGF工法では、注入圧送管の接続、取り外し作業を切羽直近の高所にマンケージ419を上げて行う必要があり、より作業に要する労力と時間が大きくなる。
【0008】
また、例えば長尺の連結補強管を切羽前方地山に複数打設し、それぞれの連結補強管に長さが異なる複数の注入管を挿入して定着材の注入を施す長尺鏡補強工等、多数の注入管のそれぞれに対して注入圧送管を接続し、取り外す作業が必要となるAGF工法以外のトンネル補助工法においても、同様に、多大な労力と時間を要する人力作業が必要とされている。
【0009】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、多数の注入管のそれぞれに対して注入圧送管を接続し、取り外す作業が必要とされているトンネル補助工法において、施工作業の労力を大幅に低減し、効率化を図ることができる注入管継手構造及びトンネル補助工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の注入管継手構造は、定着材吐出孔が周壁に点在形成され且つトンネルの地山に打設される補強管の口元に定置される一方のコネクタに、前記補強管に内挿される複数の注入管に定着材を導入する複数の導入管部が設けられ、前記導入管部の各々に逆流防止用の逆止弁が設置され、前記一方のコネクタと接続される他方のコネクタに、複数の注入圧送管の各々に連通されている複数の導出口部が設けられ、前記他方のコネクタの前記導出口部が、前記一方のコネクタの前記導入管部のそれぞれに対応して着脱自在に係着されることを特徴とする。
これによれば、他方のコネクタの導出口部を一方のコネクタの導入管部に係着することにより、複数の注入管に対する複数の注入圧送管の接続作業を一度に行うことができると共に、他方のコネクタの導出口部を一方のコネクタの導入管部から取り外すことにより、複数の注入管に対する複数の注入圧送管の取り外し作業を一度に行うことができる。従って、多数の注入管のそれぞれに対して注入圧送管を接続し、取り外す作業が必要とされているトンネル補助工法において、施工作業の労力を大幅に低減し、効率化を図ることができる。
【0011】
本発明の注入管継手構造は、前記導出口部のそれぞれが対応する前記導入管部に対応配置されるように、接続方向に対する前記他方のコネクタと前記一方のコネクタの周方向の位置を合わせる位置合わせ部が設けられていることを特徴とする。
これによれば、作業者或いは作業用機械が位置合わせ部で位置合わせして他方のコネクタの導出口部を一方のコネクタの導入管部に容易に係着することができ、複数の注入管に対する複数の注入圧送管の接続作業をより効率的且つ確実に行うことができる。
【0012】
本発明の注入管継手構造は、前記一方のコネクタに、前記補強管の内周壁との摩擦で定置される栓材が周設され、1個の前記注入管に対して複数個の前記導入管部を接続する合流管が前記栓材と前記注入管との間の前記補強管内に配設されることを特徴とする。
これによれば、1個の注入管に対して複数個の導入管部を接続する合流管を設ける場合に、合流管を栓材と注入管との間の位置に配設することにより、定着材の注入完了時に補強管の内側に合流管を残した状態で施工を完了することができ、注入管のそれぞれに対する注入圧送管の取り外し作業の際に合流管の取り外し作業を無くし、施工作業をより効率化することができる。また、従来のAGF工法では、合流管は端末の補強管の外側に配置され、何度も着脱して繰り返し使用できるように耐久性の高い金属製の合流管とされていたが、定着材の注入完了時に補強管の内側に合流管を残した状態とすることで、合成樹脂製等の簡易で耐久性の低い合流管を用いることが可能となる。
【0013】
本発明のトンネル補助工法は、定着材吐出孔が周壁に点在形成された補強管を長手方向に連結しながらトンネルの地山に打設して、連結補強管を前記地山に打設する第1工程と、複数の注入管に定着材を導入する複数の導入管部が設けられ、前記導入管部の各々に逆流防止用の逆止弁が設置されている一方のコネクタと、複数の注入圧送管の各々に連通されている複数の導出口部が設けられている他方のコネクタとから構成され、前記他方のコネクタの前記導出口部が、前記一方のコネクタの前記導入管部のそれぞれに対応して着脱自在に係着される注入管継手構造を用い、前記他方のコネクタに接続されている前記一方のコネクタに取り付けられた前記複数の注入管を前記連結補強管に内挿すると共に、前記連結補強管の地山から一部が突出した端末補強管の口元に前記一方のコネクタを定置する第2工程と、前記注入圧送管、前記他方のコネクタの前記導出口部、前記一方のコネクタの前記導入管部、前記注入管を介して定着材を構成する薬液若しくは定着材を注入し、前記連結補強管の周囲に前記定着材吐出孔から定着材を吐出させる第3工程と、前記導出口部を前記導入管部の係着から離脱させて前記他方のコネクタを前記一方のコネクタから取り外す第4工程とを備えることを特徴とする。
