(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155943
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】化粧シート、化粧材、及び、化粧シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20251002BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20251002BHJP
E04F 15/16 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/20 Z
E04F15/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025030180
(22)【出願日】2025-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2024056883
(32)【優先日】2024-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】木綿 一貴
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴矢
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA16
2E220BA04
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4F100AA01B
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(57)【要約】
【課題】表面保護層の密着性に優れる化粧シートを提供する。
【解決手段】基材シート上に、少なくとも1層のプライマー層と、上記プライマー層上に表面保護層が積層され、上記プライマー層は、無機フィラーを含有し、上記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂成分の硬化物からなる化粧シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に、少なくとも1層のプライマー層と、前記プライマー層上に表面保護層が積層され、
前記プライマー層は、無機フィラーを含有し、
前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂成分の硬化物からなる化粧シート。
【請求項2】
前記無機フィラーは、ケイ酸塩粒子である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記プライマー層は、アクリル-ウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記無機フィラーの平均粒子径が、0.1μm以上8μm以下である請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記無機フィラーの含有量は、前記プライマー層中に1質量%以上20質量%以下である請求項2に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記プライマー層は複層であり、前記表面保護層側のプライマー層が無機フィラーを含有する請求項2に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記無機フィラーを含有するプライマー層の厚みは、0.4μm以上7μm以下である請求項6に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記無機フィラーを含有しないプライマー層の厚みは、2μm以上7μm以下である請求項6に記載の化粧シート。
【請求項9】
前記表面保護層の厚みが、60μm以上200μm以下ある請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項10】
前記表面保護層は、気泡を内包する請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項11】
前記表面保護層が内包する気泡の平均直径は、1μm以上40μm以下である請求項10に記載の化粧シート。
【請求項12】
前記基材シートと前記表面保護層との間に、絵柄層と、透明性樹脂層とがこの順に積層されている請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項13】
前記表面保護層は、前記基材シートと反対側の表面に凹凸形状を有する請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項14】
前記凹凸形状は、皺形状である請求項13に記載の化粧シート。
【請求項15】
前記表面保護層の前記基材シートと反対側に離型フィルムを更に有する請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項16】
基材上に、請求項1又は2に記載の化粧シートを備える化粧材。
【請求項17】
基材シート上に、表面保護層が少なくとも積層された化粧シートの製造方法であって、
電離放射線硬化型樹脂成分をザーンカップNo.3で測定した粘度が40秒以上100秒以下の状態で塗工する塗工工程を含む化粧シートの製造方法。
【請求項18】
前記塗工工程後に、前記電離放射線硬化型樹脂成分に電離放射線を照射し10秒以内に硬化させる硬化工程を更に含む請求項17に記載の化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化粧シート、化粧材、及び、化粧シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建材向けの化粧シートは、住宅内装材等の表面化粧材として長期の使用に堪えるように優れた表面性能(耐摩耗性等)が要求される。
