(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155355
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】加硫ゴムの物性値の予測方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/44 20060101AFI20251006BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20251006BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20251006BHJP
【FI】
G01N33/44
C08K3/06
C08L21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059156
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】福永 紘平
(72)【発明者】
【氏名】大村 直也
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC001
4J002DA046
4J002FD146
4J002FD150
4J002GN01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加硫ゴムの物性値を精度よく予測することが可能な方法を提供する。
【解決手段】加硫ゴムの物性値を予測するための方法である。この方法は、複数のゴム材料をそれぞれ異なる加硫条件で加硫したときのゴム温度と加硫時間との関係を示す温度履歴を複数取得する第1工程と、複数の温度履歴で加硫された加硫ゴムのそれぞれから第1物性値を取得する第2工程と、任意の温度履歴で加硫されたゴム材料の加硫後の第1物性値を、下記式(1)で計算される換算式に基づいた特徴量Fから推定する近似式を得るために、近似式の誤差を小さくする下記式(1)の温度依存性係数Eを決定する第3工程とを含む。
ここで、F:特徴量___t:加硫時間(分)E:温度依存性係数__R:気体定数T(s):加硫中の測定温度(K)
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫ゴムの物性値を予測するための方法であって、
複数のゴム材料をそれぞれ異なる加硫条件で加硫したときのゴム温度と加硫時間との関係を示す温度履歴を複数取得する第1工程と、
前記複数の温度履歴で加硫された加硫ゴムのそれぞれから第1物性値を取得する第2工程と、
任意の温度履歴で加硫された前記ゴム材料の加硫後の前記第1物性値を、下記式(1)で計算される換算式に基づいた特徴量Fから推定する近似式を得るために、前記近似式の誤差を小さくする下記式(1)の温度依存性係数Eを決定する第3工程とを含む、
加硫ゴムの物性値の予測方法。
【数1】
ここで、
F:特徴量
t:加硫時間(分)
E:温度依存性係数
R:気体定数
T(s):加硫中の測定温度(K)
【請求項2】
決定された前記温度依存性係数Eに基づいて、前記近似式を決定する第4工程をさらに含む、請求項1に記載の加硫ゴムの物性値の予測方法。
【請求項3】
前記第1工程よりも少ない種類数の温度履歴を複数取得する第5工程と、
前記第5工程で取得された前記複数の温度履歴で加硫された前記加硫ゴムのそれぞれから、前記第1物性値とは異なる第2物性値を取得する第6工程と、
任意の温度履歴で加硫された前記ゴム材料の加硫後の前記第2物性値を、決定された前記温度依存性係数Eを代入した上記式(1)で計算される特徴量Fから推定するための近似式を決定する第7工程と、をさらに含む、請求項1に記載の加硫ゴムの物性値の予測方法。
【請求項4】
前記第1物性値は、加硫ゴムの物性値のうち、加硫量に応じて変化する物性値である、請求項1に記載の加硫ゴムの物性値の予測方法。
【請求項5】
前記第1物性値は、加硫ゴムの膨潤度、損失正接及び複素弾性率の絶対値の少なくとも1つを含む、請求項4に記載の加硫ゴムの物性値の予測方法。
【請求項6】
前記第1工程は、前記温度履歴を計算により求める加硫シミュレーション工程を含む、請求項1に記載の加硫ゴムの物性値の予測方法。
【請求項7】
前記第1工程は、前記温度履歴を実測により求める加硫工程を含む、請求項1に記載の加硫ゴムの物性値の予測方法。
【請求項8】
前記温度依存性係数Eは、83720×A(Aは、1.0~3.0)である、請求項1に記載の加硫ゴムの物性値の予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫ゴムの物性値の予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、タイヤの性能の予測方法が記載されている。この方法には、未加硫のゴム部材を含む未加硫のタイヤを加硫成形したときのゴム部材の時系列の温度データを入力する第1工程と、ゴム部材の温度データに基づいて、加硫後のゴム部材の物性を予測する第2工程と、ゴム部材の物性に基づいて、加硫後のタイヤの性能を予測する第3工程とが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術では、ゴム部材の物性値の予測に、等価加硫量(ECU)が用いられている。このような等価加硫量は、加硫時の温度が反映されていることから、物性値の予測に役立つが、予測精度については、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、加硫ゴムの物性値を精度よく予測することが可能な方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、 加硫ゴムの物性値を予測するための方法であって、複数のゴム材料をそれぞれ異なる加硫条件で加硫したときのゴム温度と加硫時間との関係を示す温度履歴を複数取得する第1工程と、前記複数の温度履歴で加硫された加硫ゴムのそれぞれから第1物性値を取得する第2工程と、任意の温度履歴で加硫された前記ゴム材料の加硫後の前記第1物性値を、下記式(1)で計算される換算式に基づいた特徴量Fから推定する近似式を得るために、前記近似式の誤差を小さくする下記式(1)の温度依存性係数Eを決定する第3工程とを含む、加硫ゴムの物性値の予測方法である。
【数1】
ここで、F:特徴量
t:加硫時間(分)
E:温度依存性係数
R:気体定数
T(s):加硫中の測定温度(K)
【発明の効果】
【0007】
本発明の加硫ゴムの物性値の予測方法は、上記の工程を採用することにより、加硫ゴムの物性値を精度よく予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】加硫ゴムの物性値の予測方法を実行するためのコンピュータの一例を示す斜視図である。
【
図3】加硫ゴムの物性値の予測方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】特徴量と、ゴム材料の加硫後の第1物性値との関係の一例を示すグラフである。
【
図6】ゴム製品モデル及び金型モデルの一例を示す図である。
【
図7】特徴量と第1物性値との関係の一例を示すグラフである。
【
図8】本発明の他の実施形態の予測方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】特徴量と第2物性値との関係の一例を示すグラフである。
【
図10】(a)は、実施例1の特徴量と損失正接との関係を示すグラフ、(b)は、比較例の等価加硫量と損失正接との関係を示すグラフである。
【
図11】実施例1の近似式で推定された損失正接の推定値と、損失正接の測定値との関係を示すグラフである。
【
図12】(a)は、特徴量と膨潤度との関係を示すグラフ、(b)は、特徴量と複素弾性率の絶対値との関係を示すグラフ、(c)は、特徴量と損失正接との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0010】
本実施形態の加硫ゴムの物性値の予測方法(以下、「予測方法」ということがある。)では、任意の温度履歴で加硫されたゴム材料(すなわち、加硫ゴム)の物性値が予測される。本実施形態の予測方法には、コンピュータが用いられる。
【0011】
[コンピュータ]
図1は、加硫ゴムの物性値の予測方法を実行するためのコンピュータ1の一例を示す斜視図である。本実施形態のコンピュータ1は、例えば、本体1a、キーボード1b、マウス1c及びディスプレイ装置1dを含んで構成されている。この本体1aには、例えば、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリ、磁気ディスクなどの記憶装置、及び、ディスクドライブ装置1a1、1a2が設けられている。また、記憶装置には、本実施形態の予測方法を実行するためのソフトウェア等が予め記憶されている。したがって、コンピュータ1は、加硫ゴムの物性値を予測するための予測装置1Aとして構成される。
【0012】
加硫ゴムは、加硫されたゴムであれば、特に限定されない。加硫ゴムの一例としては、加硫されたゴム製品を構成するゴム材料(加硫ゴム)が挙げられる。本実施形態のゴム製品は、タイヤである場合が例示される。なお、ゴム製品は、タイヤに限定されるわけではなく、例えば、免震用の積層ゴム支承であってもよい。
図2は、ゴム製品2の一例を示す断面図である。
【0013】
ゴム製品2は、タイヤ2Aとして構成されている。本実施形態のタイヤ2Aは、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして構成されている。なお、タイヤ2Aは、このような態様に限定されるものではなく、例えば、重荷重用の空気入りタイヤや、自動二輪車用タイヤとして構成されていてもよい。本実施形態のタイヤ2Aは、繊維部材3と、加硫ゴム4とを含んで構成されている。
【0014】
繊維部材3には、例えば、カーカス3a、内側ベルト3b及び外側ベルト3cが含まれる。カーカス3aは、トレッド部2aからサイドウォール部2bを経てビード部2cのビードコア5に延びている。内側ベルト3b及び外側ベルト3cは、カーカス3aのタイヤ半径方向外側、かつ、トレッドゴム4aの内部に配されている。
【0015】
加硫ゴム4は、トレッドゴム4a、サイドウォールゴム4b、クリンチゴム4c、ビードエーペックスゴム4d及びインナーライナーゴム4eが含まれる。トレッドゴム4aは、トレッド部2aにおいて、外側ベルト3cの外側に配されている。サイドウォールゴム4bは、サイドウォール部2bにおいて、カーカス3aの外側に配されている。クリンチゴム4cは、サイドウォールゴム4bのタイヤ半径方向内側に固定されている。ビードエーペックスゴム4dは、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびている。インナーライナーゴム4eは、カーカス3aの内面に配置されている。
【0016】
本実施形態の加硫ゴム(ゴム材料)には、例えば、フィラーや、架橋剤等が配合されている。フィラーの一例には、シリカやカーボンブラック等が挙げられる。
【0017】
ところで、ゴム製品2の性能を予測するには、そのゴム製品2を構成する加硫ゴム4の物性値を精度よく推定することが重要である。このような物性値の推定には、例えば、等価加硫量(ECU)が用いられている。等価加硫量は、加硫時の温度(温度―加硫時間換算則)が反映されていることから、物性値の推定に役立つ。しかしながら、物性値の予測精度については、さらなる改善の余地があった。
【0018】
発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、加硫ゴム4の物性値が、加硫戻り(リバージョン)の影響を受けて変動することを知見した。そして、発明者らは、加硫戻りの温度依存性を考慮して新たに案出した特徴量Fに基づいて、加硫ゴム4の物性値を予測することが有効であることを見出した。特徴量Fは、下記式(1)で計算される。下記式(1)において、測定温度T(s)は、絶対温度である。
【数1】
ここで、
F:特徴量
t:加硫時間(分)
E:温度依存性係数
R:気体定数
T(s):加硫中の測定温度(K)
【0019】
特徴量Fは、等価加硫量(ECU)と同様に、換算式(本例では、アレニウス型の経験式)に基づいている。したがって、特徴量Fは、加硫状態を特定するためのパラメータとして、加硫ゴムの物性値と関連している。
【0020】
上記式(1)では、等価加硫量(ECU)の計算に用いられる公知の式のうち、固定値として代入されていた活性化エネルギーが、変数としての温度依存性係数Eに置き換えられている。したがって、特徴量Fは、等価加硫量(ECU)を補正した補正ECUとして扱われる。なお、上記式(1)の気体定数Rには、等価加硫量を求める式と同様に、8.318J/(mol・K)が代入される。
【0021】
温度依存性係数Eには、加硫戻りの温度依存性を考慮して、任意の数値が代入される。ここで、等価加硫量の計算に用いられる活性化エネルギー(83720J/mol)では、加硫戻りが考慮されない。したがって、温度依存性係数Eに、活性化エネルギーよりも大きな値が代入されることで、加硫戻りの温度依存性が考慮された特徴量Fの計算が可能となる。
【0022】
加硫戻りの温度依存性は、加硫ゴム4の種類(例えば、配合等の相違)によって異なる場合がある。したがって、加硫ゴム4の物性値をより精度良く予測するために、予測対象の加硫ゴム4に応じて、温度依存性係数Eが適切に決定されることが好ましい。
【0023】
[加硫ゴムの物性値の予測方法(第1実施形態)]
本実施形態の予測方法では、上記の知見に基づいて、加硫ゴム4の物性値が、精度よく予測されうる。本実施形態において、物性値が予測される加硫ゴム4は、タイヤ2Aを構成するサイドウォールゴム4bである場合が例示されるが、特に限定されるわけではなく、例えば、トレッドゴム4a等であってもよい。
図3は、加硫ゴムの物性値の予測方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0024】
