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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155218
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】重さ変更システム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/20 20060101AFI20251006BHJP
【FI】
B66F9/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058901
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 良平
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE02
3F333BA02
3F333BB02
3F333CA21
3F333FA16
3F333FA36
3F333FE05
3F333FE09
(57)【要約】
【課題】作業エリア間の照度差に係るフォークリフトの事故の発生を抑制する。
【解決手段】重さ変更システムは、照度センサと、照度差算出部と、変更指令部と、を備えている。重さ変更部は、フォークリフト1のペダルおよびレバーまたはそのいずれかの重さを変更するよう構成されている。照度センサは、運転者Hが受ける明るさを検出し、照度差算出部は、フォークリフト1の移動によって生じた照度差を算出する。変更指令部は、算出された照度差に応じて、重さ変更部を制御してペダルおよびレバーまたはそのいずれかの重さを変更させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフトに用いられる重さ変更システムであって、
前記フォークリフトのペダルおよびレバーまたはそのいずれかの重さを変更する重さ変更部と、
運転者が受ける光の明るさを照度として検出する照度センサと、
前記フォークリフトの移動によって生じた照度差を算出する照度差算出部と、
算出された照度差に応じて、前記重さ変更部を制御して、前記ペダルおよび前記レバーまたはそのいずれかの重さを変更させる変更指令部と、を備える、重さ変更システム。
【請求項2】
暗順応特性を記憶している記憶部と、
算出された前記照度差と、当該照度差に係る前記照度と、前記暗順応特性とに基づいて、暗順応時間を算出する順応時間算出部と、をさらに備え、
前記変更指令部は、算出された前記暗順応時間が経過すると、変更させた前記ペダルおよび前記レバーまたはそのいずれかの重さを、前記重さ変更部を制御してもとの重さに戻させる、請求項1に記載の重さ変更システム。
【請求項3】
前記運転者の年齢を取得する年齢取得部をさらに備え、
前記記憶部は、前記暗順応特性を年齢ごとに記憶しており、
前記順応時間算出部は、算出された前記照度差と、当該照度差に係る前記照度と、前記運転者の年齢に対応する前記暗順応特性とに基づいて、前記暗順応時間を算出する、請求項2に記載の重さ変更システム。
【請求項4】
明順応特性を記憶している記憶部と、
算出された前記照度差と、当該照度差に係る前記照度と、前記明順応特性とに基づいて、明順応時間を算出する順応時間算出部と、をさらに備え、
前記変更指令部は、算出された前記明順応時間が経過すると、変更させた前記ペダルおよび前記レバーまたはそのいずれかの重さを、前記重さ変更部を制御してもとの重さに戻させる、請求項1に記載の重さ変更システム。
【請求項5】
前記運転者の年齢を取得する年齢取得部をさらに備え、
前記記憶部は、前記明順応特性を年齢ごとに記憶しており、
前記順応時間算出部は、算出された前記照度差と、当該照度差に係る前記照度と、前記運転者の年齢に対応する前記明順応特性とに基づいて、前記明順応時間を算出する、請求項4に記載の重さ変更システム。
【請求項6】
前記運転者を撮影して前記運転者の顔画像を生成するカメラをさらに備え、
前記記憶部は、複数の前記運転者の顔画像と、各当該顔画像に対応する年齢とを紐づけて記憶しており、
前記年齢取得部は、前記カメラによって生成された前記顔画像に基づいて前記記憶部に記憶されている前記運転者の前記顔画像を特定するとともに、当該顔画像に対応する年齢を前記記憶部から取得する、請求項3または5に記載の重さ変更システム。
