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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155778
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 201M
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
H01G4/30 515
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024221132
(22)【出願日】2024-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2024053107
(32)【優先日】2024-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】山根 麻衣子
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AD02
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC19
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
5E082JJ03
5E082JJ12
(57)【要約】
【課題】耐湿性を向上することができる積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】積層セラミック電子部品は、第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、前記第1軸と直交する第2軸に垂直であり、前記複数の内部電極の前記第2軸方向の端部が位置する一対の側面と、を有する積層体と、前記一対の側面を被覆する一対のサイドマージン部と、を具備し、前記積層体と前記一対のサイドマージン部との境界の少なくとも一部分において、前記積層体から前記一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、前記第1軸と直交する第2軸に垂直であり、前記複数の内部電極の前記第2軸方向の端部が位置する一対の側面と、を有する積層体と、前記一対の側面を被覆する一対のサイドマージン部と、を具備し、
前記積層体と前記一対のサイドマージン部との境界の少なくとも一部分において、前記積層体から前記一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加する
積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記積層体は、
前記複数の内部電極と、前記複数のセラミック層のうちで前記複数の内部電極の間に位置する複数の電極間セラミック層と、を有する容量形成部と、
前記複数のセラミック層のうちで前記容量形成部を間に挟む一対の最外セラミック層を有するカバー部と、
を有し、
少なくとも前記容量形成部と前記一対のサイドマージン部との境界において、前記容量形成部から前記一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加する
請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記容量形成部と前記一対のサイドマージン部との境界において、前記容量形成部から前記一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加し、
前記容量形成部から前記一対のカバー部にかけてSi濃度が不連続に増加する
請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記積層体は、
前記複数の内部電極と、前記複数のセラミック層のうちで前記複数の内部電極の間に位置する複数の電極間セラミック層と、を有する容量形成部と、
前記複数のセラミック層のうちで前記容量形成部を間に挟む一対の最外セラミック層を有するカバー部と、
を有し、
少なくとも前記一対のカバー部と前記一対のサイドマージン部との境界において、前記一対のカバー部から前記一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加する
請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記一対のカバー部と前記一対のサイドマージン部との境界においてのみ、前記一対のカバー部から前記一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加する
請求項4に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、前記第1軸と直交する第2軸に垂直であり、前記複数の内部電極の前記第2軸方向の端部が位置する一対の側面と、を有する積層体を具備し、
前記積層体は、
前記複数の内部電極と、前記複数のセラミック層のうちで前記複数の内部電極の間に位置する複数の電極間セラミック層と、を有する容量形成部と、
前記複数のセラミック層のうちで前記容量形成部を間に挟む一対の最外セラミック層を有するカバー部と、
を有し、
前記容量形成部と前記一対のカバー部との境界において、前記容量形成部から前記一対のカバー部にかけてSi濃度が不連続に増加する
積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記積層体は、前記第1軸と直交する第2軸に垂直であり、前記複数の内部電極の前記第2軸方向の端部が位置する一対の側面を有し、
前記一対の側面を被覆する一対のサイドマージン部を具備し、
前記一対のカバー部と前記一対のサイドマージン部との間でSi濃度が等しい
請求項6に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記積層体は、前記第1軸と直交する第2軸に垂直であり、前記複数の内部電極の前記第2軸方向の端部が位置する一対の側面を有し、
前記一対の側面を被覆する一対のサイドマージン部を具備し、
前記一対のカバー部と前記一対のサイドマージン部との境界において、前記一対のサイドマージン部から前記一対のカバー部にかけてSi濃度が不連続に増加する
請求項6に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記積層体は、前記第1軸と直交する第2軸に垂直であり、前記複数の内部電極の前記第2軸方向の端部が位置する一対の側面を有し、
前記一対の側面を被覆する一対のサイドマージン部を具備し、
前記一対のカバー部と前記一対のサイドマージン部との境界において、前記一対のカバー部から前記一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加する
請求項6に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記複数の内部電極の各々の前記端部に形成された酸化領域の前記第2軸方向の寸法は平均で1μm以下である
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
前記一対のサイドマージン部は、セラミックの多結晶体を主成分とし、前記多結晶体中に分散され、前記多結晶体に対する合計体積率が1%以上20%以下である複数のガラス粒子を含み、
前記複数のガラス粒子のメディアン径は、0.20μm以上0.80μm以下であり、かつ前記多結晶体を構成する複数の結晶粒子のメディアン径の90%以上であり、
前記一対のサイドマージン部の断面では、格子状に区画された1μmの複数の領域それぞれに観察されるガラス粒子の平均個数が0.5個以上2個以下である
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項12】
前記一対のサイドマージン部が、Aサイトにバリウムを含み、Bサイトにチタンを含むペロブスカイト構造の多結晶体を含み、
前記一対のサイドマージン部では、Bサイトのチタンに対するSiの原子比が9at%以下である
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサの製造過程においてサイドマージン部を後付けする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、薄いサイドマージン部によっても複数の内部電極の両側端部を確実に被覆することができるため、積層セラミックコンデンサの小型化及び大容量化に有利である。
【0003】