【0003】
これらの性能を満たすために絵柄層(意匠層)を保護する透明性樹脂層と表面保護層とを有する化粧シートが検討されていた。
【0004】
例えば、特許文献1には、第一オレフィン樹脂層(透明性樹脂層)、第二オレフィン樹脂層(透明性樹脂層)、及び表面保護層をこの順に有する化粧シートであって、上記第二オレフィン樹脂層と、表面保護層とが特定の硬さを有するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、化粧シートには、更なる表面性能(耐摩耗性等)が要求されている。
【0007】
本発明者らは、化粧シートに更なる表面性能を付与するために、電離放射線硬化型樹脂成分からなる表面保護層を厚くする方法について検討を行った。
しかしながら、表面保護層を厚くすればするほど硬度を付与することができる一方で、柔軟性が損なわれてしまい、表面保護層の密着性が低下するといった課題があることを見出した。
また、上記密着性の課題は、化粧シートが温水に長時間浸漬された場合や、紫外線が照射された場合に特に顕著になることを見出した。
【0008】
そこで本発明は、上述の課題を解決するものであり、表面保護層の密着性に優れる化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討したところ、表面保護層の下層に位置するプライマー層に無機フィラーを含有させ、表面保護層との比表面積を大きくすることにより密着性を付与でき、上述した課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、基材シート上に、少なくとも1層のプライマー層と、上記プライマー層上に表面保護層が積層され、上記プライマー層は、無機フィラーを含有し、上記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂成分の硬化物からなる化粧シートである。
【0011】
本発明の化粧シートにおいて、上記無機フィラーは、ケイ酸塩粒子であることが好ましい。
また、上記プライマー層は、アクリル-ウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
また、上記無機フィラーの平均粒子径が、0.1μm以上8μm以下であることが好ましい。
また、上記無機フィラーの含有量は、上記プライマー層中に1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
また、上記プライマー層は複層であり、上記表面保護層側のプライマー層が無機フィラーを含有することが好ましい。
また、上記無機フィラーを含有するプライマー層の厚みは、0.4μm以上7μm以下であることが好ましい。
また、上記無機フィラーを含有しないプライマー層の厚みは、2μm以上7μm以下であることが好ましい。
また、上記表面保護層の厚みが、60μm以上200μm以下あることが好ましい。
また、上記表面保護層は、気泡を内包することが好ましい。
また、上記表面保護層が内包する気泡の平均直径は、1μm以上40μm以下であることが好ましい。
また、上記基材シートと上記表面保護層との間に、絵柄層と、透明性樹脂層とがこの順に積層されていることが好ましい。
また、上記表面保護層は、上記基材シートと反対側の表面に凹凸形状を有することが好ましい。
また、上記凹凸形状は、皺形状であることが好ましい。
また、上記表面保護層の前記基材シートと反対側に離型フィルムを更に有することが好ましい。
また本発明は、基材上に、上記化粧シートを備える化粧材でもある。
また本発明は、基材シート上に、表面保護層が少なくとも積層された化粧シートの製造方法であって、電離放射線硬化型樹脂成分をザーンカップNo.3で測定した粘度が40秒以上100秒以下の状態で塗工する塗工工程を含む化粧シートの製造方法でもある。
また、本発明の化粧シートの製造方法において、上記塗工工程後に、上記電離放射線硬化型樹脂成分に電離放射線を照射し10秒以内に硬化させる硬化工程を更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、表面保護層の密着性に優れる化粧シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の化粧シートの好ましい一例を示す厚み方向の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の化粧シートの好ましい別の一例を示す厚み方向の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の化粧シートの好ましい別の一例を示す厚み方向の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の化粧シートの好ましい別の一例を示す厚み方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<化粧シート>
本発明の化粧シートは、基材シート上に、少なくとも1層のプライマー層と、上記プライマー層上に表面保護層が積層され、上記プライマー層は、無機フィラーを含有し、上記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂成分の硬化物からなる。
【0015】
図1は、本発明の化粧シートの好ましい一例を示す厚み方向の断面図である。
図1に示すように、化粧シート10では、基材シート1上にプライマー層5と、プライマー層5上に表面保護層6とが積層されている。
また、化粧シート10では、基材シート1と、表面保護層6との間に、絵柄層2、接着剤層3、透明性樹脂層4がこの順に積層されていることが好ましい。
また、表面保護層6は、気泡7を内包することが好ましい。
【0016】
図2は、本発明の化粧シートの好ましい別の一例を示す厚み方向の断面図である。
図2に記載の化粧シート10では、
