(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015587
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】AAVカプシドタンパク質を分析する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20250123BHJP
B01J 20/287 20060101ALI20250123BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20250123BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20250123BHJP
G01N 30/54 20060101ALI20250123BHJP
G01N 30/34 20060101ALI20250123BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20250123BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20250123BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20250123BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20250123BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20250123BHJP
C12Q 1/37 20060101ALI20250123BHJP
C12N 7/00 20060101ALI20250123BHJP
C12N 15/35 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
B01J20/287
B01J20/281 G
G01N30/26 A
G01N30/54 A
G01N30/34 E
G01N33/543 585
G01N33/48 A
G01N30/72 C
G01N27/62 V
G01N27/62 X
C12Q1/70
C12Q1/37
C12N7/00
C12N7/01
C12N15/35
【審査請求】有
【請求項の数】53
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024197431
(22)【出願日】2024-11-12
(62)【分割の表示】P 2022539170の分割
【原出願日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/956,681
(32)【優先日】2020-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/073,188
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/119,909
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501237039
【氏名又は名称】サレプタ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】クナル ダウド
(72)【発明者】
【氏名】ジュ リー
(72)【発明者】
【氏名】ウディタ デアルウィス
(57)【要約】
【課題】液体クロマトグラフィー、質量分析、および/または紫外線(UV)可視分光法を用いて、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子中のVP1、VP2、およびVPSカプシドタンパク質を特徴解析する方法を提供すること。
【解決手段】本方法は概して、(a)AAV粒子を液体クロマトグラフィーに供して変性し、次いで、VP1、VP2、およびVPSカプシドタンパク質を分離すること、および(b)工程(a)で産生された分離VP1、VP2、およびVPSカプシドタンパク質をUVおよび質量分析に供して、AAV粒子中のVP1、VP2、およびVPSカプシドタンパク質の比および質量を決定する工程を含む。別の態様では、本開示は、翻訳後修飾を含むAAV組成物を提供する。本開示はまた、液体クロマトグラフィー質量分析を用いて、AAV組成物の純度を特性解析する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AAV.Rh74のN57、N255、N256、およびN263のうちの一つもしくは複数、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、もしくはAAVrh10の同等の残基に脱アミド化を含むAAVカプシドを含むAAV組成物。
【請求項2】
AAV.Rh74のM437、M473、M526、M544、M560、およびM637のうちの一つまたは複数、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、CAAV11、AAV12、AAV13、もしくはAAVrh10の同等の残基に酸化を含むAAVカプシドを含むAAV組成物。
【請求項3】
AAV組成物中の宿主細胞タンパク質を特性解析する方法であって、
前記組成物からウイルスカプシドタンパク質を免疫沈降することと、
残留宿主細胞タンパク質を消化することと、
前記消化されたタンパク質を、液体クロマトグラフィー四重極飛行時間質量分析法(LC-QTOF-MS)を用いて分析して、宿主細胞タンパク質を同定することと、を含む方法。
【請求項4】
前記免疫沈降が、AAV組成物を、抗AAV VP1抗体、抗AAV VP2抗体、抗AAV VP3抗体、またはそれらの組合せと共にインキュベートすることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記消化された宿主細胞タンパク質を反復MS/MSにより分析することをさらに含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記消化が溶液中で行われる、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記消化が、約60℃から約80℃の温度で実施される急速な消化を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記温度が約70℃である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記AAV組成物を、既知の量の少なくとも一つの既知のタンパク質標品でスパイクすることをさらに含む、請求項3~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも一つの既知のタンパク質標品が、ヒトまたはウシのタンパク質標品である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一つのタンパク質標品と比較して、前記消化された宿主細胞タンパク質の量を定量化することをさらに含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記液体クロマトグラフィーが、逆相液体クロマトグラフィーである、請求項3~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記逆相液体クロマトグラフィーが、C18カラム、C8カラム、またはC4カラムを用いて実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記液体クロマトグラフィーが、C8カラムを用いて実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記カラムが、約1.2~3.5μmの粒子を含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記カラムが、約1.7μmまたは約1.8μmの粒子を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記カラムが、約50mmから約300mmの長さであり、約1mmから約4.6mmの内径を有する、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記カラムが、約150mmの長さであり、約2.1mmの内径を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記液体クロマトグラフィーが、約40℃から約50℃で実施される、請求項3~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記液体クロマトグラフィーが、約45℃で実施される、請求項3~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記液体クロマトグラフィーが、ギ酸を含む第一の移動相を含む、請求項3~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第一の移動相が、体積で約0.05%から約0.15%のギ酸を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第一の移動相が、体積で約0.1%のギ酸を含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記液体クロマトグラフィーが、アセトニトリルと水との混合物中にギ酸を含む第二の移動相を含む、請求項3~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第二の移動相が、体積で約0.05%から約0.15%のギ酸を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第二の移動相が、体積で約0.1%のギ酸を含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記第二の移動相が、体積で約80~95%のアセトニトリルを含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第二の移動相が、体積で約90%のアセトニトリルおよび体積で10%の水を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記液体クロマトグラフィーにおいて、前記第一の移動相と前記第二の移動相との組合せに比較して、前記第二の移動相のパーセンテージが経時的に増加される、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第二の移動相のパーセンテージが、約2%から約50%に増加される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第二の移動相のパーセンテージが、約120分間にわたって体積で約2%から約50%に増加される、請求項30に記載の方法。。
【請求項32】
前記第二の移動相のパーセンテージが、その後、体積で100%に約5分間で増加される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第二の移動相のパーセンテージが、その後、体積で100%で約3分間維持される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第二の移動相のパーセンテージが、その後、体積で約2%に約2分間で減少される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記質量分析が、約125~350Vのフラグメンター電圧を用いて実施される、請求項3~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記質量分析が、約135Vのフラグメンター電圧を用いて実施される、請求項3~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記質量分析が、約3~6kVのキャピラリー電圧を用いて実施される、請求項3~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記質量分析が、約4kVのキャピラリー電圧を用いて実施される、請求項3~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
アミノ酸修飾を有する亜集団を含有するカプシドタンパク質の不均一な群を含み、前記アミノ酸修飾が翻訳後修飾である、組換えAAV(rAAV)。
【請求項40】
前記修飾が、脱アミド化または酸化である、請求項39に記載のrAAV。
【請求項41】
質量分析および/または紫外線(UV)可視分光法によって測定された際に、前記不均一な群が、AAV.rh74のN57、N255、N256、およびN263のうちの一つもしくは複数、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、もしくはAAVrh10の同等の残基に、脱アミド化アスパラギン(N)を含む、請求項39または40に記載のrAAV。
【請求項42】
前記不均一な群が、AAV.rh74カプシドのN57で脱アミド化されたカプシドタンパク質を70%、60%、50%、40%、30%、20%、または15%未満含む、請求項41に記載のrAAV。
【請求項43】
前記不均一な基が、AAV.rh74カプシドのN57で脱アミド化されたカプシドタンパク質を15%未満含む、請求項41に記載のrAAV。
【請求項44】
前記不均一な基が、AAV.rh74のN254および/またはN255で脱アミド化されたカプシドタンパク質を70%、60%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、または5%未満含む、請求項41に記載のrAAV。
【請求項45】
前記不均一な群が、N263で脱アミド化されたカプシドタンパク質を70%、60%、50%、40%、30%、20%未満含む、請求項41に記載のrAAV。
【請求項46】
質量分析および/または紫外線(UV)可視分光法によって測定された際に、前記不均一な群が、AAV.Rh74のM437、M473、M526、M544、M560、およびM637のうち一つもしくは複数、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、CAAV11、AAV12、AAV13、またはAAVrh10の同等の残基に、酸化メチオニンを含む、
請求項39または40に記載のrAAV。
【請求項47】
前記不均一な群が、M437で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または1%未満含む、請求項46に記載のrAAV。
【請求項48】
前記不均一な群が、M473で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または1%未満含む、請求項46に記載のrAAV。
【請求項49】
前記不均一な群が、M526で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または3%未満含む、請求項46に記載のrAAV。
【請求項50】
前記不均一な群が、M544で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または2%未満含む、請求項46に記載のrAAV。
【請求項51】
前記不均一な群が、M560で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または2%未満含む、請求項46に記載のrAAV。
【請求項52】
前記不均一な群が、M637で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または1%未満含む、請求項46に記載のrAAV。
【請求項53】
前記不均一な群が、配列番号1~5のいずれか一つのペプチド配列、または他のAAV血清型のその同等のペプチド配列内に、脱アミド化アスパラギン(N)を含む、請求項39~41のいずれか一項に記載のrAAV。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月3日出願の米国仮特許出願第62/956,681号、2020年9月1日出願の米国仮特許出願第63/073,188号、および2020年12月1日出願の米国仮特許出願第63/119,909号の米国特許法第119条(e)下の優先権を主張するものであり、これらのそれぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、液体クロマトグラフィーおよび質量分析を用いてアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子中のVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質、ならびにAAV組成物の純度を特性解析する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は急速に、遺伝子治療を送達するための最も広く用いられる媒体の一つとなりつつある。広範な標的組織の形質導入の効率性の高さとともに優れた安全性プロファイルにより、AAVは、遺伝子治療に最も広く使用されるプラットフォームとされてきた。AAVは、パルボウイルス科に属する小さなウイルスである。ウイルスは、約4.7キロベースの線状の一本鎖DNAゲノムを含有する、非エンベロープ型の二十面体カプシドからなる。AAVは一般的に、適切な宿主細胞で組換えにより発現される。しかし、組換えAAVは、宿主細胞溶解物由来のタンパク質によって汚染されることがある。
【0004】
AAVカプシドは、VP1、VP2、およびVP3タンパク質の混合物を含むが、これらのタンパク質は、選択的スプライシングおよび翻訳によって単一のウイルスCap遺伝子から産生され、自己組織化してカプシドを形成する。AAVカプシドタンパク質は、ウイルスの感染性、組織指向性、および効力に重要な役割を果たし、カプシドタンパク質の質量および比を完全に特性解析する能力は、遺伝子治療用のAAVの商業製造のためにますます重要となりつつある。
【0005】
具体的には、VPの化学量論が、ウイルスベクターの感染性に極めて重要である。例えば、VP1/VP2比のバランスがとれていなかった場合であっても、高レベルのVP3カプシドは、形質導入効率の不良および効力の低下と負の関係があった。(Gene Therapy、volume 25、pages 415-424(2018))。製造で得た構造タンパク質VP1、VP2、およびVP3の比は、広い範囲、例えば1:1:5から1:1:20で変動し得ることから(Biotechnol Adv.,26(1):73-88(2008))、三つのカプシドタンパク質間の比の正確な測定は、AAVベクターの品質管理において重要である。しかし、現在の方法では、カプシドタンパク質の質量の測定を試みたものの、各VPの化学量論を決定することができなかった(WO2018/035059)。そのため、AAVカプシドタンパク質の比および修飾と、rAAV組成物の純度とをより正確に特性解析するための堅牢な方法が、遺伝子治療業界で求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、液体クロマトグラフィーおよび質量分析を用いて、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子中のVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質を特性解析する方法を提供する。本明細書に開示される方法は、AAV粒子中のVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の比、ならびに/またはVPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質のうち一つまたは複数の質量を決定するために使用される。
