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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155255
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H10D 30/66 20250101AFI20251006BHJP
   H10D 62/10 20250101ALI20251006BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H01L29/78 653C
H01L29/06 301D
H01L29/06 301V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058971
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】石川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝治
(72)【発明者】
【氏名】生野 徹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐圧を向上できる半導体装置を提供すること。
【解決手段】半導体装置1は、上部電極31と、下部電極32と、半導体層10と、複数のトレンチ構造部(複数のゲートトレンチ部40、第1終端トレンチ部50A)と、を備える。複数のゲートトレンチ部40のそれぞれは、第1方向Xにおいてセルメサ部21に隣接する。第1終端トレンチ部50Aは、第1方向Xにおいて終端メサ部22に隣接し、第2方向Yに延びる。第1終端トレンチ部50Aの第1方向の幅は、ゲートトレンチ部40の第1方向の幅よりも大きい。第1終端トレンチ部50Aの下端は、ゲートトレンチ部40の下端よりも下方に位置する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極と、
下部電極と、
前記上部電極と前記下部電極との間に位置する半導体層であって、第1方向に並び、前記第1方向に直交する第2方向に延びる複数のメサ部を有する半導体層と、
前記第1方向において前記メサ部に隣接し、前記第2方向に延びる複数のトレンチ構造部と、
を備え、
前記複数のメサ部は、
第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられた第2導電型の第2半導体層と、前記第2半導体層上に設けられ、前記第1半導体層よりも第1導電型不純物濃度が高く、前記上部電極に接する第1導電型の第3半導体層と、をそれぞれが有する複数のセルメサ部と、
前記第1方向において前記複数のメサ部の端に位置し、前記第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられ、前記上部電極に接する第2導電型の第4半導体層とを有し、前記第3半導体層を有さない終端メサ部と、
を有し、
前記複数のトレンチ構造部は、
前記第1方向において前記セルメサ部に隣接し、ゲート電極と、前記ゲート電極と前記セルメサ部との間に設けられた第1絶縁膜と、をそれぞれが有する複数のゲートトレンチ部と、
前記第1方向において、前記複数のトレンチ構造部の端に位置し、前記終端メサ部に隣接し、導電部材と、前記導電部材と前記終端メサ部との間に設けられた第2絶縁膜と、を有する第1終端トレンチ部と、
を有し、
前記第1終端トレンチ部の前記第1方向の幅は、前記ゲートトレンチ部の前記第1方向の幅よりも大きく、
前記第1終端トレンチ部の下端は、前記ゲートトレンチ部の下端よりも下方に位置する、半導体装置。
【請求項2】
前記導電部材の前記第1方向の幅は、前記ゲート電極の前記第1方向の幅よりも大きく、
前記導電部材の下端は、前記ゲート電極の下端よりも下方に位置する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1終端トレンチ部に連続して前記第2方向に延びる第2終端トレンチ部をさらに備え、
前記第2終端トレンチ部の前記第2方向の幅は、前記ゲートトレンチ部の前記第1方向の幅よりも大きく、
前記第2終端トレンチ部の下端は、前記ゲートトレンチ部の前記下端よりも下方に位置する、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
