(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156522
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】修飾ヘテロ核酸
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20251002BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025130417
(22)【出願日】2025-08-05
(62)【分割の表示】P 2021551735の分割
【原出願日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】P 2019188042
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】古川 英紀
(72)【発明者】
【氏名】余郷 能紀
(72)【発明者】
【氏名】宮田 健一
(72)【発明者】
【氏名】内田 章夫
(72)【発明者】
【氏名】冨田 直輝
(57)【要約】
【課題】一実施形態において、本発明は、新規な構造を有する二本鎖核酸複合体を提供することを課題とする。
【解決手段】一実施形態において、本発明は、第1核酸鎖と第2核酸鎖とを含む核酸複合体であって、該第1核酸鎖は、(1)標的転写産物の少なくとも一部にハイブリダイズすることができ、(2)標的転写産物に対してアンチセンス効果を有し、かつ(3)中央領域、並びに5'ウイング領域及び3'ウイング領域を含むギャップマーであり、該第2核酸鎖は、該第1核酸鎖の一部と相補的な、1個、又はヌクレオシド間結合により連結された2~3個の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなる糖非修飾中央領域(第1露出領域)を少なくとも1個含み、かつ該第1核酸鎖は該第2核酸鎖にアニールしている前記核酸複合体に関する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1核酸鎖と第2核酸鎖とを含む核酸複合体を含む、RNase H依存的及び/又は非依存的経路での活性を有し、及び/又はRNase Aによる切断活性を抑制するための組成物であって、
該第1核酸鎖は
(1)標的転写産物の少なくとも一部にハイブリダイズすることができ、
(2)標的転写産物に対してアンチセンス効果を有し、かつ
(3)少なくとも4個の連続するデオキシリボヌクレオシドを含む中央領域、並びに非天然ヌクレオシドをそれぞれ含む5'ウイング領域及び3'ウイング領域を、中央領域の5'末端側及び3'末端側にそれぞれ含むギャップマーであり、
該第2核酸鎖は、少なくとも1個の第1露出領域、及び少なくとも1個の防御領域を含み、
前記第1露出領域は、該第1核酸鎖の一部と相補的な、1個、又はヌクレオシド間結合により連結された2~3個の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなり、
前記防御領域は、1個、又はヌクレオシド間結合により連結された2個以上の(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又は(c)3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドからなり、かつ
該第1核酸鎖は該第2核酸鎖にアニールしている前記組成物。
【請求項2】
前記第1核酸鎖が10~26塩基長である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1露出領域が、ヌクレオシド間結合により連結された3個の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1露出領域が、修飾又は非修飾のプリン塩基を含むヌクレオシドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第2核酸鎖が、前記第1露出領域を1個だけ含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第2核酸鎖が、第1露出領域を少なくとも2個含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1露出領域における糖非修飾リボヌクレオシドが、天然リボヌクレオシドである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1核酸鎖の一部と相補的な、ヌクレオシド間結合により連結された4個以上の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなる第2露出領域をさらに含み、前記第2露出領域における糖非修飾リボヌクレオシドは修飾又は非修飾のプリン塩基を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記防御領域の少なくとも1個が、修飾又は非修飾のピリミジン塩基を含む(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又は(c)3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記防御領域の全てが、修飾又は非修飾のピリミジン塩基を含む(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又は(c)3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記防御領域の少なくとも1個が、1個、又はヌクレオシド間結合により連結された2個以上の修飾又は非修飾のピリミジン塩基を含む(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又は(c)3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記防御領域における糖修飾ヌクレオシドが、2'-O-メチル修飾ヌクレオシドであり、且つ/又は3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドが、3’側にホスホロチオエート結合を有するヌクレオシドである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1露出領域及び/又は第2露出領域が、少なくとも1個の修飾ヌクレオシド間結合を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記第2核酸鎖が、第1露出領域、及び第2露出領域以外に、糖非修飾領域を含まない、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記第2核酸鎖の第1露出領域及び/又は第2露出領域が、少なくとも1個のRp配置又はSp配置にキラル制御されたホスホロチオエート結合、1~4個のC1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分を含むヌクレオシド間結合及び/又は環状グアニジン部分を含むヌクレオシド間結合を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記第2核酸鎖の防御領域が、少なくとも1個のRp配置又はSp配置にキラル制御されたホスホロチオエート結合、1~4個のC1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分を含むヌクレオシド間結合及び/又は環状グアニジン部分を含むヌクレオシド間結合を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記第2核酸鎖が、第1露出領域及び第2露出領域以外に、糖非修飾領域を含まない、請求項15又は16に記載の組成物。
【請求項18】
前記第2核酸鎖が、標識機能、精製機能、及び標的への送達機能から選択される機能を有する機能性部分と結合している、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本鎖核酸複合体、及びそれを含む組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、核酸医薬と呼ばれる医薬品の現在進行中の開発において、オリゴヌクレオチドが関心を集めており、また特に、標的遺伝子の高い選択性及び低毒性の点から考えて、アンチセンス法を利用する核酸医薬の開発が積極的に進められている。アンチセンス法とは、標的遺伝子より転写されたmRNAやmiRNAの部分配列を標的センス鎖として、それに相補的なオリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴヌクレオチド:本明細書ではしばしば「ASO(AntiSense Oligonucleotide)」と表記する)を細胞に導入することによって、標的遺伝子によってコードされたタンパク質の発現やmiRNAの活性を選択的に改変又は阻害することを含む方法である。
【0003】
アンチセンス法を利用した核酸として、本発明者らは、アンチセンスオリゴヌクレオチドとそれに対する相補鎖とをアニーリングさせた二本鎖核酸複合体(ヘテロ二本鎖オリゴヌクレオチド(heteroduplexoligonucleotide、HDO))を開発した(特許文献1、非特許文献1及び2)。
【0004】
上記二本鎖核酸複合体の作用機序は、限定されるものではないが、部分的には以下の通りである。すなわち、細胞内に導入されると、相補鎖におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの一部と相補的なRNA領域がRNase Hによって切断され、アンチセンスオリゴヌクレオチドを放出し、その後、このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、転写産物の活性又は機能を改変するように作用することができる(例えば、特許文献2を参照のこと)。これは「RNase H依存性経路」とよばれ、RNase Hによる切断がなされるためには核酸部分に修飾がないことが望ましい。一方で核酸部分に修飾がない場合には、生体内での核酸分解酵素により分解され、十分に活性を発揮できない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/089283号
【特許文献2】国際公開第2014/192310号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nishina K, et. al., "DNA/RNA heteroduplex oligonucleotide for highly efficient gene silencing", Nature Communication, 2015, 6:7969.
【非特許文献2】Asami Y, et al., "Drug delivery system of therapeutic oligonucleotides",Drug Discoveries &Therapeutics. 2016; 10(5):256-262.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
二本鎖核酸複合体の活性を維持しながら、生体内での核酸分解酵素による分解を抑制するために、どのように核酸を修飾すべきかについての知見は、十分なものとは言えない。
【0008】
本発明は、活性を維持し、及び/又は生体内での分解を抑制し得る、二本鎖核酸複合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、第1核酸鎖と第2核酸鎖の複合体であって、該第1核酸鎖がギャップマーであり、該第2核酸鎖が、該第1核酸鎖の一部と相補的な、1個、又はヌクレオシド間結合により連結された2~3個の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなる糖非修飾中央領域(本明細書中では「第1露出領域」とも表記する)を含む複合体が、活性を維持し、及び/又は生体内での分解を抑制し得るものであることを見出した。
また、本発明者らは、第2核酸鎖が修飾又は非修飾のピリミジン塩基を含む防御領域を含むことによって、上記複合体の機能がさらに向上し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は、上記知見に基づくものであって以下の実施形態を包含する。
[1]第1核酸鎖と第2核酸鎖とを含む核酸複合体であって、
該第1核酸鎖は
(1)標的転写産物の少なくとも一部にハイブリダイズすることができ、
(2)標的転写産物に対してアンチセンス効果を有し、かつ
(3)少なくとも4個の連続するデオキシリボヌクレオシドを含む中央領域、並びに非天然ヌクレオシドをそれぞれ含む5'ウイング領域及び3'ウイング領域を、中央領域の5'末端側及び3'末端側にそれぞれ含むギャップマーであり、
該第2核酸鎖は、該第1核酸鎖の一部と相補的な、1個、又はヌクレオシド間結合により連結された2~3個の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなる糖非修飾中央領域(第1露出領域)を少なくとも1個含み、かつ
該第1核酸鎖は該第2核酸鎖にアニールしている前記核酸複合体。
[2]前記第1核酸鎖が13~20塩基長である、[1]に記載の核酸複合体。
[3]前記第2核酸鎖が、
修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、
(1)前記糖非修飾中央領域(第1露出領域)、並びに
(2)(a)デオキシリボヌクレオシド及び/又は(b)糖修飾ヌクレオシド
を含む、[1]又は[2]に記載の核酸複合体。
[4]前記第2核酸鎖が、糖修飾リボヌクレオシドを含む、[3]に記載の核酸複合体。
[5]前記糖非修飾中央領域(第1露出領域)が、ヌクレオシド間結合により連結された3個の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなる、[1]~[4]のいずれかに記載の核酸複合体。
[6]前記第2核酸鎖が、糖非修飾中央領域(第1露出領域)を1個だけ含む、[1]~[5]のいずれかに記載の核酸複合体。
[7]前記糖非修飾中央領域(第1露出領域)における糖非修飾リボヌクレオシドが、天然リボヌクレオシドである、[1]~[6]のいずれかに記載の核酸複合体。
[8]前記糖非修飾中央領域(第1露出領域)が、少なくとも1個の修飾ヌクレオシド間結合を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の核酸複合体。
[9]前記第2核酸鎖が、少なくとも1個の糖非修飾リボヌクレオシドを含む糖非修飾末端領域を5'末端及び/又は3'末端に含む、[1]~[8]のいずれかに記載の核酸複合体。
[10]前記糖非修飾末端領域における糖非修飾リボヌクレオシドが、天然リボヌクレオシドである、[9]に記載の核酸複合体。
[11]前記第2核酸鎖の糖非修飾中央領域(第1露出領域)が、少なくとも1個のRp配置又はSp配置にキラル制御されたホスホロチオエート結合を含む、[1]~[10]のいずれかに記載の核酸複合体。
[12]前記第2核酸鎖が、糖非修飾末端領域及び糖非修飾中央領域(第1露出領域)以外に、糖非修飾領域を含まない、[11]に記載の核酸複合体。
[13]前記糖非修飾中央領域(第1露出領域)における塩基が、プリン塩基である、[1]~[12]のいずれかに記載の核酸複合体。
[14]前記第2核酸鎖が、標識機能、精製機能、及び標的への送達機能から選択される機能を有する機能性部分と結合している、[1]~[13]のいずれかに記載の核酸複合体。
[15]前記第2核酸鎖の中央よりも3'側に前記糖非修飾中央領域(第1露出領域)が位置する、[1]~[14]のいずれかに記載の核酸複合体。
【0011】
本発明は、さらに以下の実施形態を包含する。
[1A]第1核酸鎖と第2核酸鎖とを含む核酸複合体であって、
該第1核酸鎖は
(1)標的転写産物の少なくとも一部にハイブリダイズすることができ、
(2)標的転写産物に対してアンチセンス効果を有し、かつ
(3)少なくとも4個の連続するデオキシリボヌクレオシドを含む中央領域、並びに非天然ヌクレオシドをそれぞれ含む5'ウイング領域及び3'ウイング領域を、中央領域の5'末端側及び3'末端側にそれぞれ含むギャップマーであり、
該第2核酸鎖は、少なくとも1個の第1露出領域、及び少なくとも1個の防御領域を含み、
前記第1露出領域は、該第1核酸鎖の一部と相補的な、1個、又はヌクレオシド間結合により連結された2~3個の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなり、
前記防御領域は、1個、又はヌクレオシド間結合により連結された2個以上の(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又は(c)3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドからなり、かつ
該第1核酸鎖は該第2核酸鎖にアニールしている前記核酸複合体。
[2A]前記第1核酸鎖が13~22塩基長である、[1A]に記載の核酸複合体。
[3A]前記第1露出領域が、ヌクレオシド間結合により連結された3個の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなる、[1A]又は[2A]に記載の核酸複合体。
[4A]前記第1露出領域が、修飾又は非修飾のプリン塩基を含むヌクレオシドを含む、[1A]~[3A]のいずれかに記載の核酸複合体。
[5A]前記第2核酸鎖が、前記第1露出領域を1個だけ含む、[1A]~[4A]のいずれかに記載の核酸複合体。
[6A]前記第2核酸鎖が、第1露出領域を少なくとも2個含む、[1A]~[4A]のいずれかに記載の核酸複合体。
[7A]前記第2核酸鎖が、防御領域を少なくとも2個含む、[1A]~[6A]のいずれかに記載の核酸複合体。
[8A]前記第1露出領域における糖非修飾リボヌクレオシドが、天然リボヌクレオシドである、[1A]~[7A]のいずれかに記載の核酸複合体。
[9A]前記第1核酸鎖の一部と相補的な、ヌクレオシド間結合により連結された4個以上の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなる第2露出領域をさらに含み、前記第2露出領域における糖非修飾リボヌクレオシドの塩基は修飾又は非修飾のプリン塩基を含む、[1A]~[8A]のいずれかに記載の核酸複合体。
[10A]前記防御領域の少なくとも1個が、修飾又は非修飾のピリミジン塩基を含む(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又は(c)3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドを含む、[1A]~[9A]のいずれかに記載の核酸複合体。
[11A]前記防御領域の全てが、修飾又は非修飾のピリミジン塩基を含む(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又は(c)3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドを含む、[10A]に記載の核酸複合体。
[12A]前記防御領域の少なくとも1個が、1個、又はヌクレオシド間結合により連結された2個以上の修飾又は非修飾のピリミジン塩基を含む(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又は(c)3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドからなる、[1A]~[11A]のいずれかに記載の核酸複合体。
[13A-1]前記防御領域における糖修飾ヌクレオシドが、2'-糖修飾ヌクレオシド及び/又は架橋ヌクレオシドである、[1A]~[12A]のいずれかに記載の核酸複合体。
[13A-2]前記防御領域における糖修飾ヌクレオシドが、2'-糖修飾ヌクレオシドである、[1A]~[12A]又は[13A-1]のいずれかに記載の核酸複合体。
[13A-3]前記防御領域における3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドが、3’側にホスホロチオエート結合、1~4個のC
1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分を含むヌクレオシド間結合及び/又は環状グアニジン部分を含むヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドである、[1A]~[12A]又は[13A-1]~[13A-2]のいずれかに記載の核酸複合体。
[13A-4]前記防御領域における3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドが、3’側にホスホロチオエート結合を有するヌクレオシドである、[1A]~[12A]又は[13A-1]~[13A-3]のいずれかに記載の核酸複合体。
[13A]前記防御領域における糖修飾ヌクレオシドが、2'-O-メチル修飾ヌクレオシドであり、且つ/又は3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドが、3’側にホスホロチオエート結合を有するヌクレオシドである、[1A]~[12A]又は[13A-1]~[13A-4]のいずれかに記載の核酸複合体。
[14A]前記第1露出領域及び/又は第2露出領域が、少なくとも1個の修飾ヌクレオシド間結合を含む、[1A]~[13A]又は[13A-1]~[13A-4]のいずれかに記載の核酸複合体。
[15A]前記第2核酸鎖が、少なくとも1個の糖非修飾リボヌクレオシドを含む糖非修飾末端領域を5'末端及び/又は3'末端に含む、[1A]~[14A]又は[13A-1]~[13A-4]のいずれかに記載の核酸複合体。
[16A]前記糖非修飾末端領域における糖非修飾リボヌクレオシドが、天然リボヌクレオシドである、[15A]に記載の核酸複合体。
