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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155367
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】半導体装置、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10D 30/01 20250101AFI20251006BHJP
   H10D 30/66 20250101ALI20251006BHJP
【FI】
H01L29/78 658J
H01L29/78 652L
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653C
H01L29/78 652M
H01L29/78 652K
H01L29/78 658G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059171
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】藤農 紗矢
(57)【要約】
【課題】パッシベーション膜におけるクラックの発生を抑制可能な半導体装置、及び製造方法を提供することである。
【解決手段】本実施形態に係る半導体装置は、半導体部材と、層間膜と、金属層と、パッシベーション膜とを備える。層間膜は、半導体部材の上面側に設けられる。金属層は、層間膜の上面側の少なくとも一部の領域を覆うように設けられる。パッシベーション膜は、金属層が設けられていない層間膜の上面と、金属層の端部における側面、及び上面に成膜される。金属層の端部の上部は曲面を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体部材と、
前記半導体部材の上面側に設けられた層間膜と、
前記層間膜の上面側の少なくとも一部の領域を覆うように設けられた金属層と、
前記金属層が設けられていない前記層間膜の上面と、前記金属層の端部における側面、及び上面に成膜されるパッシベーション膜とを、備え、
前記金属層の端部の上部は曲面を有する、半導体装置。
【請求項2】
前記金属層と接する上側の面よりも前記層間膜と接する下側の面のほうが長い形状を有するバリアメタル層を更に備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記端部側の前記バリアメタル層の端面の形状が、前記層間膜から前記金属層の前記端部の下面に近づくにしたがい前記端部側から他方の端部に近づくように傾斜する、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記上部の曲面は、前記金属層の端部における前記上面と前記側面との延長線が交わる角度αを90度以上として、前記パッシベーション膜に対する熱応力が膜応力よりも小さくなる形状を有する、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記上部の曲面は、円弧形状であり、前記円弧形状における前記パッシベーション膜に対する熱応力を緩和する形状を有する、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記上部の曲面は、円弧形状であり、前記円弧形状は、所定の半径を有する、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記所定の半径は、前記パッシベーション膜に対する前記熱応力が膜応力よりも小さくなる半径である、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記金属層は、第1方向、及び前記第1方向に直交する第2方向に平行な上面と下面を有し、
前記所定の半径は、前記上面と下面との間の長さである前記金属層の厚み以上である、請求項6又は7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記金属層がアルミニウムであり、前記パッシベーション膜が二酸化ケイ素である場合に、
前記所定の半径は、前記金属層の厚みの2乗を前記パッシベーション膜の厚みで除算した値に所定の定数で除算した値よりも大きな値となる、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記金属層の厚みが、3から6マイクロメートル(um)であり、前記パッシベーション膜の厚みが、0.5から1.5マイクロメートル(um)である場合に、
前記所定の半径は、100から650ナノメートル(nm)以上である、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記金属層は、電極、または配線部である、請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記金属層は、第1電極であり、
前記半導体部材の下面に設けられた第2電極と、
前記半導体部材内に設けられ、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に沿って設けられた第3電極と、
