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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155235
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】多目的車両
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20251006BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20251006BHJP
【FI】
B60J5/00 Q
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058933
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BD03
(57)【要約】
【課題】搭乗座席に搭乗した搭乗者を側面部分で受け止め、かつ、搭乗者の乗降が容易な多目的車両の提供。
【解決手段】搭乗者が搭乗する運転部と、運転部に設けられ、搭乗者が着座可能な座部10A、及び、座部10Aの後部に設けられた背もたれ部を有する搭乗座席10と、運転部の乗降口を開閉する乗降ドア14と、が備えられている。乗降ドア14の上部に、上下方向において背もたれ部10Bの上部に対応する位置まで延ばされたショルダーガード部14Bが備えられている。ショルダーガード部14Bに、上下に延びるフレーム体14Fが取り付けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗者が搭乗する運転部と、
前記運転部に設けられ、前記搭乗者が着座可能な座部、及び、前記座部の後部に設けられた背もたれ部を有する搭乗座席と、
前記運転部の乗降口を開閉する乗降ドアと、が備えられ、
前記乗降ドアの上部に、上下方向において前記背もたれ部の上部に対応する位置まで延ばされたショルダーガード部が備えられ、
前記ショルダーガード部に、上下に延びるフレーム体が取り付けられている多目的車両。
【請求項2】
前記フレーム体は、前記ショルダーガード部のうち前記運転部に面する内面部に取り付けられている請求項1に記載の多目的車両。
【請求項3】
前記フレーム体は、上下に延びる上下延出部と、前記上下延出部の上部から、前記乗降ドアが閉じられた状態における前後方向に延びる横延出部と、を有し、
前記内面部に、前記上下延出部及び前記横延出部の形状に沿って外面部の位置する側に凹入する凹部が形成され、
前記フレーム体は前記凹部に取り付けられている請求項2に記載の多目的車両。
【請求項4】
前記運転部に設けられ、前記搭乗座席を支持する座席フレームと、
前記乗降ドアを閉じた状態に位置保持可能なロック機構と、が備えられ、
前記ロック機構は、前記座席フレームに取り付けられた第一係合部と、前記フレーム体の下部に取り付けられた第二係合部と、前記第一係合部または前記第二係合部を操作して前記第一係合部及び前記第二係合部を係合状態と非係合状態とに切換可能な単一の操作具と、を有する請求項1から3の何れか一項に記載の多目的車両。
【請求項5】
前記乗降ドアに、前記運転部に面する内面部と、前記運転部の位置する側と反対側の外面部と、に亘って貫通する開口部が形成され、
前記単一の操作具は前記開口部に位置する請求項4に記載の多目的車両。
【請求項6】
前記フレーム体のうち前記第二係合部よりも下側の箇所に、前記座席フレームと当接する当接部が備えられている請求項4に記載の多目的車両。
【請求項7】
前記フレーム体と前記座席フレームとの夫々に、互いに対向する面状部が形成され、
前記当接部は、前記フレーム体における前記面状部に取り付けられている請求項6に記載の多目的車両。
【請求項8】
