(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015558
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】インライン混合中の懸濁液の通気の最小化
(51)【国際特許分類】
A61K 47/36 20060101AFI20250123BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20250123BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250123BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20250123BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20250123BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K9/107
A61K9/14
A61K47/06
A61K47/10
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024195114
(22)【出願日】2024-11-07
(62)【分割の表示】P 2021549375の分割
【原出願日】2020-02-21
(31)【優先権主張番号】62/809,293
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519135460
【氏名又は名称】キャタレント・ユーケー・スウィンドン・ザイディス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ロザリーン・マクラフリン
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・アンドリュー・マーティン・ハウズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ホワイトハウス
(57)【要約】
【課題】産生プロセス中の薬学的懸濁液の通気を最小限に抑えることができる薬学的組成物、及び薬学的組成物を製造するための方法を提供する。
【解決手段】薬学的組成物は、複数のAPI粒子、複数のAPI粒子の各API粒子をカプセル化するコーティング材料、ならびにマトリックス形成剤、構造形成剤、及び抗通気剤を含むマトリックス溶液/懸濁液を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的組成物を製造する方法であって、
マトリックス形成剤、構造形成剤、抗通気剤、及び溶媒を含むマトリックス溶液/懸濁液を提供することと、
複数の疎水性粒子を前記マトリックス溶液/懸濁液中に混合して、薬学的懸濁液を形成することと、
前記薬学的懸濁液を予め形成されたブリスターパックに投与することと、を含み、前記投与された薬学的懸濁液の投与重量が、目標投与重量の10%以内である、
前記方法。
【請求項2】
前記投与された薬学的懸濁液の前記投与重量が、目標投与重量の5%以内である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与された薬学的懸濁液の前記投与重量が、目標投与重量の2.5%以内である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の疎水性粒子が、コーティングされた活性薬学的成分(API)を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記コーティングされたAPIが、抗炎症剤、鎮痛剤、抗精神薬、制吐薬、緩下剤、抗下痢剤、抗ヒスタミン剤、または抗うつ剤のうちの1つ以上を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記機能的にコーティングされたAPIの組成物が、30~90%w/wのAPIを含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記マトリックス溶液/懸濁液が、粘度調整剤を含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記粘度調整剤が、キサンタンガムを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マトリックス溶液/懸濁液中に複数の疎水性粒子を混合することが、摂氏15~20℃でのインライン混合を含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記抗通気剤が、テルペンまたはテルピノールのうちの1つ以上を含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記抗通気剤が、液体フレーバーを含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記抗通気剤が、リモネンを含む液体フレーバーを含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記抗通気剤が、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、グレープフルーツフレーバー、ライムフレーバー、ストロベリーフレーバー、またはペパーミントフレーバーのうちの1つ以上を含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液が、0.1~1.5%w/wの抗通気剤を含む、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液が、2.0~5.0%w/wのマトリックス形成剤を含む、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液が、1.0~5.0%w/wの構造形成剤を含む、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
マトリックス形成剤、構造形成剤、抗通気剤、及び溶媒を含むマトリックス溶液/懸濁液を提供するステップと、
複数の疎水性粒子を前記マトリックス溶液/懸濁液中に混合して、薬学的懸濁液を形成するステップと、
前記薬学的懸濁液を予め形成されたブリスターパックに投与するステップと、を含むプロセスによって調製された薬学的組成物であって、前記投与された薬学的懸濁液の投与重量が、目標投与重量の10%以内である、前記薬学的組成物。
【請求項18】
前記投与された薬学的懸濁液の前記投与重量が、目標投与重量の5%以内である、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記投与された薬学的懸濁液の前記投与重量が、目標投与重量の2.5%以内である、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記複数の疎水性粒子が、コーティングされた活性薬学的成分(API)を含む、請求項17~19のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記コーティングされたAPIが、抗炎症剤、鎮痛剤、抗精神薬、制吐薬、緩下剤、抗下痢剤、抗ヒスタミン剤、または抗うつ剤のうちの1つ以上のうちの1つ以上を含む、請求項20に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記薬学的組成物が、65~85%w/wのAPIを含む、請求項20または21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記マトリックス溶液/懸濁液が、粘度調整剤を含む、請求項17~22のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記粘度調整剤が、キサンタンガムを含む、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記マトリックス溶液/懸濁液中に複数の疎水性粒子を混合することが、摂氏15~20℃でのインライン混合を含む、請求項17~24のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記抗通気剤が、テルペンまたはテルピノールのうちの1つ以上を含む、請求項17~25のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記抗通気剤が、液体フレーバーを含む、請求項17~26のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記抗通気剤が、リモネンを含む液体フレーバーを含む、請求項17~27のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記抗通気剤が、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、グレープフルーツフレーバー、ライムフレーバー、ストロベリーフレーバー、またはペパーミントフレーバーのうちの1つ以上を含む、請求項17~28のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液が、0.1~1.5%w/wの抗通気剤を含む、請求項17~29のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液が、2.0~5.0%w/wのマトリックス形成剤を含む、請求項17~30のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液が、1.0~5.0%w/wの構造形成剤を含む、請求項17~31のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項33】
請求項17~32のいずれかに記載の薬学的組成物を患者に投与することを含む、患者を治療する方法。
【請求項34】
前記患者が、ヒトである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
複数のAPI粒子と、
前記複数のAPI粒子の各API粒子をカプセル化するコーティング材料と、
マトリックス形成剤と、
構造形成剤と、
抗通気剤と、
を含む、薬学的組成物。
【請求項36】
前記薬学的組成物が、前記マトリックス形成剤、前記構造形成剤、及び前記抗通気剤を含むマトリックス溶液/懸濁液を作ることによって形成される、請求項35に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
前記複数のAPI粒子が、抗炎症剤、鎮痛剤、抗精神薬、制吐薬、緩下剤、抗下痢剤、抗ヒスタミン剤、または抗うつ剤のうちの1つ以上のうちの1つ以上を含む、請求項35または36に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
前記マトリックス溶液/懸濁液が、粘度調整剤を含む、請求項35~37のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項39】
前記粘度調整剤が、キサンタンガムを含む、請求項38に記載の薬学的組成物。
【請求項40】
前記抗通気剤が、テルペンまたはテルピノールのうちの1つ以上を含む、請求項35~39のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項41】
前記抗通気剤が、液体フレーバーを含む、請求項35~40のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項42】
前記抗通気剤が、リモネンを含む液体フレーバーを含む、請求項35~41のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項43】
前記抗通気剤が、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、グレープフルーツフレーバー、ライムフレーバー、ストロベリーフレーバー、またはペパーミントフレーバーのうちの1つ以上を含む、請求項35~42のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項44】
前記薬学的組成物が、65~85%w/wのAPIを含む、請求項35~43のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項45】
前記薬学的組成物が、1~5%w/wの抗通気剤を含む、請求項35~44のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項46】
前記薬学的組成物が、3~10%w/wのマトリックス形成剤を含む、請求項35~45のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項47】
前記薬学的組成物が、3~10%w/wの構造形成剤を含む、請求項35~46のいずれかに記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月22日に出願された米国仮出願第62/809,293号の利益を主張し、この全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
これは、疎水性粒子の薬学的懸濁液の通気を最小限に抑えることができる組成物及び組成物を調製するための方法に関し、より具体的には、API粒子上の機能的コーティングの完全性を維持しながら、改善された用量重量精度のために、コーティングされた活性薬学的成分(API)の薬学的懸濁液の通気を最小限に抑えることができる組成物及び組成物を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
薬学的組成物は、典型的には、活性薬学的成分ならびに1つ以上の不活性成分の両方を含む。活性薬学的成分(API)は、生物学的に活性であり、患者の症状、疾患、障害、及び/または病気に直接影響を及ぼすように設計されている。一方、薬学的組成物の不活性成分(複数可)は、薬学的に不活性であり、長期安定化の改善、固体製剤の充填もしくは希釈、薬物吸収の促進、液体製剤の粘度の調整、溶解性の向上、及び/または薬学的組成物の製造の支援を含むが、これらに限定されない、様々な目的に使用され得る。
【0004】
1つのタイプの薬学的組成物は、経口崩壊錠剤(ODT)である。ODTは、小児患者、老人患者、動物患者、及び/または嚥下困難を有し得る他のタイプの患者を標的とする薬学的組成物である。これらのタイプの経口投与薬学的組成物の場合、不活性成分を使用して、APIの味をマスクすることができる。
【0005】
コーティングは、APIを含有する錠剤をコーティングすることによって、またはAPI粒子自体を直接コーティングすることによって、薬学的組成物の味をマスクするために使用され得る。不活性成分を使用して、APIを湿潤コーティングまたは乾燥コーティングすることによってAPIの味をマスクし、API粒子を囲む機能的コーティングを産生して、それが口腔内におけるAPIの放出を防止するようにしてもよい。湿潤粒子コーティングでは、不活性成分(ポリマー及び添加剤)を溶媒または水に溶解または分散させて、懸濁液または溶液を形成する。この懸濁液または溶液をAPI粒子の表面上に噴霧し、溶媒または水の蒸発によってコーティングフィルムを形成することができる。湿潤粒子コーティングのための技術の例としては、マイクロカプセル化、流体床コーティング、溶媒蒸発、噴霧乾燥、パンコーティング等が挙げられる。乾燥粒子コーティング(無溶媒コーティングとも呼ばれる)において、API粒子は、不活性成分(ポリマー及び添加剤)の微粒子で機械的にコーティングされて、粒子複合材を形成する。乾燥粒子コーティングの例としては、ホットメルトコーティング、超臨界コーティング、インパクションコーティング、静電コーティング等が挙げられる。味マスキング不活性成分でコーティングされたAPI粒子は、嚥下困難を有するか、またはそうでなければ否定的な患者経験及び低コンプライアンスをもたらすであろう味に対する感受性を有する患者に、特に口腔内で溶解または分解する薬学的組成物に、より快適な経験を提供することができる。しかしながら、APIをコーティングするために使用される材料の多くは、疎水性である。したがって、コーティングされたAPI粒子は、疎水性である。
【0006】
薬学的組成物を小さな投与可能な形態に正確に分配するために、疎水性コーティングされたAPI粒子をマトリックス溶液/懸濁液中に配置して、薬学的懸濁液を形成することができる。APIを混合して薬学的懸濁液を形成することにより、投与精度の向上を可能にする。多くの場合、疎水性コーティングされたAPI粒子を含むこの薬学的懸濁液を成形型に投与し、乾燥させ、次いで成形品を、例えばボトルに移すことができる。しかしながら、このような薬学的組成物の取り扱いは、損傷及び汚染などのリスクを増加させる可能性がある。
