(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155472
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】分析方法及び分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/40 20060101AFI20251002BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20251002BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20251002BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20251002BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20251002BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20251002BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20251002BHJP
G01N 31/00 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
G01N1/40
B01D61/00 500
B01D71/56
B01D61/02 500
B01D69/10
B01D69/12
G01N1/10 B
G01N31/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024081136
(22)【出願日】2024-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2024054093
(32)【優先日】2024-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505089614
【氏名又は名称】国立大学法人福島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【弁理士】
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】大崎 剛裕
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄治
(72)【発明者】
【氏名】美河 正人
(72)【発明者】
【氏名】高貝 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】丹治 珠緒
(72)【発明者】
【氏名】司 朝陽
【テーマコード(参考)】
2G042
2G052
4D006
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BB20
2G042CB03
2G042EA08
2G052AA38
2G052AA39
2G052AB01
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052EA02
2G052ED01
2G052HB07
2G052JA07
2G052JA09
4D006GA03
4D006GA14
4D006KA03
4D006KB30
4D006MA01
4D006MA09
4D006MA33
4D006MC29
4D006MC39
4D006MC46
4D006MC47
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4D006MC57
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4D006MC62
4D006MC63
4D006NA41
4D006PA02
4D006PC36
4D006PC38
(57)【要約】
【課題】分析対象物質が小サイズの化学種を低濃度で含む原溶液でも、分析対象物質の分析を効率よく行う方法を提供すること。
【解決手段】分析対象物質及び標準物質を含む原溶液中の分析対象物質の濃度を推定する分析方法であって、原溶液を濃縮して濃縮溶液を得る濃縮工程、及び濃縮溶液中の分析対象物質及び標準物質の濃度を測定する濃度測定工程を含み、濃縮工程は、分析対象物質と標準物質とは同種の化学種であり、標準物質は、分析対象物質中の元素E
Aの同位元素E
Sを含み、濃縮溶液中の分析対象物質の濃度C
A,1、原溶液中の標準物質の濃度C
S,0、濃縮溶液中の標準物質の濃度C
S,1、濃縮工程における原溶液の濃縮倍率X、及び下記数式(1)による標準物質の回収率Rを用いて、下記数式(2)によって原溶液中の分析対象物質の濃度C
A,0を推定する、分析方法。
R=C
S,1/(X×C
S,0) (1)
C
A,0=C
A,1/(X×R) (2)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象物質、標準物質、及び溶媒を含む原溶液中の前記分析対象物質の濃度を推定するための分析方法であって、
前記分析方法は、前記原溶液を濃縮して濃縮溶液を得る濃縮工程、及び前記濃縮溶液中の前記分析対象物質及び前記標準物質の濃度を測定する濃度測定工程を含み、
前記濃縮工程は、正浸透法又は逆浸透法によって行われ、
前記分析対象物質と前記標準物質とは同種の化学種であり、かつ、前記標準物質は、前記分析対象物質中の元素EAの同位元素ESを含み、
前記濃縮溶液中の前記分析対象物質の濃度の測定値CA,1、前記原溶液中の前記標準物質の濃度CS,0、前記濃縮溶液中の前記標準物質の濃度の測定値CS,1、前記濃縮工程における前記原溶液の濃縮倍率X、及び下記数式(1)によって計算される前記濃縮工程における前記標準物質の回収率Rを用いて、下記数式(2)によって前記原溶液中の前記分析対象物質の濃度CA,0を推定する、
分析方法。
R=CS,1/(X×CS,0) (1)
CA,0=CA,1/(X×R) (2)
【請求項2】
前記濃縮工程の前に、分析対象物質及び溶媒を含む分析対象溶液に前記標準物質を添加して前記原溶液を調製する添加工程を更に含む、請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
前記標準物質中の前記同位元素ESが放射性同位元素であり、
前記添加工程の前に、前記分析対象溶液を保管する保管工程を含み、
前記保管工程の期間が、前記同位元素ESの半減期の10倍以上である、
請求項2に記載の分析方法。
【請求項4】
前記分析対象物質中の前記元素EAが放射性同位元素である、請求項3に記載の分析方法。
【請求項5】
前記元素EAの半減期が、前記標準物質中の前記同位元素ESの半減期よりも長い、請求項4に記載の分析方法。
【請求項6】
前記分析対象物質中の前記元素EAの半減期が、前記標準物質中の前記同位元素ESの半減期の10倍以上である、請求項5に記載の分析方法。
【請求項7】
前記分析対象物質中の元素EAの半減期が100日以上である、請求項6に記載の分析方法。
