(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155190
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 19/06 20060101AFI20251006BHJP
【FI】
G01L19/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058841
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 將裕
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB20
2F055CC02
2F055CC60
2F055DD04
2F055EE11
2F055FF38
2F055GG22
(57)【要約】
【課題】信号処理回路および圧力検出素子へのノイズの影響を防止することができる圧力センサを提供する。
【解決手段】圧力センサは、圧力検出素子と、圧力検出素子が配される液封室と液封室に向き合う圧力室とを仕切る金属製のダイヤフラムと、圧力検出素子に電気的に接続される入出力端子群と、絶縁部材と、ダイヤフラム、絶縁部材とともに液封室を形成する導電性ハウジングを含んでなるセンサユニットと、信号処理回路と、入出力端子群の1つと電気的に接続されており、ハウジングに対して絶縁部材を介してノイズを逃がす導電性部材と、を備えた圧力センサであって、導電性部材とハウジングの間に生じる浮遊容量をC
1、圧力検出素子とハウジングの間に生じる浮遊容量をC
2、信号処理回路とハウジングとの間に生じる浮遊容量をC
3としたときに、以下の式(1)および(2)が成立することを特徴とする。
C
1>C
2・・・(1)
C
1>C
3・・・(2)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力を検出し、圧力に応じた圧力検出信号を外部制御機器に送出する圧力検出素子と、
該圧力検出素子が配される液封室と該液封室に向き合う圧力室とを仕切る金属製のダイヤフラムと、
前記圧力検出素子に電気的に接続される入出力端子群と、
前記圧力検出素子および前記入出力端子群を支持する絶縁部材と、
前記ダイヤフラム、前記絶縁部材とともに圧力伝達媒体を封止する前記液封室を形成する導電性ハウジングを含んでなるセンサユニットと、
前記圧力検出素子に前記外部制御機器から供給される駆動電圧、または、前記圧力検出素子から前記外部制御機器に送出する前記圧力検出信号のいずれかまたは両方を変換する信号処理回路と、
前記入出力端子群の1つと電気的に接続されており、前記導電性ハウジングに対して前記絶縁部材を介してノイズを逃がす導電性部材と、
を備えた圧力センサであって、
前記導電性部材と前記導電性ハウジングの間に生じる浮遊容量をC1とし、前記圧力検出素子と前記導電性ハウジングの間に生じる浮遊容量をC2とし、前記信号処理回路と前記導電性ハウジングとの間に生じる浮遊容量をC3としたときに、以下の式(1)および(2)が成立することを特徴とする圧力センサ。
C1>C2・・・(1)
C1>C3・・・(2)
【請求項2】
前記C1において、比誘電率をε1、前記導電性部材と前記導電性ハウジングの間の対向する部分の最小距離をd1、前記導電性部材と前記導電性ハウジングの対向面積をS1とし、前記C2において、比誘電率をε2、前記圧力検出素子と前記導電性ハウジングの間の対向する部分の最小距離をd2、前記圧力検出素子と前記導電性ハウジングの対向面積をS2とし、前記C3において、比誘電率をε3、前記信号処理回路と前記導電性ハウジングの間の対向する部分の最小距離をd3、前記信号処理回路と前記導電性ハウジングの対向面積をS3とすると、ε1≧ε2およびε1≧ε3の場合において、以下の式(3)および(4)が成立することを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
ε1S1/S2>ε2d1/d2・・・(3)
ε1S1/S3>ε3d1/d3・・・(4)
【請求項3】
前記導電性部材に電気的に接続する前記入出力端子群の1つが前記信号処理回路のグランド端子である請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記導電性部材に電気的に接続する前記入出力端子群の1つが前記信号処理回路の駆動用電圧端子である請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項5】
圧力を検出し、圧力に応じた圧力検出信号を外部制御機器に送出する圧力検出素子と、
該圧力検出素子が配される液封室と該液封室に向き合う圧力室とを仕切る金属製のダイヤフラムと、
前記圧力検出素子に電気的に接続される入出力端子群と、
前記圧力検出素子および前記入出力端子群を支持する絶縁部材と、
前記ダイヤフラム、前記絶縁部材とともに圧力伝達媒体を封止する前記液封室を形成する導電性ハウジングを含んでなるセンサユニットと、
前記圧力検出素子に前記外部制御機器から供給される駆動電圧、または、前記圧力検出素子から前記外部制御機器に送出する前記圧力検出信号のいずれかまたは両方を変換する信号処理回路を有する変換基板と、
前記圧力検出素子に近接して設けられ、前記入出力端子群の1つと電気的に接続されており、前記導電性ハウジングに対して前記絶縁部材を介してノイズを逃がす第1の導電性部材と、
前記変換基板に近接して設けられ、前記入出力端子群の1つと電気的に接続されることにより、前記導電性ハウジングに対して前記絶縁部材を介してノイズを逃がす第2の導電性部材と、
を備えた圧力センサであって、
前記第1の導電性部材と前記導電性ハウジングの間に生じる浮遊容量をC1とし、前記第2の導電性部材と前記導電性ハウジングの間に生じる浮遊容量をC1´とし、前記圧力検出素子と前記導電性ハウジングの間に生じる浮遊容量をC2とし、前記変換基板と前記導電性ハウジングとの間に生じる浮遊容量をC3としたときに、以下の式(1)および(2)が成立することを特徴とする圧力センサ。
C1>C2・・・(1)
C1´>C3・・・(2)
【請求項6】