【0007】
したがって、今日の多くのAPI懸濁液は、代わりに、予め形成されたブリスターパックに投与される。予め形成されたブリスターパックは、上記のハンドリングステップのうちの1つを排除する。成形型に投与し、次いで成形品をパッケージングのためにボトルに移す代わりに、製造業者が薬学的懸濁液を、乾燥させ、次いで密封し、パッケージングすることができる予め形成されたブリスターパックに投与することができる。したがって、予め形成されたブリスターパックは、薬学的組成物を保管することができる成形型及びパッケージの両方として機能する。
【0008】
薬学的懸濁液中の疎水性API粒子の通気を最小限に抑えことができる組成物、及び組成物を調製するための方法が提供される。例えば、疎水性コーティングされたAPI粒子をマトリックス溶液/懸濁液中に混合して、薬学的懸濁液を形成して、患者に投与するための固体薬学的組成物(すなわち、物品、錠剤等)を形成するために、成形型中に正確に投与することができる。しかしながら、コーティングされたAPI粒子の疎水性により、コーティングされたAPI粒子は、マトリックス溶液/懸濁液中への分散に抵抗する。したがって、これは、通気としても知られる薬学的懸濁液とともに空気が巻き込まれる原因となり得る。閉じ込められた空気、または薬学的懸濁液の通気は、薬学的懸濁液中のコーティングされたAPI粒子の相分離を引き起こし、非均質な薬学的懸濁液をもたらすことがある。通気及び非均質な薬学的懸濁液は、予め形成されたブリスターパックに投与された疎水性API粒子を含む薬学的懸濁液の低い用量重量精度及び完成品(すなわち、薬学的組成物)における低い含有量均一性をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の通気防止及び/または通気を最小限に抑える機械的手段は、薬学的懸濁液の高粘度のために成功していると見出されていない。例えば、通気を最小限に抑えることは、薬学的懸濁液に真空を適用することによって達成され得るが、組成物及びさらなる処理要件に応じて、このアプローチは適切ではない場合がある。特に、粘性懸濁液が捕捉された空気を「保持する」ため、薬学的懸濁液に真空を適用すると、懸濁液が上昇する可能性がある。揮発性製剤構成要素もまた、真空処理中に失われ得る。さらに、エタノールまたはシメチコンエマルジョンなどの従来の抗通気剤は、同様に、懸濁液の通気を防止することにおいて効果的でない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本明細書に提供される組成物及び方法は、疎水性コーティングされたAPI粒子を含む薬学的懸濁液の通気を最小限に抑え、薬学的懸濁液の均質性を改善し、用量重量精度を増加させる。具体的には、提供される実施形態としては、テルペン及び/またはテルピノールを含む化学化合物を含むマトリックス溶液/懸濁液を挙げることができる。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液は、テルペンリモネンを含み得る。リモネンなどのテルペンを含む化学化合物を導入することにより、疎水性コーティングされたAPI粒子は、マトリックス溶液/懸濁液中により容易に組み込まれ、薬学的懸濁液の全体的な通気を最小限に抑え得る。
【0011】
本明細書に提供される溶液、懸濁液、及び組成物は、疎水性コーティングされたAPI粒子に関して記載される。しかしながら、本明細書に提供される溶液、懸濁液、及び組成物、ならびに溶液、懸濁液、及び組成物を調製する方法を使用して、薬学的懸濁液に混合され得る任意の疎水性材料の通気を最小限に抑えることができる。例えば、他のタイプの組成物を、いくつかの実施形態による懸濁液組成物中に混合してもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物を製造する方法が提供され、本方法は、マトリックス形成剤、構造形成剤、抗通気剤、及び溶媒を含む、マトリックス溶液/懸濁液を提供することと、複数の疎水性粒子をマトリックス溶液/懸濁液中に混合して薬学的懸濁液を形成することと、薬学的懸濁液を予め形成されたブリスターパックに投与することと、を含み、投与された薬学的懸濁液の分配または投与重量は、目標投与重量の10.0パーセント以内である。本方法のいくつかの実施形態では、投与された薬学的懸濁液の分配重量パーセンテージは、目標投与重量の5.0パーセント以内である。本方法のいくつかの実施形態では、投与された薬学的懸濁液の分配重量は、目標投与重量の2.5パーセント以内である。本方法のいくつかの実施形態では、投与された薬学的懸濁液の分配重量は、目標投与重量の1.0パーセント以内である。本方法のいくつかの実施形態では、複数の疎水性粒子は、コーティングされた活性薬学的成分(API)を含む。本方法のいくつかの実施形態では、コーティングされたAPIは、抗炎症剤、鎮痛剤、抗精神薬、制吐薬、緩下剤、抗下痢剤、抗ヒスタミン剤、または抗うつ剤のうちの1つ以上を含む。本方法のいくつかの実施形態では、機能的にコーティングされたAPIの組成物は、30~90%w/wのAPIを含む。本方法のいくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液は、粘度調整剤を含む。本方法のいくつかの実施形態では、粘度調整剤は、キサンタンガムを含む。本方法のいくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液中に複数の疎水性粒子を混合することは、摂氏15~20℃でのインライン混合を含む。本方法のいくつかの実施形態では、抗通気剤は、テルペンまたはテルピノールのうちの1つ以上を含む。本方法のいくつかの実施形態では、抗通気剤は、液体フレーバーを含む。本方法のいくつかの実施形態では、抗通気剤は、リモネンを含む液体フレーバーを含む。本方法のいくつかの実施形態では、抗通気剤は、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、グレープフルーツフレーバー、ライムフレーバー、ストロベリーフレーバー、またはペパーミントフレーバーのうちの1つ以上を含む。本方法のいくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液は、0.1~1.5%w/wの抗通気剤を含む。本方法のいくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液は、2.0~5.0%w/wのマトリックス形成剤を含む。本方法のいくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液は、1.0~5.0%w/wの構造形成剤を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物が提供され、薬学的組成物は、マトリックス形成剤、構造形成剤、抗通気剤、及び溶媒を含むマトリックス溶液/懸濁液を提供するステップと、複数の疎水性粒子をマトリックス溶液/懸濁液中に混合して、薬学的懸濁液を形成するステップと、薬学的懸濁液を予め形成されたブリスターパックに投与するステップと、を含むプロセスによって調製され、投与された薬学的懸濁液の分配重量パーセンテージは、目標投与重量の10.0パーセント以内である。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、投与された懸濁液の分配重量は、目標投与重量の5.0パーセント以内である。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、投与された懸濁液の分配重量は、目標投与重量の2.5パーセント以内である。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、投与された懸濁液の分配重量は、目標投与重量の1.0パーセント以内である。