【請求項8】
前記同位元素ESの半減期が、1日以上100日未満である、請求項7に記載の分析方法。
【請求項9】
前記同位元素ESの半減期が、1日以上100日未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項10】
前記濃縮工程が正浸透膜を用いる正浸透法によって行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項11】
前記正浸透膜が、支持層と、前記支持層上に設けられた分離活性層とを備える複合半透膜であって、前記分離活性層がポリアミドを含む、請求項10に記載の分析方法。
【請求項12】
前記濃度測定工程における前記分析対象物質及び前記標準物質の濃度の測定が、クロマトグラフィー、電磁波分析、質量分析、イオン分析、放射能分析、電気化学分析、熱分析、及びX線分析から成る群から選ばれる1種又は2種以上によって行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象物質を含む原溶液を濃縮した後に分析対象物質の濃度を測定することを含む、分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川水、海水、雨水等の環境中に存在する微量物質の測定;工場等で使用される水の水質管理;血液、尿等の生体試料の臨床検査等において、種々の分析が行われている。これらの分析に際して、分析対象物質の検出感度を確保するために、分析に供される試料について、分離精製、濃縮等の前処理が行われることが多い。
このような前処理として、例えば、固相抽出法、沈殿法、膜分離法等が知られている。
【0003】
これらのうち、固相抽出法及び沈殿法によると、原溶液中の分析対象物質の分離及び濃縮は可能であるが、再現性に問題があり、分析対象物質の回収率にばらつきが生じる傾向にある。
膜分離法としては、例えば、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜、正浸透膜等を用いる方法が知られている。
【0004】
限外ろ過膜及びナノろ過膜では、分画分子量を基準とする篩い分けによって分離又は濃縮を行う。この分画分子量は、一般的には数百から数千のオーダーであるため、限外ろ過膜又はナノろ過膜を用いて、小サイズの化学種、例えば、元素単体、イオン等を分離又は濃縮することは困難である。
【0005】
逆浸透膜及び正浸透膜は、それぞれ、水のみを通過させる性質を有する。
逆浸透法では、逆浸透膜の片側に配置した原溶液に高圧をかけて、原溶液中の水のみが逆浸透膜を通過することにより、原溶液の濃縮を行う。正浸透法では、正浸透膜を介して配置した原溶液と誘導液との浸透圧差を駆動力として、原溶液中の水のみが誘導液に移動することにより、原溶液の濃縮を行う。
したがって、正浸透法及び逆浸透法によると、小サイズの化学種の分離又は濃縮が可能である。
例えば、特許文献1には、検水を逆浸透法により濃縮した後に、検水中の金属イオン濃度を分析する方法が開示されている。特許文献2には、検水を正浸透法により濃縮した後に、検水中の金属イオン濃度を分析する方法が開示されている。また、特許文献3には、定量下限に至らない濃度の分析対象物質を含む原料液を、正浸透法により濃縮して定量可能にする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-156692号公報
【特許文献2】特開2009-092564号公報
【特許文献3】国際公開第2023/033069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
原溶液中に含まれる分析対象物質の濃度が希薄な場合、分析対象物質の濃度の測定に先立って、原溶液の濃縮操作を行う必要がある。このとき、濃縮された原溶液である濃縮溶液中に、原溶液に含まれていた分析対象物質の全量が維持されているとは限らない。分析対象物質は、濃縮操作中に、例えば散逸し、例えば分解して、一部が失われることが多い。
【0008】
ここで、濃縮前の原溶液に含まれていた分析対象物質の重量に対する、濃縮溶液中に含まれる分析対象物質の重量の割合を、本明細書では「回収率」として参照する。
希薄溶液を濃縮して濃縮溶液を得て、濃縮溶液中の分析対象物質の濃度を測定することにより、原溶液中に含まれていた分析対象物質の濃度を推定するためには、濃縮操作における分析対象物質の「回収率」を見積もることが必要である。
【0009】
分析対象物質の回収率を見積もるには、例えば、原溶液に濃度既知の内部標準物質を添加して、濃縮後の濃縮溶液について、分析対象物質の濃度とともに内部標準物質の濃度を合わせて測定し、この内部標準物質の回収率をもって、分析対象物質の回収率とすることが考えられる。しかしながら、内部標準物質としては、濃度測定において分析対象物質と区別が可能な別の化学種を用いることが一般的であるため、内部標準物質の回収率が分析対象物質の回収率と一致するとは限らない。
分析対象物質の回収率を見積もる別法として、分析対象物質と同種の化学種を含む濃度既知の標準溶液を調製し、この標準溶液について濃縮操作を行った後の溶液濃度を測定して、回収率を求める方法が考えられる。この方法は、分析対象物質の回収率としては正確な値が得られる利点はあるが、操作に手間がかかるとの難点がある。
【0010】
本発明は、分析対象物質が小サイズの化学種であり、これを低濃度で含む原溶液の場合でも、分析対象物質の濃縮及び分析を効率よく行う方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する本発明は、以下のとおりである。
【0012】
《態様1》分析対象物質、標準物質、及び溶媒を含む原溶液中の前記分析対象物質の濃度を推定するための分析方法であって、
前記分析方法は、前記原溶液を濃縮して濃縮溶液を得る濃縮工程、及び前記濃縮溶液中の前記分析対象物質及び前記標準物質の濃度を測定する濃度測定工程を含み、
前記濃縮工程は、正浸透法又は逆浸透法によって行われ、
前記分析対象物質と前記標準物質とは同種の化学種であり、かつ、前記標準物質は、前記分析対象物質中の元素EAの同位元素ESを含み、
前記濃縮溶液中の前記分析対象物質の濃度の測定値CA,1、前記原溶液中の前記標準物質の濃度CS,0、前記濃縮溶液中の前記標準物質の濃度の測定値CS,1、前記濃縮工程における前記原溶液の濃縮倍率X、及び下記数式(1)によって計算される前記濃縮工程における前記標準物質の回収率Rを用いて、下記数式(2)によって前記原溶液中の前記分析対象物質の濃度CA,0を推定する、
分析方法。
R=CS,1/(X×CS,0) (1)
CA,0=CA,1/(X×R) (2)
《態様2》前記濃縮工程の前に、分析対象物質及び溶媒を含む分析対象溶液に前記標準物質を添加して前記原溶液を調製する添加工程を更に含む、態様1に記載の分析方法。
《態様3》前記標準物質中の前記同位元素ESが放射性同位元素であり、
前記添加工程の前に、前記分析対象溶液を保管する保管工程を含み、
前記保管工程の期間が、前記同位元素ESの半減期の10倍以上である、
態様2に記載の分析方法。
《態様4》前記分析対象物質中の前記元素EAが放射性同位元素である、態様3に記載の分析方法。
