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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015570
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】液晶表示装置及び偏光板
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1335 20060101AFI20250123BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20250123BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20250123BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20250123BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20250123BHJP
   G02B 1/10 20150101ALI20250123BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20250123BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20250123BHJP
【FI】
G02F1/1335
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G02F1/13357
G02B5/20
G02B5/30
G02B1/10
G02B1/111
G02B1/115
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024196550
(22)【出願日】2024-11-11
(62)【分割の表示】P 2023001436の分割
【原出願日】2015-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2014237633
(32)【優先日】2014-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015042005
(32)【優先日】2015-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 靖
(72)【発明者】
【氏名】向山 幸伸
(57)【要約】
【課題】励起光を出射する光源と量子ドットを含むバックライト光源を有する液晶表示装置において、偏光子保護フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた場合にも、虹斑が抑制された液晶表示装置を提供する。
【解決手段】バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、前記バックライト光源は、励起光を出射する光源と量子ドットを含むものであり、前記偏光板のうち少なくとも一方の偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面にポリエステルフィルムが積層されたものであり、前記ポリエステルフィルムは、1500~30000nmのリタデーションを有し、前記ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に反射防止層及び/又は低反射層が積層されている、液晶表示装置。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は、励起光を出射する光源と量子ドットを含むものであり、
前記偏光板のうち少なくとも一方の偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面にポリエステルフィルムが積層されており、
前記ポリエステルフィルムは、1500nm以上30000nm以下の面内リタデーションを有し、
前記ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に反射防止層又は低反射層が積層され、
前記ポリエステルフィルム、及び前記反射防止層を含む積層体において、前記反射防止層側の表面から測定した波長550nmにおける表面反射率が2.0%以下である、
又は、
前記ポリエステルフィルム、及び前記低反射層を含む積層体において、前記低反射層側の表面から測定した波長550nmにおける表面反射率が5%未満である、
液晶表示装置。
【請求項2】
バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、各ピークの半値幅が5nm以上80nm以下であり、
前記偏光板のうち少なくとも一方の偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面にポリエステルフィルムが積層されており、
前記ポリエステルフィルムは、1500nm以上30000nm以下の面内リタデーションを有し、
前記ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に反射防止層又は低反射層が積層され、
前記ポリエステルフィルム、及び前記反射防止層を含む積層体において、前記反射防止層側の表面から測定した波長550nmにおける表面反射率が2.0%以下である、
又は、
前記ポリエステルフィルム、及び前記低反射層を含む積層体において、前記低反射層側の表面から測定した波長550nmにおける表面反射率が5%未満である、
液晶表示装置。
【請求項3】
前記バックライト光源が、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上750nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、各ピークの半値幅が5nm以上80nm以下である、請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記偏光板のうち少なくとも一方の偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面にポリエステルフィルムが、前記偏光子の透過軸とポリエステルフィルムの進相軸とがなす角が-15度~15度になるように積層されている、請求項1~3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記ポリエステルフィルムは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)との比(Re/Rth)が、0.2以上2.0以下である、請求項1~4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記反射防止層及び/又は低反射層と、前記ポリエステルフィルムとの間に、他の層を有する、請求項1~5のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記反射防止層及び/又は低反射層と、前記ポリエステルフィルムとの間に、防眩層を有する、請求項1~5のいずれかに記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置及び偏光板に関する。詳しくは、虹状の色斑の発生が軽減された液晶表示装置及び偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)に使用される偏光板は、通常ポリビニルアルコール(PVA)などにヨウ素を染着させた偏光子を2枚の偏光子保護フィルムで挟んだ構造であり、偏光子保護フィルムとしては殆どの場合トリアセチルセルロース(TAC)フィルムが用いられている。近年、LCDの薄型化に伴い、偏光板の薄層化が求められるようになっている。しかし、このために保護フィルムとして用いられているTACフィルムの厚みを薄くすると、充分な機械強度を得ることが出来ず、また透湿性が悪化するという問題が発生する。また、TACフィルムは非常に高価であり、安価な代替素材としてポリエステルフィルムが提案されているが(特許文献1~3)、虹状の色斑が観察されるという問題があった。
【0003】
偏光子の片側に複屈折性を有する配向ポリエステルフィルムを配した場合、バックライトユニット、または、偏光子から出射した直線偏光はポリエステルフィルムを通過する際に偏光状態が変化する。透過した光は配向ポリエステルフィルムの複屈折と厚さの積であるリタデーションに特有の干渉色を示す。そのため、光源として冷陰極管や熱陰極管など不連続な発光スペクトルを用いると、波長によって異なる透過光強度を示し、虹状の色斑となる(参照:第15回マイクロオプティカルカンファレンス予稿集、第30~31項)。
【0004】
上記の問題を解決する手段として、バックライト光源として白色発光ダイオードのような連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色光源を用い、更に偏光子保護フィルムとして一定のリタデーションを有する配向ポリエステルフィルムを用いることが提案されている(特許文献4)。白色発光ダイオードでは、可視光領域において連続的で幅広い発光スペクトルを有する。そのため、複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状に着目すると、配向ポリエステルフィルムのレタデーションを制御することで、光源の発光スペクトルと相似なスペクトルが得られ、虹斑の抑制が可能であることが提案されている。
【0005】
配向ポリエステルフィルムの配向方向と偏光板の偏光方向を互いに対して直交、あるいは平行にすることにより、偏光子から出射した直線偏光は配向ポリエステルフィルムを通過しても偏光状態を維持したまま通過するようになる。また、配向ポリエステルフィルムの複屈折を制御して一軸配向性を高めることにより、斜め方向から入射する光も偏光状態を維持したまま通過するようになる。配向ポリエステルフィルムを斜めから見ると、真上から見たときと比較して配向主軸方向にズレが生じるが、一軸配向性が高いと斜めから見たときの配向主軸方向のズレが小さくなる。このため、直線偏光の方向と配向主軸方向のズレが小さくなり、偏光状態の変化が生じにくくなっていると考えられる。このように、光源の発光スペクトルと複屈折体の配向状態、配向主軸方向を制御することにより、偏光状態の変化が抑制され、虹状の色斑が発生せずに、視認性が顕著に改善すると考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-116320号公報
【特許文献2】特開2004-219620号公報
【特許文献3】特開2004-205773号公報
【特許文献4】WO2011/162198
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
偏光子保護フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた偏光板を用いて液晶表示装置を工業的に生産する場合、偏光子の透過軸とポリエステルフィルムの進相軸の方向は、通常互いに垂直になるように配置される。これは、次のような事情による。偏光子であるポリビニルアルコールフィルムは、縦一軸延伸をして製造される。よって、偏光子として使用するポリビニルアルコールフィルムは、通常延伸方向に長いフィルムである。一方、その保護フィルムであるポリエステルフィルムは、縦延伸した後、横延伸をして製造されるため、ポリエステルフィルム配向主軸方向は横方向となる。つまり、偏光子保護フィルムとして使用するポリエステルフィルムの配向主軸は、フィルムの長手方向とおおよそ垂直交わる。これらのフィルムは、通常互いの長手方向が平行になるように貼り合わせて偏光板が製造される。そうすると、ポリエステルフィルムの進相軸と偏光子の透過軸は通常垂直方向となる。この場合、ポリエステルフィルムとして特定のリタデーションを有する配向ポリエステルフィルムを用い、バックライト光源として白色LEDのような連続的で幅広い発光スペクトルを有する光源を用いることにより、虹状の色斑は大幅に改善される。しかし、バックライト光源が励起光を出射する光源と量子ドットを含んだ発光層からなる場合、以前として虹斑が生じるという新たな課題が存在することを発見した。
【0008】
近年の色域拡大要求の高まりから、量子ドット技術を利用した白色光源以外にも、白色光源の発光スペクトルが、R(赤)、G(緑)、及びB(青)の各波長領域に、それぞれ明確な相対発光強度のピークを有する液晶表示装置が開発されている。例えば、励起光によりR(赤)、及びG(緑)の領域に明確な発光ピークを有する蛍光体と青色LEDを用いた蛍光体方式の白色LED光源、3波長方式の白色LED光源、並びに赤色レーザーを組み合わせた白色LED光源等、様々な種類の光源を用いた、広色域化対応の液晶表示装置が開発されている。これらの白色光源は、いずれも従来から汎用されてきたYAG系黄色蛍光体を用いた白色発光ダイオードからなる光源と比較してピークの半値幅が狭い。これらの白色光源は、リタデーションを有するポリエステルフィルムを偏光板の構成部材である偏光子保護フィルムとして用いた場合に、上述した励起光を出射する光源と量子ドットを含む発光層からなるバックライト光源を有する液晶表示装置の場合と同様の課題が存在することを発見した。
【0009】
すなわち、本発明の課題の一つは、励起光を出射する光源と量子ドットを含むバックライト光源に代表されるように、発光スペクトルの各ピークの半値幅が比較的狭いバックライト光源を有する液晶表示装置において、偏光子保護フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた場合にも、虹斑が抑制された液晶表示装置及び偏光板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
代表的な本発明は、以下の通りである。
項1.
バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は、励起光を出射する光源と量子ドットを含むものであり、
前記偏光板のうち少なくとも一方の偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面にポリエステルフィルムが積層されたものであり、
前記ポリエステルフィルムは、1500以上30000nm以下のリタデーションを有し、
前記ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に反射防止層及び/又は低反射層が積層されている、
液晶表示装置。
項2.
バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満、及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、各ピークの半値幅が5nm以上である光を発し、
前記偏光板のうち少なくとも一方の偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面にポリエステルフィルムが積層されたものであり、
前記ポリエステルフィルムは、1500以上30000nm以下のリタデーションを有し、
前記ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に反射防止層及び/又は低反射層が積層されている、
液晶表示装置。
項3.
前記バックライト光源が、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上750nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、各ピークの半値幅が5nm以上である、項2に記載の液晶表示装置。
項4.
前記反射防止層表面の波長550nmにおける表面反射率が2.0%以下である、項1~3のいずれかに記載の液晶表示装置。
項5.
偏光子の少なくとも一方の面にポリエステルフィルムが積層された偏光板であって、
前記ポリエステルフィルムが1500以上30000nm以下のリタデーションを有し、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に反射防止層及び/又は低反射層が積層されている、
励起光を出射する光源と量子ドットを含むバックライト光源を有する液晶表示装置用偏光板。
項6.
偏光子の少なくとも一方の面にポリエステルフィルムが積層された偏光板であって、
前記ポリエステルフィルムが1500以上30000nm以下のリタデーションを有し、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に反射防止層及び/又は低反射層が積層されている、
400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満、及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれピークトップを有し、各ピークの半値幅が5nm以上である発光スペクトルを有するバックライト光源を有する液晶表示装置用偏光板。
項7.
前記反射防止層表面の波長550nmにおける表面反射率が2.0%以下である、項5又は6に記載の偏光板。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶表示装置及び偏光板は、いずれの観察角度においても虹状の色斑の発生が有意に抑制された良好な視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】単一の波長領域内に複数のピークが存在する場合の例を示す。
図2】単一の波長領域内に複数のピークが存在する場合の例を示す。
図3】単一の波長領域内に複数のピークが存在する場合の例を示す。
図4】単一の波長領域内に複数のピークが存在する場合の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般に、液晶表示装置は、バックライト光源(「バックライトユニット」とも呼ぶ)が配置される側から画像を表示する側(視認側)に向かう順に、後面モジュール、液晶セルおよび前面モジュールを有する。後面モジュールおよび前面モジュールは、一般に、透明基板と、その液晶セル側表面に形成された透明導電膜と、その反対側に配置された偏光板とから構成されている。つまり、偏光板は、後面モジュールでは、バックライト光源に対向する側に配置され、前面モジュールでは、画像を表示する側(視認側)に配置されている。
【0014】
本発明の液晶表示装置は少なくとも、バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを構成部材とする。前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満、及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれピークトップを有し、各ピークの半値幅が5nm以上である発光スペクトルを有することが好ましい。CIE色度図にて定義される青色、緑色、赤色の各ピーク波長は、それぞれ435.8nm(青色)、546.1nm(緑色)、及び700nm(赤色)であることが知られている。前記400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満、及び600nm以上780nm以下の各波長領域は、それぞれ青色領域、緑色領域、及び赤色領域に相当する。上記のような発光スペクトルを有する光源として、励起光を出射する光源と量子ドットを少なくとも含むバックライト光源があげられる。その他、励起光によりR(赤)、及びG(緑)の領域にそれぞれ発光ピークを有する蛍光体と青色LEDを組み合わせた蛍光体方式の白色LED光源、3波長方式の白色LED光源、赤色レーザーを組み合わせた白色LED光源等を例示することができる。前記蛍光体のうち赤色蛍光体としては、例えば、CaAlSiN:Eu等を基本組成とする窒化物系蛍光体、CaS:Eu等を基本組成とする硫化物系蛍光体、CaSiO:Eu等を基本組成とするシリケート系蛍光体等が例示される。また、前記蛍光体のうち緑色蛍光体としては、例えばβ-SiAlON:Eu等を基本組成とするサイアロン系蛍光体、(Ba,Sr)SiO:Eu等を基本組成とするシリケート系蛍光体が例示される。
【0015】
液晶表示装置は、バックライト光源、偏光板、液晶セル以外に他の構成、例えばカラーフィルター、レンズフィルム、拡散シート、反射防止フィルムなどを適宜有しても構わない。光源側偏光板とバックライト光源の間に、輝度向上フィルムを設けてもよい。輝度向上フィルムとしては、例えば、一方の直線偏光を透過し、それと直交する直線偏光を反射する反射型偏光板が挙げられる。反射型偏光板としては、例えば、住友スリーエム株式会社製のDBEF(登録商標)(Dual Brightness Enhancement Film)シリーズの輝度向上フィルムが好適に用いられる。なお、反射型偏光板は、通常、反射型偏光板の吸収軸と光源側偏光板の吸収軸とが平行になるように配置される。
【0016】
液晶表示装置内に配置される2つの偏光板のうち、少なくとも一方の偏光板は、ポリビニルアルコール(PVA)などにヨウ素を染着させた偏光子の少なくとも一方の面にポリエステルフィルムが積層されたものであることが好ましい。虹状の色斑を抑制する観点から、ポリエステルフィルムは特定のリタデーションを有し、その少なくとも一方の面に、反射防止層及び/又は低反射層が積層されていることが好ましい。反射防止層及び/又は低反射層は、ポリエステルフィルムの偏光子を積層する面とは反対側の面に設けてもよいし、ポリエステルフィルムの偏光子を積層する面に設けてもよいし、その両方であっても構わない。好ましくは、ポリエステルフィルムの偏光子を積層する面とは反対側の面に反射防止層及び/又は低反射層を設けることが好ましい。ポリエステルフィルムの偏光子を積層する面に反射防止層及び/又は低反射層を設ける場合、当該層は、ポリエステルフィ
ルムと偏光子との間に設けられることが好ましい。また、反射防止層及び/又は低反射層と、ポリエステルフィルムとの間には、他の層(例えば易接着層、ハードコート層、防眩層、帯電防止層、防汚層等)が存在してもよい。より虹状の色斑を抑制する観点から、偏光子の透過軸と平行な方向の、前記ポリエステルフィルムの屈折率は、1.53以上1.62以下であることが好ましい。偏光子の他方の面には、TACフィルム、アクリルフィルム、及びノルボルネン系フィルムに代表されるような複屈折が無いフィルムが積層されることが好ましいが(3層構成の偏光板)、必ずしも偏光子の他方の面にフィルムが積層される必要はない(2層構成の偏光板)。なお、偏光子の両側の保護フィルムとしてポリエステルフィルムが用いられる場合、両方のポリエステルフィルムの遅相軸は互いに略平行であることが好ましい。
【0017】
ポリエステルフィルムは、任意の接着剤を介して偏光子に積層されていてもよく、接着剤を介さずに直接積層されていてもよい。接着剤としては、 特に制限されず任意のもの
を使用できる。一例として、水系の接着剤(即ち、接着剤成分を水に溶解したもの又は水に分散させたもの)を用いることができる。例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂、及び/又はウレタン樹脂などを含有する接着剤を用いることができる。接着性を向上させるために、必要に応じてイソシアネート系化合物、及び/又はエポキシ化合物などをさらに配合した接着剤を用いることもできる。また、他の一例として、光硬化性接着剤を用いることもできる。一実施形態において、無溶剤型の紫外線硬化型接着剤が好ましい。光硬化性樹脂としては、例えば、光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤との混合物などを挙げることができる。
