(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155293
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】吹付・左官自動施工台車及びこれを用いた既設トンネルの更新・修繕方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20251006BHJP
【FI】
E21D11/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059046
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孟 凡淞
(72)【発明者】
【氏名】春田 克樹
(72)【発明者】
【氏名】浅井 秀明
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BB02
2D155CA04
2D155DB02
2D155KC06
2D155LA12
2D155LA16
(57)【要約】
【課題】既設トンネルの内周面にモルタルを吹き付ける吹付施工と吹き付け面を均す左官施工とを効率的に実施可能な吹付・左官自動施工台車に関する技術を提供する。
【解決手段】吹付・左官自動施工台車は、既設トンネルの内空をその延在方向に沿って走行可能な走行輪を有する自走式の吹付・左官装置用架台と、吹付・左官装置用架台に搭載されて既設トンネルにおける内周面に対してモルタルの吹付を自動で行う自動吹付装置と、吹付・左官装置用架台に搭載されて自動吹付装置によって内周面に吹き付けられたモルタルの均しを自動で行う自動左官装置と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設トンネルの更新・修繕作業に適用される吹付・左官自動施工台車であって、
前記既設トンネルの内空をその延在方向に沿って走行可能な走行輪を有する自走式の吹付・左官装置用架台と、
前記吹付・左官装置用架台に搭載され、前記既設トンネルにおける内周面に対してモルタルの吹付を自動で行う自動吹付装置と、
前記吹付・左官装置用架台に搭載され、前記自動吹付装置によって前記内周面に吹き付けられたモルタルの均しを自動で行う自動左官装置と、
を備える、
吹付・左官自動施工台車。
【請求項2】
前記吹付・左官装置用架台の前後軸において、前記自動左官装置が前記自動吹付装置の後段に設置されている、
請求項1に記載の吹付・左官自動施工台車。
【請求項3】
前記自動吹付装置及び前記自動左官装置が、前記吹付・左官装置用架台の前後軸方向に隣接して配置されている、
請求項2に記載の吹付・左官自動施工台車。
【請求項4】
前記自動吹付装置は、モルタルの吹付ノズルを有する吹付機本体と、前記吹付機本体を保持する共に当該吹付機本体を前記内周面に沿って移動させる際の軌道を規定するアーチ形状の第1ガイドレールと、を有し、
前記自動左官装置は、モルタルの均し板を有する均し機本体と、前記均し機本体を保持する共に当該均し機本体を前記内周面に沿って移動させる際の軌道を規定するアーチ形状の第2ガイドレールと、を有する、
請求項1から3の何れか一項に記載の吹付・左官自動施工台車。
【請求項5】
前記第1ガイドレール及び前記第2ガイドレールは、前記吹付・左官装置用架台の左右軸方向に沿って延在している、
請求項4に記載の吹付・左官自動施工台車。
【請求項6】
前記自動吹付装置は、前記吹付ノズルを前記吹付・左官装置用架台の前後軸方向に所定のノズルストローク幅で往復スライドさせつつ当該吹付ノズルによるモルタルの吹き付け動作が可能である、
請求項1から3の何れか一項に記載の吹付・左官自動施工台車。
【請求項7】
前記吹付・左官装置用架台の前後軸方向における前記均し板のブレード幅が、前記ノズルストローク幅と同等である、
請求項6に記載の吹付・左官自動施工台車。
【請求項8】
請求項1に記載された吹付・左官自動施工台車を用いて既設トンネルの内周面に対してモルタルの自動吹付施工及び自動左官施工を実施する、既設トンネルの更新・修繕方法。
【請求項9】
請求項1に記載された吹付・左官自動施工台車と、
前記吹付・左官自動施工台車に搭載された前記自動吹付装置にモルタルを供給するモルタル供給台車と、
を備える、
吹付・左官自動施工台車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹付・左官自動施工台車及びこれを用いた既設トンネルの更新・修繕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設トンネルを更新・修繕する工事において、トンネル内周面にモルタルを吹き付ける吹付作業(吹付施工)と、吹き付け面(モルタル表面)を平滑に均す左官作業(左官施工)とが行われる場合がある。従来においては、例えば、作業用台車の作業床(ステージ)に搭乗した作業員が上記吹付作業及び左官作業を手作業で行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3837655号公報
【特許文献2】特開平6-81595号公報
【特許文献3】特開昭58-191900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吹付作業及び左官作業を手作業で行う場合には作業員の労力が大きく、作業効率の低下や人件費の増加を招きやすい。
【0005】
上記特許文献1~3などには、トンネル掘削機などを用いて地山にトンネルを新規に構築する際のコンクリートの吹付に関する技術は開示されているが、既設トンネルの更新・修繕に適用できる技術とは言えない
【0006】
本開示に係る技術は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、既設トンネルの内周面にモルタルを吹き付ける吹付施工と吹き付け面を均す左官施工とを効率的に実施可能な吹付・左官自動施工台車に関する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る一態様は、既設トンネルの更新・修繕作業に適用される吹付・左官自動施工台車であって、
前記既設トンネルの内空をその延在方向に沿って走行可能な走行輪を有する自走式の吹付・左官装置用架台と、
前記吹付・左官装置用架台に搭載され、前記既設トンネルにおける内周面に対してモルタルの吹付を自動で行う自動吹付装置と、
前記吹付・左官装置用架台に搭載され、前記自動吹付装置によって前記内周面に吹き付けられたモルタルの均しを自動で行う自動左官装置と、
を備える吹付・左官自動施工台車である。
【0008】
前記吹付・左官装置用架台の前後軸において、前記自動左官装置が前記自動吹付装置の後段に設置されていてもよい。
【0009】
前記自動吹付装置及び前記自動左官装置が、前記吹付・左官装置用架台の前後軸方向に隣接して配置されていてもよい。
【0010】
前記自動吹付装置は、モルタルの吹付ノズルを有する吹付機本体と、前記吹付機本体を
保持する共に当該吹付機本体を前記内周面に沿って移動させる際の軌道を規定するアーチ形状の第1ガイドレールと、を有し、