《態様5》前記元素EAの半減期が、前記標準物質中の前記同位元素ESの半減期よりも長い、態様4に記載の分析方法。
《態様6》前記分析対象物質中の前記元素EAの半減期が、前記標準物質中の前記同位元素ESの半減期の10倍以上である、態様5に記載の分析方法。
《態様7》記分析対象物質中の元素EAの半減期が100日以上である、態様6に記載の分析方法。
《態様8》前記同位元素ESの半減期が、1日以上100日未満である、態様7に記載の分析方法。
《態様9》前記同位元素ESの半減期が、1日以上100日未満である、態様1~6のいずれか一項に記載の分析方法。
《態様10》前記濃縮工程が正浸透膜を用いる正浸透法によって行われる、態様1~8のいずれか一項に記載の分析方法。
《態様11》前記正浸透膜が、支持層と、前記支持層上に設けられた分離活性層とを備える複合半透膜であって、前記分離活性層がポリアミドを含む、態様10に記載の分析方法。
《態様12》前記濃度測定工程における前記分析対象物質及び前記標準物質の濃度の測定が、クロマトグラフィー、電磁波分析、質量分析、イオン分析、放射能分析、電気化学分析、熱分析、及びX線分析から成る群から選ばれる1種又は2種以上によって行われる、態様1~7のいずれか一項に記載の分析方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、分析対象物質が小サイズの化学種であり、これを低濃度で含む原溶液の場合でも、分析対象物質の濃縮及び分析を効率よく行う方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、KI水溶液の濃縮における、I
-イオンの濃縮倍率と原溶液の重量基準の濃縮倍率との関係を示すグラフである。
【
図2】
図2は、KI水溶液の濃縮における、K
+イオンの濃縮倍率と原溶液の重量基準の濃縮倍率との関係を示すグラフである。
【
図3】
図3は、KI水溶液の濃縮における、I
-イオンの濃縮倍率と原溶液の体積基準の濃縮倍率との関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、KI水溶液の濃縮における、K
+イオンの濃縮倍率と原溶液の体積基準の濃縮倍率との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、KNO
3存在下のNaI水溶液の濃縮における、I
-イオンの濃縮倍率と原溶液の重量基準の濃縮倍率との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、KNO
3存在下のNaI水溶液の濃縮における、Na
+イオンの濃縮倍率と原溶液の重量基準の濃縮倍率との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、pH2.0条件下のNaI水溶液の濃縮における、I
-イオンの濃縮倍率と原溶液の重量基準の濃縮倍率との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、pH2.0条件下のNaI水溶液の濃縮における、Na
+イオンの濃縮倍率と原溶液の重量基準の濃縮倍率との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、I
-イオンを含む水溶液の正浸透膜濃縮における対イオンの影響を示すグラフである。
【
図10】
図10は、131Iを含む蒸留水溶液及び雨水溶液の正浸透膜濃縮における131Iの濃縮倍率と原溶液の重量基準の濃縮倍率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の分析方法は、
分析対象物質、標準物質、及び溶媒を含む原溶液中の前記分析対象物質の濃度を推定するための分析方法であって、
前記分析方法は、前記原溶液を濃縮して濃縮溶液を得る濃縮工程、及び前記濃縮溶液中の前記分析対象物質及び前記標準物質の濃度を測定する濃度測定工程を含み、
前記濃縮工程は、正浸透法又は逆浸透法によって行われ、
前記分析対象物質と前記標準物質とは同種の化学種であり、かつ、前記標準物質は、前記分析対象物質中の元素EAの同位元素ESを含み、
前記濃縮溶液中の前記分析対象物質の濃度の測定値CA,1、前記原溶液中の前記標準物質の濃度CS,0、前記濃縮溶液中の前記標準物質の濃度の測定値CS,1、前記濃縮工程における前記原溶液の濃縮倍率X、及び下記数式(1)によって計算される前記濃縮工程における前記標準物質の回収率Rを用いて、下記数式(2)によって前記原溶液中の前記分析対象物質の濃度CA,0を推定する、
分析方法である。
R=CS,1/(X×CS,0) (1)
CA,0=CA,1/(X×R) (2)
【0016】
本発明の分析方法は、
分析対象物質及び溶媒を含む分析対象溶液に、標準物質を添加して前記原溶液を調製する添加工程を更に含んでいてよく、
添加工程の前に、分析対象溶液を保管する保管工程を含んでいてよい。
【0017】
本発明の方法では、標準物質として、分析対象物質と同種の化学種であって、分析対象物質中の元素EAの同位元素ESを含むものを用いる。
本発明の方法における標準物質は、分析対象物質と同種の化学種であるため、その回収率は、分析対象物質の回収率と一致すると考えてよい。また、この標準物質は、同位元素ESの存在によって分析対象物質と区別することができる。したがって、本発明における標準物質は、内部標準物質として適用することができる。
そのため、本発明では、濃縮及び濃度測定に先立って、分析対象物質の回収率を求める手間を要さずに、分析対象物質の正確な回収率を見積もることができるから、原溶液中の分析対象物質の濃度を効率よく正確に分析できる。
【0018】
《原溶液》
本発明の分析方法に供される原溶液は、分析対象物質、標準物質、及び溶媒を含む。
先ず、原溶液中に含まれる分析対象物質及び標準物質について説明する。
【0019】
《分析対象物質及び標準物質》
本発明における原溶液中に含まれる分析対象物質及び標準物質は、同種の化学種である。
また、標準物質は、分析対象物質中の元素EAの同位元素ESを含む。
すなわち、本発明における標準物質は、分析対象物質中のある元素EAと、陽子数が同じで中性子数が異なる元素ESを含み、かつ分析対象物質と同種の化学種である。
標準物質中の同位元素ESは、放射性同位元素であってよい。
また、分析対象物質中の元素EAは、放射性同位元素であってよい。
【0020】
標準物質中の元素ES、及び分析対象物質中の元素EAは、ともに放射性同位元素であってよい。この場合、分析対象物質中の元素EAの半減期は、標準物質中の同位元素ESの半減期よりも長いことが好ましい。
分析対象物質中の元素EAの半減期は、標準物質中の同位元素ESの半減期の10倍以上、15倍以上、20倍以上、50倍以上、100倍以上、500倍以上、1,000倍以上、5,000倍以上、10,000倍以上、又は50,000倍以上であってよい。
分析対象物質中の元素EAの半減期が標準物質中の同位元素ESの半減期の10倍以上であれば、原溶液中に同位元素ESが含まれていたとしても、原溶液を分析前に所定の期間保管する保管工程(後述)を経由させれば、原溶液中の同位元素ESの濃度は極めて少なくなる。したがって、この態様では、同位元素ESを含む標準物質を用いる分析対象物質の回収率見積もりの正確性が担保され得る。