[17A]前記第2核酸鎖の少なくとも一つの防御領域が、5’末端及び3’末端にて、ヌクレオシド間結合により、前記第1露出領域及び/又は前記第2露出領域と連結した、[1A]~[16A]又は[13A-1]~[13A-4]のいずれかに記載の核酸複合体。
[18A]前記第2核酸鎖が、第1露出領域、及び第2露出領域以外に、糖非修飾領域を含まない、[1A]~[17A]又は[13A-1]~[13A-4]のいずれかに記載の核酸複合体。
[19A]前記第2核酸鎖が、少なくとも1個のデオキシリボヌクレオシド、及び/又は糖修飾ヌクレオシドを含む糖修飾末端領域を5'末端及び/又は3'末端に含む、[1A]~[17A]又は[13A-1]~[13A-4]のいずれかに記載の核酸複合体。
[20A]前記第2核酸鎖が、ヌクレオシド間結合により連結された、(1)少なくとも一つの前記第1露出領域及び/又は少なくとも一つの前記第2露出領域、(2)少なくとも一つの前記防御領域、並びに(3) 5'末端及び3'末端の前記糖修飾末端領域からなる、[1A]~[19A]又は[13A-1]~[13A-4]のいずれかに記載の核酸複合体。
[21A]前記第2核酸鎖の第1露出領域及び/又は第2露出領域が、少なくとも1個のRp配置又はSp配置にキラル制御されたホスホロチオエート結合、1~4個のC
1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分を含むヌクレオシド間結合及び/又は環状グアニジン部分を含むヌクレオシド間結合を含む、[1A]~[20A]又は[13A-1]~[13A-4]のいずれかに記載の核酸複合体。
[22A]前記第2核酸鎖の防御領域が、少なくとも1個のRp配置又はSp配置にキラル制御されたホスホロチオエート結合、1~4個のC
1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分を含むヌクレオシド間結合及び/又は環状グアニジン部分を含むヌクレオシド間結合を含む、[1A]~[21A]又は[13A-1]~[13A-4]のいずれかに記載の核酸複合体。
[23A]前記環状グアニジン部分を含むヌクレオシド間結合が、以下の式(II)で表される部分構造で表されるヌクレオシド間結合である、[21A]又は[22A]に記載の核酸複合体。
【化1】
[24A]前記1~4個のC
1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分を含むヌクレオシド間結合が、以下の式(III)で表される部分構造で表されるヌクレオシド間結合である、[21A]~[23A]のいずれかに記載の核酸複合体。
【化2】
[25A]前記第2核酸鎖が、第1露出領域、第2露出領域、及び糖非修飾末端領域以外に、糖非修飾領域を含まない、[17A]又は[19A]~[24A]のいずれかに記載の核酸複合体。
[26A]前記第2核酸鎖の少なくとも一つの第1露出領域、第2露出領域及び/又は防御領域が、1個以上のミスマッチ塩基を含む、[17A]~[25A]のいずれかに記載の核酸複合体。
[27A]前記第2核酸鎖の第1露出領域、第2露出領域及び/又は防御領域が、ミスマッチ塩基を含まない、[17A]~[25A]のいずれかに記載の核酸複合体。
[28A]前記第2核酸鎖が、標識機能、精製機能、及び標的への送達機能から選択される機能を有する機能性部分と結合している、[1A]~[27A]又は[13A-1]~[13A-4]のいずれかに記載の核酸複合体。
[29A][1A]~[28A]又は[13A-1]~[13A-4]のいずれかに記載の核酸複合体を有効成分として含む医薬組成物。
[30A]第1核酸鎖と第2核酸鎖とを含む核酸複合体であって、
該第1核酸鎖は
(1)標的転写産物の少なくとも一部にハイブリダイズすることができ、
(2)標的転写産物に対してアンチセンス効果を有し、かつ
(3)少なくとも4個の連続するデオキシリボヌクレオシドを含む中央領域、並びに非天然ヌクレオシドをそれぞれ含む5'ウイング領域及び3'ウイング領域を、中央領域の5'末端側及び3'末端側にそれぞれ含むギャップマーであり、
該第2核酸鎖は、少なくとも1個の第2露出領域、及び少なくとも1個の防御領域を含み、
前記第2露出領域は、前記第1核酸鎖の一部と相補的な、ヌクレオシド間結合により連結された4個以上の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなり、
前記防御領域は、1個、又はヌクレオシド間結合により連結された2個以上の(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又は(c)3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドからなり、かつ
該第1核酸鎖は該第2核酸鎖にアニールしている前記核酸複合体。
[31A]前記第1核酸鎖が13~22塩基長である、[30A]に記載の核酸複合体。
[32A]前記第2核酸鎖が、前記第2露出領域を1個だけ含む、[30A]又は[31A]に記載の核酸複合体。
[33A]前記第2核酸鎖が、第2露出領域を少なくとも2個含む、[30A]~[32A]のいずれかに記載の核酸複合体。
[34A]前記第1核酸鎖の一部と相補的な、1個、又はヌクレオシド間結合により連結された2~3個の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなる第1露出領域をさらに含む、[30A]~[33A]のいずれかに記載の核酸複合体。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2019-188042号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、新規な構造を有する二本鎖核酸複合体が提供される。本発明の核酸複合体は、活性が高く、及び/又は生体内での分解が抑制されたものであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1A及びBは、いずれも本発明に係る核酸複合体の特定の実施形態で、第2核酸鎖が脂質を含む例を示す模式図である。
【
図2】
図2A~Cは、いずれも本発明に係る核酸複合体の特定の実施形態で、第2核酸鎖が脂質を含み、かつ相補的領域とオーバーハング領域を含む例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、アンチセンス法の一般的な機構の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、様々な架橋核酸の構造を示す図である。
【
図5】
図5は、様々な天然ヌクレオチド又は非天然ヌクレオチドの構造を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例1で用いた核酸の構造の模式図である。Cholはコレステロールを示す。
【
図7】
図7は、ASO単独、ASOとChol-cRNA (mMalat1)の二本鎖複合体(Chol-HDO)、ASOとChol-cRNA(mMalat1) full OMeの二本鎖複合体(Chol-HDO with full OMe cRNA)の、RNaseH及び/又はRNaseAによる切断後の電気泳動結果を示す。なお、RNase H処理区において、「+」は核酸10μM 5μLに対して、Ribonuclease Hを10 U、「++」は核酸20μM 5μLに対して、Ribonuclease Hを10 U反応させた際の結果を示す。
【
図8】
図8は、
図7の電気泳動結果に基づく未分解のバンドの濃度を、未処理に対する相対強度レベル(%)で示したグラフである。
【
図9】
図9は、第1核酸鎖のギャップ領域の一部に相補的な3個の連続した糖非修飾リボヌクレオシドを含む二本鎖核酸剤について、3個の連続した糖非修飾リボヌクレオシドの位置を変えてRNaseH及び/又はRNaseAによる切断試験を行い、
図8同様に未分解のバンドの濃度を、相対強度レベル(%)で示したグラフである。
【
図10】
図10は、細胞を様々な二本鎖核酸複合体で処理した場合の、PBS処理におけるMalat1/Actb(βアクチン)発現量を1としたときの相対RNA発現レベルを示す。
【
図11】
図11は、実施例3で用いた核酸の構造の模式図である。Cholはコレステロールを示す。
【
図12】
図12は、実施例3で用いた核酸の構造の模式図である。Cholはコレステロールを示す。
【
図13】
図13は、第1核酸鎖のギャップ領域の一部に相補的な1個又は2個の連続した糖非修飾リボヌクレオシドを含む二本鎖核酸剤について、糖非修飾リボヌクレオシドの位置を変えてRNaseAによる切断を行った後の電気泳動結果を示す。
【
図14】
図14は、第1核酸鎖のギャップ領域の一部に相補的な1個又は2個の連続したRNAを含む二本鎖核酸剤について、RNaseAによる切断を行った後、
図8同様に未分解のバンドの濃度を、相対強度レベル(%)で示したグラフである。
【
図15】
図15は、実施例4で用いた核酸の構造を示す模式図である。Cholはコレステロールを示す。
図15AはASO(mDMPK)及びChol-cRNA(Default)を含む二本鎖核酸複合体Chol-HDO(Default)を示す。
図15BはASO(mDMPK)及びChol-cRNA(CU OMe)を含む二本鎖核酸複合体Chol-HDO(CU OMe)を示す。
【
図16】
図16は、二本鎖核酸複合体Chol-HDO(Default)及びChol-cRNA(CU OMe)、並びに陰性対照用のPBSによる、腓腹筋(gastrocnemius:GC)、上腕三頭筋(triceps brachii:TB)、前脛骨筋(tibialis anterior:TA)、固有背筋(Back)、大腿四頭筋(Quadriceps)、及び心筋(Heart)におけるDmpk遺伝子の発現抑制効果を示す図である。Dmpk/Actb(βアクチン)発現量を1としたときの相対RNA発現レベルを示す。
【
図17】
図17は、二本鎖核酸複合体Chol-HDO(Default)及びChol-cRNA(CU OMe)、並びに陰性対照用のPBSによる、腎臓及び肝臓におけるDmpk遺伝子の発現抑制効果を示す図である。Dmpk/Actb(βアクチン)発現量を1としたときの相対RNA発現レベルを示す。
【
図18】
図18は、実施例5で用いた核酸の構造を示す模式図である。Cholはコレステロールを示す。
図18AはASO(hSOD1)及びChol-cRNA(Default)を含む二本鎖核酸複合体Chol-HDO(Default)を示す。
図18BはASO(hSOD1)及びChol-cRNA(CU OMe)を含む二本鎖核酸複合体Chol-HDO(CU OMe)を示す。
【
図19】
図19は、二本鎖核酸複合体Chol-HDO(Default)及びChol-cRNA(CU OMe)、並びに陰性対照用のPBSによる、固有背筋(Back)、大腿四頭筋(Quadriceps)、心筋(Heart)及び横隔膜(Diaphragm)におけるSOD1遺伝子の発現抑制効果を示す図である。SOD1/Actb(βアクチン)発現量を1としたときの相対RNA発現レベルを示す。
【
図20】
図20は、実施例6で用いた核酸の構造を示す模式図である。Cholはコレステロールを示す。
図20AはASO(Malat1)及びChol-cRNA(Default)を含む二本鎖核酸複合体Chol-HDO(Default)を示す。
図20BはASO(Malat1)及びChol-cRNA(CT DNA)を含む二本鎖核酸複合体Chol-HDO(CT DNA)を示す。
【
図21】
図21は、二本鎖核酸複合体Chol-HDO(Default)及びChol-cRNA(CU OMe)、並びに陰性対照用のPBSによる、頸部脊髄(Cervical spinal cord)におけるMalat1遺伝子の発現抑制効果を示す図である。Malat1/Actb(βアクチン)発現量を1としたときの相対RNA発現レベルを示す。
【
図22A】
図22Aは、実施例7で用いたオリゴヌクレオチドの配列、化学修飾及び構造を示している。
【
図22B】
図22Bは、実施例7で用いたオリゴヌクレオチドの配列、化学修飾及び構造を示している。
【
図23】
図23は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む第1核酸鎖と、修飾リボヌクレオシドを含む相補鎖(第2核酸鎖)とを含む二本鎖核酸複合体をマウス血清と記載の時間 (0hr, 24hr) 混合し、電気泳動により安定性を検討した結果である。
【
図24】
図24は、
図23の電気泳動結果に基づく24hr後の二本鎖バンドの濃度を、0hr後の二本鎖バンドに対する相対強度レベル(%)で示したグラフである。
【
図25】
図25は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む第1核酸鎖と、修飾リボヌクレオシドを含む相補鎖(第2核酸鎖)とを含む二本鎖核酸複合体をヒト血清と記載の時間 (0hr, 2hr) 混合し、電気泳動により安定性を検討した結果である。
【
図26】
図26は、
図25の電気泳動結果に基づく2hr後の二本鎖バンドの濃度を、0hr後の二本鎖バンドに対する相対強度レベル(%)で示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<核酸複合体>
一態様において、本発明は、第1核酸鎖と第2核酸鎖とを含み、該第1核酸鎖は該第2核酸鎖にアニールしている、核酸複合体に関する。第1核酸鎖は、(1)標的転写産物の少なくとも一部にハイブリダイズすることができ、(2)標的転写産物に対してアンチセンス効果を有し、かつ(3)ギャップマーである。本発明の核酸複合体、及びそれを構成する核酸鎖について、以下に詳細に説明する。
【0015】
第1核酸鎖は、標的転写産物に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド領域を含む又はそれからなる、ヌクレオチド鎖であってよい。「アンチセンスオリゴヌクレオチド」又は「アンチセンス核酸」とは、標的転写産物(主として標的遺伝子の転写産物)の少なくとも一部にハイブリダイズすることが可能な(すなわち、相補的な)塩基配列を含み、標的転写産物にアンチセンス効果をもたらすことができる、一本鎖オリゴヌクレオチドを指す。本発明では、第1核酸鎖中のアンチセンスオリゴヌクレオチド領域により、標的転写産物にアンチセンス効果をもたらすことができる。標的転写産物の標的領域は、少なくとも8塩基長、例えば、10~35塩基長、12~25塩基長、13~20塩基長、14~19塩基長、もしくは15~18塩基長、又は13~22塩基長、16~22塩基長、もしくは16~20塩基長とすることができる。
【0016】
「アンチセンス効果」とは、標的転写産物(RNAセンス鎖)と、転写産物等の部分配列に相補的で、かつアンチセンス効果を引き起こすように設計された鎖(例えばDNA鎖)との、ハイブリダイゼーションの結果として生じる、標的転写産物の発現調節を意味する。標的転写産物の発現調節は、標的遺伝子の発現又は標的転写産物のレベル(発現量)を抑制する又は低下させること、又は、特定の例においては、翻訳の阻害又はスプライシング機能改変効果、例えばエクソンスキッピング、あるいは、転写産物の分解を含む(
図3参照)。例えば、翻訳の阻害では、RNAを含むオリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)として細胞に導入されると、ASOは、標的遺伝子の転写産物(mRNA)に結合し、部分的二本鎖が形成される。この部分的二本鎖は、リボソームによる翻訳を妨げるためのカバーとしての役割を果たし、このため標的遺伝子によりコードされるタンパク質の発現が翻訳レベルで阻害される(
図3破線外×印)。一方、DNAを含むオリゴヌクレオチドがASOとして細胞に導入されると、部分的DNA-RNAヘテロ二本鎖が形成される。このヘテロ二本鎖構造がRNase Hによって認識され、その結果、標的遺伝子のmRNAが分解されるため、標的遺伝子によってコードされるタンパク質の発現が発現レベルで阻害される(
図3破線内)。これは、「RNase H依存性経路」と称される。さらに、特定の例において、アンチセンス効果は、mRNA前駆体のイントロンを標的化することによってもたらされ得る。アンチセンス効果はまた、miRNAを標的化することによってもたらされてもよく、この場合、当該miRNAの機能は阻害され、当該miRNAが通常発現を制御している遺伝子の発現は増加し得る。一実施形態では、標的転写産物の発現調節は、標的転写産物量の低下であり得る。
【0017】
第1核酸鎖中のアンチセンスオリゴヌクレオチド領域は、標的転写産物の少なくとも一部(例えば、任意の標的領域)にハイブリダイズし得る塩基配列を含む。標的領域は、3'UTR、5'UTR、エクソン、イントロン、コード領域、翻訳開始領域、翻訳終結領域又は他の核酸領域を含んでよい。
【0018】
アンチセンス効果によってその発現が調節(例えば、抑制、変更、又は改変)される「標的遺伝子」としては特に限定されないが、例えば、様々な疾患において、その発現が増加する遺伝子が挙げられる。また、標的転写産物には、標的遺伝子をコードするゲノムDNAから転写されるmRNAであり、さらにまた、塩基修飾を受けていないmRNA、プロセシングされていないmRNA前駆体等を含む。「標的転写産物」は、mRNAだけでなく、miRNA等のノンコーディングRNA(non-coding RNA、ncRNA)も含み得る。さらに一般的に「転写産物」は、DNA依存性RNAポリメラーゼによって合成される任意のRNAであってよい。一実施形態では、「標的転写産物」は、例えば、スカベンジャー受容体B1(scavenger receptor B1:本明細書ではしばしば「SR-B1」と表記する)、筋強直性ジストロフィープロテインキナーゼ(myotonic dystrophy protein kinase、本明細書ではしばしば「DMPK」と表記する)、トランスサイレチン(transthyretin:本明細書ではしばしば「TTR」と表記する)、アポリポ蛋白B(Apolipoprotein B:本明細書ではしばしば「ApoB」と表記する)、転移関連肺腺癌転写産物1(metastasis associated lung adenocarcinoma transcript 1:本明細書ではしばしば「Malat1」と表記する)の遺伝子、例えばこれらのノンコーディングRNA又はmRNAであってもよい。配列番号1にマウスMalat1ノンコーディングRNAの塩基配列を、配列番号2にヒトMalat1ノンコーディングRNAの塩基配列を示す。また、配列番号39にマウスSR-B1 mRNAの塩基配列を、配列番号40にヒトSR-B1 mRNAの塩基配列を示す。そして、配列番号41にマウスDMPK mRNAの塩基配列を、配列番号42にヒトDMPK mRNAの塩基配列を示す。なお、配列番号1~2、及び39~42は、いずれもmRNAの塩基配列をDNAの塩基配列に置き換えている。これらの遺伝子及び転写産物の塩基配列情報は、例えばNCBI(米国国立生物工学情報センター)データベース(例、GenBank、Trace Archive、Sequence Read Archive、BioSample、BioProject)等の公知のデータベースから入手できる。標的転写産物の標的領域は、例えば、マウスMalat-1ノンコーディングRNAの場合は配列番号1の1317~1332位の塩基配列を含んでもよい。
【0019】
本明細書中で使用される用語「核酸」又は「核酸分子」は、モノマーのヌクレオチド又はヌクレオシドを指してもよいし、複数のモノマーからなるオリゴヌクレオチドを意味してもよい。用語「核酸鎖」又は「鎖」もまた、本明細書中ではオリゴヌクレオチドを指すために使用される。核酸鎖は、化学的合成法により(例えば自動合成装置を使用して)、又は酵素的工程(例えば、限定するものではないが、ポリメラーゼ、リガーゼ、又は制限反応)により、全長鎖又は部分鎖を作製することができる。
【0020】
本明細書中で使用される用語「核酸塩基」又は「塩基」とは、核酸を構成する塩基成分(複素環部分)であって、主としてアデニン、グアニン、シトシン、チミン、及びウラシルが知られる。
【0021】
本明細書中で使用される用語「相補的」とは、核酸塩基が水素結合を介して、いわゆるワトソン-クリック塩基対(天然型塩基対)又は非ワトソン-クリック塩基対(フーグスティーン型塩基対など)を形成し得る関係を意味する。本発明において、第1核酸鎖中のアンチセンスオリゴヌクレオチド領域は、標的転写産物(例えば、標的遺伝子の転写産物)の少なくとも一部と完全に相補的であることは必ずしも必要ではなく、塩基配列が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%(例えば、95%、96%、97%、98%、又は99%以上)の相補性を有していれば許容される。第1核酸鎖中のアンチセンスオリゴヌクレオチド領域は、塩基配列が相補的である場合に(典型的には、塩基配列が標的転写産物の少なくとも一部の塩基配列に相補的である場合に)、標的転写産物にハイブリダイズすることができる。同様に、第2核酸鎖中の相補的領域は、第1核酸鎖の少なくとも一部と完全に相補的であることは必ずしも必要ではなく、塩基配列が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%(例えば、95%、96%、97%、98%、又は99%以上)の相補性を有していれば許容される。第2核酸鎖中の相補的領域は、第1核酸鎖の少なくとも一部と塩基配列が相補的である場合に、アニールすることができる。塩基配列の相補性は、BLASTプログラムなどを使用することによって決定することができる。当業者であれば、鎖間の相補度を考慮して、2本の鎖がアニール又はハイブリダイズし得る条件(温度、塩濃度等)を容易に決定することができる。またさらに、当業者であれば、例えば標的遺伝子の塩基配列の情報に基づいて、標的転写産物に相補的なアンチセンス核酸を容易に設計することができる。
【0022】