を更に備える、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項13】
半導体部材の上面側に層間膜と、バリアメタル層と、金属層と、を積層し、前記金属層を加工して、端部領域を生成する工程と、
前記バリアメタル層を前記金属層の端部領域まで加工する工程と、
前記端部領域の上部における端部に所定の円弧形状を形成しつつ、前記端部領域を他方側の端部方向に加工して、前記バリアメタル層に前記端部領域の位置に応じた傾斜面を形成する工程と、
パッシベーション膜を、加工後の前記金属層と、前記バリアメタル層の前記傾斜面とに成膜する工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置、及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スイッチング素子に用いる電力制御用などの半導体装置として、例えば縦型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)が開発されている。
【0003】
このような半導体装置では、水分や可動イオンの侵入防止のためにパッシベーション膜が成膜される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6504313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、電力制御用などの半導体装置には、大電流を流すために厚い電極が使われる場合がある。このような場合には、パッシベーション膜を電極、配線部などの金属層に成膜しても、金属層との熱膨張係数差でクラックが発生しやすくなってしまう。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、パッシベーション膜におけるクラックの発生を抑制可能な半導体装置、及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る半導体装置は、半導体部材と、層間膜と、金属層と、パッシベーション膜とを備える。層間膜は、半導体部材の上面側に設けられる。金属層は、層間膜の上面側の少なくとも一部の領域を覆うように設けられる。パッシベーション膜は、金属層が設けられていない層間膜の上面と、金属層の端部における側面、及び上面に成膜される。金属層の端部の上部は曲面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る半導体装置を示す上面図。
図2図1に示すA-A’線による断面図。
図3図1に示すB-B’線による断面図。
図4】金属膜の端部を示す断面図。
図5】比較例に係る金属膜の端部を示す断面図。
図6】端部の上部にかかる応力を説明するための図。
図7】端部の第1緩和領域と、第2緩和領域との製造方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る半導体装置、及び製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0010】
以下の説明及び図面において、n+、n-及びpの表記は、各不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、「+」が付されている表記は、「+」及び「-」のいずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に高く、「-」が付されている表記は、いずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に低いことを示す。これらの表記は、それぞれの領域にp形不純物とn形不純物の両方が含まれている場合には、それらの不純物が補償しあった後の正味の不純物濃度の相対的な高低を表す。以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0011】
図1は本実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。図2は、図1に示すA-A’線による断面図である。図3は、図1に示すB-B’線による断面図である。図1は、一実施形態に係る半導体装置1の一例を模式的に示す図である。
【0012】
図1図2、及び図3に示すように、本実施形態に係る半導体装置1においては、例えば縦型のMOSFETが構成される。この半導体装置1には、ドレイン電極10と、ソース電極20と、ゲート電極30と、配線部32と、埋込電極40と、絶縁部材50と、層間膜55と、半導体部材60と、金属膜70と、バリアメタル層72と、パッシベーション膜74が設けられている。なお、本実施形態に係るソース電極20と、配線部32とが、金属層に対応する。また、図1図3では、説明の簡単化のために、パッシベーション膜74の記載を省略している。
【0013】
ドレイン電極10、ソース電極20、ゲート電極30、及び配線部32は、金属により形成されている。絶縁部材50、及び層間膜55は絶縁性材料により形成されている。半導体部材60は半導体材料により形成されている。