前記当接部は、弾性体によって構成されている請求項6に記載の多目的車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多目的車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された多目的車両では、搭乗座席の背もたれ部の上部に対応する位置にショルダーガード(文献では「防護パネル」)が備えられている。多目的車両の旋回時に機体横方向に遠心力が掛かる場合であっても、搭乗座席に搭乗した搭乗者が側面部分のショルダーガードに受け止められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-174966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで例えば特許文献1に開示された多目的車両では、ショルダーガードは機体のフレームに固定されている。このため、機体前後方向における乗降スペースの幅が狭くなり、搭乗者が搭乗座席に搭乗したり搭乗座席から降りたりするときに窮屈に感じる虞がある。
【0005】
本発明の目的は、搭乗座席に搭乗した搭乗者を側面部分で受け止め、かつ、搭乗者の乗降が容易な多目的車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多目的車両においては、搭乗者が搭乗する運転部と、前記運転部に設けられ、前記搭乗者が着座可能な座部、及び、前記座部の後部に設けられた背もたれ部を有する搭乗座席と、前記運転部の乗降口を開閉する乗降ドアと、が備えられ、前記乗降ドアの上部に、上下方向において前記背もたれ部の上部に対応する位置まで延ばされたショルダーガード部が備えられ、前記ショルダーガード部に、上下に延びるフレーム体が取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、乗降ドアの上部が背もたれ部の上部に対応する位置まで延ばされて、ショルダーガードとして機能する。このため、多目的車両の旋回時に機体横方向に遠心力が掛かる場合であっても、搭乗座席に搭乗した搭乗者が乗降ドアの上部に受け止められる。そして、上下に延びるフレーム体が乗降ドアの上部(ショルダーガード部)に取り付けられる構成によって、ショルダーガード部にフレーム体が取り付けられていない構成と比較して、乗降ドアの変形が生じにくくなり、乗降ドアの上部が搭乗者をしっかりと受け止められる。また、乗降ドアが、上部にショルダーガード部を備える構成によって、機体のフレームにショルダーガードが固定される必要が無く、機体前後方向における乗降スペースの幅が広く確保され易くなる。このように、本発明であれば、搭乗座席に搭乗した搭乗者を側面部分で受け止め、かつ、搭乗者の乗降が容易な多目的車両が実現される。
【0008】
本発明において、前記フレーム体は、前記ショルダーガード部のうち前記運転部に面する内面部に取り付けられていると好適である。
【0009】
本構成によって、フレーム体がショルダーガード部の外面部に取り付けられる構成と比較して、多目的車両の外観の凹凸感が無くなる。
【0010】
本発明において、前記フレーム体は、上下に延びる上下延出部と、前記上下延出部の上部から、前記乗降ドアが閉じられた状態における前後方向に延びる横延出部と、を有し、前記内面部に、前記上下延出部及び前記横延出部の形状に沿って外面部の位置する側に凹入する凹部が形成され、前記フレーム体は前記凹部に取り付けられていると好適である。
【0011】
本構成であれば、フレーム体が凹部に納められることによって、運転部におけるフレーム体の出張り度合いが軽減される。即ち、本構成であれば、簡易な構成によって、搭乗者の肩等がフレーム体に触れ難くなる。
【0012】
本発明において、前記運転部に設けられ、前記搭乗座席を支持する座席フレームと、前記乗降ドアを閉じた状態に位置保持可能なロック機構と、が備えられ、前記ロック機構は、前記座席フレームに取り付けられた第一係合部と、前記フレーム体の下部に取り付けられた第二係合部と、前記第一係合部または前記第二係合部を操作して前記第一係合部及び前記第二係合部を係合状態と非係合状態とに切換可能な単一の操作具と、を有すると好適である。
【0013】
本構成によって、ロック機構によるドアの位置保持が実現される。また、搭乗者が単一の操作具を操作することによって、ロック機構による位置保持が解除され、乗降ドアの開閉操作が可能となる。
【0014】
本発明において、前記乗降ドアに、前記運転部に面する内面部と、前記運転部の位置する側と反対側の外面部と、に亘って貫通する開口部が形成され、前記単一の操作具は前記開口部に位置すると好適である。
【0015】
本構成であれば、乗降ドアの開口部に単一の操作具が配置されている。これにより、搭乗者は車内と車外との両方から単一の操作具を操作できる。また、乗降ドアの内面部と外面部との両方に操作具が備えられる構成と比較して、操作具が一つだけあれば良いため、部品点数の削減が可能である。
