(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155510
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
A63B37/00 314
A63B37/00 616
A63B37/00 316
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024119487
(22)【出願日】2024-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2024052687
(32)【優先日】2024-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】新藤 絢香
(72)【発明者】
【氏名】重光 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
(57)【要約】
【課題】樹脂成分としてポリウレタンを含有するカバーを有するゴルフボールについて、カバーの耐傷付き性の低下を抑制しつつ、カバーの成型性が改善し、ゴルフボールの生産性を高めることを目的とする。
【解決手段】ゴルフボールは、球状コアと、前記球状コアを被覆するカバーとを有し、前記カバーが、樹脂成分として、(A)熱可塑性ポリウレタンと、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体とを含有し、前記樹脂成分中の(A)熱可塑性ポリウレタンの含有率が50質量%以上であるカバー用組成物から形成されていることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状コアと、前記球状コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、
前記カバーが、樹脂成分として、(A)熱可塑性ポリウレタンと、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体とを含有し、
前記樹脂成分中の(A)熱可塑性ポリウレタンの含有率が50質量%以上であるカバー用組成物から形成されていることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
前記樹脂成分中の前記(A)熱可塑性ポリウレタンと前記(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体およびオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体との質量比((A)/(B))が、50.0/50.0~99.9/0.1である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記樹脂成分中の前記(A)熱可塑性ポリウレタンと前記(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体およびオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体との質量比((A)/(B))が、60.0/40.0~99.0/1.0である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記(A)熱可塑性ポリウレタンが、前記(A)熱可塑性ポリウレタンを構成するポリイソシアネートとして、脂環式ジイソシアネートおよび/または芳香族ジイソシアネートを含有する請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記ポリイソシアネートが、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、トランス-1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネートよりなる群から選択される少なくとも1種のジイソシアネートである請求項4に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関し、特に、ポリウレタンカバーの成形性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフボールのカバーを構成する樹脂成分としては、アイオノマー樹脂やポリウレタンが使用されている。アイオノマー樹脂を使用したカバーは、反発性、耐久性、加工性などに優れる傾向がある。ポリウレタンを使用したカバーは、打球感やスピン性能が向上する傾向がある。また、これらのアイオノマー樹脂、ポリウレタンを組み合わせたカバー材料も提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、エチレン-アクリル酸エステル-グリシジルメタクリレート3元共重合体、および、ステアリン酸マグネシウムを含有するゴルフボール用カバー材が記載されている(特許文献1(表1)参照)。
特許文献2には、(a)ポリウレタン系熱可塑性エラストマー60~95重量%、および(b)エチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル系三元共重合体アイオノマー樹脂5~40重量%の加熱混合物を主成分として含有するカバー用組成物が記載されている(特許文献2(表2)参照)。
【0004】
また、特許文献3には、カバーが、(A)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体の金属イオン中和物及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体の金属イオン中和物 60~90質量%(但し、上記(A)成分の40~80質量%がアルカリ金属イオンにより中和されたアイオノマーである。)、(B) 少なくとも1 種類からなるオレフィン-不飽和カルボン酸共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体 5~20質量%、(C)熱可塑性ポリウレタンエラストマー 2~30質量%の加熱混合物を主成分とするカバー材料から形成されたゴルフボールが記載されている(特許文献3(表3)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-128402号公報
【特許文献2】特開2003-180878号公報
