(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156548
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 153/02 20060101AFI20251002BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J11/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025131484
(22)【出願日】2025-08-06
(62)【分割の表示】P 2021096103の分割
【原出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】森口 政浩
(57)【要約】
【課題】塗工性、接着性および耐クリープ性に優れ、生分解性プラスチックを含む材料に伸縮性材料を接着保持することができるホットメルト接着剤、及びそのホットメルト接着剤を用いて得られる使い捨て製品を提供すること。
【解決手段】(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体及び(B)粘着付与樹脂を含むホットメルト接着剤であって、(A)熱可塑性ブロック共重合体が、(A1)35~50質量%のスチレン含有率を有するスチレンブロック共重合体;及び(A2)10質量%を超えて35質量%未満のスチレン含有率を有するスチレンブロック共重合体;を含み、(B)粘着付与樹脂が、(B1)天然樹脂;を含み、成分(B1)は、成分(B)100質量部中に20質量部以上含まれるホットメルト接着剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体及び(B)粘着付与樹脂を含むホットメルト接着剤であって、
(A)熱可塑性ブロック共重合体が、
(A1)35~50質量%のスチレン含有率を有するスチレンブロック共重合体;及び
(A2)10質量%を超えて35質量%未満のスチレン含有率を有するスチレンブロック共重合体;
を含み、
(B)粘着付与樹脂が、
(B1)天然樹脂;
を含み、
成分(B1)は、成分(B)100質量部中に20質量部以上含まれるホットメルト接着剤。
【請求項2】
(B1)天然樹脂がロジンエステルを含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
(B)粘着付与樹脂が、さらに、(B2)石油樹脂を含む、請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
(B2)石油樹脂が軟化点100℃以上の水素添加石油樹脂を含む、請求項3に記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
伸縮性材料を使い捨て製品本体に固定するために用いられる請求項1~4のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤が塗布された使い捨て製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホットメルト接着剤に関し、さらに詳しくは紙おむつ、ナプキンに代表される使い捨て製品分野に使用されるホットメルト接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ及びナプキン等に代表される使い捨て製品には、ホットメルト接着剤が使用されている。ホットメルト接着剤は、不織布、ティッシュ及びポリエチレンフィルム等の基材に塗布され、これら複数の基材を組み合わせて使い捨て製品が製造される。
【0003】
ホットメルト接着剤として、熱可塑性ブロック共重合体を主成分とする合成ゴム系ホットメルト接着剤、及びエチレン/プロピレン/ブテン共重合体に代表されるオレフィン系ホットメルト接着剤を主に例示することができる。塗工性及び凝集力等を考慮すると、オレフィン系接着剤より、合成ゴム系ホットメルト接着剤が利用されることがある。
【0004】
一般に、ホットメルト接着剤はベースポリマーと可塑剤を含んでいる。ベースポリマーを減量し、可塑剤を増量することでホットメルト接着剤を低粘度化し、塗布適正を向上させることが検討されている。
【0005】
しかしながら、可塑剤を多量に含むホットメルト接着剤は、凝集力とタックのバランスが悪く、紙おむつ部材(例えば、ポリエチレンフィルム)等に対する接着性が低下してしまう問題がある。
【0006】
紙おむつの一種として、糸ゴムが組み込まれているものがある。引き伸ばした糸ゴムを紙おむつ本体に接着する際に、ホットメルト接着剤が利用される。紙おむつ本体は弾性を有しない材料から構成されているので、糸ゴムが接着された紙おむつ本体は糸ゴムが収縮する時に、糸ゴムの収縮力によって折り畳まれる。その結果、紙おむつ本体に糸ゴムの伸縮力が付与されて、紙おむつは身体にフィットすることができる。
