(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155231
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】塗料用開閉弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/08 20060101AFI20251006BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20251006BHJP
F16K 31/122 20060101ALI20251006BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20251006BHJP
【FI】
F16K31/08
F16K31/06 385Z
F16K31/122
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058928
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 昭広
【テーマコード(参考)】
3H056
3H106
4F042
【Fターム(参考)】
3H056AA02
3H056BB47
3H056CA01
3H056CB03
3H056CD04
3H056CE01
3H056DD08
3H056DD09
3H056GG01
3H106DA07
3H106DA13
3H106DA29
3H106DC02
3H106DC17
3H106EE48
3H106GB01
3H106KK01
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042CB03
4F042CB08
4F042CB18
(57)【要約】
【課題】塗料に含まれる顔料に起因する開閉弁の動作不良を防止する。
【解決手段】塗料用開閉弁は、弁口13を有する塗料流路12と、塗料流路12内に収容され、弁口13を開放する開弁位置と弁口13を閉塞する閉弁位置との間で移動可能な弁体20と、磁力によって弁体20を閉弁位置に保持し、磁力の解消によって弁体20を開弁位置へ移動し得る状態にする磁力駆動部材(従動側永久磁石25、ピストン40、駆動側永久磁石45)と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁口を有する塗料流路と、
前記塗料流路内に収容され、前記弁口を開放する開弁位置と前記弁口を閉塞する閉弁位置との間で移動可能な弁体と、
磁力によって前記弁体を前記閉弁位置に保持し、前記磁力の解消によって前記弁体を前記開弁位置へ移動し得る状態にする磁力駆動部材と、を備えている塗料用開閉弁。
【請求項2】
前記磁力駆動部材が、
前記弁体と一体的に移動する従動側永久磁石と、
前記弁体に対して接近及び離隔方向に移動可能なピストンと、
前記ピストンに一体的に移動するように設けられ、前記従動側永久磁石に対して同極同士が対向するように配置された駆動側永久磁石と、を備え、
前記駆動側永久磁石と前記従動側永久磁石との間の磁気反発力によって、前記弁体が前記閉弁位置に保持され、
前記ピストンが前記弁体から離隔する方向へ移動することによって、前記弁体が前記開弁位置へ移動可能となる請求項1記載の塗料用開閉弁。
【請求項3】
前記弁体は、前記塗料流路のうち前記弁口よりも下流側の流路である二次室側から前記弁口を開閉するように配置されており、
前記二次室は、前記弁体を移動させるための従動側作動室と、前記従動側作動室の内周面から前記弁体の移動方向と交差する径方向外方へ延出した流出路とによって構成されている請求項2記載の塗料用開閉弁。
【請求項4】
前記ピストンは、前記弁体の移動経路の延長線上において、前記弁体と同軸状に移動する請求項3に記載の塗料用開閉弁。
【請求項5】
前記塗料流路と、前記ピストンを移動させるための駆動側作動室とが、仕切壁によって仕切られている請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の塗料用開閉弁。
【請求項6】
前記塗料流路は、前記弁体の外周面と近接して対向するガイド壁を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の塗料用開閉弁。
【請求項7】
前記弁体には、前記弁体の移動方向における両端面の間を連通させる連通部が形成されている請求項6に記載の塗料用開閉弁。
【請求項8】