上部電極と、
下部電極と、
前記上部電極と前記下部電極との間に位置する半導体層であって、第1方向に並び、前記第1方向に直交する第2方向に延びる複数のメサ部を有する半導体層と、
前記第1方向において前記メサ部に隣接し、前記第2方向に延びる複数のトレンチ構造部と、
を備え、
前記複数のメサ部は、
第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられた第2導電型の第2半導体層と、前記第2半導体層上に設けられ、前記第1半導体層よりも第1導電型不純物濃度が高く、前記上部電極に接する第1導電型の第3半導体層と、をそれぞれが有する複数のセルメサ部と、
前記第1方向において前記複数のメサ部の端に位置し、前記第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられ、前記上部電極に接する第2導電型の第4半導体層とを有し、前記第3半導体層を有さない終端メサ部と、
を有し、
前記複数のトレンチ構造部は、
前記第1方向において前記セルメサ部に隣接し、ゲート電極と、前記ゲート電極と前記セルメサ部との間に設けられた第1絶縁膜と、をそれぞれが有する複数のゲートトレンチ部と、
前記第1方向において、前記複数のトレンチ構造部の端に位置し、前記終端メサ部に隣接し、導電部材と、前記導電部材と前記終端メサ部との間に設けられた第2絶縁膜と、を有する第1終端トレンチ部と、
を有し、
前記第1終端トレンチ部の下端は、前記ゲートトレンチ部の下端よりも上方に位置し、且つ、前記終端メサ部における前記第4半導体層と前記第1半導体層との接合部よりも下方に位置する、半導体装置。
【請求項5】
前記導電部材の下端は、前記ゲート電極の下端よりも上方に位置し、且つ、前記第4半導体層と前記第1半導体層との前記接合部よりも下方に位置する、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1終端トレンチ部の前記第1方向の幅は、前記ゲートトレンチ部の前記第1方向の幅以下である、請求項4または5に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縦型のパワーデバイスにおいてトレンチゲート構造が広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6208612号公報
【特許文献2】特許第6127069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、耐圧を向上できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、半導体装置は、上部電極と、下部電極と、前記上部電極と前記下部電極との間に位置する半導体層であって、第1方向に並び、前記第1方向に直交する第2方向に延びる複数のメサ部を有する半導体層と、前記第1方向において前記メサ部に隣接し、前記第2方向に延びる複数のトレンチ構造部と、を備える。前記複数のメサ部は、第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられた第2導電型の第2半導体層と、前記第2半導体層上に設けられ、前記第1半導体層よりも第1導電型不純物濃度が高く、前記上部電極に接する第1導電型の第3半導体層と、をそれぞれが有する複数のセルメサ部と、前記第1方向において前記複数のメサ部の端に位置し、前記第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられ、前記上部電極に接する第2導電型の第4半導体層とを有し、前記第3半導体層を有さない終端メサ部と、を有する。前記複数のトレンチ構造部は、前記第1方向において前記セルメサ部に隣接し、ゲート電極と、前記ゲート電極と前記セルメサ部との間に設けられた第1絶縁膜と、をそれぞれが有する複数のゲートトレンチ部と、前記第1方向において、前記複数のトレンチ構造部の端に位置し、前記終端メサ部に隣接し、導電部材と、前記導電部材と前記終端メサ部との間に設けられた第2絶縁膜と、を有する第1終端トレンチ部と、を有する。前記第1終端トレンチ部の前記第1方向の幅は、前記ゲートトレンチ部の前記第1方向の幅よりも大きい。前記第1終端トレンチ部の下端は、前記ゲートトレンチ部の下端よりも下方に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の半導体装置の模式平面図である。
