(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156319
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】組織特異的なAPOE調節のためのオリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20251006BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20251006BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20251006BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20251006BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20251006BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20251006BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20251006BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20251006BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N5/10
C12N15/85 Z
A61K31/713
A61K31/712
A61K48/00
A61P25/28
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2025081846
(22)【出願日】2025-05-15
(62)【分割の表示】P 2021555491の分割
【原出願日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】62/819,189
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/864,797
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/951,441
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505220170
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ マサチューセッツ
【氏名又は名称原語表記】University of Massachusetts
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】コボロバ,アナスタシア
(72)【発明者】
【氏名】ファーガソン,シャンタル
(72)【発明者】
【氏名】ロガエフ,エフゲニー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA70
4C084NA14
4C084ZA15
4C084ZA16
4C084ZB21
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA70
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZB21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】神経変性およびアミロイド関連疾患を処置するためのオリゴヌクレオチドを提供する。
【解決手段】5'GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA3'または5'UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG3'と実質的に相補的な相補性領域を含む、15~35塩基長のRNA分子が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む、15~35塩基長のRNA分子。
【請求項2】
5' GAUUCACCAAGUUUA 3'、5' CAAGUUUCACGCAAA 3'、および5' CCUAGUUUAAUAAAGAUUCA 3'の1つまたはそれ以上と実質的に相補的な相補性領域を含む、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項3】
一本鎖(ss)RNAまたは二本鎖(ds)RNAを含む、請求項1または2に記載のRNA分子。
【請求項4】
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む、請求項3に記載のdsRNAであって、ここにアンチセンス鎖は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む該dsRNA。
【請求項5】
該RNA分子が、15~25塩基対の長さである、請求項3または4に記載のdsRNA分子。
【請求項6】
該相補性領域が、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'の少なくとも10、11、12または13個の連続するヌクレオチドと相補的である、請求項3~5のいずれか一項に記載のdsRNA。
【請求項7】
該相補性領域が、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'とのミスマッチを3個以下含む、請求項3~6のいずれか一項に記載のdsRNA。
【請求項8】
該相補性領域が、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と完全に相補的である、請求項3~7のいずれか一項に記載のdsRNA。
【請求項9】
平滑末端である、請求項3~9のいずれか一項に記載のdsRNA。
【請求項10】
少なくとも1つの一本鎖ヌクレオチド突出部を含む、請求項3~9のいずれか一項に記載のdsRNA。
【請求項11】
天然に存在するヌクレオチドを含む、請求項3~10のいずれか一項に記載のdsRNA。
【請求項12】
少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項3~11のいずれか一項に記載のdsRNA。
【請求項13】
該修飾ヌクレオチドが、2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、5'-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、またはコレステリル誘導体もしくはドデカン酸ビスデシルアミド基に結合された末端ヌクレオチドを含む、請求項12に記載のdsRNA。
【請求項14】
該修飾ヌクレオチドが、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾ヌクレオチド、2'-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックされたヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2'-アミノ-修飾ヌクレオチド、2'-アルキル-修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、または非天然塩基を含むヌクレオチドを含む、請求項12のdsRNA。
【請求項15】
少なくとも1つの2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、および5'ホスホロチオエート基を含む少なくとも1つのヌクレオチドを含む、請求項3~14のいずれか一項に記載のdsRNA。
【請求項16】
少なくとも80%が化学的に修飾されている、請求項3~15のいずれか一項に記載のdsRNA。
【請求項17】
完全に化学的に修飾されている、請求項3~10および12~16のいずれか一項に記載のdsRNA。
【請求項18】
コレステロール部分を含む、請求項3~17のいずれか一項に記載のdsRNA。
【請求項19】
5'末端および3'末端を含み、標的に対して相補性を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載のRNA分子であって、
(1)RNA分子は、2'-メトキシ-リボヌクレオチドおよび2'-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;
(2)5'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドでなく;
(3)ヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合され;そして、
(4)3'末端から1~2位から1~7位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドと結合されている、該RNA分子。
【請求項20】
5'末端および3'末端を有し、標的に対して相補性を有し、そして第一のオリゴヌクレオチドおよび第二のオリゴヌクレオチドを含む、請求項3~18のいずれか一項に記載のdsRNAであって、
(1)第一のオリゴヌクレオチドは、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な配列を含み;
(2)第一のオリゴヌクレオチドの一部は、第二のオリゴヌクレオチドの一部と相補的であり;
(3)第二のオリゴヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドおよび2'-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;
(4)第二のオリゴヌクレオチドの3'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドであり;そして、
(5)第二のオリゴヌクレオチドのヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合されている、該dsRNA。
【請求項21】
5'末端および3'末端を含み、標的に対して相補性を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載のRNA分子であって、
(1)RNA分子は、3つの連続する2'-フルオロ-リボヌクレオチドの領域を含み;
(2)5'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドでなく;
(3)ヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合され;
(4)3'末端から1~2位から1~7位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合され;そして、
(5)5'末端から1~2位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して結合されている、該RNA分子。
【請求項22】
5'末端および3'末端を有し、標的に対して相補性を有し、そして第一のオリゴヌクレオチドおよび第二のオリゴヌクレオチドを含む、請求項3~17のいずれか一項に記載のdsRNAであって、
(1)第一のオリゴヌクレオチドは、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な配列を含み;
(2)第一のオリゴヌクレオチドの一部は、第二のオリゴヌクレオチドの一部と相補的であり;
(3)第二のオリゴヌクレオチドは、3つの連続する2'-メトキシ-リボヌクレオチドの領域を含み;
(4)第二のオリゴヌクレオチドの3'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドであり;そして、
(5)第二のオリゴヌクレオチドのヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合されている、該dsRNA。
【請求項23】
第二のオリゴヌクレオチドが、その3'末端に疎水性分子が結合されている、請求項20または22に記載のRNA。
【請求項24】
第二のオリゴヌクレオチドと疎水性分子との間の結合が、ポリエチレングリコールまたはトリエチレングリコールを含む、請求項20、22、および23のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項25】
第二のオリゴヌクレオチドの3'末端から1位および2位のヌクレオチドが、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合されている、請求項20および22~24のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項26】
第二のオリゴヌクレオチドの3'末端から1位および2位のヌクレオチド、および第二のオリゴヌクレオチドの5'末端から1位および2位のヌクレオチドが、ホスホロチオエート結合を介して隣接するリボヌクレオチドに結合されている、請求項20および22~25のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項27】
生物においてアポリポタンパク質E(ApoE)遺伝子の発現を阻害するための、請求項1~26のいずれか一項に記載のRNA、および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物。
【請求項28】
dsRNAが、該ApoE遺伝子の発現を少なくとも50%阻害する、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
dsRNAが、該ApoE遺伝子の発現を少なくとも90%阻害する、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
細胞内でのApoE遺伝子の発現を阻害する方法であって、
(a)請求項3~18、20および22のいずれか一項に記載の二本鎖リボ核酸(dsRNA)を細胞に導入すること;および
(b)工程(a)で作製された細胞を、ApoE遺伝子のmRNA転写産物の分解を得るのに十分な時間維持することを含み、それによって細胞内でのApoE遺伝子の発現を阻害する方法。
【請求項31】
神経変性疾患を処置または管理する方法であって、そのような処置または管理を必要とする患者に、請求項3~18、20および22のいずれか一項に記載の該dsRNAの治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項32】
該dsRNAが、患者の脳に投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
該dsRNAが、脳室内(ICV)注射によって投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
dsRNAの投与により、海馬においてApoE遺伝子mRNAの低減を引き起こす、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
dsRNAの投与により、脊髄においてApoE遺伝子mRNAの低減を引き起こす、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
dsRNAが、該ApoE遺伝子の発現を少なくとも50%阻害する、請求項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
dsRNAが、該ApoE遺伝子の発現を少なくとも90%阻害する、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
細胞内でのApoE遺伝子の発現を阻害するベクターであって、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的なRNA分子をコードするヌクレオチド配列に操作可能に結合された調節配列を含み、ここで、該RNA分子は、10~35塩基長であり、該RNA分子は、該ApoE遺伝子を発現する細胞と接触すると、該ApoE遺伝子の発現を少なくとも50%阻害する、該ベクター。
【請求項39】
RNA分子が、該ApoE遺伝子の発現を少なくとも90%阻害する、請求項38に記載のベクター。
【請求項40】
該RNA分子が、ssRNAまたはdsRNAを含む、請求項38に記載のベクター。
【請求項41】
dsRNAが、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、ここにアンチセンス鎖は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む、請求項40に記載のベクター。
【請求項42】
請求項38に記載のベクターを含む細胞。
【請求項43】
5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む、15~50塩基長のRNA分子であって、ApoE遺伝子mRNAのオープンリーディングフレーム(ORF)または3'非翻訳領域(UTR)を標的とするRNA分子。
【請求項44】
ssRNAまたはdsRNAを含む、請求項43に記載のRNA分子。
【請求項45】
センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、ここにアンチセンス鎖は5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む、請求項43または44に記載のdsRNA。
【請求項46】
それぞれ15~50塩基長の2つのRNA分子を含み、ApoEmRNAと実質的に相補的な相補性領域を含むジ-分岐状RNA化合物であって、該2つのRNA分子は、リンカー、スペーサーおよび分岐点から独立して選択される1つまたはそれ以上の部分によって互いに結合されている、該ジ-分岐状RNA化合物。
【請求項47】
5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む、請求項46に記載のジ-分岐状RNA化合物。
【請求項48】
5' GAUUCACCAAGUUUA 3'、5' CAAGUUUCACGCAAA 3'、および5' CCUAGUUUAAUAAAGAUUCA 3'の1つまたはそれ以上と実質的に相補的な相補性領域を含む、請求項46または47に記載のジ-分岐状RNA化合物。
【請求項49】
該RNA分子が、ssRNAまたはdsRNAを含む、請求項46~48のいずれか一項に記載のジ-分岐状RNA化合物。
【請求項50】
該RNA分子が、アンチセンス分子またはギャップマー分子を含む、請求項46~49のいずれか一項に記載のジ-分岐状RNA化合物。
【請求項51】
該アンチセンス分子が、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、請求項50に記載のジ-分岐状RNA化合物。
【請求項52】
該アンチセンス分子が、相補性領域の分解を向上させる、請求項50または51に記載のジ-分岐状RNA化合物。
【請求項53】
該分解が、ヌクレアーゼ分解を含む、請求項52に記載のジ-分岐状RNA化合物。
【請求項54】
該ヌクレアーゼ分解が、RNase Hよって媒介される、請求項53に記載のジ-分岐状RNA化合物。
【請求項55】
2つまたはそれ以上の核酸を含む分岐状オリゴヌクレオチド化合物であって、
各核酸は、15~50塩基長であり、
各核酸は、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含み、そして、
該2つまたはそれ以上の核酸は互いに共有結合されており、該結合は、リンカー、スペーサーおよび分岐点から選択される1つまたはそれ以上の部分によって介在されてよい、該分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項56】
各核酸が、独立して、5' GAUUCACCAAGUUUA 3'、5' CAAGUUUCACGCAAA 3'、および5' CCUAGUUUAAUAAAGAUUCA 3'の1つまたはそれ以上と実質的に相補的な相補性領域を含む、請求項55に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項57】
各核酸が、15~25塩基対の長さである、請求項55または56に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項58】
各核酸が、一本鎖(ss)RNAまたは二本鎖(ds)RNAを含む、請求項55~57のいずれか一項に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項59】
各核酸が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含むdsRNAを含み、各アンチセンス鎖は、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む、請求項55~58のいずれか一項に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項60】
各相補性領域が、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'の少なくとも10、11、12または13個の連続するヌクレオチドと相補的である、請求項55~59のいずれか一項に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項61】
各相補性領域が、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'とのミスマッチを3個以下含む、請求項55~60のいずれか一項に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項62】
各相補性領域が、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と完全に相補的である、請求項55~61のいずれか一項に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項63】
各核酸が、独立して、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項55~62のいずれか一項に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項64】
修飾ヌクレオチドが、2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、5'-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、またはコレステリル誘導体もしくはドデカン酸ビスデシルアミド基に結合された末端ヌクレオチドを含む、請求項63に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項65】
修飾ヌクレオチドが、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾ヌクレオチド、2'-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックされたヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2'-アミノ-修飾ヌクレオチド、2'-アルキル-修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、または非天然塩基を含むヌクレオチドを含む、請求項63に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項66】
該2つまたはそれ以上の核酸がそれぞれ、5'末端および3'末端を含むRNA分子であり、標的に対して相補性を有する、請求項55~65のいずれか一項に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物であって、ここで、
(1)RNA分子は、2'-メトキシ-リボヌクレオチドおよび2'-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;
(2)5'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドでなく;
(3)ヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合され;そして、
(4)3'末端から1~2位から1~7位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合されている、該分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項67】
各核酸が、5'末端および3'末端を含み、標的に対して相補性を有し、そして第一のオリゴヌクレオチドおよび第二のオリゴヌクレオチドを含むdsRNAを含む、請求項55~65のいずれか一項に記載の分岐状オリゴヌクレオチドであって、ここで、
(1)第一のオリゴヌクレオチドは、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な配列を含み;
(2)第一のオリゴヌクレオチドの一部は、第二のオリゴヌクレオチドの一部と相補的であり;
(3)第二のオリゴヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドおよび2'-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;
(4)第二のオリゴヌクレオチドの3'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドであり;そして、
(5)第二のオリゴヌクレオチドのヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合されている、該分岐状オリゴヌクレオチド。
【請求項68】
該2つまたはそれ以上の核酸がそれぞれ、5'末端および3'末端を含み、標的に対して相補性を有するRNA分子を含む、請求項55~65のいずれか一項に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物であって、ここで、
(1)RNA分子は、3つの連続する2'-フルオロ-リボヌクレオチドの領域を含み;
(2)5'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドでなく;
(3)ヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合され;
(4)3'末端から1~2位から1~7位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合され;そして、
(5)5'末端から1~2位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して互いに結合されている、該分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項69】
式(I)
【化1】
[式(I)中、
Lは、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、またはこれらの組み合わせを含み、ここで、式(I)はさらに、1つまたはそれ以上の分岐点B、および1つまたはそれ以上のスペーサーS含んでいてよく(ここで、
Bは、出現するごとに独立して、多価有機種またはその誘導体であり;
Sは、出現するごとに独立して、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、またはこれらの組み合わせを含む);
Nは、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む15~35塩基長の二本鎖核酸であり、ここで、
アンチセンス鎖は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含み、
センス鎖およびアンチセンス鎖はそれぞれ、独立して、1つまたはそれ以上の化学的修飾を含み;そして、
nは、2、3、4、5、6、7または8である]
で示される化合物。
【請求項70】
式(I-1)~(I-9):
【表1】
から選択される構造を有する、請求項69に記載の化合物。
【請求項71】
アンチセンス鎖が、
【化2】
【化3】
からなる群から選択される5'末端基Rを含む、請求項69または70に記載の化合物。
【請求項72】
式(II):
【化4】
[式中、
Xは、出現するごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、およびそれらの化学修飾誘導体から選択され;
Yは、出現するごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、およびそれらの化学修飾誘導体から選択され;
-は、ホスホジエステルヌクレオシド間結合を示し;
=は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を示し;そして、
---は、出現するごとに単独に、塩基対合の相互作用またはミスマッチを示す]
の構造を有する、請求項69に記載の化合物。
【請求項73】
式(III):
【化5】
[式中、
Xは、出現するごとに独立して、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;
Xは、出現するごとに独立して、2'-O-メチル修飾を含むヌクレオチドであり;
Yは、出現するごとに独立して、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;そして、
Yは、出現するごとに独立して、2'-O-メチル修飾を含むヌクレオチドである]
の構造を有する、請求項72に記載の化合物。
【請求項74】
式(IV):
【化6】
[式中、
Xは、出現するごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、およびそれらの化学修飾誘導体から選択され;
Yは、出現するごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、およびそれらの化学修飾誘導体から選択され;
-は、ホスホジエステルヌクレオシド間結合を示し;
=は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を示し;そして、
---は、出現するごとに単独に、塩基対合の相互作用またはミスマッチを示す]
の構造を有する、請求項69に記載の化合物。
【請求項75】
式(V):
【化7】
[式中、
Xは、出現するごとに独立して、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;
Xは、出現するごとに独立して、2'-O-メチル修飾を含むヌクレオチドであり;
Yは、出現するごとに独立して、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;そして、
Yは、出現するごとに独立して、2'-O-メチル修飾を含むヌクレオチドである]
の構造を有する、請求項74に記載の化合物。
【請求項76】
Lが、構造L1:
【化8】
である、請求項69~75のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項77】
RがR3であり、nが2である、請求項76に記載の化合物。
【請求項78】
Lが、構造L2:
【化9】
である、請求項69~75のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項79】
RがR3であり、nが2である、請求項78に記載の化合物。
【請求項80】
式(VI):
【化10】
[式(VI)中、
Lは、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、またはこれらの組み合わせを含み、ここで、式(VI)はさらに、1つまたはそれ以上の分岐点B、および1つまたはそれ以上のスペーサーSを含んでいてよく(ここで
Bは、出現するごとに独立して、多価有機種またはその誘導体を含み;
Sは、出現するごとに独立して、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、またはこれらの組み合わせを含む);
各cNAは、独立して、1つまたはそれ以上の化学的修飾を含む担体核酸であり;
各cNAは、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'の少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み;そして、
nは、2、3、4、5、6、7または8である。]
の構造を有する、治療的核酸のための送達システム。
【請求項81】
式(VI-1)~(VI-9):
【表2】
から選択される構造を有する、請求項80に記載の送達システム。
【請求項82】
各cNAが、独立して、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む、請求項80または81に記載の送達システム。
【請求項83】
さらにn個の治療的核酸(NA)を含み、ここで、各NAは、少なくとも1つのcNAにハイブリダイズしている、請求項80~82のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項84】
各NAが、独立して、少なくとも16個の連続するヌクレオチドを含む、請求項83に記載の送達システム。
【請求項85】
各NAが、独立して、16~20個の連続するヌクレオチドを含む、請求項84に記載の送達システム。
【請求項86】
各NAが、少なくとも2個のヌクレオチドの不対突出部を含む、請求項83~85のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項87】
突出部のヌクレオチドが、ホスホロチオエート結合を介して結合されている、請求項86に記載の送達システム。
【請求項88】
各NAが、独立して、DNA、siRNA、アンタゴmiR、miRNA、ギャップマー、ミックスマー、およびガイドRNAからなる群から選択される、請求項80~87のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項89】
生物においてアポリポタンパク質E(ApoE)遺伝子の発現を阻害するための医薬組成物であって、請求項44~79のいずれか一項に記載の化合物または請求項80~88のいずれか一項に記載のシステム、および薬学的に許容できる担体を含む該医薬組成物。
【請求項90】
化合物またはシステムが、ApoE遺伝子の発現を少なくとも50%阻害する、請求項89に記載の医薬組成物。
【請求項91】
化合物またはシステムが、ApoE遺伝子の発現を少なくとも90%阻害する、請求項90に記載の医薬組成物。
【請求項92】
細胞内でのApoE遺伝子の発現を阻害する方法であって、
(a)請求項44~79のいずれか一項に記載の化合物または請求項80~88のいずれか一項に記載のシステムを細胞に導入すること;および
(b)工程(a)で作製された細胞を、ApoE遺伝子のmRNA転写産物の分解を得るのに十分な時間維持することを含み、それによって細胞内でのApoE遺伝子の発現を阻害する方法。
【請求項93】
神経変性疾患を処置または管理する方法であって、そのような処置または管理を必要とする患者に、請求項44~79のいずれか一項に記載の化合物または請求項80~88のいずれか一項に記載のシステムの治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項94】
化合物またはシステムが、患者の脳に投与される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
化合物またはシステムが、脳室内(ICV)注射によって投与される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
化合物またはシステムの投与により、海馬においてApoE遺伝子mRNAの低減を引き起こす、請求項93~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
化合物またはシステムの投与により、脊髄においてApoE遺伝子mRNAの低減を引き起こす、請求項93~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
化合物またはシステムが、ApoE遺伝子の発現を少なくとも50%阻害する、請求項93~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
化合物またはシステムが、ApoE遺伝子の発現を少なくとも90%阻害する、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
それぞれ15~35塩基長の2つの核酸を含む分岐オリゴヌクレオチド化合物であって、各核酸は、ApoE mRNAと実質的に相補的な相補性領域を含み、ここで、該2つの核酸は互いに共有結合されており、該結合は、リンカー、スペーサーまたは分岐点を含む1つまたはそれ以上の部分によって介在されてよい、該分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項101】
各核酸が、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む、請求項100に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項102】
各核酸が、独立して、5' GAUUCACCAAGUUUA 3'、5' CAAGUUUCACGCAAA 3'、および5' CCUAGUUUAAUAAAGAUUCA 3'の1つまたはそれ以上と実質的に相補的な相補性領域を含む、請求項100または101に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項103】
各核酸が、独立して、一本鎖(ss)RNAまたは二本鎖(ds)RNAを含む、請求項100~102のいずれか一項に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項104】
各核酸が、独立して、アンチセンス分子またはギャップマー分子を含む、請求項100~103のいずれか一項に記載の分岐状オリゴヌクレオチド化合物。
【請求項105】
アミロイド関連疾患を処置または管理する方法であって、該疾患を有するか、または発症する危険性があると診断された患者に、請求項44~79のいずれか一項に記載の化合物または請求項80~88のいずれか一項に記載のシステムの治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項106】
疾患が、アルツハイマー病、脳アミロイド血管症、軽度認知障害、中等度認知障害、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
化合物またはシステムが、患者の脳に投与される、請求項105または106に記載の方法。
【請求項108】
化合物またはシステムが、脳室内注射によって投与される、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
化合物またはシステムの投与により、認知低下を、阻害、遅延、予防または低減する、請求項105~108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
化合物またはシステムの投与により、βアミロイド斑の形成を阻害、遅延、予防、または低減する、請求項105~109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
化合物またはシステムの投与により、神経変性を阻害、遅延、予防または低減する、請求項105~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
アルツハイマー病を処置または管理する方法であって、該疾患を有するか、または発症する危険性があると診断された患者に、15~35塩基長の2つの核酸を含む分岐オリゴヌクレオチド化合物の治療有効量を投与することを含み、各核酸は、ApoE mRNAと実質的に相補的な相補性領域を含み、該2つの核酸は、リンカー、スペーサーまたは分岐点を含む1つまたはそれ以上の部分によって、互いに結合されている、方法。
【請求項113】
分岐状オリゴヌクレオチド化合物の各核酸が、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
分岐状オリゴヌクレオチドの各核酸が、独立して、5' GAUUCACCAAGUUUA 3'、5' CAAGUUUCACGCAAA 3'、および5' CCUAGUUUAAUAAAGAUUCA 3'の1つまたはそれ以上と実質的に相補的な相補性領域を含む、請求項112または113に記載の方法。
【請求項115】
分岐状オリゴヌクレオチド化合物の各核酸が、一本鎖(ss)RNAまたは二本鎖(ds)RNAを含む、請求項112~114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
分岐状オリゴヌクレオチド化合物の各核酸が、アンチセンス分子またはギャップマー分子を含む、請求項112~115のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
分岐状オリゴヌクレオチド化合物が、患者の脳に投与される、請求項112~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
分岐状オリゴヌクレオチド化合物が、脳室内注射によって投与される、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
分岐状オリゴヌクレオチド化合物の投与により、認知低下を阻害、遅延、予防または低減する、請求項112~118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
分岐状オリゴヌクレオチド化合物の投与により、βアミロイド斑の形成を阻害、遅延、予防または低減する、請求項112~119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
分岐状オリゴヌクレオチド化合物の投与により、神経変性を阻害、遅延、予防または低減する、請求項112~120のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2019年3月15日出願の米国仮特許出願62/819,189、2019年6月21日出願の米国仮特許出願62/864,797および2019年12月20日出願の米国仮特許出願62/951,441の優先権を主張し、これらの各々の全内容は引用により本明細書に包含される。
【0002】
(連邦政府支援の研究または開発に関する声明)
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of health)によって認められた許可No.NS104022の下政府支援を受けてなされたものである。政府は本発明について一定の権利を有している。
【0003】
(発明の分野)
本開示は、新規なアポリポタンパク質E(ApoE)標的配列、新規な分岐状オリゴヌクレオチド、ならびに神経変性を処置および予防する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0004】
アルツハイマー病(AD)および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む神経変性疾患を有する患者は、処置の選択肢が限られている。コレステロール輸送の異常は、ADやALSにおける神経変性や臨床症状の悪化に一貫して関連しており、これは、遺伝子療法の標的として特に興味深い経路となっている。
【0005】
アポリポタンパク質E(ApoE)は、全身循環や中枢神経系(CNS)におけるコレステロール輸送を促進する。ヒト血漿およびCNSにおいて、ApoEの総レベルおよび特定のApoEアイソフォーム(すなわち、E2、E3、E4)は、ADおよびALSの発症や進行に関連している。さらに、CNSにおけるApoEの総レベルは神経変性進行の前兆となることが見出されている。
【0006】
マウスにおいて、ApoEの全体的な低下は、神経変性の病理学的特徴を低減させるが、これは、ApoEを非選択的に調節することが神経変性疾患の1つの処置アプローチであり得ることを示している。提示化合物の顕著な特徴として、神経変性に対する測定可能な効果を得るためには、ApoEを完全とは言わないが、ほぼ完全な調節が必要となる可能性がある。したがって、ApoE発現をCNS-調節できる物質が、当技術分野において緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、ApoE発現に対して強力かつ効果的なサイレンシング活性を示すオリゴヌクレオチド化合物を提供する。特定の実施態様において、本開示のオリゴヌクレオチドは、中枢神経系(CNS)の組織において阻害することができる。
【0008】
一局面において、本開示は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含むRNA分子、例えば15~50塩基長のRNA分子(例えば、15~40塩基長、例えば、15、16、17、18、19、20、21、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40塩基長のRNA分子)を提供する。
【0009】
いくつかの実施態様において、RNA分子は、5' GAUUCACCAAGUUUA 3'、5' CAAGUUUCACGCAAA 3'、および5' CCUAGUUUAAUAAAGAUUCA 3'の1つまたはそれ以上と実質的に相補的な相補性領域を含む。
【0010】