一例として、特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法では、内部電極が印刷されたセラミックシートを積層した積層シートを切断し、内部電極が露出した切断面を側面とする複数の積層体を作製する。そして、積層体の側面でセラミックシートを打ち抜くことにより、積層体の両側面にサイドマージン部を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-209539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サイドマージン部が薄く形成された積層セラミックコンデンサでは、耐湿性が低下するおそれがある。
【0006】
本開示は、耐湿性を向上することができる積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、積層セラミック電子部品は、第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、前記第1軸と直交する第2軸に垂直であり、前記複数の内部電極の前記第2軸方向の端部が位置する一対の側面と、を有する積層体と、前記一対の側面を被覆する一対のサイドマージン部と、を具備し、前記積層体と前記一対のサイドマージン部との境界の少なくとも一部分において、前記積層体から前記一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加する。
【0008】
本開示の他の一態様によれば、積層セラミック電子部品は、第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、前記第1軸と直交する第2軸に垂直であり、前記複数の内部電極の前記第2軸方向の端部が位置する一対の側面と、を有する積層体を具備し、前記積層体は、前記複数の内部電極と、前記複数のセラミック層のうちで前記複数の内部電極の間に位置する複数の電極間セラミック層と、を有する容量形成部と、前記複数のセラミック層のうちで前記容量形成部を間に挟む一対の最外セラミック層を有するカバー部と、を有し、前記容量形成部と前記一対のカバー部との境界において、前記容量形成部から前記一対のカバー部にかけてSi濃度が不連続に増加する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、耐湿性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す断面図(その1)である。
図3】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す断面図(その2)である。
図4】第1実施形態における容量形成部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
図5】第1実施形態におけるカバー部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
図6】第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
図7】上記製造方法のステップS01で準備される未焼成の積層体を示す斜視図である。
図8】上記製造方法のステップS02で得られる未焼成のセラミック素体を示す斜視図である。
図9】第1実施形態におけるサイドマージン部の微細組織を模式的に示す部分断面図である。
図10】比較例における容量形成部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
図11】比較例におけるカバー部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
図12】比較例におけるサイドマージン部の微細組織を模式的に示す部分断面図である。
図13】第1実施形態のサイドマージン部におけるガラス粒子の分布状態を模式的に示す部分断面図である。
図14】第1実施形態のサイドマージン部におけるガラス粒子の分布状態を模式的に示す図である。
図15】一部が酸化した内部電極を示す断面図である。
図16】第2実施形態における容量形成部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
図17】第2実施形態におけるカバー部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
図18】第3実施形態における容量形成部とカバー部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
図19】第3実施形態におけるカバー部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
図20】第3実施形態における容量形成部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
図21】第4実施形態における容量形成部とカバー部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
図22】第4実施形態におけるカバー部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
図23】第4実施形態における容量形成部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
図24】第5実施形態における容量形成部とカバー部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
図25】第5実施形態におけるカバー部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
図26】第5実施形態における容量形成部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。また、図面には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は、積層セラミックコンデンサに対して固定された固定座標系を規定する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態は積層セラミックコンデンサに関する。
【0013】
[積層セラミックコンデンサの構造]
図1は、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図である。図2及び図3は、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す断面図である。図2は、図1中のA-A'線に沿った断面図である。図3は、図1中のB-B'線に沿った断面図である。
【0014】
第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。セラミック素体11は、X軸と直交する一対の端面と、Y軸と直交する一対の側面と、Z軸と直交する一対の主面と、を有する6面体として構成される。第1外部電極14及び第2外部電極15は、セラミック素体11の一対の端面を被覆している。
【0015】
セラミック素体11の一対の端面、一対の側面、及び一対の主面はいずれも、平坦面として構成される。本実施形態における平坦面とは、全体的に見たときに平坦と認識される面であれば厳密に平面でなくてもよく、例えば、表面の微小な凹凸形状や、所定の範囲に存在する緩やかな湾曲形状などを有する面も含まれる。
【0016】
第1外部電極14及び第2外部電極15は、セラミック素体11を挟んで相互にX軸方向に対向している。第1外部電極14及び第2外部電極15はそれぞれ、セラミック素体11の各端面から主面及び側面に延出している。これにより、第1外部電極14及び第2外部電極15では、X-Z平面に平行な断面、及びX-Y平面に平行な断面がいずれもU字状となっている。
【0017】
なお、第1外部電極14及び第2外部電極15の形状は、図1に示すものに限定されない。例えば、第1外部電極14及び第2外部電極15は、セラミック素体11の両端面から一方の主面のみに延び、X-Z平面に平行な断面がL字状となっていてもよい。また、第1外部電極14及び第2外部電極15は、いずれの主面及び側面にも延出していなくてもよい。
【0018】
第1外部電極14及び第2外部電極15は、電気の良導体により形成されている。第1外部電極14及び第2外部電極15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。なお、本実施形態で主成分とは最も含有比率の高い成分を言うものとする。