図2図1のA-A線における模式断面斜視図である。
図3】第2実施形態の半導体装置の模式平面図である。
図4図3のB-B線における模式断面斜視図である。
図5】(a)及び(b)は、シミュレーション結果を示すグラフである。
図6】シミュレーション結果を示すグラフである。
図7】(a)及び(b)は、シミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
【0008】
[第1実施形態]
図1及び図2を参照して、第1実施形態の半導体装置1について説明する。半導体装置1は、上部電極31と、下部電極32と、半導体層10と、複数のトレンチ構造部40、50Aとを備える。なお、図2において、上部電極31に覆われる部分の構成を見やすくするため、上部電極31を2点鎖線で表している。
【0009】
半導体装置1は、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)構造を有する。上部電極31はMOSFETにおけるソース電極であり、下部電極32はMOSFETにおけるドレイン電極である。例えば、下部電極32に正電位が与えられ、上部電極31にグランド電位が与えられる。後述するゲート電極41のゲート電圧が閾値電圧より高くされたオン状態において、半導体層10を通じて、上部電極31と下部電極32との間を縦方向(第3方向Z)に電流が流れる。第3方向Zにおいて、下部電極32から上部電極31に向かう方向を上または上方とし、上部電極31から下部電極32に向かう方向を下または下方とする。また、本明細書において、ある特定方向の幅とは、その特定方向における最大幅を表す。
【0010】
半導体層10は、第3方向Zにおいて、上部電極31と下部電極32との間に位置する。半導体層10は、第1方向Xに並び、第2方向Yに延びる複数のメサ部21、22を有する。第1方向X及び第2方向Yは、第3方向Zに垂直な面内で互いに直交する。半導体層10は、例えば、シリコン層である。半導体層10は、炭化シリコン層、または窒化ガリウム層であってもよい。本明細書では、半導体層10の導電型において、第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明するが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。
【0011】
半導体層10は、n型の第1半導体層11と、第1半導体層11上に設けられたp型の第2半導体層12と、第2半導体層12上に設けられたn型の第3半導体層13とを有する。第3半導体層13のn型不純物濃度は、第1半導体層11のn型不純物濃度よりも高い。第3半導体層13は、上部電極31に接し、上部電極31と電気的に接続されている。また、半導体層10は、下部電極32と第1半導体層11との間に設けられたn型の第5半導体層15を有する。第5半導体層15のn型不純物濃度は、第1半導体層11のn型不純物濃度よりも高い。第5半導体層15は、下部電極32に接し、下部電極32と電気的に接続されている。
【0012】
第1半導体層11、第2半導体層12、第3半導体層13、及び第5半導体層15は、それぞれ、MOSFETにおけるドリフト層、ベース層、ソース層、及びドレイン層である。
【0013】
図1は、複数のメサ部21、22及び複数のトレンチ構造部40、50Aの配置例を示す模式平面図である。半導体装置1は、セル領域101と、終端領域102とを有する。複数のメサ部21、22及び複数のトレンチ構造部40、50Aは、セル領域101に配置されている。終端領域102は、セル領域101を連続して囲む。終端領域102は、トレンチ構造部を有しない。
【0014】
複数のメサ部は、複数のセルメサ部21と、終端メサ部22とを有する。
【0015】
複数のセルメサ部21のそれぞれは、第1半導体層11(ドリフト層)の一部と、第1半導体層11の一部上に設けられた第2半導体層12(ベース層)と、第2半導体層12上に設けられた第3半導体層13(ソース層)とを有する。
【0016】
図2に示すように、セルメサ部21における第2半導体層12の上部12Aの上には第3半導体層13が設けられず、第2半導体層12の上部12Aは上部電極31に接している。上部12Aのp型不純物濃度は、第2半導体層12における上部12Aよりも下方に位置する部分のp型不純物濃度よりも高い。正孔を、第2半導体層12の上部12Aを介して上部電極31に排出することができる。例えば、第3半導体層13と、第2半導体層12の上部12Aとが、第3方向Yにおいて交互に並んでいる。