いくつかの実施態様において、RNA分子は、一本鎖(ss)RNAまたは二本鎖(ds)RNAを含む。
【0011】
いくつかの実施態様において、RNA分子は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含むdsRNAを含み、ここで、アンチセンス鎖は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な実質的に相補的な相補性領域を含む。
【0012】
いくつかの実施態様において、RNA分子は、15~25塩基対の長さを含む。
【0013】
いくつかの実施態様において、相補性領域は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'の少なくとも10、11、12または13個の連続するヌクレオチドと相補的である。例えば、相補性領域は、GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAAまたはUGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAGの10~30個の連続するヌクレオチド(例えば、GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAAまたはUGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAGの10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の連続するヌクレオチドのセグメント)からのセグメントと相補的であり得る。
【0014】
いくつかの実施態様において、相補性領域は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'とのミスマッチを3つ以下含む。
【0015】
いくつかの実施態様において、相補性領域は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と完全に相補的である。
【0016】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、平滑末端である。
【0017】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、少なくとも1つの一本鎖ヌクレオチド突出部を含む。
【0018】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、天然に存在するヌクレオチドを含む。
【0019】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。
【0020】
いくつかの実施態様において、修飾ヌクレオチドは、2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、5'-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、またはコレステリル誘導体もしくはドデカン酸ビスデシルアミド基に結合された末端ヌクレオチドを含む。
【0021】
いくつかの実施態様において、修飾ヌクレオチドは、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾ヌクレオチド、2'-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックされたヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2'-アミノ-修飾ヌクレオチド、2'-アルキル-修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデートまたは非天然塩基を含むヌクレオチドを含む。
【0022】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、少なくとも1つの2'-O-メチル修飾ヌクレオチドおよび5'ホスホロチオエート基を含む少なくとも1つのヌクレオチドを含む。
【0023】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、少なくとも75%化学的に修飾されている。いくつかの実施態様において、dsRNAは、少なくとも80%化学的に修飾されている。いくつかの実施態様において、dsRNAは、完全に化学的に修飾されている。
【0024】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、コレステロール部分を含む。
【0025】
いくつかの実施態様において、RNA分子は、5'末端、3'末端を含み、標的に対して相補性を有し、ここで、(1)RNA分子は、2'-メトキシ-リボヌクレオチドおよび2'-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;(2)5'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドでなく;(3)ヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合され;そして、(4)3'末端から1~2位から1~7位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合されている。
【0026】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、5'末端および3'末端を有し、標的に対して相補性を有し、そして第一のオリゴヌクレオチドおよび第二のオリゴヌクレオチドを含み、ここで、(1)第一のオリゴヌクレオチドは、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な配列を含み;(2)第一のオリゴヌクレオチドの一部は、第二のオリゴヌクレオチドの一部と相補的であり;(3)第二のオリゴヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドおよび2'-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;(4)第二のオリゴヌクレオチドの3'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドであり;そして、(5)第二のオリゴヌクレオチドのヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合されている。
【0027】
いくつかの実施態様において、RNA分子は、5'末端および3'末端を含み、標的に対して相補性を有し、ここで、(1)RNA分子は、3つの連続する2'-フルオロ-リボヌクレオチドの領域を含み;(2)5'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドでなく;(3)ヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合され;(4)3'末端から1~2位から1~7位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合され;そして、(5)5'末端から1~2位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して互いに結合されている。
【0028】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、5'末端および3'末端を有し、標的に対して相補性を有し、そして第一のオリゴヌクレオチドおよび第二のオリゴヌクレオチドを含み、ここで:(1)第一のオリゴヌクレオチドは、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な配列を含み;(2)第一のオリゴヌクレオチドの一部は、第二のオリゴヌクレオチドの一部と相補的であり(3)第二のオリゴヌクレオチドは、3つの連続する2'-メトキシ-リボヌクレオチドの領域を含み;(4)第二のオリゴヌクレオチドの3'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドであり;そして、(5)第二のオリゴヌクレオチドのヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合されている。
【0029】
いくつかの実施態様において、第二のオリゴヌクレオチドは、その3'末端に疎水性分子が結合されている。
【0030】
いくつかの実施態様において、第二のオリゴヌクレオチドおよび疎水性分子の間の結合は、ポリエチレングリコールまたはトリエチレングリコールを含む。
【0031】
いくつかの実施態様において、第二のオリゴヌクレオチドの3'末端から1位および2位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合されている。
【0032】
いくつかの実施態様において、第二のオリゴヌクレオチドの3'末端から1位および2位のヌクレオチド、および第二のオリゴヌクレオチドの5'末端から1位および2位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して隣接するリボヌクレオチドに結合されている。
【0033】
一局面において、本開示は、生物においてアポリポタンパク質E(ApoE)遺伝子の発現を阻害するための医薬組成物であって、上記のdsRNAおよび薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物を提供する。
【0034】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、該ApoE遺伝子の発現を少なくとも50%阻害する。いくつかの実施態様において、dsRNAは、該ApoE遺伝子の発現を少なくとも90%阻害する。
【0035】
一局面において、本開示は、細胞内でのApoE遺伝子の発現を阻害する方法であって、
(a)上記の二本鎖リボ核酸(dsRNA)を細胞に導入すること;および(b)工程(a)で作製された細胞を、ApoE遺伝子のmRNA転写産物の分解を得るのに十分な時間維持することを含み、それによって、細胞内でのApoE遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。
【0036】
一局面において、本開示は、神経変性疾患を処置または管理する方法であって、そのような処置または管理を必要とする患者に治療有効量の上記のdsRNAを投与することを含む方法を提供する。
【0037】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、患者の脳に投与される。いくつかの実施態様において、dsRNAは、例えば、脳室内(ICV)注射によって脳または髄液に局所的に投与される。他の実施態様において、dsRNAは、静脈内投与され、血液脳関門(BBB)を通過して脳に送達することができる。
【0038】
いくつかの実施態様において、dsRNAの投与により、海馬においてApoE遺伝子mRNAの低減を引き起こす。いくつかの実施態様において、dsRNAの投与により、脊髄においてApoE遺伝子mRNAの低減を引き起こす。
【0039】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、該ApoE遺伝子の発現を少なくとも50%阻害する。
【0040】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、該ApoE遺伝子の発現を少なくとも90%阻害する。
【0041】
一局面において、本開示は、細胞内でのApoE遺伝子の発現を阻害するベクターであって、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的なRNA分子をコードするヌクレオチド配列に操作可能に結合された調節配列を含み、ここで、該RNA分子は、10~35塩基の長を含み、ここで、該RNA分子は、該ApoE遺伝子を発現する細胞と接触すると、該ApoE遺伝子の発現を少なくとも50%阻害するベクターを提供する。
【0042】
いくつかの実施態様において、RNA分子は、該ApoE遺伝子の発現を少なくとも90%阻害する。
【0043】
いくつかの実施態様において、RNA分子は、ssRNAまたはdsRNAを含む。
【0044】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む、ここにアンチセンス鎖は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む。
【0045】
一局面において、本開示は、上記のベクターを含む細胞を提供する。
【0046】
一局面において、本開示は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む、15~35塩基長のRNA分子であって、ApoE遺伝子mRNAのオープンリーディングフレーム(ORF)または3'非翻訳領域を標的とするRNA分子を提供する。
【0047】
いくつかの実施態様において、RNA分子は、ssRNAまたはdsRNAを含む。
【0048】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、ここにアンチセンス鎖は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む。
【0049】
一局面において、本開示は、それぞれ15~35塩基長の2つまたはそれ以上のRNA分子を含む分岐状(例えば、ジ-分岐状(di-branched))RNA化合物であって、該RNA化合物は、ApoE mRNAと実質的に相補的な相補性領域をされに含み、ここで、該2つのRNA分子は、(例えば、リンカー、スペーサーおよび分岐点から独立して選択される1つまたはそれ以上の部分によって)互いに共有結合されている分岐状RNA化合物を提供する。
【0050】
いくつかの実施態様において、RNA分子は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む。
【0051】
いくつかの実施態様において、RNA分子は、5' GAUUCACCAAGUUUA 3'、5' CAAGUUUCACGCAAA 3'、および5' CCUAGUUUAAUAAAGAUUCA 3'の1つまたはそれ以上と実質的に相補的な相補性領域を含む。
【0052】
いくつかの実施態様において、RNA分子は、ssRNAまたはdsRNAを含む。
【0053】
いくつかの実施態様において、RNA分子は、アンチセンス分子またはギャップマー(GAPMER)分子を含む。
【0054】
いくつかの実施態様において、アンチセンス分子は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0055】
いくつかの実施態様において、アンチセンス分子は、相補性領域の分解を向上させる。
【0056】
いくつかの実施態様において、分解は、ヌクレアーゼ分解を含む。
【0057】
いくつかの実施態様において、ヌクレアーゼ分解は、RNase Hよって媒介される。
【0058】
一局面において、2つまたはそれ以上の核酸、例えば、それぞれ15~40塩基長の2つまたはそれ以上の核酸を含む分岐状オリゴヌクレオチド化合物を提供する。
【0059】
各核酸は、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含み、そして、
【0060】
該2つまたはそれ以上の核酸は、リンカー、スペーサーまたは分岐点を含む1つまたはそれ以上の部分によって互いに結合されている。
【0061】
いくつかの実施態様において、各核酸は、独立して、5' GAUUCACCAAGUUUA 3'、5' CAAGUUUCACGCAAA 3'、および5' CCUAGUUUAAUAAAGAUUCA 3'の1つまたはそれ以上と実質的に相補的な相補性領域を含む。
【0062】
いくつかの実施態様において、各核酸は、15~25塩基対の長さを含む。
【0063】
いくつかの実施態様において、各核酸は、一本鎖(ss)RNAまたは二本鎖(ds)RNAを含む。
いくつかの実施態様において、各核酸は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含むdsRNAを含み、ここに各アンチセンス鎖は、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む。
いくつかの実施態様において、各相補性領域は、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'の少なくとも10、11、12または13個の連続するヌクレオチドと相補的である。
【0064】
いくつかの実施態様において、各相補性領域は、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'とのミスマッチを3つ以下含む。
【0065】
いくつかの実施態様において、各相補性領域は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と完全に相補的である。
【0066】
いくつかの実施態様において、各dsRNAは、独立して、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。
【0067】
いくつかの実施態様において、修飾ヌクレオチドは、2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、5'-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、またはコレステリル誘導体もしくはドデカン酸ビスデシルアミド基に結合された末端ヌクレオチドを含む。
【0068】
いくつかの実施態様において、修飾ヌクレオチドは、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾ヌクレオチド、2'-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックされたヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2'-アミノ-修飾ヌクレオチド、2'-アルキル-修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデートまたは非天然塩基を含むヌクレオチドを含む。
【0069】
いくつかの実施態様において、該2つまたはそれ以上の核酸はそれぞれ、5'末端、3'末端を含む、標的に対して相補性を有するRNA分子であり、ここで、
(1)RNA分子は、2'-メトキシ-リボヌクレオチドおよび2'-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;
(2)5'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドでなく;
(3)ヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合され;そして、
(4)3'末端から1~2位から1~7位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合に介して隣接するヌクレオチドに結合されている。
【0070】
いくつかの実施態様において、各核酸は、5'末端および3'末端を有し、標的に対して相補性を有し、そして第一のオリゴヌクレオチドおよび第二のオリゴヌクレオチドを含むdsRNAであり、ここで、
(1)第一のオリゴヌクレオチドは、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な配列を含み;
(2)第一のオリゴヌクレオチドの一部は、第二のオリゴヌクレオチドの一部と相補的であり;
(3)第二のオリゴヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドおよび2'-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;
(4)第二のオリゴヌクレオチドの3'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドであり;そして、
(5)第二のオリゴヌクレオチドのヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合されている。
【0071】
いくつかの実施態様において、該2つまたはそれ以上の核酸はそれぞれ、RNA分子を含み、ここで、RNA分子は、5'末端および3'末端を含み、標的に対して相補性を有し、ここで、
(1)RNA分子は、3つの連続する2'-フルオロ-リボヌクレオチドの領域を含み;
(2)5'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドでなく;
(3)ヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合され;
(4)3'末端から1~2位から1~7位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合され;そして、
(5)5'末端から1~2位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して互いに結合されている。
【0072】
一局面において、本開示は、式(I):
【化1】
[式(I)中、
Lは、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、またはこれらの組み合わせを含み、ここで、
式(I)は、1つまたはそれ以上の分岐点B、および1つまたはそれ以上のスペーサーをさらに含んでいてよく(ここで、
Bは、出現するごとに独立して、多価有機種またはその誘導体であり;
Sは、出現するごとに独立して、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、またはこれらの組み合わせを含む);
Nは、二本鎖核酸、例えば、15~35塩基長(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35塩基長)の二本鎖核酸を含み、ここで、二本鎖核酸は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、ここにアンチセンス鎖は5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含み、センス鎖およびアンチセンス鎖はそれぞれ、独立して、1つまたはそれ以上の化学的修飾を含み;そして、
nは、2、3、4、5、6、7または8である]
で示される化合物を提供する。
いくつかの実施態様において、化合物は、式(I-1)~(I-9):
【表1】
から選択される構造を有する。
【0073】
一実施態様において、アンチセンス鎖は、
【化2】
からなる群から選択される5'末端基Rを含む。
【0074】
いくつかの実施態様において、化合物は、式(II):
【化3】
[式中、
Xは、出現するごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、およびそれらの化学修飾誘導体から選択され;
Yは、出現するごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、およびそれらの化学修飾誘導体から選択され;
-は、ホスホジエステルヌクレオシド間結合を示し;
=は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を示し;そして、
---は、出現するごとに単独に、塩基対合の相互作用またはミスマッチを示す]
の構造を有する。
【0075】
いくつかの実施態様において、化合物は、式(III):
【化4】
[式中、
Xは、出現するごとに独立して、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;
Xは、出現するごとに独立して、2'-O-メチル修飾を含むヌクレオチドであり;
Yは、出現するごとに独立して、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;そして、
Yは、出現するごとに独立して、2'-O-メチル修飾を含むヌクレオチドである]
の構造を有する。
【0076】
いくつかの実施態様において、化合物は、式(IV):
【化5】
[式中、
Xは、出現するごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、およびそれらの化学修飾誘導体から選択され;
Yは、出現するごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、およびそれらの化学修飾誘導体から選択され;
-は、ホスホジエステルヌクレオシド間結合を示し;
=は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を示し;そして、
---は、出現するごとに単独に、塩基対合の相互作用またはミスマッチを示す]
の構造を有する。
【0077】
いくつかの実施態様において、化合物は、式(V):
【化6】
[式中、
Xは、出現するごとに独立して、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;
Xは、出現するごとに独立して、2'-O-メチル修飾を含むヌクレオチドであり;
Yは、出現するごとに独立して、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;そして、
Yは、出現するごとに独立して、2'-O-メチル修飾を含むヌクレオチドである]
の構造を有する。
【0078】
いくつかの実施態様において、部分Lは、構造L1:
【化7】
である。
【0079】
いくつかの実施態様において、Lが構造L1である場合、RはR3であり、nは2である。
【0080】
いくつかの実施態様において、Lは、構造L2:
【化8】
である。
【0081】
いくつかの実施態様において、Lが構造L2である場合、RはR3であり、nは2である。
【0082】
一局面において、本開示は、式(VI):
【化9】
[式(VI)中、
Lは、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、またはこれらの組み合わせを含み、ここで、式(VI)は、1つまたはそれ以上の分岐点B、および1つまたはそれ以上のスペーサーをさらに含んでいてよく(ここで、
Bは、出現するごとに独立して、多価有機種またはその誘導体であり;
Sは、出現するごとに独立して、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、またはこれらの組み合わせを含み);
各cNAは、独立して、1つまたはそれ以上の化学的修飾を含む担体核酸であり;
各cNAは、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'の少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み;そして、
nは、2、3、4、5、6、7または8である]
の構造を有する、治療的核酸のための送達システムを提供する。
【0083】
いくつかの実施態様において、各cNAは、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'の15~25個の連続するヌクレオチド(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の連続するヌクレオチド)を含む。
【0084】
いくつかの実施態様において、各cNAは、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'の15~21個の連続するヌクレオチド(例えば、15、16、17、18、19、20、または21個の連続するヌクレオチド)を含む。
【0085】
いくつかの実施態様において、各cNAは、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'の15個の連続するヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様において、それぞれは、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'の16個の連続するヌクレオチドを含む。
【0086】
いくつかの実施態様において、送達システムは、式(VI-1)~(VI-9):
【表2】
から選択される構造を有する。
【0087】
いくつかの実施態様において、各cNAは、独立して、化学修飾ヌクレオチドを含む。
【0088】
いくつかの実施態様において、送達システムはさらにn個の治療的核酸(NA)含み、ここで、各NAは、少なくとも1つのcNAにハイブリダイズしている。
【0089】
いくつかの実施態様において、各NAは、独立して、少なくとも16個の連続するヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様において、各NAは、独立して、16~30個の連続するヌクレオチド(例えば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の連続するヌクレオチド)を含む。いくつかの実施態様において、各NAは、独立して、18~24個の連続するヌクレオチド(例えば、18、19、20、21、22、23、または24個の連続するヌクレオチド)を含む。
【0090】
いくつかの実施態様において、各NAは、独立して、16~21個の連続するヌクレオチドを含む。
【0091】
いくつかの実施態様において、各NAは、20個の連続するヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様において、各NAは、21個の連続するヌクレオチドを含む。
【0092】
いくつかの実施態様において、各cNAは、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'の15個の連続するヌクレオチドを含み、各NAは、20個の連続するヌクレオチドを含む。
【0093】
いくつかの実施態様において、各cNAは、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'の16個の連続するヌクレオチドを含み、各NAは、21個の連続するヌクレオチドを含む。
【0094】
いくつかの実施態様において、各NAは、少なくとも2つのヌクレオチドの不対突出部を含む。突出部のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して結合され得る。
【0095】
いくつかの実施態様において、各NAは、独立して、DNA、siRNA、アンタゴmiR(antagomiR)、miRNA、ギャップマー(gapmer)、ミックスマー(mixmer)、およびガイドRNAからなる群から選択される。
【0096】
一局面において、本開示は、生物においてアポリポタンパク質E(ApoE)遺伝子の発現を阻害する医薬組成物であって、上記の化合物またはシステムの1つ、および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物を提供する。
【0097】
いくつかの実施態様において、化合物またはシステムは、ApoE遺伝子の発現を少なくとも50%阻害する。
【0098】
いくつかの実施態様において、化合物またはシステムは、ApoE遺伝子の発現を少なくとも90%阻害する。
【0099】
一局面において、本開示は、細胞内でのApoE遺伝子の発現を阻害する方法であって、
(a)上記の化合物またはシステムの1つを細胞に導入すること;および
(b)工程(a)で作製された細胞を、ApoE遺伝子のmRNA転写産物の分解を得るのに十分な時間維持することを含み、それによって細胞内でのApoE遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。
【0100】
一局面において、本開示は、神経変性疾患を処置または管理する方法であって、そのような処置または管理を必要とする患者に、上記の化合物またはシステムの1つの治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0101】
いくつかの実施態様において、化合物またはシステムは、患者の脳に投与される。
【0102】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、患者の脳に投与される。いくつかの実施態様において、dsRNAは、例えば、脳室内(ICV)注射によって、脳または髄液に局所的に投与される。他の実施態様において、dsRNAは、静脈内投与され、血液脳関門(BBB)を通過して脳に送達できる。
【0103】
いくつかの実施態様において、化合物またはシステムの投与により、海馬においてApoE遺伝子mRNAの低減を引き起こす。
【0104】
いくつかの実施態様において、化合物またはシステムの投与により、脊髄においてApoE遺伝子mRNAの低減を引き起こす。
【0105】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、ApoE遺伝子の発現を少なくとも50%阻害する。
【0106】
いくつかの実施態様において、dsRNAは、ApoE遺伝子の発現を少なくとも90%阻害する。
【0107】
一局面において、2つまたはそれ以上の核酸、例えば、それぞれ15~40塩基の長(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40塩基の長)を含む2つまたはそれ以上の核酸を含む分岐状オリゴヌクレオチド化合物であって、ここで、各核酸は、ApoE mRNAと実質的に相補的な相補性領域を含み、ここで、該2つの核酸は、(例えば、リンカー、スペーサーまたは分岐点を含む1つまたはそれ以上の部分によって)互いに共有結合されている分岐状オリゴヌクレオチド化合物を提供する。
【0108】
いくつかの実施態様において、各核酸は、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む。
【0109】
いくつかの実施態様において、各核酸は、独立して、5' GAUUCACCAAGUUUA 3'、5' CAAGUUUCACGCAAA 3'、および5' CCUAGUUUAAUAAAGAUUCA 3'の1つまたはそれ以上と実質的に相補的な相補性領域を含む。
【0110】
いくつかの実施態様において、各核酸は、独立して、一本鎖(ss)RNAまたは二本鎖(ds)RNAを含む。
【0111】
いくつかの実施態様において、各核酸は、独立して、アンチセンス分子またはギャップマー分子を含む。
【0112】
一局面において、アミロイド関連疾患を処置または管理する方法であって、該疾患を有するか、または発症する危険性があると診断された患者に、上記の化合物またはシステムの1つの治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0113】
いくつかの実施態様において、疾患は、アルツハイマー病、脳アミロイド血管症、軽度認知障害、中等度認知障害、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0114】
いくつかの実施態様において、化合物またはシステムは、例えば、脳室内注射によって患者の脳に投与される。
【0115】
非限定的な実施態様において、化合物またはシステムの投与により、認知低下を阻害、遅延、予防または低減する。されなる非限定的な実施態様において、化合物またはシステムの投与により、βアミロイド斑の形成を阻害、遅延、予防または低減する。例示的実施態様において、化合物またはシステムの投与により、神経変性を阻害、遅延、予防または低減する。
【0116】
さらなる態様において、アルツハイマー病を処置または管理する方法であって、該疾患を有するか、または発症する危険性があると診断された患者に、2つまたはそれ以上の核酸、例えば、それぞれ15~40塩基長(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40塩基長)を含む2つまたはそれ以上の核酸を含む分岐状オリゴヌクレオチド化合物の治療有効量を投与することを含み、ここで、各核酸は、ApoE mRNAと実質的に相補的な相補性領域を含み、ここで、該2つの核酸は、(例えば、リンカー、スペーサーまたは分岐点を含む1つまたはそれ以上の部分によって)互いに共有結合されている、方法が提供される。
【0117】
いくつかの実施態様において、分岐状オリゴヌクレオチド化合物の各核酸は、独立して、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'と実質的に相補的な相補性領域を含む。さらなる実施態様において、分岐状オリゴヌクレオチドの各核酸は、独立して、5' GAUUCACCAAGUUUA 3'、5' CAAGUUUCACGCAAA 3'、および5' CCUAGUUUAAUAAAGAUUCA 3'の1つまたはそれ以上と実質的に相補的な相補性領域を含む。
【0118】
いくつかの実施態様において、各核酸は、一本鎖(ss)RNAまたは二本鎖(ds)RNAを含む。
【0119】
さらなる実施態様において、各核酸は、アンチセンス分子またはギャップマー分子を含む。
【0120】
いくつかの実施態様において、分岐状オリゴヌクレオチドは、例えば、脳室内注射によって患者の脳に投与される。
【0121】
非限定的な実施態様において、分岐状オリゴヌクレオチドの投与により、認知低下を阻害、遅延、予防または低減する。さらなる非限定的な実施態様において、化合物またはシステムの投与により、βアミロイド斑の形成を阻害、遅延、予防または低減する。例示的実施態様において、分岐状オリゴヌクレオチドの投与により、神経変性を阻害、遅延、予防または低減する。
【図面の簡単な説明】
【0122】
本発明の前記およびその他の特徴および利点は、添付の図面と併せて取られた例示的な実施態様の以下の詳細な説明から、より完全に理解されるであろう。特許または出願ファイルには、少なくとも1つのカラー図面が含まれている。カラー図面を含むこの特許又は特許出願公開の写しは、請求して必要な手数料を支払えば、国内で提供される。
【0123】
図1A~1Cは、mRNAおよびタンパク質ベースのマウス細胞モデルの両方でサイレンシングを示す新規の標的配列の同定を示す。
【0124】
【
図1A】
図1Aは、マウス初代星状膠細胞においてApoEを標的とするヒット配列を同定するスクリーンを示す。
【0125】
【
図1B】
図1Bは、マウス初代星状膠細胞において一次スクリーンからのヒット配列の用量反応曲線を示す。
【0126】
【
図1C】
図1Cは、マウス初代星状膠細胞においてタンパク質サイレンシングを示す用量反応を示す。
【0127】
図2A~2Bは、mRNAベースのヒト細胞モデルにおいてmRNAサイレンシングを示す新規の標的配列の同定を示す。
【0128】
【
図2A】
図2Aは、HepG2細胞においてApoEを標的とするヒット配列を同定するスクリーンを示す。
【0129】
【
図2B】
図2Bは、HepG2細胞において一次スクリーンからのヒット配列の用量反応曲線を示す。
【0130】
3A~3Bは、ApoEを標的とするオリゴヌクレオチドを示す。
【0131】
【
図3A】
図3Aは、マウスおよびヒトApoE遺伝子における標的配列、およびそのような配列を標的とするオリゴヌクレオチドを示す。
【0132】
【
図3B】
図3Bは、オリゴヌクレオチドに対する化学的修飾の例を示す。
【0133】
図4A~4Cは、CNS-siRNA
ApoE注射1ヶ月後のマウスの脳全体におけるmRNAおよびタンパク質発現のサイレンシングを示す。
【0134】
【
図4A】
図4Aは、注射一ヶ月後の脳の全領域におけるmRNAサイレンシングを示す。
【0135】
【
図4B】
図4Bは、注射一ヶ月後の脳の全領域におけるタンパク質サイレンシングを示す。
【0136】
【
図4C】
図4Cは、脳全体のタンパク質サイレンシングを示すウエスタンブロットである。
【0137】
図5A~5Bは、CNS-siRNA
ApoEが低用量で海馬におけるApoEタンパク質をサイレンシングすることを示す。
【0138】
【
図5A】
図5Aは、注射一ヶ月後の海馬におけるタンパク質サイレンシングの定量化を示す。
【0139】
【
図5B】
図5Bは、標的タンパク質サイレンシングを示すウエスタンブロットである。
【0140】
図6A~6Bは、CNS-siRNA
ApoEが低用量で脊髄全体をサイレンシングすることを示す。
【0141】
【
図6A】
図6Aは、注射一ヶ月後の脊髄におけるタンパク質サイレンシングの定量化である。
【0142】
【
図6B】
図6Bは、標的ApoE(37 kDa)タンパク質サイレンシングを対照のビンキュリン(116kDa)と比較して示すウエスタンブロットである。
【0143】
図7A~7Bは、CNS-siRNA
ApoEでのApoEの脳特異的(非肝臓)サイレンシングが低用量で可能であることを示す。
【0144】
【
図7A】
図7Aは、注射一ヶ月後の肝臓におけるタンパク質サイレンシングの定量化である。
【0145】
【
図7B】
図7Bは、標的ApoE(37 kDa)タンパク質サイレンシングを対照のビンキュリン(116 kDa)と比較して示すウエスタンブロット(ProteinSimple)である。
【0146】
図8A~8Cは、GalNAc-siRNA
ApoEが肝臓におけるタンパク質発現はサイレンシングするが、脳のタンパク質には影響を与えないことを示す。
【0147】
【
図8A】
図8Aは、肝臓におけるApoEタンパク質サイレンシングを、対照のビンキュリンと比較して示すウエスタンブロットである。
【0148】
【
図8B】
図8Bは、脳におけるタンパク質レベルに影響を与えないことを示すウエスタンブロットである。
【0149】
【
図8C】
図8Cは、肝臓および脳におけるタンパク質サイレンシングの定量化である。
【0150】
図9A~9Bは、肝臓のApoEの低減により、血清コレステロールを増加させるが、CNS-ApoEのみをサイレンシングすることにより血清コレステロールを増加させないことを示す。
【0151】
【
図9A】
図9Aは、CNS ApoEをサイレンシングした後の血清総コレステロールの定量化を示す。
【0152】
【
図9B】
図9Bは、全身のApoEをサイレンシングした後の血清総コレステロールの定量化、および全身のApoEをサイレンシングした後のLDLおよびHDL画分中のコレステロールの定量化を示す。
【0153】
図10A~10Bは、CNSおよび全身のApoEが、2つの異なるタンパク質プールを表すことを示す。
【0154】
【
図10A】
図10Aは、CNS-siRNA
ApoE注射後の脳および肝臓におけるタンパク質サイレンシングを示す。
【0155】
【
図10B】
図10Bは、GalNAc-siRNA
ApoE注射後の脳(none)および肝臓におけるサイレンシングを示す。
【0156】
【
図11】
図11は、ジ-hsiRNAの構造を示す。黒色-2'-O-メチル、灰色-2'-フルオロ、赤色ダッシュ-ホスホロチオエート結合、リンカー-テトラエチレングリコール。ジ-hsiRNAは、センス鎖の3'末端にリンカーを介して結合された2つの非対称siRNAである。より長いアンチセンス鎖へのハイブリダイゼーションにより、突出した一本鎖完全ホスホロチオエート領域が形成され、これは、組織分布、細胞取り込み、および有効性の発揮に不可欠である。本明細書に提示されている構造は、4つのモノマーのテグリンガー(teg linger)を利用する。リンカーの化学的同一性は、有効性に影響を与えることなく変更できる。それは長さ、化学組成(全て炭素)、飽和度、または化学標的リガンドの付加によって調整できる。
【0157】
【
図12】
図12は、ジ分岐状siRNAの化学合成、精製および品質管理を示す。
【0158】
【
図13】
図13は、図に示されている方法によって製造された化合物のHPLCおよび品質管理を示す。マススペクトロメトリーにより、TEG(テトラエチレングリコール)リンカー、ジ分岐状オリゴ、およびVit-D(カルシフェロール)コンジュゲートを有するセンス鎖として3つの主要生成物を同定した。すべての生成物は独立して、HPLCによって精製し、インビボで試験した。ジ分岐状オリゴは唯一、分岐状構造が組織保持および分布に不可欠であることを示す前例のない組織分布および有効性を特徴とする。
【0159】
【
図14】
図14は、ジ分岐状オリゴヌクレオチドの質量を確認するためのマススペクトロメトリーを示す。観察された11683の質量は、3'末端によりTEGリンカーを介して結合された2本のセンス鎖に対応する。
【0160】
図15A~
図15Bは、代替の化学経路を用いた、分岐状オリゴヌクレオチドの合成を示す。
【0161】
【
図16】
図16は、例示的なアミダイトリンカー、スペーサー、および分岐状部分を示す。
【0162】
【
図17】
図17は、オリゴヌクレオチドの分岐状モチーフを示す。二重らせんは、オリゴヌクレオチドを示した。さまざまなリンカー、スペーサーおよび分岐点の組み合わせにより、多種多様な分岐状hsiRNA構造が生じることを可能にする。
【0163】
【
図18】
図18は、構造的に多様な分岐状オリゴヌクレオチドを示す。
【0164】
【
図19】
図19は、4つの一本鎖ホスホロチオエート領域を有する本発明の非対称化合物を示す。
【0165】
【
図20A】
図20A~
図20Cは、3つのオリゴヌクレオチドをアニーリングすることによって形成された本発明の分岐状オリゴヌクレオチド(
図20A)を示す。より長い結合オリゴヌクレオチドは、未修飾RNA、DNAまたはUNAの形態の切断可能な領域;(
図20B)前述のリンカーまたは空間に3'および5'結合を有する非対称分岐状オリゴヌクレオチドを含み得る。これは、センス鎖またはアンチセンス鎖の3'および5'末端、またはこれらの組み合わせ;(
図20C)3つの別々の鎖からなる分岐状オリゴヌクレオチドに適用することができる。長い二重センス鎖は、3'-3'隣接または5'-5'隣接末端を可能にする3'ホスホロアミダイトおよび5'ホスホロアミダイトで合成することができる。
【
図20B】
図20A~