図1と同様に、基材シート1、絵柄層2、接着剤層3、透明性樹脂層4、プライマー層5、及び、気泡7を内包した表面保護層6が積層されている。
図2の化粧シート10では、表面保護層6の基材シート1と反対側に凹凸形状を有する。
【0017】
図3は、本発明の化粧シートの好ましい別の一例を示す厚み方向の断面図である。
図3に示すように、化粧シート10では、化粧シート10では、基材シート1上にプライマー層5とプライマー層8と表面保護層6とがこの順に積層されている。
また、化粧シート10では、基材シート1と、表面保護層6との間に、絵柄層2、接着剤層3、透明性樹脂層4がこの順に積層されていることが好ましい。
また、表面保護層6は、気泡7を内包することが好ましい。
また、化粧シート10では、表面保護層6の基材シート1と反対側に凹凸形状を有することが好ましい。
【0018】
図4は、本発明の化粧シートの好ましい別の一例を示す厚み方向の断面図である。
図4に記載の化粧シート10では、
図1と同様に、基材シート1、絵柄層2、接着剤層3、透明性樹脂層4、プライマー層5、及び、気泡7を内包した表面保護層6が積層されている。
図4の化粧シート10では、表面保護層6の基材シート1と反対側に凹凸形状を有しており、更に、表面保護層6の基材シート1側と反対側に離型フィルム9が積層されている。
以下、化粧シート10を構成する各層について説明する。
【0019】
(基材シート)
本発明の化粧シートは、基材シートを備える。
【0020】
上記基材シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体樹脂、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂;アクリル変性ウレタン系樹脂、ポリエステル変性ウレタン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体変性ウレタン系樹脂等のポリウレタン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂等を挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0021】
上記基材シートは、必要に応じて着色されていてもよい。また、表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理が施されていてもよいし、隣接する層との密着性を高めるための下地塗料であるプライマーが塗布されていてもよい。
【0022】
上記基材シートの厚みとしては、例えば50μm以上100μm以下であることが好ましく、60μm以上80μm以下であることがより好ましい。
【0023】
(プライマー層)
本発明の化粧シートは、上記基材シート上に少なくとも1層のプライマー層が積層されている。
【0024】
上記プライマー層は、アクリル-ウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
【0025】
上記プライマー層は、無機フィラーを含有する。
【0026】
上記無機フィラーとしては、真球状、中空球状、多孔質状、板状、針状、繊維状等の様々な形状の無機フィラーが挙げられる。
なかでも耐衝撃性や熱膨張率の抑制の観点から、真球状が好ましい。
【0027】
上記無機フィラーとしては、ケイ素、ホウ素、アルミニウム等の元素を含んだ無機酸化物や、無機塩化物の粒子が挙げられる。
なかでも、比較的低価格であることや、汎用性があり入手しやすく選択肢が多い、分散性が良い等の観点から、ケイ酸塩粒子であることが好ましい。
【0028】
上記ケイ酸塩粒子としては、タルク、マイカ、クレー、ドロマイト、ベントナイト、珪石、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土、パーライト、ゼオライト等が挙げられる。
なかでも、比較的低価格の観点から、ケイ酸カルシウムであることが好ましい。
【0029】
上記無機フィラーは、平均粒子径が0.1μm以上8μm以下であることが好ましい。
無機フィラーの平均粒子径が上記範囲であることがにより、後述する表面保護層との密着性を好適に付与することができる。
上記無機フィラーは、平均粒子径が1μm以上であることがより好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、レーザー回析・散乱法によって得られた平均粒子径であり、頻度分布を測定し、最頻値を平均粒子径とした値である。
【0030】
上記無機フィラーの含有量は、表面保護層の密着性を好適に付与する観点から、プライマー層中に1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
上記無機フィラーの含有量は、5質量%以上であることがより好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
上記プライマー層は、後述する表面保護層の密着性を更に好適に付与する観点から、複層であることが好ましい。
上記複層のプライマー層は、表面保護層の直下に設けられていることが好ましい。
上記プライマー層が複層である場合、表面保護層の密着性を好適に付与する観点から、表面保護層側のプライマー層が無機フィラーを含有することが好ましい。
【0032】
上記無機フィラーを含有するプライマー層の厚みは、表面保護層の密着性を好適に付与する観点から、0.4μm以上7μm以下であることが好ましい。
上記無機フィラーを含有するプライマー層の厚みは、1μm以上であることがより好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0033】
上記無機フィラーを含有しないプライマー層の厚みは、2μm以上7μm以下であることが好ましい。
【0034】
なお、上記プライマー層が単層の場合、プライマー層の厚みは、0.4μm以上7μm以下であることが好ましい。
【0035】
上記無機フィラーの平均粒子径は、上記プライマー層の厚みに対して50%以上120%以下であることが好ましい。