【0018】
バックライトの構成としては、導光板や反射板などを構成部材とするエッジライト方式であっても、直下型方式であっても構わない。バックライト光源は、励起光を出射する光源と量子ドットを含むバックライト光源を代表例とする、「400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満、及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれピークトップを有し、各ピークの半値幅が5nm以上である発光スペクトルを有するバックライト光源」が好ましい。なお、量子ドットは、例えば、量子ドットを多く含む層を設け、これを発光層としてバックライトに用いることができる。
【0019】
量子ドット技術のLCDへの適用は、近年の色域拡大要求の高まりから注目されている技術である。通常の白色LEDをバックライト光源として使用するLEDでは、人間の目が認識可能なスペクトルの20%程度しか色を再現することが出来ない。これに対し、励起光を出射する光源と量子ドットを含む発光層からなるバックライト光源を用いた場合、人間の目が認識可能なスペクトルの60%以上の色を再現することが可能になると言われている。実用化されている量子ドット技術は、ナノシス社のQDEFTMやQD Vision社のColor IQTM等がある。
【0020】
量子ドットを含む発光層は、例えばポリスチレン等の樹脂材料などに量子ドットを含んで構成されており、光源から出射される励起光に基づいて、画素単位で各色の発光光を出射する層である。この発光層は例えば赤色画素に配設された赤色発光層、緑色画素に配設された緑色発光層、及び青色画素に配設された青色発光層からなり、これら複数色の発光層における量子ドットでは、励起光に基づいて互いに異なる波長(色)の発光光を生成する。
【0021】
このような量子ドットの材料としては、例えばCdSe、CdS、ZnS:Mn、InN、InP、CuCl、CuBr、及びSiなどが挙げられ、それらの量子ドットの粒径(一辺方向のサイズ)は、例えば2~20nm程度である。また上記の量子ドット材料のうち、赤色発光材料としてはInPが挙げられ、緑色発光材料としては例えばCdScが挙げられ、青色発光材料としては例えばCdS等が挙げられる。このような発光層では、
量子ドットにおけるサイズ(粒径)や材料の組成を変化させることにより、発光波長が変化することが確認されている。量子ドットのサイズ(粒径)や材料を制御し、樹脂材料に混ぜて、画素毎に塗り分けて塗布し使用される。また、多くの用途でカドミウム等の重金属の使用は規制される方向にあるため、従来のものと同様の輝度と安定性を保持しつつ、カドミウムフリーの量子ドットの開発もされている。
【0022】
励起光を発光する光源としては、青色LEDが利用されるが、半導体レーザーなどのレーザー光が用いられることもある。光源から出た励起光が発光層を通過することにより、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満、及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれピークトップを有する発光スペクトルが生じる。この時に各波長領域のピークの半値幅が狭いほど色域が広がるが、ピークの半値幅が狭くなると発光効率が低下することから、要求される色域と発光効率のバランスを考慮して発光スペクトルの形状が設計される。
【0023】
量子ドットを用いた光源は、以下に限定されないが、大きく2つの実装方式がある。一つは、バックライトの導光板の端面(側面)に沿って量子ドットを実装するオンエッジ方式である。数n~数十nm径の粒子である量子ドットを数mm径のガラスチューブの中に入れ
て封止し、これを青色LEDと導光板の間に配置する。青色LEDからの光がガラスチューブに照射され、そのうち量子ドットに衝突した青色光が緑色光や赤色光に変換される。オンエッジ方式は、大画面でも量子ドットの使用量を少なくできる利点がある。もう一つは、導光板の上に量子ドットを載せる表面実装方式である。量子ドットを樹脂に分散させてシート化し、これを2枚のバリアーフィルムで挟んで封止した量子ドットフィルムを、導光板
の上に敷く。バリアーフィルムは、水や酸素による量子ドットの劣化を抑える役目を担う。青色LEDはオンエッジ方式と同様に、導光板の端面(側面)に置かれる。青色LEDからの光は導光板に入って面状の青色光となり、これが量子ドットフィルムを照射する。表面実装方式の利点は大きく二つあり、一つは、青色LEDの光が導光板を経て量子ドットに当た
るため、LEDからの熱の影響が少なく、信頼性を確保しやすいことである。もう一つは、
フィルム状のため、小型から大型までの幅広い画面サイズに対応しやすいことである。
【0024】
本発明では、バックライト光源が、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満、及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、各ピークの半値幅が5nm以上であることが好ましい。前記400nm以上495nm未満の波長領域は、より好ましくは430nm以上470nm以下である。前記495nm以上600nm未満の波長領域は、より好ましくは510nm以上560nm以下である。前記600nm以上780nm以下の波長領域は、より好ましくは600nm以上750nm以下であり、より好ましくは630nm以上700nm以下であり、さらにより好ましくは630nm以上680mn以下である。各ピークの半値幅の好ましい下限値は10nm以上であり、より好ましくは15nm以上であり、更に好ましくは20nm以上である。適正な色域を確保する観点から、各ピークの半値幅の上限は、140nm以下が好ましく、120nm以下が好ましく、100nm以下が好ましく、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは60nm以下、よりさらに好ましくは45nm以下である。なお、ここで半値幅とは、ピークトップの波長におけるピーク強度の、1/2の強度におけるピーク幅(nm)のことである。ここに記載される波長領域の個々の上限及び下限は、それらの任意の組み合わせが想定される。ここに記載される半値幅の個々の上限及び下限は、それらの任意の組み合わせが想定される。ピーク強度は
バックライト光源の発光スペクトルは、例えば、浜松ホトニクス製 マルチチャンネル分光器 PMA-12等を用いて測定することができる。
【0025】
400nm以上495nm未満の波長領域、495nm以上600nm未満の波長領域、又は600nm以上780nm以下の波長領域のいずれかの波長領域において、複数の
ピークが存在する場合は以下の様に考える。複数のピークが、それぞれ独立したピークである場合、最もピーク強度の高いピークの半値幅が上記範囲であることが好ましい。さらに、最も高いピーク強度の70%以上の強度を有する他のピークについても、同様に半値幅が上記範囲になることがより好ましい態様である。複数のピークが重なった形状を有する一個の独立したピークについては、複数のピークのうち最もピーク強度の高いピークの半値幅をそのまま測定できる場合には、その半値幅を用いる。ここで、独立したピークとは、ピークの短波長側、長波長側の両方にピーク強度の1/2になる強度の領域を有するものである。すなわち、複数のピークが重なり、個々のピークがピーク強度の1/2になる強度の領域を有さない場合は、その複数のピークを全体として一個のピークと見なす。この様な、複数のピークが重なった形状を有する一個のピークは、その中の最も高いピーク強度の、1/2の強度におけるピークの幅(nm)を半値幅とする。複数のピークのうち、最もピーク強度の高い点をピークトップとする。単一の波長領域内に複数のピークが存在する場合の半値幅を図1~4において両方向向き矢印で示す。
【0026】
図1では、ピークA及びBは、各々ピークを起点として短波長側及び長波長側にピーク強度の1/2になる点が存在する。よって、ピークA及びBは各々独立したピークである。図1の場合、最も高いピーク強度を有するピークAの両方向向き矢印の幅で半値幅を評価すればよい。
【0027】
図2では、ピークAは、その短波長側及び長波長側にピーク強度の1/2になる点が存在するが、ピークBはその長波長側にピーク強度の1/2となる点が存在しない。よって、ピークA及びピークBをまとめて独立した1個のピークとみなす。このように複数のピークが重なった形状を有する一個の独立したピークについては、複数のピークのうち最もピーク強度の高いピークの半値幅をそのまま測定できる場合には、その半値幅を独立したピークの半値幅とする。よって、図2の場合、ピークの半値幅は、両方向向き矢印の幅のことである。
【0028】
図3では、ピークAは、その短波長側にピーク強度の1/2となる点は存在せず、ピー
クBは、その長波長側にピーク強度の1/2となる点は存在しない。従って、図3では、図2の場合と同様に、ピークA及びピークBをまとめて独立した1個のピークとみなし、その半値幅は、両方向向き矢印で示す幅である。
【0029】
図4では、ピークAは、その短波長側及び長波長側にピーク強度の1/2になる点が存在するが、ピークBはその長波長側にピーク強度の1/2となる点が存在しない。よって、ピークA及びピークBをまとめて独立した1個のピークとみなす。複数のピークが重なった形状を有する一個の独立したピークについては、複数のピークのうち最もピーク強度の高いピークの半値幅をそのまま測定できる場合には、その半値幅を用いる。よって、図4の場合、その半値幅は、両方向向き矢印で示す幅である。
【0030】
図1~4は、400nm以上495nm未満の波長領域を例に示すが、他の波長領域においても同様の考え方が適用される。
【0031】
