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  • 特開-タイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155365
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/00 20060101AFI20251006BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20251006BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20251006BHJP
【FI】
B60C9/00 L
B60C9/00 B
B60C9/22 C
B60C9/18 K
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059169
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(72)【発明者】
【氏名】田代 望月
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA33
3D131AA44
3D131AA45
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC13
3D131BC31
3D131DA43
3D131DA54
(57)【要約】
【課題】低燃費性と高速耐久性と操縦安定性との総合性能の向上を図る。
【解決手段】カーカスコードを備えるカーカスと、ベルトコードを備えカーカスのタイヤ半径方向外側に設けられるベルトと、バンドコードを備ベルトのタイヤ半径方向外側に設けられるバンドと、バンドのタイヤ半径方向外側に設けられるトレッドとを備えるタイヤであって、バンドコードはポリエチレンテレフタレート繊維を含んでおり、トレッドをタイヤ径方向に平面視したときにおける、タイヤ周方向とベルトコードの長手方向とがなす角度のうち、小さい方の角度である交差角度が、0度超、25度未満であり、ベルトコードは本以上、4本以下のフィラメントから構成されており、ベルトコード径Dbr(mm)に対するバンドコード径Dba(mm)の比(Dba/Dbr)が、下記の(1式)を満たしているタイヤ。
0.5<Dba/Dbr<1.8 (1式)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスコードを備えるカーカスと、
ベルトコードを備え、前記カーカスのタイヤ半径方向外側に設けられるベルトと、
バンドコードを備え、前記ベルトのタイヤ半径方向外側に設けられるバンドと、
前記バンドのタイヤ半径方向外側に設けられるトレッドとを備えるタイヤであって、
前記バンドコードは、ポリエチレンテレフタレート繊維を含んでおり、
前記トレッドをタイヤ径方向に平面視したときにおける、タイヤ周方向と前記ベルトコードの長手方向とがなす角度のうち、小さい方の角度である交差角度が、0度超、25度未満であり、
前記ベルトコードは、1本以上、4本以下のフィラメントから構成されており、
前記ベルトコード径Dbr(mm)に対する前記バンドコード径Dba(mm)の比(Dba/Dbr)が、下記の(1式)を満たしていることを特徴とするタイヤ。
0.5<Dba/Dbr<1.8 (1式)
【請求項2】
前記(Dba/Dbr)が、下記の(2式)を満たしていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
0.9<Dba/Dbr<1.7 (2式)
【請求項3】
前記ベルトコードの構造が、1×1構造、1×2構造、1×3構造、1×4構造、2+2構造のいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ベルトコードが、スチール製であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記交差角度が、22度未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記バンドコード径が、0.2mm超、0.8mm未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記トレッドを形成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部中に、25質量部超のイソプレン系ゴムを含有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記イソプレン系ゴムが、天然ゴムであることを特徴とする請求項7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記トレッドを形成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、60質量部超のシリカを含有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記シリカの粒子径(平均一次粒子径)が、8nm超であることを特徴とする請求項9に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記トレッドを形成するゴム組成物におけるアセトン抽出量が、10質量%超であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記ポリエチレンテレフタレート繊維が、サステナブルポリエチレンテレフタレート繊維であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記シリカが、サステナブルシリカであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記カーボンブラックが、サステナブルカーボンブラックであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記トレッドを形成するゴム組成物が、植物油を含有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のように、乗用車用タイヤにおいては、高速走行時、遠心力によるタイヤの変形を防ぐという観点から、一般的に、トレッドとベルトとの間にバンド(キャッププライとも言われる)を設けることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-38812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低燃費性と高速耐久性と操縦安定性との総合性能の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
カーカスコードを備えるカーカスと、
ベルトコードを備え、前記カーカスのタイヤ半径方向外側に設けられるベルトと、
バンドコードを備え、前記ベルトのタイヤ半径方向外側に設けられるバンドと、
前記バンドのタイヤ半径方向外側に設けられるトレッドとを備えるタイヤであって、
前記バンドコードは、ポリエチレンテレフタレート繊維を含んでおり、
前記トレッドをタイヤ径方向に平面視したときにおける、タイヤ周方向と前記ベルトコードの長手方向とがなす角度のうち、小さい方の角度である交差角度が、0度超、25度未満であり、
前記ベルトコードは、1本以上、4本以下のフィラメントから構成されており、
前記ベルトコード径Dbr(mm)に対する前記バンドコード径Dba(mm)の比(Dba/Dbr)が、下記の(1式)を満たしていることを特徴とするタイヤである。
0.5<Dba/Dbr<1.8 (1式)
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、低燃費性と高速耐久性と操縦安定性との総合性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施の形態に係るタイヤを説明する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1]本開示に係るタイヤの特徴
最初に、本開示に係るタイヤの特徴について説明する。
【0009】
1.概要
本開示に係るタイヤは、カーカスコードを備えるカーカスと、ベルトコードを備えカーカスのタイヤ半径方向外側に設けられるベルトと、バンドコードを備えベルトのタイヤ半径方向外側に設けられるバンドと、バンドのタイヤ半径方向外側に設けられるトレッドとを備えている。そして、バンドコードは、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)を含んでいる。また、ベルトコードは1本以上、4本以下のフィラメントから構成されており、トレッドをタイヤ径方向に平面視したときにおける、タイヤ周方向とベルトコードの長手方向とがなす角度のうち、小さい方の角度である交差角度が、0度超、25度未満である。さらに、ベルトコード径Dbr(mm)に対するバンドコード径Dba(mm)の比(Dba/Dbr)が、(1式)を満たしている。
0.5<Dba/Dbr<1.8 (1式)
【0010】
これらの特徴を有することにより、後述するように、低燃費性と高速耐久性と操縦安定性との総合性能の向上を図ることができる。
【0011】
なお、本明細書において、「コード径」とは、コード延在方向に垂直な断面の外接円が真円の場合には直径を指し、楕円等の場合は真円相当径(断面積が同じ真円を想定したときの当該真円の直径)を指す。
【0012】
また、バンドコード径(Dba)は、JIS L1017:2002「化学繊維タイヤコード試験方法」に規定される試験方法に準拠して測定される値であり、ベルトコード径(Dbr)は、JIS G3510:1992「スチールタイヤコード試験方法」に規定される試験方法に準拠して測定される値である。
【0013】
2.本開示に係るタイヤにおける効果発現のメカニズム
本開示に係るタイヤにおける上記した効果発現のメカニズムについては、以下のように考えられる。
【0014】
(1)バンドコード
本発明に係るタイヤにおいて、バンドコードには、PET繊維を含むコード(PETコード)が使用されている。
【0015】
PET繊維は、従来からバンドコードに主として使用されているナイロン66(ポリアミド合成繊維)と比較して高剛性であるため、バンドコードにPETコードを使用することにより、より小さなコード径であっても(コードゲージを減少させても)同等の拘束力を発揮することができる。そして、その結果、バンドの厚み(プレップゲージ)、バンドの重量(プレップ重量)を減少させることができるため、タイヤの軽量化を図って、転がり抵抗を低減でき、低燃費性の向上を図ることができると考えられる。
【0016】
なお、上記において、「PET繊維を含むコード」とは、PET繊維のみで構成されていること以外に、PET繊維と他の繊維(ポリエチレンナフタレート繊維等のPET繊維以外のポリエステル繊維、アラミド繊維等)とが併用されて構成されていてもよいことを示している。
【0017】
本発明において、PET繊維は、環境保護に適応したサステナブル材料であることが好ましい。サステナブル材料であるPET繊維(サステナブルPET繊維)としては、例えば、使用済みペットボトル等のプラスチックごみや古品、廃材を回収してリサイクルされたPET繊維(再生PET繊維)や、バイオマスから製造されたPET繊維(バイオPET繊維)が挙げられる。
【0018】
PETコードを備えるバンドは、PETコードを接着剤により処理した後、所定のバンド用ゴム組成物と接着させることにより製造することができる。PETコードの接着に用いる接着剤としては、例えば、エポキシ化合物としてEX-313(グリセリンポリグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製)及びRFL(レゾルシン・ホルマリン-ラテックス)等を用いることができる。
【0019】
なお、バンドコード径(Dba)としては、0.2mm超であることが好ましく、0.4mm超であるとより好ましい。上限としては、0.8mm未満であることが好ましく、0.6mm未満であるとより好ましい。
【0020】
そして、バンドは、1層でも2層でもよい。また、バンドは、トレッドの幅方向全体に亘って形成されていてもよいし、トレッドの両端部だけに形成されていてもよい。
【0021】
(2)ベルトコード
減少したコード径のPETコードをバンドコードに使用したタイヤは、耐圧縮疲労性が劣るため、高速耐久性や操縦安定性を低下させる恐れがある。また、PETコードは高剛性でありモジュラスが高いため、接地形状が丸くなり易く、ショルダー部に接地圧が集中して破壊の起点となってしまい、高速耐久性や操縦安定性を低下させる恐れがある。
