(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155229
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】化粧用塗布具
(51)【国際特許分類】
A45D 33/34 20060101AFI20251006BHJP
B32B 5/32 20060101ALI20251006BHJP
B05C 17/00 20060101ALI20251006BHJP
B05C 1/02 20060101ALI20251006BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20251006BHJP
【FI】
A45D33/34 G
B32B5/32
B05C17/00
B05C1/02 101
A45D34/04 535C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058918
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 純子
【テーマコード(参考)】
4F040
4F042
4F100
【Fターム(参考)】
4F040AB20
4F040BA09
4F040CA01
4F040CA02
4F042FA26
4F042FA33
4F042FA48
4F100AK04A
4F100AK27B
4F100AK29B
4F100AK51C
4F100AL01B
4F100AN02B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB00C
4F100DJ02A
4F100DJ02B
4F100EH46
4F100GB90
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】化粧料が染み込み難く、広く均一に塗布し易い化粧用塗布具を提供する。
【解決手段】化粧用塗布具10は、独立気泡構造の第1発泡層20と、連続気泡構造の第2発泡層30と、がこの順に積層されてなる。化粧用塗布具10は、第1発泡層20の一面が塗布面21とされている。塗布面21には、独立気泡構造のセル断面が露出している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立気泡構造の第1発泡層と、
連続気泡構造の第2発泡層と、
がこの順に積層されてなり、
前記第1発泡層の一面が塗布面とされ、
前記塗布面には、前記独立気泡構造のセル断面が露出している、化粧用塗布具。
【請求項2】
前記第1発泡層の厚さが、0.3mm以上3.0mm以下である、
請求項1に記載の化粧用塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化粧用塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される化粧料塗布具は、弾性体の基体表面に、ポリウレタンフィルムであるシートが張り合わされて化粧用塗布部が構成されている。
【0003】
特許文献2に開示される化粧用塗布具は、連続気泡スポンジをスライスしてなるスライスシートの一面が塗布面を形成しており、スライスシートの他面の凹部に密着する被膜層が設けられている。化粧用塗布具において、スライスシートの被膜層が形成された側の面が基材に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/133344号
【特許文献2】特開2011-45676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の化粧料塗布具では、ポリウレタンフィルムのシートと肌との間で化粧料が滑ってしまい、化粧料を肌に均一に塗布することが難しい。
特許文献2の化粧用塗布具では、連続気泡スポンジの気泡に化粧料が染み込み易く、化粧料を肌に広く均一に塗布することが難しい。
本開示は、化粧料が染み込み難く、広く均一に塗布し易い化粧用塗布具を得ることを目的とする。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕独立気泡構造の第1発泡層と、
連続気泡構造の第2発泡層と、
がこの順に積層されてなり、
前記第1発泡層の一面が塗布面とされ、
前記塗布面には、前記独立気泡構造のセル断面が露出している、化粧用塗布具。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、化粧料が染み込み難く、広く均一に塗布し易い化粧用塗布具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る化粧用塗布具の断面を概略的に示す模式図である。