【請求項7】
前記運転者が有するIDカードを読み取る読取部をさらに備え、
前記記憶部は、複数の前記運転者と、各前記運転者に対応する年齢とを紐づけて記憶しており、
前記年齢取得部は、前記読取部によって前記IDカードを読み取ることにより前記運転者を特定するとともに、特定した前記運転者に対応する年齢を前記記憶部から取得する、請求項3または5に記載の重さ変更システム。
【請求項8】
前記ペダルおよび前記レバーまたはそのいずれかの重さが変更されることを前記運転者に予告する変更予告部をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の重さ変更システム。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の重さ変更システムを備える、フォークリフト。
【請求項10】
フォークリフトのペダルおよびレバーまたはそのいずれかの重さを変更する重さ変更部と、運転者が受ける光の明るさを照度として検出する照度センサと、コンピュータとを備えた重さ変更システムに用いられるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記フォークリフトの移動によって生じた照度差を算出することと、
算出された前記照度差に応じて、前記重さ変更部を制御して、前記ペダルおよび前記レバーまたはそのいずれかの重さを変更させることと、を実行させる、重さ変更プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトのペダルおよびレバーまたはそのいずれかの重さを変更する重さ変更システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フォークリフトの運転における安全性を考慮したフォークリフトの発明が開示されている。このフォークリフトは、車体の周囲の明るさを検出するセンサを備えている。そして、このフォークリフトは、検出された周囲の明るさが所定の明るさ以下のとき、フォークリフトの最高走行速度を通常時よりも遅くするよう構成されている。これにより、このフォークリフトは、夜間の暗い中での作業や暗い室内での作業における事故の発生を抑制する。さらに、このフォークリフトは、周囲が暗ければ暗いほどその最高走行速度をより遅くするよう構成されている。言い換えると、このフォークリフトは、周囲が明るいときには、走行速度の制限を行わないようにして作業効率の低下を防止している。
【0003】
ところで、人は、明るいところから暗いところに移動すると、目が慣れるまで暗く感じモノが見えにくい。また、人は、暗いところから明るいところに移動したときも、目が慣れるまでまぶしく感じモノが見えにくい。暗い所で徐々に目が慣れてモノが見えるようになることを暗順応といい、暗いところから明るいところに移動したとき、徐々に明るさに慣れてモノが見えるようになることを明順応という。フォークリフトの運転者は、屋内と屋外との間を移動することがある。そして、運転者は、屋内と屋外とで照度差が大きいと、暗順応、明順応に要する時間の間、モノが見えにくい状態でフォークリフト操作を行うこととなる。その場合、運転者は、モノがよく見えないためいつもどおりの操作をすれば事故を発生させる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-278599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、作業エリア間の照度差に係る事故の発生を抑制することができるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る重さ変更システムは、
フォークリフトに用いられる重さ変更システムであって、
フォークリフトのペダルおよびレバーまたはそのいずれかの重さを変更する重さ変更部と、
運転者が受ける光の明るさを照度として検出する照度センサと、
フォークリフトの移動によって生じた照度差を算出する照度差算出部と、
算出された照度差に応じて、重さ変更部を制御して、ペダルおよびレバーまたはそのいずれかの重さを変更させる変更指令部と、を備える。
【0007】
上記重さ変更システムは、好ましくは、