【0019】
セラミック素体11は、積層体16と、一対のサイドマージン部17と、を有する。積層体16は、セラミック素体11の一対の主面及び一対の端面を構成し、Y軸に垂直な一対の側面Fを有する。一対のサイドマージン部17はそれぞれ、積層体16の一対の側面Fを被覆し、セラミック素体11の一対の側面を構成する。
【0020】
積層体16は、X-Y平面に沿って延びる平板状の複数のセラミック層がZ軸方向に積層された構成を有する。積層体16は、容量形成部18と、一対のカバー部19と、を有する。一対のカバー部19は、容量形成部18をZ軸方向上下から被覆しており、セラミック素体11の一対の主面を構成している。複数のセラミック層は、容量形成部18に含まれる複数の電極間セラミック層21と、一対のカバー部19に含まれる一対の最外セラミック層22と、を有する。一対の最外セラミック層は、Z軸方向で容量形成部18を間に挟む。
【0021】
容量形成部18は、X-Y平面に沿って延びるシート状の複数の第1内部電極12及び第2内部電極13を有する。第1内部電極12及び第2内部電極13は複数のセラミック層の間に配置されている。第1内部電極12及び第2内部電極13は、Z軸方向に沿って交互に配置されている。つまり、容量形成部18では、第1内部電極12及び第2内部電極13がセラミック層を挟んでZ軸方向に対向している。
【0022】
第1内部電極12は、第1外部電極14に覆われた端面に引き出されている。一方、第2内部電極13は第2外部電極15に覆われた端面に引き出されている。これにより、第1内部電極12は第1外部電極14のみに接続され、第2内部電極13は第2外部電極15のみに接続されている。
【0023】
第1内部電極12及び第2内部電極13は、容量形成部18のY軸方向の全幅にわたって形成され、そのY軸方向の両端部が積層体16の両側面F上に位置している。これにより、セラミック素体11では、複数の第1内部電極12及び第2内部電極13のY軸方向の端部の位置が積層体16の両側面F上においてY軸方向に0.5μm以内の範囲で揃っている。
【0024】
第1内部電極12及び第2内部電極13は、電気の良導体により形成されている。第1内部電極12及び第2内部電極13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0025】
このような構成により、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間の複数の電極間セラミック層21に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0026】
積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11では、容量形成部18を構成する複数のセラミック層(電極間セラミック層21)、一対のカバー部19、及び一対のサイドマージン部17がいずれも誘電体セラミックの多結晶体を主成分としている。
【0027】
セラミック素体11では、容量形成部18の各セラミック層の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0028】
なお、セラミック層は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、チタン酸マグネシウム(MgTiO)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO)、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O)、ジルコン酸バリウム(BaZrO)、酸化チタン(TiO)などの組成系で構成してもよい。
【0029】
本実施形態では、積層体16と一対のサイドマージン部17との境界において、積層体16から一対のサイドマージン部17にかけてSi濃度が不連続に増加する。図4は、第1実施形態における容量形成部18とサイドマージン部17との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。図5は、第1実施形態におけるカバー部19とサイドマージン部17との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
【0030】
本実施形態では、詳細は後述するが、サイドマージン部17の形成に焼結助剤として有機ケイ素化合物が用いられており、サイドマージン部17にSiが含まれる。サイドマージン部17は、Siを主成分とするガラス粒子を含んでいてもよい。一方、容量形成部18に含まれる電極間セラミック層21、及びカバー部19に含まれる最外セラミック層22の形成には有機ケイ素化合物が用いられておらず、電極間セラミック層21及び最外セラミック層22におけるSi濃度はサイドマージン部17におけるSi濃度よりも低い。電極間セラミック層21及び最外セラミック層22に実質的にSiが含まれていなくてもよい。そして、図4に示すように、容量形成部18と一対のサイドマージン部17との境界において、容量形成部18から一対のサイドマージン部17にかけてSi濃度が不連続に増加する。また、図5に示すように、カバー部19と一対のサイドマージン部17との境界において、カバー部19から一対のサイドマージン部17にかけてSi濃度が不連続に増加する。容量形成部18と一対のサイドマージン部17との境界において、Si濃度の差は、好ましくは4at%以上であり、より好ましくは5at%以上である。カバー部19と一対のサイドマージン部17との境界において、Si濃度の差が4at%以上であってもよく、5at%以上であってもよい。本開示で、境界からサイドマージン部17側に向かって3μmまでの領域と境界からカバー部19、もしくは容量形成部18側に向かって3μmまでの領域において測定した際に、境界の一方の側と他方の側との間でSi濃度の差が4at%以上あれば、「Si濃度が不連続に増加する」に該当する。
【0031】
容量形成部18とサイドマージン部17のSi濃度比率は、容量形成部18を1とするとサイドマージン部17は6~9、また、カバー部19とサイドマージン部17のSi濃度比率は、カバー部19を1とするとサイドマージン部17は2~6となる。
【0032】
[積層セラミックコンデンサの製造方法]
次に、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について説明する。図6は、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。図7及び図8は、積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、図6に沿って、図7及び図8を適宜参照しながら説明する。
【0033】
(ステップS01:積層体準備)
ステップS01では、図7に示す未焼成の積層体16を準備する。未焼成の積層体16は、大判の複数のセラミックシートがZ軸方向に積層された積層シートを用いて作製することができる。容量形成部18に対応するセラミックシートには第1内部電極12及び第2内部電極13を形成するための導電性ペーストがパターニングされる。
【0034】
未焼成の積層体16は、上記の積層シートをX-Z平面及びY-Z平面に沿って切り分けることで得られる。積層シートの切断には、例えば、押し切り刃や回転刃などを備えた切断装置を用いることができる。これにより、積層体16では、第1内部電極12及び第2内部電極13のY軸方向の両端部が揃って位置する切断面として一対の側面Fが得られる。
【0035】
(ステップS02:サイドマージン部形成)
ステップS02では、ステップS01で作製した未焼成の積層体16の一対の側面Fにそれぞれ未焼成の一対のサイドマージン部17を設ける。これにより、図8に示すように、未焼成のサイドマージン部17によって一対の側面が構成される未焼成のセラミック素体11が得られる。
【0036】
未焼成のサイドマージン部17には、焼結助剤として有機ケイ素化合物が混合されたセラミックスラリーを用いる。有機ケイ素化合物としては、シリコーンレジン及びシリコンオリゴマー等を用いることができる。セラミックスラリーは、次のようにして作製することができる。まず、有機ケイ素化合物とバインダーとが混合した分散液を準備する。バインダーとしては、ポリビニルブチラール(PVB)を用いることができる。次に、チタン酸バリウム等のサイドマージン部17を構成する誘電体セラミックのスラリーと分散液とを分散後、乳化させる。このようにして、有機ケイ素化合物が均一に分散したサイドマージン部17用のセラミックスラリーを作製することができる。
【0037】
