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特開2025-15574虚血および心筋症の処置のための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015574
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】虚血および心筋症の処置のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20250123BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20250123BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61P29/00
A61P9/10
A61K48/00
A61K35/76
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024196696
(22)【出願日】2024-11-11
(62)【分割の表示】P 2020555841の分割
【原出願日】2019-04-17
(31)【優先権主張番号】62/659,667
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517191909
【氏名又は名称】スンマ ヘルス
【氏名又は名称原語表記】SUMMA HEALTH
(71)【出願人】
【識別番号】517191910
【氏名又は名称】ノースイースト オハイオ メディカル ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】NORTHEAST OHIO MEDICAL UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マーク エス. ペン
(72)【発明者】
【氏名】マリッツァ マヨルガ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー キードロウスキ
(57)【要約】
【課題】虚血および心筋症の処置のための組成物および方法の提供。
【解決手段】組織治癒を促進するか、組織傷害を処置するか、または組織傷害に関連する状態を処置する方法であって、有効量の以下:CAMKK1ポリペプチドまたはその等価物;またはCXCR4ポリペプチド発現の存在下でのSDF-1ポリペプチドまたはその等価物の一方または両方を必要とする被験体に投与する工程を含み、ここで、前記有効量が、被験体におけるエキソソームの産生、分泌、および/または機能を誘導する量である、方法を本明細書中に提供する。CAMKK1タンパク質もしくはポリペプチドおよび/またはSDF-1タンパク質もしくはポリペプチドの一方または両方を過剰発現する組換え幹細胞も提供する。幹細胞および幹細胞から産生された産物は、虚血状態または炎症状態の処置および組織治癒の促進に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症状態、虚血状態、または心筋症を処置するための組成物であって、前記組成物は、SDF-1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む有効量のベクターを含み、
前記有効量は、対象におけるエキソソームの産生、分泌および/または機能を誘導する量であり、
前記組成物は、傷害を受けた組織に局所投与されるものである、組成物。
【請求項2】
前記傷害を受けた組織がCXCR4を発現する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
CXCR4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ベクターが、前記SDF-1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および前記CXCR4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記SDF-1ポリペプチドが、配列番号4またはその等価物を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記SDF-1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号3を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
CXRC4ポリペプチドが、配列番号5またはその等価物を含む、請求項2~6のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下、2018年4月18日提出の米国仮出願第62/659,667号(その内容全体が本明細書中で参考として援用される)に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
虚血は、身体の一部に血流が完全に閉塞するか著しく減少する状態であり、無酸素症、基質供給の減少、および代謝産物の蓄積を生じる。虚血が長期化すると、罹患組織において萎縮、変性、アポトーシス、および壊死が起こる。
【0003】
炎症は、傷害の初発の原因および傷害に起因する壊死細胞/組織を取り除くことを意図する防御反応である。しかし、関節炎などのいくつかの疾患では、傷害がなくとも炎症が起こる。炎症が長期化すると、組織破壊、線維症、および/または壊死が生じ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
組織治癒を促進するか、組織傷害を処置するか、または組織傷害に関連する状態を処置する方法であって、有効量の以下:
a.CAMKK1ポリペプチドまたはその等価物;または
b.CXCR4ポリペプチド発現の存在下でのSDF-1ポリペプチドまたはその等価物
の一方または両方を必要とする被験体に投与する工程を含むか、あるいはこの工程から本質的になるか、なおさらにはこの工程からなり、
ここで、前述の有効量が、被験体におけるエキソソームの産生、分泌、および/または機能を誘導する量である、方法を本明細書中に提供する。
【0005】
1つの態様では、CAMKK1ポリペプチドは、配列番号1もしくは2またはその各々の等価物を含むことができるか、あるいはこれらから本質的になることができるか、なおさらにはこれらからなることができる。別の態様では、SDF-1ポリペプチドは、配列番号3もしくは4またはその各々の等価物を含み得るか、あるいはこれらから本質的になり得るか、なおさらにはこれらからなり得る。さらなる態様では、CXRC4ポリペプチドは、配列番号5またはその等価物を含むことができるか、あるいはこれらから本質的になることができるか、なおさらにはこれらからなることができる。
【0006】
上記方法は、投与前に患者から単離した試料中の循環エキソソームレベルを決定する工程をさらに含み得るか、あるいはこれらの工程から本質的になり得るか、なおさらにはこれらの工程からなり得る。別の態様では、方法は、投与後に患者から単離した試料中の循環エキソソームレベルを決定する工程をさらに含み得るか、あるいはこれらの工程から本質的になり得るか、なおさらにはこれらの工程からなり得る。有効量を、担当医、医療従事者、または担当獣医師によって、試料中の循環エキソソームレベルからか、過去の臨床情報およびデータに基づいて決定することができる。
【0007】
a.CAMKK1ポリペプチドまたはその等価物;または
b.CXCR4ポリペプチド発現の存在下でのSDF-1ポリペプチドまたはその等価物
の一方または両方を過剰発現する組換え幹細胞を本明細書中にさらに開示する。
1つの態様では、過剰発現は、配列番号1もしくは2またはその各々の等価物を含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなるCAMKK1ポリペプチドの発現によるか、配列番号3もしくは4またはその各々の等価物を含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなるSDF-1ポリペプチド、および配列番号5またはその等価物を含むか、あるいはからこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなるCXCR4ポリペプチドの発現による。
【0008】
本開示は、さらに、CAMKK1ポリペプチドもしくはタンパク質および/もしくはSDF-1ポリペプチドもしくはタンパク質またはその各々の等価物の一方または両方を過剰発現する組換え幹細胞を提供する。1つの態様では、CAMKK1および/またはSDF-1の過剰発現は、Aktの発現または必要に応じた過剰発現の存在下にある。別の態様では、SDF-1の過剰発現は、CXCR4の発現または必要に応じた過剰発現の存在下にある。CXCR4ポリペプチド発現は、内因性であり得るか、CXCR4ポリヌクレオチドの外因性発現によって誘導され得る。幹細胞は、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)、または体性幹細胞(成体幹細胞)であり得、任意の特定の型(例えば、脂肪型、間葉型、または神経型が含まれる)の幹細胞であり得る。別の態様では、幹細胞は、間葉系幹細胞(ヒト間葉系幹細胞など)である。
【0009】
別の態様では、幹細胞は、任意の型または任意の種の幹細胞、例えば、ヒト幹細胞などの哺乳動物幹細胞、1つの態様では、間葉系幹細胞またはCD34+発現幹細胞である。ポリペプチドおよびタンパク質の一方または両方を過剰発現する組換え幹細胞由来の分化細胞を、本明細書中にさらに提供する。幹細胞は、本明細書中に開示の治療および方法で有用である。
【0010】
CAMKK1ポリペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドの非限定的な例は、配列番号1もしくは2またはその等価物をコードするポリペプチドを含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなる。この配列をコードするポリヌクレオチドも、ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NM_032294(最終アクセス日:2018年4月13日)に開示されている。SDF-1ポリペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドの非限定的な例は、配列番号4またはその等価物(例えば、配列番号3またはその等価物)のポリペプチドをコードする配列を含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなる。幹細胞中に挿入されるべきこれらのポリヌクレオチドは、幹細胞内にある場合、ポリヌクレオチドまたはその等価物に作動可能に連結されたプロモーター配列および/またはエンハンサー配列をさらに含み得るか、あるいはこれらから本質的になり得るか、なおさらにはこれらからなり得る。これらのポリヌクレオチドを、ベクター(例えば、プラスミドまたはウイルスベクターなどの原核生物ベクターまたは真核生物ベクター)内に含めることができる。細胞がポリペプチドまたはタンパク質を適切なレベルで発現するかどうかを判定する方法は、当該分野で公知であり、例えば、PCRテクノロジーおよびハイブリッド形成技術(ノーザン技術およびサザン技術)が含まれる。
【0011】
かかる細胞を調製する方法は、当該分野で公知である(例えば、タンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子を幹細胞に挿入し、前述の細胞を適切な条件下で培養することによる)。遺伝子の発現を、当該分野で公知の方法(例えば、PCRおよび/またはELISAテクノロジー)を使用して判定することができる。
【0012】
上記の幹細胞によって産生された単離された細胞培養培地および前述の幹細胞によって産生されたエキソソームも本明細書中に提供する。エキソソーム組成物を、細胞または細胞培養培地から実質的に精製するか、高度に精製することができる。
【0013】
上記の幹細胞、細胞培養培地、およびエキソソームを担体と組み合わせて、組成物を調製することができる。担体の非限定的な例には薬学的に許容され得る担体または生体適合性マトリックスが含まれ、防腐剤、安定剤、および/または抗凍結剤を必要に応じてさらに含むことができる。さらなる態様では、組成物は凍結乾燥組成物であり、エキソソームを含む。
【0014】
幹細胞中でエキソソームの分泌および/または機能を誘導する方法であって、幹細胞中のCAMKK1ポリヌクレオチドもしくはタンパク質またはその各々の等価物の発現を上方制御する工程を含むか、あるいはからこの工程から本質的になるか、なおさらにはこの工程からなる方法も本明細書中に提供する。1つの態様では、CAMKK1の過剰発現は、Aktの発現または必要に応じた過剰発現の存在下にある。幹細胞は、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)、または体性(成体)幹細胞であり得、任意の特定の型(例えば、脂肪型、間葉型、または神経型が含まれる)の幹細胞であり得る。別の態様では、幹細胞は間葉系幹細胞である。別の態様では、幹細胞は、任意の型または任意の種の幹細胞、例えば、ヒト幹細胞などの哺乳動物幹細胞である。これらの幹細胞から産生された分化細胞を、本明細書中にさらに提供する。
【0015】
CAMKK1ポリペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドの非限定的な例は、配列番号1および2またはその等価物をコードする配列を含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはこれからからなる。配列をコードするポリヌクレオチドも、ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NM_032294(最終アクセス日:2018年4月13日)に開示されている。幹細胞中のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドまたはその等価物に作動可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列をさらに含み得るか、あるいはこれら本質的になり得るか、なおさらにはこれらからなり得る。これらのポリヌクレオチドを、ベクター(例えば、プラスミドまたはウイルスベクターなどの原核生物ベクターまたは真核生物ベクター)内にさらに含めることができる。細胞がポリペプチドまたはタンパク質を適切なレベルで発現するかどうかを判定する方法は、当該分野で公知であり、PCRが含まれる。
【0016】
本方法は、細胞がエキソソームを培養培地中に分泌するのに有効な時間にわたって細胞を培養し、次いで、培養培地から細胞および/またはエキソソームを必要に応じて分離する工程をさらに含むことができる。
【0017】
本方法によって調製された細胞、培養培地、およびエキソソームも提供する。さらなる態様では、本方法は、培養培地または幹細胞からエキソソームの集団を単離する工程をさらに含む。
【0018】
上記のように、幹細胞、細胞培養培地、およびエキソソームを担体と組み合わせて、組成物を調製することができる。担体の非限定的な例には薬学的に許容され得る担体または生体適合性マトリックスが含まれ、防腐剤、安定剤、および/または抗凍結剤を必要に応じてさらに含むことができる。さらなる態様では、組成物は凍結乾燥組成物であり、エキソソームを含む。
【0019】
幹細胞中でエキソソームの分泌および機能を誘導する方法であって、幹細胞中のSDF-1ポリペプチドもしくはタンパク質またはその各々の等価物の発現を上方制御する工程を含むか、あるいはこの工程から本質的になるか、なおさらにはこの工程からなり、ここで、過剰発現が、CXCR4発現の存在下にある、方法をなおさらに提供する。1つの態様では、SDF-1の過剰発現は、Aktの発現または必要に応じた過剰発現の存在下にある。幹細胞中でエキソソームの分泌および機能を誘導する方法であって、幹細胞中のSDF-1ポリペプチドもしくはタンパク質またはその各々の等価物の発現を上方制御する工程を含むか、あるいはからこの工程から本質的になるか、なおさらにはこの工程からなり、ここで、過剰発現が、Aktの発現または必要に応じた過剰発現の存在下にある、方法も提供する。1つの態様では、SDF-1の過剰発現は、CXCR4の発現または必要に応じた過剰発現の存在下にある。幹細胞は、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)、または体性(成体)幹細胞であり得、任意の特定の型(例えば、脂肪型、間葉型、または神経型が含まれる)の幹細胞であり得る。別の態様では、幹細胞は間葉系幹細胞である。別の態様では、幹細胞は、任意の型または任意の種の幹細胞、例えば、ヒト幹細胞などの哺乳動物幹細胞である。幹細胞から産生された分化細胞を、本明細書中にさらに提供する。
【0020】
SDF-1ポリペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドの非限定的な例は、配列番号3またはその等価物を含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなる。幹細胞中のこれらのポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドまたはその等価物に作動可能に連結されたプロモーター配列および/またはエンハンサー配列をさらに含み得るか、あるいはこれらから本質的になり得るか、なおさらにはこれらからなり得る。これらのポリヌクレオチドを、ベクター(例えば、プラスミドまたはウイルスベクターなどの原核生物ベクターまたは真核生物ベクター)内に含めることができる。細胞がポリペプチドまたはタンパク質を適切なレベルで発現するかどうかを判定する方法は、当該分野で公知であり、PCR、ノーザンハイブリッド形成、およびサザンハイブリッド形成が含まれる。
【0021】
本方法は、細胞がエキソソームを培養培地中に分泌するのに有効な時間にわたって細胞を培養し、次いで、培養培地から細胞および/またはエキソソームを必要に応じて分離する工程、および細胞を系列特異的細胞型に分化させる工程をさらに含むことができる。
【0022】
本方法によって調製された細胞、培養培地、およびエキソソームも提供する。さらなる態様では、本方法は、培養培地または幹細胞からエキソソームの集団を単離する工程をさらに含む。
【0023】
上記のように、幹細胞、細胞培養培地、およびエキソソームを担体と組み合わせて、組成物を調製することができる。担体の非限定的な例には薬学的に許容され得る担体または生体適合性マトリックスが含まれ、防腐剤、安定剤、および/または抗凍結剤を必要に応じてさらに含むことができる。さらなる態様では、組成物は凍結乾燥組成物であり、エキソソームを含む。
【0024】
治療方法も提供する。1つの態様では、虚血、心筋症、および関連障害のうちの1つまたは複数を処置するか、または組織治癒を促進する方法を提供する。本方法は、有効量の、本明細書中に記載の幹細胞、本明細書中に記載の単離培養培地、エキソソーム、本明細書中に記載の集団、または本明細書中に記載の組成物のうちの1つまたは複数を必要とする被験体に投与する工程を含むか、あるいはこの工程から本質的になるか、なおさらにはこの工程からなり、ここで、過剰発現したポリペプチドまたはタンパク質は、CAMKK1ポリペプチドもしくはタンパク質またはその等価物である。虚血状態、心筋症、および関連障害のうちの1つまたは複数を処置するか、組織治癒を促進する方法であって、有効量の以下:本開示のエキソソーム集団または本明細書中に記載の組成物のうちの1つまたは複数を必要とする被験体に投与する工程を含むか、あるいはからこの工程から本質的になる、方法を本明細書中にさらに提供する。細胞、培養培地、またはエキソソームは、処置される被験体に対して同種または自家であり得る。1つの態様では、投与は、局所投与または全身投与である。別の態様では、投与は全身投与であり、作用部位(例えば、心臓)に対して遠位である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1A~1Bは、プラセボと比較してSDF-1およびCAMKK1が個別に有意かつ等価な効果があり、駆出率が増加したことを示す。SDF-1とCAMKK1の組み合わせは、これらの分子の単独使用のいずれよりもいかなる心機能も向上させなかった。
【0026】
図2図2は、SDF-1およびCAMKK1の有意な効果が馴化培地中へのエキソソームの放出および機能の強化であることを示す。
【0027】
図3図3は、SDF-1の効果を得るにはAktリン酸化を誘導するためのオートクリンループまたはパラクリンループが必要である一方で、CAMKK1効果が直接的であることを示す。
【0028】