複数のピークのうち、最もピーク強度の高いピークをピークトップとする。
なお、400nm以上495nm未満の波長領域、495nm以上600nm未満の波長領域、又は600nm以上780nm以下の波長領域の最も高いピーク強度を持つピークは他の波長領域のピークとはお互い独立した関係にあることが好ましい。特に、495nm以上600nm未満の波長領域で最も高いピーク強度を持つピークと、600nm以上780nm以下の波長領域で最も高いピーク強度を持つピークとの間の波長領域には、強度が600nm以上780nm以下波長領域の最も高いピーク強度を持つピークのピーク強度の1/3以下になる領域が存在することが色彩の鮮明性の面で好ましい。
【0032】
バックライト光源の発光スペクトルは、浜松ホトニクス製 マルチチャンネル分光器 PMA-12等の分光器を用いることにより測定が可能である。
【0033】
本発明者らは鋭意検討した結果、励起光を出射する光源と量子ドットを含むバックライト光源のように、発光スペクトルの各ピークの半値幅が比較的狭いバックライト光源を有する液晶表示装置において、偏光子保護フィルムとして反射防止層及び/又は低反射層を有し、特定のリタデーションを有するポリエステルフィルムを用いれば、虹斑が抑制された液晶表示装置及びその提供に有用な偏光板を提供することを見出した。上記態様により虹状の色斑の発生が抑制される機構は、次のように考えられる。
【0034】
偏光子の片側に配向ポリエステルフィルムを配した場合、バックライトユニット、または、偏光子から出射した直線偏光はポリエステルフィルムを通過する際に偏光状態が変化する。偏光状態が変化する要因の一つに、空気層と配向ポリエステルフィルムとの界面の屈折率差、または偏光子と配向ポリエステルフィルムとの界面の屈折率差が影響している可能性が考えられる。配向ポリエステルフィルムに入射した直線偏光が、各界面を通過する際に、界面間の屈折率差により光の一部が反射される。この時に出射光、反射光とも偏光状態が変化し、これが虹状の色斑が発生する要因の一つとなっていると考えられる。このため、配向ポリエステルフィルムの表面に反射防止層又は低反射層を付与して表面反射を低減することで、空気層と配向ポリエステルフィルムとの界面の反射が抑制されて、虹状の色斑が抑制されると考えられる。
【0035】
以上のように、励起光を出射する光源と量子ドットを含むバックライト光源に代表される、発光スペクトルの各ピークの半値幅が比較的狭いバックライト光源と、偏光子保護フィルムとしてポリエステルフィルムを使用した偏光板を組み合わせることにより、虹状の色斑を抑制し、良好な視認性を有することが可能となる。
【0036】
偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に、ポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルムが積層されていることが好ましい。偏光子保護フィルムに用いられるポリエステルフィルムは1500以上30000nm以下のリタデーションを有することが好ましい。リタデーションが上記範囲にあれば、より虹斑が低減しやすくなる傾向にあり好ましい。好ましいリタデーションの下限値は3000nm、次に好ましい下限値は3500nm、より好ましい下限値は4000nm、更に好ましい下限値は6000nm、より更に好ましい下限値は8000nmである。好ましい上限は30000nmであり、これ以上のリタデーションを有するポリエステルフィルムでは厚みが相当大きくなり、工業材料としての取り扱い性が低下する傾向にある。本書において、リタデーションとは、別段の表示をした場合を除き、面内リタデーションを意味する。
【0037】
なお、リタデーションは、2軸方向の屈折率と厚みを測定して求めることもできるし、KOBRA-21ADH(王子計測機器株式会社)といった市販の自動複屈折測定装置を用いて求めることもできる。なお、屈折率は、アッベの屈折率計(測定波長589nm)によって求めることができる。
【0038】
ポリエステルフィルムのリタデーション(Re:面内リタデーション)と厚さ方向のリタデーション(Rth)との比(Re/Rth)は、好ましくは0.2以上、好ましくは0.3以上、好ましくは0.4以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上である。上記リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が大きいほど、複屈折の作用は等方性を増し、観察角度による虹状の色斑の発生が生じ難くなる傾向にある。完全な1軸性(1軸対称)フィルムでは上記リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)は2.0となることから、上
記リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)の上限は2.0が好ましい。なお、厚さ方向位相差は、フィルムを厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz、△Nyzにそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られる位相差の平均を意味する。
【0039】
より虹状の色斑を抑制する観点から、ポリエステルフィルムのNZ係数が2.5以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下、よりさらに好ましくは1.6以下である。そして、完全な一軸性(一軸対称)フィルムではNZ係数は1.0となるため、NZ係数の下限は1.0である。しかし、完全な一軸性(一軸対称)フィルムに近づくにつれ配向方向と直行する方向の機械的強度が著しく低下する傾向があるため留意する必用がある。
【0040】
NZ係数は、|Ny-Nz|/|Ny-Nx|で表され、ここでNyは遅相軸方向の屈折率、Nxは遅相軸と直交する方向の屈折率(進相軸方向の屈折率)、Nzは厚み方向の屈折率を表す。分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA-6004型分子配向計)を用いてフィルムの配向軸を求め、配向軸方向とこれに直交する方向の二軸の屈折率(Ny、Nx、但しNy>Nx)、及び厚み方向の屈折率(Nz)をアッベの屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)によって求める。こうして求めた値を、|Ny-Nz|/|Ny-Nx|に代入してNZ係数を求めることができる。
【0041】
また、より虹状の色斑を抑制する観点から、ポリエステルフィルムのNy-Nxの値は、0.05以上が好ましく、より好ましくは0.07以上、さらに好ましくは0.08以上、よりさらに好ましくは0.09以上、最も好ましくは0.1以上である。上限は特に定めないが、ポリエチレンテレフタレート系フィルムの場合には上限は1.5程度が好ましい。
【0042】
本発明のより好ましい様態として、偏光板を構成する偏光子の透過軸方向と平行な方向の、ポリエステルフィルムの屈折率を、1.53以上1.62以下の範囲とすることが好ましい。これにより、偏光子とポリエステルフィルムとの界面における反射を抑制し、虹状の色斑を抑制することが可能となる。屈折率が1.62を超えると、斜め方向から観察した際に虹状の色斑が生じることがある。偏光子の透過軸方向と平行な方向のポリエステルフィルムの屈折率は、好ましくは1.61以下であり、より好ましくは1.60以下であり、更に好ましくは1.59以下であり、より更に好ましくは1.58以下である。
【0043】
一方、偏光子の透過軸方向と平行な方向のポリエステルフィルムの屈折率の下限値は1.53である。当該屈折率が1.53未満になると、ポリエステルフィルムの結晶化が不十分となり、寸法安定性、力学強度、耐薬品性等の延伸により得られる特性が不十分となることから好ましくない。当該屈折率は、好ましくは1.56以上、より好ましくは1.57以上である。上述の当該屈折率の各上限と各下限を組み合わせた任意の範囲が想定される。
【0044】
偏光子の透過軸方向と平行な方向の、ポリエステルフィルムの屈折率を1.53以上1.62以下の範囲に設定するには、偏光板は、偏光子の透過軸とポリエステルフィルムの進相軸(遅相軸と垂直方向)とが平行であることが好ましい。ポリエステルフィルムは後述する製膜工程における延伸処理により、遅相軸と垂直な方向である進相軸方向の屈折率を1.53~1.62程度と低く調節することができる。ポリエステルフィルムの進相軸方向と偏光子の透過軸方向を平行とすることで、偏光子の透過軸方向と平行な方向のポリエステルフィルムの屈折率を1.53~1.62に設定することができる。ここで平行であるとは、偏光子の透過軸と偏光子保護フィルムの進相軸とがなす角が、-15°~15°、好ましくは-10°~10°、より好ましく-5°~5°、更に好ましくは-3°~3°、より更に好ましくは-2°~2°、一層好ましくは-1°~1°であることを意味
する。好ましい一実施形態において、平行とは実質的に平行である。ここで実質的に平行であるとは、偏光子と保護フィルムとを張り合わせる際に不可避的に生じるずれを許容する程度に透過軸と進相軸とが平行であることを意味する。遅相軸の方向は、分子配向計(例えば、王子計測器株式会社製、MOA-6004型分子配向計)で測定して求めることができる。
【0045】
すなわち、ポリエステルフィルムの進相軸方向の屈折率は1.53以上1.62以下が好ましく、偏光子の透過軸とポリエステルフィルムの進相軸とを略平行となるように積層することで、偏光子の透過軸と平行な方向の、ポリエステルフィルムの屈折率を1.53以上1.62以下とすることができる。
【0046】