【
図2】独立気泡構造のポリエチレン発泡体の断面のマイクロスコープ像である。
【
図3】
図2から10個のセルの径を測定した結果を示す図である。
【
図4】独立気泡構造のポリプロピレン発泡体の断面のマイクロスコープ像である。
【
図5】
図4から10個のセルの径を測定した結果を示す図である。
【
図6】連続気泡構造のアクリロニトリルブタジエンゴム発泡体の断面のマイクロスコープ像である。
【
図7】
図6から10個のセルの径を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕前記第1発泡層の厚さが、0.3mm以上3.0mm以下である、
〔1〕に記載の化粧用塗布具。
【0010】
以下、本開示を詳しく説明する。本明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0011】
1.化粧用塗布具
図1に示す化粧用塗布具10は、本開示の化粧用塗布具の一例である。化粧用塗布具10は、独立気泡構造の第1発泡層20と、連続気泡構造の第2発泡層30と、がこの順に積層されてなる。化粧用塗布具10において、第1発泡層20の一面(第2発泡層30とは反対側の面)が塗布面21とされている。塗布面21には、独立気泡構造のセル断面が露出している。
【0012】
第1発泡層20と第2発泡層30は、例えば接着剤を用いて貼り合わされている。
【0013】
1-1.第1発泡層20
第1発泡層20は、独立気泡構造の発泡体である。第1発泡層20は、合成樹脂発泡体、及びゴム発泡体から選ばれる1種以上が好ましく、合成樹脂発泡体がより好ましい。合成樹脂発泡体は、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリスチレン発泡体、及びシリコーン発泡体から選ばれる1種以上が好ましく、ポリエチレン発泡体、及びポリプロピレン発泡体がより好ましい。ゴム発泡体は、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)発泡体、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)発泡体、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)発泡体から選ばれる1種以上が好ましい。
【0014】
第1発泡層20の塗布面21には、独立気泡構造のセルが切断されたセル断面が露出している。第1発泡層20の塗布面21は、例えば、独立気泡構造の発泡体をスライスしてなるスライスシートの一面である。なお、塗布面21のセル断面は、スライスすることなく露出していてもよい。
【0015】
1-1-1.厚さ
第1発泡層20の厚さは、セルの貫通を抑制して化粧料の染み込みを抑制する観点から、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、0.8mm以上が更に好ましい。第1発泡層20の厚さは、独立気泡構造に基づく感触を劣勢として柔らかく塗布し易くする観点から、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2.3mm以下が更に好ましい。これらの観点から、第1発泡層20の厚さは、0.3mm以上3.0mm以下が好ましく、0.5mm以上2.5mm以下がより好ましく、0.8mm以上2.3mm以下が更に好ましい。
【0016】
第1発泡層20にポリエチレン発泡体を用いた場合、第1発泡層20の厚さは、1.0mm以上3.0mm以下が好ましく、1.5mm以上2.5mm以下がより好ましく、1.8mm以上2.3mm以下が更に好ましい。
【0017】
第1発泡層20にポリプロピレン発泡体を用いた場合、第1発泡層20の厚さは、0.3mm以上2.0mm以下が好ましく、0.5mm以上1.5mm以下がより好ましく、0.8mm以上1.0mm以下が更に好ましい。
【0018】
1-1-2.見かけ密度
第1発泡層20にポリエチレン発泡体を用いた場合、第1発泡層20の見かけ密度(JIS K6767:1999)は、0.03g/cm3以上0.20g/cm3以下が好ましく、0.05g/cm3以上0.15g/cm3以下がより好ましく、0.08g/cm3以上0.13g/cm3以下が更に好ましい。
【0019】
第1発泡層20にポリプロピレン発泡体を用いた場合、第1発泡層20の見かけ密度(JIS K7222:2005)は、0.01g/cm3以上0.15g/cm3以下が好ましく、0.03g/cm3以上0.10g/cm3以下がより好ましく、0.05g/cm3以上0.08g/cm3以下が更に好ましい。