【0017】
図1に示すように、終端メサ部22は、第1方向Xにおいて複数のメサ部の両端に位置する。第1方向Xにおいて両端に位置する2つの終端メサ部22の間に、複数のセルメサ部21が配置されている。終端メサ部22は、第1半導体層11の一部と、第1半導体層11の一部上に設けられたp型の第4半導体層14とを有する。終端メサ部22は、第3半導体層13を有さず、第4半導体層14の上部が上部電極31に接している。正孔を、第4半導体層14を介して上部電極31に排出することができる。
【0018】
半導体層10は、終端領域102における第1半導体層11上に設けられたp型の第6半導体層16をさらに有する。第6半導体層16は、第1方向X及び第2方向Yに延び、セル領域101を連続して囲んでいる。第6半導体層16の上部は上部電極31に接している。正孔を、第6半導体層16を介して上部電極31に排出することができる。
【0019】
複数のトレンチ構造部は、複数のゲートトレンチ部40と、第1終端トレンチ部50Aとを有する。複数のゲートトレンチ部40及び第1終端トレンチ部50Aは、第1方向Xにおいてメサ部に隣接し、第2方向Yに延びる。
【0020】
複数のゲートトレンチ部40のそれぞれは、第1方向Xにおいてセルメサ部21に隣接する。第1方向Xにおいて隣り合うゲートトレンチ部40の間に、セルメサ部21が位置する。
【0021】
複数のゲートトレンチ部40のそれぞれは、ゲート電極41と、ゲート電極41とセルメサ部21との間に設けられた第1絶縁膜42とを有する。ゲート電極41の側面は、第1絶縁膜42を介して、第1方向Xにおいて第2半導体層12に対向する。
【0022】
ゲート電極41の下端は、第2半導体層12と第1半導体層11との接合部(pn接合)よりも下方に位置する。第1絶縁膜42は、ゲート電極41の下端と、第1半導体層11との間にも設けられている。本明細書において、「下端」とは、その部材の中で第3方向Zにおいて最も下部電極32に近い端を表す。
【0023】
ゲートトレンチ部40は、第3方向Zにおいてゲート電極41と上部電極31との間に設けられた絶縁層43をさらに有する。
【0024】
ゲート電極41に閾値電圧よりも高いゲート電圧が与えられると、第2半導体層12においてゲート電極41に対向する領域にnチャネル(反転層)が形成され、半導体装置1はオン状態となる。
【0025】
ゲート電極41に閾値電圧よりも低いゲート電圧が与えられると、半導体装置1はオフ状態となり、第2半導体層12と第1半導体層11との接合部(pn接合)、及びゲートトレンチ部40の第1絶縁膜42と第1半導体層11との境界から空乏層が伸び、耐圧が保持される。
【0026】
図1に示すように、第1終端トレンチ部50Aは、第1方向Xにおいて、複数のトレンチ構造部の両端に位置する。第1方向Xにおいて両端に位置する2つの第1終端トレンチ部50Aの間に、複数のゲートトレンチ部40が配置されている。第1終端トレンチ部50Aは、第1方向Xにおいて終端メサ部22に隣接する。第1終端トレンチ部50Aは、第1方向Xにおいて、終端メサ部22と第6半導体層16との間に位置する。
【0027】
第1終端トレンチ部50Aは、導電部材44と、導電部材44と終端メサ部22との間に設けられた第2絶縁膜45とを有する。ゲート電極41及び導電部材44は、例えば、同じ工程で同時に形成され、同材料からなる。ゲート電極41及び導電部材44の材料として、例えば、不純物を含む多結晶シリコンを用いることができる。第2絶縁膜45は、導電部材44の下端と第1半導体層11との間、及び導電部材44の側面と第6半導体層16との間にも設けられている。
【0028】
第1終端トレンチ部50Aは、第3方向Zにおいて導電部材44と上部電極31との間に設けられた絶縁層43をさらに有する。オフ状態において、第4半導体層14と第1半導体層11との接合部(pn接合)、第1終端トレンチ部50Aの第2絶縁膜45と第1半導体層11との境界、及び第6半導体層16と第1半導体層11との接合部(pn接合)から空乏層が伸び、耐圧が保持される。
【0029】