【0014】
半導体部材60は、ドレイン電極10とソース電極20との間に配置されている。ゲート電極30は半導体部材60内に配置されており、Y方向に延びている。半導体部材60の形状は、例えば、矩形の板状である。この半導体部材60は、X方向及びY方向に平行な上側の上面と、上面に対向する下側の下面と、を有する。また、半導体部材60は、例えば、単結晶のシリコン(Si)からなり、局所的に不純物が導入されることにより、各部の導電形がp形又はn形とされている。半導体部材60の構成は後述する。なお、本実施形態に係るソース電極20が第1電極に対応し、ドレイン電極10が第2電極に対応し、ゲート電極30が第3電極に対応する。
【0015】
以下、本明細書においては、説明の便宜上、XYZ直交座標系を採用する。ドレイン電極10からソース電極20に向かう方向を「Z方向」とし、本実施形態においてゲート電極30が延びる方向を「Y方向」とし、Z方向及びY方向に対して直交した方向を「X方向」とする。X方向とY方向とZ方向は相互に直交する。Z方向を「上」ともいい、その反対方向を「下」ともいうが、この表現も便宜的なものであり、重力の方向とは無関係である。
【0016】
図1に示すように、半導体部材60の上面62の外縁部上には、ゲートパッド31と、枠状の配線部32が設けられている。ゲートパッド31は、例えば、半導体部材60の上面62の1つの角部上に設けられている。配線部32はゲートパッド31に接続されている。なお、本明細書において、「接続」とは電気的な接続を意味する。
【0017】
半導体部材60の上面62におけるゲートパッド31及び配線部32によって囲まれた領域上には、ソース電極20が配置されている。ソース電極20は、領域R1及びR2のそれぞれに設けられている。例えば、領域R1に設けられたソース電極20と領域R2に設けられたソース電極20は、パッケージの組立時にボンディング領域A100に接続されるボンディングワイヤ又はコネクタ等により相互に接続されて、単一の電極として用いられる。ソース電極20はゲートパッド31及び配線部32から離隔している。半導体部材60の下面上の全体には、ドレイン電極10が配置されている。
【0018】
図1図3に示すように、半導体部材60においては、上面62側から複数のトレンチ63が形成されている。各トレンチ63はY方向に延びている。複数のトレンチ63はX方向に沿って配列されている。トレンチ63は半導体部材60の下面には到達していない。各トレンチ63内には、絶縁部材50が配置されている。絶縁部材50の上部は、半導体部材60の上面62から上方に突出し、トレンチ63のX方向両側に延出して、層間膜55を形成している。但し、X方向において隣り合う2つの絶縁部材50、及び層間膜55は、相互に離隔している。絶縁部材50、及び層間膜55は、例えば、酸化シリコンまたは窒化シリコンのうちどちらかを含む。なお、絶縁部材50、及び層間膜55は、一体的に形成されていてもよく、一体的に形成されていなくてもよい。
【0019】
層間膜55とソース電極20との間、及び、半導体部材60とソース電極20との間には、金属膜70が設けられている。金属膜70は、層間膜55の上面及び側面を覆い、層間膜55間においては、半導体部材60の上面を覆っている。金属膜70はソース電極20に接し、ソース電極20に接続されている。
【0020】
また、層間膜55間には、金属膜70のトレンチコンタクト47が形成されている。各トレンチコンタクト47はY方向に延びている。複数のトレンチコンタクト47はX方向に沿って配列されている。
【0021】
バリアメタル層72は、金属膜70の側面を含む下面側を覆っている。バリアメタル層72は、半導体部材60側への金属原子の拡散や、バリアメタル層72を挟んで隣り合う各部間での相互反応を防止する。バリアメタル層72は、例えば、タングステン(W)や、チタン(Ti)膜もしくは窒化チタン(TiN)膜、またはこれらの積層金属膜である。
【0022】
ソース電極20の上面には、パッシベーション膜74が成膜されている。パッシベーション膜74の開口部に露出されたボンディング領域A100がソース配線のボンディング領域として機能する。ボンディング領域A100外の終端セルA200の端部までソース電極20が構成される。
【0023】
同様に、配線領域A300においても、配線部32の上面には、パッシベーション膜74が成膜される。配線部32の下部にもソース電極20と同様に、金属膜70、バリアメタル層72が層間膜55の上面に積層される。なお、後述するように、例えば配線部32と金属膜70とは、一体化されてもよい。或いは、配線部32と金属膜70とは、一体化されなくともよい。
【0024】
ソース電極20の端部P100、配線領域A300の端部P200、P300のように、パッシベーション膜74が成膜されるソース電極20、配線部32などの金属層における端部の上部は曲面をつけた構成を有する。例えば、金属層における端部の上部は、円弧形状を有する。なお、端部P100、P200、P300の詳細は後述する。
【0025】