図4図4は、CAMKK1を心臓から離れた正常組織中に注射しても依然として心機能を改善させることができることを示す。逆に、SDF-1はAktリン酸化を誘導するためにCXCR4に結合することが必要であるので、心臓から離れた正常組織中に注射されたSDF-1は心機能を有意に改善させない。
【0029】
図5図5A~5Bは、対照MSCおよびCAMKK1を過剰発現するMSC由来のエキソソームの数およびサイズのnanosight定量を示す。図5Aは、Exo-対照およびExo-CAMKK1についてのNTAビデオの代表的なスクリーンショットである。エキソソーム-対照は、相当数の粒子(2.7×109±4.9粒子/ml)を示した。しかし、Exo-CAMKK1の粒子濃度は、コントロール培地よりも高かった(3.76×109±2.2粒子/ml、p<0.05)。NTAにより、エキソソームのサイズが10nm~1000nmであると推定された。図5B:左前下行枝結紮から2週間後の駆出率。データは、平均±SEM(n=4~8匹/群)である。、p<.05 CAMKK1群対MSC群;略語;MSC、間葉系幹細胞;CAMKK1、カルシウムカルモジュリンキナーゼキナーゼ1。
【0030】
図6図6は、心機能に対するCAMKK1のMSC効果にはaktのリン酸化が必要であることを示す。心機能の尺度としての駆出率を、心臓における左前下行枝結紮への注射(200万個のMSCを含む馴化培地を回収して前壁心筋梗塞の誘導直後の動物の心臓に注射する)の2週間後に測定した。2つの処置では、MSCを2つのAkt阻害剤のうちの1つで処置し、いずれかのAkt阻害剤の存在が対照MSCの利益よりもCAMKK1を過剰発現する細胞の利益を減少させた。データは、平均±SEM(n=4~8/群)、p<.05 cDNA-CAMKK1対MSC対照群を示す。略語:AKT、プロテインキナーゼB、MSC、間葉系幹細胞。
【0031】
図7図7は、Exo-MSC対照、CAMKK1を過剰発現するExo-MSC、Exo過剰発現、siRNA AKTを注射した心臓における左前下行枝結紮の2週間後に、心機能の尺度としての駆出率を測定したことを示す。CAMKK1がキナーゼであり、aktを直接リン酸化してCAMKK1過剰発現細胞からエキソソームを放出させること、CAMKK1を心臓から離れた正常組織中に注射しても依然として心機能を改善させることができることを示す。
【0032】
図8図8A~8Bは、CAMKK1が慢性心不全に効果があり、どのようにしてこれをSDF-1と比較したのかを示す。AMI時にCAMKK1を注射すると、1週間後および6週間後に駆出率の測定値が改善された。SDF-1がそのケモカイン効果を介して作用し、それにより組織特異的幹細胞および骨髄由来幹細胞のホーミングを介して心機能を改善したと予想された。CAMKK1は、幹細胞ホーミングを誘導しない。そのCAMKK1およびSDF-1は、心機能に対して等価な効果を有し、これら2つの組み合わせはその効果をさらに増強せず、それにより、一連の研究でSDF-1およびCAMKK1が作用し得る共通の経路の規定を試みた。AMI後1日目および6日目のCAMMKK1レベル57.4%、53.2%、44.2%、および40.1%(プラセボで)、SDF-1レベル54.7%、52.5%,50.4%、および40.2%(プラセボで))。データを、平均±SEM(n=5~8動物/群)として示す(**、生理食塩水対照と比較してp<.05)。
【0033】
図9図9は、CAMKK1およびSDF-1が過剰発現するとMSC中のエキソソーム量が富化されることを示す。AMIから2週間後の心機能(駆出率)において、CAMKK1およびSDF-1は、AMIから2週間後にEFを有意に改善させた。SDF-1およびCAMKK1の有意な効果は、馴化培地中へのエキソソームの放出および機能の強化である。心機能は、生理食塩水対照およびSDF-1注射と比較してCAMKK1によって有意に改善された。CAMKK1は、AMIから2週間後に生理食塩水対照群(1.9%±0.2と比較してEF(21.8%±2.5、p<.01)およびSDF-1(16.8%±2.7、p>.05)を有意に改善させた。データは、平均±SEM(n=7~8/各群)である。MSC中のCAMKK1過剰発現によって誘導された心機能の改善は、AMIから2週間後の心臓境界域における血管密度の増加と相関する。
【0034】
図10図10は、AMIから14日後の心臓機能および心エコー検査法の結果を示す。動物はLADの結紮を受け、その直後に胸部を縫合し、CAMKK1プラスミドまたはSDF-1プラスミドまたは生理食塩水を投与された動物の大腿部に注射した。1週間後、CAMKK1を注射した動物の心機能は、生理食塩水と比較して有意に増大したが、SDF-1処置動物における心臓機能は増大しなかった。AMIから1週間後に、CAMKK1(30.3%±1.5、p<.01)およびSDF-1(15.7%±3.7、p>.05)を生理食塩水対照群(12.9%±1.8)と比較した。データは、平均±SEM(n=7~8/各群)である。
【0035】
図11図11は、MSC-エキソソームの機能および心機能(駆出率)に対するCAMKK1およびSDF-1の過剰発現の効果を示す。エキソソームを、200万個の対照MSCおよびSDF-1(AMD3100あり/なし)またはCAMKK1のいずれかを過剰発現するMSCを含む馴化培地(CM)から精製した。次いで、単離エキソソームを、AMI直後にラットの心臓に注射した。AMIから2週間後の生理食塩水対照群と比較して、CAMKK1群(21.8%)およびSDF-1群(16.8%)において有意な心機能の改善が認められた。SDF-1+AMD3100群では利益が喪失された。データは、平均±SEM(n=7~8/各群)である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
詳細な説明
定義
本開示を通して以下の略語を使用する:CAMKK1(カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼキナーゼ1);MSC(間葉系幹細胞);および間質細胞由来因子1α(SDF-1、(CXCL12、プレB細胞増殖刺激因子、PBSF、hIRH、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド12、SDF1、SDF1A、TPAR1、SCYB12、SDF-1a、TLSF-aとしても公知))、C-X-Cケモカイン受容体タイプ4(CXCR-4)は、フーシンまたはCD184(CXCR4)としても公知である。
【0037】
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者に一般に理解されている意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と類似するかそれと等しい任意の方法および材料を本開示の実施または試験において使用することができるが、ここに、好ましい方法、デバイス、および材料を記載する。本明細書中に引用された技術刊行物および特許公報は全て、その全体が本明細書中で参考として援用される。本明細書中のいかなるものも、本開示が先行する開示を理由としてかかる開示に先行する権利が与えられないことを容認するものと解釈されるべきではない。
【0038】
本開示の実施には、別段の指示がない限り、当技術分野の技術の範囲内である、組織培養、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、および組換えDNAの従来技術を使用する。例えば、Sambrook and Russell eds.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition;the series Ausubelら.eds.(2007)Current Protocols in Molecular Biology;the
series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);MacPhersonら.(1991)PCR 1:A Practical Approach(IRL Press at Oxford
University Press);MacPhersonら.(1995)PCR
2:A Practical Approach;Harlow and Lane eds.(1999)Antibodies,A Laboratory Manual;Freshney(2005)Culture of Animal Cells:A
Manual of Basic Technique,5th edition;Gait ed.(1984)Oligonucleotide Synthesis;米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins eds.(1984)Nucleic Acid Hybridization;Anderson(1999)Nucleic Acid Hybridization;Hames and
Higgins eds.(1984)Transcription and Translation;Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press(1986));Perbal(1984)A Practical Guide to Molecular Cloning;Miller and Calos eds.(1987)Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Cold Spring Harbor Laboratory);Makrides ed.(2003)Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells;Mayer and Walker eds.(1987)Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press,London);Herzenbergら.eds(1996)Weir’s Handbook of Experimental Immunology;Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual,3rd edition(Cold Spring Harbor
Laboratory Press(2002));Sohail(ed.)(2004)Gene Silencing by RNA Interference:Technology and Application(CRC Press)を参照のこと。
【0039】
範囲が含まれる全ての数字表示(例えば、pH、温度、時間、濃度、および分子量)は近似値であり、必要に応じて、1.0または0.1単位で、(+)または(-)の方向に変動する。常に明記されているとは限らないが、全ての数字表示に「約」という用語が先行すると理解すべきである。常に明記されているとは限らないが、本明細書中に記載の試薬は単なる例示であり、その等価物が当該分野で公知であることも理解されるべきである。
【0040】
本明細書中および特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈によりそうでないことが明確に規定されない限り、複数形を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「~を含む」は、組成物および方法が、列挙された要素を含むが、他のものを排除しないことを意味するものとする。「~から本質的になる」は、組成物および方法を定義するために使用される場合、意図された目的のために使用される場合の組み合わせへのいかなる本質的に重要な他の要素も排除することを意味するものとする。したがって、本明細書中に定義の要素から本質的になる組成物は、微量汚染物質や不活性担体を排除しない。「~からなる」は、他の成分の微量を超える要素および実質的な方法のステップを排除することを意味するものとする。これらの移行用語のそれぞれによって定義される実施形態は、本開示の範囲内にある。
【0042】
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」、および「オリゴヌクレオチド」は、互換的に使用され、任意の長さのポリマーの形態のヌクレオチドであるデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそのアナログのいずれかを指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができ、既知または未知の任意の機能を果たし得る。以下はポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、ESTタグ、またはSAGEタグ)、エクソン、イントロン、伝令RNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド(メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログなど)を含むことができる。存在する場合、ヌクレオチド構造の修飾は、ポリヌクレオチドのアセンブリの前または後に付与することができる。ヌクレオチドの配列を非ヌクレオチド構成要素で遮ることができる。ポリヌクレオチドは、重合後に、標識化構成要素との抱合などことによってさらに修飾することができる。この用語はまた、二本鎖分子および一本鎖分子の両方を指す。別段の指定または要求がない限り、ポリヌクレオチドである本開示の任意の実施形態は、二本鎖の形態と、二本鎖の形態を成すことが公知であるか予測される2つの相補的な一本鎖の形態の各々の両方を包含する。
【0043】
ポリヌクレオチドは、以下の4つのヌクレオチド塩基の特異的な配列から構成される:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);およびポリヌクレオチドがRNAである場合のチミンの代わりのウラシル(U)。したがって、用語「ポリヌクレオチド配列」は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表示である。このアルファベット表示を、中央処理装置を有するコンピュータ内のデータベースに入力し、バイオインフォマティクスの適用(機能ゲノミクスおよび相同性検索など)のために使用することができる。
【0044】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、比較するためにアラインメントすることができる各配列内の位置の比較によって決定することができる。比較される配列内の位置が同じ塩基またはアミノ酸によって占有されている場合、分子は、その位置において相同である。配列間の相同性の程度は、前述の配列が共有する、一致するまたは相同である位置の数の関数である。「無関係の」または「非相同性の」配列は、本開示の配列の1つと40%未満の同一性、あるいは25%未満の同一性を共有する。
【0045】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(または、ポリペプチドまたはポリペプチド領域)が別の配列に対して特定の百分率(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%)の「配列同一性」を有するということは、アラインメントしたときに、比較されている2つの配列中の前述の百分率の塩基(またはアミノ酸)が同じであることを意味する。このアラインメントおよび相同性または配列同一性の百分率は、当該分野で公知のソフトウェアプログラム、例えば、Ausubelら.eds.(2007)Current Protocols in Molecular
Biologyに記載のものを使用して決定することができる。アラインメントのためにデフォルトパラメータを使用することが好ましい。1つのアラインメントプログラムは、デフォルトパラメータを使用したBLASTである。特に、プログラムは、以下のデフォルトパラメータを使用したBLASTNおよびBLASTPである:遺伝暗号=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;行列=BLOSUM62;表示=50配列;ソート方法=HIGH SCORE;データベース=非冗長性、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+SwissProtein+SPupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレスにおいて見いだすことができる:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLAST。
【0046】
等価なまたは生物学的に等価な核酸、ポリヌクレオチド、もしくはオリゴヌクレオチド、またはペプチドは、基準となる核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはペプチドに対して少なくとも80%の配列同一性、あるいは少なくとも85%の配列同一性、あるいは少なくとも90%の配列同一性、あるいは少なくとも92%の配列同一性、あるいは少なくとも95%の配列同一性、あるいは少なくとも97%の配列同一性、あるいは少なくとも98%の配列同一性を有するものである。
【0047】
用語「ポリヌクレオチドの増幅」は、PCR、ライゲーション増幅(またはリガーゼ連鎖反応、LCR)などの方法、および増幅方法が含まれる。これらの方法は公知であり、当該分野で広く実施されている。例えば、米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号およびInnisら.,1990(PCRについて);ならびにWuら.(1989)Genomics 4:560-569(LCRについて)を参照のこと。一般に、PCR手技は、(i)DNA試料(またはライブラリー)内の特定の遺伝子へのプライマーの配列特異的ハイブリッド形成、(ii)複数ラウンドのDNAポリメラーゼを使用したアニーリング、伸長、および変性を含むその後の増幅、ならびに(iii)正確なサイズのバンドについてのPCR産物のスクリーニングから構成される遺伝子増幅方法を記載する。使用されるプライマーは、十分な長さであり、かつ重合開始に適切な配列のオリゴヌクレオチドである(すなわち、各プライマーは、増幅すべきゲノム遺伝子座の各鎖に相補的であるように特異的に設計されている)。
【0048】
PCR実施のための試薬およびハードウェアは、市販されている。特定の遺伝子領域から配列を増幅させるために有用なプライマーは、好ましくは、標的領域内または隣接領域内の配列に相補的であり、特異的にハイブリッド形成する。増幅によって生成された核酸配列を、直接配列決定することができる。あるいは、増幅された配列(単数または複数)を、配列解析の前にクローン化することができる。酵素的に増幅されたゲノムセグメントを直接クローニンし、配列を解析する方法は、当該分野で公知である。
【0049】
「遺伝子」は、転写および翻訳後に特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードすることができる少なくとも1つの読み取り枠(ORF)を含むポリヌクレオチドを指す。
【0050】
用語「発現する」は、遺伝子産物の産生を指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセスおよび/または転写されたmRNAがその後に、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は、真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含んでよい。
【0052】
「遺伝子産物」あるいは「遺伝子発現産物」は、遺伝子が転写および翻訳されたときに生成されるアミノ酸(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)を指す。
【0053】
「転写調節下」は、当該分野で十分に理解されている用語であり、ポリヌクレオチド配列、通常はDNA配列の転写が、転写の開始または促進に寄与する、前述の配列に作動可能に連結されたエレメントに依存することを示す。「作動可能に連結された」は、ポリヌクレオチドが、細胞内で機能可能な様式で配置されていることを意図する。1つの態様では、本開示は、下流配列(例えば、CAMKK1、SDF-1など)に作動可能に連結されたプロモーターを提供する。
【0054】
用語「コードする」は、ポリヌクレオチドに適用される場合、その未変性状態の場合または当業者に周知の方法によって操作されるときに、ポリヌクレオチドが転写および/または翻訳されて、ポリペプチドおよび/またはその断片のmRNAを産生することができる場合にポリペプチドを「コードする」といわれるポリヌクレオチドを指す。アンチセンス鎖は、かかる核酸の相補物であり、それからコード配列を推定することができる。
【0055】