【0022】
そこで、本発明においては、トレッドをタイヤ径方向に平面視したときにおける、タイヤ周方向とベルトコードの長手方向とがなす角度のうち、小さい方の角度を「交差角度」と定義し、理論上は0~90度となる「交差角度」を、0度超、25度未満と小さくしている。24度未満であるとより好ましく、23度未満であるとさらに好ましく、22度未満であるとさらに好ましい。
【0023】
このように交差角度を小さくすることにより、トレッド剛性が上昇して拘束力の上昇を図ることができるため、走行時における応答性がよくなり、操縦安定性の向上を図ることができると考えられる。
【0024】
また、交差角度を小さくすることにより、接地形状のフラット化を図ることができるため、上記したPETコードを使用したバンドコードによる接地形状が丸くなり易いというデメリットを打ち消して、PETコードの使用による拘束力アップと、交差角度を小さくすることによる拘束力アップとにより、高速耐久性の向上を図ることができると考えられる。
【0025】
なお、本発明において、交差角度は、タイヤ周方向に対してベルトコードの傾斜方向が逆方向の場合であっても、上記した定義に従って、±の符号をつけることなく、絶対値で示すものとする。また、例えば、2層以上のベルト層があり、それぞれの交差角度が異なって複数あるような場合には、少なくとも、1つのベルト層における交差角度が0度超、25度未満であればよい。
【0026】
そして、本発明においては、ベルトコードが、1本以上、4本以下のフィラメントから構成されている。このようにフィラメントの本数を少なくすることにより、タイヤの軽量化を図って、転がり抵抗を低減できるため、低燃費性の向上を図ることができると考えられる。
【0027】
なお、ベルトコードを構成するフィラメントの素材は特に限定されないが、金属製であることが好ましく、その内でも、鉄製であるとより好ましく、スチール製であると特に好ましい。また、ベルトコードの構造は、無撚りの1×1構造、単撚りの1×2構造、1×3構造、1×4構造、および、層撚りの2+2構造のいずれかであることが好ましい。
【0028】
(3)ベルトコード径Dbrに対するバンドコード径Dbaの比(Dba/Dbr)
本発明者はさらに検討を行い、(Dba/Dbr)を0.5超、1.8未満と、適切に制御した場合、上記した各効果が協働して発揮され、低燃費性と高速耐久性と操縦安定性との総合性能の向上が図れると考えた。なお、(Dba/Dbr)の下限としては、0.7超であるとより好ましく、0.9超であるとさらに好ましく、1.1超であるとさらに好ましい。一方、上限としては、1.7未満であるとより好ましく、1.6未満であるとさらに好ましく、1.5未満であるとさらに好ましい。
【0029】
[2]本開示に係るタイヤにおけるより好ましい態様
本開示に係るタイヤは、以下の態様を採ることにより、さらに大きな効果を得ることができる。
【0030】
1.トレッドを形成するゴム組成物におけるイソプレン系ゴムの含有
本発明において、トレッドを形成するゴム組成物(トレッド用ゴム組成物)は、ゴム成分100質量部中に、25質量部超のイソプレン系ゴムを含有していることが好ましい。
【0031】
ゴム成分100質量部中にイソプレン系ゴムを25質量部超含むことにより、高速走行時における発熱を低減できる低発熱性のトレッドとすることができるため、転がり抵抗の低減を図ることができ、低燃費性のさらなる向上を図ることができると考えられる。また、トレッドの温度上昇に合わせて発生するPETコードの剛性(モジュラス)低下を抑制することができるため、高速耐久性の向上を図ることができると考えられる。30質量部以上であるとより好ましく、40質量部以上であるとさらに好ましい。上限としては、例えば、70質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であるとより好ましい。
【0032】
具体的なイソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、改質天然ゴム(改質NR)、変性天然ゴム(変性NR)、合成ポリイソプレン(イソプレンゴム(IR)、変性イソプレンゴム(変性IR)などを挙げることができるが、その内でも、強度に優れるNRが好ましい。なお、NRとしては、例えば、SVR-L、SIR20、RSS♯3、TSR20など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0033】
2.シリカの含有
また、本発明において、トレッド用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、60質量部超のシリカを、充填剤として含有することが好ましい。70質量部超であるとより好ましく、80質量部超であるとさらに好ましい。上限としては、例えば、150質量部未満であることが好ましく、130質量部未満であるとより好ましく、110質量部未満であるとさらに好ましい。
【0034】
シリカは表面にOH基を有しているため、ゴム成分100質量部に対し60質量部超と、多く含有させることにより、シリカ表面間で水素結合が生じ、かつ、ゴム成分とも相互作用をする。このため、走行時、容易に、ゴム内部で力を発生させて、伝達させ、旋回時に生じた力を伝え易くすることができ、操縦安定性のさらなる向上を図ることができると考えられる。
【0035】
また、表面のOH基はオゾンを捕捉することができるため、耐オゾン性が向上して、高速耐久性のさらなる向上を図ることができると考えられる。
【0036】
3.トレッド用ゴム組成物におけるアセトン抽出分(AE量)
さらに、本発明において、トレッド用ゴム組成物のAE量は、10質量%超であることが好ましく、15質量%超であるとより好ましく、20質量%超であるとさらに好ましい。一方、上限としては、例えば、35質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であるとより好ましく、25質量%以下であると特に好ましい。
【0037】
AE量は、ゴム組成物において、軟化剤(可塑剤)等のゴム成分に可塑性を付与する材料の量を示す指標と考えることができ、ゴム組成物の軟らかさを示す指標とも考えることができる。このため、トレッド用ゴム組成物のAE量を、10質量%超と、ある程度多くした場合には、トレッドのブロックがしなやかに変形できるようになり、高速走行時でも、路面への接地面積を十分に確保して、接地圧の集中による発熱を抑制することができ、高速耐久性のさらなる向上を図ることができると考えられる。
【0038】
なお、AE量の測定は、JIS K 6229:2015に準拠して行うことができる。具体的には、測定部位から切り出した加硫ゴム試験片を所定の時間、アセトンに浸漬して、試験片の質量減少率(%)を求めることにより、AE量(質量%)を得ることができる。
【0039】
より詳細には、常温、常圧下、各加硫ゴム試験片を72時間アセトンに浸漬して可溶成分を抽出し、抽出前後の各試験片の質量を測定し、下記式により求めることができる。
AE量(%)={(抽出前のゴム試験片の質量-抽出後のゴム試験片の質量)
/(抽出前のゴム試験片の質量)}×100
【0040】
なお、AE量は、ゴム組成物内の可塑剤の配合比率を変更することにより、適宜変更することができる。
【0041】
なお、上記したトレッドは、接地面となる層(キャップゴム層)のみの1層から形成されていてもよいが、キャップゴム層の内側にベースゴム層が設けられた2層で構成されていてもよく、また、3層でもよく、4層以上であってもよい。この場合、前記したトレッド用ゴム組成物は、接地面側の最外層であるキャップゴム層を形成するゴム組成物となり、上記の各パラメータを満足していることが好ましい。
【0042】
この場合、トレッド全体におけるキャップゴム層の厚みは、10%以上であることが好ましく、30%以上であるとより好ましく、50%以上であるとさらに好ましく、70%以上であるとさらに好ましい。
【0043】
ここで、トレッドの厚みとは、タイヤ半径方向断面におけるタイヤ赤道面上でのトレッドの厚みを指し、単一のゴム組成物でトレッドが形成される場合においては、当該ゴム組成物の厚みであり、複数のゴム組成物の積層構造で形成される場合においては、これらの層のうち、接地面側の最外層であるキャップゴム層の厚みを指し、タイヤを半径方向に切り出した断面において、ビード部を正規リム幅に合わせた状態にすることで測定することができる。
【0044】
なお、「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association,Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0045】
[3]実施の形態
以下、実施の形態に基づいて、本開示を具体的に説明する。
【0046】
1.本実施の形態に係るタイヤ
図1は、本実施の形態に係るタイヤを説明する模式断面図である。図1において、上下方向がタイヤの半径方向であり、左右方向がタイヤの回転軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤの周方向である。なお、図1において、一点鎖線CLはタイヤの赤道面を表わしている。なお、このタイヤの形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称であるため、図1にはタイヤ全体の1/4を示している。
【0047】
図1に示すように、タイヤ1は、トレッド2、一対のサイドウォール3、一対のチェーファー4、一対のビード5、インナーライナー6、カーカス7、ベルト8、一対のフィラー9、及びバンド10を備えており、タイヤ半径方向の内側から外側に向けて、カーカス7、ベルト8、バンド10、トレッド2が配置されている。なお、図1では、トレッド2を1層にて構成させている。
【0048】
このような構成とし、前記したように、バンドコードとしてPETコードを使用し、フィラメント数が1本以上4本以下のベルトコードを用いて形成されたベルトの交差角度を25度未満とし、(Dba/Dbr)を適切に制御することにより、低燃費性と高速耐久性と操縦安定性との総合性能の向上を図ることができると考えられる。
【0049】
2.トレッド用ゴム組成物
本実施の形態において、トレッド用ゴム組成物は、ゴム成分、充填剤(補強材)、軟化剤成分(オイル、樹脂成分等)、老化防止剤などの各種配合材料を混練することにより得ることができる。
【0050】
(1)配合材料
(a)ゴム成分
ゴム成分としては、前記したように、天然ゴム(NR)などのイソプレン系ゴムを含有していることが好ましいが、イソプレン系ゴムとイソプレン系ゴム以外のジエン系ゴムを併用してもよい。イソプレン系ゴム以外のジエン系ゴムとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴムを用いることも好ましく、2種(NRとSBRまたはNRとBR)を併用してもよいし、3種(NR、SBRおよびBR)を併用してもよい。
【0051】
(イ)イソプレン系ゴム
イソプレン系ゴムとしては、前記したように、天然ゴム(NR)と、NR以外のイソプレン系ゴム(改質天然ゴム(改質NR)、変性天然ゴム(変性NR)、合成ポリイソプレン(イソプレンゴム(IR)、変性イソプレンゴム(変性IR))等の合成ポリイソプレンゴム等を使用できる。なお、ゴム成分100質量部中におけるイソプレン系ゴムの含有量は、前記の通りである。
【0052】
NRとしては、例えば、SVR-L、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0053】
NR以外のイソプレン系ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。IRとしては、特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のIR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
(ロ)SBR
SBRの重量平均分子量は、例えば、10万超、200万未満である。SBRのスチレン含有量は、5質量%超であることが好ましく、10質量%超であるとより好ましく、15質量%超であるとさらに好ましい。一方、40質量%未満であることが好ましく、35質量%未満であるとより好ましく、30質量%未満であるとさらに好ましい。SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、5質量%超であることが好ましく、10質量%超であるとより好ましく、15質量%超であるとさらに好ましい。一方、70質量%未満であることが好ましく、40質量%未満であるとより好ましく、30質量%未満であるとさらに好ましい。なお、SBRの構造同定(スチレン含量、ビニル含量の測定)は、例えば、日本電子(株)製JNM-ECAシリーズの装置を用いて行うことができる。