【0007】
一部の態様では、本開示は、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子中のVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の比を決定する方法を提供する。本方法は、AAV粒子を約70℃から約90℃で液体クロマトグラフィーに供するステップを含み、ここでは、VP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の質量および比は、質量分析および/または紫外線(UV)可視分光法によって決定される。一部の態様では、カプシドタンパク質の個々の質量は、質量分析によって測定される。一部の態様では、AAV粒子上のカプシドは、液体クロマトグラフィーのカラム内でVP1、VP2、およびVP3タンパク質のそれぞれに変性される。一部の態様では、カプシドタンパク質は、液体クロマトグラフィーによって分離される。
【0008】
一部の態様では、本方法は、質量分析を用いて、AAV粒子中のVPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質のうち一つまたは複数の質量を決定することをさらに含む。
【0009】
一部の態様では、VP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の相対量は、VP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の紫外線(UV)クロマトグラムを分析することによって決定される。一部の態様では、液体クロマトグラフィーは逆相液体クロマトグラフィーである。一部の態様では、AAV粒子はAAVrh74である。
【0010】
一部の態様では、クロマトグラフィーは、水中にトリフルオロ酢酸を含む第一の移動相を使用する。一部の態様では、クロマトグラフィーは、アセトニトリルと水との混合物中にトリフルオロ酢酸を含む第二の移動相を使用する。一部の態様では、クロマトグラフィーにおいて、第一の移動相と第二の移動相との組合せにおける第二の移動相のパーセンテージは、経時的に増加する。
【0011】
一部の態様では、質量分析は、約125~350Vのフラグメンター電圧を含む。
【0012】
脱アミド化は、タンパク質の活性および安定性に著しい影響を与えることが知られている、タンパク質に観察される一般的な翻訳後修飾(PTM)の一つである。脱アミド化は通常、アスパラギンのアミド側鎖の加水分解によって引き起こされ、アスパラギン酸とイソアスパラギン酸との混合物を形成する。一部の態様では、脱アミド化は、ウラシルへのシトシンの加水分解反応であり、その過程でアンモニアを放出する。これは重亜硫酸塩の使用を通してインビトロで起こり得、重亜硫酸塩は、シトシンを脱アミノ化するが5-メチルシトシンを脱アミノ化しない。一部の態様では、5-メチルシトシンの脱アミノ化は、チミンおよびアンモニアをもたらす。一部の態様では、グルタミン残基はまた、脱アミド化を受けてグルタミン酸とイソグルタミン酸との混合物を形成するが、グルタミン残基は、アスパラギンと比較して脱アミド化に対する感受性が有意に低い。一部の態様では、グアニンの脱アミノ化は、キサンチンの形成をもたらす。一部の態様では、アデニンの脱アミド化は、ヒポキサンチンの形成をもたらす。カプシドタンパク質の脱アミド化は、AAV製剤の安定性および活性に影響を与える可能性がある。
【0013】
本開示の一部の態様では、質量分析が、脱アミド化などの翻訳後修飾を研究するために用いられる。一部の態様では、タンパク質は、グアニジンおよび尿素などの試薬を用いて変性させることができる。変性タンパク質は、1,4-ジチオスレイトール(DTT)またはTris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TECP)を用いて還元され、ジスルフィド結合を破壊する。次いで、還元ジスルフィド結合は、ヨードアセトアミドを用いてアルキル化される。変性およびアルキル化の工程は、確実にタンパク質が展開されてそれゆえにプロテアーゼに完全にアクセス可能となるようにするために実施される。次いで、変性および還元されたタンパク質を、トリプシンなどのいくつかのプロテアーゼのうちの一つを用いて消化する。消化されたペプチドは、RP-HPLCを用いてHPLC/UPLC上で分離される。次いで、分離されたペプチドが、質量分析計、典型的にはQ-ToFまたはOrbitrap上で、そのm/z比を用いて検出される。適切なソフトウェアおよびデータベースを用いて、ペプチドが特定される。脱アミド化は、ペプチドの理論値と比較して、およそ1Daの増加として特定される。
【0014】
一部の態様では、本方法は、VPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質のうち少なくとも一つの翻訳後修飾を決定することをさらに含む。一部の態様では、本方法は、VPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質のうち少なくとも一つの翻訳後のリン酸化またはアセチル化をさらに含む。
【0015】
本開示はまた、AAV組成物中の宿主細胞タンパク質を特性解析する方法を提供し、本方法は、上記組成物からウイルスカプシドタンパク質を免疫沈降すること、残留宿主細胞タンパク質を消化すること、および消化されたタンパク質を液体クロマトグラフィー四重極飛行時間質量分析法(LC-QTOF-MS)で分析して宿主細胞タンパク質を特定することを含む。
【0016】
一部の態様では、免疫沈降は、AAV組成物を、抗AAV VP1抗体、抗AAV VP2抗体、抗AAV VP3抗体、またはそれらの組合せと共にインキュベートすることを含む。
【0017】
一部の態様では、本方法は、消化された宿主細胞タンパク質を反復MS/MSで分析することをさらに含む。
【0018】
一部の態様では、消化は溶液中で行われる。一部の態様では、消化は、約60℃から約80℃の温度で実施される。一部の態様では、消化は、約70℃で実施される。
【0019】
一部の態様では、本方法は、既知の量の少なくとも一つの既知のタンパク質標品でAAV組成物をスパイクすることをさらに含む。一部の態様では、少なくとも一つの既知のタンパク質標品は、ヒトまたはウシのタンパク質標品である。一部の態様では、本方法は、少なくとも一つのタンパク質標品と比較して、消化された宿主細胞タンパク質の量を定量化することをさらに含む。
【0020】
一部の態様では、液体クロマトグラフィーは逆相液体クロマトグラフィーである。一部の態様では、逆相液体クロマトグラフィーは、C18カラム、C8カラム、またはC4カラムを用いて実施される。一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、C8カラムを用いて実施される。一部の態様では、カラムは、約1.2~3.5μmの粒子を含む。一部の態様では、カラムは、約1.7μmまたは約1.8μmの粒子を含む。一部の態様では、カラムは、約50mmから約300mmの長さであり、約1mmから約4.6mmの内径を有する。一部の態様では、カラムは約150mmの長さであり、約2.1mmの内径を有する。
【0021】
一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、約40℃から約50℃で実施される。一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、約45℃で実施される。
【0022】
一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、ギ酸を含む第一の移動相を含む。一部の態様では、第一の移動相は、体積で約0.05%から約0.15%のギ酸を含む。一部の態様では、第一の移動相は、体積で約0.1%のギ酸を含む。
【0023】
一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、アセトニトリルと水との混合物中のギ酸を含む第二の移動相を含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約0.05%から約0.15%のギ酸を含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約0.1%のギ酸を含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約80~95%のアセトニトリルを含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約90%のアセトニトリルと、体積で約10%の水とを含む。
【0024】
一部の態様では、液体クロマトグラフィーにおいて、第一の移動相と第二の移動相との組合せに比較して、第二の移動相のパーセンテージは経時的に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約2%から約50%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約120分間にわたって体積で約2%から約50%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、その後、約25分間にわたって体積で100%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、その後、体積で100%で約1分間維持される。一部の態様では、第二の移動相は、その後、約4分間にわたって体積で約2%に低減される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、その後、約5分間にわたって体積で100%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、その後、体積で100%で約3分間維持される。一部の態様では、第二の移動相は、その後、約2分間にわたって体積で約2%に低減される。
【0025】
一部の態様では、質量分析は、約125~350Vのフラグメンター電圧を用いて実施される。一部の態様では、質量分析は、約135Vのフラグメンター電圧を用いて実施される。一部の態様では、質量分析は、約3~6kVのキャピラリー電圧を用いて実施される。一部の態様では、質量分析は、約4kVのキャピラリー電圧を用いて実施される。
【0026】
本開示の一部の態様は、アミノ酸改変を有する亜集団を含有する不均一なカプシドタンパク質群を含む組換えAAV(rAAV)を対象とする。一部の態様では、修飾は脱アミド化または酸化である。
【0027】
一部の態様では、質量分析および/または紫外線(UV)可視分光法によって測定された際に、上記不均一な群は、AAV.rh74のN57、N255、N256、およびN263のうちの一つもしくは複数、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、もしくはAAVrh10の同等の残基に、脱アミド化アスパラギン(N)を含む。別の実施形態では、上記不均一な群は、配列番号1~5のいずれか一つのペプチド配列、または他のAAV血清型のその同等のペプチド配列内に、脱アミド化アスパラギン(N)を含む。
【0028】
一部の態様では、上記不均一な群は、AAV.rh74カプシドのN57で脱アミド化されたカプシドタンパク質を70%、60%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、または5%未満含む。一部の態様では、上記不均一な群は、AAV.rh74カプシドのN57で脱アミド化されたカプシドタンパク質を15%未満含む。一部の態様では、上記不均一な群は、AAV.rh74カプシドのN254および/またはN255で脱アミド化されたカプシドタンパク質を70%、60%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、または5%未満含む。一部の態様では、上記不均一な群は、N263で脱アミド化されたカプシドタンパク質を70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、または5%未満含む。
【0029】
一部の態様では、質量分析および/または紫外線(UV)可視分光法によって測定された際に、上記不均一な群は、AAV.Rh74のM437、M473、M526、M544、M560、およびM637のうち一つもしくは複数、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、CAAV11、AAV12、AAV13、またはAAVrh10の同等の残基に、酸化メチオニンを含む。一部の態様では、上記不均一な群は、M437で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または1%未満含む。一部の態様では、上記不均一な群は、M473で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または1%未満含む。一部の態様では、上記不均一な群は、M526で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または3%未満含む。一部の態様では、上記不均一な群は、M544で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または2%未満含む。一部の態様では、上記不均一な群は、M560で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または2%未満含む。一部の態様では、上記不均一な群は、M637で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または1%未満含む。
【0030】
当業者は、本明細書に記載された発明が、具体的に記載されたもの以外の変形および改変の対象となることを認識するものとなる。本明細書に記載される発明は、そのような変形および改変のすべてを含むことが理解されよう。本発明はまた、個別にまたは集合的に、本明細書に言及または標示されるすべてのそのようなステップ、特徴、組成物、および化合物、ならびにこれらのステップまたは特徴のうちの任意の二つ以上の任意のおよびすべての組合せを含む。
(項目1)
アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子中のVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質を特性解析する方法であって、
前記AAV粒子を、約70℃から約90℃の液体クロマトグラフィーに供することを含み、
前記VP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の比が、質量分析および/または紫外線(UV)可視分光法によって決定される、方法。
(項目2)
VPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の個々の質量が、前記質量分析によって決定される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記VP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の比が、前記VP1、VP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の紫外線クロマトグラム(UV)を比較することによって決定される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記液体クロマトグラフィーが、逆相液体クロマトグラフィーである、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記逆相液体クロマトグラフィーが、C18カラム、C8カラム、またはC4カラムを用いて実施される、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記液体クロマトグラフィーが、C8カラムを用いて実施される、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記カラムが、約1.2~3.5μmの粒子を含む、項目5または6に記載の方法。
(項目8)
前記カラムが、約1.7μmまたは約1.8μmの粒子を含む、項目5~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記カラムが、約50mmから約300mmの長さであり、約1mmから約4.6mmの内径を有する、項目5~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記クロマトグラフィーカラムが、約100mmの長さであり、約2.1mmの内径を有する、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記AAV粒子が、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh10、AAVrh74のものであるか、または任意の天然、組換え、または合成のAAV粒子である、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記AAVが血清型AAVrh74のものである、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記液体クロマトグラフィーが、約75℃から約85℃で実施される、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記液体クロマトグラフィーが約80℃で実施される、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記液体クロマトグラフィーが、トリフルオロ酢酸を含む第一の移動相を含む、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記第一の移動相が、体積で約0.05から約0.15%のトリフルオロ酢酸を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記第一の移動相が、体積で約0.1%のトリフルオロ酢酸を含む、項目15または16に記載の方法。
(項目18)
前記液体クロマトグラフィーが、アセトニトリルと水との前記混合物中にトリフルオロ酢酸を含む第二の移動相を含む、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記第二の移動相が、体積で約0.05から約0.15%のトリフルオロ酢酸を含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記第二の移動相が、体積で約0.1%のトリフルオロ酢酸を含む、項目18または19に記載の方法。