前記自動左官装置は、モルタルの均し板を有する均し機本体と、前記均し機本体を保持する共に当該均し機本体を前記内周面に沿って移動させる際の軌道を規定するアーチ形状の第2ガイドレールと、を有していてもよい。
【0011】
前記第1ガイドレール及び前記第2ガイドレールは、前記吹付・左官装置用架台の左右軸方向に沿って延在していてもよい。
【0012】
前記自動吹付装置は、前記吹付ノズルを前記吹付・左官装置用架台の前後軸方向に所定のノズルストローク幅で往復スライドさせつつ当該吹付ノズルによるモルタルの吹き付け動作が可能であってもよい。
【0013】
前記吹付・左官装置用架台の前後軸方向における前記均し板のブレード幅が、前記ノズルストローク幅と同等であってもよい。
【0014】
また、本開示の一態様は、上記の吹付・左官自動施工台車を用いて既設トンネルの内周面に対してモルタルの自動吹付施工及び自動左官施工を実施する、既設トンネルの更新・修繕方法である。
【0015】
また、本開示の一態様は、上記の吹付・左官自動施工台車と、前記吹付・左官自動施工台車に搭載された前記自動吹付装置にモルタルを供給するモルタル供給台車と、を備える吹付・左官自動施工台車システムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、既設トンネルの内周面にモルタルを吹き付ける吹付施工と吹き付け面を均す左官施工とを効率的に実施可能な吹付・左官自動施工台車に関する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、吹付・左官自動施工台車システムを側方から眺めた概略構成図である。
【
図2】
図2は、吹付・左官自動施工台車を左側方から眺めた概略構成図である。
【
図3】
図3は、吹付・左官自動施工台車を上方から眺めた概略構成図である。
【
図7】
図7は、均し機本体及びその周辺構造を説明する図である。
【
図8】
図8は、均し機本体における均し板の変形例を説明する図である。
【
図9】
図9は、吹付・左官自動施工台車の変形例を説明する図である。
【
図10】
図10は、自動吹付施工及び自動左官施工の実施状況を模式的に説明する図である。
【
図11】
図11は、自動吹付施工及び自動左官施工の実施状況を模式的に説明する図である。
【
図12】
図12は、吹付・左官自動施工台車システムの一態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、既設トンネルを更新・修繕する湿式工法に適用される、吹付・左官自動施工台車及びこれを用いた既設トンネルの更新・修繕方法について説明する。本実施形態に係る吹付・左官自
動施工台車は、更新・修繕対象となる既設トンネルの内周面に沿ってモルタルを吹き付ける吹付作業(吹付施工)と、吹き付け面(モルタル表面)を平滑に均す左官作業(左官施工)との双方を自動で施工する(機械化施工)ための台車である。更新・修繕対象となる既設トンネルは特に限定されないが、以下では導水路トンネルを例に挙げて説明する。
【0019】
<実施形態>
図1は、実施形態に係る吹付・左官自動施工台車システム1を側方から眺めた概略構成図である。吹付・左官自動施工台車システム1は、吹付・左官自動施工台車100及びモルタル供給台車500を備えている。吹付・左官自動施工台車100及びモルタル供給台車500はそれぞれ走行輪を備えており、更新・修繕対象となる既設トンネルの内側空間(トンネル床面IV上)を当該既設トンネルの延長方向(トンネル軸方向)に沿って自走することができる。吹付・左官自動施工台車システム1は、吹付・左官自動施工台車100及びモルタル供給台車500をトンネル軸方向における「施工進行方向」に沿って走行させ、順次、施工箇所を移動させながらトンネル延長方向に沿って既設トンネルの更新・修繕を行う。なお、吹付・左官自動施工台車システム1は、吹付・左官自動施工台車100及びモルタル供給台車500の走行を停止した状態で既設トンネルにおけるアーチ形状を有する内周面TFに対するモルタルの自動吹付施工及び自動左官施工を実施する。なお、本明細書においては、トンネル軸方向における「施工進行方向」を基準にして、吹付・左官自動施工台車100及びモルタル供給台車500の各前後方向を説明する。
【0020】
図2は、吹付・左官自動施工台車100を左側方から眺めた概略構成図である。
図3は、吹付・左官自動施工台車100を上方から眺めた概略構成図である。
図4は、
図2のA-A矢視図である。
【0021】
吹付・左官自動施工台車100には、その前方側に自動吹付装置110が配置され、後方側に自動左官装置200が配置されている。すなわち、吹付・左官自動施工台車100には、前段側に自動吹付装置110が搭載され、当該自動吹付装置110の後段側に自動左官装置200が搭載されている。なお、
図1及び
図3に、吹付・左官自動施工台車100における上下前後左右方向を示しているが、図示の各方向は、吹付・左官自動施工台車100を構成する各要素における相対的な位置関係を示しているに過ぎない。
【0022】
吹付・左官自動施工台車100は、自動吹付装置110及び自動左官装置200を搭載する吹付・左官装置用架台130を有している。吹付・左官装置用架台130は、いわゆるガントリー型の架台として構成されており、吹付・左官装置用架台130の前後方向に伸びる左右の下方縦梁フレーム131A,131B、当該下方縦梁フレーム131A,131Bから立設する3つの門型フレーム132A~132Cなどを備えている。下方縦梁フレーム131A,131Bは、吹付・左官装置用架台130の下部側に位置し、互いに平行に配置されている。なお、図中に示す符号X1は吹付・左官装置用架台130を縦断する前後軸を示し、符号Y1は吹付・左官装置用架台130を横断する左右軸Y1を示す。左右軸Y1は前後軸X1に直交している。吹付・左官装置用架台130の下方縦梁フレーム131A,131Bは前後軸X1と平行に伸びている。また、符号Z1は、吹付・左官装置用架台130の上下軸であり、前後軸X1及び左右軸Y1に直交している。
【0023】
図示の例では、下方縦梁フレーム131A,131Bの前端側に前方門型フレーム132Aが立設し、下方縦梁フレーム131A,131Bの前後方向における中間部に中間門型フレーム132Bが立設し、下方縦梁フレーム131A,131Bの後端側に後方門型フレーム132Cが立設している。各門型フレーム132A~132Cは、それぞれ下方縦梁フレーム131A,131Bから垂直に立設する一対の支柱フレームFR1と、一対の支柱フレーム同士を連結する上方横梁フレームFR2とを有し、これらによって門型をなしている。各門型フレーム132A~132Cの上方横梁フレームFR2は、吹付・左
官装置用架台130の左右軸Y1と平行に伸びている。
【0024】