[複数の温度履歴を取得(第1工程)]
本実施形態の予測方法では、先ず、ゴム温度と加硫時間との関係を示す温度履歴が、複数取得される(第1工程S1)。
【0025】
第1工程S1では、複数のゴム材料をそれぞれ異なる加硫条件で加硫したときの複数の温度履歴が取得される。
図4は、複数の温度履歴の一例を示すグラフである。
図4では、5個のゴム材料からそれぞれ取得された温度履歴(第1温度履歴~第5温度履歴)が代表して示されている。
【0026】
温度履歴(第1温度履歴~第5温度履歴)は、加硫中のゴム材料の温度の時間変化を示すものである。これらの温度履歴は、互いに異なる加硫条件で、未加硫のゴム材料を加硫することで取得されうる。ここで、「未加硫」とは、完全な加硫に至っていない全ての態様を含むもので、いわゆる半加硫の状態は、この「未加硫」に含まれる。
【0027】
図4において、時間軸の「0」は、各温度履歴の加硫開始時間を示している。時間軸の「t1」は、第1温度履歴の加硫終了時間を示している。時間軸の「t2」は、第2温度履歴の加硫終了時間を示している。時間軸の「t3」は、第3温度履歴の加硫終了時間を示している。時間軸の「t4」は、第4温度履歴の加硫終了時間を示している。時間軸の「t5」は、第5温度履歴の加硫終了時間を示している。
【0028】
複数の温度履歴は、後述の第3工程S3において、上記式(1)で計算される特徴量Fから、加硫ゴム4の第1物性値を推定するための近似式を得るための温度依存性係数Eの決定に用いられる。
【0029】
図5は、特徴量Fと、ゴム材料の加硫後の第1物性値との関係の一例を示すグラフである。
図5には、
図4に示した温度履歴(第1温度履歴~第5温度履歴)を含む10個の温度履歴ごとに、上記式(1)で計算された特徴量Fと、温度履歴で加硫された後のゴム材料の物性値(第1物性値)とがプロットされている。
【0030】
本実施形態では、
図4に示した複数の温度履歴ごとに、加硫中の測定温度と温度依存性係数Eとが、上記式(1)に代入されることで、
図5に示した特徴量Fがそれぞれ取得される。加硫中の測定温度は、複数の温度履歴のそれぞれについて、加硫開始時間(0分)から加硫終了時間(t1~t5分のいずれか)までに測定された温度である。また、
図5では、参考として、温度依存性係数Eに、活性化エネルギー(83720J/mol)が代入されることで、特徴量Fが計算されている。
【0031】
近似式は、任意の温度履歴で加硫されたゴム材料の加硫後の物性値(第1物性値)を、任意の温度履歴と上記式(1)とで計算される特徴量Fから推定するためのものである。本実施形態では、特徴量と第1物性値との関係を示すデータ(
図5にプロットされたデータ)にフィットするように描かれた近似曲線6に基づいて、近似式が取得される。このような近似式の取得には、例えば、市販の表計算ソフト等が用いられる。
【0032】
このように、複数の温度履歴は、上記のような近似式の取得に用いられる。このため、例えば、温度履歴(例えば、
図4に示した第1温度履歴~第5温度履歴)の取得に用いられる複数のゴム材料の配合が互いに異なると、温度履歴(特徴量F)と物性値との相関が弱くなり、近似式の予測精度が低下する場合がある。したがって、複数のゴム材料は、同一の配合とされるのが好ましい。なお、温度履歴(特徴量F)と物性値との相関が強い場合には、配合が異なるゴム材料が含まれていてもよい。
【0033】
加硫条件は、異なる温度履歴が取得されれば、適宜設定されうる。本実施形態の加硫条件には、例えば、加硫温度(加硫金型の熱源(図示省略)に設定される温度条件)や、加硫時間などが含まれる。このような加硫条件を異ならせて、例えば、
図2に示したゴム製品2が加熱(加硫)されることで、そのゴム製品2に含まれるゴム材料(例えば、トレッドゴム4a)の複数の温度履歴が取得されうる。なお、温度履歴を取得するために、ゴム製品2が加熱される態様に限定されるわけではなく、例えば、ゴム材料の単体が加熱(加硫)されてもよい。
【0034】
複数の温度履歴の個数は、例えば、近似式に求められる計算精度や、近似式の取得に要するコスト等を考慮して設定される。本実施形態の個数は、5~50個(本例では、10個)に設定される。
【0035】
温度履歴は、適宜取得されうる。本実施形態の第1工程S1では、
図4に示した温度履歴を、計算によって求めるための加硫シミュレーション工程が含まれる。
【0036】
本実施形態の加硫シミュレーションでは、
図2に示したゴム製品2を加硫するための加硫金型(図示省略)を用いて、ゴム製品2を加硫したときのゴム材料(例えば、トレッドゴム4a)の温度履歴が、
図1に示したコンピュータ1によって計算される。これにより、ゴム製品2を構成するゴム材料について、ゴム製品2を加硫したときの温度履歴が精度よく計算されうる。なお、加硫シミュレーションでは、例えば、ゴム材料の単体を加硫したときの温度履歴が計算されてもよい。
【0037】
加硫シミュレーションは、ゴム材料の温度履歴を取得できれば、適宜実施されうる。
図6は、ゴム製品モデル7及び金型モデル8の一例を示す図である。
【0038】
本実施形態の加硫シミュレーションでは、
図2に示したゴム製品2をモデリングしたゴム製品モデル7と、加硫金型(図示省略)をモデリングした金型モデル8とが作成される。これらのゴム製品モデル7及び金型モデル8は、有限個の要素F(i)(i=1、2、…)で離散化されいる。次に、ゴム製品モデル7と金型モデル8との伝熱が計算される。この伝熱計算では、各要素F(i)の温度が、シミュレーションの単位ステップごとに計算されている。そして、ゴム製品モデル7を構成する要素F(i)のうち、予測対象のゴム材料(本例では、トレッドゴムモデル10a)を構成する1つの要素F(i)が選択される。そして、選択された要素F(i)で計算された温度に基づいて、ゴム製品を構成するゴム材料の温度履歴が取得される。このような伝熱計算は、上記特許文献1の第1工程と同様の手順で実施されうる。
【0039】
本実施形態の第1工程S1では、上記のような加硫シミュレーションにより、
図2に示したゴム製品2やゴム材料を実際に加硫しなくても、互いに異なる加硫条件に基づいて、複数の温度履歴を計算することができる。このため、複数の温度履歴の取得や、近似式の取得に要するコストの増大が抑制されうる。
【0040】
また、近似式の予測精度を高めるには、複数の温度履歴を分散して取得することが重要である。本実施形態では、所望の温度履歴が取得されるまで、加硫条件を変更した加硫シミュレーション工程を繰り返し実行することができる。したがって、分散した複数の温度履歴を、容易かつ確実に取得することが可能となる。複数のゴム材料の温度履歴(例えば、
図4に示した第1温度履歴~第5温度履歴)は、コンピュータ1(
図1に示す)に記憶される。
【0041】
[加硫ゴムの第1物性値を取得]
次に、本実施形態の予測方法では、複数の温度履歴で加硫された加硫ゴム4(
図2に示す)のそれぞれから第1物性値が取得される(第2工程S2)。
【0042】
本実施形態では、第1工程S1に含まれる加硫シミュレーション工程によって、複数の温度履歴(例えば、