図20Cは、3つのオリゴヌクレオチドをアニーリングすることによって形成された本発明の分岐状オリゴヌクレオチド(
図20A)を示す。より長い結合オリゴヌクレオチドは、未修飾RNA、DNAまたはUNAの形態の切断可能な領域;(
図20B)前述のリンカーまたは空間に3'および5'結合を有する非対称分岐状オリゴヌクレオチドを含み得る。これは、センス鎖またはアンチセンス鎖の3'および5'末端、またはこれらの組み合わせ;(
図20C)3つの別々の鎖からなる分岐状オリゴヌクレオチドに適用することができる。長い二重センス鎖は、3'-3'隣接または5'-5'隣接末端を可能にする3'ホスホロアミダイトおよび5'ホスホロアミダイトで合成することができる。
【
図20C】
図20A~
図20Cは、3つのオリゴヌクレオチドをアニーリングすることによって形成された本発明の分岐状オリゴヌクレオチド(
図20A)を示す。より長い結合オリゴヌクレオチドは、未修飾RNA、DNAまたはUNAの形態の切断可能な領域;(
図20B)前述のリンカーまたは空間に3'および5'結合を有する非対称分岐状オリゴヌクレオチドを含み得る。これは、センス鎖またはアンチセンス鎖の3'および5'末端、またはこれらの組み合わせ;(
図20C)3つの別々の鎖からなる分岐状オリゴヌクレオチドに適用することができる。長い二重センス鎖は、3'-3'隣接または5'-5'隣接末端を可能にする3'ホスホロアミダイトおよび5'ホスホロアミダイトで合成することができる。
【0166】
【
図21】
図21は、コンジュゲートされた生物活性部分を有する本発明の分岐状オリゴヌクレオチドを示す。
【0167】
【
図22】
図22は、ホスホロチオエート含有量と立体選択性との間の関連性を示す。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【
図27】
図27は、hsiRNAおよび完全に代謝された(FM)hsiRNAの構造を示す。
【0173】
【
図28】
図28は、一本鎖完全修飾オリゴヌクレオチドの化学的多様性を示す。一本鎖オリゴヌクレオチドは、ギャップマー、ミックスマー、miRNA阻害剤、SSO、PMO、またはPNAからなり得る。
【0174】
【
図29】
図29は、分岐状オリゴヌクレオチド構造へ疎水性部分を取り込むための第一の戦略を示す。
【0175】
【
図30】
図30は、分岐状オリゴヌクレオチド構造へ疎水性部分を取り込むための第二の戦略を示す。
【0176】
【
図31】
図31は、分岐状オリゴヌクレオチド構造へ疎水性部分を取り込むための第三の戦略を示す。
【0177】
【
図32】
図32は、図式のジ-siRNA分子を示す。黒色-2'-O-メチル、灰色-2'-フルオロ、赤色ダッシュ-ホスホロチオエート結合、各パッセンジャー鎖の3'末端の末端ヌクレオチドに結合されたリンカー。交互のヌクレオチド修飾のモチーフは、センス標的鎖の5'末端から1位、11位および15位、ならびに相補的な結合鎖の5'端から5位、16位および18位で異なる。
【0178】
【
図33】
図33は、神経変性疾患に対するApoEサイレンシングの効果を評価するための研究の実験的な設計を示す。
【0179】
【
図34】
図34は、アルツハイマー病(APP/PSEN1)動物モデルにおいて、ApoEを標的とするsiRNAの注射二ヶ月後のmRNAサイレンシング効果を示す。
【0180】
【
図35】
図35は、アルツハイマー病(APP/PSEN1)動物モデルにおいて、ApoEを標的とする組織特異性siRNAの注射二ヶ月後の効果を示す図表を含む。
図35A:ジ-siRNA
ApoE注射二ヶ月後のmRNAサイレンシング。
図35B:GalNAc-siRNA
ApoE注射二ヶ月後のmRNAサイレンシング。
【0181】
【
図36】
図36は、アルツハイマー病動物モデルにおいて、注射二ヶ月後の組織特異性タンパク質サイレンシングを示す図表を含む。
図36A:ジ-siRNA
ApoE注射二ヶ月後のタンパク質サイレンシング。
図36B:GalNAc-siRNA
ApoE注射二ヶ月後のタンパク質サイレンシング。
【0182】
【
図37】
図37は、ジ-siRNA
NTC、ジ-siRNA
ApoE、GalNAc
NTC、またはGalNAc
APOEをICVまたはSCで注射した後の、海馬、皮質、および肝臓におけるApoEタンパク質の発現を示す生のウエスタンブロットを含む。
【0183】
【
図38】
図38は、ジ-siRNA
NTCまたはジ-siRNA
ApoEのどちらかで処置したマウスからの大脳皮質切片の免疫蛍光顕微鏡画像を含む。
【0184】
【
図39】
図39は、ジ-siRNA
ApoEおよびGalNAc-siRNA
ApoEで処置した動物において測定した皮質プラークの平均数を報告する図表を含む。
図39A:ジ-siRNA
NTCで処置したマウスと比較したジ-siRNA
APOEで処置したマウスにおける動物1匹あたりの皮質プラークの平均数。
図39B:GalNAc-siRNA
NTCで処置したマウスと比較したGalNAc-siRNA
ApoEで処置したマウスにおける動物1匹あたりの皮質プラークの平均数。
【0185】
【
図40】
図40A~
図40Cは、ジ-siRNA
NTCおよびジ-siRNA
ApoEで処置したマウスの間の性特異的分析の結果を報告する図表を含む。
図40A:ジ-siRNA
NTCおよびジ-siRNA
ApoEで処置したマウスの性特異的分析。
図40B:個々のマウスの各スライスのプラーク数。
図40C:個々のマウスの各スライスのプラーク数。
【0186】
【
図41】
図41は、ジ-siRNA
ApoEによるサイレンシング有効性に対する性別の影響を報告する図表である。
【0187】
【
図42】
図42A~
図42Bは、脳および脊髄においてApoE4をサイレンシングする新規のジ-siRNA ApoE 1156を示す。
図42A:注射1ヶ月後の海馬および肝臓におけるタンパク質サイレンシングの定量化。
図42B:脊髄におけるタンパク質サイレンシングの定量化。
【0188】
【
図43】
図43は、メチルが豊富な置換パターンを有するsiRNAを示す。
【0189】
図44A~
図44Cは、mRNAベースのヒト細胞モデルにおけるmRNAサイレンシングを示す新規の標的配列の同定を示す。
【
図44A】
図44Aは、HepG2細胞においてApoEを標的とするヒット配列を同定する一次スクリーンを示す。
【
図44B】
図44Bは、HepG2細胞における一次スクリーンからのヒット配列の有効性および効力を示す。
【
図44C】
図44Cは、HepG2細胞における一次スクリーンからのヒット配列の用量反応曲線を示す。
【0190】
【
図45】
図45は、1ミリグラムの皮質組織あたりのピコグラムにおける病理学アミロイドβ-42の測定を示す。結果は、雌と雄のマウスで別々に測定した。各性別の左のデータポイントは非標的対照のジ-siRNAに対応し、右のデータポイントはAPOEを標的とするジ-siRNAに対応する。
【0191】
【
図46-1】
図46A~
図46Cは、マウス皮質の染色(
図46A)およびX-34陽性プラークおよびAPP6E10/LAMP1陽性プラークの相対的な定量化(
図46B)を示す。
図46Aおよび
図46Bについて、結果は、雌と雄のマウスで別々に測定した。各性別の左のデータポイントは非標的対照のジ-siRNAに対応し、右のデータポイントはAPOEを標的とするジ-siRNAに対応する。
図46Cについて、結果は、GalNAc-コンジュゲートAPOE siRNAと比較した。
【
図46-2】
図46A~
図46Cは、マウス皮質の染色(
図46A)およびX-34陽性プラークおよびAPP6E10/LAMP1陽性プラークの相対的な定量化(
図46B)を示す。
図46Aおよび
図46Bについて、結果は、雌と雄のマウスで別々に測定した。各性別の左のデータポイントは非標的対照のジ-siRNAに対応し、右のデータポイントはAPOEを標的とするジ-siRNAに対応する。
図46Cについて、結果は、GalNAc-コンジュゲートAPOE siRNAと比較した。
【0192】
【
図47】
図47は、APOEを標的とするジ-siRNA、およびAPOEを標的とするGalNAc-コンジュゲートsiRNAでの血清コレステロール(HDLおよびLDLのレベル)の測定を示す。
【0193】
【
図48A】
図48A~
図48Bは、3x-Tg-ADマウスモデルの海馬および皮質における、ジ-siRNA ApoE 1156の注射4ヶ月後のAPOEタンパク質レベルの測定を示す。
【
図48B】
図48A~
図48Bは、3x-Tg-ADマウスモデルの海馬および皮質における、ジ-siRNA ApoE 1156の注射4ヶ月後のAPOEタンパク質レベルの測定を示す。
【0194】
【
図49A】
図49A~
図49Bは、3x-Tg-ADマウスモデルの海馬および皮質における、ジ-siRNA ApoE 1133の注射1ヶ月後のAPOEタンパク質レベルの測定を示す。
【
図49B】
図49A~
図49Bは、3x-Tg-ADマウスモデルの海馬および皮質における、ジ-siRNA ApoE 1133の注射1ヶ月後のAPOEタンパク質レベルの測定を示す。
【0195】
【
図50】
図50は、非ヒト霊長類(NHP)の後部皮質のいくつかの領域におけるsiRNAの蓄積を示す。NHPは、25mgのジ-siRNA ApoE 1133を大槽(cisterna magna)に注射し、siRNAの蓄積を注射2ヶ月後に評価した。
【0196】
(特定の例示的な実施態様の詳細な説明)
新規のApoE標的配列が提供される。また、本発明の新規のApoE標的配列を標的とする、siRNAなどの新規の干渉RNA分子も提供される。
【0197】
特に断らない限り、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質および核酸の化学ならびにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法は、当技術分野でよく知られ、一般的に使用されているものである。特に断らない限り、本明細書で提供される方法および技術は、当技術分野で周知の従来の方法に従って、特に断らない限り本明細書全体で引用および論じられる様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されるように実施される。酵素反応および精製技術は、当技術分野で一般的に達成されているように、または本明細書に記載されているように、製造業者の仕様に従って実施される。本書に記載の分析化学、有機合成化学、医薬化学に関連して使用される命名法、およびそれらの検査法および技術は、当技術分野でよく知られており、一般的に使用されているものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、医薬品、製剤、送達、および患者の処置に使用される。
【0198】
本明細書で特に定義されていない限り、本明細書で使用されている科学技術用語は、当業者が一般的に理解している意味を有する。いずれかの潜在的意味不明の場合は、本明細書で提供される定義を、辞書または外部の定義より優先する。文脈上特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。「or」の使用は、別段の記載がない限り、「および/または」を意味する。「含む(including)」という用語ならびに「含む(includes)」および「含まれる」などの他の形態の使用は限定されない。
【0199】
本発明がより容易に理解されるように、まず特定の用語を定義する。
【0200】
用語「ヌクレオシド」とは、プリンまたはピリミジン塩基がリボースまたはデオキシリボース糖に共有結合する分子を意味する。例示的なヌクレオシドとしては、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジンおよびチミジンがある。さらなる例示的なヌクレオシドとしては、イノシン、1-メチルイノシン、シュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、リボチミジン、2N-メチルグアノシンおよび2,2N,N-ジメチルグアノシン(「希少」ヌクレオシドとも称される)がある。用語「ヌクレオチド」とは、糖部分にエステル結合で接合される1つまたはそれ以上のリン酸基を有するヌクレオシドを意味する。例示的なヌクレオチドとしては、ヌクレオシド一リン酸、二リン酸および三リン酸がある。用語「ポリヌクレオチド」および「核酸分子」とは、本明細書において互換的に使用され、5'および3'炭素原子間のホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合によって完全に接合されるヌクレオチドのポリマーを意味する。
【0201】
用語「RNA」または「RNA分子」または「リボ核酸分子」とは、リボヌクレオチドのポリマー(例えば、2、3、4、5、10、15、20、25、30、またはそれ以上のリボヌクレオチド)を意味する。DNAおよびRNAは、自然に合成することができる(例えば、それぞれDNA複製またはDNAの転写によって)。RNAは転写後に修飾されることがある。また、DNAおよびRNAは化学的に合成することができる。DNAおよびRNAは、一本鎖(すなわち、それぞれssRNAおよびssDNA)または多本鎖(例えば、二本鎖、すなわち、それぞれdsRNAおよびdsDNA)であり得る。「mRNA」または「メッセンジャーRNA」は、1つまたはそれ以上のポリペプチド鎖のアミノ酸配列を特定する一本鎖のRNAである。この情報は、タンパク質合成中にリボソームがmRNAに結合する時に翻訳される。
【0202】
本明細書において使用されるとき、用語「低分子干渉RNA」(「siRNA」)(当技術分野では「短干渉RNA」とも称される)とは、RNA干渉を指示または媒介することができる約10~50個のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)を含むRNA(またはRNAアナログ)を意味する。好ましくは、siRNAは、約15~30個のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログ、より好ましくは、約16~25個のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)、さらにより好ましくは、約18~23個のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)、さらにより好ましくは、約19~22個のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)(例えば、19、20、21または22個のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログ)を含む。用語「短い」siRNAとは、約21個のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)、例えば、19、20、21または22個のヌクレオチドを含むsiRNAを意味する。用語「長い」siRNAとは、約24~25個のヌクレオチド、例えば、23、24、25または26個のヌクレオチドを含むsiRNAを意味する。短いsiRNAsは、場合によっては、19個未満のヌクレオチド、例えば、16、17または18個のヌクレオチドを含むことがあり、但し、該より短いsiRNAはRNAiを媒介する能力を保持する。同様に、長いsiRNAは、場合によっては、26を超えるヌクレオチドを含むことがあり、但し、長いsiRNAは、短いsiRNAへのさらなる処理(例えば、酵素処理)がなくても、RNAiを媒介する能力を保持する。
【0203】
用語「ヌクレオチドアナログ」または「改変ヌクレオチド」または「修飾ヌクレオチド」とは、非天然のリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含む、非標準のヌクレオチドを意味する。例示的なヌクレオチドアナログは、ヌクレオチドの特定の化学性質を改変するようにいずれかの位置が修飾されるにもかかわらずその意図する機能を果たすヌクレオチドアナログの能力を保持する。誘導体化され得るヌクレオチドの位置の例としては、5位、例えば、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン、5-プロピンウリジン、5-プロペニルウリジンなど;6位、例えば、6-(2-アミノ)プロピルウリジン;アデノシンおよび/またはグアノシンの8位、例えば、8-ブロモグアノシン、8-クロログアノシン、8-フルオログアノシンなどがある。また、ヌクレオチドアナログには、デアザヌクレオチド、例えば、7-デアザ-アデノシン;O-およびN-修飾(例えば、アルキル化、例えば、N6-メチルアデノシン、または当技術分野で他に知られている)ヌクレオチド;およびHerdewijn, Antisense Nucleic Acid Drug Dev., 2000 Aug. 10(4):297-310に記載されているような他のヘテロ環式的に修飾されたヌクレオチドアナログがある。
【0204】
ヌクレオチドアナログはまた、ヌクレオチドの糖部分への修飾を含み得る。例えば、2'OH-基は、H、OR、R、F、Cl、Br、I、SH、SR、NH2、NHR、NR2、またはCOORから選択される群によって置き換えられていてもよく、ここで、Rは、置換または非置換C1-C6アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールなどである。他の可能な修飾としては、米国特許5,858,988および6,291,438に記載されているものがある。
【0205】
ヌクレオチドのリン酸基はまた、例えば、リン酸基の1つまたはそれ以上の酸素を硫黄で置換することによって(例えば、ホスホロチオエート)、あるいは、例えば、Eckstein, Antiセンス 核酸 Drug Dev. 2000 Apr. 10(2):117-21, Rusckowski et al. Antiセンス 核酸 Drug Dev. 2000 Oct. 10(5):333-45, Stein, Antiセンス 核酸 Drug Dev. 2001 Oct. 11(5): 317-25, Vorobjev et al. Antiセンス 核酸 Drug Dev. 2001 Apr. 11(2):77-85、および米国特許5,684,143に記載されているように、該ヌクレオチドがその意図する機能を果たすことを可能にする他の置換を作ることによって修飾することができる。上述の特定の修飾(例えば、リン酸基修飾)は、好ましくは、例えば、インビボまたはインビトロで該アナログを含むポリヌクレオチドの加水分解率を低下させる。
【0206】
用語「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオチドアナログの短いポリマーを意味する。「RNAアナログ」とは、対応する未改変または未修飾のRNAと比較して、少なくとも1つの改変または修飾ヌクレオチドを有するが、対応する未改変または未修飾のRNAと同じまたは類似の性質または機能を保持するポリヌクレオチド(例えば、化学的に合成されたポリヌクレオチド)を意味する。上述したように、オリゴヌクレオチドは、ホスホジエステル結合を有するRNA分子と比較して、RNAアナログの加水分解率が低くなるような結合で結合することがある。例えば、アナログのヌクレオチドは、メチレンジオール、エチレンジオール、オキシメチルチオ、オキシエチルチオ、オキシカルボニルオキシ、ホスホロジアミデート、ホスホロアミデート、および/またはホスホロチオエート結合を含むことができる。好ましいRNAアナログは、糖-および/または骨格-修飾リボヌクレオチドおよび/またはデオキシリボヌクレオチドを含む。このような改変または修飾は、例えば、RNAの末端へまたは内部的に(RNAの1つまたはそれ以上のヌクレオチド)非ヌクレオチド材料を追加することをさらに含むことができる。RNAアナログは、RNA干渉を媒介する能力を有する能力を有するように、天然のRNAと十分に類似していればよい。
【0207】
本明細書において使用されるとき、用語「RNA干渉」(「RNAi」)とは、RNAの選択的な細胞内分解を意味する。RNAiは、外来のRNA(例えば、ウイルスのRNA)を除去するために、自然に細胞内で発生する。天然のRNAiは、分解性メカニズムを他の同様のRNA配列に指示する遊離dsRNAから切断される断片を介して進行する。あるいは、RNAiは、例えば、標的遺伝子の発現をサイレンシングするために、人間の手によって開始できる。
【0208】
RNAi剤、例えばRNAサイレンシング剤は、「標的特異的なRNA干渉(RNAi)を指示するために標的mRNA配列に十分に相補的な配列」である鎖を有し、その鎖は、RNAi機構またはプロセスによる標的mRNAの破壊を誘発するのに十分な配列を有することを意味する。
【0209】
本明細書において使用されるとき、用語「単離されたRNA」(例えば、「単離されたsiRNA」または「単離されたsiRNA前駆体」)とは、組換え技術によって生成されると、他の細胞材料または培養液を実質的に含まず、化学的に合成されると、化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まないRNA分子を意味する。
【0210】
本明細書において使用されるとき、用語「RNAサイレンシング」とは、対応するタンパク質コード化遺伝子の発現の阻害または「サイレンシング」をもたらす、RNA分子よって媒介される、配列特異的な調節メカニズム(例えば、RNA干渉(RNAi)、転写レベルでの遺伝子サイレンシング(transcriptional gene silencing, TGS)、転写後遺伝子サイレンシング(post-transcriptional gene silencing, PTGS)、クエリング(quelling)、同時サプレッション(co-suppression)、および翻訳抑制)の群を意味する。RNAサイレンシングは、植物、動物、菌類などの多くの生物で観察されている。
【0211】
本明細書において使用されるとき、用語「差別的なRNAサイレンシング」とは、例えば、両方のポリヌクレオチド配列が同じ細胞内に存在する場合に、「第一の」または「標的」ポリヌクレオチド配列の発現を実質的に阻害するが、「第二の」または「非標的」ポリヌクレオチド配列の発現を実質的に阻害しないRNA分子の能力を意味する。特定の実施態様において、標的ポリヌクレオチド配列は標的遺伝子に対応し、一方、非標的ポリヌクレオチド配列は非標的遺伝子に対応する。他の実施態様において、標的ポリヌクレオチド配列は標的対立遺伝子に対応し、一方、非標的ポリヌクレオチド配列は非標的対立遺伝子に対応する。特定の実施態様において、標的ポリヌクレオチド配列は、の調節領域(例えば、プロモーターまたはエンハンサーエレメント)をコードするDNA 配列標的遺伝子である。別の実施態様において、標的ポリヌクレオチド配列は、標的遺伝子によってコードされる標的mRNAである。
【0212】
用語「インビトロ」とは、例えば、精製された試薬または抽出物、例えば、細胞抽出物に関わる、当業界で認識されている意味を有する。また、用語「インビボ」とは、生細胞、例えば、不死化細胞、初代細胞、細胞株、および/または生物の細胞に関わる、当業界で認識されている意味を有する。
【0213】
本明細書において使用されるとき、用語「導入遺伝子」とは、策略によって細胞に挿入され、その細胞から生長する生物のゲノムの一部となるいずれかの核酸分子を意味する。このような導入遺伝子は、トランスジェニック生物に対して一部または全部が異種(すなわち、外来)の遺伝子を含むことができるか、生物の内在性遺伝子に相同な遺伝子を表すことができる。用語「導入遺伝子」とはまた、トランスジェニック生物、例えば動物において発現させるための、操作されたRNA前駆体の1つまたはそれ以上をコードする核酸配列、例えば、DNAから選択される1つまたはそれ以上を含む核酸分子を意味し、これは、トランスジェニック動物に対して一部または全部が異種、すなわち、外来であるか、またはトランスジェニック動物の内在性遺伝子に相同であるが、天然遺伝子とは異なる位置で動物のゲノムに挿入されるように設計されている。導入遺伝子は、1つまたはそれ以上のプロモーター、および選択された核酸配列の発現に必要なイントロンなどの他のDNAを含み、すべてが選択された配列に操作可能に結合しており、エンハンサー配列を含むことができる。
【0214】
疾患または障害に「関与する」遺伝子には、その正常または異常な発現または機能が、該疾患もしくは障害または該疾患または障害の少なくとも1つの症状をもたらす、または引き起こす、といった遺伝子が含まれる。
【0215】
本明細書において使用される用語「機能獲得型変異」とは、遺伝子によってコードされるタンパク質(すなわち、変異タンパク質)が、疾患または障害が起因するか、または関与する、そのタンパク質(すなわち、野生型タンパク質)とは通常関連しない機能を獲得する、遺伝子におけるいずれかの変異を意味する。機能獲得型変異は、コードされるタンパク質の機能に変化をもたらす遺伝子のヌクレオチドの欠失、付加、または置換であり得る。一実施態様において、機能獲得型変異は、変異タンパク質の機能を変化させるか、他のタンパク質との相互作用を引き起こす。別の実施態様において、機能獲得型変異は、例えば、改変された変異体タンパク質と正常な野生型タンパク質との相互作用によって、該正常な野生型タンパク質の低減または除去を引き起こす。
【0216】
本明細書において使用されるとき、用語「標的遺伝子」は、発現が実質的に阻害または「サイレンシングする」遺伝子である。このサイレンシングは、RNAサイレンシング、例えば、標的遺伝子のmRNAを切断することによって、または標的遺伝子の翻訳抑制によって達成することができる。「非標的遺伝子」は、発現が実質的にサイレンシングされない遺伝子である。一実施態様において、標的遺伝子および非標的遺伝子のポリヌクレオチド配列(例えば、標的および非標的遺伝子によってコードされるmRNA)は、1つまたはそれ以上のヌクレオチドが異なることがある。別の実施態様において、標的遺伝子および非標的遺伝子は、1つまたはそれ以上の多型(例えば、単一ヌクレオチド多型またはSNP)が異なることがある。別の実施態様において、標的遺伝子および非標的遺伝子は、100%未満の配列同一性を共有することができる。別の実施態様において、非標的遺伝子は、標的遺伝子のホモログ(例えば、オルソログまたはパラログ)であり得る。
【0217】
「標的対立遺伝子」は、発現が選択的に阻害または「サイレンシングする」対立遺伝子(例えば、SNP対立遺伝子)である。このサイレンシングは、RNAサイレンシング、例えば、siRNAによって標的遺伝子または標的対立遺伝子のmRNAを切断することによって達成することができる。「非標的対立遺伝子」は、発現が実質的にサイレンシングされない対立遺伝子である。特定の実施態様において、標的対立遺伝子および非標的対立遺伝子は、同じ標的遺伝子に対応することができる。他の実施態様において、標的対立遺伝子は、標的遺伝子に対応するか、またはそれに関連し、非標的対立遺伝子は、非標的遺伝子に対応するか、またはそれに関連する。一実施態様において、標的対立遺伝子および非標的対立遺伝子のポリヌクレオチド配列は、1つまたはそれ以上のヌクレオチドが異なることがある。別の実施態様において、標的対立遺伝子および非標的対立遺伝子は、1つまたはそれ以上の対立遺伝子多型(例えば、1つまたはそれ以上のSNP)が異なることがある。別の実施態様において、標的対立遺伝子および非標的対立遺伝子は、100%未満の配列同一性を共有できる。
【0218】
本明細書において使用される用語「多型」とは、異なるソースまたは対象から(ただし、同じ生物から)の同じ遺伝子配列を比較するときに同定または検出される、遺伝子配列における多様性(例えば、1つまたはそれ以上のの欠失、挿入、または置換)を意味する。例えば、多型は、異なる対象からの同じ遺伝子配列を比較するときに同定され得る。このような多型の同定は、当技術分野では日常的に行われており、その方法は、例えば、乳癌の点変異を検出するために使用される方法と同様である。同定は、例えば、対照のリンパ球から抽出されるDNAを用い、その後、多型領域に特異的なプライマーを用いて該多型領域を増幅することにより行うことができる。あるいは、多型は、同じ遺伝子の2つの対立遺伝子を比較する時に同定され得る。特定の実施態様において、多型は単一ヌクレオチド多型(SNP)である。
【0219】
本明細書において、生物内の同じ遺伝子の2つの対立遺伝子間の配列における多様性を「対立遺伝子多型」と称する。特定の実施態様において、対立遺伝子多型は、対立遺伝子多型は、SNP対立遺伝子に対応する。例えば、対立遺伝子多型は、SNPの2つの対立遺伝子間の一塩基多様性(single nucleotide variation)を含むことができる。多型はコード領域内のヌクレオチドにあることができるが、遺伝暗号の縮退により、アミノ酸配列の変化はコードされない。あるいは、多型配列、特定の位置で異なるアミノ酸をコードすることができるが、このアミノ酸おけるこの変化は、タンパク質の機能に影響を与えない。多型領域は、遺伝子の非コード領域にも見出されることがある。例示的な実施態様において、多型は、遺伝子のコード領域または遺伝子の非翻訳領域(例えば、5'UTRまたは3'UTR)に見出される。
【0220】
本明細書において使用される用語「対立遺伝子頻度」とは、個体群における単一の遺伝子座での対立遺伝子(例えば、SNP対立遺伝子)の相対頻度の尺度(例えば、割合またはパーセンテージ)である。例えば、個体群が、それらの体細胞のそれぞれに、特定の染色体座位(およびその遺伝子座を占める遺伝子)の遺伝子座をn個保有している場合、対立遺伝子の対立遺伝子頻度は、その対立遺伝子がその群内で占める遺伝子座の比率またはパーセンテージである。特定の実施態様において、対立遺伝子(例えば、SNP対立遺伝子)の対立遺伝子頻度は、サンプル群において少なくとも10%(例えば、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%またはそれ以上)である。
【0221】
本明細書において使用されるとき、用語「サンプル群(sample population)」とは、統計的に有意な数の個体を含む個体群を意味する。例えば、サンプル群は、50、75、100、200、500、1000またはそれ以上の個体を含むことができる。特定の実施態様において、サンプル群は、少なくとも共通の疾患表現型(例えば、機能獲得型障害)または変異(例えば、機能獲得型変異)に関して共有する個体を含むことができる。
【0222】
本明細書において使用されるとき、用語「ヘテロ接合性」とは、特定の遺伝子座(例えば、SNP)においてヘテロ接合的(例えば、2つまたはそれ以上の異なる対立遺伝子を含む)である群内の個体の比率を意味する。ヘテロ接合性は、当業者によく知られている方法でサンプル群について計算することができる。
【0223】
本明細書において使用される用語「ポリグルタミンドメイン」とは、ペプチド結合で結合された連続グルタミン残基からなるタンパク質のセグメントまたはドメインを意味する。一実施態様において、連続領域は、少なくとも5のグルタミン残基を含む。
【0224】
本明細書において使用される用語「伸長ポリグルタミンドメイン」または「伸長ポリグルタミンセグメント」とは、ペプチド結合によって結合された少なくとも35の連続グルタミン残基を含むタンパク質のセグメントまたはドメインを意味する。このような伸長セグメントは、本明細書に記載のポリグルタミン障害にに苦しんでいる対象では、その対象が顕性症状を示しているか否かにかかわらず見出される。
【0225】
本明細書において使用される用語「トリヌクレオチド反復」または「トリヌクレオチド反復領域」とは、特定のトリヌクレオチド配列の連続反復からなる核酸配列のセグメントを意味する。一実施態様において、トリヌクレオチド反復は、少なくとも5の連続トリヌクレオチド配列を含む。例示的なトリヌクレオチド配列は、CAG、CGG、GCC、GAA、CTGおよび/またはCGGを含むが、これらに限定されない。
【0226】
本明細書において使用される用語「トリヌクレオチド反復疾患」とは、遺伝子内に位置する伸長トリヌクレオチドリピート領域を特徴とするあらゆる疾患または障害を意味し、伸長したトリヌクレオチドリピート領域は疾患または障害の原因となる。トリヌクレオチド反復疾患の例としては、脊髄小脳失調症12型、脊髄小脳失調症8型、脆弱X症候群、脆弱XE精神遅滞、フリートライヒ運動失調症および筋緊張性ジストロフィーがあるが、これらに限定されない。本発明による処置のための例示的なトリヌクレオチド反復疾患は、遺伝子のコード領域の5'末端の伸長トリヌクレオチド反復を特徴とする、またはそれによって起こされるものであり、その遺伝子は、疾患または障害を引き起こす、またはその原因となる変異タンパク質をコードする。変異がコード領域に関連していない特定のトリヌクレオチド疾患、例えば脆弱性X症候群は、RNAiによって標的とされる適切なmRNAが存在しないため、本発明の方法論による処置に適さない可能性がある。対照的に、フリートライヒ運動失調症のような疾患は、原因となる変異がコード領域内ではない(すなわち、イントロン内にある)ものの、変異が例えばmRNA前駆体(例えば、プレスプライスされたmRNA前駆体)内にあり得るため、本発明の方法論による処置に適していると考えられる。
【0227】
「細胞または生物における遺伝子の機能を考察する」という表現は、そこから生じる発現、活性、機能または表現型を考察または研究することを意味する。
【0228】
本明細書において使用されるとき、用語"RNAサイレンシング剤"とは、標的遺伝子の発現を阻害または「サイレンシング」できるRNAを意味する。特定の実施態様において、RNAサイレンシング剤は、転写後サイレンシングメカニズムを介して、mRNA分子の完全なプロセシング(例えば、完全な翻訳および/または発現)を防止することができる。RNAサイレンシング剤は、小さな(<50b.p.)、非コードRNA分子、例えば、対の鎖を含むRNA二重鎖、およびそのような小さな非コードRNAが生成され得る前駆体RNAを含む。例示的なRNAサイレンシング剤は、siRNA、miRNA、siRNA-様二重鎖、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ギャップマー分子、および二重機能のオリゴヌクレオチドならびにこれらの前駆体を含む。一実施態様において、RNAサイレンシング剤は、RNA干渉を誘導することができる。別の実施態様において、RNAサイレンシング剤は、翻訳抑制を媒介することができる。
【0229】
本明細書において使用されるとき、用語「希少ヌクレオチド」とは、まれに発生する天然に存在するヌクレオチドを意味し、まれに発生する天然に存在するデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、例えば、グアノシン、アデノシン、シトシン、またはウリジンでない天然に存在するリボヌクレオチドを含む。希少ヌクレオチドの例として、イノシン、1-メチルイノシン、シュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、リボチミジン、2N-メチルグアノシンおよび2,2N,N-ジメチルグアノシンを含むが、これらに限定されない。
【0230】
操作されたRNA前駆体または操作された核酸分子における用語「操作された」とは、前駆体または分子が自然界に存在しないことを示しており、この前駆体または分子の核酸配列のすべてまたは一部が人間によって作成または選択されていることを意味する。一旦作成または選択された配列は、細胞内でのメカニズムによって複製、翻訳、転写されるか、またはその他の方法によって操作される。こうして、操作された核酸分子を含む導入遺伝子から細胞内で生成されるRNA前駆体は、操作されたRNA前駆体である。
【0231】
本明細書において使用されるとき、用語「マイクロRNA」(「miRNA」)とは、当技術分野では「小分子RNA」(「stRNA」)とも称され、(例えば、ウイルス、哺乳類、または植物のゲノムによって)遺伝子学的にコードされ、RNAサイレンシングを指示または媒介することができる小さな(10~50個のヌクレオチド)RNAを意味する。「miRNA障害」とは、miRNAの異常な発現または活性を特徴とする疾患または障害を意味するものとする。
【0232】
本明細書において使用されるとき、用語「二重機能性オリゴヌクレオチド」とは、式T-L-μ[式中、TはmRNA標的部分であり、Lは結合部分であり、μはmiRNA動員部分である]で示されるRNAサイレンシング剤を意味する。本明細書において使用されるとき、用語「mRNA標的部分(mRNA targeting moiety)」、「標的部分(targeting moiety)」、「mRNA標的部分(mRNA targeting portion)」または「mRNA標的部分(targeting portion)」とは、サイレンシングのために選択または標的とされたmRNAの部分または領域に対して十分なサイズと十分な相補性を有する(すなわち、この部分が標的mRNAを捕捉するのに十分な配列を有する)二重機能性オリゴヌクレオチドのドメイン、部分または領域を意味する。本明細書において使用されるとき、用語「結合部分(linking moiety)」または「結合部分(linking portion)」とは、mRNAを共有結合で接合または結合するRNA-サイレンシング剤のドメイン、部分または領域を意味する。
【0233】
本明細書において使用されるとき、RNAサイレンシング剤、例えば、siRNAまたはRNAサイレンシング剤の「アンチセンス鎖」という用語とは、サイレンシングのために標的とされる遺伝子のmRNAの約10~50個のヌクレオチド、例えば、約15~30個、16~25個、18~23個または19~22個のヌクレオチドのセクションに実質的に相補的な鎖を意味する。アンチセンス鎖または第一鎖は、標的-特異的なサイレンシングを指示するために所望の標的mRNA配列に十分に相補的な配列、例えば、RNAiマシナリーまたは操作(RNAi干渉)によって所望の標的mRNAの破壊を誘発するのに十分な相補性を有するか、または所望の標的mRNAの翻訳抑制を誘発するのに十分な相補性を有する配列を有する。
【0234】
RNAサイレンシング剤、例えばsiRNAまたはRNAサイレンシング剤の「センス鎖」または「第二鎖」という用語は、アンチセンス鎖または第一鎖に相補的な鎖を意味する。アンチセンス鎖およびセンス鎖は、第一鎖または第二鎖とも称され、第一鎖または第二鎖は標的配列に相補性を有し、第二鎖または第一鎖はそれぞれ、該第一鎖または該第二鎖に相補性を有する。miRNA二重鎖中間体またはsiRNA-様二重鎖は、サイレンシングのために標的とされる遺伝子のmRNAの約10~50個のヌクレオチドのセクションに十分な相補性を有するmiRNA鎖、およびmiRNA鎖と二重鎖を形成するのに十分な相補性を有するmiRNA*鎖を含む。
【0235】
本明細書において使用されるとき、用語「ガイド鎖」とは、RISC複合体に入り、標的mRNAの切断を指示するRNAサイレンシング剤の鎖、例えば、siRNA二重鎖またはsiRNA配列のアンチセンス鎖を意味する。
【0236】
本明細書において使用されるとき、RNAサイレンシング剤(例えば、shRNAのステム)の二重領域の非対称における「非対称」という用語は、二重鎖の一方の鎖の5'末端が相補的な鎖の5'末端よりも頻繁に一時的な不対の状態、例えば一本鎖の状態になるような、RNAサイレンシング剤の末端間(例えば、第一鎖またはステム部分の末端ヌクレオチドと、対向する第二鎖またはステム部分の末端ヌクレオチドとの間)の結合強度または塩基対合の強度の不均等を意味する。この構造的な違いにより、二重鎖の一方の鎖が優先的にRISC複合体に組み込まれることが決まる。5'末端が相補的な鎖と緊密に対になっていない鎖の方が優先的にRISCに組み込まれ、RNAiを媒介することになる。
【0237】
本明細書において使用されるとき、用語「結合強度」または「塩基対強度」とは、オリゴヌクレオチド二重鎖(例えば、siRNA二重鎖)の対向する鎖上のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)の対の間の、主に該ヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)間のH結合、ファンデルワールス相互作用などに起因する相互作用の強度を意味する。
【0238】
本明細書において使用されるとき、アンチセンス鎖の5'末端における「5'末端」とは、5'末端ヌクレオチド、例えばアンチセンス鎖の5'末端の1から約5個のヌクレオチドの間の領域を意味する。本明細書において使用されるとき、センス鎖の3'末端における「3'末端」は、相補的なアンチセンス鎖の5'末端のヌクレオチドに相補的な領域、例えば、1から約5個のヌクレオチドの間の領域を意味する。
【0239】
本明細書において使用されるとき、用語「不安定化ヌクレオチド」とは、第二のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログと塩基対を形成することができる第一のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログであって、その塩基対が従来の塩基対(すなわち、ワトソン-クリック塩基対)よりも低い結合強度を有するように塩基対を形成するもの意味する。特定の実施態様において、不安定化ヌクレオチドは、第二のヌクレオチドとミスマッチ塩基対を形成することができる。他の実施態様において、不安定化ヌクレオチドは、第二のヌクレオチドとゆらぎ塩基対を形成することができる。さらに他の実施態様において、不安定化ヌクレオチドは第二のヌクレオチドとあいまいな塩基対を形成することができる。
【0240】
本明細書において使用されるとき、用語「塩基対」とは、オリゴヌクレオチド二重鎖(例えば、RNAサイレンシング剤の鎖および標的mRNA配列によって形成される二重鎖)の対向する鎖上のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)の対の間の、主に該ヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)の間のH結合、ファンデルワールス相互作用などに起因する相互作用を意味する。本明細書において使用されるとき、「結合強度」または「塩基対強度」という用語は、塩基対の強度を意味する。
【0241】
本明細書において使用されるとき、用語「ミスマッチ塩基対」とは、非相補的なまたは非ワトソン・クリック塩基対、例えば、正常な相補的なG:C、A:TまたはA:U 塩基対でないものからなる塩基対を意味する。本明細書において使用されるとき、用語「あいまいな塩基対」(非差別的な塩基対とも知られている)とは、一般的なヌクレオチドによって形成される塩基対を意味する。
【0242】
本明細書において使用されるとき、用語「ユニバーサルヌクレオチド」(「ニュートラルヌクレオチド」としても知られている)は、塩基対を形成する際に相補的なポリヌクレオチド上の塩基間を有意に差別しない塩基(「ユニバーサル塩基」または「ニュートラル塩基」)を有するヌクレオチド(例えば、特定の不安定化ヌクレオチド)を含む。ユニバーサルヌクレオチドは、主に疎水性の分子で、スタッキング相互作用のため、逆平行二重核酸(例えば、二本鎖DNAやRNA)に効率的に詰め込むことができる。ユニバーサルヌクレオチドの塩基部分は、典型的には、窒素含有芳香族ヘテロ環式部分を含む。
【0243】
本明細書において使用されるとき、「十分な相補性」または「十分な程度の相補性」という用語は、RNAサイレンシング剤が、それぞれ所望の標的RNAに結合して、標的mRNAのRNAサイレンシングを誘発するのに十分な配列(例えば、アンチセンス鎖、mRNA標的部分またはmiRNA動員部分)を有することを意味する。
【0244】
本明細書において使用されるとき、用語「翻訳抑制」とは、mRNAの翻訳の選択的阻害を意味する。自然な翻訳抑制は、shRNA前駆体から切断されたmiRNAを介して進行する。RNAiと翻訳抑制の両方は、RISCよって媒介される。RNAiと翻訳抑制の両方は、自然に起こるものであるが、人間の手によって開始して、例えば、標的遺伝子の発現をサイレンシングすることができる。
【0245】
本発明の様々な方法論は、値、レベル、特徴、特性、プロパティなどを、本明細書では交換可能に「適切な対照」と称される「適当な対照」と比較するステップを含む。「適当な対照」または「適切な対照」は、比較の目的に有用な、当業者になじみのある対照または基準である。一実施態様において、「適当な対照」または「適切な対照」は、本明細書に記載されているように、RNAi方法論を実行する前に決定される値、レベル、特徴、特性などである。例えば、本発明のRNAサイレンシング剤を細胞または生物に導入する前に、転写率、mRNAレベル、翻訳率、タンパク質レベル、生物学的活性、細胞の特性や性質、遺伝子型、表現型などを決定することができる。別の実施態様において、「適当な対照」または「適切な対照」は、細胞または生物、例えば、正常な形質を示す対照または正常な細胞または生物において決定される値、レベル、特徴、特性、性質などである。さらに別の実施態様において、「適当な対照」または「適切な対照」は、あらかじめ定義された値、レベル、特徴、特性、性質などである。
【0246】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、適当な方法および材料を以下に説明する。本明細書に記載のすべての出版物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その全体が引用により包含される。矛盾が生じた場合は、定義を含めて本明細書が優先される。また、材料、方法、および実施例は例示に過ぎず、限定を意図したものではない。
【0247】
本発明のさまざまな態様は、以下のサブセクションでさらに詳細に説明する。
I. 新規の標的配列
【0248】
特定の例示的な実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、表1、2、または7に記載のAPOE mRNA標的を標的とすることができる。特定の例示的な実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'を標的とすることができる。特定の例示的な実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、5' GAUUCACCAAGUUUA 3'および5' CAAGUUUCACGCAAの1つまたはそれ以上の標的配列を標的とすることができる。特定の例示的な実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'を標的とすることができる。特定の例示的な実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、標的配列5' CCUAGUUUAAUAAAGAUUCA 3'を標的とすることができる。