【0055】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。SBRは、非変性SBR、変性SBRのいずれであってもよい。また、SBR中のブタジエン部を水素添加させた水添SBRを用いてもよく、水添SBRはSBR中のBR部を後発的に水素添加処理して得てもよく、スチレン、エチレン、ブタジエンを共重合させて同様の構造を得てもよい。
【0056】
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであることが好ましく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖および末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
【0057】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。
【0058】
また、変性SBRとして、例えば、下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたSBRを使用できる。
【0059】
【化1】
【0060】
なお、式中、R、RおよびRは、同一または異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)またはこれらの誘導体を表す。RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはアルキル基を表す。RおよびRは結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。
【0061】
上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性SBRとしては、溶液重合のスチレンブタジエンゴム(S-SBR)の重合末端(活性末端)を上記式で表される化合物により変性されたSBR(特開2010-111753号公報に記載の変性SBR等)を使用できる。
【0062】
、RおよびRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。RおよびRとしてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、RおよびRが結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
【0063】
上記変性剤の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
また、変性SBRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性SBRも使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基および/または置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基および/または置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドンN-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類;の他、N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることができる。なお、上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。
【0065】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、(株)ENEOSマテリアル、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。なお、SBRは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
ゴム成分100質量部中におけるSBRの含有量は、10質量部以上であることが好ましく、25質量部以上であるとより好ましく、40質量部以上であるとさらに好ましい。上限としては、70質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であるとより好ましく、55質量部以下であるとさらに好ましい。
【0067】
(ハ)BR
BRの重量平均分子量は、例えば、10万超、200万未満である。BRのビニル含量は、例えば1質量%超、30質量%未満である。BRのシス含量は、例えば1質量%超、98質量%以下である。BRのトランス量は、例えば、1質量%超、60質量%未満である。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0068】
BRとしては特に限定されず、高シス含量(シス含量が90%以上)のBR、低シス含量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。BRは、非変性BR、変性BRのいずれでもよく、変性BRとしては、例えば、下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたBRを使用できる。
【0069】
【化2】
【0070】
なお、式中、R、RおよびRは、同一または異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)またはこれらの誘導体を表す。RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはアルキル基を表す。RおよびRは結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。
【0071】
上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性BRとしては、重合末端(活性末端)を前記式で表される化合物により変性されたBRを挙げることができる。
【0072】
、RおよびRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。RおよびRとしてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、RおよびRが結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
【0073】
上記変性剤の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
また、変性BRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性BRも使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基および/または置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基および/または置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドン;N-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類;の他、N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることができる。なお、上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。なお、これらの変性BRは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、(株)ENEOSマテリアル、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0076】
ゴム成分100質量部中におけるBRの含有量は、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であるとより好ましく、15質量部以下であるとより好ましい。
【0077】
(ニ)その他のゴム成分
ゴム組成物には、その他のゴム成分として、必要に応じて、ニトリルゴム(NBR)等のタイヤの製造に一般的に用いられるゴム(ポリマー)を含んでもよい。
【0078】
なお、上記したIR、SBR、BR等の合成ゴムの原料(モノマー)は、石油や天然ガス等の地下資源を由来とするものであってもよいし、タイヤ等のゴム製品やポリスチレン等の非ゴム製品からリサイクルされたものであってもよい。
【0079】
リサイクルにより得られるモノマー(リサイクルモノマー)としては、特に限定されず、リサイクル由来のポリイソプレン、リサイクル由来のブタジエン、リサイクル由来の芳香族ビニル等が挙げられる。前記ブタジエンとしては、1,2-ブタジエンおよび1,3-ブタジエンが挙げられる。前記芳香族ビニルとしては、特に限定されないが、スチレン等が挙げられる。中でも、リサイクル由来のポリイソプレン(リサイクルイソプレン)、ブタジエン(リサイクルブタジエン)および/またはリサイクル由来のスチレン(リサイクルスチレン)を原料として使用することが好ましい。
【0080】
リサイクルモノマーの製造方法としては、特に限定されず、例えば、タイヤ等のゴム製品を分解して得られたリサイクル由来ナフサから合成されることが挙げられる。また、リサイクル由来ナフサの製造方法としては、特に限定されず、例えば、タイヤ等のゴム製品を高温高圧下で分解してもよく、マイクロ波で分解してもよく、機械的粉砕後に抽出を行ってもよい。
【0081】
さらに、IR、SBR、BR等の合成ゴムの原料(モノマー)は、バイオマス由来のものであってもよい。本明細書において、バイオマスとは、植物等の天然資源由来の物質を指す。バイオマスとしては特に限定されないが、例えば、農林水産物や糖や、木くず、有用成分取得後の植物残渣、植物由来のエタノール、バイオマスナフサ等が挙げられる。
【0082】
バイオマス由来のモノマー(バイオマスモノマー)としては、特に限定されず、バイオマス由来のブタジエン、バイオマス由来の芳香族ビニル等が挙げられる。前記ブタジエンとしては、1,2-ブタジエンおよび1,3-ブタジエンが挙げられる。前記芳香族ビニルとしては、特に限定されないが、スチレン等が挙げられる。また、バイオマスモノマーの製造方法は特に限定されず、例えば、動植物の生物学的及び/又は化学的及び/又は物理的変換によるものが挙げられる。生物学的変換としては微生物による発酵が代表的であり、化学的及び/物理的変換としては触媒によるもの、高熱によるもの、高圧によるもの、電磁波によるもの、臨界液体によるもの、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0083】
バイオマスモノマー成分により合成されるポリマー(バイオマスポリマー)としては、特に限定されず、バイオマス由来のブタジエンにより合成したポリブタジエンゴム、バイオマス由来のブタジエン及び/又はバイオマス由来の芳香族ビニルにより合成した芳香族ビニル/ブタジエン共重合体等が挙げられる。前記芳香族ビニル/ブタジエン共重合体としては、例えば、バイオマス由来のブタジエン及び/又はバイオマス由来のスチレンから合成したスチレンブタジエンゴム等が挙げられる。
【0084】
ポリマーの原料がバイオマス由来であるかどうかは、ASTMD6866-10に準拠して測定したpMC(percent Modern Carbon)により判断することができる。
【0085】
pMCとは、標準現代炭素(modern standard reference)の14C濃度に対する試料の14C濃度の比であり、化合物のバイオマス比率を示す指標として用いられる値である。この値の持つ意義について、下記に述べる。
【0086】