これによれば、他方のコネクタの導出口部を一方のコネクタの導入管部に係着することにより、複数の注入管に対する複数の注入圧送管の接続作業を一度に行うことができると共に、他方のコネクタの導出口部を一方のコネクタの導入管部から取り外すことにより、複数の注入管に対する複数の注入圧送管の取り外し作業を一度に行うことができる。従って、多数の注入管のそれぞれに対して注入圧送管を接続し、取り外す作業が必要とされているトンネル補助工法において、施工作業の労力を大幅に低減し、効率化を図ることができる。また、予め導出口部が導入管部のそれぞれに対応係着された接続状態の一方のコネクタと他方のコネクタを用いて、端末補強管の口元に一方のコネクタを定置し、定着材の注入を行うことにより、定着材を注入する前提作業において、他方のコネクタの導出口部を一方のコネクタの導入管部に係着する作業を無くし、より作業効率を高めることができる。また、AGF工法等のように端末補強管を撤去しながらトンネルを掘り進めるトンネル補助工法では、端末補強管を撤去する際に端末補強管の内部に残った一方のコネクタを回収することができ、一方及び他方のコネクタを両方とも再利用することが可能となる。
【0014】
本発明のトンネル補助工法は、定着材吐出孔が周壁に点在形成された補強管を長手方向に連結しながらトンネルの地山に打設して、連結補強管を前記地山に打設する第1工程と、複数の注入管に定着材を導入する複数の導入管部が設けられ、前記導入管部の各々に逆流防止用の逆止弁が設置されている一方のコネクタと、複数の注入圧送管の各々に連通されている複数の導出口部が設けられている他方のコネクタとから構成され、前記他方のコネクタの前記導出口部が、前記一方のコネクタの前記導入管部のそれぞれに対応して着脱自在に係着されると共に、前記導出口部のそれぞれが対応する前記導入管部に対応配置されるように、接続方向に対する前記他方のコネクタと前記一方のコネクタの周方向の位置を合わせる位置合わせ部が設けられている注入管継手構造を用い、前記他方のコネクタと離脱状態の前記一方のコネクタに取り付けられた前記複数の注入管を前記連結補強管に内挿すると共に、前記連結補強管の地山から一部が突出した端末補強管の口元に前記一方のコネクタを定置する第2工程と、前記位置合わせ部で位置合わせして、前記他方のコネクタの前記導出口部を前記一方のコネクタの前記導入管部のそれぞれに係着し、前記他方のコネクタを前記一方のコネクタに接続する第3工程と、前記注入圧送管、前記他方のコネクタの前記導出口部、前記一方のコネクタの前記導入管部、前記注入管を介して定着材を構成する薬液若しくは定着材を注入し、前記連結補強管の周囲に前記注入材吐出孔から注入材を吐出させる第4工程と、前記導出口部を前記導入管部の係着から離脱させて前記他方のコネクタを前記一方のコネクタから取り外す第5工程と、を備えることを特徴とする。
これによれば、他方のコネクタの導出口部を一方のコネクタの導入管部に係着することにより、複数の注入管に対する複数の注入圧送管の接続作業を一度に行うことができると共に、他方のコネクタの導出口部を一方のコネクタの導入管部から取り外すことにより、複数の注入管に対する複数の注入圧送管の取り外し作業を一度に行うことができる。従って、多数の注入管のそれぞれに対して注入圧送管を接続し、取り外す作業が必要とされているトンネル補助工法において、施工作業の労力を大幅に低減し、効率化を図ることができる。また、定着材を注入する前提作業において、作業者或いは作業用機械が位置合わせ部で位置合わせして他方のコネクタの導出口部を一方のコネクタの導入管部に容易に係着することができ、複数の注入管に対する複数の注入圧送管の接続作業をより効率的且つ確実に行うことができる。また、AGF工法等のように端末補強管を撤去しながらトンネルを掘り進めるトンネル補助工法では、端末補強管を撤去する際に端末補強管の内部に残った一方のコネクタを回収することができ、一方及び他方のコネクタを両方とも再利用することが可能となる。
【0015】