上記ポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルムは、入射光側(光源側)と出射光側(視認側)の両方の偏光板に用いることができる。入射光側に配される偏光板において、上記ポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルムは、その偏光子を起点として入射光側に配置していても、液晶セル側に配置していても、両側に配置されていても良いが、少なくとも入射光側に配置されていることが好ましい。出射光側に配置される偏光板については、上記ポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルムは、その偏光子を起点として液晶側に配置されても、出射光側に配置されていても、両側に配置されていてもよいが、少なくとも出射光側に配置されていることが好ましい。
【0047】
ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを用いることができるが、他の共重合成分を含んでも構わない。これらの樹脂は透明性に優れるとともに、熱的、機械的特性にも優れており、延伸加工によって容易にリタデーションを制御することができる。特に、ポリエチレンテレフタレートは固有複屈折が大きく、フィルムを延伸するこことで進相軸(遅相軸方向と垂直)方向の屈折率を低く抑えることができること、及びフィルムの厚みが薄くても比較的容易に大きなリタデーションが得られることから、最も好適な素材である。
【0048】
また、ヨウ素色素などの光学機能性色素の劣化を抑制することを目的として、ポリエステルフィルムは、波長380nmの光線透過率が20%以下であることが望ましい。380nmの光線透過率は15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。前記光線透過率が20%以下であれば、光学機能性色素の紫外線による変質を抑制することができる。なお、透過率は、フィルムの平面に対して垂直方法に測定したものであり、分光光度計(例えば、日立U-3500型)を用いて測定することができる。
【0049】
ポリエステルフィルムの波長380nmの透過率を20%以下にするためには、紫外線吸収剤の種類、濃度、及びフィルムの厚みを適宜調節することが望ましい。本発明で使用される紫外線吸収剤は公知の物質である。紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤が挙げられるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びその組み合わせが挙げられるが本発明の規定する吸光度の範囲であれば特に限定されない。しかし、耐久性の観点からはベンゾトアゾール系、環状イミノエステル系が特に好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、より紫外線吸収効果を改善することができる。
【0050】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤としては例えば2-[2’-ヒドロキシ-5’ -(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’ -ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’
-ヒドロキシ-5’ -(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2,2’-メチレンビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールなどが挙げられる。環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては例えば2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン)、2-メチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-ブチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-フェニル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オンなどが挙げられる。しかし特にこれらに限定されるものではない。
【0051】
また、紫外線吸収剤以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、触媒以外の各種の添加剤を含有させることも好ましい様態である。添加剤として、例えば、無機粒子、耐熱性高分子粒子、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン化合物、帯電防止剤、耐光剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、ゲル化防止剤、界面活性剤等が挙げられる。また、高い透明性を奏するためにはポリエステルフィルムに実質的に粒子を含有しないことも好ましい。「粒子を実質的に含有させない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、特に好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。
【0052】
偏光子保護フィルムであるポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面には、反射防止層及び/又は低反射層を設けることが好ましい。反射防止層の表面反射率は、2.0%以下が好ましい。2.0%を超えると、虹状の色斑が視認されやすくなる。反射防止層の表面反射率は、より好ましくは1.6%以下であり、更に好ましくは1.2%以下、特に好ましくは1.0%以下である。反射防止層の表面反射率の下限は、特に制限されないが、例えば0.01%である。反射率は、任意の方法で測定でき、例えば、分光光度計(島津製作所製、UV-3150)を用い、波長550nmにおける光線反射率を反射防止層側の表面から測定することができる。
【0053】
反射防止層は単層であっても多層であっても良く、単層の場合にはポリエステルフィルムより低屈折率の材料からなる低屈折率層の厚さを光波長の1/4波長あるいはその奇数倍になるよう形成すれば、反射防止効果が得られる。また、反射防止層が多層の場合には、低屈折率層と高屈折率層を交互に2層以上にし、かつ各層の厚さを適宜制御して積層すれば、反射防止効果が得られる。また、必要に応じて反射防止層の間にハードコート層を積層すること、及びハードコート層の上に防汚層を形成することもできる。
【0054】
反射防止層としては、モスアイ構造を利用したものが挙げられる。モスアイ構造とは、表面に形成された波長より小さなピッチの凹凸構造であり、この構造が、空気との境界部における急激で不連続な屈折率変化を、連続的で漸次推移する屈折率変化に変えることを可能とする。よって、モスアイ構造を表面に形成することで、フィルムの表面における光反射が減少する。モスアイ構造を利用した反射防止層の形成は、例えば、特表2001-517319号公報を参照して行うことができる。
【0055】
反射防止層を形成する方法としては、例えば、基材(ポリエステルフィルム)表面に蒸着やスパッタリング法により反射防止層を形成するドライコーティング法、基材表面に反射防止用塗布液を塗布し乾燥させて反射防止層を形成するウェットコーティング法、あるいはこれらの両方を併用した併用法が挙げられる。反射防止層の組成やその形成方法につ
いては、上記特性を満足すれば特に限定されない。
【0056】
低反射層は、公知のものを使用することができる。例えば、金属または酸化物の薄膜を、蒸着法やスパッタ法によって少なくとも1層以上積層する方法や、有機薄膜を一層あるいは複数層コーティングする方法等によって形成される。低反射層としては、ポリエステルフィルム若しくはポリエステルフィルム上に積層するハードコート層等よりも低屈折率である有機薄膜を一層コーティングしたものが好ましく用いられる。低反射層の表面反射率は、好ましくは5%未満であり、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下である。下限は0.8%~1.0%程度が好ましい。
【0057】
反射防止層及び/又は低反射層には、さらに防眩機能が付与されていてもよい。これに
より、さらに虹斑を抑制することができる。すなわち、反射防止層と防眩層の組合せ、低反射層と防眩層の組合せ、反射防止層と低反射層と防眩層の組合せであってもよい。特に好ましくは、低反射層と防眩層の組合せである。防眩層としては、公知の防眩層を用いることができる。例えば、フィルムの表面反射を抑える観点からは、ポリエステルフィルムに防眩層を積層した後、防眩層の上に反射防止層又は低反射層を積層する態様が好ましい。
【0058】
反射防止層又は低反射層を設けるに際して、ポリエステルフィルムはその表面に易接着層を有することが好ましい。その際、反射光による干渉を抑える観点から、易接着層の屈折率を、反射防止層の屈折率とポリエステルフィルムの屈折率の相乗平均近傍になるように調整することが好ましい。易接着層の屈折率の調整は、公知の方法を採用することができ、例えば、バインダー樹脂に、チタンやゲルマニウム、その他の金属種を含有させることで容易に調整することができる。
【0059】
ポリエステルフィルムには、偏光子との接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理及び/又は火炎処理等を施したりすることも可能である。
【0060】