【特許文献3】特開2007-125377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カバー用組成物の樹脂成分としてポリウレタンを主成分に用いた場合、カバー用組成物の流動性が低下する傾向があり、カバーの成型が難しいという課題があった。ここで、ポリウレタンを含有するカバー用組成物にアイオノマー樹脂を添加することで、カバー用組成物の流動性を向上させることができる。しかしながら、ポリウレタンにアイオノマー樹脂を添加すると、形成されるカバーの耐傷付き性が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、樹脂成分としてポリウレタンを含有するカバーを有するゴルフボールについて、カバーの耐傷付き性の低下を抑制しつつ、カバーの成型性を改善し、ゴルフボールの生産性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することができた本発明のゴルフボールは、球状コアと、前記球状コアを被覆するカバーとを有し、前記カバーが、樹脂成分として、(A)熱可塑性ポリウレタンと、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体とを含有し、前記樹脂成分中の(A)熱可塑性ポリウレタンの含有率が50質量%以上であるカバー用組成物から形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂成分としてポリウレタンを含有するカバーを有するゴルフボールについて、カバーの耐傷付き性の低下を抑制しつつ、カバーの成型性を改善し、ゴルフボールの生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のゴルフボールは、球状コアと、前記球状コアを被覆するカバーとを有し、前記カバーが、樹脂成分として、(A)熱可塑性ポリウレタンと、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体とを含有し、前記樹脂成分中の(A)熱可塑性ポリウレタンの含有率が50質量%以上であるカバー用組成物から形成されていることを特徴とする。
【0012】
(A)熱可塑性ポリウレタンに、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体を配合することで、カバー用組成物の流動開始温度を低下させ、かつ、溶融粘度を低くすることができ、カバー用組成物の成形性を高めることができる。また、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体は、(A)熱可塑性ポリウレタンが有する柔軟性を損ないにくく、得られるカバーの耐傷付き性の低下を抑制できる。
【0013】
[カバー用組成物]
本発明で使用するカバー用組成物について説明する。前記カバー用組成物は、樹脂成分として、(A)熱可塑性ポリウレタンと、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体とを含有する。
【0014】
((A)熱可塑性ポリウレタン)
前記カバー用組成物は、樹脂成分として、(A)熱可塑性ポリウレタンを含有する。
前記(A)熱可塑性ポリウレタンは、分子内にウレタン結合を複数有し熱可塑性を示すものである。熱可塑性ポリウレタンとは、加熱により可塑性を示すポリウレタンであり、一般的に、ある程度高分子量化された直鎖構造を有するポリウレタンを意味する。前記(A)熱可塑性ポリウレタンとしては、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させることによって、ウレタン結合が分子内に形成された生成物が挙げられる。
【0015】
前記(A)熱可塑性ポリウレタンを構成するポリイソシアネートとしては、分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。前記ポリイソシアネートは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記ポリイソシアネートは、分子中にイソシアネート基を2個有するジイソシアネートが好ましい。
【0016】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トランス-1,4-シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。これらの中でも、ポリイソシアネートとしては、脂環式ジイソシアネートおよび/または芳香族ジイソシアネートが好ましい。脂環式ジイソシアネートおよび/または芳香族ジイソシアネートを用いることで、得られるポリウレタンの機械的特性が向上し、得られるカバーの耐傷付き性が一層向上する。
【0017】
前記(A)熱可塑性ポリウレタンのポリイソシアネートとしては、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トランス-1,4-シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびトルエンジイソシアネート(TDI)よりなる群から選択される少なくとも1種のジイソシアネートが特に好ましい。これらのジイソシアネートを用いることで、得られるポリウレタンの機械的特性が向上し、得られるカバーの耐傷付き性が一層向上する。
【0018】
また、カバーの耐候性を向上するという観点からは、(A)熱可塑性ポリウレタンのポリイソシアネートとして、非黄変性のポリイソシアネート(TMXDI、XDI、HDI、H6XDI、IPDI、H12MDI、NBDIなど)を使用することが好ましく、さらに好ましくは4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)を使用する。4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)は剛直な構造を有しており、得られるポリウレタンの機械的特性が一層向上する。
【0019】
前記(A)熱可塑性ポリウレタンを構成するポリオールとしては、分子中にヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、高分子量ポリオールが挙げられる。前記高分子量ポリオールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記ポリオールとしては、分子中にヒドロキシ基を2個有するジオールが好ましい。
【0020】
前記高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリトリメチレンエーテルグリコール(PO3G)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)などのポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)などのラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;及びアクリルポリオールなどが挙げられる。前記高分子量ポリオールは、石油資源に由来するものでもよいし、バイオマス資源に由来するものであってもよい。
【0021】
前記高分子量ポリオールの数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、400以上が好ましく、より好ましくは1,000以上であり、10,000以下が好ましく、より好ましくは8,000以下である。
【0022】
前記(A)熱可塑性ポリウレタンは、鎖延長剤を構成成分として有してもよい。前記鎖延長剤成分としては、低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン等を使用することができる。
【0023】