炭素原子1モル(6.02×1023個)中には、通常の炭素原子の約一兆分の一である約6.02×1011個の14Cが存在する。14Cは放射性同位体と呼ばれ、その半減期は5730年で規則的に減少している。これらが全て崩壊するには22.6万年を要する。従って大気中の二酸化炭素等が植物等に取り込まれて固定化された後、22.6万年以上が経過したと考えられる石炭、石油、天然ガス等の化石燃料においては、固定化当初はこれらの中にも含まれていた14C元素は全てが崩壊している。故に21世紀である現在においては、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料には14C元素は全く含まれていない。故にこれらの化石燃料を原料として生産された化学物質にも14C元素は全く含まれていない。
【0087】
一方、14Cは宇宙線が大気中で原子核反応を行い、絶え間なく生成され、放射壊変による減少とバランスして、地球の大気環境中では、14Cの量は一定量となっている。従って、現在の環境中で物質循環しているバイオマス資源由来の物質の14C濃度は、前記のとおりC原子全体に対して約1×10-12mol%程度の値となる。従って、これらの値の差を利用して、ある化合物中のバイオマス比率を算出することができる。
【0088】
この14Cは、次のようにして測定することが一般的である。タンデム加速器をベースとした加速器質量分析法を使用し、13C濃度(13C/12C)、14C濃度(14C/12C)の測定を行う。測定では、14Cの濃度の基準となるmodern standard referenceとして、1950年時点の自然界における循環炭素中の14C濃度を採用する。具体的な標準物質としては、NIST(National Institute of Standards and Technology:米国国立標準・技術研究所)が提供するシュウ酸標準体を用いる。このシュウ酸中の炭素の比放射能(炭素1g当たりの14Cの放射能強度)を炭素同位体毎に分別し、13Cについて一定値に補正して、西暦1950年から測定日までの減衰補正を施した値を標準の14C濃度の値(100%)として用いる。この値と、実際に測定した試料の値の比が、pMC値となる。
【0089】
従って、ゴムが100%バイオマス(天然系)由来の物質で製造されたものであれば、地域差等あるものの、現在は通常の状態では100とならないことが多いため、おおよそ110pMC程度の値を示すことになる。一方、石油等の化石燃料由来の化学物質について、この14C濃度を測定した場合、0pMC程度の幅(例えば、0.3pMC)を示すことになる。この値が上述で言うバイオマス比率0%に相当する。
【0090】
以上のことから、pMC値の高いゴム等の材料、すなわち、バイオマス比率の高いゴム等の材料をゴム組成物に用いることは、環境保護(サステナブル)の観点から好適である。
【0091】
(b)ゴム成分以外の配合材料
(イ)充填剤
ゴム組成物は、補強剤としてシリカやカーボンブラックを含有することが好ましいが、必要に応じて、その他の充填剤、例えば、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどを含有してもよい。なお、シリカを用いる場合には、シランカップリング剤と併用することが好ましい。
【0092】
(i)シリカ
前記したように、シリカは表面にOH基を有しており、ゴム成分100質量部に対して、60質量部超と、適切に配合することにより、操縦安定性や高速耐久性の向上を図ることができる。
【0093】
シリカのBET比表面積は、良好な耐久性能が得られる観点から、100m/g超であることが好ましく、130m/g超であるとより好ましい。一方、250m/g未満であることが好ましく、200m/g未満であるとより好ましい。なお、上記したBET比表面積は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定されるNSAの値である。
【0094】
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等のタイヤ工業において一般的なものを使用することができ、市販品としては、エボニックインダストリーズ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用することができる。
【0095】
シリカの原料としては、特に限定されず、例えば、石英等の鉱物由来の原料であってもよく、籾殻等の生物由来の原料(例えば、籾殻等のバイオマス材料を原料としたシリカ等)であってもよく、シリカを含有する製品からリサイクルされるシリカを用いてもよい。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。ただし、サステナブルシリカ(バイオマス材料を原料としたシリカやシリカを含有する製品からリサイクルされるシリカ)が好ましい。
【0096】
バイオマス材料を原料としたシリカは、例えば、籾殻を燃焼して得られる籾殻灰から水酸化ナトリウム溶液を用いてケイ酸塩を抽出し、そのケイ酸塩を用いて従来の湿式シリカと同様に、硫酸と反応させて生じた二酸化ケイ素の沈殿をろ過、水洗い、乾燥、粉砕して得ることができる。
【0097】
シリカを含有する製品からリサイクルされるシリカは、例えば、半導体等の電子部品、タイヤ、乾燥剤、珪藻土等のろ過材等のシリカを含む製品から回収したシリカを用いることができる。また、回収の方法としては、特に限定されず、熱分解、電磁波による分解等が挙げられる。なかでも、半導体等の電子部品またはタイヤから回収したシリカが好ましい。
【0098】
シリカが結晶化すると水に溶けず、その成分であるケイ酸を利用できない。燃焼温度と燃焼時間を管理することで、籾殻灰中のシリカの結晶化を抑制することができる(特開第2009-2594号公報、秋田県立大学ウェブジャーナルB/2019,vol.6,p.216-222等参照)。
【0099】
籾殻より抽出される非晶質シリカは、Wilmar社等より市販されているものを使用することができる。
【0100】
なお、これらのシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、バイオマスシリカやリサイクルシリカを用いることは、環境保護(サステナブル)の観点から好適である。
【0101】
なお、シリカの粒子径(平均一次粒子径)は、小さすぎると加工性が悪くなるため、8nm超であることが好ましく、9nm超であるとより好ましく、10nm超であるとさらに好ましい。一方、ゴムの補強性確保の観点からは、25nm未満であることが好ましく、20nm未満であるとより好ましく、17nm未満であるとさらに好ましい。
【0102】
なお、シリカの平均一次粒子径とは、凝集構造を構成するシリカの最小粒子単位を円として観察し、その最小粒子の絶対最大長を円の直径として測定した値の平均値を意味し、透過型又は走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されるシリカの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。
【0103】
具体的には、タイヤから切り出したゴム組成物から取り出したシリカを、電子顕微鏡等を用いて直接観察し、得られたそれぞれのシリカの粒子の面積から、等断面積径を算出し、平均値を求めることにより、平均一次粒子径を算出することができる。
【0104】
(ii)シランカップリング剤
シリカを使用する場合、シリカの分散性を高めると共に、シリカとの反応により機械的性質や成形性の向上等を図るために、シランカップリング剤を併用することが好ましい。
【0105】
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、等のスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Z等のメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系等があげられるが、これらの内でも、上記したNXT等のようなチオカルボニル基を有するシランカップリング剤が好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
シランカップリング剤としては、例えば、エボニックインダストリーズ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0107】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、例えば、3質量部超であることが好ましく、5質量部以上であるとより好ましく、7質量部以上であるとさらに好ましい。上限としては、例えば、15質量部未満であることが好ましく、12質量部以下であるとより好ましく、9質量部以下であるとさらに好ましい。
【0108】
(iii)カーボンブラック
カーボンブラックは、タイヤの耐亀裂成長性、耐久性、耐紫外線劣化性等を向上させることを目的として使用することが好ましい。
【0109】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、ゴムへの補強性の観点から、30m/g以上であることが好ましく、50m/g以上であるとより好ましく、60m/g以上であるとさらに好ましい。一方、発熱性の観点からは、250m/g以下であることが好ましく、150m/g以下であるとより好ましく、120m/g以下であるとさらに好ましい。なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、ASTM D4820-93に従って測定される。
【0110】
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、ゴムの剛性の観点から、50ml/100g以上であることが好ましく、100ml/100g以上であるとより好ましい。一方、ゴムの変形に対する追従性の観点からは、250ml/100g以下であることが好ましく、150ml/100g以下であるとより好ましい。なお、カーボンブラックのDBP吸収量は、ASTM D2414-93に従って測定される。
【0111】
カーボンブラックとしては特に限定されず、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCFおよびECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FTおよびMTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPCおよびCCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック)等を挙げることができ、また、品番としては、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等を挙げることができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0112】
カーボンブラックの原料は、鉱物油以外に、リグニン、植物油等のバイオマス材料であってもよく、廃タイヤ等のゴム製品を熱分解することにより得られる熱分解油であってもよく(再生カーボンブラック)、これらのサステナブルカーボンブラックを用いることは環境保護の観点から好適である。
【0113】
また、カーボンブラックの製造方法は、ファーネス法等の燃焼によるものであってもよく、水熱炭化(HTC)によるものであってもよく、サーマルブラック法等によるメタンの熱分解によるものであってもよい。
【0114】
市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、日鉄カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、カーボンブラックの含有量は前記の通りである。
【0115】
ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、5質量部超であることが好ましく、8質量部超であるとより好ましく、10質量部超であるとさらに好ましい。上限としては、40質量部未満であることが好ましく、35質量部未満であるとより好ましい。
【0116】
(iv)その他の充填剤
ゴム組成物には、上記したカーボンブラック、シリカの他に、タイヤ工業において一般的に用いられている、例えば、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ、硫酸マグネシウム等の充填剤をさらに含有してもよい。これらの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、150質量部未満である。
【0117】
(ロ)軟化剤成分
ゴム組成物には、混練時、ゴム成分に可塑性を付与し、粉末材料を適切に分散させるという観点から、必要に応じて、軟化剤成分を用いることが好ましい。なお、ここでの軟化剤成分とは、25℃で液状の軟化剤および25℃で固体の軟化剤の両方を含む概念である。