図4に示した第1温度履歴~第5温度履歴)が計算されている。この場合、第1工程S1において、第1物性値の取得に必要な加硫ゴム4(
図2に示す)が作製されていない。したがって、本実施形態の第2工程S2では、第1物性値の取得に先立ち、複数の温度履歴で加硫された加硫ゴム4が作製される。
【0043】
本実施形態の第2工程S2では、先ず、未加硫のゴム材料(図示省略)が複数準備される。これらの複数のゴム材料は、上述の観点から、同一の配合とされるのが好ましい。また、ゴム材料の寸法等は、第1物性値の測定等を考慮して、所定の大きさを有する試験片として形成されてもよい。試験片の大きさの一例としては、厚さ0.5mm、長さ10mm及び幅5mm等が挙げられる。
【0044】
次に、本実施形態の第2工程S2では、第1工程S1で取得された複数の温度履歴(例えば、
図4に示した第1温度履歴~第5温度履歴)のそれぞれに基づいて、未加硫のゴム材料(試験片)が加硫される。これにより、加硫ゴム(図示省略)が作製される。ゴム材料は、適宜加硫される。本実施形態のゴム材料の加硫には、例えば、公知の動的ゴムプロセス分析装置(例えば、モンテック社製の「D-RPA3000」)が用いられる。このような分析装置により、複数の温度履歴を再現しながら、ゴム材料を容易に加硫することが可能となる。なお、ゴム材料は、プレス機によって加硫(以下、「プレス加硫」と記載する場合がある。)されてもよい。
【0045】
次に、本実施形態の第2工程S2では、加硫ゴム4の第1物性値が測定される。第1物性値は、加硫ゴム4から取得可能な物性値であれば、適宜取得されうる。一般に、加硫ゴム4から取得可能な物性値には、加硫量に応じて変化する物性値が含まれている。この加硫量は、第1工程S1で取得された複数の温度履歴(例えば、
図4に示した第1温度履歴~第5温度履歴)ごとに異なるため、換算式に基づく上記の特徴量Fと相関がある。したがって、このような物性値が第1物性値として取得されることで、後述の第3工程S3において、特徴量F(加硫量)に応じて変化する第1物性値を、特徴量Fから推定可能な近似式の取得が可能となる。
【0046】
第1物性値は、加硫量に応じて変化する物性値であれば、適宜取得されうる。第1物性値には、加硫ゴム4の膨潤度、損失正接及び複素弾性率の絶対値の少なくとも1つが含まれるのが好ましい。これらの膨潤度、損失正接及び複素弾性率の絶対値は、加硫ゴム4で構成されるゴム製品2の性能に影響を及ぼす。したがって、第1物性値の推定値が取得されることで、ゴム製品2の性能評価が可能となる。
【0047】
膨潤度(トルエン膨潤度)は、図示しない加硫ゴム(試験片)を、室温下でトルエンに24時間浸漬し、その浸漬前後の試験片の質量変化率(浸漬後の質量/浸漬前の質量)である。
【0048】
損失正接及び複素弾性率の絶対値は、JISK6394「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-動的性質の求め方-一般指針」の規定に準拠して、粘弾性スペクトロメーターを用い、以下に示される条件下で測定された値である。
初期歪:10%
振幅:±2%
周波数:10Hz
変形モード:引張
温度:70℃
粘弾性スペクトロメーター:GABO社製「イプレクサー(登録商標)」
【0049】
本実施形態では、第1物性値として、膨潤度が取得される。複数の温度履歴(例えば、
図4に示した第1温度履歴~第5温度履歴を含む)ごとに取得された第1物性値(本例では、膨潤度)は、コンピュータ1(
図1に示す)に記憶される。
【0050】
[近似式の温度依存性係数を決定(第3工程)]
次に、本実施形態の予測方法では、上記式(1)の温度依存性係数Eが決定される(第3工程S3)。温度依存性係数Eは、近似式(例えば、
図5に示した近似曲線6)の誤差を小さくするためのものである。上述したように、近似式は、任意の温度履歴(図示省略)で加硫されたゴム材料の加硫後の第1物性値を、上記式(1)で計算される特徴量Fから推定するためのものである。また、近似式の誤差とは、特徴量Fから近似式を用いて推定される第1物性値(すなわち、近似曲線6上の第1物性値)と、実際の第1物性値との誤差を示している。
【0051】
上述したように、温度依存性係数Eには、加硫戻りの温度依存性を考慮して、任意の数値が代入される。この温度依存性係数Eに代入される数値の大きさに応じて、
図5に示した第1物性値に対応する特徴量Fが変動する。
【0052】
図7は、特徴量Fと第1物性値との関係の一例を示すグラフである。
図7では、互いに異なる温度依存性係数Eごとに、特徴量Fと第1物性値との関係を示すグラフが示されている。
図7では、3つの温度依存性係数Eに基づくグラフが代表して示されている。
【0053】
図7に示される3つのグラフのうち、左側のグラフでは、温度依存性係数Eに、活性化エネルギーと同一の値(83720×1.0)が代入されることで、特徴量Fが計算されている。したがって、左側のグラフの特徴量Fは、等価加硫量(ECU)と同一の値となる。
【0054】
図7に示される3つのグラフのうち、中央のグラフ及び右側のグラフは、温度依存性係数Eに、活性化エネルギーよりも大きな値が代入されている。したがって、中央のグラフ及び右側のグラフの特徴量Fは、等価加硫量(ECU)よりも大きな値となり、加硫戻りの温度依存性が考慮されうる。中央のグラフでは、活性化エネルギーに1.46を乗じた値(すなわち、83720×1.46)が、温度依存性係数Eに代入されている。右側のグラフでは、活性化エネルギーに3.0を乗じた値(すなわち、83720×3.0)が、温度依存性係数Eに代入されている。
【0055】
図7に示されるように、互いに異なる温度依存性係数Eによって、第1物性値に対応する特徴量Fが変動している。このような温度依存性係数Eが調整されることによって、特徴量Fから近似式を用いて推定される第1物性値(すなわち、近似曲線6上の第1物性値)と、特徴量Fに基づいてプロットされた実際の第1物性値との誤差が小さい近似式の特定が可能となる。
【0056】
本実施形態の第3工程S3では、先ず、互いに異なる複数の温度依存性係数Eごとに、複数の温度履歴と上記式(1)とに基づいて、特徴量Fが計算される。次に、互いに異なる複数の温度依存性係数Eごとに、特徴量Fと第1物性値との関係に基づいて、近似式(近似曲線6)が取得される。
【0057】
次に、本実施形態の第3工程S3では、複数の温度依存性係数Eごとに、近似式で計算される第1物性値の推定値がそれぞれ取得される。次に、本実施形態の第3工程S3では、複数の温度依存性係数Eごとに、第1物性値と、第1物性値の推定値との誤差が取得される。そして、複数の温度依存性係数Eのうち、誤差が最も小さい温度依存性係数Eが決定される。誤差は、例えば、二乗平均平方根誤差(RMSE)として取得されうる。
【0058】
図7に示したグラフのうち、中央のグラフにおいて、第1物性値と、近似式で計算される第1物性値の推定値(すなわち、近似曲線6上の第1物性値)との誤差が最も小さくなっている。この中央のグラフの温度依存性係数E(本例では、83720×1.46)が、近似式の誤差を最も小さくする温度依存性係数Eとして決定される。決定された温度依存性係数Eは、コンピュータ(