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、複数の疎水性粒子は、コーティングされた活性薬学的成分(API)を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、コーティングされたAPIは、抗炎症剤、鎮痛剤、抗精神薬、制吐薬、緩下剤、抗下痢剤、抗ヒスタミン剤、または抗うつ剤のうちの1つ以上のうちの1つ以上を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、機能的にコーティングされたAPIの組成物は、30~90%w/wのAPIを含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液は、粘度調整剤を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、粘度調整剤は、キサンタンガムを含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液中に複数の疎水性粒子を混合することは、摂氏15~20℃でのインライン混合を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、抗通気剤は、テルペンまたはテルピノールのうちの1つ以上を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、抗通気剤は、液体フレーバーを含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、抗通気剤は、リモネンを含む液体フレーバーを含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、抗通気剤は、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、グレープフルーツフレーバー、ライムフレーバー、ストロベリーフレーバー、またはペパーミントフレーバーのうちの1つ以上を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、薬学的組成物は、1~5%w/wの抗通気剤を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、薬学的組成物は、3~10%w/wのマトリックス形成剤を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、薬学的組成物は、3~10%w/wの構造形成剤を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、患者を治療する方法が提供され、本方法は、薬学的組成物を患者に投与することを含む。本方法のいくつかの実施形態では、患者は、ヒトである。
【0015】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物が提供され、薬学的組成物は、複数のAPI粒子、複数のAPI粒子の各API粒子をカプセル化するコーティング材料、マトリックス形成剤、構造形成剤、及び抗通気剤を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、薬学的組成物は、マトリックス形成剤、構造形成剤、及び抗通気剤を含むマトリックス溶液/懸濁液を作ることによって形成される。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、複数のAPI粒子は、抗炎症剤、鎮痛剤、抗精神薬、制吐薬、緩下剤、抗下痢剤、抗ヒスタミン剤、または抗うつ剤のうちの1つ以上のうちの1つ以上を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液は、粘度調整剤を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、粘度調整剤は、キサンタンガムを含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、抗通気剤は、テルペンまたはテルピノールのうちの1つ以上を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、抗通気剤は、液体フレーバーを含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、抗通気剤は、リモネンを含む液体フレーバーを含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、抗通気剤は、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、グレープフルーツフレーバー、ライムフレーバー、ストロベリーフレーバー、またはペパーミントフレーバーのうちの1つ以上を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、機能的にコーティングされたAPIの組成物は、30~90%w/wのAPIを含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、薬学的組成物は、1~5%w/wの抗通気剤を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、薬学的組成物は、3~10%w/wのマトリックス形成剤を含む。薬学的組成物のいくつかの実施形態では、薬学的組成物は、3~10%w/wの構造形成剤を含む。
【0016】
ここで、本発明は、単なる例として、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】様々な濃度の液体フレーバーを有する疎水性コーティングされたAPI粒子のd10粒径の評価を提供するグラフを示す。
【
図2】様々な濃度の液体フレーバーを有する疎水性コーティングされたAPI粒子のd50粒径の評価を提供するグラフを示す。
【
図3】様々な濃度の液体フレーバーを有する疎水性コーティングされたAPI粒子のd90粒径の評価を提供するグラフを示す。
【
図4】様々な濃度の純粋なリモネンを有する疎水性コーティングされたAPI粒子のd10粒径の評価を提供するグラフを示す。
【
図5】様々な濃度の純粋なリモネンを有する疎水性コーティングされたAPI粒子のd50粒径の評価を提供するグラフを示す。
【
図6】様々な濃度の純粋なリモネンを有する疎水性コーティングされたAPI粒子のd90粒径の評価を提供するグラフを示す。
【
図7】ストロベリー液体フレーバー及びオレンジ液体フレーバーを有する疎水性コーティングされたAPIの様々な粒径分析を比較するグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
疎水性コーティングされたAPI粒子を含む薬学的懸濁液の通気を最小限に抑えるために製剤化される組成物の例示的な実施形態が、本明細書に記載される。疎水性コーティングされたAPI粒子を含む薬学的懸濁液の通気を最小限に抑える方法も提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される実施形態は、マトリックス溶液/懸濁液に、テルペン及び/またはテルピノールを含む化学化合物を添加することを含んでもよい。具体的には、本明細書に提供される懸濁液の実施形態は、テルペン及び/またはテルピノールを含む液体フレーバーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、液体フレーバー(複数可)は、テルペンリモネンを含んでもよい。特定の化学化合物、具体的にはリモネンを含む液体フレーバーの添加は、薬学的懸濁液の通気を最小限に抑え、薬学的懸濁液の均質性を高め、薬学的懸濁液が成形型に注入されたときの用量重量精度を向上させることができる。本明細書で使用される場合、「用量重量精度」及び関連用語は、薬学的懸濁液を予め形成された成形型に正確に分配する能力を指す。薬学的懸濁液の用量重量精度は、均一性、粘度、化学構成要素、投与器具等を含むが、これらに限定されない、いくつかの変数に依存し得る。
【0019】
上記のように、従来の通気防止及び/または通気を最小限に抑える機械的手段は、薬学的懸濁液の高粘度のために成功していると見出されていない。例えば、懸濁液に真空を適用すると、粘性懸濁液が捕捉された空気を「保持する」ため、懸濁液の高さが上昇し得る。揮発性製剤構成要素もまた、真空処理中に失われ得る。さらに、エタノールまたはシメチコンエマルジョンなどの従来の抗通気剤は、同様に、懸濁液の通気を防止することにおいて効果的でない。
【0020】