ハイブリダイゼーション条件は、例えば、低ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件などの様々なストリンジェントな条件であってもよい。低ストリンジェントな条件は、比較的低温で、かつ高塩濃度の条件、例えば、30℃、2×SSC、0.1%SDSであってよい。高ストリンジェントな条件は、比較的高温で、かつ低塩濃度の条件、例えば、65℃、0.1×SSC、0.1%SDSであってよい。温度及び塩濃度などの条件を変えることによって、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを調整できる。ここで、1×SSCは、150mM塩化ナトリウム及び15mMクエン酸ナトリウムを含む。
【0023】
第1核酸鎖中のアンチセンスオリゴヌクレオチド領域は、通常、少なくとも8塩基長、少なくとも9塩基長、少なくとも10塩基長、少なくとも11塩基長、少なくとも12塩基長、又は少なくとも13塩基長であってよいが、特に限定されない。第1核酸鎖中のアンチセンスオリゴヌクレオチド領域は、35塩基長以下、30塩基長以下、25塩基長以下、24塩基長以下、23塩基長以下、22塩基長以下、21塩基長以下、20塩基長以下、19塩基長以下、18塩基長以下、17塩基長以下又は16塩基長以下であってよい。第1核酸鎖中のアンチセンスオリゴヌクレオチド領域は、例えば、8~35塩基長、9~30塩基長、10~25塩基長、10~20塩基長、11~18塩基長もしくは12~16塩基長、又は13~22塩基長、16~22塩基長、もしくは16~20塩基長であってもよい。
【0024】
第1核酸鎖は、特に限定されないが、少なくとも9塩基長、少なくとも10塩基長、少なくとも11塩基長、少なくとも12塩基長又は少なくとも13塩基長であってよい。第1核酸鎖は、50塩基長以下、45塩基長以下、40塩基長以下、35塩基長以下、30塩基長以下、28塩基長以下、26塩基長以下、24塩基長以下、22塩基長以下、20塩基長以下、18塩基長以下、又は16塩基長以下であってよい。第1核酸鎖は、例えば、9~50塩基長、10~40塩基長、11~35塩基長、12~30塩基長、もしくは13~20塩基長、又は13~22塩基長、16~22塩基長、もしくは16~20塩基長であってもよい。
【0025】
第2核酸鎖中の相補的領域は、通常、少なくとも8塩基長、少なくとも9塩基長、少なくとも10塩基長、少なくとも11塩基長、少なくとも12塩基長、又は少なくとも13塩基長であってよいが、特に限定されない。第2核酸鎖中の相補的領域は、35塩基長以下、30塩基長以下、25塩基長以下、24塩基長以下、23塩基長以下、22塩基長以下、21塩基長以下、20塩基長以下、19塩基長以下、18塩基長以下、17塩基長以下又は16塩基長以下であってよい。一実施形態では、第2核酸鎖中の相補的領域は、9~35塩基長、9~30塩基長、10~25塩基長、10~20塩基長、11~18塩基長もしくは12~16塩基長である。一実施形態では、第2核酸鎖中の相補的領域は、13~22塩基長、16~22塩基長、もしくは16~20塩基長である。一実施形態では、第2核酸鎖中の相補的領域は、8~35塩基長、8~30塩基長、8~25塩基長、8~20塩基長、8~16塩基長、8~12塩基長、8~10塩基長である。
【0026】
第2核酸鎖は、特に限定されないが、少なくとも5塩基長、少なくとも6塩基長、少なくとも7塩基長、少なくとも8塩基長、少なくとも9塩基長、少なくとも10塩基長、少なくとも11塩基長、少なくとも12塩基長又は少なくとも13塩基長であってよい。第2核酸鎖は、50塩基長以下、45塩基長以下、40塩基長以下、35塩基長以下、30塩基長以下、28塩基長以下、26塩基長以下、24塩基長以下、22塩基長以下、20塩基長以下、18塩基長以下、16塩基長以下、14塩基長以下、12塩基長以下、10塩基長以下、9塩基長以下であってよい。第2核酸鎖は、例えば、9~50塩基長、10~40塩基長、11~35塩基長、12~30塩基長、もしくは13~20塩基長、13~22塩基長、16~22塩基長、もしくは16~20塩基長、又は5~14塩基長、6~12塩基長、6~10塩基長、7~10塩基長、8~10塩基長、8~9塩基長、もしくは7~9塩基長であってもよい。長さの選択は、一般的に、例えば費用、合成収率などの他の因子の中でも特に、アンチセンス効果の強度と標的に対する核酸鎖の特異性とのバランスによって決まる。
【0027】
第2核酸鎖は、第1核酸鎖の少なくとも一部に相補的な相補的領域を含む、又はそれからなる。
【0028】
一実施形態では、第2核酸鎖中の相補的領域は、第1核酸鎖中のアンチセンスオリゴヌクレオチド領域の少なくとも一部に相補的であり得る。第2核酸鎖中の相補的領域は、第1核酸鎖中のアンチセンスオリゴヌクレオチド領域全部に相補的であってもよい。第2核酸鎖中の相補的領域は、第1核酸鎖中のアンチセンスオリゴヌクレオチド領域に加えて、それ以外の部分に相補的であってもよい。本実施形態の一例としては、国際公開第2013/089283号、Nishina K, et. al., Nature Communication, 2015, 6:7969、及びAsami Y, et al., Drug Discoveries &Therapeutics. 2016; 10(5):256-262に開示されるヘテロ二本鎖オリゴヌクレオチド(heteroduplex oligonucleotide、HDO)がある(
図1A及びB)。
【0029】
さらなる実施形態では、第2核酸鎖は、相補的領域の5'末端側及び3'末端側の一方又は両方に位置する少なくとも1つのオーバーハング領域をさらに含み得る。本実施形態の一例は、国際公開第2018/062510に記載される。「オーバーハング領域」とは、相補的領域に隣接する領域で、第1核酸鎖と第2核酸鎖がアニールして二本鎖構造を形成した場合、第2核酸鎖の5'末端が第1核酸鎖の3'末端を超えて伸長する、及び/又は第2核酸鎖の3'末端が第1核酸鎖の5'末端を超えて伸長する、つまり、二本鎖構造から突出した第2核酸鎖中のヌクレオチド領域を指す。第2核酸鎖中のオーバーハング領域は、相補的領域の5'末端側に位置してもよく(
図2A)、3'末端側に位置してもよい(
図2B)。第2核酸鎖中のオーバーハング領域は、相補的領域の5'末端側及び3'末端側に位置してもよい(
図2C)。
【0030】
一般に、「ヌクレオシド」は、塩基及び糖の組み合わせである。ヌクレオシドの核酸塩基(塩基としても知られる)部分は、通常は、複素環式塩基部分である。「ヌクレオチド」は、ヌクレオシドの糖部分に共有結合したリン酸基をさらに含む。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドでは、リン酸基は、糖の2'、3'、又は5'ヒドロキシル部分に連結可能である。オリゴヌクレオチドは、互いに隣接するヌクレオシドの共有結合によって形成され、直鎖ポリマーオリゴヌクレオチドを形成する。オリゴヌクレオチド構造の内部で、リン酸基は、一般に、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間結合を形成するとみなされている。
【0031】
核酸鎖は、天然ヌクレオチド及び/又は非天然ヌクレオチドを含み得る。「天然ヌクレオチド」は、DNA中に見られるデオキシリボヌクレオチド及びRNA中に見られるリボヌクレオチドを含む。「デオキシリボヌクレオチド」及び「リボヌクレオチド」は、それぞれ、「DNAヌクレオチド」及び「RNAヌクレオチド」と称することもある。
【0032】
同様に、「天然ヌクレオシド」は、DNA中に見られるデオキシリボヌクレオシド及びRNA中に見られるリボヌクレオシドを含む。「デオキシリボヌクレオシド」及び「リボヌクレオシド」は、それぞれ、「DNAヌクレオシド」及び「RNAヌクレオシド」と称することもある。
【0033】
「非天然ヌクレオチド」は、天然ヌクレオチド以外の任意のヌクレオチドを指し、修飾ヌクレオチド及びヌクレオチド模倣体を含む。同様に、「非天然ヌクレオシド」は、天然ヌクレオシド以外の任意のヌクレオシドを指し、修飾ヌクレオシド及びヌクレオシド模倣体を含む。「修飾ヌクレオチド」とは、修飾糖部分、修飾ヌクレオシド間結合、及び修飾核酸塩基のいずれか1つ以上を有するヌクレオチドを意味する。「修飾ヌクレオシド」とは、修飾糖部分及び/又は修飾核酸塩基を有するヌクレオシドを意味する。非天然オリゴヌクレオチドを含む核酸鎖は、多くの場合、例えば、細胞取り込みの強化、核酸標的への親和性の強化、ヌクレアーゼ存在下での安定性の増加、又は阻害活性の増加等の望ましい特性により、天然型よりも好ましい。
【0034】
「修飾ヌクレオシド間結合」とは、天然に存在するヌクレオシド間結合(すなわち、ホスホジエステル結合)からの置換又は任意の変化を有するヌクレオシド間結合を指す。修飾ヌクレオシド間結合には、リン原子を含むヌクレオシド間結合、及びリン原子を含まないヌクレオシド間結合が含まれる。代表的なリン含有ヌクレオシド間結合としては、ホスホジエステル結合、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホトリエステル結合(米国特許登録番号5,955,599記載のメチルホスホトリエステル結合、エチルホスホトリエステル結合)、アルキルホスホネート結合(例、米国特許登録番号5,264,423及び5,286,717記載のメチルホスホネート結合、国際公開第2015/168172号記載のメトキシプロピルホスホネート結合)、アルキルチオホスホネート結合、メチルチオホスホネート結合、ボラノホスフェート結合、環状グアニジン部分を含むヌクレオシド間結合(例、以下の式(II)で表される部分構造:
【化3】
)、1~4個のC
1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分(例えば、テトラメチルグアニジン(TMG)部分)を含むヌクレオシド間結合(例、以下の式(III)で表される部分構造:
【化4】
)、国際公開第2016/081600号記載の自己中和核酸(ZON)に用いられるヌクレオシド間結合及びホスホロアミデート結合が挙げられるが、これらに限定されない。ホスホロチオエート結合は、ホスホジエステル結合の非架橋酸素原子を硫黄原子に置換したヌクレオシド間結合を指す。リン含有及び非リン含有結合の調製方法は周知である。修飾ヌクレオシド間結合は、ヌクレアーゼ耐性が天然に存在するヌクレオシド間結合よりも高い結合であることが好ましい。
【0035】
ヌクレオシド間結合がキラル中心を有する場合、ヌクレオシド間結合はキラル制御されたものであってもよい。「キラル制御された」とは、キラル中心、例えばキラル結合リンに関して単一のジアステレオマーで存在することを意図する。キラル制御されたヌクレオシド間結合は、完全にキラル純粋なものであってもよいし、キラル純度が高いもの、例えば90%de、95%de、98%de、99%de、99.5%de、99.8%de、99.9%de、又はそれ以上のキラル純度を有するものであってよい。本明細書において「キラル純度」は、ジアステレオマーの混合物中の1つのジアステレオマーの割合を指し、ジアステレオマー過剰率(%de)として表され、(対象のジアステレオマー-その他のジアステレオマー)/(総ジアステレオマー)×100(%)として定義される。
【0036】
例えば、ヌクレオシド間結合は、Rp配置又はSp配置にキラル制御されたホスホロチオエート結合、1~4個のC1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分(例えば、テトラメチルグアニジン(TMG)部分;例えばAlexander A. Lomzov et al., Biochem Biophys Res Commun., 2019, 513(4), 807-811を参照のこと)を含むヌクレオシド間結合(例、式(III)で表される部分構造)、及び/又は環状グアニジン部分を含むヌクレオシド間結合(例、式(II)で表される部分構造)であってよい。キラル制御されたヌクレオシド間結合の調製方法は公知であり、例えばRp配置又はSp配置にキラル制御されたホスホロチオエート結合は、Naoki Iwamoto et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 2009, 48(3), 496-9、Natsuhisa Oka et al., J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 8307-8317、Natsuhisa Oka et al.,J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 16031-16037、Yohei Nukaga et al., J. Org. Chem. 2016, 81, 2753-2762、YoheiNukaga et al., J. Org. Chem. 2012, 77, 7913-7922に記載の方法に従って合成することができる。Rp配置又はSp配置にキラル制御されたホスホロチオエート結合も公知であり、例えばNaoki Iwamoto et al., Nat. Biotechnol,. 2017, 35(9), 845-851、Anastasia Khvorova et al., Nat. Biotechnol., 2017, 35(3), 238-248に記載されるような効果を奏することが知られている。例えば、一実施形態において、Sp配置にキラル制御されたホスホロチオエート結合は、Rp配置のものよりも安定であり、及び/又はSp配置にキラル制御されたASOは、RNase H1による標的RNA切断を促進し、生体内でより持続的な応答をもたらす。1~4個のC1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分(例えば、TMG部分)を含むヌクレオシド間結合の調製方法は公知であり、例えばAlexander A. Lomzov et al., Biochem Biophys Res Commun., 2019, 513(4), 807-811に記載の方法に従って合成することができる。
【0037】
本明細書において「核酸塩基」又は「塩基」は、特に断りのない場合、修飾又は非修飾の核酸塩基(塩基)のいずれをも包含する。したがって、特に断りのない場合、プリン塩基は修飾又は非修飾のプリン塩基のいずれであってもよい。また、特に断りのない場合、ピリミジン塩基は修飾又は非修飾のピリミジン塩基のいずれであってもよい。
【0038】
「修飾核酸塩基」又は「修飾塩基」とは、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、又はウラシル以外のあらゆる核酸塩基を意味する。「非修飾核酸塩基」又は「非修飾塩基」(天然核酸塩基)とは、プリン塩基であるアデニン(A)及びグアニン(G)、並びにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)、及びウラシル(U)を意味する。修飾核酸塩基の例としては、5-メチルシトシン、5-フルオロシトシン、5-ブロモシトシン、5-ヨードシトシン又はN4-メチルシトシン; N6-メチルアデニン又は8-ブロモアデニン;2-チオ-チミン;並びにN2-メチルグアニン又は8-ブロモグアニンが挙げられるが、これらに限定されない。修飾核酸塩基は、好ましくは、5-メチルシトシンである。
【0039】
「修飾糖」とは、天然糖部分(すなわち、DNA(2'-H)又はRNA(2'-OH)中に認められる糖部分)からの置換及び/又は任意の変化を有する糖を指し、「糖修飾」とは、天然糖部分からの置換及び/又は任意の変化をいう。核酸鎖は、場合により、修飾糖を含む1つ以上の修飾ヌクレオシドを含んでもよい。「糖修飾ヌクレオシド」とは、修飾糖部分を有するヌクレオシドをいう。かかる糖修飾ヌクレオシドは、ヌクレアーゼ安定性の強化、結合親和性の増加、又は他の何らかの有益な生物学的特性を核酸鎖に付与し得る。特定の実施形態では、ヌクレオシドは、化学修飾リボフラノース環部分を含む。化学修飾リボフラノース環の例としては、限定するものではないが、置換基(5'及び2'置換基を含む)の付加、非ジェミナル環原子の架橋形成による二環式核酸(架橋核酸、BNA)の形成、リボシル環酸素原子のS、N(R)、又はC(R1)(R2)(R、R1及びR2は、それぞれ独立して、H、C1-C12アルキル、又は保護基を表す)での置換、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
糖修飾ヌクレオシドの例としては、限定するものではないが、5'-ビニル、5'-メチル(R又はS)、5'-アリル(R又はS)、4'-S、2'-F(2'-フルオロ基)、2'-OCH3(2'-OMe基もしくは2'-O-メチル基)、及び2'-O(CH2)2OCH3置換基を含むヌクレオシドが挙げられる。2'位の置換基はまた、アリル、アミノ、アジド、チオ、-O-アリル、-O-C1-C10アルキル、-OCF3、-O(CH2)2SCH3、-O(CH2)2-O-N(Rm)(Rn)、及びO-CH2-C(=O)-N(Rm)(Rn)から選択することができ、各Rm及びRnは、独立して、H又は置換もしくは非置換C1-C10アルキルである。「2'-修飾糖」は、2'位で修飾されたフラノシル糖を意味する。2'-修飾糖を含むヌクレオシドを「2'-糖修飾ヌクレオシド」と称することもある。
【0041】
「二環式ヌクレオシド」は、二環式糖部分を含む修飾ヌクレオシドを指す。二環式糖部分を含む核酸は、一般に架橋核酸(bridged nucleic acid、BNA)と称される。二環式糖部分を含むヌクレオシドは、「架橋ヌクレオシド」又は「BNAヌクレオシド」と称することもある。
図4に架橋核酸を一部例示する。
【0042】
二環式糖は、2'位の炭素原子及び4'位の炭素原子が2つ以上の原子によって架橋されている糖であってよい。二環式糖の例は当業者に公知である。二環式糖を含む核酸(BNA)又はBNAヌクレオシドの1つのサブグループは、4'-(CH
2)
p-O-2'、4'-(CH
2)
p-CH
2-2'、4'-(CH
2)
p-S-2'、4'-(CH
2)
p-OCO-2'、4'-(CH
2)
n-N(R
3)-O-(CH
2)
m-2'[式中、p、m及びnは、それぞれ1~4の整数、0~2の整数、及び1~3の整数を表し;またR
3は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、スルホニル基、及びユニット置換基(蛍光もしくは化学発光標識分子、核酸切断活性を有する機能性基、細胞内又は核内局在化シグナルペプチド等)を表す]により架橋された2'位の炭素原子と4'位の炭素原子を有すると説明することができる。さらに、特定の実施形態によるBNA又はBNAヌクレオシドに関し、3'位の炭素原子上のOR
2置換基及び5'位の炭素原子上のOR
1置換基において、R
1及びR
2は、典型的には水素原子であるが、互いに同一であっても異なっていてもよく、さらにまた、核酸合成のためのヒドロキシル基の保護基、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、スルホニル基、シリル基、リン酸基、核酸合成のための保護基によって保護されているリン酸基、又はP(R
4)R
5[ここで、R
4及びR
5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれヒドロキシル基、核酸合成のための保護基によって保護されているヒドロキシル基、メルカプト基、核酸合成のための保護基によって保護されているメルカプト基、アミノ基、1~5個の炭素原子を有するアルコキシ基、1~5個の炭素原子を有するアルキルチオ基、1~6個の炭素原子を有するシアノアルコキシ基、又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基で置換されているアミノ基を表す]であってもよい。このようなBNAの非限定的な例としては、メチレンオキシ(4'-CH
2-O-2')BNA(LNA(Locked Nucleic Acid(登録商標)、2',4'-BNAとしても知られている)(例えば、α-L-メチレンオキシ(4'-CH
2-O-2')BNAもしくはβ-D-メチレンオキシ(4'-CH
2-O-2')BNA)、エチレンオキシ(4'-(CH
2)
2-O-2')BNA(ENAとしても知られている)、β-D-チオ(4'-CH
2-S-2')BNA、アミノオキシ(4'-CH
2-O-N(R
3)-2')BNA、オキシアミノ(4'-CH
2-N(R
3)-O-2')BNA(2',4'-BNA
NCとしても知られている;R=Hは2',4'-BNA
NC[N-H]、R=Meは2',4'-BNA
NC[N-Me])、2',4'-BNA
coc、3'-アミノ-2',4'-BNA、5'-メチルBNA、(4'-CH(CH
3)-O-2')BNA(cEt BNAとしても知られている)、(4'-CH(CH
2OCH
3)-O-2')BNA(cMOE BNAとしても知られている)、アミドBNA、(4'-C(O)-N(R)-2')BNA(R=H、Me)(AmNAとしても知られている;R=HはAmNA[N-H]、R=MeはAmNA[N-Me]))、グアニジンBNA(GuNA(例、
図4のR=HはGuNA[N-H]、R=MeはGuNA[N-Me])としても知られる)、アミンBNA(2'-Amino-LNAとしても知られている)(例、3-(Bis(3-アミノプロピル)アミノ)プロパノイル置換体)、2'-O,4'-C-スピロシクロプロピレン架橋型核酸(scpBNAとしても知られている)及び当業者に公知の他のBNAが挙げられる。このようなBNAヌクレオシドの非限定的な例としては、メチレンオキシ(4'-CH
2-O-2')BNAヌクレオシド(LNAヌクレオシド、2',4'-BNAヌクレオシドとしても知られている)(例、α-L-メチレンオキシ(4'-CH
2-O-2')BNAヌクレオシド、β-D-メチレンオキシ(4'-CH
2-O-2')BNAヌクレオシド)、エチレンオキシ(4'-(CH
2)
2-O-2')BNAヌクレオシド(ENAヌクレオシドとしても知られている)、β-D-チオ(4'-CH
2-S-2')BNAヌクレオシド、アミノオキシ(4'-CH
2-O-N(R
3)-2')BNAヌクレオシド、オキシアミノ(4'-CH
2-N(R
3)-O-2')BNAヌクレオシド(2',4'-BNA