上述のように、配線部32、及び金属膜70、ソース電極20、及び金属膜70の少なくともいずれか一方を金属層(32(20))と称する場合がある。また、金属層(32(20))には、金属膜70が一体的に形成されていてもよく、されていなくともよい。このように、本実施形態に係る半導体装置1は、半導体部材60と、半導体部材60の上面側に設けられた層間膜60と、層間膜60の上面側の少なくとも一部の領域を覆うように設けられた金属層(32(20))と、金属層(32(20))が設けられていない層間膜60の上面と、金属層(32(20))の端部における側面、及び上面に成膜されるパッシベーション膜74とを、備える。また、金属層(32(20))の端部における端部の上部は、円弧形状を有する。
【0026】
各トレンチ63内には、それぞれゲート電極30が配置されている。ゲート電極30は、絶縁部材50の一部を介して半導体部材60から離隔している。ゲート電極30のY方向両端部は半導体部材60の上面62まで引き出され、配線部32に接続されている。これにより、ゲート電極30は配線部32を介してゲートパッド31に接続されている。
【0027】
絶縁部材50は、例えば、無機材料として二酸化ケイ素(Si0)、窒化ケイ素(Si)、PSG (Phospho Silicate Glass)、BPSG (Boron Phospho Silicate Glass)、SOG (Spin On Glass)があり、有機材料として、ポリイミドをはじめとする各種ポリマーがある。
【0028】
また、各トレンチ63内のゲート電極30の下方には、複数の埋込電極40が配置されている。複数の埋込電極40はY方向に沿って断続的に一列に配列されている。換言すると、埋込電極40はY方向に沿って複数設けられている。Y方向において隣り合う埋込電極40間には、絶縁部材50の一部が配置されている。埋込電極40はシリコンを含み、例えば、不純物が導入されたポリシリコンにより形成されている。また、埋込電極40は絶縁部材50の一部を介してゲート電極30から離隔している。
【0029】
埋込電極40は金属膜70に接している。これにより、埋込電極40は金属膜70を介してソース電極20に接続されている。
【0030】
金属膜70及びソース電極20は、例えば一体的に形成されている。金属膜70及びソース電極20は、例えば、アルミニウム(Al)、高力アルミニウム合金(AlCu)である。なお、金属膜70及びソース電極20は、アルミニウム(Al)、高力アルミニウム合金(AlCu)、銅(Cu)、タングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)からなる群より選択された少なくとも1つの金属を含み、例えば、上記金属群のいずれかの金属からなる金属化合物または合金を含んでいてもよい。
【0031】
同様に、金属膜70及び配線部32は、例えば一体的に形成されている。金属膜70及び配線部32は、例えば、アルミニウム(Al)、高力アルミニウム合金(AlCu)である。なお、金属膜70及び配線部32は、アルミニウム(Al)、高力アルミニウム合金(AlCu)、銅(Cu)、タングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)からなる群より選択された少なくとも1つの金属を含み、例えば、上記金属群のいずれかの金属からなる金属化合物または合金を含んでいてもよい。
【0032】
このように、絶縁部材50、及び層間膜55は、半導体部材60とゲート電極30との間、ゲート電極30と埋込電極40との間、ゲート電極30と金属膜70との間、半導体部材60と埋込電極40との間に配置されている。
【0033】
半導体部材60においては、導電形がn+形のドレイン層65と、導電形がn-形のドリフト層66と、導電形がn+形のソース層67と、導電形がp形のベース層68が設けられている。ソース層67におけるキャリア濃度は、ドレイン層65及びドリフト層66におけるキャリア濃度よりも高い。なお、「キャリア」は電子及び正弧である。ドレイン層65は半導体部材60の下面61を構成し、ドレイン電極10とドリフト層66との間に配置されている。このため、ドリフト層66はドレイン層65を介してドレイン電極10に接続されている。ソース層67は半導体部材60の上面62を構成し、金属膜70に接している。このため、ソース層67は金属膜70を介してソース電極20に接続されている。
【0034】
ベース層68はドリフト層66とソース層67の間に配置されており、ドリフト層66及びソース層67に接している。ベース層68は金属膜70を介してソース電極20に接続されている。
【0035】
次に、本実施形態に係る半導体装置1の動作について説明する。
ドレイン電極10とソース電極20との間に、ドレイン電極10の電位がソース電極20の電位よりも高くなるような電圧を印加する。この状態で、ゲート電極30に閾値よりも高い電位を印加すると、ベース層68における絶縁部材50に接する領域に反転層(チャネル)が形成される。これにより、ソース電極20から、金属膜70、ソース層67、ベース層68に形成された反転層、ドリフト層66、ドレイン層65を介して、ドレイン電極10に電子が流れる。この結果、半導体装置1はオン状態となり、ドレイン電極10からソース電極20に電流が流れる。
【0036】