(項目21)
前記第二の移動相が、体積で約80~95%のアセトニトリルを含む、項目18~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記第二の移動相が、体積で約90%のアセトニトリルおよび10%の水を含む、項目18~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記液体クロマトグラフィーにおいて、前記第一の移動相と前記第二の移動相との組合せに比較して、前記第二の移動相のパーセンテージが経時的に増加される、項目18~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記第二の移動相のパーセンテージが、体積によって約10%から約40%に、次いで約40%から約45%に増加される、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記第二の移動相のパーセンテージが、約3分間にわたって体積で約10%から約40%に、次いで約30分間にわたって約40%から約45%に増加される、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記第二の移動相のパーセンテージが、前記第一の移動相と前記第二の移動相との前記組合せにおいて、その後、約1分間にわたって体積で100%に増加される、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記第二の移動相のパーセンテージが、前記第一の移動相と前記第二の移動相との前記組合せにおいて、その後、約1分間にわたって体積で10%に低減される、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記質量分析が、約125~350Vのフラグメンター電圧を用いて実施される、項目1~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記質量分析が、約175Vのフラグメンター電圧を用いて実施される、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記質量分析が、約3~6kVのキャピラリー電圧を用いて実施される、項目1~2
9のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記質量分析が、約5kVのキャピラリー電圧を用いて実施される、項目1~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記特性解析が、VPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質のうち少なくとも一つの翻訳後修飾を決定することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目33)
前記翻訳後修飾が、アミノ酸の欠落、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化、脱アミド化、酸化、ホルミル化、ヒドロキシル化、メチル化、および硫酸化のうちの一つまたは複数を含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記翻訳後修飾が、N末端メチオニンの欠落、脱アミド化、トレオニンの欠落、リン酸化、およびアセチル化のうちの一つまたは複数を含む、項目32に記載の方法。
(項目35)
表2に挙げられた勾配プログラムを用いて実施される、項目1~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記特性解析が、Tris-HClを含む緩衝液を用いる、項目32に記載の方法。
(項目37)
前記緩衝液がアセトニトリルを含む、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記緩衝液がメチオニンを含む、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記緩衝液が、5mMから50mMのTris-HCl、5%~20%のアセトニトリル、および1mMから50mMのメチオニンを含む、項目36~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記緩衝液が、20mMのTris-HCl、5%~10%のアセトニトリル、および10mMのメチオニンを含む、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記Tris-HClがpH7.5である、項目36に記載の方法。
(項目42)
前記翻訳後修飾が、AAV8のN263、N514、N57、N502、N254、およびN94のうちの一つまたは複数、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh10、もしくはAAVrh74におけるその同等の残基に脱アミド化を含む、項目32に記載の方法。
(項目43)
前記翻訳後修飾が、AAV.Rh74のN57、N255、N256、およびN263のうちの一つまたは複数に脱アミド化を含む、項目32に記載の方法。
(項目44)
前記翻訳後修飾が、AAV.Rh74のM437、M473、M526、M544、M560、およびM637のうちの一つまたは複数での酸化を含む、項目32に記載の方法。
(項目45)
AAV.Rh74のN57、N255、N256、およびN263のうちの一つもしくは複数、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、もしくはAAVrh10の同等の残基に脱アミド化を含むAAVカプシドを含むAAV組成物。
(項目46)
AAV.Rh74のM437、M473、M526、M544、M560、およびM637のうちの一つまたは複数、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、CAAV11、AAV12、AAV13、もしくはAAVrh10の同等の残基に酸化を含むAAVカプシドを含むAAV組成物。
(項目47)
AAV組成物中の宿主細胞タンパク質を特性解析する方法であって、
前記組成物からウイルスカプシドタンパク質を免疫沈降することと、
残留宿主細胞タンパク質を消化することと、
前記消化されたタンパク質を、液体クロマトグラフィー四重極飛行時間質量分析法(LC-QTOF-MS)を用いて分析して、宿主細胞タンパク質を同定することと、を含む方法。
(項目48)
前記免疫沈降が、AAV組成物を、抗AAV VP1抗体、抗AAV VP2抗体、抗AAV VP3抗体、またはそれらの組合せと共にインキュベートすることを含む、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記消化された宿主細胞タンパク質を反復MS/MSにより分析することをさらに含む、項目47または48に記載の方法。
(項目50)
前記消化が溶液中で行われる、項目47~49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記消化が、約60℃から約80℃の温度で実施される急速な消化を含む、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記温度が約70℃である、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記AAV組成物を、既知の量の少なくとも一つの既知のタンパク質標品でスパイクすることをさらに含む、項目47~52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記少なくとも一つの既知のタンパク質標品が、ヒトまたはウシのタンパク質標品である、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記少なくとも一つのタンパク質標品と比較して、前記消化された宿主細胞タンパク質の量を定量化することをさらに含む、項目53または54に記載の方法。
(項目56)
前記液体クロマトグラフィーが、逆相液体クロマトグラフィーである、項目47~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記逆相液体クロマトグラフィーが、C18カラム、C8カラム、またはC4カラムを用いて実施される、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記液体クロマトグラフィーが、C8カラムを用いて実施される、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記カラムが、約1.2~3.5μmの粒子を含む、項目57または58に記載の方法。
(項目60)
前記カラムが、約1.7μmまたは約1.8μmの粒子を含む、項目57~59のい
ずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記カラムが、約50mmから約300mmの長さであり、約1mmから約4.6mmの内径を有する、項目57~60のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記カラムが、約150mmの長さであり、約2.1mmの内径を有する、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記液体クロマトグラフィーが、約40℃から約50℃で実施される、項目47~62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記液体クロマトグラフィーが、約45℃で実施される、項目47~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記液体クロマトグラフィーが、ギ酸を含む第一の移動相を含む、項目47~64のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記第一の移動相が、体積で約0.05%から約0.15%のギ酸を含む、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記第一の移動相が、体積で約0.1%のギ酸を含む、項目65または66に記載の方法。
(項目68)
前記液体クロマトグラフィーが、アセトニトリルと水との混合物中にギ酸を含む第二の移動相を含む、項目47~67のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記第二の移動相が、体積で約0.05%から約0.15%のギ酸を含む、項目68に記載の方法。
(項目70)
前記第二の移動相が、体積で約0.1%のギ酸を含む、項目68または69に記載の方法。
(項目71)
前記第二の移動相が、体積で約80~95%のアセトニトリルを含む、項目68~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記第二の移動相が、体積で約90%のアセトニトリルおよび体積で10%の水を含む、項目71に記載の方法。
(項目73)
前記液体クロマトグラフィーにおいて、前記第一の移動相と前記第二の移動相との組合せに比較して、前記第二の移動相のパーセンテージが経時的に増加される、項目68~72のいずれか一項に記載の方法。
(項目74)
前記第二の移動相のパーセンテージが、約2%から約50%に増加される、項目73に記載の方法。
(項目75)
前記第二の移動相のパーセンテージが、約120分間にわたって体積で約2%から約50%に増加される、項目74に記載の方法。。
(項目76)
前記第二の移動相のパーセンテージが、その後、体積で100%に約5分間で増加される、項目75に記載の方法。
(項目77)
前記第二の移動相のパーセンテージが、その後、体積で100%で約3分間維持される、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記第二の移動相のパーセンテージが、その後、体積で約2%に約2分間で減少される、項目77に記載の方法。
(項目79)
前記質量分析が、約125~350Vのフラグメンター電圧を用いて実施される、項目47~78のいずれか一項に記載の方法。
(項目80)
前記質量分析が、約135Vのフラグメンター電圧を用いて実施される、項目47~79のいずれか一項に記載の方法。
(項目81)
前記質量分析が、約3~6kVのキャピラリー電圧を用いて実施される、項目47~80のいずれか一項に記載の方法。
(項目82)
前記質量分析が、約4kVのキャピラリー電圧を用いて実施される、項目47~81のいずれか一項に記載の方法。
(項目83)
アミノ酸修飾を有する亜集団を含有するカプシドタンパク質の不均一な群を含み、前記アミノ酸修飾が翻訳後修飾である、組換えAAV(rAAV)。
(項目84)
前記修飾が、脱アミド化または酸化である、項目83に記載のrAAV。
(項目85)
質量分析および/または紫外線(UV)可視分光法によって測定された際に、前記不均一な群が、AAV.rh74のN57、N255、N256、およびN263のうちの一つもしくは複数、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、もしくはAAVrh10の同等の残基に、脱アミド化アスパラギン(N)を含む、項目83または84に記載のrAAV。
(項目86)
前記不均一な群が、AAV.rh74カプシドのN57で脱アミド化されたカプシドタンパク質を70%、60%、50%、40%、30%、20%、または15%未満含む、項目85に記載のrAAV。
(項目87)
前記不均一な基が、AAV.rh74カプシドのN57で脱アミド化されたカプシドタンパク質を15%未満含む、項目85に記載のrAAV。
(項目88)
前記不均一な基が、AAV.rh74のN254および/またはN255で脱アミド化されたカプシドタンパク質を70%、60%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、または5%未満含む、項目85に記載のrAAV。
(項目89)
前記不均一な群が、N263で脱アミド化されたカプシドタンパク質を70%、60%、50%、40%、30%、20%未満含む、項目85に記載のrAAV。
(項目90)
質量分析および/または紫外線(UV)可視分光法によって測定された際に、前記不均一な群が、AAV.Rh74のM437、M473、M526、M544、M560、およびM637のうち一つもしくは複数、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、CAAV11、AAV12、AAV13、またはAAVrh10の同等の残基に、酸化メチオニンを含む、
項目83または84に記載のrAAV。
(項目91)
前記不均一な群が、M437で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または1%未満含む、項目90に記載のrAAV。
(項目92)
前記不均一な群が、M473で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または1%未満含む、項目90に記載のrAAV。
(項目93)
前記不均一な群が、M526で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または3%未満含む、項目90に記載のrAAV。
(項目94)
前記不均一な群が、M544で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または2%未満含む、項目90に記載のrAAV。
(項目95)
前記不均一な群が、M560で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または2%未満含む、項目90に記載のrAAV。
(項目96)
前記不均一な群が、M637で酸化されたカプシドタンパク質を30%、20%、10%、5%、または1%未満含む、項目90に記載のrAAV。
(項目97)
前記不均一な群が、配列番号1~5のいずれか一つのペプチド配列、または他のAAV血清型のその同等のペプチド配列内に、脱アミド化アスパラギン(N)を含む、項目83~85のいずれか一項に記載のrAAV。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下の図は、本明細書の一部を形成し、本発明の態様をさらに説明するために含まれる。
【0032】
【
図1】
図1は、カプシドタンパク質比を確定する積分を含む、AAVrh74カプシドタンパク質のUVクロマトグラムを図示する。
【0033】
【
図2】
図2は、AAVrh74カプシドタンパク質の総イオンクロマトグラムを図示する。
【0034】
【
図3-1】
図3は、VP1(
図3A)、VP2(
図3B)、およびVP3(
図3C)カプシドタンパク質のそれぞれのデコンボリューションされたMSスペクトルを示し、これらは三つすべてのカプシドタンパク質の無傷の質量と、カプシドタンパク質の翻訳後修飾の検出とを確定するものである。
【
図3-3】同上。
図3Dは、複数の試料中のVP1のデコンボリューションされたMSスペクトルを示す。
【
図3-4】
図3Eは、複数の試料中のVP2のデコンボリューションされたMSスペクトルを示す。
図3Fは、複数の試料中のVP3のデコンボリューションされたMSスペクトルを示す。
【0035】
【
図4】
図4は、Tris-HClを緩衝液とした脱アミド化分析のプロセスを示す。
【0036】
【
図5】
図5は、Tris-HCl緩衝液を用いたAAV.rh74の脱アミド化の結果を示す。
【0037】
【
図6】
図6は、Tris-HCl緩衝液を用いたAAV.rh74の酸化の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
液体クロマトグラフィー、質量分析、または紫外線(UV)可視分光法を用いて、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子中のVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質を特徴解析する方法が提供される。一部の態様では、AAV粒子中のVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の比、ならびに/またはVPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質のうち一つまたは複数の質量を決定するための方法が提供される。本開示はまた、液体クロマトグラフィーおよび質量分析法を用いて、rAAV組成物の純度を特性解析する方法を提供する。
定義
【0039】
便宜上、本発明をさらに説明する前に、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語をここにまとめる。これらの定義は、当業者によって本開示の残りの部分を考慮して読み取られ理解されるべきである。別段の定義のない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書全体を通して使用される用語は、特定の例において別途限定されない限り、以下のように定義される.