NCヌクレオシドとしても知られている;R=Hは2',4'-BNA
NC[N-H]ヌクレオシド、R=Meは2',4'-BNA
NC[N-Me]ヌクレオシド)、2',4'-BNA
cocヌクレオシド、3'-アミノ-2',4'-BNAヌクレオシド、5'-メチルBNAヌクレオシド、(4'-CH(CH
3)-O-2')BNAヌクレオシド(cEtヌクレオシドとしても知られている)、(4'-CH(CH
2OCH
3)-O-2')BNAヌクレオシド(cMOEヌクレオシドとしても知られている)、アミドBNAヌクレオシド、(4'-C(O)-N(R)-2')BNAヌクレオシド(R=H、Me)(AmNAヌクレオシドとしても知られている;R=HはAmNA[N-H] ヌクレオシド、R=MeはAmNA[N-Me]ヌクレオシド))、グアニジンBNAヌクレオシド(GuNAヌクレオシド(例、
図4のR=HはGuNA[N-H]ヌクレオシド、R=MeはGuNA[N-Me]ヌクレオシド)としても知られる)、アミンBNAヌクレオシド(2'-Amino-LNAヌクレオシドとしても知られている)(例、3-(Bis(3-アミノプロピル)アミノ)プロパノイル置換ヌクレオシド)、2'-O,4'-C-スピロシクロプロピレン架橋ヌクレオシド(scpBNAヌクレオシドとしても知られている)及び当業者に公知の他のBNAヌクレオシドが挙げられる。
【0043】
本明細書において、「カチオン性ヌクレオシド」は、あるpH(たとえば、ヒトの生理学的pH(約7.4)、送達部位(たとえば、オルガネラ、細胞、組織、臓器、生物体等)のpH等)において、中性形態(リボヌクレオシドの中性形態等)と比較して、カチオン形態として存在する修飾ヌクレオシドである。カチオン性ヌクレオシドはヌクレオシドの任意の位置に1つ以上のカチオン性修飾基を含んでもよい。一実施形態では、カチオン性ヌクレオシドは、2'-Amino-LNAヌクレオシド(例、3-(Bis(3-アミノプロピル)アミノ)プロパノイル置換ヌクレオシド)、アミノアルキル修飾ヌクレオシド(例、2'-O-メチル及び4'-CH
2CH
2CH
2NH
2置換ヌクレオシド)、GuNAヌクレオシド(例、
図3のR=HはGuNA[N-H]ヌクレオシド、R=MeはGuNA[N-Me]ヌクレオシド)等である。
【0044】
メチレンオキシ(4'-CH2-O-2')架橋を有する二環式ヌクレオシドを、LNAヌクレオシドと称することもある。
【0045】
修飾糖の調製方法は、当業者に周知である。修飾糖部分を有するヌクレオチドにおいて、核酸塩基部分(天然、修飾、又はそれらの組み合わせ)は、適切な核酸標的とのハイブリダイゼーションのために維持されてよい。
【0046】
「ヌクレオシド模倣体」は、オリゴマー化合物の1つ以上の位置において糖又は糖及び塩基、並びに必ずではないが結合を置換するために使用される構造体を含む。「オリゴマー化合物」とは、核酸分子の少なくともある領域にハイブリダイズ可能な連結したモノマーサブユニットのポリマーを意味する。ヌクレオシド模倣体としては、例えば、モルホリノ、シクロヘキセニル、シクロヘキシル、テトラヒドロピラニル、二環式又は三環式糖模倣体、例えば、非フラノース糖単位を有するヌクレオシド模倣体が挙げられる。「ヌクレオチド模倣体」は、オリゴマー化合物の1つ以上の位置において、ヌクレオシド及び結合を置換するために使用される構造体を含む。ヌクレオチド模倣体としては、例えば、ペプチド核酸又はモルホリノ核酸(-N(H)-C(=O)-O-又は他の非ホスホジエステル結合によって結合されるモルホリノ)が挙げられる。ペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid、PNA)は、糖の代わりにN-(2-アミノエチル)グリシンがアミド結合で結合した主鎖を有するヌクレオチド模倣体である。モルホリノ核酸の構造の一例は、
図5に示される。「模倣体」とは、糖、核酸塩基、及びヌクレオシド間結合の1つ以上を置換する基を指す。一般に、模倣体は、糖、又は糖及びヌクレオシド間結合の組み合わせの代わりに使用され、核酸塩基は、選択される標的に対するハイブリダイゼーションのために維持される。
【0047】
一般的には、修飾は、同一鎖中のヌクレオチドが独立して異なる修飾を受けることができるように実施することができる。また、酵素的切断に対する抵抗性を与えるため、同一のヌクレオチドが、修飾ヌクレオシド間結合(例えば、ホスホロチオエート結合)を有し、さらに、修飾糖(例えば、2'-O-メチル修飾糖又は二環式糖)を有することができる。同一のヌクレオチドはまた、修飾核酸塩基(例えば、5-メチルシトシン)を有し、さらに、修飾糖(例えば、2'-O-メチル修飾糖又は二環式糖)を有することができる。
【0048】
核酸鎖における非天然ヌクレオチドの数、種類及び位置は、核酸複合体によって提供されるアンチセンス効果などに影響を及ぼし得る。修飾の選択は、標的遺伝子などの配列によって異なり得るが、当業者であれば、アンチセンス法に関連する文献(例えば、WO 2007/143315、WO 2008/043753、及びWO 2008/049085)の説明を参照することによって好適な実施形態を決定することができる。さらに、修飾後の核酸複合体が有するアンチセンス効果が測定される場合、このようにして得られた測定値が修飾前の核酸複合体の測定値と比較して有意に低くない場合(例えば、修飾後に得られた測定値が、修飾前の核酸複合体の測定値の70%以上、80%以上又は90%以上である場合)、関連修飾を評価することができる。
【0049】
アンチセンス効果の測定は、例えば、被験核酸化合物を被験体(例えばマウス)に投与し、例えば数日後(例えば2~7日後)に、被験核酸化合物によって提供されるアンチセンス効果により発現が調節される標的遺伝子の発現量又は標的転写産物のレベル(量)(例えば、mRNA量もしくはマイクロRNAなどのRNA量、cDNA量、タンパク質量など)を測定することによって、実施することができる。
【0050】
例えば、測定された標的遺伝子の発現量又は標的転写産物のレベルが、陰性対照(例えばビヒクル投与)と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、又は少なくとも40%減少している場合に、被験核酸化合物がアンチセンス効果(例えば、標的転写産物量の低下)をもたらし得ることが示される。
【0051】
本明細書において、第1核酸鎖はギャップマーである。すなわち、第1核酸鎖中のアンチセンスオリゴヌクレオチド領域は、ギャップマー型のアンチセンスオリゴヌクレオチド領域(ギャップマー型アンチセンスオリゴヌクレオチド領域)である。「ギャップマー(gapmer)型」とは、少なくとも4個の連続デオキシリボヌクレオシドを含む中央領域(DNAギャップ領域)と、その5'末端側及び3'末端側に配置された非天然ヌクレオシドを含む領域(5'ウイング領域及び3'ウイング領域)からなる、ヌクレオシド組成を指す。非天然ヌクレオシドが架橋ヌクレオシドで構成されるギャップマーを、特に「BNA/DNAギャップマー」と称する。DNAギャップ領域の長さは、13~22塩基長、16~22塩基長、もしくは16~20塩基長、又は4~20塩基長、5~18塩基長、6~16塩基長、7~14塩基長もしくは8~12塩基長であってもよい。また、ギャップマーにおける中央領域は、天然ヌクレオシド、核酸の糖部分が修飾されていない非修飾糖(及び修飾又は非修飾ヌクレオシド間結合)を含むか、又はこれからなってよく、例えば13~22塩基長、16~22塩基長、もしくは16~20塩基長、又は4~20塩基長、5~18塩基長、6~16塩基長、7~14塩基長又は8~12塩基が天然ヌクレオシドであるか、又は非修飾糖を含む。中央領域は、例えば、ホスホロチオエート結合等の修飾ヌクレオシド間結合で連結された天然ヌクレオシドを含むか、又はこれからなってよい。
【0052】
5'ウイング領域及び3'ウイング領域の長さは、独立して、通常、1~10塩基長、1~7塩基長、2~5塩基長又は2~3塩基長であってよい。5'ウイング領域及び3'ウイング領域は、非天然ヌクレオシドを少なくとも1種含んでいればよく、天然ヌクレオシドをさらに含んでいてもよい。ギャップマー型アンチセンスオリゴヌクレオチド領域は、2もしくは3個の架橋ヌクレオシドを含む5'ウイング領域、2もしくは3個の架橋ヌクレオシドを含む3'ウイング領域、及びそれらの間のDNAギャップ領域を含むBNA/DNAギャップマー型のヌクレオシド組成を有してもよい。架橋ヌクレオシドは、修飾核酸塩基(例えば、5-メチルシトシン)を含んでもよい。また、ギャップマーは、架橋ヌクレオシドがLNAヌクレオシドで構成される「LNA/DNAギャップマー」であってもよい。5'ウイング領域及び3'ウイング領域は、例えば、ホスホロチオエート結合等の修飾ヌクレオシド間結合で連結された非天然ヌクレオシド、例えば2'-O-メチル修飾ヌクレオシドであってよい。一実施形態において、第1核酸鎖のヌクレオシドは、デオキシリボヌクレオシドを含むか又はこれからなり、例えば第1核酸鎖のヌクレオシドの70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上がデオキシリボヌクレオシドである。
【0053】
第1核酸鎖におけるヌクレオシド間結合は、天然に存在するヌクレオシド間結合及び/又は修飾ヌクレオシド間結合であってよい。
【0054】
第1核酸鎖の5'末端から少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つのヌクレオシド間結合は、修飾ヌクレオシド間結合であってもよい。第1核酸鎖の3'末端から少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つのヌクレオシド間結合は、修飾ヌクレオシド間結合であってもよい。例えば、核酸鎖の末端から2つのヌクレオシド間結合とは、核酸鎖の末端に最も近接するヌクレオシド間結合と、これに隣接し、かつ核酸鎖の末端とは反対方向に位置するヌクレオシド間結合とを指す。核酸鎖の末端領域における修飾ヌクレオシド間結合は、核酸鎖の望ましくない分解を抑制又は阻害できるために、好ましい。
【0055】
修飾ヌクレオシド間結合は、第1核酸鎖中のアンチセンスオリゴヌクレオチド領域のヌクレオシド間結合の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は100%であってよい。また、修飾ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であってよい。
【0056】
第1核酸鎖におけるヌクレオシドは、天然ヌクレオシド(デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、又はその両者を含む)及び/又は非天然ヌクレオシドであってよい。
【0057】
第2核酸鎖は、第1核酸鎖の一部(例えば、第1核酸鎖の中央領域の一部)と相補的な、糖非修飾中央領域(第1露出領域)を少なくとも1個、例えば1~5個、1~4個、1~3個、1~2個、もしくは1個、又は少なくとも2個含む。なお、本明細書では糖非修飾中央領域を主に「第1露出領域」と表記する。
【0058】
第1露出領域は、第1核酸鎖の一部に対して、完全に相補的であってもよく、又は1個以上のミスマッチ塩基を有していてもよい。例えば、第1露出領域は、第1核酸鎖の一部に対して、1~3個、1~2個、又は1個のミスマッチ塩基(非相補的塩基)を有していてもよい。
【0059】
第1露出領域は、1個、又はヌクレオシド間結合により連結された2~3個の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなる。本明細書において、「糖非修飾リボヌクレオシド」とは、天然リボヌクレオシドの糖部分が糖修飾、例えば2'位の置換及び/又は任意の変化を含まないリボヌクレオシドを意味する。第1露出領域は、少なくとも1個の修飾塩基及び/又は修飾ヌクレオシド間結合を含んでもよい。
【0060】
一実施形態において、第1露出領域における糖非修飾リボヌクレオシドは、天然リボヌクレオシドを含み、例えば糖非修飾リボヌクレオシドの全てが天然リボヌクレオシドであるか、その一部、例えば1個又は2個の糖非修飾リボヌクレオシドが天然リボヌクレオシドである。
【0061】
一実施形態において、第2核酸鎖は、第1露出領域を少なくとも1個、例えば1~10個、1~5個、1~4個、1~3個、1~2個、もしくは1個、少なくとも2個、例えば2~10個、2~5個、3~4個、2~3個もしくは2個、又は少なくとも3個、例えば3~10個、3~5個、3~4個もしくは3個含む。
【0062】
一実施形態において、第1露出領域は、ヌクレオシド間結合により連結された2個又は3個の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなる。一実施形態において、第1露出領域は、ヌクレオシド間結合により連結された3個の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなる。本実施形態は、1個又は2個の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなる第1露出領域に比べて、RNase Hによる切断活性が高く維持されるという効果を有し得る。本実施形態は、糖非修飾リボヌクレオシドからなる中央領域に比べて、RNase H依存的及び/又は非依存的経路での活性が維持・向上されるという効果を有し得る。
【0063】
一実施形態において、第1露出領域は、修飾又は非修飾のプリン塩基を含むヌクレオシドを含む。本実施形態は、プリン塩基を含むヌクレオシドを含まない(例えば、ピリミジン塩基を含むヌクレオシドからなる)第1露出領域に比べて、RNase Hによる切断活性を維持しながら、RNase Aによる切断活性が低く抑えられるという効果を有し得る。本実施形態は、プリン塩基を含むヌクレオシドを含まない(例えば、ピリミジン塩基を含むヌクレオシドからなる)第1露出領域に比べて、RNase H依存的及び/又は非依存的経路での活性が維持・向上されるという効果を有し得る。
【0064】
一実施形態において、第2核酸鎖は、防御領域を少なくとも1個、例えば1~10個、1~5個、1~4個、1~3個、1~2個、もしくは1個、少なくとも2個、例えば2~10個、2~5個、3~4個、2~3個もしくは2個、又は少なくとも3個、例えば3~10個、3~5個、3~4個もしくは3個含む。
【0065】
本明細書において「防御領域」とは、核酸分解酵素による切断に耐性を有する領域をいう。ここで、核酸分解酵素は限定しない。核酸分解酵素の一例としては、RNase AやRNase H等が挙げられる。防御領域は、例えば、RNase Aに対する耐性を有する領域、RNase Hに対する耐性を有する領域、又はRNase A及びRNase Hのいずれにも耐性を有する領域であってもよい。また、核酸分解酵素による切断に対する耐性は、完全な耐性である必要はなく、同一塩基配列を有し、非修飾リボヌクレオシドを含む領域と比較して耐性が増大していればよい。
【0066】
防御領域は、1個、又はヌクレオシド間結合により連結された2個以上の(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又(c)は3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドからなる。防御領域は、少なくとも1個の修飾塩基及び/又は修飾ヌクレオシド間結合を含んでもよい。防御領域のデオキシリボヌクレオシド及び/又は糖修飾ヌクレオシドは、好ましくは、デオキシリボヌクレオシド、2'-糖修飾ヌクレオシド(例、2'-O-メチル基を含むヌクレオシド)、架橋ヌクレオシド(例、LNAヌクレオシド)及び/又はカチオン性ヌクレオシドであり、より好ましくは、デオキシリボヌクレオシド、2'-糖修飾ヌクレオシド(例、2'-O-メチル基を含むヌクレオシド)及び/又は架橋ヌクレオシド(例、LNAヌクレオシド)であり、さらに好ましくは、デオキシリボヌクレオシド及び/又は2'-糖修飾ヌクレオシド(例、2'-O-メチル基を含むヌクレオシド)であり、特に好ましくは、デオキシリボヌクレオシド及び/又は2'-O-メチル基を含むヌクレオシドである。防御領域の3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドのヌクレオシドは、好ましくは、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、2'-糖修飾ヌクレオシド(例、2'-O-メチル基を含むヌクレオシド)、架橋ヌクレオシド(例、LNAヌクレオシド)及び/又はカチオン性ヌクレオシドであり、より好ましくは、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、2'-糖修飾ヌクレオシド(例、2'-O-メチル基を含むヌクレオシド)及び/又は架橋ヌクレオシド(例、LNAヌクレオシド)であり、さらに好ましくは、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド及び/又は2'-糖修飾ヌクレオシド(例、2'-O-メチル基を含むヌクレオシド)であり、よりさらに好ましくは、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド及び/又2'-O-メチル基を含むヌクレオシドであり、特に好ましくは、リボヌクレオシドである。防御領域の3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドは、好ましくは3’側にホスホロチオエート結合、ホスホロチオエート結合、1~4個のC1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分(好ましくは、TMG部分)を含むヌクレオシド間結合(好ましくは、式(III)で表される部分構造)及び/又は環状グアニジン部分を含むヌクレオシド間結合(好ましくは、式(II)で表される部分構造)を有するヌクレオシドであり、さらに好ましくは3’側にホスホロチオエート結合を有するヌクレオシドである。3’側の修飾ヌクレオシド間結合は、Rp配置又はSp配置にキラル制御されていてもよい。なお、本明細書において、3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドは、少なくとも3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドを意味し、5’側にも修飾ヌクレオシド間結合を有していてもよい。
【0067】
防御領域は、第1核酸鎖の一部(例えば、第1核酸鎖の中央領域の一部)に対して、完全に相補的であってもよく、又は1個以上のミスマッチ塩基を有していてもよい。例えば、防御領域は、第1核酸鎖の一部に対して、1~3個、1~2個、又は1個のミスマッチ塩基(非相補的塩基)を有していてもよい。
【0068】
一実施形態において、防御領域は、ピリミジン塩基を含む(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又は(c)3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドを含む。ここで、ピリミジン塩基は、修飾又は非修飾のいずれであってもよい。例えば、防御領域の少なくとも1個、又は防御領域の全てが、修飾又は非修飾のピリミジン塩基を含む(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又は(c)3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドを含んでもよい。本実施形態は、ピリミジン塩基を含むヌクレオシドが糖非修飾領域(例えば第1露出領域や第2露出領域)に含まれる場合に比べて、RNase Aによる第2核酸鎖に対する切断活性が低く抑えられるという効果を有し得る。本実施形態は、ピリミジン塩基を含むヌクレオシドが糖非修飾領域(例えば第1露出領域や第2露出領域)に含まれる場合に比べて、RNase H依存的及び/又は非依存的経路での活性が維持・向上されるという効果を有し得る。
【0069】
一実施形態において、防御領域における糖修飾ヌクレオシドは、糖修飾リボヌクレオシドである。
【0070】
一実施形態において、第2核酸鎖は第1露出領域及び防御領域からなる。さらなる一実施形態では、第2核酸鎖は第1露出領域及び防御領域が交互に配置されてなる。さらなる一実施形態では、防御領域の少なくとも1個、又は防御領域の全てが、修飾又は非修飾のピリミジン塩基を含む(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又は(c)3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドを含む。
【0071】
一態様において、第2核酸鎖は、第1核酸鎖の一部と相補的な、第2露出領域を少なくとも1個、例えば1~5個、1~4個、1~3個、1~2個、もしくは1個、又は少なくとも2個含む。
【0072】
第2露出領域は、ヌクレオシド間結合により連結された4個以上の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなり、第2露出領域における糖非修飾リボヌクレオシドの塩基はプリン塩基を含む。ここで、プリン塩基は修飾又は非修飾のいずれであってもよい。第2露出領域を構成する糖非修飾リボヌクレオシドの数は、例えば、4~10個、4~9個、4~8個、4~7個、4~6個、4~5個、又は4個であってもよい。第2露出領域は、少なくとも1個の修飾塩基及び/又は修飾ヌクレオシド間結合を含んでもよい。
【0073】
第2露出領域は、第1核酸鎖の一部(例えば、第1核酸鎖の中央領域の一部)に対して、完全に相補的であってもよく、又は1個以上のミスマッチ塩基を有していてもよい。例えば、第2露出領域は、第1核酸鎖の一部に対して、1~3個、1~2個、又は1個のミスマッチ塩基(非相補的塩基)を有していてもよい。
【0074】
一実施形態において、第2露出領域における糖非修飾リボヌクレオシドは、天然リボヌクレオシドを含み、例えば糖非修飾リボヌクレオシドの全てが天然リボヌクレオシドであるか、その一部、例えば1個又は2個の糖非修飾リボヌクレオシドが天然リボヌクレオシドである。