暗順応特性を記憶している記憶部と、
算出された照度差と、当該照度差に係る照度と、暗順応特性とに基づいて、暗順応時間を算出する順応時間算出部と、をさらに備え、
変更指令部は、算出された暗順応時間が経過すると、変更させたペダルおよびレバーまたはそのいずれかの重さを、重さ変更部を制御してもとの重さに戻させる。
【0008】
上記重さ変更システムは、好ましくは、
運転者の年齢を取得する年齢取得部をさらに備え、
記憶部は、暗順応特性を年齢ごとに記憶しており、
順応時間算出部は、算出された照度差と、当該照度差に係る照度と、運転者の年齢に対応する暗順応特性とに基づいて、暗順応時間を算出する。
【0009】
上記重さ変更システムは、好ましくは、
明順応特性を記憶している記憶部と、
算出された照度差と、当該照度差に係る照度と、明順応特性とに基づいて、明順応時間を算出する順応時間算出部と、をさらに備え、
変更指令部は、算出された明順応時間が経過すると、変更させたペダルおよびレバーまたはそのいずれかの重さを、重さ変更部を制御してもとの重さに戻させる。
【0010】
上記重さ変更システムは、好ましくは、
運転者の年齢を取得する年齢取得部をさらに備え、
記憶部は、明順応特性を年齢ごとに記憶しており、
順応時間算出部は、算出された照度差と、当該照度差に係る照度と、運転者の年齢に対応する明順応特性とに基づいて、明順応時間を算出する。
【0011】
上記重さ変更システムは、好ましくは、
運転者を撮影して運転者の顔画像を生成するカメラをさらに備え、
記憶部は、さらに、複数の運転者の顔画像と、各顔画像に対応する年齢とを紐づけて記憶しており、
年齢取得部は、カメラによって生成された顔画像に基づいて記憶部に記憶されている運転者の顔画像を特定するとともに、当該顔画像に対応する年齢を記憶部から取得する。
【0012】
上記重さ変更システムは、好ましくは、
運転者が有するIDカードを読み取る読取部をさらに備え、
記憶部は、複数の運転者と、各運転者に対応する年齢とを紐づけて記憶しており、
年齢取得部は、読取部によってIDカードを読み取ることにより運転者を特定するとともに、特定した運転者に対応する年齢を記憶部から取得する。
【0013】
上記重さ変更システムは、好ましくは、
ペダルおよびレバーまたはそのいずれかの重さが変更されることを運転者に予告する変更予告部をさらに備える。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係るフォークリフトは、
上記いずれかに記載の重さ変更システムを備える。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る重さ変更プログラムは、
フォークリフトのペダルおよびレバーまたはそのいずれかの重さを変更する重さ変更部と、運転者が受ける光の明るさを照度として検出する照度センサと、コンピュータとを備えた重さ変更システムに用いられるプログラムであって、
コンピュータに、
フォークリフトの移動によって生じた照度差を算出することと、
算出された照度差に応じて、重さ変更部を制御して、ペダルおよびレバーまたはそのいずれかの重さを変更させることと、を実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る重さ変更システムは、エリア移動時における照度差に応じてペダルおよびレバーまたはそのいずれかの重さを変更させるので、作業エリア間の照度差に係る事故の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る重さ変更システムを示す全体図である。
図2図1に示されたフォークリフトの側面図である。
図3】重さ変更システムのブロック図である。
図4】照度差と暗順応特性に基づく暗順応時間を示す図である。
図5】照度差と明順応特性に基づく明順応時間を示す図である。
図6】重さ変更システムの動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図を参照しつつ、本発明に係る重さ変更システムの一実施形態について説明する。本実施形態に係る重さ変更システムSは、ペダルおよびレバーの両方の重さを変更するよう構成されているが単なる一例であって、本発明に係る重さ変更システムは、ペダルおよびレバーのいずれか一方の重さを変更するよう構成されていてもよい。