【0021】
上述の趣旨から、標準物質中の同位元素ESの半減期は比較的短い方がよいが、取り扱い易さの観点からは、一定の長さを有していることが好ましい。
これらの観点から、標準物質中の同位元素ESの半減期は、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、又は5日以上であってよく、100日未満、75日以下、50日以下、30日以下、20日以下、15日以下、又は10日以下であってよい。
標準物質中の同位元素ESの半減期は、典型的には、1日以上100日未満であってよい。
【0022】
一方、分析対象物質中の元素EAの半減期は、後述の保管工程を経由した後でも、実質的に濃度が減少しない程度に長いことが好ましい。
この観点から、分析対象物質中の元素EAの半減期は、例えば、100日以上、1年以上、5年以上、10年以上、50年以上、100年以上、500年以上、1,000年以上、又は1,500年以上であってよい。
【0023】
半減期が100日以上である元素E
Aと、半減期が日以上100日未満である同位元素E
Sとの組み合わせの例として、例えば下記表に記載の組合せが挙げられる。
【表1】
【0024】
分析対象物質中の元素EA、及び標準物質中の同位元素ESは、それぞれ1種類であってもよいし、それぞれ2種類以上であってもよい。具体的には、例えば、
分析対象物質が元素EAとしてヨウ素129を含み、標準物質が同位元素ESとしてヨウ素131を含んでいてもよいし、
分析対象物質が第1の元素EAとしてのヨウ素129と第2の元素EAとしてのストロンチウム90とを含み、標準物質が第1の同位元素ESとしてのヨウ素131と第2の同位元素ESとしてのストロンチウム82とを含んでいてもよい。
【0025】
分析対象物質及び標準物質は、両者が同じ化学種である限り、任意の化学種であってよい。
ここでいう化学種は、例えば、単原子、単原子イオン(溶媒和したイオン及び錯イオンを含む)、元素単体、同種の元素のみから成るイオン(溶媒和したイオンを含む)、複数種の元素を含むイオン(溶媒和したイオン及び錯イオンを含む)、分子、包接化合物等であってよい。
【0026】
〈分析対象物質及び標準物質の濃度〉
原溶液中の分析対象物質の濃度は、濃縮工程を経由しないと、予定されている濃度測定の検出限界以下であるか、又は測定値の信頼性が低いと考えられる程度に希薄であってよい。
このような観点から、原溶液中の分析対象物質の濃度は、例えば、0.01nmol/L(0.00001μmol/L)以上10μmol/L以下であってよく、0.001μmol/L以上1μmol/L以下であってもよい。
【0027】
原溶液中の標準物質の濃度は、分析対象物質の濃度と同程度であってよいが、濃縮工程後に予定されている濃度測定において、信頼性の高い測定値を得られる限りで、過度に高濃度である必要はない。
このような観点から、原溶液中の標準物質の濃度は、例えば、0.01nmol/L(0.00001μmol/L)以上10μmol/L以下であってよく、0.001μmol/L以上1μmol/L以下であってもよい。
【0028】
〈その他の成分〉
本発明における原溶液は、分析対象物質、標準物質、及び溶媒を含む。
原溶液は、分析対象物質、標準物質、及び溶媒以外のその他の成分を含んでいてよい。
原溶液に含まれるその他の成分は、例えば、各種の化合物、塩、微生物、生体中の成分(赤血球、白血球、抗体等)等であってよい。
【0029】
〈溶媒〉
本発明における原溶液の溶媒は、水及び有機溶媒から選択される1種又は2種以上を含んでいてよい。
原溶液の溶媒は、水であるか、又は水と水溶性有機溶媒との混合物であってよく、典型的には水である。
【0030】
《保管工程》
本発明の分析方法は、濃縮工程及び濃度測定工程を含むものであるが、
分析対象物質及び溶媒を含む分析対象溶液に、標準物質を添加して前記原溶液を調製する添加工程を更に含んでいてよく、
添加工程の前に、分析対象溶液を保管する保管工程を含んでいてよい。
以下、保管工程、添加工程、濃縮工程、及び濃度測定工程の順に説明する。
【0031】
保管工程は、標準物質中の同位元素ESが放射性同位元素である場合に、好ましく行われる。
この保管工程は、分析対象溶液を所定の期間保管することによって行われてよい。保管の態様は、分析対象溶液の性状に応じて当業者によって適宜に定められてよく、例えば、静置、撹拌下、振盪下等の保管であってよい。保管の温度も、分析対象溶液の性状に応じて当業者によって適宜に定められてよい。
分析対象溶液は、例えば、河川水、海水、雨水等の環境から採取した試料;工場等で使用される水;工場の排水;生体試料等であってよく、したがって、分析対象物質及び溶媒以外の成分を含んでいてよい。
【0032】
保管工程は、分析対象溶液中に同位元素ESが含まれていた場合に、分析対象溶液中における同位元素ESの濃度を少なくして、同位元素ESを含む標準物質の使用による分析対象物質の回収率の推定を正確にすることを目的として行われる。
保管工程の期間は、同位元素ESの半減期の10倍以上とすることが好ましい。
分析対象溶液を、同位元素ESの半減期の10倍保管した場合、分析対象溶液中の同位元素ESの濃度は、初期濃度の1/2の10乗倍、すなわち初期濃度の0.1%程度に減少させることができる。分析対象溶液中の同位元素ESの濃度がこの程度に低くなれば、分析対象溶液中の同位元素ESの影響が実質的になくなるので、標準物質の使用による分析対象物質の回収率の推定の正確性が担保される。
保管工程の期間は、過度に長くする必要はなく、例えば、同位元素ESの半減期の、50倍以下、20倍以下、又は15倍以下であってよい。
【0033】
《添加工程》
上記の保管工程の後、かつ、後述の濃縮工程の前に、分析対象物質及び溶媒を含む分析対象溶液に標準物質を添加する添加工程が行われてよい。
分析対象溶液に添加される標準物質の量は、添加後の分液溶液中の標準物質の濃度が既知であり、濃縮工程後の濃度測定工程において、信頼性の高い測定値を得ることができる量とすることが望まれる。
添加後の分液溶液中の標準物質の濃度の指針については上述した。
【0034】
《濃縮工程》
本発明の分析方法における濃縮工程では、原溶液を濃縮して濃縮溶液を得る。
この濃縮工程は、正浸透法又は逆浸透法によって行われる。
正浸透法及び逆浸透法は、原溶液の加熱を要さずに、小サイズの化学種(例えば、元素単体、イオン等)の分離又は濃縮が可能である。
これらのうち、逆浸透法は、原溶液を加圧することを要するため、そのための装置が必要となる。
これに対して、正浸透法は、送液のための加圧を除いて、原溶液を加圧する必要がないため、不安定な分析対象物質への適用が可能であること、全体のシステムを小型化できる利点があること、等の観点から、好ましい。
したがって、本発明の分析方法における濃縮工程は、正浸透膜を用いる正浸透法によって行われることが好ましい。
【0035】
〈正浸透膜〉
正浸透膜は、支持層と、支持層上に設けられた分離活性層とを備える複合半透膜であってよい。