前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール(例:1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオールなど)、ジプロピレングリコール、ブタンジオール(例:1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオールなど)、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、1,6-シクロへキサンジメチロール、アニリン系ジオール、ビスフェノールA系ジオールなどのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオール;ペンタエリスリトール、ソルビトールなどのテトラオールまたはヘキサオールなどが挙げられる。
【0024】
鎖延長剤成分として使用される低分子量のポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基を有するものであれば特に限定されない。前記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族系ポリアミン;イソホロンジアミン、ピペラジンなどの脂環式系ポリアミン;芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0025】
前記芳香族ポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基が芳香環に直接または間接的に結合しているものであれば、特に限定されない。ここで、間接的に結合しているとは、アミノ基が、例えば低級アルキレン基を介して芳香環に結合していることをいう。前記芳香族ポリアミンとしては、例えば、1つの芳香環に2以上のアミノ基が結合している単環式芳香族ポリアミンでもよいし、少なくとも1つのアミノ基が1つの芳香環に結合しているアミノフェニル基を2個以上含む多環式芳香族ポリアミンでもよい。
【0026】
前記単環式芳香族ポリアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンなどのアミノ基が芳香環に直接結合しているタイプ;キシリレンジアミンのようなアミノ基が低級アルキレン基を介して芳香環に結合しているタイプなどが挙げられる。
また、前記多環式芳香族ポリアミンとしては、少なくとも2つのアミノフェニル基が直接結合しているポリ(アミノベンゼン)でもよいし、少なくとも2つのアミノフェニル基が低級アルキレン基やアルキレンオキシド基を介在して結合していてもよい。これらのうち、低級アルキレン基を介して2つのアミノフェニル基が結合しているジアミノジフェニルアルカンが好ましく、4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びその誘導体が特に好ましい。
【0027】
前記鎖延長剤の分子量は、400未満が好ましく、より好ましくは350以下、さらに好ましくは200以下であり、30以上が好ましく、より好ましくは40以上、さらに好ましくは45以上である。
【0028】
前記(A)熱可塑性ポリウレタンの構成態様としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイソシアネートと高分子量ポリオールによって構成されている態様;ポリイソシアネートと高分子量ポリオールと低分子量ポリオールによって構成されている態様;ポリイソシアネートと高分子量ポリオールと低分子量ポリオールとポリアミンとによって構成されている態様;ポリイソシアネートと高分子量ポリオールとポリアミンとによって構成されている態様などが挙げられる。前記(A)熱可塑性ポリウレタンの構成態様としては、特に、ジイソシアネートとジオールによって構成されている態様が好ましく、ジイソシアネート、高分子量ジオール、低分子量ジオールによって構成されている態様がより好ましい。
【0029】
前記(A)熱可塑性ポリウレタン100質量%中のポリオールの含有率は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、90質量%以下が好ましく、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
前記(A)熱可塑性ポリウレタン100質量%中のポリイソシアネートの含有率は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、90質量%以下が好ましく、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0030】
前記(A)熱可塑性ポリウレタンのスラブ硬度は、ショアD硬度で、25以上が好ましく、より好ましくは26以上、さらに好ましくは28以上であり、40以下が好ましく、より好ましくは39以下、さらに好ましくは38以下である。(A)熱可塑性ポリウレタンの硬度がショアD硬度で、25以上であればドライバーショットにおけるスピン量を低減でき、40以下であればアプローチショットにおけるスピン量が増大する。
【0031】
前記樹脂成分中の(A)熱可塑性ポリウレタンの含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、99.9質量%以下が好ましく、より好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは98質量%以下、最も好ましくは95質量%以下である。前記(A)成分の含有率が50質量%以上であればカバーの耐傷付き性がより良好となり、99.9質量%以下であればカバー用組成物の成型性がより高くなる。
【0032】
((B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体)
前記カバー用組成物は、樹脂成分として、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体を含有する。(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体は、オレフィンと不飽和カルボン酸との二元共重合体(以下、「(B1)二元共重合体」と称する場合がある。)である。前記オレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体は、オレフィンと、不飽和カルボン酸と、不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体(以下、「(B2)三元共重合体」と称する場合がある。)である。前記(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体は、(B1)二元共重合体のみであってもよいし、(B2)三元共重合体のみであってもよい。また、(B1)二元共重合体と(B2)三元共重合体を併用してもよい。
【0034】
前記オレフィンとしては、炭素数が2~8個のオレフィンが好ましく、より好ましくは炭素数が2~4個のオレフィンである。前記オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等が挙げられ、特にエチレンが好ましい。
【0035】