ポリヌクレオチド操作の文脈で使用されるときの「プローブ」は、標的とのハイブリッド形成によって目的の試料中に潜在的に存在する標的を検出するための試薬として提供されるオリゴヌクレオチドを指す。通常、プローブは、ハイブリッド形成反応の前または後のいずれかに標識を付着させることができる検出可能な標識または手段を含む。あるいは、「プローブ」は、目的の試料中に潜在的に存在する標的に結合することができるポリペプチド、抗体、またはその断片などの生物学的化合物であり得る。
【0056】
「検出可能な標識」または「マーカー」には、放射性同位体、蛍光色素、化学発光化合物、色素、およびタンパク質(酵素が含まれる)が含まれるが、これらに限定されない。検出可能な標識を、本明細書中に記載のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または組成物に付着させることもできる。
【0057】
「プライマー」は、標的とのハイブリッド形成によって目的の試料中に潜在的に存在する標的または「テンプレート」に結合し、その後に標的に相補的なポリヌクレオチドの重合を促進する、遊離3’-OH基を一般に有する短いポリヌクレオチドである。「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)は、「上流」および「下流」のプライマーからなる「プライマー対」または「プライマーセット」、ならびに重合触媒(DNAポリメラーゼ、典型的には熱安定性ポリメラーゼ酵素など)を使用して標的ポリヌクレオチドの複製コピーを作製する反応である。PCR法は当該分野で周知であり、例えば、MacPhersonら.(1991)PCR 1:A Practical Approach(IRL Press at Oxford University Press)に教示されている。ポリヌクレオチドの複製コピーの産生プロセスの全て(PCRまたは遺伝子クローニングなど)を、本明細書中で集合的に「複製」と呼ぶ。プライマーを、ハイブリッド形成反応(サザンまたはノーザンブロット分析など)におけるプローブとして使用することもできる。Sambrook and Russell(2001),以下。
【0058】
「ハイブリッド形成」は、1またはそれを超えるポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化される複合体を形成する反応を指す。水素結合は、Watson-Crick塩基対合、Hoogstein結合によるか、任意の他の配列特異的様式において生じ得る。複合体は、二重鎖構造を形成する2本の鎖、多重鎖複合体を形成する3本をまたはそれを超える鎖、1本の自己ハイブリッド形成鎖、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。ハイブリッド形成反応は、PCR反応の開始またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断などのより広範囲の過程における一工程を構成し得る。
【0059】
ハイブリッド形成反応を、異なる「ストリンジェンシー」の条件下で行うことができる。一般に、低ストリンジェンシーハイブリッド形成反応は、10×SSC中にて約40℃で、または等価なイオン強度/温度の溶液中で行われる。中ストリンジェンシーハイブリッド形成は、典型的には、6×SSC中にて約50℃で行われ、高ストリンジェンシーハイブリッド形成反応は、一般に、1×SSC中にて約60℃で行われる。ストリンジェントなハイブリッド形成条件下のさらなる例には以下が含まれる:低ストリンジェンシーにおいて、約25℃~約37℃のインキュベーション温度;約6×SSC~約10×SSCのハイブリッド形成緩衝液濃度;約0%~約25%のホルムアミド濃度;および約4×SSC~約8×SSCの洗浄溶液。中ハイブリッド形成条件の例には、以下が含まれる:約40℃~約50℃のインキュベーション温度;約9×SSC~約2×SSCの緩衝液濃度;約30%~約50%のホルムアミド濃度;および約5×SSC~約2×SSCの洗浄溶液。高ストリンジェンシー条件の例には、以下が含まれる:約55℃~約68℃のインキュベーション温度;約1×SSC~約0.1×SSCの緩衝液濃度;約55%~約75%のホルムアミド濃度;および約1×SSC、0.1×SSC、または脱イオン水の洗浄溶液。一般に、ハイブリッド形成のインキュベーション時間は、1回、2回、またはそれを超える洗浄工程を含む5分間~24時間であり、洗浄インキュベーション時間は約1、2、または15分間である。SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸緩衝液である。他の緩衝系を使用したSSCの等価物を使用することができることが理解される。ハイブリッド形成反応を、当業者に周知の「生理学的条件」下で行うこともできる。生理学的条件の非限定的な例は、細胞内で通常認められる温度、イオン強度、pH、およびMg2+濃度である。
【0060】
ハイブリッド形成が逆平行配置における2つの一本鎖ポリヌクレオチドの間でおこる場合、この反応は「アニーリング」と呼ばれ、これらのポリヌクレオチドは、「相補的」と記載される。二本鎖ポリヌクレオチドは、第1のポリヌクレオチド鎖および第2のポリヌクレオチド鎖のうちの1つの間でハイブリッド形成が起こり得る場合、他方のポリヌクレオチドと「相補的」または「相同」であり得る。「相補性」または「相同性」(一方のポリヌクレオチドが他方と相補的である程度)は、一般的に認められている塩基対合則にしたがって相互に水素結合を形成すると予想される反対側の鎖内の塩基の比率に関して定量可能である。
【0061】
用語「増殖する」または「拡大する」は、細胞または細胞集団が成長することを意味する。用語「成長」はまた、所望の細胞数または細胞型を得るのに必要な支持培地、栄養素、成長因子、支持細胞、または任意の化学的または生物学的化合物の存在下での細胞の増殖を指す。
【0062】
用語「培養」は、様々な種類の培地上または培地中での細胞または生物のin vitro増殖を指す。培養液中で成長させた細胞の子孫が親細胞と完全に(すなわち、形態、遺伝子、または表現型が)同一でない場合があると理解される。
【0063】
本明細書中で使用される場合、用語「ベクター」は、ベクターが細胞内に配置されたときに、例えば、形質転換過程によって複製され得るようにインタクトなレプリコンを含む非染色体核酸を指す。ベクターは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターであり得る。ウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス(bacculovirus)、改変バキュロウイルス(bacculovirus)、パポバウイルス(papovirus)、または他の改変された天然に存在するウイルスが含まれる。核酸を送達させるための例示的な非ウイルスベクターには、裸のDNA;カチオン性脂質単独またはカチオン性ポリマーとの組み合わせと複合体化したDNA;アニオン性およびカチオン性のリポソーム;いくつかの場合にリポソーム中に含まれる、カチオン性ポリマー(異種ポリリジン、長さが規定されたオリゴペプチド、およびポリエチレンイミンなど)と縮合したDNAを含むDNA-タンパク質複合体および粒子;ならびにウイルスおよびポリリジン-DNAを含む三元複合体の使用が含まれる。プラスミドベクターの非限定的な例には、pHIV、pLVX、pLKO.1、pLemiR、pLV、pUC、pGEM、pSP73、pSP72、pSP64、pBR322、およびpCCLプラスミドが含まれる。
【0064】
「ウイルスベクター」は、宿主細胞に送達すべきポリヌクレオチドを含む、in vivo、ex vivo、またはin vitroのいずれかで組換えによって産生されるウイルスまたはウイルス粒子と定義される。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびアルファウイルスベクターなどが含まれる。アルファウイルスベクター(セムリキ森林ウイルスベースのベクターおよびシンドビス・ウイルスベースのベクターなど)も、遺伝子療法および免疫療法において使用するために開発されている。Schlesinger and Dubensky(1999)Curr.Opin.Biotechnol.5:434-439およびYing,ら.(1999)Nat.Med.5(7):823-827を参照のこと。
【0065】
遺伝子移入がレンチウイルスベクターによって媒介される態様では、ベクター構築物は、レンチウイルスゲノムまたはその一部および治療遺伝子を含むポリヌクレオチドを指す。本明細書中で使用される場合、「レンチウイルス媒介性遺伝子移入」または「レンチウイルス形質導入」は同じ意味を有し、ウイルスが細胞に侵入し、そのゲノムを宿主細胞ゲノム内に組み込むことによって遺伝子または核酸配列が宿主細胞に安定に移入される過程を指す。ウイルスは、その通常の感染機序によって宿主細胞に侵入することができるか、細胞に侵入するために異なる宿主細胞の表面受容体またはリガンドに結合するように修飾することができる。レトロウイルスは、その遺伝情報をRNAの形態で保有する;しかし、ウイルスが細胞に感染した時点で、RNAはDNAの形態に逆転写され、感染した細胞のゲノムDNAに組み込まれる。組み込まれたDNA形態はプロウイルスと称されている。本明細書中で使用される場合、レンチウイルスベクターは、ウイルスまたはウイルス様の侵入機序を介して細胞内に外因性核酸を導入することができるウイルス粒子を指す。「レンチウイルスベクター」は、他のレトロウイルスベクターと比較して非分裂細胞の形質導入において一定の利点を有する当該分野で周知のレトロウイルスベクターの1つの型である。Trono D.(2002)Lentiviral vectors,New York:Spring-Verlag Berlin Heidelbergを参照のこと。
【0066】
本開示のレンチウイルスベクターは、オンコレトロウイルス(MLVを含むレトロウイルスの亜群)およびレンチウイルス(HIVを含むレトロウイルスの亜群)に基づくか、由来する。例には、ASLV、SNV、およびRSVが含まれ、これら全ては、レンチウイルスベクター粒子産生系のパッケージング成分とベクター成分に分割されている。本開示のレンチウイルスベクター粒子は、遺伝的または他の方法で(例えば、パッケージング細胞系の特異的選択によって)変化した特定のレトロウイルスバージョンに基づき得る。
【0067】
特定のレトロウイルス「に基づいた」ベクター粒子は、ベクターが前述の特定のレトロウイルスに由来することを意味する。ベクター粒子のゲノムは、バックボーンとして前述のレトロウイルスに由来する成分を含む。ベクター粒子は、RNAゲノムに適合する不可欠なベクター成分(逆転写および組み込み系が含まれる)を含む。通常、これらは、特定のレトロウイルスに由来するgagタンパク質およびpolタンパク質を含む。したがって、ベクター粒子の構造成分の大部分は、通常は、前述のレトロウイルスに由来するが、構造成分は、所望の有用な特性が得られるように遺伝子またはその他が変更されていてよい。しかし、一定の構造成分、特にenvタンパク質は、異なるウイルスに由来してよい。ベクター宿主の範囲および感染または形質導入される細胞の型を、ベクター粒子産生系中で異なるenv遺伝子を使用することによって変更して、特異性が異なるベクター粒子を得ることができる。
【0068】
用語「プロモーター」は、特定の遺伝子の転写を開始するDNA領域を指す。プロモーターには、転写を適切に開始するのに必要なプロモーターの最小部分であるコアプロモーターを含み、転写因子結合部位などの調節エレメントも含むことができる。調節エレメントは、転写を促進してもよいし、転写を阻害してもよい。プロモーター中の調節エレメントは、転写活性因子または転写抑制因子のための結合部位であり得る。プロモーターは、構成性または誘導性であり得る。構成性プロモーターは、常に活性であり、および/または遺伝子に対して基底転写レベルを超える転写を常に指示するプロモーターを指す。かかる構成性プロモーターの例には、ホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGK)プロモーター;SSFV、CMV、MNDU3、SV40、Ef1a、UBC、およびCAGGが含まれる。誘導性プロモーターは、細胞に添加されるか、細胞中で発現される分子または因子によって誘導され得るプロモーターである。誘導性プロモーターは、誘導がなくとも依然として基底レベルで転写を生じさせ得るが、典型的には、誘導によって有意により多くのタンパク質が産生される。プロモーターはまた、組織特異的であり得る。組織特異的プロモーターは、プロモーターを活性化するのに適切な転写因子を有する一定の細胞集団中にタンパク質を産生させることが可能である。
【0069】
エンハンサーは、標的配列の発現を増加させる調節エレメントである。「プロモーター/エンハンサー」は、プロモーター機能およびエンハンサー機能の両方を提供することができる配列を含むポリヌクレオチドである。例えば、レトロウイルスの長末端反復は、プロモーター機能およびエンハンサー機能の両方を含む。エンハンサー/プロモーターは、「内因性」または「外因性」または「異種」であり得る。「内因性」エンハンサー/プロモーターは、ゲノム内の所与の遺伝子と天然に連結したものである。「外因性」または「異種」エンハンサー/プロモーターは、遺伝子の転写が連結されたエンハンサー/プロモーターによって指示されるように、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的技術)によって前述の遺伝子に並置されたものである。
【0070】
本明細書中で使用される用語「単離された」は、他の材料を実質的に含まない(例えば、70%、または80%、または85%、または90%、または95%、または98%超)分子または生物学的材料もしくは細胞材料を指す。1つの態様では、用語「単離された」は、天然供給源中に存在する他のDNAもしくはRNA、またはタンパク質もしくはポリペプチド、または細胞もしくは細胞オルガネラ、または組織もしくは器官からそれぞれ分離された、核酸(DNAまたはRNAなど)、またはタンパク質もしくはポリペプチド、または細胞もしくは細胞オルガネラ、または組織もしくは器官を指し、これらは、その未変性の状態または天然の状態で存在する場合では達成できない結果を達成するための材料の操作(例えば、組換え複製または変異による操作)が可能である。用語「単離された」はまた、組換えDNA技術によって産生されたときの細胞材料、ウイルス材料、培養培地や、化学合成されたときの化学的前駆細胞、他の化学物質を実質的に含まない核酸またはペプチドを指す。さらに、「単離された核酸」は、断片として天然に存在せず、天然の状態で見出されないと考えられる核酸断片が含まれることを意味する。用語「単離された」はまた、他の細胞タンパク質から単離されたポリペプチドを指すために本明細書中で使用され、精製ポリペプチドおよび組換えポリペプチドの両方を、例えば、70%、または80%、または85%、または90%、または95%、または98%を超える純度で含むことを意味する。用語「単離された」はまた、他の細胞または組織から単離された細胞または組織を指すために本明細書中で使用され、培養および/または操作された細胞または組織を含むことができる。
【0071】
本明細書中で使用される場合、「幹細胞」は、培養で無期限に分裂して特殊化した細胞を生じる能力を有する細胞と定義する。現時点での便宜上、幹細胞は、体性(成体)幹細胞、胚性幹細胞、または誘導多能性幹細胞に分類される。体性幹細胞は、分化した組織中で見出される未分化細胞であり、この細胞自体を再生し(クローン性)、(一定の制限付きで)分化して、前述の細胞が起源とする組織の全ての特殊化細胞型を生成することができる。胚性幹細胞は、胚由来の原始的な(未分化)細胞であり、多種多様な特殊化細胞型になる潜在能力を有する。胚性幹細胞の非限定的な例は、ESI,Singaporeから入手可能なHES2(ES02としても公知)細胞株およびWiCell,Madison,WI.から入手可能なH1またはH9(WA01としても公知)細胞株である。多能性胚性幹細胞を、マーカー(Oct-4、アルカリホスファターゼ、CD30、TDGF-1、GCTM-2、Genesis、生殖細胞核性因子、SSEA1、SSEA3、およびSSEA4が含まれるが、これらに限定されない)の使用によって他の細胞型と区別することができる。誘導多能性幹細胞(iPSC)は、1またはそれを超える幹細胞特異的遺伝子の発現の誘導によって産生された非多能性細胞、典型的には成体体細胞由来の人為的に誘導された幹細胞である。
【0072】
「単為発生幹細胞」は、卵の単為発生活性化から生じる幹細胞を指す。単為発生幹細胞の作出方法は、当該分野で公知である。例えば、Cibelliら.(2002)Science 295(5556):819およびVranaら.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U S A 100(Suppl.1)11911-6(2003)を参照のこと。
【0073】
「胚様体またはEB」は、培養中に形成された、その後の分化が容易な胚性幹細胞の三次元(3-D)凝集体である。懸濁培養で成長させた場合、EB細胞は、蔵側内胚葉の外層で取り囲まれた小さな細胞凝集体を形成する。成長および分化の際に、EBは、液体で満たされた腔および外胚葉様細胞の内層を有する嚢胞性胚様体に進化する。
【0074】
用語「増殖する」は、細胞または細胞集団が成長するか表現型が変化することを意味する。用語「成長」は、所望の細胞数または細胞型を得るのに必要な支持培地、栄養素、成長因子、支持細胞、または任意の化学的もしくは生物学的化合物の存在下での細胞の増殖を指す。1つの実施形態では、細胞の成長により、組織が再生される。さらに別の実施形態では、組織は、神経前駆細胞または神経細胞から構成される。
【0075】
用語「培養」は、様々な種類の培地上または培地中での細胞または生物のin vitro増殖を指す。培養液中で成長させた細胞の子孫が親細胞と完全に(すなわち、形態、遺伝子、または表現型が)同一でない場合があると理解される。「拡大した」は、細胞の任意の増殖または分裂を意味する。「培養された」細胞は、その天然の環境から分離され、特異的な予め規定された条件下で増殖された細胞である。
【0076】
「分化」は、非特殊化細胞が心臓、肝臓、または筋肉細胞などの特殊化細胞の特徴を獲得する過程を説明する。「定方向分化」は、特定の細胞型への分化を誘導するための幹細胞培養条件の操作を指す。「脱分化された」は、細胞系列内のより確定されない状態に戻る細胞を定義する。本明細書中で使用される場合、用語「分化するまたは分化された」は、細胞系列内のより確定された(「分化した」)状態を呈する細胞を定義する。本明細書中で使用される場合、「中胚葉(または外胚葉または内胚葉)系列に分化する細胞」は、特定の中胚葉系列、外胚葉系列、または内胚葉系列にそれぞれ確定されるようになる細胞を定義する。中胚葉系列に分化するか特定の中胚葉細胞を生じる細胞の例には、脂質形成細胞、平滑筋形成細胞、軟骨形成細胞、心臓形成細胞、皮膚形成細胞、造血細胞、血管形成細胞、筋形成細胞、腎形成細胞、泌尿生殖器形成細胞、骨形成細胞、心膜形成細胞、または間質細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
外胚葉系列に分化する細胞の例には、表皮細胞、神経形成細胞、および神経膠形成細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
「間葉系幹細胞」(すなわち、MSC)とも呼ばれる「骨髄間質細胞」は、種々の細胞型に分化することができる多分化能性幹細胞である。MSCがin vitroまたはin vivoで分化することが示されている細胞型には、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、および脂肪細胞が含まれる。間葉は、中胚葉に由来し、造血組織および結合組織に分化する胎児結合組織であるのに対して、MSCは造血細胞に分化しない。間質細胞は、組織の機能細胞が存在する支持構造を形成する結合組織細胞である。かかる細胞を単離し、かかる細胞を増殖および分化させる方法は、技術文献および特許文献において公知である(例えば、米国特許出願公開第2007/0224171号、同第2007/0054399号、および同第2009/0010895号(その全体が本明細書中で参考として援用される))。
【0079】
CD34+細胞は、細胞表面CD34マーカーを発現する細胞を意図する。CD34は、その名称が、細胞表面抗原を同定する表面抗原分類プロトコールに由来する。CD34は、最初に造血幹細胞に関して記載され、細胞間接着因子として機能する。CD34はまた、造血幹細胞の骨髄細胞外基質への付着または間質細胞への直接付着を媒介する。臨床的には、CD34は、骨髄移植のための造血幹細胞の選択および富化に関連する。CD34はまた、造血細胞以外の細胞型上に見出される。Sidney LE,ら.(2014).”Concise review:evidence for CD34 as a
common marker for diverse progenitors”.Stem Cells.32(6):1380-1389。
【0080】