前記連通部は、前記弁体の外周面を溝状に凹ませた形状をなす請求項7に記載の塗料用開閉弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料用開閉弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、塗料の流路に設けたバルブをシート部に当接させることによって、塗料の流量を絞り、バルブをシート部から離隔させることによって塗料の流量を増大させる塗料流量切換弁が開示されている。バルブは、軸受を介してピストンに連結されている。ピストンは、バネの弾力によって、バルブをシート部に当接させる方向へ押圧されている。空気室に作動エアを供給すると、ピストンが、バネの弾力に抗してバルブをシート部から離隔させるように移動する。軸の両端部のうちピストンに連結された端部は、空気室内に配置され、軸の両端部のうちバルブに連結された側の端部は、塗料流路中に位置している。塗料流路と空気室との間は、軸の外周面に密着したシールによって気密状に区画されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バルブがシート部に対して当接・離隔する過程では、軸がシールに対して摺接する。塗料に顔料が含まれている場合、顔料が、軸とシールとの間に噛み込んでシールの表面に付着するため、軸とバルブの円滑な動作に支障を来す。そのため、定期的又は適宜にメンテナンスが必要であった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、塗料に含まれる顔料に起因する開閉弁の動作不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の塗料用開閉弁は、
弁口を有する塗料流路と、
前記塗料流路内に収容され、前記弁口を開放する開弁位置と前記弁口を閉塞する閉弁位置との間で移動可能な弁体と、
磁力によって前記弁体を前記閉弁位置に保持し、前記磁力の解消によって前記弁体を前記開弁位置へ移動し得る状態にする磁力駆動部材と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この構成によれば、塗料に含まれる顔料に起因する開閉弁の動作不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の塗料用開閉弁の閉弁状態をあらわす正断面図である。
【
図2】塗料用開閉弁の開弁状態をあらわす正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。下記の複数の形態例を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
本開示の塗料用開閉弁は、
(1)弁口を有する塗料流路と、前記塗料流路内に収容され、前記弁口を開放する開弁位置と前記弁口を閉塞する閉弁位置との間で移動可能な弁体と、磁力によって前記弁体を前記閉弁位置に保持し、前記磁力の解消によって前記弁体を前記開弁位置へ移動し得る状態にする磁力駆動部材と、を備えている。この構成によれば、弁体には、塗料流路の内部から塗料流路の外部へ貫通する貫通部材を取り付ける必要がないので、塗料流路の内部と塗料流路の外部との間をシールするためのシール部材も不要である。したがって、塗料に顔料が含まれていても、顔料の噛み込みに起因して弁体の動きに支障を来すことを防止できる。
【0010】
(2)(1)において、前記磁力駆動部材が、前記弁体と一体的に移動する従動側永久磁石と、前記弁体に対して接近及び離隔方向に移動可能なピストンと、前記ピストンに一体的に移動するように設けられ、前記従動側永久磁石に対して同極同士が対向するように配置された駆動側永久磁石と、を備え、前記駆動側永久磁石と前記従動側永久磁石との間の磁気反発力によって、前記弁体が前記閉弁位置に保持され、前記ピストンが前記弁体から離隔する方向へ移動することによって、前記弁体が前記開弁位置へ移動可能となることが好ましい。この構成によれば、ピストンは、弁体を挟んで弁口とは反対側に配置されるので、従動側永久磁石を、弁体における弁口とは反対側の端部に配置することができる。従動側永久磁石が配置される端部は、弁口に当接するための形状の制約を受けない部位なので、従動側永久磁石の位置や大きさを設定する際の自由度が高い。
【0011】
(3)(2)において、前記弁体は、前記塗料流路のうち前記弁口よりも下流側の流路である二次室側から前記弁口を開閉するように配置されており、前記二次室は、前記弁体を移動させるための従動側作動室と、前記従動側作動室の内周面から前記弁体の移動方向と交差する径方向外方へ延出した流出路とによって構成されていることが好ましい。この構成によれば、ピストンを移動させるための駆動側作動室を、弁体の従動側作動室の近傍に配置することができるので、駆動側永久磁石と従動側永久磁石とを接近するように配置し、駆動側永久磁石と従動側永久磁石との間の磁気反発力を高めることができる。
【0012】