【0118】
軟化剤の例としては、樹脂成分、オイル、液状ポリマー、エステル系可塑剤等が挙げられる。これらの軟化剤は石油や天然ガス等の鉱物資源由来のものであってもよく、バイオマス由来のものであってもよく、ゴム製品や非ゴム製品からリサイクルされたナフサを由来とするものであってもよい。また、使用済みのタイヤや各種成分を含む製品を熱分解、抽出することにより得た、低分子量の炭化水素成分を軟化剤として用いてもよく、これらの内でも、バイオマス由来やリサイクル由来の軟化剤は、サステナブル軟化剤として好ましい。
【0119】
なお、これらの軟化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ゴム成分100質量部に対する軟化剤成分の含有量としては、5質量部超であることが好ましく、10質量部超であるとより好ましく、20質量部超であるとさらに好ましい。上限としては、例えば、70質量部未満であることが好ましく、60質量部未満であるとより好ましく、55質量部未満であるとさらに好ましい。なお、軟化剤成分の含有量には、ゴム(油展ゴム)等に含まれるオイルの量も含まれる。
【0120】
(i)オイル
オイルとしては、例えば、鉱物油、植物油、動物油等が挙げられる。また、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合機やエンジンに用いられた後の廃油や、調理店で使用された廃食用油を精製したものを用いてもよく、これらのなかでも、植物油を用いることが好ましい。
【0121】
(i-1)鉱物油
本明細書において、鉱物油とは、石油や天然ガス等の鉱物資源を由来とするオイルを指す。鉱物油としては、パラフィン系オイル(ミネラルオイル)、ナフテン系オイル、芳香族系オイル等が挙げられる。
【0122】
具体的な鉱物油としては、例えば、MES(Mild Extract Solvated)、DAE(Distillate Aromatic Extract)、TDAE(Treated Distillate Aromatic Extract)、TRAE(Treated Residual Aromatic Extract)、RAE(Residual Aromatic Extract)等が挙げられる。
【0123】
また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いオイルを使用することもできる。前記低PCA含量オイルとしては、MES、TDAE、重ナフテン系オイル等が挙げられる。
【0124】
市販の鉱物油としては、例えば、パラフィン系、アロマ系、ナフテン系等のオイルが挙げられ、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、ENEOS(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
(i-2)植物油
植物油としては、例えば、あまに油、なたね油、べに花油、大豆油、コーン油、綿実油、こめ油、トール油、ごま油、えごま油、ひまし油、桐油、パイン油、パインタール油、ひまわり油、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、オリーブ油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、落花生油、グレープシード油、木ろう等が挙げられる。
【0126】
さらに、植物油としては、上記各油を精製した精製油(サラダ油等)、エステル交換したエステル交換油、水素添加した硬化油、熱重合させた熱重合油、酸化させた酸化重合油、食用油等として利用したものを回収した廃食用油等も挙げられる。なお、植物油は常温(25℃)で液体であっても固体であってもよい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0127】
植物油としては、アシルグリセロールを含むことが好ましく、トリアシルグリセロールを含むことがより好ましい。なお、アシルグリセロールとは、グリセリンの持つヒドロキシ基と脂肪酸とがエステル結合をした化合物を指す。アシルグリセロールとしては、特に限定されず、1-モノアシルグリセロールでもよく、2-モノアシルグリセロールでもよく、1,2-ジアシルグリセロールでもよく、1,3-ジアシルグリセロールでもよく、トリアシルグリセロールでもよい。さらに、アシルグリセロールは、単量体でもよく、2量体でもよく、3量体以上の多量体であってもよい。なお、2量体以上のアシルグリセロールは、熱重合や酸化重合等によって得ることができる。また、アシルグリセロールは常温(25℃)で液体であっても固体であってもよい。
【0128】
ゴム組成物中にアシルグリセロールが含まれているか確認する方法としては、特に限定されないが、H-NMR測定によって確認することができる。例えば、トリアシルグリセロールを配合したゴム組成物を常温(25℃)で24時間重クロロホルムに浸漬し、ゴム組成物を除いた後、室温下でH-NMRを測定し、テトラメチルシラン(TMS)のシグナルを0.00ppmとした場合、5.26ppm付近、4.28ppm付近、4.15ppm付近のシグナルが観測され、該シグナルはエステル基の酸素原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子由来のシグナルと推測されるため、アシルグリセロールの含有を確認することができる。なお、ここで「付近」とは、±0.10ppmの範囲を指す。
【0129】
なお、脂肪酸としては、特に限定されず、不飽和脂肪酸であっても、飽和脂肪酸であってもよい。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸等の一価不飽和脂肪酸や、リノール酸、リノレン酸等の多価不飽和脂肪酸が挙げられる。また、飽和脂肪酸としては、酪酸、ラウリン酸等が挙げられる。
【0130】
中でも、前記脂肪酸として、二重結合が少ない脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸あるいは一価不飽和脂肪酸を含むことが望ましく、オレイン酸が好ましい。このような脂肪酸を含む植物油としては、例えば、飽和脂肪酸あるいは一価不飽和脂肪酸が含まれる植物油を使用してもよく、エステル交換等の改質を行った植物油を使用してもよい。また、このような脂肪酸を含む植物油を製造するために、品種改良、遺伝子組み換え、ゲノム編集等によって植物を改良してもよい。
【0131】
植物油としては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、ENEOS(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0132】
(ii)液状ゴム
液状ゴムとは、常温(25℃)で液体状態の重合体であり、加硫後のタイヤからアセトン抽出により抽出可能なゴム成分である。液状ゴムとしては、ファルネセン系ポリマー、液状ジエン系重合体及びそれらの水素添加物等が挙げられる。
【0133】
ファルネセン系ポリマーとは、ファルネセンを重合することで得られる重合体であり、ファルネセンに基づく構成単位を有する。ファルネセンには、α-ファルネセン((3E,7E)-3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン)やβ-ファルネセン(7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン)等の異性体が存在する。
【0134】
ファルネセン系ポリマーは、ファルネセンの単独重合体(ファルネセン単独重合体)でも、ファルネセンとビニルモノマーとの共重合体(ファルネセン-ビニルモノマー共重合体)でもよい。
【0135】
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)等が挙げられる。
【0136】
液状ジエン系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、例えば、1.0×10超、2.0×10未満である。ここで、液状ジエン系重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
【0137】
液状ゴムとしては、例えば、クラレ(株)、クレイバレー社等の製品を使用できる。
【0138】
(iii)樹脂成分
樹脂成分は、粘着性付与成分としても機能し、常温で固体であっても、液体であってもよく、具体的な樹脂成分としては、例えば、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂、C5樹脂、C9樹脂、C5C9樹脂、アクリル系樹脂等が好ましく、2種以上を併用してもよい。なお、これらの樹脂成分は、必要に応じて、シリカ等と反応できる変性基を付与してもよい。そして、ゴム成分100質量部に対する含有量としては、10質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であるとより好ましく、50質量部以上であるとさらに好ましい。
【0139】
ロジン系樹脂は、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分とする樹脂である。このロジン系樹脂(ロジン類)は、変性の有無によって分類可能であり、無変性ロジン(未変性ロジン)、ロジン変性体(ロジン誘導体)に分類できる。無変性ロジンとしては、トールロジン(別名トール油ロジン)、ガムロジン、ウッドロジン、不均斉化ロジン、重合ロジン、水素化ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等が挙げられる。ロジン変性体は無変性ロジンの変性体であって、ロジンエステル類、不飽和カルボン酸変性ロジン類、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類、ロジンのアミド化合物、ロジンのアミン塩等が挙げられる。
【0140】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体およびこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
【0141】
前記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレン等のジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸またはその酸無水物;等が例示できる。
【0142】
クマロン系樹脂の中でも、クマロンインデン樹脂が好ましい。クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロンおよびインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0143】
クマロンインデン樹脂の水酸基価(OH価)は、例えば、15mgKOH/g超、150mgKOH/g未満である。なお、OH価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
【0144】
クマロンインデン樹脂の軟化点は、例えば、30℃超、160℃未満である。なお、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0145】
テルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペンフェノール、芳香族変性テルペン樹脂等が挙げられる。ポリテルペンは、テルペン化合物を重合して得られる樹脂およびそれらの水素添加物である。テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素およびその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)等に分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール等が挙げられる。
【0146】