前記C1において、比誘電率をε1、前記第1の導電性部材と前記導電性ハウジングの間の対向する部分の最小距離をd1、前記第1の導電性部材と前記導電性ハウジングの対向面積をS1とし、前記C2において、比誘電率をε2、前記圧力検出素子と前記導電性ハウジングの間の対向する部分の最小距離をd2、前記圧力検出素子と前記導電性ハウジングの対向面積をS2とし、前記C1´において、比誘電率をε1´、前記第2の導電性部材と前記導電性ハウジングの間の対向する部分の最小距離をd1´、前記第2の導電性部材と前記導電性ハウジングの対向面積をS1´とし、前記C3において、比誘電率をε3、前記変換基板と前記導電性ハウジングの間の対向する部分の最小距離をd3、前記変換基板と前記導電性ハウジングの対向面積をS3とすると、ε1≧ε2およびε1´≧ε3の場合において、以下の式(3)および(4)が成立することを特徴とする請求項5に記載の圧力センサ。
ε1S1/S2>ε2d1/d2・・・(3)
ε1S1´/S3>ε3d1´/d3・・・(4)
【請求項7】
前記第1の導電性部材および前記第2の導電性部材に電気的に接続する前記入出力端子群の1つが前記信号処理回路のグランド端子である請求項5に記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記第1の導電性部材および前記第2の導電性部材に電気的に接続する前記入出力端子群の1つが前記信号処理回路の駆動用電圧端子である請求項5に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関し、詳しくは、圧力センサに加えられるノイズを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサでは、静電気やリレーのチャタリングによって発生する電気的ノイズが外部につながるリード線を介して加えられると、この電気的ノイズは、圧力センサ内部の信号処理回路もしくは圧力検出素子を通り、絶縁物を介してハウジングへと流れ、信号処理回路もしくは圧力検出素子を破壊することがある。
【0003】
特許文献1には、このようなノイズの対策のための構成として、圧力センサのベースを導電性素材で形成し、除電板を、ベース上に設けられた、表面に導電層が形成された第1の絶縁性部材によって構成し、上記導電層が、ベースと電気的に接続されず、配線層のグラウンドと同電位に維持され、圧力検出素子とベースとの間に第2の絶縁性部材が配置された圧力センサが記載されている。そして、第1の絶縁性部材の誘電率をε1とし、第2の絶縁性部材の誘電率をε2とし、絶縁性媒質の誘電率をε3としたとき、以下の式(1)および式(2)が成立することが記載されている。
ε1>ε2・・・(1)
ε1>ε3・・・(2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の上記構成では、浮遊容量を生じる要素間に存在する絶縁性媒質と絶縁性部材の誘電率の大小関係を規定しただけであり、ノイズ対策の構成としては不十分である。すなわち、浮遊容量を生じる要素間での浮遊容量の大小関係が規定されるものではないため、ノイズへの十分な対策がなされているとはいえない。
【0006】
本発明の目的は、信号処理回路および圧力検出素子へのノイズの影響を防止することができる圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、圧力センサは、圧力を検出し、圧力に応じた圧力検出信号を外部制御機器に送出する圧力検出素子と、該圧力検出素子が配される液封室と該液封室に向き合う圧力室とを仕切る金属製のダイヤフラムと、前記圧力検出素子に電気的に接続される入出力端子群と、前記圧力検出素子および前記入出力端子群を支持する絶縁部材と、前記ダイヤフラム、前記絶縁部材とともに圧力伝達媒体を封止する前記液封室を形成する導電性ハウジングを含んでなるセンサユニットと、前記圧力検出素子に前記外部制御機器から供給される駆動電圧、または、前記圧力検出素子から前記外部制御機器に送出する前記圧力検出信号のいずれかまたは両方を変換する信号処理回路と、前記入出力端子群の1つと電気的に接続されており、前記ハウジングに対して前記絶縁部材を介してノイズを逃がす導電性部材と、を備えた圧力センサであって、前記導電性部材と前記ハウジングの間に生じる浮遊容量をC1とし、前記圧力検出素子と前記ハウジングの間に生じる浮遊容量をC2とし、前記信号処理回路と前記ハウジングとの間に生じる浮遊容量をC3としたときに、以下の式(1)および(2)が成立することを特徴とする。
C1>C2・・・(1)
C1>C3・・・(2)
【0008】
上記課題を解決するために、圧力センサは、圧力を検出し、圧力に応じた電気信号を送出する圧力検出素子と、該圧力検出素子が配される液封室と該液封室に向き合う圧力室とを仕切る金属製のダイヤフラムと、前記圧力検出素子に電気的に接続される入出力端子群と、前記圧力検出素子および前記入出力端子群を支持する絶縁部材と、前記ダイヤフラム、前記絶縁部材とともに圧力伝達媒体を封止する前記液封室を形成する導電性ハウジングを含んでなるセンサユニットと、前記圧力検出素子に前記外部制御機器から供給される駆動電圧、または、前記圧力検出素子から前記外部制御機器に送出する前記圧力検出信号のいずれかまたは両方を変換する信号処理回路を有する変換基板と、前記圧力検出素子に近接して設けられ、前記入出力端子群の1つと電気的に接続されており、前記ハウジングに対して前記絶縁部材を介してノイズを逃がす第1の導電性部材と、前記変換基板に近接して設けられ、前記入出力端子群の1つと電気的に接続されることにより、前記ハウジングに対して前記絶縁部材を介してノイズを逃がす第2の導電性部材と、を備えた圧力センサであって、前記第1の導電性部材と前記ハウジングの間に生じる浮遊容量をC1とし、前記第2の導電性部材と前記ハウジングの間に生じる浮遊容量をC1´とし、前記圧力検出素子と前記ハウジングの間に生じる浮遊容量をC2とし、前記変換基板と前記ハウジングとの間に生じる浮遊容量をC3としたときに、以下の式(1)および(2)が成立することを特徴とする。
C1>C2・・・(1)