トレンチ構造部は、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法により半導体層10に形成したトレンチ内に形成される。半導体層10に、第1方向Xに並ぶ複数のトレンチを形成すると、第1方向Xの端に位置する終端トレンチの形状が、終端トレンチよりも内側に位置する他のトレンチの形状と異なりやすい傾向がある。
【0030】
本実施形態によれば、第1方向Xの端に位置する第1終端トレンチ部50Aは、第3半導体層13(ソース層)を有さない終端メサ部22に隣接する。第1終端トレンチ部50A及び終端メサ部22は、ゲート電極の制御によりオンオフのスイッチングがされない部分である。これにより、第1終端トレンチ部50Aの形状が劣化しても、半導体装置1の電気特性への影響を抑制できる。
【0031】
第1終端トレンチ部50Aの下端は、ゲートトレンチ部40の下端よりも下方に位置する。導電部材44の下端は、ゲート電極41の下端よりも下方に位置する。第1終端トレンチ部50Aの下端は、導電部材44の下端と第1半導体層11との間に位置する第2絶縁膜45と、第1半導体層11との境界である。ゲートトレンチ部40の下端は、ゲート電極41の下端と第1半導体層11との間に位置する第1絶縁膜42と、第1半導体層11との境界である。
【0032】
本発明者らは、シミュレーション(Technology Computer Aided Design(TCAD))により、モデル1とモデル2について、第1終端トレンチ部50Aの下端で発生する電界を計算した。モデル1では、第1終端トレンチ部50Aの下端が、ゲートトレンチ部40の下端よりも下方に位置する。モデル2では、第1終端トレンチ部50Aの下端の位置(第3方向Zの位置)が、ゲートトレンチ部40の下端の位置(第3方向Zの位置)と同じである。このシミュレーションの結果、モデル1の方がモデル2よりも、第1終端トレンチ部50Aの下端における電界強度のピークが高くなった。第1終端トレンチ部50Aの下端における電界強度が高くなると、オフ状態において第1終端トレンチ部50Aの下端から第1半導体層11内に空乏層が伸びにくくなり、耐圧が低下しやすくなる。
【0033】
本実施形態によれば、図2に示すように、第1終端トレンチ部50Aの第1方向Xの幅を、ゲートトレンチ部40の第1方向Xの幅よりも大きくしている。また、第1終端トレンチ部50Aの導電部材44の第1方向Xの幅は、ゲートトレンチ部40のゲート電極41の第1方向Xの幅よりも大きい。このような本実施形態によれば、図5(a)及び図5(b)を参照して以下に説明するように、第1終端トレンチ部50Aの下端における電界強度のピークを低下させることができた。
【0034】
図5(a)は、シミュレーションにより、図2に示す第1方向Xに沿ったX1-X1’の位置の電界を計算した結果を示す。3つのモデルa~cについて計算した。3つのモデルa~cとも、第1終端トレンチ部50Aの下端がゲートトレンチ部40の下端よりも下方に位置する。3つのモデルa~cの第1終端トレンチ部50Aの下端の位置(第3方向Zの位置)は同じである。各モデルa~cは、第1終端トレンチ部50Aの幅(第1方向Xの幅)が互いに異なる。
【0035】
モデルaの第1終端トレンチ部50Aの幅は、ゲートトレンチ部40の幅と同じであり、0.15μmである。
モデルbの第1終端トレンチ部50Aの幅は、モデルaの第1終端トレンチ部50Aの幅よりも大きく、0.2μmである。
モデルcの第1終端トレンチ部50Aの幅は、モデルbの第1終端トレンチ部50Aの幅よりも大きく、0.3μmである。
【0036】
図5(b)は、上記モデルa~cについて、シミュレーションにより、Idss-Vdss特性を計算した結果を示す。Idssはドレイン電流を、Vdssはドレインソース間電圧を表す。
【0037】
図5(a)の結果より、第1終端トレンチ部50Aの幅をゲートトレンチ部40の幅よりも大きくしたモデルb及びモデルcにおいて、第1終端トレンチ部50Aの下端における電界強度のピークを、モデルaよりも低下できた。第1終端トレンチ部50Aの下端における電界強度のピークを低下できることにより、第1終端トレンチ部50Aの下端から第1半導体層11内に空乏層が伸びやすくなる。これにより、図5(b)に示すように、モデルb及びモデルcは、モデルaよりも、耐圧を向上できる。
【0038】
