(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155387
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】ドリップウェザーストリップ
(51)【国際特許分類】
B60J 10/25 20160101AFI20251006BHJP
B60J 10/27 20160101ALI20251006BHJP
【FI】
B60J10/25
B60J10/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059197
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】松岡 由樹
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA09
3D201BA01
3D201CA03
3D201CA18
3D201DA16
3D201DA31
3D201DA34
3D201DA45
(57)【要約】
【課題】ドアのヒンジに対する被水量を極力少なくし、ヒンジを錆にくくする。
【解決手段】自動車100のドア開口縁DK1に取付けられる取付部11,21と、ドア101に弾接するメインシールリップ12,22と、取付部11,21とメインシールリップ12,22間に形成された第1ドリップ通路DT1を備え、第1ドリップ通路DT1は、ドア101閉時にドア101の後部の直上位置に相対向する位置PからドアヒンジH1の直上位置Q又は直上位置手前まで延設され、第1ドリップ通路DT1の前端DT1Eの下方位置からドアヒンジH1の直上位置Qよりも前方位置まで延びる第2ドリップ通路DT2を設け、第1ドリップ通路DT1の前端DT1Eから落下する水W1を第2ドリップ通路DT2で受水するとともに、第2ドリップ通路DT2を介してドアヒンジH1の直上位置Qよりも前方位置で落水W2させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジ式ドアを有する自動車の車体の前記ドア開口縁に取付けられる取付部と、前記取付部の車外側端部から上方向に向けて延設され前記ドア閉時には前記ドアに弾接するメインシールリップと、前記取付部と前記メインシールリップとの間に形成された導水可能な第1ドリップ通路を備えるドリップウェザーストリップであって、
前記第1ドリップ通路は、前記ドア閉時に前記ドアの後部の直上位置に相対向する位置から前記ドアヒンジの直上位置又は直上位置手前まで延設されるとともに、
前記第1ドリップ通路の前端の下方位置から前記ドアヒンジの直上位置よりも前方位置まで延びる第2ドリップ通路を設け、
前記第1ドリップ通路の前端から落下する水を前記第2ドリップ通路で受水するとともに、前記第2ドリップ通路を介して前記ドアヒンジの直上位置よりも前方位置で落水させるようにしたことを特徴とするドリップウェザーストリップ。
【請求項2】
前記第2ドリップ通路は、
前記第1ドリップ通路の前記前端における、取付部から屈曲して前方に延出し、前記取付部よりも低位置に設けられた延長基部と、前記延長基部の下側部分から上方向に向けて延設された延長サブリップとの間に形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のドリップウェザーストリップ。
【請求項3】
前記第2ドリップ通路の、前記自動車の設置水平面との成す傾斜角度は、
前記第1ドリップ通路の、前記前端まで延設される部分の、前記自動車の設置水平面との成す傾斜角度よりも小さくなるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のドリップウェザーストリップ。
【請求項4】
前記第1ドリップ通路のメインシールリップは、前記ドアヒンジの直上位置の手前から徐々に長さが短くされ、前記ドアヒンジの直上位置では消滅させられ、前記ドア閉時に、前記ドアヒンジの直上位置においては、前記ドアが前記メインシールリップに干渉しないようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のドリップウェザーストリップ。
【請求項5】
前記第2ドリップ通路の後端位置から前記ドアヒンジの直上位置よりも後方位置まで延びる第3ドリップ通路を設け、
前記第1ドリップ通路から落下する水のうち、前記第2ドリップ通路で受水できなかった水を受水して前記第2ドリップ通路に流すようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のドリップウェザーストリップ。