ポリテルペンとしては、上述したテルペン化合物を原料とするα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β-ピネン/リモネン樹脂等のテルペン樹脂の他、該テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂も挙げられる。テルペンフェノールとしては、上記テルペン化合物とフェノール系化合物とを共重合した樹脂、および該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられ、具体的には、上記テルペン化合物、フェノール系化合物およびホルマリンを縮合させた樹脂が挙げられる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂、および該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられる。なお、芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノール等のフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトール等のナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレン等のスチレン誘導体;クマロン、インデン等が挙げられる。
【0147】
「C5樹脂」とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
【0148】
「C9樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレン(AMS樹脂)もしくはスチレンの単独重合体またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0149】
「C5C9樹脂」とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
【0150】
アクリル系樹脂としては特に限定されないが、例えば、無溶剤型アクリル系樹脂を使用できる。
【0151】
無溶剤型アクリル系樹脂は、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒等を極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)が挙げられる。なお、本開示において、(メタ)アクリルは、メタクリルおよびアクリルを意味する。
【0152】
上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステル等)、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリルアミド誘導体等の(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
【0153】
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体と共に、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ビニルを使用してもよい。
【0154】
上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂であっても、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であってもよい。また、上記アクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、シラノール基等を有していてよい。
【0155】
樹脂成分としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、クレイトン社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0156】
(ハ)ワックス
ゴム組成物は、ワックスを含んでいてもよい。ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であるとより好ましく、1.5質量部以上であるとさらに好ましい。上限としては、例えば、10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であるとより好ましく、4質量部以下であるとさらに好ましい。
【0157】
ワックスとしては、特に限定されず、タイヤ工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができる。例えば、鉱物系ワックス、植物由来ワックス等が挙げられる。鉱物系ワックスとは、油や天然ガス等の鉱物資源を由来とするワックスを指す。植物由来ワックスとは、植物等の天然資源を由来とするワックスを指す。なかでも、サステナブル材料という観点から、植物系ワックスが好ましい。
【0158】
植物由来のワックスとしては、例えば、ライスワックス、カルバナワックス、キャンデリラワックス等が挙げられる。鉱物系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、これらの精選特殊ワックス等が挙げられ、パラフィンワックスが好ましい。なお、ステアリン酸は、ワックスに含まれないものとする。
【0159】
なお、ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、パラメルト社等より市販されているものを使用することができる。これらのワックスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0160】
(ニ)老化防止剤
ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1質量部超であることが好ましく、上限としては、10質量部未満であることが好ましい。
【0161】
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン(DNPD)等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0162】
市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0163】
(ホ)加工助剤
ゴム組成物は、加工助剤を含んでもよい。加工助剤としては、例えば、金属塩(酸の水素原子が金属イオンで置換された化合物)、脂肪酸アミド、アミドエステル、脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、金属塩、脂肪酸アミドが好ましく、金属塩がより好ましい。
【0164】
金属塩に使用される金属としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属や、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属等が挙げられる。また、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、モリブデン等も使用可能である。なかでも、アルカリ金属が好ましい。
【0165】
金属塩に使用される酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等の脂肪酸等が挙げられる。また、ホウ酸、炭酸、塩酸、硝酸、硫酸等も使用可能である。
【0166】
加工助剤の市販品としては、キシダ化学(株)、健栄製薬(株)、ストラクトール社、Performance Additives社等の製品を使用できる。
【0167】
加工助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であるとより好ましい。上限としては、例えば、6質量部以下であることが好ましく、4質量部以下であるとより好ましい。
【0168】
(ヘ)滑剤(ステアリン酸)
ゴム組成物は、滑剤を含んでもよい。滑剤としては、ステアリン酸等の脂肪酸誘導体ベースの滑剤が好ましく使用できる。ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、具体的には、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。また、ストラクトール社製のストラクトールWB16等を使用することもできる。
【0169】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部超であることが好ましく、上限としては、10.0質量部未満であることが好ましい。
【0170】
(ト)酸化亜鉛
ゴム組成物は、酸化亜鉛を含んでもよい。酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部超であることが好ましく、上限としては、10質量部未満であることが好ましい。酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0171】
(チ)架橋剤および加硫促進剤
ゴム組成物は、硫黄等の架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超であることが好ましく、上限としては、10.0質量部未満であることが好ましい。なお、硫黄の含有量は、純硫黄分量であり、不溶性硫黄を用いる場合はオイル分を除いた含有量である。
【0172】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0173】
なお、硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0174】
硫黄以外の架橋剤を使用してもよく、具体的には、例えば、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200、フレクシス社製のDURALINK HTS(1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物)、ランクセス社製のKA9188(1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン:ハイブリッド架橋剤)等の硫黄原子を含む加硫剤や、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等を使用することができる。
【0175】
そして、ゴム組成物は加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.3質量部超であることが好ましく、上限としては、10.0質量部未満であることが好ましい。
【0176】
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0177】
(リ)その他
ゴム組成物には、上記した各成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、セルロース繊維等の有機充填剤、有機過酸化物等を必要に応じて配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部超、50質量部未満である。
【0178】
なお、本開示においては、上記した各材料の内、炭素原子を含む各種材料(例えば、ゴム、オイル、樹脂、加硫促進剤、老化防止剤、界面活性剤等)は、大気中の二酸化炭素由来であってもよい。二酸化炭素から本開示の配合物を得る方法としては、二酸化炭素を直接変換しても良いし、二酸化炭素からメタンを合成するメタネーションの工程を経て得られたメタンを変換してもよい。
【0179】
(2)ゴム組成物の作製
ゴム組成物は、一般的な方法、例えば、ゴム成分とシリカ等のフィラーとを混練するベース練り工程と、前記ベース練り工程で得られる混練物と架橋剤とを混練する仕上げ練り工程とを含む製造方法により作製することができる。
【0180】
混練は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロール等の公知の(密閉式)混練機を用いて行うことができる。
【0181】
ベース練り工程の混練温度は、例えば、50℃超であることが好ましく、上限としては、200℃未満であることが好ましい。混練時間は、例えば、30秒超であることが好ましく、上限としては、30分未満であることが好ましい。ベース練り工程では、上記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、オイル等の軟化剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、加硫促進剤等を必要に応じて適宜添加、混練してもよい。
【0182】
仕上げ練り工程では、前記ベース練り工程で得られる混練物と架橋剤とを混練する。仕上げ練り工程の混練温度は、例えば、室温超であることが好ましく、上限としては、80℃未満であることが好ましい。混練時間は、例えば、1分超であることが好ましく、15分未満であることが好ましい。仕上げ練り工程では、上記成分以外にも、加硫促進剤、酸化亜鉛等を必要に応じて適宜添加、混練してもよい。