また、吹付・左官装置用架台130は、各門型フレーム132A~132Cの上方横梁フレームFR2を連結する上方縦梁フレーム133A,133Bを更に備える。上方縦梁フレーム133A,133Bは一直線上に連設されており、吹付・左官装置用架台130の前後方向に沿って下方縦梁フレーム131A,131Bと平行に延在している。上方縦梁フレーム133Aは、前方門型フレーム132Aと中間門型フレーム132Bとにおける上方横梁フレームFR2同士を連結する。また、上方縦梁フレーム133Bは、中間門型フレーム132Bと後方門型フレーム132Cとにおける上方横梁フレームFR2同士を連結する。上方縦梁フレーム133A,133Bは、吹付・左官装置用架台130の幅方向(左右軸Y1方向)における中央位置よりも左側に偏心した位置に設けられている。但し、吹付・左官装置用架台130は、自動吹付装置110及び自動左官装置200を搭載することができれば、その構造について特に限定されない。
【0025】
吹付・左官装置用架台130は、例えば、前後左右の四隅に走行輪(走行タイヤ)134を備え、走行輪134によって既設トンネルをトンネル軸方向に沿って自走することができる。なお、吹付・左官装置用架台130は、すべての走行輪134が駆動輪である必要はなく、その一部を従動輪としてもよい。また、符号134Aは前輪(前側走行輪)を示し、134Bは後輪(後側走行輪)を示す。
【0026】
以上のように、吹付・左官装置用架台130は、ガントリー型の自走式架台として構成されている。吹付・左官自動施工台車100は、吹付・左官装置用架台130における前方門型フレーム132Aと中間門型フレーム132Bとの間に形成される前段セクションS1に自動吹付装置110が設置されている。また、中間門型フレーム132Bと後方門型フレーム132Cとの間に形成される後段セクションS2に自動左官装置200が設置されている。
【0027】
吹付・左官装置用架台130は、走行用モータを備えており、走行用モータの作動によって前進、後進などの各種走行が可能である。例えば、吹付・左官自動施工台車100は、吹付・左官装置用架台130の走行を操作するための走行用コントローラ(例えば、ペンダントスイッチなど)を備え、走行用コントローラを操作することで吹付・左官装置用架台130の前進、後進、非常停止、走行パターンの切替などが可能であってもよい。走行パターンの切替は、例えば、吹付・左官装置用架台130の前輪を駆動する駆動方式、左輪のみを駆動する駆動方式、右輪だけを駆動する駆動方式などを切り替えることができる。また、本実施形態においては、走行輪134にノーパンクタイヤを使用しているがこれには特に限定されない。
【0028】
自動吹付装置110は、吹付機本体140と、吹付機本体140を搭載する一対の第1ガイドレール150A,150Bなどを備える。一対の第1ガイドレール150A,150Bは、当該第1ガイドレール150A,150Bに沿って吹付機本体140が移動(駆動)する際の軌道を規定するレール状のガイド部材である。
図3に示すように、第1ガイドレール150Aは、前段セクションにおける前部側の位置に設置されており、支持フレームFR3を介して前方門型フレーム132Aに固定されている。第1ガイドレール150Bは、前段セクションにおける後部側の位置に設置されており、支持フレームFR3を介して中間門型フレーム132Bに固定されている。なお、
図4に示す支持フレームFR3の形状は一例であり、適宜変更することができる。また、
図4において、一対の第1ガイドレール150A,150Bは、前後軸X1に沿って眺めた側面視において同一のアーチ形状を有している。より具体的には、一対の第1ガイドレール150A,150Bは、更新・修繕対象となる既設トンネルの内周面TFの形状に概略合致するようなアーチ形状を有するレール部材として構成されている。一対の第1ガイドレール150A,150B
は、吹付・左官装置用架台130の幅方向(左右軸Y1方向)に沿ってアーチ状に延設されている。
【0029】
図5は、自動吹付装置110を説明する図である。一対の第1ガイドレール150A,150Bは、吹付・左官装置用架台130の前後軸X1方向(前後方向)に間隔をあけて対向配置されている。吹付機本体140は、一対の第1ガイドレール150A,150B間に掛け渡されるように、これらによって保持されている。符号141は、吹付機本体140の筐体カバーであり、例えばボックス形状を有している。筐体カバー141は、吹付機本体140を構成する各種部品を保持している。以下では、一対の第1ガイドレール150A,150B間に架設される吹付機本体140(筐体カバー141)のうち、前後軸X1方向に沿った方向を「幅方向」として説明する。
【0030】
一対の第1ガイドレール150A,150Bは、アーチ形状を有するレール部Rp1,Rp2、レール部Rp1,Rp2に沿って設けられたラックRg1,Rg2、レール部Rp1,Rp2の幅方向外側に設けられた外側リブRo1,Ro2などを含んで構成されている。ラックRg1,Rg2は、レール部Rp1,Rp2のアーチ形状に沿って延伸する長尺レール状の歯車(ギヤ)である。外側リブRo1,Ro2は、吹付機本体140の幅方向を基準としてレール部Rp1,Rp2の外側に隣接して設けられており、レール部Rp1,Rp2と同様なアーチ形状を有している。
【0031】
吹付機本体140は、筐体カバー141の幅方向(前後軸X1方向)に伸びる第1シャフト142及び第2シャフト143、これら各シャフト142,143を回転駆動する駆動モータ144等を備えている。駆動モータ144は、例えばギヤモータであってもよく、第1シャフト142及び第2シャフト143を同期して回転駆動する。また、駆動モータ144は、第1シャフト142及び第2シャフト143を正逆方向に回転駆動することが可能である。
【0032】
第1シャフト142及び第2シャフト143の両端側は、筐体カバー141の側面に形成された挿通孔を通じてカバー外部に露出している。第1シャフト142の両端には、円筒形の歯車(ギヤ)であるピニオン142A,142Bがそれぞれ設けられている。吹付機本体140におけるピニオン142A,142Bは、それぞれ第1ガイドレール150A,150BのラックRg1,Rg2に歯合されている。また、第2シャフト143の両端には、第1ガイドレール150A,150Bのレール部Rp1,Rp2から吹付機本体140が脱落しないように当該吹付機本体140を第1ガイドレール150A,150Bに向けて押し付ける脱落防止用ローラー143A,143Bが設けられている。脱落防止用ローラー143A,143Bは、外側リブRo1,Ro2を受け入れる凹部145を有する。第2シャフト143が回転駆動されると、各脱落防止用ローラー143A,143Bは、外側リブRo1,Ro2を凹部145に受け入れた状態で当該外側リブRo1,Ro2上を滑動することができる。
【0033】
吹付機本体140は、更に、吹付ノズルユニット160を備えている。吹付ノズルユニット160は、モルタルの吹付を行う吹付ノズル161と、吹付ノズル161を保持すると共に当該吹付ノズル161を吹付機本体140の幅方向(前後軸X1方向)に沿って往復動させるためのスライドユニット162とを含む。スライドユニット162は、例えば、吹付機本体140の幅方向(前後軸X1方向)に沿って伸びる直動用ガイドレール163、直動用ガイドレール163に沿ってスライド自在に取り付けられた可動ブロック164、可動ブロック164に設けられると共に吹付ノズル161を固定するノズル保持部165、直動用ガイドレール163に沿って可動ブロック164を直動させる駆動機構166などを備えていてもよい。