C1´>C3・・・(2)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、信号処理回路および圧力検出素子へのノイズの影響を防止することができる圧力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る圧力センサ本体を示す概略図であり、
図1(a)は、圧力センサ本体を示す断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のAの領域を流体導入部側から見た場合の概略平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る圧力センサ本体を示す概略図であり、
図2(a)は、本発明の実施形態に係る圧力センサ本体を示す断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のAの領域を流体導入部側から見た場合の概略平面図であり、
図2(c)は、
図2(a)のBの領域を変換基板側から見た場合の概略平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る圧力センサ本体を示す概略図であり、
図3(a)は、本発明の実施形態に係る圧力センサ本体を示す断面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のAの領域を流体導入部側から見た場合の概略平面図であり、
図3(c)は、
図3(a)のBの領域を変換基板側から見た場合の概略平面図であり、
図3(d)は、
図3(a)のBの領域を流体導入部側から見た場合の概略平面図であり、
図3(e)は、本発明の実施形態に係る圧力センサ本体のスペーサの分解図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る圧力センサ本体を示す概略図であり、
図4(a)は、本発明の他の実施形態に係る圧力センサを示す断面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のAの領域を流体導入部側から見た場合の概略平面図であり、
図4(c)は、
図4(a)のBの領域を変換基板側から見た場合の概略平面図であり、
図4(d)は、
図4(a)のBの領域を流体導入部側から見た場合の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~
図4を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態の態様によって限定されるものではない。
【0012】
<圧力センサの構成>
図1および
図2、
図3、
図4は、本発明の実施形態に係る圧力センサのそれぞれ別の形態を示しており、それぞれ圧力センサ100、200、300、400として参照される。これら圧力センサ100~400の共通の構成要素については、同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0013】
図1に示すように、圧力センサ100は、流体導入部110と、圧力検出部120と、封止部材140と、を有して構成される。
図1に示す実施形態1においては、信号処理回路は圧力センサチップ(以下、「圧力検出素子」とも言う)126と一体化されて、1つのチップ上に信号処理回路と圧力検出素子が載っている。実施形態1、2、3、4の圧力センサ100、200、300、400は、流体導入部110および圧力検出部120を接合固定し、圧力検出部120および信号送出部130を電気的に接続した後、封止部材140により、流体導入部110、圧力検出部120、および、信号送出部130を一体的に組み付けられる。
【0014】
<流体導入部>
流体導入部110は、圧力検出される流体を、後述する圧力室112Aに導入するものであり、金属製の継手部材111と、継手部材111の他端に溶接等により接続される金属製のベースプレート112と、を備える。
【0015】
継手部材111は、圧力検出される流体を導入する配管(不図示)と接続される雌ねじ部111aと、配管から導入された流体を圧力室112Aに導くポート111bと、を備える。ポート111bの開口端は、ベースプレート112の中央に設けられた開口部に溶接等により接続される。本実施形態において、継手部材111は、雌ねじ部111aを備えるものとしたが、これに限らず、例えば、雄ねじ部を備えるものや、継手部材111の代わりに、銅製の接続パイプが接続されるものとしてもよい。
【0016】
ベースプレート112は、一端から他端に向けて、圧力センサ100~400の中心軸線Cに対して半径方向に拡径するお椀形状を有し、後述するダイヤフラム122との間に圧力室112Aを形成する。
【0017】
<圧力検出部>
圧力検出部120は、圧力室112Aに導入された流体の圧力を検出するものであり、貫通孔を有する金属製のハウジング(導電性ハウジング)121と、上述の圧力室112Aと後述する液封室124Aとを区画する金属製のダイヤフラム122と、ダイヤフラム122の圧力室112A側に配置される保護カバー123と、を備える。また、圧力検出部120は、ハウジング121の貫通孔内部に封着されるハーメチックガラス(絶縁部材)124と、ハーメチックガラス124の圧力室112A側の凹部とダイヤフラム122との間に圧力伝達媒体が充填される液封室124Aと、ハーメチックガラス124の中央に配置される支柱125と、を備える。さらに、圧力検出部120は、支柱125に支持され液封室124A内部に配置される圧力センサチップ126と、液封室124Aにおいて圧力センサチップ126とダイヤフラム122との間に配置される導電性部材127と、ハーメチックガラス124に固定される複数のリードピン128aと、ハーメチックガラス124に固定されるオイル充填用パイプ129と、を備える。また、ハーメチックガラス124の外周部の高さを中心部よりも高く形成し、外周部の内側に、金属製であるリング状のフレーム128dを嵌め込むようにしている。
【0018】