【0036】
上記プライマー層は、
図2に記載のように、表面保護層の直下に設けられるもの以外にも、本発明の化粧シートを構成する各層の層間や、上記基材シートの表面保護層と反対側に設けられていてもよい。
このようなプライマー層は、無機フィラーを含有しても含有していなくてもよい。
【0037】
上記プライマー層の形成方法としては特に限定されず、上述したプライマー層を構成する各成分の含有するプライマー層用組成物を用いてロールコート等の公知の塗工法で形成すればよい。
【0038】
(表面保護層)
本発明の化粧シートは、上記プライマー層上に表面保護層が積層される。
【0039】
上記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂成分の硬化物からなる。
【0040】
上記電離放射線硬化型樹脂成分の硬化物としては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基又はカチオン重合性官能基を有するオリゴマー及び/又はモノマーの硬化物を挙げることができる。
なお、電離放射線とは、分子を重合或いは架橋させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子を意味し、電子線(EB)又は紫外線(UV)が一般的である。表面保護層を形成する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0041】
分子中にラジカル重合性不飽和基又はカチオン重合性官能基を有するオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等のオリゴマーが好ましく使用でき、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが更に好ましい。分子量としては、通常250以上10万以下程度のものが用いられる。
【0042】
分子中にラジカル重合性不飽和基又はカチオン重合性官能基を有するモノマーとしては、例えば、多官能モノマーが好ましく、多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート{5官能(メタ)アクリレート}、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート{6官能(メタ)アクリレート}等が挙げられる。なお、単官能モノマーを適宜使用しても良い。
【0043】
上記電離放射線硬化型樹脂成分を紫外線にて架橋させる場合、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤の添加量は、例えば、電離放射線硬化型成分100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下である。
【0044】
上記表面保護層は、表面保護層に柔軟性を付与する観点から、気泡を内包することが好ましい。
【0045】
上記表面保護層が気泡を内包する場合、内包する気泡の断面積占有率が5%以上30%未満であることが好ましい。
内包する気泡の断面積占有率が上記範囲であることにより、表面保護層に柔軟性を好適に付与することができ、表面保護層に密着性を好適に付与することができる。
上記表面保護層は、耐衝撃性を好適に付与する観点から、内包する気泡の断面積占有率が7%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましく、15%以上であることが特に好ましい。また、上記内包する気泡の断面積占有率は、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。
【0046】
上記表面保護層が内包する気泡の断面積占有率は、以下の手順により測定及び算出を行う。
【0047】
(1)化粧シートの厚さ方向の断面を観察するために、任意に選択した領域を片刃トリミング用カミソリ、ミクロトーム等の鋭利な刃物で化粧シートを厚さ方向に切断する。
(2)切断した化粧シートの厚さ方向の断面をデジタルマイクロスコープにより観察(幅1400μm;「幅」は厚さ方向に対して垂直な方向である)して断面写真を得る。
(3)デジタルマイクロスコープの「計測・スケール」機能のうち、「面積計測」機能を用いて、断面写真から、(a)気泡の面積(μm2)と、(b)表面保護層(幅1400μm)の面積(μm2)を算出する、
(4)算出した各面積から、表面保護層の断面の面積100%における気泡が占有する面積の割合(占有率)を算出する。
占有率(%)=〔a/b〕×100
(5)上記を任意に選択した領域(10箇所)に対して行い、その平均値を気泡の断面積占有率(%)と定義する。
【0048】
上記表面保護層が内包する気泡の断面積占有率の測定及び算出に用いた機器は、デジタルマイクロスコープ(型番:VHX-7000、倍率200倍、キーエンス社製)である。
【0049】
上記表面保護層が内包する気泡の平均直径は、表面保護層に柔軟性を好適に付与する観点から、1μm以上40μm以下であることが好ましい。
上記表面保護層が内包する気泡の平均直径は、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましい。また、上記気泡の平均直径は、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。
【0050】
上記表面保護層が内包する気泡の平均直径は、以下の手順により測定及び算出を行う。
【0051】
(1)化粧シートの厚さ方向の断面を観察するために、任意に選択した領域を片刃トリミング用カミソリ、ミクロトーム等の鋭利な刃物で化粧シートを厚さ方向に切断する。
(2)切断した化粧シートの厚さ方向の断面(幅1400μm;「幅」は厚さ方向に対して垂直な方向である)をデジタルマイクロスコープにより観察して断面写真を得る。
(3)デジタルマイクロスコープの「計測・スケール」機能のうち、「面積計測」機能を用いて、断面写真から、各気泡の面積an(幅1400μm)を算出する。