本発明のトンネル補助工法は、前記第2工程において、前記連結補強管の軸線に沿って延びた状態となり且つ前記複数の注入管の各々が係合されているガイド部材によって、各々の前記注入管の相互間の距離が前記注入管の長手方向に亘って維持されている状態となるように、前記ガイド部材及び前記複数の注入管を前記連結補強管に内挿することを特徴とする。
これによれば、連結補強管の軸線に沿って延びるガイド部材を連結補強管の内部に配置することにより、ガイド部材の容積だけ多めに定着材を連結補強管の外側に吐出させることができ、地山補強効果を高めることができる。また、各々の注入管の相互間の距離が注入管の長手方向に亘って維持されるので、例えば補強管の下側に定着材或いは薬液の吐出が集中することを極力抑制することができ、連結補強管の外側の周囲により均一な固結領域或いは補強領域を形成することができる。
【0016】
本発明のトンネル補助工法は、前記端末補強管の外周に、定着材の漏れ出しを抑制する凸条が周設されていることを特徴とする。
これによれば、穿孔と端末補強管の外周との間の隙間から定着材がトンネル空間側に漏れ出すことを防止或いは抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、多数の注入管のそれぞれに対して注入圧送管を接続し、取り外す作業が必要とされているトンネル補助工法において、施工作業の労力を大幅に低減し、効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による実施形態の注入管継手構造を示す部分正面図。
図2】実施形態の注入管継手構造における一方のコネクタと他方のコネクタの係着部位を示す斜視図。
図3】(a)~(d)は実施形態の注入管継手構造を用いる第1例のトンネル補助工法の作業工程を説明する工程説明図。
図4】実施形態の注入管継手構造における一方のコネクタと注入管と連結補強管を示す模式斜視図。
図5】(a)~(d)は実施形態の注入管継手構造を用いる第2例のトンネル補助工法の作業工程を説明する工程説明図。
図6】(a)~(c)は実施形態の注入管継手構造を用いる第3例のトンネル補助工法の作業工程を説明する模式工程説明図。
図7】第3例のトンネル補助工法におけるガイド部材と一方のコネクタと注入管を示す模式斜視図。
図8】(a)、(b)は第3例のトンネル補助工法で用いる送り機構を説明する正面図。
図9】従来のAGF工法を説明する縦断説明図。
図10】従来のAGF工法における連結補強管と注入管を示す縦断説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔実施形態の注入管継手構造〕
本発明による実施形態の注入管継手構造は、図1図3に示すように、互いに着脱自在に接続される一方のコネクタ1と他方のコネクタ2を有し、図示例の一方のコネクタ1と他方のコネクタ2はそれぞれ短尺の略円柱形状になっている。一方のコネクタ1には、補強管100に内挿される複数の注入管3に定着材を導入する複数の導入管部11が設けられ、導入管部11の各々に逆流防止用の逆止弁12が設置されている。導入管部11の挿入部は、トンネル穿孔方向と逆側である後寄りに設けられる短尺円柱状の基部14に貫通するように形成され、挿入部は後述する他方のコネクタ2の導出口部22の段差円筒状の外形に略倣う段差円筒状の係合孔13になっている。本実施形態における一方のコネクタ1は係合孔13が形成された雌型コネクタになっている。
【0020】
一方のコネクタ1と他方のコネクタ2には、導出口部22のそれぞれが対応する導入管部11に対応配置されるように、一方のコネクタ1と他方のコネクタ2との接続方向に対して、他方のコネクタ2と一方のコネクタ1の周方向の位置を合わせる位置合わせ部が設けられており、一方のコネクタ1の基部14には周方向の所定位置で外側に突出するようにして位置合わせ部を構成するキー15が形成されている。
【0021】
一方のコネクタ1のトンネル穿孔方向側に配置される前寄りには、補強管100の内周壁との摩擦で補強管100の内側に定置されるゴム栓等の栓材16が周設され、各導入管部11は栓材16を貫通するようにして前側に引き出されている。各導入管部11の前端は、1個の注入管3に対して複数個の導入管部11を接続する合流管4の分岐管部41に連通するように接続され、本実施形態では、2薬液反応型の定着材を用いることに対応して、1個の注入管3に対して2個の導入管部11を接続するY字状の合流管4の分岐管部41に導入管部11がそれぞれ接続されている。