(4)(3)において、前記ピストンは、前記弁体の移動経路の延長線上において、前記弁体と同軸状に移動することが好ましい。この構成によれば、ピストンが弁体の移動方向と交差する方向へ移動する場合に比べると、弁体の移動方向と交差する二次元平面上において小径化(小型化)を図ることができる。
【0013】
(5)(2)~(4)において、前記塗料流路と、前記ピストンを移動させるための駆動側作動室とが、仕切壁によって仕切られていることが好ましい。この構成によれば、ピストンに塗料が付着することに起因してピストンの移動に支障を来すことを防止できる。
【0014】
(6)(1)~(4)において、前記塗料流路は、前記弁体の外周面と近接して対向するガイド壁を有することが好ましい。この構成によれば、弁体の移動過程で弁体の姿勢や位置が変動しても、弁体がガイド壁に摺接することによって、弁体の姿勢と位置の変動量が抑えられる。したがって、弁口を弁体によって確実に閉塞することができる。
【0015】
(7)(6)において、前記弁体には、前記弁体の移動方向における両端面の間を連通させる連通部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、弁体が閉弁位置と開弁位置との間を移動する過程では、塗料流路内の塗料が連通部を通過する。よって、ガイド壁によるガイド機能を高めるために、弁体の外周面とガイド壁との間隔が狭くしても、塗料の流動抵抗によって弁体の移動に支障を来すことを抑制できる。
【0016】
(8)(7)において、前記連通部は、前記弁体の外周面を溝状に凹ませた形状をなすことが好ましい。この構成によれば、連通部が弁体の外周面とガイド壁との隙間に連通しているので、連通部が弁体の外周面に開口しない貫通孔状である場合に比べると、塗料が連通部を通過する際の流動抵抗が低減される。よって、弁体の移動が円滑に行われる。
【0017】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1の塗料用開閉弁を、
図1~
図3を参照して説明する。尚、以下の説明において、上下の方向については、
図1,2におけるH方向を上方と定義する。左右の方向については、
図1,2におけるR方向を右方と定義する。
本実施例1の塗料用開閉弁は、非磁性材料からなる弁ボディ10と、弁体20と、ピストン40とを組み付けて構成されている。弁ボディ10は、ボディ本体11と、ガイド部材31と、固定部材33とを組み付けて構成されている。
【0018】
ボディ本体11の下端側領域には、塗料流路12が形成されている。塗料流路12は、弁口13と、一次室14と、二次室15とによって構成されている。弁口13は、塗料流路12の途中に配置されている。弁ボディ10を上から視た平面視において、弁口13は円形に開口している。一次室14は、弁口13よりも下方に配置されている。一次室14は、塗料用開閉弁を前方から視た正面視においてL字形に屈曲した経路である。一次室14の上流端部は、ボディ本体11の右外側面に開口している。一次室14の下流端部は、上向きに延びて弁口13と連通している。一次室14の上流端部には、塗料圧送源(図示省略)が接続されるようになっている。
【0019】
二次室15は、弁口13よりも上方に配置されている。二次室15は、正面視において、L字形に屈曲した流路である。二次室15は、従動側作動室16と、流出路17とによって構成されている。従動側作動室16は、弁口13と同心状に連通する円形の空間であり、二次室15の上流側領域を構成している。従動側作動室16の内周面は、上下動する弁体20をガイドするためのガイド壁18として機能する。流出路17は、ガイド壁18から径方向へ延出した経路であり、従動側作動室16と連通している。流出路17の下流端部は、ボディ本体11の左外側面に開口しており、二次室15の下流端部を構成する。流出路17の下流端部には、塗装装置のノズルに塗料を供給するための塗料圧送路(図示省略)が接続されるようになっている。
【0020】
従動側作動室16には。弁体20が閉弁位置と開弁位置との間で上下方向(弁口13の軸線方向)へ移動し得るように収容されている。弁体20は、非磁性材料からなる弁本体21と、従動側永久磁石25とを一体化させた部材である。弁本体21は、被ガイド部22と弁機能部26とを有する単一部品である。
【0021】
被ガイド部22は、平面視において、全体として円形をなす部位である。被ガイド部22の外径寸法は、ガイド壁18の内径寸法よりも僅かに小さい寸法である。被ガイド部22の外径とガイド壁18の内径との寸法差は、弁体20が従動側作動室16内で円滑に上下動するのに必要な寸法に設定されている。被ガイド部22の外周面には、周方向に間隔を空けた複数の連通部23が形成されている。各連通部23は、弁体20の移動方向(上下方向)と平行な溝状をなし、ガイド壁18に対して近接して対向している。連通部23の上下両端部は、被ガイド部22の上面と下面とに開口している。連通部23とガイド壁18との間に区画された上下方向の空間は、弁体20が上下動する際に塗料を流動させるための流動路として機能する。