【0034】
可動ブロック164は、直動用ガイドレール163に対する円滑なスライド動作が実現されるように、ベアリングなどの軸受部材を直動用ガイドレール163との間に介在させてもよい。駆動機構166は、適宜のモータや、当該モータの回転力を可動ブロック164のスライド直線運動に変換する変換機構を備えていてもよい。このような変換機構は特に限定されず、例えばボールねじ方式やベルト方式などの機構を採用してもよい。また、
図5に示す符号Wnは、吹付ノズルユニット160のスライドユニット162が吹付ノズル161を往復スライドさせる際のストローク幅(ノズルストローク幅)である。このノズルストローク幅Wnは、吹付・左官自動施工台車100(自動吹付装置110)を用いた1回の自動吹付施工において内周面TFにモルタルを吹付可能なトンネル軸方向(前後軸X1方向)への吹付幅に相当する。ノズルストローク幅Wn(モルタル吹付幅)は特に限定されないが、例えば1メートル程度であってもよい。
【0035】
上記のように構成される自動吹付装置110は、駆動モータ144を作動させることによって、アーチ形状を有する第1ガイドレール150A,150Bのレール部Rp1,Rp2に沿って吹付機本体140を移動させることができる。また、自動吹付装置110は、吹付ノズル161を吹付・左官装置用架台130の前後軸X1方向に所定のノズルストローク幅で往復スライドさせながら吹付ノズル161によるモルタルの吹き付け動作が可能である。一例として、自動吹付装置110によるモルタルの自動吹付施工を行う際、
図4に符号Psで示す吹付開始位置から符号Peで示す吹付終了位置に至るまでの基準区間に亘って吹付機本体140を第1ガイドレール150A,150Bに沿って移動させつつ、吹付機本体140の幅方向(前後軸X1方向)に沿って吹付ノズル161を往復動させながらモルタルの吹付施工を行う。これにより、
図4に示す内周面TFのうち、ハッチングが付された吹付予定領域に対してモルタルの自動吹付施工を行うことができる。
【0036】
なお、上記の説明では、第1ガイドレール150A,150Bに沿って吹付機本体140を上昇させながらモルタルの自動吹付施工を行うことを例に説明したが、この限りではない。すなわち、第1ガイドレール150A,150Bに沿って吹付機本体140を降下させつつ既設トンネルの内周面TFに対してモルタルの自動吹付施工を行ってもよい。また、吹付機本体140を第1ガイドレール150A,150Bに沿って上昇させながらモルタルを吹き付ける上昇過程吹付工程と、降下させながらモルタルを吹き付ける降下過程吹付工程とを適宜組み合わせて吹付施工を行ってもよい。一例として、第1ガイドレール150A,150Bの下端側から上端側に向かう往路と当該上端側から下端側に向かう復路を1往復させることで、上述した上昇過程吹付工程と降下過程吹付工程とをそれぞれ1
回ずつ、合計2回の吹付工程を含んで自動吹付施工を行ってもよい。勿論、本実施形態に係る自動吹付施工は上記の例に限定されず、モルタルの吹き付けを行う過程で、吹付機本体140を第1ガイドレール150A,150Bに沿って1往復半させてもよいし、2往復以上させてもよい。なお、吹付・左官自動施工台車100は、自動吹付装置110の動作を制御するためのコントローラを有している。コントローラは、吹付・左官自動施工台車100に設けられた制御盤であってもよい。
【0037】
次に、自動左官装置200について説明する。自動左官装置200は、均し機本体300、左官装置用架台400などを備える。左官装置用架台400は、均し機本体300を搭載するための架台であり、一対の第2ガイドレール410A,410Bを有している。なお、一対の第2ガイドレール410A,410Bは、上述した自動吹付装置110における一対の第1ガイドレール150A,150Bと実質的に同一構造であり、更新・修繕対象となる既設トンネルの内周面TFに合致するようなアーチ形状を有するレール部材として形成されている。
【0038】
左官装置用架台400は、吹付・左官装置用架台130における後段セクションS2に搭載されている。左官装置用架台400は、吹付・左官装置用架台130の右側の下方縦
梁フレーム131Bから立設する一対の架構フレーム420A,420Bと、これら架構フレーム420A,420B同士を接続する複数の横梁フレームを組み合わせて構成されている。架構フレーム420Aは、吹付・左官装置用架台130における後段セクションS2において前部側に位置しており、以下「前方架構フレーム」と呼ぶ場合がある。一方、架構フレーム420Bは、吹付・左官装置用架台130における後段セクションS2において後部側に位置しており、以下「後方架構フレーム」と呼ぶ場合がある。前方架構フレーム420A及び後方架構フレーム420Bは、吹付・左官装置用架台130の左右軸Y1及び上下軸Z1によって規定される吹付・左官装置用架台130の横断面に沿って架設されている。
【0039】
図6は、
図2のB-B矢視図である。
図6には、後段セクションS2における後部に位置する後方架構フレーム420Bを描画しているが、前方架構フレーム420A及び後方架構フレーム420Bは実質的に同一構造を有している。そのため、ここでは前方架構フレーム420A及び後方架構フレーム420Bを区別せずに説明することとする。
【0040】
各架構フレーム420A,420Bは、吹付・左官装置用架台130における右側の下方縦梁フレーム131Bに設けられた支持プレートPL上を滑動可能に立設する可動フレームとして構成されている。
図6に示すように、架構フレーム420A,420Bは、第2ガイドレール410A,410Bを支持するための支持フレーム421を有する。支持フレーム421は、下端側から柱フレーム422、斜めフレーム423、水平フレーム424などを組み合わせて構成されており、取付プレート425を介して第2ガイドレール410A,410Bを固定している。
【0041】
また、架構フレーム420A,420Bにおける柱フレーム422の下端部にはキャスター(車輪)426が取り付けられており、下方縦梁フレーム131Bに設置された支持プレートPLの上面(支持面)上を滑動することができる。
図6に示すように、支持プレートPLは、下方縦梁フレーム131B上に水平な姿勢で延在するプレート部材であり、下方縦梁フレーム131Bから左右方向に張り出している。なお、架構フレーム420A,420Bにおける柱フレーム422は、吹付・左官装置用架台130における上下軸Z1方向に沿って延在し、水平フレーム424は左右軸Y1方向に沿って延在している。
【0042】
架構フレーム420A,420Bは、支持フレーム421の途中(
図6に示す例では斜めフレーム423)から左右軸Y1方向に向かって伸びる中間横梁フレーム427を有している。