図1に示す)に記憶される。
【0059】
このように、本実施形態の予測方法では、活性化エネルギーを固定値として用いていた等価加硫量とは異なり、温度依存性係数Eを変数として用いる特徴量Fに基づいて、第1物性値が特定されている。この温度依存性係数Eが、近似式(近似曲線6)の誤差が小さくなるように決定されることで、特徴量Fと第1物性値との関係をより良く表した近似式の特定が可能となる。
【0060】
上述したように、温度依存性係数Eに、活性化エネルギーよりも大きな値が代入されることで、加硫戻りの温度依存性を考慮した特徴量Fから、第1物性値を精度よく予測することが可能となる。このような観点より、温度依存性係数Eを、83720×Aで定義した場合に、変数Aは、好ましくは1.0よりも大であり、より好ましくは1.5以上に設定されるのが好ましい。一方、変数Aが大きすぎても、加硫戻りの温度依存性が必要以上に考慮されて、第1物性値を精度良く予測できないおそれがある。このような観点より、変数Aは、上述の下限値との組み合わせにおいて、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.5以下に設定されるのが望ましい。一例として、変数Aは、1.5~3.0や、1.5~2.5が望ましい。
【0061】
また、近似式の誤差を小さくする温度依存性係数Eを決定するために、
図7に示した温度依存性係数Eの候補を特定する変数Aは、上記の範囲において、例えば、0.01~0.10刻みで設定されてもよい。
【0062】
[近似式を決定(第4工程)]
次に、本実施形態の予測方法では、決定された温度依存性係数Eに基づいて、近似式が決定される(第4工程S4)。本実施形態の第3工程S3では、
図7に示されるように、複数の温度依存性係数Eごとに、近似式(近似曲線6)が取得されている。これらの近似式のうち、決定された温度依存性係数Eを代入した近似式が特定される。この特定された近似式が、上記式(1)と温度依存性係数Eとで計算される特徴量Fから、第1物性値を推定するための近似式として決定されうる。
【0063】
近似式の決定は、上記の手順に限定されない。例えば、決定された温度依存性係数Eを代入した上記式(1)を用いて、複数の温度履歴ごとに特徴量Fがそれぞれ計算され、かつ、これらの特徴量Fと、特徴量Fに対応する第1物性値とに基づいて、近似式が改めて取得されてもよい。決定された近似式は、
図1に示したコンピュータ1に記憶される。
【0064】
[ゴム製品の性能値を計算]
次に、本実施形態の予測方法では、
図2に示したゴム製品2の性能値が計算される(工程S8)。本実施形態の工程S8では、第4工程S4で決定された近似式が、ゴム製品2に含まれる加硫ゴム4の第1物性値の推定に用いられる。そして、推定された第1物性値に基づく構造解析が行われることで、ゴム製品2の性能値が計算されうる。
【0065】
加硫ゴム4の第1物性値の推定には、先ず、予め定められた加硫条件に基づいて、
図6に示したゴム製品モデル7と金型モデル8との伝熱が計算される。本実施形態の工程S8では、先ず、ゴム製品モデル7のうち、予測対象のゴム材料を構成する全ての要素F(i)において、温度履歴が計算される。次に、これらの全ての要素F(i)の温度履歴と、決定された温度依存性係数Eを代入した上記式(1)とを用いて、全ての要素F(i)の特徴量Fがそれぞれ計算される。次に、全ての要素F(i)の特徴量が、決定された近似式に代入されることで、各要素F(i)の第1物性値がそれぞれ推定されうる。
【0066】
次に、本実施形態の工程S8では、要素F(i)ごとに推定された第1物性値が、予測対象の加硫ゴムを構成する各要素F(i)に定義される。そして、ゴム製品モデル7の構造解析が実施されることにより、ゴム製品モデル7(ゴム製品2)の性能値が予測される。本実施形態のように、ゴム製品2がタイヤ2Aである場合、例えば、上記特許文献1の第3工程の手順に基づいて、タイヤ2Aの転がり抵抗などが計算されてもよい。ゴム製品2の性能値は、コンピュータ1(
図1に示す)に記憶される。
【0067】
[性能値が基準を満たすか否かを判断]
次に、本実施形態の予測方法では、ゴム製品2の性能値が予め定められた基準を満たすか否かが判断される(工程S9)。本実施形態では、コンピュータ1(
図1に示す)によって、性能値が基準を満たすか否かが判断されるが、特に限定されるわけではない。例えば、コンピュータ1から出力された性能値に基づいて、オペレータが判断してもよい。基準は、ゴム製品2に求められる性能に応じて、適宜設定される。
【0068】
ゴム製品2の性能値が基準を満たす場合(工程S9で「Yes」)、伝熱解析で設定された加硫条件に基づいて、ゴム製品2が加硫成形(製造)される(工程S10)。一方、性能値が基準を満たさない場合(工程S9で「No」)、加硫条件を変更する工程S11が実施され、工程S8及び工程S9が再度実施される。加硫条件は、例えば、性能値が基準を満たすように、適宜変更されうる。これにより、所望の性能を有するゴム製品2を製造することが可能となる。
【0069】
本実施形態の予測方法では、ゴム製品2を実際に加硫成形して、ゴム製品2を用いた実験等を行うことなく、ゴム製品2が所望の性能を発揮するための加硫条件を特定することができる。したがって、本実施形態の予測方法では、ゴム製品2の設計及び製造を、短時間かつ低コストで実施することが可能となる。
【0070】
[加硫ゴムの物性値の予測方法(第2実施形態)]
これまでの実施形態では、特徴量Fから第1物性値を推定する近似式が取得されたが、このような態様に限定されない。例えば、第1物性値とは異なる第2物性値を推定するための近似式がさらに決定されてもよい。
【0071】
第2物性値は、
図2に示した加硫ゴム4から取得可能な物性値であれば、適宜取得されうる。本実施形態の第2物性値は、第1物性値と同様に、加硫量に応じて変化する物性値として取得される。これにより、特徴量F(加硫量)に応じて変化する第2物性値を、推定可能な近似式の取得が可能となる。
【0072】
第2物性値は、第1物性値と異なる物性値であり、かつ、加硫量に応じて変化する物性値であれば、適宜取得されうる。第2物性値には、第1物性値と同様に、加硫ゴム4の膨潤度、損失正接及び複素弾性率の絶対値の少なくとも1つが含まれるのが好ましい。これらの膨潤度、損失正接及び複素弾性率の絶対値は、加硫ゴム4で構成されるゴム製品2の性能に影響を及ぼすため、第2物性値の推定値が取得されることで、ゴム製品2の性能評価が可能となる。本実施形態では、第2物性値として、損失正接が取得される。
図8は、本発明の他の実施形態の予測方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0073】
[第1工程~第3工程]
この実施形態の予測方法では、
図3に示した第1工程S1~第3工程S3が実施される。これにより、この実施形態では、これまでの実施形態と同様に、特徴量Fから第1物性値を推定するための近似式について、近似式の誤差を小さくする温度依存性係数Eが決定されうる。