本明細書中で使用される場合、用語「分化するまたは分化された」は、細胞系列内のより確定された(「分化した」)状態を呈する細胞を定義する。「脱分化された」は、細胞系列内のより確定されない状態に戻る細胞を定義する。
【0081】
CAMKK1(カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼキナーゼ1;UniProtKB番号Q8N5S9で知られているヒトCAMKK1)は、カルシウム誘発シグナル伝達カスケードに属し、いくつかの細胞過程に関与する。CAMKK1は、Ser/ThrプロテインキナーゼファミリーおよびCamKKサブファミリーに属するトランスフェラーゼであり、心臓、膵臓、扁桃、視床下部、前立腺、および肺内で発現する。CAMKK1は、そのアミノ酸Thr(177)およびThr(196)のそれぞれのリン酸化によってCamK1およびCamK4を活性化する。CAMKK1活性は、それ自体がCa2+/カルモジュリンによる制御を受け;CAMKK1の活性は、PKA(cAMP依存性プロテインキナーゼ)によるリン酸化の際に減少し、Ca(2+)/カルモジュリンの存在下でのPKAとのインキュベーションによって増加するが、非存在下では減少する。このPKAによるCAMKK1のリン酸化および阻害は、cAMP依存性シグナル伝達経路とCa2+依存性シグナル伝達経路との間のバランスの調整に関与する。CAMKK1のアミノ酸配列を、配列番号1に示す。CAMKK1タンパク質の等価物の例である短縮バージョンおよび変異バージョンを、本明細書中に記載する。
【0082】
SDF-1(間質細胞由来因子-1)は、ケモカインファミリーに属する小型のサイトカインであり、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド12(CXCL12)と公式に命名されている。これは、同一遺伝子の選択的スプライシングによって2つの形態SDF-1α/CXCL12aおよびSDF-1β/CXCL12bで産生される。ケモカインは、2つのジスルフィド結合を形成する4つの保存されたシステインの存在を特徴とする。CXCL12タンパク質はCXCケモカイン群に属し、その最初のシステイン対が1つの介在アミノ酸によって分けられている。CXCL12はリンパ球に強い走化性を示し、発生中の重要な細胞コーディネーターとして関与している。このケモカインの受容体はCXCR4であり、以前はフーシンと呼ばれていた。このCXCL12-CXCR4相互作用は以前は排他的と見なされていたが(他のケモカインおよびその受容体と異なる)、最近、CXCL12もCXCR7受容体によって結合されるとが示唆された。CXCL12の遺伝子は、ヒト10番染色体に存在する。ヒトおよびマウスでは、CXCL12およびCXCR4の両方が、以下の高い配列同一性を示す:それぞれ、99%および90%。ヒトタンパク質の代表的な配列は、mnakvvvvlv lvltalclsd gkpvslsyrc pcrffeshva ranvkhlkil ntpncalqiv arlknnnrqv cidpklkwiq eylekalnkr fkm(配列番号4)である(NCBI参照配列NP_000600.1から再現、ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_000600、最終アクセス日:2018年4月12日を参照のこと)。代表的なコードポリヌクレオチドを、配列番号3に提供し、これはNM_199168から再現した(ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NM_199168、最終アクセス日:2018年4月12日を参照のこと)。
【0083】
CXCR-4は、間質由来因子-1(SDF-1)に特異的なα-ケモカイン受容体である。CXCR4は、CD4+T細胞に感染するためにHIVが使用することができるいくつかのケモカイン受容体のうちの1つである。CXCR4のリガンドであるSDF-1は、骨髄への造血幹細胞ホーミングおよび造血幹細胞の静止において重要であることが公知である。
【0084】
代表的なCXCR-4タンパク質配列(配列番号5)(uniprot.org/uniprot/P61073(最終アクセス日:2018年4月12日)から再生)は、以下である:
【化1-1】
【化1-2】
【0085】
代表的なヒトポリヌクレオチド配列(配列番号6)(ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NG_011587.1?from=5001&to=8807&report=genbank、最終アクセス日:2018年4月12日から再生)は、以下である:
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
【0086】
本明細書中で使用される場合、「CAMKK1の過剰発現」は、患者の臓器または組織中に通常存在する量よりも多い、患者の細胞、臓器、または組織中のCAMKK1発現産物(mRNAまたはタンパク質)の量を意味する。
【0087】
本明細書中で使用される場合、「SDF-1の過剰発現」は、患者の臓器または組織中に通常存在する量よりも多い、患者の細胞、臓器、または組織中のSDF-1発現産物(mRNAまたはタンパク質)の量を意味する。
【0088】
用語「エキソソーム」は、当該分野で周知であり、中間の細胞内区画である多胞体の原形質膜との融合の際に細胞から放出される細胞外小胞を指す。例えば、Edgar JR(2016)BMC Biol.13;14:46を参照のこと。
【0089】
核酸またはタンパク質に関連する用語「外因性」は、細胞、細胞由来小胞、エキソソーム、微小胞、またはその組み合わせに人為的に導入されているポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列を指す。細胞由来小胞中に外因性の核酸またはタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列と同一であるか実質的に類似する配列を有する内因性の核酸またはタンパク質が存在し得る。例えば、間葉系幹細胞を、CAMKK1コードポリヌクレオチドを過剰発現するように遺伝子改変することができる。CAMKK1を過剰発現するように遺伝子改変されたMSCから回収した培養培地から単離した精製細胞由来小胞集団が、CAMKK1コードポリヌクレオチドを過剰発現するするように遺伝子改変されていないMSCから単離した細胞由来小胞と比較して、より高いレベルのCAMKK1を含むと予想される。
【0090】
「組成物」はまた、活性薬剤および他の担体(例えば、化合物または組成物(不活性(例えば、検出可能な薬剤または標識)または活性(アジュバント、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝液、塩類、親油性溶媒、防腐剤、またはアジュバントなど)))の組み合わせを含むことが意図される。担体には、生体適合性足場、薬学的賦形剤および添加物であるタンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、および炭水化物(例えば、モノサッカリド、ジサッカリド、トリサッカリド、テトラサッカリド、およびオリゴサッカリドが含まれる糖類;糖誘導体(アルジトール、アルドン酸、およびエステル化糖など);およびポリサッカリドまたは糖ポリマー)も含まれ、これらは、単独または組み合わせて存在することができ、単独または組み合わせて1~99.99重量%または体積%で含まれる。例示的なタンパク質賦形剤には、血清アルブミン(ヒト血清アルブミン(HSA)など)、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、およびカゼインなどが含まれる。緩衝剤として機能することもできる代表的なアミノ酸/抗体成分には、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、およびアスパルテームが含まれる。炭水化物賦形剤も本開示の範囲内であることが意図され、その例には、モノサッカリド(フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、およびソルボースなど);ジサッカリド(ラクトース、スクロース、トレハロース、およびセロビオースなど);ポリサッカリド(ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、およびデンプンなど);およびアルジトール(マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール ソルビトール(グルシトール)、およびミオイノシトールなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
「実質的に均一の」は、約50%超、あるいは約60%超、あるいは70%超、あるいは75%超、あるいは80%超、あるいは85%超、あるいは90%超、あるいは95%超の細胞が同一または類似の表現型の細胞である細胞集団を説明する。表現型を、予め選択した細胞表面マーカーまたは他のマーカーによって決定することができる。
【0092】
「生体適合性マトリックス」は、細胞においていかなる望ましくない影響も誘発することがないか、最終的な宿主においていかなる望ましくない局所または全身の応答も誘導することもなく、所望の組織を生成するための適切な細胞活動(分子または機械的なシグナル伝達システムの促進が含まれる)を支持する基材としての役割を果たすことができる組織工学のための足場またはマトリックスを指す。他の実施形態では、生体適合性足場は、宿主において望ましくない局所または全身の影響を誘発することなく、望ましい程度の宿主への組み込みで意図する機能を果たすことができる植込み型デバイスの前身である。生体適合性足場は、米国特許第6,993,406号および同第6,103,255号に記載されている。
【0093】
本明細書中で使用され、当業者に公知であるように、「マーカー」は、同定因子および/または識別因子として使用することができる、細胞によって発現されるか細胞内部の受容体またはタンパク質を指す。マーカーに(「+」)が付される場合、マーカーは正に発現する。マーカーに(「-」)が付される場合、マーカーは存在しないか、発現しない。「高」、「低」、および相対語などのマーカー発現の変量も使用する。
【0094】
「前駆細胞(precursor)」または「前駆細胞(progenitor cell)」は、特定の細胞型に
分化する能力を有する細胞を意味することが意図される。前駆細胞は幹細胞であり得る。前駆細胞はまた、幹細胞より特異的であり得る。前駆細胞は、単能性または多分化能性であり得る。成体幹細胞と比較して、前駆細胞は、細胞分化のより後期の段階にあり得る。前駆細胞の例には、前駆神経細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
細胞集団は、表現型および/または遺伝子型が同一(クローン性)でかるか同一でない1個を超える細胞の集団を意図する。
【0096】
有効量という用語は、意図する結果(in vitroまたはin vivoでの細胞の成長および/または分化が含まれる)を得るのに有効であるか、または本明細書中に記載の神経変性状態の処置に有効である試薬または組成物(本明細書中に記載の組成物など)、細胞集団、または他の薬剤の濃度または量を指す。投与すべき細胞数が、処置すべき障害の特性(医薬生物学者が熟知する要因のうちで、処置すべきサイズまたは総体積/表面積および処置すべき領域の位置に対する投与部位の近さが含まれるが、これらに限定されない)に応じて変動すると認識する。
【0097】
有効期間(または有効時間)および有効条件という用語は、その意図する結果(例えば、所定の細胞型への細胞の分化)を達成するために薬剤または組成物に必要とされるか好ましい一定の期間または他の調節可能な条件(例えば、in vitro法のための温度、湿度)を指す。
【0098】
患者または被験体という用語は、医薬組成物で処置されるか、本明細書中に記載の方法に従う動物(ウシ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウマ、好ましくはヒトなどの哺乳動物が含まれる)を指す。
【0099】
生物学的に適合した担体または培地という用語と互換的に使用され得る薬学的に許容され得る担体(または培地)という用語は、細胞および治療目的で投与されるべき他の試薬と適合するだけでなく、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の合併症を生じずに妥当な利益/リスク比と釣り合ったヒトおよび動物の組織と接触させるために用いるのに適切でもある試薬、細胞、化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を指す。本開示での使用に適切な薬学的に許容され得る担体には、液体、半固体(例えば、ゲル)、および固体の材料(例えば、細胞の足場およびマトリックス、管、シート、および当該分野で公知であり、本明細書中により詳細に記載の他の材料など)が含まれる。これらの半固体および固体の材料を、体内での分解に耐性を示すように設計することができるか(非生分解性)、体内で分解されるように設計することができる(生分解性、生体侵食性)。生分解性材料は、さらに生体再吸収性または生体吸収性を示し得る(すなわち、生分解性材料は、天然の経路を介した他の材料への変換または分解および排出のいずれかによって体液に溶解および吸収され得るか(一例として、水溶性埋没物)、分解されて最終的に体外へ排出され得る)。
【0100】
「対照」は、比較を目的として実験で用いられる対立する被験体または試料である。対照は、「正」または「負」であり得る。例えば、実験の目的が遺伝子の発現レベルの変化と特定の表現型との相関関係を判定することである場合、正の対照(かかる変化を有し、かつ所望の表現型を示す被験体由来の試料)および負の対照(発現または表現型の変化を欠く被験体または被験体由来の試料)を使用することが一般に好ましい。さらに、実験の目的が幹細胞の分化に薬剤が影響を及ぼすかどうかを判定することである場合、正の対照(分化に影響を及ぼすことが公知の局面を有する試料)および負の対照(影響を及ぼさないことが公知の薬剤または薬剤を添加しない試料)を使用することが好ましい。
【0101】
自家移入、自家移植、および自家移植片などの用語は、細胞ドナーが細胞代償療法のレシピエントでもある処置を指す。同種移入、同種移植、および同種移植片などの用語は、細胞ドナーが細胞代償療法のレシピエントと同種であるが、同一個体ではない処置を指す。ドナーの細胞がレシピエントと組織適合性を示している細胞移入は、時折、同系移入と呼ばれる。異種移入、異種移植、および異種移植片などの用語は、細胞ドナーが細胞代償療法のレシピエントと異なる種である処置を指す。
【0102】
「宿主細胞」は、特定の対象細胞を指すだけでなく、かかる細胞の子孫または潜在的子孫も指す。変異または環境の影響のいずれかのために後世において一定の改変が生じ得るので、かかる子孫は、実際は親細胞と同一ではない場合があるが、本明細書中で使用される用語の範囲内に依然として含まれる。
【0103】
疾患の「処置(treating)」または「処置(treatment)」には、以下が含まれる:(1)疾患の予防(すなわち、罹患する傾向があり得るが、依然として疾患を経験していないか、疾患の症状を示していない患者において疾患の臨床症状を発生させないこと)、(2)疾患の抑制(すなわち、疾患またはその臨床症状の発症の停止または軽減)、または(3)疾患の軽減(すなわち、疾患またはその臨床症状を後退させること)。1つの態様では、処置は、予防を除外する。
【0104】
心筋症および関連障害の処置は、これらの疾患または障害(例えば、心筋が構造的および機能的に異常である心筋障害が含まれる)の症状および関連するクリニカルエンドポイントの緩和を意図する。心筋症の大部分が外因性(外部要因)であり、これらのうち虚血性心筋症が最もよく見られる。この用語には、心筋層への不適切な酸素送達の結果として再造形および肥大した心筋層を指し得る虚血性心筋症が含まれ、冠状動脈疾患が最も多い原因である。
【0105】
用語「心筋症」はまた、しばしば内因性/特発性の非虚血形態の心筋症を具体的に説明するために時折使用される。非虚血性心筋症は、筋節タンパク質をコードする遺伝子の異常に関連し、その最もよく見られるタイプは肥大型心筋症および拡張型心筋症であり、これらの疾患において心筋肥大および/または線維症の組み合わせが生じる。非虚血性心筋症の他のタイプには、拘束型心筋症、不整脈原性右室心筋症、心内膜心筋線維症、および分類不能型心筋症(左室緊密化障害(LVNC)、およびたこつぼ心筋症が含まれる)が含まれる。さらなる例には、不整脈原性右室異形成(不整脈原性右室心筋症);心房停止(心臓ブロックを伴う心房心筋症);硬化性心筋症;先天性白内障-肥大型心筋症、ミトコンドリア筋症;拡張型心筋症;拡張型心筋症-高ゴナドトロピン性性腺機能低下症;運動失調を伴う拡張型心筋症;致死性心筋症を伴う早発性筋障害;脳症-肥大型心筋症-尿細管疾患;家族性拡張型心筋症;LMNA変異に起因する伝導障害を伴う家族性拡張型心筋症;家族性肥大型心筋症;家族性肥大型心筋症(家族性肥大性閉塞性心筋症);家族性孤立性不整脈原性右室異形成(家族性孤立性不整脈原性右室心筋症);家族性孤立性不整脈原性右室異形成(家族性孤立性不整脈原性心室心筋症);家族性孤立性不整脈原性心室形成異常(両室型)(家族性孤立性不整脈原性心室心筋症、両室型);家族性孤立性不整脈原性心室形成異常(左室型)(家族性孤立性不整脈原性心室心筋症、左室型);家族性孤立性不整脈原性心室形成異常(右室型)(家族性孤立性不整脈原性心室心筋症、古典的形態);家族性孤立性不整脈原性心室形成異常(右室型)(家族性孤立性不整脈原性心室心筋症、右室型);家族性孤立性拡張型心筋症;家族性孤立性拡張型心筋症(家族性または特発性の拡張型心筋症);家族性孤立性肥大型心筋症;家族性孤立性肥大型心筋症(家族性孤立性肥大性閉塞性心筋症);家族性孤立性肥大型心筋症(家族性または特発性の肥大性閉塞性心筋症);家族性孤立性肥大型心筋症(肥大性閉塞性心筋症);家族性孤立性肥大型心筋症(原始的肥大性閉塞性心筋症);家族性孤立性拘束型心筋症;家族性孤立性拘束型心筋症(家族性または特発性の拘束型心筋症);家族性拘束型心筋症;家族性拘束型心筋症1、2、または3型;心臓・手症候群;集中した競技トレーニングに起因する肥大型心筋症;心筋症を伴うリー症候群;糖尿病を伴う脂肪組織萎縮、白斑黒皮性の丘疹、脂肪肝、および肥大型心筋症;肥大型心筋症を伴うリソソーム病;拘束型心筋症を伴うリソソーム病;母性遺伝性の心筋症および聴力損失;ならびに母性遺伝性の心筋症および聴力損失が含まれる。さらなる状態が当該分野で公知であり、例えば、米国特許出願第14/893,920号に記載されている。
【0106】
関連障害の非限定的な例には、例えば、上記の心筋症の形態と重複し得る続発性心筋症が含まれ、その原因には、代謝性蓄積症(例えば、アミロイド症、ヘモクロマトーシス)、炎症(例えば、シャーガス病)、内分泌(例えば、糖尿病性心筋症、甲状腺機能亢進症、先端巨大症)、毒素(例えば、アントラサイクリン化学療法、アルコール)、神経筋(例えば、筋ジストロフィ)、および栄養疾患(肥満関連)が含まれる。これらは、虚血性または非虚血性、遺伝性もしくは後天性(続発性)のいずれかの種々の組み合わせであり得る。
【0107】
「組織治癒の促進」は、機械的ストレス(例えば、刺創)、化学的または電気的なストレスなどによる任意の組織傷害の影響の治癒または低減を意図する。組織は、内部または外部であり得る(患者または被験体の外表皮膚)。
【0108】
用語「処置」に関連する場合の用語「罹患している」は、感染または感染から生じる疾患と診断されているか、その傾向がある患者または個体を指す。患者を、活動性感染または潜伏感染のために疾患の「罹患リスクがある」とも呼ぶことができる。この患者は、特徴的な疾患病状を依然として発症していない。
【0109】
投与という用語には、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、槽内への注射または注入、皮下注射、または植え込み)、吸入スプレーによるか、経鼻、膣、直腸、舌下、尿道(例えば、尿道坐剤)、または局所の投与経路(例えば、ゲル、軟膏、クリーム、エアロゾルなど)による投与が含まれるものとするが、これらに限定されず、単独または併せて、各投与経路に適切な従来の無毒性の薬学的に許容され得る担体、アジュバント、賦形剤、およびビヒクルを含む適切な投薬単位の製剤中に製剤化することができる。本開示は、投与経路、製剤化、投与計画に制限されない。
(発明を実施するためのモード)
組換え幹細胞
【0110】
以下:
a.CAMKK1ポリペプチドまたはその等価物;または
b.CXCR4ポリペプチド発現の存在下でのSDF-1ポリペプチドまたはその等価物
の一方または両方を過剰発現する組換え幹細胞を本明細書中に開示する。