【0040】
冠詞「a」、「an」、および「the」は、冠詞の文法的な対象のうちの一つまたは一つ以上(すなわち、少なくとも一つ)を指すために使用される。
【0041】
本明細書に用いられる際に、「約」は、デバイス、値を決定するために採用される方法、または試験対象間に存在する変動に固有の誤差変動を値が含むことを標示するために使用される。一部の態様では、「約」は、所与の値または範囲の5%から10%超(例えば、最大5%から10%超)および5%から10%未満(例えば、最小5%から10%未満)の偏差が、挙げられた値または範囲の意図された意味の内に留まっていることを標示する。
【0042】
用語「AAV」または「アデノ随伴ウイルス」とは、パルボウイルス属のウイルス内のディペンドパルボウイルスを指す。本明細書において、AAVとは、野生型ウイルス、または天然の野生型ウイルスに由来するAAV、例えば、天然のcap遺伝子によりコードされるカプシドタンパク質に由来するカプシド内にパッケージングされたrAAVゲノムに由来するAAV、および/もしくは非天然のカプシドcap遺伝子によりコードされるカプシドタンパク質に由来するカプシド内にパッケージングされたrAAVゲノムに由来するAAV、例えばAAVrh.74を指し得る。
【0043】
AAVは、任意の血清型、例えばAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV rh.10、AAV rh.74、またはそのバリアントおよび誘導体であり得る。一部の態様では、rAAVは血清型AAVrh.74のものである。偽型rAAVの産生は、例えば、WO01/83692に開示されており、その全体が参照により組み込まれる。他の種類のrAAVバリアント、例えば、カプシド変異を有するrAAVも考慮される。例えば、Marsic et al.,Molecular
Therapy,22(11):1900-1909(2014)を参照されたい。
【0044】
本明細書で使用される際に、用語「AAV粒子」、「AAVベクター」、「AAVビリオン」、「AAVウイルス粒子」、または「AAVベクター粒子」は、AAVカプシドおよびカプシド化AAVゲノムから構成されるウイルス粒子を指すために用いられる。AAV粒子は、一部の態様では、異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳類細胞に送達される導入遺伝子など、野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む。AAVベクター粒子の産生は、一部の態様では、AAVベクターの産生を含み、それはAAVベクター粒子内にそのようなベクターが含有される場合である。
【0045】
例えば、AAVカプシドタンパク質被覆に会合する線状の一本鎖AAV核酸ゲノムを含む野生型(wt)AAVウイルス粒子。AAVビリオンは、一本鎖(ss)AAVまたは自己相補性(SC)AAVのどちらかであり得る。一部の態様では、どちらかの相補的なセンス鎖、例えば「センス」鎖または「アンチセンス」鎖の一本鎖AAV核酸分子は、AAVビリオン内にパッケージングすることができ、両鎖は感染性が等しい。
【0046】
用語「組換えAAV」または「rAAV」は、両側にAAV ITRの位置する目的の異種ヌクレオチド配列を被包する、AAVタンパク質殻から構成される感染性の複製欠損ウイルスとして本明細書に定義される。rAAVは、一部の態様では、AAVベクターと、AAVヘルパー機能と、アクセサリー機能とが中に導入された適切な宿主細胞で産生される。このようにして、宿主細胞は、AAVベクター(目的の組換えヌクレオチド配列を含有)をその後の遺伝子送達のために感染性組換えビリオン粒子内にパッケージングするために必要な、AAVポリペプチドをコードすることができる。
【0047】
本明細書で用いられる際に、用語「カプシドタンパク質」とは、ウイルスの被覆または殻を形成するタンパク質を指す。用語「AAVカプシドタンパク質」とは、合計60個のサブユニットから構成されるアデノ随伴ウイルス(AAV)の被覆を形成するタンパク質を指し、各サブユニットはアミノ酸配列、例えば、ウイルスタンパク質1(VP1)、VP2、またはVP3である。
【0048】
本明細書に用いられる際に、用語「液体クロマトグラフィー(LC)」とは、混合物中の成分を分離、同定、および定量するために用いられる手法を指す。カラム液体クロマトグラフィーでは、液体移動相がカラムを通過し、移動相の成分が固体固定相と相互作用する。移動相の組成を分離ラン中に変更して、目的の化合物の相互作用の強度を変えることができる。移動相がカラムを通って流れるにつれて、典型的には、経時的にカラムから溶出される化合物の濃度をモニターして溶出曲線またはクロマトグラムを生成しながら、溶離液を画分に収集する。
【0049】
本明細書で用いられる際に、用語「固定相」とは、カラムに固定されたままの物質を指す。最も一般的に用いられる固定相カラムは、炭素鎖結合シリカ、フェニル結合シリカ、およびシアノ結合シリカである。一部の態様では、固定相は、C4、C8、またはC18などの特定の長さの疎水性アルキル鎖を含みうる。一部の態様では、逆相クロマトグラフィーは、C8逆相クロマトグラフィー(例えば、C8固定相を利用する逆相クロマトグラフィー)である。
【0050】
本明細書で用いられる際に、用語「移動相」とは、カラムから化合物を溶出するために使用される水、溶媒、または水と溶媒との混合物を指す。最も一般的な移動相溶媒としては、以下に限定されないが、アセトニトリル、メタノール、テトラヒドロフラン、エタノール、またはイソプロピルアルコールが挙げられる。一部の態様では、二つの移動相が用いられる。例えば、第一の移動相と第二の移動相とをin situで混合して、カラムから物質を溶出するために用いる溶媒を得ることができる。一部の態様では、第二の移動相と第一の移動相との体積比は、溶出ステップの間に増加する勾配にある。
【0051】
本明細書で用いられる際に、用語「質量分析」または「MS」とは、イオンの質量対電荷(m/z)比を測定し、単純および複雑な混合物中の分子を同定および定量化する分析手法を指す。MS技術には、一般的に、(1)化合物をイオン化して荷電化合物を形成すること、および(2)荷電化合物の質量対電荷比を検出して分子量を計算することが含まれる。化合物は、任意の適切な手段によってイオン化されて検出され得る。「質量分析計」は一般的に、イオン化装置、質量分析器、およびイオン検出器を含む。一般的には、一つまたは複数の目的の分子がイオン化され、その後、イオンが質量分析装置に導入され、装置内では、磁界と電界との組合せにより、イオンは、質量(「m」)および電荷(「z」)に依存する空間内の経路を辿る。一部の質量分析の方法では、イオンは、例えば飛行時間(TOF)、オービトラップ、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴分光計、四重極またはイオントラップを用いて互いに分離され、次いで、イオン検出器を用いて検出され得る。
【0052】
本明細書で使用される際に、用語「紫外線可視分光法」、「紫外線可視分光光度法」、「UV-Vis」、または「UV/Vis」とは、液体および固体の光学特性(透過率、反射率、および吸光度)を決定するために用いられる吸収分光法または反射率分光法を指す。一部の態様では、紫外線可視分光法を用いて、AAV粒子のカプシドタンパク質を特性解析する。
【0053】
本明細書で用いられる際に、用語「総イオンクロマトグラム(TIC)」とは、同じスキャンに属するすべての質量スペクトルピークの強度を合計することによって生成されるクロマトグラムの型を指す。
【0054】
本明細書で用いられる際に、用語「AAVrh74」とは、AAVrh74のVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質またはそのバリアントを有するAAV粒子を指す。例示的なAAVrh74のVP1カプシドタンパク質配列は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,909,142号の配列番号4に記載されている。AAVrh74のVP1カプシドタンパク質のバリアントの例も、米国特許第9,909,142号に記載されている。
【0055】
本明細書で用いられる際に、VPタンパク質の「亜集団」という用語は、別段に指定のない限り、共通して少なくとも一つの画定された特徴を有し、参照グループの少なくとも一つのグループメンバーからすべてのメンバーには満たない、VPタンパク質のグループを指す。例えば、別段に指定のない限り、VPlタンパク質の「亜集団」は、アセンブリされたAAVカプシド中の少なくとも一つのVPlタンパク質からすべてに満たないVP1タンパク質であり得る。VP3タンパク質の「亜集団」は、別段に指定のない限り、アセンブリされたAAVカプシド中の一つのVP3タンパク質からすべてに満たないVP3タンパク質であり得る。例えば、VPlタンパク質は、アセンブリされてAAVカプシド中のVPタンパク質の亜集団である場合があり、VP2タンパク質は、VPタンパク質の別の亜集団である場合があり、VP3は、VPタンパク質のさらに別の亜集団である。別の例では、VPl、VP2、およびVP3タンパク質は、異なる修飾、例えば、少なくとも一つ、二つ、三つ、または四つの高度に脱アミド化されたアスパラギンを、例えば、アスパラギン-グリシン対に有する亜集団を含有することがある。
AAV VP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の特性解析
【0056】
一部の態様では、本開示は、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子中のVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質を特性解析する方法を提供し、この方法は、AAV粒子を約70℃から約90℃の液体クロマトグラフィーに供することを含み、ここでVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の質量および比は、質量分析および/または紫外線(UV)可視分光法によって決定される。一部の態様では、VP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の質量および比は、質量分析法および紫外線(UV)可視分光法によって決定される。一部の態様では、AAV粒子上のカプシドは、液体クロマトグラフィーのカラム内でVP1、VP2、およびVP3タンパク質のそれぞれに変性される。一部の態様では、カプシドタンパク質は、液体クロマトグラフィーによって分離される。
一部の態様では、本方法は、(a)AAV粒子を液体クロマトグラフィーに供してVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質を分離すること、および(b)工程(a)で生じた分離済みのVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質を質量分析および/または紫外線可視分光法に供して、VP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の相対量を決定し、それによって、AAV粒子中のVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の比を決定することを含む。一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、約70℃から約90℃で実施される。一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、約70℃、74℃、76℃、78℃、80℃、82℃、84℃、86℃、88℃、または90℃で実施される。一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、約80℃で実施される。
【0057】
一部の態様では、本方法は、AAV粒子のVPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質のうち一つまたは複数の質量を決定することをさらに含む。
【0058】
一部の態様では、VP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の相対量は、VP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の総イオンクロマトグラム(TIC)を比較することによって決定される。
【0059】
一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、逆相液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィー、または陽イオン交換クロマトグラフィーである。一部の態様では、液体クロマトグラフィーは逆相液体クロマトグラフィーである。
【0060】
一部の態様では、逆相クロマトグラフィーは、C18カラム、C8カラム、またはC4カラムを用いて実施される。一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、C8カラムを用いて実施される。
【0061】
一部の態様では、逆相液体クロマトグラフィーの固定相は、約50~300mmの長さであり、約1~4.6mmの内径を有するクロマトグラフィーカラム内に含まれる。一部の態様では、カラムはBEHカラムである。一部の態様では、カラムは、1mm、2.1mm、3mm、または4.6mmの内径を有する。一部の態様では、カラムは50mm、75mm、100mm、150mm、または300mmの長さを有する。一部の態様では、カラムサイズは、1mm×50mm、2.1mm×50mm、3mm×50mm、4.6mm×50mm、1mm×75mm、2.1mm×75mm、3mm×75mm、4.6mm×75mm、1mm×100mm、2.1mm×100mm、3mm×100mm、4.6mm×100mm、1mm×150mm、2.1mm×150mm、3mm×150mm、4.6mm×150mm、1mm×300mm、2.1mm×300mm、3mm×300mm、または4.6mm×300mmである。一部の態様では、カラムサイズは、1.6×50mm、1.6×60mm、1.6×70mm、1.6×80mm、1.6×90mm、1.6×100mm、1.6×110mm、1.6×120mm、1.6×130mm、1.6×140mm、1.6×150mm、1.7×50mm、1.7×60、1.7×70mm、1.7×80mm、1.7×90mm、1.7×100mm、1.7×110mm、1.7×120mm、1.7×130mm、1.7×140mm、1.7×150mm、1.8×50mm、1.8×60、1.8×70mm、1.8×80mm、1.8×90mm、1.8×100mm、1.8×110mm、1.8×120mm、1.8×130mm、1.8×140mm、1.8×150mm、1.9×50mm、1.9×60mm、1.9×70mm、1.9×80mm、1.9×90mm、1.9×100mm、1.9×110mm、1.9×120mm、1.9×130mm、1.9×140mm、1.9×150mm、2.0×50mm、2.0×60mm、2.0×70mm、2.0×80mm、2.0×90mm、2.0×100mm、2.0×110mm、2.0×120mm、2.0×130mm、2.0×140mm、2.0×150mm、2.1×50mm、2.1×60mm、2.1×70mm、2.1×80mm、2.1×90mm、2.1×100mm、2.1×110mm、2.1×120mm、2.1×130mm、2.1×140mm、2.1×150mm、2.2×50mm、2.2×60mm、2.2×70mm、2.2×80mm、2.2×90mm、2.2×100mm、2.2×110mm、2.2×120mm、2.2×130mm、2.2×140mm、2.2×150mm、2.3×50mm、2.3×60mm、2.3×70mm、2.3×80mm、2.3×90mm、2.3×100mm、2.3×110mm、2.3×120mm、2.3×130mm、2.3×140mm、2.3×150mm、2.4×50mm、2.4×60mm、2.4×70mm、2.4×80mm、2.4×90mm、2.4×100mm、2.4×110mm、2.4×120mm、2.4×130mm、2.4×140mm、2.4×150mm、2.5×50mm、2.5×60、2.5×70mm、2.5×80mm、2.5×90mm、2.5×100mm、2.5×110mm、2.5×120mm、2.5×130mm、2.5×140mm、2.5×150mm、2.6×50mm、2.6×60mm、2.6×70mm、2.6×80mm、2.6×90mm、2.6×100mm、2.6×110mm、2.6×120mm、2.6×130mm、2.6×140mm、または2.6×150mmである。一部の態様では、逆相液体クロマトグラフィーの固定相は、約100mmの長さであり、約2.1mmの内径を有するクロマトグラフィーカラム内に含まれる。