正浸透膜は、モジュール化して正浸透膜モジュールの形態で使用することが好ましい。正浸透膜の形状は、正浸透膜モジュールのモジュール当たりの膜面積を大きくできることから、中空糸状であることが好ましい。
したがって、本発明の濃縮工程に用いられる正浸透膜は、中空糸状の支持層と、この支持層の片面又は両面上に設けられた分離活性層とを備える、中空糸状の複合半透膜であることが好ましい。
【0036】
(支持層)
正浸透膜の支持層は、分離活性層を支持するための膜である。
支持層自体は、実質的に分離性能を示さないことが好ましい。
支持層は、その表面に、孔径が好ましくは0.001μm以上0.1μm以下、より好ましくは0.005μm以上0.05μm以下の微細孔が開孔していることが好ましい。
支持層の表面以外の構造については、透過流体の透過抵抗を小さくするために、強度を保っていれば、できるだけ疎な構造であることが好ましい。この部分の疎な構造は、例えば、網状、指状ボイドを有する構造等、及びこれらの混合構造等が好ましい。
【0037】
支持層の素材は、分離活性層形成の際のモノマー溶液、原溶液、後述の誘導液等によって化学的な損傷を受けず、かつ、微細孔性の中空糸状に成形可能である材料が好適である。
このような観点から、支持層の素材は、例えば、
ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリイミン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、及びポリアミドから選ばれる1種又は2種以上を主成分とするものが好ましく、
ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリケトン、及びポリベンゾイミダゾールから選ばれる1種又は2種以上を主成分とするものがより好ましく、
ポリスルホン及びポリエーテルスルホンから選ばれる1種又は2種以上を主成分とするものが更に好ましく、
ポリスルホンが特に好ましい。
上記において「主成分」とは、支持層の全体に占める重量比率が最も多い成分を意味し、一態様においては、全体に占める重量比率が50重量%超である成分である。
【0038】
支持層が中空糸状である場合、中空糸の径は特に限定されない。
しかしながら、成膜安定性、ハンドリングのし易さ、モジュールにしたときの膜面積を高くすること等を考慮すると、外径が100μm~3,000μmであって内径が30μm~2,500μmの範囲のものが好ましく、外径が200μm~1,500μmであって内径が50μm~1,000μmの範囲のものがより好ましい。
【0039】
このような支持層は、例えば、公知の乾湿式製膜法、溶融製膜法、湿式製膜法等により製造されてよい。
【0040】
〈分離活性層〉
本発明における正浸透膜の分離活性層は、ポリアミドを含む。
分離活性層は、支持層の片面又は両面上に設けられていてよい。正浸透膜が中空糸状である場合、分離活性層の物理的な損傷を回避するため、分離活性層は中空糸状の支持層の内表面上に設けられていてよい。
本発明における正浸透膜の分離活性層の厚みは、ピンホールがなければ薄いほどよいが、機械的強度及び耐薬品性を維持するためには適当な厚みを有することが望ましい。このような観点から、分離活性層の厚みは、0.1μm~3μmであることが好ましく、0.2μm~2μmであることがより好ましい。
【0041】
分離活性層は、ポリアミドから構成されることが好ましい。
ポリアミドから構成される分離活性層は、多官能アミンから成る群から選択される1種又は2種以上の第1モノマーと、多官能酸ハライドから成る群より選択される1種又は2種以上の第2モノマーと、の重縮合生成物から成ることが好ましい。
【0042】
多官能アミンとしては、多官能性芳香族アミン、多官能性脂肪族アミン、複数の反応性アミノ基を有するモノマー等、及びこれらのプレポリマーを挙げることができる。
【0043】
多官能性芳香族アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する芳香族アミノ化合物であり、具体的には、例えば、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミ
ン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、3,
3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’
-ジアミノジフェニルアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4-ジアミノジフェニルスルホン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン等を挙げることができ、これらの単独又は混合物を用いることができる。特にm-フェニレンジアミン及びp-フェニレンジアミンから選ばれる1種又は2種が好適に用いられる。
【0044】
多官能性脂肪族アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する脂肪族アミノ化合物であり、具体的には、例えば、
1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-ビス(パラアミノシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス-(アミノメチル)シクロヘキサン、2,4-ビス-(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3,5-トリアミノシクロヘキサン等の、シクロヘキサン環を持つ第1級アミン;
ピペラジン、2-メチルピペラジン、エチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン等の、ピペラジン環を持つ第2級アミン;
1,3-ビス(4-ピペリジル)メタン、1,3-ビス(4-ピペリジル)プロパン、4,4’-ビピペリジン等の、ピペリジン環を持つ第2級アミン;
4-(アミノメチル)ピペリジン等の、第1級及び第2級の両方のアミノ基を持つアミン:
等の他、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、2,2’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルプロパンジアミン等を挙げることができ、これらの単独又は混合物を用いることが可能である。これら多官能性脂肪族アミンと、上記の多官能性芳香族アミンとの混合物も用いてもよい。
【0045】
複数の反応性アミノ基を有するモノマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、アミン変性ポリエピクロロヒドリン、アミノ化ポリスチレン等を挙げることができる。
プレポリマーとしては、例えば、ピペラジン、4-(アミノメチル)ピペリジン、エチレンジアミン、及び1,2-ジアミノ-2-メチルプロパンから選ばれる1種又は2種以上から成るプレポリマーが好適に用いられる。
【0046】