サイドマージン部17は、任意の方法で形成可能である。サイドマージン部17は、例えば、セラミックスラリーをシート状に成形したセラミックシートを用いて形成することができる。この場合、セラミックシートは、例えば、積層体16の側面Fで打ち抜くことや、予め切断して積層体16の側面Fに貼り付けることができる。
【0038】
また、サイドマージン部17を形成するために、予めシート状に成形されたセラミックシートではなく、成形されていないセラミックスラリーをそのまま用いることもできる。この場合、セラミックスラリーは、例えば、積層体16の側面Fを浸漬させることで、積層体16の側面Fに塗布することができる。
【0039】
(ステップS03:焼成)
ステップS03では、ステップS02で得られたセラミック素体11を焼成することにより、図1図3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。
【0040】
(ステップS04:外部電極形成)
ステップS04では、ステップS03で焼成されたセラミック素体11のX軸方向両端部に第1外部電極14及び第2外部電極15を形成することにより、図1図3に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。ステップS04における第1外部電極14及び第2外部電極15の形成方法は、公知の方法から任意に選択可能である。なお、素体に第1外部電極14と第2外部電極15を形成したのち同時に焼成してもよい。
【0041】
以上により、図1図3に示す積層セラミックコンデンサ10が完成する。この製造方法では、第1内部電極12及び第2内部電極13が露出した積層体16の側面Fにサイドマージン部17が形成されるため、セラミック素体11における複数の第1内部電極12及び第2内部電極13のY軸方向の端部の位置が、Y軸方向に0.5μm以内の範囲で揃う。
【0042】
第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10では、サイドマージン部17の焼結助剤として有機ケイ素化合物が用いられている。このため、サイドマージン部17に高い緻密性が得られ、優れた耐湿性を得ることができる。従って、サイドマージン部17が薄い場合でも、外部からサイドマージン部17の内側への水分の侵入を抑制し、第1内部電極12及び第2内部電極13の酸化を抑制することができる。
【0043】
また、特にカバー部19とサイドマージン部17との界面の近傍に優れた耐湿性が得られることで、カバー部19とサイドマージン部17との間に若干の剥がれが生じたとしても、第1内部電極12及び第2内部電極13の酸化を抑制することができる。
【0044】
なお、緻密性の向上のためにサイドマージン部の焼結助剤としてSiOを用いることも考えられる。しかしながら、SiOが用いられた場合、積層体とサイドマージン部との間のSi濃度差に起因して、焼成中にSiイオンがサイドマージン部から積層体に拡散する。この結果、電極間セラミック層の結晶粒子径が設計値から変化し、設計通りの容量等の電気特性が得られなくなる。
【0045】
一方、有機ケイ素化合物が用いられた場合、有機ケイ素化合物から生じたSiイオンは焼成中にチタン酸バリウムのバリウム等の誘電体セラミックの構成元素と結合し、BaSiガラス等のガラス粒子を形成する。この反応は、反応エネルギ等の点で、SiOの生成及びSiイオンの積層体16への拡散よりも優先的である。従って、本実施形態では、サイドマージン部17から積層体16へのSiイオンの拡散が防止される。この結果、容量形成部18と一対のサイドマージン部17との境界において、容量形成部18から一対のサイドマージン部17にかけてSi濃度が不連続に増加する。また、カバー部19と一対のサイドマージン部17との境界において、カバー部19から一対のサイドマージン部17にかけてSi濃度が不連続に増加する。このため、Siイオンの拡散に伴う電極間セラミック層21の結晶粒子径の設計値から変化を抑制し、設計通りの容量等の電気特性を得ることができる。
【0046】
なお、ガラス粒子の大きさは有機ケイ素化合物中のシロキサン結合の大きさに依存し、チタン酸バリウム等のセラミックの結晶粒子の大きさと同等以上になりやすい。このため、ガラス粒子に含まれるSiの、セラミックの結晶粒子の粒界を超える拡散は生じにくく、この点でも積層体16へのSiの拡散が抑制される。
【0047】
図9は、サイドマージン部17の微細組織を模式的に示す部分断面図である。図9には、多結晶体を構成する複数の結晶粒子Cが低密度のドットパターンで示され、ガラス粒子Gが高密度のドットパターンで示されている。サイドマージン部17は、ガラス粒子Gが結晶粒子Cと同等以上の大きさを有する特徴的な微細組織を有する。
【0048】
図9には、サイドマージン部17に発生したクラックが太矢印で示す方向に進展しようとしている状態が示されている。図9に示すクラックの進展経路には、ガラス粒子Gが存在する。従って、図9に示す状態では、クラックの進展の推進力となるエネルギがガラス粒子Gに対して加わる。
【0049】
粘性の高いガラス粒子Gは、クラックから加わるエネルギを吸収する作用を有する。特に、サイドマージン部17では、ガラス粒子Gが大きいため、クラックから加わるエネルギを充分に吸収することができる。このため、サイドマージン部17では、クラックがガラス粒子Gにおいて推進力を失うことでクラックの進展が止まる。
【0050】
ここで、比較例として、サイドマージン部の形成に焼結助剤としてSiOが用いられた積層セラミックコンデンサの特徴について説明する。図10は、比較例における容量形成部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。図11は、比較例におけるカバー部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
【0051】
焼結助剤としてSiOが用いられた場合、上述のように、焼成中にSiイオンの拡散が生じる。このため、図10に示すように、容量形成部18xと一対のサイドマージン部17xとの境界において、容量形成部18xから一対のサイドマージン部17xにかけてSi濃度が連続的に増加する。また、図11に示すように、カバー部19xと一対のサイドマージン部17xとの境界において、カバー部19xから一対のサイドマージン部17xにかけてSi濃度が連続的に増加する。
【0052】
図12は、比較例におけるサイドマージン部17xの微細組織を模式的に示す部分断面図である。サイドマージン部17xでは、第1実施形態におけるサイドマージン部17とは異なり、結晶粒子Cに比べてガラス粒子Gが大幅に小さく、ガラス粒子Gが結晶粒子Cの粒界ないし粒界三重点に存在する。
【0053】
サイドマージン部17xでは、小さいガラス粒子Gによってクラックから加わるエネルギを充分に吸収することができず、ガラス粒子Gを介してその周囲の結晶粒子C及び粒界にエネルギが加わる。これにより、サイドマージン部17xでは、クラックの進展がガラス粒子Gで止まらずに、クラックがガラス粒子Gを超えて進展しやすい。
【0054】
このように、本実施形態では、サイドマージン部17のガラス粒子Gが結晶粒子Cと同等以上の大きさを有するため、比較例とは異なり、ガラス粒子Gによるクラックの進展を止める作用が有効に得られる。これにより、サイドマージン部17では、大きいクラックの発生を抑制することができる。
【0055】
サイドマージン部17では、ガラス粒子Gのメディアン径が0.20μm以上であり、かつ多結晶体を構成する結晶粒子Cのメディアン径の90%以上であることが好ましい。これにより、サイドマージン部17では、ガラス粒子Gによってクラックの持つエネルギを吸収する作用を充分に得ることができる。
【0056】
メディアン径は、断面における所定の視野内に存在する粒子の粒径の中央値として定義され、例えば、サイドマージン部17の断面における30μm×40μmの矩形の視野において求めることができる。各粒子の粒径は、当該粒子の断面と面積が等しくなる円の直径として算出される円相当径として得ることができる。
【0057】
なお、サイドマージン部17では、ガラス粒子Gが大きすぎると、柔軟性が高くなりすぎることで製造過程において外面の平坦性が損なわれるなど正常な形状を保つことが難しくなる。このため、サイドマージン部17では、ガラス粒子Gのメディアン径を0.80μm以下に留めることが好ましい。
【0058】
更に、サイドマージン部17では、充分な量のガラス粒子Gを多結晶体中に均一に分散させることで、クラックの進展経路にガラス粒子Gが存在する確率を各段に高めることができる。これにより、サイドマージン部17に発生したクラックの進展をガラス粒子Gによってより確実に阻むことができる。
【0059】