【0022】
各合流管4の合流管部42は、それぞれ1個の注入管3に接続される。また、栓材16を補強管100の口元で内側に定置して補強管100の口元をコーキングした状態では、1個の注入管3に対して複数個の導入管部11を接続する合流管4は、補強管100の内側に配置されて、栓材16と注入管3との間の補強管100内に配設される。尚、各々の注入管3の前端部には、定着材を構成する薬液の混合、攪拌を促進するスタティックミキサー31が設けられている。
【0023】
他方のコネクタ2には、円盤状の基板21を貫通するようにして複数の導出口部22が設けられており、各導出口部22はトンネル穿孔方向側に突出するようにして形成されている。導出口部22の突出部は、一方のコネクタ1の導入管部11の段差円筒状の係合孔13の内形に略倣う段差円筒状の係合突起23になっており、他方のコネクタ2の係合突起23が一方のコネクタ1の係合孔13に着脱可能に係着されることにより、他方のコネクタ2の導出口部22が、一方のコネクタ1の導入管部11のそれぞれに対応して着脱自在に係着されるようになっている。本実施形態における他方のコネクタ2は係合突起23が形成された雄型コネクタになっている。
【0024】
他方のコネクタ2の複数の導出口部22は、基板21の後方に引き出される複数の注入圧送管5の各々に連通され、各々の注入圧送管5は、定着材を構成する薬液或いは定着材の注入ポンプにそれぞれ接続される。また、他方のコネクタ2には、基板21の周縁付近からトンネル穿孔方向の前側に突出するようにして周壁24が設けられ、複数の導出口部22の係合突起23の全体を囲むようにして周壁24が形成されている。周壁24の周方向の所定位置には位置合わせ部を構成するキー溝25が切り欠かれるようにして形成されており、キー15をキー溝25に着脱自在に係入することにより、一方のコネクタ1と他方のコネクタ2の周方向の位置が規制される。
【0025】
〔第1例のトンネル補助工法〕
本実施形態の注入管継手構造は、例えば図3に示すAGF工法等の第1例のトンネル補助工法で用いることができる。第1例のトンネル補助工法では、二重管削孔打設方式により削孔ロッドで地山200に削孔を形成しながら補強管100を打ち込んでいき、定着材吐出孔102が周壁に点在形成された補強管100を長手方向に連結しながらトンネルの地山200の穿孔201に打設して、連結補強管110を地山200に打設する(図3(a)参照)。連結補強管110の打設が完了した時には削孔ロッドを穿孔201から抜き出して撤去する。
【0026】
そして、一方のコネクタ1と他方のコネクタ2とを接続状態にした本実施形態の注入管継手構造を用い、一方のコネクタ1に合流管4を介して取り付けられた長さが異なる複数の注入管3を所定箇所で結束バンド6で結束して連結補強管110に内挿可能なインサート管の状態にし、接続状態の一方のコネクタ1と他方のコネクタ2を支持する挿入抑込器具120を連結補強管110に向けて前進させ、複数の注入管3を連結補強管110に内挿すると共に、連結補強管110の地山200から一部が突出した端末補強管100aの口元に、端末補強管100aの内周壁に栓材16を摩擦接触で定置するようにして一方のコネクタ1を定置する(図3(a)、(b)参照)。端末補強管100aの口元への一方のコネクタ1の定置状態は、後述する定着材注入時にも挿入抑込器具120の抑え込みで確実に保持される。
【0027】
この状態で2薬液反応型定着材を構成する薬液の注入ポンプを稼働し、注入圧送管5、他方のコネクタ2の導出口部22、一方のコネクタ1の導入管部11、合流管4を介して薬液を注入し、注入管3を介して定着材を構成する薬液若しくは定着材を連結補強管110に注入する。本例の端末補強管100aには、定着材の漏れ出しを抑制する凸条101aが外周に周設され、図示例では端末補強管100aの長手方向に離間する2箇所に凸条101aがそれぞれ周設されている(図3図4参照)。そして、薬液注入を開始すると、先ず端末補強管100aの内側及び外周に薬液若しくは定着材が吐出され、端末補強管100aの定着材吐出孔102から端末補強管100aの外周に吐出された定着材301が、離間する2箇所の凸条101a・101aと端末補強管100aの外周と穿孔201の内周壁とで囲まれる空間に流れ込んでシールする形になり、端末補強管100aの口元部位が自動的にコーキングされる(図3(b)参照)。
【0028】
