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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001559
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/10 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
F16T1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101206
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智行
(57)【要約】
【課題】運転開始時にドレンをいち早く排出する。
【解決手段】ドレントラップ100は、弁室22が形成されたケーシング1と、弁室22に形成された第1弁孔311、弁室22に収容され、変位して第1弁孔311を開閉する第1弁体32を有する第1弁機構3と、第1弁体32に貫通形成され、第1弁機構3が閉弁状態のときに弁室22と第1弁孔311とを連通させ且つ孔径が第1弁孔311よりも小さい連通孔40、弁室22に収容され、変位して連通孔40を開閉する第2弁体42、温度に応じて第2弁体42を変位させる第2熱応動器43を有する第2弁機構4とを備え、第1弁機構3は、第1弁体32を開弁方向に付勢するバネ33をさらに有し、弁室22の圧力が所定値まで低下すると、第1弁体32がバネ33の付勢力によって変位し第1弁孔311を開放するように構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する弁室が形成されたケーシングと、
前記弁室に形成された第1弁孔、前記弁室に収容され、変位して前記第1弁孔を開閉する第1弁体を有する第1弁機構と、
前記第1弁体に貫通形成され、前記第1弁機構が閉弁状態のときに前記弁室と前記第1弁孔とを連通させ且つ孔径が前記第1弁孔よりも小さい連通孔、前記弁室に収容され、変位して前記連通孔を開閉する第2弁体、温度に応じて前記第2弁体を変位させる第2熱応動器を有する第2弁機構とを備え、
前記第1弁機構は、前記第1弁体を開弁方向に付勢するバネをさらに有し、前記弁室の圧力が所定値まで低下すると、前記第1弁体が前記バネの付勢力によって変位し前記第1弁孔を開放するように構成されている
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置において、
前記第2熱応動器は、前記第2弁体を保持しており、
前記第1弁体は、前記連通孔と前記第2弁体との距離が所定値となるように前記第2熱応動器を支持する支持部を有している
ことを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項1に記載の弁装置において、
前記弁室に形成された第3弁孔、前記弁室に収容され、変位して前記第3弁孔を開閉する第3弁体、温度に応じて前記第3弁体を変位させる第3熱応動器を有する第3弁機構をさらに備えている
ことを特徴とする弁装置。
【請求項4】
請求項3に記載の弁装置において、
前記連通孔および前記第3弁孔は、前記弁室における流体の流通方向に開口しており、
前記流通方向における前記第3弁孔の開口位置は、前記連通孔の開口位置よりも上流側である
ことを特徴とする弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蒸気システムに設けられ、周囲の温度に応じて閉弁または開弁を行う熱応動式のドレントラップが知られている。例えば特許文献1に開示のドレントラップは、弁孔、弁体および熱応動器を有する弁機構を備える。弁機構では、周囲の温度が高温のときに弁体が熱応動器によって変位して弁孔を閉鎖し、周囲の温度が低温のときに弁体が熱応動器によって変位して弁孔を開放する。これにより、ドレントラップは、所定の温度未満のドレンを排出する一方、所定の温度以上の蒸気の排出を阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-151960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蒸気システムの運転開始時には、システム内に残存する低温ドレンに蒸気が混合することによって発生し得るウォーターハンマを防止する観点から、残存するドレンをいち早く排出する必要がある。しかしながら、システム内に残存するドレンの量が想定以上に多い場合があり、その場合には、ドレンをいち早く排出することが困難になる。
【0005】