【0249】
各標的配列のゲノム配列は、例えば、NCBIにより維持されている公開データベースで見出され得る
II. siRNAの設計
【0250】
いくつかの実施態様において、siRNAは以下のように設計される。まず、標的遺伝子(例えば、ApoE遺伝子)の一部、例えば、表1、表2、または表7に記載の標的配列の1つまたはそれ以上を選択する。これらの位置でのmRNAの切断により、対応するタンパク質の翻訳を排除する。センス鎖は、標的配列に基づいて設計された。(
図3Aを参照のこと)。好ましくは、該部分(および対応するセンス鎖)は、約19~25個のヌクレオチド、例えば、19、20、21、22、23、24または25個のヌクレオチドを含む。より好ましくは、該部分(および対応するセンス鎖)は、21、22または23個のヌクレオチドを含む。しかし、当業者は、19未満ヌクレオチド長または25を超えるヌクレオチド長を有するsiRNAもRNAiを媒介するように機能することができることを理解するであろう。したがって、そのような長さのsiRNAも、RNAiを媒介する能力を保持していれば、本発明の範囲内である。より長いRNAi物質は、特定の哺乳類細胞内でのインターフェロンやPKR反応を誘発することが実証されており、これは望ましくない可能性がある。しかし、より長いRNAi物質は、例えば、PKR反応を起こすことができない細胞型、またはPKR反応が代替の手段によってダウンレギュレートされるか、または弱めらる、といった状況では有用であり得る。
【0251】
センス鎖の配列は、標的配列が基本的に鎖の中央にあるように設計されている。標的配列を中心から外れた位置に移動させると、場合によっては、siRNAによる切断の効率が低下することがある。そのような組成物、すなわち効率の低い組成物は、野生型mRNAのオフ-サイレンシングが検出された場合に使用するのが望ましい場合がある。
【0252】
アンチセンス鎖は、ルーチン的にはセンス鎖と同じ長さであり、相補的なヌクレオチドを含む。一実施態様において、該鎖は、完全に相補的であり、すなわち、該鎖は、整列させるか、またはアニールしたときに平滑末端になる。別の実施態様において、該鎖は、1、2、3、4、5、6または7個のヌクレオチドの突出部が生成される、例えば、センス鎖の3'末端がアンチセンス鎖の5'末端よりも1、2、3、4、5、6、または7個のヌクレオチドを延長するか、および/またはアンチセンス鎖の3'末端がセンス鎖の5'末端よりも1、2、3、4、5、6、または7個のヌクレオチドを延長するような整列またはアニールを含む。突出部は、標的遺伝子配列(またはその補体)に対応するヌクレオチドを含むことができるか、それからなり得る。あるいは、突出部は、デオキシリボヌクレオチド、例えば、dTs、またはヌクレオチドアナログ、または他の適当な非ヌクレオチド材料を含むことができるか、それからなり得る。
【0253】
アンチセンス鎖のRISCへの進入を容易にすることで、(標的切断およびサイレンシングの効率を高める、または改善する)ために、センス鎖の5'末端およびアンチセンス鎖の3'末端の間の塩基対強度を変更し、例えば、名称が“Methods and Compositions for Controlling Efficacy of RNA Silencing”(2003年6月2日に提出)である米国特許7,459,547、7,772,203および7,732,593、ならびに名称が“Methods and Compositions for Enhancing the Efficacy and 特異性 of RNAi”(2003年6月2日に提出)である米国特許8,309,704、7,750,144、8,304,530、8,329,892および8,309,705に詳しく記載されているように和らげるか、低減することができ、これらの内容は本引用により本明細書に包含される。本発明のこれらの態様の一実施態様において、第一のまたはアンチセンス鎖の5'端と第二のまたはセンス鎖の3'端との間のG:C塩基対が、第一のまたはアンチセンス鎖の3'端と第二のまたはセンス鎖の5'端との間のG:C塩基対よりも少ないため、塩基対強度が低くなっている。別の実施態様において、第一のまたはアンチセンス鎖の5'末端と第二のまたはセンス鎖の3'末端との間に少なくとの1つのミスマッチ塩基対あるため、塩基対強度が低くなっている。特定の例示的な実施態様において、ミスマッチ塩基対は、G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:CおよびU:Uからなる群から選択される。別の実施態様において、第一のまたはアンチセンス鎖の5'末端と第二のまたはセンス鎖の3'末端との間に少なくとも1つのゆらぎ塩基対、例えば、G:Uがあるため、塩基対強度が低くなっている。別の実施態様において、少なくとも1つの塩基対が希少ヌクレオチド、例えば、イノシン(I)を含んでいるため、塩基対強度が低くなっている。特定の例示的な実施態様において、塩基対は、I:A、I:UおよびI:Cからなる群から選択される。さらに別の実施態様において、少なくとも1つの塩基対が修飾ヌクレオチドを含んでいるため、塩基対強度が低くなっている。特定の例示的な実施態様において、修飾ヌクレオチドは、2-アミノ-G、2-アミノ-A、2,6-ジアミノ-G、および2,6-ジアミノ-Aからなる群から選択される。
【0254】
図3で示したApoE標的配列を標的とするのに適したsiRNAの設計について、以下に詳細に説明する。siRNAは、ApoE遺伝子に見られるいずれかの他の標的配列に対して、上記の例示的な教示に従って設計することができる。さらに、本技術は、いずれかの他の標的配列、例えば、非疾患原因の標的配列を標的とすることにも適用可能である。
【0255】
siRNAがmRNA(例えば、ApoE mRNA)を破壊する有効性を検証するために、DrosophilaベースのインビトロmRNA発現システムにおいて、siRNAをcDNA(例えば、ApoE cDNA)と共にインキュベートすることができる。32Pで放射性標識された、新しく合成されたmRNA(例えば、ApoE mRNA)は、アガロースゲルでオートラジオグラフィーによって検出される。切断されたmRNAの存在は、mRNAヌクレアーゼ活性を示す。適当な対照は、siRNAの省略を含む。あるいは、対照のsiRNAとしては、選択されるsiRNAと同じヌクレオチド組成を有するが、適切な標的遺伝子に対して有意な配列相補性を有しないものが選択される。このような陰性対照は、選択されるsiRNAのヌクレオチド配列を無作為にスクランブリングすることによって設計でき、相同性検索を実行して、陰性対照が適切なゲノム内のいずれかの他の遺伝子に対して相同性を欠いていることを確認できる。さらに、陰性対照のsiRNAは、1つまたはそれ以上の塩基ミスマッチを配列に導入することによって設計できる。siRNA-mRNAの相補性部位は、最適なmRNAの特異性と最大のmRNA切断をもたらすように選択される。
III. RNAi物質
【0256】
本発明は、例えば、上述のように設計されたsiRNA分子を含む。本発明のsiRNA分子は、化学的に合成することもでき、DNA鋳型からインビトロで、もしくは例えばshRNAからインビボで転写させることができ、または、組換えヒトDICER酵素を用いて、インビトロで転写させたdsRNA鋳型を切断して、RNAiを媒介する20-、21-または23-bpの二重鎖RNAのプールにすることができる。
【0257】
一局面において、RNAi物質が干渉性リボ核酸、例えば、上記のsiRNAまたはshRNAである代わりに、RNAi物質は、上記のように、干渉性リボ核酸、例えば、上記のshRNAをコードすることができる。言い換えれば、RNAi物質は干渉性リボ核酸の転写鋳型であり得る。したがって、本発明のRNAi物質は、小ヘアピンRNA(shRNA)、およびshRNAを発現するように操作された発現コンストラクトも含むことができる。shRNAの転写は、ポリメラーゼIII(pol III)プロモーターで開始され、4-5-チミン転写終結部位の2位で終結すると考えられている。shRNAは、発現すると、3'UU-突出部を有するステム-ループ構造に折り畳まれ、その後、これらのshRNAの末端が処理されて、約21~23個のヌクレオチドのsiRNA様分子に変換されると考えられている(Brummelkamp et al., 2002; Lee et al., 2002, Supra; Miyagishi et al., 2002; Paddison et al., 2002, supra; Paul et al., 2002, supra; Sui et al., 2002 supra; Yu et al., 2002, supra. shRNAの設計および使用に関する詳細は、インターネットの次のアドレスで見出され得る: katandin.cshl.org:9331/RNAi/docs/BseRI-BamHI_ストラテジー .pdf and katandin.cshl.org:9331/RNAi/docs/Web_version_of_PCR_ストラテジー 1.pdf)。
【0258】
本発明の発現コンストラクトは、適切な発現システムでの使用に適したいずれかのコンストラクトを含み、当技術分野で知られているレトロウイルスベクター、線形発現カセット、プラスミドおよびウイルスまたはウイルス由来のベクターを含むが、これらに限定されない。このような発現コンストラクトは、1つまたはそれ以上の誘導性プロモーター、RNA Pol IIIプロモーターシステム、例えば、U6 snRNAプロモーターまたはH1 RNAポリメラーゼIIIプロモーター、または当技術分野で知られている他のプロモーターを含むことができる。コンストラクトは、siRNAの片方または両方のストランドを含むことができます。両方の鎖を発現する発現コンストラクトはまた、両方の鎖を結合するループ構造を含むこともできるか、または各鎖が同じコンストラクト内で別々のプロモーターから別々に転写されることもある。また、各鎖は、別々の発現コンストラクトから転写されることもある (Tuschl, T., 2002, Supra) 。
【0259】
合成siRNAは、カチオンリポソームトランスフェクションやエレクトロポレーションを含めた、当技術分野で知られている方法で細胞内に送達することができる。標的遺伝子(例えば、ApoE遺伝子)のより長期的な抑制を得るために、また特定の状況下での送達を容易にするために、組換えDNAコンストラクトから細胞内で1つまたはそれ以上のsiRNAを発現させることができる。組換えDNAコンストラクトから細胞内でsiRNA二重鎖を発現させ、細胞内でより長期的な標的遺伝子の抑制を可能にするこのような方法としては、機能的な二本鎖siRNAを発現することができる哺乳類Pol IIIプロモーターシステム(例えば、H1またはU6/snRNAプロモーターシステム(Tuschl,T.2002, supra);(Bagella et al., 1998; Lee et al., 2002, supra; Miyagishi et al., 2002, supra; Paul et al., 2002, supra; Yu et al., 2002, supra; Sui et al., 2002, supra) などが当技術分野で知られている。RNA Pol IIIによる転写終結は、DNA鋳型における4つの連続T残基の実行で発生し、これは、特定の配列でsiRNA転写産物を終結させるメカニズムを提供する。siRNAは、標的遺伝子の配列に対して5'-3'および3'-5'の配向に相補的であり、siRNAの二本の鎖は、同じコンストラクトで発現させることも、別々のコンストラクトで発現させることもできる。H1またはU6 snRNAプロモーターによって駆動され、細胞内で発現するヘアピンsiRNAは、標的遺伝子の発現を阻害することができる((Bagella et al., 1998; Lee et al., 2002, supra; Miyagishi et al., 2002, supra; Paul et al., 2002, supra; Yu et al., 2002), supra; Sui et al., 2002, supra)。また、T7プロモーターの制御下にあるsiRNA配列を含むコンストラクトは、T7 RNAポリメラーゼを発現するベクターと細胞内でコトランスフェクトすると、機能的なsiRNAを作ることができる(Jacque et al., 2002, supra)。単一のコンストラクトは、同一遺伝子または複数の遺伝子を標的とするsiRNAをコードする複数の配列、例えば、を含むことができ、例えば、ApoEをコードする遺伝子の複数の領域を含むことができ、別々のPolIIIプロモーター部位によって駆動することができる。
【0260】
動物細胞は、動物の発育中の転写後または翻訳後のレベルで遺伝子発現を調節することができる、マイクロRNA(miRNA)と称される約22個のヌクレオチドの一連の非コードRNAを発現する。miRNAに共通する特徴は、約70個のヌクレオチドの前駆体RNAのステムループから、おそらくRNase III型酵素であるDicerまたはそのホモログによって全てが切り取られることである。miRNA前駆体のステム配列を標的mRNAに相補的な配列で置換することにより、操作された前駆体を発現するベクターコンストラクトを用いて、哺乳類細胞内での特定のmRNA標的に対してRNAiを開始するsiRNAを産生することができる(Zeng et al., 2002, supra)。ポリメラーゼIIIプロモーターを含むDNAベクターで発現させると、マイクロRNAで設計されたヘアピンを、遺伝子発現をサイレンシングすることができる(McManus et al., 2002, supra)。多型を標的とするマイクロRNAはまた、siRNA媒介遺伝子-サイレンシングが存在しない場合に、変異タンパク質の翻訳をブロッキングするのにも有用である。このような適用は、例えば、設計されたsiRNAが野生型タンパク質のオフ-標的サイレンシング(off-target silencing)を引き起こす、といった状況で有用である。
【0261】
ウイルス介在送達機構はまた、例えば、RNA Pol IIプロモーター転写制御下でsiRNAを保有する組換えアデノウイルスを生成することにより、siRNAの発現を介して標的遺伝子の特異的サイレンシングを誘導するのに使用することもできる(Xia et al., 2002, supra)。これらの組換えアデノウイルスをHeLa細胞に感染させることにより、内因性の標的遺伝子の発現を低下させることができる。組換えアデノウイルスベクターを、siRNAの標的遺伝子を発現しているトランスジェニックマウスに注射することにより、標的遺伝子の発現のインビボでの低下をもたらす。Id。動物モデルにおいて、全胚エレクトロポレーションにより、着床後のマウス胚に合成siRNAを効率的に送達できます(Calegari et al., 2002)。成体マウスでは、siRNAの効率的な送達は、「高圧」送達技術である、尾静脈を介した動物への大量のsiRNA含有溶液の迅速な注射(5秒以内)によって達成することができる(Liu et al., 1999, supra; McCaffrey et al., 2002, supra; Lewis et al., 2002)。また、ナノ粒子およびリポソームは、siRNAを動物へ送達するのに使用することができる。特定の例示的な実施態様において、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAVs)およびそれに関連するベクターは、1つまたはそれ以上のsiRNAを細胞s、例えば、神経細胞(例えば、脳細胞)へ送達するのに使用することができる(米国特許出願2014/0296486、2010/0186103、2008/0269149、2006/0078542および2005/0220766)。
【0262】
本発明の核酸組成物は、未修飾のsiRNAと、当技術分野で知られているような修飾siRNAの両方、例えば架橋siRNA誘導体、または、例えばそれらの3'または5'末端に結合された非ヌクレオチド部分を有する誘導体などの両方を含むものである。この方法でsiRNA誘導体を修飾することにより、対応するsiRNAと比較して、得られるsiRNA誘導体の細胞取込が向上するか、得られるsiRNA誘導体の細胞標的活性を向上し、対応するsiRNAと比較して細胞内でsiRNA誘導体を追跡するのに有用であるか、siRNA誘導体の安定性を完全する。
【0263】
本明細書に記載されているように、細胞または生物全体に導入される操作されたRNA前駆体は、所望のsiRNA分子の生産につながる。このようなsiRNA分子は、RNAi経路の内因性タンパク質コンポーネントと結合して、切断および破壊のための特定のmRNA配列に結合し、それを標的とする。これにより、操作されたRNA前駆体から生成されたsiRNAによって標的とされるmRNAが細胞または生物から枯渇し、これは、そのmRNAがコードするタンパク質の細胞や生物における濃度が低減する。RNA前駆体は、単独にdsRNAのどちらか一方の鎖をコードするか、またはRNAヘアピンループ構造の全ヌクレオチド配列をコードする核酸分子が一般的である。
【0264】
本発明の核酸組成物は、組成物の特性、例えば、吸収、有効性、バイオアベイラビリティおよび/または半減期などの薬物動態パラメータを向上させるために、非コンジュゲートであるか、またはナノ粒子などの別の部分にコンジュゲートすることができる。このコンジュゲーションは、当該技術分野で知られている方法によって、例えば、Lambert et al., Drug Deliv. Rev.の方法:47(1), 99-112 (2001) (ポリアルキルシアノアクリレート(PACA)ナノ粒子に担持される核酸について記載している); 脂肪tal et al., J. Control 放出 53(1-3):137-43 (1998) (ナノ粒子に結合する核酸について記載している); Schwab et al., Ann. Oncol. 5 Suppl. 4:55-8 (1994)(挿入剤、疎水性基、ポリカチオンまたはPACAナノ粒子に結合された核酸について記載している); and Godard et al., Eur. J. Biochem. 232(2):404-10 (1995) (ナノ粒子に結合された核酸について記載している)を用いて達成することができる。
【0265】
本発明の核酸分子はまた、当該技術分野で知られているいずれかの方法を用いて標識することができる。例えば、核酸組成物は、フルオロフォア、例えば、Cy3、フルオレセイン、またはローダミンで標識することができる。標識は、キット、例えば、SILENCERTM siRNA標識キット(Ambion)を用いて実施することができる。さらに、siRNAは、例えば、3H、32Pまたは他の適切な同位体を用いて放射性標識することができる。
【0266】
さらに、RNAiは少なくとも1つの一本鎖RNA中間体を介して進行すると考えられているため、当業者は、ss-siRNA(例えば、ds-siRNAのアンチセンス鎖)も、本明細書に記載されているように設計(例えば、化学合成のために)、生成(例えば、酵素的に生成)または発現(例えば、ベクターまたはプラスミドから)することができ、請求された方法論に従って利用することができることを理解するであろう。さらに、無脊椎動物において、RNAiのエフェクターとして作用する長いdsRNA(例えば、約100~1000ヌクレオチド長、好ましくは約200~500ヌクレオチド長、例えば、約250、300、350、400または450ヌクレオチド長のdsRNA)によって、RNAiを効果的に誘発することができる(Brondani et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2001 Dec. 4; 98(25):14428-33. Epub 2001 Nov. 27.)。
IV. 抗ApoE RNAサイレンシング剤
【0267】
一実施態様において、本発明は、新規の抗ApoE RNAサイレンシング剤(例えば、siRNAおよびshRNA)、該RNAサイレンシング剤の製造方法、およびApoEタンパク質のRNAサイレンシングのために該改善されたRNAサイレンシング剤(またはその一部)を使用するための方法(例えば、研究および/または治療的方法)を提供する。RNAサイレンシング剤は、ヘテロ接合の単一ヌクレオチド多型に十分に相補的であることでRNA媒介サイレンシングメカニズム(例えば、RNAi)を媒介するアンチセンス鎖(またはその一部)を含む。
【0268】
特定の実施態様において、以下の特性の1つまたはいずれかの組み合わせを有するsiRNA化合物が提供される:(1)完全に化学的に安定化されている(すなわち、未修飾の2'-OH残基がない);(2)非対称性;(3)11~16塩基対の二重鎖;(4)化学的修飾ヌクレオチドの交互のパターン(例えば、2'-フルオロ修飾および2'-メトキシ修飾)、ただし、連続2'-フルオロ修飾および連続2'-メトキシ修飾も考慮されている;(5)5~8の塩基の一本鎖で完全にホスホロチオエート化された尾部。ホスホロチオエート修飾の数は、異なる実施態様において合計6から17まで変化する。
【0269】
特定の実施態様において、本明細書に記載のsiRNA化合物は、コレステロール、DHA、フェニルトロパン、コルチゾール、ビタミンA、ビタミンD、GalNac、およびガングリオシドを含むがこれらに限定されない、さまざまな標的物質にコンジュゲートすることができる。コレステロール修飾バージョンは、これまで使用されてきた化学的安定化パターン(例えば、プリン体はすべて修飾されているが、ピリミジン(purimidine)は修飾されていない)と比較して、幅広い種類の細胞型(例えば、HeLa、神経細胞、肝細胞、栄養芽細胞)において、インビトロでの有効性が5~10倍改善した。
【0270】
上述および本明細書に記載の構造性質を有する本発明の特定の化合物は、「hsiRNA-ASP」(疎水性修飾、低分子干渉RNA、高度な安定化パターンを特徴とする)と称さることがある。さらに、このhsiRNA-ASPパターンは、脳、脊髄を通じて肝臓、胎盤、腎臓、脾臓、およびいくつかの他の組織に送達される、といった著しく改善された分布を示し、治療的介入に利用できるようになった。
【0271】
肝臓において、hsiRNA-ASPは、肝細胞ではない内皮細胞およびクッパー細胞に送達され、GalNacコンジュゲートに対する競争技術よりもむしろ補完的なこの化学的修飾パターンを作る。
【0272】
本発明の化合物は、以下の態様および実施態様で説明することができる。
【0273】
第一局面において、本明細書では、5'末端、3'末端を有し、標的に対して相補性を有する、少なくとも16個の連続するヌクレオチドのオリゴヌクレオチドであって、(1)オリゴヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドおよび2'-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;(2)5'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドでなく;(3)ヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合され;そして(4)3'末端から1~6位、または3'末端から1~7位のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに結合されている、オリゴヌクレオチドが提供される。
【0274】
第二の態様において、本明細書では、第一のオリゴヌクレオチドおよび第二のオリゴヌクレオチドを含む二本鎖の化学的修飾核酸であって、(1)第一のオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載の(例えば、
図3Aの標的配列の1つを含む)オリゴヌクレオチドであり;(2)第一のオリゴヌクレオチドの一部は、第二のオリゴヌクレオチドの一部に相補的であり;(3)第二のオリゴヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドおよび2'-フルオロ-リボヌクレオチドを交互に含み;(4)第二のオリゴヌクレオチドの3'末端から2位および14位のヌクレオチドは、2'-メトキシ-リボヌクレオチドであり;そして(5)第二のオリゴヌクレオチドのヌクレオチドは、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート結合を介して結合されている、二本鎖の化学的修飾核酸が提供される。
【0275】
第三の態様において、本明細書では、構造:
X-A(-L-B-L-A)j(-S-B-S-A)r(-S-B)t-OR
[ここで、Xは、5'リン酸基であり;Aは、出現するごとに独立して、2'-メトキシ-リボヌクレオチドであり;Bは、出現するごとに独立して、2'-フルオロ-リボヌクレオチドであり;Lは、出現するごとに独立して、ホスホジエステルまたはホスホロチオエートリンカーであり;Sは、ホスホロチオエートリンカーであり;そして、Rは、水素およびキャッピング基(capping group)(例えば、アセチルなどのアシル)から選択され;jは、4、5、6または7であり;rは、2または3であり;そして、tは、0または1である]を有するオリゴヌクレオチドが提供される。
【0276】
第四の態様において、本明細書では、第一のオリゴヌクレオチドおよび第二のオリゴヌクレオチドを含む二本鎖の化学修飾核酸であって、(1)第一のオリゴヌクレオチドは、第三の態様のオリゴヌクレオチドから選択され;(2)第一のオリゴヌクレオチドの一部は、第二のオリゴヌクレオチドの一部に相補的であり;そして、(3)第二のオリゴヌクレオチドは、構造:
C-L-B(-S-A-S-B)m'(-P-A-P-B)n'(-P-A-S-B)q'(-S-A)r'(-S-B)t'-OR
[ここで、Cは、疎水性分子であり;Aは、出現するごとに独立して、2'-メトキシ-リボヌクレオチドであり;Bは、出現するごとに独立して、2'-フルオロ-リボヌクレオチドであり;Lは、エチレングリコール、ホスホジエステル、およびホスホロチオエートの0~4の反復単位からなる群から選択される1つまたはそれ以上の部分を含むリンカーであり;Sは、ホスホロチオエートリンカーであり;Pは、ホスホジエステルリンカーであり;Rは、水素およびキャッピング基(例えば、アセチルなどのアシル)から選択され;m'は、0または1であり;n'は、4、5または6であり;q'は、0または1であり;r'は、0または1であり;そして、t'は、0または1である]を有する、二本鎖の化学的修飾核酸が提供される。
a)抗ApoE siRNA分子の設計
【0277】
本発明のsiRNA分子は、センス鎖および相補的なアンチセンス鎖を含む二重鎖であって、アンチセンス鎖は、RNAiを媒介するのにApoE mRNAに十分に相補的である二重鎖である。好ましくは、siRNA分子は、約10~50個またはそれ以上のヌクレオチド長を有し、すなわち、各鎖は、10~50個のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)を含む。より好ましくは、siRNA分子は、各鎖において約15~30個、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のヌクレオチド長を有し、ここで、鎖の一方は、標的領域に十分に相補的である。好ましくは、鎖は、鎖がアニールされるときに二重鎖の一方または両方の末端に1、2または3残基の突出部が発生するように、整列しない(すなわち、対向する鎖に相補的な塩基が存在しない)鎖の末端に少なくとも1、2または3の塩基があるように整列している。好ましくは、siRNA分子は、約10~50またはそれ以上のヌクレオチド長を有し、すなわち、各鎖は、10~50個のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)を含む。より好ましくは、siRNA分子は、各鎖において約15~30、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のヌクレオチド長を有し、ここで、一方の鎖は標的配列に実質的に相補的であり、他方の鎖は第一の鎖と同一または実質的に同一である。
【0278】
通常、siRNAは、当技術分野で知られているいずれかの方法を用いて設計することができ、例えば、以下のプロトコールを用いて設計することができる。
【0279】
1. siRNAは、標的配列、例えば、
図3Aに示される標的配列特異的であるべきである。一実施態様において、標的配列は、野生型ApoE対立遺伝子に見出される。別の実施態様において、標的配列は、変異体ApoE対立遺伝子および野生型ApoE対立遺伝子の両方に見出される。別の実施態様において、標的配列は、野生型ApoE対立遺伝子に見出される。第一の鎖は、標的配列に相補的であるべきであり、および他方の鎖は、第一の鎖二実質的に相補的である。(例示的なセンスおよびアンチセンス鎖については
図3を参照のこと)例示的な標的配列は、標的遺伝子の5'非翻訳領域(5'-UTR)から選択される。これらの部位でのmRNAの切断は、対応するApoEタンパク質の翻訳を排除するはずである。ApoE遺伝子の他の領域からの標的配列も、標的に適している。センス鎖は、標的配列に基づいて設計される。さらに、G/C含量が低い(35~55%)siRNAは、G/C含量が55%よりも高いものよりも活性が高いことがある。したがって、一実施態様において、本発明は、35~55%のG/C含量を有する核酸分子を含む。
【0280】
2. siRNAのセンス鎖は、選択される標的部位の配列に基づいて設計される。好ましくは、センス鎖は、約19~25個のヌクレオチド、例えば、19、20、21、22、23、24または25個のヌクレオチドを含む。より好ましくは、センス鎖は、21、22または23個のヌクレオチドを含む。しかし、当業者は、19個未満のヌクレオチドまたは25を超えるヌクレオチド長を有するsiRNAもRNAiを媒介するように機能することができることを理解するであろう。したがって、そのような長さのsiRNAも、RNAiを媒介する能力を保持していれば、本発明の範囲内である。より長いRNAサイレンシング剤は、望ましくない可能性のある特定の哺乳類細胞内でのインターフェロンまたはタンパク質キナーゼR(PKR)応答を誘発することが立証されている。好ましくは、本発明のRNAサイレンシング剤は、PKR反応を誘発しない(すなわち、十分に短い長さである)。しかし、より長いRNAサイレンシング剤は、例えば、PKR反応を起こすことができない細胞型、またはPKR反応が代替のの手段でダウンレギュレートされるか、弱められる、といった状況に有用であり得る。
【0281】
本発明のsiRNA分子は、siRNAがRNAiを媒介することができるように、標的配列と十分な相補性を有する。一般的には、標的遺伝子のRISC媒介切断をもたらすために、標的遺伝子の標的配列部分と十分に同一のヌクレオチド配列を含むsiRNAが好ましい。したがって、好ましい実施態様において、siRNAのセンス鎖は、標的の一部と十分に同一の配列を有するように設計される。例えば、センス鎖は標的部位と100%同一であってもよい。しかし、100%の同一性は必須ではない。センス鎖と標的RNA配列との間に80%を超える同一性、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または、さらには100%の同一性を有することが好ましい。本発明には、RNAiの効率および特異性を向上させるために、特定の配列の多様性を許容できるといった利点がある。一実施態様において、センス鎖は、野生型対立遺伝子と変異型対立遺伝子との間で少なくとも1つの塩基対が異なる標的領域、例えば、機能獲得変異を含む標的領域などの標的領域と4、3、2、1、または0個のミスマッチヌクレオチドを有し、他方の鎖は第一の鎖と同一または実質的に同一である。さらに、1または2個のヌクレオチドの小さな挿入または欠失を有するsiRNA配列も、RNAiを媒介するのに有効である。 あるいは、ヌクレオチドアナログの置換または挿入を有するsiRNA配列も、阻害に有効であり得る。あるいは、ヌクレオチドアナログの置換または挿入を伴うsiRNA配列も阻害に有効であり得る。
【0282】
配列同一性は、当技術分野で知られている配列比較および整列 アルゴリズムによって決定することができる。2つの核酸配列(または2つのアミノ酸配列)のパーセント同一性(percent identity)のを決定するために、最適な比較を目的として配列を配列させる(例えば、最適な整列のために、第一の配列または第二の配列にギャップを導入することができる)。そして、対応するヌクレオチド(またはアミノ酸)の位置のヌクレオチド(またはアミノ酸残基)を比較する。第一の配列のある位置が、第二配列の対応する位置と同じ残基で占められている場合、その位置では分子は同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、配列が共有する同一の位置の数の関数であり(すなわち、%相同性=同一の位置の数/位置の総数x100)、任意で、導入されたギャップの数および/または導入されたギャップの長さに対してスコアにペナルティを課す。
【0283】
2つの配列間の配列比較やパーセント同一性(percent identity)の決定は、数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。一実施態様において、整列は、十分な同一性を有するが整列された配列の特定の部分にわたって生成されたが、低い程度の同一性を有する部分では生成されなかった(すなわち、局所的整列)。配列の比較に利用される局所アライメントアルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68のアルゴリズムであり、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77のように修飾した。このようなアルゴリズムは、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。
【0284】
別の実施態様において、整列は、適切なギャップを導入することによって最適化され、パーセント同一性は、整列された配列の長さにわたって決定される(すなわち、ギャップ付き整列(gapped alignment))。比較を目的としたギャップ付き整列を得るために、Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載されているように、Gapped BLASTを利用することができる。別の実施態様において、整列は、適切なギャップを導入することによって最適化され、パーセント同一性は、整列された配列の全長にわたって決定される(すなわち、グローバル整列)。配列のグローバルな比較に利用される数値計算用アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Myers and Miller, CABIOS (1989)のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG配列整列ソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティ12(gap length penalty of 12)、およびギャップペナルティ4(gap penalty of 4)を使用することができる。
【0285】
3. siRNAのアンチセンス鎖またはガイド鎖は、常にセンス鎖と同じ長さであり、相補的なヌクレオチドを含む。一実施態様において、ガイド鎖およびセンス鎖は完全に相補的であり、すなわち、鎖は、整列またはアニールされるときに平滑末端である。別の実施態様において、siRNAの鎖は、1~7個(例えば、2、3、4、5、6、または7個)、または1~4個、例えば2、3、または4個のヌクレオチドの3'突出部を有するような方法で対にすることができる。突出部は、標的遺伝子配列(またはその相補体)に対応するヌクレオチドを含む(または、それらからなる)ことができる。突出部は、標的遺伝子配列(またはその補体)に対応するヌクレオチドを含み得るか(またはそれからなり得る)。あるいは、突出部は、デオキシリボヌクレオチド、例えばdT、またはヌクレオチドアナログ、または他の適切な非ヌクレオチド材料を含み得るか(またはそれからなり得る)。したがって、別の実施態様において、核酸分子は、2ヌクレオチドの3'突出部、例えばTTを有していてもよい。突出部しているヌクレオチドは、RNAまたはDNAどちらかであってもよい。上述したように、変異体:野生型のミスマッチがプリン:プリンのミスマッチである標的領域を選択することが好ましい。
【0286】
4. 当技術分野で知られているいずれかの方法を用いて、潜在的な標的を適切なゲノムデータベース(ヒト、マウス、ラットなど)と比較し、他のコード配列と有意な相同性を有する標的配列を考慮から除外する。このような配列相同性検索の方法としては、BLASTと知られており、National Center for Biotechnology Informationのウェブサイトで入手できる。
【0287】
5. 評価の基準を満たす1つまたはそれ以上の配列の選択
【0288】
siRNAの設計および使用に関するさらなる一般的な情報は、The Max-Plank-Institut fur Biophysikalische Chemieのウェブサイトで入手可能な「The siRNA User Guide」で見出すことができる。
【0289】
あるいは、siRNAは、標的配列にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列(またはオリゴヌクレオチド配列)として機能的に定義されてもよい(例えば、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃または70℃のハイブリダイゼーションを12~16時間;その後、洗浄)。さらに好ましいハイブリダイゼーション条件には、1xSSCで70℃または1xSSCで50℃、50%ホルムアミドでハイブリダイゼーション、その後0.3xSSCで70℃で洗浄、または4xSSCで70℃または4xSSCで50℃、50%ホルムアミドでハイブリダイゼーション、その後1xSSCで67℃で洗浄が含まれる。50未満塩基対長と予想されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(Tm)よりも5~10℃低くする必要があり、ここで、Tmは以下の式に従って決定される。18未満塩基対のハイブリッドの場合、Tm(oC)=2(A+T塩基の#)+4(G+C塩基の#)。18~49塩基対長のハイブリッドの場合、Tm(oC)=81.5+16.6(log 10[Na+])+0.41(% G+C)-(600/N)、ここで、Nはハイブリッドの塩基数、そして、[Na+]はハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオン濃度である(1xSSCの[Na+]は0.165M)。ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションのストリンジェンシー条件の追加例は、Sambrook, J., E. F. Fritsch, and T. Maniatis, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.の第9章および第11章、ならびにCurrent Protocols in Molecular Biology, 1995, F. M. Ausubel et al., eds., John Wiley & Sons, Inc.の第2.10節および第6.3節から第6.4節に記載されており、これらは、引用により本明細書に包含される。
【0290】
陰性対照のsiRNAは、選択されるsiRNAと同じヌクレオチド組成を有するべきであるが、適切なゲノムに対して有意な配列相補性を有しない。このような陰性対照は、選択されるsiRNAのヌクレオチド配列を無作為にスクランブルすることによって設計することができる。相同性検索を行って、陰性対照が適切なゲノムのいずれかの他の遺伝子に対して相同性を欠いていることを確認できる。また、陰性対照のsiRNAは、11つまたはそれ以上の塩基ミスマッチを配列に導入することによって設計することができる。
【0291】
6. siRNAが標的mRNA(例えば、野生型または変異型ApoE mRNA)を破壊する有効性を検証するために、DrosophilaベースのインビトロmRNA発現システムにおいて、siRNAを標的cDNA(例えば、ApoE cDNA)とインキュベートしてもよい。32Pで放射性標識された、新しく合成されたmRNA(ApoE mRNAなど)は、アガロースゲルでオートラジオグラフィーによって検出される。切断された標的mRNAの存在は、mRNAヌクレアーゼ活性を示す。適当な対照は、siRNAの省略および非標的cDNAの使用を含む。あるいは、対照のsiRNAとしては、選択されるsiRNAと同じヌクレオチド組成を有するが、適切な標的遺伝子に対して有意な配列相補性を有しないものが選択される。このような陰性対照は、選択されるsiRNAのヌクレオチド配列を無作為にスクランブリングすることによって設計できる。相同性検索を実行して、陰性対照が適切なゲノム内のいずれかの他の遺伝子対する相同性を欠いていることを確認できる。さらに、陰性対照のsiRNA、1つまたはそれ以上の塩基ミスマッチを配列に導入することによって設計できる。
【0292】
抗ApoE siRNAは、上述した標的配列のいずれかを標的とするように設計できる。該siRNAは、標的配列と十分に相補的であって標的配列のサイレンシングを媒介するアンチセンス鎖を含む。特定の実施態様において、RNAサイレンシング剤はsiRNAである。
【0293】
特定の実施態様において、siRNAは、
図3Aに示される配列を含むセンス鎖、および
図3Aに示される配列を含むアンチセンス鎖を含む。
【0294】
siRNA-mRNAの相補性部位は、最適なmRNAの特異性と最大のmRNA切断をもたらすものが選択される。
b)siRNA様分子
【0295】
本発明のsiRNA様分子は、ApoE mRNAの標的配列に「十分に相補的」な配列を有し(すなわち、配列を有する鎖を有し)、RNAiまたは翻訳抑制のどちらかによって遺伝子サイレンシングを指示する。siRNA様分子は、siRNA分子と同じ方法で設計されが、センス鎖と標的RNAとの間の配列同一性の度合いは、miRNAとその標的との間で観察されるものに近似している。一般には、miRNA配列と対応する標的遺伝子配列との間の配列同一性の度合いが低下するにつれて、RNAiではなく翻訳抑制によって転写後遺伝子サイレンシングを媒介する傾向が増加する。したがって、標的遺伝子の翻訳抑制による転写後遺伝子サイレンシングが望まれる代替の実施態様において、miRNA配列は標的遺伝子の配列と部分的な相補性を有する。特定の実施態様において、miRNA配列は、標的mRNA内(例えば、標的mRNAの3'-UTR内)に分散している1つまたはそれ以上の短い配列(相補性部位)と部分的な相補性を有する(Hutvagner and Zamore, Science, 2002; Zeng et al., Mol. Cell, 2002; Zeng et al., RNA, 2003; Doench et al., Genes & Dev., 2003)。翻訳抑制のメカニズムは協調的であるため、特定の実施態様においては、複数の相補性部位(例えば、2、3、4、5、または6)を標的とすることができる。
【0296】
siRNA様二重鎖の、RNAiまたは翻訳抑制を媒介する能力は、相補性のある部位における標的遺伝子配列とサイレンシング剤のヌクレオチド配列との間の非同一のヌクレオチドの分布によって予測することができる。翻訳抑制による遺伝子サイレンシングが望まれる一実施態様において、相補性部位の中央部分に少なくとも1つの非同一のヌクレオチドが存在し、それによってmiRNAガイド鎖と標的mRNAによって形成される二重鎖が中央の「バルジ」を含む(Doench J G et al., Genes & Dev., 2003)。別の実施態様において、2、3、4、5、または6の連続または非連続の非同一のヌクレオチドが導入される。非同一のヌクレオチドは、ゆらぎ塩基対(例えば、G:U)またはミスマッチ塩基対(G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:C、U:U)を形成するように選択することができる。さらに好ましい実施態様において、「バルジ」は、miRNA分子の5'末端から12位および13位のヌクレオチドを中心とする。
c)短いヘアピンRNA(shRNA)分子
【0297】
特定の特徴的な実施態様において、本発明は、向上された選択性でApoE標的配列のRNAサイレンシングを媒介することができるshRNAを提供する。siRNAとは対照的に、shRNAはマイクロRNA(miRNA)の天然の前駆体を模倣しており、遺伝子サイレンシング経路の最上位に入る。このため、shRNAは、天然の遺伝子サイレンシング経路全体を介して供給されることにより、遺伝子サイレンシングをより効率的に仲介すると考えられている。
【0298】
miRNAは、植物および動物の発育中に転写後または翻訳レベルで遺伝子発現を調節することができる約22ヌクレオチドの非コードRNAである。miRNAの一般的な特徴の1つは、おそらくRNase III型の酵素であるDicerまたはそのホモログによって、pre-miRNAと称される約70個のヌクレオチドの前駆体RNAステムループからすべて切り取られることである。天然に存在するmiRNA前駆体(pre-miRNA)は、一般的に相補的な2つの部分を含む二重鎖ステムを形成する一本鎖と、ステムの2つの部分を結合するループを有する。典型的なpre-miRNAにおいて、ステムは、1つまたはそれ以上のバルジ、例えば、ステムの1つの部分に単一ヌクレオチドの「ループ」を作る余分なヌクレオチド、および/または、ステムの2つの部分の互いのハイブリダイゼーションにギャップを作る1つまたはそれ以上の不対ヌクレオチドを含む。本発明の短いヘアピンRNAまたは操作されたRNA前駆体は、これらの天然に存在するpre-miRNAに基づく人工コンストラクトであるが、所望のRNAサイレンシング剤(例えば、本発明のsiRNA)を送達するように操作される。pre-miRNAのステム配列を、標的mRNAに相補的な配列によって置換することで、shRNAが形成される。shRNAは、細胞の遺伝子サイレンシング経路全体で処理されるため、RNAiを効率的に媒介する。