ハウジング121は、ハーメチックガラス124の周囲の強度を保つために、例えばFe・Ni系合金やステンレス等の金属材料により形成される。ダイヤフラム122と、保護カバー123は、共に金属材料で形成され、共にハウジング121の圧力室112A側の貫通孔の外周縁部において溶接される。保護カバー123は、ダイヤフラム122を保護するために圧力室112A内部に設けられ、流体導入部110から導入された流体が通過するための複数の連通孔123aが設けられる。ハウジング121は、圧力検出部120が組み立てられた後、流体導入部110のベースプレート112の外周縁部において、TIG溶接、プラズマ溶接、レーザ溶接等により外側から溶接される。従って、流体導入部110と圧力検出部120は一体となっている。
【0019】
ハーメチックガラス124は、一端面がハウジング121より窪んだ凹部を形成し、凹部内に圧力センサチップ126を配置し、ハーメチックガラス124、ハウジング121、ダイヤフラム122で囲まれた空間内に圧力伝達媒体を封入することで、液封室124Aを形成する。また圧力センサチップ126および複数のリードピン128aをハウジング121から絶縁して保持するために設けられる。ハーメチックガラス124の中央に配置された支柱125の液封室124A側には、圧力センサチップ126が接着剤などにより支持される。なお、本実施形態において、支柱125は、Fe・Ni系合金で形成されるものとしたが、これに限らない。例えば、ステンレス等その他の金属材料で形成されるものとしてもよいし、支柱125を設けずに、ハーメチックガラス124の凹部を形成する平坦面に直接的に支持されるように構成されてもよい。
【0020】
本実施形態における圧力検出素子としての圧力センサチップ126の内部には、ピエゾ抵抗効果を有する材料(例えば、単結晶シリコン等)からなるダイヤフラムと、ダイヤフラム上に複数の半導体歪みゲージを形成し、これらの半導体歪みゲージをブリッジ接続したブリッジ回路およびブリッジ回路からの出力を処理する増幅回路と、演算処理回路等の集積回路と、が含まれる。また、圧力センサチップ126は、例えば、金またはアルミニウム製のボンディングワイヤ126aにより複数のリードピン128aに接続され、複数のリードピン128aは、圧力センサチップ126の外部入出力端子を構成している。また、圧力検出素子としてはこの例に限らず、静電容量型、歪みゲージ式、磁歪素子等で構成されていても良い。
【0021】
導電性部材127は、圧力センサチップ126を無電界(ゼロ電位)内に置き、フレームアースと2次電源との間に生じる電位の影響で圧力センサチップ126内の回路などが悪影響を受けないようにするために設けられる。なお、
図3(a)および
図4(a)に示すように、導電性部材127aおよび127cがそれぞれ変換基板233、333に近接して配置される場合にも、同様に変換基板233、333内の信号処理回路などが悪影響を受けないようにすることができる。
図1の場合、導電性部材127は、液封室124A内の圧力センサチップ126とダイヤフラム122との間に配置され、金属等の導電性の材料で形成され、フレーム128dのダイヤフラム122に対向する端面に溶接等により固定されている。フレーム128dは複数のリードピン128aのうちいずれか1本以上、例えば圧力センサチップ126のゼロ電位に接続されるリードピン128aと電気的に接続される。具体的には、フレーム128dにゼロ電位に接続されたリードピン128aが挿入される孔を空け、該孔にリードピン128aを挿入して、フレーム128dをつぶしてかしめることにより、フレーム128dとリードピン128aとを機械的かつ電気的に接続するようにしている。従って、導電性部材127はフレーム128dを介して、リードピン128aと電気的に接続し導通している。
【0022】
ハーメチックガラス124には、複数のリードピン128aおよびオイル充填用パイプ129の一端が、貫通状態でハーメチック処理により固定される。本実施形態では、リードピン128aとして、全部で8本のリードピン128aが設けられている。すなわち、外部出力用(Vout)、駆動電圧供給用(Vcc)、接地用(GND)の3本のリードピン128aと、圧力センサチップ126の調整用の端子として5本のリードピン128aが設けられている。なお、
図1においては、8本のリードピン128aのうち4本が示される。
【0023】
オイル充填用パイプ129は、液封室124Aの内部に圧力伝達媒体(例えば、シリコーンオイル、または、フッ素系不活性液体等)を充填するために設けられる。なお、オイル充填用パイプ129の他端は、圧力伝達媒体充填後、押し潰されて閉塞される。
【0024】
<圧力検出部の動作>
圧力検出部120の動作について説明する。まず、ダイヤフラム122が、継手部材111から圧力室112Aに導入される流体により押圧される。このダイヤフラム122に加えられる圧力室112Aの圧力は、液封室124A内の圧力伝達媒体を介して圧力センサチップ126に伝達される。この伝達された圧力により、圧力センサチップ126のシリコンダイヤフラムが変形し、ピエゾ抵抗素子によるブリッジ回路で圧力を電気信号に変換して、圧力センサチップ126の集積回路からボンディングワイヤ126aおよび複数のリードピン128aを介して、信号送出部130に出力される。
【0025】
なお、
図1に示す実施形態1では、圧力センサチップ126に信号処理回路が一体として設けられており、出力された電気信号を外部制御機器へ入力するのに適した信号へと変換し、ボンディングワイヤ126aおよび複数のリードピン128aを介して、外部に出力される。信号処理回路は、次項で述べる変換基板133、233、333が備える信号処理回路と同様の機能を有する。
【0026】
<信号送出部>
図2~
図4で示す圧力センサ200~400が備える信号送出部130は、圧力検出部120で検出された圧力信号を外部に送出するものであり、圧力検出部120の圧力室112Aに対向する側に設けられ、圧力検出部120から突出する複数のリードピン128aに接続される変換基板133~333と、変換基板133~333に接続される外部接続用のリード線135を備える。なお、
図3、
図4で図示されているように、変換基板233、333と圧力検出部120の間には、スペーサ134も配置されている。また、変換基板133~233を備えていない