【0007】
糸ゴム等の伸縮性材料を紙おむつ本体に接着するホットメルト接着剤は耐クリープ性に優れる必要がある。耐クリープ性が不充分であるホットメルト接着剤を使用して伸縮性材料を紙おむつ本体に接着すると、ホットメルト接着剤は伸縮性材料の収縮力により伸張されて、伸縮性材料を紙おむつ本体の接着された位置に保持することができなくなる。その結果、紙おむつ本体を伴わずに伸縮性材料のみが収縮し、伸縮性材料が収縮しても紙おむつ本体は折り畳まれず、紙おむつは身体にフィットしなくなる。よって、ホットメルト接着剤には、耐クリープ性に優れていることが要求される。
【0008】
特許文献1~3には、スチレン系ブロック共重合体をベースとする合成ゴム系ホットメルト接着剤が開示されている。
【0009】
特許文献1には、スチレン系ブロック共重合体、可塑剤を有するホットメルト組成物が開示されている(請求項1)。前記スチレン系ブロック共重合体は、高分子量成分と低分子量成分とを所定の比率で含有するものである。特許文献1のホットメルト接着剤は伸長性及び伸長後の伸縮回復性に優れ、衛生材料の伸縮性積層体の伸縮部材として使用することを目的としている。特許文献1のホットメルト組成物は、実施例の特性評価結果を参照して([0093]の表1)、破断伸び及び永久歪みに優れることが示されている。
【0010】
一方で、特許文献1には、ホットメルト組成物の接着性について言及されていない。表1のホットメルト組成物は、粘着付与樹脂を含んでいないのでタックが低く、例えば、おむつ本体等の被着物に接着する性能が不充分と考えられる。
【0011】
特許文献2には、約10重量%以下のジブロック含有量を有するスチレンブロックコポリマーを特定量で含む、低塗布温度のホットメルト接着剤組成物が記載されている(要約)。特許文献2のホットメルト接着剤組成物は、低い粘度を有する一方で、より粘度の高いホットメルト接着剤と同等の機械的特性(例えば剥離力及びクリープ)を有し、使い捨て物品において、構造用及び位置決め用等の用途で使用される。
【0012】
一方、実施例の組成を参照して([0094]~[0097]の表1~4)、特許文献2のホットメルト接着剤組成物は、粘着付与樹脂やオイルを多量に含んでいるので耐クリープ性が低く、例えば、糸ゴムを使い捨て製品に組み込む用途においては、糸ゴムを被着物に接着保持する性能が不充分と考えられる。
【0013】
特許文献3は、ラジアル型スチレンブロック共重合体とリニア型スチレンブロック共重合体を有し、糸ゴムを使い捨て製品に固定するホットメルト接着剤が開示されている([請求項1][請求項3])。実施例に示されているように、特許文献3のホットメルト接着剤は耐クリープ性に優れ、糸ゴムを使い捨て製品に組み込む用途において、糸ゴムを被着物に接着保持することができる([0096]~[0100])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2020/110921号公報
【特許文献2】特表2018-514604号公報
【特許文献3】特開2016-44289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
近年では、環境に与える負荷を軽減する目的で、使い捨て製品の材料として生分解性プラスチックが使用される場合がある。かかる材料としては、例えば、ポリ乳酸系不織布が挙げられる。しかしながら、従来のホットメルト接着剤は、生分解性プラスチックを含む材料に対する接着性が不十分であり、糸ゴム等の伸縮性材料を生分解性プラスチックを含む材料に接着保持することは困難である。
【0016】
本発明は、塗工性、接着性および耐クリープ性に優れ、生分解性プラスチックを含む材料に伸縮性材料を接着保持することができるホットメルト接着剤、及びそのホットメルト接着剤を用いて得られる使い捨て製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明および本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
1.(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体及び(B)粘着付与樹脂を含むホットメルト接着剤であって、
(A)熱可塑性ブロック共重合体が、
(A1)35~50質量%のスチレン含有率を有するスチレンブロック共重合体;及び
(A2)10質量%を超えて35質量%未満のスチレン含有率を有するスチレンブロック共重合体;
を含み、
(B)粘着付与樹脂が、
(B1)天然樹脂;
を含み、
成分(B1)は、成分(B)100質量部中に20質量部以上含まれるホットメルト接着剤。
【0018】
2.成分(B1)は、成分(B)100質量部中に50~90質量部含まれる、1に記載のホットメルト接着剤。
【0019】
3.(B1)天然樹脂がロジンエステルを含む、1又は2に記載のホットメルト接着剤。