【0074】
[第4工程]
次に、この実施形態の予測方法では、これまでの実施形態と同様に、第4工程S4が実施されている。これにより、この実施形態では、決定された温度依存性係数Eに基づいて、特徴量Fから第1物性値を推定するための近似式が決定されうる。なお、この実施形態において、第1物性値を推定する必要がない場合には、第4工程S4が省略されてもよい。
【0075】
[第1工程よりも少ない種類数の温度履歴を取得(第5工程)]
次に、この実施形態の予測方法では、第1工程S1よりも少ない種類数の温度履歴が複数取得される(第5工程S5)。複数の温度履歴は、後述の第7工程S7において、特徴量Fから第2物性値を推定するための近似式の決定に用いられる。
【0076】
第2物性値の推定に用いられる特徴量Fは、第1物性値の推定に用いられる特徴量Fと同様に、上記式(1)に基づいて計算される。上記式(1)の温度依存性係数Eは、適宜設定される。本実施形態の温度依存性係数Eには、第3工程S3で決定された温度依存性係数Eが用いられうる(流用されうる)。このように、第2物性値を推定するための特徴量Fの計算に、第1物性値と共通の温度依存性係数Eが用いられているのは、第1物性値及び第2物性値が、加硫量に応じて変化する点で共通し、換算式に基づく特徴量Fと相関があるためである。
【0077】
このように、この実施形態では、第2物性値を推定するための特徴量Fの計算に、第3工程S3で決定された温度依存性係数Eを代入した上記式(1)が用いられる。このため、後述の第7工程S7では、第3工程S3とは異なり、温度依存性係数Eの決定に必要な多数の温度履歴が不要となる。したがって、第2物性値を推定するための近似式の決定に要するコストが低減されうる。
【0078】
第5工程S5で取得される複数の温度履歴の個数は、第1工程S1よりも少なければ、適宜設定されうる。本実施形態の個数は、例えば、近似式に求められる計算精度や、近似式の取得に要するコスト等を考慮して、2~10個(本例では、3個)に設定される。
【0079】
本実施形態の第5工程S5では、第1工程S1と同様に、複数のゴム材料をそれぞれ異なる加硫条件で加硫したときの複数の温度履歴が取得される。これらの複数の温度履歴は、互いに異なる加硫条件で、未加硫のゴム材料を加硫することで取得されうる。加硫条件は、上述のとおりである。また、複数の温度履歴の取得に用いられる複数のゴム材料は、同一の配合とされるのが好ましい。なお、温度履歴(特徴量F)と物性値との相関が強い場合には、配合が異なるゴム材料が含まれていてもよい。
【0080】
複数の温度履歴は、適宜取得されうる。本実施形態の第5工程S5では、第1工程S1と同様に、複数の温度履歴を、計算によって求めるための加硫シミュレーション工程が含まれる。加硫シミュレーションの詳細は、上述のとおりである。このような加硫シミュレーションにより、複数の温度履歴の取得や、近似式の取得に要するコストの増大が抑制されうる。さらに、所望の温度履歴が取得されるまで、加硫条件を変更した加硫シミュレーション工程を繰り返し実行することができるため、分散した複数の温度履歴を、容易かつ確実に取得することが可能となる。
【0081】
第5工程S5では、第1工程S1で取得された複数の温度履歴(例えば、
図4に示した第1温度履歴~第5温度履歴)のうち、一部の温度履歴が選択されてもよい。この場合、例えば、第1工程S1で取得された複数の温度履歴のうち、上記式(1)で計算される特徴量Fが最大となる温度履歴、特徴量Fが最小となる温度履歴、及び、特徴量Fが平均値に近い温度履歴が選択されるのが好ましい。これにより、分散した複数の温度履歴(特徴量F)が取得されるため、予測精度の高い近似式の決定が可能となる。さらに、温度履歴を新たに取得する必要がないため、複数の温度履歴の取得に要するコストが低減されうる。複数の温度履歴は、コンピュータ1(
図1に示す)に記憶される。
【0082】
[加硫ゴムの第2物性値を取得]
次に、この実施形態の予測方法では、第5工程S5で取得された複数の温度履歴で加硫された加硫ゴムのそれぞれから、第1物性値とは異なる第2物性値が取得される(第6工程S6)。第2物性値の詳細は、上述のとおりである。
【0083】
この実施形態では、第5工程S5に含まれる加硫シミュレーション工程によって、複数の温度履歴が計算されている。この場合、第6工程S6において、第2物性値の取得に必要な加硫ゴム4(
図2に示す)が作製されていない。したがって、この実施形態の第6工程S6では、第2物性値の取得に先立ち、複数の温度履歴で加硫された加硫ゴム4が作製される。
【0084】
この実施形態の第6工程S6では、先ず、未加硫のゴム材料(図示省略)が複数準備される。これらの複数のゴム材料は、上述の観点から、同一の配合とされるのが好ましい。また、ゴム材料の寸法は、上述のとおりである。
【0085】
次に、この実施形態の第6工程S6では、第5工程S5で取得された複数の温度履歴のそれぞれに基づいて、例えば、公知の動的ゴムプロセス分析装置を用いて、未加硫のゴム材料(試験片)が加硫される。これにより、加硫ゴム(図示省略)が作製される。なお、ゴム材料は、プレス加硫されてもよい。
【0086】
次に、本実施形態の第6工程S6では、加硫ゴム4の第2物性値が測定される。第2物性値の詳細は、上述のとおりである。複数の温度履歴ごとに取得された第2物性値(本例では、3つの温度履歴ごとに取得された損失正接)は、コンピュータ1(
図1に示す)に記憶される。
【0087】
[第2物性値を推定するための近似式を決定(第7工程)]
次に、この実施形態の予測方法では、第2物性値を推定するための近似式が決定される(第7工程S7)。近似式は、任意の温度履歴で加硫されたゴム材料の加硫後の第2物性値を、決定された温度依存性係数Eを代入した上記式(1)で計算される特徴量Fから推定するためのものである。
【0088】
図9は、特徴量Fと第2物性値との関係の一例を示すグラフである。本実施形態の第7工程S7では、第5工程S5で取得された複数の温度履歴(本例では、3つの温度履歴)ごとに、第3工程S3で決定された温度依存性係数Eを代入した上記式(1)で計算される特徴量Fと、特徴量Fに対応する第2物性値とが特定される。これらの特徴量Fと第2物性値との関係を示すデータ(
図9にプロットされたデータ)に基づいて、特徴量Fから第2物性値を推定可能な近似式(近似曲線11)が決定される。
【0089】
このように、この実施形態の予測方法では、第2物性値の推定に用いられる特徴量Fの計算に、第1物性値と共通の温度依存性係数Eが用いられている。このため、特徴量Fから第2物性値を推定するための近似式(近似曲線11)が、短時間かつ低コストで決定されうる。さらに、第2物性値は、加硫量に応じて変化する点において第1物性値と共通しており、換算式に基づく上記の特徴量Fと相関があるため、第1物性値と共通の温度依存性係数Eが用いられても、第2物性値の予測精度が維持されうる。決定された近似式は、
図1に示したコンピュータ1に記憶される。
【0090】
[ゴム製品の性能値を計算]