したがって、いくつかの化学化合物、特に、リモネンなどのテルペン及び/またはテルピノールを含む液体フレーバーは、疎水性コーティングされたAPI粒子がマトリックス溶液/懸濁液中に混合されるとき、薬学的懸濁液の通気を最小限に抑えることができることが発見されている。通気を最小限に抑えることによって、疎水性コーティングされたAPI粒子は、薬学的懸濁液全体により効率的かつ効果的に分散される。この増加した分散は、懸濁液の均質性、用量重量精度、及び完成品の含有量均一性を高めることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、コーティングされたAPI粒子または薬学的組成物は、30.0~90.0%w/wのAPIを含み得る。いくつかの実施形態では、コーティングされたAPI粒子または薬学的組成物は、40.0~85.0%w/w、50.0~80.0%w/w、または70.0~80.0%w/wのAPIを含み得る。いくつかの実施形態では、コーティングされたAPI粒子または薬学的組成物は、40.0%w/w超、50.0%w/w超、60.0%w/w超、65%w/w超、70.0%w/w超、75.0%w/w超、80.0%w/w超、または85.0%w/w超のAPIを含み得る。いくつかの実施形態では、コーティングされたAPI粒子または薬学的組成物は、90.0%w/w未満、85.0%w/w未満、80.0%w/w未満、75.0%w/w未満、70.0%w/w未満、60.0%w/w未満、50.0%w/w未満、または40.0%w/w未満のAPIを含み得る。
【0022】
本明細書に記載される実施形態による薬学的懸濁液の通気を最小限に抑えるために提供される組成物及び方法は、無溶媒混合プロセスによって調製される疎水性コーティングされたAPI粒子とともに使用され得る。したがって、以下に提供されるいくつかの実施形態は、無溶媒混合プロセスによって調製される1つ以上の疎水性コーティングされたAPI粒子を含む薬学的懸濁液の文脈で以下に記載される。しかしながら、当業者は、懸濁液の通気を最小限に抑えるための開示された方法の他の用途を容易に認識することができる。例えば、不活性成分を有するAPIをコーティングまたはカプセル化するために使用することができる異なる混合プロセスとしては、糖コーティング、フィルムコーティング、マイクロカプセル化の他の変形、圧縮コーティング、乾燥コーティングの他の変形、溶融コーティング、浸漬コーティング、ロータリーダイコーティング、静電コーティング、及び/または他の好適なタイプのコーティングが挙げられる。
【0023】
上記のように、疎水性コーティングされたAPI粒子をマトリックス溶液/懸濁液中に混合すると、液体中に捕捉された空気、または気泡を生成することがある。コーティングされたAPI粒子は疎水性であるため、マトリックス溶液/懸濁液に対する親和性は概して低い。したがって、疎水性コーティングされたAPI粒子は、マトリックス溶液/懸濁液と容易に会合し、分散する代わりに、好ましくは、捕捉された空気と会合する。多くの流体では、気泡は通常、流体の表面に移動し、上の空気中に消える。しかしながら、疎水性コーティングされたAPI粒子は、捕捉された空気に対する親和性を有するため、疎水性コーティングされたAPI粒子は、気泡を「保持する」ため、気泡が表面に移動し、流体の上の空気中に放出するのを妨げる。これにより、薬学的懸濁液は通気される。懸濁液の通気は、相分離、したがって、非均質な薬学的懸濁液を引き起こし得る。相分離は、投与ポンプによって導入される剪断力に曝露されると誇張される可能性もある。非均質な薬学的懸濁液は、投与ポンプを通過するとポンプの焼き付きを引き起こし得、不正確な用量重量、完成品全体の均一性の欠如、及び停止による低い生産効率につながる可能性がある。
【0024】
さらに、疎水性コーティングされたAPI粒子を含む薬学的懸濁液は、高負荷の疎水性コーティングされたAPI粒子(すなわち、50重量%もの疎水性コーティングされたAPI粒子)に起因する高い粘度を有し得る。上記のように、疎水性コーティングされたAPI粒子の懸濁液へのインライン混合中に懸濁液中に空気を閉じ込めることにより、懸濁液の粘度がなおもさらに増加し得る。したがって、薬学的懸濁液の相分離及び非均質性は、最終産物(すなわち、薬学的組成物)の用量重量精度及び均一性に悪影響を及ぼすだけでなく、粘度の増加にも悪影響を及ぼす。
【0025】
興味深いことに、ある特定の化学化合物が、マトリックス溶液/懸濁液に添加されるとき、疎水性コーティングされたAPI粒子を含む薬学的懸濁液の通気を最小限に抑えることができることが見出されている。特に、本明細書に提供されるいくつかの実施形態によれば、テルペン及び/またはテルピノールを含む化学化合物は、疎水性コーティングされたAPI粒子をマトリックス溶液/懸濁液にインライン混合することによって引き起こされる懸濁液中の捕捉された空気の量を最小限に抑えることができる。例えば、比較的低い濃度でも、テルペン及び/またはテルピノールを含む液体フレーバーを含むマトリックス溶液/懸濁液は、薬学的懸濁液の通気を最小限に抑えることができる。具体的には、リモネンを含む1つ以上の液体フレーバーを含むマトリックス溶液/懸濁液は、疎水性コーティングされたAPI粒子のインライン混合中の薬学的懸濁液における通気を最小限に抑えることができることが発見されている。テルペン及びテルピノールを含む他の化学化合物は、懸濁液の通気を最小限に抑えることにも成功することが示されている。例えば、リモネン、カルボン、フムレン、タキサジエン、及びスクアレンなどのテルペンを含む化学化合物は、懸濁液の通気を最小限に抑えるのに好適であり得る。テルピノールはまた、好適な抗通気剤であってもよい。いくつかの実施形態では、純粋なテルペン及び/または純粋なテルピノールは、抗通気剤として使用され得る。いくつかの実施形態では、テルペン及び/またはテルピノールを含む液体フレーバーを、抗通気剤として使用してもよい。いくつかの実施形態では、テルペン及び/またはテルピノールを含む他の好適な化学化合物を、抗通気剤として使用してもよい。
【0026】
本明細書で使用される場合、「活性薬学的成分」または「API」は、疾患の診断、治癒、緩和、治療、または予防に使用され得る薬剤製品を指す。任意のAPIは、本開示の目的のために使用され得る。好適なAPIとしては、限定されないが、鎮痛剤及び抗炎症剤、制酸剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗細菌剤、抗凝固剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗下痢薬、抗てんかん剤、抗真菌剤、抗痛風剤、抗高血圧剤、抗マラリア剤、抗偏頭痛剤、抗ムスカリン剤、抗腫瘍剤及び免疫抑制剤、抗プロタゾール剤、抗精神薬、制吐薬、抗リウマチ剤、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安薬、過敏剤、鎮静剤、催眠剤及び神経弛緩剤、β遮断剤、強心剤、コルチコステロイド、咳止め剤、細胞毒性剤、充血除去剤、利尿剤、酵素、抗パーキンソンシン剤、胃腸管剤、ヒスタミン受容体アンタゴニスト、緩下剤、脂質調節剤、局所麻酔薬、神経筋作用薬、硝酸塩及び抗狭心症薬、栄養剤、オピオイド鎮痛薬、経口ワクチン、タンパク質、ペプチド及び組換え薬、下剤、性ホルモン及び避妊薬、殺精子剤、及び刺激薬、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。これらのAPIの具体例のリストは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,709,669号に見出され得る。存在する場合、APIは、臨床研究によって確立される必要な生理学的効果を示すために必要な量で薬学的製剤中に存在する。当業者は、本開示に従って作製された剤形に含めるための適切な量のAPIを容易に決定することができる。さらに、本明細書に提供される組成物、及び組成物を調製する方法は、上記に列挙されるAPIに限定されない。本明細書に記載される通気挙動は、マトリックス溶液/懸濁液が、API自体ではなくAPIのコーティングと相互作用するため、APIとは無関係である。
【0027】