【請求項6】
前記第3ドリップ通路は、
前記第1ドリップ通路を構成する、取付部の後側端部から後方に延出した延出板と、前記延出板から上方向に向けて延設され、前記ドア閉時には前記ドアに前記メインシールリップとともに弾接するサブシールリップとの間に形成されてなることを特徴とする請求項5に記載のドリップウェザーストリップ。
【請求項7】
前記第3ドリップ通路の、前記自動車の設置水平面との成す傾斜角度は、
前記第1ドリップ通路の、前記前端まで延設される部分の、前記自動車の設置水平面との成す傾斜角度よりも大きくなるようにしたことを特徴とする請求項5に記載のドリップウェザーストリップ。
【請求項8】
ヒンジ式ドアを有する自動車の車体の前記ドア開口縁に取付けられる取付部と、前記取付部の車外側端部から上方向に向けて延設され前記ドア閉時には前記ドアに弾接するメインシールリップと、前記取付部と前記メインシールリップとの間に形成された導水可能な第1ドリップ通路を備えるドリップウェザーストリップであって、
前記第1ドリップ通路は、前記ドア閉時に前記ドアの後部の直上位置に相対向する位置から前記ドアヒンジの直上位置又は直上位置手前まで延設されるとともに、
前記第1ドリップ通路の前端の下方位置から前記ドアヒンジの直上位置よりも前方位置まで延びる第2ドリップ通路を設け、
前記第1ドリップ通路の前端から落下する水を前記第2ドリップ通路で受水するとともに、前記第2ドリップ通路を介して前記ドアヒンジの直上位置よりも前方位置で落水させるようにするとともに、
前記第2ドリップ通路の後端位置から前記ドアヒンジの直上位置よりも後方位置まで延びる第3ドリップ通路を設け、
前記第1ドリップ通路から落下する水のうち、前記第2ドリップ通路で受水できなかった水を受水して前記第2ドリップ通路に流すようにし、
前記第2ドリップ通路は、
前記第1ドリップ通路の取付部から屈曲して前方に延出し、前記取付部よりも低位置に設けられた延長基部と、前記延長基部の下側部分から上方向に向けて延設された延長サブリップとの間に形成され、
前記第3ドリップ通路は、
前記第1ドリップ通路の取付部の後側端部から後方に延出した延出板と、前記延出板から上方向に向けて延設され、前記ドア閉時には前記ドアに前記メインシールリップとともに弾接するサブシールリップとの間に形成され、
前記第3ドリップ通路のサブシールリップと、前記第2ドリップ通路の延長サブリップとを接続し、
前記第3ドリップ通路の延出板と、前記第2ドリップ通路の延長基板とを接続したことを特徴とするドリップウェザーストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ式ドアを有する自動車の車体のドア開口縁に取付けられ、ドア閉時にはそのドアに弾接するとともに導水用のドリップ通路を備えるドリップウェザーストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、ヒンジ式のドア(フロントドア)201を有する自動車200において、ドア201の閉時にドア201に相対向する車体側にドリップウェザーストリップ300が設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このドリップウェザーストリップ300は、
図11に示すように、ボディB側に取付けられた取付基部301からドア201に向かって延出したシール部302と、その下方に設けられたドリップリップ303を備え、シール部302の付け根部からボディB側に第1ドリップ通路304を形成するとともに、シール部302とドリップリップ303の間に第2ドリップ通路305を形成し、
図12に示すように、第1ドリップ通路304と第2ドリップ通路305を連通部306で連通させたものである。連通部306は、シール部302とドリップリップ303を一体化したシールリップ307のボディB側に形成されている。
【0003】
これによれば、第1ドリップ通路304を通過した水と、第2ドリップ通路305を通過した水を連通部306において合流させることにより、第2ドリップ通路305を通過した水を側縁部シールに向かって流し、このためドア201の上縁の端部において水滴が落下することを防止することができるといったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、連通部306に合流された水のその後の排水については記載されておらず、そのまま下側に排水されるものと推認されるが、ドア201の下側にはそのドア201用のヒンジH1が上下に設けられているので、そのまま下側に排水するとヒンジH1に水がかかってしまう恐れがある。