ゲート電極30の電位が閾値よりも低くなると、ベース層68に形成された反転層が消滅し、ドリフト層66とベース層68とのpn界面を起点として空乏層が拡がる。埋込電極40及び埋込電極40にもソース電極20と同じ電位が印加されるため、ドリフト層66における絶縁部材50に接する面からも空乏層が拡がる。すなわち、ドリフト層66内において、空乏層はpn界面から下方に向けて拡がり、絶縁部材50からX方向に向けて拡がる。これにより、半導体装置1はオフ状態となり、ドレイン電極10からソース電極20に向かう電流が遮断される。
【0037】
半導体装置1がオン状態からオフ状態に切り替わると、ソース電極20とドレイン電極10との間の電圧が急激に増加する。ソース電極20の電位は、金属膜70を介して、埋込電極40にも伝わる。半導体装置1がオフ状態になり、埋込電極40の電位が上がることで、絶縁部材50は埋込電極40とドレイン電極10と間の寄生容量として機能し、電子の充放電が起きる。これにより、ソース電極20とドレイン電極10との間の電圧が振動し、その後、所定の電圧に収束する。
【0038】
ここで、パッシベーション膜74が成膜される金属膜の端部P100、P200、P300(図2参照)の詳細な構成例を説明する。図4は、端部P200を拡大した図である。なお、上述のように、端部P200、P300は配線部32の例であるが、ソース電極20の端部P100も同等の構成を有する。なお、配線部32、ソース電極20は、上述したように金属膜70を有してもよい。また、配線部32、及びソース電極20と、金属膜70とは、異なる金属材で構成されてもよい。この場合、配線部32、及びソース電極20は、異なる金属材料の積層体となる。
【0039】
図5は、比較例に係る端部P200aの構成例を示す断面図である。図4の応力D100~D106は、熱処理時に発生するパッシベーション膜74に対する応力を示す。同様に、図5の応力D100a~D106aは、熱処理時に発生するパッシベーション膜74に対する応力を示す。すなわち、配線部32(ソース電極20)の熱膨張係数が、パッシベーション膜74よりも大きいために、熱処理時に応力が発生する。
【0040】
図4に示すように、本実施形態に係る端部P200は、応力の第1緩和領域S100と、第2緩和領域S200と、を有する点で、比較例の端部P200aと相違する。図5に示すように、比較例の端部P200aにいては、配線部32(ソース電極20)における端部の上部に応力D100a~D103aが集中する。また、バリアメタル層72の端部が、方形状となり、配線部32(ソース電極20)における端部の下部に応力D104a~D106aが集中する傾向がある。
【0041】
例えば、応力D101aと応力D104a、応力D103aと応力D106aとは、相反する方向の応力となる。これにより、クラック線C100aと、C200aとの間には、圧縮する方向の力が係る。また、クラック線C100には、応力D101aと応力D100a、応力D103aと応力D102aと、相反する方向の応力が発生する。これにより、クラック線C100aを剥離する方向の応力が発生する。このように、応力100a~D103aが大きくなるにしたがい、クラック線C100aを剥離する方向の力が大きくなる。
【0042】
また、応力D104aと応力D106aとが大きくなると、応力D101aと応力D104a、応力D103aと応力D106aとの相互作用により、クラック線C100aと、C200aとに沿ったクラックが生じやすくなる。
【0043】
これに対して、第1緩和領域S100では、配線部32(ソース電極20)の角が生じないように、上部における端部は曲面を有する。これにより、配線部32(ソース電極20)の上部における端部へ集中する応力D100~D103が緩和される。このように、上部における端部は曲面を有することにより、応力D100~D103が緩和されクラック線C100に沿ったクラックの発生が抑制される。
【0044】
第2緩和領域S200では、バリアメタル層72の端部が、台形状に成形される。これにより、配線部32(ソース電極20)の下部における端部へ集中する応力D104~D106が緩和される。このように、バリアメタル層72の端部を台形状に成形することにより、応力D104~D106が緩和され、クラック線C100、C200に沿ったクラックの発生が抑制される。すなわち、バリアメタル層72は、金属層(32(20))と接する上側の面よりも層間膜55と接する下側の面のほうが長い形状を有する。
【0045】
このように、金属層(32(20))の下面と、層間膜55の上面との間に成膜されるバリアメタル層72の端面72aは傾斜する。すなわち、金属層(32(20))の端部側におけるバリアメタル層の端面72aの形状が、層間膜55から金属層(32(20))における端部の下面に近づくにしたがい端部側から他方の端部側に近づくように傾斜する。このように、バリアメタル層72の端面72aを傾斜させることにより、応力D104~D106が緩和され、クラック線C100、C200に沿ったクラックの発生が抑制される。
【0046】