1つの態様では、過剰発現は、配列番号1もしくは2またはその各々の等価物を含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなるCAMKK1ポリペプチドの発現によるか、配列番号3もしくは4またはその各々の等価物を含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはからなるSDF-1ポリペプチド、および配列番号5またはその等価物を含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなるCXCR4ポリペプチドの発現による。間葉系幹細胞またはCD34+幹細胞などのいくつかの幹細胞はCXCR4を発現するため、別の態様では、本開示の幹細胞は、間葉系幹細胞、CD34+細胞、もしくはCD34+幹細胞、またはこれらの各々の前駆細胞である。
【0111】
別の態様では、幹細胞は、胚性幹細胞、iPSC、または体性幹細胞の群から選択される。さらなる態様では、幹細胞は、エキソソームの産生、分泌、および/または機能を誘導するのに有効な量で、CAMKK1ポリペプチドまたはその等価物をコードするポリヌクレオチドを含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなる。本開示の幹細胞は、エキソソームの産生、分泌、および/または機能を誘導するのに有効な量で、CXCR4およびSDF-1をコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチド含み得るか、あるいはこれらから本質的になり得るか、なおさらにはこれらからなり得る。ポリペプチドは、ベクター内に必要に応じて含まれるCAMKK1、SDF-1、および/もしくはCXCR4ポリペプチド、またはこれら各々の等価物をコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチドによって発現され得る。幹細胞は、ヒト幹細胞などの哺乳動物幹細胞であり得る。ベクターは、ウイルスベクターまたはプラスミドであり得る。プラスミドベクターの非限定的な例には、pHIV、pLVX、pLKO.1、pLemiR、pLV、pUC、pGEM、pSP73、pSP72、pSP64、pBR322、およびpCCLプラスミドが含まれる。
【0112】
本開示は、CAMKK1ポリペプチドもしくはタンパク質および/もしくはSDF-1ポリペプチドもしくはタンパク質またはその各々の等価物をコードする、単離され、外因性に付加されたポリヌクレオチド、ウイルス粒子、ベクターを含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなる単離幹細胞または幹細胞集団を提供する。ポリヌクレオチドは、CAMKK1および/またはSDF-1タンパク質またはポリペプチドまたはその等価物を過剰発現させるために細胞に導入される。ポリヌクレオチドは、哺乳動物ポリペプチドまたはタンパク質(例えば、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、またはヒト)をコードすることができ、例えば、ポリペプチドの種は、細胞の種と同一であり得るか、異なる得る。1つの態様では、ポリペプチドおよび細胞は、同一の種(例えば、ヒト)に由来する。
【0113】
幹細胞は、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)、または体性(成体)幹細胞であり得、任意の特定の型(例えば、脂肪由来の型、造血型、間葉型、または神経型が含まれる)の幹細胞であり得る。細胞は、供給業者から入手可能な培養細胞株または被験体から単離した初代細胞に由来し得る。1つの態様では、幹細胞は、間葉系幹細胞、ヒト幹細胞であり、ポリヌクレオチド(単数または複数)は、ヒトのポリペプチドおよびタンパク質をコードする。
【0114】
1つの態様では、幹細胞集団は、実質的に均一であるか、クローン性である。幹細胞集団は、治療で使用されるときに処置される被験体に対して自家または同種であり得る。
【0115】
別の態様では、幹細胞は、任意の型または任意の種の幹細胞、例えば、ヒト幹細胞などの哺乳動物幹細胞である。
【0116】
CAMKK1ポリペプチドまたはタンパク質の非限定的な例は、配列番号1または2の配列、またはその等価物を含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなる。等価物の非限定的な例を、本明細書中に提供する。SDF-1ポリペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドの非限定的な例は、3の配列もしくはその等価物または配列番号4のポリペプチドもしくはその等価物をコードするポリヌクレオチドを含むか、あるいはからこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなる。
【0117】
幹細胞中のこれらのポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーター配列および/またはエンハンサー配列をさらに含み得るか、あるいはこれらから本質的になり得るか、なおさらにはこれらからなり得る。これらのポリヌクレオチドを、ベクター(例えば、プラスミドまたはウイルスベクターなどの原核生物ベクターまたは真核生物ベクター)内にさらに含めることができる。プラスミドベクターの非限定的な例には、pHIV、pLVX、pLKO.1、pLemiR、pLV、pUC、pGEM、pSP73、pSP72、pSP64、pBR322、およびpCCLプラスミドが含まれる。
【0118】
プロモーターは、ポリヌクレオチド(単数または複数)の発現を制御する構成性プロモーターまたは誘導性プロモーターであり得る。ポリヌクレオチド(単数または複数)は、検出可能な標識および/または自殺遺伝子および自殺遺伝子の発現を制御するプロモーターをさらに含み得る。関連する実施形態では、自殺遺伝子は、チミジンキナーゼ遺伝子である。さらなる実施形態では、SDF-1および/またはCAMKK1タンパク質またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(単数または複数)および自殺遺伝子は、1つのプロモーターによって制御される。さらなる態様では、自殺遺伝子の発現を制御するプロモーターは、構成性プロモーターである。
【0119】
野生型CAMKK1タンパク質をコードするポリヌクレオチドを細胞に投与することによって幹細胞中でCAMKK1を過剰発現させることができ、例えば、ここで、野生型CAMKK1タンパク質は、配列番号1に記載されている。他の態様では、構成性に活性なCAMKK1をコードするポリヌクレオチドを投与することによって細胞中のCAMKK1レベルを増加させることができる。構成性に活性なCAMKK1は、例えば、配列番号2に記載のCAMKK1~413短縮を含み得る。あるいは、その等価物も提供することができる。等価物の非限定的な例には、T108A変異、S459A変異、またはT108A/S459A変異CAMKK1を含み得る構成性に活性なCAMKK1が含まれる。T108A変異CAMKK1をコードするポリヌクレオチドを細胞に投与することによって細胞中のCAMKK1レベルを増加させることができる。S459A変異CAMKK1をコードするポリヌクレオチドを細胞に投与することによって細胞中のCAMKK1レベルを増加させることもできる。T108A/S459A変異CAMKK1をコードするポリヌクレオチドを細胞に投与することによって細胞中のCAMKK1レベルを増加させることができる。この変異体は、野生型CAMKK1の等価物の一例である。
【0120】
野生型SDF-1タンパク質をコードするポリヌクレオチドを細胞に投与することによって幹細胞中でSDF-1を過剰発現させることができ、例えば、ここで、野生型SDF-1タンパク質は、配列番号4に記載されているか、その等価物である。他の態様では、構成性に活性なSDF-1ポリペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号3のポリヌクレオチドまたはその等価物など)を投与することによって細胞中のSDF-1レベルを増加させることができる。
【0121】
関連する実施形態では、SDF-1および/またはCAMKK1ポリヌクレオチドの生物学的等価物は、高ストリンジェンシー条件下で配列番号3または配列番号1もしくは2をコードするポリヌクレオチドの相補物にハイブリッド形成する核酸を含む。別の実施形態では、前述のポリヌクレオチドの生物学的等価物は、前述のポリヌクレオチドの相補物またはコード鎖に対して少なくとも80%の配列同一性、あるいは少なくとも85%の配列同一性、あるいは少なくとも90%の配列同一性、あるいは少なくとも92%の配列同一性、あるいは少なくとも95%の配列同一性、あるいは少なくとも97%の配列同一性、あるいは少なくとも98%の配列同一性を有する核酸を含む。
【0122】
本明細書中に記載の単離細胞は、マウス、ラット、ウサギ、サル、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、家畜、競技動物、ペット、ウマ、および霊長類、特に、ヒトの細胞の群の種の任意の細胞であり得る。1つの実施形態では、細胞は幹細胞である。関連する実施形態では、単離細胞は、間葉系幹細胞である。この表現型を有する拡大した幹細胞の集団も提供され、細胞は、前述の表現型について実質的に均一であり得る。1つの態様では、細胞は、前述の表現型について、少なくとも70%、あるいは少なくとも75%、あるいは少なくとも80%、あるいは少なくとも85%、あるいは少なくとも90%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも97%均一である。
【0123】
一定の実施形態では、本明細書中に記載の単離細胞は、一定レベルのSDF-1および/またはCAMKK1タンパク質またはポリペプチドを含む。望ましいレベルのタンパク質を産生する適切なプロモーターおよび/またはエンハンサーを選択するか、タンパク質の産生量を制御する誘導系を使用することによって前述のレベルを達成することができる。これらのプロモーターおよび誘導系は、以前に記載されている。1つの実施形態では、単離細胞は、少なくとも約5×10-6ngのポリペプチドまたはタンパク質を含むか、あるいはからこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなる。さらなる実施形態では、単離細胞は、少なくとも約1×10-7ng、約3×10-7ng、約5×10-7ng、約7×10-7ng、約9×10-7ng、約1×10-6ng、約2×10-6ng、約3×10-6ng、約4×10-6ng、約6×10-6ng、約7×10-6ng、約8×10-6ng、約9×10-6ng、約10×10-6ng、約12×10-6ng、約14×10-6ng、約16×10-6ng、約18×10-6ng、約20×10-6ng、約25×10-6ng、約30×10-6ng、約35×10-6ng、約40×10-6ng、約45×10-6ng、約50×10-6ng、約55×10-6ng、約60×10-6ng、約65×10-6ng、約70×10-6ng、約75×10-6ng、約80×10-6ng、約85×10-6ng、約90×10-6ng、約95×10-6ng、約10×10-5ng、約20×10-5ng、約30×10-5ng、約40×10-5ng、約50×10-5ng、約60×10-5ng、約70×10-5ng、約80×10-5ng、または約90×10-5ngのポリペプチドまたはタンパク質を含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなる
【0124】
ベクターは、幹細胞にポリヌクレオチドを導入するのに都合が良い。1つの態様では、用語「ベクター」は、非分裂細胞および/またはゆっくり分裂する細胞に感染して形質導入し、標的細胞のゲノムに組み込む能力を保持する組換えベクターを意図する。いくつかの態様では、ベクターは、野生型のウイルスまたはプラスミドに由来するか、これらに基づく。さらなる態様では、ベクターは、野生型アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、またはレンチウイルスに由来するか、これらに基づく。かかるウイルスの例には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、マウス白血病ウイルス(MLV)などの他のレトロウイルスをベクターバックボーンの基礎として使用することができると予想される。本開示のウイルスベクターが特定のウイルスの構成要素に制限される必要がないことが明らかである。ウイルスベクターは、2つを超える異なるウイルスに由来する構成要素を含んでよく、合成構成要素も含んでよい。ベクター構成要素を、所望の特徴(標的細胞特異性など)が得られるように操作することができる。
【0125】
本開示の組換えベクターは、霊長類および非霊長類に由来し得る。霊長類レンチウイルスの例には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因物質、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれる。非霊長類レンチウイルス群には、プロトタイプ「スローウイルス」であるビスナ・マエディウイルス(VMV)、ならびに関連ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、最近になって記載されたネコ免疫不全ウイルス(FIV)、およびウシ免疫不全ウイルス(BIV)が含まれる。先行技術の組換えレンチウイルスベクターは、当該分野で公知である(例えば、米国特許第6,924,123号;同第7,056,699号;同第7,07,993号;同第7,419,829号、および同第7,442,551号(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0126】
米国特許第6,924,123号は、一定のレトロウイルス配列が標的細胞ゲノム内への組み込みを容易にすることを開示している。この特許は、各レトロウイルスゲノムが、ビリオンのタンパク質および酵素をコードするgag、pol、およびenvと呼ばれる遺伝子を含むことを教示している。これらの遺伝子は、その両端が長末端反復(LTR)と呼ばれる領域に隣接している。LTRは、プロウイルスの組み込み、および転写を担う。LTRはまた、エンハンサー-プロモーター配列としての機能を果たす。換言すれば、LTRは、ウイルス遺伝子の発現を調節することができる。ウイルスゲノムの5’末端に存在するpsi配列によってレトロウイルスRNAのキャプシド形成が起こる。LTR自体の配列は同一であり、この配列を、U3、R、およびU5と呼ばれる3つのエレメントに分割することができる。U3は、RNAの3’末端に固有の配列に由来する。Rは、RNAの両末端で反復された配列に由来し、U5は、RNAの5’末端に固有の配列に由来する。3つのエレメントのサイズは、レトロウイルスが異なればかなり変動し得る。ウイルスゲノムについて、ポリ(A)付加(終止)部位は、LTRの右側のRとU5の境界に存在する。U3は、プロウイルスの転写調節エレメントの大部分(細胞の、いくつかの場合、ウイルスの転写活性因子タンパク質に応答するプロモーター配列および複数のエンハンサー配列を含む)を含む。
【0127】
構造遺伝子gag、pol、およびenv自体に関して、gagは、ウイルスの内部構造タンパク質をコードする。gagタンパク質は、成熟タンパク質MA(マトリックス)、CA(キャプシド)、およびNC(ヌクレオカプシド)に加水分解によってプロセシングされる。pol遺伝子は、DNAポリメラーゼを含む逆転写酵素(RT)、関連RNアーゼHおよびインテグラーゼ(IN)(これらはゲノムの複製を媒介する)をコードする。
【0128】
ウイルスベクター粒子の産生のために、ベクターRNAゲノムは、宿主細胞中で前述のゲノムをコードするDNA構築物から発現される。ベクターゲノムによってコードされない粒子の構成要素は、宿主細胞中で発現されるさらなる核酸配列(通常はgag/pol遺伝子およびenv遺伝子のいずれかまたは両方を含む「パッケージングシステム」)によってトランスで提供される。ウイルスベクター粒子の産生に必要な一連の配列を、一過性トランスフェクションによって宿主細胞に導入することができるか、前述の配列を宿主細胞ゲノムに組み込むことができるか、前述の配列を種々の方法で提供することができる。関与する技術は、当業者に公知である。
【0129】
本開示で使用するためのウイルスベクターには、InvitrogenのpLentiシリーズバージョン4、6、および6.2「ViraPower」システム(Lentigen Corp.製);pHIV-7-GFP(研究室で生成され、City of Hope Research Instituteによって使用された);「Lenti-X」レンチウイルスベクターpLVX(Clontech製);pLKO.1-puro(Sigma-Aldrich製);pLemiR(Open Biosystems製);およびpLV(研究室で生成され、Charite Medical School,Institute of Virology(CBF),Berlin,Germanyによって使用された)が含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
非ウイルスベクターには、in vitro、in vivo、またはex-vivoのいずれかで標的細胞に送達され得る外因性ポリヌクレオチドを含むプラスミドが含まれ得る。プラスミドベクターの非限定的な例には、pHIV、pLVX、pLKO.1、pLemiR、pLV、pUC、pGEM、pSP73、pSP72、pSP64、pBR322、およびpCCLプラスミドが含まれる。異種ポリヌクレオチドは、目的の配列を含むことができ、1またはそれを超える調節エレメントに作動可能に連結されることができ、目的の核酸配列の転写を調節することができる。本明細書中で使用される場合、ベクターは、最終的な標的細胞または標的被験体において複製することができなくてよい。
【0131】
1つの実施形態では、さらなる調節エレメントは、プロモーター、エンハンサー、および/またはプロモーター/エンハンサのー組み合わせである。タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸の発現を制御するプロモーターは、構成性プロモーターであり得る。1つの態様では、自殺遺伝子の発現を制御するプロモーターは、構成性プロモーターである。構成性プロモーターの非限定的な例には、SFFV、CMV、PKG、MDNU3、SV40、Ef1a、UBC、およびCAGGが含まれる。1つの態様では、エンハンサーは、ウッドチャック転写後調節エレメント(「WPRE」)(例えば、Zufferey,R.ら.(1999)J.Virol.73(4):2886-2992を参照のこと)である。エンハンサーエレメントは、プロモーターおよび3’LTRの直前にある遺伝子の下流に存在し得る。しかし、エンハンサーは、任意の位置に存在することができ、3’LTRに制限されない。
【0132】
本開示において有用なプロモーターは、構成性または誘導性であり得る。プロモーターのいくつかの例には、T3プロモーター、T7プロモーター、SP6プロモーター、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター、およびCMVプロモーターが含まれる。1つの実施形態では、テトラサイクリンアクチベータータンパク質の発現を制御するプロモーターは、構成性プロモーターである。他の実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、または発現を一過性に制御するプロモーターである。1つの実施形態では、プロモーターは、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター(PGK)である。
【0133】
1つの実施形態では、ベクターは、さらに、自殺遺伝子および自殺遺伝子の発現を制御するプロモーターを含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなる。自殺遺伝子は、細胞のネガティブ選択が可能なものである。本明細書中に記載の方法では、自殺遺伝子は、選択因子の導入によってこの遺伝子を発現する細胞を死滅させることが可能な安全装置として使用される。これは、組換え遺伝子が変異して細胞が無制御に成長する場合に望ましい。いくつかの自殺遺伝子系が同定されており、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tkまたはTK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ遺伝子、水痘帯状疱疹ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子、ニトロレダクターゼ遺伝子、大腸菌gpt遺伝子、および大腸菌Deo遺伝子が含まれる(例えば、Yazawa K,Fisher W E,Brunicardi F C:Current progress in