本開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転開始時に流体をいち早く排出することができる弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の弁装置は、ケーシングと、第1弁機構と、第2弁機構とを備えている。前記ケーシングは、流体が流通する弁室が形成されている。前記第1弁機構は、前記弁室に形成された第1弁孔、前記弁室に収容され、変位して前記第1弁孔を開閉する第1弁体を有する。前記第2弁機構は、前記第1弁体に貫通形成され、前記第1弁機構が閉弁状態のときに前記弁室と前記第1弁孔とを連通させ且つ孔径が前記第1弁孔よりも小さい連通孔、前記弁室に収容され、変位して前記連通孔を開閉する第2弁体、温度に応じて前記第2弁体を変位させる第2熱応動器を有する。そして、前記第1弁機構は、前記第1弁体を開弁方向に付勢するバネをさらに有し、前記弁室の圧力が所定値まで低下すると、前記第1弁体が前記バネの付勢力によって変位し前記第1弁孔を開放するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
前記の弁装置によれば、運転開始時に流体をいち早く排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ドレントラップの断面図である。
図2図2は、ケーシング内の弁室を流入口側から視て示す平面図である。
図3図3は、第1弁機構および第2弁機構を拡大して示す側面図である。
図4図4は、第3弁機構を拡大して示す側面図である。
図5図5は、開弁時の第2熱応動器および第3熱応動器を示す断面図である。
図6図6は、第1弁機構および第2弁機構の一状態を示す図3相当図である。
図7図7は、閉弁時の第2熱応動器および第3熱応動器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、ドレントラップ100の断面図である。図2は、ケーシング1内の弁室22を流入口21側から視て示す平面図である。
【0010】
ドレントラップ100は、蒸気システムの蒸気配管等に設けられ、蒸気の流出を阻止する一方、ドレンを流出させる。ドレントラップ100は弁装置の一例であり、ドレンおよび蒸気は流体の一例である。ドレントラップ100は、ケーシング1と、3つの弁機構(即ち、第1弁機構3、第2弁機構4および第3弁機構5)とを備えている。ケーシング1には、ドレンが流通する流路2が形成されている。3つの弁機構は、流路2に設けられ、流路2を開閉する。
【0011】
ケーシング1には、流路2の一部として、ドレンが流通する弁室22と、弁室22に連通するドレンの流入口21および流出口24と、弁室22と流出口24とを連通させる連通路23とが形成されている。また、弁室22には、流路2の一部として、後述する第1弁体32の連通孔40(図3参照)が形成されている。
【0012】
流路2は、それぞれがドレンを流出させるための3つの流路(即ち、第1流路2A、第2流路2Bおよび第3流路2C)を有している。具体的に、第1流路2Aは、流入口21、弁室22および流出口24によって形成される。第2流路2Bは、流入口21、弁室22、連通孔40および流出口24によって形成される。第3流路2Cは、流入口21、弁室22、連通路23および流出口24によって形成される。
【0013】
具体的に、ケーシング1は、ドレンの流通方向に互いに接続される第1部材11および第2部材12を有している。詳しくは、第1部材11のフランジ11aと第2部材12のフランジ12aとが、ガスケット13を挟んだ状態で接続されている。この例では、両者のフランジ11a,12aはクランプ7によって固定されている。第1部材11には流入口21が形成され、第2部材12には連通路23および流出口24が形成されている。弁室22は、第1部材11と第2部材12とに跨って形成されている。流入口21および流出口24は、同じ第1軸心X1を有している、即ち互いに同軸に形成されている。この例において、ドレンの流通方向は、第1軸心X1が延びる方向と同じである。
【0014】
図3は、第1弁機構3および第2弁機構4を拡大して示す側面図である。図4は、第3弁機構5を拡大して示す側面図である。図5は、開弁時の第2熱応動器43および第3熱応動器53を示す断面図である。
【0015】
第1弁機構3は、第1流路2Aを開閉する。つまり、第1弁機構3は、流入口21から弁室22に流入してきたドレンを流出口24に流出させる一方、流入口21から弁室22に流入してきた蒸気の流出口24への流出を阻止する。具体的に、第1弁機構3は、弁室22に設けられており、第1弁座31、第1弁体32およびバネ33を有している。
【0016】
第1弁座31は、第1弁孔311を有している。つまり、第1弁孔311は、弁室22に形成されている。第1弁孔311は、弁室22と流出口24とを連通させる。より詳しくは、第1弁孔311は、弁室22の一部を区画する第1壁面12bに開口している。第1弁孔311の軸心である第2軸心X2は、第1軸心X1と平行である。つまり、第1弁孔311は、ドレンの流通方向に開口している。第1壁面12bには、第1弁孔311を囲む環状のシート面312が形成されている。
【0017】
第1弁体32は、弁室22に収容され、変位して第1弁孔311を開閉する。具体的に、第1弁体32は、第1弁孔311に対向するように弁室22に配置されている。第1弁体32は、進退して第1弁座31に離着座することで第1弁孔311を開閉する。つまり、第1弁体32は、第1弁孔311へ進出してシート面312に着座することで第1弁孔311を閉鎖し、第1弁孔311から後退してシート面312から離座することで第1弁孔311を開放する。
【0018】