図1で示される圧力センサ100の信号送出部130は、圧力検出部120の圧力室112Aに対向する側である、ハウジング121上端部に配置された端子台151と、外部機器接続用の複数のリード線128cと、リードピン128aとリード線128cとを中継するコンタクトピン128bと、端子台151上部の開口端を覆うエンドキャップ152を備える。端子台151はリードピン128aを整列させるとともに、その内側に所定の容積の空洞部を有している。端子台151の下端部はハウジング121の上端面に絶縁ボンド142により接着されている。絶縁ボンド142は端子台151の固定の他、リードピン128aとハウジング121との絶縁性向上のために塗布されている。コンタクトピン128bは、端子台151内部の空洞部において、一端がリードピン128aの端部と、例えばスポット溶接などにより導通接続し、他端が端子台151側面より引き出され、該引出部にリード線128cが接続されている。端子台151の上端側には、エンドキャップ152が設置されている。従って、端子台151、エンドキャップ152で囲まれた空間内に空洞部を形成している。
【0027】
変換基板133~333は、駆動電圧や圧力検出信号の信号方式に対応するために、駆動電圧、または、圧力検出信号の一方もしくは両方を変換する信号処理回路(不図示)を備える。この信号処理回路は、リード線135を介して、外部に接続される外部制御機器の制御回路(不図示)から圧力センサ200~400に供給される例えば3.3V~36Vの駆動電圧を、圧力センサチップ126の仕様の電圧(例えば5V)と合致させる昇圧、降圧回路部(不図示)、圧力センサ200~400の圧力検出信号(例えば、0.5V~4.5V)を、制御回路の圧力検出信号(例えば、1V~5V)に昇圧する電圧シフト回路部(不図示)、電圧、若しくは抵抗変化による出力信号を4~20mA等の電流出力へと変換する電流出力変換回路、および、デジタル出力変換回路等、を備える。このように、駆動電圧や圧力検出信号の信号方式に対応して、圧力センサ200~400内に設ける変換基板133~333を適宜選択することにより、圧力検出部120、特に圧力センサチップ126や、液封室124Aの周辺構造の設計変更を行うことなく、駆動電圧および圧力検出信号の差を吸収することができる。変換基板133~333の外縁のサイズは、
図2~
図4で示されるように、ハウジング121よりも小さく設定されている。
【0028】
<封止部材>
封止部材140は、圧力検出部120、信号送出部130の周囲を覆う防水ケース141と、防水ケース141の内周面と圧力検出部120の外周面および信号送出部130の外周面との間を充填する封止材143を備える。
【0029】
圧力センサ100の防水ケース141は、樹脂材料で円筒形状に形成され、円筒形状の下端部には、内側に向かうフランジ部が設けられている。このフランジ部には、防水ケース141の上部の開口部から挿入された圧力検出部120が接続された流体導入部110 のベースプレート112の外周部が当接する。この状態で防水ケース141の内部と圧力検出部120、信号送出部130である端子台151、エンドキャップ152で囲まれる空間内に封止材143を充填し、圧力検出部120、信号送出部130等を固定する。この封止材143の充填により、圧力センサ100の防水性を得ることができる。また、
図2~
図4の防水ケース141aは、樹脂材料で円筒形状に形成され、信号送出部130側から流体導入部110側に向けて順に小円筒部、中円筒部、大円筒部が、同軸となるように一体で形成されている。小円筒部は、信号送出部130が位置し、封止材143が充填される空間を形成する。中円筒部は、圧力検出部120が収容可能な内径を有し、ハウジング121が位置する。大円筒部には流体導入部110のベースプレート112を収容可能な内径を有する。大円筒部の端部は、圧力検出部120のハウジング121外周面全体から流体導入部110に向けて、ベースプレート112の外周部を超える位置まで延長されている。この防水ケース141aの円筒内部に圧力検出部120などを挿入する工程において、小円筒部と中円筒部との間の段差に、ハウジング121の液封室124Aと反対側である上端外周縁を突き当てることで、圧力検出部120と防水ケース141aとの位置決めを行うようになっている。この位置決めされた状態で、小円筒部と圧力検出部120、信号送出部130で囲まれる内部空間に、封止材143を充填し、圧力検出部120、信号送出部130等を固定する。この封止材143の充填により、圧力センサ200~400の防水性を得ることができる。
【0030】
<ノイズ導通経路の形成について>
以上説明した圧力センサでは、外部からのノイズによる電流がリード線を通じて圧力センサ内に流れることがある。この際、ノイズ電流が圧力センサチップや信号処理回路に至ってこれを通過すると、これらを破壊してしまう恐れがある。そこで、本実施形態は、ノイズが導電性部材とハウジングとの間を通過し、圧力センサチップとハウジングとの間、信号処理回路(変換基板)とハウジングとの間、を通過しないようにする。そのために、本実施形態では、圧力センサチップとハウジングとの間、信号処理回路(変換基板)とハウジングとの間、導電性部材とハウジングとの間、それぞれの浮遊容量の関係を定める。
【0031】
具体的には、導電性部材とハウジング間の浮遊容量をC1、圧力センサチップとハウジング間の浮遊容量をC2、信号処理回路とハウジング間の浮遊容量をC3とすると、このとき、次式が成立する、圧力センサの構成とする。
C1>C2・・・(1)
C1>C3・・・(2)
【0032】
これらの式が成立するとき、すなわち、導電性部材とハウジング間の浮遊容量C1が、圧力センサチップとハウジング間の浮遊容量C2、信号処理回路とハウジング間の浮遊容量C3より大きい関係によって、外部より加わったノイズ電流が導電性部材とハウジング間を通過するようにできる。これら浮遊容量の関係式は、圧力センサ100、200、300、400それぞれが備える構成によって異なることから、以下に具体的な実施形態として、上式が成立するための具体的な条件を説明する。
【0033】
(実施形態1)
図1(a)は、本発明の実施形態に係る圧力センサ100を示す概略側面断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のAの領域を流体導入部110側から見た場合の、圧力センサチップ126、導電性部材127、ダイヤフラム122以外を省略して示す概略平面図であり、127´は導電性部材127の外縁部を示す。