【0183】
上記により得られるゴム組成物は、その後、所定の形状に押出加工することにより、トレッドに成形することができる。
【0184】
3.タイヤの製造
本実施の形態に係るタイヤは、通常の方法によって製造することができる。まず、上記により得られるゴム組成物を用いて、所定の形状に成形してトレッドを製造する。次に、その他のゴム部材と共にタイヤ成型機上にて組み合わせて未加硫タイヤを作製する。
【0185】
具体的には、成形ドラム上に、タイヤの気密保持性を確保するための部材としてのインナーライナー、タイヤの受ける荷重、衝撃、充填空気圧に耐える部材としてのカーカス、カーカスを強く締付けトレッドの剛性を高める部材としてのベルト部材、バンド等を巻回し、両側縁部にカーカスの両端を固定すると共に、タイヤをリムに固定させるための部材としてのビード部を配置して、トロイド状に成形した後、外周の中央部にトレッド、径方向外側にサイドウォールを貼り合せてサイド部を構成させることにより、未加硫タイヤを作製する。
【0186】
その後、上記により作製される未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。加硫工程は、公知の加硫手段を適用することで実施できる。加硫温度としては、例えば、120℃超であることが好ましく、上限としては、200℃未満であることが好ましい。加硫時間は、例えば、5分超であることが好ましく、上限としては、15分未満であることが好ましい。
【0187】
上記より得られるタイヤは、先に述べたように、PETコードをバンドコードに使用する効果と、少ないフィラメント本数から構成されるベルトコードの交差角度を小さくすることによる効果とが、(Dba/Dbr)を適切に制御することにより、協働して発揮されるため、低燃費性と高速耐久性と操縦安定性との総合性能の向上を図ることができる。
【0188】
そして、本開示に係るタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用タイヤ、大型SUV用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤ、オールシーズンタイヤ、ランフラットタイヤ等として好適に用いることができ、とりわけ、乗用車用タイヤとすることが好ましい。
【実施例0189】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は当該実施例に限られない。
【0190】
以下に示す各種配合材料から成形されるトレッド、および、バンド、ベルト等のタイヤ部材からなるタイヤ(タイヤサイズ:215/60R16)を検討し、低燃費性、高速耐久性、操縦安定性に関する後述する評価方法に基づいて算出した結果を、表2、表3の下部に併せて示す。
【0191】
1.ゴム組成物の作製
以下に示す各種配合材料を用いて、トレッド用ゴム組成物を作製する。
【0192】
(1)配合材料
(a)ゴム成分
(イ)SBR:ENEOSマテリアル社製のSBR1502
(スチレン量:23.5質量%)
(ロ)NR :TSR20
(ハ)BR:宇部興産社製のBR150B
(シス含量96質量%)
【0193】
(b)ゴム成分以外の配合材料
(イ)カーボンブラック:キャボットジャパン社製のショウブラックN220
(NSA:111m/g)
(ロ)シリカ:エボニックインダストリーズ社製のウルトラシルVN3
(NSA:175m/g)
(ハ)シランカップリング剤:エボニックインダストリーズ社製のSi266
(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
(ニ)オイル:H&R社製のvivatec500
(TDAE、アロマ系鉱物油)
(ホ)樹脂:アリゾナケミカル社製のSYLVARES SA85
(αメチルスチレン系樹脂:αメチルスチレンとスチレンの共重合体、軟化点85℃)
(ヘ)ワックス:日本精鑞(株)製のオゾエース0355
(ト)老化防止剤:住友化学社製のアンチゲン6C
(N-(1、3-ジメチルブチル)-N´-フェニル-p-フェニレンジアミン)
(チ)ステアリン酸:日油社製のビーズステアリン酸「椿」
(リ)酸化亜鉛:三井金属鉱業社製の亜鉛華1号
(ヌ)硫黄 :細井化学工業社製のHK-200-5(粉末硫黄)
(ル)加硫促進剤:大内新興化学工業社製のノクセラーD
(N,N´-ジフェニルグアニジン)
【0194】
(2)トレッド用ゴム組成物の作製
表1に示す配合A~Cの各配合に基づいて、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りして、混練物を得る。
【0195】
次に、当該混練物に、硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、配合A~Cのトレッド用ゴム組成物を得る。
【0196】
2.タイヤ部材(トレッド、バンド、ベルト)の成形
(1)トレッドの成形
次に、上記で得られるゴム組成物を用いて、所定の形状にトレッドを成形する。
【0197】
(2)バンドの成形
並行して、表2および表3に示す各バンドコードに所定のバンド用ゴム組成物をトッピングして、各バンドを成形する。
【0198】
(3)ベルトの成形
同様に、表2および表3に示す各ベルトコードに所定のベルト用ゴム組成物をトッピングして、各ベルトを成形する。
【0199】
3.タイヤの製造
次に、上記で得られる各トレッド、バンド、ベルトを、その他のタイヤ部材と共に貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して、実施例1~実施例5、および、比較例1~比較例6の各試験用タイヤを製造する。
【0200】
4.性能評価試験
(1)低燃費性評価
転がり抵抗試験機を用い、各試験用タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数RRC(Rolling Resistance Coefficient)を測定する。
使用リム:16×6.5J
内圧:210kPa
荷重:4.6kN
【0201】
次いで、比較例1におけるRRCを100として、下式に基づいて指数化し、低燃費性評価とする。数値が大きいほど、転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れていることを示す。
低燃費性評価=[(比較例1のRRC)/(試験用タイヤのRRC)]×100
【0202】
(2)高速耐久性評価
各試験用タイヤをリム(サイズ=16×6.5J)に組み込み、このタイヤに空気を充填して、内圧を210kPaに調整した後、ドラム走行試験機に装着し、JIS D4230:1998に規定された方法に準じて、高速耐久性試験を行い、タイヤが損傷するまでの時間を測定する。
【0203】
次いで、比較例1における結果を100として、下式に基づいて指数化し、高速耐久性の指標とし、評価する。数値が大きいほど、損傷するまでの時間が長く、高速耐久性に優れていることを示す。
高速耐久性評価=[(試験用タイヤの結果)/(比較例1の結果)]×100
【0204】
(3)操縦安定性評価
各試験用タイヤが全輪に装着された車両(国産のFR車、排気量2000cc)に、1人のテストドライバーが乗車して、ドライアスファルトのテストコースを時速100kmで周回走行する。そして、20人のテストドライバーの各々が、走行時における操縦安定性を、ハンドル応答性、剛性感、グリップなどの特性に基づいて、1~5点(数値が大きい程良好である)で官能評価し、その合計点を算出する。
【0205】
次いで、比較例1における結果を100として、下式に基づいて指数化し、操縦安定性評価とする。数値が大きいほど、高速走行時の操縦安定性が優れていることを示す。
操縦安定性評価=[(試験用タイヤの結果)/(比較例1の結果)]×100
【0206】
(4)総合性能評価
そして、(1)、(2)、(3)を合算して、総合性能評価とする。
【0207】
【表1】
【0208】
【表2】
【0209】
【表3】
【0210】
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明したが、本開示は上記の実施の形態に限定されるものではない。本開示と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【0211】
本発明(1)は、
カーカスコードを備えるカーカスと、
ベルトコードを備え、前記カーカスのタイヤ半径方向外側に設けられるベルトと、
バンドコードを備え、前記ベルトのタイヤ半径方向外側に設けられるバンドと、
前記バンドのタイヤ半径方向外側に設けられるトレッドとを備えるタイヤであって、
前記バンドコードは、ポリエチレンテレフタレート繊維を含んでおり、
前記トレッドをタイヤ径方向に平面視したときにおける、タイヤ周方向と前記ベルトコードの長手方向とがなす角度のうち、小さい方の角度である交差角度が、0度超、25度未満であり、
前記ベルトコードは、1本以上、4本以下のフィラメントから構成されており、
前記ベルトコード径Dbr(mm)に対する前記バンドコード径Dba(mm)の比(Dba/Dbr)が、下記の(1式)を満たしていることを特徴とするタイヤである。
0.5<Dba/Dbr<1.8 (1式)
【0212】
本発明(2)は、
前記(Dba/Dbr)が、下記の(2式)を満たしていることを特徴とし、本発明(1)に記載のタイヤである。
0.9<Dba/Dbr<1.7 (2式)
【0213】
本発明(3)は、
前記ベルトコードの構造が、1×1構造、1×2構造、1×3構造、1×4構造、2+2構造のいずれかであることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【0214】
本発明(4)は、
前記ベルトコードが、スチール製であることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【0215】
本発明(5)は、
前記交差角度が、22度未満であることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【0216】
本発明(6)は、
前記バンドコード径が、0.2mm超、0.8mm未満であることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【0217】
本発明(7)は、
前記トレッドを形成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部中に、25質量部超のイソプレン系ゴムを含有していることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【0218】
本発明(8)は、
前記イソプレン系ゴムが、天然ゴムであることを特徴し、本発明(7)に記載のタイヤである。
【0219】
本発明(9)は、
前記トレッドを形成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、60質量部超のシリカを含有していることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【0220】
本発明(10)は、
前記シリカの粒子径(平均一次粒子径)が、8nm超であることを特徴とし、本発明(9)に記載のタイヤである。
【0221】
本発明(11)は、
前記トレッドを形成するゴム組成物におけるアセトン抽出量が、10質量%超であることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【0222】
本発明(12)は、
前記ポリエチレンテレフタレート繊維が、サステナブルポリエチレンテレフタレート繊維であることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【0223】
本発明(13)は、
前記シリカが、サステナブルシリカであることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【0224】
本発明(14)は、
前記カーボンブラックが、サステナブルカーボンブラックであることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【0225】
本発明(15)は、
前記トレッドを形成するゴム組成物が、植物油を含有していることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【符号の説明】