【0062】
一部の態様では、逆相液体クロマトグラフィーの固定相は、約1.2μm~2.5μmの間のサイズの粒子を含む。別の態様では、逆相液体クロマトグラフィーの固定相は、約1.7μm、1.8μm、または2.1μmのサイズの粒子を含む。一部の態様では、粒子サイズは、約1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.0μm、2.1μm、2.2μm、2.3μm、2.4μm、または2.5μmである。一部の態様では、逆相液体クロマトグラフィーの固定相は、約1.7μmの粒子から構成される。
【0063】
一部の態様では、クロマトグラフィーは、水中にフッ素置換酢酸を含む第一の移動相を使用する。フッ素置換酢酸としては、モノフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、およびトリフルオロ酢酸が挙げられる。一部の態様では、クロマトグラフィーは、水中にトリフルオロ酢酸を含む第一の移動相を使用する。
【0064】
一部の態様では、第一の移動相は、体積で約0.05から約0.15%のフッ素置換酢酸を含む。一部の態様では、第一の移動相は、体積で約0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、または0.2%のフッ素置換酢酸を含む。一部の態様では、第一の移動相は、体積で約0.05%または0.1%のフッ素置換酢酸を含む。一部の態様では、第一の移動相は、体積で約0.1%のフッ素置換酢酸を含む。一部の態様では、フッ素置換酢酸はトリフルオロ酢酸である。一部の態様では、第一の移動相は、体積で約0.1%のトリフルオロ酢酸を含む。
【0065】
一部の態様では、クロマトグラフィーは、アセトニトリル中にフッ素置換酢酸を含む第二の移動相を使用する。一部の態様では、クロマトグラフィーは、アセトニトリル中にトリフルオロ酢酸を含む第二の移動相を使用する。一部の態様では、クロマトグラフィーは、アセトニトリルと水との混合物中にフッ素置換酢酸を含む第二の移動相を使用する。一部の態様では、クロマトグラフィーは、アセトニトリルと水との混合物中にトリフルオロ酢酸を含む第二の移動相を使用する。
【0066】
一部の態様では、第二の移動相は、体積で約0.05~0.2%のフッ素置換酢酸を含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約0.05~0.15%のフッ素置換酢酸を含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、または0.2%のフッ素置換酢酸を含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約0.05%または0.1%のフッ素置換酢酸を含む。一部の態様では、第二の移動相は、約0.1%のフッ素置換酢酸を含む。一部の態様では、フッ素置換酢酸はトリフルオロ酢酸である。一部の態様では、第二の移動相は、約0.1%のトリフルオロ酢酸を含む。
【0067】
一部の態様では、第二の移動相は、体積で約75~95%のアセトニトリルを含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約75%、80%、85%、90%、または95%のアセトニトリルを含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約90%のアセトニトリルと10%の水とを含む。
【0068】
一部の態様では、クロマトグラフィーにおいて、第一の移動相と第二の移動相との組合せにおける第二の移動相のパーセンテージは、経時的に増加する。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、体積で約10%から約40%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、体積で約10%から約45%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、体積で約10%から約100%増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約30~40分間で約10%から約45%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約35分間で約10%から約45%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約30~50分間で体積で約10%から約100%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約36分間で体積で約10%から約100%に増加される。
【0069】
一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約5~10分間で体積で約10%から約40%に、約25~35分間で約40%から約45%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約0.5~2分間で約45%から約100%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約0.5~2分間で約100%から約10%に低減される。
【0070】
一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約6分間で体積で約10%から約40%に、約29分間で約40%から約45%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約1分間で約45%から約100%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約1分間で約100%から約10%に低減される。
【0071】
一部の態様では、液体クロマトグラフィーは高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)である。一部の態様では、液体クロマトグラフィーは超高圧液体クロマトグラフィー(UHPLC)である。
【0072】
一部の態様では、質量分析は、任意のイオン化モード、具体的には生体分子の分析に適したモードを用いてもよく、そのようなものとしては、以下に限定されないが、直接注入質量分析、エレクトロスプレーイオン化(ESI)-MS、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)-MS、リアルタイムでの直接分析(DART)-MS、大気圧化学イオン化(APCI)-MS、電子衝撃(El)または化学イオン化(CI)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)-MS、および大気圧イオン化-エレクトロスプレー(API-ES)が挙げられる。一部の態様では、質量分析は、API-ESイオン化モードを用いる。
【0073】
一部の態様では、質量分析は、400~16000m/zの範囲にわたってシグナルをスキャンする。一部の態様では、質量分析は、700~13700m/zの範囲にわたってシグナルをスキャンする。
【0074】
一部の態様では、質量分析のスキャンタイプは、正極性である。一部の態様では、質量分析のデータ取得時間は、約10~35分である。一部の態様では、質量分析のデータ取得時間は、約17~28分である。
【0075】
一部の態様では、質量分析のノズル電圧は約400~600Vである。一部の態様では、質量分析のノズル電圧は約500Vである。一部の態様では、質量分析のスキマー電圧は約60~70Vである。一部の態様では、質量分析のスキマー電圧は約65Vである。一部の態様では、ノズル電圧とスキマー電圧との差は約400~450Vである。一部の態様では、ノズル電圧とスキマー電圧との差は約435Vである。
【0076】
一部の態様では、質量分析の乾燥ガス温度は約200~350℃である。一部の態様では、質量分析の乾燥ガス温度は約300℃である。一部の態様では、質量分析の乾燥ガス流量は約5~13L/分である。一部の態様では、質量分析の乾燥ガス流量は約13L/分である。
【0077】
一部の態様では、質量分析は、約3~6kVのキャピラリー電圧を用いる。一部の態様では、質量分析は、約3、4、5、または6kVのキャピラリー電圧を用いる。一部の態様では、質量分析は、約5kVのキャピラリー電圧を用いる。
【0078】
一部の態様では、質量分析は、約125~350Vのフラグメンター電圧を用いる。一部の態様では、質量分析は、約125V、130V、135V、145V、155V、160V、165V、175V、185V、190V、195V、200V、205V、210V、215V、220V、225V、230V、235V、240V、245V、250V、255V、260V、265V、270V、275V、280V、285V、290V、295V、300V、305V、310V、315V、320V、325V、330V、335V、340V、345V、または350Vのフラグメンター電圧を用いる。一部の態様では、質量分析は、約175Vのフラグメンター電圧を用いる。
【0079】
一部の態様では、AAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh10、AAVrh74、または任意の天然、組換え、もしくは合成のAAV粒子である。一部の態様では、AAV粒子は組換えAAV(rAAV)粒子である。一部の態様では、AAV粒子はAAVrh74である。
【0080】
一部の上述の態様では、本開示は、VPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質のうち少なくとも一つの翻訳後修飾を決定することをさらに含む。一部の態様では、本開示は、VPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質のうち少なくとも一つの翻訳後のグリコシル化、シアリル化、アセチル化、アミノ酸の欠落、アミド化、リン酸化、ホルミル化、ヒドロキシル化、メチル化、および/または硫酸化を決定することをさらに含む。翻訳後修飾は、N末端メチオニンの欠落、トレオニンの欠落、リン酸化、およびアセチル化のうちの一つまたは複数を含む。
【0081】
一部の態様では、本開示は、VP1、VP2、またはVP3カプシドタンパク質におけるN末端メチオニンの除去を決定することを含む。一部の態様では、本開示は、VP1またはVP3カプシドタンパク質におけるN末端メチオニンの除去を決定することを含む。一部の態様では、本開示は、VP1、VP2、またはVP3カプシドタンパク質におけるN末端メチオニンの除去後のN末端アセチル化を決定することを含む。一部の態様では、本開示は、VP1またはVP3カプシドタンパク質におけるN末端メチオニンの除去後のN末端アセチル化を決定することを含む。
【0082】
一部の態様では、本開示は、VP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の比、ならびに/またはAAV粒子中のVPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質のうち一つもしくは複数の質量に部分的に少なくとも基づいて、AAV粒子のカプシドタンパク質を特性解析する方法を提供する。
【0083】
一部の態様では、本開示は、AAV粒子中のVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の比、ならびに/またはVPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質のうち一つもしくは複数の質量に部分的に少なくとも基づいてAAV粒子の血清型を決定する方法を提供し、ここでは、VP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の比、ならびにVPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の一つまたは複数の質量は、本明細書に開示される方法によって決定される。
【0084】
質量分析法は、タンパク質の特性解析のための分析手法である。一部の態様では、液体クロマトグラフィーおよび質量分析法によって、三つすべてのカプシドタンパク質の無傷の質量と共に、AAVrh74カプシドタンパク質の比を特性解析するための方法が提供される。一部の態様では、AAVrh74カプシドを、オンカラムで個々のカプシドタンパク質VP1、VP2、およびVP3に変性する。変性を、カラムコンパートメントを80℃に加熱することによって達成する(3、4)。次に、移動相のイオン対剤としてトリフルオロ酢酸を活用して、カプシドタンパク質を、ウォーターズBEH C8カラムでベースライン分離する(5)。変性したタンパク質を、まずUVで分析しカプシド比を得て、次に質量分析計で個々のタンパク質の無傷の質量を得る。
【0085】
脱アミド化は、アスパラギン残基のイソアスパラギン酸とアスパラギン酸との混合物への変換をもたらす、一般的な翻訳後修飾である。グルタミン残基の脱アミド化も起こるが、はるかに遅い速度で起こる。酸化もまた、様々なフリーラジカルおよび活性酸素種とのタンパク質の反応の結果である、一般的な翻訳後修飾である。メチオニン酸化が最も一般的であるが、システインおよびトリプトファンなどのいくつかの他のアミノ酸残基の酸化も観察されている。脱アミド化/酸化はまた、製造および貯蔵中に起こるタンパク質の一般的な分解経路である。脱アミド化は、タンパク質の活性および安定性に影響を与えることがある。酸化は、タンパク質の立体構造変化を引き起こし、それゆえにタンパク質の活性および安定性に影響を与えることがある。酸化はまた、タンパク質の免疫原性に影響を与えることがある。そのため、タンパク質の極めて重要な品質特性(CQA)を、翻訳後修飾について慎重にモニタリングする必要がある。