【0019】
図1は、本実施形態に係る重さ変更システムSを示す全体図である。図1に示すように、運転者Hは、屋内と屋外をフォークリフト1で行き来しながら荷役作業を行う。運転者Hは、屋外では、太陽光による強い光のもとで作業をし、屋内では蛍光灯による比較的弱い光のもとで作業をしている。
【0020】
<フォークリフトの構成>
図2は、重さ変更システムSを備えたフォークリフト1の側面図である。図2に示すように、フォークリフト1は、バッテリ式のカウンターフォークリフトである。フォークリフト1は、複数の車輪10と、車体11と、運転席12と、ヘッドガード13と、ペダル14と、レバー15と、左右のマスト16と、左右のフォーク17と、カメラ22と、照度センサ23と、スピーカ19(図3参照)と、重さ変更部21(図3参照)と、制御部30(図3参照)と、を備えている。
【0021】
複数の車輪10は、車体11の四方に設けられている。運転席12は、車体11の上に設けられており、ヘッドガード13は、運転席12の上方に設けられている。
【0022】
ペダル14は、アクセルペダルと、ブレーキペダルと、インチングペダルとを有し、運転席12の下部に設けられている。本発明における「ペダル」は、アクセルペダルと、ブレーキペダルと、インチングペダルなどの少なくとも1つのペダルを有すればよく、これら全てのペダルを有さなくてもよい。
【0023】
レバー15は、リフトレバーと、チルトレバーとを有し、運転席12の前部に設けられている。レバー15は、フォーク17を左右にスライドさせるためのスライドレバーを有していてもよい。本発明における「レバー」は、リフトレバーと、チルトレバーなどの少なくとも1つのレバーを有すればよく、これら全てのレバーを有さなくてもよい。
【0024】
左右のフォーク17は、左右のマスト16を介して昇降可能に構成されており、運転者Hは、リフトレバーを操作してフォーク17を昇降させて荷役作業を行う。
【0025】
スピーカ19は、後で説明する重さ変更の予告を運転者Hに報知するための予告音声を発する。予告音声は、例えば、ペダル14およびレバー15の重さが重くされる場合には「ペダルおよびレバーの重さを重くします」といったものでもよく、また、ペダル14およびレバー15の重さをもとに戻す場合には「ペダルおよびレバーの重さをもとに戻します」といったものでもよい。
【0026】
重さ変更部21は、後で説明する変更指令部307(図3参照)の指令に基づいて、レバー15およびペダル14の操作する際の重さを変更する。重さ変更部21は、ペダル14の重さを変更するペダル重さ変更部と、レバー15の重さを操作するレバー重さ変更部とを有する。なお、重さ変更部21は、ペダル14およびレバー15のいずれか一方の重さを変更するよう構成されている場合には、ペダル重さ変更部およびレバー重さ変更部のいずれか一方を有することになる。
【0027】
ペダル重さ変更部は、変更指令部307の指令に基づいて、運転者Hが踏み込んだ際のペダル14の重さを変更する。ペダル重さ変更部は、例えば、油圧によって重さを調整できる装置、ばねによって重さを調整できる装置によって構成されている。
【0028】
また、例えば、ペダル重さ変更部は、ペダル14の踏力をアシストするアシスト装置としてもよい。この場合、ペダル重さ変更部は、変更指令部307の指令に基づいて、アシスト力を調整し、実質的に運転者Hが踏み込んだ際のペダル14の重さを変更してもよい。
【0029】
または、ペダル重さ変更部は、例えば、変更指令部307の指令に基づいて、ペダル14の踏力量に応答する各装置の動力または制止力の大きさを変更するよう構成されてもよい。これにより、ペダル重さ変更部は、実質的にペダル14の重さを変更する。
【0030】
レバー重さ変更部は、例えば、油圧によってレバー15の重さを調整できる装置、または、ばねによってレバー15の重さを調整できる装置によって構成されている。
【0031】
また、例えば、レバー重さ変更部は、レバー15の重さに対する操作をアシストするアシスト装置としてもよい。この場合、レバー重さ変更部は、変更指令部307の指令に基づいて、アシスト力を調整し、実質的に運転者Hが操作する際のレバー15の重さを変更してもよい。
【0032】