ヒンジH1に水がかかる量が多くなると、ヒンジH1が錆びる問題が生じてしまう。
【0006】
これに対して、ヒンジH1に被水する量が多くならないように、ヒンジH1の位置より前側までドリップウェザーストリップ300を延長することが考えられる。
しかしながら、ドリップウェザーストリップ300を単純に延長しただけでは、
図13に示すように、ドア201とボディBのレイアウトの関係上、ヒンジH1の直上部位においては、ドア201の閉時にはドア201がシールリップ307に干渉するため、シールリップ307の先端部307aから付根部307bまでをカット(切り落とし)する必要がある。
より詳細には、ヒンジH1の直上部位においては、ドア201閉時には、シールリップ307は破線で示すような撓み形態となり、その後ドア201開時にはドア201先端部がシールリップ307の、ドア201側の面をひっかくように開いていくため、シールリップ307が破損したり、ちぎれたりしてしまう。
これは、
図10乃至
図13で示したドリップウェザーストリップ300に限らず、一般的にヒンジ式のドアを有する自動車のフロントピラー(Aピラー)に沿って設けられたドリップウェザーストリップに共通する問題である。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、ドアのヒンジに対する被水量を極力少なくし、ヒンジを錆にくくするドリップウェザーストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のドリップウェザーストリップは、ヒンジ式ドア(101)を有する自動車(100)の車体(B)の前記ドア開口縁(DK1)に取付けられる取付部(11,21)と、前記取付部(11,21)の車外側端部から上方向に向けて延設され前記ドア(101)閉時には前記ドア(101)に弾接するメインシールリップ(12,22)と、前記取付部(11,21)と前記メインシールリップ(12,22)との間に形成された導水可能な第1ドリップ通路(DT1)を備えるドリップウェザーストリップ(1)であって、
前記第1ドリップ通路(DT1)は、前記ドア(101)閉時に前記ドア(101)の後部の直上位置に相対向する位置(P)から前記ドアヒンジ(H1)の直上位置(Q)又は直上位置手前まで延設されるとともに、
前記第1ドリップ通路(DT1)の前端(DT1E)の下方位置から前記ドアヒンジ(H1)の直上位置(Q)よりも前方位置まで延びる第2ドリップ通路(DT2)を設け、
前記第1ドリップ通路(DT1)の前端(DT1E)から落下する水(W1)を前記第2ドリップ通路(DT2)で受水するとともに、前記第2ドリップ通路(DT2)を介して前記ドアヒンジ(H1)の直上位置(Q)よりも前方位置で落水(W2)させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記第2ドリップ通路(DT2)は、前記第1ドリップ通路(DT1)の前記前端(DT1E)における取付部(21)から屈曲して前方に延出し、前記取付部(21)よりも低位置に設けられた延長基部(31a)と、前記延長基部(31a)の下側部分から上方向に向けて延設された延長サブリップ(32)との間に形成されてなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記第2ドリップ通路(DT2)の、前記自動車(100)の設置水平面(SM)との成す傾斜角度(θ2)は、
前記第1ドリップ通路(DT1)の、前記前端(DT1E)まで延設される部分の、前記自動車(100)の設置水平面(SM)との成す傾斜角度(θ1)よりも小さくなるようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記第1ドリップ通路(DT1)のメインシールリップ(22)は、前記ドアヒンジ(H1)の直上位置(Q)の手前から徐々に長さが短くされ、前記ドアヒンジ(H1)の直上位置(Q)では消滅させられ、前記ドア(101)閉時に、前記ドアヒンジ(H1)の直上位置(Q)においては、前記ドア(101)が前記メインシールリップ(22)に干渉しないようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記第2ドリップ通路(DT2)の後端位置(DT2E)から前記ドアヒンジ(H1)の直上位置(Q)よりも後方位置まで延びる第3ドリップ通路(DT3)を設け、