より詳しくは、第1弁体32は、第1弁孔311を開閉する円柱部321と、後述する第2弁機構4の第2熱応動器43を支持する支持部323とを有している。円柱部321は、第1弁孔311と同軸に配置され、第1弁孔311に対向している。円柱部321における第1弁孔311に対向する側の端面には、シート面312に離着座するシール面322が形成されている。
【0019】
支持部323は、円柱部321における第1弁孔311側とは反対側の端部の外周に設けられる略環状板である。つまり、支持部323は、円柱部321の外周面から径方向外側に延びる部材である。支持部323の外周縁は、第1弁孔311側とは反対側、即ちドレンの流通方向における上流側に向かって湾曲している。第2熱応動器43は、支持部323の外周縁に載置されている。こうして、支持部323は第2熱応動器43を支持している。
【0020】
バネ33は、第1弁体32を開弁方向に付勢しており、この例では、コイルバネによよって形成されている。バネ33の一端は、第1壁面12b、より詳しくは、第1壁面12bにおけるシート面312よりも外側に接している。つまり、第1壁面12bは、
バネ33のバネ受け部としても形成されている。バネ33の他端は、第1弁体32、より詳しくは、支持部323に接している。こうして、バネ33は第1弁体32を支持し且つ開弁方向に付勢する。
【0021】
第1弁機構3は、弁室22の圧力に応じて第1弁体32を変位させて第1弁孔311を開閉するように構成されている。
【0022】
つまり、第1弁機構3では、弁室22の圧力が所定値(この例では、「運転開始時の圧力Pb」)まで低下すると、第1弁体32がバネ33の付勢力によって変位(即ち、第1弁座31から離座)し、第1弁孔311を開放する。また、第1弁機構3では、弁室22の圧力が「運転時の圧力Pa」まで上昇すると、第1弁体32がバネ33の付勢力に抗して変位(即ち、第1弁座31に着座)し、第1弁孔311を閉鎖する。こうして、第1弁孔311が開閉されることにより、第1流路2Aが開閉される。
【0023】
蒸気システムの運転時には、弁室22の圧力は「運転時の圧力Pa」まで上昇する。一方、運転開始時(即ち、運転立ち上げ時)では、弁室22の圧力は直ぐには上昇しないため、弁室22の圧力は運転時の圧力Paよりも低い「運転開始時の圧力Pb」となる。第1弁体32には、運転時の圧力Paおよび運転開始時の圧力Pbによって閉弁力(第1弁体32が閉弁しようとする力)が作用する。当然であるが、運転開始時の圧力Pbによる第1弁体32の閉弁力は、運転時の圧力Paによる第1弁体32の閉弁力よりも小さい。
【0024】
バネ33の付勢力は、運転開始時の圧力Pbによる第1弁体32の閉弁力よりも大きく設定されている。また、バネ33の付勢力は、運転時の圧力Paによる第1弁体32の閉弁力よりも小さく設定されている。そのため、第1弁機構3は、運転開始時には、弁室22の圧力が運転開始時の圧力Pbまで低下するので開弁し、その後の運転時には、弁室22の圧力が運転時の圧力Paまで上昇するので閉弁する。
【0025】
第2弁機構4は、第2流路2Bを開閉する。つまり、第2弁機構4は、流入口21から弁室22に流入してきたドレンを第1弁体32の連通孔40を介して流出口24に流出させる一方、流入口21から弁室22に流入してきた蒸気の流出口24への流出を阻止する。具体的に、第2弁機構4は、弁室22に設けられており、連通孔40、第2弁座41、第2弁体42および第2熱応動器43を有している。
【0026】
連通孔40は、第1弁機構3が閉弁状態のときに弁室22と第1弁孔311とを連通させる。連通孔40は、第1弁体32に貫通形成されている。より詳しくは、連通孔40は、円柱部321をその軸心の方向に貫通しており、円柱部321と同軸に形成されている。この例では、連通孔40は、第1弁孔311側の大径部と、第1弁孔311側とは反対側の小径部とを有している。この小径部は、孔径が第1弁孔311よりも小さい。この小径部は、後述する第2弁孔411として形成されている。
【0027】
第2弁座41は、第1弁体32、より詳しくは円柱部321に形成されている。第2弁座41は、前述の如く、連通孔40の小径部である第2弁孔411を有している。つまり、第2弁孔411は、円柱部321における支持部323が設けられている側の端面に開口している。第2弁孔411は、第1弁機構3が閉弁状態のときに、弁室22と連通孔40(より詳しくは、連通孔40の大径部)とを連通させる。第2弁孔411は、第1弁孔311と同軸に形成されている。円柱部321における第2弁孔411が開口する端面には、第2弁孔411を囲む環状のシート面412が形成されている。
【0028】
このように、第1弁体32は、第1弁機構3の弁体の機能を有すると共に、第2弁機構4の弁座の機能をも有している。そのため、第1弁機構3および第2弁機構4において、部品点数が削減される。
【0029】
第2弁体42は、弁室22に収容され、変位して第2弁孔411を開閉することで連通孔40を開閉する。具体的に、第2弁体42は、第2弁孔411に対向するように弁室22に配置されている。第2弁体42は、進退して第2弁座41に離着座することで第2弁孔411を開閉する。つまり、第2弁体42は、第2弁孔411へ進出してシート面412に着座することで第2弁孔411を閉鎖し、第2弁孔411から後退してシート面412から離座することで第2弁孔411を開放する。第2弁体42における第2弁孔411に対向する面には、シート面412に離着座するシール面421が形成されている(図5参照)。