【0020】
4.(B)粘着付与樹脂が、さらに、(B2)石油樹脂を含む、1~3のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【0021】
5.(B2)石油樹脂が軟化点100℃以上の水素添加石油樹脂を含む、4に記載のホットメルト接着剤。
【0022】
6.成分(A1)は、成分(A1)と成分(A2)との合計100質量部中に60~90質量部含まれる、1~5のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【0023】
7.成分(A1)がリニア型スチレンブロック共重合体である、1~6のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【0024】
8.成分(B)100質量部に対し、成分(A)が30~80質量部になる量で含まれる、1~7のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【0025】
9.伸縮性材料を使い捨て製品本体に固定するために用いられる、1~8のいずれかに記載のホットメルト接着剤
【0026】
10.1~9のいずれかに記載のホットメルト接着剤が塗布された使い捨て製品。
【発明の効果】
【0027】
本発明のホットメルト接着剤は、塗工性、接着性および耐クリープ性に優れ、生分解性プラスチックを含む材料に伸縮性材料を接着保持することが可能である。本発明のホットメルト接着剤を使用することで、生物分解性プラスチックを含む材料にも伸縮性材料を接着保持することができ、環境に与える負荷が小さい使い捨て製品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のホットメルト接着剤は、(A)熱可塑性ブロック共重合体及び(B)粘着付与樹脂を含有する。
【0029】
<(A)熱可塑性ブロック共重合体>
本発明のホットメルト接着剤において、(A)熱可塑性ブロック共重合体とは、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とがブロック共重合した共重合体である。(A)熱可塑性ブロック共重合体は、通常、ビニル系芳香族炭化水素ブロックと共役ジエン化合物ブロックを有して成る共重合体を含む樹脂組成物である。
【0030】
ここで、「ビニル系芳香族炭化水素」とは、ビニル基を有する芳香族炭化水素化合物を意味し、具体的には、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、及びビニルアントラセン等を例示できる。これらの中でも好ましいものはスチレンである。これらのビニル系芳香族炭化水素は、単独で又は組み合わせて使用できる。
【0031】
「共役ジエン化合物」とは、少なくとも一対の共役二重結合を有するジオレフィン化合物を意味する。「共役ジエン化合物」として、具体的には、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(又はイソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンを例示することができる。これらの中でも好ましいものは、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエンである。これらの共役ジエン化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明に係る(A)熱可塑性ブロック共重合体は、未水素添加物であっても、水素添加物であってもよい。
【0033】
「(A)熱可塑性ブロック共重合体の未水素添加物」とは、具体的には、共役ジエン化合物に基づくブロックが水素添加されていないものが例示される。また、「(A)熱可塑性ブロック共重合体の水素添加物」とは、具体的には、共役ジエン化合物に基づくブロックの全部、若しくは一部が水素添加されたブロック共重合体が例示される。
【0034】
「(A)熱可塑性ブロック共重合体の水素添加物」の水素添加された割合を、「水素添加率」で示すことができる。「(A)熱可塑性ブロック共重合体の水素添加物」の「水素添加率」とは、共役ジエン化合物に基づくブロックに含まれる全脂肪族二重結合を基準とし、その中で、水素添加されて飽和炭化水素結合に転換された二重結合の割合をいう。この「水素添加率」は、赤外分光光度計及び核磁器共鳴装置等によって測定することができる。
【0035】
「(A)熱可塑性ブロック共重合体の未水素添加物」として、具体的には、例えばスチレン-イソプレンブロック共重合体(「SIS」ともいう)、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(「SBS」ともいう)が例示される。「(A)熱可塑性ブロック共重合体の水素添加物」として、具体的には、例えば水素添加されたスチレン-イソプレンブロック共重合体(「SEPS」ともいう)及び水素添加されたスチレン-ブタジエンブロック共重合体(「SEBS」ともいう)が例示される。