図6に示すように、中間横梁フレーム427は、吹付・左官装置用架台130における上方横梁フレームFR2、上方縦梁フレーム133Bよりも若干高い位置に横架されている。また、架構フレーム420A,420Bにおける中間横梁フレーム427同士は、前後軸X1に沿って平行に伸びる中間縦梁フレーム428によって2か所で相互に連結されている。
【0043】
自動左官装置200(左官装置用架台400)は、吹付・左官装置用架台130側に設けられた連結部16に連結される連結部430を有する(
図6を参照)。自動左官装置200(左官装置用架台400)側の連結部430は、左官装置用架台400における一対の中間横梁フレーム427によって固定されている。
【0044】
一方、吹付・左官装置用架台130側に設けられた連結部16は、吹付・左官装置用架台130の上方縦梁フレーム133Bから左右軸Y1方向に伸びる一対の支持フレーム135によって固定及び支持されている(
図2及び
図3などを参照)。吹付・左官装置用架台130側に設けられた連結部16は、自動左官装置200(左官装置用架台400)側の連結部430と上下に並んで配置される。自動左官装置200(左官装置用架台400)の連結部430は、吹付・左官装置用架台130側の連結部16に対して、上下軸Z1
を旋回(回動)中心として所定範囲内で旋回(回動)自在に、且つ、左右軸Y1に沿って所定範囲で相対スライド可能に連結されている。なお、連結部16,430同士の間には、例えば、ベアリングなどの軸受部材が介在してもよい。
【0045】
更に、吹付・左官自動施工台車100は、旋回用シリンダ136及びスライド用シリンダ137を備えている。旋回用シリンダ136は、左官装置用架台400(自動左官装置200)を、吹付・左官装置用架台130に対して上下軸Z1を中心に旋回(ヨーイング)させるための駆動源である。スライド用シリンダ137は、左官装置用架台400(自動左官装置200)を、吹付・左官装置用架台130に対して左右軸Y1方向に相対スライドさせるための駆動源である。
【0046】
旋回用シリンダ136は、例えば、その基部側が吹付・左官装置用架台130における支持フレーム135に固定され、伸縮ロッドの先端側が、一対の中間縦梁フレーム428同士を連結する中間横梁フレーム429に固定されている(
図3を参照)。ここで、旋回用シリンダ136におけるロッド軸は、左右軸Y1に対して斜めに傾斜して伸びている。これにより、例えば、旋回用シリンダ136の伸縮ロッドを伸長させると、左官装置用架台400(自動左官装置200)が、吹付・左官装置用架台130に対して上下軸Z1を中心として左側回転で旋回(ヨーイング)する。逆に、旋回用シリンダ136の伸縮ロッドを短縮させると、左官装置用架台400(自動左官装置200)が、吹付・左官装置用架台130に対して上下軸Z1を中心として右側回転で旋回(ヨーイング)する。
【0047】
スライド用シリンダ137は、例えば、その基部側が吹付・左官装置用架台130における一対の支持フレーム135同士を接続する連結フレームFJに固定され、伸縮ロッドの先端側が、中間縦梁フレーム428に固定されている(
図3を参照)。スライド用シリンダ137におけるロッド軸は、左右軸Y1と平行に伸びている。これによれば、スライド用シリンダ137の伸縮ロッドを伸縮させることに伴い、左官装置用架台400(自動左官装置200)を、吹付・左官装置用架台130に対して左右軸Y1方向に相対スライド(以下、「横スライド」という)させることができる。例えば、スライド用シリンダ137の伸縮ロッドを伸長させることによって、左官装置用架台400(自動左官装置200)が左右軸Y1に沿って右側にスライドする。一方、スライド用シリンダ137の伸縮ロッドを短縮することによって、左官装置用架台400(自動左官装置200)が左右軸Y1に沿って左側にスライドする。
【0048】
また、上記のように、左官装置用架台400は、架構フレーム420A,420Bにおける柱フレーム422の下端部にキャスター426を有しているため、吹付・左官装置用架台130に設置された支持プレートPL上を滑動することができる。この構造によれば、吹付・左官装置用架台130に対する左官装置用架台400(自動左官装置200)の横スライド動作、あるいは旋回動作を円滑に行うことが可能となる。
【0049】
次に、自動左官装置200の均し機本体300について説明する。
図7は、均し機本体300及びその周辺構造を説明する図である。一対の第2ガイドレール410A,410Bは、当該第2ガイドレール410A,410Bに沿って均し機本体300が移動(駆動)する際の軌道を規定するレール状のガイド部材である。第2ガイドレール410Aは、左官装置用架台400の前方架構フレーム420Aに設置されている。また、第2ガイドレール410Bは、左官装置用架台400の後方架構フレーム420Bに設置されている。一対の第2ガイドレール410A,410Bは、吹付・左官装置用架台130の前後軸X1方向(前後方向)に間隔をあけて対向配置されており、これらの間に掛け渡されるように均し機本体300が一対の410A,410Bによって保持されている。一対の第2ガイドレール410A,410Bは、吹付・左官装置用架台130の幅方向(左右軸Y1方向)に沿ってアーチ状に延設されている。
【0050】
符号310は、均し機本体300のフレーム体であり、例えばボックス形状を有している。フレーム体310は、均し機本体300を構成する各種部品を保持している。以下では、一対の第2ガイドレール410A,410B間に架設される均し機本体300(フレーム体310)のうち、前後軸X1方向に沿った方向を「幅方向」とし、幅方向に直交する方向を「前後方向」として説明する。ここでいう「幅方向」及び「前後方向」は、均し機本体300(フレーム体310)を基準としたときの各方向を示している。
【0051】
上記の通り、第2ガイドレール410A,410Bは、自動吹付装置110の第1ガイドレール150A,150Bと実質的に同一構造であり、その詳細構造についての説明は適宜割愛する。均し機本体300についても、吹付機本体140と一部の構造を共通にしており、吹付機本体140と同様な第1シャフト142、第2シャフト143、駆動モータ144などを備えている。第1シャフト142、第2シャフト143、駆動モータ144については既述した通りであり、ここでの詳細な説明は割愛する。均し機本体300においても、駆動モータ144は、第1シャフト142及び第2シャフト143を同期して正逆方向に回転駆動することができる。
【0052】
均し機本体300は、均し板320、当該均し板320を支持する支持ロッド330、支持ロッド330を介して均し板320を振動させる加振機構340など備えている。加振機構340は、支持ロッド330の延伸方向に沿って均し板320を所定の周期及びストロークで振動させる。加振機構340が作動すると、均し板320は均し機本体300の前後方向に沿って振動する。なお、加振機構340や支持ロッド330の具体的な構造は、均し機本体300の前後方向に均し板320を振動させることができる限りにおいて特に限定されない。また、加振機構340は、偏心モータや適宜の伝動装置を含んで構成されていてもよい。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る自動左官装置200は、駆動モータ144を作動させることによって、アーチ形状を有する第2ガイドレール410A,410Bのレール部Rp1,Rp2に沿って均し機本体300を移動させることができる。例えば、自動左官装置200を用いてモルタルの自動左官施工を行う際、一例として、