(4)算出した各面積から、各面積と同じ面積となる真円(気泡)の直径を算出し、それを気泡の直径(μm)と定義する。
気泡の直径(μm)=(4an/π)1/2
(5)上記手順で算出した各気泡の直径の平均値を気泡の平均直径(μm)と定義する。
【0052】
上記表面保護層が内包する気泡の平均直径の測定及び算出に用いた機器は、デジタルマイクロスコープ(型番:VHX-7000、倍率200倍、キーエンス社製)である。
【0053】
上記表面保護層は、上記基材シートと反対側の表面に凹凸形状を有することが好ましい。
上記凹凸形状を有することにより、意匠性をより好適に付与することができる。
【0054】
上記凹凸形状は、皺形状であることが好ましい。
上記凹凸形状が皺形状であることにより、艶消効果を付与することができる。
【0055】
上記凹凸形状が皺形状であるとは、不規則な皺により凹凸形状が付与されていることを意味し、不規則な皺は、複数の突起部により形成する複数の凸部と、複数の突起部により囲まれて形成する凹部とを有することが好ましい。
【0056】
上記凸部の高さは、例えば0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、上記凸部の幅は、例えば10μm以下であることが好ましい。
【0057】
上記凹部深さは、例えば0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、上記凹部の幅は、例えば10μm以下であることが好ましい。
【0058】
上記凹凸形状が皺形状を有する場合、60°グロス値は、例えば10.0以下であることが好ましい。
【0059】
上記皺形状を形成する方法としては、例えば、(1)100nm以上200nm未満の第1の波長光での照射処理の後、(2)電子線および200nm以上400nm以下の第2の波長光の少なくとも一方での照射処理を行う方法が挙げられる。
【0060】
上記表面保護層の厚みは、硬度を高くして耐摩耗性を好適に付与する観点から、60μm以上200μm以下であることが好ましい。
上記表面保護層の厚みは、80μm以上が好ましく150μm以下が好ましい。
【0061】
上記表面保護層に上記凹凸形状が形成されてない場合、
図1に記載のように、表面保護層6の基材シート1の反対側の表面から、表面保護層6の基材シート1側の表面までの長さを表面保護層の厚みとする。
なお、上記表面保護層に上記凹凸形状が形成されている場合、
図2に示すように、表面保護層6の凹凸形状が形成されていない箇所の最表層から、上記表面保護層6の基材シート1側の表面までの長さを表面保護層の厚みとする。
【0062】
(絵柄層)
本発明の化粧シートは、上記基材シートと上記表面保護層との間に、絵柄層と、透明性樹脂層とがこの順に積層されていることが好ましい。
まずは、絵柄層について説明する。
【0063】
上記絵柄層としては、任意の柄を形成することができ、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0064】
上記絵柄層としては、例えば、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン系樹脂等をバインダーとし、公知の顔料又は染料を着色剤として含有する印刷インキによる印刷を行うことで形成することができる。
【0065】
上記絵柄層を形成する方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷法が挙げられる。
【0066】
上記絵柄層の厚みは、例えば、0.1μm以上10μm以下とすることが好ましい。
【0067】
(透明性樹脂層)
次いで、透明性樹脂層について説明する。
なお、上記透明性樹脂層において、「透明性」とは、絵柄層が視認できる範囲であれば、半透明や着色されていてもよい。
【0068】
上記透明性樹脂層としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリメチルペンテン、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等が挙げられる。
【0069】
上記透明性樹脂層の厚みとしては、例えば、40μm以上150μm以下とすることが好ましい。
【0070】
(離型フィルム)
本発明の化粧シートは、上記表面保護層の上記基材シートと反対側に離型フィルムを更に有することも好ましい。
【0071】
上記離型フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等ならなるフィルムが挙げられる。
【0072】
上記離型フィルムの厚みとしては特に限定されないが、例えば、10μm以上100μm以下とすることが好ましい。
【0073】
上記離型フィルムは、必要に応じ、その化粧シートとの剥離性を向上させるため、離型層を介して上記表面保護層に積層されることが好ましい。
上記離型層は、剥離フィルムの剥離時に剥離フィルムと共に化粧シートから剥離除去される。離型層としては、例えば、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ワックス等の単体又はこれらを含む混合物が用いられる。
更に上記離型フィルムを有することにより、上記表面保護層を保護することができる。
【0074】
(その他)
本発明の化粧シートは、各層間に接着剤層を設けてもよい。
【0075】
上記接着剤層を形成する接着剤として、例えば、エステル系ウレタンやアクリル系ウレタンなどのウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤を用いることができる。
【0076】
上記接着剤層の厚みとしては、例えば、0.1以上30μm以下である。
なお、接着剤層の形成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜選択すればよい。
【0077】