本発明においては、偏光子との接着性を改良のために、本発明のフィルムの少なくとも片面に、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリアクリル樹脂の少なくとも1種類を主成分とする易接着層を有することが好ましい。ここで、「主成分」とは易接着層を構成する固形成分のうち50質量%以上である成分をいう。本発明の易接着層の形成に用いる塗布液は、水溶性又は水分散性の共重合ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂の内、少なくとも1種を含む水性塗布液が好ましい。これらの塗布液としては、例えば、特許第3567927号公報、特許第3589232号公報、特許第3589233号公報、特許第3900191号公報、及び特許第4150982号公報等に開示された水溶性又は水分散性共重合ポリエステル樹脂溶液、アクリル樹脂溶液、又はポリウレタン樹脂溶液等が挙げられる。
【0061】
易接着層は、前記塗布液を縦方向の1軸延伸フィルムの片面または両面に塗布した後、100~150℃で乾燥し、さらに横方向に延伸して得ることができる。最終的な易接着層の塗布量は、0.05~0.20g/mに管理することが好ましい。塗布量が0.05g/m未満であると、得られる偏光子との接着性が不十分となる場合がある。一方、塗布量が0.20g/mを超えると、耐ブロッキング性が低下する場合がある。ポリエステルフィルムの両面に易接着層を設ける場合は、両面の易接着層の塗布量は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立して上記範囲内で設定することができる。
【0062】
易接着層には易滑性を付与するために粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒径は2μm以下の粒子を用いることが好ましい。粒子の平均粒径が2μmを超えると、粒子が被覆層から脱落しやすくなる。易接着層に含有させる粒子としては、例えば、酸化チ
タン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、リン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、及びフッ化カルシウム等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、及びシリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。これらは、単独で易接着層に添加されてもよく、2種以上を組合せて添加することもできる。
【0063】
また、塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、及びパイプドクター法などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
【0064】
なお、上記の粒子の平均粒径の測定は下記方法により行う。粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2~5mmとなるような倍率で、300~500個の粒子の最大径(最も離れた2点間の距離)を測定し、その平均値を平均粒径とする。
【0065】
偏光子保護フィルムとして使用するポリエステルフィルムは、一般的なポリエステルフィルムの製造方法に従って製造することができる。例えば、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。
【0066】
本発明で使用するポリエステルフィルムは一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであってもよい。
【0067】
ポリエステルフィルムの製膜条件を具体的に説明すると、縦延伸温度、及び横延伸温度は80~130℃が好ましく、特に好ましくは90~120℃である。遅相軸がTD方向になるようにフィルムを配向させるには、縦延伸倍率は1.0~3.5倍が好ましく、特に好ましくは1.0倍~3.0倍である。また、横延伸倍率は2.5~6.0倍が好ましく、特に好ましくは3.0~5.5倍である。遅相軸がMD方向となるようにフィルムを配向させるには、縦延伸倍率は2.5倍~6.0倍が好ましく、特に好ましくは3.0~5.5倍である。また、横延伸倍率は1.0倍~3.5倍が好ましく、特に好ましくは1.0倍~3.0倍である。
【0068】
延伸温度を低く設定することも、ポリエステルフィルムの進相軸方向の屈折率を低くし、リタデーションを高くする上では好ましい対応である。続く熱処理においては、処理温度は100~250℃が好ましく、特に好ましくは180~245℃である。
【0069】
リタデーションの変動を抑制する為には、フィルムの厚み斑が小さいことが好ましい。延伸温度、及び延伸倍率はフィルムの厚み斑に大きな影響を与えることから、厚み斑を小さくする観点からも製膜条件の最適化を行うことが好ましい。特にリタデーションを高くするために縦延伸倍率を低くすると、縦厚み斑が大きくなることがある。縦方向の厚み斑は延伸倍率のある特定の範囲で非常に悪くなる領域があることから、この範囲を外したところで製膜条件を設定することが望ましい。
【0070】
ポリエステルフィルムの厚み斑は5.0%以下であることが好ましく、4.5%以下であることがさらに好ましく、4.0%以下であることがよりさらに好ましく、3.0%以下であることが特に好ましい。フィルムの厚み斑は、次のようにして測定することができる。テープ状のフィルムサンプル(3m)を採取し、(株)セイコー・イーエム製電子マ
イクロメータ、ミリトロン1240を用いて、1cmピッチで100点の厚みを測定する。測定値から厚みの最大値(dmax)、最小値(dmin)、及び平均値(d)を求め、下記式
にて厚み斑(%)を算出する。測定は3回行い、その平均値を求めることが好ましい。
厚み斑(%)=((dmax-dmin)/d)×100
前述のように、ポリエステルフィルムのリタデーションを特定範囲に制御する為には、延伸倍率や延伸温度、フィルムの厚みを適宜設定することにより行なうことができる。例えば、延伸倍率が高いほど、延伸温度が低いほど、フィルムの厚みが厚いほど高いリタデーションを得やすくなる。逆に、延伸倍率が低いほど、延伸温度が高いほど、フィルムの厚みが薄いほど低いリタデーションを得やすくなる。但し、フィルムの厚みを厚くすると、厚さ方向位相差が大きくなりやすい。そのため、フィルム厚みは後述の範囲に適宜設定することが望ましい。また、リタデーションの制御に加えて、加工に必要な物性等を勘案して最終的な製膜条件を設定することが好ましい。
【0071】
ポリエステルフィルムの厚みは任意であるが、15~300μmの範囲が好ましく、より好ましくは15~200μmの範囲である。15μmを下回る厚みのフィルムでも、原理的には1500nm以上のリタデーションを得ることは可能である。しかし、その場合にはフィルムの力学特性の異方性が顕著となり、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下する。特に好ましい厚みの下限は25μmである。一方、偏光子保護フィルムの厚みの上限は、300μmを超えると偏光板の厚みが厚くなりすぎてしまい好ましくない。偏光子保護フィルムとしての実用性の観点からは厚みの上限は200μmが好ましい。特に好ましい厚みの上限は一般的なTACフィルムと同等程度の100μmである。上記厚み範囲においてもリタデーションを本発明の範囲に制御するために、フィルム基材として用いるポリエステルはポリエチレンタレフタレートが好適である。
【0072】
また、ポリエステルフィルムに紫外線吸収剤を配合する方法としては、公知の方法を組み合わせて採用し得るが、例えば予め混練押出機を用い、乾燥させた紫外線吸収剤とポリマー原料とをブレンドしマスターバッチを作製しておき、フィルム製膜時に所定の該マスターバッチとポリマー原料を混合する方法などによって配合することができる。
【0073】
この時マスターバッチの紫外線吸収剤濃度は紫外線吸収剤を均一に分散させ、且つ経済的に配合するために5~30質量%の濃度にするのが好ましい。マスターバッチを作製する条件としては混練押出機を用い、押し出し温度はポリエステル原料の融点以上、290℃以下の温度で1~15分間で押し出すのが好ましい。290℃以上では紫外線吸収剤の減量が大きく、また、マスターバッチの粘度低下が大きくなる。押し出し温度1分以下では紫外線吸収剤の均一な混合が困難となる。この時、必要に応じて安定剤、色調調整剤、及び/又は帯電防止剤を添加しても良い。
【0074】
ポリエステルフィルムを少なくとも3層以上の多層構造とし、フィルムの中間層に紫外線吸収剤を添加することが好ましい。中間層に紫外線吸収剤を含む3層構造のフィルムは、具体的には次のように作製することができる。外層用としてポリエステルのペレット単独、中間層用として紫外線吸収剤を含有したマスターバッチとポリエステルのペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、2台以上の押出機、3層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、両外層を構成するフィルム層、中間層を構成するフィルム層を積層し、口金から3層のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。なお、発明では、光学欠点の原因となる、原料のポリエステル中に含まれている異物を除去するため、溶融押し出しの際に高精度濾過を行うことが好ましい。溶融樹脂の高精度濾過に用いる濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)
は、15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズが15μmを超えると、20μm以上の異物の除去が不十分となりやすい。
【実施例0075】
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0076】
(1)ポリエステルフィルムの屈折率