特に、サイドマージン部17では、外面から発生したクラックがY軸方向に貫通することで積層体16の側面Fまで到達することを防止することができる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、水分がサイドマージン部17のクラックを介して積層体16の側面Fに侵入することによる絶縁不良の発生を防止することができる。
【0060】
積層セラミックコンデンサ10では、Y軸方向の寸法が小さいサイドマージン部17ほどY軸方向に貫通するクラックが発生しやすい。従って、積層セラミックコンデンサ10では、サイドマージン部17のY軸方向の寸法が20μm以下の構成において、絶縁不良の発生を防止する効果がより有効に得られる。
【0061】
具体的に、サイドマージン部17では、多結晶体の存在する部分の合計体積に対するガラス粒子Gが存在する部分の合計体積の割合(合計体積率)が1%以上であることが好ましい。これにより、サイドマージン部17では、クラックの進展経路にガラス粒子Gが存在する確率を充分に高めることができる。
【0062】
サイドマージン部17における多結晶体に対するガラス粒子Gの合計体積率は、サイドマージン部17の断面における所定の視野内に存在するガラス粒子Gの粒径から推測することができ、例えば、サイドマージン部17の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)によって30μm×40μmの矩形の視野を撮像した写真において求めることができる。
【0063】
具体的に、サイドマージン部17の断面写真から、最大径が0.05μm以上のガラス粒子Gそれぞれについて測定した面積を用いて各ガラス粒子Gの直径を円相当径として算出し、得られた直径から各ガラス粒子Gの球体相当の体積を算出する。これにより、ガラス粒子Gの平均体積が得られる。次に、面積が1μmの正方形の領域中のガラス粒子Gの個数からサイドマージン部17全体におけるガラス粒子Gの個数を概算で得ることができる。これにより、ガラス粒子Gについて平均体積と個数とを積算することで合計体積が求められる。そして、ガラス粒子Gの合計体積率は、サイドマージン部17の全体積からガラス粒子Gの合計体積を引いて得られる多結晶体の体積に対するガラス粒子Gの合計体積の比率として求めることができる。
【0064】
なお、サイドマージン部17では、多結晶体に対するガラス粒子Gの合計体積率が大きすぎると、柔軟性が高くなりすぎることで製造過程において外面の平坦性が損なわれるなど正常な形状を保つことが難しくなる。このため、サイドマージン部17では、多結晶体に対するガラス粒子Gの合計体積の割合は20%以下に留めることが好ましい。
【0065】
図13及び図14は、サイドマージン部17におけるガラス粒子Gの存在する頻度の評価方法を説明するための図である。図13は、サイドマージン部17におけるガラス粒子の分布状態を模式的に示す部分断面図である。図14は、サイドマージン部17におけるガラス粒子の分布状態を模式的に示す図である。図13には、サイドマージン部17の断面上に格子状に区画された複数の正方形の領域Rが示されている。各領域Rの面積は1μmである。複数の領域Rは、例えば、4行7列に配列することができる。
【0066】
図14には、図13と同様の視野において各領域Rで観察されるガラス粒子Gの個数が示されている。なお、各領域Rでは、ガラス粒子Gの一部のみが観察される場合にも1個としてカウントするものとする。本実施形態では、サイドマージン部17におけるガラス粒子Gの存在する頻度を複数の領域Rにおけるガラス粒子Gの平均個数で評価する。
【0067】
具体的に、本実施形態におけるサイドマージン部17では、配列されたすべての領域Rにおけるガラス粒子Gの平均個数が1μmあたり0.5個以上2個以下であることが好ましい。また、サイドマージン部17では、配列されたすべての領域Rのガラス粒子Gの1μmあたりの個数の標準偏差が0.30以下であることが好ましい。
【0068】
これにより、サイドマージン部17では、結晶粒子Cで構成される多結晶体中において、ガラス粒子Gの高い分散性が得られ、ガラス粒子Gの存在する頻度が適切な構成となる。このため、サイドマージン部17では、ガラス粒子Gによる柔軟性の上昇を抑えつつ、クラックの進展経路にガラス粒子Gが存在する確率を充分に高めることができる。
【0069】
積層セラミックコンデンサ10の断面に白色光を照射すると、ガラス粒子Gからの反射のため、サイドマージン部17が積層体16よりも白く見える。また、カバー部19がSiを含まない場合、カバー部19は特に黒く見える。ただし、一対のカバー部19が、一対のサイドマージン部17と同様の材料から構成されていてもよく、この場合、サイドマージン部17及びカバー部19が容量形成部18よりも白く見える。
【0070】
ここで、白く見えるのはSi濃度が高いからであり、図10及び図11にSi濃度の分布を示す比較例と比べると、本実施形態には分子量の大きいSiが含まれているため、容量形成部18に拡散されずにサイドマージン部17に残留するSiが多いことを示す。
【0071】
さらに、図3の断面図において、サイドマージン部17を側表面から容量形成部18に向かってY方向に見ていくと、側表面側の方が白く見え、容量形成部18側のサイドマージン部17は側表面側と比較すると白さが薄れているように見える。これは、容量形成部18へSiが少し拡散するためである。
【0072】
一方、図10及び図11にSi濃度の分布を示す比較例において、サイドマージン部17xに添加したSiOは容量形成部18xへかなり拡散するので、側表面側と容量形成部18側とで白さに大きな差が生まれる。これはサイドマージン部17xに残留するSiが少なくなるためである。
【0073】
よって、本実施形態のサイドマージン部17では、比較例のサイドマージン部17xよりもY方向に亘って白さを保つことができる。
【0074】
また、容量形成部18から一対のカバー部19(最外セラミック層22)にかけてSi濃度が不連続に増加し、より優れた耐湿性を得ることができる。また、この場合、容量形成部18と一対のカバー部19との境界において、Si濃度の差は、好ましくは4at%以上であり、より好ましくは5at%以上である。
【0075】
なお、第1内部電極12及び第2内部電極13のサイドマージン部17に接触する端部が若干酸化していてもよい。図15は、一部が酸化した内部電極を示す断面図である。ただし、第1内部電極12及び第2内部電極13の端部に形成された酸化領域40のY軸方向の寸法Wは平均で1μm以下であることが好ましい。酸化領域の寸法Wは、例えば断面走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)を用いて測定することができる。
【0076】
また、一対のサイドマージン部17が、Aサイトにバリウムを含み、Bサイトにチタンを含むペロブスカイト構造の多結晶体を含む場合、一対のサイドマージン部17では、Bサイトのチタンに対するSiの原子比が9at%以下であることが好ましい。Bサイトのチタンに対するSiの原子比が9at%より大きい場合、サイドマージン部17の形成に用いられる有機ケイ素化合物が過剰になり、焼結性が低下するおそれがあるためである。また、緻密性の向上の効果の観点から、Bサイトのチタンに対するSiの原子比は、好ましくは1at%以上であり、より好ましくは3at%以上である。
【0077】
各元素の定量分析は、例えばレーザアブレーション誘導結合プラズマ質量分析(Laser Ablation Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry:LA-ICP-MS)法により行うことができる。
【0078】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主としてサイドマージン部の形成方法及び構成の点で第1実施形態と相違する。図16は、第2実施形態における容量形成部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。図17は、第2実施形態におけるカバー部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
【0079】
第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサは、第1実施形態における一対のサイドマージン部17に代えて一対のサイドマージン部17bを有する。一対のサイドマージン部17bは、それぞれ主部31と、被覆部32と、を有する。被覆部32は、主部31の積層体16に対向する面を被覆し、積層体16と主部31との間にある。例えば、主部31は電極間セラミック層21と同様の材料から構成され、被覆部32はサイドマージン部17と同様に積層体16よりも高い濃度でSiを含有する。従って、図16に示すように、容量形成部18と一対の被覆部32との境界において、容量形成部18から一対の被覆部32にかけてSi濃度が不連続に増加する。また、図17に示すように、カバー部19と一対の被覆部32との境界において、カバー部19から一対の被覆部32にかけてSi濃度が不連続に増加する。
【0080】
第2実施形態の他の構成は第1実施形態と同様である。
【0081】
第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造に際しては、まず、第1実施形態と同様に、ステップS01にて、積層体16を準備する。
【0082】
次に、ステップS02にて、未焼成のサイドマージン部17に代えて未焼成の主部31を準備する。また、未焼成の主部31の積層体16に対向する面に、スプレーコートにより有機ケイ素化合物とバインダー、およびバリウムを含む化合物が混合した分散液を塗布する。ここで、バリウムを含む化合物とは、例えば、炭酸バリウムである。そして、ステップS02において、分散液が塗布された未焼成の主部31を、未焼成の積層体16の一対の側面Fにそれぞれ設ける。
【0083】
その後、第1実施形態と同様に、ステップS03にて焼成を行い、ステップS04にて第1外部電極14及び第2外部電極15を形成する。焼成の結果、分散液が塗布された部分に被覆部32が形成される。
【0084】
このようにして第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【0085】
第2実施形態によっても、第1実施形態と同様に、サイドマージン部17bに高い緻密性が得られ、優れた耐湿性を得ることができる。従って、サイドマージン部17bが薄い場合でも、外部からサイドマージン部17bの内側への水分の侵入を抑制し、第1内部電極12及び第2内部電極13の酸化を抑制することができる。
【0086】
また、特にカバー部19とサイドマージン部17bとの界面の近傍に優れた耐湿性が得られることで、カバー部19とサイドマージン部17bとの間に若干の剥がれが生じたとしても、第1内部電極12及び第2内部電極13の酸化を抑制することができる。
【0087】
主部31が第1実施形態のサイドマージン部17と同様の材料から構成されていてもよい。この場合、より優れた耐湿性を得ることができる。
【0088】
なお、積層体16と一対のサイドマージン部17又は17bとの境界の全体で積層体16から一対のサイドマージン部17又は17bにかけてSi濃度が不連続に増加している必要はない。積層体16と一対のサイドマージン部17又は17bとの境界の少なくとも一部分において、積層体16から一対のサイドマージン部17又は17bにかけてSi濃度が不連続に増加していれば、従来の積層セラミックコンデンサよりも優れた耐湿性を得ることができる。
【0089】
例えば、カバー部19と一対のサイドマージン部17又は17bとの境界において、カバー部19から一対のサイドマージン部17又は17bにかけてSi濃度が不連続に増加している場合、容量形成部18と一対のサイドマージン部17又は17bとの境界において、容量形成部18から一対のサイドマージン部17又は17bにかけてSi濃度が不連続に増加していなくてもよい。この場合、カバー部19とサイドマージン部17又は17bとの界面の近傍に優れた耐湿性が得られることで、カバー部19とサイドマージン部17又は17bとの間に若干の剥がれが生じたとしても、第1内部電極12及び第2内部電極13の酸化を抑制することができる。
【0090】
逆に、容量形成部18と一対のサイドマージン部17又は17bとの境界において、容量形成部18から一対のサイドマージン部17又は17bにかけてSi濃度が不連続に増加している場合、カバー部19と一対のサイドマージン部17又は17bとの境界において、カバー部19から一対のサイドマージン部17又は17bにかけてSi濃度が不連続に増加していなくてもよい。この場合、容量形成部18とサイドマージン部17又は17bとの界面の近傍に優れた耐湿性が得られることで、容量形成部18に含まれる第1内部電極12及び第2内部電極13の酸化を抑制することができる。
【0091】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、主としてカバー部の構成の点で第1実施形態と相違する。図18は、第3実施形態における容量形成部とカバー部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。図19は、第3実施形態におけるカバー部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。図20は、第3実施形態における容量形成部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
【0092】
本実施形態では、サイドマージン部17の形成だけでなく、カバー部19に含まれる最外セラミック層22の形成にも焼結助剤として有機ケイ素化合物が用いられており、サイドマージン部17及び最外セラミック層22にSiが含まれる。サイドマージン部17及び最外セラミック層22は、Siを主成分とするガラス粒子を含んでいてもよい。一方、容量形成部18に含まれる電極間セラミック層21の形成には有機ケイ素化合物が用いられておらず、電極間セラミック層21におけるSi濃度はサイドマージン部17におけるSi濃度及び最外セラミック層におけるSi濃度よりも低い。電極間セラミック層21に実質的にSiが含まれていなくてもよい。そして、図18に示すように、容量形成部18と一対のカバー部19との境界において、容量形成部18から一対のカバー部19にかけてSi濃度が不連続に増加する。また、図19に示すように、一対のカバー部19と一対のサイドマージン部17との間でSi濃度が等しい。また、図20に示すように、容量形成部18と一対のサイドマージン部17との境界において、容量形成部18から一対のサイドマージン部17にかけてSi濃度が不連続に増加する。容量形成部18と一対のカバー部19との境界において、Si濃度の差は、好ましくは4at%以上であり、より好ましくは5at%以上である。本開示で、境界からカバー部19側に向かって3μmまでの領域と境界から容量形成部18側に向かって3μmまでの領域において測定した際に、境界の一方の側と他方の側との間でSi濃度の差が4at%以上あれば、「Si濃度が不連続に増加する」に該当する。
【0093】
第3実施形態の他の構成は第1実施形態と同様である。
【0094】
第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサでは、カバー部19の焼結助剤として有機ケイ素化合物が用いられ、容量形成部18と一対のカバー部19との境界において、容量形成部18から一対のカバー部19にかけてSi濃度が不連続に増加する。このため、カバー部19に高い緻密性が得られ、優れた耐湿性を得ることができる。従って、カバー部19の内側への水分の侵入を抑制し、第1内部電極12及び第2内部電極13の酸化を抑制することができる。
【0095】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態は、主としてカバー部及びサイドマージン部の構成の点で第3実施形態と相違する。図21は、第4実施形態における容量形成部とカバー部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。図22は、第4実施形態におけるカバー部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。図23は、第4実施形態における容量形成部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
【0096】
本実施形態でも、サイドマージン部17の形成だけでなく、カバー部19に含まれる最外セラミック層22の形成にも焼結助剤として有機ケイ素化合物が用いられており、サイドマージン部17及び最外セラミック層22にSiが含まれる。一方、容量形成部18に含まれる電極間セラミック層21の形成には有機ケイ素化合物が用いられておらず、電極間セラミック層21におけるSi濃度はサイドマージン部17におけるSi濃度及び最外セラミック層におけるSi濃度よりも低い。電極間セラミック層21に実質的にSiが含まれていなくてもよい。また、最外セラミック層22におけるSi濃度はサイドマージン部17におけるSi濃度よりも高い。そして、図21に示すように、容量形成部18と一対のカバー部19との境界において、容量形成部18から一対のカバー部19にかけてSi濃度が不連続に増加する。また、図22に示すように、一対のカバー部19と一対のサイドマージン部17との境界において、一対のサイドマージン部17から一対のカバー部19にかけてSi濃度が不連続に増加する。また、図23に示すように、容量形成部18と一対のサイドマージン部17との境界において、容量形成部18から一対のサイドマージン部17にかけてSi濃度が不連続に増加する。