ここで、図6を参照して、円弧形状の半径Rtの範囲の説明をする。図6は、上部における端部にかかる応力を説明するための図である。ここで、上部における端部の円弧の半径をRtとし、配線部32(ソース電極20)のメタル厚をtとし、パッシベーション膜74の膜厚をtとする。すなわち、金属層(32(20))は、第1方向(X方向)、及び第1方向に直交する第2方向(Y方向)に平行な上面と下面を有し、メタル厚tは、上面と下面との間の距離である。同様に、パッシベーション膜74は、第1方向(X方向)、及び第1方向に直交する第2方向(Y方向)に平行な上面と下面を有し、パッシベーション膜74の膜厚tは、上面と下面との間の距離である。このように、金属層(32(20))の上部における端部は曲面を有する。例えば、上部における端部の上面と側面の延長線が交わる角度αが90度以上として形成する。
【0047】
配線部32(ソース電極20)の上部における端部の半径Rtの円弧にかかる応力については、膜応力σと、熱応力σTとの2種類がある。上述ように、パッシベーション膜74にクラックが入るのは、形成後に熱処理がかかることで、下地の配線部32(ソース電極20)とパッシベーション膜74の熱膨張係数の差が大きいことでクラックが入る。その応力は熱応力σTが大きいためである。すなわち、パッシベーション膜74の成膜時ではクラックが入らないので、膜応力σよりも熱応力σTが大きくなった場合にクラックが発生すると考えられる。換言すると、本実施形態に係る半径Rtの円弧形状は、パッシベーション膜74に対する熱応力σTが膜応力σよりも小さくなる形状を有する。すなわち、半径Rtの円弧形状は、パッシベーション膜74に対する熱応力σTを緩和する形状を有する。
【0048】
このように、本実施形態に係る円弧形状は、所定の半径Rtを有する。所定の半径Rtは、パッシベーション膜74に対する熱応力σTが膜応力σよりも小さくなる半径である。そこで、ここでは、膜応力σ≒熱応力σTを満たす半径Rtの範囲を考察する。Stoneyの式より、膜応力σは、(1)式で示される。
【0049】
また、配線部32(ソース電極20)の材料をアルミニウム(Al)とし、パッシベーション膜74の材料を二酸化ケイ素(SiO)として、より具体的な例を説明する。
【数1】
【数2】
【0050】
ここで、Eは、アルミニウム(Al)のヤング率(70GPa)であり、Eは、二酸化ケイ素(SiO)のヤング率(73GPa)である。このため、Es≒Eとして計算する。Vは、アルミニウム(Al)ののポアッソン比(0.33)であり、Vは、二酸化ケイ素(SiO)のポアッソン比(0.17)である。αは、アルミニウム(Al)の熱膨張係数(22~23.5×10^-6/℃)であり、αは、二酸化ケイ素(SiO)の熱膨張係数(0.41~0.58×10^-6/℃)である。
【0051】
また、(1)式に数値を代入すると(3)式になる。
【数3】
【0052】
また、(2)式に数値を代入すると(4)式になる。
【数4】
【0053】
これにより、(4)式を更に(3)式に代入すると(5)式が得られる。
【数5】
【0054】
更に(5)式を整理すると(6)式となる。
【数6】
【0055】
これらから分かるように、金属層(32(20))がアルミニウム(Al)であり、パッシベーション膜74が二酸化ケイ素(Si0)である場合に、本実施形態に係る所定の半径Rtは、金属層(32(20))の厚みtの2乗をパッシベーション膜74の厚みtで除算した値に、所定の定数である110.8で除算した値よりも大きな値となる。本実施形態に係る半導体装置1では、例えば配線部32(ソース電極20)の厚さを4マイクロメートル(um)とし、パッシベーション膜74の厚さを1マイクロメートル(um)とする。この場合、t:t=4:1となり、(6)式に代入して、(7)式から算出される。
【数7】
これから分かるように、配線部32(ソース電極20)の厚さを4マイクロメートル(um)とし、パッシベーション膜74の厚さを1マイクロメートル(um)とする場合には、半径Rtを0.14マイクロメートル(um)以上とれば、クラックの発生が抑制される。
【0056】
本実施形態では、配線部32(ソース電極20)におけるアルミニウム(Al)の厚さが、3~6マイクロメートル(um)であり、パッシベーション膜74の厚さが0.5~1.5マイクロメートル(um)である。これから分かるように、半径Rtは、アルミニウム(Al)の厚さが6マイクロメートル(um)、二酸化ケイ素(SiO)の厚さが0.5マイクロメートル(um)のときに最大値である0.65マイクロメートル(um)となる。
【0057】
一方で、半径Rtは、アルミニウム(Al)の厚さが3マイクロメートル(um)、二酸化ケイ素(SiO)の厚さが1.5マイクロメートル(um)のときに最小値である0.041マイクロメートル(um)となる。すなわち、本実施形態に係る半径Rtは、41~650ナノメートル(nm)以上のときに、クラックの発生が抑制される。
【0058】
特に、クラックの発生を抑制する場合には、金属層(32(20))の厚みtが、3から6マイクロメートル(um)であり、パッシベーション膜74の厚みtFが、0.5から1.5マイクロメートル(um)である場合に、半径Rtを、100~650ナノメートル(nm)以上とする。
【0059】
ここで、図7を用いて、端部P200の第1緩和領域S100と、第2緩和領域S200との製造例を説明する。図7は、端部P200の第1緩和領域S100と、第2緩和領域S200との製造方法を示す図である。
【0060】