または、レバー重さ変更部は、例えば、変更指令部307の指令に基づいて、レバー15の操作量に応答する各装置の動力の大きさを変更するよう構成されてもよい。これにより、レバー重さ変更部は、実質的にレバー15の重さを変更する。
【0033】
カメラ22は、ヘッドガード13に配置されており、運転者Hを撮影して顔画像を生成する。生成された顔画像は、制御部30に送信される。
【0034】
照度センサ23は、運転者Hが受ける明るさを検出する。本実施形態では、照度センサ23は、ヘッドガード13の上面に配置されており、フォークリフト1上面の照度を検出することで、運転者Hが受ける明るさを検出する。ただし、これは単なる一例であって、照度センサ23の位置は特に限定されない。例えば、照度センサ23は、運転者Hの視線の方向に係る照度を検出する位置に配置されていてもよい。この場合、照度センサ23は、少なくとも前後方向の照度を検出することができるよう、前後に少なくとも1つずつ設けられていてもよい。検出された照度は、制御部30に送信される。
【0035】
制御部30は、車体11内に配置されたコンピュータによって構成されており、演算装置と、記憶装置と、メモリと、を有する。記憶装置には、コンピュータを後で説明する年齢取得部302、照度差算出部303、順応時間算出部304、重さ決定部305、変更予告部306および変更指令部307として実行させる重さ変更プログラムが記憶されている。
【0036】
<重さ変更システムの機能的構成>
次に、重さ変更システムSの機能的構成について説明する。図3に示すように、制御部30は、記憶部301と、年齢取得部302と、照度差算出部303と、順応時間算出部304と、重さ決定部305と、変更予告部306と、変更指令部307と、を有する。
【0037】
記憶部301は、運転者Hの顔画像と、その顔画像に対応する年齢とを運転者Hと紐づけて記憶している。また、記憶部301は、年齢ごとの暗順応特性および明順応特性を記憶している。暗順応特性、明順応特性は、暗い環境、明るい環境における目の適応能力やその特性のことであって、目が明るさ(照度)の変化に適応する速度やその適応がそのときの明るさ(照度)によってどの程度の時間を要するかの情報を含んでいる。
【0038】
暗順応特性、明順応特性は、加齢とともに劣化することが知られている。人は、加齢によって、眼の水晶体の褐色化、老人性縮瞳、水晶体の濁りが発生する。そのため、人は、加齢によって暗順応時間、明順応時間が長くなっていく。本実施形態では、その年齢ごとの暗順応特性および明順応特性を記憶している。
【0039】
図4および図5は、横軸を時間とし縦軸を照度[lx]とするグラフである。図4は、屋外から屋内に移動したときの暗順応曲線を示し、図5は、屋内から屋外に移動したときの暗順応曲線を示している。暗順応曲線は、明るいところから暗いところに移動したときに眼がその暗さに適応する過程を表し、明順応曲線は、暗いところから明るいところに移動したときに眼がその明るさに適応する過程を表している。図4における暗順応曲線、図5における明順応曲線は、運転者Hの年齢に対応する暗順応特性、明順応特性にそれぞれ基づいている。
【0040】
年齢取得部302は、運転者Hの年齢を取得するよう構成されている。本実施形態では、年齢取得部302は、カメラ22によって生成された顔画像に基づいて記憶部301に記憶されている運転者Hの顔画像を特定するとともに、その顔画像に対応する年齢を記憶部301から取得する。これにより、年齢取得部302は、運転者Hの年齢を取得する。なお、年齢取得部302による年齢の取得方法は、これに限定されず、例えば、年齢取得部302は、顔画像を入力されると年齢を出力する学習済みモデルを有してもよい。この場合の学習済みモデルは、例えば、ディープニューラルネットワークによって大量の顔画像とその顔画像に対応する年齢とを教師データとして予め教師学習し、顔画像を入力されるとその顔画像に対応する年齢を出力するよう構成される。または、年齢取得部302は、入力手段を介して運転者Hによって入力された年齢を受けて運転者Hの年齢を取得してもよい。
【0041】
照度差算出部303は、照度センサ23によって検出された照度を参照することにより、フォークリフト1の移動によって生じた照度差を算出する。これにより、照度算出部は、フォークリフト1が屋内から屋外に移動したり、屋外から屋内に移動したときの照度差を算出する。