本発明の化粧シートは、上記基材シートの上記表面保護層と反対側にバッカー層を設けてもよい。
上記バッカー層を有することにより、耐衝撃性をより好適に付与することができる。
【0078】
上記バッカー層としては、樹脂組成物を、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によりシート状(フィルム状)に成形することにより作製できる。
【0079】
上記バッカー層を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン-プロピレン共重合体、アクリル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリメチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミド、ABS等が挙げられる。
【0080】
上記バッカー層の厚みとしては、例えば、100μm以上350μm以下とすることが好ましい。
【0081】
本発明の化粧シートを構成する各層は、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。
上記添加剤としては、例えば、例えば、シリコーン樹脂、ワックス、フッ素樹脂等の滑剤や、染料、顔料等の着色剤等や、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、難燃剤、消臭剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤、防カビ剤等が挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0082】
<化粧シートの製造方法>
本発明の化粧シートの製造方法は、基材シート上に、表面保護層が少なくとも積層された化粧シートの製造方法であって、電離放射線硬化型樹脂成分をザーンカップNo.3(離合社製)で測定した室温(20±5℃)における粘度が40秒以上100秒以下の状態で塗工する塗工工程を含む。
【0083】
上記塗工工程を有することにより、上記電離放射線硬化型樹脂成分中に気泡を均一に分散させることができる。
【0084】
上記塗工工程において、電離放射線硬化型樹脂成分をザーンカップNo.3(離合社製)で測定した室温(20±5℃)における粘度が50秒以上であることが好ましく、60秒以上であることがより好ましい。また、上記粘度は、80秒以下であることが好ましい。
【0085】
上記電離放射線硬化型樹脂成分のザーンカップNo.3で測定した粘度を調整する方法としては、室温20℃環境下で1時間(静置後に)撹拌し、溶剤を用いて希釈する。
また、上記溶剤としては、酢酸エチル、MEK(メチルエチルケトン)、IPA(イソプロピルアルコール)、トルエン、MIBK(メチルイソブチルケトン)、メタノール、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0086】
本発明の化粧シートの製造方法において、上記塗工工程後に、上記電離放射線硬化型樹脂成分を10秒以内に電離放射線を照射して硬化させる硬化工程を更に含むことが好ましい。
【0087】
上記硬化工程のように、上記電離放射線硬化型樹脂成分に電離放射線を照射し10秒以内に硬化せることにより、表面保護層中に気泡を内包させることができる。
電離放射線としては、通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
硬化の際の光量については5秒以内に硬化させることができればどのような条件であっても可能であるが、紫外線により硬化させる場合は、波長が200nm以上400nm以下であることが好ましい。また、電子線の照射量は、100~300keVのエネルギーを持つ電子を0.1~30Mrad程度で照射することが好ましい。
【0088】
本発明の化粧シートを構成する各層(透明性樹脂層)は、上記接着剤層やプライマー層を介して積層してもよい。
また、上記絵柄層は、上記絵柄層を形成する方法により上記基材シート上に形成してもよい。
また、上記表面保護層で記載した方法により、上記表面保護層を備える側に凹凸形状を形成してもよい。
【0089】
<化粧材>
本発明の化粧材は、基材上に、本発明の化粧シートを備える。
【0090】
上記基材としては、例えば、木質板、石膏系板、セメント板、セラミックス板、金属板、樹脂板、繊維強化プラスチック板が挙げられる。
【0091】
上記基材上に、本発明の化粧シートを積層させる方法としては、例えば、上記接着剤層で記載した接着剤を介して積層させればよい。
【0092】
本明細書では、以下の事項が開示されている。
【0093】
本開示(1)は、基材シート上に、少なくとも1層のプライマー層と、上記プライマー層上に表面保護層が積層され、上記プライマー層は、無機フィラーを含有し、上記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂成分の硬化物からなる化粧シートである。
本開示(2)は、上記無機フィラーは、ケイ酸塩粒子である本開示(1)に記載の化粧シートである。
本開示(3)は、上記プライマー層は、アクリル-ウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する本開示(1)又は(2)に記載の化粧シートである。
本開示(4)は、上記無機フィラーの平均粒子径が、0.1μm以上8μm以下である本開示(1)~(3)の何れかに記載の化粧シートである。
本開示(5)は、上記無機フィラーの含有量は、上記プライマー層中に1質量%以上20質量%以下である本開示(1)~(4)の何れかに記載の化粧シートである。
本開示(6)は、上記プライマー層は複層であり、上記表面保護層側のプライマー層が無機フィラーを含有する本開示(1)~(4)の何れかに記載の化粧シートである。
本開示(7)は、上記無機フィラーを含有するプライマー層の厚みは、0.4μm以上7μm以下である本開示(6)に記載の化粧シートである。