【0020】
1-1-3.50%圧縮応力
第1発泡層20にポリエチレン発泡体を用いたとき、第1発泡層20の圧縮応力は、JIS K6767:1999における「圧縮応力-ひずみ」の試験方法(50%圧縮時、ISO 3386-1に対応)に準じて測定した場合に、200kPa以下が好ましく、150kPa以下がより好ましく、130kPa以下が更に好ましい。第1発泡層20の圧縮応力の下限は特に限定されないが、通常、0.1kPa以上である。
【0021】
第1発泡層20にポリプロピレン発泡体を用いたとき、第1発泡層20の圧縮応力は、JIS K6400-2:2012における「圧縮応力-ひずみ」の試験方法(50%圧縮時、ISO 3386-1に対応)に準じて測定した場合に、50kPa以下が好ましく、40kPa以下がより好ましく、35kPa以下が更に好ましい。第1発泡層20の圧縮応力の下限は特に限定されないが、通常、0.1kPa以上である。
【0022】
1-1-4.引張強度
第1発泡層20にポリエチレン発泡体を用いたとき、第1発泡層20の引張強度(JIS K6767:1999)は、300kPa以上が好ましく、500kPa以上がより好ましく、650kPa以上が更に好ましい。第1発泡層20の引張強度の上限値は特に限定されず、例えば、5.0MPa以下である。
【0023】
第1発泡層20にポリプロピレン発泡体を用いたとき、第1発泡層20の垂直方向(TD)の引張強度(JIS K6400-5:2012)は、500kPa以上が好ましく、700kPa以上がより好ましく、750kPa以上が更に好ましい。第1発泡層20の垂直方向(TD)の引張強度の上限値は特に限定されず、例えば、5.0MPa以下である。第1発泡層20の流れ方向(MD)の引張強度(JIS K6400-5:2012)は、1100kPa以上が好ましく、1200kPa以上がより好ましく、1250kPa以上が更に好ましい。第1発泡層20の流れ方向(MD)の引張強度の上限値は特に限定されず、例えば、5.0MPa以下である。
【0024】
1-1-5.伸び
第1発泡層20にポリエチレン発泡体を用いたとき、第1発泡層20の伸び(JIS K6767:1999)は、150%以上250%以下であることが好ましく、180%以上220%以下であることがより好ましく、190%以上210%以下であることが更に好ましい。
【0025】
第1発泡層20にポリプロピレン発泡体を用いたとき、第1発泡層20の垂直方向(TD)の伸び(JISK6400-5:2012)は、50%以上110%以下であることが好ましく、70%以上90%以下であることがより好ましく、75%以上85%以下であることが更に好ましい。第1発泡層20の流れ方向(MD)の伸び(JISK6400-5:2012)は、30%以上80%以下であることが好ましく、50%以上70%以下であることがより好ましく、55%以上65%以下であることが更に好ましい。
【0026】
1-1-6.セル径
第1発泡層20にポリエチレン発泡体を用いたとき、第1発泡層20の平均セル径は、30μm以上500μm以下が好ましく、50μm以上400μm以下がより好ましく、80μm以上350μm以下が更に好ましい。第1発泡層20の平均セル径は、第1発泡層20の断面をデジタルマイクロスコープVHX-2000(株式会社キーエンス製)により倍率50倍で観察して2mm×2mmの領域から抽出した10個のセルの各径を測定し、10個のセルの径の平均を平均セル径として導出できる。
【0027】
第1発泡層20にポリプロピレン発泡体を用いたとき、第1発泡層20の平均セル径は、30μm以上500μm以下が好ましく、50μm以上400μm以下がより好ましく、80μm以上350μm以下が更に好ましい。第1発泡層20の平均セル径は、第1発泡層20の断面をデジタルマイクロスコープVHX-2000(株式会社キーエンス製)により倍率50倍で観察して2mm×2mmの領域から抽出した10個のセルの各径を測定し、10個のセルの径の平均を平均セル径として導出できる。
【0028】
1-2.第2発泡層30