【0030】
第2熱応動器43は、温度に応じて第2弁体42を変位させる。つまり、第2熱応動器43は、第2弁体42を第2弁座41に離着座させて第2弁体42に第2弁孔411を開閉させる。図5に示すように、第2熱応動器43は、ベース61と、サポート部材62と、第1ダイヤフラム63と、第2ダイヤフラム64と、膨張媒体65、コンタクト部66とを有している。
【0031】
第1ダイヤフラム63は、ベース61との間に収容室S1を形成する。具体的に、第1ダイヤフラム63は、略円盤状に形成されている。第1ダイヤフラム63は、その中央部が第2軸心X2の方向に変位するように変形可能となっている。つまり、第1ダイヤフラム63は第2弁孔411と同軸に設けられている。ベース61は、略円盤状に形成されている。ベース61は、第1ダイヤフラム63と略同じ外径を有しており、第1ダイヤフラム63に対向している。
【0032】
膨張媒体65は、収容室S1に収容され、温度に応じて膨張および収縮することで第1ダイヤフラム63を変形させる。例えば、膨張媒体65は、水より沸点が低い液体である。尚、膨張媒体65は、水であってもよく、水より沸点が低い液体と水との混合物であってもよい。
【0033】
収容室S1は、密閉空間である。収容室S1では、膨張媒体65の膨張および収縮によって第1ダイヤフラム63が変形する。具体的には、膨張媒体65が膨張すると、第1ダイヤフラム63の中央部がベース61から離れるように、即ち、収容室S1が拡大するように、第1ダイヤフラム63が変形する。一方、膨張媒体65が収縮すると、第1ダイヤフラム63の中央部がベース61に近づくように、即ち、収容室S1が縮小するように、第1ダイヤフラム63が変形する。
【0034】
ベース61の中央部には、収容室S1に膨張媒体65を注入するための開口61aが形成されている。開口61aは、栓67によって封止されている。栓67は、例えば、溶接によってベース61に固着される。
【0035】
第2ダイヤフラム64は、略円盤状に形成されている。第2ダイヤフラム64は、第1ダイヤフラム63と略同じ外径を有している。第1ダイヤフラム63および第2ダイヤフラム64は、互いに対向している。詳しくは、第2ダイヤフラム64は、第1ダイヤフラム63におけるベース61とは反対側の面に対向している。つまり、第2ダイヤフラム64は収容室S1の外部に設けられている。第2ダイヤフラム64は、その中央部が第2軸心X2の方向に変位するように変形可能となっている。
【0036】
サポート部材62は、ベース61との間で第1ダイヤフラム63および第2ダイヤフラム64を挟持する。具体的に、サポート部材62は、略円盤状に形成されている。サポート部材62は、ベース61と略同じ外径を有しており、第2ダイヤフラム64における第1ダイヤフラム63とは反対側の面に対向している。
【0037】
コンタクト部66は、第1ダイヤフラム63の変形を第2ダイヤフラム64に伝える。具体的に、コンタクト部66は、第1ダイヤフラム63と第2ダイヤフラム64との間の空間S2に配置されている。コンタクト部66は、第2ダイヤフラム64における第1ダイヤフラム63と対向する面に取り付けられている。コンタクト部66は、膨張媒体65が膨張した際に第1ダイヤフラム63が接触することで、第1ダイヤフラム63の変形を第2ダイヤフラム64に伝える。
【0038】
第2熱応動器43は、第2弁体42を保持し、第1ダイヤフラム63の変形によって第2弁体42を変位(詳しくは、進退)させる。具体的に、第2熱応動器43は、第2弁体42を、サポート部材62と第2ダイヤフラム64との間において保持している。第2熱応動器43は、サポート部材62に形成された開口62aから第2弁体42を進退させる。
【0039】
具体的には、第2弁体42は、第2ダイヤフラム64における第1ダイヤフラム63とは反対側の面に設けられている。第2弁体42は、コンタクト部66との間に第2ダイヤフラム64の中央部を挟み込んだ状態で溶接されている。第2弁体42は、第2ダイヤフラム64の変形に応じて、第2ダイヤフラム64の中央部と一体的に変位する。
【0040】
開口62aは、サポート部材62の中央部に形成されている。第2弁体42の一部は、開口62aから第1ダイヤフラム63とは反対側に向かって突出し得る。第2弁体42は、開口62aを通じて第2弁孔411に対し進退する。さらに、サポート部材62には、開口62aを囲むように複数の開口62cが形成されている。弁室22に流入したドレンは、開口62a,62cを介して、サポート部材62と第2ダイヤフラム64との間の空間に流入し得る。
【0041】
第2ダイヤフラム64および第2弁体42には、第2ダイヤフラム64および第2弁体42を貫通する貫通孔422が形成されている。具体的には、第2ダイヤフラム64および第2弁体42の各々に孔が形成され、それらの孔が連続的に繋がって貫通孔422を形成している。貫通孔422は、閉弁時において空間S2と第2弁孔411とを連通させる。コンタクト部66の中央部には、貫通孔422と繋がる孔66aが形成されている。さらに、コンタクト部66には、空間S2と孔66aとを連通させる連通路66bが形成されている。