【0036】
本発明の目的を達成する限り、(A)熱可塑性ブロック共重合体の構造は、リニア型であっても、ラジアル型であっても良い。
【0037】
尚、本明細書では、「リニア型」とは、線状構造を意味する。リニア型スチレンブロック共重合体とは、スチレンのブロックと共役ジエンのブロックとが結合した線状共重合体である。
【0038】
ラジアル型スチレンブロック共重合体とは、カップリング剤を中心にして、リニア型スチレンブロック共重合体が複数放射状に突出した構造を有する分岐状スチレンブロック共重合体である。
【0039】
ラジアル型スチレンブロック共重合体の具体的な構造を以下に示す。
【0040】
[化1]
(S-E)nY (1)
【0041】
式中、nは2以上の整数、Sはスチレンブロック、Eは共役ジエン化合物ブロック、Yはカップリング剤である。nは好ましくは3又は4であり、特にnが3であることが望ましい。共役ジエン化合物としては、ブタジエン又はイソプレンが好ましい。
【0042】
スチレンブロック共重合体は樹脂組成物であり、式(2)で表されるスチレン共役ジエンブロック共重合体を一定の割合で含有する。
【0043】
[化2]
S-E (2)
【0044】
式中、S及びEは上記と同意義である。式(2)のスチレン共役ジエンブロック共重合体は「ジブロック」と呼ばれることがある。
【0045】
カップリング剤はリニア型スチレンブロック共重合体を放射状に結合させる多官能性化合物である。カップリング剤の種類は特に限定されない。
【0046】
カップリング剤の一例としては、ハロゲン化シラン、アルコキシシランなどのシラン化合物、ハロゲン化すずなどのすず化合物、ポリカルボン酸エステル、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどのアクリルエステル、エポキシシラン、ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物などが挙げられる。具体例としては、トリクロロシラン、トリブロモシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラクロロすず、ジエチルアジペートなどが挙げられる。
【0047】
(A)熱可塑性ブロック共重合体は、(A1)35~50質量%のスチレン含有率を有するスチレンブロック共重合体、及び(A2)10質量%を超えて35質量%未満のスチレン含有率を有するスチレンブロック共重合体を含む。
【0048】
本明細書において、「スチレン含有率」とは、成分(A)に含まれるスチレンブロックの割合をいう。
【0049】
本発明のホットメルト接着剤は、成分(A1)と成分(A2)のスチレン含有率が上記範囲であることによって、凝集力とタックのバランスが良好になり、接着性が向上する。
【0050】
成分(A1)のスチレン含有率が上記範囲にあることによって、ホットメルト接着剤は、保持力(凝集力)が高くなり、耐クリープ性に優れ、延伸率が高い伸縮性材料を使い捨て製品本体に接着保持できるようになる。成分(A2)のスチレン含有率が上記範囲にあることによって、ホットメルト接着剤は、タックと凝集力のバランスが保たれ、接着性が向上する。
【0051】
本発明の(A)熱可塑性ブロック共重合体は、ジブロック含有率が、好ましくは0~90質量%、より好ましくは15~85質量%である。
【0052】
「ジブロック含有率」とは、成分(A)に含まれる式(2)のスチレン共役ジエン化合物ブロック共重合体の割合をいう。
【0053】
成分(A1)のジブロック含有率は、好ましくは0~80質量%、より好ましくは0~65質量%である。成分(A2)のジブロック含有率は、好ましくは0~70質量%、より好ましくは0~65質量%である。
【0054】
本発明のホットメルト接着剤は、成分(A1)と成分(A2)のジブロック含有率が上記範囲であることによって、凝集力とタックのバランスが良好になり、接着性に優れたものとなる。
【0055】
成分(A1)は、好ましくは、リニア型スチレンブロック共重合体である。本発明のホットメルト接着剤は、成分(A1)の構造がリニア型であることによって、伸縮性材料を生分解性プラスチックを含む材料へより強く接着保持することができる。
【0056】
成分(A1)としては、市販品を用いることができる。市販品の一例としては、日本ゼオン社製のクインタック3390(商品名)、LCY GRITコーポレーション製のLCY5562(商品名)、LCY3545(商品名)、TSRCコーポレーション製のTaipol4270、旭化成(株)社製のN308(商品名)が挙げられる。
【0057】