【0075】
一実施形態において、第2核酸鎖は、第2露出領域を少なくとも1個、例えば1~10個、1~5個、1~4個、1~3個、1~2個、もしくは1個、少なくとも2個、例えば2~10個、2~5個、3~4個、2~3個もしくは2個、又は少なくとも3個、例えば3~10個、3~5個、3~4個もしくは3個含む。
【0076】
一実施形態において、第2核酸鎖は、第1露出領域及び/又は第2露出領域を合計して、少なくとも1個、例えば1~10個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、1~2個、もしくは1個、少なくとも2個、例えば2~10個、2~5個、3~4個、2~3個もしくは2個、又は少なくとも3個、例えば3~10個、3~5個、3~4個もしくは3個含む。
【0077】
一実施形態において、第2核酸鎖は第1露出領域、第2露出領域、及び防御領域からなる。さらなる一実施形態では、第2核酸鎖は、第1露出領域又は第2露出領域、及び防御領域が交互に配置されてなる。さらなる一実施形態では、防御領域の少なくとも1個、又は防御領域の全てが、修飾又は非修飾のピリミジン塩基を含む(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又は(c)3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドを含む。
【0078】
一実施形態において、第2核酸鎖は第2露出領域及び防御領域からなる。さらなる一実施形態では、第2核酸鎖は、第2露出領域及び防御領域が交互に配置されてなる。さらなる一実施形態では、防御領域の少なくとも1個、又は防御領域の全てが、修飾又は非修飾のピリミジン塩基を含む(a)デオキシリボヌクレオシド、(b)糖修飾ヌクレオシド及び/又は(c)3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドを含む。
【0079】
一実施形態において、第2核酸鎖の少なくとも一つの防御領域は、5’末端及び3’末端にて、ヌクレオシド間結合により、第1露出領域及び/又は第2露出領域と連結する。
【0080】
一実施形態において、第1露出領域及び/又は第2露出領域は、少なくとも1個、例えば1個又は2個の修飾ヌクレオシド間結合、例えばホスホロチオエート結合、例えばRp配置又はSp配置にキラル制御されたホスホロチオエート結合、1~4個のC1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分(例えば、TMG部分)を含むヌクレオシド間結合(例、式(III)で表される部分構造)及び/又は環状グアニジン部分を含むヌクレオシド間結合(例、式(II)で表される部分構造)を含む。
【0081】
一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)前記第1露出領域、及び/又は(2)前記第2露出領域、並びに(3)(a)デオキシリボヌクレオシド及び/又は(b)糖修飾ヌクレオシド、例えば、糖修飾リボヌクレオシドを含む、又はこれからなる。
【0082】
一実施形態において、第2核酸鎖は、さらに以下の糖非修飾末端領域を5'末端及び/又は3'末端に含む。一実施形態において、5'末端及び/又は3'末端の糖非修飾末端領域の長さは、独立して、通常、1~10塩基長、1~7塩基長、2~5塩基長又は2~3塩基長である。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、前記第1露出領域及び/又は第2露出領域、並びに糖修飾リボヌクレオシド(及び任意に糖非修飾末端領域)を含む、又はこれからなる。
【0083】
一実施形態において、第2核酸鎖は、少なくとも1個、例えば1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、1~2個、もしくは1個、又は少なくとも2個の糖非修飾リボヌクレオシドを含む糖非修飾末端領域を5'末端及び/又は3'末端に含む。糖修飾が多い程核酸複合体の毒性が増加する傾向にあることから、末端領域を糖非修飾にすることにより、第2核酸鎖中の糖修飾核酸の数が減り、結果として毒性が低減し得る。糖非修飾末端領域は、修飾塩基及び/又は修飾ヌクレオシド間結合を含んでもよい。一実施形態において、糖非修飾末端領域は、第1核酸鎖の一部(例えば、第1核酸鎖の5'ウイング領域、中央領域、3'ウイング領域、又はそのいずれかの一部)と相補的である。糖非修飾末端領域は、第1核酸鎖の一部に対して、完全に相補的であってもよく、又は1個以上のミスマッチ塩基を有していてもよい。例えば、第2露出領域は、第1核酸鎖の一部に対して、1~3個、1~2個、又は1個のミスマッチ塩基(非相補的塩基)を有していてもよい。一実施形態において、糖非修飾末端領域における糖非修飾リボヌクレオシドは、天然リボヌクレオシドを含み、例えば糖非修飾リボヌクレオシドの全てが天然リボヌクレオシドであるか、その一部、例えば1~5個、1~4個、1~3個、又は1個若しくは2個の糖非修飾リボヌクレオシドが天然リボヌクレオシドである。一実施形態において、糖非修飾末端領域は、修飾又は非修飾のプリン塩基及び/又は修飾又は非修飾のピリミジン塩基を含むヌクレオシドを含む。一実施形態において、糖非修飾末端領域は、修飾又は非修飾のプリン塩基を含むヌクレオシドを含む。
【0084】
一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)少なくとも一つの第1露出領域及び/又は少なくとも一つの第2露出領域、(2)少なくとも一つの防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)1~10個の第1露出領域及び/又は1~10個の第2露出領域、(2) 1~10個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)1~5個の第1露出領域及び/又は1~5個の第2露出領域、(2)1~5個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)1~3個の第1露出領域及び/又は1~3個の第2露出領域、(2)1~3個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)2~10個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)2~10個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)2~6個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)2~6個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)2~5個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)2~5個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)2~4個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)2~4個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)2~3個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)2~3個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)3~10個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)3~10個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結され、(1)3~6個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)3~6個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)3~5個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)3~5個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)3~4個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)3~4個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。本実施形態において、第2核酸鎖は、(a)第1露出領域又は第2露出領域、及び(b)防御領域が交互に配置されていてる。
【0085】
一実施形態において、第2核酸鎖は、少なくとも1個のデオキシリボヌクレオシド、糖修飾ヌクレオシド及び/又は3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドを含む糖修飾末端領域を5'末端及び/又は3'末端に含む。一実施形態において、第2核酸鎖は、少なくとも1個のデオキシリボヌクレオシド及び/又糖修飾ヌクレオシドを含む糖修飾末端領域を5'末端及び/又は3'末端に含む。
一実施形態において、糖修飾末端領域は、第1核酸鎖の一部(例えば、第1核酸鎖の5'ウイング領域、中央領域、3'ウイング領域、又はそのいずれかの一部)と相補的である。糖修飾末端領域は、第1核酸鎖の一部に対して、完全に相補的であってもよく、又は1個以上のミスマッチ塩基を有していてもよい。例えば、第2露出領域は、第1核酸鎖の一部に対して、1~3個、1~2個、又は1個のミスマッチ塩基(非相補的塩基)を有していてもよい。一実施形態において、糖修飾末端領域は、ピリミジン塩基を含むデオキシリボヌクレオシド、糖修飾ヌクレオシド及び/又は3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドを含む。ここで、ピリミジン塩基は、修飾又は非修飾のいずれであってもよい。一実施形態において、糖修飾末端領域は、プリン塩基を含むデオキシリボヌクレオシド、糖修飾ヌクレオシド及び/又は3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドを含む。一実施形態において、糖修飾末端領域は、プリン塩基を含むデオキシリボヌクレオシド及び/又は糖修飾ヌクレオシドを含む。
ここで、プリン塩基は、修飾又は非修飾のいずれであってもよい。
【0086】
一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、前記第1露出領域、第2露出領域、防御領域、並びに/又は糖修飾末端領域を含む、又はこれからなる。一実施形態において、5'末端及び/又は3'末端の糖修飾末端領域の長さは、独立して、通常、1~10塩基長、1~7塩基長、2~5塩基長又は2~3塩基長である。
【0087】
一実施形態において、糖修飾末端領域は、ヌクレオシドの全てがデオキシリボヌクレオシド、糖修飾ヌクレオシド及び/又は3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシド(好ましくは、ヌクレオシドの全てがデオキシリボヌクレオシド及び/又は糖修飾ヌクレオシド)であるか、その一部、例えば1個、1~2個、1~3個、1~4個、1~5個、1~6個又は1~7個がデオキシリボヌクレオシド、糖修飾ヌクレオシド及び/又は3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシド(好ましくは、ヌクレオシドの全てがデオキシリボヌクレオシド及び/又は糖修飾ヌクレオシド)である。一実施形態において、糖修飾末端領域におけるヌクレオシドのうち、任意の割合でデオキシリボヌクレオシド、糖修飾ヌクレオシド及び/又は3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシド(好ましくは、ヌクレオシドの全てがデオキシリボヌクレオシド及び/又は糖修飾ヌクレオシド)を含む。例えば、10%以上、30%以上、50%以上、70%以上、80%以上、90%以上がデオキシリボヌクレオシド、糖修飾ヌクレオシド及び/又は3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシド(好ましくは、ヌクレオシドの全てがデオキシリボヌクレオシド及び/又は糖修飾ヌクレオシド)である。デオキシリボヌクレオシド及び/又は糖修飾ヌクレオシドとしては、好ましくは、デオキシリボヌクレオシド、2'-糖修飾ヌクレオシド(例、2'-O-メチル基を含むヌクレオシド)、架橋ヌクレオシド(例、LNAヌクレオシド)及び/又はカチオン性ヌクレオシドであり、より好ましくは、デオキシリボヌクレオシド、2'-糖修飾ヌクレオシド(例、2'-O-メチル基を含むヌクレオシド) 及び/又は架橋ヌクレオシド(例、LNAヌクレオシド’’)であり、さらに好ましくはデオキシリボヌクレオシド、2'-O-メチル基を含むヌクレオシド及び/又はLNAヌクレオシドであり、よりさらに好ましくはデオキシリボヌクレオシド、及び/又はLNAヌクレオシドであり、特に好ましくはLNAヌクレオシドである。3’側に修飾ヌクレオシド間結合を有するヌクレオシドは、好ましくは3’側にホスホロチオエート結合を有するヌクレオシドである。
【0088】
一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)少なくとも一つの第1露出領域及び/又は少なくとも一つの第2露出領域、(2)少なくとも一つの防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)1~10個の第1露出領域及び/又は1~10個の第2露出領域、(2)1~10個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)1~5個の第1露出領域及び/又は1~5個の第2露出領域、(2)1~5個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)1~4個の第1露出領域及び/又は1~4個の第2露出領域、(2)1~4個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)1~3個の第1露出領域及び/又は1~3個の第2露出領域、(2)1~3個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)2~5個の第1露出領域及び/又は1~5個の第2露出領域、(2)2~5個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)2~4個の第1露出領域及び/又は1~4個の第2露出領域、(2)2~4個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)2~3個の第1露出領域及び/又は1~3個の第2露出領域、(2)2~3個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)3~5個の第1露出領域及び/又は1~5個の第2露出領域、(2)3~5個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)3~4個の第1露出領域及び/又は1~4個の第2露出領域、(2)3~4個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)2~10個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)2~10個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)2~6個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)2~6個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)2~5個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)2~5個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)2~4個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)2~4個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)2~3個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)2~3個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)3~10個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)3~10個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結され、(1)3~6個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)3~6個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)3~5個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)3~5個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾又は非修飾のヌクレオシド間結合により連結された、(1)3~4個の第1露出領域及び/又は第2露出領域、(2)3~4個の防御領域、並びに、(3)5'末端及び3'末端の糖非修飾末端領域からなる。本実施形態において、第2核酸鎖は、(a)第1露出領域又は第2露出領域、及び(b)防御領域が交互に配置されていてる。
【0089】
一実施形態では、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖の修飾ヌクレオシド間結合は、あるpH(たとえば、ヒトの生理学的pH(約7.4)、送達部位(たとえば、オルガネラ、細胞、組織、臓器、生物体等)のpH等)において、当該修飾ヌクレオシド間結合が、アニオン形態(たとえば、-O-P(O)(O-)-O-(天然リン酸結合のアニオン形態)、-O-P(O)(S-)-O-((ホスホロチオエート結合のアニオン形態)等)と比較して、中性形態又はカチオン形態として存在する非負荷電(それぞれ中性又はカチオン性の)ヌクレオシド間結合を含む。一実施形態では、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖の修飾ヌクレオシド間結合は、中性のヌクレオシド間結合を含む。一実施形態では、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖の修飾ヌクレオシド間結合は、カチオン性のヌクレオシド間結合を含む。一実施形態では、非負荷電ヌクレオシド間結合(たとえば、中性のヌクレオシド間結合)は、その中性形態をとるとき、pKaが8未満、9未満、10未満、11未満、12未満、13未満、又は14未満の部分を有さない。一実施形態では、非負荷電ヌクレオシド間結合は、たとえば、米国特許登録番号5,264,423及び5,286,717記載のメチルホスホネート結合、米国特許登録番号5,955,599記載のメチルホスホトリエステル結合、エチルホスホトリエステル結合、国際公開第2015/168172号記載のメトキシプロピルホスホネート結合、国際公開第2016/081600号記載の自己中和核酸(ZON)に用いられるヌクレオシド間結合等である。一実施形態では、非負荷電ヌクレオシド間結合は、トリアゾール部分又はアルキン部分を含む。一実施形態では、非負荷電ヌクレオシド間結合は、環状グアニジン部分及び/又は1~4個のC1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分(好ましくは、TMG部分)を含む。一実施形態では、環状グアニジン部分を含む修飾ヌクレオシド間結合は、式(II)で表される部分構造を有する。一実施形態では、1~4個のC1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分は、式(III)で表される部分構造を有する。一実施形態では、環状グアニジン部分及び/又は1~4個のC1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分を含む中性のヌクレオシド間結合は、キラル制御される。一実施形態では、本開示は、少なくとも1つの中性のヌクレオシド間結合及び少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドを含む組成物に関する。いずれかの特定の理論によって拘束されることを望むものではないが、少なくともいくつかの場合では、中性のヌクレオチド間結合は、中性のヌクレオチド間結合を含まない同等の核酸と比較して特性及び/又は活性を改善することができ、たとえば、送達を改善し、エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼに対する耐性を改善し、細胞取り込みを改善し、エンドソーム脱出を改善し、及び/又は核取り込みを改善する等する。
【0090】
一実施形態では、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖は、それぞれ、修飾ヌクレオシド間結合を1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、35個、40個、45個、50個、又はそれ以上含んでいてもよい。一実施形態では、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖は、それぞれ、修飾ヌクレオシド間結合を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又はそれ以上含んでいてもよい。
【0091】