【0042】
第2弁機構4では、温度に応じて第2弁体42が変位して第2弁孔411を開閉する。具体的に、弁室22の温度が低くなると、膨張媒体65の収縮によって第1ダイヤフラム63が変形することで第2弁体42が後退して第2弁座41から離座する。これにより、第2弁孔411が開放される。一方、弁室22の温度が高くなると、膨張媒体65の膨張によって第1ダイヤフラム63が変形することで第2弁体42が進出して第2弁座41に着座する。これにより、第2弁孔411が閉鎖される。こうして、第2弁孔411が開閉されることにより、第2流路2Bが開閉される。
【0043】
第2熱応動器43は、前述の如く、第1弁体32の支持部323によって支持されている。支持部323は、連通孔40と第2弁体42との距離、より詳しくは、第2弁孔411と第2弁体42との距離が所定値となるように第2熱応動器43を支持している。この所定値は、第1ダイヤフラム63の変形によって第2弁体42が第2弁孔411へ向かって変位する際の第2弁体42の変位量と、開弁時のドレンの必要流出量とに基づいて設定される。所定値が小さくなると、第2弁体42が第2弁座41に着座しやすくなる一方、必要流出量が低くなる。所定値が大きくなると、必要流出量が高くなる一方、第2弁体42が第2弁座41に着座しにくくなる。
【0044】
このように、支持部323は、第2弁座41に対する第2弁体42の相対位置を決める位置決め機能も有する。第2熱応動器43は、第1弁体32の支持部323によって支持されているため、第1弁体32と一体的に変位する。したがって、第1弁体32が変位しても、第2弁座41に対する第2弁体42の相対位置は一定に保持される。
【0045】
また、第2弁機構4は、スナップリング44を有している。スナップリング44は、弁室22に設けられている。詳しくは、スナップリング44は、ドレンの流通方向における第2熱応動器43よりも上流側に設けられている。スナップリング44は、第2熱応動器43のドレンの流通方向における上流側の位置を規制する。なお、弁室22には、第1弁体32および第2熱応動器43の変位動作をガイドするガイド12dが設けられている。
【0046】
第3弁機構5は、第3流路2Cを開閉する。つまり、第3弁機構5は、流入口21から弁室22に流入してきたドレンを連通路23を介して流出口24に流出させる一方、流入口21から弁室22に流入してきた蒸気の流出口24への流出を阻止する。図4にも示すように、第3弁機構5は、弁室22に設けられており、第3弁座51、第3弁体52および第3熱応動器53を有している。
【0047】
第3弁座51は、連通路23における弁室22側の開口である第3弁孔511を有している。つまり、第3弁孔511は弁室22に形成されている。第3弁孔511は、弁室22と連通路23とを連通させる。より詳しくは、第3弁孔511は、弁室22の一部を区画する第2壁面12cに開口している。第3弁孔511の軸心である第3軸心X3は、第2軸心X2と平行である。つまり、第3軸心X3は、ドレンの流通方向に開口している。第3軸心X3は、第2軸心X2に対して第2軸心X2と直交する方向にシフトした位置にある。第2壁面12cには、第3弁孔511を囲む環状のシート面512が形成されている。
【0048】
この例では、ドレンの流通方向における第3弁孔511の開口位置は、連通孔40(より詳しくは、第2弁孔411)の開口位置よりも上流側である。つまり、第2軸心X2や第3軸心X3の延びる方向において、第2壁面12cの位置は、第1弁体32の円柱部321の位置よりも流入口21寄りである。
【0049】
第3弁体52は、弁室22に収容され、変位して第3弁孔511を開閉する。具体的に、第3弁体52は、第3弁孔511に対向するように弁室22に配置されている。第3弁体52は、進退して第3弁座51に離着座することで第3弁孔511を開閉する。つまり、第3弁体52は、第3弁孔511へ進出してシート面512に着座することで第3弁孔511を閉鎖し、第3弁孔511から後退してシート面512から離座することで第3弁孔511を開放する。第3弁体52における第3弁孔511に対向する面には、シート面512に離着座するシール面521が形成されている(図5参照)。
【0050】
第3熱応動器53は、温度に応じて第3弁体52を変位させる。つまり、第3熱応動器53は、第3弁体52を第3弁座51に離着座させて第3弁体52に第3弁孔511を開閉させる。図5に示すように、第3熱応動器53は、第2熱応動器43と同様の構成である。即ち、第3熱応動器53も、ベース61と、サポート部材62と、第1ダイヤフラム63と、第2ダイヤフラム64と、膨張媒体65、コンタクト部66とを有している。
【0051】
なお、第3熱応動器53においては、第1ダイヤフラム63は、その中央部が第3軸心X3の方向に変位するように変形可能となっている。また、第2ダイヤフラム64は、その中央部が第3軸心X3の方向に変位するように変形可能となっている。
【0052】