本開示(8)は、上記無機フィラーを含有しないプライマー層の厚みは、2μm以上7μm以下である本開示(6)又は(7)に記載の化粧シートである。
本開示(9)は、上記表面保護層の厚みが、60μm以上200μm以下ある本開示(1)~(8)の何れかに記載の化粧シートである。
本開示(10)は、上記表面保護層は、気泡を内包する本開示(1)~(9)の何れかに記載の化粧シートである。
本開示(11)は、上記表面保護層が内包する気泡の平均直径は、1μm以上40μm以下である本開示(10)の何れかに記載の化粧シートである。
本開示(12)は、上記基材シートと上記表面保護層との間に、絵柄層と、透明性樹脂層とがこの順に積層されている本開示(1)~(11)の何れかに記載の化粧シートである。
本開示(13)は、上記表面保護層は、上記基材シートと反対側の表面に凹凸形状を有する本開示(1)~(12)の何れかに記載の化粧シートである。
本開示(14)は、上記凹凸形状は、皺形状である本開示(13)の何れかに記載の化粧シートである。
本開示(15)は、上記表面保護層の前記基材シートと反対側に離型フィルムを更に有する本開示(1)~(14)の何れかに記載の化粧シートである。
本開示(16)は、基材上に、本開示(1)~(15)の何れかに記載の化粧シートを備える化粧材である。
本開示(17)は、基材シート上に、表面保護層が少なくとも積層された化粧シートの製造方法であって、電離放射線硬化型樹脂成分をザーンカップNo.3で測定した粘度が40秒以上100秒以下の状態で塗工する塗工工程を含む化粧シートの製造方法である。
本開示(18)は、上記塗工工程後に、上記電離放射線硬化型樹脂成分に電離放射線を照射し10秒以内に硬化させる硬化工程を更に含む本開示(17)に記載の化粧シートの製造方法である。
【実施例0094】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、この例によって限定されるものではない。
【0095】
(実施例1)
基材シートとして、厚さ60μmの着色ポリプロピレンを準備した。
基材シートの一方の面側に、全体を被覆するようにエステル系ポリウレタン樹脂を主成分とするプライマー層を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。
基材シートのもう一方の面側に、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする絵柄層を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。
上記絵柄層の上記基材シートと反対の面側に、エステル系ポリウレタンを塗布して厚み10μmの接着剤層を形成し、接着剤層上に60μmの透明性樹脂層をドライラミネートにて形成した。
更に、上記透明性樹脂層の上記接着剤層と反対の面側に、厚み2μmのケイ酸塩粒子を含有するアクリル-ウレタン共重合体樹脂からなるプライマー層(プライマー層中のケイ酸塩粒子の含有量は10質量%)を形成した。なお、上記プライマー層に含有されるケイ酸塩粒子の平均粒子径は2μmであった。
上記プライマー層上にダイコートにて、ザーンカップNo.3(離合社製)で測定される室温(20±5℃)における粘度が40秒であるコート剤(ウレタンアクリレート系電離放射線硬化性樹脂組成物)を塗工した後、電離放射線を照射してコート剤を硬化して、厚み100μmの表面保護層を形成し、化粧シートを製造した。
【0096】
(実施例2)
基材シートとして、厚さ60μmの着色ポリプロピレンを準備した。
基材シートの一方の面側に、全体を被覆するようにエステル系ポリウレタン樹脂を主成分とするプライマー層を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。
基材シートのもう一方の面側に、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする絵柄層を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。
上記絵柄層の上記基材シートと反対の面側に、エステル系ポリウレタンを塗布して厚み10μmの接着剤層を形成し、接着剤層上に60μmの透明性樹脂層をドライラミネートにて形成した。
その後、上記透明性樹脂層の上記接着剤層と反対側の面側にアクリル-ウレタン共重合体樹脂からなるプライマー層(ケイ酸塩粒子を含有しない)を厚み2μmで形成した
更に、上記プライマー層の上記透明性樹脂層と反対の面側に、厚み2μmのケイ酸塩粒子を含有するアクリル-ウレタン共重合体樹脂からなるプライマー層(プライマー層中のケイ酸塩粒子の含有量は10質量%)を形成した。なお、上記プライマー層に含有されるケイ酸塩粒子の平均粒子径は2μmであった。
上記ケイ酸塩粒子を含有するプライマー層上にダイコートにて、ザーンカップNo.3(離合社製)で測定される室温(20±5℃)における粘度が40秒である表面保護層用組成物(ウレタンアクリレート系電離放射線硬化性樹脂組成物)を塗工した後、電離放射線を照射してコート剤を硬化して、厚み100μmの表面保護層を形成し、化粧シートを製造した。
【0097】
(実施例3)
ケイ酸塩粒子を含有するプライマー層上にダイコートにて、ザーンカップNo.3(離合社製)で測定される室温(20±5℃)における粘度が20秒である表面保護層用組成物(ウレタンアクリレート系電離放射線硬化性樹脂組成物)を塗工した後、電離放射線を照射してコート剤を硬化して、厚み100μmの表面保護層を形成したこと以外は、実施例2と同様にして化粧シートを製造した。
【0098】
(実施例4)
ケイ酸塩粒子を含有するプライマー層について、プライマー層中のケイ酸塩粒子の含有量を5質量%に変更したこと以外は、実施例2と同様にして化粧シートを製造した。
【0099】
(実施例5)
表面保護層用組成物を以下の組成のものに変更し高圧水銀灯を用いて瞬時(10秒以内)に硬化し表面保護層を形成した。
・UV硬化型樹脂:90質量部 品名:UA-33H(新中村化学工業社製)性状:分子量1400、官能基数9