suicide gene therapy for cancer.World J.Surg.2002 July;26(7):783-9も参照のこと)。1つの実施形態では、自殺遺伝子は、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子である。1つの態様では、TK遺伝子は、野生型TK遺伝子である。他の態様では、TK遺伝子は、前述の遺伝子の変異形態(例えば、sr23tk)である。TKタンパク質を発現する細胞を、ガンシクロビルを使用して死滅させることができる。別の実施形態では、テトラサイクリンアクチベータータンパク質および自殺遺伝子をコードする核酸は、1つのプロモーターによって制御される。
【0134】
1つの態様では、自殺遺伝子の発現を制御するプロモーターは、構成性プロモーターである。異なるタンパク質をコードする核酸を、同一のプロモーターによって制御して1つのmRNAを産生し、さらに2つの異なるタンパク質を産生することができる。これを、種々の機序によって成し遂げることができる。例えば、タンパク質切断部位を、核酸内のタンパク質をコードする核酸の間にコードすることができる。この場合、タンパク質およびタンパク質切断部位の両方をコードする1つのmRNAが産生される。mRNA転写後、mRNAは、プロテアーゼ切断部位によって連結された両方のタンパク質を有するキメラポリペプチドに翻訳される。次いで、このタンパク質は、切断部位を認識するプロテアーゼによって切断され得る。プロテアーゼは、遺伝子移入法によって細胞中に移入された核酸から内因的に発現されるか、外因的に発現されるプロテアーゼであり得る。したがって、1つの実施形態では、ベクターは、さらに、自殺遺伝子とテトラサイクリンアクチベータータンパク質をコードする核酸との間に、プロテアーゼ切断部位を含むか、あるいはそれから本質的になるか、なおさらにはそれからなる。1つの実施形態では、プロテアーゼ切断部位は、2Aプロテアーゼ切断部位である。IRES、すなわち配列内リボゾーム進入部位を使用して、同一プロモーターから2つのタンパク質を産生することもできる。この場合、IRESをコードする核酸は、各タンパク質をコードする核酸の間にクローン化される。両方のタンパク質をコードする1つのmRNAが転写されるが、IRES部位は両方のタンパク質の個別翻訳を可能にする。したがって、2つの異なるタンパク質が1つのmRNAによって産生される。
【0135】
さらなる態様では、ベクターは、マーカーまたは検出可能な標識(高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、および黄色蛍光タンパク質(YFP)などをコードする遺伝子など)をさらに含む。これらは市販されており、当該技術分野で説明されている。
【0136】
遺伝子を、当業者に一般に知られている種々の機序によって細胞に送達することができる。ウイルス構築物を、適切な宿主細胞中でのウイルスの産生によって送達させることができる。次いで、ウイルスを、宿主細胞から回収し、標的細胞と接触させる。目的の遺伝子を発現することができるウイルスベクターおよび非ウイルスベクターを、DNA/リポソーム複合体、ミセル、および標的化ウイルスタンパク質-DNA複合体を介して標的にされた細胞に送達させることができる。ターゲティング抗体またはその断片も含むリポソームを、本開示の方法で使用することができる。細胞または細胞集団へのポリヌクレオチドの送達に加えて、細胞または細胞集団への本明細書中に記載のタンパク質の直接導入を、タンパク質トランスフェクション技術(限定されない)によって行うことができ、あるいは、本開示のタンパク質の発現を増強し、および/またはその活性を促進することができる培養条件は、他の非限定的な技術である。
【0137】
本開示の遺伝子をコードするベクターの他の送達方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラントランスフェクション、エレクトロポレーション、微量注入、プロトプラスト融合、またはリポソーム媒介トランスフェクションが含まれるが、これらに限定されない。
細胞由来小胞
【0138】
細胞由来小胞は、細胞外小胞とも呼ばれ、in vitroおよびin vivoで細胞によって放出される膜で取り囲まれた構造物である。細胞外小胞は、タンパク質、脂質、および核酸を含むことができ、体内の異なる細胞(異なる細胞型が含まれる)の間の細胞間連絡を媒介することができる。細胞外小胞の型には、エキソソームおよび微小胞の2つがある。エキソソームは、タンパク質およびRNAの細胞間輸送を介して細胞間連絡を媒介する小型の脂質が結合した細胞によって分泌される小胞である(El Andaloussi,S.et al.(2013)Nature Reviews:Drug Discovery 12(5):347-357)。エキソソームのサイズは、およそ30nm~約200nmの範囲である。エキソソームは、多胞性エンドソーム(MVE)の原形質膜との融合によって細胞から放出される。微小胞は、他方では、原形質膜(PM)からの直接的な出芽の際に細胞から放出される。微小胞は、典型的には、エキソソームより大きく、およそ100nmから1μmの範囲である。
【0139】
細胞由来小胞(例えば、エキソソームおよび/または微小胞)を、真核細胞から単離することができる。細胞由来小胞を単離することができる細胞の非限定的な例には、幹細胞が含まれる。かかる幹細胞の非限定的な例には、成体幹細胞、胚性幹細胞、胚様幹細胞、神経幹細胞、または誘導多能性幹細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、幹細胞は、成体幹細胞であり、必要に応じて間葉系幹細胞またはCD34+幹細胞またはCD34+幹細胞である。
【0140】
本開示の幹細胞は、例えば、遺伝子改変によって改変される。いくつかの実施形態では、遺伝子は、少なくとも1つの外因性核酸および/または少なくとも1つの外因性タンパク質を発現するように改変される。改変は、一過性改変であり得る。他の実施形態では、改変は、安定な改変であり得る。例えば、幹細胞を、有効量のCAMKK1タンパク質もしくはポリペプチド、SDF-1タンパク質もしくはポリペプチドおよび/またはCXCR4タンパク質もしくはポリペプチドまたはその等価物をコードするポリヌクレオチドを含むか、あるいはこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなるベクターで形質導入することによって改変することができる。ベクターの非限定的な例には、プラスミドベクターおよびウイルスベクターが含まれる。改変された細胞によって放出された細胞由来小胞の回収前に細胞を改変することにより、非改変細胞と比較して異なる量および型のタンパク質、脂質、および核酸を含むエキソソームが回収されると予想される。当業者に公知の任意の細胞改変方法を使用して、細胞を改変することができる。
【0141】
本開示の細胞を、当業者に公知の任意の培養培地で培養することができる。例えば、細胞培養培地は、5%~40%のウシ胎児血清(FBS)、好ましくはおよそ20%のFBS;0.5%~5%のL-グルタミン、好ましくはおよそ1%のL-グルタミン;および0.5%~1%のペニシリンおよびストレプトマイシン(Penn-strep)、好ましくはおよそ1%のpenn-strepを基本培地中に含むことができる。いくつかの実施形態では、FBSの少なくとも一部を、血清代替物、例えば、血小板溶解物(例えば、ヒト血小板溶解物(hPL))と置換する。いくつかの実施形態では、培養培地中の血清代替物(例えば、hPL)の量は、1%~20%である。いくつかの実施形態では、細胞を、FBSの非存在下で培養する。他の実施形態では、細胞を、高レベルの血清(例えば、30%の血清、40%の血清、50%の血清、または60%の血清)の存在下で培養する。
【0142】
開示の細胞を、当業者に公知の任意の条件下で培養することができる。幹細胞中でエキソソームの分泌および/または機能を誘導する方法であって、幹細胞中のCAMKK1ポリヌクレオチドもしくはタンパク質またはその各々の等価物の発現を上方制御する工程を含むか、あるいはこの工程から本質的になるか、なおさらにはこの工程からなる方法も本明細書中に提供する。1つの態様では、CAMKK1の過剰発現は、Aktの発現または必要に応じた過剰発現の存在下にある。幹細胞中でエキソソームの分泌および機能を誘導する方法であって、幹細胞中のSDF-1ポリペプチドもしくはタンパク質またはその各々の等価物の発現を上方制御する工程を含むか、あるいはこの工程から本質的になるか、なおさらにはこの工程からなり、ここで、過剰発現が、CXCR4発現または必要に応じた発現の存在下にある、方法をなおさらに提供する。1つの態様では、SDF-1の過剰発現は、Aktの発現または必要に応じた過剰発現の存在下にある。幹細胞中でエキソソームの分泌および機能を誘導する方法であって、幹細胞中のSDF-1ポリペプチドもしくはタンパク質またはその各々の等価物の発現を上方制御する工程を含むか、あるいはこの工程から本質的になるか、なおさらにはこの工程からなり、ここで、過剰発現が、Aktの発現または必要に応じた過剰発現の存在下にある、方法も提供する。1つの態様では、SDF-1の過剰発現は、CXCR4の発現または必要に応じた過剰発現の存在下にある。幹細胞は、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)、または体性(成体)幹細胞であり得、任意の特定の型(例えば、脂肪型、間葉型、または神経型が含まれる)の幹細胞であり得る。別の態様では、幹細胞は、間葉系幹細胞、CD34+細胞、またはCD34+幹細胞である。別の態様では、幹細胞は、任意の型または任意の種の幹細胞、例えば、ヒト幹細胞などの哺乳動物幹細胞である。
細胞外小胞の単離
【0143】
本開示の精製された細胞由来小胞集団(例えば、エキソソームおよび/または微小胞)を、当業者に公知であり、かつ本明細書中に記載の任意の方法を使用して単離することができる。非限定的な例には、超遠心分離による分画遠心(Theryら.(2006)Curr.Protoc.Cell Biol.30:3.22.1-3.22.29;Witmerら.(2013)J.Extracellular v.2)、ショ糖勾配精製(Escolaら.(1998)J.Biol.Chem.273:20121-20127)、および濾過/濃縮の組み合わせ(Lamparskiら.(2002)J.Immunol.Methods 270:211-226)が含まれる。
製剤および組成物
【0144】
本開示は、細胞由来小胞(例えば、エキソソームおよび/または微小胞)の精製集団を提供する。いくつかの実施形態では、細胞由来小胞の集団は、実質的に均一である。他の実施形態では、細胞由来小胞の集団は異種である。
【0145】
いくつかの実施形態では、実質的に均一な集団は、NanoSight LM10HS(Malvern Instruments Ltd,Amesbury,MA,USAから入手可能)によって判定した場合、少なくとも90%の細胞由来小胞の直径が100nm未満である精製集団である。
【0146】
いくつかの実施形態では、集団中の細胞由来小胞の濃度は、DCアッセイ(Biorad,Hercules,CA,USA)によって判定した場合に、およそ10個の細胞あたり、回収された約0.5マイクログラムと100マイクログラムとの間のエキソソームタンパク質および/または微小胞タンパク質を含む。他の実施形態では、集団中の細胞由来小胞の濃度は、およそ10個の細胞あたり、回収された約40マイクログラムと100マイクログラムとの間のエキソソームタンパク質および/または微小胞タンパク質を含む。さらに他の実施形態では、集団中の細胞由来小胞の濃度は、およそ10個の細胞あたり、回収された約30マイクログラム未満の細胞由来小胞タンパク質を含む。さらに他の実施形態では、集団中の細胞由来小胞の濃度は、約20マイクログラム/10細胞未満である。
【0147】
細胞由来小胞の精製集団を、組成物中の細胞由来小胞の平均サイズに基づいて精製することができる。理論に拘束されないが、異なるサイズの細胞由来小胞は異なる型および/または量の核酸、タンパク質、脂質、および他の成分を含み得ると予想される。そのようなものとして、ある平均サイズの細胞由来小胞を含む組成物は異なる平均サイズの細胞由来小胞を含む組成物と比較して異なる治療有効性を有し得ると予想される。いくつかの実施形態では、集団中の細胞由来小胞の平均直径は、約0.1nmと約1000nmとの間である。他の実施形態では、集団中の細胞由来小胞の平均直径は、約2nmと約200nmとの間である。他の実施形態では、集団中の細胞由来小胞の平均直径は、100nm未満である。さらに他の実施形態では、集団中の細胞由来小胞の平均直径は、50nm未満である。さらなる他の実施形態では、集団中の細胞由来小胞の平均直径は、約40nm未満である。
【0148】
本明細書中に開示の組成物は、担体、例えば、薬学的に許容され得る担体をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、1つを超える薬学的に許容され得る担体を使用することができる。当業者に公知の任意の薬学的に許容され得る担体を使用することができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容され得る担体は、防腐剤、例えば、高分子防腐剤である。
【0150】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容され得る担体は、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、ジステアリン酸PEG150)、蜂蜜、高分子量タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミンまたはダイズタンパク質)、ポリビニルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ヒアルロン酸、グリセリン、好ましくは植物由来のタンパク質、好ましくは加水分解されたタンパク質、(例えば、ダイズタンパク質およびシルクタンパク質)、バソリン、シトロセプト、パラベン、キサンタンガム、i-カレガアン、phytagel、Carbopol(登録商標)ポリマー、およびポリビニルピロリドンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、安定剤は、デキストラン40、メチルセルロース、ゼラチン、亜硫酸ナトリウム、およびメタ硫酸ナトリウムからなる群から選択される。他の実施形態では、安定剤は、米国特許第9,696,247号に記載のDES混合物、タンパク質もしくは高分子量分子(ヒト血清アルブミンまたはデキストランもしくはポロクサマーなどの分子など)からなる群から選択される。
【0151】
1つの態様では、生体適合性ゲル化剤は、被験体への適用前は(例えば、室温またはそれ未満の温度で)液体であり、被験体への適用後(例えば、体温で)ゲルになる薬剤である。1つの実施形態では、生体適合性ゲル化剤はヒドロゲルである。
【0152】
別の態様では、エキソソームおよび/または微小胞ならびにポロクサマーを含む組成物であって、ここで、前述の組成物が、約0℃~約20℃でゾル(液体)相にあり、体温もしくは体温付近またはそれより高い温度(約25℃~約40℃または約30℃~約37℃など)でゲル(固体)相に移行する、組成物を本明細書中に開示する。
【0153】
いくつかの態様では、薬学的に許容され得る担体は、薬学的に許容され得る水性担体(水または水性担体など)である。薬学的に許容され得る水性担体の例には、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ヒアルロン酸水溶液、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス液、および他の生理学的に平衡化された塩類水溶液が含まれる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容され得る水性担体は、Normosol(商標)-Rである。
【0154】
非水性の薬学的に許容され得る担体には、固定油、植物油(オリーブ油およびゴマ油など)、トリグリセリド、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールが含まれ、注射用有機エステル(オレイン酸エチルなど)も使用することができる。
【0155】
薬学的に許容され得る担体はまた、微量の添加物(等張性、化学安定性、または細胞安定性を向上させる物質など)を含むことができる。緩衝液の例には、リン酸緩衝液、重炭酸塩緩衝液、およびトリス緩衝液が含まれ、一方で、防腐剤の例には、チメロサール(thimerosol)、クレゾール、ホルマリン、およびベンジルアルコールが含まれる。一定の態様では、投与様式に応じて、pHを修正することができる。いくつかの態様では、組成物は、生理学的pHの範囲内のpH(pH7~9など)を有する。
【0156】
1つの態様では、使用される薬学的に許容され得る担体の型に応じて、本明細書中に記載の組成物は、組成物の総重量の約0.1~100%、0.1~50%、または0.1~30%(0.1%、0.25%、0.5%、0.75%、1%、2%、5%、7%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%など)または2つの数値(終点を含む)の間の任意の範囲の薬学的に許容され得る担体を含むことができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、上記列挙の薬学的に許容され得る担体のいずれか1つが明確に除外される。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の細胞由来小胞は、安定性を促進し、微生物の活動から保護し、有効期間を延長するために凍結(例えば、瞬間凍結)、またはフリーズドライ(例えば、凍結乾燥)される。当業者は、使用前の凍結乾燥された製品の再構成方法を理解している。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の細胞由来小胞集団は、単離直後に使用される。他の実施形態では、細胞由来小胞集団は、例えば、当業者に周知の任意の低温保存技術を使用して、低温保存(例えば、凍結)される。いくつかの実施形態では、全てのまたは実質的に全ての細胞および/または細胞デブリは、低温保存前に培養培地から除去される。いくつかの実施形態では、全てのまたは実質的に全ての細胞および/または細胞デブリは、低温保存後に培養培地から除去される。
治療方法
【0160】
組織治癒を促進するか、組織傷害を処置するか、または組織傷害に関連する状態を処置する方法であって、有効量の以下:
a.CAMKK1ポリペプチドまたはその等価物;または
b.CXCR4ポリペプチド発現の存在下でのSDF-1ポリペプチドまたはその等価物
の一方または両方を必要とする被験体に投与する工程を含むか、あるいはこの工程から本質的になるか、なおさらにはこの工程からなり、
ここで、前述の有効量が、被験体におけるエキソソームの産生、分泌、および/または機能を誘導する量である、方法を本明細書中に提供する。
【0161】
1つの態様では、CAMKK1ポリペプチドは、配列番号1もしくは2またはその各々の等価物を含むことができるか、あるいはこれらから本質的になることができるか、なおさらにはこれらからなることができる。別の態様では、SDF-1ポリペプチドは、配列番号3もしくは4またはその各々の等価物を含み得るか、あるいはこれらから本質的になり得るか、なおさらにはこれらからなり得る。さらなる態様では、CXRC4ポリペプチドは、配列番号5またはその等価物を含むことができるか、あるいはこれらから本質的になることができるか、なおさらにはこれらなることができる。
【0162】
上記の方法について、1またはそれを超えるポリペプチドは、ポリペプチドまたはその等価物をコードするポリヌクレオチドの投与によって投与される。1つの態様では、1またはそれを超えるポリペプチドは、ポリヌクレオチドまたはその等価物を含むか、あるいはからこれらから本質的になるか、なおさらにはこれらからなるベクター中に含めて投与する。ベクターは、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターであり得る。ポリヌクレオチドまたはその等価物またはベクターを、ポリヌクレオチドまたはその等価物を含むか、あるいはから本質的になるか、なおさらにはからなる幹細胞を投与することによって投与することができる。細胞は、処置される被験体に対して自家または同種であり得る。1つの態様では、幹細胞は、間葉系幹細胞またはその前駆細胞である。SDF-1ポリペプチドまたはその等価物について、傷害を受けた組織に対して局所投与する。CAMKK1ポリペプチドまたはその等価物について、傷害を受けた組織に対して局所投与するか、遠位に投与する。別の態様では、組織傷害または組織傷害に関連する状態は、筋肉組織もしくは心臓組織の傷害または筋肉組織もしくは心臓組織の傷害に関連する状態である。さらなる態様では、関連する状態は、虚血状態または心筋症を含む。本方法を、当該分野で公知の処置などのための他の方法と組み合わせることができる。