【0042】
順応時間算出部304は、照度差算出部303によって算出された照度差と、当該照度差に係る照度と、運転者Hの年齢に対応する暗順応特性とに基づいて、暗順応時間を算出する。また、順応時間算出部304は、照度差算出部303によって算出された照度差と、当該照度差に係る照度と、運転者Hの年齢に対応する明順応特性とに基づいて、暗順応時間を算出する。
【0043】
図4図5を参照して、順応時間算出部304による順応時間の算出をもう少し具体的に説明する。図4に示すように、屋外から屋内に移動すると、それぞれの明るさ(照度)の違いによる照度差が生じる。このときの2つの照度と、年齢ごとの暗順応特性に係る暗順応曲線を参照すれば、屋外照度から屋内照度への照度変化に眼が順応するまでの暗順応時間を算出可能なことが理解できよう。図4から理解されるように、照度差が大きければ大きいほど暗順応時間が長くなる。そして、運転者Hは、この暗順応時間が経過するまで屋内を暗いと感じ続けることになる。
【0044】
また、図5に示すように、屋内から屋外に移動すると、それぞれの明るさ(照度)の違いによる照度差が生じる。このときの2つの照度と、年齢ごとの明順応特性に係る明順応曲線を参照すれば、屋内照度から屋外照度への照度変化に眼が順応するまでの明順応時間を算出可能なことが理解できよう。図5から理解されるように、照度差が大きければ大きいほど明順応時間も長くなる。そして、運転者Hは、この明順応時間が経過するまで屋外を眩しいと感じ続けることになる。なお、人は、明順応の方が暗順応よりも優れているため、同じ照度差であっても、暗順応時間よりも明順応時間の方が短い。
【0045】
重さ決定部305は、順応時間算出部304によって算出された順応時間が所定の時間以上のとき、ペダル14およびレバー15の重さを変更するよう決定する。すなわち、重さ決定部305は、作業エリア間の照度差が大きくて順応時間が長くなるとき、ペダル14およびレバー15の重さを変更するよう決定する。順応時間の長さは、算出される照度差の大きさに比例するので、重さ決定部305は、照度差に応じてペダル14およびレバー15の重さを変更するか否かを決定するともいえる。
【0046】
所定の時間は、例えば10秒~1分の間のいずれの時間でもよく、特には限定されない。所定の時間が例えば30秒で設定されている場合、重さ決定部305は、算出された順応時間が30秒以上のときには、ペダル14およびレバー15の操作時の重さを通常よりも重くするよう決定する。なお、この所定の時間は、単なる一例であって、本発明の課題が解決できる範囲で適宜設定されてもよい。また、重さ決定部305は、算出された順応時間が30秒未満のときには、ペダル14およびレバー15の重さを変更しないよう決定することにより、運転者Hがすぐに慣れるような照度差にもかかわらず、ペダル14およびレバー15の重さが重くされることを防止することができる。
【0047】
変更予告部306は、重さ決定部305によってペダル14およびレバー15の重さの変更が決定されると、ペダル14およびレバー15の重さの変更を運転者Hにスピーカ19による音声によって予告する。また、変更予告部306は、ペダル14およびレバー15の重さが変更され、明順応時間または暗順応時間が経過すると、ペダル14およびレバー15の重さがもとの重さに戻されることを予告する。
【0048】
変更指令部307は、ペダル14およびレバー15の重さの変更が決定されると、重さ変更部21を制御して、ペダル14およびレバー15の重さを重くする。これにより、重さ変更システムSは、作業エリア間の照度差が大きいときには、ペダル14およびレバー15の重さを重くすることで大きな操作ミスを防止し、それによって作業エリア間の照度差に係る事故の発生を抑制することができる。
【0049】
また、変更指令部307は、算出された暗順応時間または明順応時間が経過すると、変更させたペダル14およびレバー15の重さを、重さ変更部21を制御してもとの重さに戻させる。これにより、重さ変更システムSは、運転者Hの眼が作業エリアの明るさに慣れると、ペダル14およびレバー15の重さをもとに戻し、ペダル14の操作やレバー15の操作を素早く行わせることができる。
【0050】
<重さ変更システムのフロー>
次に、図6のフロー図を参照しつつ、本実施形態に係る重さ変更システムSの動作をあらためて説明する。