【0086】
重炭酸アンモニウムを用いた現行の方法は、疑似シグナルを生成するか、またはAAVカプシドタンパク質中の脱アミド化を過大評価するものであった(表7)。そこで、本開示は、Tris-HClを用いてカプシドタンパク質上の翻訳後修飾をより正確に測定する方法を提供する。一部の態様では、LC MS法は、Tris-HClを含む緩衝液を使用する。一部の態様では、緩衝液はアセトニトリルを含む。一部の態様では、緩衝液はメチオニンを含む。一部の態様では、緩衝液は、5mMから50mMのTris-HCl、5%~20%のアセトニトリル、および1mMから50mMのメチオニンを含む。一部の態様では、緩衝液は、20mMのTris-HCl、5%~10%のアセトニトリル、および10mMのメチオニンを含む。
【0087】
一部の態様では、翻訳後修飾は、AAV8のN263、N514、N57、N502、N254、およびN94のうちの一つまたは複数、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh10、もしくはAAVrh74におけるその同等の残基に、脱アミド化を含む。一部の態様では、翻訳後修飾は、AAV.Rh74のN57、N255、N256、およびN263のうちの一つまたは複数に、脱アミド化を含む。一部の態様では、翻訳後修飾は、AAV.Rh74のM437、M473、M526、M544、M560、およびM637のうちの一つまたは複数に、酸化を含む。
AAV組成物
【0088】
本開示の一部の態様は、アミノ酸改変を有する亜集団を含有する不均一なカプシドタンパク質群を含む組換えAAV(rAAV)を対象とする。一部の態様では、修飾は、脱アミド化、アセチル化、異性化、リン酸化、または酸化であり得る。一部の態様では、修飾は脱アミド化または酸化である。
【0089】
一部の態様では、rAAVカプシドは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つから少なくとも約25個の脱アミド化アミノ酸残基を有するVPl、VP2、およびVP3の亜集団を含有し得るが、そのうち少なくとも約1%から約10%、少なくとも約10%から約25%、少なくとも約25%から約50%、少なくとも約50%から約70%、少なくとも約70%から約100%、少なくとも約75%から約100%、少なくとも約80%から約100%、または少なくとも約90%から約100%が、VPタンパク質のコードされたアミノ酸配列と比較して脱アミド化されている。 一部の態様では、これらの大部分はN残基であり得る。一部の態様では、Q残基は脱アミド化され得る。
【0090】
一部の態様では、本開示は、質量分析および/または紫外線(UV)可視分光法によって測定された際に、AAV.Rh74のN57、N255、N256、およびN263のうちの一つもしくは複数、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、もしくはAAVrh10の同等の残基に脱アミド化を含む、AAVカプシドを含むAAV組成物を提供する。一部の態様では、脱アミド化は、本明細書に開示される方法のいずれかによって測定される。
【0091】
一部の態様では、上記不均一な群は、AAV.rh74カプシドのN57で脱アミド化されたカプシドタンパク質を約80%未満、約78%未満、約76%未満、約74%未満、約72%未満、約70%未満、約68%未満、約66%未満、約64%未満、約62%未満、約60%未満、約58%未満、約56%未満、約54%未満、約52%未満、約50%未満、約48%未満、約46%未満、約44%未満、約42%未満、約40%未満、約38%未満、約36%未満、約34%未満、約32%未満、約30%未満、約28%未満、約26%未満、約24%未満、約22%未満、約20%未満、約18%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、または約10%未満含む。
【0092】
一部の態様では、上記不均一な群は、AAV.rh74カプシドのN57で脱アミド化されたカプシドタンパク質を約25%未満、約24%未満、約23%未満、約22%未満、約21%未満、約20%未満、約19%未満、約18%未満、約17%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、または約10%未満含む。
【0093】
一部の態様では、上記不均一な群は、AAV.rh74カプシドのN254および/またはN255で脱アミド化されたカプシドタンパク質を約80%未満、約78%未満、約76%未満、約74%未満、約72%未満、約70%未満、約68%未満、約66%未満、約64%未満、約62%未満、約60%未満、約58%未満、約56%未満、約54%未満、約52%未満、約50%未満、約48%未満、約46%未満、約44%未満、約42%未満、約40%未満、約38%未満、約36%未満、約34%未満、約32%未満、約30%未満、約28%未満、約26%未満、約24%未満、約22%未満、約20%未満、約18%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、または約10%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満含む。
【0094】
一部の態様では、上記不均一な群は、N263で脱アミド化されたカプシドタンパク質を約80%未満、約78%未満、約76%未満、約74%未満、約72%未満、約70%未満、約68%未満、約66%未満、約64%未満、約62%未満、約60%未満、約58%未満、約56%未満、約54%未満、約52%未満、約50%未満、約48%未満、約46%未満、約44%未満、約42%未満、約40%未満、約38%未満、約36%未満、約34%未満、約32%未満、約30%未満、約28%未満、約26%未満、約24%未満、約22%未満、約20%未満、約18%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、または約10%未満含む。
【0095】
一部の態様では、AAV組成物は、質量分析および/または紫外線(UV)可視分光法によって測定された際に、AAV.Rh74のM437、M473、M526、M544、M560、およびM637のうちの一つまたは複数、またはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、もしくはAAVrh10の同等の残基に酸化を含む、AAVカプシドを含む。一部の態様では、脱アミド化は、本明細書に開示される方法のいずれかによって測定される。
【0096】
一部の態様では、上記不均一な群は、M437で酸化されたカプシドタンパク質を約40%未満、約48%未満、約46%未満、約44%未満、約42%未満、約40%未満、約38%未満、約36%未満、約34%未満、約32%未満、約30%未満、約28%未満、約26%未満、約24%未満、約22%未満、約20%未満、約18%未満、約16%未満、約14%未満、約12%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.9%未満、約0.8%未満、約0.7%未満、約0.6%未満、または0.5%未満含む。
【0097】
一部の態様では、上記不均一な群は、M473で酸化されたカプシドタンパク質を約40%未満、約48%未満、約46%未満、約44%未満、約42%未満、約40%未満、約38%未満、約36%未満、約34%未満、約32%未満、約30%未満、約28%未満、約26%未満、約24%未満、約22%未満、約20%未満、約18%未満、約16%未満、約14%未満、約12%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.9%未満、約0.8%未満、約0.7%未満、約0.6%未満、または0.5%未満含む。
【0098】
一部の態様では、上記不均一な群は、M526で酸化されたカプシドタンパク質を約40%未満、約48%未満、約46%未満、約44%未満、約42%未満、約40%未満、約38%未満、約36%未満、約34%未満、約32%未満、約30%未満、約28%未満、約26%未満、約24%未満、約22%未満、約20%未満、約18%未満、約16%未満、約14%未満、約12%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.9%未満、約0.8%未満、約0.7%未満、約0.6%未満、または0.5%未満含む。
【0099】
一部の態様では、上記不均一な群は、M544で酸化されたカプシドタンパク質を約40%未満、約48%未満、約46%未満、約44%未満、約42%未満、約40%未満、約38%未満、約36%未満、約34%未満、約32%未満、約30%未満、約28%未満、約26%未満、約24%未満、約22%未満、約20%未満、約18%未満、約16%未満、約14%未満、約12%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.9%未満、約0.8%未満、約0.7%未満、約0.6%未満、または0.5%未満含む。
【0100】
一部の態様では、上記不均一な群は、M560で酸化されたカプシドタンパク質を約40%未満、約48%未満、約46%未満、約44%未満、約42%未満、約40%未満、約38%未満、約36%未満、約34%未満、約32%未満、約30%未満、約28%未満、約26%未満、約24%未満、約22%未満、約20%未満、約18%未満、約16%未満、約14%未満、約12%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.9%未満、約0.8%未満、約0.7%未満、約0.6%未満、または0.5%未満含む。
【0101】
一部の態様では、上記不均一な群は、M637で酸化されたカプシドタンパク質を約40%未満、約48%未満、約46%未満、約44%未満、約42%未満、約40%未満、約38%未満、約36%未満、約34%未満、約32%未満、約30%未満、約28%未満、約26%未満、約24%未満、約22%未満、約20%未満、約18%未満、約16%未満、約14%未満、約12%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.9%未満、約0.8%未満、約0.7%未満、約0.6%未満、または0.5%未満含む。
AAV組成物中の宿主細胞タンパク質の特性解析
【0102】
一部の態様では、本開示は、AAVベースの遺伝子治療医薬品などのAAV組成物中の宿主細胞タンパク質を特性解析する方法を提供する。一部の態様では、AAV組成物における宿主細胞タンパク質を特性解析する方法は、組成物からウイルスカプシドタンパク質を免疫沈降すること、残留宿主細胞タンパク質を消化すること、および消化されたタンパク質を液体クロマトグラフィー四重極飛行時間質量分析法(LC-QTOF-MS)で分析して、宿主細胞タンパク質を同定することを含む。本明細書で用いられる際に、用語「残留宿主細胞タンパク質」または「残留タンパク質」とは、免疫沈降後に溶液中に残っているタンパク質を意味する。一部の態様では、本方法は、消化された宿主細胞タンパク質を反復MS/MSで分析することをさらに含む。
【0103】
一部の態様では、免疫沈降は、AAV組成物をVP抗体と共にインキュベートすることを含む。一部の態様では、VP抗体は、抗AAV VP1抗体、抗AAV VP2抗体、抗AAV VP3抗体、またはそれらの組合せを含む。一部の態様では、抗体は、アメリカンリサーチプロダクツ社から得られる抗アデノ随伴ウイルス(AAV)VP1/VP2/VP3(カタログ番号:03-61058)とすることができる。
【0104】
一部の態様では、残留宿主細胞タンパク質は溶液中で消化される。一部の態様では、消化は急速な消化である。一部の態様では、急速な消化は、約60℃から約80℃で実施される。一部の態様では、急速な消化は、約60℃、約61℃、約62℃、約63℃、約64℃、約65℃、約66℃、約67℃、約68℃、約69℃、約70℃、約71℃、約72℃、約73℃、約74℃、約75℃、約76℃、約77℃、約78℃、約79℃、または約80℃で実施される。一部の態様では、急速な消化は約70℃で実施される。
【0105】
一部の態様では、AAV組成物は、既知の量の少なくとも一つの既知のタンパク質標品によりスパイクされる。一部の態様では、少なくとも一つの既知のタンパク質標品は、ヒトまたはウシのタンパク質標品である。一部の態様では、本方法は、少なくとも一つの既知のタンパク質標品と比較して、残留宿主細胞タンパク質の量を定量化することをさらに含む。
【0106】
一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、逆相液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィー、または陽イオン交換クロマトグラフィーである。一部の態様では、液体クロマトグラフィーは逆相液体クロマトグラフィーである。
【0107】
一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、約35℃から約55℃で実施される。一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、約40℃、約41℃、約42℃、約43℃、約44℃、約45℃、約46℃、約47℃、約48℃、約49℃、約50℃、約51℃、約52℃、約53℃、約54℃、または約55℃、で実施される。一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、約45℃で実施される。
【0108】
一部の態様では、逆相クロマトグラフィーは、C18カラム、C8カラム、またはC4カラムを用いて実施される。一部の態様では、液体クロマトグラフィーは、C8カラムを用いて実施される。
【0109】