【0034】
図1(a)に示すように、本実施形態において圧力センサ100は、圧力検出部120と流体導入部110とを有して構成される。また、信号処理回路は、圧力センサチップ126に一体化されている。
【0035】
図1(a)に示すように、導電性部材127と、ハウジング121と同電位にあるダイヤフラム122との間の最小距離をd
1、圧力センサチップ126とダイヤフラム122との間の最小距離をd
2とする。このとき、信号処理回路とダイヤフラム122との間の最小距離d
3は、信号処理回路が圧力センサチップに一体化されていることから、d
3=d
2とすることができる。
【0036】
また、
図1(b)に示すように、導電性部材127とハウジング121と同電位であるダイヤフラム122の対向する面積をS
1、圧力センサチップ126とハウジング121(ダイヤフラム122)の対向する面積をS
2とする。このとき、信号処理回路とハウジング121(ダイヤフラム122)の対向する面積S
3は、上述したのと同様に、信号処理回路が圧力センサチップ126に一体化されていることから、S
3=S
2とすることができる。同様に、比誘電率εは次のように規定することができる。導電性部材127とダイヤフラム122との間の比誘電率をε
1、圧力センサチップ126とダイヤフラム122との間の比誘電率をε
2とするとき、信号処理回路とダイヤフラム122との間の比誘電率ε
3は、ε
3=ε
2とすることができる。
【0037】
ここで、浮遊容量Cは、誘電率ε、対向する導体の面積S、対向する導体の距離dを用いて、C=ε・S/dで表すことができる。そして、本実施形態は、
図1(a)に示す構成から、d
1<d
2であり、また、
図1(b)に示す構成から、S
1>S
2であるから、上述した浮遊容量の関係式(1)、(2)は、ε
1≧ε
2が成り立てば、常に成り立つ。ε
1≧ε
3についても同様である。これにより、上記C=ε・S/dの関係から、ε
1≧ε
2およびε
1≧ε
3の条件で、式(1)、(2)は、次式のように表すことができる。
ε
1S
1/S
2>ε
2d
1/d
2・・・(3)
ε
1S
1/S
3>ε
3d
1/d
3・・・(4)
【0038】
ここで、導電性部材127、圧力センサチップ126、信号処理回路のそれぞれとダイヤフラム122との間の比誘電率が等しい形態、すなわち、圧力センサチップ126、導電性部材127が同一の液封室124A内に配置され、これらの周囲に圧力伝達媒体が満たされている場合では、ε1=ε2およびε1=ε3が成り立つ。なお、ε1、ε2の関係で、ε1を大とするには、例えば導電性部材127の圧力センサチップ126に対向する面に、誘電率ε´となるコーティングを行うなどすればよい。
【0039】
圧力センサ100において、上式(3)、(4)が成立するように各要素の変数を決定することにより、リード線128cを介して圧力センサ100に加わったノイズ電流は、圧力センサチップ126(および信号処理回路)に至らず、導電性部材127からダイヤフラム122、ハウジング121へと伝わり、GNDへと逃すことができる。これにより、圧力センサチップ126、信号処理回路のノイズによる破壊を防止できる。
【0040】
(実施形態2)
図2(a)は、本発明の実施形態に係る圧力センサ200を示す断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のAの領域を流体導入部側から見た場合の圧力センサチップ126、導電性部材127、ダイヤフラム122以外を省略して示す概略平面図であり、
図2(c)は、
図2(a)のBの領域を変換基板133側から見た場合の、ハウジング121、変換基板133、防水ケース141a以外を省略した概略平面図であり、133´は変換基板133の外縁部を示し、121´´はハウジング121の円筒内周面縁部を示す。
【0041】
図2(a)に示すように、本実施形態において、実施形態1とは異なり信号処理回路は圧力検出部120の圧力室112Aと対向する外部(ハウジング121上面)に設置した変換基板133内に設けられている。ハウジング121と変換基板133は、相互の絶縁のために離隔して配置している。ここで、導電性部材127とハウジング121と同電位にあるダイヤフラム122間の最小距離をd
1、圧力センサチップ126とダイヤフラム122間の最小距離をd
2、信号処理回路(変換基板133)とハウジング121間の最小距離をd
3とする。なお、本実施形態では、変換基板133~ハウジング121間の距離は、導電性部材127~ダイヤフラム122間の距離よりも十分離隔して配置されている。
【0042】
また、
図2(b)および
図2(c)に示すように、導電性部材127とダイヤフラム122(ハウジング121)の対向する面積をS
1、圧力センサチップ126とダイヤフラム122(ハウジング121)の対向する面積をS
2、信号処理回路(変換基板133)とハウジング121の対向する面積をS
3とする。ここで対向する面積S
3とは、
図2(c)における濃い網掛け部分、すなわち、ハウジング121と変換基板133とが重複する部分である。なお、絶縁部材であるハ―メチックガラス124に掛かる部分は除外される。そして、導電性部材127とダイヤフラム122間の比誘電率をε
1、圧力センサチップ126とダイヤフラム122間の比誘電率をε
2、信号処理回路(変換基板133)とハウジング121間の比誘電率をε
3とすると、実施形態1と同様に導電性部材127、圧力センサチップ126が同一の液封室124A内に配置され、周囲に同一の圧力伝達媒体が存在していることからε
1≧ε
2が成り立つ。また、
図2(a)より、d
1<d
3であり、
図2(b)より、S
1>S
2、
図2(c)よりS
1>S
3であるから、上述した浮遊容量の関係式(1)、(2)は、ε
1≧ε
2が成り立てば、常に成り立つ。なお、ここでも前述のように、導電性部材127に別途誘電率ε´となるようコーティングを施すことにより、ε
1>ε
2とすることも可能である。また、圧力伝達媒体と封止材143の比誘電率が等しいか、もしくは圧力伝達媒体のほうが大きいと、ε