図6に符号Psで示す左官開始位置から符号Peで示す左官終了位置に至るまでの基準区間に亘り、均し板320を振動させながら第2ガイドレール410A,410Bに沿って均し機本体300を移動させる。
【0054】
図6に示す一形態のように、均し板320は、支持ロッド330に取り付けられる第1板部321と、当該第1板部321に対して斜めに接続された第2板部322とを含み、第2板部322の先端側にモルタルを均すブレード部333が形成されていてもよい。自動吹付装置110を用いて既設トンネルの内周面TFにモルタルを自動吹付施工した後、内周面TFに吹き付けられたモルタルに対して振動する均し板320のブレード部333を当接させながら均し機本体300を第2ガイドレール410A,410Bに沿って移動させる。これにより、
図6に示す内周面TFにおいてハッチングが付された左官予定領域におけるモルタルを自動で均すことができる。なお、
図7に示す符号Wbは、均し板320のブレード幅(前後軸X1方向に沿った寸法)である。吹付・左官自動施工台車100(自動左官装置200)は、1回の自動左官施工においてブレード幅Wbに相当する区間をトンネル周方向に沿って均すことができる「モルタル均し幅」に相当する。本実施形態において、均し板320のブレード幅Wbは、例えば、自動吹付装置110のノズルストローク幅Wn(モルタル吹付幅)と同等の寸法に設定されていてもよい。これによれば、自動吹付装置110によるモルタル吹付幅と、自動左官装置200によるモルタル均し幅を概ね合致させることができ、効率的な自動施工が可能となる。また、均し板320のブレード幅Wbとノズルストローク幅Wn(モルタル吹付幅)を等しい寸法に設定してもよ
い。これにより、自動吹付装置110によるモルタル吹付幅と、自動左官装置200によるモルタル均し幅を合致させることができ、自動施工をより一層効率よく行うことができる。勿論、均し板320のブレード幅Wbが上記ノズルストローク幅Wn(モルタル吹付幅)と異なっていてもよい。
【0055】
また、内周面TFに吹き付けたモルタルの表面をより平滑に均すための観点から、第2ガイドレール410A,410Bに沿って均し機本体300を上昇させながらモルタルの自動左官施工を行うことが好ましいが、この限りではない。すなわち、第2ガイドレール410A,410Bに沿って均し機本体300を降下させつつ内周面TFに吹き付けられたモルタルに対して自動左官施工を行うことも可能である。勿論、このように均し機本体300を降下させながらモルタルの左官施工を行う場合には、均し板320を
図6に示したものと異なる仕様にしてもよい。例えば、第2ガイドレール410A,410Bに沿って均し機本体300を降下させながら左官施工を行う場合、
図8に示す変形例のような姿勢で均し板320を支持ロッド330に取り付けてもよい。均し機本体300における均し板320やその他の構成部品は、自動左官施工の実施時に第2ガイドレール410A,410Bに沿って均し機本体300が移動する方向、その他の条件に応じて適宜変更できる。なお、吹付・左官自動施工台車100は、自動左官装置200の動作を制御するためのコントローラを有している。コントローラは、吹付・左官自動施工台車100に設けられた制御盤であってもよい。
【0056】
次に、吹付・左官自動施工台車100におけるその他の構成について説明する。一形態として、吹付・左官自動施工台車100は、吹付・左官装置用架台130に対して走行輪134が左右軸Y1と平行な回動軸を有する軸部PXを介して接続されている。例えば、前輪134Aは、軸部PXを介して前方門型フレーム132Aの支柱フレームFR1に対して連結されている。また、後輪134Bは、軸部PXを介して後方門型フレーム132Cの支柱フレームFR1に対して連結されている。そして、各走行輪134と支柱フレームFR1との間には、
図2に示す高さ調整用伸縮シリンダ138が介在して設けられている。高さ調整用伸縮シリンダ138は、例えば電動シリンダであってもよい。高さ調整用伸縮シリンダ138の伸長状態を変更することで、吹付・左官自動施工台車100の高さを調整することができる。勿論、各走行輪134に付設された高さ調整用伸縮シリンダ138を個別に作動させてもよいし、複数の高さ調整用伸縮シリンダ138を同時に作動させてもよい。
【0057】
また、本実施形態に係る吹付・左官自動施工台車100は、例えば、吹付・左官装置用架台130の四隅近傍にガイド輪139を備えている(
図2を参照)。ガイド輪139は、前方門型フレーム132Aにおける各支柱フレームFR1の中間部と、後方門型フレーム132Cにおける各支柱フレームFR1の中間部にそれぞれ設けられている。ガイド輪139は、既設トンネルの内周面TFに押し当てられることで、既設トンネルの線形に沿って吹付・左官自動施工台車100の走行をガイドする。各ガイド輪139は、吹付・左官装置用架台130から内周面TFに向けて突出するように設けられる。各ガイド輪139の側方への突出量は、各ガイド輪139に付設されるハンドル139Aの操作によって調整することができる。
【0058】
また、吹付・左官自動施工台車100(吹付・左官装置用架台130)は、台車ストッパー170を備える。台車ストッパー170は、トンネル床面IV上における吹付・左官自動施工台車100の位置ずれを抑制するためのストッパー部材である。台車ストッパー170は、例えば、各下方縦梁フレーム131A,131Bのうち、前方側(例えば、前方門型フレーム132Aの近傍)と、後方側(例えば、後方門型フレーム132Cの近傍)にそれぞれ設置される。台車ストッパー170は、例えば、下端側に接地プレート171を有し、上端側にハンドル172を有する。ハンドル172を操作することで、接地プ
レート171の高さを変化させることができる。
【0059】
吹付・左官自動施工台車100を走行させる際には、台車ストッパー170が機能しないように接地プレート171をトンネル床面IVから上方に離間するようにハンドル172が操作される。一方、吹付・左官自動施工台車100の走行を停止させ、既設トンネルの更新・修繕施工(自動吹付施工、自動左官施工)を行う際には、事前に接地プレート171をトンネル床面IVに接地させる。これにより、自動吹付装置110及び自動左官装置200が作動しても、吹付・左官自動施工台車100の姿勢を安定させることができる。
【0060】
図9は、吹付・左官自動施工台車100の変形例を説明する図である。
図9に示す吹付・左官自動施工台車100(吹付・左官装置用架台130)は、方向修正用キャスター180が下方縦梁フレーム131A,131Bの前方側(例えば、前方門型フレーム132Aの近傍)にそれぞれ設けられている。