いくつかの液体フレーバーなど、テルペン及び/またはテルピノールを含むいくつかの化学化合物でもたらされる1つの課題は、それらが比較的油性である傾向があることである。従来の油及び水と同様に、これらの油性化学化合物はマトリックス溶液/懸濁液に容易に分散しない場合がある。しかしながら、以下で考察されるように、本明細書の実施形態によるマトリックス溶液/懸濁液は、マトリックス形成剤としてゼラチンを含んでもよい。ゼラチンは本来、穏やかな界面活性剤である。界面活性剤は、2つの材料間の表面張力を低下させ得る。したがって、いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液のゼラチンは、油性化学化合物とマトリックス溶液/懸濁液との間の表面張力を低減し得る。これにより、液体フレーバーなどの油性化学化合物をマトリックス溶液/懸濁液に適切に組み込むことができる。
【0028】
通常の処理条件下で、テルペン及び/またはテルピノールを含む化学化合物を使用することなく、疎水性コーティングされたAPI粒子のコーティングは、疎水性コーティングされたAPI粒子をマトリックス溶液/懸濁液中に混合するのに必要な剪断力により、時間とともに浸食される。しかしながら、コーティングが有意な機能性を保持する2時間以上の「処理ウィンドウ」が存在する。この「処理ウィンドウ」の正確な時間は、産生物ごとに異なり、疎水性コーティングされたAPI粒子の構成要素の組成、マトリックス溶液/懸濁液の組成、疎水性コーティングされたAPI粒子を調製するために使用される材料の量、APIの物理化学的特性、及び/または混合条件に依存し得る。残念ながら、テルペン及び/またはテルピノールを含む化学化合物の存在下では、この「処理ウィンドウ」は、これらの化学化合物と疎水性コーティングされたAPI粒子のコーティングとの間の相互作用に起因して、著しく低減され得る。これらの相互作用は、コーティングの機能的特性を損なう可能性がある。例えば、液体フレーバーと疎水性コーティングされたAPI粒子のコーティングとの間の相互作用は、コーティングの任意の味マスキング機能を損なう可能性がある。とはいえ、閾値の化学化合物(すなわち、液体フレーバー)濃度が存在し、それを下回ると化学化合物がコーティングを著しく損なうことはないが、疎水性コーティングされたAPI粒子のコーティングが著しく浸食されるほど「処理ウィンドウ」が低減しないことが発見されている。したがって、テルペン及び/またはテルピノールを含む化学化合物のこの最適な量は、懸濁液の通気を十分に最小限に抑え、均一な最終産物を得るために成形型に正確に投与することができる均質な薬学的懸濁液をもたらす。
【0029】
さらに、テルペン及び/またはテルピノールを含む化学化合物、及び具体的にはリモネンを含む液体フレーバーは、薬学的懸濁液の凍結点を低下させる可能性を有し、これは、凍結乾燥によってさらに処理される産生物の溶融欠陥をもたらし得る。特に、リモネンは-74℃の凍結点を有する。しかしながら、開示された産生物の調製中に溶融欠陥は観察されておらず、したがって、テルペン及び/またはテルピノールを含む少なくともいくつかの化学化合物は、懸濁液に影響を与えず、それにより下流の凍結及び凍結乾燥プロセスステップが悪影響を受ける。現在の状況下で溶融欠陥が存在しないのは、凍結点抑制剤(すなわち、リモネン)の存在下であっても、産生物の構造を維持するのに役立つ、薬学的懸濁液の高い固体含有量に起因すると考えられている。
【0030】
本明細書に記載の実施形態によるマトリックス溶液/懸濁液は、マトリックス形成剤、構造形成剤、抗通気剤、粘度調整剤、及び/または溶媒を含んでもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液、薬学的懸濁液、または薬学的組成物中のテルペン及び/またはテルピノール(すなわち、抗通気剤)を含む化学化合物の量は、0.001~5.0%w/wであり得る。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液、薬学的懸濁液、または薬学的組成物中のテルペン及び/もしくはテルピノール(すなわち、抗通気剤)を含む化学化合物の量は、1~5%w/w、1~4%w/w、1~3%w/w、1~2%w/w、0.05~3.0%w/w、0.1~2.0%w/w、または0.5~1.0%w/wであり得る。いくつかの実施形態では、0.001%w/w超、0.01%w/w超、0.05%w/w超、0.1%w/w超、0.3%w/w超、0.5%w/w超、0.8%w/w超、1.0%w/w超、1.5%w/w超、2.0%w/w超、2.5%w/w超、3.0%w/w超、3.5%w/w超、4.0%w/w超、または4.5%w/w超の、テルペン及び/もしくはテルピノール(すなわち、抗通気剤)を含む化学化合物が、マトリックス溶液/懸濁液、薬学的懸濁液、または薬学的組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、5.0%w/w未満、4.5%w/w未満、4.0%w/w未満、3.5%w/w未満、3.0%w/w未満、2.5%w/w未満、2.0%w/w未満、1.5%w/w未満、1.0%w/w未満、0.8%w/w未満、0.6%w/w未満、0.3%w/w未満、または0.1%w/w未満の、テルペン及び/もしくはテルピノール(すなわち、抗通気剤)を含む化学化合物が、マトリックス溶液/懸濁液、薬学的懸濁液、または薬学的組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、好適な抗通気剤は、オレンジフレーバー、ストロベリーフレーバー、ミントフレーバー、ラズベリーフレーバー、リコリスフレーバー、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー、グレープフルーツフレーバー、キャラメルフレーバー、バニラフレーバー、チェリーフレーバー、グレープフレーバー、ミックスフルーツフレーバー、トゥッティフルッティフレーバー、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0032】
いくつかの実施形態によるマトリックス溶液/懸濁液のマトリックス形成剤は、疎水性コーティングされたAPI粒子に対して薬理学的に許容されるか、または不活性である任意の水溶性または水分散性材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、マトリックス形成剤は、ゼラチンなどのポリペプチドであってもよい。ゼラチンは(水中で加熱することによって)少なくとも部分的に加水分解され得る。他の好適なマトリックス形成剤材料としては、加水分解されたデキストラン、デキストリン、及びアルギン酸塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及び/またはアカシアなどの多糖類が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中のマトリックス形成剤の量は、約0.1~10%w/wであり得る。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中のマトリックス形成剤の量は、1.0~8.0%w/wまたは2.0~5.0%w/wを含んでもよい。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中のマトリックスの量は、0.1%w/w超、0.5%w/w超、1.0%w/w超、2.0%w/w超、3.0%w/w超、4.0%w/w超、4.5%w/w超、5.0%w/w超、または8.0%w/w超を含んでもよい。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中のマトリックス形成剤の量は、10%w/w未満、8.0%w/w未満、6.0%w/w未満、5.0%w/w未満、4.0%w/w未満、3.0%w/w未満、2.5%w/w未満、2.0%w/w未満、1.5%w/w未満、または1.0%w/w未満を含んでもよい。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中のマトリックス形成剤の量は、約3~15%w/w、約4~10%w/w、または約4~7%w/wであり得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中のマトリックス形成剤の量は、0.1%w/w超、0.5%w/w超、1.0%w/w超、2.0%w/w超、3.0%w/w超、4.0%w/w超、5.0%w/w超、6.0%w/w超、7.0%w/w超、8.0%w/w超、9.0%w/w超、10.0%w/w超、11.0%w/w超、12.0%w/w超、13.0%w/w超、または14.0%w/w超を含んでもよい。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中のマトリックス形成剤の量は、15%w/w未満、14.0%w/w未満、13.0%w/w未満、12.0%w/w未満、10.0%w/w未満、9.0%w/w未満、8%w/w未満、7%w/w未満、6%w/w未満、5%w/w未満、または4.0%w/w未満を含んでもよい。