【0016】
本発明において、前記フレーム体のうち前記第二係合部よりも下側の箇所に、前記座席フレームと当接する当接部が備えられていると好適である。
【0017】
本構成によると、当接部が座席フレームと当接可能に構成されている。第二係合部は第一係合部と係合し、乗降ドアが閉じられた状態で乗降ドアは第二係合部で位置保持される。乗降ドアの上部におけるショルダーガード部に搭乗者の肩等がもたれ掛かると、フレーム体の上部が機体横外側へ押される。このとき、フレーム体が第二係合部まわりに揺動すると、乗降ドアの上部が機体横外側へ変位する可能性が考えられる。本構成であれば、フレーム体のうち第二係合部よりも下側の箇所に当接部が設けられ、当接部は座席フレームと当接する。この構成であれば、フレーム体が第二係合部まわりに揺動しようとしても、乗降ドアの下部の当接部が座席フレームに押し当てられる。これにより、乗降ドアの上部が機体横外側へ変位し難くなる。
【0018】
本発明において、前記フレーム体と前記座席フレームとの夫々に、互いに対向する面状部が形成され、前記当接部は、前記フレーム体における前記面状部に取り付けられていると好適である。
【0019】
本構成によって、フレーム体の上部が機体横外側へ変位するようにフレーム体が第二係合部まわりに揺動しようとしても、座席フレームは乗降ドアの下部をしっかりと受け止める構成が可能となる。これにより、乗降ドアの上部が一層変位し難くなる。
【0020】
本発明において、前記当接部は、弾性体によって構成されていると好適である。
【0021】
本構成であれば、例えば乗降ドアが閉じられる際に、当接部と座席フレームとの夫々における当接時の衝撃が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】多目的車両の左側面図である。
図2】運転部及び前乗降ドアを示す右側面図である。
図3】乗降ドアにおけるドアレバーの位置を示す正面視の断面図である。
図4】フレーム体の下部に取り付けられたロック機構及び当接部を示す右側面図である。
図5】乗降ドアにおけるドアレバーの位置を示す図2のV-V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0024】
〔多目的車両の全体構成〕
以下では、本実施形態の多目的車両について説明する。図1に示すように、多目的車両に、走行機体1と、ボンネット2と、搭乗者が搭乗する運転部3と、ダンプ式の荷台4と、が備えられている。走行機体1に、機体フレーム5と、走行装置6と、が備えられている。図示はしないが、多目的車両に水冷式のエンジンと変速装置とが備えられ、エンジンの動力が変速装置で変速され、走行装置6へ伝達される。なお、多目的車両は、走行用の電動モータを備えた電動式の多目的車両であっても良い。
【0025】
走行装置6は、操舵可能、かつ、駆動可能な左右の前輪6Fと、操舵不能、かつ、駆動可能な左右の後輪6Bとを備える。走行装置6は、駆動状態を左右の後輪6Bのみが駆動する二輪駆動状態と、左右の前輪6F及び左右の後輪6Bが駆動する四輪駆動状態とに切り替え可能に構成されている。
【0026】
運転部3は、操縦部7と、運転座席10と、補助座席11と、後座席12と、乗員保護用のロプス13と、左右の前乗降ドア14と、左右の後乗降ドア15と、を備える。荷台4は、運転部3の後方に配置されている。前乗降ドア14及び後乗降ドア15は、運転部3の乗降口を開閉する。運転座席10と補助座席11との夫々は、座席フレーム17に支持されている。ロプス13は、前後中央部分における左側部と右側部との夫々にセンターピラー13Aを有する。左右夫々のセンターピラー13Aの下部に、後乗降ドア15が揺動開閉可能に支持されている。前乗降ドア14は『乗降ドア』に相当する。運転座席10と補助座席11と後座席12とは『搭乗座席』に相当する。
【0027】
操縦部7は、左右の前輪6Fを操舵操作するためのステアリングハンドル、走行速度の調整操作を行うアクセルペダル、制動操作を行うブレーキペダル、及び、変速操作を行う変速レバー等の各種操作具を備える。
【0028】
運転座席10に、運転する搭乗者(以降、「運転者」と称する。)が着座する。補助座席11は、運転座席10と横並びに隣接する。運転座席10は機体左右方向において左側に設けられ、補助座席11は機体左右方向において右側に設けられている。