分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA-6004型分子配向計)を用いて、フィルムの遅相軸方向を求め、遅相軸方向が長辺と平行になるように、4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(遅相軸方向の屈折率:Ny,進相軸(遅相軸方向と直交する方向の屈折率):Nx)、及び厚さ方向の屈折率(Nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)によって求めた。
【0077】
(2)リタデーション(Re)
リタデーションとは、フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△Nxy=|Nx-Ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△Nxy×d)で定義されるパラメーターであり、光学的等方性、異方性を示す尺度である。二軸の屈折率の異方性(△Nxy)を上記(1)の方法により求め、前記二軸の屈折率差の絶対値(|Nx-Ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)として算出した。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より、リタデーション(Re)を求めた。
【0078】
(3)厚さ方向リタデーション(Rth)
厚さ方向リタデーションとは、フィルム厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz(=|Nx-Nz|)、及び△Nyz(=|Ny-Nz|)にそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られるリタデーションの平均を示すパラメーターである。リタデーションの測定と同様の方法でNx、Ny、Nzとフィルム厚みd(nm)を求め、(△Nxz×d)と(△Nyz×d)との平均値を算出して厚さ方向リタデーション(Rth)を求めた。
【0079】
(4)NZ係数
上記(1)により得られた、Ny、Nx、Nzの値を式(NZ=|Ny-Nz|/|Ny-Nx|)に代入してNZ係数の値を求めた。
【0080】
(5)バックライト光源の発光スペクトルの測定
各実施例で使用する液晶表示装置には、SONY社製のBRAVIA KDL-40W920A(励起光を出射する光源と量子ドットを含むバックライト光源を有する液晶表示装置)を用いた。この液晶表示装置のバックライト光源の発光スペクトルを、浜松ホトニクス製 マルチチャンネル分光器 PMA-12を用いて測定したところ、450nm、528nm、630nm付近にピークトップを有する発光スペクトルが観察され、各ピークトップの半値幅は17nm~34nmであった。なお、スペクトル測定の際の露光時間は20msecとした。
【0081】
(6)反射率
分光光度計(島津製作所製、UV-3150)を用い、波長550nmにおける5度反
射率を、反射防止層側(又は低反射層側)の表面から測定した。尚、ポリエステルフィルムの反射防止層(又は、低反射層)を設けた側とは反対側の面に、黒マジックを塗った後、黒ビニールテープ((株)共和ビニルテープ HF-737 幅50mm)を貼って測定した。
【0082】
(7)虹斑観察
各実施例で得られた液晶表示装置を、正面、及び斜め方向から暗所で目視観察し、虹斑の発生有無について、以下のように判定した。ここで、斜め方向とは、液晶表示装置の画面の法線方向から30度~60度の範囲を意味する。
【0083】
○: 虹斑が観察されない
△: 虹斑が僅かに観察される
×: 虹斑が観察される
××: 虹斑が著しく観察される
【0084】
(製造例1-ポリエステルA)
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部およびエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行った。
【0085】
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度は0.62dl/gであり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。(以後、PET(A)と略す。)
【0086】
(製造例2-ポリエステルB)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン)10質量部、粒子を含有しないPET(A)(固有粘度が0.62dl/g)90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を得た。(以後、PET(B)と略す。)
【0087】
(製造例3-接着性改質塗布液の調整)
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%および5-スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n-ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製、サイリシア310)3質量部を水50質量部に分散させた
後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、接着性改質塗布液を得た。
【0088】
(製造例4-高屈折率コーティング剤の調製)
メチルメタアクリレート80部、メタアクリル酸20部、アゾイソブチロニトリル1部、イソプロピルアルコール200部を反応容器に仕込み、窒素雰囲気下80℃で7時間反応させて、重量平均分子量30000のポリマーのイソプロピルアルコール溶液を得た。得られたポリマー溶液をさらにイソプロピルアルコールで固形分5%まで希釈し、アクリル樹脂溶液Bを得た。次いで、得られたアクリル樹脂溶液Bを、下記の成分と混合して、高屈折率層形成用塗布液を得た。
【0089】
・アクリル樹脂溶液B 5 質量部
・ビスフェノールA ジグリシジルエーテル 0.25質量部
・平均粒径20nmの酸化チタン粒子 0.5質量部
・トリフェニルホスフィン 0.05質量部
・イソプロピルアルコール 14.25質量部
【0090】
(製造例5-低屈折率コーティング剤の調製)
2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート(45質量部)、パーフルオロオクチルエチルアクリレート(45質量部)、アクリル酸(10質量部)、アゾイソブチロニトリル(1.5質量部)、メチルエチルケトン(200質量部)を反応容器に仕込み、窒素雰囲気下80℃で7時間反応させて、重量平均分子量20.000のポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。得られたポリマー溶液を、メチルエチルケトンで固形分濃度5質量%まで希釈し、フッ素ポリマー溶液Cを得た。得られたフッ素ポリマー溶液Cを、以下のように混合して、低屈折率層形成用塗布液を得た。
【0091】
・フッ素ポリマー溶液C 4 4質量部
・1,10-ビス(2, 3-エポキシプロポキシ)
- 2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7 ,
8,8,9,9 - ヘキサデカフルオロデカン
(共栄社化学製、フルオライトFE-16) 1質量部
・トリフェニルホスフィン 0.1質量部
・メチルエチルケトン 19質量部
【0092】
(製造例6-防眩層コーティング剤-1の調整)
不飽和二重結合含有アクリル共重合体 サイクロマーP ACA-Z250(ダイセル化学工業社製)(49質量部)、セルロースアセテートプロピオネート CAP482-20(数平均分子量75000)(イーストマンケミカル社製)(3質量部)、アクリルモノマー AYARAD DPHA(日本化薬社製)(49質量部)、アクリル-スチレン共重合体(平均粒子径4.0μm)(積水化成品工業社製)(2質量部)、及びイルガキュア184(BASF社製)(10質量部)の固形成分を35質量%となるように、メチルエチルケトン:1-ブタノール=3:1の混合溶剤に加えて、防眩層形成用塗布液を得た。
【0093】
(製造例7-防眩層コーティング剤-2の調整)
不飽和二重結合含有アクリル共重合体 サイクロマーP ACA-Z250(ダイセル化学工業社製)(49質量部)、セルロースアセテートプロピオネート CAP482-0.5(数平均分子量25000)(イーストマンケミカル社製)(3質量部)、アクリルモノマー AYARAD DPHA(日本化薬社製)(49質量部)、アクリル-スチ
レン共重合体(平均粒子径4.0μm)(積水化成品工業社製)(4質量部)、及びイルガキュア184(BASF社製)(10質量部)の固形成分を35質量%となるように、メチルエチルケトン:1-ブタノール=3:1の混合溶剤に加えて、防眩層形成用塗布液を得た。
【0094】
(製造例8-防眩層コーティング剤-3の調整)
不飽和二重結合含有アクリル共重合体 サイクロマーP ACA-Z250(ダイセル化学工業社製)(49質量部)、セルロースアセテートプロピオネート CAP482-0.2(数平均分子量15000)(イーストマンケミカル社製)(3質量部)、アクリルモノマー AYARAD DPHA(日本化薬社製)(49質量部)、アクリル-スチレン共重合体(平均粒子径4.0μm)(積水化成品工業社製)(2質量部)、イルガキュア184(BASF社製)(10質量部)の固形成分を35質量%となるように、メチルエチルケトン:1-ブタノール=3:1の混合溶剤に加えて、防眩層形成用塗布液を得た。
【0095】
(偏光子保護フィルム1)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層および外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0096】