成分(A2)は、好ましくは、スチレン-ブタジエンブロック共重合体およびスチレン-イソプレンブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種を含み、より好ましくは、スチレン-イソプレンブロック共重合体を含む。本発明のホットメルト接着剤は、成分(A2)がスチレン-イソプレンブロック共重合体を含むことで、タックと凝集力のバランスが向上し、接着性に優れたものとなる。
【0058】
成分(A2)としては、市販品を用いることができる。例えば、旭化成(株)社製のアサプレンT432(商品名)、アサプレンT436(商品名)、クレイトン社製のクレイトンD1161(商品名)、TSRCコーポレーション製のVECTOR 4213NS(商品名)、Jinhai Chemicalコーポレーション製のJH8291(商品名)、日本ゼオン社製のクインタック3270(商品名)を例示できる。
【0059】
本発明のホットメルト接着剤では、成分(A1)は、成分(A1)と成分(A2)との合計100質量部中に、好ましくは60~90質量部含まれる。成分(A1)の上記含有量が60質量部以上であることで、ホットメルト接着剤の耐クリープ性がより向上し、90質量部以下であることで、接着性の低下が防止される。本発明のホットメルト接着剤は、成分(A1)の含有量が上記範囲であることで凝集力がより高くなり、伸縮性材料を使い捨て製品に接着保持し易くなる。成分(A1)と成分(A2)との合計100質量部中の成分(A1)の含有量は、好ましくは67~86質量部、より好ましくは70~80質量部である。
【0060】
<(B)粘着付与樹脂>
本発明のホットメルト接着剤において、(B)粘着付与樹脂は(B1)天然樹脂を含む。(B1)天然樹脂は、(B)粘着付与樹脂100質量部中に(B1)天然樹脂が20質量部以上になる量で含まれる。(B)粘着付与樹脂における(B1)天然樹脂の含有量は、好ましくは25~90質量部、より好ましくは50~90質量部、更に好ましくは56~85質量部、最も好ましくは73~83質量部である。
【0061】
(B1)天然樹脂は、凝集力を維持しつつ、ホットメルト接着剤に適度なタックを付与して、ホットメルト接着剤の生分解性プラスチックを含む材料への接着性を向上させる。その結果、本発明のホットメルト接着剤は、(B1)天然樹脂を上述の割合で含むことによって、生分解性プラスチックを含む材料に伸縮性材料を接着保持することが可能になる。
【0062】
尚、本明細書において、「天然樹脂」とは、動植物の生理的、病理的作用により分泌されるか、またはそれらの組織から抽出された樹脂状物質、抽出された樹脂状物質の変性物とする。(B1)天然樹脂は、主に、ロジン系とテルペン系に大別される。
【0063】
ロジン系としては、ロジン、ロジン誘導体(水素化ロジン、ロジンエステル、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、マレイン酸変性ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂)が挙げられる。
【0064】
テルペン系としては、テルペン樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素化テルペン樹脂が挙げられる。
【0065】
(B1)天然樹脂は、バイオマス度が50%以上であることが好ましく、65%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが最も望ましい。
【0066】
成分(B1)のバイオマス度が上記範囲であることで、本発明のホットメルト接着剤は、バイオマス度が高くなり、生分解性プラスチックを含む材料に対する接着性に優れたものとなる。
【0067】
本明細書において、「バイオマス度」は、生物由来物質にしか含まれていない炭素C14の含量を測定して算出される値であり、加速器質量分析装置(AMS)で測定される。C14は、石油や石炭のような化石資源には含まれていない。対象物質(成分(B1))のC14含量を算出することで、成分(B1)のバイオマス度を算出でき、成分(B1)のバイオマス度からホットメルト接着剤全体のバイオマス度を算出できる。
【0068】
(B1)天然樹脂として、市販品を利用することができる。市販品としては、クレイトン社製のSYLVALITE 9100(商品名)、SYLVALITE 6100(商品名)、SYLVARES TRM1115(商品名)、GuangdongKOMOコーポレーション製のKE100L(商品名)、荒川化学工業社製のパインクリスタルKR612(商品名)、パインクリスタルKE100(商品名)、ヤスハラケミカル社製のYSポリスターU115(商品名)、YSポリスターT130(商品名)、YSポリスターS145(商品名)等が挙げられる。
【0069】
本発明において、(B1)天然樹脂は、好ましくは、ロジンエステルを含む。本発明のホットメルト接着剤は、ロジンエステルを含むことで、生分解性プラスチックを含む材料への接着性がより向上し、伸縮性材料をより強く生分解性プラスチックを含む材料に接着保持できるようになる。