前記第1ドリップ通路(DT1)から落下する水(W1)のうち、前記第2ドリップ通路(DT2)で受水できなかった水(W3)を受水して前記第2ドリップ通路(DT2)に流すようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記第3ドリップ通路(DT3)は、前記第1ドリップ通路DT1を構成する、取付部21の後側端部から後方に延出した延出板24と、前記延出板24から上方向に向けて延設され、前記ドア(101)閉時には前記ドア(101)に前記メインシールリップ(22)とともに弾接するサブシールリップ(25)との間に形成されてなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記第3ドリップ通路(DT3)の、前記自動車(100)の設置水平面(SM)との成す傾斜角度(θ3)は、
前記第1ドリップ通路(DT1)の、前記前端(DT1E)まで延設される部分の、前記自動車(100)の設置水平面(SM)との成す傾斜角度(θ1)よりも大きくなるようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、ヒンジ式ドア(101)を有する自動車(100)の車体(B)の前記ドア開口縁(DK1)に取付けられる取付部(11,21)と、前記取付部(11,21)の車外側端部から上方向に向けて延設され前記ドア(101)閉時には前記ドア(101)に弾接するメインシールリップ(12,22)と、前記取付部(11,21)と前記メインシールリップ(12,22)との間に形成された導水可能な第1ドリップ通路(DT1)を備えるドリップウェザーストリップ(1)であって、
前記第1ドリップ通路(DT1)は、前記ドア(101)閉時に前記ドア(101)の後部の直上位置に相対向する位置(P)から前記ドアヒンジ(H1)の直上位置(Q)又は直上位置手前まで延設されるとともに、
前記第1ドリップ通路(DT1)の前端(DT1E)の下方位置から前記ドアヒンジ(H1)の直上位置(Q)よりも前方位置まで延びる第2ドリップ通路(DT2)を設け、
前記第1ドリップ通路(DT1)の前端(DT1E)から落下する水(W1)を前記第2ドリップ通路(DT2)で受水するとともに、前記第2ドリップ通路(DT2)を介して前記ドアヒンジ(H1)の直上位置(Q)よりも前方位置で落水(W2)させるようにするとともに、
前記第2ドリップ通路(DT2)の後端位置(DT2E)から前記ドアヒンジ(H1)の直上位置(Q)よりも後方位置まで延びる第3ドリップ通路(DT3)を設け、
前記第1ドリップ通路(DT1)から落下する水(W1)のうち、前記第2ドリップ通路(DT2)で受水できなかった水(W3)を受水して前記第2ドリップ通路(DT2)に流すようにし、
前記第2ドリップ通路(DT2)は、
前記第1ドリップ通路(DT1)の前記前端(DT1E)における、取付部(21)から屈曲して前方に延出し、前記取付部(21)よりも低位置に設けられた延長基部(31a)と、前記延長基部(31a)の下側部分から上方向に向けて延設された延長サブリップ(32)との間に形成され、
前記第3ドリップ通路(DT3)は、
前記第1ドリップ通路(DT1)の取付部(21)の後側端部から後方に延出した延出板(24)と、前記延出板(24)から上方向に向けて延設され、前記ドア(101)閉時には前記ドアに前記メインシールリップ(22)とともに弾接するサブシールリップ(25)との間に形成され、
前記第3ドリップ通路(DT3)のサブシールリップ(25)と、前記第2ドリップ通路(DT2)の延長サブリップ(32)とを接続し、
前記第3ドリップ通路(DT3)の延出板(24)と、前記第2ドリップ通路(DT2)の延長基板(31a)とを接続したことを特徴とする。
【0016】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0017】
本発明のドリップウェザーストリップによれば、取付部とメインシールリップとの間に形成された導水可能な第1ドリップ通路は、ドアの後部の直上位置に相対向する位置からドアヒンジの直上位置又は直上位置手前まで延設されるとともに、第1ドリップ通路の前端の下方位置からドアヒンジの直上位置よりも前方位置まで延びる第2ドリップ通路を設け、第1ドリップ通路の前端から落下する水を第2ドリップ通路で受水するとともに、第2ドリップ通路を介してドアヒンジの直上位置よりも前方位置で落水させるようにしたので、ドアヒンジに対する被水量を少なくすることができ、ドアヒンジを錆にくくすることができる。
【0018】