多官能酸ハライドとしては、例えば、多官能性芳香族酸ハライド、多官能性脂肪族酸ハライド等を挙げることができる。これらは、多官能性アミンと反応して重合体を形成し得るように、2官能以上であればよい。
【0047】
多官能性芳香族酸ハライドとは、一分子中に2個以上の酸ハライド基を有する芳香族酸ハライド化合物である。具体的には、例えば、トリメシン酸ハライド、トリメリット酸ハライド、イソフタル酸ハライド、テレフタル酸ハライド、ピロメリット酸ハライド、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ハライド、ビフェニルジカルボン酸ハライド、ナフタレンジカルボン酸ハライド、ピリジンジカルボン酸ハライド、ベンゼンジスルホン酸ハライド等を挙げることができ、これらの単独または混合物を用いることができる。特にトリメシン酸クロリド単独、又はトリメシン酸クロリドとイソフタル酸クロリドとの混合物、若しくはトリメシン酸クロリドとテレフタル酸クロリドとの混合物が好ましく用いられる。
【0048】
多官能性脂肪族酸ハライドとは、一分子中に2個以上の酸ハライド基を有する脂肪族酸ハライド化合物である。具体的には、例えば、シクロブタンジカルボン酸ハライド、シクロペンタンジカルボン酸ハライド、シクロペンタントリカルボン酸ハライド、シクロペンタンテトラカルボン酸ハライド、シクロヘキサンジカルボン酸ハライド、シクロヘキサントリカルボン酸ハライド等の脂環式多官能性酸ハライド化合物;等の他、プロパントリカルボン酸ハライド、ブタントリカルボン酸ハライド、ペンタントリカルボン酸ハライド、こはく酸ハライド、グルタル酸ハライド等を挙げることができる。これらは、単独又は混合物として用いることが可能であり、これら多官能性脂肪族酸ハライドと、上記の多官能性芳香族酸ハライドとの混合物を用いてもよい。
【0049】
上記のような第1モノマー及び第2モノマーは、それぞれ、これらを適当な溶媒に溶解した溶液として界面重合に供されてよい。
第1モノマーの溶媒としては、例えば、水若しくはアルコール、又はこれらの混合物が好ましい。
第2モノマーの溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン等の炭化水素系溶剤を上げることができ、これらの単独又は混合物が好ましい。
【0050】
分離活性層を形成するための界面重合は、公知の方法に準じて行われてよい。
例えば、中空糸状支持層の内側に、第1モノマーの溶液を通液した後、第2モノマーの溶液を通液すること、或いは、第2モノマーの溶液を通液した後、第1モノマーの溶液を通液することによって、中空糸状支持層の内側表面上で第1モノマーと第2モノマーとの界面重合が行われ、分離活性層を形成することができる。
最初のモノマー溶液を通液した後、中空糸状支持層の外側の減圧にして、この減圧状態を一定の時間維持してもよい。
界面重合後、形成された分離活性層に対して、100~150℃程度の加熱処理を施してもよい。
【0051】
本発明では、複数の中空糸状の支持層を適当なハウジング内に収納して中空糸状支持層モジュールを製造し、該支持層モジュールの状態で、第1モノマーと第2モノマーとの界面重合を行って、支持層の内側表面上に分離活性層を形成して中空糸状正浸透膜モジュールとし、この中空糸状正浸透膜モジュールを用いて濃縮工程を行うことが好ましい。
【0052】
〈誘導液〉
正浸透膜を用いる正浸透法では、上述の正浸透膜の片面側(好ましくは分離活性層が形成された面の側)に原溶液を通液し、反対面側に誘導液を通液し、両者の浸透圧の差を駆動力として、正浸透膜を介して原溶液から誘導液に溶媒を移動させることにより、原溶液の濃縮を行う。
【0053】
誘導液は、原溶液よりも浸透圧が高く、原溶液から溶媒を移動させる機能を有する液体である。
誘導液は、例えば、誘導物質を高濃度に含有する溶液であってよい。
誘導物質としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、
糖、モノアルコール、グリコール、水溶性重合体等が挙げられる。
【0054】
これらの具体例としては、
アルカリ金属塩として、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等を;
アルカリ土類金属塩として、例えば、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等を;
アンモニウム塩として、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等を;
糖として、例えば、ショ糖、果糖、ブドウ糖等の一般的な糖類の他、オリゴ糖、希少糖等の特殊な糖類等を;
モノアルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等を;
グリコールとして、例えば、エチレングルコール、プロピレングリコール等を;
水溶性重合体として、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等を、
それぞれ挙げることができる。
【0055】
誘導液中の誘導物質の濃度は、誘導液の浸透圧が原溶液の浸透圧よりも十分に高く、原溶液から溶媒を移動させる機能を発揮できる程度とすることが好ましい。
誘導物質としてアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を用いる場合を例とすれば、その濃度は、例えば、10重量%以上飽和濃度以下であってよい。
誘導液の溶媒は、水及び有機溶媒から選択される1種又は2種以上を含んでいてよい。
誘導液の溶媒は、水であるか、又は水と水溶性有機溶媒との混合物であってよく、典型的には水である。
【0056】
〈濃縮方法〉
上述したとおり、正浸透膜を用いる正浸透法では、上述の正浸透膜の片面側(好ましくは分離活性層が形成された面の側)に原溶液を通液し、反対面側に誘導液を通液し、両者の浸透圧の差を駆動力として、正浸透膜を介して原溶液から誘導液に溶媒を移動させることにより、原溶液の濃縮を行う。
【0057】
原溶液及び誘導液の通液方向は、並流でも向流でもよい。
原溶液及び誘導液は、それぞれ、正浸透膜上を通過した後、再び正浸透膜上に供給される、循環方式によって正浸透膜上に通液されてよい。
例えば、
正浸透膜モジュール、原溶液タンク、及び誘導液タンク、並びにこれらをつなぐ配管を有する濃縮システムを構築し、
原溶液タンクから正浸透膜モジュールに原溶液を供給し、正浸透膜モジュール通過後の原溶液を原溶液タンクに戻し、
誘導液タンクから正浸透膜モジュールに誘導液を供給し、正浸透膜モジュール通過後の誘導液を誘導液タンクに戻す、
循環方式は、本発明における好ましい実施形態である。
【0058】
濃縮時の温度は、任意であり、例えば、0℃以上50℃以下としてよく、室温で充分である。
濃縮時間は、原溶液中の分析対象物質の濃度が、予定されている濃度測定において信頼性の高い測定値が得られる程度に至るまでの任意の時間であってよい。
【0059】
《濃度測定工程》
濃度測定工程では、濃縮工程で得られた濃縮溶液中の分析対象物質及び標準物質の濃度を測定する。