【0070】
(B)粘着付与樹脂は、好ましくは、(B1)天然樹脂と共に、(B2)石油樹脂を含む。(B2)石油樹脂には、ホットメルト接着剤の耐クリープ性を高める作用がある。
【0071】
本発明のホットメルト接着剤は、成分(B1)と成分(B2)の双方を含むことで、生分解性プラスチックを含む材料への接着性と、耐クリープ性がともに向上し、伸縮性材料をより強く生分解性プラスチックを含む材料に接着保持できるようになる。
【0072】
尚、本明細書において、「石油樹脂」とは、不飽和石油留分を重合して製造される合成樹脂、ナフサ分解で副生する不飽和性の高い C5留分などがおもな原料に用いられ,この原料をフリーデルクラフツ触媒によって重合すると得られる。
【0073】
(B2)石油樹脂としては、脂肪族系、芳香族系、共重合系、水添系等に大別される。脂肪族系石油樹脂は、ナフサ分解油のC5留分を原料とする樹脂である。芳香族系石油樹脂は、ナフサ分解油のC9留分を原料とする樹脂である。共重合系石油樹脂は、脂肪族系石油樹脂と芳香族系石油樹脂両者の性質を併せ持つC5~C9留分共重合樹脂を原料とする。水添石油樹脂は、芳香族石油樹脂又はジシクロペンタジエン系重合樹脂を水素化して得られる。
【0074】
(B2)石油樹脂の市販品としては、エネオス社製のT-Rez HA103(商品名)、T-Rez HB125(商品名)、T-Rez HC103(商品名)、Zibo Luhua Hongjin New Materialコーポレーション製のHD1120(商品名)、HD1100(商品名)、エクソンモービル社製のECR5600(商品名)、イーストマン社製のイーストタックH130(商品名)、Plastolyn290LV(商品名)、コロン社製のSUKOREZ SU420(商品名)、SUKOREZ SU400(商品名)、出光興産社製のアイマーブS100(商品名)、アイマーブP125(商品名)、荒川化学工業社製のアルコンM100(商品名)、アルコンP115(商品名)等が挙げられる。
【0075】
本発明において、(B2)石油樹脂の軟化温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。本発明のホットメルト接着剤は、成分(B2)の軟化点が上述の範囲であることによって、耐熱性に優れ、さらに、140℃~160℃程度の塗工性に優れたものとなる。
【0076】
(B)粘着付与樹脂100質量部に対し、(A)熱可塑性ブロック共重合体30~80質量部がホットメルト接着剤に含まれる。(A)熱可塑性ブロック共重合体の含有量は、35~65質量部が好ましく、40~55質量部がより好ましい。(A)熱可塑性ブロック共重合体の含有量が上記範囲になるように、(B)粘着付与樹脂が含まれることで、本発明のホットメルト接着剤は、生物分解性プラスチックを含む材料に伸縮性材料を接着保持する性能が向上する。
【0077】
<(C)可塑剤>
本発明のホットメルト接着剤は、好ましくは、成分(A)及び成分(B)以外に、(C)可塑剤を含有する。可塑剤は、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、ホットメルト接着剤の塗工性を改良する。(C)可塑剤として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを挙げることができる。(C)可塑剤は、(B)粘着付与樹脂100質量部に対し、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下になる量でホットメルト接着剤に含まれる。
【0078】
可塑剤としては、市販品を用いることができる。例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、DNオイルKP-68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エッソ社製のPrimol352(商品名)、出光興産社製のプロセスオイルNS100、ペトロチャイナカンパニー社製のKN4010(商品名)を例示することができる。これらの可塑剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0079】
本発明に係るホットメルト接着剤は、必要に応じて、更に各種添加剤を含んでもよい。そのような各種添加剤として、例えば、安定化剤及び微粒子充填剤を例示することができる。
【0080】
安定化剤とは、ホットメルト接着剤の熱による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。「安定化剤」として、例えば酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
【0081】
紫外線吸収剤は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的に使い捨て製品に使用されるものであって、後述する目的とする使い捨て製品を得ることができるものであれば使用することができ、特に制限されるものではない。