一実施形態では、第2核酸鎖の第1露出領域、第2露出領域、防御領域、糖非修飾末端領域及び/又は糖修飾末端領域は、それぞれ、修飾ヌクレオシド間結合を1個、1~2個、1~3個、1~4個、1~5個、1~6個、1~7個、1~8個、1~9個、1~10個、1~11個、1~12個、1~13個、1~14個、1~15個、1~16個、1~17個、1~18個、1~19個、1~20個、1~21個、1~22個含んでいてもよい。一実施形態では第2核酸鎖の第1露出領域、第2露出領域、防御領域、糖非修飾末端領域及び/又は糖修飾末端領域は、それぞれ、修飾ヌクレオシド間結合を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又はそれ以上含んでいてもよい。
【0092】
一実施形態では、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖は、それぞれ、キラル制御されたヌクレオシド間結合を1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、35個、40個、45個、50個、又はそれ以上含んでいてもよい。一実施形態では、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖は、それぞれ、キラル制御されたヌクレオシド間結合を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又はそれ以上含んでいてもよい。
【0093】
一実施形態では、第2核酸鎖の第1露出領域、第2露出領域、防御領域、糖非修飾末端領域及び/又は糖修飾末端領域は、それぞれ、キラル制御されたヌクレオシド間結合を1個、1~2個、1~3個、1~4個、1~5個、1~6個、1~7個、1~8個、1~9個、1~10個、1~11個、1~12個、1~13個、1~14個、1~15個、1~16個、1~17個、1~18個、1~19個、1~20個、1~21個、1~22個含んでいてもよい。一実施形態では、第2核酸鎖の第1露出領域、第2露出領域、防御領域、糖非修飾末端領域及び/又は糖修飾末端領域は、それぞれ、キラル制御されたヌクレオシド間結合を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又はそれ以上含んでいてもよい。
【0094】
一実施形態では、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖は、それぞれ、非負荷電ヌクレオシド間結合(好ましくは、中性のヌクレオシド間結合)を1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、35個、40個、45個、50個、又はそれ以上含んでいてもよい。一実施形態では、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖は、それぞれ、非負荷電ヌクレオシド間結合を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又はそれ以上含んでいてもよい。
【0095】
一実施形態では、第2核酸鎖の第1露出領域、第2露出領域、防御領域、糖非修飾末端領域及び/又は糖修飾末端領域は、それぞれ、非負荷電ヌクレオシド間結合(好ましくは、中性のヌクレオシド間結合)を1個、1~2個、1~3個、1~4個、1~5個、1~6個、1~7個、1~8個、1~9個、1~10個、1~11個、1~12個、1~13個、1~14個、1~15個、1~16個、1~17個、1~18個、1~19個、1~20個、1~21個、1~22個含んでいてもよい。一実施形態では、第2核酸鎖の第1露出領域、第2露出領域、防御領域、糖非修飾末端領域及び/又は糖修飾末端領域は、それぞれ、非負荷電ヌクレオシド間結合を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又はそれ以上含んでいてもよい。
【0096】
一実施形態において、第2核酸鎖における上記いずれかの領域(第1露出領域、防御領域、第2露出領域、糖非修飾末端領域、及び/又は糖修飾末端領域)は、その領域内部又は隣接する2つの領域の間に、少なくとも1個、例えば1個又は2個の修飾ヌクレオシド間結合、例えばホスホロチオエート結合、Rp配置又はSp配置にキラル制御されたホスホロチオエート結合、1~4個のC1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分(例えば、TMG部分、)を含むヌクレオシド間結合(例、式(III)で表される部分構造)、Rp配置又はSp配置にキラル制御された1~4個のC1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分(例えば、TMG部分)を含むヌクレオシド間結合(例、式(III)で表される部分構造)、環状グアニジン部分を含むヌクレオシド間結合(例、式(II)で表される部分構造)及び/又はRp配置又はSp配置にキラル制御された環状グアニジン部分を含むヌクレオシド間結合(例、式(II)で表される部分構造)を含む。
【0097】
第2核酸鎖の5'末端から少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つのヌクレオシド間結合は、修飾ヌクレオシド間結合であってもよい。第2核酸鎖の3'末端から少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つのヌクレオシド間結合は、修飾ヌクレオシド間結合、例えばホスホロチオエート結合、、1~4個のC1~6のアルキル基で置換されたグアニジン部分(例えば、TMG部分)を含むヌクレオシド間結合(例、式(III)で表される部分構造)及び/又は環状グアニジン部分を含むヌクレオシド間結合(例、式(II)で表される部分構造)であってもよい。修飾ヌクレオシド間結合は、Rp配置又はSp配置にキラル制御されていてもよい。
【0098】
第2核酸鎖は、第1露出領域及び/又は第2露出領域(及び存在する場合には糖非修飾末端領域)以外に、糖非修飾領域を含まないものであってよい。すなわち、第1露出領域及び/又は第2露出領域以外(及び存在する場合には糖非修飾末端領域)の領域における核酸の糖は、修飾糖、例えば2'-修飾糖である。
【0099】
一実施形態において、第1露出領域及び/又は第2露出領域(及び存在する場合には糖非修飾末端領域)以外の領域における塩基は、修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基を含む。例えば、塩基の全てが修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基であるか、その一部、例えば1~20個、1~15個、1~10個、1~5個、1~2個、又は1個が修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基である。修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基としては、好ましくは、シトシン、ウラシル、チミン、5-メチルシトシン、5-フルオロシトシン、5-ブロモシトシン、5-ヨードシトシン、N4-メチルシトシン、及び/又は2-チオ-チミン、さらに好ましくはシトシン、ウラシル、チミン、及び/又は5-メチルシトシン、特に好ましくはシトシンである。
【0100】
一実施形態において、第1露出領域、及び/又は第2露出領域(及び存在する場合には糖非修飾末端領域)以外の領域における塩基のうち、任意の割合で修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基を含む。例えば、10%以上、30%以上、50%以上、70%以上、80%以上、90%以上が修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基である。修修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基としては、ましくは、シトシン、ウラシル、チミン、5-メチルシトシン、5-フルオロシトシン、5-ブロモシトシン、5-ヨードシトシン、N4-メチルシトシン、及び/又は2-チオ-チミン、さらに好ましくはシトシン、ウラシル、チミン、及び/又は5-メチルシトシン、特に好ましくはシトシンである。
【0101】
一実施形態において、第1露出領域における塩基は、プリン塩基を含み、例えば塩基の全てが修飾及び/又は非修飾のプリン塩基であるか、その一部、例えば1個又は2個の塩基が修飾及び/又は非修飾のプリン塩基である。これは、RNase Aが、修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基の3'側のホスホジエステル結合を切断するものであるため、第1露出領域における塩基を修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基とすると、この部分がRNase Aにより切断され得るからである。したがって、第1露出領域における塩基が、修飾及び/又は非修飾のプリン塩基を含むことによって、RNase Aによる望ましくない分解を低減し得る。第1露出領域における塩基は、例えば修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基であるC、UC及びUUのいずれか、例えば3つの配列のいずれも含まない。
【0102】
一実施形態において、第1露出領域における塩基は、修飾及び/又は非修飾のプリン塩基を含む。例えば、塩基の全てが修飾及び/又は非修飾のプリン塩基であるか、その一部、例えば1~3個、1~2個もしくは1個が修飾及び/又は非修飾のプリン塩基である。一実施形態において、第2露出領域における塩基は、修飾及び/又は非修飾のプリン塩基を含む。例えば、塩基の全てが修飾及び/又は非修飾のプリン塩基であるか、その一部、例えば1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、1~2個もしくは1個が修飾及び/又は非修飾のプリン塩基である。一実施形態において、第1露出領域及び/又は第2露出領域における塩基のうち、任意の割合で修飾及び/又は非修飾のプリン塩基を含む。例えば、10%以上、30%以上、50%以上、70%以上、80%以上、90%以上が修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基である。修飾及び/又は非修飾のプリン塩基としては、好ましくは、アデニン、グアニン、N6-メチルアデニン、8-ブロモアデニン、N2-メチルグアニン及び/又は8-ブロモグアニン、さらに好ましくはアデニン及び/又はグアニンである。
【0103】
一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基を含む糖修飾ヌクレオシド及び/又はデオキシリボヌクレオシドを含む。例えば、塩基の全てが修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基であるか、その一部、例えば1~20個、1~15個、1~10個、1~5個、1~2個、又は1個が修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基である。一実施形態において、第2核酸鎖は、修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基を含む糖修飾ヌクレオシド及び/又はデオキシリボヌクレオシドを任意の割合で含む。例えば、第2核酸鎖の10%以上、30%以上、50%以上、70%以上、80%以上、90%以上がピリミジン塩基である。糖修飾されるピリミジン塩基としては、好ましくは、シトシン、ウラシル、チミン、5-メチルシトシン、5-フルオロシトシン、5-ブロモシトシン、5-ヨードシトシン、N4-メチルシトシン、及び/又は2-チオ-チミン、さらに好ましくはシトシン、ウラシル、チミン、及び/又は5-メチルシトシン、特に好ましくはシトシンである。
【0104】
一実施形態において、第2核酸鎖の防御領域は、修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基を含む。例えば、塩基の全てが修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基であるか、その一部、例えば1~20個、1~15個、1~10個、1~5個、1~2個、又は1個が修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基である。一実施形態において、第2核酸鎖の防御領域は、修飾及び/又は非修飾のピリミジン塩基を含む。例えば、第2核酸鎖の10%以上、30%以上、50%以上、70%以上、80%以上、90%以上がピリミジン塩基である。糖修飾されるピリミジン塩基としては、好ましくは、シトシン、ウラシル、チミン、5-メチルシトシン、5-フルオロシトシン、5-ブロモシトシン、5-ヨードシトシン、N4-メチルシトシン、及び/又は2-チオ-チミン、さらに好ましくはシトシン、ウラシル、チミン、及び/又は5-メチルシトシン、特に好ましくはシトシンである。
【0105】
第2核酸鎖における第1露出領域及び/又は第2露出領域の位置は限定しない。一実施形態において、少なくとも一個、例えば全ての第1露出領域及び/又は第2露出領域が、第2核酸鎖の中央よりも3'側に位置する。ここで、「第1露出領域及び/又は第2露出領域が、第2核酸鎖の中央よりも3'側に位置する」とは、第1露出領域及び/又は第2露出領域の中央、5'末端、又は3'末端が、第2核酸鎖の中央よりも3'側に位置することを含む。
【0106】
一実施形態において、第1露出領域及び/又は第2露出領域(及び存在する場合には糖非修飾末端領域)は、RNase Hにより切断されることができる。RNase Hにより切断されるか否かについては、例えば核酸鎖をRNaseHと反応させ、電気泳動を行い、未分解のバンドの濃度を測定することにより決定することができ、その詳細は実施例に記載する通りである。1個、又はヌクレオシド間結合により連結された2個又は3個の連続する糖非修飾リボヌクレオシドからなる第1露出領域がRNase Hにより切断され得ることは、RNase Hによる切断活性が、少なくとも4個の連続する天然リボヌクレオシドを必要とするというこれまでの技術常識を考慮すれば(例えば、FEBS J 2008; 276(6): 1494-505の
図3を参照されたい)、驚くべきことであった。 一実施形態において、第1露出領域及び/又は第2露出領域(及び存在する場合には糖非修飾末端領域)は、RNase H依存的及び/又は非依存的経路での活性を有し得る。
【0107】
一実施形態では、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖は、全部又は一部にカチオン性ヌクレオシドを含んでもよい。一実施形態では、カチオン性ヌクレオシドは、2'-Amino-LNAヌクレオシド(例、3-(Bis(3-アミノプロピル)アミノ)プロパノイル置換ヌクレオシド)、アミノアルキル修飾ヌクレオシド(例、2'-O-メチル及び4'-CH
2CH
2CH
2NH
2置換ヌクレオシド)、GuNAヌクレオシド(例、
図4のR=HはGuNA[N-H]ヌクレオシド、R=MeはGuNA[N-Me]ヌクレオシド)等を含むヌクレオシドである。
【0108】
一実施形態において、第2核酸鎖は、機能性部分が結合していてもよい。第2核酸鎖と機能性部分との結合は、直接的な結合であってもよく、他の物質を介した間接的な結合であってもよいが、ある実施形態において、共有結合、イオン結合、水素結合等で第2核酸鎖と機能性部分とが直接的に結合していることが好ましく、より安定した結合が得られるという観点から、共有結合がより好ましい。
【0109】
ある実施形態において、「機能性部分」の構造上、特に制限はなく、それを結合する二重鎖核酸複合体に所望の機能を付与する。所望の機能としては、標識機能、精製機能及び標的への送達機能が挙げられる。標識機能を付与する部分の例としては、蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ等の化合物が挙げられる。精製機能を付与する部分の例としては、ビオチン、アビジン、Hisタグペプチド、GSTタグペプチド、FLAGタグペプチド等の化合物が挙げられる。また、一実施形態において、第1核酸鎖を特異性高く効率的に標的部位に送達し、かつ当該核酸によって標的遺伝子の発現を非常に効果的に抑制するという観点から、第2核酸鎖に機能性部分として、ある実施形態における二重鎖核酸複合体を標的部位に送達させる活性を有する分子が結合していることが好ましい。標的への送達機能を与える部分の例としては、脂質、抗体、アプタマー、特定のレセプターに対するリガンドなどが挙げられる。一実施形態において、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖(好ましくは第2核酸鎖)は、機能性部分と結合している。
【0110】
一実施形態において、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖は、脂質と結合している。脂質としては、トコフェロール、コレステロール、脂肪酸、リン脂質及びそれらの類縁体;葉酸、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2;エストラジオール、アンドロスタン及びそれらの類縁体;ステロイド及びその類縁体;LDLR、SRBI又はLRP1/2のリガンド;FK-506、及びシクロスポリン;PCT/JP2019/12077、PCT/JP2019/10392及びPCT/JP2020/035117記載の脂質などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
本明細書において「類縁体(analog)」とは、同一又は類似の基本骨格を有する類似した構造及び性質を有する化合物を指す。類縁体は、例えば、生合成中間体、代謝産物、置換基を有する化合物などを含む。ある化合物が別の化合物の類縁体であるかどうかは、当業者であれば判定できる。
【0112】
トコフェロールは、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びδ-トコフェロールからなる群から選択され得る。トコフェロールの類縁体としては、トコフェロールの種々の不飽和類縁体、例えば、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノールなどが挙げられる。好ましくは、トコフェロールは、α-トコフェロールである。
【0113】
コレステロールの類縁体は、ステロール骨格を有するアルコールである、種々のコレステロール代謝産物及び類縁体などを指し、限定されるものではないが、コレスタノール、ラノステロール、セレブロステロール、デヒドロコレステロール、及びコプロスタノールなどを含む。
【0114】
脂質は、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖(好ましくは第2核酸鎖)の5'末端、又は3'末端、あるいは両端に連結されていてもよい。あるいは、脂質は、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖(好ましくは第2核酸鎖)の内部のヌクレオチドに連結されていてもよい。第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖(好ましくは第2核酸鎖)は、脂質を2つ以上含み、これらは第2核酸鎖の複数の位置に連結されていてもよく、及び/又は第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖(好ましくは第2核酸鎖)の1つの位置に一群として連結されていてもよい。脂質は、第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖(好ましくは第2核酸鎖)の5'末端と3'末端にそれぞれ1つずつ(好ましくは5'末端に)連結されていてもよい。
【0115】
第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖(好ましくは第2核酸鎖)と脂質との間の結合は、直接結合であってもよいし、別の物質によって介在される間接結合であってもよい。しかし、特定の実施形態においては、脂質は、共有結合、イオン性結合、水素結合などを介して第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖(好ましくは第2核酸鎖)に直接結合されていることが好ましく、またより安定した結合を得ることができるという点から考えると、共有結合がより好ましい。
【0116】
脂質はまた、切断可能な連結基(リンカー)を介して第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖(好ましくは第2核酸鎖)に結合されていてもよい。「切断可能な連結基(リンカー)」とは、生理学的条件下で、例えば細胞内又は動物体内(例えば、ヒト体内)で、切断される連結基を意味する。特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、ヌクレアーゼなどの内在性酵素によって選択的に切断される。切断可能なリンカーとしては、アミド、エステル、ホスホジエステルの一方もしくは両方のエステル、リン酸エステル、カルバメート、及びジスルフィド結合、ならびに天然DNAリンカーが挙げられる。
【0117】
脂質は、非切断性(uncleavable)リンカーを介して第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖(好ましくは第2核酸鎖)に結合していてもよい。「非切断性リンカー」は、生理学的条件下で、例えば細胞内又は動物体内(例えば、ヒト体内)で、切断されない連結基を意味する。非切断性リンカーとしては、ホスホロチオエート結合、及びホスホロチオエート結合で連結された修飾もしくは非修飾のデオキシリボヌクレオシド又は修飾もしくは非修飾のリボヌクレオシドからなるリンカーなどが挙げられる。リンカーがDNAなどの核酸又はオリゴヌクレオチドの場合、鎖長は、限定されないが、2~20塩基長、3~10塩基長又は4~6塩基長であってもよい。