1≧ε
3についても同様のことがいえる。これにより、上記C=ε・S/dの関係から、ε
1≧ε
2およびε
1≧ε
3の条件で、式(1)、(2)は、次式のように表すことができる。
ε
1S
1/S
2>ε
2d
1/d
2・・・(3)
ε
1S
1/S
3>ε
3d
1/d
3・・・(4)
【0043】
上式(3)、(4)が成立するように各変数を決定すると、リード線135から圧力センサ200に加わったノイズが、圧力センサチップ126、信号処理回路に加わらず、導電性部材127からダイヤフラム122、ハウジング121へと伝わり、GNDへと逃すことができる。これにより、圧力センサチップ126および信号処理回路のノイズによる破壊を防止できる。
【0044】
(実施形態3)
図3(a)は、本発明の実施形態に係る圧力センサ300を示す概略側面断面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のAの領域を流体導入部110側から見た場合の、圧力センサチップ126およびダイヤフラム122以外を省略した概略平面図であり、
図3(c)は、
図3(a)のBの領域を変換基板233側から見た場合の、ハウジング121、変換基板233、防水ケース141a以外を省略した概略平面図であり、233´は変換基板233の外縁部を示す。
図3(d)は、
図3(a)のBの領域を流体導入部110側から見た場合の、ハウジング121、導電性部材127a、防水ケース141a以外を省略した概略平面図であり、127a´´は導電性部材127aの内縁部を示す。
図3(e)は、本発明の実施形態に係る圧力センサ300の変換基板233と導電性部材127aとの間、および、圧力検出部120と導電性部材127aとの間に設けられる2枚のスペーサ134の分解図である。
【0045】
ここで、
図3(e)に示すように、導電性部材127aは金属等の導電性の材料で、板状の円環状に形成されている。スペーサ134は絶縁性の樹脂で、導電性部材127aと同様に板状の円環状に形成されている。導電性部材127aの両面にスペーサ134を配置することにより、スペーサ134で導電性部材127aを挟持する。
【0046】
さらには、スペーサ134、導電性部材127a、変換基板233はほぼ同一の外径であり、スペーサ134、導電性部材127aの内径はリードピン128aと干渉せずに挿通するよう、同一の内径の円環状である。
【0047】
そして、円環状の導電性部材127a、スペーサ134は、その外径がハウジング121の外径よりも小さく、導電性部材127a、スペーサ134の内径は、ハウジング121の内径よりも小さい。またここで、スペーサ134の厚さは、圧力センサチップ126~ダイヤフラム122間の距離よりも小さい。すなわちスペーサ134は、この距離よりも薄い材料で形成されている。
【0048】
また、ここで、導電性部材127aの一部に
図3(e)のように突出折り曲げ部128eを設けている。突出折り曲げ部128eは変換基板233の信号処理回路の信号パターンとはんだ付け溶接などにより導通接続している。突出折り曲げ部128eの接続している信号パターンは、複数のリードピン128aのうちのいずれか1本以上、例えば圧力センサチップ126のゼロ電位に接続するリードピン128aと接続している。このような接続形態により、導電性部材127aは変換基板233の信号パターンを介してリードピン128aと電気的に接続し導通している。また、導電性部材127aと変換基板233の信号パターンとの導通接続形態はこれに限らず、例えば導通接続用のコンタクト接触、導通用ピン圧入、電線接続等により行われていてもよい。
【0049】
図3(a)に示すように、本実施形態においては、信号処理回路は圧力検出部120の圧力室112Aと対向する外部(ハウジング121上面)に設置した変換基板233内に設けられており、導電性部材127aが変換基板233に近接して配置されている。ここで、導電性部材127aとハウジング121間の最小距離をd
1、圧力センサチップ126とダイヤフラム122間の最小距離をd
2、信号処理回路(変換基板233)とハウジング121間の最小距離をd
3とする。
【0050】
また、
図3(b)、
図3(c)、および
図3(d)に示すように、導電性部材127aとハウジング121の対向する面積をS
1(
図3(d)における、導電性部材127aとハウジング121とが重複する濃い網掛け部)、圧力センサチップ126とダイヤフラム122(ハウジング121)の対向する面積をS
2、信号処理回路(変換基板233)とハウジング121の対向する面積をS
3(
図3(c)における、変換基板233とハウジング121とが重複する濃い網掛け部)とする。そして、導電性部材127aとハウジング121間の比誘電率をε
1、圧力センサチップ126とダイヤフラム122間の比誘電率をε
2、信号処理回路とハウジング121間の比誘電率をε
3とすると、
図3(a)、
図3(e)より、d
1<d
2、d
1<d
3、
図3(b)、
図3(c)および
図3(d)よりS
1>S
2、S
1=S
3であるから、上述した浮遊容量の関係式(1)、(2)は、ε
1≧ε
2が成り立てば、常に成り立つ。ε
1≧ε
3についても同様である。これにより、上記C=ε・S/dの関係から、ε
1≧ε
2およびε
1≧ε
3の条件で、式(1)、(2)は、次式のように表すことができる。
ε
1S
1/S
2>ε
2d
1/d
2・・・(3)
ε
1S
1/S
3>ε
3d
1/d
3・・・(4)
【0051】
また、導電性部材127aとダイヤフラム122間の比誘電率と圧力センサチップ126とダイヤフラム122間の比誘電率が等しいものとみなせる場合には、ε1=ε2が成り立つ。また、導電性部材127aとハウジング121間と信号処理回路(変換基板233)とハウジング121間には共通のスペーサ134が設けられていることから、これらの間の比誘電率が等しいとみなせる場合には、ε1=ε3が成り立つ。
【0052】
上式(3)、(4)が成立するように各変数を決定すると、リード線135から圧力センサ300に加わったノイズが、圧力センサチップ126、信号処理回路に加わらず、導電性部材127aからハウジング121へと伝わり、GNDへと逃すことができる。これにより、圧力センサチップ126および信号処理回路のノイズによる破壊を防止できる。