第2発泡層30は、連続気泡構造の発泡体である。第2発泡層30は、ゴム発泡体、及び合成樹脂発泡体から選ばれる1種以上が好ましく、ゴム発泡体がより好ましい。ゴム発泡体は、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)発泡体、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)発泡体、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)発泡体から選ばれる1種以上が好ましく、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)発泡体がより好ましい。合成樹脂発泡体は、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリスチレン発泡体、及びシリコーン発泡体から選ばれる1種以上が好ましい。
【0029】
1-2-1.厚さ
第2発泡層30の厚さは、1mm以上15mm以下が好ましく、3mm以上10mm以下がより好ましく、5mm以上8mm以下が更に好ましい。
【0030】
1-2-2.見かけ密度
第2発泡層30の見かけ密度(JIS K7222:2005)は、0.10g/cm3以上0.25g/cm3以下が好ましく、0.13g/cm3以上0.20g/cm3以下がより好ましく、0.15g/cm3以上0.18g/cm3以下が更に好ましい。
【0031】
1-2-3.硬度
第2発泡層30の硬度(アスカーF硬度)は、40度以上85度以下が好ましく、50度以上65度以下がより好ましく、55度以上70度以下が更に好ましい。尚、アスカーF硬度は、アスカーゴム硬度計F型により求められた硬度を言う。
【0032】
1-2-4.50%圧縮応力
第2発泡層30の圧縮応力は、JIS K6400-2:2012における「圧縮応力-ひずみ」の試験方法(50%圧縮時、ISO 3386-1に対応)に準じて測定した場合に、100kPa以下が好ましく、90kPa以下がより好ましく、85kPa以下が更に好ましい。第2発泡層30の圧縮応力の下限は特に限定されないが、通常、0.1kPa以上である。
【0033】
1-2-5.引張強度
第2発泡層30の引張強度(JIS K6400-5:2012)は、80kPa以上が好ましく、100kPa以上がより好ましく、150kPa以上が更に好ましい。第2発泡層30の引張強度の上限値は特に限定されず、例えば、5.0MPa以下である。
【0034】
1-2-6.伸び
第2発泡層30の伸び(JISK6400-5:2012)は、250%以上600%以下であることが好ましく、350%以上500%以下であることがより好ましく、380%以上420%以下であることが更に好ましい。
【0035】
1-2-7.セル径
第2発泡層30の平均セル径は、100μm以上600μm以下が好ましく、120μm以上500μm以下がより好ましく、150μm以上450μm以下が更に好ましい。第2発泡層30の平均セル径は、第2発泡層30の断面をデジタルマイクロスコープVHX-2000(株式会社キーエンス製)により倍率50倍で観察して2mm×2mmの領域から抽出した10個のセルの各径を測定し、10個のセルの径の平均を平均セル径として導出できる。
【0036】
1-3.接着剤
接着剤は、有機溶媒を含まないことが好ましい。接着剤は、ホットメルト接着剤が好ましい。ホットメルト接着剤は、湿気硬化型ホットメルト接着剤が好ましい。湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ウレタンプレポリマーを主成分とするウレタン系の湿気硬化型ホットメルト接着剤が好ましい。湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ポリオールとイソシアネートとの反応により得られ、末端にイソシアネート基(NCO)を有するものである。湿気硬化型ホットメルト接着剤には、必要に応じて粘着付与剤、ワックス、結晶核剤、酸化防止剤等の添加剤が含まれる。また、接着剤は、ウレタン系の湿気硬化型ホットメルト接着剤に限定されず、シリコーンゴム系やアクリル系の湿気硬化型ホットメルト接着剤や、2液性の反応型接着剤を採用するようにしてもよい。
【0037】
1-4.化粧用塗布具10の製造方法
化粧用塗布具10の製造方法について説明する。まず、第1発泡層20及び第2発泡層30を用意する。第2発泡層30の一側の表面に、加熱により溶融した接着剤を塗布する。溶融状態の接着剤を挟んで、第2発泡層30の一側の表面に第1発泡層20を積層する。積層された第1発泡層20及び第2発泡層30を圧縮し、接着剤を硬化させて第1発泡層20と第2発泡層30とを接着させる。接着剤が湿気硬化型ホットメルト接着剤である場合、例えば自然冷却と空気中等の湿気によって硬化が進行し、第1発泡層20と第2発泡層30との接着が強固なものとなる。第1発泡層20と第2発泡層30とが貼り合わされた積層体(原反)に対して、打ち抜き、研磨等を行って所定の形状に加工して、化粧用塗布具10を製造する。