【0163】
上記方法は、投与前に患者から単離した試料中の循環エキソソームレベルを決定する工程をさらに含み得るか、あるいはこれらの工程から本質的になり得るか、なおさらにはこれらの工程からなり得る。別の態様では、方法は、投与後に患者から単離した試料中の循環エキソソームレベルを決定する工程をさらに含み得るか、あるいはからこれらの工程から本質的になり得るか、なおさらにはこれらの工程からなり得る。有効量を、試料中の循環エキソソームレベルまたは施設内試験もしくは過去の臨床情報のいずれかから決定することができる。
【0164】
虚血状態および炎症状態がいくつかの異なる臓器または組織で生じ得ることが当該分野で公知である。例えば、虚血状態は、心臓、肝臓、腎臓、脳、脊椎、肺、小腸、大腸、および動脈で生じ得る。同様に、炎症状態は、心臓、肝臓、腎臓、脳、脊椎、肺、腸、動脈、関節、軟骨、および皮膚で生じ得る。したがって、患者の臓器または組織における虚血状態または炎症状態を処置する方法であって、ここで、前述の臓器または組織が、心臓、肝臓、腎臓、脳、脊椎、肺、小腸、大腸、動脈、関節、軟骨、皮膚、またはこれの任意の組み合わせである、方法を開示する。いくつかの実施形態では、本方法を使用して、心臓における虚血状態または炎症状態(心筋症など)を処置することができる。いくつかの実施形態では、本方法を使用して、心筋層における虚血状態または炎症状態を処置することができる。いくつかの実施形態では、本方法を使用して、肝臓における虚血状態または炎症状態を処置することができる。いくつかの実施形態では、本方法を使用して、腎臓における虚血状態または炎症状態を処置することができる。いくつかの実施形態では、本方法を使用して、脳における虚血状態または炎症状態を処置することができる。いくつかの実施形態では、本方法を使用して、脊椎における虚血状態または炎症状態を処置することができる。いくつかの実施形態では、本方法を使用して、肺における虚血状態または炎症状態を処置することができる。いくつかの実施形態では、本方法を使用して、小腸における虚血状態または炎症状態を処置することができる。いくつかの実施形態では、本方法を使用して、大腸における虚血状態または炎症状態を処置することができる。いくつかの実施形態では、本方法を使用して、動脈における虚血状態または炎症状態を処置することができる。いくつかの実施形態では、本方法を使用して、関節における虚血状態または炎症状態を処置することができる。いくつかの実施形態では、本方法を使用して、軟骨における虚血状態または炎症状態を処置することができる。いくつかの実施形態では、本方法を使用して、皮膚における虚血状態または炎症状態を処置することができる。いくつかの実施形態では、本方法を使用して、上記の臓器または組織のいずれかにおける虚血状態または炎症状態を処置することができる。当業者は、本方法を実施することによって炎症、組織傷害、虚血状態、および/または心筋症に関連する臨床症状または臨床マーカーの低下からいくらかの臨床上の利点を得るための本方法の実施期間を決定することができる。
【0165】
したがって、本開示は、虚血状態、心筋症、および関連障害のうちの1つまたは複数を処置するか、組織治癒を促進する方法であって、有効量の以下:本明細書中に記載の幹細胞、本明細書中に記載の単離培養培地、本明細書中に記載の細胞集団、または本明細書中に記載の組成物のうちの1つまたは複数を必要とする被験体に投与する工程を含むか、あるいはこの工程から本質的になり、ここで、前述の細胞および細胞から調製した産物がCAMKK1ポリペプチドもしくはタンパク質またはその等価物を過剰発現する、方法を提供する。細胞は、処置される被験体に対して自家または同種であり得る。虚血状態、心筋症、および関連障害のうちの1つまたは複数を処置するか、または組織治癒を促進する方法であって、有効量の以下:本開示のエキソソーム集団または本明細書中に記載の組成物のうちの1つまたは複数を必要とする被験体に投与する工程を含むか、あるいはこの工程から本質的になる、方法を本明細書中にさらに提供する。投与は、局所投与または全身投与であり得る。1つの態様では、作用部位が心臓である場合などでは、投与は作用部位に対して遠位である。別の態様では、組織傷害または組織傷害に関連する状態は、筋肉組織もしくは心臓組織の傷害または筋肉組織もしくは心臓組織の傷害に関連する状態である。本方法を、当該分野で公知の処置などのための他の方法と組み合わせることができる。
【0166】
虚血状態または心筋症および関連障害のうちの1つまたは複数を処置する方法であって、有効量の以下:本明細書中に記載の幹細胞、本明細書中に記載の単離培養培地、本明細書中に記載の細胞集団、または本明細書中に記載の組成物のうちの1つまたは複数を必要とする被験体に投与する工程を含み、ここで、前述の細胞および細胞から調製した産物がSDF-1ポリペプチドもしくはタンパク質またはその等価物を過剰発現する、方法も本明細書中に提供する。投与は、局所投与または全身投与であり得る。
細胞または馴化培地を、全身に投与するか、虚血組織または炎症組織中に直接投与するか、虚血組織または炎症組織の周囲に投与することができる。適切な全身投与技術には、腸内投与または非経口投与(注射、注入、または植え込み)が含まれる。タンパク質、ベクター、細胞、または馴化培地を、例えば、経口、硬膜外、脳内、脳室内、動脈内、関節内、心臓内、筋肉内、病巣内、腹腔内、髄腔内、静脈内、皮下、またはその任意の組み合わせで投与することができる。
虚血状態または炎症状態は、急性心筋梗塞、心筋症、心不全、慢性心不全、末梢動脈疾患、卒中、肝臓疾患、虚血性腎疾患、多発性硬化症、外傷性脳損傷、脊髄損傷、移植片対宿主病(GVHD)、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節リウマチ、実質臓器移植由来の傷害、整形外科傷害、軟骨障害、創傷、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0167】
開示の方法は、1またはそれを超えるさらなる再生医療をさらに含むことができる。適切なさらなる再生医療には、骨髄、脂肪組織、胎盤組織、臍帯、ホウォートンゼリー、月経血、幹細胞、M2マクロファージ、単球、またはこれらの任意の組み合わせに由来する間葉系幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。幹細胞は、神経前駆細胞、内皮前駆細胞、臓器特異的内因性幹細胞、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの態様では、本方法は、神経前駆細胞を投与する工程をさらに含むことができる。いくつかの態様では、本方法は、内皮前駆細胞を投与する工程をさらに含むことができる。いくつかの態様では、本方法は、内因性幹細胞(心臓ckit+細胞など)を投与する工程をさらに含むことができる。いくつかの態様では、本方法は、上記幹細胞の任意の組み合わせを投与する工程をさらに含むことができる。治療方法は、投与前に患者から単離した試料中の循環エキソソームレベルを決定する工程をさらに含み得るか、あるいはこれらの工程から本質的になり得るか、なおさらにはこれらの工程からなり得る。別の態様では、方法は、投与後に患者から単離した試料中の循環エキソソームレベルを決定する工程をさらに含み得るか、あるいはこれらの工程から本質的になり得るか、なおさらにはこれらの工程からなり得る。有効量を、試料中の循環エキソソームレベルから決定することができる。
【0168】
投与される幹細胞は、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)、または体性(成体)幹細胞であり得、任意の特定の型(例えば、脂肪型、間葉型、または神経型が含まれる)の幹細胞であり得る。1つの態様では、幹細胞は、間葉系幹細胞、CD34+細胞、またはCD34+幹細胞である。別の態様では、幹細胞は、任意の型または任意の種の幹細胞、例えば、ヒト幹細胞などの哺乳動物幹細胞である。幹細胞から産生された分化細胞を、本明細書中にさらに提供する。細胞は、処置される被験体(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、またはヒトなどの哺乳動物)に対して同種または自家であり得る。当業者に明らかなように、ほとんどの態様では、細胞、ポリヌクレオチド、および処置された被験体は、同一の種である(例えば、ヒト患者を処置するためにヒト遺伝子で形質導入されたヒト細胞)。
【0169】
当業者に公知のように、投薬量、細胞、および投与計画は、治験従事者によって決定され、処置される状態、被験体の年齢および性別、ならびに被験体の種によって異なる。当業者は、一定のクリニカルエンドポイントまたはサブクリニカルエンドポイントに留意することによって方法が成功する期間を決定することができる。当業者は、本方法を実施することによって炎症、組織傷害、虚血状態、および/または心筋症に関連する臨床症状または臨床マーカーの低下からいくらかの臨床上の利点を得るための本方法の実施期間を決定することができる。本方法を、治療を行う医師によって決定される他の適切な治療と組み合わせることができる。
【0170】
以下の実施例を、本開示を例示するために提供するが、実施例は、本開示を制限しない。
【実施例0171】
実験1
図1に示すように、この実験の目的は、CAMKK1が慢性心不全に効果があるかどうか、およびどのようにしてこれをSDF-1と比較するのかを判定することであった。出願人のCAMKK1の出願人の機序の理解に基づき、作業仮説はCAMKK1はSDF-1が持つあろうような心機能に対する効果をまったく持たないであろうというものであったが、出願人は先にSDF-1とCAMKK1の組み合わせ(示さず)がSDF-1のみより優れていると判定していたからである。実験で使用したラットは、前壁心筋梗塞から9ヶ月が経過していた;したがって、ラットは虚血性心筋症を十分に発症していた。ラットの胸部を切開し、梗塞周囲領域にプラスミドを直接注射することによってSDF-1プラスミドまたはCAMKK1プラスミドのいずれかをラットに投与した。心エコー検査法を、ベースライン(心臓発作から9ヶ月後)、次いで、投与後の時間の関数として実施した。図1は、プラセボと比較してSDF-1およびCAMKK1は個別で有意かつ等価な効果があり、駆出率が増加したことを示す。SDF-1とCAMKK1の組み合わせは、これらの分子の単独使用のいずれよりもいかなる心機能も向上させなかった。
実験番号2
【0172】
実験番号1に記載の作業の実施前に、出願人は、SDF-1がそのケモカイン効果を介して作用し、それにより組織特異的幹細胞および骨髄由来幹細胞のホーミングを介して心機能を改善したと考えていた。CAMKK1は、幹細胞ホーミングを誘導しない。このCAMKK1およびSDF-1は、心機能に対して等価な効果を有し、出願人は、SDF-1およびCAMKK1が作用し得る共通の経路の規定を試みた。エキソソームを、対照間葉系幹細胞(MSC)、およびSDF-1またはCAMKK1のいずれかを過剰発現するMSCの馴化培地から単離した。各処置について200万個のMSCが存在していた。次いで、単離エキソソームを、冠状動脈の左前下降枝の結紮による前壁心筋梗塞の誘導直後のラットの心臓に注射した。図2に示すように、SDF-1およびCAMKK1の有意な効果は、馴化培地へのエキソソームの放出および機能の強化である。
実験番号3
【0173】
次いで、出願人は、心機能に対するCAMKK1のMSC効果の増強機序の規定を試みた。結果(図3を参照のこと)は、心機能に対するCAMKK1のMSC効果の増強にはAktのリン酸化が必要であることを示す。これらの研究では、上記と同様に、200万個のMSCの馴化培地を回収し、前壁心筋梗塞の誘導直後の動物の心臓に注射した。2つの処置では、MSCを2つのAkt阻害剤のうちの1つで処置し、いずれかのAkt阻害剤の存在が対照MSCの利益よりもCAMKK1を過剰発現する細胞の利益を減少させた。出願人はまた、SDF-1にはAktリン酸化も必要であると判断した(データ示さず)。CAMKK1がキナーゼであり、Aktを直接リン酸化し;それに対して、SDF-1は、CXCR4受容体の結合を介してAktをリン酸化することをこの時点で留意することが不可欠である。したがって、SDF-1の効果を得るにはAktリン酸化を誘導するためのオートクリンループまたはパラクリンループが必要である一方で、CAMKK1効果は直接的である。
実験番号4
【0174】
実験番号4では、直接および間接的なAktリン酸化の効果を評価した。ラットの冠状動脈の左前下降枝を結紮し、その直後に胸部を縫合し、CAMKK1プラスミドまたはSDF-1プラスミドまたは生理食塩水を、動物の大腿部に注射した。1週間後、CAMKK1を注射した動物の心機能は、生理食塩水と比較して有意に増大したが、SDF-1処置動物における心臓機能は増大しなかった。
実験番号5
動物
【0175】
8週齢雄Lewisラットを、Northeast Ohio Medical Universityの動物施設内にて標準的な条件下で維持した。全ての動物手技は、Institutional Animal Care and Use Committeeより承認を受けた。
MSCの調製
【0176】
MSCを、成体Lewisラットの骨髄から単離した。大腿骨に0.6mlのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Gibco,Invitrogen,http://www.invitrogen.com,Carlsbad,CA,fishersci.com)で流すことによって細胞を単離した。骨髄の凝集塊を、18ゲージニードルで穏やかに刻み、次いで、260gで5分間遠心分離し、リン酸緩衝生理食塩水(Invitrogen)を2回交換することによって洗浄した。次いで、洗浄した細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco,Invitrogen)を含むDMEM-低グルコース(Gibco,Invitrogen)で再懸濁し、プレートした。細胞を37℃でインキュベートし、非接着細胞を、3日後に培地を置換することによって除去した。培養物が70%コンフルエントになったとき、接着細胞を、0.05%トリプシンおよび2mM EDTA(Invitrogen)との5分間のインキュベーション後に剥離した。次いで、EasySep PE選択キット(Stem Cell Technologies,Vancouver,Canada,https://www.stemcell.com/)を用いた10×6細胞あたり1μlの一次フィコエリトリン抱合マウス抗ラットCD45(BD Biosciences,http://www.bdbiosciences.com,San Diego,CA)およびCD34抗体(Santa
Cruz Biotechnology,https://www.scbt.com,Santa Cruz,CA)の各々を使用したネガティブ選択によってMSC培養物からCD45+細胞およびCD34+細胞を同時に枯渇させた。最後に、Icam陽性細胞を、細胞選別によって選択した。
MSCおよびMSC馴化培地
【0177】
移植の準備において、Neon Transfection systemのエレクトロポレーションによってMSCトランスフェクションを行った。出願人は、トランスフェクション効率55%~80%で2×10細胞にcDNA:CAMKK1またはsiRNA:CAMKK1またはcDNA:SDF-1、CDNA AKTまたはsiRNA:AKT、siRNA:CAMK4でトランスフェクトした。馴化培地を以下のように生成した:11回の継代後、対照群および実験群の両方で90%コンフルエンシーが認められた。馴化培地を、無血清DMEMを用いた異なる処置でトランスフェクトし、48時間インキュベートした細胞を供給することによって生成した。対照培地を、無処置の細胞のみを使用することによって生成した。培地を回収し、正規化するために細胞を計数した:各動物について、出願人は、2×10細胞によって生成した培地を使用した。細胞デブリの除去後、上清を12mlの管に移した。
全エキソソームの単離(馴化培地MSCから)
ExoQuick(商標)による沈殿
【0178】
ExoQuick(商標)による沈殿を、製造者の説明書(System Biosciences)にしたがって行った。簡潔に述べれば、500μLの清澄化したMSC-CMをPBSで5mLに希釈し、管を数回反転させることによって1mLのExoQuick-TC(商標)溶液と混合した。試料を4℃で一晩インキュベートし、次いで、上清を除去するために、1,500gでそれぞれ30分間および5分間遠心分離した。上清を破棄し、ペレットを200μLのPBSに再懸濁した。単離したエキソソームを、左前下行枝(LAD)結紮直後の梗塞境界部の5つの異なる部位に注射した。
ナノ粒子追跡分析(NTA)によるエキソソームの定量およびサイズの決定
【0179】
ナノ粒子追跡分析(NTA)は、懸濁液中の粒子のサイズ分布を得るためにレーザー光散乱顕微鏡法とブラウン運動の両方の性質を組み合わせた強力な特徴付け技術である。NanoSight装置(Malvern,UK)(エキソソーム分野でNTAのために現在最も広く使用されている装置)は、1またはそれを超えるレーザーおよびデジタルカメラが接続された光学顕微鏡を備えている。製造者によれば、NanoSightは、溶液中の10~2000nmの粒子を特徴づけることが可能である。粒子を、レーザー照射の際に粒子が散乱する光によって可視化し、そのブラウン運動をモニタリングする。NTAソフトウェアは、粒子の平均二乗変位を追跡し、それにより、ストークス・アインシュタインの式を使用して粒子の理論上の流体力学直径を計算することによって、単一粒子をサイズによって区分することが可能である。分析した試料体積の知識に基づいて、NTAは、粒子濃度を推定することも可能である。NanoSightによる同一のサイズまたは混合したサイズの均一な粒子調製物のサイズ分布分析は、以前に正確であることが示されている。
MIを誘導するためのLAD結紮
【0180】
以前に記載のように外科用顕微鏡(LeicaMicrosystems M500)を使用して、ラットに心筋梗塞を誘導した。簡潔に述べれば、動物を腹腔内へのケタミンおよびキシラジンで麻酔し、挿管し、従圧式げっ歯類用人工呼吸器(RSP1002;Kent Scientific Corporation)を使用して、80呼吸/分で室内の空気を通気した。胸骨切開し、近位LADを7-0プロリーンで結紮した。前壁の白化および機能障害が認められたことから、LAD結紮が確認された。LAD結紮後、動物を心エコー検査法を用いて評価し、臓器摘出(心臓)および染色のために異なる時点で安楽死させた。
AMI後のエキソソームの投与
【0181】
AMI直後のラットに、生理食塩水(n=6)、Exo-CAMKK1(n=7)、Exo-SDF-1(n=7)、Exo-AKT(n=6)、siRNA-CAMKK1およびAKT、CAMK4(n=7)を注射した。全ての群において、注射量は600μLエキソソーム溶液であり、これを左前下行枝(LAD)結紮直後の梗塞境界部の5つの異なる部位に注射した。各群由来の動物は、等量のエキソソームが分布していた。本研究についての動物の死亡率は10%であった。
心臓機能の心エコー評価
【0182】
以前に記載のように(XXXX)Sequoia C256(Acuson)と適合する15MHzリニアアレイトランスデューサを用いて二次元心エコー検査法を行った。簡潔に述べれば、ベースラインおよび左心室(LV)の寸法を、LAD結紮前ならびにLAD結紮から2週間後および6週間後に定量し、異なるラットにおける同一の解剖学的位置から一貫した測定値を得るために、乳頭筋直下のLV中部由来のデジタルで記録された二次元クリップおよびMモード画像によってLVの寸法を定量した。駆出率(EF)、短縮率、LV後壁の弛緩期の厚さ、LV後壁の収縮期の厚さ、弛緩期LV内寸、および収縮期LV内寸を測定した。心エコーを測定し、処置およびラットの同一性を盲検化された治験責任医師が解析した。
統計学
【0183】
データを、平均±SEMとして示す。有意性をp<.05と規定した両側スチューデントt検定を用いて、2群間を比較した。分散分析(ANOVA)を用いて複数の群を比較した。
MSC由来エキソソームの特徴付け
【0184】
CAMKK1-エキソソーム由来MSCの効果を調査するために、出願人は、上記のように、200万個の対照間葉系幹細胞(MSC)およびCAMKK1を過剰発現するMSCを含む馴化培地からエキソソームを沈殿させた。次いで、単離されたエキソソームを、LAD結紮直後のラットの心臓に注射した。図5A:データは、MSC中でCAMKK1が過剰発現するとエキソソームの量(3.76×10±2.2粒子/ml、p<0.05)が対照群(2.7×10±4.9粒子/ml)より多くなり、サイズに関してエキソソーム集団は均一であることを示した。ナノ粒子追跡分析により、エキソソームのサイズが10nm~1000nmであると推定された。図5B:exo-CAMKK1は、生理食塩水対照群と比較して有意に心機能の改善効果がある。CAMKK1の注目すべき効果は、馴化培地中へのエキソソームの放出および機能の強化である。CAMKK1を過剰発現するMSCから単離したエキソソームを直接注射すると、AMIから2週間後の心機能が、対照MSC由来のエキソソームを用いて認められる心機能よりも有意に向上する(図5B)。