【0082】
酸化防止剤として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0083】
安定化剤として、市販品を使用することができる。例えば、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、城北化学社製のJF77(商品名)を例示することができる。これら安定化剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0084】
本発明のホットメルト接着剤は、上記成分を所定の割合で配合し、必要に応じて更に種々の添加剤を配合し、加熱して溶融し混合することで製造される。具体的には、上記成分を攪拌機付きの溶融混合釜に投入し、加熱混合することによって製造される。
【0085】
得られたホットメルト接着剤は、160℃での溶融粘度が、好ましくは50000mPa・s以下、より好ましくは2000~8000mPa・sである。「溶融粘度」とは、ホットメルト接着剤の溶融体の粘度をいう。ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)で測定される。
【0086】
更に、本発明に係るホットメルト接着剤は、実施例で記載する糸ゴムの貼付長さ保持性(耐クリープ性)の評価方法において、保持率が、好ましくは80%以上、より好ましくは90%を超える値になる。ホットメルト接着剤は、保持率が80%以上になると、引き伸ばした糸ゴムを接着保持させることで、弾性を有しない材料を伸縮させることが可能となり、使い捨て製品用途に好適である。
【0087】
本発明に係るホットメルト接着剤は、紙加工、製本、使い捨て製品等、幅広く利用されるが、主に使い捨て製品に使用される。「使い捨て製品」とは、例えばいわゆる衛生材料であれば、特に限定されるものではない。衛生材料として、具体的には紙おむつ、生理用ナプキン、ペットシート、病院用ガウン、手術用白衣等を例示できる。
【0088】
本発明のホットメルト接着剤は、好ましくは、伸縮性材料が組み込まれた上記使い捨て製品を製造する際に、引き伸ばした伸縮性材料を製品本体に接着する用途に使用される。
【0089】
本発明の別の要旨において、上述のホットメルト接着剤が塗布されて得られる使い捨て製品を提供する。使い捨て製品は、織布、不織布、ゴム、樹脂、紙類からなる群から選ばれた少なくとも一つの部材と、ポリオレフィンフィルムとを本発明に係るホットメルト接着剤を用いて接着して構成される。ポリオレフィンフィルムとしては、耐久性やコスト等の理由から好ましくは、ポリエチレンフィルムである。
【0090】
環境に与える負荷を考慮した場合、前記使い捨て製品の部材として好ましいものは、生分解性プラスチックを含む材料である。
【0091】
生分解性プラスチックを含む材料の具体例には、生分解性プラスチック不織布がある。生分解性プラスチック不織布は、生分解性プラスチックの長繊維を含む不織ウエブ層を有するシート材料をいう。生分解性プラスチックの具体例は、ポリ乳酸、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリグリコール酸、セルロース、キチン、ビスコースレーヨン、コラーゲンが挙げられる。
【0092】
使い捨て製品の製造ラインでは、一般に使い捨て製品の各種部材(例えば、不織布等)やポリオレフィンフィルムの少なくとも一方にホットメルト接着剤を塗布し、フィルムと部材とを圧着して、使い捨て製品が製造される。塗布の際、ホットメルト接着剤は、種々の噴出機から噴出されて使用されてよい。
【0093】
本発明において、塗布は、接触塗布、非接触塗布のいずれでも良い。
【0094】
「接触塗布」とは、ホットメルト接着剤を塗布する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗布方法のことである。具体的には、Vスリット塗工が挙げられる。
【0095】
「非接触塗布」とは、ホットメルト接着剤を塗布する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗布方法のことである。具体的な非接触塗布方法として、例えば、螺旋状に塗布できるスパイラル塗工、波状に塗布できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗布できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工などを例示できる。
【0096】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、質量部及び質量%の基準としている。
【実施例0097】
本実施例で使用した成分を以下に示す。
(A)熱可塑性ブロック共重合体