図8には、吹付・左官装置用架台130における左側の下方縦梁フレーム131Aに設置された方向修正用キャスター180が描画されているが、右側の下方縦梁フレーム131Bにも同様な方向修正用キャスター180が設けられている。方向修正用キャスター180は、上下軸Z1を中心として回転自在に設けられており、向きを自由に変更することができる。
【0061】
方向修正用キャスター180は、吹付・左官自動施工台車100の走行する方向を修正する際に用いる車輪である。方向修正用キャスター180は、通常時において、トンネル床面IVに接地しないように当該トンネル床面IVから上方に離間した状態となっている(
図9を参照)。吹付・左官自動施工台車100の自走方向を修正する際は、左右の方向修正用キャスター180が接地していない状態で、これら方向修正用キャスター180の向きを所望の方向(吹付・左官自動施工台車100の向きを修正したい方向)に合わせた後、左右の前輪134Aに付設された高さ調整用伸縮シリンダ138を縮める。これにより、左右の方向修正用キャスター180を接地させると共に、左右の前輪134Aをトンネル床面IVから浮かせる(上方に離間させる)。この状態から、吹付・左官自動施工台車100を前進させることによって、吹付・左官自動施工台車100の自走方向を修正することができる。なお、吹付・左官自動施工台車100の自走方向の修正が完了した場合には、左右の前輪134Aに付設された高さ調整用伸縮シリンダ138を伸長させることで左右の前輪134Aを接地させると共に、左右の方向修正用キャスター180をトンネル床面IVから浮かせた状態に戻す。
【0062】
次に、
図1を参照して吹付・左官自動施工台車システム1におけるモルタル供給台車500について説明する。モルタル供給台車500は、吹付・左官自動施工台車100の自動吹付装置110にモルタルを供給するための台車である。
【0063】
モルタル供給台車500は、吹付・左官装置用架台130と同様、自走式の台車として構成されている。モルタル供給台車500は、ガントリー型のモルタル供給台車用架台510を備え、モルタル供給台車用架台510の四隅に走行輪520を備えている。
図1に示すように、モルタル供給台車500においても、前後軸X1と言及する際はモルタル供給台車用架台510を縦断する方向の軸を指し、左右軸Y1と言及する際はモルタル供給台車用架台510を横断する方向の軸を指し、上下軸Z1と言及する際は前後軸X1及び左右軸Y1に直交する方向の軸を指すものとする。
【0064】
モルタル供給台車用架台510は、前後軸X1における前端側に配置される前方門型フレーム531、後端側に配置される後方門型フレーム532、前方門型フレーム531及び後方門型フレーム532を連結する上方縦梁フレーム533及び下方縦梁フレーム534などを備えている。上方縦梁フレーム533及び下方縦梁フレーム534は、前後軸X
1と平行に延伸している。
【0065】
上方縦梁フレーム533のうち、前後軸X1における前部側の位置には電気チェーンブロック535が設けられている。電気チェーンブロック535には、吹付・左官自動施工台車100の自動吹付装置110にモルタルを圧送するためのポンプMPを有するポンプコンテナ540が吊り下げられており、電気チェーンブロック535によってポンプコンテナ540を昇降自在となっている。
【0066】
ポンプコンテナ540の前面には、モルタルを排出する排出口が形成されており、この排出口に排出管541が接続されている。ポンプコンテナ540における排出管541には、ポンプコンテナ540から圧送されるモルタルを自動吹付装置11の吹付ノズル161に供給するための圧送ホースMCの一端側が接続されている。圧送ホースMCの他端側は吹付ノズル161に接続されており、ポンプコンテナ540から圧送されたモルタルを吹付ノズル161から吐出することでモルタルの吹付を行うことができる。なお、ポンプコンテナ540の上面には、モルタルをポンプコンテナ540内に投入するためのモルタル投入口が開口している。
【0067】
モルタル供給台車用架台510における上方縦梁フレーム533において、電気チェーンブロック535の後方には、移動式電気チェーンブロック536が設けられている。移動式電気チェーンブロック536は、上方縦梁フレーム533(前後軸X1)に沿って前後移動が可能である。移動式電気チェーンブロック536には、モルタルを混錬するミキサMMを有するミキサコンテナ550が吊り下げられている。ミキサコンテナ550の底部には、ミキサMMによってミキシングしたモルタルを排出するための排出口と、この排出口を開閉する排出蓋551が設けられている。移動式電気チェーンブロック536に吊架されたミキサコンテナ550は、昇降移動及び前後移動が自在となっている。なお、ミキサコンテナ550の上面には、モルタルの原料をミキサコンテナ550内に投入するための原料投入口が開口している。
【0068】
ミキシング済みのモルタルをミキサコンテナ550からポンプコンテナ540に供給する場合には、まずポンプコンテナ540を
図1に示す通常位置P1からモルタル受け入れ
用位置P2に降下させる。そして、ミキサコンテナ550を、モルタル受け入れ用位置P2に移動させたポンプコンテナ540の上部に位置付けられるように、ミキサコンテナ550を
図1に示す通常位置P3から前方移動及び下降移動をさせることによってモルタル投入位置P4に移動させる。この状態で、ミキサコンテナ550の排出口は、ポンプコンテナ540のモルタル投入口に位置が合わされており、ミキサコンテナ550の排出蓋551を開放することによってミキサコンテナ550からポンプコンテナ540にモルタルが投入される。なお、モルタル供給台車500は、ポンプMP、ミキサMM、チェーンブロック535,536などの動作を制御するためのコントローラを有している。コントローラは、モルタル供給台車500に設けられた制御盤であってもよい。
【0069】
また、
図1に示すように、吹付・左官自動施工台車100及びモルタル供給台車500は、例えばチェーン、ワイヤー、ロープなどの連結具CHを介して連結することができるようになっている。これによれば、モルタル供給台車500及び吹付・左官自動施工台車100の走行時において、これらの間隔が連結具CHの長さを超えて過度に広がることを抑制できる。そのため、圧送ホースMCに大きな負荷が掛かることを抑制できる。
【0070】
また、
図1に示すように、吹付・左官自動施工台車100及びモルタル供給台車500には、それぞれ、吹付・左官装置用架台130及びモルタル供給台車用架台410同士が衝突することを抑制するためのバッファーロッド190,560が設けられている。バッファーロッド560は、モルタル供給台車500の前端部(前方門型フレーム531)側
に、バッファーロッド560が前方に向かって延設されており、バッファーロッド560の先端側には緩衝器(バッファー)561が設けられている。また、吹付・左官自動施工台車100の後端部には、バッファーロッド190が後方に向かって延設されている。例えば、バッファーロッド190は、後方門型フレーム132Cの上方横梁フレームFR2における幅方向中央部から後方に向かって延設されている。バッファーロッド190の先端部には緩衝器(バッファー)191が設けられている。これによれば、吹付・左官装置用架台130及びモルタル供給台車用架台510同士が衝突することを抑制できる。また、吹付・左官自動施工台車100のバッファーロッド190とモルタル供給台車500側のバッファーロッド560が連結可能に構成されていてもよい。