【0029】
運転座席10は、搭乗者が着座可能な座部10Aと、座部10Aの後部に設けられた背もたれ部10Bと、背もたれ部10Bに支持されたヘッドレスト10Cと、を有する。運転座席10は、前後方向に沿ってスライド可能に構成されている。このため、運転座席10に着座する搭乗者は、座席の位置を前後方向に沿って調整可能である。また、運転座席10は背もたれ部10Bの角度を調節可能に構成されている。このため、運転座席10に着座する搭乗者は、背もたれ部10Bのリクライニング角度を調整可能である。
【0030】
本実施形態では、補助座席11は、二人の搭乗者が着座可能に構成されている。補助座席11は、二人の搭乗者が着座可能な座部11Aと、座部11Aの後部に設けられた背もたれ部11Bと、背もたれ部11Bに支持された二個のヘッドレスト11Cと、を有する。補助座席11は背もたれ部11Bの角度を調節可能に構成されている。このため、補助座席11に着座する搭乗者は、背もたれ部11Bのリクライニング角度を調整可能である。
【0031】
本実施形態では、後座席12は、三人の搭乗者が着座可能に構成されている。後座席12は、三人の搭乗者が着座可能な座部12Aと、座部12Aの後部に設けられた背もたれ部12Bと、背もたれ部12Bに支持された三個のヘッドレスト12Cと、を有する。
【0032】
〔前ドアの構成〕
図1及び図2に示すように、左右の前乗降ドア14に、ドア体14Aが備えられている。ドア体14Aの前部にヒンジ部14Cが連結されている。ヒンジ部14Cはロプス13の前部に連結されている。ヒンジ部14Cに、上下向きに延びる揺動軸芯が存在し、ドア体14Aはヒンジ部14Cの揺動軸芯まわりに揺動する。図1に示すように、前乗降ドア14が閉じられた状態において、ドア体14Aの遊端部は、機体側面視において上端部と下端部とに亘ってセンターピラー13Aと重複する。
【0033】
図3に示すように、ドア体14Aに、運転部3に面する内面部14Dと、運転部3の位置する側と反対側の外面部14Eと、が形成されている。
【0034】
ドア体14Aの上部は、上下方向において背もたれ部10B,11Bの上部に対応する位置まで延ばされている。このことから、多目的車両の右旋回時に左方向に遠心力が掛かる場合であっても、運転座席10に搭乗した搭乗者の肩が、機体左側の前乗降ドア14におけるドア体14Aの上部に受け止められる。
【0035】
また、多目的車両の左旋回時に右方向に遠心力が掛かる場合であっても、補助座席11に搭乗した搭乗者の肩、または、補助座席11の座部11Aに置かれた積荷が、機体右側の前乗降ドア14におけるドア体14Aの上部に受け止められる。
【0036】
このように、前乗降ドア14の夫々におけるドア体14Aの上部は、いわゆるショルダーガードとして機能する。即ち、前乗降ドア14に、上下方向において背もたれ部10B,11Bの上部に対応する位置まで延ばされたショルダーガード部14Bが備えられている。ショルダーガード部14Bは、運転座席10の前後方向におけるスライド範囲の前端部と後端部とに亘る幅と同等の前後幅を有する。
【0037】
ドア体14Aは、ショルダーガード部14Bも含めて、例えばポリ塩化ビニルや繊維強化プラスチック等の樹脂によって構成されている。このため、ドア体14Aが搭乗者の肩や積荷から機体横外方向への荷重を受けた際のドア体14Aの剛性を考慮する必要がある。本実施形態では、ドア体14Aのショルダーガード部14Bに、ドア体14Aを補強するためのフレーム体14Fが備えられている。フレーム体14Fは、前乗降ドア14のうち開口部14hを挟んでヒンジ部14Cの位置する側と反対側の部分に取り付けられている。
【0038】
フレーム体14Fは、ドア体14Aのうち、運転部3に面する内面部14Dに取り付けられている。そして、フレーム体14Fが取り付けられた内面部14Dは、ショルダーガード部14Bとして構成されている。
【0039】
フレーム体14Fは、上下延出部20と横延出部21と面状部22とを有する。上下延出部20は上下に延びる。横延出部21は上下延出部20の上端部から前後方向に延びる。換言すると、上下延出部20の上部が曲げ形成され、上下延出部20の上部から横延出部21が前後方向に延ばされている。尚、前後方向とは、前乗降ドア14が閉じられた状態における前後方向を意味する。面状部22は、上下延出部20の下端部に、溶接によって連結されている。