第3弁機構5では、温度に応じて第3弁体52が変位して第3弁孔511を開閉する。具体的に、弁室22の温度が低くなると、膨張媒体65の収縮によって第1ダイヤフラム63が変形することで第3弁体52が後退して第3弁座51から離座する。これにより、第3弁孔511が開放される。一方、弁室22の温度が高くなると、膨張媒体65の膨張によって第1ダイヤフラム63が変形することで第3弁体52が進出して第3弁座51に着座する。これにより、第3弁孔511が閉鎖される。こうして、第3弁孔511が開閉されることにより、第3流路2Cが開閉される。
【0053】
図4に示すように、第3熱応動器53は、弁室22に設けられた段差12eに載置されて支持されている。弁室22において、段差12eは第2壁面12cよりも流入口21寄りに位置している。段差12eは、第3弁孔511と第3弁体52との距離が所定値となるように第3熱応動器53を支持している。この所定値は、第2熱応動器43と同様、第1ダイヤフラム63の変形によって第2弁体42が第2弁孔411へ向かって変位する際の第2弁体42の変位量と、開弁時のドレンの必要流出量とに基づいて設定される。段差12eは、第3弁座51に対する第3弁体52の相対位置を決める位置決め機能も有する。
【0054】
また、第3弁機構5は、第2弁機構4と同様、スナップリング54を有している。スナップリング54は、弁室22に設けられている。詳しくは、スナップリング54は、ドレンの流通方向における第3熱応動器53よりも上流側に設けられている。スナップリング54は、第3熱応動器53のドレンの流通方向における上流側の位置を規制する。
【0055】
〈運転開始時の動作〉
蒸気システムの運転開始時(運転立ち上げ時)における前述のドレントラップ100の動作について説明する。運転開始時は、蒸気システムの配管等に低温低圧のドレンが残留しており、弁室22の圧力および温度は低い状態となっている。つまり、弁室22の圧力は運転開始時の圧力Pbまで低下している。
【0056】
第1弁機構3では、バネ33の付勢力が運転開始時の圧力Pbによる第1弁体32の閉弁力よりも大きいため、図3に示すように、第1弁体32が第1弁座31から離座し、第1弁孔311が開放されている。第3弁機構5では、弁室22の温度が低いため、図5に示すように、第3弁体52が第3弁座51から離座し、第3弁孔511が開放されている。なお、第2弁機構4においても、弁室22の温度が低いため、図5に示すように、第2弁体42が第2弁座41から離座し、第2弁孔411が開放されている。つまり、第1弁機構3、第2弁機構4および第3弁機構5の何れもが、開弁している。
【0057】
運転開始時には、蒸気システムの残留ドレンがドレントラップ100に流入する。ドレントラップ100では、流入口21から弁室22に流入したドレンが、第1弁孔311を介して流出口24に流出する。ドレンは、流出口24からケーシング1外に排出される。このように、ドレントラップ100では、残留ドレンが第1流路2Aを通じて排出される。ここで、第1弁孔311は第2弁孔411よりも孔径が大きいため、多量のドレンがいち早く排出される。
【0058】
また、蒸気システムの残留ドレンが非常に多い場合、流入口21から弁室22に流入したドレンの一部は、第3弁孔511を介して連通路23に流れて流出口24に流出し得る。さらには、流入口21から弁室22に流入したドレンの一部は、第2弁孔411を介して連通孔40に流れて流出口24に流出し得る。このように、ドレントラップ100では、残留ドレンが第2流路2Bおよび第3流路2Cを通じても排出される。そのため、残留ドレンが非常に多い場合であっても、残留ドレンがいち早く排出される。
【0059】
また、第2弁機構4においては、第1弁機構3が開弁しても、即ち第1弁体32が変位しても、第2弁座41に対する第2弁体42の相対位置が保持される。そのため、第2流路2Bにおけるドレンの排出量が適切に確保される。
【0060】
こうして、ドレントラップ100は、運転開始時には、蒸気システムに残留している多量の低温ドレンをいち早く排出する。
【0061】
〈運転時の動作〉
蒸気システムの運転時における前述のドレントラップ100の動作について説明する。運転時は、蒸気システムの配管等で発生した高圧のドレンがドレントラップ100に流入してきて、弁室22の圧力は高い状態となる。つまり、弁室22の圧力が運転時の圧力Paまで上昇する。
【0062】
図6は、第1弁機構3および第2弁機構4の一状態を示す図3相当図である。第1弁機構3では、バネ33の付勢力が運転時の圧力Paによる第1弁体32の閉弁力よりも小さいため、図6に示すように、第1弁体32が第1弁座31に着座し、第1弁孔311が第1弁体32によって閉鎖される。つまり、運転時には第1弁機構3は閉弁状態になる。
【0063】
ドレントラップ100に流入してきたドレンは、弁室22における第2弁機構4側の部分に流れて貯留される。つまり、連通孔40(より詳しくは、第2弁孔411)の開口位置が第3弁孔511の開口位置よりも下流側であるため、ドレンは弁室22において第3弁機構5側ではなく第2弁機構4側へ流れる。
【0064】