また、図5(a)に示すように、第1終端トレンチ部50Aの幅が大きくなるほど、電界強度のピークが右方、すなわち第6半導体層16側に移動する。これにより、第1終端トレンチ部50Aの下端においてインパクトイオン化で発生した正孔を、終端メサ部22の第4半導体層14及び第6半導体層16を介して、上部電極31に排出しやすくできる。インパクトイオン化で発生した正孔が、セルメサ部21と第1絶縁膜42との界面に沿って流れにくくなり、その界面や第1絶縁膜42に正孔がトラップされにくくなる。これにより、リーク電流、耐圧の低下、及び素子破壊が起きにくくなる。
【0039】
第1終端トレンチ部50Aの幅を広げすぎると、導電部材44及び絶縁層43のトレンチ内への埋め込み性が低下し、第1終端トレンチ部50Aに空隙が生じるおそれがある。そのため、第1終端トレンチ部50Aの幅は、ゲートトレンチ部40の幅よりも大きく、且つ、ゲートトレンチ部40の幅の2.7倍以下が好ましい。これにより、耐圧を向上させつつ、第1終端トレンチ部50Aに空隙を生じにくくできる。
【0040】
半導体装置1は、図1に示すように、第1終端トレンチ部50Aに連続して第2方向Yに延びる第2終端トレンチ部50Bをさらに備える。第1終端トレンチ部50A及び第2終端トレンチ部50Bは、セルメサ部21、終端メサ部22、及びゲートトレンチ部40を連続して囲んでいる。
【0041】
第2終端トレンチ部50Bは、第1終端トレンチ部50Aと同様、導電部材44と、導電部材44と半導体層10との間に設けられた第2絶縁膜45とを有する。
【0042】
第2終端トレンチ部50Bの第2方向Yの幅は、ゲートトレンチ部40の第1方向Xの幅よりも大きい。第2終端トレンチ部50Bの下端は、ゲートトレンチ部40の下端よりも下方に位置する。
【0043】
ゲートトレンチ部40を形成するためのゲートトレンチ、第1終端トレンチ部50Aを形成するための第1終端トレンチ、及び第2終端トレンチ部50Bを形成するための第2終端トレンチは、RIE法により同時に形成される。このとき、ゲートトレンチ及び第1終端トレンチと直交する方向に延びる第2終端トレンチに、局所的に深い部分(サブトレンチ)が形成されやすい傾向がある。サブトレンチには、鋭角の部分や曲率が大きい部分が形成されやすく、トレンチ内に例えば熱酸化法により形成される絶縁膜(シリコン酸化膜)に局所的に薄い部分が生じやすくなる。トレンチ内における絶縁膜の局所的に薄い部分には電界が集中しやすく、リーク電流の原因になり得る。
【0044】
第2終端トレンチ部50Bの第2方向Yの幅を、ゲートトレンチ部40の第1方向Xの幅よりも大きくすることで、第2終端トレンチを形成するときに、第2終端トレンチにエッチングガスが溜まりやすくなってエッチングが進行しやすくなる。これにより、第2終端トレンチに鋭角の部分や曲率が大きい部分が形成されにくくなり、第2終端トレンチ部50Bの第2絶縁膜45にかかる電界を低減し、リーク電流を抑制できる。
【0045】
[第2実施形態]
図3及び図4を参照して、第2実施形態の半導体装置2について説明する。第2実施形態の半導体装置2について、第1実施形態の半導体装置1と異なる構成について主に説明する。
【0046】
図4に示すように、半導体装置2において、第1終端トレンチ部50Aの下端は、ゲートトレンチ部40の下端よりも上方に位置し、且つ、終端メサ部22における第4半導体層14と第1半導体層11との接合部(pn接合)よりも下方に位置する。また、導電部材44の下端は、ゲート電極41の下端よりも上方に位置し、且つ、第4半導体層14と第1半導体層11とのpn接合部よりも下方に位置する。第1終端トレンチ部50Aの下端及び導電部材44の下端は、第6半導体層16と第1半導体層11とのpn接合よりも下方に位置する。
【0047】
第1終端トレンチ部50Aの第1方向Xの幅は、ゲートトレンチ部40の第1方向Xの幅以下である。例えば、第1終端トレンチ部50Aの幅は、ゲートトレンチ部40の幅と同じである。または、第1終端トレンチ部50Aの幅は、ゲートトレンチ部40の幅よりも小さくてもよい。
【0048】
図6は、シミュレーションにより、図4に示す第1方向Xに沿ったX2-X2’の位置のインパクトイオン化によるキャリアの生成を計算した結果を示す。4つのモデルa~dについて計算した。4つのモデルa~dとも、第1終端トレンチ部50Aの第1方向Xの幅を、ゲートトレンチ部40の第1方向Xの幅と同じ(0.15μm)にしている。各モデルa~dは、第1終端トレンチ部50Aの下端の位置(第3方向Zにおける位置)が互いに異なる。
【0049】