前記不飽和カルボン酸としては、α,β-不飽和カルボン酸が好ましく、より好ましくは炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸である。前記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。
【0036】
前記不飽和カルボン酸エステルとしては、α,β-不飽和カルボン酸エステルが好ましく、より好ましくは炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸のアルキルエステルである。前記不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸またはマレイン酸のアルキルエステルがより好ましく、特にアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。エステルを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。前記不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0037】
前記(B1)二元共重合体としては、エチレンと、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体が好ましく、より好ましくはエチレン-(メタ)アクリル酸二元共重合体である。
前記(B2)三元共重合体としては、エチレンと、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸と、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸のアルキルエステルとの三元共重合体が好ましく、より好ましくはエチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル三元共重合体である。
【0038】
前記(B1)二元共重合体中の不飽和カルボン酸成分の含有率は、1質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。不飽和カルボン酸成分の含有率が上記範囲内であれば(A)熱可塑性ポリウレタンとの相溶性が一層良好となる。
【0039】
前記(B2)三元共重合体中の不飽和カルボン酸成分の含有率は、1質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。不飽和カルボン酸成分の含有率が上記範囲内であれば(A)熱可塑性ポリウレタンとの相溶性が一層良好となる。
【0040】
前記(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体のメルトフローレイト(MFR)(190℃、2.16kg荷重)は、10g/10min以上が好ましく、より好ましくは15g/10min以上、さらに好ましくは25g/10min以上であり、1000g/10min以下が好ましく、より好ましくは900g/10min以下、さらに好ましくは800g/10min以下である。前記(B)成分のMFR(190℃、2.16kg荷重)が10g/10min以上であれば、カバー用組成物の流動性がより良好となる。また、前記(B)成分のMFR(190℃、2.16kg荷重)が1000g/10min以下であれば、得られるカバーの打撃耐久性がより良好となる。MFRは、フローテスターを用いて、JIS K7210に準じて測定する。前記(B)成分として、複数種を併用する場合、これらの混合物のMFRを測定する。
【0041】
前記(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体の融点は、120℃以下が好ましく、より好ましくは118℃以下、さらに好ましくは115℃以下である。前記(B)成分の融点は、75℃以上が好ましい。
【0042】
前記(B)成分としては、ニュクレル(登録商標)N2050H、N2060、N1050H、N1560、N1525、AN4221C、AN4213C、N1110H、AN4229C、N11081C、N1108C、N1035、N035C、N0908C、AN42012C、N0903HC、N0823、AN42115C、AN4228C、AN4214C、N0200H、AN4233C(三井・ダウ ポリケミカル製);プリマコール(登録商標)1321、1410、1430、3002、3003、3004、3330、3340、3440、3460(SK Geo Centric製)などが挙げられる。
【0043】
前記樹脂成分中の(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体およびオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体の含有率は、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは3質量%以上、最も好ましくは5質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。前記(B)成分の含有率が0.1質量%以上であればカバー用組成物の成型性がより向上し、50質量%以下であれば得られるカバーの耐傷付き性の低下をより抑制できる。
【0044】
前記樹脂成分中の前記(A)熱可塑性ポリウレタンと前記(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体およびオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体との質量比((A)/(B))は、50.0/50.0以上が好ましく、より好ましくは55.0/45.0以上、さらに好ましくは60.0/40.0以上であり、99.9/0.1以下が好ましく、より好ましくは99.0/1.0以下、さらに好ましくは98.0/2.0以下である。前記質量比((A)/(B))が、50.0/50.0以上であれば得られるカバーの耐傷付き性の低下をより抑制でき、99.9/0.1以下であればカバー用組成物の成型性がより向上する。
【0045】
(他の樹脂成分)
前記カバー用組成物は、樹脂成分として、(A)熱可塑性ポリウレタン、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体のみを含有してもよいが、これらに加えて他の樹脂成分を含有してもよい。
【0046】
前記他の樹脂成分としては、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0047】
前記熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、アルケマ製の「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」等の熱可塑性ポリアミドエラストマー;東レ・セラニーズ製の「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」等の熱可塑性ポリエステルエラストマー;三菱ケミカル製の「テファブロック(登録商標)」等の熱可塑性ポリスチレンエラストマー等が挙げられる。
【0048】