【0033】
いくつかの実施形態によるマトリックス溶液/懸濁液の構造形成剤、または増量剤は、糖を含んでもよい。例えば、好適な構造形成剤としては、マンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトース、グリシン、シクロデキストリン、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。構造形成剤は、結晶化して凍結乾燥剤形に構造的堅牢性をもたらすため、凍結乾燥において増量剤として使用することができる。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中の構造形成剤の量は、約0.1~10%w/wであり得る。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中の構造形成剤の量は、1.0~8.0%w/wまたは2.0~5.0%w/wを含んでもよい。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中の構造形成剤の量は、0.1%w/w超、0.5%w/w超、1.0%w/w超、2.0%w/w超、3.0%w/w超、4.0%w/w超、4.5%w/w超、5.0%w/w超、または8.0%w/w超を含んでもよい。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液または薬学的懸濁液中の構造形成剤の量は、10%w/w未満、8.0%w/w未満、6.0%w/w未満、5.0%w/w未満、4.0%w/w未満、3.0%w/w未満、2.5%w/w未満、2.0%w/w未満、1.5%w/w未満、または1.0%w/w未満を含んでもよい。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中の構造形成剤の量は、約3~15%w/w、約4~10%w/w、または約4~7%w/wであり得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中の構造形成剤の量は、0.1%w/w超、0.5%w/w超、1.0%w/w超、2.0%w/w超、3.0%w/w超、4.0%w/w超、5.0%w/w超、6.0%w/w超、7.0%w/w超、8.0%w/w超、9.0%w/w超、10.0%w/w超、11.0%w/w超、12.0%w/w超、13.0%w/w超、または14.0%w/w超を含んでもよい。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中の構造形成剤の量は、15%w/w未満、14.0%w/w未満、13.0%w/w未満、12.0%w/w未満、10.0%w/w未満、9.0%w/w未満、8%w/w未満、7%w/w未満、6%w/w未満、5%w/w未満、または4.0%w/w未満を含んでもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液及び薬学的懸濁液は、粘度調整剤を含んでもよい。例えば、本明細書に提供される実施形態による粘度調整剤は、キサンタンガム、アルギニン、グアーガム、もしくはローカストビーンガムなどの植物性ガム、コラーゲンもしくはゼラチンなどのタンパク質、寒天、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、もしくはカラギーナンなどの糖、クズウコン、コーンスターチ、カタクリデンプン、ジャガイモデンプン、サゴ、もしくはタピオカなどのデンプン、及び/または他の好適な粘度調整剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液、薬学的懸濁液、または薬学的組成物中の粘度調整剤の量は、0~0.2%w/wまたは0.01~0.1%w/wであり得る。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液、薬学的懸濁液、または薬学的組成物中の粘度調整剤の量は、0.01%w/w超、0.03%w/w超、0.05%w/w超、0.07%w/w超、0.1%w/w超、0.12%w/w超、0.15%w/w超、または0.17%w/w超であり得る。いくつかの実施形態では、マトリックス溶液/懸濁液、薬学的懸濁液、または薬学的組成物中の粘度調整剤の量は、0.2%w/w未満、0.18%w/w未満、0.15%w/w未満、0.12%w/w未満、0.1%w/w未満、0.08%w/w未満、0.06%w/w未満、または0.03%w/w未満であり得る。
【0035】
懸濁液/溶液及び薬学的懸濁液の溶媒は水であってもよいが、懸濁液/溶液もまた共溶媒を含んでもよい。いくつかの実施形態では、溶媒は、エタノール、アルコール、イソプロパノール、他の低級アルカノール、水(例えば、精製水)、またはそれらの組み合わせであり得る。例えば、好適な溶媒及び/または共溶媒は、tert-ブチルアルコールなどのアルコールであってもよい。いくつかの実施形態では、薬学的製剤の残りのバランスは、溶媒(すなわち、Q.S.100%)である。
【0036】
マトリックス溶液/懸濁液及び薬学的懸濁液はまた、追加の薬学的に許容される薬剤または賦形剤を含有してもよい。かかる追加の薬学的に許容される薬剤または賦形剤としては、限定されないが、糖、塩化ナトリウム及びケイ酸アルミニウムなどの無機塩、修飾デンプン、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、香味剤、pH調整剤、甘味料、味マスキング剤、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適な着色剤としては、赤色、黒色、及び黄色の酸化鉄、ならびにFD&C青色2号及びFD&C赤色40号などのFD&C染料と、それらの組み合わせを挙げることができる。好適なpH調整剤としては、クエン酸、酒石酸、リン酸、塩酸、マレイン酸、水酸化ナトリウム(例えば、3%w/wの水酸化ナトリウム溶液)、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。好適な甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、及びタウマチン、ならびにそれらの組み合わせを挙げることができる。好適な味マスキング剤としては、重炭酸ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン含有化合物、吸着剤またはマイクロカプセル化活性剤、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。当業者は、必要に応じて、これらの様々な追加の賦形剤の好適な量を容易に決定することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、薬学的懸濁液は、APIを摂氏10~40、15~25、または15~20度の温度で1つ以上のコーティング材料と混合することによって調製され得る。いくつかの実施形態では、材料は、摂氏40度未満、35度未満、30度未満、25度未満、20度未満、または15度未満の温度で混合され得る。いくつかの実施形態では、材料は、摂氏10度超、15度超、20度超、25度超、30度超、または35度超の温度で混合され得る。いくつかの実施形態では、材料は、PharmaRAM II音響ミキサー、RAM5 Pharma音響ミキサー、またはRAM 55 Pharmaミキサー(Resodyn Mixers)を使用して混合され得る。
【0038】