【0022】
被ガイド部22には、被ガイド部22の上面を凹ませた形態の従動側収容凹部24が形成されている。従動側収容凹部24内には、従動側永久磁石25が収容され、接着剤等によって被ガイド部22に固定されている。従動側永久磁石25の向きは、一方の磁極が後述する駆動側永久磁石45と対向する上面側に位置し、他方の磁極が弁口13と対向する下面側(駆動側永久磁石45とは反対の面側)に位置するように設定されている。従動側永久磁石25は、磁力によって弁体20を閉弁位置に保持するための磁力駆動部材を構成する。
【0023】
弁機能部26は、被ガイド部22の下端面から下方へ突出した部位である。弁機能部26は、上端から下端に向かって次第に小径となる円錐台形状をなしている。弁機能部26の最大外径寸法は、被ガイド部22の外径よりも小さく、弁口13の内径よりも大きい寸法である。弁機能部26の最小外径は、弁口13の内径よりも小さい寸法である。
【0024】
弁機能部26のテーパ状をなす外周面が弁口13の内周面に当接すると、弁口13が閉塞され、一次室14と二次室15との間における塗料の流動が不能となる。弁体20の上下動経路において、弁体20(弁機能部26)が弁口13を閉塞する位置を、閉弁位置と定義する。弁機能部26が弁口13の内周面から離間すると、弁口13が開放され、一次室14と二次室15との間における塗料の流動が可能となる。弁体20の上下動経路において、弁体20(弁機能部26)が弁口13から上方へ離隔して弁口13を開口させる位置を、開弁位置と定義する。
【0025】
ボディ本体11のうち従動側作動室16よりも上方には、収容空間30が形成されている。収容空間30は、平面視において従動側作動室16と同心の円形をなし、従動側作動室16よりも内径の大きい空間である。収容空間30の下端は従動側作動室16の上端と連通している。収容空間30内には、ガイド部材31と固定部材33が収容されている。ガイド部材31の下面は、従動側作動室16の上端の開口を閉塞した状態で、収容空間30の底面に当接している。ガイド部材31の下面と収容空間30の底面との間は、シールリング32によって気密状にシールされている。固定部材33は、ガイド部材31の上方に配置されている。固定部材33は、収容空間30の内周面の雌ネジ部34にねじ込まれることによって、ガイド部材31を下方へ押圧した状態で収容空間30(ボディ本体11)に固定されている。
【0026】
ガイド部材31には、ガイド部材31の上面に開口する駆動側作動室35が形成されている。駆動側作動室35は、大径室36と小径室37とによって構成されている。大径室36は、駆動側作動室35の上端側領域を構成する。大径室36の上端は、固定部材33で覆われている。大径室36の平面視形状は、従動側作動室16と同心の円形である。小径室37は、大径室36よりも内径の小さい空間であり、駆動側作動室35の下端側領域を構成する。小径室37の上端は、大径室36の下端と連通している。大径室36の平面視形状は、大径室36及び従動側作動室16と同心の円形である。ガイド部材31の底壁部は、駆動側作動室35(小径室37)と従動側作動室16との間を気密状に区画する仕切壁38として機能する。
【0027】
駆動側作動室35内には、ピストン40が弁体20と同軸状に収容されている。上下方向において、ピストン40は、弁体20を挟んで弁口13とは反対側の位置に配置されている。ピストン40は、被磁性材料からなるピストン本体41と、駆動側永久磁石45とを一体的に組み付けて構成されている。ピストン40(ピストン本体41)は、磁力によって弁体20を閉弁位置に保持するための磁力駆動部材を構成する。
【0028】
ピストン40は、駆動側作動室35内に上下動し得るように収容されている。ピストン40の移動方向は、弁体20の閉弁位置と開弁位置との間における弁体20の移動方向と平行な方向である。ピストン本体41は、大径室36内に収容された大径部42と、小径室37内に収容された小径部43とを有する単一部品である。小径部43は、大径部42よりも外径寸法が小さく、大径部42の下端面から下方へ突出した部位である。大径室36のうち大径部42よりも下方の空間は、空気室46として機能する。
【0029】