更に、定着材を構成する薬液若しくは定着材の連結補強管110への注入を進めると、穿孔201の奥側にも注入が施され、端末補強管100aよりも奥側の連結補強管110の周囲にも定着材吐出孔102から定着材302が吐出し、定着材301、302が穿孔201の周囲の地山200にも浸透して固結領域が形成される(図3(c)参照)。
【0029】
定着材の注入が完了した後には、挿入抑込器具120を後退させ、導出口部22を導入管部11の係着から離脱させ、キー溝25をキー15への係合から離脱させて、他方のコネクタ2を一方のコネクタ1への接続からから取り外す(図3(d)参照)。他方のコネクタ2を一方のコネクタ1から取り外した状態では一方のコネクタ1は端末補強管100aの内部に残った状態となるが、AGF工法等では次の掘進サイクルで端末補強管100aを撤去しながらトンネルを掘り進むことになるため、端末補強管100aを撤去する際に一方のコネクタ1を回収して再利用することが可能となる。
【0030】
〔第2例のトンネル補助工法〕
次に、本実施形態の注入管継手構造を用いるAGF工法等の第2例のトンネル補助工法について説明する。第2例のトンネル補助工法では、第1例と同様に、二重管削孔打設方式により削孔ロッドで地山200に削孔を形成しながら補強管100を打ち込んでいき、定着材吐出孔102が周壁に点在形成された補強管100を長手方向に連結しながらトンネルの地山200の穿孔201に打設して、連結補強管110を地山200に打設する(図5(a)参照)。連結補強管110の打設が完了した時には削孔ロッドを穿孔201から抜き出して撤去する。
【0031】
そして、本実施形態の注入管継手構造を用い、他方のコネクタ2と離脱状態の一方のコネクタ1に合流管4を介して取り付けられた長さが異なる複数の注入管3を所定箇所で結束バンド6(図5で図示省略)で結束して連結補強管110に内挿可能なインサート管の状態にし、一方のコネクタ1を押込機構130で連結補強管110側に押し込むと共に、インサート管の状態の複数の注入管3を送り機構140で連結補強管110側に送り、他方のコネクタ2と離脱状態の一方のコネクタ1に取り付けられた複数の注入管3を連結補強管110に内挿すると共に、連結補強管110の地山200から一部が突出した端末補強管100aの口元に、端末補強管100aの内周壁に栓材16を摩擦接触で定置するようにして一方のコネクタ1を定置する(図5(a)、(b)参照)。
【0032】
尚、送り機構140としては、例えば上側送りキャタピラ141と下側送りキャタピラ142とが相互間隔を上下調整部143で調整可能に設けられた支持台144が、左右調整部145で左右に移動調整可能に設けられた構成等を用いることができる(図8参照)。
【0033】
次いで、他方のコネクタ2を押込引戻機構150で保持し、キー15とキー溝25とで構成される位置合わせ部で位置合わせして、他方のコネクタ2のキー溝25を一方のコネクタ1のキー15に係合すると共に、他方のコネクタ2の導出口部22を一方のコネクタ1の導入管部11のそれぞれに係着し、他方のコネクタ2を一方のコネクタ1に接続する(図5(b)、(c)、図1図2参照)。
【0034】
この状態で2薬液反応型定着材を構成する薬液の注入ポンプを稼働し、注入圧送管5、他方のコネクタ2の導出口部22、一方のコネクタ1の導入管部11、合流管4を介して薬液を注入し、注入管3を介して定着材を構成する薬液若しくは定着材を連結補強管110に注入する。薬液注入を開始すると、先ず端末補強管100aの内側及び外周に薬液若しくは定着材が吐出され、端末補強管100aの定着材吐出孔102から端末補強管100aの外周に吐出された定着材301が、離間する2箇所の凸条101a・101aと端末補強管100aの外周と穿孔201の内周壁とで囲まれる空間に流れ込んでシールする形になり、端末補強管100aの口元部位が自動的にコーキングされる(図5(c)参照)。
【0035】
更に、定着材を構成する薬液若しくは定着材の連結補強管110への注入を進めると、穿孔201の奥側にも注入が施され、端末補強管100aよりも奥側の連結補強管110の周囲にも定着材吐出孔102から定着材302が吐出し、定着材301、302が穿孔201の周囲の地山200にも浸透して固結領域が形成される(図5(c)参照)。
【0036】