モデルaの第1終端トレンチ部50Aの下端は、ゲートトレンチ部40の下端よりも上方に位置し、且つ、終端メサ部22における第4半導体層14と第1半導体層11とのpn接合よりも上方に位置する。モデルaの第1終端トレンチ部50Aの下端は、ゲートトレンチ部40の下端よりも、0.2μm上方に位置する。
【0050】
モデルbの第1終端トレンチ部50Aの下端は、ゲートトレンチ部40の下端よりも上方に位置し、且つ、終端メサ部22における第4半導体層14と第1半導体層11とのpn接合よりも下方に位置する。モデルbの第1終端トレンチ部50Aの下端は、ゲートトレンチ部40の下端よりも、0.05μm上方に位置する。
【0051】
モデルcの第1終端トレンチ部50Aの下端の位置は、ゲートトレンチ部40の下端の位置と同じであり、且つ、終端メサ部22における第4半導体層14と第1半導体層11とのpn接合よりも下方に位置する。
【0052】
モデルdの第1終端トレンチ部50Aの下端は、ゲートトレンチ部40の下端よりも下方に位置し、且つ、終端メサ部22における第4半導体層14と第1半導体層11とのpn接合よりも下方に位置する。第1終端トレンチ部50Aの下端がゲートトレンチ部40の下端よりも下方に位置するモデルdについては、図2に示すX1-X1’の位置のインパクトイオン化を計算したことになる。モデルdの第1終端トレンチ部50Aの下端は、ゲートトレンチ部40の下端よりも、0.1μm下方に位置する。
【0053】
図6に示すように、第1終端トレンチ部50Aの下端がゲートトレンチ部40の下端よりも上方に位置するモデルa及びモデルbでは、インパクトイオン化のピークが、第1終端トレンチ部50Aに隣接するゲートトレンチ部40に位置する。第1終端トレンチ部50Aの下端がゲートトレンチ部40の下端と同じ位置にあるモデルc、及び第1終端トレンチ部50Aの下端がゲートトレンチ部40の下端よりも下方に位置するモデルdでは、インパクトイオン化のピークが、第1終端トレンチ部50Aに位置する。
【0054】
図7(a)は、上記モデルa~dについて、シミュレーションにより、空乏層の幅を計算した結果を示す。モデルa及びモデルbについては、第1終端トレンチ部50Aに隣接するゲートトレンチ部40の下端から下方に伸びる空乏層の幅を表す。モデルc及びモデルdについては、第1終端トレンチ部50Aの下端から下方に伸びる空乏層の幅を表す。
【0055】
図7(b)は、上記モデルa~dについて、シミュレーションにより、Vdssを計算した結果を示す。
【0056】
図6に示すように、第1終端トレンチ部50Aの下端が、ゲートトレンチ部40の下端よりも上方に位置し、且つ、終端メサ部22における第4半導体層14と第1半導体層11とのpn接合よりも下方に位置するモデルbにおいて、最もインパクトイオン化のピークが低くなっている。インパクトイオン化が低下すると、生成された熱キャリア(熱電子及び熱正孔)の量が減るため、半導体装置2の特性変動を抑制できる。また、図7(a)に示すように、モデルbにおいて最も空乏層の幅が広くなり、この結果、図7(b)に示すように、モデルbにおいて最も高い耐圧が得られる。
【0057】
また、第1終端トレンチ部50Aの下端が、半導体層10の上面からゲートトレンチ部40の下端までの第3方向Zの距離の2%以上10%以下の距離、ゲートトレンチ部40の下端から上方に位置することで、熱電子が、セルメサ部21の第2半導体層12と、終端メサ部22の第4半導体層14とに分散されつつ上部電極31に流れることをシミュレーションにより確認できた。これにより、電流集中によるホットスポットが分散され、耐圧を高く保持することができる。
【0058】
半導体装置2において、第2終端トレンチ部50Bの第2方向Yの幅は、第1終端トレンチ部50Aの第1方向Xの幅と同じにすることができる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1,2…半導体装置、10…半導体層、11…第1半導体層、12…第2半導体層、13…第3半導体層、14…第4半導体層、15…第5半導体層、16…第6半導体層、21…セルメサ部、22…終端メサ部、31…上部電極、32…下部電極、41…ゲート電極、42…第1絶縁膜、43…絶縁層、44…導電部材、45…第2絶縁膜、50A…第1終端トレンチ部、50B…第2終端トレンチ部、101…セル領域、102…終端領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7