一部の態様では、逆相液体クロマトグラフィーの固定相は、約50~300mmの長さであり、約1~4.6mmの内径を有するクロマトグラフィーカラム内に含まれる。一部の態様では、カラムはBEHカラムである。一部の態様では、カラムは、1mm、2.1mm、3mm、または4.6mmの内径を有する。一部の態様では、カラムは50mm、75mm、100mm、150mm、または300mmの長さを有する。一部の態様では、カラムサイズは、1mm×50mm、2.1mm×50mm、3mm×50mm、4.6mm×50mm、1mm×75mm、2.1mm×75mm、3mm×75mm、4.6mm×75mm、1mm×100mm、2.1mm×100mm、3mm×100mm、4.6mm×100mm、1mm×150mm、2.1mm×150mm、3mm×150mm、4.6mm×150mm、1mm×300mm、2.1mm×300mm、3mm×300mm、または4.6mm×300mmである。一部の態様では、カラムサイズは、1.6×50mm、1.6×60mm、1.6×70mm、1.6×80mm、1.6×90mm、1.6×100mm、1.6×110mm、1.6×120mm、1.6×130mm、1.6×140mm、1.6×150mm、1.7×50mm、1.7×60、1.7×70mm、1.7×80mm、1.7×90mm、1.7×100mm、1.7×110mm、1.7×120mm、1.7×130mm、1.7×140mm、1.7×150mm、1.8×50mm、1.8×60、1.8×70mm、1.8×80mm、1.8×90mm、1.8×100mm、1.8×110mm、1.8×120mm、1.8×130mm、1.8×140mm、1.8×150mm、1.9×50mm、1.9×60mm、1.9×70mm、1.9×80mm、1.9×90mm、1.9×100mm、1.9×110mm、1.9×120mm、1.9×130mm、1.9×140mm、1.9×150mm、2.0×50mm、2.0×60mm、2.0×70mm、2.0×80mm、2.0×90mm、2.0×100mm、2.0×110mm、2.0×120mm、2.0×130mm、2.0×140mm、2.0×150mm、2.1×50mm、2.1×60mm、2.1×70mm、2.1×80mm、2.1×90mm、2.1×100mm、2.1×110mm、2.1×120mm、2.1×130mm、2.1×140mm、2.1×150mm、2.2×50mm、2.2×60mm、2.2×70mm、2.2×80mm、2.2×90mm、2.2×100mm、2.2×110mm、2.2×120mm、2.2×130mm、2.2×140mm、2.2×150mm、2.3×50mm、2.3×60mm、2.3×70mm、2.3×80mm、2.3×90mm、2.3×100mm、2.3×110mm、2.3×120mm、2.3×130mm、2.3×140mm、2.3×150mm、2.4×50mm、2.4×60mm、2.4×70mm、2.4×80mm、2.4×90mm、2.4×100mm、2.4×110mm、2.4×120mm、2.4×130mm、2.4×140mm、2.4×150mm、2.5×50mm、2.5×60、2.5×70mm、2.5×80mm、2.5×90mm、2.5×100mm、2.5×110mm、2.5×120mm、2.5×130mm、2.5×140mm、2.5×150mm、2.6×50mm、2.6×60mm、2.6×70mm、2.6×80mm、2.6×90mm、2.6×100mm、2.6×110mm、2.6×120mm、2.6×130mm、2.6×140mm、または2.6×150mmである。一部の態様では、逆相液体クロマトグラフィーの固定相は、約150mmの長さであり、約2.1mmの内径を有するクロマトグラフィーカラム内に含まれる。
【0110】
一部の態様では、逆相液体クロマトグラフィーの固定相は、約1.2μm~2.5μmの間のサイズの粒子を含む。一部の態様では、逆相液体クロマトグラフィーの固定相は、約1.7μm、1.8μm、または2.1μmのサイズの粒子を含む。一部の態様では、粒子サイズは、約1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.0μm、2.1μm、2.2μm、2.3μm、2.4μm、または2.5μmである。一部の態様では、逆相液体クロマトグラフィーの固定相は、約1.7μmの粒子から構成される。
【0111】
一部の態様では、クロマトグラフィーは、水中にフッ素置換酢酸を含む第一の移動相を使用する。フッ素置換酢酸としては、モノフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、およびトリフルオロ酢酸が挙げられる。一部の態様では、クロマトグラフィーは、水中にトリフルオロ酢酸を含む第一の移動相を使用する。
【0112】
一部の態様では、クロマトグラフィーは、ギ酸を含む第一の移動相を使用する。
【0113】
一部の態様では、第一の移動相は、体積で約0.05から約0.15%のギ酸を含む。一部の態様では、第一の移動相は、体積で約0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、または0.2%のギ酸を含む。一部の態様では、第一の移動相は、体積で約0.05%または0.1%のギ酸を含む。一部の態様では、第一の移動相は、体積で約0.1%のギ酸を含む。
【0114】
一部の態様では、クロマトグラフィーは、アセトニトリル中にフッ素置換酢酸を含む第二の移動相を使用する。一部の態様では、クロマトグラフィーは、アセトニトリル中にトリフルオロ酢酸を含む第二の移動相を使用する。一部の態様では、クロマトグラフィーは、アセトニトリルと水との混合物中にフッ素置換酢酸を含む第二の移動相を使用する。一部の態様では、クロマトグラフィーは、アセトニトリルと水との混合物中にトリフルオロ酢酸を含む第二の移動相を使用する。
【0115】
一部の態様では、クロマトグラフィーは、アセトニトリル中にギ酸を含む第二の移動相を使用する。一部の態様では、クロマトグラフィーは、アセトニトリルと水との混合物中にギ酸を含む第二の移動相を使用する。
【0116】
一部の態様では、第二の移動相は、体積で約0.05~0.2%のギ酸を含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約0.05~0.15%のギ酸を含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、または0.2%のギ酸を含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約0.05%または0.1%のギ酸を含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約0.1%のギ酸を含む。
【0117】
一部の態様では、第二の移動相は、体積で約75~95%のアセトニトリルを含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約75%、80%、85%、90%、または95%のアセトニトリルを含む。一部の態様では、第二の移動相は、体積で約90%のアセトニトリルと約10%の水とを含む。
【0118】
一部の態様では、クロマトグラフィーにおいて、第一の移動相と第二の移動相との組合せにおける第二の移動相のパーセンテージは、経時的に増加する。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、体積で約2%から約50%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、体積で約50%から約100%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約110~130分間で約2%から約50%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約120分間で約2%から約50%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約20~30分間で体積で約50%から約100%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約25分間で体積で約50%から約100%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、その後、約5分間にわたって体積で100%に増加される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、その後、体積で100%で約3分間維持される。一部の態様では、第二の移動相は、その後、約2分間にわたって体積で約2%に低減される。
【0119】
一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、体積で約100%で約0.5~1.5分間維持される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、体積で約100%で約1分間維持される。
【0120】
一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約1~10分間で約100%から約2%に低減される。一部の態様では、第二の移動相のパーセンテージは、約4分間で約100%から約2%に低減される。
【0121】
一部の態様では、液体クロマトグラフィーは高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)である。一部の態様では、液体クロマトグラフィーは超高圧液体クロマトグラフィー(UHPLC)である。
【0122】
一部の態様では、質量分析は、任意のイオン化モード、具体的には生体分子の分析に適したモードを用いてもよく、そのようなものとしては、以下に限定されないが、直接注入質量分析、エレクトロスプレーイオン化(ESI)-MS、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)-MS、リアルタイムでの直接分析(DART)-MS、大気圧化学イオン化(APCI)-MS、電子衝撃(El)または化学イオン化(CI)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)-MS、および大気圧イオン化-エレクトロスプレー(API-ES)が挙げられる。一部の態様では、質量分析は、API-ESイオン化モードを用いる。
【0123】
一部の態様では、質量分析は、40~5000m/zの範囲にわたってシグナルをスキャンする。一部の態様では、質量分析は、50~3000m/zの範囲にわたってシグナルをスキャンする。一部の態様では、質量分析は、300~3000m/zの範囲にわたってシグナルをスキャンする。
【0124】
一部の態様では、質量分析のスキャンタイプは、正極性である。一部の態様では、質量分析のデータ取得時間は、約1~130分である。一部の態様では、質量分析のデータ取得時間は、約2~120分である。
【0125】
一部の態様では、質量分析のノズル電圧は約400~600Vである。一部の態様では、質量分析のノズル電圧は約500Vである。一部の態様では、質量分析のスキマー電圧は約60~70Vである。一部の態様では、質量分析のスキマー電圧は約65Vである。一部の態様では、ノズル電圧とスキマー電圧との差は約400~450Vである。一部の態様では、ノズル電圧とスキマー電圧との差は約435Vである。
【0126】
一部の態様では、質量分析の乾燥ガス温度は約200~375℃である。一部の態様では、質量分析の乾燥ガス温度は約325℃である。一部の態様では、質量分析の乾燥ガス流量は約5~13L/分である。一部の態様では、質量分析の乾燥ガス流量は約12L/分である。
【0127】
一部の態様では、質量分析は、約3~6kVのキャピラリー電圧を用いる。一部の態様では、質量分析は、約3、4、5、または6kVのキャピラリー電圧を用いる。一部の態様では、質量分析は、約5kVのキャピラリー電圧を用いる。
【0128】
一部の態様では、質量分析は、約125~350Vのフラグメンター電圧を用いる。一部の態様では、質量分析は、約125V、130V、135V、145V、155V、160V、165V、175V、185V、190V、195V、200V、205V、210V、215V、220V、225V、230V、235V、240V、245V、250V、255V、260V、265V、270V、275V、280V、285V、290V、295V、300V、305V、310V、315V、320V、325V、330V、335V、340V、345V、または350Vのフラグメンター電圧を用いる。一部の態様では、質量分析は、約135Vのフラグメンター電圧を用いる。
【0129】
主題はその特定の態様を参照してかなり詳細に説明されてきたが、他の態様は可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲は、その中に含まれる特定の態様の説明に限定されるべきではない。
【実施例0130】
これより本開示を実施例と共に説明するが、本開示の作業を説明することを意図しており、本開示の範囲に関するいかなる制約も制限することを意図するものではない。別段の定義のない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を、本開示の方法および組成物の実践において使用することができるが、例示的な方法、デバイス、および材料を本明細書に記載する。
【0131】
実施例1:方法および機器全般
【0132】
1.1 試薬
【0133】
LCMS水、アセトニトリル、およびトリフルオロ酢酸をフィッシャーサイエンティフィック社から入手し、重炭酸アンモニウムをシグマアルドリッチ社から入手した。表1は、液体クロマトグラフィーおよび溶液の調製に用いられる試薬を示す。
【0134】
【0135】
1.2 機器
【0136】
以下の装置を用いて、本明細書に開示される実施例を実施した。
a) ウォーターズACQUITY UPLC BEH C8カラム、2.1×100mm、1.7μm;部品番号186002878
b) ピアース界面活性剤除去スピンカラム、0.5mL;カタログ番号87777
c) 適切な分析用天秤
d) 自動ピペット
e) クラスA容積測定ガラス製品
f) HPLCバイアルとキャップ
g) スパチュラと秤量ボート
h) アジレント1290 Infinity II UHPLCシステム
i) アジレント6545XT AdvanceBio四重極飛行時間質量分析計(Q-ToF)
【0137】
実施例2:溶液の調製
【0138】
2.1 100mM重炭酸アンモニウム の調製
【0139】
0.395±0.01グラムの重炭酸アンモニウムを、50mLのFalcon(登録商標)チューブに秤量した。メスシリンダーを用いて、50mLのLCMS水をチューブに移し、ボルテックスミキサーを用いて重炭酸アンモニウムを完全に溶解して、100mMの重炭酸アンモニウム溶液を得た。溶液は、2~8℃で1カ月間安定である。
【0140】
2.2 第一の移動相の調製(水中の0.1%トリフルオロ酢酸)
【0141】
メスシリンダーを用いて、1LのLCMS水を1Lのボトルに移した。ピペットを用いて、1000μLのトリフルオロ酢酸をボトルに移した。トリフルオロ酢酸と水とを5分間よく混合し、第一の移動相を得た。第一の移動相は、周囲温度で最長1カ月間安定である。
【0142】
2.3 第二の移動相の調製(90%アセトニトリルおよび10%の水中の0.1%トリフルオロ酢酸)
【0143】
900mLのアセトニトリルを1Lのメスシリンダーに加えた。LCMS水を1Lのメスシリンダーに加えて、1Lの溶液とした。溶液を1Lボトルに移した。ピペットを用いて、1000μLのトリフルオロ酢酸をボトルに移した。トリフルオロ酢酸と溶液とを5分間よく混合して、第二の移動相を得た。第二の移動相は、周囲温度で最長1カ月間安定である。
【0144】
実施例3:試料の調製
【0145】
スピンカラムの底部の封止を除去し、スピンカラムのキャップを緩めた。カラムを2mLの採取チューブに配し、1500×gで1分間遠心分離した。固定角ローターを用いる際には、圧縮樹脂を上向きに傾斜させてカラムの側面に目印を付けた。次いで、以後のすべてのステップで、この目印を外側に向けてカラムを遠心分離器に配した。
【0146】
400μLの100mM重炭酸アンモニウム溶液をカラムに加え、カラムを1500×gで1分間遠心分離した。このステップをさらに2回繰り返し、各ステップの後、フロースルーを廃棄した。カラムを新しい2mLの採取チューブに配した。5μgの試料を圧縮樹脂床の上部にゆっくりとアプライし、室温で2分間インキュベートした。カラムを1500×gで2分間遠心分離し、ポリマーを含まない試料を収集した。次いで、試料体積を、100mMの重炭酸アンモニウムにより最大100μLに調製した後、HPLCバイアルに移した。
【0147】
実施例4:AAV粒子中のVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の特性解析