【0226】
1 タイヤ
2 トレッド
3 サイドウォール
4 チェーファー
5 ビード
6 インナーライナー
7 カーカス
8 ベルト
9 フィラー
10 バンド
CL タイヤの赤道面
図1
【手続補正書】
【提出日】2025-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明は、
カーカスコードを備えるカーカスと、
ベルトコードを備え、前記カーカスのタイヤ半径方向外側に設けられるベルトと、
バンドコードを備え、前記ベルトのタイヤ半径方向外側に設けられるバンドと、
前記バンドのタイヤ半径方向外側に設けられるトレッドとを備えるタイヤであって、
前記バンドコードは、ポリエチレンテレフタレート繊維を含んでおり、
前記トレッドをタイヤ径方向に平面視したときにおける、タイヤ周方向と前記ベルトコードの長手方向とがなす角度のうち、小さい方の角度である交差角度が、0度超、25度未満であり、
前記ベルトコードは、1本以上、4本以下のフィラメントから構成されており、
前記ベルトコード径Dbr(mm)に対する前記バンドコード径Dba(mm)の比(Dba/Dbr)が、下記の(1式)を満たしており、
前記ベルトコードの構造が、1×2構造、1×3構造、1×4構造、2+2構造のいずれかであることを特徴とするタイヤである。
0.5<Dba/Dbr<1.8 (1式)
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
1.概要
本開示に係るタイヤは、カーカスコードを備えるカーカスと、ベルトコードを備えカーカスのタイヤ半径方向外側に設けられるベルトと、バンドコードを備えベルトのタイヤ半径方向外側に設けられるバンドと、バンドのタイヤ半径方向外側に設けられるトレッドとを備えている。そして、バンドコードは、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)を含んでいる。また、ベルトコードは1本以上、4本以下のフィラメントから構成されており、トレッドをタイヤ径方向に平面視したときにおける、タイヤ周方向とベルトコードの長手方向とがなす角度のうち、小さい方の角度である交差角度が、0度超、25度未満である。さらに、ベルトコード径Dbr(mm)に対するバンドコード径Dba(mm)の比(Dba/Dbr)が、(1式)を満たしている。
0.5<Dba/Dbr<1.8 (1式)
また、ベルトコードの構造が、1×2構造、1×3構造、1×4構造、2+2構造のいずれかである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0211
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0211】
本発明(1)は、
カーカスコードを備えるカーカスと、
ベルトコードを備え、前記カーカスのタイヤ半径方向外側に設けられるベルトと、
バンドコードを備え、前記ベルトのタイヤ半径方向外側に設けられるバンドと、
前記バンドのタイヤ半径方向外側に設けられるトレッドとを備えるタイヤであって、
前記バンドコードは、ポリエチレンテレフタレート繊維を含んでおり、
前記トレッドをタイヤ径方向に平面視したときにおける、タイヤ周方向と前記ベルトコードの長手方向とがなす角度のうち、小さい方の角度である交差角度が、0度超、25度未満であり、
前記ベルトコードは、1本以上、4本以下のフィラメントから構成されており、
前記ベルトコード径Dbr(mm)に対する前記バンドコード径Dba(mm)の比(Dba/Dbr)が、下記の(1式)を満たしており、
前記ベルトコードの構造が、1×2構造、1×3構造、1×4構造、2+2構造のいずれかであることを特徴とするタイヤである。
0.5<Dba/Dbr<1.8 (1式)
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0213
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0214
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0214】
本発明()は、
前記ベルトコードが、スチール製であることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0215
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0215】
本発明()は、
前記交差角度が、22度未満であることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0216
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0216】
本発明()は、
前記バンドコード径が、0.2mm超、0.8mm未満であることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0217
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0217】
本発明()は、
前記トレッドを形成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部中に、25質量部超のイソプレン系ゴムを含有していることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0218
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0218】
本発明()は、
前記イソプレン系ゴムが、天然ゴムであることを特徴し、本発明()に記載のタイヤである。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0219
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0219】
本発明()は、
前記トレッドを形成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、60質量部超のシリカを含有していることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0220
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0220】
本発明()は、
前記シリカの粒子径(平均一次粒子径)が、8nm超であることを特徴とし、本発明()に記載のタイヤである。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0221
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0221】
本発明(10)は、
前記トレッドを形成するゴム組成物におけるアセトン抽出量が、10質量%超であることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0222
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0222】
本発明(11)は、
前記ポリエチレンテレフタレート繊維が、サステナブルポリエチレンテレフタレート繊維であることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0223
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0223】
本発明(12)は、
前記シリカが、サステナブルシリカであることを特徴とし、本発明(8)に記載のタイヤである。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0224
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0224】
本発明(13)は、
前記トレッドを形成するゴム組成物がカーボンブラックを含有しており、前記カーボンブラックが、サステナブルカーボンブラックであることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記
載のタイヤである。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0225
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0225】
本発明(14)は、
前記トレッドを形成するゴム組成物が、植物油を含有していることを特徴とし、本発明(1)または本発明(2)に記載のタイヤである。
【手続補正17】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスコードを備えるカーカスと、
ベルトコードを備え、前記カーカスのタイヤ半径方向外側に設けられるベルトと、
バンドコードを備え、前記ベルトのタイヤ半径方向外側に設けられるバンドと、
前記バンドのタイヤ半径方向外側に設けられるトレッドとを備えるタイヤであって、
前記バンドコードは、ポリエチレンテレフタレート繊維を含んでおり、
前記トレッドをタイヤ径方向に平面視したときにおける、タイヤ周方向と前記ベルトコードの長手方向とがなす角度のうち、小さい方の角度である交差角度が、0度超、25度未満であり、
前記ベルトコードは、1本以上、4本以下のフィラメントから構成されており、
前記ベルトコード径Dbr(mm)に対する前記バンドコード径Dba(mm)の比(Dba/Dbr)が、下記の(1式)を満たしており、
前記ベルトコードの構造が、1×2構造、1×3構造、1×4構造、2+2構造のいずれかであることを特徴とするタイヤ。
0.5<Dba/Dbr<1.8 (1式)
【請求項2】
前記(Dba/Dbr)が、下記の(2式)を満たしていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
0.9<Dba/Dbr<1.7 (2式)
【請求項3】
前記ベルトコードが、スチール製であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記交差角度が、22度未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記バンドコード径が、0.2mm超、0.8mm未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記トレッドを形成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部中に、25質量部超のイソプレン系ゴムを含有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記イソプレン系ゴムが、天然ゴムであることを特徴とする請求項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記トレッドを形成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、60質量部超のシリカを含有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記シリカの粒子径(平均一次粒子径)が、8nm超であることを特徴とする請求項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記トレッドを形成するゴム組成物におけるアセトン抽出量が、10質量%超であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記ポリエチレンテレフタレート繊維が、サステナブルポリエチレンテレフタレート繊維であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記シリカが、サステナブルシリカであることを特徴とする請求項に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記トレッドを形成するゴム組成物がカーボンブラックを含有しており、前記カーボンブラックが、サステナブルカーボンブラックであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記トレッドを形成するゴム組成物が、植物油を含有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ。