(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155806
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】床用化粧材
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20251002BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20251002BHJP
B32B 21/08 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
E04F15/02 A
B32B27/00 E
B32B21/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024232426
(22)【出願日】2024-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2024056881
(32)【優先日】2024-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】川村 純平
(72)【発明者】
【氏名】河西 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 拳士朗
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA16
2E220AA44
2E220AC01
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4F100JL11E
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高荷重な引っ掻き傷にも耐え得る耐傷性を有し、かつ、歩行時の快適性を有する床用化粧材を提供する。
【解決手段】木質基材と、クッション層と、化粧シートとが少なくともこの順に積層され、上記化粧シートは、上記クッション層を備える側にバッカー層を有し、上記クッション層の厚みが、0.5mm以上5mm以下であり、上記化粧シートの厚みが、300μm以上600μm以下であり、上記バッカー層の厚みが、100μm以上350μm以下であり、上記化粧シートを備える側の面にデュロメーター硬度計の圧子を当接させ、JIS K 7215:1986に準拠し測定したデュロメーター硬度の測定値の変化率(以下の式(1)の方法で導出)が2%以上6%以下である床用化粧材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材と、クッション層と、化粧シートとが少なくともこの順に積層され、
前記化粧シートは、前記クッション層を備える側にバッカー層を有し、
前記クッション層の厚みが、0.5mm以上5mm以下であり、
前記化粧シートの厚みが、300μm以上600μm以下であり、
前記バッカー層の厚みが、100μm以上350μm以下であり、
前記化粧シートを備える側の面にデュロメーター硬度計の圧子を当接させ、JIS K 7215:1986に準拠し測定したデュロメーター硬度の測定値の変化率(以下の式(1)の方法で導出)が2%以上6%以下である床用化粧材。
【数1】
(前記式(1)中、0sは、JIS K7215:1986に準拠して測定を行い、前記化粧シートを備える側の面にデュロメーター硬度計の圧子を当節させた状態で当接直後の硬度(0s値)を読み取ったものであり、15sは、JIS K7215:1986に準拠して測定を行い、前記化粧シートを備える側の面にデュロメーター硬度計の圧子を当節させた状態で15秒後の硬度(15s値)を読み取ったものである。)
【請求項2】
前記クッション層の厚みが、0.8mm以上3.5mm以下である請求項1に記載の床用化粧材。
【請求項3】
前記クッション層は、難燃剤を含有する請求項1又は2に記載の床用化粧材。
【請求項4】
前記化粧シートの厚みが、300μm以上580μm以下である請求項1又は2に記載の床用化粧材。
【請求項5】
前記化粧シートは、前記バッカー層を備える側と反対側に表面保護層を備える請求項1又は2に記載の床用化粧材。
【請求項6】
前記表面保護層は、2層以上の電離放射線硬化型樹脂層からなり、総厚が10μm以上50μ以下である請求項5に記載の床用化粧材。
【請求項7】
前記2層以上の電離放射線硬化型樹脂層は、それぞれの厚みが5μm以上25μm以下である請求項6に記載の床用化粧材。
【請求項8】
前記2層以上の電離放射線硬化型樹脂層は、前記バッカー層を備える側に対して最も反対側に位置する電離放射線硬化型樹脂層の硬度が最も高い請求項6に記載の床用化粧材。
【請求項9】
前記化粧シートは、前記バッカー層と前記表面保護層との間に透明性樹脂層を備え、前記透明性樹脂層は、前記透明性樹脂層の質量に対して、リン系難燃剤を5質量%以上15質量%以下で含有する請求項5に記載の床用化粧材。
【請求項10】
前記木質基材の前記クッション層を備える側と反対側にコルク層を更に備える請求項1又は2に記載の床用化粧材。
【請求項11】
前記化粧シートを備える側の面に凹凸形状を備える請求項1又は2に記載の床用化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、床用化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の床面に施工される床材として、表面に化粧シートが積層された床用化粧材が用いられている。
【0003】
床用化粧材に用いられる化粧シートとしては、耐傷性や歩行時の快適性を付与するため、硬質層と軟質層とを有するバッカー層を備えた化粧シートが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、基材シートのおもて面に1又は2以上の層が積層されている化粧シート中間体と、上記基材シートの裏面に合成樹脂製バッカー層とを有する床材用化粧シートであって、上記合成樹脂層製バッカー層は、硬質層と軟質層からなる2層以上で構成され、少なくとも基材シートに接する層は硬質層である、ことを特徴とする床材用化粧シートが開示されている。
【0005】
また、上記軟質層を発泡体に置き換えることで、歩行時の温感性等も踏まえたより快適性を重視した床用化粧材も提案されている。
【0006】
例えば、特許文献2には、木質基材上に、少なくとも発泡樹脂層及び化粧シートがこの順に積層された床用化粧材であって、(1)上記化粧シートは最下層に合成樹脂製バッカー層が積層されており、(2)上記合成樹脂製バッカー層は、JIS K7127に準拠した引張試験により得られた荷重-伸び曲線から求めた上降伏点荷重又は最大点荷重が90N以上であり、且つ、厚みが0.5mm未満であり、(3)上記発泡樹脂層は、JIS K7127に準拠した引張試験により得られた荷重-伸び曲線から求めた0.2%耐力が2N以上であり、上記荷重-伸び曲線において0.2%耐力を示す点での上記発泡樹脂層の伸びが5%以上であり、且つ、発泡倍率が2~20倍である、ことを特徴とする床用化粧材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-106654号公報
【特許文献2】特開2014-189979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年は、高荷重な引っ掻き傷にも耐え得る耐傷性、かつ、歩行時の快適性を有する床用化粧材が求められている。
【0009】
従来の床用化粧材では、上記課題について更なる改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討したところ、床用化粧材を構成するクッション層(軟質層)、化粧シート、及び、上記化粧シートが備えるバッカー層(硬質層)の厚みを特定の範囲とし、かつ、上記化粧シートを備える側の面のデュロメーター硬度の測定値の変化率を特定の範囲に制御することにより、上記課題を全て解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、木質基材と、クッション層と、化粧シートとが少なくともこの順に積層され、上記化粧シートは、上記クッション層を備える側にバッカー層を有し、上記クッション層の厚みが、0.5mm以上5mm以下であり、上記化粧シートの厚みが、300μm以上600μm以下であり、上記バッカー層の厚みが、100μm以上350μm以下であり、上記化粧シートを備える側の面にデュロメーター硬度計の圧子を当接させ、JIS K 7215:1986に準拠し測定したデュロメーター硬度の測定値の変化率(以下の式(1)の方法で導出)が2%以上6%以下である床用化粧材である。
【数1】
(上記式(1)中、0sは、JIS K7215:1986に準拠して測定を行い、上記化粧シートを備える側の面にデュロメーター硬度計の圧子を当節させた状態で当接直後の硬度(0s値)を読み取ったものであり、15sは、JIS K7215:1986に準拠して測定を行い、上記化粧シートを備える側の面にデュロメーター硬度計の圧子を当節させた状態で15秒後の硬度(15s値)を読み取ったものである。)
【0012】
本発明の床用化粧材において、上記クッション層の厚みが、0.8mm以上3.5mm以下であることが好ましい。
また、上記クッション層は、難燃剤を含有することが好ましい。
また、上記化粧シートの厚みが、300μm以上580μm以下であることが好ましい。
また、上記化粧シートは、上記バッカー層を備える側と反対側に表面保護層を備えることが好ましい。
また、上記表面保護層は、2層以上の電離放射線硬化型樹脂層からなり、総厚が10μm以上50μ以下であることが好ましい。
また、上記2層以上の電離放射線硬化型樹脂層は、それぞれの厚みが5μm以上25μm以下であることが好ましい。
また、上記2層以上の電離放射線硬化型樹脂層は、上記バッカー層を備える側に対して最も反対側に位置する電離放射線硬化型樹脂層の硬度が最も高いことが好ましい。
また、上記化粧シートは、上記バッカー層と上記表面保護層との間に透明性樹脂層を備え、上記透明性樹脂層は、上記透明性樹脂層の質量に対して、リン系難燃剤を5質量%以上15質量%以下で含有することが好ましい。
また、上記木質基材の上記クッション層を備える側と反対側にコルク層を更に備えることが好ましい。
また、上記化粧シートを備える側の面に凹凸形状を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、高荷重な引っ掻き傷にも耐え得る耐傷性を有し、かつ、歩行時の快適性を有する床用化粧材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の床用化粧材の一例を示す厚み方向の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の床用化粧材を構成する化粧シートの好ましい一例を表す厚み方向の断面図である。
【
図3】
図3は、電離放射線硬化型樹脂層の硬度の測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<床用化粧材>
本発明の床用化粧材は、木質基材と、クッション層と、化粧シートとが少なくともこの順に積層され、上記化粧シートは、上記クッション層を備える側にバッカー層を有し、上記クッション層の厚みが、0.5mm以上5mm以下であり、上記化粧シートの厚みが、300μm以上600μm以下であり、上記バッカー層の厚みが、100μm以上350μm以下であり、上記化粧シートを備える側の面にデュロメーター硬度計の圧子を当接させ、JIS K 7215:1986に準拠し測定したデュロメーター硬度の測定値の変化率(以下の式(1)の方法で導出)が2%以上6%以下である。
【数2】
(上記式(1)中、0sは、JIS K7215:1986に準拠して測定を行い、上記化粧シートを備える側の面にデュロメーター硬度計の圧子を当節させた状態で当接直後の硬度(0s値)を読み取ったものであり、15sは、JIS K7215:1986に準拠して測定を行い、上記化粧シートを備える側の面にデュロメーター硬度計の圧子を当節させた状態で15秒後の硬度(15s値)を読み取ったものである。)
【0016】
図1は、本発明の床用化粧材の一例を示す厚み方向の断面図である。
図1に示すように、床用化粧材1では、木質基材2と、クッション層3と、化粧シート4とがこの順に積層されている。
また、木質基材2のクッション層3と反対側には、コルク層5を備える。
【0017】
(デュロメーター硬度の測定値の変化率)
本発明の床用化粧材は、化粧シートを備える側の面にデュロメーター硬度計の圧子を当接させ、JIS K 7215:1986に準拠し測定したデュロメーター硬度の測定値の変化率が2%以上6%以下である。
デュロメーター硬度の測定値の変化率が上記範囲であることにより、床用化粧材に耐傷性、及び、歩行時の快適性を付与することができる。
【0018】
JIS K 7215:1986に準拠し測定したデュロメーター硬度の測定値の変化率(単にデュロメーター硬度の測定値の変化率ともいう)は、2.5%以上であることが好ましい。また、デュロメーター硬度の測定値の変化率は、5%以下であることが好ましく、4.5%以下であることがより好ましい。
【0019】
上記デュロメーター硬度の測定値の変化率の測定は、JIS K7215:1986に準拠して測定を行い、デュロメーター硬度計タイプA(株式会社テクロック製)を用いて実施する。
床用化粧材の最表面(化粧シートを備える側の表面)に、上記硬度計の圧子を当接させ、直後の数値(0s)と15秒後の数値(15s)を読み取る。この測定は、床用化粧材の任意の5点で測定を行い、直後の数値(0s)と15秒後(15s)の数値のそれぞれの平均値を算出する。
変化率は、以下の式を用いて算出する。
【数3】
【0020】
以下、床用化粧材の各構成について説明する。
【0021】
<木質基材>
本発明の床用化粧材は、木質基材を備える。
【0022】
上記木質基材としては、例えば、中密度木質繊維板(MDF)、高密度木質繊維板(HDF)、パーティクルボード(PB)が挙げられる。また、ラワン、針葉樹、植林木から得られた木材合板も挙げられる。
なかでも、表面品質(平滑性)及び耐傷性に優れる観点から、中密度木質繊維板(MDF)及び高密度木質繊維板(HDF)が好ましい。
【0023】
上記木質基材の厚みとしては特に限定されないが、例えば、2mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0024】
<クッション層>
本発明の床用化粧材は、クッション層を備える。
【0025】
上記クッション層を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMMA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0026】
上記クッション層は、発泡されていてもよい。
その場合、クッション層を形成する樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン-プロピレン共重合体、アクリル、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMMA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリメチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミド、ABS等が挙げられる。
【0027】
上記クッション層を形成する樹脂に含有される発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウム・アゾジカルボキシレート等のアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物、カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホニルアジド等のアジド化合物等が挙げられる。
これらの中でも熱分解型発泡剤であることが好ましい。
【0028】
上記発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。
【0029】
上記熱分解型発泡剤を使用した場合は、加熱することにより発泡させることができる。
加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡されたクッション層が形成され得る条件であれば限定されない。
【0030】
上記クッション層は必要に応じて、木粉、無機物等の添加物を含んでもよい。
上記無機物としては、例えば、シリカ、イルメナイト、カオリン、ベントナイト、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0031】
上記クッション層は必要に応じて、難燃剤を含有してもよい。
上記難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物や三酸化アンチモン、無機系リン酸アンモニウム、脱水性鉱物、膨張性黒鉛等が挙げられる。
上記クッション層に含有される難燃剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
上記クッション層に含有される難燃剤の添加量としては、上記クッション層の質量に対して、5質量%以上20質量%以下が好ましく、8質量%以上15質量%がより好ましい。
【0033】
上記クッション層の厚みは、クッション層の厚みが、0.5mm以上5mm以下である。
上記クッション層の厚みが上記範囲であることにより、デュロメーター硬度の測定値の変化率を特定の範囲に制御することができ、床用化粧材に耐傷性、及び、歩行時の快適性を付与することができる。
上記クッション層の厚みは、0.8mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましい。また、クッション層の厚みは、3.5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。
【0034】
<化粧シート>
本発明の床用化粧材は、化粧シートを備える。
【0035】
図2は、本発明の床用化粧材を構成する化粧シートの好ましい一例を表す厚み方向の断面図である。
図2に示すように、化粧シート4では、バッカー層11と、基材シート12と、絵柄層13と、透明性樹脂層14と、表面保護層15とがこの順に積層されている。
表面保護層15は、2層の電離放射線硬化型樹脂層16、17を有している。
化粧シートの各構成について説明する。
【0036】
(バッカー層)
上記化粧シートは、上記クッション層を備える側にバッカー層を有する。
上記化粧シートがバッカー層を有することにより、高荷重な引っ掻き傷にも耐え得る耐傷性、及び、耐衝撃性を付与することができる。
【0037】
上記バッカー層は、樹脂組成物を、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によりシート状(フィルム状)に成形することにより作製できる。
同時押出し製膜による場合には、2層以上からなる樹脂層を容易に形成できる。押出し製膜には、例えば、マルチマニホールドタイプやフィードブロックタイプのTダイを用いればよい。
【0038】
上記バッカー層を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン-プロピレン共重合体、アクリル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリメチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミド、ABS等が挙げられる。
これらの中でもポリプロピレンが好ましい。
【0039】
上記バッカー層は必要に応じて、木粉、無機物等の添加物を含んでもよい。
上記無機物としては、例えばシリカ、イルメナイト、カオリン、ベントナイト、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0040】
上記バッカー層の厚みは、100μm以上350μm以下である。
上記バッカー層の厚みは、耐衝撃性を好適に付与する観点から、120μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることが更に好ましい。
【0041】
(基材シート)
上記化粧シートは、基材シートを有することが好ましい。
【0042】
上記基材シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体樹脂、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂;アクリル変性ウレタン系樹脂、ポリエステル変性ウレタン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体変性ウレタン系樹脂等のポリウレタン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂等を挙げられる。
【0043】
上記基材シートの厚みとしては、例えば、30μm以上300μm以下とすることが好ましい。
【0044】
(絵柄層)
上記化粧シートは、絵柄層を備えることが好ましい。
【0045】
上記絵柄層としては、任意の柄を形成することができ、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0046】
上記絵柄層は、例えば、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の樹脂をバインダーとし、公知の顔料又は染料を着色剤として含有する印刷インキによる印刷を行うことで形成することができる。
【0047】
上記絵柄層を形成する方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷法が挙げられる。
【0048】
上記絵柄層の厚みは、例えば、0.1μm以上10μm以下とすることが好ましい。
【0049】
(透明性樹脂層)
上記化粧シートは、透明性樹脂層を備えることが好ましい。
【0050】
上記透明性樹脂層としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリメチルペンテン、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等が挙げられる。
【0051】
上記透明性樹脂層は、必要に応じて難燃剤を含有することができる。
【0052】
上記透明性樹脂層に含有される難燃剤としては、膨張黒鉛や水和金属系難燃剤、無機系リン酸塩系、ホスフィン酸金属塩系が挙げられるが、無機系リン酸塩系、ホスフィン酸金属塩系等のリン系難燃剤が好ましい。
上記透明性樹脂層に含有される難燃剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
上記無機系リン酸塩としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウムが挙げられる。
【0054】
上記ホスフィン酸金属塩としては特に限定されず、例えば、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ホスフィン酸亜鉛、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル-n-プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸亜鉛、メチレンビス(メチルホスフィン酸)カルシウム、メチレンビス(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メチレンビス(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メチレンビス(メチルホスフィン酸)亜鉛、フェニレン-1,4-ビス(メチルホスフィン酸)カルシウム、フェニレン-1,4-ビス(メチルホスフィン酸)マグネシウム、フェニレン-1,4-ビス(メチルホスフィン酸)アルミニウム、フェニレン-1,4-ビス(メチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、及び、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。
【0055】
上記透明性樹脂層に含有される難燃剤の含有量としては、上記透明性樹脂層の質量に対して、5質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましい。
また、上記透明性樹脂層に含有される難燃剤の含有量は、上記透明性樹脂層の質量に対して、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
上記透明性樹脂層に含有される難燃剤の含有量の下限が上記範囲であることにより、床用化粧材の難燃性及び火の燃え広がり難さをより一層向上することができる。また、上記透明性樹脂層に含有される難燃剤の含有量の上限が上記範囲であることにより、床用化粧材の白化傷の発生をより一層抑制することができる。
【0056】
上記透明性樹脂層の厚みとしては、例えば、10μm以上300μm以下とすることが好ましい。
【0057】
(表面保護層)
上記化粧シートは、上記バッカー層を備える側と反対側に表面保護層を備えることが好ましい。
【0058】
上記表面保護層としては、電離放射線硬化型樹脂を硬化した層(電離放射線硬化型樹脂層ともいう)であることが好ましい。
【0059】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、電離放射線、すなわち電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するもの、例えば、紫外線(UV)又は電子線(EB)の他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線を照射することにより硬化する樹脂である。具体的には、電離放射線硬化型樹脂としては、慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0060】
上記重合性モノマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、なかでも多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーであればよく、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましく挙げられる。これらの(メタ)アクリレートモノマーは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0061】
上記重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等の(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく挙げられる。
これらの重合性オリゴマーは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
上記表面保護層は、2層以上の電離放射線硬化型樹脂層からなることが好ましい。
【0063】
上記2層以上の電離放射線硬化型樹脂層は、バッカー層を備える側に対して最も反対側に位置する電離放射線硬化型樹脂層の硬度が最も高いことが好ましい。
【0064】
上記電離放射線硬化型樹脂層が3層以上である場合は、バッカー層を備える側に対して最も反対側に位置する電離放射線硬化型樹脂層から順に硬度が高いことが好ましい。
なお、電離放射線硬化型樹脂層の硬度は、電離放射線硬化型樹脂層を形成する電離放射線硬化型樹脂を適宜選択することにより調整することができる。
【0065】
上記電離放射線硬化型樹脂層の硬度は、表面皮膜物性試験機トライボインデンター(登録商標)「TI-950」(HYSITRON社製)を用いて測定されるナノインデンテーション硬さを意味する。
【0066】
なお、トライボインデンター(登録商標)「TI-950」を用いた電離放射線硬化型樹脂層のインデンテーション硬さ(HIT)の測定方法は次の通りである。
(1)
図3(a)に示されるバーコビッチ圧子を用いて、
図3(b)に示すように測定試料20にバーコビッチ圧子21を後述の押込み条件にて、荷重をかける方向22の矢印方向に押込み、表面にできた三角錐型の幾何学的形状から、「装置標準の方法で補正した接触投影面積(Ap)(mm
2)」を計算し、最大試験荷重(Fmax)を前記Apで除することにより硬さを求める。すなわち、HIT=Fmax/Apである。
(2)ここで、押込み条件は、室温(実験室環境温度)において、
図3(c)に示される通り最表面側(バッカー層を備える側に対して最も反対側)の電離放射線硬化型樹脂層については、先ず0~100μNまでの負荷を10秒間で加え(すなわち10μN/s)、次に100μN(Fmax)の負荷で5秒間保持し、最後に100~0μNまでの除荷を10秒間で行う。また、透明性樹脂層を備える側の電離放射線硬化型樹脂層については、先ず0~50μNまでの負荷を5秒間で加え(すなわち10μN/s)、次に50μN(Fmax)の負荷で5秒間保持し、最後に50~0μNまでの除荷を10秒間で行う。
通常、押し込み量(h)は100~150nm程度であるため、測定試料となる層の押し込み方向の厚さは1.0μm以上(好適には1.5μm以上)であればよい。Apは、24.50〔hmax-ε(hmax-hr)〕
2で算出される(ここで、εは圧子の幾何学的形状による補正係数であり、hrは除荷後の表面に残存している三角錐型の幾何学的形状の深さである。)。
(3)なお、硬さの測定に際し、測定試料20となる層以外の層の硬さの影響を回避するために測定対象の層の断面の硬さを測定する。すなわち、化粧シートを樹脂(冷間硬化タイプのエポキシ2液硬化樹脂)で包埋し、室温で24時間以上放置して硬化させた後、硬化した埋包サンプルを機械研磨して測定対象の層の断面を露出させ、測定対象の層の断面(充填剤等の微粒子が層中に含まれる場合には当該微粒子を避けた位置)にバーコビッチ圧子21を押込むことにより各層の断面の硬さを測定する。
(4)偏りが生じないように10箇所のインデンテーション硬さを測定し、10箇所の平均値を「最表面側の電離放射線硬化型樹脂層の硬度」、「透明性樹脂層を備える側の電離放射線硬化型樹脂層の硬度」とする。
【0067】
上記2層以上の電離放射線硬化型樹脂層は、耐傷性(化粧シート表面に形成される傷を抑制)の観点から、それぞれの厚みが5μm以上25μm以下であることが好ましい。
また、上記表面保護層は、総厚が10μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0068】
(その他)
上記化粧シートは、上述した各層間にプライマー層や、透明性接着剤層を適宜設けてもよい。
【0069】
上記プライマー層としては、特に限定されず、公知のプライマー剤から形成される層を用いることができる。
上記プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系樹脂)等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン-セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。
【0070】
上記プライマー層の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、0.5μm以上10μm以下とすることが好ましい。
【0071】
上記透明性接着剤層としては、特に限定されず、公知の接着剤を用いればよい。
例えば、ポリウレタン系、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリ酢酸ビニル系、ポリ塩化ビニル系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン-アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。
これら接着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
上記透明性接着剤層の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、例えば、0.5μm以上30μm以下とすることが好ましい。
【0073】
上記化粧シートを構成する各層は、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。
上記添加剤としては、例えば、シリコーン樹脂、ワックス、フッ素樹脂等の滑剤や、染料、顔料等の着色剤等や、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、難燃剤、消臭剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤、防カビ剤等が挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0074】
(凹凸形状)
本発明の床用化粧材は、化粧シートを備える側の面に凹凸形状を備えることが好ましい。
上記化粧シートを備える側の面に凹凸形状を備えることにより、意匠性を好適に付与することができる。
【0075】
上記凹凸形状としては、JIS B 0601(1982)に規定される中心線平均粗さRaが、1μm以上30μm以下の範囲であり、JIS B 0601(2001)に規定される最大高さRzが20μm以上200μm以下の範囲であるものが挙げられる。
【0076】
上記凹凸形状を形成する方法としては特に限定されず、例えば、熱によるエンボス加工、賦形シートによって凹凸形状を転写させる方法等が挙げられる。
熱によるエンボス加工としては、例えば、周知の枚葉、又は、輪転式のエンボス機によるエンボス加工を施す方法が挙げられる。
また、エンボスの柄模様としては、例えば、砂目、ヘアライン、梨地、木目版導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、万線条溝等が挙げられる。
【0077】
(化粧シートの厚み)
上記化粧シートの厚みは、300μm以上600μm以下である。
上記化粧シートの厚みが上記範囲であることにより、高荷重な引っ掻き傷にも耐え得る耐傷性や、耐衝撃を付与することができる。
上記化粧シートの厚みは、320μm以上が好ましく、580μm以下が好ましい。
なお、上記凹凸形状を有する場合、上記化粧シートの厚みは、上記凹凸形状が形成されていない箇所の最表層から、上記表面保護層とは反対側の表面までの厚みとする。
上記化粧シートを構成する各層に凹凸形状が形成されている場合についても同様(各層における凹凸形状が形成されていない箇所の表面から、表面保護層側とは反対側の表面まで)にして厚みを測定する。
【0078】
<コルク層>
本発明の床用化粧材は、上記木質基材の上記クッション層を備える側と反対側にコルク層を更に備えることが好ましい。
上記コルク層を備えることにより、床用化粧材に歩行時の快適性を好適に付与することができる。
【0079】
上記コルク層としては、コルク樫の樹皮のコルク組織を剥離及び加工した弾力性に富む素材であるいわゆる天然コルクだけでなく、コルクに似せて作られたいわゆる合成コルクのいずれも用いることができる。
また、上記コルク層としては、種々の市販品(コルクシート)を用いてもよい。
【0080】
上記コルク層の密度としては、例えば、0.1g/cm3以上0.5g/cm3以下が好ましい。
【0081】
上記コルク層の厚みとしては、1mm以上3mm以下が好ましい。
【0082】
<その他>
本発明の床用化粧材は、各層間に接着剤層を有してもよい。
上記接着剤層としては、上記化粧シートで例示したものを用いることができる。
【0083】
<製造方法>
本発明の床用化粧材の製造方法としては特に限定されず、上述した各層を、上記接着剤を介して積層する等の方法を用いればよい。
【0084】
本明細書では、以下の事項が開示されている。
【0085】
本開示(1)は、木質基材と、クッション層と、化粧シートとが少なくともこの順に積層され、上記化粧シートは、上記クッション層を備える側にバッカー層を有し、上記クッション層の厚みが、0.5mm以上5mm以下であり、上記化粧シートの厚みが、300μm以上600μm以下であり、上記バッカー層の厚みが、100μm以上350μm以下であり、上記化粧シートを備える側の面にデュロメーター硬度計の圧子を当接させ、JIS K 7215:1986に準拠し測定したデュロメーター硬度の測定値の変化率(以下の式(1)の方法で導出)が2%以上6%以下である床用化粧材である。
【数4】
(上記式(1)中、0sは、JIS K7215:1986に準拠して測定を行い、上記化粧シートを備える側の面にデュロメーター硬度計の圧子を当節させた状態で当接直後の硬度(0s値)を読み取ったものであり、15sは、JIS K7215:1986に準拠して測定を行い、上記化粧シートを備える側の面にデュロメーター硬度計の圧子を当節させた状態で15秒後の硬度(15s値)を読み取ったものである。)
本開示(2)は、上記クッション層の厚みが、0.8mm以上3.5mm以下である本開示(1)に記載の床用化粧材である。
本開示(3)は、上記クッション層が、難燃剤を含有する本開示(1)又は(2)に記載の床用化粧材である。
本開示(4)は、上記化粧シートの厚みが、300μm以上580μm以下である本開示(1)~(3)の何れかに記載の床用化粧材である。
本開示(5)は、上記化粧シートは、上記バッカー層を備える側と反対側に表面保護層を備える本開示(1)~(4)の何れかに記載の床用化粧材である。
本開示(6)は、上記表面保護層は、2層以上の電離放射線硬化型樹脂層からなり、総厚が10μm以上50μ以下である本開示(5)に記載の床用化粧材である。
本開示(7)は、上記2層以上の電離放射線硬化型樹脂層は、それぞれの厚みが5μm以上25μm以下である本開示(6)に記載の床用化粧材である。
本開示(8)は、上記2層以上の電離放射線硬化型樹脂層は、上記バッカー層を備える側に対して最も反対側に位置する電離放射線硬化型樹脂層の硬度が最も高い本開示(6)又は(7)に記載の床用化粧材である。
本開示(9)は、前記化粧シートは、前記バッカー層と前記表面保護層との間に透明性樹脂層を備え、前記透明性樹脂層は、前記透明性樹脂層の質量に対して、リン系難燃剤を5質量%以上15質量%以下で含有する本開示(5)~(8)の何れかに記載の床用化粧材である。
本開示(10)は、上記木質基材の上記クッション層を備える側と反対側にコルク層を更に備える本開示(1)~(9)の何れかに記載の床用化粧材である。
本開示(11)は、上記化粧シートを備える側の面に凹凸形状を備える本開示(1)~(10)の何れかに記載の床用化粧材である。
【実施例0086】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、この例によって限定されるものではない。
【0087】
実施例及び比較例に用いる材料として以下を準備した。
【0088】
(実施例1)
<化粧シートの作製>
60μm厚の着色ポリプロピレンフィルムからなる基材シートを準備し、その一方の面上に厚み2μmの絵柄層を印刷により形成し、さらに、絵柄層上に、2液硬化型ウレタン系ドライラミネート用接着剤(ポリエステルポリオール1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)との混合)を用いて厚み3μmの透明性接着剤層を形成した。
次いで、透明性接着剤層の上に透明性樹脂層(透明性接着剤層側がマレイン酸変性PP10μm、電離放射線硬化型樹脂層側はランダムPP130μmで、合計の厚み140μm)となるように押出ラミネート法で積層した。
上記透明性樹脂層にコロナ放電処理を施し、その処理面に表面保護層の被着性を上げるためアクリルウレタン系樹脂(主剤としてアクリルポリオールとウレタンポリオールとを含み、硬化剤として1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を含む2液硬化型ポリウレタン樹脂)をグラビア塗工法により塗工してプライマー層(厚み3μm)を形成した。上記プライマー層上に電離放射線硬化型樹脂層第1層として、ウレタンアクリレート系電子線硬化型樹脂Aをグラビア塗工法で塗工し、乾燥した後、更に電離放射線硬化型樹脂層第2層としてウレタンアクリレート系電子線硬化型樹脂Bを同様に塗工し、未硬化の電子線硬化型樹脂層に酸素濃度200ppm以下の環境下で電子線(加速電圧175KeV、照射量5Mrad)を照射して硬化させて形成した。なお、硬化後の電離放射線硬化型樹脂層第1層の厚みが10μm、電離放射線硬化型樹脂層第2層の10μmであった。
次いで、最表面側の電離放射線硬化型樹脂層(第2層)側から版深80μmの木目導管状エンボス版でエンボス加工を施して木目導管状の凹凸模様を形成した。その後、上記基材シートの裏面(絵柄層を有する側と反対側面)に、120μm厚のオレフィン系フィルムを貼り合わせてバッカー層を形成した。上記バッカー層にコロナ放電処理を施し、その処理面に厚み2μmのプライマー層を形成し、化粧シートを作製した。
【0089】
<床用化粧材の作製>
上記化粧シートと厚さ1mmの発泡ポリエチレンクッションを2液硬化型ウレタン系ドライラミネート用接着剤(ポリエステルポリオール1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)との混合)を用いて貼り合わせた。その際、クッションは両面にコロナ放電処理を施しておいたものを使用した。更に、貼り合わせたクッション-化粧シート複合体をエマルションタイプの2液型ウレタン系接着剤BA-10L/BA-11B(中央理化工業社製)を7g/尺角となるように木質基材上に塗布して形成された接着剤層を介して、木質基材(パーティクルボード)と貼り合わせ、床用化粧材を作製した。
【0090】
(実施例2~4)
化粧シートの作製において、透明性樹脂層を100μm(透明性接着剤層側がマレイン酸変性PP10μm、電離放射線硬化型樹脂層側はランダムPP90μmで、合計の厚み100μm)となるように調整し、バッカー層、及び、クッション層については表1に記載の厚みとなるようにそれぞれ調整した。その他の作製方法に関しては実施例1と同様に実施した。
【0091】
(実施例5~7)
化粧シートの作製において、透明性樹脂層にポリリン酸アンモニウムをそれぞれ表3の含有量となるよう配合し、透明性樹脂層の厚みを表3に記載の値となるように調整した。
また、クッション層に関しても、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムの合計含有量が表3の値となるよう添加し、クッション層の厚みを調整した。
また、バッカー層については、表3に記載の厚みとなるようにそれぞれ調整した。その他の作製方法に関しては実施例1と同様に実施した。
【0092】
(実施例8)
化粧シートの作製において、透明性樹脂層に膨張黒鉛を表3の含有量となるよう配合し、厚みが表3に記載の値となるように調整した。
また、クッション層に関しても、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムの合計含有量が表3の値となるよう添加し、厚みを調整して使用した。バッカー層については表3に記載の厚みとなるようにそれぞれ調整した。その他の作製方法に関しては実施例1と同様に実施した。
【0093】
(比較例1~12)
化粧シートの作製において、表1、2に記載の厚みの透明性樹脂層(透明性接着剤層側がマレイン酸変性PP10μm、合計の厚みが表1、2の記載となるように、電離放射線硬化型樹脂層側のランダムPPの厚みを調整)を準備した。
また、電離放射線硬化型樹脂層を第1層(厚み10μm)のみ塗工した。
更に、バッカー層、及び、クッション層については表1に記載の厚みとなるようにそれぞれ調整した。その他の作製方法に関しては実施例1と同様に実施した。
ただし、比較例1についてはクッション層を形成せず、比較例2についてはバッカー層を形成せずに作製した。
【0094】
(比較例13)
化粧シートの作製において、表3に記載の厚みの透明性樹脂層、バッカー層、及び、クッション層を準備した。また、電離放射線硬化型樹脂層を第1層のみ塗工した。その他の作製方法に関しては実施例1と同様に実施した。
【0095】
(比較例14)
化粧シートの作製において、表3に記載の厚みの透明性樹脂層、バッカー層、及び、クッション層を準備した。また、電離放射線硬化型樹脂層を第1層のみ塗工した。透明性樹脂層とクッション層には、それぞれ表3に記載の難燃剤を記載の含有量となるよう添加した。その他の作製方法に関しては実施例1と同様に実施した。
【0096】
<デュロメーター硬度の測定値の変化率>
デュロメーター硬度の測定値の変化率の測定は、JIS K7215:1986に準拠して測定を行い、デュロメーター硬度計タイプA(株式会社テクロック製)を用いて実施した。
作製した床用化粧材の最表面(化粧シートを備える側の表面)に、上記硬度計の圧子を当接させ、直後の数値(0s)と15秒後の数値(15s)を読み取った。この測定は、床用化粧材の任意の5点で測定を行い、直後の数値(0s)と15秒後の数値(15s)のそれぞれの平均値を算出した。
デュロメーター硬度の測定値の変化率は、以下の式を用いて算出した。その結果を表1、2に示した。
【数5】
【0097】
<歩行感評価>
作成した床用化粧材を人(25人)が実際に歩行した時の感覚により以下の基準で評価した。その結果を表1、2に示した。
(評価基準)
++:80%以上の人が歩きやすいと回答した
+:50%以上80%未満の人が歩きやすいと回答した
-:50%未満の人が歩きやすいと回答した
【0098】
<耐傷性評価>
耐傷性は家具などを引きずった場合を想定し、ハンベルガー試験機(Hamberger Flooring GmbH & Co.KG製、切削治具先端材質:タングステン)を用い評価を実施した。
試験は、荷重を42Nにセットし、試験台上に作製した床用化粧材を化粧シート側が試験面となるように両面テープで固定した。その後、上記試験機を押し込みながら手前方向へ引き寄せるようにスライドして実施した。
試験面を目視又は指触により抉れ傷、及び、実施例5~8、比較例13及び14については白化傷の状態を確認し、以下の基準で評価した。その結果を表1、2に示した。
(抉れ傷の評価基準)
+:化粧シートに抉れがなく柄を確認できる状態
-:化粧シートの抉れがあり、クッション層又は木質基材が露出している状態
(白化傷の評価基準)
++:化粧シートに試験機の切削治具が通過した跡が斜光にして且つ注視した際に見える状態
+:化粧シートに試験機の切削治具が通過した跡が白くうっすらと断続的に見える状態
-:化粧シートに試験機の切削治具が通過した跡が明らかな白線状で残っている状態
【0099】
<耐衝撃性評価>
耐衝撃性は例えば携帯やテレビのリモコンなどを床に落下させた場合を想定し、デュポン衝撃試験機(東洋精器製、落下物重量:500g重り、撃心突端半径:6.3mm)を用い評価を実施した。試験はJIS K 5600-5-3:1999を参考に、以下の方法で実施した。
試験用の重りの落下高さを50cmに設定し、作製した床用化粧材を化粧シート側が試験面となるように試験台上にしっかりと固定し、重りを所定の高さから自由落下させ、衝撃を加えた。
試験は1サンプル(床用化粧材)あたり5点(試験箇所が隣り合う場合1.5cm以上間隔を開けた)実施した。
評価方法は、作製した床用化粧材の試験面を目視又は斜光(試験面に平行に近い角度で光源を当てた際の斜め光)にて観察し、割れの有・無を確認し、以下の基準で評価した。その結果を表1、2に示した。
(評価基準)
++:5点中の割れの個数が1以下
+:5点中の割れの個数が2以上3以下
-:5点中の割れの個数が4以上
【0100】
<燃焼試験>
作製した床用化粧材を9cm×20cmの大きさに切り出し、試験片とした。
図4のように、市販の家庭用ヒーター31(ザイグルハンサム SJ-100(商品名))の台32の上に金属製の長方形の台33を置き、台の上に設置した金属製の枠34内に試験片35を置いて、ヒーター角45°、ヒーター出力ダイヤル4の条件で火の燃え広がり難さの試験を行った。
詳細には、試験片を、上記家庭用ヒーターを用いて2分間予熱した。次いで、
図4のように、試験片の長手方向のヒーター側の端部36にライター37で1分間加熱して着火して、試験片の長手方向に延焼させた。次いで、延焼状態を目視で観察し、以下のように燃焼範囲を評価した。
(評価基準)
A :着火しない
B :燃焼範囲が40%以内
C :燃焼範囲が40%超~75%以下
D :燃焼範囲が75%超~92%以下
E :全焼(92%超)
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
実施例における床用化粧材では、高荷重な引っ掻き傷にも耐え得る耐傷性を有し、かつ、歩行時の快適性を有し、更に耐衝撃性にも優れることが確認された。
また、実施例5~8における床用化粧材では、透明性樹脂層及びクッション層に特定量の難燃剤を含むことにより、高荷重な引っ掻き傷にも耐え得る耐傷性、歩行時の快適性、及び、耐衝撃性に加えて、白化傷を抑制することができ、かつ、難燃性にも優れることが確認された。