【0097】
第4実施形態の他の構成は第3実施形態と同様である。
【0098】
第4実施形態に係る積層セラミックコンデンサでも、カバー部19の焼結助剤として有機ケイ素化合物が用いられ、容量形成部18と一対のカバー部19との境界において、容量形成部18から一対のカバー部19にかけてSi濃度が不連続に増加する。このため、第4実施形態によっても第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0099】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態は、主としてカバー部及びサイドマージン部の構成の点で第3実施形態と相違する。図24は、第5実施形態における容量形成部とカバー部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。図25は、第5実施形態におけるカバー部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。図26は、第5実施形態における容量形成部とサイドマージン部との境界の近傍におけるSi濃度の分布を示す図である。
【0100】
本実施形態でも、サイドマージン部17の形成だけでなく、カバー部19に含まれる最外セラミック層22の形成にも焼結助剤として有機ケイ素化合物が用いられており、サイドマージン部17及び最外セラミック層22にSiが含まれる。一方、容量形成部18に含まれる電極間セラミック層21の形成には有機ケイ素化合物が用いられておらず、電極間セラミック層21におけるSi濃度はサイドマージン部17におけるSi濃度及び最外セラミック層におけるSi濃度よりも低い。電極間セラミック層21に実質的にSiが含まれていなくてもよい。また、サイドマージン部17におけるSi濃度は最外セラミック層22におけるSi濃度よりも高い。そして、図24に示すように、容量形成部18と一対のカバー部19との境界において、容量形成部18から一対のカバー部19にかけてSi濃度が不連続に増加する。また、図25に示すように、一対のカバー部19と一対のサイドマージン部17との境界において、一対のカバー部19から一対のサイドマージン部17にかけてSi濃度が不連続に増加する。また、図26に示すように、容量形成部18と一対のサイドマージン部17との境界において、容量形成部18から一対のサイドマージン部17にかけてSi濃度が不連続に増加する。
【0101】
第5実施形態の他の構成は第3実施形態と同様である。
【0102】
第5実施形態に係る積層セラミックコンデンサでも、カバー部19の焼結助剤として有機ケイ素化合物が用いられ、容量形成部18と一対のカバー部19との境界において、容量形成部18から一対のカバー部19にかけてSi濃度が不連続に増加する。このため、第5実施形態によっても第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0103】
[実施例及び比較例]
上記実施形態の実施例及び比較例として、サイドマージン(SM)部及びカバー部の構成が異なる積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。比較例1~2及び実施例3~25に係るサンプルのサイズはいずれも、X軸方向の寸法が0.6mmで、Y軸方向の寸法が0.3mmで、Z軸方向の寸法が0.3mmである0603サイズとした。また、サイドマージン部及びカバー部の主成分はチタン酸バリウムとした。
【0104】
比較例1~2では、サイドマージン部の形成に用いたサイドマージンシート(SMシート)の厚さを10μm又は20μmとし、焼結助剤に含まれるSi源としてSiOを用いた。実施例3~25では、サイドマージン部の形成に用いたサイドマージンシートの厚さを5μm、10μm、20μm又は30μmとし、焼結助剤に含まれるSi源として有機ケイ素化合物を用いた。
【0105】
なお、サイドマージンシートにおけるSi濃度は、比較例1~2並びに実施例3~4、7~9、13及び20の間で同一とし、実施例17では、それらよりも低くし、実施例5、10、14及び21では、実施例17よりも低くした。また、実施例6、11、18、22及び24では、実施例5、10、14及び21よりも低くし、実施例12、15~16、19、23及び25では、実施例6、11、18、22及び24よりも低くした。
【0106】
また、カバー部におけるSi濃度は、比較例1~2及び実施例1~8の間で同一とし、実施例25では、それらよりも高くし、実施例23及び24では、実施例25よりも高くし、実施例12及び22では、実施例23及び24よりも高くした。また、実施例11、19及び21では、実施例12及び22よりも高くし、実施例10及び18では、実施例11、19及び21よりも高くし、実施例20では、実施例10及び18よりも高くした。また、実施例9及び17では、実施例20よりも高くし、実施例13~15では、実施例9及び17よりも高くし、実施例16では、実施例13~15よりも高くした。
【0107】
比較例1~2及び実施例3~25について作製したサンプルについて下記の種々の特性を調査し、これらの結果から総合判定を行った。
【0108】
積層体及びサイドマージン部におけるSi濃度をレーザアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法により測定した。そして、積層体及びサイドマージン部におけるSiの分布の形態を調査し、積層体とサイドマージン部との境界におけるSi濃度の差を算出した。Siの分布については、図4及び図5に示す分布と同様の形態になっているものを「A」と評価し、図10及び図11に示す分布と同様の形態になっているものを「B」と評価した。また、図18図20に示す分布と同様の形態になっているものを「C」と評価し、図21図23に示す分布と同様の形態になっているものを「D」と評価し、図24図26に示す分布と同様の形態になっているものを「E」と評価した。Si濃度の差X1は、サイドマージン部内の容量形成部に最も近い測定点での濃度と容量形成部内のサイドマージン部に最も近い測定点での濃度との差である。Si濃度の差X2は、サイドマージン部内のカバー部に最も近い測定点での濃度とカバー部内のサイドマージン部に最も近い測定点での濃度との差である。Si濃度の差X3は、容量形成部内のカバー部に最も近い測定点での濃度とカバー部内の容量形成部に最も近い測定点での濃度との差である。
【0109】
内部電極の端部のY軸方向における酸化領域の寸法Wを測定し、その平均値から3段階評価を行った。酸化領域の寸法Wは、断面SEMを用いて測定した。実施例及び比較例毎に100個のサンプルの測定を行い、その平均値を算出し、平均値が0μm以上1μm以下のものを「A」と評価し、1μm超3μm以下のものを「B」と評価し、3μm超のものを「C」と評価した。
【0110】
電気特性としてLCRメータを用いて容量の測定を行った。そして、容量の設計値からの低下量が0%以上5%以下のものを「A」と評価し、5%超10%以下のものを「B」とし、10%以上のものを「C」と評価した。
【0111】
耐湿性の評価を行った。耐湿性の評価では、実施例及び比較例毎に100個のサンプルについて、温度85℃、湿度85%の環境で100時間保持し、保持後に容量の測定を行った。そして、容量の設計値からの低下量が0%以上5%以下であり、かつクラックが生じていないサンプルを良品、そうでないサンプルを不良品とし、不良品の発生割合が0%以上5%以下のものを「A」とし、5%超10%以下のものを「B」とし、10%以上のものを「C」と評価した。
【0112】
そして、酸化領域の寸法Wの評価が「A」又は「B」であり、電気特性の評価が「A」であり、耐湿性の評価が「A」であるものの総合評価を「A」とした。酸化領域の寸法Wの評価、電気特性の評価、耐湿性の評価の少なくとも一つに「C」があるものの総合評価を「C」とした。総合評価が「A」又は「C」でないものの総合評価を「B」とした。これらの結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1に示すように、実施例3~8では、いずれもSiの分布の形態が「A」であり、総合評価が「A」又は「B」であった。すなわち、実施例3~8では、サイドマージン部のSi源として有機ケイ素化合物が用いられ、積層体と一対のサイドマージン部との境界において、積層体から一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加しており、優れた耐湿性及び電気特性が得られた。また、実施例3と実施例4、7及び8とを比較すると、サイドマージンシートが厚い実施例4、7及び8において実施例3よりも優れた耐湿性及び電気特性が得られた。また、サイドマージンシートの厚さが等しい実施例4~6の間では、サイドマージンシートに含まれるSi濃度が高い実施例4及び5において実施例6よりも酸化領域の寸法Wが小さかった。
【0115】
更に、実施例3~11、13、14、17、18、20~22及び24と実施例12、15、16、19、23及び25とを比較すると、Si濃度の差X1が3at%よりも高い実施例3~11、13、14、17、18、20~22及び24において、実施例12、15、16、19、23及び25よりも酸化領域の寸法Wが小さかった。
【0116】
一方、比較例1~2では、いずれもSiの分布の形態が「B」であり、総合評価が「C」であった。すなわち、比較例1では、Si源としてSiOが用いられ、積層体と一対のサイドマージン部との境界において、積層体から一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が連続して増加しており、耐湿性及び電気特性が低かった。また、比較例2では、サイドマージンシートが厚いために耐湿性の評価が「B」であったが、サイドマージン部から積層体へのSiの拡散が生じていたため、電気特性が低かった。
【0117】
[その他の実施形態]
以上、実施形態について詳述したが、本開示は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。
【0118】
例えば、上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、本開示は積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【0119】
本開示の態様は、例えば、以下のとおりである。
【0120】
<1>
第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、前記第1軸と直交する第2軸に垂直であり、前記複数の内部電極の前記第2軸方向の端部が位置する一対の側面と、を有する積層体と、前記一対の側面を被覆する一対のサイドマージン部と、を具備し、
前記積層体と前記一対のサイドマージン部との境界の少なくとも一部分において、前記積層体から前記一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加する
積層セラミック電子部品。
【0121】
<2>
前記積層体は、
前記複数の内部電極と、前記複数のセラミック層のうちで前記複数の内部電極の間に位置する複数の電極間セラミック層と、を有する容量形成部と、
前記複数のセラミック層のうちで前記容量形成部を間に挟む一対の最外セラミック層を有するカバー部と、
を有し、
少なくとも前記容量形成部と前記一対のサイドマージン部との境界において、前記容量形成部から前記一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加する
<1>に記載の積層セラミック電子部品。
【0122】
<3>
前記容量形成部と前記一対のサイドマージン部との境界において、前記容量形成部から前記一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加し、
前記容量形成部から前記一対のカバー部にかけてSi濃度が不連続に増加する
<2>に記載の積層セラミック電子部品。
【0123】
<4>
前記積層体は、
前記複数の内部電極と、前記複数のセラミック層のうちで前記複数の内部電極の間に位置する複数の電極間セラミック層と、を有する容量形成部と、
前記複数のセラミック層のうちで前記容量形成部を間に挟む一対の最外セラミック層を有するカバー部と、
を有し、
少なくとも前記一対のカバー部と前記一対のサイドマージン部との境界において、前記一対のカバー部から前記一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加する
<1>に記載の積層セラミック電子部品。
【0124】
<5>
前記一対のカバー部と前記一対のサイドマージン部との境界においてのみ、前記一対のカバー部から前記一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加する
<4>に記載の積層セラミック電子部品。
【0125】
<6>
第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、前記第1軸と直交する第2軸に垂直であり、前記複数の内部電極の前記第2軸方向の端部が位置する一対の側面と、を有する積層体を具備し、
前記積層体は、
前記複数の内部電極と、前記複数のセラミック層のうちで前記複数の内部電極の間に位置する複数の電極間セラミック層と、を有する容量形成部と、
前記複数のセラミック層のうちで前記容量形成部を間に挟む一対の最外セラミック層を有するカバー部と、
を有し、
前記容量形成部と前記一対のカバー部との境界において、前記容量形成部から前記一対のカバー部にかけてSi濃度が不連続に増加する
積層セラミック電子部品。
【0126】
<7>
前記積層体は、前記第1軸と直交する第2軸に垂直であり、前記複数の内部電極の前記第2軸方向の端部が位置する一対の側面を有し、
前記一対の側面を被覆する一対のサイドマージン部を具備し、
前記一対のカバー部と前記一対のサイドマージン部との間でSi濃度が等しい
<6>に記載の積層セラミック電子部品。
【0127】
<8>
前記積層体は、前記第1軸と直交する第2軸に垂直であり、前記複数の内部電極の前記第2軸方向の端部が位置する一対の側面を有し、
前記一対の側面を被覆する一対のサイドマージン部を具備し、
前記一対のカバー部と前記一対のサイドマージン部との境界において、前記一対のサイドマージン部から前記一対のカバー部にかけてSi濃度が不連続に増加する
<6>に記載の積層セラミック電子部品。
【0128】
<9>
前記積層体は、前記第1軸と直交する第2軸に垂直であり、前記複数の内部電極の前記第2軸方向の端部が位置する一対の側面を有し、
前記一対の側面を被覆する一対のサイドマージン部を具備し、
前記一対のカバー部と前記一対のサイドマージン部との境界において、前記一対のカバー部から前記一対のサイドマージン部にかけてSi濃度が不連続に増加する
<6>に記載の積層セラミック電子部品。
【0129】
<10>
前記複数の内部電極の各々の前記端部に形成された酸化領域の前記第2軸方向の寸法は平均で1μm以下である
<1>乃至<9>のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
【0130】
<11>
前記一対のサイドマージン部は、セラミックの多結晶体を主成分とし、前記多結晶体中に分散され、前記多結晶体に対する合計体積率が1%以上20%以下である複数のガラス粒子を含み、
前記複数のガラス粒子のメディアン径は、0.20μm以上0.80μm以下であり、かつ前記多結晶体を構成する複数の結晶粒子のメディアン径の90%以上であり、
前記一対のサイドマージン部の断面では、格子状に区画された1μmの複数の領域それぞれに観察されるガラス粒子の平均個数が0.5個以上2個以下である
<1>乃至<10>のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
【0131】
<12>
前記一対のサイドマージン部が、Aサイトにバリウムを含み、Bサイトにチタンを含むペロブスカイト構造の多結晶体を含み、
前記一対のサイドマージン部では、Bサイトのチタンに対するSiの原子比が9at%以下である
<1>乃至<11>のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
【符号の説明】
【0132】
10 積層セラミックコンデンサ
11 セラミック素体
12 第1内部電極
13 第2内部電極
14 第1外部電極
15 第2外部電極
16 積層体
17、17b サイドマージン部
18 容量形成部
19 カバー部
21 電極間セラミック層
22 最外セラミック層
31 主部
32 被覆部
C 結晶粒子
F 側面
G ガラス粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
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図26