【0053】
図3(e)に示すように、変換基板233とハウジング121の間にはスペーサ134で挟持されている導電性部材127aが配置されている。すなわち、変換基板233と導電性部材127a、導電性部材127aとハウジング121の間にはスペーサ134が介在している。これにより、導電性部材127aとハウジング121間の距離を所望の距離とすることができ、また、所望の浮遊容量を生じさせることができる。
【0054】
(実施形態4)
図4(a)は、本発明の他の実施形態に係る圧力センサ400を示す概略側面断面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のAの領域を流体導入部110側から見た場合の、圧力センサチップ126、第1の導電性部材127b、およびダイヤフラム122以外を省略した概略平面図であり、127b´は第1の導電性部材127bの外縁部を示す。
図4(c)は、
図4(a)のBの領域を変換基板333側から見た場合の、ハウジング121、変換基板333、防水ケース141a以外を省略した概略平面図であり、333´は変換基板333の外縁部を示す。
図4(d)は、
図4(a)のBの領域を流体導入部110側から見た場合の、ハウジング121、第2の導電性部材127c、防水ケース141a以外を省略した概略平面図であり、127c´´は第2の導電性部材127cの内縁部を示す。なお、本実施形態においても、実施形態3と同様のスペーサ134を備えている。また、変換基板333、スペーサ134、第2の導電性部材127c、ハウジング121の内外径の関係は、実施形態3(
図3)の構成と同一である。
【0055】
図4(a)に示すように、本実施形態においては、圧力センサチップ126は、液封室124A内で圧力センサチップ126とダイヤフラム122との間に配され、複数のリードピン128aのうちいずれか1本以上と接続され電気的に導通している第1の導電性部材127bに覆われており、不所望な電界から保護されている。信号処理回路は圧力検出部120の圧力室112Aと対向する外部(ハウジング121上面)に設置した変換基板333内に設けられており、第2の導電性部材127cが変換基板333に近接して配置され不所望な電界から保護されている。また、ここで、第1の導電性部材127bとダイヤフラム122間の最小距離をd
1、圧力センサチップ126とダイヤフラム122間の最小距離をd
2、第2の導電性部材127cとハウジング121間の最小距離をd
1´、信号処理回路(変換基板333)とハウジング121間の最小距離をd
3とする。
【0056】
また、
図4(b)、
図4(c)および
図4(d)に示すように、第1の導電性部材127bとダイヤフラム122の対向する面積をS
1、圧力センサチップ126とダイヤフラム122の対向する面積をS
2、第2の導電性部材127cとハウジング121の対向する面積をS
1´(
図4(d)における、第2の導電性部材127cとハウジング121とが重複する濃い網掛け部)、信号処理回路(変換基板333)とハウジング121の対向する面積をS
3(
図4(c)における、変換基板333とハウジング121とが重複する濃い網掛け部であり、絶縁部材であるハ―メチックガラス124に掛かる部分は除外される)とする。そして、第1の導電性部材127bとダイヤフラム122間の比誘電率をε
1、圧力センサチップ126とダイヤフラム122間の比誘電率をε
2、第2の導電性部材127cとハウジング121間の比誘電率をε
1´、信号処理回路(変換基板333)とハウジング121間の比誘電率をε
3とすると、
図4(a)、
図3(e)より、d
1<d
2、d
1´<d
3、
図4(b)、
図4(c)および
図4(d)よりS
1>S
2、S
1´=S
3であるから、上述した浮遊容量の関係式(1)、(2)は、ε
1≧ε
2が成り立てば、常に成り立つ。ε
1´≧ε
3についても同様である。
ε
1S
1/S
2>ε
2d
1/d
2・・・(5)
ε
1´S
1´/S
3>ε
3d
1´/d
3・・・(6)
【0057】
ここで、圧力センサチップ126、第1の導電性部材127bは同一の液封室124A内に配置され、これらの周囲に圧力伝達媒体が満たされていることから、第1の導電性部材127bとダイヤフラム122間の比誘電率と圧力センサチップ126とダイヤフラム122間の比誘電率は等しいものとみなせる場合には、ε1=ε2が成り立つ。また、第2の導電性部材127cとハウジング121間と信号処理回路(変換基板333)とハウジング121間には共通のスペーサ134が設けられていることから、これらの間の比誘電率が等しいとみなせる場合には、ε1´=ε3が成り立つ。
【0058】
上式(5)、(6)が成立するように各変数を決定すると、リード線135から圧力センサ400に加わったノイズが、圧力センサチップ126、信号処理回路に加わらず、第1の導電性部材127bおよび第2の導電性部材127cからハウジング121へと伝わり、GNDへと逃すことができる。これにより、圧力センサチップ126および信号処理回路のノイズによる破壊を防止できる。
【0059】
以上のような構成によれば、信号処理回路および圧力検出素子へのノイズの影響を防止することができる。
【符号の説明】
【0060】
100、200、300、400 圧力センサ
110 流体導入部
111 継手部材
112 ベースプレート
120 圧力検出部
121 ハウジング
122 ダイヤフラム
123 保護カバー
124 ハーメチックガラス
124A 液封室
125 支柱
126 圧力センサチップ
126a ボンディングワイヤ
127 導電性部材
127a 導電性部材
127b 第1の導電性部材
127c 第2の導電性部材
128a リードピン
128b コンタクトピン
128c リード線
128d フレーム
128e 突出折り曲げ部
129 充填用パイプ
130 信号送出部
133、233、333 変換基板
135 リード線
140 封止部材
141 防水ケース
141a 防水ケース
142 絶縁ボンド
143 封止材
C 中心軸線