【0040】
内面部14Dに凹部14Gが形成されている。凹部14Gは、上下延出部20と横延出部21と面状部22との形状に沿って、外面部14Eの位置する側に凹入する。フレーム体14Fは凹部14Gに取り付けられている。これにより、フレーム体14Fの機体横内部分を内面部14Dよりも機体横外側へ引っ込める構成が可能である。また、フレーム体14Fの機体横内部分が内面部14Dよりも運転部3の位置する側に出っ張る場合であっても、フレーム体14Fに凹部14Gが形成されない構成と比較して、その出っ張る度合いが軽減される。
【0041】
フレーム体14Fがドア体14Aに取り付けられる構成を具体的に説明すると、面状部22と、横延出部21の延出先端部と、の夫々に取付部25が形成されている。取付部25は、例えばボルトまたはクリップ等を挿通するための孔を有する。面状部22の取付部25と、横延出部21の取付部25と、の夫々に、例えばボルトまたはクリップ等が挿通され、当該ボルトまたはクリップ等がドア体14Aの凹部14Gに固定される。これにより、フレーム体14Fがドア体14Aに取り付け固定される。
【0042】
本実施形態の多目的車両に、前乗降ドア14用のロック機構16が備えられている。ロック機構16は前乗降ドア14を閉じた状態に位置保持可能な機構である。
【0043】
図2図4、及び、図5に示すように、ロック機構16は、スナッチロック部16Aと、ストライカー16Bと、ドアレバー16Cと、を有する。ストライカー16Bは『第一係合部』に相当する。スナッチロック部16Aは『第二係合部』に相当する。ドアレバー16Cは『単一の操作具』に相当する。
【0044】
左右の前乗降ドア14の夫々におけるドア体14Aの後部に開口部14hが形成されている。開口部14hは内面部14Dと外面部14Eとに亘って貫通する。開口部14hは、上下方向においてドア体14Aの中央部分に位置する。また、開口部14hは、揺動基端部と揺動遊端部との間における中央部分よりも遊端側に位置する。開口部14hに、単一のドアレバー16Cが設けられている。搭乗者は、運転部3の内部と運転部3の外部との両方からドアレバー16Cを操作できる。
【0045】
ドアレバー16Cは、座部10A,11Aの座面よりも低い位置に配置されている。このことから、ドアレバー16Cが座部10A,11Aの座面よりも高い位置に配置される構成と比較して、運転部3の内部の搭乗者の手が偶発的にドアレバー16Cに触れる可能性が低くなる。
【0046】
また、内面部14Dのうち、開口部14hに対して上側に隣接する部分に傾斜部14iが形成されている。傾斜部14iは、機体前後方向視において上側ほど機体横内側に位置するように傾斜する。図3に示すように、傾斜部14iの延長線Eと背もたれ部10Bの左上部とが重複する。また、ドアレバー16Cが傾斜部14iの延長線Eよりも機体横内側に位置する。また、図3に示す構成と同じであるため図示を省略するが、機体右側の前乗降ドア14においても、傾斜部14iの延長線Eと補助座席11の背もたれ部11Bの右上部とが重複する。また、機体右側の前乗降ドア14におけるドアレバー16Cが、機体右側の前乗降ドア14における傾斜部14iの延長線Eよりも機体横内側に位置する。このため、傾斜部14iが形成されていない構成と比較して、搭乗者は上方の視点からドアレバー16Cをしっかりと視認し易くなり、かつ、運転座席10からドアレバー16Cを操作し易くなる。
【0047】
スナッチロック部16Aは、フレーム体14Fの下部における面状部22に、ボルト締結によって固定されている。ドアレバー16Cはスナッチロック部16Aに支持されている。ストライカー16Bは座席フレーム17に取り付けられている。
【0048】
搭乗者が前乗降ドア14を閉じると、図4及び図5に示すように、スナッチロック部16Aがストライカー16Bに鉤掛けられる。前乗降ドア14は、閉じられた状態において、スナッチロック部16Aとストライカー16Bとが係合し、その閉じられた状態に位置保持される。
【0049】
搭乗者がドアレバー16Cを上向きに揺動操作すると、ストライカー16Bに対するスナッチロック部16Aの鉤掛けが解除され、スナッチロック部16Aとストライカー16Bとの係合が解除される。この状態で搭乗者が機体横外側へドア体14Aを動かすと、ドア体14Aが開く。
【0050】