また本発明によれば、第2ドリップ通路は、第1ドリップ通路の取付部から屈曲して前方に延出し、取付部よりも低位置に設けられた延長基部と、延長基部の下側部分から上方向に向けて延設された延長サブリップとの間に形成されてなるので、十分な量の水を受けることができ、ドアヒンジに対する被水量を、より少なくすることができる。
【0019】
また本発明によれば、第2ドリップ通路の、自動車の設置水平面との成す傾斜角度は、第1ドリップ通路の自動車の設置水平面との成す傾斜角度よりも小さくしたので、第2ドリップ通路の設定長さを短くすることができる。
【0020】
また本発明によれば、第1ドリップ通路のメインシールリップは、ドアヒンジの直上位置の手前から徐々に長さが短くされ、ドアヒンジの直上位置では消滅させられ、ドア閉時に、ドアヒンジの直上位置においては、ドアがメインシールリップに干渉しないようにしたので、ドリップウェザーストリップの耐久性が向上するとともに、ドア閉じ性が特に悪くなることもない。
【0021】
また本発明によれば、第2ドリップ通路の後端位置からドアヒンジの直上位置よりも後方位置まで延びる第3ドリップ通路を設け、第1ドリップ通路から落下する水のうち、第2ドリップ通路で受水できなかった水を受水して第2ドリップ通路に流すようにしたので、車内側に水が侵入することを低減することができ、ドアヒンジに対する被水量を更に少なくすることができる。
【0022】
また本発明によれば、第3ドリップ通路は、第1ドリップ通路の取付部の後側端部から後方に延出した延出板と、延出板から上方向に向けて延設され、ドア閉時にはドアにメインシールリップとともに弾接するサブシールリップとの間に形成されてなるので、水を前側に誘導することができ、ドアヒンジに対する被水量を一層少なくすることができる。
【0023】
また本発明によれば、第3ドリップ通路の、前記自動車の設置水平面との成す傾斜角度は、第1ドリップ通路の自動車の設置水平面との成す傾斜角度よりも大きくなるようにしたので、第1ドリップ通路の傾斜角度と同等あるいはそれより小さい場合と比較して、第1ドリップ通路から漏れた水を広い範囲で受水することができ、ドアヒンジに対する被水量をより一層少なくすることができる。
【0024】
また本発明によれば、第3ドリップ通路のサブシールリップと第2ドリップ通路の延長サブリップとを接続し、第3ドリップ通路の延出板と第2ドリップ通路の延長基板とを接続したので、簡易な構造で導水の連続性を維持した状態で、ドアヒンジへの落水量低減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係るドリップウェザーストリップが自動車の車体に取付けられた状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すドリップウェザーストリップを車外側から見た拡大斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るドリップウェザーストリップとドアとの位置関係を示す、
図2のM7-M7線拡大断面図である。
【
図10】従来例に係るドリップウェザーストリップが自動車の車体に取付けられた状態を示す、側面図である。
【
図13】従来例に係るドリップウェザーストリップとドアとの位置関係を示す拡大断面図であり、
図2のM7-M7線拡大断面図で、シールリップのカット(切り落とし)をしなかった場合の状態を示す。また、破線は、ドア閉時のシールリップの撓み状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1乃至
図9を参照して、本発明の実施形態に係るドリップウェザーストリップについて説明する。なお、従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0027】
本発明の実施形態に係るドリップウェザーストリップ1は、
図1に示すように、上下に設けられたヒンジH1を介して開閉するヒンジ式ドア(フロントドア)101を有する自動車100の車体Bのドア開口縁DK1に取付けられる。
ドリップウェザーストリップ1は、
図4,
図7に示すように、ドア開口縁DK1に直接取付けられる取付部11,21と、取付部11,21の車外側端部から上方向に向けて延設されドア101閉時にはそのドア101に弾接するメインシールリップ12,22と、取付部11,21とメインシールリップ12,22との間に形成された導水可能な第1ドリップ通路DT1を備える。
また、取付部11,21の上部前側には、フロント固定ガラスFGの周縁に取付けられたフロント固定ガラスモールFMのモール取付部FMaからドア開口縁DK1側に向けて延びるモール延出板FMbに弾接する背面シールリップ13,23が延設されている。
