(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155187
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】ハーネス固定位置の識別構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20251006BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20251006BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058835
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 信吾
(72)【発明者】
【氏名】大軒 一晃
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB03
3B087DE09
(57)【要約】
【課題】シートフレームに対するハーネス識別用の刻印の形成を不要にできるとともに、作業者のシートフレームに対するハーネスの誤固定を防止できるハーネス固定位置の識別構造を得る。
【解決手段】ハーネスを固定するハーネスクリップを差し込むための孔部18が、固定位置が異なる複数種類のハーネスに対応可能に予め複数形成されているプレート部16を有するシートフレーム14と、プレート部16に重ね合わせることで複数種類のハーネスの中から選択された特定の種類のハーネスの固定に必要な孔部18のみを露出させる被覆部材20と、を備えたハーネス固定位置の識別構造10とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーネスを固定するハーネスクリップを差し込むための孔部が、固定位置が異なる複数種類のハーネスに対応可能に予め複数形成されているプレート部を有するシートフレームと、
前記プレート部に重ね合わせることで前記複数種類のハーネスの中から選択された特定の種類のハーネスの固定に必要な孔部のみを露出させる被覆部材と、
を備えたハーネス固定位置の識別構造。
【請求項2】
前記被覆部材は、前記プレート部と同じ大きさ及び形状に形成されている請求項1に記載のハーネス固定位置の識別構造。
【請求項3】
前記被覆部材は、前記複数種類のハーネス毎に複数種類用意されている請求項1又は請求項2に記載のハーネス固定位置の識別構造。
【請求項4】
前記被覆部材は、前記シートフレームに被せる表皮と一体化されている請求項1又は請求項2に記載のハーネス固定位置の識別構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネス固定位置の識別構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シートカバーの引掛具を、必要な引掛強度を担保しつつ所定の取付部との間にワイヤーハーネスを適切に挟み込んだ状態で設けられるようにした乗物用シートは、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。また、シートバック内に通されるワイヤーハーネスの配索形状を、シートバックの背凭れ角度が変化しても周辺部材との不測の干渉が生じないようにした乗物用シートも、従来から知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-088370号公報
【特許文献2】特開2019-112011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハーネスが邪魔にならないように、ハーネスクリップを用いて、シートのシートフレームにハーネスの中途部を固定する場合があるが、例えば同種のシートであっても、そのシートに取り付けるエアバッグ等の仕様に応じてハーネスの種類(長さや太さ等)が違う場合がある。そのため、シートフレームには、ハーネスの種類の違いによって配索経路が異なっていても必ず固定できるように、ハーネスクリップを差し込むための孔部が、その形状や大きさ等を変えて予め複数形成されている。
【0005】
つまり、ある特定の種類のハーネスを固定するために使用する孔部と、それとは異なる別の種類のハーネスを固定するために使用する孔部とは、それぞれ異なっており、複数の孔部の中から必要な孔部だけを選択してハーネスを固定している。そのため、シートフレームにハーネスを固定する作業者は、ハーネスをシートフレームに固定する際、そのハーネスの固定位置を間違えてしまうことがあった。
【0006】
その対策として、従来では、シートフレームにおける各孔部の近傍に、種類の異なる様々なハーネスを識別可能とするための刻印を形成していた。しかしながら、このような構成であると、ハーネスの種類が今までとは変わった場合に、シートフレームを成形する金型をわざわざ改修して、刻印の変更を行う必要があるため、コスト的に問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、シートフレームに対するハーネス識別用の刻印の形成を不要にできるとともに、作業者のシートフレームに対するハーネスの誤固定を防止できるハーネス固定位置の識別構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の態様のハーネス固定位置の識別構造は、ハーネスを固定するハーネスクリップを差し込むための孔部が、固定位置が異なる複数種類のハーネスに対応可能に予め複数形成されているプレート部を有するシートフレームと、前記プレート部に重ね合わせることで前記複数種類のハーネスの中から選択された特定の種類のハーネスの固定に必要な孔部のみを露出させる被覆部材と、を備えている。