図7(a)は、アルミニウム加工の工程を示す図である。図7(a)に示すように、層間膜(絶縁材50)の上にバリアメタル層72、金属層(32(20))を成膜する。次に、ウェットエッチング(WET)による化学反応によって不要部分を除去する方法により、金属層(32(20))を加工する。このように、アルミニウム加工の工程は、半導体部材60の上面側に層間膜55と、バリアメタル層72と、金属層(32(20))と、を積層し、金属層(32(20))を加工して、端部領域Pu200,Pd200を生成する工程である。この加工は、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching)によるドライエッチングでもよい。なお、金属層(32(20))には、金属膜70を、含んでいても、或いは含んでいなくともよい。
【0061】
図7(b)は、バリアメタル加工の工程を示す図である。図7(b)に示すように、バリアメタル層72を加工する。例えば、ウェットエッチング(WET)による化学反応によってバリアメタル層72の不要部分を除去する。このように、バリアメタル加工の工程は、バリアメタル層72を金属層(32(20))の下部端部領域Pd200まで加工する工程である。この加工は、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching)によるドライエッチングでもよい。
【0062】
図7(c)は、アルミニウムの形状加工の工程を示す図である。図7(c)に示すように、ウェットエッチング(WET)による化学反応により、金属層(32(20))を後退させると共に、上部における端部Pu200に半径RtFの円弧を生成する。このときに、金属層(32(20))を後退させる際のエッチングにより、バリアメタル層72の端部が台形形状に加工される。例えば、バリアメタル層72をタングステンで形成し、リン酸等のエッチング液を用いる場合に、金属層とバリアメタル層のエッチングレート比は10:1に加工することが可能である。このようなエッチングレートの差を用いることで、バリアメタル72の端部を台形形状に加工することができる。このように、アルミニウムの形状加工の工程は、金属層(32(20))における上部端部領域Pu200に所定の円弧形状を形成しつつ、下部端部領域Pd200を他方側の端部方向に加工して、バリアメタル層72に、下部端部領域Pd200aの位置に応じた傾斜面72aを形成する工程である。この加工は、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching)によるドライエッチングでもよい。
【0063】
図7(d)は、パッシベーション膜形成の形状工程を示す図である。図7(d)に示すように、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition)により、パッシベーション膜74が成膜される。そして、パッシベーション膜74が成膜された後に、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching)により加工される。このような製造方法により、第1緩和領域S100と、第2緩和領域S200とが形成される。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、層間膜55の上にバリアメタル層72と、金属層(配線部32、ソース電極20)と、パッシベーション膜74とを成膜する場合に、金属層(配線部32、ソース電極20)の上部端部領域Pu200に曲面(例えば所定の半径RtFを有する円弧形状)を形成することとした。これにより、熱処理時にパッシベーション膜74に対して発生する応力が円弧形状により緩和され、パッシベーション膜74におけるクラックの発生が抑制される。また、バリアメタル層72の端面72aの形状が、層間膜55から金属層(配線部32、ソース電極20)の端部の下面に近づくにしたがい端部側から他方の端部に近づくように傾斜する。これにより、金属層(配線部32、ソース電極20)の下部端部領域Pd200aにおいて、熱処理時にパッシベーション膜74に対して発生する応力が緩和され、パッシベーション膜74の下部における端部(緩和領域S200内)、及び上部における端部(緩和領域S100内)に発生するクラックの発生が抑制される。
【0065】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法及びプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法及びプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
1:半導体装置、10:ドレイン電極、20:ソース電極、30:ゲート電極、32:配線部、50:絶縁部材、55:層間膜、72:バリアメタル層、72a:端面、74:パッシベーション膜、P100、P200、P300:端部、Pd200、Pd200a:下部端部領域、Pu200:上部端部領域、S100:第1緩和領域、S200:第2緩和領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7