そして、
図1に示すように、第1ドリップ通路DT1の下方位置には第2ドリップ通路DT2が設けられ、さらに第2ドリップ通路DT2の後端位置には第3ドリップ通路DT3が設けられている。
【0028】
フロント固定ガラスFGは、ウレタン接着剤等により車体Bに固定される(図示は省略)。フロント固定ガラスモールFMは、
図4,
図7に示すように、フロント固定ガラスFGの(左右の)車両側面側の端部に、モール取付部FMaが取付けられ、(図示は省略)モール取付部FMaの後端側の車内側面から、ボデー開口縁DK1側に向けて突出するとともに、車両前後方向に延出する、モール延出板FMbを備えている。
【0029】
ドリップウェザーストリップ1は、
図1に示すように、ドア101閉時にドア101の後部の直上位置に相対向する位置Pからフロントピラー(Aピラー)に沿って下降するように延びる押出成形部の下端が型成形されたものであり、
図2に示すように、押出成形された取付部11及びメインリップ12に、型成形された取付部21及びメインシールリップ22が接続されている。
図2に、境界線L1を記載しているが、境界線L1より前側(下側)が型成形部側を示し、境界線L1より後側(上側)が押出成形部側を示す。
【0030】
ドリップウェザーストリップ1の押出成形部では、
図3に示すように、取付部11は、ドア開口縁DK1に沿って設けられ、断面形状で上方から下方に傾斜した基板11aと、基板11aの上端に接続されて斜め上側に延出する上板11bと、基板11aの下端に接続されて斜め上側に延出する下板11cと、上板11bの下側と下板11cの上側を接続するフタ11dから構成され、中央に中空部11eが形成されている。
メインシールリップ12は、取付部11の下板11cの上端に接続されるとともに、フロントドア101の閉時にはそのフロントドア101のアウターパネルDOの先端ヘム部DOHに弾接する。
背面シールリップ13は、取付部11の上板11bの上側に接続されるとともに、フロント固定ガラスモールFMのモール延出板FMbに弾接する。
第1ドリップ通路DT1は、押出成形部では、取付部11のフタ11dとメインシールリップ12との間に形成されている。
【0031】
ドリップウェザーストリップ1の押出成形部は、
図4に示すように、取付部11の基板11aに設けられた第1穴BH1に取付固定されたクリップC1を、ドア開口縁DK1に設けられた穴に嵌め込むことによって取付けられる。また、より詳細には、ドア開口縁DK1に設けられた穴は、車体Bのドア開口縁DK1のうち、フロントドア101のアウターパネルDOの先端ヘム部DOHの車内側面に相対向する平面に設けられており、ドリップウェザーストリップ1は、ドア開口縁DK1の、この相対向する平面に取り付けられる。
【0032】
まず、
図2,
図5に示すように、ドリップウェザーストリップ1の型成形部における、第1ドリップ通路DT1の上側部分は、クリップC2によって取付けられる部分となっている。型成形部ではあるものの、その断面形状は、
図4に示した押出断面形状とほぼ同一になるようにしている。そして、
図5に示すように、取付部21の第1基板21a1に設けられた第2穴BH2に取付固定されたクリップC2を、ドア開口縁DK1に設けられた穴に嵌め込むことによって、型成形部における、第1ドリップ通路DT1の上側部分は、ドア開口縁DK1の、この相対向する平面に取り付けられる。
次に、
図2,
図6に示すように、ドリップウェザーストリップ1の型成形部における、第1ドリップ通路DT1の中側部分は、クリップによって取付けられていない部分となっている。取付部21は、押出成形部の取付部11の上板11b,下板11c,フタ11dから連続して延びるように型成形された型部上板21b,型部下板21c,型部フタ21dからなる。
続いて、
図2,
図7に示すように、ドリップウェザーストリップ1の型成形部における、第1ドリップ通路DT1の下側部分は、クリップC3によって取付けられる部分となっている。型部上板21b及び型部下板21cに接続されるとともに、型部フタ21dとは離間して延びるように型成形された型部第2基板21a2が設けられ、型部第2中空部21e2が形成されている。そして、取付部21の第2基板21a2に設けられた第3穴BH3に取付固定されたクリップC3を、ドア開口縁DK1に設けられた穴に嵌め込むことによって型成形部における、第1ドリップ通路DT1の下側部分は、ドア開口縁DK1の、この相対向する平面に取り付けられる。
最後に、