運転時にドレントラップ100に流入するドレンの温度は、やや高温ではあるが、蒸気の温度ほど高温ではない。そのため、基本的には、ドレントラップ100に蒸気ではなくドレンが流入してくる限り、弁室22の温度、より詳しくは第2弁機構4の周囲温度はそれほど高温にはならない。したがって、第2弁機構4では、膨張媒体65の体積(即ち、膨張の度合い)が小さいため、図6に示すように、第2弁体42が第2弁座41から離座したままである。つまり、第2弁機構4は開弁状態のままである。そのため、ドレントラップ100に流入したドレンは、第2弁機構4を介して、即ち第2流路2Bを介して、ケーシング1外に流出する。
【0065】
ドレントラップ100へのドレンの流入量が増大し、第2弁機構4によるドレンの流出量よりも多くなると、弁室22の全体においてドレンが貯留されていく。つまり、弁室22においてドレンが第2弁機構4の周囲だけでなく第3弁機構5の周囲にも及ぶ。そうすると、第3弁機構5では、第2弁機構4と同様、膨張媒体65の体積が小さいため、図4に示すように、第3弁体52が第3弁座51から離座したまままである。つまり、第3弁機構5は開弁状態のままである。そのため、ドレントラップ100に流入したドレンは、第2弁機構4だけでなく第3弁機構5も介して、即ち第2流路2Bだけでなく第3流路2Cも介して、ケーシング1外に流出する。
【0066】
このように、運転時のドレントラップ100では、第1弁機構3は閉弁するものの、第2弁機構4および第3弁機構5は開弁するため、適切にドレンを流出させ得る。しかも、ドレントラップ100へのドレンの流入量がそれほど多くないときは、第2弁機構4のみによってドレンを流出させる。ドレントラップ100へのドレンの流入量が多いときは、第2弁機構4および第3弁機構5の両方によってドレンを流出させる。つまり、運転時のドレントラップ100では、ドレンの排出容量がドレンの流入量に応じて変化する。
【0067】
図7は、閉弁時の第2熱応動器43および第3熱応動器53を示す断面図である。流入口21から弁室22に高温高圧の蒸気が流入してきた場合、弁室22の温度および圧力は高い状態になる。そのため、弁室22の圧力は運転時の圧力Paのままであるため、第1弁機構3は閉弁状態のままである。一方、第2弁機構4では、弁室22の温度が高くなったため、図7に示すように、第1ダイヤフラム63の変形によって第2弁体42が第2弁座41に着座する。これにより、第2弁孔411が閉鎖される。第3弁機構5においても同様、図7に示すように、第1ダイヤフラム63の変形によって第3弁体52が第3弁座51に着座する。これにより、第3弁孔511が閉鎖される。こうして、第1流路2A、第2流路2Bおよび第3流路2Cが閉鎖されるので、ドレントラップ100に流入してきた蒸気の流出が阻止される。
【0068】
このように、ドレントラップ100は、運転時において、蒸気の流出を阻止しつつ、ドレンを流出させる。
【0069】
続いて、第2弁機構4(第3弁機構5)のフェールオープン機能について説明する。この例のフェールオープン機能は、閉弁時において第1ダイヤフラム63及び第2ダイヤフラム64の少なくとも一方が破損したときに、自動的に第2弁孔411(第3弁孔511)を開放する機能である。例えば、第1ダイヤフラム63が破損した場合、膨張媒体65が収容室S1から空間S2に漏出する。空間S2に漏出した膨張媒体65は、連通路66b、孔66aおよび貫通孔422(貫通孔522)を介して第2弁孔411(第3弁孔511)に流出する。第1ダイヤフラム63は、膨張媒体65の漏出によって、その中央部が第2ダイヤフラム64とは反対側へ変位するように変形する。第2ダイヤフラム64は、第1ダイヤフラム63による押圧から解放され、その中央部が第1ダイヤフラム63の方へ変位するように変形する。それに応じて、第2弁体42(第3弁体52)は第2弁座41(第3弁座51)から離座し、第2弁孔411(第3弁孔511)が開放される。その結果、弁室22の流体は、第2弁孔411(第3弁孔511)から流出する。
【0070】
以上のように、ドレントラップ100は、ケーシング1と、第1弁機構3と、第2弁機構4とを備えている。ケーシング1は、ドレンが流通する弁室22が形成されている。第1弁機構3は、弁室22に形成された第1弁孔311、弁室22に収容され、変位して第1弁孔311を開閉する第1弁体32を有する。第2弁機構4は、第1弁体32に貫通形成され、第1弁機構3が閉弁状態のときに弁室22と第1弁孔311とを連通させ且つ孔径が第1弁孔311よりも小さい連通孔40、弁室22に収容され、変位して連通孔40を開閉する第2弁体42、温度に応じて第2弁体42を変位させる第2熱応動器43を有する。そして、第1弁機構3は、第1弁体32を開弁方向に付勢するバネ33をさらに有し、弁室22の圧力が所定値まで低下すると、第1弁体32がバネ33の付勢力によって変位し第1弁孔311を開放するように構成されている。
【0071】
この構成によれば、運転開始時において、弁室22の圧力が低くなるため、第2弁機構4だけでなく第1弁機構3も開弁する。第1弁機構3の第1弁孔311の孔径は、第2弁機構4の第2弁孔411の孔径よりも大きい。そのため、運転開始時に、蒸気システム内に残留している多量のドレンをいち早く排出することができる。したがって、低温ドレンに蒸気が混合することによって発生し得るウォーターハンマを未然に防止することができる。
【0072】