定着材の注入が完了した後には、一方のコネクタ1を押込機構130で保持して反力を取った状態で押込引戻機構150を後退させ、導出口部22を導入管部11の係着から離脱させ、キー溝25をキー11への係合から離脱させて、他方のコネクタ2を一方のコネクタ1への接続からから取り外す(図5(d)参照)。他方のコネクタ2を一方のコネクタ1から取り外した状態では一方のコネクタ1は端末補強管100aの内部に残った状態となるが、AGF工法等では次の掘進サイクルで端末補強管100aを撤去しながらトンネルを掘り進むことになるため、端末補強管100aを撤去する際に一方のコネクタ1を回収して再利用することが可能となる。
【0037】
〔第3例のトンネル補助工法〕
次に、本実施形態の注入管継手構造を用いるAGF工法等の第3例のトンネル補助工法について説明する。第3例のトンネル補助工法では、第2例と同様に、二重管削孔打設方式により削孔ロッドで地山200に削孔を形成しながら補強管100を打ち込んでいき、定着材吐出孔102が周壁に点在形成された補強管100を長手方向に連結しながらトンネルの地山200の穿孔201に打設して、連結補強管110を地山200に打設する(図6(a)参照)。連結補強管110の打設が完了した時には削孔ロッドを穿孔201から抜き出して撤去する。
【0038】
そして、本実施形態の注入管継手構造とガイド部材7を用い、他方のコネクタ2と離脱状態の一方のコネクタ1に合流管4を介して取り付けられた長さが異なる複数の注入管3をガイド部材7に係合して連結補強管110に内挿可能なインサート管の状態にし、インサート管の状態の複数の注入管3とガイド部材7を送り機構140で連結補強管110側に送り、他方のコネクタ2と離脱状態の一方のコネクタ1に取り付けられた複数の注入管3を連結補強管110に内挿すると共に、連結補強管110の地山200から一部が突出した端末補強管100aの口元に、端末補強管100aの内周壁に栓材16を摩擦接触で定置するようにして一方のコネクタ1を定置する(図6(a)、(b)参照)。
【0039】
ガイド部材7は、長手方向に延びる係合溝71が周方向に離間して複数設けられた再生プラスチック等で形成された部材であり、長手方向に延びる中央部は中実になっている。本例では、長手方向に延びる係合溝71が周方向に離間して複数形成された柱状のガイド部72の複数個でガイド部材7が構成されており、若干の間隔を開けて直列配置される複数個のガイド部72の係合溝71に長さが異なる複数の注入管3が係合され、この状態で、複数の注入管3とガイド部72が送り機構140で連結補強管110側に送られるようになっている。間隔を開けて直列配置される複数個のガイド部72の係合溝71に長さが異なる複数の注入管3を係合してインサート管の状態とすることにより、現場搬入時にインサート管全体を曲げることができ、取扱が容易となる。
【0040】
また、第3例のトンネル補助工法における複数の注入管3の連結補強管110への内挿では、複数個のガイド部72で構成されるガイド部材7が連結補強管110の軸線に沿って延びた状態となり、複数の注入管3の各々が係合されているガイド部材7によって、各々の注入管3の相互間の距離が注入管3の長手方向に亘って維持されている状態となるように、ガイド部材7及び複数の注入管3が連結補強管110に内挿される。
【0041】
次いで、他方のコネクタ2を押込引戻機構150で保持し、キー15とキー溝25とで構成される位置合わせ部で位置合わせして、他方のコネクタ2のキー溝25を一方のコネクタ1のキー15に係合すると共に、他方のコネクタ2の導出口部22を一方のコネクタ1の導入管部11のそれぞれに係着し、他方のコネクタ2を一方のコネクタ1に接続する(図6(b)、(c)、図1図2参照)。
【0042】
この状態で2薬液反応型定着材を構成する薬液の注入ポンプを稼働し、注入圧送管5、他方のコネクタ2の導出口部22、一方のコネクタ1の導入管部11、合流管4を介して薬液を注入し、注入管3を介して定着材を構成する薬液若しくは定着材を連結補強管110に注入する。薬液注入を開始すると、先ず端末補強管100aの内側及び外周に薬液若しくは定着材が吐出され、端末補強管100aの定着材吐出孔102から端末補強管100aの外周に吐出された定着材301が、離間する2箇所の凸条101a・101aと端末補強管100aの外周と穿孔201の内周壁とで囲まれる空間に流れ込んでシールする形になり、端末補強管100aの口元部位が自動的にコーキングされる(図6(c)参照)。
【0043】