この濃度の測定は、分析対象物質及び標準物質の濃度を高い信頼性で測定することができ、かつ、元素EA及び同位元素ESの違いによって分析対象物質と標準物質とを区別することができる方法によって行われることが好ましい。
このような方法は、例えば、各種クロマトグラフィー、光吸収に基づく電磁波分析、質量分析、微量金属イオン分析、放射能分析、電気化学分析、熱分析、及び各種X線分析から成る群から選ばれる1種又は2種以上によって行われてよい。
【0060】
濃度の測定は、例えば、濃縮工程後に中空糸状正浸透膜モジュールからの排出配管に分岐配管を設けておき、所望の濃度まで濃縮された濃縮溶液の一部を測定装置に直送する態様で行うことも、本発明の好ましい実施態様である。
【0061】
《原溶液中の前記分析対象物質の濃度の推定方法》
本発明の分析方法では、濃縮溶液中の分析対象物質の濃度の測定値CA,1、原溶液中の標準物質の濃度CS,0、濃縮溶液中の標準物質の濃度の測定値CS,1、濃縮工程における原溶液の濃縮倍率X、及び下記数式(1)によって計算される濃縮工程における標準物質の回収率Rを用いて、下記数式(2)によって原溶液中の分析対象物質の濃度CA,0を推定する。
R=CS,1/(X×CS,0) (1)
CA,0=CA,1/(X×R) (2)
【0062】
本発明では、標準物質が分析対象物質と同種の化学種であるため、その回収率は、分析対象物質の回収率と実質的に一致する。また、この標準物質は、同位元素ESの存在によって分析対象物質と区別することができる。
このような標準物質を内部標準物質として用いる本発明の方法によると、濃縮及び濃度測定に先立って、分析対象物質の回収率を求める手間を要さずに、分析対象物質の正確な回収率を見積もることができるから、原溶液中の分析対象物質の濃度を効率よく正確に分析できる。
【実施例0063】
以下の参考例では、同位体元素としてヨウ素原子を用いることを想定して、ヨウ化カリウム水溶液を原溶液とする正浸透濃縮における、重量基準及び体積基準の濃縮挙動、並びにヨウ化ナトリウム水溶液を原溶液とする正浸透濃縮における、塩(硝酸カリウム)の影響、及びpHの影響を調べた。
【0064】
《正浸透膜モジュールの製造》
ポリスルホン(Solvay Specialty polymers製、Udel-P3500)19質量%、N-メチル-2-ピロリドン(富士フイルム和光純薬(株)製)61質量%、及びテトラエチレングリコール(東京化成(株)製)20質量%から成る均一な中空糸紡糸原液を調製した。
二重紡口を装備した湿式中空糸紡糸機に上記原液を充填した。二重紡口から、40℃の原液及び25℃の内部凝固液(水)を吐出させた。吐出物は、30℃に温調した相対湿度98%の空気中を250mm走行させた後、30℃の水を満たした凝固浴(外部凝固液)にて凝固させた後、ターンロールとしてフリーロールを用いて、張力30gに巻き取って、中空糸を得た。得られた中空糸の外径は1.02mmであり、内径は0.62mmであった。この中空糸を、微細孔性中空糸支持層として用いた。
【0065】
上記の微細孔性中空糸支持層を長さ120mmに切断して、130本を束ねた中空糸束とした。この中空糸束を、20mm径、100mm長の円筒形のハウジングに収納し、両端部を接着剤で固定した後、接着剤固定部の両外側端部を切断して中空糸束の両端を開孔させることにより、有効長が80mmの微細孔性中空糸支持層モジュールを製造した。
【0066】
得られた微細孔性中空糸支持層モジュールの中空糸の内側に、m-フェニレンジアミン2.0重量%及びラウリル硫酸ナトリウム0.15重量%を含む水溶液(第1溶液)を20分間通液した。通液後、モジュールから第1溶液を除去し、中空糸の内表面が第1溶液で濡れた状態で、微細孔性中空糸支持層モジュールの中空糸外側の空間を90kPaGの減圧し、この減圧状態を1分間保持した。その後、中空糸の内側に流速210cm/secの線速でエアーを1分間流して、余分な第1溶液を除去した。
【0067】
次いで、その後、微細孔性中空糸支持層モジュールの中空糸の内側に、0.20重量%の1,3,5-トリメシン酸クロリドを含有するn-ヘキサン溶液(第2溶液)を2分間通液して、第1溶液に含まれていたm-フェニレンジアミンと第2溶液に含まれる1,3,5-トリメシン酸クロリドとの界面重合を行って、中空糸の内側に、ポリアミドから成る分離活性層を形成した。
【0068】
その後、中空糸の内側に窒素を流して、余分な第2溶液を除去し、更に、中空糸の内側に5cm/secの線速で85℃の熱水を30分間通液した。
次いで、モジュールの全体をオートクレーブ((株)トミー精工製、品名「SX-500」)中に入れ、121℃の高温水蒸気を20分間供給した。更に、中空糸の両側を20℃の流水で30分間洗浄することにより、正浸透膜モジュールを製造した。
【0069】
(1)ヨウ化カリウム水溶液を原溶液とする正浸透濃縮における重量基準の濃縮挙動
原料液としては、濃度0.08mmol/L、0.16mmol/L、0.24mmol/L、0.32mmol/L、及び0.80mmol/Lのヨウ化カリウム(KI)水溶液各200mLを使用した。
誘導液としては、濃度1.0mol/Lの塩化マグネシウム溶液250mLを使用した。
原料液を正浸透膜モジュールの中空糸の内側に、誘導液を中空糸の外側に、それぞれ、60mL/分の流量で並流にて供給した。正浸透膜モジュールを通過した後の原料液及び誘導液は、それぞれ、原料液槽及び誘導液槽に戻し、循環方式にて正浸透法による濃縮運転を行った。なお、濃度0.24mmol/Lの原料液については、n=3にて繰り返して濃縮運転を行った。
所定時間(5分)ごとに原料液の重量を測定し、原料液の初期重量を得られた値で除した値を、当該時点の重量基準の濃縮倍率とした。
また、所定時間(5分)ごとに原料液をサンプリングし、
K+については、マイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置(アジレント・テクノロジー(株)製、型式「4210MP-AES」)により、
I-については、イオンクロマトグラフィー(東ソー・テクノシステム(株)製、型式「IC-2010」)により、
それぞれ、イオン濃度を測定した。
【0070】
結果を、表1-1~1-7、並びに
図1及び2に示す。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
(2)ヨウ化カリウム水溶液を原溶液とする正浸透濃縮における体積基準の濃縮挙動
原料液として、濃度0.04mmol/L、0.16mmol/L、0.24mmol/L、及び0.32mmol/Lのヨウ化カリウム(KI)水溶液各200mLを使用した他は、上記「(1)ヨウ化カリウム水溶液を原溶液とする正浸透濃縮における重量基準の濃縮挙動」と同様にして、正浸透法による濃縮運転を行った。なお、濃度0.04mmol/Lの原料液については、n=2にて、濃度0.24mmol/Lの原料液については、n=3にて繰り返して濃縮運転を行った。
所定時間ごとに原料液の体積を測定し、原料液の初期体積を得られた値で除した値を、当該時点の体積基準の濃縮倍率とした。
結果を、表2-1~2-5、並びに
図3及び4に示す。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