小径部43には、小径部43の下面を凹ませた形態の駆動側収容凹部44が形成されている。駆動側収容凹部44内には、駆動側永久磁石45が収容され、接着剤等によって小径部43(ピストン本体41)に固定されている。駆動側永久磁石45の向きは、一方の磁極が従動側永久磁石25と対向する下面側に位置し、他方の磁極が従動側永久磁石25とは反対の上面側に位置するように設定されている。駆動側永久磁石45は、磁力によって弁体20を閉弁位置に保持するための磁力駆動部材を構成する。
【0030】
駆動側永久磁石45と従動側永久磁石25は、同じ磁極同士が上下方向(弁体20の閉弁位置と開弁位置との間の移動方向と平行な方向)に対向するように配置されている。具体的には、駆動側永久磁石45のN極と従動側永久磁石25のN極が上下に対向する配置、又は駆動側永久磁石45のS極と従動側永久磁石25のS極が上下に対向する配置である。
【0031】
固定部材33とピストン40との間には、軸線を上下方向に向けた圧縮コイルバネからなる閉弁用バネ47が設けられている。閉弁用バネ47は、常に、ピストン40を下方(閉弁方向)へ押圧している。弁ボディ10には、ボディ本体11とガイド部材31を貫通するエア供給路48が形成されている。エア供給路48の上流端は、ボディ本体11の左外側面に開口し、エア圧送源(図示省略)に接続されている。エア供給路48の下流端は、空気室46と連通している。
【0032】
空気室46に加圧エアが供給されていない状態では、ピストン40が閉弁用バネ47の弾力によって下降し、閉弁作動位置(
図1を参照)に保持される。エア供給路48を通して空気室46に加圧エアを圧送すると、ピストン40が閉弁用バネ47の弾力に抗して上昇し、ピストン40(大径部42)が固定部材33に当接する開弁作動位置に保持される。
【0033】
次に、本実施例1の塗料用開閉弁の作用を説明する。塗料用開閉弁は、常閉式のバルブであり、空気室46に加圧エアを供給しない状態では、ピストン40が閉弁作動位置に保持される。ピストン40が閉弁作動位置にある状態では、駆動側永久磁石45が弁体20の従動側永久磁石25に近い位置にあるため、駆動側永久磁石45と従動側永久磁石25との間の同磁極間の磁気反発力によって、弁体20が下方へ移動し、弁口13を閉塞する。つまり、塗料開閉弁は閉弁状態に保持される。
【0034】
閉弁状態では、弁体20のうち弁機能部26の先端部(下端部)が一次室14内に突出している。一次室14内においては、塗料に付与されている供給圧力が弁機能部26に作用するため、弁体20は、塗料の圧力によって開弁方向に押圧される。しかし、ピストン40が閉弁用バネ47によって閉弁作動位置に保持され、駆動側永久磁石45と従動側永久磁石25との間に生じる磁気反発力によって、弁体20には閉弁方向の押圧力が作用する。この閉弁方向の磁気反発力は、塗料の圧力に起因する開弁方向の押圧力よりも大きいため、弁体20は閉弁位置に保持される。
【0035】
塗料を塗装装置のノズル(図示省略)に供給する際には、空気室46へ加圧エアを圧送し、ピストン40を開弁作動位置へ上昇させる。ピストン40が上昇すると、駆動側永久磁石45が従動側永久磁石25から遠ざかるため、駆動側永久磁石45と上動側永久磁石との間の磁気反発力が低下するので、弁体20は、弁機能部26のうち一次室14内に突出している部位に作用する塗料の圧力によって上昇する。これにより、弁口13が開放され、塗料用開閉弁は、開弁状態になる。
【0036】
加圧エアの圧送を停止すると、ピストン40が閉弁用バネ47の弾力(付勢)によって下方へ移動し、駆動側永久磁石45が従動側永久磁石25に接近する。駆動側永久磁石45が従動側永久磁石25に接近すると、駆動側永久磁石45と従動側永久磁石25との間の磁気反発力が増大するので、弁体20は、閉弁位置へ下降し、弁機能部26が弁口13に当接することによって、閉弁状態となる。
【0037】
本実施例1の塗料用開閉弁は、弁口13を有する塗料流路12と、弁体20と、磁力駆動部材とを備えている。弁体20は、塗料流路12内に収容されており、弁口13を開放する開弁位置と弁口13を閉塞する閉弁位置との間で移動可能である。磁力駆動部材は、磁力によって弁体20を閉弁位置に保持する機能を有する。磁力駆動部材は、磁力が解消されることによって、弁体20を開弁位置へ移動し得る状態にする。この構成によれば、弁体20には、塗料流路12の内部から塗料流路12の外部へ貫通する貫通部材を取り付ける必要がないので、塗料流路12の内部と塗料流路12の外部との間をシールするためのシール部材も不要である。つまり、顔料の噛み込みを生じさせる部材は、存在しない。したがって、塗料に顔料が含まれていても、顔料の噛み込みに起因して弁体20の動きに支障を来すことを防止できる。
【0038】