更に、定着材を構成する薬液若しくは定着材の連結補強管110への注入を進めると、穿孔201の奥側にも注入が施され、端末補強管100aよりも奥側の連結補強管110の周囲にも定着材吐出孔102から定着材302が吐出し、定着材301、302が穿孔201の周囲の地山200にも浸透して固結領域が形成される(図6(c)参照)。
【0044】
定着材の注入が完了した後には、第2例と同様に、一方のコネクタ1の反力を取った状態で押込引戻機構150を後退させ、導出口部22を導入管部11の係着から離脱させ、キー溝25をキー11への係合から離脱させて、他方のコネクタ2を一方のコネクタ1への接続からから取り外す(図5(d)参照)。他方のコネクタ2を一方のコネクタ1から取り外した状態では一方のコネクタ1は端末補強管100aの内部に残った状態となるが、AGF工法等では次の掘進サイクルで端末補強管100aを撤去しながらトンネルを掘り進むことになるため、端末補強管100aを撤去する際に一方のコネクタ1を回収して再利用することが可能となる。
【0045】
本実施形態の注入管継手構造によれば、他方のコネクタ2の導出口部22を一方のコネクタ1の導入管部11に係着することにより、複数の注入管3に対する複数の注入圧送管5の接続作業を一度に行うことができると共に、他方のコネクタ2の導出口部22を一方のコネクタ1の導入管部11から取り外すことにより、複数の注入管3に対する複数の注入圧送管5の取り外し作業を一度に行うことができる。従って、多数の注入管のそれぞれに対して注入圧送管を接続し、取り外す作業が必要とされているトンネル補助工法において、施工作業の労力を大幅に低減し、効率化を図ることができる。
【0046】
また、導出口部22のそれぞれが対応する導入管部11に対応配置されるように、他方のコネクタ2と一方のコネクタ1の周方向の位置を合わせるキー15とキー溝25とから構成される位置合わせ部を設けることにより、作業者或いは作業用機械が位置合わせ部で位置合わせして他方のコネクタ2の導出口部22を一方のコネクタ1の導入管部11に容易に係着することができ、複数の注入管3に対する複数の注入圧送管5の接続作業をより効率的且つ確実に行うことができる。更に、キー15とキー溝25とで位置合わせ部を構成することにより、導出口部22と導入管部11との係着時に一方のコネクタ1に対する他方のコネクタ2の周方向の回動を規制しながら係着を行うことができる。
【0047】
また、1個の注入管3に対して複数個の導入管部11を接続する合流管4を栓材16と注入管3との間の位置に配設することにより、定着材の注入完了時に補強管100の内側に合流管4を残した状態で施工を完了することができ、注入管3のそれぞれに対する注入圧送管5の取り外し作業の際に合流管4の取り外し作業を無くし、施工作業をより効率化することができる。また、従来のAGF工法では、合流管は端末の補強管の外側に配置され、何度も着脱して繰り返し使用できるように耐久性の高い金属製の合流管とされていたが、定着材の注入完了時に補強管100の内側に合流管4を残した状態とすることで、合成樹脂製等の簡易で耐久性の低い合流管4を用いることが可能となる。
【0048】
また、第1例のトンネル補助工法によれば、予め導出口部22が導入管部11のそれぞれに対応係着された接続状態の一方のコネクタ1と他方のコネクタ2を用いて、端末補強管100aの口元に一方のコネクタ1を定置し、定着材の注入を行うことにより、定着材を注入する前提作業において、他方のコネクタ2の導出口部22を一方のコネクタ1の導入管部11に係着する作業を無くし、より作業効率を高めることができる。また、AGF工法等のように端末補強管100aを撤去しながらトンネルを掘り進めるトンネル補助工法では、端末補強管100aを撤去する際に端末補強管100aの内部に残った一方のコネクタ1を回収することができ、一方及び他方のコネクタ1、2の両方を再利用することが可能となる。
【0049】
また、第2例のトンネル補助工法によれば、定着材を注入する前提作業において、作業者或いは作業用機械がキー15とキー溝25で構成される位置合わせ部で位置合わせして他方のコネクタ2の導出口部22を一方のコネクタ1の導入管部11に容易に係着することができ、複数の注入管3に対する複数の注入圧送管5の接続作業をより効率的且つ確実に行うことができる。また、AGF工法等のように端末補強管100aを撤去しながらトンネルを掘り進めるトンネル補助工法では、端末補強管100aを撤去する際に端末補強管100aの内部に残った一方のコネクタ1を回収することができ、一方及び他方のコネクタ1、2の両方を再利用することが可能となる。