【0148】
本実施例は、AAV粒子中のVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の比、ならびにVPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の質量を決定する方法を説明する。ここでは、AAV粒子を変性させ、液体クロマトグラフィーでVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質に分離した。分離されたVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質を、まずUVに供してAAV粒子中のVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の比を決定し、次いで質量分析に供してVPl、VP2、およびVP3カプシドタンパク質のそれぞれの質量を得た。
【0149】
4.1 LC動作条件
【0150】
AAVのVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の分離を、ACQUITY
UPLC(登録商標)BEH 1.7μm、2.l×l00mm、C8分析カラム(部品番号 186002878)を用いたACQUITY UPLC(登録商標)システム上で実施した。使用した移動相は:
第一の移動相(A):水中の0.1%トリフルオロ酢酸;および
第二の移動相(B):90%のアセトニトリルおよび10%の水中の0.1%のトリフルオロ酢酸。
【0151】
カラム温度を約80℃に維持し、移動相Bを0.4mL/分の流量で10%から40%におよび40%から45%に増加させて使用し、続いて100%の移動相Bで1分間フラッシングし、開始移動相組成物(10%の移動相B)でさらに5分間再平衡化することによって、分離を達成した。
【0152】
LCの動作条件を表2に挙げる。
【表2-1】
【表2-2】
【0153】
4.2 質量分析計(MS)の動作条件
【0154】
アジレント6545XT AdvanceBio四重極飛行時間質量分析計(Q-ToF)を用いて、m/z値700~13700m/zの範囲のサーベイスキャンにおけるAPI-ESイオン化を用いて質量分析を実施した。キャピラリー電圧、ノズル電圧、フラグメンター電圧、およびスキマー電圧は、それぞれ5kV、500V、175V、および65Vに設定した。乾燥ガス温度および乾燥ガス流量を、それぞれ300℃および13L/分に設定した。
【0155】
【0156】
4.3 分析と結果
【0157】
カプシドタンパク質を、まず、カラムコンパートメントを80℃に加熱することによって変性した。次いで、三つのカプシドタンパク質VP1、VP2、およびVP3を、ウォーターズUPLC BEH C8カラム(部品番号186002878)を用いることによってベースライン分離し、水中の0.1%トリフルオロ酢酸を含む第一の移動相と、アセトニトリルおよび水の混合物中の0.1%トリフルオロ酢酸を含む第二の移動相との組合せにより溶出し、その際に、第二の移動相のパーセンテージを経時的に増加させた。移動相におけるイオン対剤として0.1%トリフルオロ酢酸を使用することは、ベースライン分解能を補助する。
【0158】
液体クロマトグラフィーにて分離されたVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質をまずUVに供して相対量を決定し、次いで質量分析に供してVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の質量を決定した。
図1および表4に示すように、VP1/VP2/VP3の1:1:10付近の化学量論が、UVクロマトグラムのベースライン積分によって得られた。
【表4】
【0159】
次いで、三つのカプシドタンパク質のピークを、表5に挙げられたパラメータを用いてデコンボリューションした。総イオンクロマトグラムおよび三つすべてのピークのデコンボリューションされたスペクトルを、
図2および
図3A~3Cに示す。VP1のピーク(理論質量81587Da)下で検出された三つの主要な質量は、81496Da、81578Da、および81658Daであった。81496Daのピークは、N末端メチオニンの欠落および単一のアセチル化修飾を有するVP1タンパク質を表す。+80Daの質量シフトを有する他の二つのピークは、リン酸化を表す。VP2ピークのデコンボリューション(理論質量66381Da)は、以下二つの主要な質量を示した:66282Daおよび66360Da。66282Daのピークは、トレオニンの欠落したVP2タンパク質を表し、66360Daのピークは、+80の質量シフトを有する単一のリン酸化に合致する。VP3のピーク(理論質量59750Da)は、59662Daの単一の主要な質量を示し、これは、N末端メチオニン欠落および単一のアセチル化を有するVP3タンパク質の質量に合致する。
【表5】
【0160】
図3は、VP1、VP2、およびVP3の翻訳後修飾の検出を示す。表6は、AAV.rh74カプシドタンパク質の無傷の質量分析を示す。
【表6-1】
【表6-2】
【0161】
実施例5:LCMSを用いたAAVrh74の脱アミド化の特性解析
【0162】
カプシドタンパク質中の広範な脱アミド化は、質量分析によって決定することができ、この質量分析により、カプシドタンパク質中の脱アミド化の部位、およびこれらの部位での脱アミド化のレベルも決定することができる。AAVカプシドの脱アミド化を測定するために、カプシドタンパク質を変性させ、2Mのグアニジン塩酸塩および10mMのDTTの存在下で、90℃で10分間還元した。試料を室温に冷却した後、30mMのヨードアセトアミドをアルキル化のために添加し、室温で30分間、暗所でインキュベートした。次いで、1mLのDTTの添加によってアルキル化をクエンチした。20mMの重炭酸アンモニウムを試料に加えて、グアニジン塩酸塩を200mMに希釈した。次いで、試料を、1:20の酵素:タンパク質比でトリプシンを用いて消化し、37℃で一晩インキュベートした。一晩インキュベーションした後、トリフルオロ酢酸に終濃度0.5%まで添加することによって消化をクエンチし、試料を、NanoFlexソースを用いてQ Exactive HFに結合されたThermo UltiMate 3000 RSLCシステム上で分析した。
【0163】
表7は、同定された主要な脱アミド化部位と、これらの部位での脱アミド化のレベル(すなわち、脱アミド化のパーセンテージ)を示す。表7のAAV8のデータは、従前の刊行物(Molecular Therapy,Volume 26 No 12,Pages 2848-2962(2018))から開示されている。
【表7-1】
【表7-2】
【0164】
二つの緩衝液(重炭酸アンモニウムおよびTris-HCl)を別々に用いて、AAV.rh74の脱アミド化状態を測定した。
【0165】
重炭酸アンモニウムについては、100mMの重炭酸アンモニウムへの緩衝液交換を行うことによって、試料を変性させた。変性した試料を、10mMのDTTの添加によって還元し、37℃で45分間インキュベートした。次いで、試料中、ヨードアセトアミドを終濃度30mMまで添加することによって、アルキル化を実施した。次いで、変性、還元、およびアルキル化された試料を、10kDaのアミコンウルトラフィルターを用いて100mMの重炭酸アンモニウムに戻し交換した。次いで、トリプシンを用いて試料を消化し、37℃で一晩インキュベートした。重炭酸アンモニウム中で消化を行ったこの試料調製物を用いて、表7にみられるようにAAVrh74に対し同様のレベルの脱アミド化を得た。
【0166】
Tris-HClについては、60μgの試料のアリコートを、アミコン10K遠心フィルターを用いて4Mグアニジンおよび200mMのTris pH7.5に緩衝液交換して、試料マトリックスを除去し、タンパク質を濃縮した。グアニジン濃度を6Mに調整し、DTT(10mM)を60μgのアリコートに加えた。反応混合物を、56℃で45分間インキュベートし、次いで室温に冷却した。ヨードアセトアミド(30mM)を加え、室温で60分間、暗所でインキュベートした。次いで、Tris緩衝液(100mM、pH=7.5)を加えて、グアニジンHCl濃度を0.6Mに希釈した。トリプシン/Lys-C(60μg)を、60μgの還元およびアルキル化した試料(酵素:タンパク質比約1:1(w:w))に加えた。消化の際にメチオニンを10mMまで加えて、人為的な酸化を最小限にした。消化を37℃で一晩(17時間)行った。次に、TFA(1%)を添加してからLC-MS/MS分析を行った。
【0167】
表7に示すように、Tris-HClを緩衝液とすると、脱アミド化状態は、重炭酸アンモニウムを用いたものに比較して有意に低かった。
【0168】
Tris-HClを用いた方法をさらに最適化するために、
図4のフローチャートに従って、8つの別々のAAVカプシド試料を測定した。試料をまず、6Mのグアニジン塩酸塩、20mMのTris-HCl、pH7.5への緩衝液交換を行うことによって変性させた。次いで、DTTを終濃度10mMまで添加することによって試料を還元し、37℃で45分間インキュベートした。ヨードアセトアミドを終濃度30mMまで加えることによってアルキル化を行い、室温で1時間、暗所でインキュベートした。10kDaのアミコンウルトラフィルターを用いて、試料を20mMのTris-HCl、pH7.5に再び緩衝液交換した。次いで、アセトニトリルを終濃度10%まで試料に加え、メチオニンも終濃度10mMまで加えた。トリプシンを用いて、試料を37℃で一晩消化した。次いで、RP-HPLCを用いて、ペプチドをアジレント1290 U-HPLC上で分離する。次に、アジレント6545XT QToFを用いて、分離されたペプチドを検出し、MassHunterおよびBioconfirmソフトウェアを用いて脱アミド化分析を実施する。脱アミド化の状態を
図5に示し、酸化の状態を
図6に示す。存在する52個のアスパラギン残基のうち、48残基に脱アミド化は観察されなかった(VP1の総アスパラギン残基:56)。存在する39個のグルタミン残基のうち、39残基すべてに脱アミド化は観察されなかった(VP1の総グルタミン残基:48)。O18標識水を用いて、N57での少数の脱アミド化は、試料調製に関連するアーチファクトであることが示された。残りの5つのメチオニン残基には、酸化は検出されなかった(VP1の総メチオニン残基:11)。検出された14個のトリプトファン残基のうち、14残基すべてに酸化は観察されなかった(VP1の総トリプトファン残基:15)。
【0169】
重炭酸アンモニウムの消化は、経時的にpHが増加するため、脱アミド化アーチファクトを著しく増加させる可能性がある。したがって、観察されたより高いレベルの脱アミド化は、試料調製中に生成される脱アミド化アーチファクトであった可能性がある。脱アミド化レベルを確認するために、Tris HClベースの消化をSareptaでセットアップした。20mMのTris HCl、pH7.5を緩衝液として用いた。脱アミド化アーチファクトを低減することが知られていることから、10%のアセトニトリルを消化溶液に加えた。また、酸化アーチファクトを低減するために、10mMのメチオニンを消化溶液に添加した。
【0170】
したがって、本開示の方法は、脱アミド化、酸化、または他の翻訳後修飾をTris-HCl緩衝液により測定する際により正確である。
【0171】
実施例6:LC-QTOF-MSを用いた宿主細胞タンパク質の特性解析
【0172】
rAAVベースの遺伝子治療医薬品の純度を、AAV組成物に残存する宿主細胞タンパク質をLC-QTOF-MSにより特性解析することによって分析した。
【0173】
6.1 試料の調製
【0174】
AAVrh74試料に、既知量のインビトロジェンのヒトチオレドキシン1(HTI)タンパク質標品(カタログ番号LF-P0001)およびシグマのウシ炭酸脱水酵素II(BCAII)タンパク質標品(カタログ番号C7749)を添加した。ヒトチオレドキシン1(HTI)およびウシ炭酸脱水酵素II(BCAII)は、見出されたヒトHCPおよびウシHCPをそれぞれ定量するためのスパイキングタンパク質標品として選択した。免疫枯渇プロセスのため、100μLの0.05mg/mLの抗アデノ随伴ウイルス(AAV)VP1/VP2/VP3抗体および100μLの試料溶液を、20μLの0.05mg/mLのBCAIIおよび10μLの0.1mg/mLのHTIと共に、ピアースMS適合磁気IPキットの270μLのIP-MS細胞溶解緩衝液に、ピペットにより注入する。次いで、アメリカンリサーチプロダクツ社から得た抗アデノ随伴ウイルス(AAV)VP1/VP2/VP3(カタログ番号03-6105)およびピアースMS適合磁気IPキット(カタログ番号90409)を用いて、AAVカプシドタンパク質を試料から免疫沈降した。次いで、試料をピアース界面活性剤除去スピンカラム(カタログ番号87777)に通した。
【0175】
次いで、試料をプロメガ急速消化緩衝液(カタログ番号VA1060)に緩衝液交換した。試料を還元し、アルキル化し、70℃で60~180分間、急速消化トリプシンにより消化した。
【0176】
6.2 LCの動作条件
【0177】
消化された残留宿主細胞タンパク質の分離を、ウォーターズAcquityペプチドBEH C18、1.7μm、2.1×150mmカラムを用いて、アジレント1290 HPLCシステム上で行った。用いる移動相は以下の通りである:
【0178】
第一の移動相(A):水中の0.1%のギ酸;および
【0179】
第二の移動相(B):90%のアセトニトリルおよび10%の水中の0.1%のギ酸。
【0180】
カラム温度を約45℃に維持し、移動相Bを流速0.3mL/分で2%から50%におよび50%から100%に増加させて使用し、続いて100%の移動相Bで3分間フラッシングし、開始移動相組成物(2%の移動相B)でさらに5分間再平衡化させることによって、分離を達成した。
【0181】
LCの動作条件を表8に挙げる。
【表8】
6.3 質量分析計(MS)の動作条件
【0182】
アジレント6545XT AdvanceBio四重極飛行時間質量分析計(Q-ToF)を用いて、m/z値50~3000m/zの範囲のサーベイスキャンにおけるAPI-ESイオン化を使用して質量分析を実施した。キャピラリー電圧、ノズル電圧、フラグメンター電圧、およびスキマー電圧は、それぞれ4kV、500V、135V、および65Vに設定した。乾燥ガス温度および乾燥ガス流量を、それぞれ325℃および12L/分に設定した。
【0183】
質量分析計の動作条件を表9に挙げる。
【表9-1】
【表9-2】
【0184】
6.4 分析および結果
【0185】
実施例6.3で生成されたデータを、プロテインメトリックスから得られたByosソフトウェアによって処理して、あるUniprotタンパク質データベースに対して検索した。各残留タンパク質の同一性および相対量を、スパイクされたタンパク質標品の量の量に対して計算した。HCP分析では、3ロットのAAVウイルス粒子について、MSによって同定された宿主細胞タンパク質がごくわずか(ウシタンパク質は二つだがヒトタンパク質はなし)であったことが標示された(表10)。タンパク質の濃度は、ng/mLのオーダー、またはスパイクされたタンパク質標品に基づくppmレベルである。
【表10】
【0186】
以下の参考文献は、その全体が本明細書に組み込まれる。
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