(3)ヨウ化ナトリウム水溶液を原溶液とする正浸透濃縮における塩(硝酸カリウム)の影響
原料液としては、濃度5.0mmol/Lのヨウ化ナトリウム(NaI)水溶液に、硝酸カリウム(KNO3)を添加しない溶液(KNO3濃度0mmol/L)、並びにKNO3を、2.5mmol/L、5.0mmol/L、10mmol/L、50mmol/L、及び100mmol/Lを加えた溶液各200mLを使用した。
誘導液としては、濃度1.0mol/Lの塩化マグネシウム溶液250mLを使用した。
原料液を正浸透膜モジュールの中空糸の内側に、誘導液を中空糸の外側に、それぞれ、60mL/分の流量で並流にて供給した。正浸透膜モジュールを通過した後の原料液及び誘導液は、それぞれ、原料液槽及び誘導液槽に戻し、循環方式にて正浸透法による濃縮運転を行った。
所定時間(5分)ごとに原料液の重量を測定し、原料液の初期重量を得られた値で除した値を、当該時点の重量基準の濃縮倍率とした。
また、所定時間(5分)ごとに原料液をサンプリングし、
Na+については、マイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置(アジレント・テクノロジー(株)製、型式「4210MP-AES」)により、
I-については、イオンクロマトグラフィー(東ソー・テクノシステム(株)製、型式「IC-2010」)により、
それぞれ、イオン濃度を測定した。
【0085】
結果を、表3-1~3-6、並びに
図5及び6に示す。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
(4)ヨウ化ナトリウム水溶液を原溶液とする正浸透濃縮におけるpHの影響
原料液としては、以下の9種類の水溶液を各100mL使用した。
濃度5.0mmol/Lのヨウ化ナトリウム(NaI)及び濃度20mmol/Lの硝酸カリウム(KNO3)を含む水溶液(pH5.5)、
上記のpH5.5の水溶液に濃度1.0mol/Lの塩酸を添加して、pHを2.0、2.5、3.0、及び3.7にそれぞれ調整した水溶液、並びに
上記のpH5.5の水溶液に濃度1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを9.2、10.0、10.5、及び11.0にそれぞれ調整した水溶液。
誘導液としては、濃度1.0mol/Lの塩化マグネシウム溶液250mLを使用した。
原料液を正浸透膜モジュールの中空糸の内側に、誘導液を中空糸の外側に、それぞれ、60mL/分の流量で並流にて供給した。正浸透膜モジュールを通過した後の原料液及び誘導液は、それぞれ、原料液槽及び誘導液槽に戻し、循環方式にて正浸透法による濃縮運転を行った。濃縮運転は、各水溶液についてn=3にて繰り返して行った。
所定時間(5分)ごとに原料液の重量を測定し、原料液の初期重量を得られた値で除した値を、当該時点の重量基準の濃縮倍率とした。
また、所定時間(5分)ごとに原料液をサンプリングし、
Na+については、マイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置(アジレント・テクノロジー(株)製、型式「4210MP-AES」)により、
I-については、イオンクロマトグラフィー(東ソー・テクノシステム(株)製、型式「IC-2010」)により、
それぞれ、イオン濃度を測定した。
【0093】
結果を、表4-1~4-27、並びに
図7及び8に示す。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
(5)I-イオンを含む水溶液を原溶液とする正浸透膜濃縮における対イオンの影響
原溶液としては、以下の2種類の水溶液を各200g使用した。
濃度5.0mmol/Lのヨウ化ナトリウム(NaI)を含む水溶液、及び
濃度5.0mmol/Lのヨウ化カリウム(KI)を含む水溶液。
誘導液としては、濃度1.0mol/Lの塩化マグネシウム溶液200mLを使用した。
原料液を正浸透膜モジュールの中空糸の内側に、誘導液を中空糸の外側に、それぞれ、60mL/分の流量で並流にて供給した。正浸透膜モジュールを通過した後の原料液及び誘導液は、それぞれ、原料液槽及び誘導液槽に戻し、循環方式にて正浸透法による濃縮運転を行った。
所定時間(10分)ごとに原料液の重量を測定し、原料液の初期重量を得られた値で除した値を、当該時点の重量基準の濃縮倍率とした。
また、所定時間(10分)ごとに原料液をサンプリングし、I-のイオン濃度を、イオンクロマトグラフィー(東ソー・テクノシステム(株)製、型式「IC-2010」)によって測定した。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
(6)放射性ヨウ素水溶液を原溶液とする正浸透濃縮
原料液としては、以下の2種類の水溶液を各200g使用した。
ヨウ素131(131I)を放射能濃度100Bq/gになるよう蒸留水に溶解した水溶液、及び
ヨウ素131(131I)を放射能濃度100Bq/gになるよう雨水に溶解した水溶液。
上記において、ヨウ素131(131I)としては、濃度0.05mg/gのNaI、濃度0.03mg/gのNaOH、及び濃度0.02mg/gのNa2S2O3を含む標準溶液を使用した。また、雨水は、福島県福島市において採取したものを使用した。
誘導液としては、濃度1.0mol/Lの塩化マグネシウム溶液200gを使用した。
【0126】
原料液を正浸透膜モジュールの中空糸の内側に、誘導液を中空糸の外側に、それぞれ、60mL/分の流量で並流にて供給した。正浸透膜モジュールを通過した後の原料液及び誘導液は、それぞれ、原料液槽及び誘導液槽に戻し、循環方式にて正浸透法による濃縮運転を行った。濃縮運転は、各水溶液についてn=3にて繰り返して行った。
所定時間(10分)ごとに原料液の重量を測定し、原料液の初期重量を得られた値で除した値を、当該時点の重量基準の濃縮倍率とした。
また、所定時間(10分)ごとに原料液及び濃縮後の誘導液を1.0gずつサンプリングし、分取した溶液をシャーレ内のろ紙に染み込ませ、131Iの放射能濃度をGe半導体検出器によって測定し、濃縮後の放射能濃度を濃縮前の放射能濃度で除することにより、131Iの濃縮倍率を算出した。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
雨水を使用した1回目の実験について、放射能の収支を確認した。
濃縮前の原料液中の放射能は20,101Bq(=100.5Bq/g×200.05g)であり、誘導溶液中の放射能は0Bq(定量下限未満)であった。
これに対し、濃縮倍率10.67倍まで濃縮した後には、
原料液中の放射能は17,078Bq(=911.0Bq/g×18.75g)であり、
分析用に分取したサンプル中の放射能は1,322Bqであり、
誘導溶液中の放射能は60Bqであり、
濃縮後の配管及び膜モジュールを洗浄した洗浄液中に含まれていた放射能は665Bqであった。
したがって、濃縮前後における131Iの回収率は、(17,078Bq+1,322Bq+665Bq)/20,101Bq=19,065Bq/20,101Bq=94.8%であり、高い回収率で131Iを濃縮できたことが確認された。