【0299】
shRNA分子の必要な要素は、第1部分および第2部分を含み、アニールまたはハイブリダイズして二重鎖または二本鎖のステム部分を形成するのに十分な相補性を有する。この2つの部分は、完全にまたは完璧に相補的である必要はない。第一および第二の「ステム」部分は、shRNAの他の部分にアニールまたはハイブリダイズするのに十分な配列相補性を有しない配列を有する部分によって結合される。この後者の部分は、shRNA分子における「ループ」部分と称されている。このshRNA分子が処理されてsiRNAを生成する。shRNAはまた、1つまたはそれ以上のバルジ、すなわち、ステムの一部に小さなヌクレオチド「ループ」を作る余分なヌクレオチド、例えば1、2、3個のヌクレオチドループを含むことができる。ステム部分は同じ長さであってもよく、一方の部分が例えば1~5個のヌクレオチドの突出部を含んでいてもよい。突出部ヌクレオチドは、例えば、ウラシル(U)、例えば、すべてのUを含むことができる。このようなUは、特にshRNAをコードするDNA中のチミジン(T)によってコードされ、これは転写の終結を示す。
【0300】
本発明のshRNA(または操作された前駆体RNA)において、二重鎖ステムの一部分がApoE標的配列に対して相補的な(またはアンチセンスの)核酸配列である。好ましくは、shRNAのステム部分の一方の鎖は、標的RNA(例えば、mRNA)の配列に対して十分に相補的(例えば、アンチセンス)であり、RNA干渉(RNAi)を介して該標的RNAの分解または切断を媒介する。このように、操作されたRNA前駆体は、2つの部分を有する二重鎖ステム、および該2つのステム部分を結合するループを含む。アンチセンス部分は、ステムの5'または3'末端にあってもよい。shRNAのステム部分は、好ましくは約15~約50ヌクレオチド長である。好ましくは、該2つのステム部分は、約18または19~約21、22、23、24、25、30、35、37、38、39、または40またはこれ以上のヌクレオチド長である。好ましい実施態様において、ステム部分の長さは、21個のヌクレオチドまたはそれ以上であるべきである。哺乳類細胞に使用する場合、インターフェロン経路のような非特異的な反応を誘発しないように、ステム部分の長さは約30個未満のヌクレオチドにするべきである。実際、ステムは、標的mRNAに対して相補的なはるかに大きなセクションを含むことができる(mRNA全体まで、および、mRNA全体を含む)。実際、ステム部分は、標的mRNAに対して相補的なはるかに大きなセクションを含むことができる(mRNA全体まで、および、mRNA全体を含む)。
【0301】
二重鎖ステムの2つの部分は、ハイブリダイズして二重鎖ステムを形成するのに十分な相補性を持つべきである。したがって、該2つの部分は、完全にまたは完璧に相補的であり得るが、必ずしもそうする必要はない。さらに、該2つのステム部分は、同じ長さを有していてもよく、一方の部分が、1、2、3、または4個のヌクレオチドの突出部を含んでいてもよい。突出部ヌクレオチドは、例えば、ウラシル(U)、例えば、すべてのUを含むことができる。shRNAまたは操作されたRNA前駆体のループは、ループ配列を修飾して対のヌクレオチドの数を増減するか、ループ配列の全部または一部をテトラループまたは他のループ配列に置き換えることにより、天然のpre-miRNA配列とは異なる。したがって、shRNAまたは操作されたRNA前駆体におけるループは、2、3、4、5、6、7、8、9個、またはそれ以上、例えば、15または20個、またはそれ以上のヌクレオチド長であることができる。
【0302】
shRNAまたは操作されたRNA前駆体のループは、ループ配列を修飾して対のヌクレオチドの数を増減するか、ループ配列の全部または一部をテトラループまたは他のループ配列に置き換えることにより、天然のpre-miRNA配列とは異なる。したがって、shRNAまたは操作されたRNA前駆体におけるループは、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上、例えば、15または20、またはそれ以上のヌクレオチド長であることができる。好ましいループは、「テトラループ」配列からななるか、それを含む。例示的なテトラループ配列は、配列GNRA[ここで、Nは、いずれかのヌクレオチドであり、Rは、プリンヌクレオチドである]、GGGG、およびUUUを含むが、これらに限定されない。
【0303】
特定の実施態様において、本発明のshRNAsは、上記の所望のsiRNA分子の配列を含む。他の実施態様において、shRNAのアンチセンス部分の配列は、基本的には上記のように設計することができるか、または、一般的には、標的RNA(例えば、ApoE mRNA)内から、例えば、翻訳開始の上流または下流の100~200または300個のヌクレオチドの領域から、18、19、20、21個のヌクレオチド、またはそれ以上の配列を選択することによって設計することができる。一般的には、配列は、5'UTR(非翻訳領域)、コード配列、または3'UTRを含む標的RNA(例えば、mRNA)のいずれかの部分から選択され得る。この配列は、隣接するAAヌクレオチドを2つの含む標的遺伝子の領域の直後に任意で続くことができる。ヌクレオチド配列の最後の2つのヌクレオチドは、UUになるように選択できる。この21個ほどのヌクレオチド配列は、shRNAの二重鎖ステムの一部分を作るのに使用される。この配列は、例えば、酵素的に野生型pre-miRNA配列のステム部分を置き換えることができか、または、合成される完全な配列に含まれる。例えば、ステムループの操作されたRNA前駆体全体をコードするDNAオリゴヌクレオチド、または前駆体の二重ステムに挿入する部分だけをコードするDNAオリゴヌクレオチドを合成し、制限酵素を用いて、例えば、野生型pre-miRNAから、操作されたRNA前駆体コンストラクトを構築することができる。
【0304】
操作されたRNA前駆体は、インビボで生成されることが所望されるsiRNAまたはsiRNA様二重鎖の21~22個ほどのヌクレオチド配列を二重鎖ステムに含む。このように、操作されたRNA前駆体のステム部分は、その発現が低減または阻害される遺伝子のエクソン部分の配列に対応する少なくとも18または19個のヌクレオチド対を含む。ステムのこの領域をフランキングする2つの3'ヌクレオチドは、操作されたRNA前駆体からのsiRNAの生成を最大化し、インビボおよびインビトロでRNAiによる翻訳抑制または破壊のために対応するmRNAを標的とする際に得られるsiRNAの有効性を最大化するように選択される。
【0305】
特定の実施態様において、本発明のshRNAは、RISCへのエントリーを強化するために、miRNA配列、任意に末端修飾されたmiRNA配列を含む。miRNA配列は、天然に存在するいずれかのmiRNAと同様または同一であることができる(例えば、The miRNA レジストリ; Griffiths-Jones S, Nuc. Acids Res., 2004を参照のこと)。これまでに1,000種類以上の天然のmiRNAが同定されており、これらを合わせると、ゲノムにおいて予測される全ての遺伝子の約1%を含むと考えられている。多くの天然のmiRNAは、pre-mRNAのイントロンに集まっており、相同性ベースの検索(Pasquinelli et al., 2000; Lagos-Quintana et al., 2001; Lau et al., 2001; Lee and Ambros, 2001)、またはpri-mRNA(Grad et al., Mol. Cell., 2003; Lim et al., Genes Dev., 2003; Lim et al., Science, 2003; Lai E C et al., Genome Bio., 2003)のステムループ構造を形成するmiRNA候補遺伝子の能力を予測するコンピュータアルゴリズム(MiRScan、MiRSeekerなど)を用いて、インシリコで同定することができる。オンラインレジストリでは、公開されているすべてのmiRNA配列の検索可能なデータベースを提供している(The miRNA Registry at the Sanger Institute website; Griffiths-Jones S, Nuc. Acids Res., 2004)。例示的な天然のmiRNAには、lin-4、let-7、miR-10、mirR-15、miR-16、miR-168、miR-175、miR-196およびこれらのホモログ、ならびにヒトおよび国際PCT公開第WO 03/029459号に記載されているドロソフィラ・メラノガステル(Drosophila melanogaster)、カノルハブジチス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)、ゼブラフィッシュ(zebrafish)、アラビドプシス・タラニア(Arabidopsis thalania)、ハツカネズミ(Mus musculus)、およびラッツス・ノルベギクス( Rattus norvegicus)を含む特定のモデル生物からの他の天然のmiRNAが含まれる。
【0306】
天然に存在するmiRNAは、インビボの内在性遺伝子によって発現され、Dicerまたは他のRNAseによってヘアピンまたはステムループ前駆体(pre-miRNAまたはpri-miRNA)から処理される(Lagos-Quintana et al., Science, 2001; Lau et al., Science, 2001; Lee and Ambros, Science, 2001; Lagos-Quintana et al., Curr. Biol., 2002; Mourelatos et al., Genes Dev., 2002; Reinhart et al., Science, 2002; Ambros et al., Curr. Biol., 2003; Brennecke et al., 2003; Lagos-Quintana et al., RNA, 2003; Lim et al., Genes Dev., 2003; Lim et al., Science, 2003)。miRNAは、インビボでは一時的に二本鎖の二重鎖として存在するが、RISC複合体に取り込まれるのは一本鎖のみで、遺伝子サイレンシングを指示する。特定のmiRNA、例えば、植物のmiRNAは、それらの標的mRNAに対して完璧または完璧に近い相補性を有し、それゆえにその標的mRNAを直接的に切断する。その他のmiRNAは、標的mRNAとの相補性が完全ではなく、それゆえに標的mRNAの翻訳を直接的に抑制する。miRNAとその標的mRNAとの間の相補性の度合いが、その作用のメカニズムを決定すると考えられている。例えば、miRNAとその標的mRNAとの間の完璧または完璧に近い相補性は切断メカニズムを予測し(Yekta et al., Science, 2004)、完全ではない相補性は翻訳抑制メカニズムを予測する。特定の実施態様において、miRNA配列は、天然に存在するmiRNA配列のものであり、その異常発現または活性はmiRNA障害と相関性がある。
d)二重機能オリゴヌクレオチドテザー
【0307】
他の実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、miRNAの細胞間動員に有用な二重機能性オリゴヌクレオチドテザーを含む。動物細胞は、転写後または翻訳レベルで遺伝子発現を調節できる約22個のヌクレオチドの非コードRNAである一連のmiRNAを発現する。RISCに結合されているmiRNAを結合し、それを標的mRNAに動員することにより、二重機能性オリゴヌクレオチドテザーは、例えば、動脈硬化過程に関与する遺伝子の発現を抑制することができる。オリゴヌクレオチドテザーの使用は、特定の遺伝子の発現を抑制する既存の技術と比較して、いくつかの利点がある。まず、本明細書に記載の方法により、内因性分子(多くの場合、豊富に存在する)であるmiRNAがRNAサイレンシングを媒介することを可能にする。したがって、本明細書に記載の方法により、RNAサイレンシングを媒介するために外来分子(例えば、siRNA)を導入する必要性を除去する。第二に、RNAサイレンシング剤と、特に結合部分(例えば、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチド)を、安定かつヌクレアーゼ活性に対して耐性のあるものにすることができる。その結果、本発明のテザーは直接送達用に設計することができ、これは、細胞内で所望の薬剤を作るように設計される前駆体分子またはプラスミドを間接的に送達する必要性を除去する。第三に、テザーとそのそれぞれの部分は、特定のmRNA部位および特定のmiRNAに適合するように設計することができる。この設計により、細胞や遺伝子産物に特化したものにすることができる。第4に、本明細書に開示されている方法では、mRNAをそのまま残し、これは、当業者が細胞自身のマシナリーを用いて短いパルスでタンパク質合成をブロックすることを可能にする。その結果、これらのRNAサイレンシングの方法は、高度な調節が可能である。
【0308】
本発明の二重機能性オリゴヌクレオチドテザー(「テザー」)は、目的の遺伝子の調節を誘導するように、miRNA(例えば、内因性細胞miRNA)を標的mRNAに動員するように設計される。好ましい実施態様において、テザーは、式T-L-μ[式中、Tは、mRNA標的部分であり、Lは、結合部分であり、そして、μは、miRNA動員部分である]を有する。いずれかの1つまたはそれ以上の部分は、二本鎖であってもよい。しかし、好ましくは、各部位は一本鎖である。
【0309】
テザー内の部分は、式T-L-μ(すなわち、標的部分の3'端が結合部分の5'端に結合され、結合部分の3'端がmiRNA動員部分の5'端に結合されている)に示されるように、(5'から3'方向に)配列するか、または結合され得る。あるいは、この部分は、以下のようにテザー内で配列するか、または結合され得る:μ-T-L(すなわち、miRNA動員部分の3'末端が結合部分の5'末端に結合され、結合部分の3'末端が標的部分の5'末端に結合されている)。
【0310】
上記のmRNA標的部分は、特定の標的mRNAを捕捉することができる。本発明によれば、標的mRNAの発現は所望しなく、それによってmRNAの翻訳抑制を所望する。mRNA標的部分は、標的mRNAと効果的に結合するのに十分な大きさであるべきである。標的部分の長さは、部分的には、標的mRNAの長さ、および標的mRNAと標的部分との間の相補性の度合いに応じて大きく変動するであろう。さまざまな実施態様において、標的部分は、約200、100、50、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、または5未満ヌクレオチド長である。特定の実施態様において、標的部分は、約15~約25ヌクレオチド長である。
【0311】
上記のmiRNA動員部位は、miRNAと会合することができる。本発明によれば、miRNAは、標的mRNAを抑制できるいずれかのmiRNAであってよい。哺乳動物には250種類以上の内在性miRNAがあると報告されている(Lagos-Quintana et al. (2002) Current Biol. 12:735-739; Lagos-Quintana et al. (2001) Science 294:858-862; and Lim et al. (2003) Science 299:1540)。さまざまな実施態様において、miRNAは、当技術分野で認識されているいずれかのmiRNAであってもよい。
【0312】
結合部分は、標的部位の活性が維持されるように、標的部分を結合することができるいずれかの薬剤である。結合部分は、好ましくは、標的剤がそれぞれの標的と十分に相互作用できるような十分な数のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド部位であることが好ましい。結合部分は、好ましくは、標的剤がそれらのそれぞれの標的と十分に相互作用することができるように、十分な数のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド部分である。結合部分は、細胞内でのmRNAまたはmiRNA配列と配列相同性がほとんど、あるいは全くない。例示的な結合部分は、1つまたはそれ以上の2'-O-メチルヌクレオチド、例えば、2'-β-メチルアデノシン、2'-O-メチルチミジン、2'-O-メチルグアノシンまたは2'-O-メチルウリジンを含む。
e)遺伝子サイレンシングオリゴヌクレオチド
【0313】
特定の例示的な実施態様において、遺伝子発現(すなわち、ApoE遺伝子発現)は、2つまたはそれ以上のアクセス可能な3'末端の存在を可能にするそれらの5'末端を介して結合された2つまたはそれ以上の一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドベースの化合物を用いて調節して、ApoE遺伝子の発現を効果的に阻害または低減できる。このように結合されたオリゴヌクレオチドは、遺伝子サイレンシングオリゴヌクレオチド(Gene Silencing Oligonucleotide, GSO)としても知られている。(例えば、Idera Pharmaceuticals, Inc.に譲渡された米国特許第8,431,544号を参照のこと。すべての目的のためにその全体が引用により本明細書に包含される。)
【0314】
GSOの5'末端での結合は、他のオリゴヌクレオチド結合とは独立しており、ヌクレオチドの2'または3'ヒドロキシル位置のいずれかを利用して、5'、3'、または2'ヒドロキシル基を介して直接的に、または非ヌクレオチドリンカーまたはヌクレオシドを介して間接的に行うことができる。結合は、5'末端ヌクレオチドの官能化された糖または核酸塩基を利用することもできる。
【0315】
GSOは、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、または非ヌクレオシドリンカーを介してそれらの5'-5'末端でコンジュゲートされる2つの同一または異なる配列を含むことができる。このような化合物は、遺伝子産物のアンチセンスダウンレギュレーションの目的のmRNA標的の特定の部分に相補的な15~27個のヌクレオチドを含み得る。同一の配列を含むGSOは、ワトソン・クリック水素結合相互作用を介して特定のmRNAに結合されたンパク質の発現を阻害することができる。異なる配列を含むGSOは、1つまたはそれ以上のmRNA標的の2つまたはそれ以上の異なる領域に結合されたンパク質の発現を阻害することができる。このような化合物は、標的mRNAに相補的なヘテロヌクレオチド配列からなり、ワトソン・クリック水素水素結合を介して安定な二重鎖構造を形成する。特定の条件下では、2つの遊離3'末端(5'-5'結合アンチセンス)を含むGSOは、単一の遊離3'末端を含むものまたは遊離3'末端を含まないものよりも、より強力な遺伝子発現阻害剤となり得る。
【0316】
いくつかの実施態様において、非ヌクレオチドリンカーは、グリセロール、または式HO--(CH2)o--CH(OH)--(CH2)p--OH[式中、oおよびpは、独立して、1~約6、1~約4または1~約3の整数である]のグリセロールホモログである。いくつかの他の実施態様において、非ヌクレオチドリンカーは、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパンの誘導体である。このような誘導体のいくつかは、式:HO--(CH2)m--C(O)NH--CH2--CH(OH)--CH2--NHC(O)--(CH2)m--OH[式中、mは、0~約10、0~約6、2~約6または2~約4の整数である]で示される。
【0317】
いくつかの非ヌクレオチドリンカーは、2つを超えるGSO成分の結合を可能にする。例えば、非ヌクレオチドリンカーグリセロールは、GSO成分が共有結合で結合し得る3つのヒドロキシル基を有する。したがって、本発明のいくつかのオリゴヌクレオチドベースの化合物は、ヌクレオチドまたは非ヌクレオチドリンカーに結合された2つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチドを含む。本発明によるそのようなオリゴヌクレオチドは、「分岐状」されていると称される。
【0318】
特定の実施態様において、GSOは、少なくとも14ヌクレオチド長である。特定の例示的な実施態様において、GSOは、15~40ヌクレオチド長または20~30ヌクレオチド長である。したかって、GSOのコンポーネントのオリゴヌクレオチドは、独立して14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40ヌクレオチド長であり得る。
【0319】
これらのオリゴヌクレオチドは、手動でまたは自動化シンセサイザーによって実施することができる、ホスホルアミデート(phosphoramidate)またはH-ホスホネート化学などの当技術分野で認められている方法によって調製することができる。これらのオリゴヌクレオチドはまた、mRNAにハイブリダイズしているそれらの能力を損なうことなく、いくつかの方法で修飾することができる。このような修飾は、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスフェート エステル、アルキルホスホロチオエート(alkylphosphonothioate)、ホスホルアミデート、カルバメート、カーボネート、ホスフェート ヒドロキシル、アセトアミダートまたはカルボキシメチルエステルまたはこれらの組み合わせであるオリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオチド間結合、および1つのヌクレオチドの5'末端と別のヌクレオチドの3'末端との間の他のヌクレオチド間結合であって、5'ヌクレオチドホスホジエステル結合がさまざまな化学基に置き換えられているものを含み得る。
V. 修飾抗ApoE RNAサイレンシング剤
【0320】
本発明の特定の態様において、上記の本発明のRNAサイレンシング剤(またはそのいずれかの部分)は、その薬剤の活性がさらに改善されるように修飾されてもよい。上記のセクションIIに記載のRNAサイレンシング剤は、以下に記載のいずれかの修飾で修飾されてもよい。このの修飾は、部分的に、標的識別をさらに向上させるのに役に立つか、薬剤の安定性をさせるか(例えば、分解を防ぐ)、細胞取込を促進するか、標的効率を向上させるか、(例えば、標的に)への結合において有効性を改善するか、薬剤に対する患者の耐性を改善するか、および/または毒性を低減することができる。
1)標的識別の向上のための修飾
【0321】
特定の実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、単一ヌクレオチド標的識別を向上させるために不安定化ヌクレオチドで置換されていてもよい(2007年1月25日出願の米国出願Ser. No.11/698,689、2006年1月25日出願の米国仮出願No.60/762,225を参照のこと。両方は引用により本明細書に包含される)。このような修飾は、標的mRNA(例えば、機能獲得型変異体mRNA)に対するRNAサイレンシング剤の特異性に感知できるほどに影響を与えることなく、非標的mRNA(例えば、野生型mRNA)に対するRNAサイレンシング剤の特異性を破壊するのに十分である。
【0322】
好ましい実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、そのアンチセンス鎖に少なくとも1つの一般的なヌクレオチドを導入することによって修飾される。一般的なヌクレオチドは、従来のヌクレオチドの四つの塩基(例えば、A、G、C、U)のいずれかと無差別に塩基対合できる塩基部分を含む。一般的なヌクレオチドは、RNA二重鎖、またはRNAサイレンシング剤のガイド鎖および標的mRNAによって形成される二重鎖の安定性に対して比較的小さな影響しか及ぼさないため、好ましい。例示的な一般的なヌクレオチドは、デオキシノシン(例えば、2'-デオキシノシン)、7-デアザ 2'-デオキシノシン、2'-アザ-2'-デオキシノシン、PNA-イノシン、モルホリノ-イノシン、LNA-イノシン、ホスホルアミデート-イノシン、2'-O-メトキシエチル-イノシン、および2'-OMe-イノシンからなる群から選択されるイノシン塩基部分またはイノシンアナログ塩基部分を有するものを含む。特に好ましい実施態様において、一般的なヌクレオチドは、イノシン残基またはその天然に存在するアナログである。
【0323】
特定の実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、特異性決定ヌクレオチド(すなわち、疾患関連多型を認識するヌクレオチド)から5のヌクレオチド以内に少なくとも1つの不安定化ヌクレオチドを導入することによって修飾される。例えば、不安定化ヌクレオチドは、特異性決定ヌクレオチドから5、4、3、2、または1のヌクレオチド以内の位置に導入することができる。例示的な実施態様において、不安定化ヌクレオチドは、特異性決定ヌクレオチドから3のヌクレオチドの位置に導入される(すなわち、不安定化ヌクレオチドと特異性決定ヌクレオチドとの間に2つの安定化ヌクレオチドが存在するように)。二本の鎖または鎖部分を有するRNAサイレンシング剤(例えば、siRNAおよびshRNA)において、特異性決定ヌクレオチドを含有しない鎖または鎖部分に不安定化ヌクレオチドが導入され得る。好ましい実施態様において、不安定化ヌクレオチドは、特異性決定ヌクレオチドを含む同じ鎖または鎖部分に導入される。
2)有効性および特異性の向上に対する修飾
【0324】
特定の実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、非対称設計ルールによるRNAiの媒介において有効性および特異性の向上を容易にするように改変されてもよい(see 米国特許8,309,704、7,750,144、8,304,530、8,329,892および8,309,705を参照のこと)。このような改変は、siRNA(例えば、本発明の方法を用いて設計されたsiRNAまたはshRNAから作製されたsiRNA)のアンチセンス鎖が、センス鎖のためにRISCにエントリーすることを容易にし、アンチセンス鎖が標的mRNAの切断または翻訳抑制を優先的に導くようにして、標的切断およびサイレンシングの効率を増加または改善させる。好ましくは、RNAサイレンシング剤のアンチセンス鎖5'末端(AS 5')とセンス鎖3'末端(S 3')との間の塩基対強度を、該RNAサイレンシング剤のアンチセンス鎖3'末端(AS 3')とセンス鎖5'末端(S '5)との間の結合強度または塩基対強度と比較して減らすことによって、RNAサイレンシング剤の非対称を向上させる。
【0325】
一実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤の非対称は、第一またはアンチセンス鎖の5'端とセンス鎖部分の3'端との間のG:C塩基対が、第一またはアンチセンス鎖の3'端とセンス鎖部分の5'端との間のG:C塩基対よりも少ないように向上されてもよい。別の実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤の非対称は、第一またはアンチセンス鎖の5'末端とセンス鎖部分の3'末端との間に少なくとも1つのミスマッチ塩基対があるように向上されてもよい。好ましくは、ミスマッチ塩基対は、G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:CおよびU:Uからなる群から選択される。別の実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤の非対称は、第一またはアンチセンス鎖の5'末端とセンス鎖部分の3'末端との間に、少なくとも1つのゆらぎ塩基対、例えばG:Uがあるように向上されてもよい。別の実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤の非対称は、希少ヌクレオチド、例えばイノシン(I)を含む塩基対が少なくとも1つあるように向上されてもよい。好ましくは、塩基対は、I:A、I:UおよびI:Cからなる群から選択される。さらに別の実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤の非対称は、修飾ヌクレオチドを含む塩基対が少なくとも1つあるように向上されてもよい。好ましい実施態様において、修飾ヌクレオチドは、2-アミノ-G、2-アミノ-A、2,6-ジアミノ-G、および2,6-ジアミノ-Aからなる群から選択される。
3)安定性が向上されたRNAサイレンシング剤
【0326】
本発明のRNAサイレンシング剤は、血清中または細胞培養のための成長培地中での安定性を向上させるように修飾することができる。安定性を向上させるために、3'-残基は分解に対して安定化されていてもよく、例えば、プリンヌクレオチド、特にアデノシンまたはグアノシンヌクレオチドからなるように選択されてもよい。あるいは、ピリミジンヌクレオチドを修飾アナログで置換すること、例えばウリジンを2'-デオキシチミジンで置換することは許容され、RNA干渉の効率に影響を与えない。
【0327】
一局面において、本発明は、第二鎖および/または第一鎖が内部ヌクレオチドを修飾ヌクレオチドで置換することによって修飾されている第一および第二の鎖を含み、対応する未修飾RNAサイレンシング剤と比較してインビボの安定性が向上するようにするRNAサイレンシング剤を特徴とする。本明細書で定義されているように、「内部」ヌクレオチドは、核酸分子、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの5'末端または3'末端以外のいずれかの位置に発生するヌクレオチドである。内部ヌクレオチドは、一本鎖分子内、または二本鎖または二本鎖分子の鎖内にあり得る。一実施態様において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は、少なくとも1つの内部ヌクレオチドの置換によって修飾されている。別の実施態様において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25個またはそれ以上の内部ヌクレオチドの置換によって修飾されている。別の実施態様において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の内部ヌクレオチドの置換によって修飾されている。さらに別の実施態様において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は、全ての内部ヌクレオチドの置換によって修飾されている。
【0328】
一局面において、本発明は、少なくとも80%が化学的に修飾されているRNAサイレンシング剤を特徴とする。本発明の好ましい実施態様において、RNAサイレンシング剤は、完全に化学的に修飾されており、すなわち、100%のヌクレオチドが化学的に修飾されている。
【0329】
本発明の好ましい実施態様において、RNAサイレンシング剤は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドアナログを含有していてもよい。ヌクレオチドアナログは、標的特異的サイレンシング活性、例えば、RNAi媒介活性または翻訳抑制活性が実質的に影響を受けていない位置、例えば、siRNA分子の5'末端および/または3'末端の領域に位置されていてもよい。特に、末端は、修飾ヌクレオチドアナログを組み込むことによって安定化されてもよい。
【0330】
例示的なヌクレオチドアナログは、糖-および/または骨格-修飾リボヌクレオチドを含む(すなわち、リン酸-糖骨格に対する修飾を含む)。例えば、天然のRNAのホスホジエステル結合は、窒素または硫黄のヘテロ原子の少なくとも1つを含むように修飾されていてもよい。例示的な骨格-修飾リボヌクレオチドにおいて、隣接するリボヌクレオチドに結合されたホスホエステル基は、修飾基、例えば、ホスホチオエート基によって置き換えられている。例示的な糖-修飾リボヌクレオチドにおいて、2'OH-基は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2またはONからなる群からなる群から選択される基によって置き換えられ、ここで、Rは、C1-C6アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ハロは、F、Cl、BrまたはIである。
【0331】
特定の実施態様において、修飾は、2'-フルオロ、2'-アミノおよび/または2'-チオ修飾である。特定の好ましい修飾は、2'-フルオロ-シチジン、2'-フルオロ-ウリジン、2'-フルオロ-アデノシン、2'-フルオロ-グアノシン、2'-アミノ-シチジン、2'-アミノ-ウリジン、2'-アミノ-アデノシン、2'-アミノ-グアノシン、2,6-ジアミノプリン、4-チオ-ウリジン、および/または5-アミノ-アリル-ウリジンを含む。特定の実施態様において、2'-フルオロリボヌクレオチドは、あらゆるウリジンおよびシチジンである。追加の例示的な修飾は、5-ブロモ-ウリジン、5-ヨード-ウリジン、5-メチル-シチジン、リボチミジン、2-アミノプリン、2'-アミノ-ブチリル-ピレン-ウリジン、5-フルオロ-シチジン、および5-フルオロ-ウリジンを含む。2'-デオキシヌクレオチドおよび2'-Omeヌクレオチドはまた、本発明の修飾RNAサイレンシング剤部分内で使用することができる。追加の修飾残基は、デオキシ脱塩基、イノシン、N3-メチル-ウリジン、N6,N6-ジメチル-アデノシン、シュードウリジン、プリンリボヌクレオシドおよびリバビリンを含む。特に好ましい実施態様において、2'部分は、結合部分が2'-O-メチルオリゴヌクレオチドであるようなメチル基である。
【0332】
例示的な実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、ロックされた核酸(LNA)を含む。LNAは、ヌクレアーゼ活性に抵抗し(非常に安定している)、mRNAの単一ヌクレオチド識別を有する糖修飾ヌクレオチドを含む(Elmen et al., Nucleic Acids Res., (2005), 33(1): 439-447; Braasch et al. (2003) Biochemistry 42:7967-7975, Petersen et al. (2003) Trends Biotechnol 21:74-81)。これらの分子は、2'-O,4'-C-エチレン架橋核酸を有し、2'-デオキシ-2''-フルオロウリジンのような修飾が可能である。さらに、LNAは、糖部分を3'-末端構造に束縛することによってオリゴヌクレオチドの特異性を増加させ、それによって塩基対合のためにヌクレオチドを事前にオーガナイズし、オリゴヌクレオチドの融解温度を塩基あたり10℃も上昇させる。
【0333】
別の例示的な実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、ペプチド核酸(PNA)を含む。PNAは、ヌクレオチドの糖-リン酸部分が、ヌクレアーゼ消化に対して非常に耐性があり、分子に改善された結合特異性を付与するポリアミド骨格を形成することができる中性の2-アミノエチルグリシン部分で置き換えられている修飾ヌクレオチドを含む(Nielsen, et al., Science, (2001), 254: 1497-1500)。
【0334】
また、核酸塩基修飾リボヌクレオチド、すなわち、天然に存在する核酸塩基の代わりに少なくとも1つの非天然に存在する核酸塩基を含むリボヌクレオチドも好ましい。塩基は、アデノシンデアミナーゼの活性をブロックするように修飾することができる。例示的な修飾核酸塩基としては、5位で修飾されているウリジンおよび/またはシチジン、例えば5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン;8位で修飾されているアデノシンおよび/またはグアノシン、例えば8-ブロモグアノシン;デアザヌクレオチド、例えば7-デアザ デノシン、O-およびN-アルキル化ヌクレオチド、例えば、N6-メチルアデノシンが適当であるが、これらに限定されない。なお、上記の修飾は組み合わせてもよい。
【0335】
他の実施態様において、架橋は、RNAサイレンシング剤の薬物動態を改変するのに、例えば、体内の半減期を増加させるのに利用できる。したがって、本発明は、核酸の2つの相補的鎖を有するRNAサイレンシング剤であって、該2つの鎖は架橋されているRNAサイレンシング剤を含む。本発明はまた、別の部分(例えば、ペプチドなどの非核酸部分、有機化合物(例えば、染料 )、など)にコンジュゲートされているか、コンジュゲートされていない(例えば、その3'末端で)RNAサイレンシング剤を含む。このようにsiRNA誘導体を修飾することにより、対応するsiRNAと比較して、得られるsiRNA誘導体の細胞取込を改善するか、得られるsiRNA誘導体の細胞内での標的を向上させ、細胞におけるsiRNA誘導体の追跡に有用であり、または対応するsiRNAと比較してsiRNA誘導体の安定性を改善することができる。
【0336】
他の例示的な修飾には以下のものがある。(a)2'修飾、例えば、センス鎖またはアンチセンス鎖、特にセンス鎖のUへの2'OMe部分の提供、または3'突出部例えば、3'末端(3'末端とは、文脈によって示されるような、分子の3'原子、または最3'末端、例えば最3'Pまたは2'位置を意味する)への2'OMe部分の提供;(b)骨格の修飾であって、例えば、リン酸骨格における0をSに置き換えるもの、例えば、UもしくはAまたは両方へのホスホロチオエート修飾の提供;例えば、0をSに置き換える骨格の修飾;(c)UをC5アミノリンカーで置き換え;(d)AをGで置き換え(配列変動は、アンチセンス鎖ではなく、センス鎖に位置することが好ましい);および(d)2'位、6'位、7'位、または8位での修飾を含む。例示的な実施態様は、これらの修飾のうち1つまたはそれ以上のがセンス鎖に存在するがアンチセンス鎖には存在しないもの、またはアンチセンス鎖がそのような修飾が少ない実施態様である。さらに他の例示的な修飾は、3'突出部、例えば、3'末端でのメチル化Pの使用;2'修飾の組み合わせ、例えば2'OMe部分の提供および骨格の修飾(例えばOをSに置き換える)、例えば、ホスホロチオエート修飾の提供、または3'突出部、例えば3'末端でのメチル化Pの使用;3'アルキルによる修飾、3'突出部、例えば3'末端での脱塩基性ピロリドンによる修飾;ナプロキセン、イブプロフェン、または3'末端での分解を阻害する他の部分による修飾、を含む。
4)細胞取込を向上させるための修飾
【0337】
他の実施態様において、RNAサイレンシング剤は、例えば、標的細胞(例えば、神経細胞)による細胞取込を向上させるために、化学的部分で修飾されてもよい。したがって、本発明は、別の部分(例えば、ペプチドなどの非核酸部分)、有機化合物(例えば、染料)などにコンジュゲートされているか、コンジュゲートされていない(例えば、その3'末端で)RNAサイレンシング剤を含む。コンジュゲーションは、当該技術分野で知られている方法によって、例えば、Lambert et al., Drug Deliv. Rev.: 47(1), 99-112 (2001)(ポリアルキルシアノアクリレート(PACA)ナノ粒子にロードされている核酸が記載されいる); 脂肪tal et al., J. Control 放出 53(1-3):137-43 (1998) (ナノ粒子に結合された核酸が記載されている); Schwab et al., Ann. Oncol. 5 Suppl. 4:55-8 (1994) (挿入剤、疎水性基、ポリカチオンまたはPACAナノ粒子に結合された核酸が記載されている);およびGodard et al., Eur. J. Biochem. 232(2):404-10 (1995) (ナノ粒子に結合された核酸が記載されている)の方法を用いて達成できる。
【0338】
特定の実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、親油性部分にコンジュゲートされている。一実施態様において、親油性部分は、カチオン基を含むリガンドである。別の実施態様において、親油性部分は、siRNAの一方または両方に結合している。例示的な実施態様において、親油性部分は、siRNAのセンス鎖の一方の末端に結合している。別の例示的な実施態様において、親油性部分は、センス鎖の3'末端に結合している。特定の実施態様において、親油性部分は、コレステロール、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンA、葉酸、またはカチオン染料(例えば、Cy3)からなる群から選択される。例示的な実施態様において、親油性部分は、コレステロールである。他の親油性部分は、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジンを含む。
5)テザーリガンド
【0339】
他のエンティティは、本発明のRNAサイレンシング剤にテザーされ得る。例えば、安定性、標的核酸とのハイブリダイゼーション熱力学、特定の組織または細胞型の標的、または、例えば、エンドサイトーシス依存性または非依存性メカニズムによる細胞透過性を改善する、RNAサイレンシング剤にテザーされているリガンド。リガンドおよび関連する修飾はまた、配列特異性を増加させ、その結果、オフサイト標的を低減できる。テザーリガンドは、介入物として機能することができる修飾塩基または糖を1つまたはそれ以上含むことができる。これらは、好ましくは、RNAサイレンシング剤/標的二重鎖のバルジのような内部領域に位置する。介入物は、芳香族、例えば、多環式芳香族またはヘテロ環式芳香族化合物であることができる。多環式介入物は、スタッキング能力を有することができ、および2、3、または4の縮合環を有するシステムを含むことができる。本明細書に記載の一般的な塩基は、リガンド上に含まれ得る。一実施態様において、リガンドは、標的核酸の切断によって標的遺伝子の阻害に寄与する切断基を含むことができる。切断基は、例えば、ブレオマイシン(例えば、ブレオマイシン-A5、ブレオマイシン-A2、またはブレオマイシン-B2)、ピレン、フェナントロリン(例えば、O-フェナントロリン)、ポリアミン、トリペプチド(例えば、lys-tyr-lysトリペプチド)、または金属イオンキレート基であり得る。金属イオンキレート基は、例えば、Lu(III)またはEU(III)大環状錯体、Zn(II)2,9-ジメチルフェナントロリン誘導体、Cu(II)テルピリジン、またはアクリジンを含むことができ、Lu(III)などの遊離金属イオンによるバルジの部位での標的RNAの選択的切断を促進することができる。いくつかの実施態様において、ペプチドリガンドは、RNAサイレンシング剤にテザーされて、例えば、バルジ領域で標的RNAの切断を促進することができる。例えば、1,8-ジメチル-1,3,6,8,10,13-ヘキサアザシクロテトラデカン(サイクラム)は、ペプチド(例えば、アミノ酸誘導体によって)にコンジュゲートされて、標的RNAの切断を促進することができる。テザーリガンドは、これにより、RNAサイレンシング剤が改善されたハイブリダイゼーション特性または改善された配列特異性を有するようにすることができるアミノグリコシドリガンドであることができる。例示的なアミノグリコシドは、グリコシル化ポリリシン、ガラクトシル化ポリリシン、ネオマイシンB、トブラマイシン、カナマイシンA、およびアミノグリコシドのアクリジンコンジュゲート、例えば、ネオ-N-アクリジン、ネオ-S-アクリジン、ネオ-C-アクリジン、トブラ-N-アクリジン、およびKanaA-N-アクリジンを含む。アクリジンアナログに使用により配列特異性を増加させることができる。例えば、ネオマイシンBは、DNAと比較してRNAに対して高い親和性を有するが、配列特異性は低い。アクリジンアナログである、ネオ-5-アクリジンは、HIV Rev-応答配列(Rev-response element, RRE)に対して増加された親和性を有する。いくつかの実施態様において、アミノグリコシドリガンドのグアニジンアナログ(グアニジノグリコシド)は、RNAサイレンシング剤にテザーされている。グアニジノグリコシドにおいて、アミノ酸のアミン基がグアニジン基に交換されている。グアニジンアナログの結合により、RNAサイレンシング剤の細胞透過性を向上させることができる。テザーリガンドは、オリゴヌクレオチド剤の細胞取込を向上させることができるポリ-アルギニンペプチド、ペプトイドまたはペプチド模倣のものであることができる。
【0340】
例示的なリガンドは、好ましくは共有結合で、直接または介在するテザーを介して間接的に、リガンドを結合されたキャリアに結合する。例示的な実施態様において、リガンドは、介在するテザーを介して担体に結合している。例示的な実施態様において、リガンドは、それが組み込まれているRNAサイレンシング剤の分布、標的、または寿命を改変させる。例示的な実施態様において、リガンドは、例えば、そのようなリガンドが存在しない種と比較して、選択された標的、例えば、分子、細胞または細胞型、コンパートメント、例えば、身体の細胞または器官のコンパートメント、組織、器官または領域に対する親和性向上させる。
【0341】