【0050】
また、第3例のトンネル補助工法によれば、連結補強管110の軸線に沿って延びるガイド部材7を連結補強管110の内部に配置することにより、ガイド部材7の容積だけ多めに定着材301、302を連結補強管110の外側に吐出させることができ、地山補強効果を高めることができる。また、各々の注入管3の相互間の距離が注入管3の長手方向に亘って維持されるので、例えば補強管100の下側に定着材301、302或いは薬液の吐出が集中することを極力抑制することができ、連結補強管110の外側の周囲により均一な固結領域或いは補強領域を形成することができる。
【0051】
また、第1例~第3例のトンネル補助工法において定着材の漏れ出しを抑制する凸条101aが周設されている端末補強管100aを用いることにより、穿孔201と端末補強管100aの外周との間の隙間から定着材301がトンネル空間側に漏れ出すことを防止或いは抑制することができる。
【0052】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記内容や変形例も含まれる。
【0053】
例えば上記実施形態の注入管継手構造における位置合わせ部は、キー15とキー溝25とで構成したが、本発明における位置合わせ部は、他方のコネクタの導出口部のそれぞれが対応する一方のコネクタの導入管部に対応配置されるように、接続方向に対する他方のコネクタと一方のコネクタの周方向の位置を合わせられる構成であれば適宜のものを適用することが可能であり、例えば一方のコネクタの基部14の外周面の所定箇所に設けられたマークと、他方のコネクタ2の周壁24の外周面の所定箇所に設けられた対応マーク等とすることも可能である。
【0054】
また、上記実施形態におけるガイド部材7は、複数個のガイド部72で構成される構成としたが、長手方向に延びる係合溝が周方向に離間して複数形成された一連の柱状部材で複数の注入管3が係合されるガイド部材を構成することも可能である。
【0055】
また、第1例のトンネル補助工法において、結束バンド6で複数の注入管3を結束する構成に代え、複数個のガイド部72で構成されるガイド部材7或いは一連の柱状部材で構成されるガイド部材に複数の注入管3を係合して、連結補強管110に複数の注入管3を内挿する構成としてもよい。
【0056】
また、本発明で適用可能な定着材は、2薬液反応型定着材に限定されず、適用可能な範囲で1液性の定着材など適宜の定着材を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えばAGF工法、長尺鏡補強工、サイドパイルやフットパイルの工法等、補強管に複数の注入管を内挿して定着材を注入するトンネル補助工法に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…一方のコネクタ 11…導入管部 12…逆止弁 13…係合孔 14…基部 15…キー 16…栓材 2…他方のコネクタ 21…基板 22…導出口部 23…係合突起 24…周壁 25…キー溝 3…注入管 31…スタティックミキサー 4…合流管 41…分岐管部 42…合流管部 5…注入圧送管 6…結束バンド 7…ガイド部材 71…係合溝 72…ガイド部 100…補強管 100a…端末補強管 101a…凸条 102…定着材吐出孔 110…連結補強管 120…挿入抑込器具 130…押込機構 140…送り機構 141…上側送りキャタピラ 142…下側送りキャタピラ 143…上下調整部 144…支持台 145…左右調整部 150…押込引戻機構 200…地山 201…穿孔 301、302…定着材 401…地山 402…補強管 403…定着材吐出孔 404…連結補強管 405…固結領域 406…ドリルジャンボ 407…削孔用アーム 408…ガイドセル 409…削孔ロッド 410…削孔機械 411…穿孔 412…注入管 413…口元コーキング 414…結束バンド 415…インサート管 416…管端コーキング 417…合流管 418…スタティックミキサー 419…マンケージ
図1
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図3
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図7
図8
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図10