図2及び後述する
図9に示すように、ドリップウェザーストリップ1の型成形部における、第1ドリップ通路DT1の最下端部分は、クリップによって取付けられていない部分となっている。
図2,
図6,
図7に示すように、メインシールリップ22は、押出成形部のメインシールリップ12から連続して延びるように型成形され、取付部21の下板21cの上端に接続されるとともに、フロントドア101の閉時にはそのフロントドア101のアウターパネルDOの先端ヘム部DOHに弾接する。
背面シールリップ23は、押出成形部の背面シールリップ13から連続して延びるように型成形され取付部21の上板21bの上側に接続されるとともに、フロント固定ガラスモールFMのモール延出板FMbに弾接する。
第1ドリップ通路DT1は、型成形部でも、取付部21のフタ21dとメインシールリップ22との間に形成され、押出成形部において取付部11のフタ11dとメインシールリップ12との間に形成された第1ドリップ通路DT1から連続して延びている。
【0033】
また、
図7に示すように、取付部21の下板21cの後端から後方に延出した延出板24が設けられ、延出板24の後端の上側面から斜め上方向に向けてサブシールリップ25が延設されている。サブシールリップ25は、フロントドア101閉時にはフロントドア101にメインシールリップ22とともに弾接する。より具体的には、サブシールリップ25はフロントドア101の先端ヘム部DOHよりも下方に位置するインナーパネルDIの突出段部DIDに弾接する。
このサブシールリップ25と延出板24との間に第3ドリップ通路DT3が形成されている。
【0034】
第1ドリップ通路DT1は、
図1及び
図2に示すように、ドア101閉時にドア101の後部の直上位置に相対向する位置PからドアヒンジH1の丁度直上位置Qまで延設されている。なお、ドアヒンジH1の直上位置Qのほんの少し手前まで延設されるようにしてもよい。
第1ドリップ通路DT1を構成する型成形部のメインシールリップ22は、ドアヒンジH1,H1の直上位置Qの手前から徐々に長さが短くされ、ドアヒンジH1の直上位置Qでは完全に消滅するようにされている。
これにより、
図9に示すように、フロントドア101の開時に、フロントドア101がメインシールリップ22に干渉することがないようにされている。
なお、本実施形態では、
図1,
図2に示すように、第1ドリップ通路DT1は、ドアヒンジH1の直上位置Qの手前まで延設され、ドアヒンジH1の直上位置Qには存在しないので、メインシールリップ22も存在しない。上述したように、仮に第1ドリップ通路DT1がドアヒンジH1の丁度直上位置Qまで延設された場合にはメインシールリップ22は、
ドアヒンジH1の直上位置Qの手前から徐々に長さが短くされ、ドアヒンジH1の直上位置Qでは完全に消滅するようにされる。
【0035】
第2ドリップ通路DT2は、
図1,
図2及び
図8に示すように、第1ドリップ通路DT1を構成する取付部21よりも低位置に設けられた延長基部31aと、延長基部31aの下側部分から上方向に向けて延設された延長サブリップ32との間に形成され、第1ドリップ通路DT1の前端DT1Eの下方位置からドアヒンジH1の直上位置Qよりも前方位置まで延設されている。
第2ドリップ通路DT2の後端部は、第1ドリップ通路DT1を構成する取付部21のフタ21dの下端部に接続され、そこから屈曲して前側に延び、第1ドリップ通路DT1の前端DT1Eから落下する水W1を確実に受けるようになっている。
第2ドリップ通路DT2で受けた水W1は、第2ドリップ通路DT2を下降して前方位置から落水W2するようになっている。第2ドリップ通路DT2の前方位置の断面形状は、
図8に示すようになっている。
【0036】
第3ドリップ通路DT3は、
図1,
図2,
図7,
図9に示すように、前記第2ドリップ通路DT2の後端位置からドアヒンジH1の直上位置Qよりも後方位置まで延設され、第1ドリップ通路DT1から落下する水W1のうち、第2ドリップ通路DT2で受水できず後側に漏れた水や散った水W3を受水して第2ドリップ通路DT2に流すようになっている。
【0037】
第3ドリップ通路DT3のサブシールリップ25と、第2ドリップ通路DT2の延長サブリップ32は、
図2に示すように、一連一体的に接続され、第3ドリップ通路DT3の延出板24と、第2ドリップ通路DT2の延長基板31aも、一連一体的に接続されている。
【0038】
また、
図1に示すように、第2ドリップ通路DT2の、自動車100の設置水平面SMとの成す傾斜角度θ2は、第1ドリップ通路DT1の、前端DT1Eまで延設される部分の、自動車100の設置水平面SMとの成す傾斜角度θ1よりも小さくなるようにされている。