また、第2弁体42が開閉する連通孔40が第1弁体32に形成されているため、第1弁体32は、第1弁機構3の弁体の機能を有すると共に、第2弁機構4の弁座の機能をも有する。これにより、第1弁機構3および第2弁機構4の部品点数を削減することができる。また、第1弁機構3および第2弁機構4のコンパクト化を図ることができる。
【0073】
また、ドレントラップ100において、第2熱応動器43は、第2弁体42を保持している。第1弁体32は、連通孔40と第2弁体42との距離が所定値となるように第2熱応動器43を支持する支持部323を有している。
【0074】
この構成によれば、連通孔40と第2弁体42との距離(より詳しくは、第2弁孔411と第2弁体42との距離)が所定値となるように第2熱応動器43が支持されるので、第1弁体32が変位しても、連通孔40に対する第2弁体42の相対位置を保持することができる。そのため、第2弁機構4によるドレンの排出量を適切に確保することができる。
【0075】
また、ドレントラップ100は、弁室22に形成された第3弁孔511、弁室22に収容され、変位して第3弁孔511を開閉する第3弁体52、温度に応じて第3弁体52を変位させる第3熱応動器53を有する第3弁機構5をさらに備えている。
【0076】
この構成によれば、第3弁機構5が設けられているので、ドレンの排出量を増大させることができる。特に、運転開始時には、より多量の残留ドレンをいち早く排出することができる。
【0077】
また、ドレントラップ100において、連通孔40および第3弁孔511は、弁室22におけるドレンの流通方向に開口している。その流通方向における第3弁孔511の開口位置は、連通孔40の開口位置よりも上流側である。
【0078】
この構成によれば、運転時においてドレンの排出容量をドレンの流入量に応じて変化させることができる。つまり、ドレントラップ100へのドレンの流入量がそれほど多くないときは、第2弁機構4のみによってドレンを流出させることができる。ドレントラップ100へのドレンの流入量が多いときは、第2弁機構4および第3弁機構5の両方によってドレンを流出させることができる。これにより、例えばドレンの流通方向において連通孔40の開口位置と第3弁孔511の開口位置とが同じである場合に比べて、蒸気の流出を抑制することができる。前述の如く連通孔40の開口位置と第3弁孔511の開口位置が同じである場合、例えばドレンの流入量が少量のときであっても、第2弁機構4および第3弁機構5の両方によってドレンが排出される。そうすると、ドレンが一気に排出されるため、蒸気までが流出してしまう虞がある。この例では、そういった虞を抑制することができる。
【0079】
また、前述の如く連通孔40の開口位置と第3弁孔511の開口位置が同じである場合に比べて、運転時におけるドレンの排出動作を迅速に開始させることができる。連通孔40の開口位置が第3弁孔511の開口位置よりも下流側にあるため、ドレンは弁室22において第2弁機構4側へ流れて貯留される。そのため、ドレンの流入量が少量であっても、第2弁機構4の周囲温度を素早くドレンの温度相当にすることができる。これにより、第2弁機構4を素早く開弁させることができるので、第2弁機構4によるドレンの排出動作を迅速に開始させることができる。
【0080】
また、前記実施形態のように、ドレンの流通方向において連通孔40の開口位置と第3弁孔511の開口位置とを相違させることで、ドレンの流通方向に直交する方向のサイズの増大を抑制しつつ、第2熱応動器43および第3熱応動器53を配置することができる。
【0081】
(その他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0082】
例えば、第3弁機構5は、省略するようにしてもよい。
【0083】
また、ドレンの流通方向における第3弁孔511の開口位置は、連通孔40の開口位置と略同じであってもよいし、連通孔40の開口位置よりも下流側であってもよい。
【0084】
また、第1弁体32は、支持部323を省略するようにしてもよい。その場合、第2熱応動器43を第1弁体32の変位に追従させる機構を設けることで、連通孔40に対する第2弁体42の相対位置を保持することができる。
【0085】
また、ドレントラップ100は、蒸気の流出を阻止するいわゆるスチームトラップに限らず、空気の流出を阻止するエアトラップ、またはガスの流出を阻止するガストラップ等であってもよい。
【0086】
また、前記実施形態では、流体としてドレンを扱うドレントラップ100について説明したが、本開示の弁装置は、ドレン以外の流体を扱うものにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本開示の技術は、弁装置について有用である。
【符号の説明】
【0088】
100 ドレントラップ(弁装置)
1 ケーシング
22 弁室
3 第1弁機構
311 第1弁孔
32 第1弁体
323 支持部
33 バネ
4 第2弁機構
40 連通孔
42 第2弁体
43 第2熱応動器
5 第3弁機構
511 第3弁孔
52 第3弁体
53 第3熱応動器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7