前記樹脂成分として、前記(A)成分および(B)成分以外の樹脂成分を配合する場合、樹脂成分中の前記(A)成分と(B)成分との合計含有率は、85質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0049】
(添加剤)
前記カバー用組成物は、さらに、酸化チタンや青色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などの添加剤を、カバー性能を損なわない範囲で含有してもよい。前記カバー用組成物中の前記樹脂成分の含有率は90質量%以上が好ましく、より好ましくは92質量%以上、さらに好ましくは94質量%以上である。
【0050】
前記白色顔料(酸化チタン)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下であり、さらに好ましくは6質量部以下である。白色顔料の含有量が0.5質量部以上であれば、カバーに隠蔽性を付与することができ、10質量部以下であれば、カバーの耐久性の低下が抑制できる。
【0051】
前記カバー用組成物は、前記(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体が有するカルボキシ基を中和する塩基性金属化合物を含有しないことが好ましい。前記塩基性金属化合物に含まれる金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、鉄、銅、マンガン、錫、鉛、コバルトが挙げられる。前記塩基性金属化合物としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0052】
前記カバー用組成物は、例えば、(A)成分、(B)成分、および必要に応じてその他の添加剤などを、ドライブレンドすることにより得られる。また、ドライブレンドした混合物を、押出してペレット化してもよい。ドライブレンドには、例えば、ペレット状の原料を配合できる混合機を用いるのが好ましく、より好ましくはタンブラー型混合機を用いる。押出は、一軸押出機、二軸押出機、二軸一軸押出機など公知の押出機を使用することができる。
【0053】
前記カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で、25以上が好ましく、より好ましくは26以上、さらに好ましくは28以上であり、40以下が好ましく、より好ましくは39以下、さらに好ましくは38以下である。前記スラブ硬度がショアD硬度で、25以上であればドライバーショットにおけるスピン量を低減でき、40以下であればアプローチショットにおけるスピン量が増大する。
【0054】
前記カバー用組成物の溶融粘度(190℃)は、3850Pa・s未満が好ましく、より好ましくは3500Pa・s未満である。前記溶融粘度(190℃)が3850Pa・s未満であれば、カバー用組成物の成型性がより向上する。なお、溶融粘度(190℃)の下限は特に限定されないが、溶融粘度(190℃)は10Pa・s以上が好ましい。前記溶融粘度(190℃)の測定方法は、後述する。
【0055】
前記カバー用組成物の流動開始温度は、110℃未満が好ましく、より好ましくは109℃未満である。前記流動開始温度が110℃未満であれば、カバー用組成物の成型性がより向上する。なお、流動開始温度の下限は特に限定されないが、流動開始温度は70℃以上が好ましい。前記流動開始温度の測定方法は、後述する。
【0056】
[ゴルフボール]
本発明のゴルフボールは、球状コアと前記球状コアを被覆するカバーとを有し、前記カバーが、前記カバー用組成物から形成されていることを特徴とする。前記カバーは、ゴルフボール本体の最外層を構成する。なお、本発明は、カバーの成形性および耐傷付き性に関するものであり、球状コアの構成等は限定されない。
【0057】
(球状コア)
前記球状コアとしては、単層の球状コア、センターと前記センターを被覆する1層の中間層とからなる球状コア、センターと前記センターを被覆する2層以上の中間層とからなる球状コア等が挙げられる。
【0058】
前記球状コアまたはセンターには、公知のゴム組成物(以下、単に「コア用ゴム組成物」という場合がある)を用いることができ、例えば、基材ゴム、共架橋剤および架橋開始剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
【0059】
前記基材ゴムとしては、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
【0060】
前記共架橋剤としては、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸またはその金属塩が好ましく、アクリル酸またはその金属塩、メタクリル酸またはその金属塩がより好ましい。金属塩の金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムが好ましく、より好ましくは亜鉛である。共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して20質量部以上50質量部以下が好ましい。前記共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を使用する場合、金属化合物(例えば、酸化マグネシウム)を配合することが好ましい。
【0061】
架橋開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.4質量部以上であり、5質量部以下が好ましく、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0062】
また、前記コア用ゴム組成物は、さらに、有機硫黄化合物を含有してもよい。前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類、チオフェノール類、チオナフトール類を好適に使用することができる。有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは4.0質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下である。
【0063】
前記コア用ゴム組成物は、さらにカルボン酸および/またはその塩を含有してもよい。カルボン酸および/またはその塩としては、炭素数が1~30のカルボン酸および/またはその塩が好ましい。前記カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸(安息香酸など)のいずれも使用できる。カルボン酸および/またはその塩の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上、40質量部以下である。
【0064】
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、有機硫黄化合物に加えて、さらに、酸化亜鉛や硫酸バリウム等の重量調整剤、老化防止剤、色粉等を適宜配合することができる。
【0065】
前記コア用ゴム組成物の加熱プレス成型条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130℃~200℃で10分間~60分間加熱するか、あるいは130℃~150℃で20分間~40分間加熱した後、160℃~180℃で5分間~15分間と2段階加熱することが好ましい。