【0118】
リンカーの一具体例として、以下の式(I)で表されるリンカーが挙げられる。
【0119】
【化5】
(式中、
L
2は、置換された若しくは置換されていないC
1~C
12のアルキレン基(例、プロピレン、ヘキシレン、ドデシレン)、置換された若しくは置換されていないC
3~C
8シクロアルキレン基(例、シクロヘキシレン)、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
3-、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
3-、又はCH(CH
2-OH)-CH
2-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-O-(CH
2)
3-を表し、L
3は、-NH-又は結合を表し、L
4は、置換された若しくは置換されていないC
1~C
12のアルキレン基(例、エチレン、ペンチレン、へプチレン、アンデシレン)、置換された若しくは置換されていないC
3~
8のシクロアルキレン基(例、シクロヘキシレン)、-(CH
2)
2-[O-(CH
2)
2]
m-、又は結合を表し、ここで、mは1~25の整数を表し、L
5は、-NH-(C=O)-、-(C=O)-、又は結合を表す(ここで、該置換は、好ましくはハロゲン原子によりなされる)。
【0120】
一実施形態において、式(I)で表されるリンカーは、L2が、置換されていないC3~C6のアルキレン基(例、プロピレン、ヘキシレン)、-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)3-、又は-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)3-であり、L3が、-NH-であり、L4及びL5が、結合である。
【0121】
機能性部分の第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖(好ましくは第2核酸鎖)における結合位置及び結合の種類は、脂質と第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖(好ましくは第2核酸鎖)との結合について上に記載されるとおりである。
【0122】
当業者であれば、公知の方法を適切に選択することによって、核酸複合体を構成する第1核酸鎖及び第2核酸鎖を製造することができる。例えば、核酸は、標的転写産物の塩基配列(又は、一部の例においては、標的遺伝子の塩基配列)の情報に基づいて核酸のそれぞれの塩基配列を設計し、市販の自動核酸合成装置(アプライドバイオシステムズ社(Applied Biosystems, Inc.)の製品、ベックマン・コールター社(Beckman Coulter, Inc.)の製品など)を使用することによって核酸を合成し、その後、結果として得られたオリゴヌクレオチドを逆相カラムなどを使用して精製することにより製造することができる。この方法で製造した核酸を適切な緩衝溶液中で混合し、約90℃~98℃で数分間(例えば5分間)変性させ、その後核酸を約30℃~70℃で約1~8時間アニールし、このようにして核酸複合体を製造することができる。アニールした核酸複合体の作製は、このような時間及び温度プロトコルに限定されない。鎖のアニーリングを促進するのに適した条件は、当技術分野において周知である。機能性部分が結合している核酸複合体は、機能性部分が予め結合された核酸種を使用し、上記の合成、精製及びアニーリングを実施することによって製造してもよいし、機能性部分を核酸にあとから結合させてもよい。機能性部分を核酸に連結するための多数の方法が、当技術分野において周知である。あるいは、核酸鎖は、塩基配列並びに修飾部位もしくは種類を指定して、製造業者(例えば、株式会社ジーンデザイン)に注文し、入手することもできる。
【0123】
<組成物>
一態様において、本発明は、上記の核酸複合体を含む、標的遺伝子の発現又は標的転写産物をアンチセンス効果によって抑制するための組成物に関する。本組成物は医薬組成物であってもよい。本組成物は、被験体において、神経疾患、中枢神経系疾患、代謝性疾患、腫瘍、感染症といった標的遺伝子の発現亢進に伴う疾患を治療、予防するためのものであってよい。
【0124】
被験体は、ヒトを含む動物とすることができる。しかし、ヒトを除く動物には特定の限定はなく、様々な家畜、家禽、ペット、実験動物などが被験体となり得る。
本組成物は、公知の製薬法により製剤化することができる。例えば、本組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、液剤、散剤、顆粒剤、微粒剤、フィルムコーティング剤、ペレット剤、トローチ剤、舌下剤、解膠剤(peptizer)、バッカル剤、ペースト剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤、乳剤、コーティング剤、軟膏、硬膏剤(plaster)、パップ剤(cataplasm)、経皮剤、ローション剤、吸入剤、エアロゾル剤、点眼剤、注射剤及び坐剤の形態で、経口的に又は非経口的に使用することができる。
【0125】
これらの製剤の製剤化に関して、薬学的に許容可能な担体若しくは溶媒又は食品及び飲料品として許容可能な担体若しくは溶媒を適切に組み込むことができる。そのような担体又は溶媒として、具体的には滅菌水、生理食塩水、植物性油、基剤、乳化剤、懸濁化剤、界面活性剤、pH調整剤、安定化剤、香味料、香料、賦形剤、ビヒクル、防腐剤、結合剤、希釈剤、等張化剤、鎮静剤、増量剤、崩壊剤、緩衝剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、増粘剤、矯味剤、溶解助剤、及び他の添加剤が挙げられる。
【0126】
本組成物の投与量は、被験体の年齢、体重、症状及び健康状態、剤形などに従って適切に選択することができる。しかし、本組成物の用量は、例えば、核酸複合体0.0000001mg/kg/日~1000000mg/kg/日、0.00001mg/kg/日~10000mg/kg/日又は0.001mg/kg/日~500mg/kg/日であってもよい。組成物は、単回投与でも、複数回投与であってもよい。複数回投与の場合、毎日若しくは適当な時間間隔で(例えば1日、2日、3日、1週間、2週間、1ヶ月の間隔で)、例えば2~20回等投与することもできる。上記の核酸複合体の1回の投与量は、例えば、0.001mg/kg以上、0.005mg/kg以上、0.01mg/kg以上、0.025mg/kg以上、0.1mg/kg以上、0.5mg/kg以上、1mg/kg以上、2.5mg/kg以上、0.5mg/kg以上、1.0mg/kg以上、2.0mg/kg以上、3.0mg/kg以上、4.0mg/kg以上、5mg/kg以上、10mg/kg以上、20mg/kg以上、30mg/kg以上、40mg/kg以上、50mg/kg以上、75mg/kg以上、100mg/kg以上、150mg/kg以上、200mg/kg以上、300mg/kg以上、400mg/kg以上、若しくは500mg/kg以上とすることができ、例えば、0.001mg/kg~500mg/kgの範囲に含まれる任意の量(例えば、0.001mg/kg、0.01mg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、若しくは200mg/kg)を適宜選択することができる。
【0127】
本発明の核酸複合体は、0.01~10mg/kg(例えば約6.25mg/kg)の用量で週2回の頻度で4回投与してもよい。また、核酸複合体は、0.05~30mg/kg(例えば約25mg/kg)の用量で週1~2回の頻度で2~4回、例えば週2回の頻度で2回投与してもよい。このような投与レジメン(分割投与)の採用により、より高用量の単回投与に比べて、毒性を下げ、被検体への負荷を低減することができる。一実施形態において、本発明の核酸複合体は、皮下投与により、静脈内投与に比べて、毒性を下げ、被検体への負荷を低減することができる。
【0128】
特定の実施形態において、本発明の核酸複合体は、水、日本薬局方溶出試験第2液、又は日本薬局方崩壊試験第2液に対する溶解性に優れ、体内動態(例、血中薬物半減期、脳内移行性、代謝安定性、CYP阻害)に優れ、毒性が低く(例えば、急性毒性、慢性毒性、遺伝毒性、生殖毒性、心毒性、薬物相互作用、癌原性、光毒性等の点から医薬として、より優れている)、かつ副作用も少ない(例えば、過沈静(sedation)の抑制、層状壊死の回避)等の医薬品として優れた性質も有する。
【0129】
本明細書において、組成物の好ましい投与形態には特定の限定はない。例えば、経口投与又は非経口投与であればよい。非経口投与の具体例として、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、気管/気管支投与、直腸投与、髄腔内投与、脳室内投与、経鼻投与、及び筋肉内投与、並びに輸血による投与が挙げられる。筋肉内注射投与、静脈内点滴投与、又は埋め込み型持続皮下投与で投与することもできる。皮下投与は、患者自身による自己注射が可能であるので好適である。また、静脈内投与の場合、組成物1回の投与量中に含まれる核酸複合体の量、すなわち核酸複合体の単回投与量は、例えば、0.001mg/kg以上、0.005mg/kg以上、0.01mg/kg以上、0.025mg/kg以上、0.1mg/kg以上、0.5mg/kg以上、1mg/kg以上、2.5mg/kg以上、5mg/kg以上、10mg/kg以上、20mg/kg以上、30mg/kg以上、40mg/kg以上、50mg/kg以上、75mg/kg以上、100mg/kg以上、150mg/kg以上、200mg/kg以上、300mg/kg以上、400mg/kg以上、若しくは500mg/kg以上とすることができる。例えば、0.001mg/kg~500mg/kgの範囲に含まれる任意の量(例えば、0.001mg/kg、0.01mg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、若しくは200mg/kg)を適宜選択することができる。
【0130】
一態様では、上記の核酸複合体又は組成物を被験体に投与することを含む、疾患の治療及び/又は予防方法が提供される。
【実施例0131】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0132】
[実施例1:連続3糖非修飾リボヌクレオシドを含む第2核酸鎖を含む二本鎖核酸複合体のRNase H/Aによる切断活性]
アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む第1核酸鎖とコレステロールが結合した、連続3糖非修飾リボヌクレオシドを含む相補鎖(第2核酸鎖)とを含む二本鎖核酸複合体をRNase A又はRNase Hで処理を行い、その切断効率を検討した。なお、第2核酸鎖とコレステロールは、国際公開第2018/056442号に示されるchol#1-cRNA(DNA)(mMalat1)と同様の5’末端構造で結合している。
【0133】
(核酸剤の調製)
malat1ノンコーディングRNAを標的とする16merの一本鎖LNA/DNAギャップマー(ASO(mMalat1) 1)(第1核酸鎖)を調製した。このLNA/DNAギャップマーは、5'末端の3個及び3'末端の3個のLNAヌクレオシド、及びそれらの間の10個のDNAヌクレオシドを含む16塩基長のオリゴヌクレオチドである。このLNA/DNAギャップマーは、マウスのmalat1ノンコーディングRNA(配列番号1)の1317~1332位に相補的な塩基配列を有する。
【0134】
このASOに相補的な塩基配列を有し、5'末端にコレステロールが共有結合した相補的RNA鎖(Chol-cRNA(mMalat1))(第2核酸鎖)を用意した。第2鎖は両末端に3個の2'-O-メチル修飾リボヌクレオシド、それらの間の7個の2'-O-メチル修飾リボヌクレオシド、及び位置を変えた3個の連続した糖非修飾リボヌクレオシドを含む、16塩基長のオリゴヌクレオチドである。コントロールとして両末端に3個の2'-O-メチル修飾リボヌクレオシド、及びそれらの間の10個の糖非修飾リボヌクレオシドを含む相補鎖(Chol-cRNA)、並びに16個の核酸部分がすべて2'-O-メチル修飾リボヌクレオシドである相補鎖(Chol-cRNA full OMe)を準備した。
【0135】
上記ASOを第2核酸鎖とアニールさせることにより、二本鎖核酸剤を調製した。具体的には、これらをPBSで溶解後、等モル量で混合し、溶液を98℃で5分間加熱し、その後37℃に冷却して1時間保持し、これにより核酸鎖をアニールして上記の二本鎖核酸剤を調製した。
【0136】
実施例1で用いたオリゴヌクレオチドの配列、化学修飾及び構造を、表1及び
図6に示す。全てのオリゴヌクレオチドは株式会社ジーンデザイン(Gene Design)(大阪、日本)によって製造された。
【0137】
【0138】
(切断実験)
上記に従ってアニールした二本鎖核酸10μM 5μLを用意した。
また酵素は下記を準備した。
Ribonuclease H (RNase H) (60 U/μl : TAKARA BIO INC)
RNase A (7000 U/ml (100 mg/ml): Qiagen)
RNase Hに対しては下記のBufferを準備した(いずれも最終濃度)。
60 mM Tris-HCl(pH7.8)
60 mM KCl
2.5 mM MgCl2
2 mM TCEP
Buffer調製後、核酸10μM 5μLに対して、Ribonuclease Hを5 U又は10 U反応させた。
【0139】
RNase Aについては、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Ca, Mg不含) (ナカライテスク)を用いた。Buffer中で、核酸10μM 5μLに対して、RNase Aを0.035 U反応させた。
【0140】
上記反応条件にて、PCR機器(LifeECO:サーマルサイクラー)にて37℃20分PCRで酵素を反応させた。その後、酵素反応を液体窒素で停止させた。
【0141】
(泳動・解析)
20% アクリルアミドゲル(1×TBE)を準備、作製した。酵素反応した産物に6X Gel Loading Dye, Purple (New England Biolab)を混合させて、上記のゲルに150V 2時間で泳動した。コントロールとしてASO単独を同時に泳動した。その後、1×TBEでGelRed(×10000)水溶液(Biotium)を1/10000の濃度に希釈した溶液を作製した。ゲルを10分間その溶液で浸透した。その後、ChemiDoc Touch イメージングシステム(BioRad社)でゲルを撮影した。Image Lab Version 5.2 build 14 (BioRad社)にてバンドの濃度を解析した。
【0142】
(結果)
ASO単独、ASOとChol-cRNA (mMalat1)の二本鎖複合体(Chol-HDO)、ASOとChol-cRNA (mMalat1) full OMeの二本鎖複合体(Chol-HDO with full OMe cRNA)の、RNaseH及び/又はRNaseAによる切断後の電気泳動結果を
図7に示す。また、電気泳動結果に基づく未分解のバンドの濃度を、未処理に対する相対強度レベル(%)で示したグラフを
図8に示す。
図7、8に示される通り、第1核酸鎖のギャップ領域に相補的な第2核酸鎖における10個の核酸がすべて糖非修飾リボヌクレオシドのもの(Chol-HDO)はRNase H/Aのいずれを用いた場合でも相補鎖は切断されていた。これに対し、第1核酸鎖のギャップ領域に相補的な第2核酸鎖における10個の核酸がすべて2'-O-メチル修飾リボヌクレオシドのもの(Chol-HDO with full OMe cRNA)はRNase H/Aのいずれを用いた場合でも相補鎖は切断されなかった。これらの結果は、Chol-HDOは生体内での分解に起因して活性が低減し得るのに対し、Chol-HDO with full OMe cRNAは分解耐性が高すぎるためRNase H依存性経路に基づく活性が低減し得ることを示唆している。
【0143】
第1核酸鎖のギャップ領域の一部に相補的な3個の連続した糖非修飾リボヌクレオシドを含む二本鎖核酸剤について、3個の連続した糖非修飾リボヌクレオシドの位置を変えて同様の試験を行い、同様に未分解のバンドの濃度を、未処理に対する相対強度レベル(%)で示したグラフを
図9に示す。なお、3windows-1~8は、表1に記載のChol-cRNA 3windows-1~8のそれぞれと、ASOの複合体の結果を示す。3個の連続した糖非修飾リボヌクレオシドを含む第2核酸鎖を含む複合体では、第2核酸鎖において、C/Uの少ない3'側に3連続糖非修飾リボヌクレオシドがある場合(3windows 4-8)にはRNase A耐性が強く、C/Uの多い5'側に3連続糖非修飾リボヌクレオシドがある場合(3windows 1-3)にはRNase A耐性が低かった。これらの結果から、RNase A耐性は3連続糖非修飾リボヌクレオシドがC/Uを含むか否かと相関すると考えられ、この結果はRNase Aがピリミジン塩基であるC/Uの3'側のPO結合を切断するという事実とも符合する。これに対し、RNase Hの場合は第2核酸鎖の3'側に3連続糖非修飾リボヌクレオシドがある場合(3windows 4-8)には、切断されやすかった。これらの結果は、RNase Aによる分解を低減しながら、RNase H依存性経路による活性を維持するような核酸設計が可能であることを示唆するものである。
【0144】
[実施例2:細胞での遺伝子抑制効果]
アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む第1核酸鎖とコレステロール結合型相補鎖(第2核酸鎖)とを含む二本鎖核酸複合体を細胞に導入し、その遺伝子抑制効果を検討した。
【0145】
(核酸剤の調製)
実施例1と同様の核酸を準備して調製した。
【0146】
(細胞実験)
使用した細胞Neuro2aはAmerican Type Culture Collection(ATC)より購入した。Neuro2aを24 well プレートで準備して60-80% confluencyになるまで増殖させた。増殖後、上記核酸を、5/10/20nMで、RNAimax(Thermo Fisher Scientific)を1 well あたり1.5μL用いて製造業者のプロトコルに従って導入して、24時間後に細胞を回収した。その後、ISOGEN(ニッポンジーン)にて、製造業者のプロトコルに従いRNAを抽出した。RNAを用いてcDNAを、PrimeScript RT Master Mix (TAKARA-Bio)を製造業者のプロトコルに従って使用して合成した。定量RT-PCRは、LightCycler 480 Probes Master (ロシュ・ライフサイエンス社)を用いて常法に従い実施した。定量RT-PCRにおいて使用したプライマー及びプローブは、以下の通りである。
【0147】
【0148】
Probes Master、cDNA、プライマー及びプローブを混合し95℃10分を1サイクル、95℃10秒/60℃30秒/72℃1秒を45サイクル、40℃30秒を1サイクルのPCRを実施した。
【0149】
(結果)
細胞を様々な二本鎖核酸複合体で処理した場合の、PBS処理におけるMalat1/Actb(βアクチン)発現量を1としたときの相対RNA発現レベルを
図10に示す。上記同様、Chol-HDOはASOとChol-cRNA (mMalat1)の二本鎖複合体、Chol-HDO with full OMe cRNAはASOとChol-cRNA (mMalat1) full OMeの二本鎖複合体、3 windows 1-8は、表1に記載のChol-cRNA 3windows-1~8のそれぞれと、ASOの二本鎖複合体の結果を示す。
【0150】
コントロールである第1核酸鎖のギャップ領域に相補的な第2核酸鎖における10個の核酸がすべて糖非修飾リボヌクレオシドのもの(Chol-HDO)はアンチセンス効果が高かったのに対し、第1核酸鎖のギャップ領域に相補的な第2核酸鎖における10個の核酸がすべて2'-O-メチル修飾リボヌクレオシドのもの(Chol-HDO with full OMe cRNA)ではアンチセンス効果は低かった。また、3個の連続した糖非修飾リボヌクレオシドを含む第2核酸鎖を含む複合体では、第2核酸鎖の5'側に3連続糖非修飾リボヌクレオシドがある場合(3windows 1-2)には、第2核酸鎖の3'側に3連続糖非修飾リボヌクレオシドがある場合(3windows 3-8)に比べ、遺伝子抑制効果が低かった。これらの結果は、実施例1のRNaseA/Hによる切断活性の結果と概ね符号するものである。
【0151】
なお、Chol-HDO with full OMe cRNAで認められたアンチセンス効果は、切断非依存性の効果であり、3windows 1-2と3windows 3-8のアンチセンス効果の差は、RNaseH切断に依存する活性に由来すると考えられる。
【0152】
[実施例3:1又は連続2糖非修飾リボヌクレオシドを含む第2核酸鎖を含む二本鎖核酸複合体のRNase H/Aによる切断活性]
アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む第1核酸鎖とコレステロールが結合した、1又は連続2糖非修飾リボヌクレオシドを含む相補鎖(第2核酸鎖)とを含む二本鎖核酸複合体をRNase A又はRNase Hで処理を行い、その切断効率を検討した。
【0153】
(核酸剤の調製)
実施例1に基づいてASO、及び1又は連続2糖非修飾リボヌクレオシドを含む相補鎖を準備した。これらをPBSで溶解後、等モル量で混合し、溶液を98℃で5分間加熱し、その後37℃に冷却して1時間保持し、これにより核酸鎖をアニールして上記の二本鎖核酸剤を調製した。コントロールとして両末端に3個の2'-O-メチル修飾リボヌクレオシド、及びそれらの間の10個の糖非修飾リボヌクレオシドを含む相補鎖(Chol-cRNA)、並びに16個の核酸部分がすべて2'-O-メチル修飾リボヌクレオシドである相補鎖(Chol-cRNAfull OMe)を準備した。