これによれば、第2ドリップ通路DT2にてヒンジH1に水がかかることを防止することができる。言い換えると、第1ドリップ通路DT1の傾斜角度θ1を維持したままでは、ヒンジH1よりも前方まで水を導水するのに必要な距離が長くなる。その反面、第2ドリップ通路DT2で傾斜角度θ1よりも小さい傾斜角度θ2とすることで、ヒンジH1よりも前方まで水を導水するのに必要な距離が短くて済むためである。
【0039】
さらに、第3ドリップ通路DT3の、自動車100の設置水平面SMとの成す傾斜角度θ3は、第1ドリップ通路DT1の、前端DT1Eまで延設される部分の、自動車100の設置水平面SMとの成す傾斜角度θ1よりも大きくなるようにされている。
これによれば、第3ドリップ通路DT3の傾斜角度θ3が、第1ドリップ通路DT1の傾斜角度θ1と同等あるいはそれより小さい場合と比較して、第1ドリップ通路DT1から漏れた水を広い範囲で受水することができる。
【0040】
このように構成されたドリップウェザーストリップ1によれば、第1ドリップ通路DT1,第2ドリップ通路DT2,第3ドリップ通路DT3からなるもので、第1ドリップ通路DT1は、フロントドア101の後部の直上位置に相対向する位置PからドアヒンジH1の直上位置Qの手前まで延設され、第2ドリップ通路DT2は、第1ドリップ通路DTの前端DT1Eの下方位置からドアヒンジH1の直上位置Qよりも前方位置まで延びるように設けられているので、第1ドリップ通路DT1の前端から落下する水W1を第2ドリップ通路DT2で受水し、第2ドリップ通路DT2を介してドアヒンジH1の直上位置Qよりも前方位置で落水W2させるものであるので、ドアヒンジH1への被水量を少なくすることができ、ドアヒンジH1を錆びにくくすることができる。
【0041】
また、第3ドリップ通路DT3は、第2ドリップ通路DT2の後端位置DT2EからドアヒンジH1の直上位置Qよりも後方位置まで延びるように設けられているので、第1ドリップ通路DT1から落下する水のうち、第2ドリップ通路DT2で受水できなかった水W3を受水して第2ドリップ通路DT2に流すことができ、ドアヒンジH1に対する被水量を一層低減することができる。
【0042】
また、ドリップウェザーストリップ1の適用可能な材料としては、押出成形部および型成型部の両方において、ゴム様弾性体であれば、特に限定されないが、ゴムの場合はEPDMスポンジゴムが、熱可塑性樹脂の場合は発泡TPOまたは軟質TPOが好ましい。
【0043】
なお、本実施形態では、ドリップウェザーストリップ1を自動車100の車体Bに対してクリップC1,C2,C3で固定するようにしたが、これにかえて両面テープを使用して固定することもできる。この場合、クリップC1,C2,C3の頭部を納める中空部11e,21eを設ける必要はなくなり、取付部11,21の断面形状を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ドリップウェザーストリップ
11 取付部
11a 基板
11b 上板
11c 下板
11d フタ
11e 中空部
12 メインシールリップ
13 背面シールリップ
21 型部の取付部
21a 基板
21a1 第1基板
21a2 第2基板
21b 上板
21c 下板
21d フタ
21e 中空部
21e1 第1中空部
21e2 第2中空部
22 型部のメインシールリップ
23 型部の背面シールリップ
24 延出板
25 サブシールリップ
31a 延長基部31a
32 延長サブリップ
100 自動車
101 ドア(フロントドア)
200 自動車
201 ドア
300 ドリップウェザーストリップ
301 取付基部
302 シール部
303 ドリップリップ
304 第1ドリップ通路
305 第2ドリップ通路
306 連通部
307 シールリップ
307a 先端部
B 車体(ボディ)
BH1 第1穴
BH2 第2穴
BH3 第3穴
C1,C2,C3 クリップ
DK1 ドア開口縁
DI インナーパネル
DID 突出段部
DO アウターパネル
DOH 先端ヘム部
DT1 第1ドリップ通路
DT1E 第1ドリップ通路の前端
DT2 第2ドリップ通路
DT2E 第2ドリップ通路の後端
DT3 第3ドリップ通路
FG フロント固定ガラス
FM フロント固定ガラスモール
FMa モール取付部
FMb モール延出板
H1 ヒンジ
L1 境界線
P ドア後部の直上位置
Q ドアヒンジの直上位置
SM 設置水平面
W1,W2,W3 水
θ1,θ2,θ3 角度