【0066】
球状コアが中間層を有する場合、中間層材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂;スチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等の熱可塑性エラストマー;ゴム組成物の硬化物等が挙げられる。ここで、アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンとα,β-不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものが挙げられる。前記中間層には、さらに、硫酸バリウム、タングステン等の重量調整剤、老化防止剤、顔料等が配合されていてもよい。
【0067】
中間層を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、中間層用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いて球体を包み、加圧成形する方法、または、中間層用組成物を直接球体上に射出成形して球体を包み込む方法等を挙げることができる。
【0068】
中間層用組成物を球体上に射出成形して中間層を成形する場合、成形用上下金型としては、半球状キャビティを有しているものを使用することが好ましい。射出成形による中間層の成形は、ホールドピンを突き出し、被覆球体を投入してホールドさせた後、加熱溶融された中間層用組成物を注入して、冷却することにより中間層を成形することができる。
【0069】
圧縮成形法により中間層を成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。中間層用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、中間層用組成物の流動開始温度に対して、-20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いて中間層を成形する方法としては、例えば、球体を2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形して中間層に成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、中間層用組成物の流動開始温度に対して、-20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みを有する中間層を成形できる。
【0070】
なお、成形温度とは、型締めから型開きの間に、下型の凹部の表面が到達する最高温度を意味する。また組成物の流動開始温度は、島津製作所の「フローテスター CFT-500」を用いて、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を、プランジャー面積:1cm2、DIE LENGTH:1mm、DIE DIA:1mm、荷重:588.399N、開始温度:30℃、昇温速度:3℃/分の条件で測定することができる。
【0071】
前記球状コアの直径は、34.8mm以上が好ましく、より好ましくは35.7mm以上、さらに好ましくは36.6mm以上であり、42.2mm以下が好ましく、41.8mm以下がより好ましく、さらに好ましくは41.2mm以下であり、最も好ましくは40.8mm以下である。前記球状コアの直径が34.8mm以上であれば、カバーの厚みが厚くなり過ぎず、反発性がより良好となる。一方、球状コアの直径が42.2mm以下であれば、カバーが薄くなり過ぎず、カバーの機能がより発揮される。
【0072】
(ゴルフボールの構造)
前記ゴルフボールの構造は、球状コアと、前記球状コアを被覆するカバーとを有するものであれば特に限定されない。ゴルフボールの構造としては、例えば、単層の球状コアと前記球状コアを被覆するカバーとを有するツーピースゴルフボール;センターと前記センターを被覆する1層の中間層とからなる球状コアと前記球状コアを被覆するカバーとを有するスリーピースゴルフボール;センターと前記センターを被覆する2層以上の中間層とからなる球状コアと前記球状コアを被覆するカバーとを有するマルチピースゴルフボール等が挙げられる。
【0073】
カバー用組成物を用いてカバーを成形する態様は、特に限定されないが、カバー用組成物を球状コア上に直接射出成形する態様、あるいは、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、球状コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する態様(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、球状コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)を挙げることができる。カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、マークを形成することもできる。
【0074】
前記カバーの厚さは、0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0.4mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、2.0mm以下が好ましく、より好ましくは1.8mm以下、さらに好ましくは1.6mm以下である。カバーの厚さが0.3mm以上であればカバーの成形がより容易となり、2.0mm以下であれば相対的にコアの直径を大きくできるため、ゴルフボールの反発性能が向上する。
【0075】
カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0076】
カバーが成形されたゴルフボールは、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは9μm以上であり、50μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。膜厚が5μm以上であればと継続的に使用しても塗膜が摩耗消失しにくく、膜厚が50μm以下であればディンプルの効果を十分に発揮できるからである。
【0077】
前記ゴルフボールの直径は、40mmから45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44.00mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。また、ゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44.00g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0078】