次に、この実施形態の予測方法では、
図2に示したゴム製品2の性能値が計算される(工程S8)。この実施形態の工程S8では、第4工程S4で決定された近似式が、ゴム製品2に含まれる加硫ゴム4の第1物性値の推定に用いられる。さらに、第7工程S7で決定された近似式が、ゴム製品2に含まれる加硫ゴム4の第2物性値の推定に用いられる。そして、推定された第1物性値及び第2物性値に基づく構造解析が行われることで、ゴム製品2の性能値が計算されうる。
【0091】
加硫ゴム4の第1物性値及び第2物性値の推定には、先ず、予め定められた加硫条件に基づいて、
図6に示したゴム製品モデル7と金型モデル8との伝熱が計算される。この実施形態の工程S8では、先ず、ゴム製品モデル7のうち、予測対象のゴム材料を構成する全ての要素F(i)において、温度履歴が計算される。次に、これらの全ての要素F(i)の温度履歴と、決定された温度依存性係数Eを代入した上記式(1)を用いて、全ての要素F(i)の特徴量Fがそれぞれ計算される。次に、全ての要素F(i)の特徴量が、第4工程S4で決定された近似式と、第7工程S7で決定された近似式とに代入されることで、各要素F(i)の第1物性値及び第2物性値がそれぞれ推定されうる。
【0092】
次に、この実施形態の工程S8では、要素F(i)ごとに推定された第1物性値及び第2物性値が、予測対象の加硫ゴムを構成する各要素F(i)に定義される。そして、ゴム製品モデル7の構造解析が実施されることにより、ゴム製品モデル7(ゴム製品2)の性能値が予測される。ゴム製品2の性能値は、コンピュータ1(
図1に示す)に記憶される。
【0093】
[性能値が基準を満たすか否かを判断]
次に、この本実施形態の予測方法では、ゴム製品2の性能値が予め定められた基準を満たすか否かが判断される(工程S9)。そして、ゴム製品2の性能値が基準を満たす場合(工程S9で「Yes」)、伝熱解析で設定された加硫条件に基づいて、ゴム製品2が加硫成形(製造)される(工程S10)。一方、性能値が基準を満たさない場合(工程S9で「No」)、加硫条件を変更する工程S11が実施され、工程S8及び工程S9が再度実施される。加硫条件は、例えば、性能値が基準を満たすように、適宜変更されうる。これにより、所望の性能を有するゴム製品2を製造することが可能となる。
【0094】
この実施形態の予測方法では、これまでの実施形態と同様に、ゴム製品2を実際に加硫成形して、ゴム製品2を用いた実験等を行うことなく、ゴム製品2が所望の性能を発揮するための加硫条件を特定することができる。したがって、本実施形態の予測方法では、ゴム製品2の設計及び製造を、短時間かつ低コストで実施することが可能となる。
【0095】
[加硫ゴムの物性値の予測方法(第3実施形態)]
これまでの実施形態では、第1物性値及び/又は第2物性値を推定するための近似式が決定されたが、このような態様に限定されない。例えば、第1物性値及び第2物性値とは異なる物性値(第3物性値など)を推定するための近似式が決定されてもよい。
【0096】
第3物性値は、加硫ゴム4から取得可能な物性値であれば、適宜取得されうる。この実施形態の第3物性値は、第1物性値や第2物性値と同様に、加硫量に応じて変化する物性値として取得される。この場合、第3物性値には、第1物性値や第2物性値と同様に、加硫ゴム4の膨潤度、損失正接及び複素弾性率の絶対値の少なくとも1つ(本例では、複素弾性率の絶対値)が含まれるのが好ましい。
【0097】
この実施形態では、
図8に示した第5工程S5~第7工程S7と同様の処理手順に基づいて、第3物性値の近似式が決定される。これにより、第3物性値の推定に用いられる特徴量Fの計算に、第1物性値及び第2物性値と共通の温度依存性係数Eが用いられるため、この特徴量Fから第3物性値を推定するための近似式を、短時間かつ低コストで決定しうる。さらに、第3物性値は、加硫量に応じて変化する点において第1物性値及び第2物性値と共通しており、換算式に基づく上記の特徴量Fと相関がある。このため、第1物性値及び第2物性値と共通の温度依存性係数Eが用いられても、第3物性値の予測精度が維持されうる。決定された近似式は、
図1に示したコンピュータ1に記憶される。
【0098】
[加硫ゴムの物性値の予測方法(第4実施形態)]
これまでの実施形態の第1工程S1は、加硫シミュレーション工程により、温度履歴が計算によって求められたが、このような態様に限定されない。第1工程S1は、温度履歴を実測により求める加硫工程が含まれてもよい。この実施形態の加硫工程では、
図2に示したゴム製品2を加硫するための加硫金型(図示省略)を用いて、ゴム製品2を加硫したときのゴム材料の温度履歴が取得される。これにより、この実施形態では、これまでの実施形態の加硫シミュレーション工程に比べて、温度履歴が高い精度で取得されうる。なお、加硫工程においては、ゴム材料の単体がプレス加硫されても良い。
【0099】
この実施形態では、第1工程S1において、第1物性値の取得に必要な加硫ゴム4が作製されている。このため、この実施形態の第2工程S2では、加硫ゴム4を改めて作製することなく、第1物性値が取得されうる。
【0100】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例0101】
[実施例A]
図3に示した処理手順の第1工程~第3工程に基づいて、加硫ゴムの第1物性値(損失正接)が予測された(実施例1)。実施例1では、第1物性値として、損失正接が予測された。
【0102】
実施例1では、複数のゴム材料をそれぞれ異なる加硫条件で加硫したときのゴム温度と加硫時間との関係を示す温度履歴が複数取得された(第1工程)。次に、実施例1では、複数の温度履歴で加硫された加硫ゴムのそれぞれから損失正接が取得された(第2工程)。そして、損失正接を特徴量Fから推定するための近似式を得るために、近似式の誤差を小さくする温度依存性係数Eが決定された(第3工程)。
【0103】
第3工程では、互いに異なる温度依存性係数Eごとに、特徴量Fと損失正接との関係に基づく近似式がそれぞれ取得された。そして、これらの温度依存性係数Eのうち、損失正接と、近似式で計算される損失正接の推定値との誤差が最も小さい温度依存性係数Eが決定された。さらに、実施例1では、決定された温度依存性係数Eに基づいて、近似式を決定する第4工程が実施された。
【0104】
比較のために、複数の温度履歴に基づいて、等価加硫量(ECU)が計算された(比較例)。そして、比較例では、等価加硫量と損失正接との関係が取得された。さらに、比較例では、等価加硫量から損失正接を推定するための近似式が決定された。共通仕様は、次のとおりである。
第1工程の温度履歴:50個
決定された温度依存性係数E:83720×2.2
活性化エネルギー:83720J/mol
【0105】
図10(a)は、実施例1の特徴量Fと損失正接との関係を示すグラフである。
図10(a)では、決定された温度依存性係数Eに基づいて、特徴量Fが計算されている。
図10(b)は、比較例の等価加硫量(ECU)と損失正接との関係を示すグラフである。
【0106】
図10(a)に示した実施例1の特徴量Fは、