磁力駆動部材は、弁体20と一体的に移動する従動側永久磁石25と、弁体20に対して接近及び離隔方向に移動可能なピストン40と、駆動側永久磁石45とを備えている。駆動側永久磁石45は、ピストン40に一体的に移動するように設けられており、従動側永久磁石25に対して同極同士が対向するように配置されている。弁体20は、駆動側永久磁石45と従動側永久磁石25との間の磁気反発力によって、閉弁位置に保持される。ピストン40が弁体20から離隔する方向へ移動すると、弁体20が開弁位置へ移動可能となる。この構成によれば、ピストン40は、弁体20を挟んで弁口13とは反対側に配置されるので、従動側永久磁石25を、弁体20における弁口13とは反対側の端部に配置することができる。従動側永久磁石25が配置される端部は、弁口13に当接するための形状の制約を受けない部位なので、従動側永久磁石25の位置や大きさを設定する際の自由度が高い。
【0039】
弁体20は、塗料流路12のうち弁口13よりも下流側の流路である二次室15側から弁口13を開閉するように配置されている。二次室15は、弁体20を移動させるための従動側作動室16と、流出路17とによって構成されている。流出路17は、従動側作動室16の内周面から弁体20の移動方向と交差する径方向外方へ延出した流路である。この構成によれば、ピストン40を移動させるための空間である駆動側作動室35を、弁体20の従動側作動室16の近傍に配置することができる。したがって、駆動側永久磁石45と従動側永久磁石25とを接近するように配置して、駆動側永久磁石45と従動側永久磁石25との間の磁気反発力を高めることができる。
【0040】
ピストン40は、弁体20の移動経路の延長線上において、弁体20と同軸状に移動する。この構成によれば、ピストン40が弁体20の移動方向と交差する方向へ移動する場合に比べると、弁体20の移動方向と交差する二次元平面上において小径化(小型化)を図ることができる。
【0041】
塗料流路12と、ピストン40を移動させるための駆動側作動室35とが、仕切壁38によって仕切られている。この構成によれば、ピストン40に塗料が付着することに起因してピストン40の移動に支障を来すことを防止できる。
【0042】
塗料流路12(従動側作動室16)は、弁体20の外周面と近接して対向するガイド壁18を有している。この構成によれば、弁体20の移動過程で弁体20の姿勢や位置が変動しても、弁体20がガイド壁18に摺接することによって、弁体20の姿勢と位置の変動量が抑えられる。したがって、弁口13を弁体20によって確実に閉塞することができる。
【0043】
弁体20には、弁体20の移動方向における上下両端面の間を連通させる連通部23が形成されている。この構成によれば、弁体20が閉弁位置と開弁位置との間を移動する過程では、塗料流路12内の塗料が連通部23を通過する。よって、ガイド壁18によるガイド機能を高めるために、弁体20の外周面とガイド壁18との間隔が狭くしても、塗料の流動抵抗によって弁体20の移動に支障を来すことを抑制できる。
【0044】
連通部23は、弁体20の外周面を溝状に凹ませた形状をなす。この構成によれば、連通部23が、弁体20の外周面とガイド壁18との隙間に連通しているので、連通部23が弁体20の外周面に開口しない貫通孔状である場合に比べると、塗料が連通部23を通過する際の流動抵抗が低減される。よって、弁体20の移動が円滑に行われる。
【0045】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
連通部は、弁体の外周面に開口しない貫通孔状であってもよい。
弁体は、連通部を有しない形状であってもよい。
従動側作動室は、ガイド壁を有しない形状でもよい。
弁体を従動側永久磁石のみによって構成してもよい。
ピストンの移動方向は、弁体の移動方向と交差する方向であってもよい。
塗料流路(二次室)とピストンの駆動側作動室とが連通していてもよい。
磁力駆動部材は、弁口を挟んで弁体とは反対側に配置した電磁石と、弁体が具備する磁性体とを含むものでもよい。この場合、弁体が具備する磁性体は、非磁性体からなる弁体に取り付けたものでもよく、弁体そのものであってもよい。電磁石への通電と通電解除によって、弁体を開弁位置と閉弁位置との間で移動させることができる。
磁力駆動部材は、弁口を挟んで弁体とは反対側に配置した駆動側永久磁石と、駆動側永久磁石に対して異極が対向するように弁体に設けた従動側永久磁石とによって構成されていてもよい。この場合、駆動側永久磁石と従動側永久磁石との間の磁気吸引力によって、弁体が閉弁位置に保持される。駆動側永久磁石を弁体から離隔させると、磁気吸引力が減衰し、塗料の供給圧力によって弁体が開弁方向へ押し動かされる。
【符号の説明】
【0046】
12…塗料流路
13…弁口
15…二次室
16…従動側作動室
17…流出路
18…ガイド壁
20…弁体
23…連通部
25…従動側永久磁石(磁力駆動部材)
35…駆動側作動室
38…仕切壁
40…ピストン(磁力駆動部材)
45…駆動側永久磁石(磁力駆動部材)