本発明のゴルフボールは、直径40mm~45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向にゴルフボールの縮む量)は、2.0mm以上が好ましく、より好ましくは2.4mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上であり、5.0mm以下が好ましく、より好ましくは4.5mm以下、さらに好ましくは4.0mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を5.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【0079】
図1に本発明のゴルフボールの一例を示す。
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール1は、センター21とセンター21を被覆する中間層22から構成された球状コア2、前記球状コア2を被覆するカバー3とを有する。このカバー3の表面には、多数のディンプル31が形成されている。このゴルフボールの表面のうち、ディンプル31以外の部分は、ランド32である。このゴルフボール1は、カバー3の外側にペイント層およびマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
【実施例0080】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0081】
[評価方法]
(1)スラブ硬度(ショアD硬度)
中間層用組成物、熱可塑性ポリウレタン、カバー用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように3枚以上重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore D」を用いた。
【0082】
(2)溶融粘度
溶融粘度は、流動特性評価装置(島津製作所製、フローテスターCFT-500D)を用いて、ペレット状の試料について測定し、下記の評価基準で評価した。測定条件は、ダイ長さ:10mm、ダイ穴径:1mm、シリンダー圧力:3MPa、温度:190℃とした。
◎:3500Pa・s未満
〇:3500Pa・s以上、3850Pa・s未満
×:3850Pa・s以上
【0083】
(3)流動開始温度
流動開始温度は、流動特性評価装置(島津製作所製、フローテスターCFT-500D)を用いて、ペレット状の試料について測定し、下記の評価基準で評価した。測定条件は、プランジャー面積:1cm2、DIELENGTH:1mm、荷重:588.399N、開始温度:30℃、昇温速度:3℃/分とした。
◎:109℃未満
○:109℃以上、110℃未満
×:110℃以上
【0084】
(4)耐傷付き性
市販のピッチングウェッジをスィングロボットに取付け、ヘッドスピード36m/sでゴルフボールを異なる場所を各1回ずつ計2回打撃した。2個所の打撃部分を目視で観察し、下記基準に基づいて5段階で評価し、悪い方を評価結果とした。なお、所定の厚さのカバーが成型できず耐傷付き性の評価が行えなかった場合は「×」と表記した。
5点;実質的に傷は認められない。
4点;目視で認められるような傷はなかったが、手にとって凝視した場合にわずかな傷が認められる。
3点;目視で確認できる傷がある。
2点;目立つ傷がある。
1点;再使用できない程度の傷がある。
【0085】
[ゴルフボールの作製]
(1)ゴム組成物の調製
表1に示す配合となるように各原料を混練ロールにより混練し、ゴム組成物を得た。
【0086】
【0087】
表1で用いた材料は下記の通りである。
BR730:JSR製、ハイシスポリブタジエンゴム(シス-1,4-結合含有量=95質量%、1,2-ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3)
ZN-DA90S:日触テクノファインケミカル製、アクリル酸亜鉛(ステアリン酸亜鉛10%含有)
酸化亜鉛:東邦亜鉛製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学製、「硫酸バリウムBD」
PBDS:川口化学工業製、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド
ジクミルパーオキサイド:東京化成工業製
【0088】
(2)中間層用組成物の調製
表2に示した配合となるように原料を、二軸混練型押出機により押し出して、ペレット状の中間層用組成物を調製した。
【0089】
【表2】
サーリン(登録商標)8150:ダウ製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミラン(登録商標)AM7329:三井・ダウ ポリケミカル製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
二酸化チタン:石原産業製、A-220
【0090】
(3)カバー用組成物の調製
熱可塑性ポリウレタンを、以下のようにして合成した。80℃に加熱したジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)に、80℃に加熱したポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG(数平均分子量1400))を投入し、さらに、原料(H12MDI、PTMGおよびBD)の総量0.005質量%のジブチルチンジラウレートを投入した後、窒素気流下にて、80℃で2時間撹拌を行った。続いて、窒素気流下にて、80℃に加熱したブタンジオール(BD)を投入した後、80℃で1分間撹拌を行った。その後、反応液を冷却して、室温にて1分間減圧することにより系中の脱気を行った。脱気後の反応液を、容器に延展し、窒素雰囲気下、110℃にて6時間保存することにより、ウレタン化反応を行って熱可塑性ポリウレタンを得た。なお、PTMG、H12MDIおよびBDのモル比は、PTMG:H12MDI:BD=1:3.81:2.81とした。得られた熱可塑性ポリウレタンのスラブ硬度は、ショアD硬度で31であった。
【0091】
次に、上記で得た熱可塑性ポリウレタンを用いて、表3~6に示した配合となるように原料を、二軸混練型押出機により押し出して、ペレット状のカバー用組成物を調製した。
【0092】
(4)ゴルフボールの作製
ゴルフボールNo.1~32
ゴム組成物を、半球状キャビティを有する上下金型内で加熱プレスすることにより直径38.5mmまたは37.9mmのセンターを得た。なお、硫酸バリウムは、得られるゴルフボールの質量が、45.6gとなるように適量加えた。
前記中間層用組成物をセンター上に射出成形して、球状コアを得た。中間層の厚さは1.6mmとした。得られた球状コアを、キャビティ面に多数のディンプルを備えたファイナル金型に投入した。
前記カバー用組成物から圧縮成形法にてハーフシェルを得た。ハーフシェル2枚をファイナル金型に投入した球状コア上に被覆し、カバーにキャビティ面のディンプルの形状が反転した形状のディンプルが多数形成されたゴルフボールを得た。得られたゴルフボールについて評価した結果を、表3、4に示した。
【0093】
ゴルフボールNo.33~63
ゴム組成物を、半球状キャビティを有する上下金型内で加熱プレスすることにより直径37.2mmまたは36.6mmのセンターを得た。なお、硫酸バリウムは、得られるゴルフボールの質量が、45.6gとなるように適量加えた。