例示的なリガンドは、輸送、ハイブリダイゼーション、および特異性性質を改善することができ、また、結果として得られる天然または修飾RNAサイレンシング剤、または本明細書に記載のモノマーおよび/または天然または修飾リボヌクレオチドのいずれかの組み合わせを含むポリマー分子のヌクレアーゼ耐性を改善することもある。リガンドは、例えば、取り込みを促進するための治療的修飾因子;分布をモニターするための診断用化合物またはレポーター群;架橋剤;ヌクレアーゼ耐性付与部分;天然または珍しい核酸塩基を含むことができる。一般的な例としては、親油性物質、脂質、ステロイド(例:ウバオール、ヘチゲニン(hecigenin)、ジオスゲニン)、テルペン(例えば、トリテルペン、例えば、サルササポゲニン、フリーデリン、エピフリーデラノール誘導体化リトコール酸)、ビタミン(例えば、葉酸、ビタミンA、ビオチン、ピリドキーサル)、炭水化物、タンパク質、タンパク質結合剤、インテグリン標的分子、ポリカチオン、ペプチド、ポリアミン、およびペプチド模倣体がある。リガンドは、天然に存在する物質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)、またはグロブリン);炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリンまたはヒアルロン酸);アミノ酸または脂質を含むことができる。また、リガンドは、合成ポリマー、例えば合成ポリアミノ酸のような、組換えまたは合成分子であってもよい。ポリアミノ酸の例としては、ポリリシン(PLL)、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-マレイン酸 無水物コポリマー、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)コポリマー、ジビニルエーテル-マレイン無水物コポリマー、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリフォスファジンであるポリアミノ酸を含む。ポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリリシン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、シュードペプチド-ポリアミン、ペプチド模倣のポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの四級塩、またはアルファ螺旋ペプチドがある。
【0342】
リガンドはまた、標的基、例えば、腎臓細胞などの特定の細胞型に結合する細胞または組織標的剤、例えば、レクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質、例えば、抗体を含むことができる。標的基は、サイロトロピン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、界面活性剤タンパク質A、ムチン炭水化物、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン、多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタメート、ポリアスパルテート、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸塩、ビタミンB12、ビオチン、またはRGDペプチドまたはRGDペプチドミメティックであり得る。リガンドの他の例としては、染料、挿入剤(例えば、アクリジンおよび置換アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン、フェナントロリン、ピレン)、lys-tyr-lysトリペプチド、アミノグリコシド、グアニジウムアミノグリコシド、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性分子、例えば、コレステロール(およびそのチオアナログ)、コール酸、コール酸、リトコール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、グリセロール(例えば、エステル(例えば、モノ、ビス、またはトリス脂肪酸エステル、例えば、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、またはC20脂肪酸)およびそれらのエーテル、例えば、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、またはC20アルキル;例えば、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、1,3-ビス-O(オクタデシル)グリセロール)、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ステアリン酸(例えば、ジステアリン酸グリセリル)、オレイン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)およびペプチドコンジュゲート(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、ホスフェート、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収ファシリテーター(例えば、アスピリン、ナプロキセン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾールコンジュゲート、テトラアザ大環状環Eu3+複合体)、ジニトロフェニル、HRPまたはAPが挙げられる。
【0343】
リガンドは、タンパク質、例えば、糖タンパク質、またはペプチド、例えば、コリガンド(co-ligand)、または抗体、例えば、癌細胞、内皮細胞、または骨細胞などの特定の細胞型に結合する抗体に対して特異的親和性を有する分子であり得る。リガンドはまた、ホルモンおよびホルモン受容体を含んでもよい。これらはまた、非ペプチド種、例えば、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、または多価フコースを含み得る。リガンドは、、例えば、リポ多糖、p38MAPキナーゼの活性化因子、またはNF-kBの活性化因子であり得る。
【0344】
リガンドは、例えば、例えば、細胞骨格を破壊することによって、例えば、細胞の微小管、マイクロフィラメント、および/または中間径フィラメントを破壊することによって、細胞中へのRNAサイレンシング剤の取り込みを増加させることができる物質、例えば、薬物であり得る。薬物は、例えば、タクソン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャスプラキノリド、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン、またはミオセルビンであり得る。リガンドは、例えば、炎症反応を活性化することによって、細胞中へのRNAサイレンシング剤の取り込みを増加させることができる。そのような効果を有し得る例示的なリガンドとしては、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターロイキン-1β、またはガンマインターフェロンが挙げられる。一局面において、リガンドは、脂質または脂質ベースの分子である。このような脂質または脂質ベースの分子は、好ましくは、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)に結合する。HSA結合リガンドは、身体の標的組織、例えば、非腎臓標的組織へのコンジュゲートの分布を可能にする。例えば、標的組織は、肝臓の実質細胞を含む肝臓であり得る。HSAに結合し得る分子も、リガンドとして使用され得る。例えば、ネプロキシン(neproxin)またはアスピリンが使用され得る。脂質または脂質ベースのリガンドは
、 (a)コンジュゲートの分解に対する耐性を増加させることができ、(b)標的細胞または細胞膜への標的化または輸送を増加させることができ、および/または(c)血清タンパク質、例えば、HSAへの結合を調整するのに使用され得る。脂質ベースのリガンドを用いて、標的組織へのコンジュゲートの結合を調節する、例えば、制御することができる。例えば、より強くHSAに結合する脂質または脂質ベースのリガンドは、腎臓に対して標的化される可能性が低く、したがって、身体から除去される可能性が低い。より弱くHSAに結合する脂質または脂質ベースのリガンドを用いて、コンジュゲートを腎臓に対して標的化することができる。好ましい実施態様において、脂質ベースのリガンドはHSAに結合する。脂質ベースのリガンドは、コンジュゲートが好ましくは非腎臓組織に分配されるような十分な親和性でHSAに結合することができる。しかしながら、親和性は、HSA-リガンド結合が反転され得ないほど強力でないのが好ましい。別の好ましい実施態様において、コンジュゲートが好ましくは腎臓に分配されるように、脂質ベースのリガンドは、HSAに弱く結合するか又は全く結合しない。腎臓細胞を標的とする他の部分も、脂質ベースのリガンドの代わりにまたはそれに加えて使用され得る。
【0345】
別の態様において、リガンドは、標的細胞、例えば、増殖細胞によって取り込まれる部分、例えば、ビタミンである。これらは、例えば、悪性または非悪性の望ましくない細胞増殖、例えば、癌細胞を特徴とする障害を処置するのに特に有用である。例示的なビタミンは、ビタミンA、E、およびKを含む。他の例示的なビタミンには、ビタミンB、例えば、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキーサルまたは他のビタミンあるいは癌細胞によって取り込まれる栄養素が含まれる。HSAおよび低密度リポタンパク質(LDL)も含まれる。
【0346】
別の態様において、リガンドは、細胞透過剤(cell-permeation agent)、好ましくは、螺旋状細胞透過剤(cell-permeation agent)である。好ましくは、この剤は両親媒性である。例示的な剤は、tatまたはアンテノペディア(antennopedia)などのペプチドである。この剤がペプチドである場合、これはペプチジル模倣体(peptidylmimetic)、逆転異性体、非ペプチドまたはシュード-ペプチド結合、およびD-アミノ酸の使用を含めて修飾され得る。らせん状剤は、好ましくは、好ましくは親油性および疎油性相を有するアルファ-らせん状剤である。
【0347】
リガンドは、ペプチドまたはペプチド模倣体であり得る。ペプチド模倣体(本明細書においてオリゴペプチド模倣体とも称される)は、天然ペプチドと類似した明確な3次元構造に折り畳まれることが可能な分子である。ペプチドおよびペプチド模倣体のオリゴヌクレオチドへの結合は、例えば細胞認識および吸収を向上させることによって、RNAサイレンシング剤の薬物動態分布に影響を及ぼし得る。ペプチドまたはペプチド模倣体部分は、約5~50のアミノ酸の長さ、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50のアミノ酸の長さであり得る。ペプチドまたはペプチド模倣体は、例えば、細胞透過性ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、または疎水性ペプチド(例えば、主にTyr、TrpまたはPheからなる)であり得る。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、拘束性(constrained)ペプチドまたは架橋ペプチドであり得る。ペプチド部分は、L-ペプチドまたはD-ペプチドであり得る。別の代替例において、ペプチド部分は、疎水性膜トランスロケーション配列(MTS)を含み得る。ペプチドまたはペプチド模倣体は、ファージディスプレイライブラリー、または1ビーズ1化合物(one-bead-one-compound)(OBOC)組み合わせライブラリーから特定されたペプチドなどのDNAの無作為配列によってコードされ得る(Lam et al., Nature 354:82-84, 1991)。例示的な実施態様において、組み込まれたモノマー単位を介してRNAサイレンシング剤にテザーされたペプチドまたはペプチド模倣体は、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)-ペプチド、またはRGD模倣体などの細胞標的ペプチドである。ペプチド部分は、約5のアミノ酸~約40のアミノ酸の長さの範囲であり得る。ペプチド部分は、安定性または直接配座特性を高めるためなどの構造修飾を有し得る。後述される構造修飾のいずれも用いられ得る。
【0348】
VI. 分岐状オリゴヌクレオチド
【0349】
上記の2つまたはそれ以上のRNAサイレンシング剤、例えば、抗ApoE siRNAなどのオリゴヌクレオチドコンストラクトは、リンカー、スペーサーおよび分岐点から独立して選択される1つまたはそれ以上の部分によって互いに結合されて、分岐状オリゴヌクレオチドRNAサイレンシング剤を形成することができる。
図11は、2つのsiRNAを送出するためのジ-分岐状(di-branched)ジ-siRNA足場の例を示す。典型的な実施態様において、分岐状オリゴヌクレオチドの各核酸は、RNA媒介サイレンシングメカニズム(例えば、RNAi)を媒介するようにテロ接合単一ヌクレオチド多型に十分な相補性を有するアンチセンス鎖(またはその部分)を含む。他の実施態様において、ApoEアンチセンス転写産物をサイレンシングするためのセンス鎖(たまはその部分)を含む核酸を特徴とする第二型の分岐状オリゴヌクレオチドであって、センス鎖は、RNA媒介サイレンシングメカニズムを媒介するようにアンチセンス転写産物に十分な相補性を有するものが提供される。さらなる実施態様において、両方の型の核酸、すなわち、アンチセンス鎖(またはその部分)を含む第一のオリゴヌクレオチドおよびセンス鎖(またはその部分)を含む第二のオリゴヌクレオチドを含む第三型の分岐状オリゴヌクレオチドが提供される。
【0350】
例示的な実施態様において、分岐状オリゴヌクレオチドは、リンカーを介して結合された2~8のRNAサイレンシング剤を有し得る。リンカーは、疎水性であり得る。いくつかの実施態様において、本願の分岐状オリゴヌクレオチドは、2~3のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様において、オリゴヌクレオチドは、独立して実質的な化学的安定化を有する(例えば、構成塩基の少なくとも40%が化学的に修飾されている)。例示的な実施態様において、オリゴヌクレオチドは、完全な化学的安定化を有する(すなわち、構成塩基の全てが化学的に修飾されている)。いくつかの実施態様において、分岐状オリゴヌクレオチドは、そらぞれ独立して2~20個のヌクレオチドを有する1つまたはそれ以上の一本鎖ホスホロチオエート化尾部を有する。非限定的な実施態様において、各一本鎖の尾部は、8~10個のヌクレオチドを有する。
【0351】
特定の実施態様において、分岐状オリゴヌクレオチドは3つの性質を特徴とする:(1)分岐状構造、(2)完全な代謝安定化、および(3)ホスホロチオエートリンカーを含む一本鎖の尾部の存在。特定の実施態様において、分岐状オリゴヌクレオチドは、2または3の分岐状を有する。分岐状構造の全体的なサイズの増加は、取り込みの増加を促進すると考えられている。また、特定の活動理論に拘束されることなく、複数の隣接する分岐状(たとえば、2または3)は、各分岐状が協調して動作することを可能にし、したがって、内在化、トラフィッキング、および放出の速度を劇的に向上させると考えられている。
【0352】
分岐状オリゴヌクレオチドは、さまざまな構造的に多様な実施態様において提供される。
図17に示されるように、例えば、いくつかの実施態様において、分岐点で結合された核酸は、一本鎖または二本鎖であり、miRNA阻害剤、ギャップマー、ミックスマー、SSO、PMO、またはPNAからなる。これらの一本鎖は、それらの3'または5'末端で結合し得る。siRNAおよび一本鎖オリゴヌクレオチドの組み合わせはも二重機能に使用させ得る。別の実施態様において、ギャップマー、ミックスマー、miRNA阻害剤、SSO、PMO、およびPNAに相補的な短い核酸を用いて、活性一本鎖核酸を運び、分布および細胞内在化を向上させることができる。短い二重鎖領域は、低い融解温度(Tm~37℃)を有し、分岐状構造が細胞中に内在化されると、急速に分解する。
【0353】
図21に示されるように、ジ-siRNA分岐状オリゴヌクレオチドは、化学的に多様なコンジュゲートを含み得る。コンジュゲート生理活性リガンドを用いて、細胞特異性を向上させ、膜結合性、内在化、および血清タンパク質結合を促進することができる。コンジュゲーションに使用される生物活性部分の例としては、DHAg2、DHA、GalNAc、およびコレステロールが挙げられる。これらの部分はジ-siRNAに、結合リンカーまたはスペーサーを介して結合するか、別の遊離siRNA末端に結合された追加のリンカーまたはスペーサーを介して追加し得る。
【0354】
分岐状構造の存在は、同じ化学組成の非分岐状化合物と比較して、脳内の組織保持レベルを100倍超えて向上させ、これは、細胞の保持および分布の新しいメカニズムを示唆している。分岐状オリゴヌクレオチドは、脊髄および脳全体に予想外に均一に分布する。さらに、分岐状オリゴヌクレオチドは、さまざまな組織への予想外に効率的な全身送達、および非常に高レベルの組織蓄積を示す。
【0355】
分岐状オリゴヌクレオチドは、ASO、miRNA、miRNA阻害剤、スプライススイッチング(splice switching)、PMO、PNAを含むさまざまな治療的核酸を含む。いくつかの実施態様において、分岐状オリゴヌクレオチドはコンジュゲート疎水性部分をさらに含み、インビトロおよびインビボで先例のないサイレンシングおよび有効性を示す。
【0356】
分岐状オリゴヌクレオチド配置の非限定的な実施態様は、
図11、17~19、25~27、および50~52に開示されている。リンカー、スペーサーおよび分岐点の非限定的な例は、
図13に開示されている。
【0357】
リンカー
【0358】
分岐状オリゴヌクレオチドの実施態様において、リンカーはそれぞれ、独立してエチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、およびこれらの組み合わせから選択され;ここで、リンカーのいずれかの炭素または酸素原子は、場合によって窒素原子によって置き換えられていてよく、ヒドロキシル置換基を有するか、オキソ置換基を有する。一実施態様において、リンカーはそれぞれ、エチレングリコール鎖である。別の実施態様において、リンカーはそれぞれ、アルキル鎖である。別の実施態様において、リンカーはそれぞれ、ペプチドである。別の実施態様において、リンカーはそれぞれ、RNAである。別の実施態様において、リンカーはそれぞれ、DNAである。別の実施態様において、リンカーはそれぞれ、ホスフェートである。別の実施態様において、リンカーはそれぞれ、ホスホネートである。別の実施態様において、リンカーはそれぞれ、ホスホルアミデートである。別の実施態様において、リンカーはそれぞれ、エステルである。別の実施態様において、リンカーはそれぞれ、アミドである。別の実施態様において、リンカーはそれぞれ、トリアゾールである。別の実施態様において、リンカーはそれぞれ、
図17の式から選択される構造である。
VII。式(I)で示される化合物
【0359】
別の態様において、本明細書では、式(I)
【化10】
[式(I)中、Lは、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、およびこれらの組み合わせから選択され、ここで、式(I)は、場合により1つまたはそれ以上の分岐点B、および1つまたはそれ以上のスペーサーSをさらに含んでいてよく(ここで、Bは、出現するごとに独立して、多価有機種またはその誘導体であり;Sは、出現するごとに独立して、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、およびこれらの組み合わせから選択される)]で示される化合物が提供される。
【0360】
部分Nは、センス鎖およびアンチセンス鎖を含むRNA二重鎖であり;そして、nは、2、3、4、5、6、7または8である。いくつかの実施態様において、Nのアンチセンス鎖は、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'に実質的に相補的な相補性領域を含む。さらなる実施態様において、Nは、5' GAUUCACCAAGUUUA 3'、5' CAAGUUUCACGCAA 3'、および5' CCUAGUUUAAUAAAGAUUCA 3'の1つまたはそれ以上の標的配列を標的することができる鎖を含む。センス鎖およびアンチセンス鎖はそれぞれ、独立して、1つまたはそれ以上の化学的修飾を含む。
【0361】
いくつかの実施態様において、式(I)で示される化合物は、表3の式(I-1)~(I-9)から選択される構造を有する。
【表3】
【0362】
一実施態様において、式(I)で示される化合物は、式(I-1)である。別の実施態様において、式(I)で示される化合物は、式(I-2)である。別の実施態様において、式(I)で示される化合物は、式(I-3)である。別の実施態様において、式(I)で示される化合物は、式(I-4)である。別の実施態様において、式(I)で示される化合物は、式(I-5)である。別の実施態様において、式(I)で示される化合物は、式(I-6)である。別の実施態様において、式(I)で示される化合物は、式(I-7)である。別の実施態様において、式(I)で示される化合物は、式(I-8)である。別の実施態様において、式(I)で示される化合物は、式(I-9)である。
【0363】
式(I)で示される化合物の実施態様において、各リンカーは、独立して、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、およびこれらの組み合わせから選択され;ここで、リンカーのいずれかの炭素または酸素原子は、窒素原子によって置き換えられていてよく、ヒドロキシル置換基を有するか、オキソ置換基を有する。式(I)で示される化合物の一実施態様において、各リンカーは、エチレングリコール鎖である。別の実施態様において、各リンカーは、アルキル鎖である。式(I)で示される化合物の別の実施態様において、各リンカーは、ペプチドである。式(I)で示される化合物の別の実施態様において、各リンカーは、RNAである。式(I)で示される化合物の別の実施態様において、各リンカーは、DNAである。式(I)で示される化合物の別の実施態様において、各リンカーは、ホスフェートである。別の実施態様において、各リンカーは、ホスホネートである。式(I)で示される化合物の別の実施態様において、各リンカーは、ホスホルアミデートである。式(I)で示される化合物の別の実施態様において、各リンカーは、エステルである。式(I)で示される化合物の別の実施態様において、各リンカーは、アミドである。式(I)で示される化合物の別の実施態様において、各リンカーは、トリアゾールである。式(I)で示される化合物の別の実施態様において、各リンカーは、
図17の式から選択される構造である。
【0364】
式(I)で示される化合物の一実施態様において、Bは、多価有機種である。式(I)で示される化合物の別の実施態様において、Bは、多価有機種の誘導体である。式(I)で示される化合物の一実施態様において、Bは、トリオールまたはテトロール誘導体である。別の実施態様において、Bは、トリ-またはテトラ-カルボン酸誘導体である。別の実施態様において、Bは、アミン誘導体である。別の実施態様において、Bは、トリ-またはテトラ-アミン誘導体である。別の実施態様において、Bは、アミノ酸誘導体である。式(I)で示される化合物の別の実施態様において、Bは、
図16の式から選択される。
【0365】
多価有機種は、炭素および3つまたはそれ以上の原子価(すなわち、上記で定義されるS、LまたはNなどの部分との結合点)を含む部分である。多価有機種の非限定的な例は、トリオール(例えば、グリセロール、フロログルシノール、など)、テトロール(例えば、リボース、ペンタエリトリトール、1,2,3,5-テトラヒドロキシベンゼン、など)、トリ-カルボン酸(例えば、クエン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、トリメシン酸、など)、テトラ-カルボン酸(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、ピロメリット酸、など)、三級アミン(例えば、トリプロパルギルアミン、トリエタノールアミン、など)、トリアミン(例えば、ジエチレントリアミンなど)、テトラミン、およびヒドロキシル、チオール、アミノ、および/またはカルボキシル部分(例えば、リシン、セリン、システインなどのアミノ酸)の組み合わせを含む種を含む。
【0366】
式(I)で示される化合物の実施態様において、各核酸は、1つまたはそれ以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。式(I)で示される化合物の実施態様において、各核酸は、化学修飾ヌクレオチドからなる。式(I)で示される化合物の特定の実施態様において、各核酸の>95%、>90%、>85%、>80%、>75%、>70%、>65%、>60%、>55%または>50%は、化学修飾ヌクレオチドを含む。
【0367】
いくつかの実施態様において、各アンチセンス鎖は、独立して、表4の群から選択される5'末端基Rを含む。
【表4】
【0368】
一実施態様において、Rは、R1である。別の実施態様において、Rは、R2である。別の実施態様において、Rは、R3である。別の実施態様において、Rは、R4である。別の実施態様において、Rは、R5である。別の実施態様において、Rは、R6である。別の実施態様において、Rは、R7である。別の実施態様において、Rは、R8である。
式(II)の構造
【0369】
いくつかの実施態様において、式(I)で示される化合物は、式(II):
【化11】
[式中、Xは、出現するごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、およびそれらの化学修飾誘導体から選択され;Yは、出現するごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、およびそれらの化学修飾誘導体から選択され;-は、ホスホジエステルヌクレオシド間結合を示し;=は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を示し;そして、---は、出現するごとに単独に、塩基対合の相互作用またはミスマッチを示す]の構造を有する。
【0370】
特定の実施態様において、式(II)の構造は、ミスマッチを含まない。一実施態様において、式(II)の構造は、1個のミスマッチを含む。別の実施態様において、式(II)で示される化合物は、2個のミスマッチを含む。別の実施態様において、式(II)で示される化合物は、3個のミスマッチを含む。別の実施態様において、式(II)で示される化合物は、4個のミスマッチを含む。いくつかの実施態様において、各核酸は、化学修飾ヌクレオチドからなる。
【0371】
特定の実施態様において、式(II)の構造のX'の>95%、>90%、>85%、>80%、>75%、>70%、>65%、>60%、>55%または>50%は、化学修飾ヌクレオチドである。他の実施態様において、式(II)の構造のX'の>95%、>90%、>85%、>80%、>75%、>70%、>65%、>60%、>55%または>50%は、化学修飾ヌクレオチドである。
式(III)の構造
【0372】
いくつかの実施態様において、式(I)で示される化合物は、式(III):
【化12】
【0373】
[式中、Xは、出現するごとに独立して、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;Xは、出現するごとに独立して、2'-O-メチル修飾を含むヌクレオチドであり;Yは、出現するごとに独立して、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;そして、Yは、出現するごとに独立して、2'-O-メチル修飾を含むヌクレオチドである]の構造を有する。
【0374】
いくつかの実施態様において、Xは、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、Xは、2'-O-メチル修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、Yは、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、Yは、2'-O-メチル修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。
【0375】
特定の実施態様において、式(III)の構造は、ミスマッチを含まない。一実施態様において、式(III)の構造は、1個のミスマッチを含む。別の実施態様において、式(III)で示される化合物は、2個のミスマッチを含む。別の実施態様において、式(III)で示される化合物は、3個のミスマッチを含む。別の実施態様において、式(III)で示される化合物は、4個のミスマッチを含む。
式(IV)の構造
【0376】
いくつかの実施態様において、式(I)で示される化合物は、式(IV):
【化13】
[式中、Xは、出現するごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、およびそれらの化学修飾誘導体から選択され;Yは、出現するごとに独立して、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、およびそれらの化学修飾誘導体から選択され;-は、ホスホジエステルヌクレオシド間結合を示し;=は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を示し;そして、---は、出現するごとに単独に、塩基対合の相互作用またはミスマッチを示す]の構造を有する。
【0377】
特定の実施態様において、式(IV)の構造は、ミスマッチを含まない。一実施態様において、式(IV)の構造は、1個のミスマッチを含む。別の実施態様において、式(IV)で示される化合物は、2個のミスマッチを含む。別の実施態様において、式(IV)で示される化合物は、3個のミスマッチを含む。別の実施態様において、式(IV)で示される化合物は、4個のミスマッチを含む。いくつかの実施態様において、各核酸は、化学修飾ヌクレオチドからなる。
【0378】
特定の実施態様において、式(IV)の構造のX'の>95%、>90%、>85%、>80%、>75%、>70%、>65%、>60%、>55%または>50%は、化学修飾ヌクレオチドである。他の実施態様において、式(IV)の構造のX'の>95%、>90%、>85%、>80%、>75%、>70%、>65%、>60%、>55% または >50%は、化学修飾ヌクレオチドである。
式(V)の構造
【0379】
いくつかの実施態様において、式(I)で示される化合物は、式(V):
【化14】
[式中、Xは、出現するごとに独立して、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;Xは、出現するごとに独立して、2'-O-メチル修飾を含むヌクレオチドであり;Yは、出現するごとに独立して、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾を含むヌクレオチドであり;そして、Yは、出現するごとに独立して、2'-O-メチル修飾を含むヌクレオチドである]の構造を有する。
【0380】
特定の実施態様において、Xは、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、Xは、2'-O-メチル修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、Yは、2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、Yは、2'-O-メチル修飾アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジンからなる群から選択される。
【0381】
特定の実施態様において、式(V)の構造は、ミスマッチを含まない。一実施態様において、式(V)の構造は、1個のミスマッチを含む。別の実施態様において、式(V)で示される化合物は、2個のミスマッチを含む。別の実施態様において、式(V)で示される化合物は、3個のミスマッチを含む。別の実施態様において、式(V)で示される化合物は、4個のミスマッチを含む。
可変リンカー
【0382】
式(I)で示される化合物の実施態様において、Lは、L1:
【化15】
の構造を有する。
L1の実施態様において、RはR
3であり、そして、nは2である。
【0383】
式(II)で示される構造の実施態様において、Lは、L1の構造を有する。式(III)の構造の実施態様において、Lは、L1の構造を有する。式(IV)の構造の実施態様において、Lは、L1の構造を有する。式(V)の構造の実施態様において、Lは、L1の構造を有する。式(VI)の構造の実施態様において、Lは、L1の構造を有する。式(VI)の構造の実施態様において、Lは、L1の構造を有する。
【0384】
式(I)で示される化合物の実施態様において、Lは、L2:
【化16】
の構造を有する。
【0385】
L2の実施態様において、RはR3であり、そして、nは2である。式(II)の構造の実施態様において、Lは、L2の構造を有する。式(III)の構造の実施態様において、Lは、L2の構造を有する。式(IV)の構造の実施態様において、Lは、L2の構造を有する。式(V)の構造の実施態様において、Lは、L2の構造を有する。式(VI)の構造の実施態様において、Lは、L2の構造を有する。式(VI)の構造の実施態様において、Lは、L2の構造を有する。
送達システム
【0386】
第三の態様において、本明細書では、式(VI):
【化17】
【0387】
[式(VI)中、Lは、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、トリアゾール、およびこれらの組み合わせから選択され、ここで、式(VI)は、場合により1つまたはそれ以上の分岐点B、および1つまたはそれ以上のスペーサーSをさらに含んでいてよく(ここで、Bは、出現するごとに独立して、多価有機種またはその誘導体であり;Sは、出現するごとに独立して、エチレングリコール鎖、アルキル鎖、ペプチド、RNA、DNA、ホスフェート、ホスホネート、ホスホルアミデート、エステル、アミド、リアゾール、およびこれらの組み合わせから選択され);各cNAは、独立して、1つまたはそれ以上の化学修飾を含む担体核酸であり;そして、nは、2、3、4、5、6、7または8である]の構造を有する、治療的核酸のための送達システムが提供される。
【0388】
送達システムの一実施態様において、Lはエチレングリコール鎖である。送達システムの別の実施態様において、Lはアルキル鎖である。送達システムの別の実施態様において、Lはペプチドである。送達システムの別の実施態様において、LはRNAである。送達システムの別の実施態様において、LはDNAである。送達システムの別の実施態様において、Lはホスフェートである。送達システムの別の実施態様において、Lはホスホネートである。送達システムの別の実施態様において、Lはホスホルアミデートである。送達システムの別の実施態様において、Lはエステルである。送達システムの別の実施態様において、Lはアミドである。送達システムの別の実施態様において、Lはトリアゾールである。
【0389】
送達システムの一実施態様において、Sはエチレングリコール鎖である。別の実施態様において、Sはアルキル鎖である。送達システムの別の実施態様において、Sはペプチドである。別の実施態様において、SはRNAである。送達システムの別の実施態様において、SはDNAである。送達システムの別の実施態様において、Sはホスフェートである。送達システムの別の実施態様において、Sはホスホネートである。送達システムの別の実施態様において、Sはホスホルアミデートである。送達システムの別の実施態様において、Sはエステルである。別の実施態様において、Sはアミドである。別の実施態様において、Sはトリアゾールである。
【0390】
送達システムの一実施態様において、nは2である。送達システムの別の実施態様において、nは3である。送達システムの別の実施態様において、nは4である。送達システムの別の実施態様において、nは5である。送達システムの別の実施態様において、nは6である。送達システム別の実施態様において、nは7である。送達システムの別の実施態様において、nはである。
【0391】
特定の実施態様において、各cNAは、>95%、>90%、>85%、>80%、>75%、>70%、>65%、>60%、>55%または>50%の化学修飾ヌクレオチドを含む。
【0392】
いくつかの実施態様において、式(VI)で示される化合物は、表5:
【表5】
の式(VI-1)~(VI-9)から選択される構造を有する
【0393】
いくつかの実施態様において、式(VI)で示される化合物は、式(VI-1)の構造である。いくつかの実施態様において、式(VI)で示される化合物は、式(VI-2)の構造である。いくつかの実施態様において、式(VI)で示される化合物は、式(VI-3)の構造である。いくつかの実施態様において、式(VI)で示される化合物は、式(VI-4)の構造である。いくつかの実施態様において、式(VI)で示される化合物は、式(VI-5)の構造である。いくつかの実施態様において、式(VI)で示される化合物は、式(VI-6)の構造である。いくつかの実施態様において、式(VI)で示される化合物は、式(VI-7)の構造である。いくつかの実施態様において、式(VI)で示される化合物は、式(VI-8)の構造である。いくつかの実施態様において、式(VI)で示される化合物は、式(VI-9)の構造である。
【0394】
いくつかの実施態様において、式(VI)(例えば、式(VI-1)~(VI-9)を含む)で示される化合物は、各cNAが、独立して、少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様において、各cNAは、独立して、化学修飾ヌクレオチドからなる。
【0395】
いくつかの実施態様において、送達システムは、5' GUUUAAUAAAGAUUCACCAAGUUUCACGCAAA 3'または5' UGGACCCUAGUUUAAUAAAGAUUCACCAAG 3'に実質的に相補的な相補性領域を含む治療的核酸(NA)をさらに含む。さらなる実施態様において、NAは、5' GAUUCACCAAGUUUA 3'、5' CAAGUUUCACGCAA 3'、および5' CCUAGUUUAAUAAAGAUUCA 3'の1つまたはそれ以上の標的配列を標的できる鎖を含む。
【0396】
また、各NAは、少なくとも1つのcNAにハイブリダイズしている。一実施態様において、送達システムは2個のNAからなる。別の実施態様において、送達システムは3個のNAからなる。別の実施態様において、送達システムは4個のNAからなる。別の実施態様において、送達システムは5個のNAからなる。別の実施態様において、送達システムは6個のNAからなる。別の実施態様において、送達システムは7個のNAからなる。別の実施態様において、送達システムは8個のNAからなる。
【0397】
いくつかの実施態様において、各NAは、独立して、少なくとも16個の連続するヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様において、各NAは、独立して、16~20個の連続するヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様において、各NAは、独立して、16の個の連続するヌクレオチドを含む。別の実施態様において、各NAは、独立して、17個の連続するヌクレオチドを含む。別の実施態様において、各NAは、独立して、18個の連続するヌクレオチドを含む。別の実施態様において、各NAは、独立して、19個の連続するヌクレオチドを含む。別の実施態様において、各NAは、独立して、20個の連続するヌクレオチドを含む。
【0398】
いくつかの実施態様において、各NAは、少なくとも2個のヌクレオチドの不対突出部を含む。別の実施態様において、各NAは、少なくとも3個のヌクレオチドの不対突出部を含む。別の実施態様において、各NAは、少なくとも4個のヌクレオチドの不対突出部を含む。別の実施態様において、各NAは、少なくとも5個のヌクレオチドの不対突出部を含む。別の実施態様において、各NAは、少なくとも6個のヌクレオチドの不対突出部を含む。いくつかの実施態様において、突出部のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を介して結合される。
【0399】
いくつかの実施態様において、各NAは独立して、DNA、siRNA、アンタゴmiR、miRNA、ギャップマー、ミックスマー、またはガイドRNAからなる群から選択される。一実施態様において、各NAは独立して、DNAである。別の実施態様において、各NAは独立して、siRNAである。別の実施態様において、各NA、独立してアンタゴmiRである。別の実施態様において、各NAは独立して、miRNAである。別の実施態様において、各NAは独立して、ギャップマーである。別の実施態様において、各NAは独立して、ミックスマーである。別の実施態様において、各NAは独立して、ガイドRNAである。いくつかの実施態様において、各NAは同じである。いくつかの実施態様において、各NAは異なっている。
【0400】
いくつかの実施態様において、n個の治療的核酸(NA)をさらに含む送達システムは、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、および本明細書に記載のそれらの実施態様から選択される構造を有する。一実施態様において、送達システムは、2個の治療的核酸(NA)をさらに含む式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、および本明細書に記載のそれらの実施態様から選択される構造を有する。別の実施態様において、送達システムは、3個の治療的核酸(NA)をさらに含む式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、および本明細書に記載のそれらの実施態様から選択される構造を有する。一実施態様において、送達システムは、4個の治療的核酸(NA)をさらに含む式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、および本明細書に記載のそれらの実施態様から選択される構造を有する。一実施態様において、送達システムは、5個の治療的核酸(NA)をさらに含む式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、および本明細書に記載のそれらの実施態様から選択される構造を有する。一実施態様において、送達システムは、6個の治療的核酸(NA)をさらに含む式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、および本明細書に記載のそれらの実施態様から選択される構造を有する。一実施態様において、送達システムは、7個の治療的核酸(NA)をさらに含む式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、および本明細書に記載のそれらの実施態様から選択される構造を有する。一実施態様において、送達システムは、8個の治療的核酸(NA)をさらに含む式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、および本明細書に記載のそれらの実施態様から選択される構造を有する。
【0401】
一実施態様において、送達システムは、構造L1またはL2[ここで、RはR3であり、nは2である]のリンカーをさらに含む式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)から選択される構造を有する。別の実施態様において、送達システムは、構造L1[ここで、RはR3であり、nは2である]のリンカーをさらに含む式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)から選択される構造を有する。別の実施態様において、送達システムは、構造L2[ここで、RはR3であり、nは2である]のリンカーをさらに含む式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)から選択される構造を有する。
【0402】
送達システムのある実施態様において、送達の標的は、脳、肝臓、皮膚、腎臓、脾臓、膵臓、結腸、脂肪、肺、筋肉、および胸腺からなる群から選択される。一実施態様において、送達の標的は脳である。別の実施態様において、送達の標的は脳の線条体である。別の実施態様において、送達の標的は脳の皮質である。別の実施態様において、送達の標的は脳の線条体である。一実施態様において、送達の標的は肝臓である。一実施態様において、送達の標的は皮膚である。一実施態様において、送達の標的は腎臓である。一実施態様において、送達の標的は脾臓である。一実施態様において、送達の標的は膵臓である。一実施態様において、送達の標的は結腸である。一実施態様において、送達の標的は脂肪である。一実施態様において、送達の標的は肺である。一実施態様において、送達の標的は筋肉である。一実施態様において、送達の標的は胸腺である。一実施態様において、送達の標的は脊髄である。
【0403】
特定の実施態様において、本発明の化合物は、以下の性質を特徴とする:(1)例えば、3'および5'末端の数が等しくない2つまたはそれ以上の分岐状オリゴヌクレオチド;(2)実質的に化学的に安定化されており、例えば、40%を超える、最適には100%のオリゴヌクレオチドが化学的に修飾されている(例えば、RNAがなく、かつ場合によりDNAがなくてよい);および(3)少なくとも3の、最適には5~20のホスホロチオエート化結合を含むホスホロチオネート化単一のオリゴヌクレオチド。
【0404】
本開示に記載の方法は、本明細書に開示されている特定の方法および実験条件に限定されるものではなく、そのような方法および条件は変動し得ることを理解すべきである。また、本明細書で使用されている用語は、ただ特定の実施形態を説明する目的のためのものであり、限定することを意図したものではないことを理解すべきである。
【0405】
さらに、本明細書に記載の実験は、特に断らない限り、当業者の技術の範囲内で従来の分子・細胞生物学的および免疫学的技術を使用する。そのような技術は、当業者にはよく知られており、文献で十分に説明されている。例えば、Ausubel, et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., NY (1987-2008), including all supplements, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Fourth Edition) by MR Green and J. Sambrook and Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Chapter 14, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor (2013, 2nd edition)を参照のこと。