このように、ドアレバー16Cは、スナッチロック部16Aを操作してスナッチロック部16A及びストライカー16Bを係合状態と非係合状態とに切換可能なように構成されている。
【0051】
多目的車両の旋回時に機体横方向に遠心力が掛かり、補助座席11に搭乗した搭乗者の肩、または、補助座席11の座部11Aに置かれた積荷から、ドア体14Aの上部に機体横方への力が作用する。ドア体14Aの後部のうちの上下中央部分でスナッチロック部16Aとストライカー16Bとが係合する。このことから、ドア体14Aの上部に機体横方への力が作用すると、ドア体14Aのうちスナッチロック部16Aとストライカー16Bとの係合箇所を挟んで上側に機体横外方へ捻じれる力が作用し、かつ、ドア体14Aのうち当該係合箇所を挟んで下側に機体横内方へ捻じれる力が作用する。
【0052】
この捻じれの力に対処するため、本実施形態では、フレーム体14Fの面状部22のうち、スナッチロック部16Aよりも下側の部分に、ゴム製(弾性体)の当接部23が取り付けられている。当接部23は、例えばシリコーン等であっても良い。
【0053】
フレーム体14Fの面状部22のうちの当接部23が取り付けられている部分と、座席フレーム17の面状部24と、が互いに対向する。このため、搭乗者が前乗降ドア14を閉じると、当接部23が座席フレーム17の面状部24と当接する。当接部23がゴム製であるため、搭乗者が前乗降ドア14を閉じた際に、フレーム体14Fの面状部22と座席フレーム17の面状部24との衝撃が緩和される。
【0054】
当接部23と面状部24とが当接することによって、ドア体14Aの上部に機体横方への力が作用する場合であっても、ドア体14Aの下部において機体横内方へ作用する力が当接部23及び面状部24に受け止められる。これにより、ドア体14Aの下部における捻じれが抑制される。
【0055】
また、ドア体14Aの後部の剛性がフレーム体14Fによって高められている。このため、ドア体14Aの下部において機体横内方へ作用する力が当接部23及び面状部24に受け止められると、ドア体14Aの上部における機体横外方への捻じれが抑制される。
【0056】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0057】
(1)後乗降ドア15が、前乗降ドア14と同じ構成であっても良い。具体的には、後乗降ドア15に、上下方向において背もたれ部12Bの上部に対応する位置まで延ばされたショルダーガード部14Bが備えられる構成であっても良い。また、後乗降ドア15におけるショルダーガード部14Bに、前乗降ドア14のフレーム体14Fと同様に、後乗降ドア15を補強するためのフレーム体14Fが備えられる構成であっても良い。
【0058】
(2)ショルダーガード部14Bがドア体14Aと一体的に構成されていなくても良い。ショルダーガード部14Bはドア体14Aと別体であっても良い。
【0059】
(3)ドアレバー16Cは前乗降ドア14における内面部14Dと外面部14Eとの両方に備えられる構成であっても良い。
【0060】
(4)フレーム体14Fは前乗降ドア14における外面部14Eに取り付けられても良い。
【0061】
(5)面状部22は、座席フレーム17に加えて、または、座席フレーム17に代えて、センターピラー13Aの下部と当接する構成であっても良い。
【0062】
(6)上述の多目的車両は、後座席12及び後乗降ドア15を有するものであるが、後座席12及び後乗降ドア15を有さない構成であっても良い。
【0063】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、多目的車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
3 :運転部
10 :運転座席(搭乗座席)
10A :座部
10B :背もたれ部
11 :補助座席(搭乗座席)
11A :座部
11B :背もたれ部
12A :座部
12B :背もたれ部
14 :前乗降ドア(乗降ドア)
14B :ショルダーガード部
14D :内面部
14E :外面部
14F :フレーム体
14G :凹部
14h :開口部
16 :ロック機構
16A :スナッチロック部(第二係合部)
16B :ストライカー(第一係合部)
16C :ドアレバー(単一の操作具)
17 :座席フレーム
20 :上下延出部
21 :横延出部
22 :面状部
23 :当接部
24 :面状部
図1
図2
図3
図4
図5