【0038】
1-5.化粧用塗布具10の適用例
化粧用塗布具10は、例えば、パフ、スポンジ、チップ等である。使用される化粧料は、粉末状、液状、クリーム状等、形状は特に限定されない。化粧料は、例えば、リキッドファンデーション等のメイクアップ用化粧料である。
【0039】
1-6.化粧用塗布具10の効果
化粧用塗布具10では、塗布面21に露出する凹み(切断されたセル)に化粧料が入り込み、指等で押すことによる変形で肌に転写されるため、肌へ適量を広く塗り広げることができる。化粧用塗布具10では、塗布面21に独立気泡構造のセル断面が露出しているため、連続気泡構造のセル断面に比べて、化粧料が染み込み難く、広く均一に塗布し易く、化粧の仕上がりを良好にできる。また、化粧用塗布具10では、化粧料が染み込み難いため、化粧料の消費量を抑制できる。また、化粧用塗布具10では、化粧料が染み込み難いため、洗浄が簡易にでき、清潔に使用できる。
【0040】
第1発泡層20は、独立気泡構造で気泡がつながっていないために伸びが比較的小さく肌への追従性が低い。しかしながら、第1発泡層20を伸びが良く柔らかい連続気泡構造の第2発泡層30でバックアップすることにより、化粧用塗布具10の肌当たりを柔らかくして肌への追従性を上げることができる。
【実施例0041】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0042】
1.化粧用塗布具の用意
実施例1,2、及び比較例1-3の化粧用塗布具を用意した。
実施例1,2の化粧用塗布具は、独立気泡構造の第1発泡層と、連続気泡構造の第2発泡層と、がこの順に積層されてなる。実施例1,2の化粧用塗布具において、塗布面(第1発泡層における第2発泡層とは反対側の面)には、独立気泡構造のセル断面が露出している。
【0043】
実施例1の化粧用塗布具では、第1発泡層の材質がポリエチレン(表1の製品名「P・Eライト」、品番「AR-102E」のポリエチレン)であり、第2発泡層の材質がアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)(表1の製品名「NBR」、品番「ナチュラルホイップ」のアクリロニトリルブタジエンゴム)であった。第1発泡層の厚さは、2mmであった。第2発泡層の厚さは、6mmであった。
【0044】
実施例2の化粧用塗布具では、第1発泡層の材質がポリプロピレン(表1の製品名「FOLEC」、品番「LZ-2000」のポリプロピレン)であり、第2発泡層の材質がアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)(表1の製品名「NBR」、品番「ナチュラルホイップ」のアクリロニトリルブタジエンゴム)であった。第1発泡層の厚さは、0.9mmであった。第2発泡層の厚さは、7mmであった。
【0045】
実施例1,2の化粧用塗布具では、第1発泡層と第2発泡層との接着に用いた接着剤が、製品名「ハイボン」、品番「YR450-1」、レゾナック社製のウレタンプレポリマーであった。
【0046】
比較例1の化粧用塗布具は、連続気泡構造の第3発泡層と、連続気泡構造の第4発泡層と、がこの順に積層されてなる。比較例1の化粧用塗布具において、塗布面(第3発泡層における第4発泡層とは反対側の面)には、連続気泡構造のセル断面が露出している。第3発泡層の材質がポリウレタンであり、第4発泡層の材質がアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)であった。第3発泡層の厚さは、2mmであった。第4発泡層の厚さは、6mmであった。
【0047】
比較例2の化粧用塗布具は、連続気泡構造の発泡層から構成されている。この発泡層の塗布面には、連続気泡構造のセル断面が露出している。この発泡層の材質がアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)(表1の製品名「NBR」、品番「ナチュラルホイップ」のアクリロニトリルブタジエンゴム)であった。発泡層の厚さは、8mmであった。
【0048】
比較例3の化粧用塗布具は、連続気泡構造の第5発泡層と、連続気泡構造の第6発泡層と、がこの順に積層されてなる。比較例3の化粧用塗布具において、塗布面(第5発泡層における第6発泡層とは反対側の面)には、連続気泡構造のセル断面が露出している。第5発泡層の材質がポリエチレン(表1の製品名「MAPS」、品番「ST15-50」のポリエチレン)であり、第6発泡層の材質がアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)(表1の製品名「NBR」、品番「ナチュラルホイップ」のアクリロニトリルブタジエンゴム)であった。第5発泡層の厚さは、2mmであった。第6発泡層の厚さは、6mmであった。