核酸、ベクター、宿主細胞の導入方法
【0406】
本発明のRNAサイレンシング剤は、細胞(例えば、神経細胞)に直接(すなわち、細胞内に)導入されてもよく、細胞外でキャビティ、間質腔、生物の循環に導入されてもよく、経口的に導入されてもよく、核酸を含有する溶液に細胞または生物を浸すことによって導入されてもよい。血管または血管外循環、血液またはリンパ系、及び脳脊髄液が、核酸が導入され得る部位である。
【0407】
本発明のRNAサイレンシング剤は、核酸を含有する溶液の注射、核酸によって覆われた粒子による衝撃(bombardment)、核酸の溶液への細胞または生物の浸漬、または核酸の存在下での細胞膜のエレクトロポレーションを含む、当技術分野で知られている核酸送達方法を用いて導入することができる。細胞に核酸を導入するための当技術分野で知られている他の方法、例えば、脂質媒介担体輸送、化学媒介輸送、およびリン酸カルシウムなどのカチオン性リポソームトランスフェクションを使用することができる。核酸は、細胞による核酸取り込みを増強するか、さもなければ、標的遺伝子の阻害を増加させる、といった活動の1つまたはそれ以上を行う他の成分と共に導入され得る。
【0408】
核酸を導入する物理的方法は、RNAを含有する溶液の注射、RNAによって覆われた粒子による衝撃、RNAの溶液への細胞または生物の浸漬、またはRNAの存在下での細胞膜のエレクトロポレーションを含む。ウイルス粒子にパッケージされたウイルスコンストラクトは、細胞への発現コンストラクトの効率的な導入と、この発現コンストラクトによってコードされるRNAの転写の両方を達成し得る。細胞に核酸を導入するための当技術分野で知られている他の方法、例えば、脂質媒介担体輸送、リン酸カルシウムなどの化学媒介輸送などを使用することができる。このように、RNAは、細胞によるRNAの取り込みを向上させるか、一本鎖のアニーリングを阻害するか、一本鎖を安定化させるか、さもなければ、標的遺伝子の阻害を増加させる、といった活動の1つまたはそれ以上を行う成分と共に導入され得る。
【0409】
RNAは、細胞に(すなわち、細胞内に)直接導入され得るか、細胞外でキャビティ、間質腔、生物の循環に導入され得るか、経口的に導入され得るか、細胞または生物をRNAを含有する溶液に浸すことによって導入され得る。血管または血管外循環、血液またはリンパ系、および脳脊髄液は、RNAが導入され得る部位である。
【0410】
標的遺伝子を有する細胞は、生殖細胞系または体細胞系細胞、分化全能性または多能性細胞、分裂または非分裂細胞、実質または上皮細胞、不死化または形質転換細胞などに由来し得る。細胞は、ステム細胞または分化型細胞であり得る。分化される細胞型は、脂肪細胞、線維芽細胞、筋細胞、心筋細胞、内皮細胞、神経細胞、膠細胞、血液細胞、巨核球、リンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、白血球、顆粒球、ケラチン生成細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、肝細胞、および内分泌または外分泌腺の細胞を含む。
【0411】
特定の標的遺伝子および送達される二本鎖RNA材料の用量に応じて、このプロセスは、標的遺伝子の機能の部分的または完全な損失を提供することができる。標的とされる細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%またはそれ以上の低減または損失は例示的である。遺伝子発現の阻害とは、標的遺伝子からのタンパク質および/またはmRNA産物のレベルが存在しない(または観察可能な低減)ことを意味する。特異性とは、細胞の他の遺伝子に影響を顕在化することなく、標的遺伝子を阻害する能力を意味する。阻害の結果は、細胞または生物の外見上の性質を試験することにより(以下の実施例で示させる)、あるいはRNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイでの遺伝子発現モニタリング、抗体結合、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウエスタンブロット法、放射免疫測定法(RIA)、その他の免疫測定法、および蛍光標識細胞分取(FACS)などの生化学的手法により確認することができる。
【0412】
細胞株または生物全体におけるRNA媒介阻害の場合、遺伝子の発現は、タンパク質の生成物が容易にアッセイすることができるレポーター遺伝子またっは薬物耐性遺伝子を使用することによって簡便にアッセイすることができる。このようなレポーター遺伝子は、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アルカリホスファターゼ(AP)、βガラクトシダーゼ(LacZ)、βグルクロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、ルシフェラーゼ(Luc)、ノパリンシンターゼ(NOS)、オクトピンシンターゼ(OCS)、およびそれらの誘導体を含む。アンピシリン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、メトトレキサート、ホスフィノトリシン、ピューロマイシン、およびテトラサイクリンに対する耐性をもたらす複数の選択可能なマーカーが利用できる。アッセイに応じて、遺伝子の発現量を定量することにより、本発明によって処理していない細胞と比較して、10%、33%、50%、90%、95%、99%を超える阻害の度合いを判定することを可能にする。注入物の用量が少なく、RNAi剤の投与後の時間が長いと、より少ない画分の細胞(例えば、標的細胞の少なくとも10%、20%、50%、75%、90%、または95%)で阻害が生じ得る。細胞中の遺伝子発現を量子化すると、標的mRNAの蓄積または標的タンパク質の翻訳のレベルで、同様の量の阻害を示し得る。一例として、阻害の効率は、細胞中の遺伝子産物の量を評価することによって決定することができ、mRNAは、阻害性二本鎖RNAに使用される領域の外側のヌクレオチド配列を有するハイブリダイゼーションプローブで検出してもよく、翻訳されたポリペプチドは、その領域のポリペプチド配列に対して上昇された抗体で検出してもよい。
【0413】
RNAは、細胞あたり少なくとも1コピーの送達を可能にする量で導入することができる。高用量(例えば、細胞あたり少なくとも5、10、100、500または1000コピー)の材料は、より効果的な阻害をもたらすことができ、低用量も特定の適用に有用であり得る。
【0414】
例示的な態様において、本発明のRNAi剤(例えば、ApoE標的配列を標的とするsiRNA)の有効性は、細胞、特に、神経細胞(例えば、線条体または皮質神経細胞のクローンライン(clonal line)および/または初代神経細胞)において、変異mRNA(例えば、ApoE mRNAおよび/またはApoEタンパク質の産生)を特異的に分解する能力について試験される。細胞ベースの検証アッセイにも適しているのは、他の容易にトランスフェクション可能な細胞、例えば、HeLa細胞またはCOS細胞である。細胞は、ヒトの野生型または変異型cDNA(例えば、ヒトの野生型または変異型ApoE cDNA)でトランスフェクトされる。標準的なsiRNA、修飾されたsiRNA、またはUループmRNAからsiRNAを生成できるベクターがコトランスフェクトされる。標的mRNA(例えば、ApoE mRNA)および/または標的タンパク質(例えば、ApoEタンパク質)における選択的な低減が測定される。標的mRNAまたはタンパク質の低減は、RNAi剤の非存在下、またはApoE mRNAを標的としないRNAi剤の存在下における標的mRNAまたはタンパク質のレベルと比較することができる。外因的に導入されたmRNAまたはタンパク質(または内因性のmRNAまたはタンパク質)は、比較の目的でアッセイすることができる。標準的なトランスフェクション技術にいくらか耐性があることが知られている神経細胞を利用する場合、受動的取り込みによってRNAi剤(例えば、siRNA)を導入することが望ましいことがある。
組換えアデノ随伴ウイルスおよびベクター
【0415】
特定の例示的な実施態様において、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)およびその関連するベクターを用いて、1つまたはそれ以上のsiRNAを細胞、例えば、神経細胞(例えば、脳細胞)へ送達することができる。AAVは、さまざまな細胞型に感染することができるが、感染効率は、カプシドタンパク質の配列によって決められる血清型によって異なる。いくつかのネイティブなAAVの血清型が同定されており、血清型1~9が組換えAAVに最もよく使用されている。AAV-2は最もよく研究され、発表されている血清型である。AAV-DJシステムには、血清型AAV-DJおよびAAV-DJ/8を含む。これらの血清型は、複数のAAV血清型のDNAシャッフリングによって作成され、さまざまな細胞や組織でインビトロ(AAV-DJ)およびインビボ(AAV-DJ/8)で形質導入効率が改善されたハイブリッドキャプシドを有するAAVを生成する。
【0416】
特定の実施態様において、広範な中枢神経系(CNS)の送達は、組換えアデノ随伴ウイルス7(RAAV7)、RAAV9およびrAAV10、または他の適切なRAAVの血管内送達によって達成することができる(Zhang et al. (2011) Mol. Ther. 19(8):1440-8. doi: 10.1038/mt.2011.98. Epub 2011 May 24).rAAVおよびその関連するベクターは、当該技術分野ではよく知られており、米国特許出願2014/0296486、2010/0186103、2008/0269149、2006/0078542、および2005/0220766に記載されており、これらの各出願はすべての目的のためにその全体が引用により本明細書に包含される。
【0417】
rAAVは、当該技術分野で知られているいずれかの適切な方法によって、組成物で対象に送達することができる。rAAVは、生理学的に適合する担体(すなわち、組成物中)に懸濁させることができ、対象、すなわち、ヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、モルモット、ハムスター、ニワトリ、シチメンチョウ、非ヒト霊長類(例えば、マカク)などの宿主動物に投与することができる。特定の実施態様において、宿主動物は非ヒトの宿主動物である。
【0418】
哺乳類対象への1つまたはそれ以上のrAAVの送達は、例えば、筋肉内注射または哺乳類対象の血流中への投与によって行うことができる。血流への投与は、静脈、動脈、またはその他の血管導管への注射によるものであり得る。特定の実施態様において、1つまたはそれ以上のrAAVは、外科分野でよく知られている技術である分離式肢灌流によって血流へ投与され、この方法は本質的に、当業者がrAAVビリオンの投与前に肢を全身循環から分離することを可能にする。米国特許6,177,403に記載されている分離式肢灌流技術のバリアントも、当業者により、分離された肢の脈管構造へのビリオンの投与し利用され、筋肉細胞または組織への形質導入を潜在的に向上させることができる。さらに、特定の例において、対象の中枢神経系(CNS)にビリオンを送達することが望ましい場合がある。「CNS」とは、脊椎動物の脳および脊髄のすべての細胞および組織を意味する。したがって、この用語には、神経細胞、膠細胞、星状膠細胞、脳脊髄液(CSF)、間質腔、骨、軟骨などが含まれますが、これらに限定されるものではない。組換えAAVは、針、カテーテルまたは関連するデバイスを用いて、定位的な注射などの当技術分野で知られている神経外科的な技術を用いて、例えば脳室領域、ならびに線条体(例えば線条体の尾状核または被殻)、脊髄および神経筋接合部、または小脳小葉に注射することにより、CNSまたは脳に直接送達することができる(例えば、Stein et al., J Virol 73:3424-3429, 1999; Davidson et al., PNAS 97:3428-3432, 2000; Davidson et al., Nat. Genet. 3:219-223, 1993; and Alisky and Davidson, Hum. Gene Ther. 11:2315-2329, 2000を参照のこと)。
【0419】
本発明の組成物は、rAAVを単独で、または1つまたはそれ以上の他のウイルス(例えば、1つまたはそれ以上の異なる導入遺伝子を有するコード化された第二のrAAV)と組み合わせて含み得る。特定の実施態様において、組成物は、それぞれ1つまたはそれ以上の異なる導入遺伝子を有する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の異なるrAAVを含む。
【0420】
rAAVの有効量とは、動物を標的感染させ、所望の組織を標的とするのに十分な量である。いくつかの実施態様において、rAAVの有効量は、安定な体細胞系トランスジェニック動物モデルを作製するのに十分な量である。この有効量は、主に対象の種、年齢、体重、健康状態、標的とされる組織などの因子に依存するため、動物や組織ごとに異なることがある。例えば、1つまたはそれ以上のrAAVの有効量は、一般に約109~1016ゲノムコピーを含む約1ml~約100mlの範囲の溶液である。いくつかのケースにおいて、約1011~1012 rAAVゲノムコピーの用量が適切である。特定の実施態様において、1012rAAVゲノムコピーは、心臓、肝臓、および膵臓の組織を標的とするのに有効である。いくつかのケースにおいて、安定なトランスジェニック動物は、rAAVの複数の用量によって生成される。
【0421】
いくつかの実施態様において、rAAV組成物は、特に高いrAAV濃度(例えば、約1013ゲノムコピー/mLまたはそれ以上)が存在する場合に、組成物中のAAV粒子の凝集を低減するように製剤化される。rAAVの凝集を低減する方法としては、例えば、界面活性剤の添加、pH調整、塩濃度の調整などの方法がよく知られている。(例えば、Wright et al. (2005) Molecular Therapy 12:171-178を参照のこと。その内容は引用により本明細書に包含される。)
【0422】
「組換えAAV(rAAV)ベクター」は、少なくとも、導入遺伝子およびその調節配列、ならびに5'および3'AAV逆位末端配列(ITR)を含む。この組み換えAAVベクターがキャプシドタンパクにパッケージされ、選択された標的細胞に送達される。いくつかの実施態様において、導入遺伝子は、目的のポリペプチド、タンパク質、機能的RNA分子(例えば、siRNA)または他の遺伝子産物をコードする、ベクター配列と異種の核酸配列である。核酸コード配列は、標的組織の細胞における導入遺伝子の転写、翻訳、および/または発現を可能にする方法で、調節成分に作動可能に結合する。
【0423】
ベクターのAAV配列は、典型的にはシス作用性5'および3'逆位末端(ITR)配列を含む(例えば、B. J. Carter, in "Handbook of Parvoviruses", ed., P. Tijsser, CRC Press, pp. 155 168 (1990)を参照のこと)。ITR配列は、通常、約145塩基対長である。特定の実施態様において、実質的にはITRをコードする配列全体が分子中に使用されるが、これらの配列のある程度のわずかな修飾は許容される。これらのITR配列を修飾する能力は当業者の範囲内である(例えば、Sambrook et al, "Molecular Cloning. A Laboratory Manual", 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1989); and K. Fisher et al., J Virol., 70:520 532 (1996)の文章を参照のこと)。本発明で使用されるそのような分子の例は、導入遺伝子を含む「シス作用性」プラスミドであり、選択された導入遺伝子配列および関連する調節エレメントは、5'および3'AAV ITR配列に隣接する。AAV ITR配列は、本明細書にさらに記載されている哺乳類AAV型を含む、知られているいずれかのAAVから得ることができる。
VIII. 処置方法
【0424】
一局面において、本発明は、コレステロール輸送の異常によって全体的または部分的に引き起こされる疾患または障害の危険性がある(またはその影響を受けやすい)対象を処置する予防的および治療的方法を提供する。一実施態様において、中枢神経系(CNS)におけるApoEレベルが神経変性の進行を予測することが見出されているような疾患または障害である。別の実施態様において、疾患または障害は、ポリグルタミン障害である。好ましい実施態様において、CNSにおけるApoEの低減が、ADやALSなどの神経変性疾患に見られる臨床症状を低減する疾患または障害の1つである。
【0425】
本明細書で使用される「処置」または「処置する」とは、治療剤(例えば、RNA剤またはそれをコードするベクターもしくは導入遺伝子)を患者に適用または投与すること、または、疾患もしくは障害を有するか、疾患もしくは障害の症状を有するか、疾患または障害の素因がある患者から分離した組織や細胞株に、疾患または障害、疾患または障害の症状、または疾患の素因を治す、治癒する、軽減する、緩和する、変化させる、治療する、寛解させる(ameliorate)、改善するまたは影響する目的で治療剤を適用または投与することと定義されている。
【0426】
一局面において、本発明は、対象において、治療剤(例えば、RNAi剤またはそれをコードするベクターまたは導入遺伝子)を該患者に投与することによって上記の疾患または障害を予防する方法を提供する。疾患の危険性がある対象は、例えば、本明細書に記載の診断または予測アッセイのいずれかまたは組み合わせによって特定することができる。予防剤の投与は、疾患または障害の特徴の症状が現れる前に行い、それにより、疾患または障害が予防されるか、あるいはその進行を遅らせることができる。
【0427】
本発明の別の態様は、患者を治療的に、すなわち、疾患または障害の発症を変化させる方法に関するものである。例示的な実施態様において、本発明の修飾方法は、ApoEを発現するCNS細胞に、遺伝子の配列特異的干渉が達成されるように、遺伝子(例えば、SEQ ID NO:1、2または3)中の標的配列に特異的な治療剤(例えば、RNAi剤またはそれをコードするベクターもしくは導入遺伝子)を接触させることを含む。これらの方法は、インビトロ(例えば、薬剤を用いて細胞を培養することによって)、または代わりにインビボ(例えば、対象に薬剤を投与することによって)で行うことができる。
【0428】
処置の予防的方法および治療的方法の両方に関して、そのような処置は、ファーマコジェノミックス分野から得られる知識に基づいて、特別に目的に合わせるか、変動してもよい。本明細書において使用される「ファーマコゲノミクス」とは、遺伝子配列、統計遺伝学、遺伝子発現解析などのゲノミクス技術を、臨床開発中の薬物や市販されている薬物に適用することを意味する。より具体的には、この用語は、患者の遺伝子が薬物に対する反応をどのように決定するか(例えば、患者の「薬物反応表現型」または「薬物反応遺伝子型」)を研究することを意味する。したがって、本発明の別の態様は、本発明の標的遺伝子分子またはその個体の薬物応答遺伝子型に応じた標的遺伝子修飾物質のいずれかを用いて、個体の予防的または治療的処置を目的に合わせる(tailoring)方法を提供する。ファーマコゲノミクスにより、臨床医または医師は、予防的または治療的な処置を、その処置から最も恩恵を受ける患者に対して行うことができ、また、薬物に関連する毒性の副作用経験する患者の処置を回避することができる。
【0429】
治療剤は、適切な動物モデルにおいて試験することができる。例えば、本明細書に記載のRNAi剤(またはそれをコードする発現ベクターもしくは導入遺伝子)を動物モデルに使用して、この薬剤による処置の有効性、毒性、または副作用を特定することができる。あるいは、ある治療剤を動物モデルに使用して、そのような薬剤の作用メカニズムを特定することができる。例えば、ある薬剤を動物モデルに使用して、その薬剤による処置の有効性、毒性、または副作用を特定することができる。あるいは、ある薬剤を動物モデルに使用して、その薬剤の作用メカニズムを特定することができる。
【0430】
本発明のRNAサイレンシング剤を含む医薬組成物は、神経変性疾患を有するか、またはそれを発症する危険性があると診断された患者に投与することができる。一実施態様において、患者は神経疾患を有すると診断されており、その他の点では一般的に健康である。例えば、患者は病状末期ではなく、診断後少なくとも2年、3年、5年、またはそれ以上生きられる可能性がある。患者を、診断後すぐに処置してもよく、患者がパーキンソン病患者における運動変動や異常運動など、より衰弱した症状を経験するまで処置を遅らせてもよい。別の実施態様において、患者は疾患の進行した段階に達していない。
【0431】
この態様の実施態様において、予防的および治療的方法は、CNSにおけるApoEの低減により異常アミロイド蓄積を低減する神経変性疾患または障害を処置または管理することを対象とする。非限定的な例において、RNAサイレンシング剤は、アルツハイマー病、脳アミロイド血管症、または軽度から中等度の認知機能障害などのアミロイド関連神経変性疾患または障害を有するか、またはそれを発症する危険性があると診断された患者に投与される、本明細書の第VIセクションおよび第VIIセクションに記載の分岐状オリゴヌクレオチドである。患者を、診断後に処置してもよく、疾患のさまざまな段階で処置してもよく、あるいは遺伝形質、家族歴または他の要因によって神経変性疾患または障害の危険性がある場合に予防措置として処置してもよい。効果的な投与量や投与スケジュールは、効果的な処置を表示する測定基準、例えば、治療開始後に検出される認知低下、脳におけるβアミロイド斑の形成、および神経変性の症状の阻害、遅延、予防、低減の程度によって確立し、監視することができる。
【0432】
一実施態様において、患者は、アルツハイマー病を有するか、またはそれを発症する危険性があると診断されており、その他の点では健康である。処置は、Di-siRNAApoE、すなわち、15~35塩基の長に2つの核酸をそれぞれ含む分岐状オリゴヌクレオチドを投与することによって行われる。各核酸は、ApoE mRNAの一部、例えば、表1、表2、または表7に記載の標的配列の1つまたはそれ以上に実質的に相補的な領域を特徴とする。2つの核酸は、例えば、リンカー、スペーサー、または分岐点によって互いに結合する。各核酸は、独立して、一本鎖(ss)RNAまたは二本鎖(ds)RNAであり得る。例えば、各核酸は、独立して、アンチセンス分子またはギャップマーであり得る。
【0433】
神経細胞への取り込みを向上させるように修飾されたRNAサイレンシング剤は、体重1kgあたり約1.4mg未満、または体重1kgあたり10、5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001、0.00005または0.00001mg未満、かつ体重1kgあたり200nmole未満のRNA剤(例えば、約4.4×1016コピー)、または体重1kgあたり1500、750、300、150、75、15、7.5、1.5、0.75、0.15、0.075、0.015、0.0075、0.0015、0.00075、0.00015nmole未満のRNAサイレンシング剤の単位用量で投与することができる。単位用量は、例えば、注射(例えば、静脈内または筋肉内、髄腔内、または脳内に直接)、吸入量、または局所適用によって投与することができる。特に好ましい投与量は、体重1kgあたり2、1、または0.1mg未満である。
【0434】
RNAサイレンシング剤の臓器への直接な(例えば、脳への直接な)送達は、臓器あたり約0.00001mg~約3mg、または好ましくは、臓器あたり約0.0001~0.001mg、臓器あたり約0.03~3.0mg、眼あたり約0.1~3.0mg、または臓器あたり約0.3~3.0mgのオーダーでの投与量であり得る。別の実施態様において、投与量は、臓器あたり約10mg~約50mgのオーダー、または好ましくは、臓器あたり約20mg~約30mgのオーダーでのものであり得る。投与量は、神経変性疾患または障害、例えば、ADまたはALSを処置または予防するのに有効な量であり得る。一実施態様において、単位用量は1日1回よりも少ない頻度、例えば、2、4、8、または30日ごとよりも少ない頻度で投与される。別の実施態様において、単位用量は、頻度を持って投与されない(例えば、定期的な頻度ではない)。例えば、単位用量は、1回だけ投与されてもよい。一実施態様において、有効量は、他の伝統的な治療モダリティーで投与される。
【0435】
一実施態様において、対象は、RNAサイレンシング剤の初期用量、および11つまたはそれ以上の維持用量を投与される。維持量は、一般的に初期投与量よりも少なく、例えば初期投与量の半分少ない。維持レジメンは、1日あたり体重1kgあたり0.01g~10mg、例えば、1日あたり体重1kgあたり10、1、0.1、0.01、0.001、または0.00001mgの範囲の用量で対象を処置することを含むことができる。維持量は、好ましくは5日、10日、30日ごとに1回以下の頻度で投与される。さらに、処置レジメンは、特定の疾患の性質、その重症度、および患者の全体的な状態に応じて変化する期間にわたって継続することができる。好ましい実施態様において、投与量は、1日あたり1回以下、例えば、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上の時間あたり1回以下、例えば、5日または8日ごとに1回以下の頻度で投与されてもよい。治療後は、患者の状態の変化や、病状の症状の緩和をモニタリングすることができる。化合物の投与量は、現在の投与量レベルでは患者が有意に反応しない場合には増量するか、病状の症状の緩和が観察された場合、病状が除去された場合、または望ましくない副作用が観察された場合には減量することができる。
【0436】
有効量は、特定の状況下で所望される、または適切と考えられるように、単回用量または2つまたはそれ以上の用量で投与され得る。繰り返しまたは頻繁な注入を容易にすることが望まれる場合、送達デバイス、例えば、ポンプ、半永久的ステント(例えば、静脈内、腹腔内、嚢内(intracisternal)または関節内(intracapsular))、またはリザーバーの移植が望ましい。一実施態様において、医薬組成物は、複数のRNAサイレンシング剤種を含む。別の実施態様において、RNAサイレンシング剤種は、天然に存在する標的配列に関して、別の種と非オーバーラップの隣接してない配列を有する。別の実施態様において、複数のRNAサイレンシング剤種は、天然に存在する異なる標的遺伝子に特異的である。 別の実施態様において、RNAサイレンシング剤は、対立遺伝子特異的である。別の実施態様において、複数のRNAサイレンシング剤種は、2つまたはそれ以上の標的配列(例えば、2、3、4、5、6、またはそれ以上の標的配列)を標的とする。
【0437】
処置が成功した後、病状の再発を防ぐために患者に維持療法を受けさせることが望ましい場合があり、その場合、本発明の化合物は体重1kgあたり0.01g~100gの範囲の維持量で投与される(米国特許6,107,094号を参照のこと)。
【0438】
RNAサイレンシング剤組成物の濃度は、ヒトにおいて障害を処置または予防するのに有効であるか、または生理学的な状態を調節するのに十分な量である。投与されるRNAサイレンシング剤の濃度または量は、この薬剤に対して決定されたパラメータおよび投与方法、例えば、鼻腔、頬、または肺に依存する。例えば、経鼻製剤では、鼻腔への刺激や熱傷を回避するために、いくつかの成分をより低い濃度で使用する傾向がある。適切な経鼻 製剤を提供するために、経口製剤を10~100倍に希釈することが望ましい場合もある。
【0439】
特定の要因は、対象を効果的に処置するために必要な投与量に影響を与える可能性があり、これには、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の一般的な健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患が含まれるが、これらに限定されない。さらに、治療有効量のRNAサイレンシング剤による対象の処置は、単回処置を含むことができ、好ましくは、一連の処置を含むことができる。処置のためのRNAサイレンシング剤の有効投与量は、特定の処置の過程にわたってで増加または低減し得ることもまた理解されるであろう。投与量の変化は、本明細書に記載の診断用アッセイの結果から、結果的に明らかになることがある。例えば、RNAサイレンシング剤組成物を投与した後、対象をモニタリングしてもよい。モニタリングからの情報に基づいて、RNAサイレンシング剤組成物の追加量を投与することができる。
【0440】
投与は、処置される疾患の重症度や反応性に依存し、処置のコースは数日から数ヶ月、または治癒させるか病状の低減が達成されるまで継続するものである。最適な投与スケジュールは、患者の体内での薬物蓄積の測定値から計算することができる。当業者であれば、最適な投薬量、投薬方法、繰り返し回数を容易に決定することができる。最適な投与量は、個々の化合物の相対的な効力に依存することがあるが、一般的には、インビトロおよびインビボの動物モデルで有効であることが見出されたEC50に基づいて推定することができる。いくつかの実施態様において、動物モデルは、ヒト遺伝子、例えば、標的RNA、例えば、神経細胞中で発現するRNAを産生する遺伝子を発現するトランスジェニック動物を含む。トランスジェニック動物は、対応する内在性RNAが欠損していてもよい。別の実施態様において、試験するための組成物は、動物モデルにおける標的RNAとヒトにおける標的RNAとの間で保存されている配列に、少なくとも内部領域で相補的なRNAサイレンシング剤を含む。
IX.医薬組成物および投与方法
【0441】
本発明は、以下に記載の予防的および/または治療的処置のための上述の薬剤の使用に関するものである。従って、本発明の修飾物質(例えば、RNAi剤)は、投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。このような組成物は、典型的には、核酸分子、タンパク質、抗体、または修飾化合物および薬学的に許容できる担体を含む。本明細書において使用されるとき、「薬学的に許容できる担体」という言葉は、薬学的投与に親和性がある、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などを含むことを意図している。薬学的に活性な物質にこのような媒質や薬剤を使用することは、当技術分野ではよく知られている。従来の媒質または薬剤が活性化合物と親和性がない場合を除き、本組成物での使用が考えられる。補助的な活性化合物もまた、組成物に組み込むことができる。
【0442】
本発明の医薬組成物は、その意図する投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例としては、非経腸投与、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、腹腔内投与、筋肉内投与、経口(例えば、吸入)投与、経皮(局所)投与、および経粘膜投与が挙げられる。特定の例示的な実施態様において、本発明の医薬組成物は、胸骨内(IS)投与、脳室内(ICV)投与、および髄腔内(IT)投与(例えば、ポンプ、輸液などを介して)を含むがこれらに限定されない投与経路によって脳脊髄液(CSF)に送達される。非経腸、皮内、皮下適用に使用される溶液または懸濁液には、以下の成分が含まれる:無菌希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水(saline solution)、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベ;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸;緩衝液、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および等張化剤(agents for the adjustment of tonicity)、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。非経腸調剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブルシリンジまたは複数回投与バイアルに封入することができる。
【0443】
注射可能な使用に適した医薬組成物には、無菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および無菌の注射可能な溶液または分散液の即時調製のための無菌粉末が含まれる。静脈内投与投与、IS投与、ICV投与およびIT投与ついて、適当な担体は、生理的食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF, Parsippany, N.J.)、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)を含む。すべての場合において、組成物は無菌、かつ容易な注射通過する程度の流動性であるべきである。製造および保管の条件下で安定すべきであり、細菌や真菌類などの微生物の汚染作用から保護されているべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液状ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であてっもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散の場合は必要な粒子径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどのさまざまな抗菌剤および抗真菌剤によって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0444】
無菌の注射可能溶液は、必要に応じて、上に列挙されている成分の1つまたは組み合わせを含む適切な溶媒に必要な量の活性化合物を組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。一般的には、分散液は、基本的な分散媒および上に列挙されている中から必要な他の成分を含有する無菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、有効成分の粉末に加えて、前にsの滅菌濾過された溶液からいずれかの追加の所望の成分が得られる。
【0445】
経口組成物は、一般的に不活性希釈剤または食用担体を含む。これらは、ゼラチンカプセルに封入するか、錠剤に圧縮することができる。経口治療的投与の目的で、活性化合物を賦形剤と一緒に組み込んで、錠剤、トローチ、またはカプセルの形で使用することができる。経口組成物はまた、うがい薬として使用するための流体担体を用いて調製することができ、ここで、流体担体中の化合物は経口的に適用され、唾液を吐き、吐き出されるか、または飲み込まれる。薬学的に適合する結合剤、および/またはアジュバント材料を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下のいずれかの成分、または類似の性質の化合物を含有することができる:結合剤、例えば、微結晶セルロース、トラガカントガムまてゃゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンまたはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、Primogel、またはトウモロコシデンプン;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロート(Sterote);流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロースまたはサッカリン;または香料添加剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料(orange flavoring)。
【0446】
吸入による投与の場合、化合物は、適切な噴射剤、例えば二酸化炭素のようなガスまたはネブライザーを含油する加圧容器またはディスペンサーからのスプレーの形で提供される。
【0447】
全身投与は、経粘膜または経皮の手段によっても可能である。経粘膜または経皮投与の場合は、浸透させるべきバリアーに適した浸透剤を製剤中に使用する。このような浸透剤は、当該技術分野では一般的に知られており、例えば経粘膜投与用としては、洗剤、胆汁酸塩、フシジン酸誘導体などが挙げられる。経粘膜投与は、鼻腔用スプレーまたは座薬を用いて達成することができる。経皮投与の場合、活性化合物は、一般に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル、クリームに製剤化される。
【0448】
化合物は、直腸投与のための坐薬(例えば、カカオバターや他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を用いて)または保持浣腸の形で調製することもできる。
【0449】
RNAサイレンシング剤は、McCaffrey et al. (2002), Nature, 418(6893), 38-9 (hydrodynamic transfection); Xia et al. (2002), Nature Biotechnol., 20(10), 1006-10 (viral-mediated delivery); or Putnam (1996), Am. J. Health Syst. Pharm. 53(2), 151-160, erratum at Am. J. Health Syst. Pharm. 53(3), 325 (1996) に記載されている方法を含むが、これらに限定されない当技術分野で知られている方法を用いてトランスフェクションまたは感染によって投与することもできる。
【0450】
RNAサイレンシング剤は、DNAワクチンなどの核酸剤の投与に適したいずれかの方法によって投与することもできる。これらの方法には、遺伝子銃、生物学注射器、スキンパッチならびに米国特許第6,194,389号に開示されているマイクロ粒子DNAワクチン技術などの無針法や、米国特許6,168,587に開示されている粉末状ワクチンを用いた哺乳類の経皮無針ワクチン接種を含む。さらに、特にHamajima et al. (1998), Clin. Immunol. Immunopathol., 88(2), 205-10に記載されているように、鼻腔内投与も可能である。また、リポソーム(例えば、米国特許6,472,375に記載されているような)やマイクロエンカプシュレーションも使用できる。生分解性の標的化可能なマイクロ粒子送達システムも使用することができる(例えば、米国特許6,471,996号に記載されているように)。
【0451】
一実施態様において、活性化合物は、移植やマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤など、体内からの急速な排泄に対して化合物を保護する担体とともに調製される。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用することができる。このような製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。また、この材料は、Alza CorporationやNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に得ることができる。また、リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞を標的とするリポソームを含む)も、薬学的に許容できる担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許4,522,811に記載されているような、当業者に知られている方法によって調製することができる。
【0452】
経口または非経腸の組成物を投与単位の形態で製剤化することは、投与の容易さおよび投与量の均一性のために特に有利である。本明細書において使用される投与単位形態は、処置される対象の単一投与量として適した物理的に別個の単位を意味し、各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の投与単位形態の仕様は、活性化合物の固有の特性および達成される特定の治療効果、ならびに個人の処置のためにそのような活性化合物を配合する技術に固有の制限によって決定され、直接依存している。
【0453】
そのような化合物の毒性および治療効果は、細胞培養または実験動物における標準的な製薬手順によって決定して、例えば、LD50(群(population)の50%に対する致死量)およびED50(群の50%に治療上有効な用量)を決定することができる。毒作用と治療効果の間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50の比で表すことができる。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物を使用してもよいが、感染していない細胞への潜在的な損傷を最小限に抑え、それによって副作用を減らすように、影響を受ける組織の部位にそのような化合物を標的とする送達システムを設計するように注意すべきである。
【0454】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、ヒトに使用するための投与量の範囲を策定する際に使用することができる。このような化合物の投与量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性のないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量はこの範囲内で、使用される剤形や使用される投与経路に依存する。本発明の方法で使用されるいずれかの化合物について、治療的有効な用量は、最初に細胞培養アッセイから算定することができる。用量は、動物モデルにおいて、細胞培養で決定したEC50(すなわち、半減期反応を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように策定することができる。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0455】
医薬組成物は、任意の使用説明書とともに、容器、パック、またはディスペンサーに含めることができる。
【0456】
本明細書で定義されるように、治療有効量のRNAサイレンシング剤(すなわち、有効な投与量)は、選択されるRNAサイレンシング剤に依存する。例えば、shRNAをコードするプラスミドを選択した場合、約1μg~1000mgの範囲の単回投与量で投与してもよく、いくつかの実施態様において、10μg、30μg、100μgまたは1000μgて投与してもよい。いくつかの実施態様において、1~5gの組成物を投与することができる。組成物は、1日に1回またはそれ以上から1週間に1回またはそれ以上;1日おきに1回を含めて、1回投与することができる。当業者であれば、対象を効果的に処置するために必要な投与量やタイミングには、疾患または障害の重症度、以前の処置、対象の一般的な健康状態および/または年齢、存在する他の疾患を含む特定の要因が影響することを理解できるであろう。さらに、治療有効量のタンパク質、ポリペプチド、または抗体を有する対象の処置は、単一処置を含むことができ、好ましくは、一連の治療を含むことができる。
【0457】
本発明の核酸分子は、発現コンストラクト、例えば、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、発現カセット、またはプラスミドウイルスベクターに、例えば、上記のXia et al., (2002)に記載されている方法を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている方法を用いて挿入することができる。発現コンストラクトは、例えば、吸入、経口、静脈内注射、局所投与(米国特許5,328,470を参照のこと)、または定位的な注射(例えば、Chen et al. (1994), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 3054-3057を参照のこと)によって、対象に投与することができる。送達ベクターの医薬製剤は、許容できる希釈剤中のベクターを含むことができ、または送達ビヒクルが埋め込まれた徐放性マトリックスを含むことができる。あるいは、完全な送達ベクターが組換え細胞、例えばレトロウイルスベクターからそのまま生成できる場合、医薬製剤は、遺伝子送達システムを生成する1つまたはそれ以上の細胞を含むことができる。
【0458】
本発明の核酸分子はまた、小ヘアピンRNA(shRNA)、およびshRNAを発現するように操作された発現コンストラクトも含むことができる。shRNAの転写は、ポリメラーゼIII(pol III)プロモーターで開始され、4-5-チミンの転写終結部位の2位で終結すると考えられている。発現したshRNAは、3'UU-突出部を有するステムループ構造に折り畳まれ、その後、これらのshRNAの末端が処理されて、shRNAを約21個のヌクレオチドのsiRNA様分子に転換させると考えられている。Brummelkamp et al. (2002), Science, 296, 550-553; Lee et al, (2002). supra; Miyagishi and Taira (2002), Nature Biotechnol., 20, 497-500; Paddison et al. (2002), supra; Paul (2002), supra; Sui (2002) supra; Yu et al. (2002), supra.