次いで、リバースロール法によりこの未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/mになるように、上記接着性改質塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。
【0097】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、10秒間で処理し、さらに幅方向に3.0%の緩和処理を行い、フィルム厚み約100μmの一軸延伸PETフィルムを得た。
【0098】
この一軸延伸PETフィルムの一方の塗布面に、上記高屈折率層形成用塗布液を塗布し、150℃で2分間乾燥し、膜厚0.1μmの高屈折率層を形成した。この高屈折率層の上に、上記方法で得られた低屈折率層形成用塗布液を塗布し、150℃で2分間乾燥し、膜厚0.1μmの低屈折率層を形成し、反射防止層が積層された偏光子保護フィルム1を得た。
【0099】
(偏光子保護フィルム2)
ラインスピードを変更して未延伸フィルムの厚みを変えた以外は偏光子保護フィルム1と同様にして製膜し、反射防止層が積層された、フィルム厚みが約80μmの偏光子保護フィルム2を得た。
【0100】
(偏光子保護フィルム3)
ラインスピードを変更して未延伸フィルムの厚みを変えた以外は偏光子保護フィルム1
と同様にして製膜し、反射防止層が積層された、フィルム厚みが約60μmの偏光子保護フィルム3を得た。
【0101】
(偏光子保護フィルム4)
ラインスピードを変更して未延伸フィルムの厚みを変えた以外は偏光子保護フィルム1と同様にして製膜し、反射防止層が積層された、フィルム厚みが約40μmの偏光子保護フィルム4を得た。
【0102】
(偏光子保護フィルム5)
偏光子保護フィルム1と同様の方法により作製された未延伸フィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で走行方向に3.3倍延伸した後、温度130℃の熱風ゾーンに導き幅方向に4.0倍延伸して、偏光子保護フィルム1と同様の方法で反射防止層が積層された、フィルム厚み約30μmの偏光子保護フィルム5を得た。
【0103】
(偏光子保護フィルム6)
反射防止層を付与しない以外は、偏光子保護フィルム1と同様の方法により作製し、フィルム厚み約100μmの偏光子保護フィルム6を得た。
【0104】
(偏光子保護フィルム7)
反射防止層を付与しない以外は、偏光子保護フィルム2と同様の方法により作製した偏光子保護フィルムの一方の塗布面に、硬化後の膜厚が8μmになるように、防眩層コーティング剤-1を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥した。その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン、光源Hバルブ)を用いて、照射線量300mJ/cmで紫外線を照射して防眩層を積層した。その後、防眩層の上に、偏光子保護フィルム1と同様の方法で反射防止層を積層して偏光子保護フィルム7を得た。
【0105】
(偏光子保護フィルム8)
反射防止層を付与しない以外は、偏光子保護フィルム3と同様の方法により作製した偏光子保護フィルムの一方の塗布面に、偏光子保護フィルム7と同様の方法で防眩層と反射防止層を積層して偏光子保護フィルム8を得た。
【0106】
(偏光子保護フィルム9)
反射防止層を付与しない以外は、偏光子保護フィルム4と同様の方法により作製した偏光子保護フィルムの一方の塗布面に、硬化後の膜厚が8μmになるように、防眩層コーティング剤-2を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥した。その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン、光源Hバルブ)を用いて、照射線量300mJ/cmで紫外線を照射して防眩層を積層した。その後、防眩層の上に、偏光子保護フィルム1と同様に方法で反射防止層を積層して偏光子保護フィルム9を得た。
【0107】
(偏光子保護フィルム10)
反射防止層を付与しない以外は、偏光子保護フィルム5と同様の方法により作製した偏光子保護フィルムの一方の塗布面に、偏光子保護フィルム7と同様の方法で防眩層を積層して偏光子保護フィルム10を得た(反射防止層は積層していない)。
【0108】
(偏光子保護フィルム11)
反射防止層を付与しない以外は、偏光子保護フィルム1と同様の方法により作製した偏光子保護フィルムの一方の塗布面に、硬化後の膜厚が8μmになるように、防眩層コーティング剤-3を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥した。その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン、光源Hバルブ)を用いて、照射線量300mJ/
cmで紫外線を照射して防眩層が積層された偏光子保護フィルム11を得た。
【0109】
(偏光子保護フィルム12)
反射防止層を付与しない以外は、偏光子保護フィルム2と同様の方法により作製した偏光子保護フィルムの一方の塗布面に、硬化後の膜厚が8μmになるように、防眩層コーティング剤-1を塗布し、80℃・60秒オーブンで乾燥した。その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン、光源Hバルブ)を用いて、照射線量300mJ/cmで紫外線を照射して防眩層を積層した。その後、防眩層の上に、偏光子保護フィルム1と同様の方法で低屈折率層を積層した。こうして防眩層の上に低反射層が積層された偏光子保護フィルム12を得た。
【0110】
偏光子保護フィルム1~12を用いて後述するように液晶表示装置を作成した。
【0111】
(実施例1)
PVAとヨウ素からなる偏光子の片側に偏光子保護フィルム1を偏光子の透過軸とフィルムの進相軸が垂直になるように貼り付け、その反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板1を作成した。なお、偏光子保護フィルムの反射防止層が積層されていない面に、偏光子を積層して偏光板を作成した。SONY社製のBRAVIA KDL-40W920A(励起光を出射する光源と量子ドットを含むバックライト光源を有する液晶表示装置)の視認側の偏光板を、ポリエステルフィルムが液晶とは反対側(遠位)となるように上記偏光板1に置き換えて、液晶表示装置を作成した。なお、偏光板1の透過軸の方向が、置き換え前の偏光板の透過軸の方向と同一となるよう置き換えた。
【0112】
(実施例2)
偏光子保護フィルム1を偏光子保護フィルム2に替えた以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を作成した。
【0113】
(実施例3)
偏光子保護フィルム1を偏光子保護フィルム3に替えた以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を作成した。
【0114】
(実施例4)
偏光子保護フィルム1を偏光子保護フィルム4に替えた以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を作成した。
【0115】
(実施例5)
偏光子保護フィルム1に代えて偏光子保護フィルム4用い、その進相軸が偏光子の透過軸と平行になるように貼り付けた以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を作成した。
【0116】
(実施例6)
偏光子保護フィルム1を偏光子保護フィルム7に替えた以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を作成した。
【0117】
(実施例7)
偏光子保護フィルム1を偏光子保護フィルム8に替えた以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を作成した。
【0118】
(実施例8)
偏光子保護フィルム1を偏光子保護フィルム9に替えた以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を作成した。
【0119】
(実施例9)
偏光子保護フィルム1を偏光子保護フィルム12に替えた以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を作成した。
【0120】
(比較例1)
偏光子保護フィルム1を偏光子保護フィルム5に替えた以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を作成した。
【0121】
(比較例2)
偏光子保護フィルム1を偏光子保護フィルム6に替えた以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を作成した。
【0122】
(比較例3)
偏光子保護フィルム1を偏光子保護フィルム10に替えた以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を作成した。
【0123】
(比較例4)
偏光子保護フィルム1を偏光子保護フィルム11に替えた以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を作成した。
【0124】
各実施例で得た液晶表示装置について、虹斑観察を測定した結果を以下の表1に示す。
【0125】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の液晶表示装置及び偏光板は、いずれの角度においても虹状の色斑の発生が有意に抑制された良好な視認性を確保することができ、産業界への寄与は大きい。
図1
図2
図3
図4