【0154】
ASO、Chol-cRNA、Chol-cRNA full OMeの配列については表1に記載した通りであり、本実施例で用いたその他の第2鎖の名称及び配列を以下に示す。
【0155】
【0156】
RNase A又はHによる切断、及びその後の電気泳動及び解析は実施例1に従った。
【0157】
(結果)
RNaseAによる切断後の電気泳動結果を
図13に、また、電気泳動結果に基づく未分解のバンドの濃度を、Chol-HDO with full OMe cRNAに対する相対強度レベル(%)で示したグラフを
図14に示す。
【0158】
図13、14に示される通り、第1核酸鎖のギャップ領域に相補的な第2核酸鎖における10個の核酸がすべて糖非修飾リボヌクレオシドのもの(Chol-HDO)はRNase Aにより相補鎖は切断されていた。これに対し、第1核酸鎖のギャップ領域に相補的な第2核酸鎖における10個の核酸がすべて2'-O-メチル修飾リボヌクレオシドのもの(Chol-HDO with full OMe cRNA)はRNase Aにより相補鎖は切断されなかった。
【0159】
図13、14に示される通り、1つの糖非修飾リボヌクレオシドを含む場合、RNase Aで切断されたのは、第2核酸鎖において、糖非修飾リボヌクレオシドがCの位置に存在する場合(1 window-3)のみであり、糖非修飾リボヌクレオシドがUの位置に存在する場合(1window 1、2、6)は切断されなかった。一方、2連続糖非修飾リボヌクレオシドを含む場合、RNase A で切断されたのは、糖非修飾リボヌクレオシドがCA(2window-3)、UC(2window-2)、又はUU(2window-1)の位置に存在する場合であった。これらの結果は、RNaseAはC又はUC/UU連続配列を切断することを示唆している。
【0160】
[実施例4:C/Uの位置に糖修飾リボヌクレオシドを有する第2核酸鎖を含む二本鎖核酸複合体によるDmpkmRNA発現のin vivo阻害効果]
Dmpk遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む第1核酸鎖と、コレステロールが結合した、C/Uの位置に糖修飾リボヌクレオシドを有する相補鎖(第2核酸鎖)とを含む二本鎖核酸複合体による組織内mRNA発現のin vivo阻害効果について検証する。
【0161】
(核酸剤の調製)
Dmpk遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドASO (DMPK)、コレステロールが結合した、C/Uの位置に2'-O-メチル修飾を有する相補鎖Chol-cRNA (CU OMe)、及びコントロールとして相補鎖Chol-cRNA (Default)を準備した。ASO(mDMPK)、Chol-cRNA(Default)、Chol-cRNA(CU OMe)の配列を以下に示す。
【0162】
【0163】
上記ASO (mDMPK)は、マウスのDMPK遺伝子を標的とし、その転写産物であるDMPK mRNA(GenBankアクセッション番号NM_032418、配列番号46)を標的とする2682~2697位に相補的な塩基配列を有する16merの一本鎖LNA/DNAギャップマーで構成される。より具体的には、このLNA/DNAギャップマーは、5’末端及び3’末端からそれぞれ3個がLNAヌクレオシドで構成され、それらの間の10個がDNAヌクレオシドからなる(
図15)。
【0164】
上記Chol-cRNA (Default)は、ASO (mDMPK)に相補的な配列を有し、両末端に3個の2'-O-メチル修飾リボヌクレオシド、及びそれらの間の10個の糖非修飾リボヌクレオシドを含み、かつその5’末端にコレステロールを結合している(
図15A)。
【0165】
上記Chol-cRNA (CU OMe)は、上記Chol-cRNA (Default)の中央に位置する10個の糖非修飾リボヌクレオシドのうち、3'側に位置するUの位置を除いてすべてのC及びUの位置に2'-O-メチル修飾を有する(
図15B)。
【0166】
実施例1と同様に、ASO(mDMPK)及びChol-cRNA(Default)、又はASO(mDMPK)及びChol-cRNA(CU OMe)をPBSで溶解後、等モル量で混合し、溶液を98℃で5分間加熱し、その後37℃に冷却して1時間保持し、これにより核酸鎖をアニールして二本鎖核酸複合体を調製した。調製後の二本鎖核酸複合体を「Chol-HDO(Default)」又は「Chol-HDO(CU OMe)」と称する。
【0167】
(in vivo実験)
二本鎖核酸複合体を投与するマウスは、体重20gの4~5週齢の雄のC57BL/6マウスを用いた。各条件について4匹のマウスを使用した。
二本鎖核酸複合体剤を、単回投与で、マウスにそれぞれ尾静脈を通じて12.5 mg/kgの量で静脈内注射した。さらに、陰性対照群としてPBSのみを単回投与で注射したマウスも作製した。
【0168】
(発現解析)
投与後72時間の時点でPBSをマウスに灌流させて、その後マウスを解剖して心筋(Heart)、大腿四頭筋(Quadriceps)、固有背筋(Back)、前脛骨筋(tibialis anterior:TA)、腓腹筋(gastrocnemius:GC)、上腕三頭筋(triceps brachii:TB)、腎臓、及び肝臓を摘出した。続いて、ハイスループット全自動核酸抽出装置MagNA Pure 96(ロシュ・ライフサイエンス社)を使用して、各組織からmRNAをプロトコルに従って抽出した。cDNAは、Transcriptor Universal cDNA Master(ロシュ・ライフサイエンス社)のプロトコルに従って合成した。定量RT-PCRは、TaqMan(ロシュ・ライフサイエンス社)により実施した。定量RT-PCRにおいて使用したプライマーは、様々な遺伝子数に基づいて、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific)によって設計及び製造された製品を用いた。PCR条件(温度及び時間)は、95℃で15秒、60℃で30秒、及び72℃で1秒を1サイクルとして、40サイクルの繰り返しとした。得られた増幅産物を定量RT-PCRによって定量し、その結果に基づいて、mRNA(DMPK)の発現量/mRNA(ACTB;内部標準遺伝子)の発現量をそれぞれ計算し、相対的発現レベルを得た。相対的発現レベルの平均値及び標準誤差を算出した。
【0169】
(結果)
図16及び17に結果を示す。
図16は、二本鎖核酸複合体Chol-HDO(Default)、Chol-HDO(CU OMe)による腓腹筋(gastrocnemius:GC)、上腕三頭筋(triceps brachii:TB)、前脛骨筋(tibialis anterior:TA)、固有背筋(Back)、大腿四頭筋(Quadriceps)、及び心筋(Heart)における標的mDMPK遺伝子の発現抑制効果を示す。
図17は、二本鎖核酸複合体Chol-HDO(Default)、Chol-HDO(CU OMe)による腎臓及び肝臓における標的mDMPK遺伝子の発現抑制効果を示す。エラーバーは各々の標準誤差を示す。
【0170】
Chol-HDO(CU OMe)は、腓腹筋、上腕三頭筋、前脛骨筋、固有背筋、大腿四頭筋、及び心筋のいずれにおいても、Chol-HDO(Default)よりも強い発現抑制効果を示した。この結果から、第2核酸鎖のC/Uの位置におけるリボヌクレオシドに糖修飾を加えることによって、RNase Aによる切断に対する耐性が獲得される結果、標的遺伝子のより効率的な発現抑制が可能となることが示唆された。
【0171】
また、Chol-HDO(CU OMe)は、腎臓及び肝臓においてはChol-HDO(Default)と同等の発現抑制効果を示した。
【0172】
[実施例5:C/Uの位置に糖修飾リボヌクレオシドを有する第2核酸鎖を含む二本鎖核酸複合体によるヒトSOD1 mRNA発現のin vivo阻害効果]
ヒトSOD1遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む第1核酸鎖と、コレステロールが結合した、C/Uの位置に糖修飾リボヌクレオシドを有する相補鎖(第2核酸鎖)とを含む二本鎖核酸複合体による組織内mRNA発現のin vivo阻害効果について検証する。
【0173】
(核酸剤の調製)
SOD1遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドASO (SOD1)、コレステロールが結合した、C/Uの位置に2'-O-メチル修飾を有する相補鎖Chol-cRNA (CU OMe)、及びコントロールとして相補鎖Chol-cRNA (Default)を準備した。ASO(mDMPK)、Chol-cRNA(Default)、Chol-cRNA(CU OMe)の配列を以下に示す。
【0174】
【0175】
上記ASO (hSOD1)は、ヒトのSOD1遺伝子を標的とし、その転写産物であるhSOD1 mRNA(GenBankアクセッション番号NM_000454.4)を標的とする679~695位に相補的な塩基配列を有する17merの一本鎖LNA/DNAギャップマー(配列番号67)で構成される。より具体的には、このLNA/DNAギャップマーは、5’末端及び3’末端からそれぞれ3個がLNAヌクレオシドで構成され、それらの間の10個がDNAヌクレオシドからなる(
図18)。
【0176】
上記Chol-cRNA (Default)は、ASO (hSOD1)に相補的な配列を有し、両末端に3個の2'-O-メチル修飾リボヌクレオシド、及びそれらの間の10個の糖非修飾リボヌクレオシドを含み、かつその5’末端にコレステロールを結合している(
図18A)。
【0177】
上記Chol-cRNA (CU OMe)は、上記Chol-cRNA (Default)の中央に位置する10個の糖非修飾リボヌクレオシドのうち、すべてのC及びUの位置に2'-O-メチル修飾を有する(
図18B)。
【0178】
実施例1と同様に、ASO(hSOD1)及びChol-cRNA(Default)、又はASO(hSOD1)及びChol-cRNA(CU OMe)をPBSで溶解後、等モル量で混合し、溶液を98℃で5分間加熱し、その後37℃に冷却して1時間保持し、これにより核酸鎖をアニールして二本鎖核酸複合体を調製した。調製後の二本鎖核酸複合体を「Chol-HDO(Default)」又は「Chol-HDO(CU OMe)」と称する。
【0179】
(in vivo実験)
二本鎖核酸複合体を投与するマウスは、体重20gの4~5週齢の雄のヒトSOD1G93Aトランスジェニックマウス(G93A Tg mice)を用いた。各条件について2-4匹のマウスを使用した。
二本鎖核酸複合体剤を、単回投与で、マウスにそれぞれ50 mg/kgの量で皮下注射した。さらに、陰性対照群としてPBSのみを単回投与で注射したマウスも作製した。
【0180】
(発現解析)
投与後72時間の時点でPBSをマウスに灌流させて、その後マウスを解剖して心筋(Heart)、大腿四頭筋(Quadriceps)、横隔膜(Diaphragm)、固有背筋(Back)を摘出した。続いて、ハイスループット全自動核酸抽出装置MagNA Pure 96(ロシュ・ライフサイエンス社)を使用して、各組織からmRNAをプロトコルに従って抽出した。cDNAは、Transcriptor Universal cDNA Master(ロシュ・ライフサイエンス社)のプロトコルに従って合成した。定量RT-PCRは、TaqMan(ロシュ・ライフサイエンス社)により実施した。定量RT-PCRにおいて使用したプライマーは、様々な遺伝子数に基づいて、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific)によって設計及び製造された製品を用いた。PCR条件(温度及び時間)は、95℃で15秒、60℃で30秒、及び72℃で1秒を1サイクルとして、40サイクルの繰り返しとした。得られた増幅産物を定量RT-PCRによって定量し、その結果に基づいて、mRNA(SOD1)の発現量/mRNA(ACTB;内部標準遺伝子)の発現量をそれぞれ計算し、相対的発現レベルを得た。相対的発現レベルの平均値及び標準誤差を算出した。
【0181】
(結果)
図19に結果を示す。
図19は、二本鎖核酸複合体Chol-HDO(Default)、Chol-HDO(CU OMe)による固有背筋(Back)、大腿四頭筋(Quadriceps)、横隔膜(Diaphragm)及び心筋(Heart)における標的hSOD1遺伝子の発現抑制効果を示す。エラーバーは各々の標準誤差を示す。
【0182】
Chol-HDO(CU OMe)は、固有背筋、大腿四頭筋、横隔膜、及び心筋のいずれにおいても、Chol-HDO(Default)よりも強い発現抑制効果を示した。この結果から、第2核酸鎖のC/Uの位置におけるリボヌクレオシドに糖修飾を加えることによって、RNase Aによる切断に対する耐性が獲得される結果、標的遺伝子のより効率的な発現抑制が可能となることが示唆された。
【0183】
[実施例6:C/Uの位置にデオキシリボヌクレオシドを有する第2核酸鎖を含む二本鎖核酸複合体によるマウスMalat1 RNA発現のin vivo阻害効果]
マウスMalat1遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む第1核酸鎖と、コレステロールが結合した、C/Uの位置にデオキシリボヌクレオシドを有する相補鎖(第2核酸鎖)とを含む二本鎖核酸複合体による組織内mRNA発現のin vivo阻害効果について検証する。
【0184】
(核酸剤の調製)
マウスMalat1遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドASO (mMalat1)、コレステロールが結合した、C/Uの位置にDNAを有する相補鎖Chol-cRNA (CT DNA)、及びコントロールとして相補鎖Chol-cRNA (Default)を準備した。ASO(mMalat1)、Chol-cRNA(Default)、Chol-cRNA(CT DNA)の配列を以下に示す。
【0185】
【0186】
上記ASO (mMalat1)は、マウスのMalat1遺伝子を標的とし、その転写産物であるMalat1 ncRNA(GenBankアクセッション番号NR_002847.3)を標的とする5032~5047位に相補的な塩基配列を有する16merの一本鎖LNA/DNAギャップマー(配列番号49)で構成される。より具体的には、このLNA/DNAギャップマーは、5’末端及び3’末端からそれぞれ3個がLNAヌクレオシドで構成され、それらの間の10個がDNAヌクレオシドからなる(
図20)。
【0187】
上記Chol-cRNA (Default)は、ASO (mMalat1)に相補的な配列を有し、両末端に3個の2'-O-メチル修飾リボヌクレオシド、及びそれらの間の10個の糖非修飾リボヌクレオシドを含み、かつその5’末端にコレステロールを結合している(
図20A)。
【0188】
上記Chol-cRNA (CT DNA)は、上記Chol-cRNA (Default)の中央に位置する10個の糖非修飾リボヌクレオシドのうち、すべてのC及びUの位置にデオキシリボヌクレオシドを有する(
図20B)。
【0189】
実施例1と同様に、ASO(mMalat1)及びChol-cRNA(Default)、又はASO(mMalat1)及びChol-cRNA(CT DNA)をPBSで溶解後、等モル量で混合し、溶液を98℃で5分間加熱し、その後37℃に冷却して1時間保持し、これにより核酸鎖をアニールして二本鎖核酸複合体を調製した。調製後の二本鎖核酸複合体を「Chol-HDO(Default)」又は「Chol-HDO(CT DNA)」と称する。
【0190】
(in vivo実験)
二本鎖核酸複合体を投与するマウスは、体重20gの4~5週齢の雄のC57BL/6マウスを用いた。各条件について3匹のマウスを使用した。
二本鎖核酸複合体剤を、単回投与で、マウスにそれぞれ尾静脈から40 mg/kgの量で静脈内注射した。さらに、陰性対照群としてPBSのみを単回投与で注射したマウスも作製した。
【0191】
(発現解析)
投与後72時間の時点でPBSをマウスに灌流させて、その後マウスを解剖して頚部脊髄(Cervical spinal cord)を摘出した。続いて、ハイスループット全自動核酸抽出装置MagNA Pure 96(ロシュ・ライフサイエンス社)を使用して、各組織からmRNAをプロトコルに従って抽出した。cDNAは、Transcriptor Universal cDNA Master(ロシュ・ライフサイエンス社)のプロトコルに従って合成した。定量RT-PCRは、TaqMan(ロシュ・ライフサイエンス社)により実施した。定量RT-PCRにおいて使用したプライマーは、様々な遺伝子数に基づいて、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific)によって設計及び製造された製品を用いた。PCR条件(温度及び時間)は、95℃で15秒、60℃で30秒、及び72℃で1秒を1サイクルとして、40サイクルの繰り返しとした。得られた増幅産物を定量RT-PCRによって定量し、その結果に基づいて、RNA(mMalat1)の発現量/mRNA(ACTB;内部標準遺伝子)の発現量をそれぞれ計算し、相対的発現レベルを得た。相対的発現レベルの平均値及び標準誤差を算出した。
【0192】
(結果)
図21に結果を示す。
図21は、二本鎖核酸複合体Chol-HDO(Default)、Chol-HDO(CT DNA)による頚部脊髄における標的mMalat1遺伝子の発現抑制効果を示す。エラーバーは各々の標準誤差を示す。
【0193】
Chol-HDO(CT DNA)は、頚部脊髄においても、Chol-HDO(Default)よりも強い発現抑制効果を示した。この結果から、第2核酸鎖のC/Uの位置におけるリボヌクレオシドをデオキシリボヌクレオシドに置換することによって、RNase Aによる切断に対する耐性が獲得される結果、標的遺伝子のより効率的な発現抑制が可能となることが示唆された。
【0194】
[実施例7 :修飾リボヌクレオシドを含む第2核酸鎖を含む二本鎖核酸複合体のマウス及びヒト血清中での安定性]
アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む第1核酸鎖と、修飾リボヌクレオシドを含む相補鎖(第2核酸鎖)とを含む二本鎖核酸複合体をマウス又はヒト血清と混合し、血清中での二本鎖安定性を評価した。
【0195】
(核酸剤の調製)
実施例1と同様の核酸を準備して調製した。
実施例1で用いたオリゴヌクレオチドの配列、化学修飾及び構造を、表7及び
図22A及び
図22Bに示す。全てのオリゴヌクレオチドは株式会社ジーンデザイン(Gene Design)(大阪、日本)によって製造された。
【表7】
【0196】
(血清中安定性評価実験)
上記に従ってアニールした二本鎖核酸10μM 10μLを用意した。また血清はCrl:CD1 (ICR) マウスから採取した血液及びヒト血液より用意した。核酸10μM 10μLに対して、マウス血清又はヒト血清を30μL混合し、37℃ incubatorでincubationした。0hr、2hr、又は24hr incubationした後、Reaction Stop Buffer (50 mM Tris-HCl, pH7.5, 48.5 mM Borate, 20 mM EDTA, 10% SDS, 最終volume 60μL) を加えて液体窒素に投入して反応を停止させた。
【0197】
(抽出)
解凍したサンプルをphenol:chloroform:isoamylalcohol (25:24:1) (nacalai tesque) 60μLと混合してvortex後、 37℃incubatorで20分間incubationした。その後、35℃, 12000gで30分間遠心を行った。上清を再びphenol:chloroform:isoamylalcohol (25:24:1) 60μLと混合し、同様の手順を計3回繰り返した。最終的な上清を回収し7.5% Sucrose溶液と混合して泳動サンプルとした。
【0198】
(泳動・解析)
20% アクリルアミドゲル(1×TBE)を準備、作製した。上記の泳動サンプルをゲルに100V 80分で泳動した。コントロールとしてASO単独を同時に泳動した。その後、1×TBEでGelRed(×10000)水溶液(Biotium)を1/10000の濃度に希釈した溶液を作製した。ゲルを10分間その溶液で浸透した。その後、ChemiDocTouch イメージングシステム(BioRad社)でゲルを撮影した。Image J softwareにてバンドの濃度を解析した。
【0199】
(結果)
ASO (mDmpk) 単独、ASO (mDmpk)とcRNA (default, CU OMe, AG OMe, CU PS) の二本鎖複合体のマウス血清と混合incubation後の電気泳動結果を
図23に示す。 ASO (mDmpk) 単独、ASO (mDmpk)とcRNA (default, CU OMe, CT DNA) の二本鎖複合体のヒト血清との混合incubation後の電気泳動結果を
図25に示す。また、24hr incubation後の二本鎖バンドの濃度を、0hr incubation後の二本鎖バンドに対する相対強度レベル(%)で示したグラフを
図24ならびに
図26に示す。
図23、
図24に示される通り、第2核酸鎖におけるC及びUが2‘-O-メチル修飾リボヌクレオシドであるものはマウス血清中での安定性が向上していた。加えて第2核酸鎖におけるリボヌクレオシドC及びUの3’側のホスホジエステル結合(PO)をホスホロチオエート結合(PS)に変更することでもマウス血清中での安定性が向上していた。また、
図25、
図26に示される通り、第2核酸鎖におけるC及びU又はTが2‘-O-メチル修飾リボヌクレオシド又はDNAであるものはヒト血清中での安定性が向上していた。
【0200】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。