図10(b)に示した比較例の等価加硫量(ECU)に比べて、損失正接との相関が高くなっている。このような特徴量Fから損失正接を推定する近似式が取得される実施例1では、等価加硫量(ECU)から損失正接を推定する近似式が取得される比較例に比べて、加硫ゴムの物性値を精度よく予測できることが確認された。
【0107】
図11は、実施例1の近似式で推定された損失正接の推定値と、損失正接の測定値との関係を示すグラフである。実施例1では、二乗平均平方根誤差(RMSE)が0.0029であり、最大誤差が0.0069であった。したがって、実施例1は、加硫ゴムの物性値を精度よく予測できた。
【0108】
[実施例B]
図8に示した処理手順に基づいて、加硫ゴムの物性値が予測された(実施例2)。実施例2では、第1物性値として、膨潤度が予測された。
【0109】
実施例2では、配合が同一の複数のゴム材料について、それぞれ異なる加硫条件でプレス加硫したときのゴム温度と加硫時間との関係を示す温度履歴が複数取得された(第1工程)。次に、実施例2では、複数の温度履歴で加硫された加硫ゴムのそれぞれから膨潤度が取得された(第2工程)。そして、膨潤度を特徴量Fから推定するための近似式を得るために、近似式の誤差を小さくする温度依存性係数Eが決定された(第3工程)。
【0110】
第3工程では、互いに異なる温度依存性係数Eごとに、特徴量Fと膨潤度との関係に基づく近似式がそれぞれ取得された。そして、これらの温度依存性係数Eのうち、膨潤度と、近似式で計算される膨潤度の推定値との誤差が最も小さい温度依存性係数Eが決定された。さらに、実施例2では、決定された温度依存性係数Eに基づいて、近似式を決定する第4工程が実施された。
【0111】
次に、実施例2では、第1工程よりも少ない種類数の温度履歴が複数取得された(第5工程)。次に、実施例2では、第5工程で取得された複数の温度履歴に基づいて動的ゴムプロセス分析装置(RPA)によって加硫された加硫ゴムのそれぞれから、第1物性値とは異なる第2物性値が取得された(第6工程)。実施例2では、第2物性値として、複素弾性率の絶対値が予測された。
【0112】
次に、実施例2では、任意の温度履歴で加硫されたゴム材料の加硫後の複素弾性率の絶対値を、決定された温度依存性係数Eで計算される特徴量Fから推定するための近似式が決定された(第7工程)。
【0113】
さらに、実施例2では、第5工程~第7工程の手順に基づいて、第3物性値を特徴量から推定する近似式が決定された。実施例2では、第3物性値として、損失正接が取得された。
【0114】
実施例2では、プレス加硫された加硫ゴムと、動的ゴムプロセス分析装置(RPA)によって加硫された加硫ゴムとの2種類の加硫ゴムについて、第1物性値、第2物性値及び第3物性値がそれぞれ取得された。そして、それらの加硫ゴムの第1物性値、第2物性値及び第3物性値が、第1工程~第7工程の手順に基づいて決定された近似式によってそれぞれ推定された。共通仕様は、次のとおりである。
第1工程の温度履歴:8個
第5工程の温度履歴:3個
決定された温度依存性係数E:83720×2.0
【0115】
図12(a)は、特徴量Fと膨潤度との関係を示すグラフである。
図12(b)は、特徴量Fと複素弾性率の絶対値との関係を示すグラフである。
図12(c)は、特徴量Fと損失正接との関係を示すグラフである。これらのグラフにおいて、「●」は、プレス加硫された加硫ゴムの物性値(8個分)を示しており、「○」は、動的ゴムプロセス分析装置(RPA)によって加硫された加硫ゴムの物性値(50個分)を示している。
【0116】
図12(a)~(c)に示されるように、プレス加硫された加硫ゴムと、動的ゴムプロセス分析装置(RPA)によって加硫された加硫ゴムとの双方において、特徴量Fと膨潤度との相関、特徴量Fと複素弾性率の絶対値との相関、及び、特徴量Fと損失正接との相関が高くなっている。したがって、実施例2では、加硫ゴムの物性値を精度よく予測できることが確認された。
【0117】
また、実施例2は、実施例1(損失正接)とは異なり、第1物性値として膨潤度が取得されたが、その膨潤度に基づいて温度依存性係数Eを用いて、第2物性値としての複素弾性率の絶対値や、第3物性値としての損失正接を精度よく予測できた。なお、第1物性値として、複素弾性率の絶対値が取得された場合でも、その複素弾性率の絶対値に基づいて決定された温度依存性係数Eを用いて、第2物性値としての膨潤度や、第3物性値としての損失正接も精度よく予測できた。したがって、温度依存性係数Eの決定に用いられる第1物性値の種類に依存することなく、第1物性値、第2物性値及び第3物性値を精度良く予測できることが確認できた。
【0118】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0119】
[本発明1]
加硫ゴムの物性値を予測するための方法であって、
複数のゴム材料をそれぞれ異なる加硫条件で加硫したときのゴム温度と加硫時間との関係を示す温度履歴を複数取得する第1工程と、
前記複数の温度履歴で加硫された加硫ゴムのそれぞれから第1物性値を取得する第2工程と、
任意の温度履歴で加硫された前記ゴム材料の加硫後の前記第1物性値を、下記式(1)で計算される換算式に基づいた特徴量Fから推定する近似式を得るために、前記近似式の誤差を小さくする下記式(1)の温度依存性係数Eを決定する第3工程とを含む、
加硫ゴムの物性値の予測方法。
【数1】
ここで、
F:特徴量
t:加硫時間(分)
E:温度依存性係数
R:気体定数
T(s):加硫中の測定温度(K)
[本発明2]
決定された前記温度依存性係数Eに基づいて、前記近似式を決定する第4工程をさらに含む、本発明1に記載の加硫ゴムの物性値の予測方法。
[本発明3]
前記第1工程よりも少ない種類数の温度履歴を複数取得する第5工程と、
前記第5工程で取得された前記複数の温度履歴で加硫された前記加硫ゴムのそれぞれから、前記第1物性値とは異なる第2物性値を取得する第6工程と、
任意の温度履歴で加硫された前記ゴム材料の加硫後の前記第2物性値を、決定された前記温度依存性係数Eを代入した上記式(1)で計算される特徴量Fから推定するための近似式を決定する第7工程と、をさらに含む、本発明1又は2に記載の加硫ゴムの物性値の予測方法。
[本発明4]
前記第1物性値は、加硫ゴムの物性値のうち、加硫量に応じて変化する物性値である、本発明1ないし3のいずれかに記載の加硫ゴムの物性値の予測方法。
[本発明5]
前記第1物性値は、加硫ゴムの膨潤度、損失正接及び複素弾性率の絶対値の少なくとも1つを含む、本発明4に記載の加硫ゴムの物性値の予測方法。
[本発明6]
前記第1工程は、前記温度履歴を計算により求める加硫シミュレーション工程を含む、本発明1ないし5のいずれかに記載の加硫ゴムの物性値の予測方法。
[本発明7]
前記第1工程は、前記温度履歴を実測により求める加硫工程を含む、本発明1ないし5のいずれかに記載の加硫ゴムの物性値の予測方法。
[本発明8]
前記温度依存性係数Eは、83720×A(Aは、1.0~3.0)である、本発明1ないし7のいずれかに記載の加硫ゴムの物性値の予測方法。