【0459】
発現コンストラクトは、適切な発現システムにおける使用に適したいずれかのコンストラクトであってよく、当該技術分野で知られているレトロウイルスベクター、線形発現カセット、プラスミドおよびウイルスまたはウイルス由来のベクターを含むが、これらに限定されない。このような発現コンストラクトは、1つまたはそれ以上の誘導性プロモーター、RNA Pol IIIプロモーターシステム、例えば、U6 snRNAプロモーターまたはH1 RNAポリメラーゼIIIプロモーター、または当該技術分野で知られている他のプロモーターを含むことができる。このコンストラクトは、siRNAの一方または両方の鎖を含むことができる。両方の鎖を発現する発現コンストラクトは、両方の鎖を連結するループ構造も含むことができ、または各鎖は、同じコンストラクト内の別々のプロモーターから別々に転写され得る。各鎖はまた、別々の発現コンストラクトから転写され得る。Tuschl (2002), Supra。
【0460】
特定の例示的な実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤を含む組成物は、さまざまな経路によって対象の神経系に送達することができる。例示的な経路としては、髄腔内送達、実質部(例えば、脳内)送達、経鼻送達、眼内送達が挙げられる。組成物は、全身的に、例えば、静脈内、皮下または筋肉内注射によって送達することもでき、これは、RNAサイレンシング剤を末梢神経細胞に送達するのに特に有用である。好ましい送達経路は、脳、例えば、脳室もしくは脳の視床下部に、または脳の側方領域もしくは背側領域に直接送達することである。本発明の神経細胞送達のためのRNAサイレンシング剤は、投与に適した医薬組成物に組み込まれ得る。
【0461】
例えば、組成物は、1種またはそれ以上の種のRNAサイレンシング剤、および薬学的に許容できる担体を含むことができる。本発明の医薬組成物は、局所を所望するか、全身処置を所望するか、そして、処置される領域に応じて、いくつかの方法で投与することができる。投与は、局所(眼内、経鼻、経皮を含む)投与、経口投与または非経腸投与であってもよい。非経腸投与には、静脈内点滴、皮下注射、腹腔内注射または筋肉内注射、髄腔内投与、または脳室内(例えば、脳室内)投与が含まれる。特定の例示的な実施態様において、本発明のRNAサイレンシング剤は、本明細書に記載のさまざまな適切な組成物および方法を用いて、血液脳関門(BBB)に通過して送達される。
【0462】
送達経路は、患者の障害に依存することができる。例えば、神経変性疾患と診断された対象に、本発明の抗ApoE RNAサイレンシング剤を脳内(例えば、淡蒼球または基底核の線条体、および線条体の中有棘神経細胞(medium spiny neuron)付近)に直接投与することができる。本発明のRNAサイレンシング剤に加えて、患者に、第二の療法、例えば、緩和療法(palliative therapy)および/または疾患特異的治療法を投与することができる。副次的療法としては、(例えば、症状を軽減する)対症療法、(例えば、疾患の進行を遅らせるか、停止させるための)神経保護療法、(例えば、疾患の段階を元に戻す修復(restorative)療法などがある。他の療法としては、心理療法、理学療法、言語療法、伝達や記憶の補助、社会的支援サービス、事指導支援がある。
【0463】
RNAサイレンシング剤は、脳の神経細胞に送達され得る。組成物が血液脳関門を通過する通路を必要としない送達方法が利用され得る。例えば、RNAサイレンシング剤を含有する医薬組成物は、疾患の影響を受けた細胞を含有する領域内へ直接注射することによって患者に送達され得る。例えば、医薬組成物は、脳内へ直接注射することによって送達され得る。注射は、脳の特定の領域(例えば、黒質、皮質、海馬、線条体、または淡蒼球)内への定位的な注射によって行われ得る。RNAサイレンシング剤は、中枢神経系の複数の領域内(例えば、脳の複数の領域、および/または脊髄内)へ送達され得る。RNAサイレンシング剤は、脳の汎発性領域内に送達(例えば、脳の皮質への汎発性送達(diffuse delivery))され得る。
【0464】
一実施態様において、RNAサイレンシング剤は、組織、例えば、脳、例えば、脳の黒質、皮質、海馬、線条体または淡蒼球に移植されている一端を有するカニューレまたは他の送達装置によって送達され得る。カニューレは、RNAサイレンシング剤のリザーバーに連結されていてもよい。流れまたは送達は、ポンプ、例えば、浸透圧ポンプまたはミニポンプ、例えば、アルゼットポンプ(Durect, Cupertino, CA)が媒介し得る。一実施態様において、ポンプおよびリザーバーは、組織から離れた領域、例えば、腹部に移植され、送達は、ポンプまたはリザーバーから放出部位につながる導管によって効果的に行われる。脳への送達のための装置は、例えば、米国特許6,093,180および5,814,014に記載されている。
【0465】
本発明のRNAサイレンシング剤は、血液脳関門を横断することができるように、さらに修飾されてもよい。例えば、RNAサイレンシング剤は、薬剤が関門を横断することを可能にする分子にコンジュゲートされてもよい。このような修飾RNAサイレンシング剤は、いずれかの所望の方法、例えば、脳室内もしくは筋肉内注射、または肺への送達などによって投与されてもよい。
【0466】
特定の実施態様において、エキソソームは、本発明のRNAサイレンシング剤の送達に使用される。エキソソームは、BBBを通過し、全身注射後にsiRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、化学療法剤およびタンパク質を神経細胞に特異的に送達することができる。(Alvarez-Erviti L, Seow Y, Yin H, Betts C, Lakhal S, Wood MJ. (2011). Delivery of siRNA to the mouse brain by systemic injection of targeted exosomes. Nat Biotechnol. 2011 Apr;29(4):341-5. doi: 10.1038/nbt.1807; El-Andaloussi S, Lee Y, Lakhal-Littleton S, Li J, Seow Y, Gardiner C, Alvarez-Erviti L, Sargent IL, Wood MJ.(2011). Exosome-mediated delivery of siRNA in vitro and in vivo. Nat Protoc. 2012 Dec;7(12):2112-26. doi: 10.1038/nprot.2012.131; EL Andaloussi S, Mager I, Breakefield XO, Wood MJ. (2013). Extracellular vesicles: biology and emerging therapeutic opportunities. Nat Rev Drug Discov. 2013 May;12(5):347-57. doi: 10.1038/nrd3978; El Andaloussi S, Lakhal S, Mager I, Wood MJ. (2013). Exosomes for targeted siRNA delivery across biological barriers. Adv Drug Deliv Rev. 2013 Mar;65(3):391-7. doi: 10.1016/j.addr.2012.08.008を参照のこと)。
【0467】
特定の実施態様において、1つまたはそれ以上の親油性分子を用いて、本発明のRNAサイレンシング剤をBBBを通過してを送達できるようにする(Alvarez-Ervit (2011))。その後、RNAサイレンシング剤は、例えば、親油性偽装の酵素分解によって活性化され、薬剤をその活性型に放出するであろう。
【0468】
特定の実施態様において、1つまたはそれ以上の受容体媒介性の透過性化合物を用いてBBBの透過性を高めて、本発明のRNAサイレンシング剤の送達を可能にすることができる。これらの薬物は、血液中の浸透圧を上昇させ、内皮細胞間のタイトジャンクションを緩めることによって、一時的にBBBの透過性を高める((El-Andaloussi (2012))。タイトジャンクションを緩めることによって、RNAサイレンシング剤の正常な静脈内注射が可能になる。
【0469】
特定の実施態様において、ナノ粒子ベースの送達システムは、本発明のRNAサイレンシング剤をBBBを通過して送達するのに使用される。本明細書において使用されるとき、「ナノ粒子」とは、薬物または遺伝子担体として広く研究されてきた、典型的には固体で生分解性のコロイド系であるポリマーナノ粒子を意味する。(S. P. Egusquiaguirre, M. Igartua, R. M. Hernandez, and J. L. Pedraz, “Nanoparticle delivery systems for cancer therapy: advances in clinical and preclinical research,” Clinical and Translational Oncology, vol. 14, no. 2, pp. 83-93, 2012).ポリマーナノ粒子は、天然ポリマーおよび合成ポリマーの2つに大別される。siRNA送達のための天然ポリマーは、シクロデキストリン、キトサン、およびアテロコラーゲンを含むが、これらに限定されるものではない。(Y. Wang, Z. Li, Y. Han, L. H. Liang, and A. Ji, “Nanoparticle-based delivery system for application of siRNA in vivo,” Current Drug Metabolism, vol. 11, no. 2, pp. 182-196, 2010).合成ポリマーは、集中的に研究されてきたポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(dl-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、およびデンドリマーを含むが、これらに限定されるものではない。(X. Yuan, S. Naguib, and Z. Wu, “Recent advances of siRNA delivery by nanoparticles,” Expert Opinion on Drug Delivery, vol. 8, no. 4, pp. 521-536, 2011).ナノ粒子およびその他の適当な送達ステムのレビューについては、Jong-Min Lee, Tae-Jong Yoon, and Young-Seok Cho, “Recent Developments in Nanoparticle-Based siRNA Delivery for Cancer Therapy,” BioMed Research International, vol. 2013, Article ID 782041, 10 pages, 2013. doi:10.1155/2013/782041(その全体が引用により包含される)を参照のこと。
【0470】
本発明のRNAサイレンシング剤は、網膜障害、例えば、網膜症を処置するためなどに、眼に投与され得る。例えば、医薬組成物は、眼の表面またはその近くの組織、例えば、まぶたの内側に適用され得る。それらは、例えば、スプレーで、滴下で、洗眼剤として、または軟膏として局所的に適用され得る。軟膏または滴下可能な液体は、アプリケーターまたは点眼器など、当該技術分野で知られている眼送達システムによって送達され得る。このような組成物は、ムコミメティック、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリ(ビニルアルコール)、防腐剤、例えば、ソルビン酸、EDTAまたは塩化ベンジルクロニウム、および通常の量の希釈剤および/または担体も含むことができる。医薬組成物は、眼の内部に投与され得、選択された領域または構造にそれを導入することができる針または他の送達装置によって導入され得る。RNAサイレンシング剤を含有する組成物はまた、眼用パッチを介して適用され得る。
【0471】
一般的には、本発明のRNAサイレンシング剤は、いずれかの適当な方法によって投与され得る。本明細書において使用されるとき、局所送達とは、眼、粘膜、体腔の表面、または体内のいずれかの表面を含む、身体のいずれかの表面にRNAサイレンシング剤を直接適用することを意味することができる。局所投与のための製剤は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴剤、スプレー、および液体を含み得る。従来の医薬担体、水性、粉末または油性の基剤、増粘剤などが必要または望ましいことがある。局所投与は、RNAサイレンシング剤を対象の表皮もしくは真皮、その特定の層、またはその下の組織に選択的に送達する手段としても使用され得る。
【0472】
髄腔内または脳室内(例えば、脳室内)投与のための組成物は、緩衝液、希釈剤および他の適切な添加物を含有することもできる無菌水溶液を含み得る。髄腔内または脳室内投与のための組成物は、好ましくは、トランスフェクション試薬、または、例えばRNAサイレンシング剤に結合された親油性部分以外の追加の親油性部分を含まない。
【0473】
非経腸投与のための製剤は、緩衝液、希釈剤および他の適当な添加物を含有することもできる無菌水溶液を含み得る。脳室内注射は、例えば、リザーバーに結合された脳室内カテーテルによって容易に行い得る。静脈内で使用する場合は、溶質の総濃度を制御して、調剤を等張にするべきである。
【0474】
本発明のRNAサイレンシング剤は、肺送達によって対象に投与され得る。肺送達組成物は、分散液の吸入によって送達され得、それにより、分散液中の組成物が肺胞領域を介して直接血液循環に容易に吸収され得る肺に到達する。肺送達は、全身送達、肺の疾患を処置するための局所的送達の両方に有効である。一実施態様において、肺送達によって投与されるRNAサイレンシング剤は、血液脳関門を横断することができるように修飾されている。
【0475】
肺送達は、噴霧化、エアロゾル化、ミセルラーおよび乾燥粉末ベースの製剤の使用を含む、さまざまなアプローチによって達成することができる。送達は、液体ネブライザー、エアロゾルベースの吸入器、乾燥粉末分散器を用いて達成することができる。定量装置(Metered-dose device)が好ましい。アトマイザーまたは吸入器を使用する利点の1つは、装置が自給式であるため、汚染の可能性が最小限に抑えられることである。例えば、乾燥粉末分散装置は、乾燥粉末として容易に製剤化され得る薬物を送達する。RNAサイレンシング剤組成物は、それ自体または適当な粉末担体と組み合わせて、凍結乾燥または噴霧乾燥された粉末として安定的に保存することができる。吸入するための組成物の送達は、タイマー、ドーズカウンター、時間測定装置、または時間インジケーターを含む投与タイミング要素が媒介され、これらは、装置に組み込まれると、エアロゾル医薬品の投与中に患者に対して用量追跡、コンプライアンスモニタリング、および/または用量トリガーを可能にする。
【0476】
担体として有用な医薬品賦形剤の種類としては、安定化剤、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、増量剤、例えば、炭水化物、アミノ酸およびポリペプチド;pH調整剤または緩衝液;塩、例えば、塩化ナトリウム、などが挙げられる。これらの担体は、結晶または非晶質の形態であってもよく、両者の混合物であってもよい。
【0477】
特に役立つ増量剤は、適合性炭水化物、ポリペプチド、アミノ酸またはこれらの組み合わせを含む。適当な炭水化物としては、単糖類、例えば、ガラクトース、D-マンノース、ソルボース、など;二糖類、例えば、ラクトース、トレハロース、など;シクロデキストリン、例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;および多糖類、例えば、ラフィノース、マルトデキストリン、デキストラン、など;アルジトール、例えば、マンニトール、キシリトール、などが挙げられる。炭水化物の好ましい群としては、ラクトース、トレハロース、ラフィノースマルトデキストリン、およびマンニトールを含む。適当なポリペプチドは、アスパルテームが挙げられる。アミノ酸としては、アラニンおよびグリシンが挙げられるが、グリシンが好ましい。
【0478】
適当なpH調整剤または緩衝液としては、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸や有機塩基から調製された有機塩が挙げられ、クエン酸ナトリウムが好ましい。
【0479】
本発明のRNAサイレンシング剤は、経口および経鼻送達によって投与され得る。
例えば、これらの膜を介して投与される薬物は、作用の迅速な開始を有し、治療的血漿レベルを提供し、肝代謝の初回通過効果を回避し、そして敵対的な胃腸(GI)環境への薬物の曝露を回避する。追加の利点は、薬物を容易に適用、局所化、および除去することができるように膜部位へのアクセスが容易であることにある。一実施態様において、経口または経鼻送達によって投与されるRNAサイレンシング剤は、血液脳関門を横断することができるように修飾されている。
【0480】
一実施態様において、RNAサイレンシング剤を含む組成物の単位用量または測定用量が、移植された装置によって分注される。この装置は、対象の体内のパラメータをモニタリングするセンサを含むことができる。例えば、装置は、浸透圧ポンプなどのポンプおよび、任意に、関連する電子機器を含むことができる。
【0481】
RNAサイレンシング剤は、ウイルスの天然カプシド、または化学的もしくは酵素的に製造された人工カプシドまたはそれに由来する構造体にパッケージ化され得る。
X. キット
【0482】
特定の他の態様において、本発明は、RNAサイレンシング剤、例えば、二本鎖RNAサイレンシング剤、またはsRNA剤(例えば、前駆体、例えば、sRNA剤に処理され得るより大きなRNAサイレンシング剤、またはRNAサイレンシング剤をコードするDNA、例えば、二本鎖RNAサイレンシング剤、またはsRNA剤、またはそれらの前駆体)の医薬製剤を含有する適当な容器を含むキットを提供する。特定の実施態様において、医薬製剤の個々の成分を1つの容器に入れて提供することができる。あるいは、医薬製剤の成分を2つまたはそれ以上の容器に分けて、例えば、1つの容器にはRNAサイレンシング剤の調剤を入れ、少なくとももう1つの容器には担体化合物を入れて提供することが望ましい。キットは、1つのボックスに1つまたはそれ以上の容器を入れるなど、さまざまな構成でパッケージ化できる。さまざまな成分は、例えば、キットに付属の使用説明書などに従って、組み合わせることができる。成分は、例えば、医薬組成物を調製および投与するために、本明細書に記載の方法に従って組み合わせることができる。キットは、送達装置を含むことができる。
【0483】
本明細書に記載の方法の他の適当な変更および適応は、本明細書に開示されている実施態様の範囲から逸脱することなく、適当な同等物を使用して行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。ここまで、特定の実施態様を詳細に説明してきたが、以下の例を参照することで、同じことがより明確に理解できるであろう。この例は、説明のためだけに含まれており、限定する意図はない。
【実施例0484】
実施例1. 機能亢進性(hyper-functional)ApoE標的配列のインビトロでの同定
1.1 mRNAおよびタンパク質において用量依存的な低減を引き起こすマウスApoEを標的とするsiRNAの同定
マウスApoE遺伝子をmRNAノックダウンの標的として使用した。マウスApoE遺伝子を標的とするコレステロール-コンジュゲートされたsiRNAのパネルを開発し、インビトロの初代マウス星状膠細胞において、未処理の対照細胞と比較してスクリーニングした。siRNAはそれぞれ1.5μMの濃度で試験し、mRNAは、72時間の時点で、QuantiGene遺伝子発現アッセイ(ThermoFisher, Waltham, MA)を用いて評価した。
図1Aは、スクリーンの結果を報告するものである。
【0485】
図1Bに示すように、スクリーニングで同定されたヒット化合物について、用量反応曲線およびIC50値を得て、1134と1203は、その高い有効性および効力に基づいて、さらなる研究のために選択された。。
図1Cは、ProteinSimple(San Jose, CA)のタンパク質定量アッセイを用いて1週間後に評価した、マウス初代星状膠細胞におけるタンパク質サイレンシングを示す1134の用量反応を示している。以下の表1に、2つの標的である1134と1203について記載する。
【表6】
1.2 mRNAおよびタンパク質において用量依存的な低減を引き起こすヒトApoEを標的とするsiRNAの同定
【0486】
ヒトApoE遺伝子をmRNAノックダウンの標的として使用した。ヒトApoE遺伝子を標的とするsiRNAのパネルを開発し、インビトロのヒトHepG2細胞において、未処理の対照細胞と比較してスクリーニングした。siRNAはそれぞれ、1.5μMの濃度で試験し、mRNAは、72時間の時点でQuantiGene遺伝子発現アッセイ(ThermoFisher, Waltham, MA)を用いて評価した。
図2Aは、スクリーンの結果を報告するものであり、1156および1163は、その高い有効性および効力に基づいて、さらなる研究のために選択された。次に、
図2Bに示すように、スクリーンから得られたヒット化合物について、用量反応曲線およびIC50値を得た。以下の表2に、2つのターゲットである1156および1163について記載する。
【表7】
【0487】
ヒトApoE遺伝子の2回目のスクリーニングを、今回は
図43のメチルが豊富な化学パターンを有するsiRNAを用いて、遺伝子の多数の標的領域を試験して行った。
図44Aは、スクリーンの結果を報告するものであり、
図44Bに示されているように、64、1125、1129、1133、1139、および1143が、高い有効性と効力に基づいて、さらなる研究のために選択された。次に、
図44Cに示すように、スクリーンからのヒット化合物について、用量反応曲線およびIC50値を得た(1列目、左から右へ:64、1129、1139;2列目、左から右へ:1125、1133、1143)。以下の表7に、標的配列について記載する。
【表8】
1.3 ApoE標的配列(マウスおよびヒト)
【0488】
図3Aは、マウスおよびヒトのApoE遺伝子において同定された標的配列ならびにそのような配列を標的とするオリゴヌクレオチドのアンチセンスおよびセンス配列を示す表である。
図3Bに示すように、オリゴヌクレオチド配列は、多数の化学的修飾(P2、P3、P2G、P3G)の文脈で、異なる化学コンジュゲート(例えば、GalNAc、CNS-siRNA、コレステロール)とともに使用することができる。また、このオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド遺伝子サイレンシングの文脈で使用することができる。
実施例2. マウスにおける組織特異性ApoE標的siRNAのインビボでの有効性
2.1 CNS-siRNA
ApoEは、注射後1ヶ月のマウスの脳全体のmRNAおよびタンパク質の発現をサイレンシングする。
【0489】
野生型マウスの第一群に、475μgのジ-siRNAApoEをICV注射で投与した。第二の対照群にはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を、第3の対照群にはジ-siRNA
NTC(ノンターゲティング対照)を注射した。各群には6匹のマウスが含まれていた。注射の1ヶ月後、脳の全領域においてmRNAサイレンシングをQuantiGeneで評価し(
図4A)、タンパク質サイレンシングをProteinSimpleで評価した(
図4B)。また、脳全体のタンパク質サイレンシングをウエスタンブロットで評価した(
図4C)。
【0490】
ApoEを標的とする新規siRNA配列は、インビボで強力なmRNAおよびタンパク質のサイレンシングを示すことがわかる。ApoEをサイレンシングするオリゴヌクレオチドを用いた以前のレポートでは、ICV注入後に約50%の標的mRNAおよびタンパク質のサイレンシングを示す配列を使用している。特定の理論に縛られることなく、サイレンシングの度合いが低いことから、これまでの配列を用いて得られた多くの結論が無効になる可能性がある。一方、新規配列は、神経変性におけるApoEの役割を研究する上で大きな利点となる。
2.2 CNS-siRNAApoEは、低用量で海馬におけるApoEタンパク質をサイレンシングする
【0491】
野生型マウスの群に、それぞれ475μg、237.5μg、118.75μgのジ-siRNA
ApoEを投与した。各群には3匹のマウスが含まれていた。注入の1ヶ月後、海馬におけるタンパク質サイレンシングを定量し、PBSまたはNTCを注射した対照マウスと比較した。
図5Aの図表および
図5Bのウエスタンブロットに見られるように、ApoEを標的とする新規のsiRNAは、低用量でインビボでのタンパク質サイレンシングを示している。ApoEをサイレンシングするオリゴヌクレオチドを用いた以前のレポートでは、オリゴヌクレオチドを約400μgの用量でICV注射した後、標的のmRNAおよびタンパク質が約50%サイレンシングされることを示す配列を使用している。
2.3 CNS-siRNA
ApoEは低用量で脊髄全体のApoEをサイレンシングする
【0492】
図6Aは、注射後1ヶ月の脊髄におけるタンパク質サイレンシングの定量化である。Di-siRNAApoEの用量:237.5μgおよび118.75μg。
図6Bは、対照のビンキュリン(116kDa)と比較して、標的ApoE(37kDa)タンパク質サイレンシングを示すウエスタンブロット(ProteinSimple)である。ICV注入後、ApoE 1134は、脊髄の全領域(頸部、胸部、腰部)でタンパク質の発現をサイレンシングした。これまで脊髄におけるApoEサイレンシングは示されていなかった。脊髄ApoEをサイレンシングする能力は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む脊髄関連の神経変性疾患の処置に多くの意義を有する。
2.4 CNS-siRNA
ApoEでの脳特異的(非肝臓)ApoEのサイレンシングは低用量で可能
【0493】
図7Aは、注入後1ヶ月の肝臓におけるタンパク質サイレンシングの定量化である。Di-siRNAApoEの用量:475μg、237.5μg、および118.75μg。
図7Bは、対照ビンキュリン(116kDa)と比較して、標的ApoE(37kDa)タンパク質サイレンシングを示すウエスタンブロット(ProteinSimple)である。CNS-ApoEのICV注射に対する用量反応では、475μgの注射後では肝のタンパク質発現の低減を示したが、237.5μgおよび118.75μgの注射後では低減しなかった。237.5μgおよび118.75μgの注射による脳および脊髄におけるサイレンシングデータと合わせて考えると、このデータは、siRNAによりApoEのCNS-特異的サイレンシングを達成することをさらに示唆している。さらに、このデータは、ApoEの2つのプール(CNSおよび全身)が互いに影響を与えないことも示唆している。残存する肝臓発現は、サイレンシングされたCNS(脳または脊髄)ApoEを補充するようには見えなかった。
2.5 GalNAc-siRNA
ApoEは、肝臓におけるタンパク質発現をサイレンシングするが、脳のタンパク質には影響を与えない
【0494】
siRNAを肝臓細胞の肝細胞に指向させるGalNAcコンジュゲートを合成し、10mg/kgの量でWTマウスに皮下注射で投与した。GalNAc-siRNA
ApoEの注射の1ヶ月後に、肝臓および海馬におけるタンパク質サイレンシングを定量化した。
図8Aは、肝臓におけるApoEタンパク質のサイレンシングを、対照ビンキュリンと比較したウエスタンブロット(ProteinSimple)である。
図8Bは、脳内のタンパク質レベルに影響がないことを示すウエスタンブロット(ProteinSimple)である。
図8Cは、肝臓および脳におけるタンパク質サイレンシングの定量化である。GalNAc-siRNA
ApoEコンジュゲートは、肝臓のApoE発現を強力にサイレンシングするが、脳のApoE発現には影響を与えないことがわかる。特定の理論に縛られることなく、脳で産生されたApoEは、全身のサイレンシングの後でも、血液脳関門を通過して全身のApoEプールを補充することはないと見える。
2.6 肝臓のApoEを低減すると血清コレステロールが増加するが、CNS-ApoEだけをサイレンシングしても血清コレステロールは増加しない
【0495】
アルツハイマー病の治療としてのApoEをサイレンシングする際の主な懸念は、それが全身性コレステロール代謝に及ぼす可能性のある潜在的な影響である。ApoEが遺伝的に除去されたマウスは、高全身性コレステロールおよび大動脈アテローム性動脈硬化症を発症する。CNSにおけるApoEの組織特異的調節は血清コレステロールの増加を引き起こさないが、全身調節はコレステロール、特にLDLの有意な増加を引き起こすことを示す。コレステロールに対するApoEサイレンシングの効果のこのレベルの識別は以前には示されていない。
図9Aは、CNS ApoEをサイレンシングした後の血清総コレステロールの定量化を示す。
図9Bは、全身のApoEをサイレンシングした後の血清総コレステロールの定量化、および全身のApoEをサイレンシングした後のLDLおよびHDL分画におけるコレステロールの定量化を示す。
2.7 CNSおよび全身のApoEは、2つの異なるタンパク質プールを示す
【0496】
本願のApoE配列を組織特異性化学コンジュゲートと組み合わせて使用することにより、ApoEの2つの異なるプール、すなわちCNS ApoEおよび全身のApoEが存在するという証拠を提供した。特定の理論に拘束されることなく、データは、ApoEの2つのプールが相互作用せず、互いの発現に影響を与えず、血液脳関門を通過しないことを示唆している。これにより、ApoEの1つのプール(CNSまたは全身)が神経病理学の進行に影響を与える可能性があり、もう1つのプールはほとんどまたはまったく影響を及ぼさない可能性があると仮定するようにする。
図10Aは、CNS-siRNA
ApoEを注射した後の、脳および肝臓におけるタンパク質サイレンシングを示す。
図10Bは、GalNAc-siRNA
ApoEを注射した後の、脳(なし)および肝臓におけるサイレンシングを示す。
実施例3 ジ-siRNAsおよびビタミンDコンジュゲートhsiRNAの化学合成
【0497】
インビトロおよびインビボでの有効性評価に使用されたジ-siRNAは、以下のように合成した。
図12に示すように、トリエチレングリコールをアクリロニトリルと反応させて、保護されたアミン官能性を導入した。次に、分岐点をトシル化ソルケタールとして加え、続いてニトリルを還元して一級アミンを得て、これをカルバメートリンカーを介してビタミンD(カルシフェロール)に結合させた。次に、ケタールを加水分解させてシス-ジオールを放出し、これを一級ヒドロキシルでジメトキシトリチル(DMTr)保護基で選択的に保護し、続いて無水コハク酸でスクシニル化した。得られた部分を固体支持体に結合させた後、固相オリゴヌクレオチド合成および脱保護を行い、VitD、キャッピングされたリンカー、およびジ-siRNAの3つの生成物を得た。次に、合成の生成物を、実施例6に記載されているように分析した。
実施例4 代替合成経路1
【0498】
図15Aに示すように、モノホスホアミデートリンカーのアプローチは、以下の工程を含む:モノアジドテトラエチレングリコールは、トシル化ソルケタールとして付加された分岐点を有する。その後、ケタールを除去してシス-ジオールを放出し、これは1級ヒドロキシルでジメトキシトリチル(DMTr)保護基で選択的に保護され、続いて、アジドをトリフェニルホスフィンで一次アミンに還元して、これは直ちにモノメトキシトリチル(MMTr)保護基で保護される。残りのヒドロキシルを無水コハク酸でスクシニル化し、固体支持体(LCAA CPG)に結合させた。オリゴヌクレオチドの合成と脱保護により、ホスフェートおよびホスホアミデート結合を有するジ-siRNAという1つの主要生成物を得た。この例では、ホスフェートおよびホスホアミデートリンカーのみを生成する代替の直接的な合成経路を紹介している。
実施例5 代替合成経路2
【0499】
二リン酸含有部分を作製するために、第二の代替合成アプローチを開発した。
図15Bに示すように、ジホスホネートリンカーのアプローチは以下の工程を含む:ソルケタール修飾テラエチレングリコールから出発し、ケタールを除去し、2つの一級ヒドロキシルをジメトキシトリチル(DMTr)で選択的に保護する。残りのヒドロキシルは、シリルで保護された1-ブロモエタノールで長さを伸ばす。TBDMSを除去し、サクシニル化し、固体支持体に結合させる。続いて、固相オリゴヌクレオチド合成および脱保護を行い、二リン酸含有リンカーを有するジ-siRNAを生成する。
実施例6 ジ-siRNAおよびビタミンDコンジュゲートhsiRNAの化学合成の品質管理
HPLC
【0500】
Di-siRNAおよびビタミンDコンジュゲートhsiRNAの化学合成の品質を評価するために、分析用HPLCを用いて合成された生成物を同定し、定量した。トリエチレングリコール(TEG)リンカーでキャッピングされたsiRNAセンス鎖、ジ-siRNA、およびビタミンDコンジュゲートsiRNAセンス鎖という3つの主要な生成物を同定した(
図13)。各生成物はHPLCで単離し、その後の実験に使用した。合成した3つの主要生成物の化学構造を
図13に示す。HPLCの条件にはいかのものが含まれた:15分かけて5~80%のB、緩衝液A(0.1M TEAA + 5%のACN)、緩衝液B(100%のACN)。
マススペクトロメトリー
【0501】
さらにマススペクトロメトリーによって品質管理を行い、Di-siRNA複合体の同一性を確認した。生成物は、11683m/zの質量を有することが観察され、これは、TEGリンカーを介して3'末端に結合されたsiRNAの2つのセンス鎖に対応する(
図14)。この特定の例において、ハンチンチン遺伝子(Htt)を標的とするようにsiRNAのセンス鎖を設計した。実施例5に要約されている化学合成方法により、ハンチンチン遺伝子を標的とするジ-分岐状siRNA複合体の所望の生成物を成功的に生成した。LC-MSの条件にはいかのものが含まれていた:7分かけて0~100%のB、0.6mL/min. 緩衝液A(25mM HFIP、20%のMeOHにおける15mM DBA)、緩衝液B(20%の緩衝液Aを含むMeOH)。
実施例7 分岐状オリゴヌクレオチド構造における疎水性部分の取り込み:
ストラテジー1
【0502】
一例において、2-シアノエトキシ-ビス(N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスフィン(またはその他の適当なホスファイト化試薬)でホスフィレート化できる、保護されていないヒドロキシル基(またはアミン)を有する短い疎水性アルキレンまたはアルカン(Hy)を用いて、対応する親油性ホスホロアミダイトを生成する。これらの親油性ホスホロアミダイトは、従来のオリゴヌクレオチド合成条件を用いて、分岐状オリゴヌクレオチドの末端位置に加えることができる。このストラテジーは、
図29に示している。
実施例8 分岐状オリゴヌクレオチド構造における疎水性部分の取り込み:
ストラテジー2
【0503】
別の例において、2-シアノエトキシ-ビス(N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスフィン(または他の適当なホスフィチル化試薬)でホスフィチル化できる正電荷を有するか、または有しない保護されていないヒドロキシル基(またはアミン)を有する短い/小芳香族平面分子(Hy)を用いて、対応する芳香族疎水性ホスホロアミダイトを生成する。芳香族部分は、正電荷を有することができる。これらの親油性ホスホロアミダイトは、従来のオリゴヌクレオチド合成条件を用いて、分岐状オリゴヌクレオチドの末端位置に加えることができる。このストラテジーは、
図30に示している。
実施例9 分岐状オリゴヌクレオチド構造における疎水性部分の取り込み:
ストラテジー3
【0504】
生物学的に重要な疎水性部分を導入するために、短い親油性ペプチドを、固体支持体上または溶液中で逐次ペプチド合成することによって作成する(後者については本明細書で説明する)。短い(1-10)アミノ酸鎖は、正電荷または極性アミノ酸部分を含むことができ、これは、正電荷はオリゴヌクレオチドの全体的な正味電荷を低減し、したがって疎水性を増加させるからである。適切な長さのペプチドを作成したら、無水酢酸または別の短い脂肪酸でキャッピングして、疎水性を増加させ、遊離アミンをマスクするべきである。その後、カルボニル保護基を除去して、3-アミノプロパン-1-オールを結合させ、遊離水酸基(またはアミン)をホスフィチル化するようにする。その後、このアミノ酸ホスホロアミダイトは、従来のオリゴヌクレオチド合成条件を用いて、分岐状オリゴヌクレオチドの末端5'位置に加えることができる。このストラテジーは、
図31に示している。
実施例10 神経変性におけるApoEのサイレンシング
【0505】
アルツハイマー病に関連する一連の病態を模倣したトランスジェニックマウスのモデルを表6に要約する。どのモデルもヒトの疾患を完全に再現していないが、モデルはβアミロイド毒性の病態生理学に有意な洞察を提供している:
【表9】
【0506】
神経変性疾患に対するApoEサイレンシングの効果を評価するために、APP/PSEN1マウスを8週齢でICVによってジ-siRNAApoEまたはジ-siRNANTCを注射した(一群あたり雌5匹、雄5匹)。第二群(一群あたりn=7)には、8週齢でGalNAcApoEおよびGalNAcNTCを皮下注射した。動物は注射2ヶ月後の4ヶ月齢で安楽死させた。ジ-siRNANTC雌群では4例、ジ-siRNAApoE雌群では1例、ジ-siRNANTC雄群では1例、ジ-siRNAApoE雄群では1例の死亡が観察された。GalNAcNTC群では3例、GalNAcApoE群では1例の死亡が観察された。すべての死亡は、動物モデルの病理の自然原因によるもので、注射後少なくとも1ヵ月後に発生した。
【0507】
図34は、APP/PSEN1 ADマウス(一群あたり雌2~5匹、雄5匹、237μg/注射)において、注射後2カ月で脳の全領域におけるmRNAサイレンシングを報告する図表である。また、脳の全領域において強力なサイレンシングが観察された。これらの結果は、本願の核酸が、神経変性におけるApoEの役割を研究する上で有意な利点を提供することを示している。
図35の図表に示されているように、脳(ジ-siRNA
ApoE)または肝臓(GalNAc-siRNA
ApoE)のどちらかを標的とする新規siRNAは、ICV注射2カ月後標的組織において強力な標的特異的mRNAサイレンシングを示す。また、強力な標的特異的タンパク質サイレンシングも観察された(
図36)。
図37の生ウエスタンブロットは、ジ-siRNA
NTC、ジ-siRNA
ApoE、GalNAc
NTC、またはGalNAc
ApoEをICVまたはSCで注射した後の、海馬、皮質、および肝臓におけるApoEタンパク質発現を示す。
【0508】
ApoEタンパク質を示す2番目のバンドの消失は、NTC対照群と比較して強力なサイレンシングを示す。まとめると、証拠は、アルツハイマー病のAPP/PSEN1モデルには、CNS ApoEおよび全身のApoEの、ApoEの2つの異なるプールが存在することを示す。このデータは、ApoEの2つのプールが相互に作用せず、互いの発現に影響を与えず、血液脳関門を通過しないことを示唆している。このデータは、ApoEの一方のプール(CNSまたは全身)では神経病理の進行に影響を及ぼし得るが、他方のプールではほとんどまたは全く影響を及ぼさないという仮説を支持するものである。
【0509】
厚さ40μmの大脳皮質組織スライス(動物1匹あたり4枚)を、抗APP 6E10抗体および抗Lamp1抗体を用いた標準的な免疫蛍光プロトコールで染色した。ライカの顕微鏡でタイル状の画像(10倍)を撮影した。
図38に見られるように、ジ-siRNA
ApoE処置動物では、ジ-siRNA
NTC処置動物と比較して、β-アミロイドおよびLamp1陽性プラークの視覚的低減が観察された。この低減は、
図39の図表に見られるように、統計的に有意であった。
【0510】
雌マウスにおける表現型の悪化が過去に観察されていることから、ジ-siRNA
NTC処置マウスとジ-siRNA
ApoE処置マウスの間で性特異的分析を行った。
図40に報告されているように、雌群と雄群との両方の間で有意な差が観察されたが、雌マウスの差はより劇的であるように見えた。また、
図41で報告されているデータは、性別がサイレンシングの有効性に影響を与えなかったことを示している。
【0511】
ヒトApoEのサイレンシングにオリゴヌクレオチドを使用した以前の報告では、約400ugのICV注射後に約50%の標的mRNAおよびタンパク質のサイレンシングを示す配列を使用している。一方、ヒトApoE(E3およびE4)を標的とする新規ジ-siRNA
ApoE 1156を237μg注射一ヶ月後には、海馬(
図42A)および脊髄(
図42B)において、約80~90%のタンパク質サイレンシングが見出された。
【0512】
追加の皮質染色を行って、ジ-siRNA
ApoE 1156の投与後に神経病理の低減を示した。雌マウスおよび雄マウスにおいて病理学的アミロイドβ-42を測定し、アミロイドβ-42含有量の低減が観察された(
図45)。さらに、X-34染色を用いて、マウス大脳皮質におけるタンパク質凝集体を画像化した。ジ-siRNA
ApoEでは、対照と比較して、X-34陽性プラークの低減も観察された(
図46Aおよび
図46B)。マウスの皮質におけるAPP6E10およびLAMP1陽性プラークの数を比較したところ、GalNAc-コンジュゲートAPOE siRNAでは効果がないことが観察され、これは、ジ-siRNA
ApoEフォーマットが神経病理の低減に重要であることを示している(
図46C)。
【0513】
ジ-siRNA
ApoEが血清コレステロールに影響を与えないことを実証するために、APP/PSEN1マウスモデルにジ-siRNA
ApoEを注射し、GalNAcコンジュゲートAPOE siRNAと比較した。ジ-siRNA
ApoEを237μg、両側性ICVを介して注射した。注入の2ヶ月後、LDLおよびHDLのレベルを測定した。これらの結果を、GalNAcコンジュゲートsiRNAを10mg/kgで皮下注射した場合と比較した。
図47に示すように、ジ-siRNA
ApoEはHDLまたはLDLのレベルに影響を与えなかったが、肝臓におけるAPOEをサイレンシングすると(GalNAcコンジュゲートを介して)LDLレベルの上昇をもたらした。
【0514】
ジ-siRNA
ApoE 1156の有効性を4ヶ月間にわたるアルツハイマー病のトランスジェニック マウス モデル(3xTg-AD)でさらに試験して、中枢神経系におけるAPOEの長期的なサイレンシングを実証した。3xTg-ADマウスにジ-siRNA
ApoEを237μg注射し、注射の4ヶ月後にAPOEタンパク質レベルを測定した。
図48Aおよび
図48Bに示すように、ジ-siRNA
ApoEは、注射後4ヶ月後でも、海馬および皮質におけるAPOEを強力に阻害した。
【0515】
追加のAPOE標的を、
図43に示すように、2'-O-メチルが豊富なパターンで試験した。上記のようにマウスにジ-siRNA
ApoE 1133を注射し、注射の1ヶ月後にAPOEタンパク質レベルを測定した。
図49Aおよび
図49Bに示すように、ジ-siRNA
ApoE 1133は、海馬および皮質におけるAPOEを強力に阻害した。
【0516】
本発明のApoE siRNAの有効性をさらに実証するために、非ヒト霊長類(NHP)に25mgのジ-siRNA
ApoE 1133を大槽に注射した。注入の2ヶ月後に、後部皮質および小脳のいくつかの領域でジ-siRNA
ApoE 1133ガイド鎖の蓄積量を測定した。
図50に示すように、サンプル組織には高レベルのsiRNAが蓄積し、平均蓄積量は20μg siRNA/グラム組織であった。
引用による包含
【0517】
本願を通して引用されるかもしれないすべての引用文献(文献、特許、特許出願、ウェブサイトを含む)の内容は、そこに引用されている文献と同様に、あらゆる目的のために、その全体が引用によって本明細書に明示的に包含される。本開示では、特に示さない限り、当技術分野でよく知られている免疫学、分子生物学および細胞生物学の従来の技術を採用する。
【0518】
また、本開示は、分子生物学および薬物送達の分野でよく知られている技術を全体的に引用によって包含している。これらの技術には、以下の刊行物に記載されている技術が含まれるが、これらに限定されるものではない:
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Ausubel et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley &Sons, NY (1993);
Ausubel, F.M. et al. eds., Short Protocols In Molecular Biology (4th Ed. 1999) John Wiley & Sons, NY. (ISBN 0-471-32938-X);
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等価物
【0519】
本開示は、その精神または本質的な特性から逸脱することなく、他の具体的な形態で具現化することができる。したがって、前述の実施態様は、あらゆる点において、本開示を限定するものではなく、例示的なものであると考えられる。本開示の範囲は、したがって、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および同等性の範囲内に入るすべての変更は、したがって、本明細書に包含されることが意図される。