【0051】
(1)まず、重さ変更システムSは、運転者Hを撮影して顔画像を生成し、この顔画像から運転者Hを特定し(図6のS1参照)、特定した運転者Hの年齢を取得する(図6のS2参照)。
【0052】
(2)次いで、重さ変更システムSは、照度を検出するとともに、フォークリフト1の移動によって生じる作業エリア間の照度差を算出する(図6のS3参照)。
【0053】
(3)次いで、重さ変更システムSは、算出された照度差と、当該照度差に係る照度と、運転者Hの年齢に対応する暗順応特性とに基づいて、暗順応時間または明順応時間(まとめて順応時間)を算出する(図6のS4参照)。
【0054】
(4)次いで、重さ変更システムSは、暗順応時間または明順応時間が所定の時間以上のとき、ペダル14およびレバー15の重さを変更するよう決定し(図6のS5のYes)、運転者Hにペダル14およびレバー15の重さの変更を予告する(図6のS6参照)。
【0055】
(5)次いで、重さ変更システムSは、変更指令部307によってペダル14およびレバー15の重さを変更する(図6のS7参照)。これにより、重さ変更システムSは、運転者Hが暗いと感じたり眩しいと感じたりしているときに、大きな操作ミスを防止することができる。
【0056】
(6)次いで、重さ変更システムSは、順応時間が経過すると(図6のS8のYes)、運転者Hにペダル14およびレバー15の重さの変更を予告する(図6のS9参照)とともに、ペダル14およびレバー15の重さをもとの重さに戻す(図6のS10参照)。
【0057】
このように、重さ変更システムSは、運転者Hの操作に影響を与える照度差に基づいてペダル14およびレバー15の重さを変更し、その結果、運転者Hが暗い、眩しいと感じるときには大きな操作ミスを防止し、運転者Hの眼が明るさに順応すると、ペダル14およびレバー15操作を素早く行わせることができる。
【0058】
以上、本発明に係る重さ変更システムの一実施形態について説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明に係る重さ変更システムは、例えば、次の変形例ごとに実施されたり各変形例を組み合わせて実施されてもよい。
【0059】
<変形例>
・フォークリフト1は、リーチ式フォークリフトであってもよい。この場合、ペダル14には、プレゼンスペダルが含まれてもよい。また、フォークリフト1は、エンジン式のフォークリフトであってもよい。この場合、ペダル14には、クラッチペダルが含まれてもよい。さらに、フォークリフト1がリーチ式フォークリフトの場合、レバー15には、アクセルレバーが含まれてもよい。また、上述したように、本発明における「ペダル」には、上記ペダルのうちの少なくとも1つが含まれ、「レバー」には、上記レバーのうちの少なくとも1つが含まれる。そして、本発明に係る重さ変更システムは、上記レバーおよびペダルのうちの少なくとも1つの重さを変更する。
【0060】
・制御部30のうちのいずれかの構成は、例えば、クラウド上に設けられたサーバコンピュータによって構成されてもよい。この場合、重さ変更システムSは、このサーバコンピュータと互いに通信することにより、ペダル14およびレバー15またはそのいずれかの重さを変更する。
【0061】
・フォークリフト1は、スピーカ19の代わりにモニタを備え、変更予告部306は、このモニタによってレバー15およびペダル14またはそのいずれかの重さを変更することを予告してもよい。
【0062】
・年齢取得部302による運転者Hの特定方法は、特に限定されない。例えば、年齢取得部302は、各運転者Hが有するIDカード等を読み取ることにより、各運転者Hを特定してもよい。この場合、重さ変更システムSは、IDカード等を読み取る読取部を備える。
【符号の説明】
【0063】
S 重さ変更システム
H 運転者
1 フォークリフト
10 車輪
11 車体
12 運転席
13 ヘッドガード
14 ペダル
15 レバー
16 マスト
17 フォーク
19 スピーカ
21 重さ変更部
22 カメラ
23 照度センサ
30 制御部
301 記憶部
302 年齢取得部
303 照度差算出部
304 順応時間算出部
305 重さ決定部
306 変更予告部
307 変更指令部
図1
図2
図3
図4
図5
図6