前記中間層用組成物をセンター上に射出成形して、球状コアを得た。中間層の厚さは1.6mmとした。得られた球状コアを、キャビティ面に多数のディンプルを備えたファイナル金型に投入した。前記カバー用組成物を球状コア上に射出成形して、カバーにキャビティ面のディンプルの形状が反転した形状のディンプルが多数形成されたゴルフボールを得た。得られたゴルフボールについて評価した結果を、表5、6に示した。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【表6】
表3~6で用いた材料は下記の通りである。
N2050H:三井・ダウ ポリケミカル製、ニュクレル(登録商標)N2050H(酸含量:20質量%、MFR(190℃、2.16kg):500g/10min、融点:75℃~115℃)
N2060:三井・ダウ ポリケミカル製、ニュクレルN2060(酸含量:20質量%、MFR(190℃、2.16kg):60g/10min、融点:75℃~115℃)
N1050H:三井・ダウ ポリケミカル製、ニュクレルN1050H(酸含量:10質量%、MFR(190℃、2.16kg):500g/10min、融点:75℃~115℃)
ハイミラン(登録商標)1605:三井・ダウ ポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
ハイミランAM7329:三井・ダウ ポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
二酸化チタン:石原産業製、A-220
【0098】
ゴルフボールNo.1~13、17~29、33~44および48~60は、カバーが、樹脂成分として、(A)熱可塑性ポリウレタンと、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体とを含有し、前記樹脂成分中の(A)熱可塑性ポリウレタンの含有率が50質量%以上であるカバー用組成物No.1~13から形成されている。
【0099】
ゴルフボールNo.14、30、45および61は、カバーが、樹脂成分として(A)熱可塑性ポリウレタンを含有し、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体を含有しないカバー用組成物No.14から形成されている。
ゴルフボールNo.15、16、31、32、46、47、62および63は、(A)熱可塑性ポリウレタンと、アイオノマー樹脂(オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体の金属中和物またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体の金属中和物)とを含有するカバー用組成物No.15または16から形成されている。
【0100】
ゴルフボールNo.1~32は、カバー用組成物から圧縮成形法にてハーフシェルを作製し、このハーフシェルを用いたカバーを形成した場合である。
ゴルフボールNo.1~13および17~29のカバーを形成するカバー用組成物No.1~13は、ゴルフボールNo.14および30のカバーを形成するカバー用組成物No.14よりも溶融粘度が低く、かつ、流動開始温度が低い。よって、これらのゴルフボールNo.1~13および17~29は、カバーの成形性が向上している。
また、ゴルフボールNo.1~13および17~29は、ゴルフボールNo.15および31よりもカバーの耐傷付き性が高く、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体を用いることで、耐傷付き性の低下が抑制できている。
【0101】
ゴルフボールNo.33~47は、カバー用組成物から射出成型により厚さ1.15mmのカバーを形成した場合である。
ゴルフボールNo.33~44のカバーを形成するカバー用組成物No.1~13は、ゴルフボールNo.45のカバーを形成するカバー用組成物No.14よりも溶融粘度が低く、かつ、流動開始温度が低い。よって、これらのゴルフボールNo.33~44は、カバーの成形性が向上している。
また、ゴルフボールNo.33~44は、ゴルフボールNo.46よりもカバーの耐傷付き性が高く、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体を用いることで、耐傷付き性の低下が抑制できている。
【0102】
ゴルフボールNo.48~63は、カバー用組成物から射出成型により厚さ1.45mmのカバーを形成した場合である。
ゴルフボールNo.48~60のカバーを形成するカバー用組成物No.1~13は、ゴルフボールNo.61のカバーを形成するカバー用組成物No.14よりも溶融粘度が低く、かつ、流動開始温度が低い。よって、これらのゴルフボールNo.48~60は、カバーの成形性が向上している。
また、ゴルフボールNo.48~60は、ゴルフボールNo.62よりもカバーの耐傷付き性が高く、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体を用いることで、耐傷付き性の低下が抑制できている。
【0103】
本発明(1)は、球状コアと、前記球状コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記カバーが、樹脂成分として、(A)熱可塑性ポリウレタンと、(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体および/またはオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体とを含有し、前記樹脂成分中の(A)熱可塑性ポリウレタンの含有率が50質量%以上であるカバー用組成物から形成されていることを特徴とするゴルフボールである。
【0104】
本発明(2)は、前記樹脂成分中の前記(A)熱可塑性ポリウレタンと前記(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体およびオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体との質量比((A)/(B))が、50.0/50.0~99.9/0.1である本発明(1)に記載のゴルフボールである。
【0105】
本発明(3)は、前記樹脂成分中の前記(A)熱可塑性ポリウレタンと前記(B)オレフィン-不飽和カルボン酸共重合体およびオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル共重合体との質量比((A)/(B))が、60.0/40.0~99.0/1.0である本発明(1)に記載のゴルフボールである。
【0106】
本発明(4)は、前記(A)熱可塑性ポリウレタンが、ポリイソシアネートとして、脂環式ジイソシアネートおよび/または芳香族ジイソシアネートを含有する本発明(1)~(3)のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
【0107】
本発明(5)は、前記ポリイソシアネートが、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、トランス-1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネートよりなる群から選択される少なくとも1種のジイソシアネートである本発明(4)に記載のゴルフボールである。