・光重合開始剤:8質量部 品名:イルガキュア184(BASF社製)
・紫外線吸収剤A:2質量部 品名:Tinuvin326(BASF社製)
・紫外線吸収剤B:2質量部 品名:TinuvinP(BASF社製)
・光安定剤:2質量部 品名:サノールLS765(BASF社製)
・希釈溶剤:60質量部 品名:酢酸エチル
ザーンカップNo.3(離合社製)で測定される室温(20±5℃)における粘度が40秒である上記表面保護層用組成物を用いて表面保護層を形成したこと以外は実施例2と同様にして化粧シートを製造した。
【0100】
(実施例6)
ケイ酸塩粒子を含有するプライマー層について、ケイ酸塩粒子の平均粒子径を4μmに変更したこと以外は、実施例2と同様にして化粧シートを製造した。
【0101】
(比較例1)
基材シートとして、厚さ60μmの着色ポリプロピレンを準備した。
基材シートの一方の面側に、全体を被覆するようにエステル系ポリウレタン樹脂を主成分とするプライマー層を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。
基材シートのもう一方の面側に、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする絵柄層を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。
上記絵柄層の上記基材シートと反対の面側に、エステル系ポリウレタンを塗布して厚み10μmの接着剤層を形成し、接着剤層上に60μmの透明性樹脂層をドライラミネートにて形成した。
更に、上記透明性樹脂層の上記接着剤層と反対の面側に、厚み2μmのアクリル-ウレタン共重合体樹脂からなるプライマー層(ケイ酸塩粒子を含有しない)を形成した。
上記プライマー層上にダイコートにて、ザーンカップNo.3(離合社製)で測定される室温(20±5℃)における粘度が40秒であるコート剤(ウレタンアクリレート系電離放射線硬化性樹脂組成物)を塗工した後、電離放射線を照射してコート剤を硬化して、厚み100μmの表面保護層を形成し、化粧シートを製造した。
【0102】
(比較例2)
基材シートとして、厚さ60μmの着色ポリプロピレンを準備した。
基材シートの一方の面側に、全体を被覆するようにエステル系ポリウレタン樹脂を主成分とするプライマー層を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。
基材シートのもう一方の面側に、アクリル-ウレタン系樹脂を主成分とする絵柄層を、凹版ロールを用いたグラビア印刷方式で有機溶剤を含むインキをベタ印刷することによって形成した。
上記絵柄層の上記基材シートと反対の面側に、エステル系ポリウレタンを塗布して厚み10μmの接着剤層を形成し、接着剤層上に60μmの透明性樹脂層をドライラミネートにて形成した。
その後、上記透明性樹脂層の上記接着剤層と反対側の面側にアクリル-ウレタン共重合体樹脂からなるプライマー層(ケイ酸塩粒子を含有しない)を厚み2μmで形成した
更に、上記プライマー層の上記透明性樹脂層と反対の面側に、厚み2μmのアクリル-ウレタン共重合体樹脂からなるプライマー層を形成した。
上記プライマー層上にダイコートにて、ザーンカップNo.3(離合社製)で測定される室温(20±5℃)における粘度が40秒である表面保護層用組成物(ウレタンアクリレート系電離放射線硬化性樹脂組成物)を塗工した後、電離放射線を照射してコート剤を硬化して、厚み100μmの表面保護層を形成し、化粧シートを製造した。
【0103】
(比較例3)
プライマー層上にダイコートにて、ザーンカップNo.3(離合社製)で測定される室温(20±5℃)における粘度が20秒である表面保護層用組成物(ウレタンアクリレート系電離放射線硬化性樹脂組成物)を塗工した後、電離放射線を照射してコート剤を硬化して、厚み100μmの表面保護層を形成したこと以外は、比較例2と同様にして化粧シートを製造した。
【0104】
<密着性試験>
作製した化粧シートを下記(1)~(3)のそれぞれの試験を実施した後に、各化粧シートの表面保護層側からカッターナイフでクロスカット(×状の切れ込み)を入れた箇所に、24mm幅のニチバン製セロテープ(登録商標)を貼付けて急激に剥離する操作を行い、以下の基準で評価した。
上記貼付けて急激に剥離する操作を各10回実施し、途中で剥離した場合はそこで試験を終了した。
【0105】
(1)初期密着性評価
常温(25±0.5℃)に24時間静置。
(評価基準)
+:剥離が生じなかった。
-:剥離が発生した。
【0106】
(2)温水密着性評価
(i)80℃に熱した温水に2週間浸漬。
(ii)80℃に熱した温水に4週間浸漬。
(評価基準)
++:(i)、(ii)の何れの試験でも剥離が生じなかった。
+:(i)の試験では剥離が発生しなかったが、(ii)の試験で剥離が発生したものがあった。
-:(i)の試験で剥離が発生したものがあった。
【0107】
(3)耐候密着性評価
下記の超促進耐候性試験装置を用いて、ブラックパネル温度63℃、照度100mW/cm2の条件で20時間紫外線を照射後、4時間結露させるサイクルを繰り返した。
(超促進耐候性試験装置)
UVランプ(商品名:MO4-L21WB/SUV、岩崎電気社製)、ランプジャケット(商品名:WJ50-SUV、岩崎電気社製)及び照度計(商品名:UVD-365PD、岩崎電気社製)を備えてなる、超促進耐候性試験装置(商品名:「アイ スーパー UVテスター SUV-W161」、岩崎電気社製)
(i)超促進耐候性試験装置に100h投入。
(ii)超促進耐候性試験装置に200h投入。
(評価基準)
++:(i)、(ii)の何れの試験でも剥離が生じなかった。
+:(i)の試験では剥離が発生しなかったが、(ii)の試験で剥離が発生したものがあった。
-:(i)の試験で剥離が発生したものがあった。
【0108】
【0109】
実施例における化粧シートでは、表面保護層の初期密着性、温水密着性、及び、耐候密着性の何れにも優れることが確認された。