薬学的組成物は、薬学的懸濁液を予め形成されたブリスターパックに投与することによって調製され得る。いくつかの実施形態では、凍結乾燥させた経口崩壊錠剤は、薬学的懸濁液をブリスターパックに投与することによって調製され得る。いくつかの実施形態では、投与ポンプは体積でポンプするが、プロセスは重量で制御される。したがって、ある剤形から次の剤形までの含有量の均一性を確保するために、投与プロセスは、投与された薬学的懸濁液の体積対重量パーセンテージまたは投与された薬学的懸濁液の分配重量が一貫しているように制御されてもよい。例えば、体積対重量パーセンテージは、10パーセント以内、8パーセント以内、6パーセント以内、5パーセント以内、4パーセント以内、3パーセント以内、2パーセント以内、1.5パーセント以内、1パーセント以内、0.5パーセント以内、または0.25パーセント以内で一貫していてもよい。いくつかの実施形態では、投与された薬学的懸濁液の重量は、目標投与重量の10パーセント以内、8パーセント以内、6パーセント以内、5パーセント以内、4パーセント以内、2.5パーセント以内、2パーセント以内、1.5パーセント以内、1パーセント以内、0.5パーセント以内、または0.25パーセント以内である。さらに、懸濁液の粘度は、投与が容易になるように十分に低く保つ必要がある。上記のように、高粘度の懸濁液は、投与中のポンプの焼き付きを引き起こし得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物の各剤形は、米国薬局方の含有量均一性要件を満たす。いくつかの実施形態では、薬学的組成物の各剤形は、米国薬局方の製品品質要件(例えば、揮発性含有量、崩壊、錠剤破壊力、投薬単位の均一性等)を満たす。
【実施例0040】
通気を最小限に抑えることにおけるテルペン及び/またはテルピノールを含む化学化合物の有効性は、経時的な薬学的懸濁液中の疎水性コーティングされたAPI粒子の粒径を測定することによって部分的に決定することができる。化学化合物が効果的である場合、懸濁液の通気は十分に低く、疎水性コーティングされたAPI粒子の粒径は、経時的に一定に維持されるか、またはほとんど減少しないであろう。効果的でない場合、薬学的懸濁液の通気は、所望のものよりも高くなり、疎水性コーティングされたAPI粒子の粒径は、経時的により実質的に減少し得る。薬学的懸濁液の通気の程度は、混合容器内の泡沫の高さの測定によって評価される。機能的にコーティングされた粒子の粒径は、レーザー回折、Malvern Mastersizerなどの粒子分析器、または微粒子を分析するための任意の他の好適な手段を使用して測定することができる。
【0041】
実施例1:一連の懸濁液混合物は、様々なレベルのリモネン、オレンジフレーバー、及びストロベリーフレーバーを含有するマトリックス溶液/懸濁液中でコーティングされたAPIを混合することによって製造された。これらの懸濁液からの泡沫の高さを、表1、2、及び3にそれぞれ要約する。
【表1】
【表2】
【表3】
【0042】
表1及び2の結果は、レベル0.15%以上でのリモネン及びオレンジフレーバーの添加が、通気を最小限に抑えることを示す。ストロベリーの場合(表3)もまた、通気を低減したが、同程度ではなかった。
【0043】
実施例2:
図1、2、及び3は、様々な濃度の液体オレンジフレーバーを含む薬学的懸濁液中の疎水性コーティングされたAPI粒子の粒径(それぞれ、d10、d50、及びd90)の減少を示す。イブプロフェンをモデルAPIとして使用した。そのd10に関して表される粒径は、所与の量の試料中の粒子の10%が、所与の粒径未満であることを意味する。したがって、d50粒径は、所与の量の試料中の粒子の50パーセントが、所与の粒径未満であり、d90粒径は、所与の量の試料中の粒子の90パーセントが、所与の粒径未満であることを表す。具体的には、
図3~5は、低剪断混合で最大6時間にわたって保持された、0.0%、0.15%、0.45%、及び0.60%w/wを含む濃度で疎水性コーティングされたAPI及び液体オレンジフレーバーを含有する懸濁製剤の試験結果を示す。
【0044】
最大0.45%w/wのオレンジフレーバー(0.15%w/wを含む)の濃度で、最初の2時間の「処理ウィンドウ」内のd10、d50、及びd90粒径の減少は、いかなる液体フレーバーも含まない(0%の液体フレーバー)疎水性コーティングされたAPI粒子を含む懸濁液のそれとほぼ同様である。しかしながら、0.6%w/wの濃度の液体オレンジフレーバーでは、疎水性コーティングされたAPI粒子のコーティングは容易に除去され、粒径の急速な減少が観察される。さらに、0.3%w/wの液体オレンジフレーバー濃度では、薬学的懸濁液の通気は十分に低く、コーティングされたAPI粒子のコーティングに損傷があるとしてもほとんどなく、疎水性コーティングされたAPI粒子の粒径の最小限の減少しかなかった。
【0045】
実施例3:
図4、5、及び6は、いくつかの液体フレーバーに見られる、特定の構成要素リモネンについて、疎水性コーティングされたAPI粒子のd10、d50、及びd90粒径のそれぞれの減少に関するデータを提供する。これらの試験を行って、懸濁液中の疎水性コーティングされたAPI粒子に対する液体フレーバーの特定の構成要素、リモネンの挙動を探索した。イブプロフェンをモデルAPIとして使用した。図に示されているリモネンの濃度は、液体フレーバーを使用した場合に存在するであろうリモネンの濃度よりも有意に高いことに留意されたい。
図6~8において、純粋なリモネンを0.25%w/w、0.45%w/w、及び0.75%w/wの濃度で使用し、24時間にわたって試験した。すべての3つの図に示されるように、0.25%w/wのリモネン濃度は、0.45%w/w及び0.75%w/wのリモネン濃度よりも、疎水性コーティングされたAPI粒径のコーティングに対する有害作用がはるかに少なかった。さらに、0.25%w/wリモネンで試験した薬学的懸濁液は、十分に低い量の通気を含んでいた。したがって、これらの試験は、
図3~5で試験した液体オレンジフレーバーのリモネンが、薬学的懸濁液の通気を最小限に抑え、その後、疎水性コーティングされたAPI粒子のコーティングを比較的高い量及び/または比較的高い曝露時間で浸食する少なくとも部分的な原因であることを確認する。
【0046】
実施例4:
図7は、2つの異なる液体フレーバー(ストロベリー及びオレンジ)の試験データを示す。疎水性コーティングされたAPI粒子のd10、d50、及びd90粒径を、ストロベリー液体フレーバー及びオレンジ液体フレーバーの両方について試験した。ストロベリー及びオレンジの両方の液体フレーバーは、リモネンを含む。イブプロフェンをモデルAPIとして使用した。図に示されるように、両方のフレーバーは、疎水性コーティングされたAPI粒径に関して同様に振る舞う。d10粒径試料は、試験の最初の2時間以内に、d50及びd90粒径試料よりも大きな量の粒径減少を示した。d50及びd90粒径試料は、同じ2時間以内に粒径の減少が少ないことを示した。しかしながら、この観察は、先に議論された実施例のd10、d50、及びd90粒径のデータと一致する。
【0047】
さらに、すべての試験において、疎水性コーティングされたAPI(イブプロフェン)粒子の粒径が減少するにつれて、5μm~20μmの粒径を含む別個の粒子集団が現れ、時間の経過とともに増加することが観察された。これらの粒子は、コーティングの浸食の前に、剪断力によって変形した連続コーティング材料内に埋め込まれた非変形コーティング材料粒子であると考えられる。したがって、コーティングが浸食され、疎水性コーティングされたAPI粒子の粒径が減少するにつれて、これらのより小さい粒子の集団サイズは、それらを囲む変形されたコーティング材料が浸食されるにつれて増加し、これらの非変形粒子が疎水性コーティングされたAPI粒子から放出される。
【0048】
全体として、これらの試験は、疎水性コーティングされたAPI粒子を含む薬学的懸濁液に添加するテルペンリモネンの量を最適化することにより、懸濁液中の通気量を最小限に抑えて、下流処理を可能にすると同時に、疎水性コーティングされたAPI粒子のコーティングに悪影響を及ぼさないことを示す(疎水性コーティングされたAPI粒子の粒径によって決定される)。
【0049】
前述の説明は、説明の目的のために、特定の実施形態に関して説明されてきた。しかしながら、上記の例示的な考察は、網羅的であることを意図するものではなく、または本発明を開示された正確な形態に限定するものではない。上記の教示を考慮して、多くの修正及び変形が可能である。実施形態は、技法の原理及びそれらの実用的な応用を最もよく説明するために選択され、説明された。それにより、当業者であれば、企図される特定の使用に適した様々な修正を用いて、本技法及び様々な実施形態を最適に利用することが可能となる。
【0050】
本開示及び実施例は、添付の図面を参照して完全に説明されているが、様々な変更及び修正が当業者に明らかになることに留意されたい。そのような変更及び修正は、特許請求の範囲によって定義される本開示及び実施例の範囲内に含まれるものと理解されるべきである。