【0009】
第1の態様の発明によれば、ハーネスを固定するハーネスクリップを差し込むための孔部が、固定位置が異なる複数種類のハーネスに対応可能に予め複数形成されているプレート部をシートフレームが有している。そして、このプレート部に被覆部材を重ね合わせることにより、複数種類のハーネスの中から選択された特定の種類のハーネスの固定に必要な孔部のみが露出される。したがって、作業者は、その露出されている孔部にだけ、ハーネスクリップを差し込めばよく、作業者のシートフレームに対するハーネスの誤固定が防止される。また、これにより、シートフレームに対するハーネス識別用の刻印の形成が不要になる。
【0010】
また、本発明に係る第2の態様のハーネス固定位置の識別構造は、第1の態様のハーネス固定位置の識別構造であって、前記被覆部材は、前記プレート部と同じ大きさ及び形状に形成されている。
【0011】
第2の態様の発明によれば、被覆部材が、プレート部と同じ大きさ及び形状に形成されている。したがって、プレート部に被覆部材を重ね合わせることが容易になる。
【0012】
また、本発明に係る第3の態様のハーネス固定位置の識別構造は、第1又は第2の態様のハーネス固定位置の識別構造であって、前記被覆部材は、前記複数種類のハーネス毎に複数種類用意されている。
【0013】
第3の態様の発明によれば、被覆部材が、複数種類のハーネス毎に複数種類用意されている。したがって、複数種類のハーネスに対応可能となる。
【0014】
また、本発明に係る第4の態様のハーネス固定位置の識別構造は、第1~第3の何れか1つの態様のハーネス固定位置の識別構造であって、前記被覆部材は、前記シートフレームに被せる表皮と一体化されている。
【0015】
第4の態様の発明によれば、被覆部材が、シートフレームに被せる表皮と一体化されている。したがって、プレート部に被覆部材を重ね合わせることが容易になるとともに、その作業性も向上される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、シートフレームに対するハーネス識別用の刻印の形成を不要にすることができるとともに、作業者のシートフレームに対するハーネスの誤固定を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係るハーネス固定位置の識別構造を構成するシートクッションフレームを示す概略背面図である。
【
図2】(A)~(C)本実施形態に係るハーネス固定位置の識別構造を構成する被覆部材の例を示す概略正面図である。
【
図3】本実施形態に係るハーネス固定位置の識別構造を構成するシートクッションフレームに被覆部材の一例を重ね合わせた状態を示す概略背面図である。
【
図4】本実施形態に係るハーネス固定位置の識別構造を構成するシートクッションフレームに被覆部材の一例を重ね合わせてハーネスクリップによってハーネスを固定した状態を示す概略背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPをシートの上方向、矢印RHをシートの右方向とする。したがって、以下の説明で、特記することなく上下、左右の方向を記載した場合は、シートにおける上下、左右を示すものとする。また、左右方向は、シート幅方向と同義である。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態に係るハーネス固定位置の識別構造10は、例えば車両用のシート12に設けられている。具体的に説明すると、シート12のシートフレームを構成する金属製のシートクッションフレーム14の背面側には、シート幅方向に延在するプレート部16が一体に形成されている。
【0020】
このプレート部16は、シート幅方向が長手方向となる所定の厚みの略矩形平板状に形成されており、後述するハーネスクリップ28(
図4参照)を差し込むための複数の孔部18を有している。なお、
図1、
図3、
図4では、図面が煩雑にならないように、一部の孔部にだけ符号18を付している。
【0021】
複数の孔部18は、固定位置が異なる複数種類のハーネス26(
図4参照)をハーネスクリップ28によって固定可能となるように、その大きさ、形状、位置等が予め設定されている。換言すれば、複数の孔部18は、その大きさ及び形状が、プレート部16に形成される位置によって同じになったり、異なったりしている。そして、このプレート部16の外面には、
図2に示されるような被覆部材20が重ね合わされるようになっている。
【0022】
図3に示されるように、被覆部材20は、プレート部16に重ね合わせることにより、複数種類のハーネス26の中から選択された特定の種類のハーネス26の固定に必要な孔部18のみを露出させるものである。そのため、被覆部材20は、プレート部16と同じ大きさ及び形状となる厚みの薄い略矩形平板状に形成されており、
図2(A)~
図2(C)に例として示されているように、複数種類のハーネス26毎に複数種類用意されている。
【0023】