心機能に対するCAMKK1のMSC効果には、Aktのリン酸化が必要である
【0185】
出願人は、エキソソームの機能および数の増大に対するCAMKK1の関連リン酸化標的の決定を望んでいた。Akt、CAMK1、およびCAMK4を阻害した。図6中のデータは、Aktリン酸化が阻害されるとMSC由来エキソソームに対するCAMKK1過剰発現の増強された効果が阻害されたことを実証している。図7中のデータは、CAMK1の下方制御もMSC由来エキソソームに対するCAMKK1の増強された効果を阻害することをさらに実証している。
虚血性心筋症における心機能に対するCAMKK1およびSDF-1の効果
【0186】
出願人は、CAMKK1がSDF-1を誘導せず、かつSDF-1がCAMKK1を誘導しないことを以前に実証していた。2つの異なる分子の作用機序の理解を考慮すると、出願人は、SDF-1およびCAMKK1が発症した虚血性心筋症において異なる効果を有するという仮説を立てた。この仮説を試験するために、出願人は、SDF-1、CAMKK1、またはその両方をコードするDNAプラスミドを、AMIから9ヶ月後のラットの梗塞周囲領域に注射した。図8に認められるように、遺伝子注射に応答して、SDF-1とCAMKK1との間で心機能の同一の改善が認められ、組み合わせを用いてもさらに改善しなかった(データ示さず)。
CAMKK1およびSDF-1は、エキソソーム放出によって組織修復を媒介する
【0187】
虚血性心筋症におけるSDF-1の効果とCAMKK1の効果が類似するので、SDF-1もエキソソーム機能の増加および向上によってその効果を媒介するのかを調査した。この仮説を試験するために、出願人は、CAMKK1またはSDF-1を過剰発現するMSCからエキソソームを単離した。図9に認められるように、CAMKK1またはSDF-1を過剰発現したMSCから単離したエキソソームを使用すると、AMIから2週間後の心機能(駆出率)が改善する。CAMKK1またはSDF-1を過剰発現するMSC由来のエキソソームにより、AMIから2週間後に生理食塩水対照群(1.9%±0.2)と比較して、EF(21.8%±2.5、p<.01)およびSDF-1(16.8%±2.7、p>.05)で有意な改善が認められた。出願人は、その受容体へのパラクリンおよびオートクリンのSDF-1結合を阻害するようにCXCR4阻害剤であるAMD3100を細胞培養培地に添加して、これらの実験を繰り返した。これらの研究では、AMD-3100の存在下でのSDF-1を過剰発現するMSCに由来するエキソソームは、生理食塩水対照と比較してAMIの2週間後の心機能を改善しなかった(図11、データ示さず)。
エキソソーム生成に対するCAMMK1の直接的な効果は、遠隔遺伝子発現に有効である。
【0188】
上記のデータは、SDF-1の効果には局所CXCR4発現が必要であり;それに対して、キナーゼであるCAMKK1は受容体が知られておらず、AKtおよびCAMK4に対する細胞内効果によって直接作用することを示す。エキソソームの注入によって組織修復が改善されるといういくつかの証明を考慮して、出願人は、CAMKK1プラスミドの遠位注射が心筋を修復するが、遠位正常組織へのSDF-1注射では修復されないという仮説を立てた。この仮説を試験するために、出願人は、LAD結紮によってAMIを誘導し、CAMKK1またはSDF-1プラスミドを動物の大腿部に注射した。図10に認められるように、大腿部にAMIおよびCAMKK1を注射された動物は、生理食塩水対照と比較して、心機能が有意に向上することが実証された。大腿部へのSDF-1プラスミド注射により、コントロールと比較して、心機能は有意に改善されなかった。
実験の概要
【0189】
幹細胞によるエキソソーム放出は、再生医療の成長領域である。MSCによるエキソソーム放出が細胞治療の組織保存効果および組織治癒効果を媒介することを示す証拠が増えてきている。過去20年間で、出願人は、前臨床研究において、ケモカイン間質細胞由来因子-1(SDF-1)、より最近ではキナーゼカルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼキナーゼ-1(CAMKK1)の過剰発現が心筋梗塞のサイズを減少させ、急性心筋梗塞モデルにおいて心機能を改善させることを実証してきた。臨床研究において、梗塞周囲領域にSDF-1プラスミドを直接注射すると心機能が改善されるが、この改善は最も重篤に傷害を負った心臓に限ることを実証してきた。出願人は、CAMKK1の過剰発現はSDF-1過剰発現と同一の心機能の改善レベルが得られることを本明細書中に開示する。CAMKK1およびSDF-1の両方の効果が、エキソソームの放出および機能の強化に媒介されることをさらに実証する。これは、SDF-1が幹細胞ホーミングを介して組織修復を媒介するという長年の考え方と正反対である。
SDF-1の効果にはオートクリンループまたはパラクリンループによってエキソソームを放出させるための局所組織CXCR4発現が必要とされ、それに対して、CAMKK1の効果は直接的であり、AKTおよびCAMK4のリン酸化を必要とすることをさらに実証する。動物モデルにおいて心筋梗塞を誘導し、SDF-1またはCAMKK1プラスミドを動物の大腿部に注射した。生理食塩水対照群(12.9%±1.8)と比較して、大腿部におけるCAMKK1の過剰発現により心機能が改善された(CAMKK1 30.3%±1.5、p<.01);それに対して、SDF-1の過剰発現では効果がなく、SDF-1(15.7%±3.7、p>.05)であった。これらのデータは、CAMKK1およびSDF-1の過剰発現の潜在的な修復効果の固有の誘導経路を実証しており;CAMKK1の過剰発現が組織修復を誘導するためのより直接的なストラテジーであることが示唆される。これらの相違は治療に関して重要であり、SDF-1を用いた以前の治験の失敗を説明するのに役立つ。さらに、細胞治療の効果がSDF-1放出に起因する範囲内において、組織傷害が大きいほどより大量のCXCR4が発現され、それによりSDF-1の幹細胞放出に応答してエキソソームがより多く生成されるので、これらのデータは、細胞治療の効果が組織傷害の程度と相関することが示されている理由について洞察される。
【0190】
配列表の一部
配列番号1
CAMKK1全長タンパク質
NM_032294(ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NM_032294;最終アクセス日:2018年4月13日)
【化3】
配列番号2
CAMKK1 1~413短縮ポリペプチド
【化4】
均等物
【0191】
本開示を上記実施形態と併せて記載しているが、前述の説明および例は例示を目的とし、本開示の範囲を制限しないと理解すべきである。本開示の範囲内の他の態様、利点、および修正形態は、本開示が属する当業者に明らかである。
【0192】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群で記載されている場合、当業者は、本開示もマーカッシュ群の任意の個別の要素または要素の下位集団に関して記載されていると認識する。
【0193】
本明細書中で言及した全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、各々が個別に参考として援用されているのと同一の程度まで、その全体が参考として明確に援用される。矛盾する場合、定義を含む本明細書を優先するものとする。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
組織治癒を促進するか、組織傷害を処置するか、または組織傷害に関連する状態を処置する方法であって、有効量の以下:
a.CAMKK1ポリペプチドまたはその等価物;または
b.CXCR4ポリペプチド発現の存在下でのSDF-1ポリペプチドまたはその等価物
の一方または両方を必要とする被験体に投与する工程を含み、
ここで、前記有効量が、前記被験体におけるエキソソームの産生、分泌、および/または機能を誘導する量である、方法。
(項目2)
前記CAMKK1ポリペプチドが、配列番号1もしくは2またはその各々の等価物を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記SDF-1ポリペプチドが、配列番号3もしくは4またはその各々の等価物を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記CXRC4ポリペプチドが、配列番号5またはその等価物を含む、項目1または3に記載の方法。
(項目5)
前記1またはそれを超えるポリペプチドを、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその等価物の投与によって投与する、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記の1またはそれを超えるポリペプチドを、前記ポリヌクレオチドまたはその等価物を含むベクター中に含めて投与する、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記ベクターが、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターである、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記ポリヌクレオチドまたはその等価物またはベクターを、前記ポリヌクレオチドまたはその等価物を含む幹細胞の投与によって投与する、項目5~7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記幹細胞が、間葉系幹細胞またはその前駆細胞である、項目8に記載の方法。
(項目10)
項目1のbで、傷害を受けた組織に対して局所投与される、項目1に記載の方法。
(項目11)
項目1のaで、傷害を受けた組織に対して局所投与されるか、遠位に投与される、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記組織が筋肉組織または心臓組織である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記関連する状態が、虚血状態または心筋症を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目14)
投与前に前記患者から単離した試料中の循環エキソソームレベルを決定する工程をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目15)
投与後に前記患者から単離した試料中の循環エキソソームレベルを決定する工程をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記有効量を、前記試料中の循環エキソソームレベルから決定する、項目14または15に記載の方法。
(項目17)
a.CAMKK1ポリペプチドまたはその等価物;または
b.CXCR4ポリペプチド発現の存在下でのSDF-1ポリペプチドまたはその等価物
の一方または両方を過剰発現する組換え幹細胞。
(項目18)
前記過剰発現が、配列番号1もしくは2またはその各々の等価物を含むCAMKK1ポリペプチドの発現によるか、配列番号3もしくは4またはその各々の等価物を含むSDF-1ポリペプチド、および配列番号5またはその等価物を含むCXCR4ポリペプチドの発現による、項目17に記載の幹細胞。
(項目19)
前記幹細胞が、間葉系幹細胞、CD34+幹細胞、またはこれらの各々の前駆細胞である、項目17または18に記載の幹細胞。
(項目20)
前記幹細胞が、胚性幹細胞、iPSC、または体性幹細胞の群から選択される、項目18に記載の幹細胞。
(項目21)
前記幹細胞が、エキソソームの産生、分泌、および/または機能を誘導するのに有効な量で、CAMKK1ポリペプチドまたはその等価物をコードするポリヌクレオチドを含む、項目17~20のいずれか1項に記載の幹細胞。
(項目22)
前記幹細胞が、エキソソームの産生、分泌、および/または機能を誘導するのに有効な量で、CXCR4およびSDF-1をコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチドを含む、項目17~21のいずれか1項に記載の幹細胞。
(項目23)
前記幹細胞が哺乳動物幹細胞である、項目17~22のいずれか1項に記載の幹細胞。
(項目24)
前記哺乳動物幹細胞がヒト幹細胞である、項目23に記載の幹細胞。
(項目25)
前記ポリペプチドが、ベクター内に必要に応じて含まれるCAMKK1ポリペプチド、SDF-1ポリペプチド、および/もしくはCXCR4ポリペプチド、またはこれら各々の等価物をコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチドによって発現される、項目17~24のいずれか1項に記載の幹細胞。
(項目26)
前記ベクターが、ウイルスベクターまたはプラスミドである、項目21、22、または25のいずれか1項に記載の幹細胞。
(項目27)
治療エキソソームを産生する方法であって、エキソソーム産生を促進する条件下で項目17~26のいずれか1項に記載の幹細胞を成長させる工程および前記幹細胞から産生されたエキソソームを単離する工程を含む、方法。
(項目28)
項目17~26のいずれか1項に記載の幹細胞によって産生された単離された細胞培養培
地。
(項目29)
17~26のいずれか1項に記載の細胞によって産生されたエキソソームの集団。
(項目30)
項目28に記載の細胞培養培地から単離されたエキソソームの集団。
(項目31)
担体および項目17~26のいずれか1項に記載の単離幹細胞、項目26に記載の単離された細胞培養培地、または項目29または30に記載の集団の群のうちの1つまたは複数を含む組成物。
(項目32)
前記担体が、薬学的に許容され得る担体または生体適合性マトリックスである、項目31に記載の組成物。
(項目33)
防腐剤、安定剤、および/または抗凍結剤をさらに含む、項目31または32に記載の組成物。
(項目34)
項目29または30に記載のエキソソームの集団を含む凍結乾燥組成物。
(項目35)
抗凍結剤をさらに含む項目34に記載の組成物。
(項目36)
虚血状態、心筋症、および関連障害のうちの1つまたは複数を処置するか、または組織治癒を促進する方法であって、有効量の以下:項目29もしくは30に記載のエキソソーム集団;または項目32もしくは33に記載の組成物のうちの1つまたは複数を必要とする被験体に投与する工程を含む、方法。
(項目37)
前記投与が局所投与または全身投与である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記投与が前記組織の部位に対して遠位である、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記組織が筋肉組織または心臓組織である、項目36~38のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
投与前に前記患者から単離した試料中の循環エキソソームレベルを決定する工程をさらに含む、項目36~39のいずれか1項に記載の方法。
(項目41)
投与後に前記患者から単離した試料中の循環エキソソームレベルを決定する工程をさらに含む、項目36~39のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
前記有効量を、前記試料中の循環エキソソームレベルから決定する、項目40または41に記載の方法。
(項目43)
細胞内のエキソソームの分泌および機能を誘導する方法であって、細胞内のCAMKK1ポリペプチドもしくはタンパク質またはその等価物の発現を上方制御する工程を含む、方法。
(項目44)
前記細胞が幹細胞である、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記幹細胞が、胚性幹細胞、iPSC、または体性幹細胞の群から選択される、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記幹細胞が、間葉系幹細胞またはその前駆細胞である、項目44に記載の方法。
(項目47)
前記幹細胞が哺乳動物幹細胞である、項目44~46のいずれかに記載の方法。
(項目48)
前記哺乳動物幹細胞がヒト幹細胞である、項目47に記載の方法。
(項目49)
CAMKK1タンパク質またはポリペプチドが、配列番号1もしくは2またはその各々の等価物の配列を含み、CAMKK1の発現を、有効量のCAMKK1タンパク質もしくはポリペプチドまたはその等価物をコードするポリヌクレオチドで前記幹細胞を形質導入することによって上方制御する、項目44~48のいずれか1項に記載の方法。
(項目50)
前記ポリヌクレオチドが、検出可能な標識をさらに含む、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記ポリヌクレオチドが、前記ポリヌクレオチドまたはその等価物に作動可能に連結されたプロモーター配列および/またはエンハンサー配列をさらに含む、項目49または50に記載の方法。
(項目52)
前記ポリヌクレオチドが、ベクターをさらに含む、項目50または51に記載の方法。
(項目53)
前記ベクターが、原核生物ベクターまたは真核生物ベクターである、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記原核生物ベクターがプラスミドである、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記真核生物ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターの群から選択される、項目53に記載の方法。
(項目56)
前記細胞がエキソソームを前記培養培地中に分泌するのに有効な時間にわたって前記細胞を培養し、次いで、前記培養培地から前記細胞を必要に応じて分離する工程をさらに含む、項目43~55のいずれか1項に記載の方法。
(項目57)
前記培養培地または前記幹細胞からエキソソームの集団を単離する工程をさらに含む、項目56に記載の方法。
(項目58)
幹細胞におけるエキソソームの分泌および機能を誘導する方法であって、前記幹細胞内のSDF-1タンパク質またはその等価物の発現を上方制御する工程を含み、ここで、前記発現がCXCR4発現の存在下にある、方法。
(項目59)
前記幹細胞が、胚性幹細胞、iPSC、または体性幹細胞の群から選択される、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記幹細胞が間葉系幹細胞またはその前駆細胞である、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記幹細胞が哺乳動物幹細胞である、項目58~60のいずれか1項に記載の方法。
(項目62)
前記哺乳動物幹細胞がヒト幹細胞である、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記SDF-1タンパク質が、配列番号4もしくは5またはその各々の等価物の配列を含み、SDF-1の発現を、有効量のSDF-1タンパク質またはその等価物をコードするポリヌクレオチドで前記幹細胞を形質導入することによって上方制御する、項目58~6
2のいずれか1項に記載の方法。
(項目64)
前記SDF-1タンパク質が、ポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドまたはその等価物に作動可能に連結されたプロモーター配列および/またはエンハンサー配列をさらに含むポリヌクレオチドによって発現される、項目62または63に記載の方法。
(項目65)
前記ポリヌクレオチドが、ベクターをさらに含む、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記ベクターが、原核生物ベクターまたは真核生物ベクターである、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記原核生物ベクターがプラスミドである、項目66に記載の方法。
(項目68)
前記真核生物ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターの群から選択される、項目66に記載の方法。
(項目69)
前記細胞がエキソソームを前記培養培地中に分泌するのに有効な時間にわたって前記細胞を培養し、次いで、前記培養培地から前記細胞を必要に応じて分離する工程をさらに含む、項目67または68に記載の方法。
(項目70)
前記培養培地または前記幹細胞からエキソソームの集団を単離する工程をさらに含む、項目69に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【外国語明細書】