【0071】
その他、モルタル供給台車500は、ガイド輪570を備えている。ガイド輪570は、吹付・左官自動施工台車100におけるガイド輪139と同一構造であってもよい。ガイド輪570は、例えば、モルタル供給台車500(モルタル供給台車用架台510)の四隅近傍に設けられており、各ガイド輪570の側方への突出量は、各ガイド輪570に付設されるハンドルの操作によって調整できる。モルタル供給台車500のガイド輪570は、既設トンネルの内周面TFに押し当てられることで、既設トンネルの線形に沿ってモルタル供給台車500の走行をガイドする。
【0072】
以下、本実施形態に係る吹付・左官自動施工台車システム1を用いた既設トンネルの更新・修繕方法(工法)の手順を例示的に説明する。
【0073】
まず、
図1に示すように、更新・修繕対象となる既設トンネルの施工予定位置に、吹付・左官自動施工台車100及びモルタル供給台車500を配置する。吹付・左官自動施工台車100及びモルタル供給台車500は、既設トンネルの施工進行方向に沿った走行及び吹付・左官施工を繰り返しながら、既設トンネルの更新・修繕作業を行う。そのため、ある施工区間に対してモルタルの自動吹付施工及び自動左官施工が完了すると、次の区間(典型的には、施工進行方向に隣接する次の施工区間)まで吹付・左官自動施工台車100及びモルタル供給台車500を走行させてこれらを配置する。なお、上記のように、吹付・左官自動施工台車100は、施工区間ごとに、一定幅ずつ(モルタル吹付幅、モルタル均し幅)のモルタル吹付・左官施工を行う。そのため、トンネル軸方向における一の施工区間の長さは、モルタル吹付幅(モルタル均し幅)に相当することとなる。
【0074】
吹付・左官自動施工台車100及びモルタル供給台車500の施工箇所への配置(セット)が完了すると、モルタル供給台車500におけるポンプコンテナ440から自動吹付装置110へのモルタル圧送を行いつつ、吹付・左官自動施工台車100を用いてモルタルの自動吹付施工及び自動左官施工を内周面TFに対して実施する。
図9は、自動吹付施工及び自動左官施工の実施状況を模式的に説明する図である。
【0075】
上記の通り、吹付・左官自動施工台車100は、施工進行方向を基準として前段に自動吹付装置110が配置され、自動吹付装置110の後段に隣接して自動左官装置200が配置されており、施工進行方向に前後に並んで自動吹付施工及び自動左官施工を並行して行うことができる。
図10に示すCA1は、吹付・左官自動施工台車100における自動吹付装置110によって自動吹付施工を新たに行う「吹付施工対象工区」である。CA2は、吹付施工対象工区CA1の一つ前の工区に相当する「直近吹付施工済み工区」である。自動左官装置200は、この「直近吹付施工済み工区CA2」を左官施工対象区間として自動左官施工を実施する。また、自動吹付装置110及び自動左官装置200における動作制御は、吹付・左官自動施工台車100に設けられたコントローラ(制御盤)を操作することによって自動で行うことができる。なお、
図10に示す例では、吹付施工対象工区CA1と直近吹付施工済み工区CA2との間に隙間が形成されているが、これには限定されない。例えば、吹付機本体140の仕様を適宜変更することでノズルストローク幅W
n(モルタル吹付幅)を第1ガイドレール150A,150B間の寸法よりも大きくしてもよい。同様に、均し板320のブレード幅Wbを第2ガイドレール410A,410B間の寸法よりも大きくしてもよい。このような仕様にすることで、例えば、
図11に示す態様のように吹付施工対象工区CA1と直近吹付施工済み工区CA2との間に隙間を形成することなく自動吹付施工及び自動左官施工を並行して行うことができる。
【0076】
吹付施工対象工区CA1に対するモルタルの自動吹付施工、直近吹付施工済み工区CA2(左官施工対象区間)に対するモルタルの自動左官施工が完了すると、吹付・左官自動施工台車100における自動吹付装置110及び自動左官装置200、並びに、モルタル供給台車500のポンプMPを停止させ、次の工区に向けて吹付・左官自動施工台車100及びモルタル供給台車500を前進させる。このようにして、吹付・左官自動施工台車システム1は、施工対象工区を順次変更しながら既設トンネルの延長方向に沿って内周面TFに対するモルタルの自動吹付施工及び自動左官施工を実施することができる。これによれば、人手に頼らず、既設トンネルの内周面に対して自動で効率的に吹付施工及び左官施工を実施することができる。
【0077】
なお、
図4及び
図6に示すように、本実施形態における吹付・左官自動施工台車100においては、自動吹付装置110の第1ガイドレール150A,150Bと、自動左官装置200の第2ガイドレール410A,410Bが、既設トンネルの内周面TFにおける右側半分の領域に対応する位置に延在する仕様となっている。勿論、この仕様は本発明を実施する一形態に過ぎないが、当該仕様(以下、「トンネル右半施工仕様」という)においては内周面TFの右側半分の領域を施工対象としている。そのため、吹付・左官自動施工台車システム1は、既設トンネルの内周面TFにおける左側半分の領域を施工対象とする仕様(以下、「トンネル左半施工仕様」という)の吹付・左官自動施工台車100と、当該吹付・左官自動施工台車100にモルタルを供給するモルタル供給台車500を1セット含んでいてもよい。
【0078】
図12は、吹付・左官自動施工台車システムの一態様を示す図である。
図12に示す符号100Rは、トンネル右半施工仕様の吹付・左官自動施工台車であり、符号500Rは、吹付・左官自動施工台車100Rにモルタルを供給するモルタル供給台車である。符号100Lは、トンネル左半施工仕様の吹付・左官自動施工台車であり、符号500Lは、吹付・左官自動施工台車100Lにモルタルを供給するモルタル供給台車である。
【0079】
勿論、
図12に示す態様も一例であり、例えば、吹付・左官自動施工台車100における自動吹付装置110の第1ガイドレール150A,150Bと、自動左官装置200の第2ガイドレール410A,410Bを、既設トンネルの内周面TFにおける周方向の全区間に対応するように延在させてもよい。この態様によれば、吹付・左官自動施工台車100における1回の施工単位で、既設トンネルの右半部分及び左半部分の双方を一括で施工することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1・・・吹付・左官自動施工台車システム
100・・・吹付・左官自動施工台車
110・・・自動吹付装置
130・・・吹付・左官装置用架台
140・・・吹付機本体
150A,150B・・・第1ガイドレール
200・・・自動左官装置
300・・・均し機本体
400・・・左官装置用架台
410A,410B・・・第2ガイドレール
500・・・モルタル供給台車