すなわち、固定するハーネス26の種類毎に露出させる(ハーネスクリップ28を差し込む)孔部18が異なっているため、各被覆部材20は、それぞれ露出させる孔部18と同じ大きさ及び形状の1つ又は複数の孔部22を、その露出させる孔部18と同じ位置に有している。なお、被覆部材20は、例えば布材で構成されており、プレート部16から外れないように、そのプレート部16に接着等の保持手段によって保持される構成になっている。
【0024】
また、
図3に示されるように、被覆部材20は、シートクッションフレーム14(実際にはシートクッションフレーム14に設けられた図示しないシートパッド)に被せる表皮30と一体化されて構成されていてもよい。すなわち、被覆部材20は、その表皮30の後端部における裏面側に縫製等によって一体的に取り付けられていてもよく、表皮30を被せることで、被覆部材20がプレート部16に重ね合わされる構成になっていてもよい。
【0025】
以上のような構成とされた本実施形態に係るハーネス固定位置の識別構造10において、次にその作用について説明する。なお、ここでは、
図2(A)に示されている被覆部材20を使用した例で説明する。
【0026】
図3に示されるように、シートクッションフレーム14に設けられているプレート部16の外面に被覆部材20を重ね合わせる。ここで、被覆部材20は、プレート部16と同じ大きさ及び形状に形成されている。したがって、被覆部材20をプレート部16に重ね合わせることが容易にできる。
【0027】
プレート部16の外面に被覆部材20を重ね合わせると、プレート部16に形成されている複数の孔部18の中から、特定の孔部18A、18Bだけが、被覆部材20に形成されている孔部22A、22Bからそれぞれ露出する。つまり、複数種類のハーネス26の中から選択された特定の種類のハーネス26の固定に必要な孔部18A、18Bのみが、被覆部材20の孔部22A、22Bによって、それぞれ露出される。
【0028】
したがって、
図4に示されるように、作業者は、その孔部22A、22Bによって露出(識別)された孔部18A、18Bにしか、ハーネス26の中途部に取り付けられているハーネスクリップ28を差し込むことができなくなり、その孔部18A、18Bにだけ、そのハーネスクリップ28を差し込めばよくなる(作業が完了する)。
【0029】
これにより、シートクッションフレーム14に設けられているプレート部16に対して、作業者がハーネス26の中途部を誤った位置に固定してしまうという誤固定の発生を防止することができる。しかも、被覆部材20は、複数種類のハーネス26毎に複数種類用意されているため、複数種類のハーネス26に対応することができる。
【0030】
また、これにより、プレート部16に、ハーネス識別用の刻印を形成する必要がなくなる。したがって、シートクッションフレーム14を成形する金型をわざわざ改修する必要がなくなり、ハーネス26の種類が今までとは異なってしまっても、被覆部材20の孔部22だけ、それに合わせて適宜設計変更すれば済むため、コスト的に有利となる。
【0031】
なお、被覆部材20は、ハーネスクリップ28が孔部22及び孔部18に対して差し込まれることにより、より一層プレート部16から外れないように固定される。つまり、この被覆部材20は、プレート部16に重ね合わされた状態で残留する。しかしながら、この被覆部材20には、通常、その上から表皮30が被される構成になるため、特に不具合が起きることはない。
【0032】
また、上記したように、被覆部材20は、シートクッションフレーム14(実際にはシートパッド)に被せる表皮30と一体化されて構成されていてもよい。これによれば、被覆部材20が独立して設けられている場合(例えばプレート部16に被覆部材20を接着する場合)に比べて、プレート部16に被覆部材20を重ね合わせることが容易にできるとともに、その作業性も向上させることができる。
【0033】
以上、本実施形態に係るハーネス固定位置の識別構造10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係るハーネス固定位置の識別構造10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。
【0034】
例えば、プレート部16に形成されている孔部18を露出させるために被覆部材20に形成されるものは、孔部22に限定されるものではなく、
図2(B)、
図2(C)に示されるように、その長手方向一端部又は他端部に形成されているような背面視略「U」字状の切欠部24等でもよい。
【0035】
また、被覆部材20は、布材で構成されるものに限定されるものではなく、例えば樹脂材で構成されていてもよい。また、被覆部材20は、例えば磁力によってプレート部16に保持される構成とされていてもよい。すなわち、被覆部材20は、マグネットシート等で構成されていてもよい。
【0036】
また、被覆部材20は、ハーネスクリップ28が孔部22及び孔部18に対して差し込まれることでも、プレート部16から外れないように固定されるため、プレート部16に重ね合わせた被覆部材20を手指で押さえた状態で、孔部22及び孔部18にハーネスクリップ28を差し込むようにしてもよい。つまり、被覆部材20は、プレート部16に保持手段によって保持されない構成になっていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 ハーネス固定位置の識別構造
14 シートクッションフレーム(シートフレーム)
16 プレート部
18 孔部
20 被覆部材
26 ハーネス
28 ハーネスクリップ
30 表皮