【0049】
表1に、実施例1,2、及び比較例1-3の化粧用塗布具における構成材料の物性を示す。
【0050】
【0051】
2.セル径の測定
表1のポリエチレン(製品名「P・Eライト」、品番「AR-102E」)、ポリプロピレン(製品名「FOLEC」、品番「LZ-2000」)、アクリロニトリルブタジエンゴム(製品名「NBR」、品番「ナチュラルホイップ」)の各発泡体について、平均セル径を測定した。各発泡体の断面をマイクロスコープ(機種名「デジタルマイクロスコープVHX-2000」)により倍率50倍で観察して2mm×2mmの領域から抽出した10個のセルの各径を測定し、10個のセルの径の平均を平均セル径として導出した。
図2は、ポリエチレン(製品名「P・Eライト」、品番「AR-102E」)の発泡体の断面のマイクロスコープ像である。
図3は、
図2から10個のセルの径を測定した結果を示す図である。
図4は、ポリプロピレン(製品名「FOLEC」、品番「LZ-2000」)の発泡体の断面のマイクロスコープ像である。
図5は、
図4から10個のセルの径を測定した結果を示す図である。
図6は、アクリロニトリルブタジエンゴム(製品名「NBR」、品番「ナチュラルホイップ」)の発泡体の断面のマイクロスコープ像である。
図7は、
図6から10個のセルの径を測定した結果を示す図である。
【0052】
ポリエチレン(製品名「P・Eライト」、品番「AR-102E」)の発泡体の平均セル径は、260μmであった。ポリプロピレン(製品名「FOLEC」、品番「LZ-2000」)の発泡体の平均セル径は、210μmであった。アクリロニトリルブタジエンゴム(製品名「NBR」、品番「ナチュラルホイップ」)の発泡体の平均セル径は、270μmであった。
【0053】
3.転写試験
実施例1,2、及び比較例1-3の化粧用塗布具の塗布面に対して、化粧料としてリキッドファンデーション(製品名「マキアージュ ドラマティックジェリーリキッド」、品番「オークル20」)を、滴下により約1g塗布した。その後、肌に見立てた試験紙(ポリウレタン製合成皮革)に、化粧用塗布具の塗布面を600mm/minの速度で75%まで圧縮と解放を5回繰り返し化粧料を試験紙に転写させた。転写は、化粧料の追加塗布を行うことなく、試験紙の異なる5か所の位置に行った。
【0054】
図5に、実施例1,2、及び比較例1-3の化粧用塗布具を用いた各転写結果を示す。なお、
図5の紙面上側には、化粧料が塗布された状態の各化粧用塗布具の写真が示されている。
図5では、各実施例及び各比較例について紙面下側から順に5か所に転写した後の試験紙の状態を示している。
【0055】
4.評価
図5に示すように、実施例1,2では、5か所の転写の全てにおいて、化粧料を広く均一に塗布できている。一方で、比較例1-3では、5か所の転写の全てにおいて、化粧料の塗布範囲が実施例1,2に比べて大幅に小さくなっている。この結果は、実施例1,2の化粧用塗布具では、塗布面に独立気泡構造のセル断面が露出しているため、塗布面に連続気泡構造のセル断面が露出する比較例1-3に比べて、化粧料が染み込み難く、広く均一に塗布し易くなったためと考えられる。
【0056】
なお、表1のポリプロピレン(製品名「FOLEC」、品番「OPN」)のみを発泡層として用いた化粧用塗布具について、上記転写試験と同様の試験を行った。この結果では、上記比較例1-3と同様の転写結果が得られ、化粧料が染み込み易く、広く均一に塗布し難かったことが分かった。
【0057】
図5に示すように、実施例2では、実施例1に比べて、5か所の転写で化粧料の塗布量の変化が小さかった。また、実施例2では、実施例1よりも化粧料が染み込み易かった。これにより、実施例2では、化粧料の適度な染み込みによって、転写の回数が増えても広く均一に塗布し易かったと考えられる。
【0058】
5.実施例の効果
以上の実施例の化粧用塗布具によれば、塗布面に独立気泡構造のセル断面が露出しているため、連続気泡構造のセル断面に比べて、化粧料が染み込み難く、広く均一に塗布できた。
【0059】
実施例の化粧用塗布具によれば、第1発泡層が独立気泡構造で気泡がつながっていないために伸びが比較的小さく肌への追従性が低い。しかしながら、第1発泡層を伸びが良く柔らかい連続気泡構造の第2発泡層でバックアップすることにより、化粧用塗布具の肌当たりを柔らかくして肌への追従性を上げることができた。
【0060】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。