(A1)35~50質量%のスチレン含有率を有するスチレンブロック共重合体
(A1-1)リニア型スチレン―イソプレンブロック共重合体(クインタック3390(商品名)、スチレン含有率48質量%、ジブロック含有率0質量%(トリブロック含有率100質量%)、日本ゼオン社製)
(A1-2)リニア型スチレン―イソプレンブロック共重合体(LCY5562(商品名)、スチレン含有率45質量%、ジブロック含有率0質量%(トリブロック含有率100質量%)、LCY GRITコーポレーション製)
(A1-3)リニア型スチレン―ブタジエンブロック共重合体(LCY3545(商品名)、スチレン含有率43質量%、ジブロック60質量%、LCY GRITコーポレーション製)
(A1-4)リニア型スチレン―ブタジエンブロック共重合体(Taipol 4270(商品名)、スチレン含有率37質量%、ジブロック含有率70質量%、TSRCコーポレーション製)
(A1-5)ラジアル型スチレン―ブタジエンブロック共重合体(N308(商品名)、スチレン含有率40質量%、ジブロック含有率75質量%、旭化成ケミカル社製)
【0098】
(A2)10質量%を超えて35質量%未満のスチレン含有率を有するスチレンブロック共重合体
(A2-1)リニア型スチレン―イソプレンブロック共重合体(クレイトンD1161(商品名)、スチレン含有率15質量%、ジブロック含有率19質量%、クレイトン社製)
(A2-2)リニア型スチレン―イソプレンブロック共重合体(Vector4213NS(商品名)、スチレン含有率25質量%、ジブロック含有率25質量%、TSRCコーポレーション製)
(A2-3)リニア型スチレン―イソプレンブロック共重合体(クインタック3270(商品名)、スチレン含有率24質量%、ジブロック含有率67質量%、日本ゼオン社製)
(A2-4)リニア型スチレン―イソプレンブロック共重合体(JH8291(商品名)、スチレン含有率30質量%、ジブロック含有率0質量%(トリブロック含有率100質量%)、Jinhai Chemicalコーポレーション製)
(A2-5)リニア型スチレン―ブタジエンブロック共重合体(アサプレンT432(商品名)、スチレン含有率30質量%、ジブロック含有率0質量%(トリブロック含有率100質量%)、旭化成ケミカル社製)
(A2-6)リニア型スチレン―ブタジエンブロック共重合体(アサプレンT436(商品名)、スチレン含有率32質量%、ジブロック含有率50質量%、旭化成ケミカル社製)
【0099】
(B)粘着付与樹脂
(B1)天然樹脂
(B1-1)ロジンエステル(SYLVALITE 9100(商品名)、バイオマス度93%、クレイトン社製)
(B1-2)ロジンエステル(KEL100(商品名)、バイオマス度85%、GuangdongKOMOコーポレーション製)
(B1-3)スチレン変性テルペン(SYLVARES 6100(商品名)、バイオマス度69%、クレイトン社製)
(B1-4)テルペン重合体(SYLVARES TRM1115(商品名)、バイオマス度100%、クレイトン社製)
【0100】
(B2)石油樹脂
(B2-1)水添型ジシクロペンタジエン/C9共重合樹脂(T-Rez HB125(商品名)、軟化点125℃、エネオス社製)
(B2-2)水添型ジシクロペンタジエン樹脂(HD1120(商品名)、軟化点120℃、Zibo Luhua Hongjin New Materialコーポレーション製)
(B2-3)水添型C5樹脂(イーストタックH130(商品名)、軟化点130℃、イーストマンタック社製)
(B2-4)水添型C5/C9共重合樹脂(SUKOREZ SU420(商品名)、軟化点120℃、コロン社製)
(B2-5)αメチルスチレン系樹脂(Plastolyn290LV(商品名)、軟化点140℃、イーストマンタック社製)
(B2-6)水添型ジシクロペンタジエン樹脂(T-Rez HC103(商品名)、軟化点103℃、エネオス社製)
(B2-7)水添型ジシクロペンタジエン樹脂(HD1100(商品名)、軟化点100℃、Zibo Luhua Hongjin New Materialコーポレーション製)
(B2-8)水添型ジシクロペンタジエン樹脂(ECR5600(商品名)、軟化点103℃、エクソンモービル社製)
(B2-9)水添型ジシクロペンタジエン樹脂(アイマーブS100(商品名)、軟化点100℃、出光興産社製)
(B2-10)水添型C9樹脂(アルコンM100(商品名)、軟化点100℃、荒川化学工業社製)
【0101】
(C)可塑剤
(C1)ナフテンオイル(「KN4010」(商品名)、ペトロチャイナ社製)
(C2)パラフィン系オイル(ダイアナフレシアS32(商品名)、出光興産社製)
【0102】
(D)安定化剤
(D1)フェノール系酸化防止剤(スミライザーGM(住友化学社製))
(D2)フェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010(BASF社製))
(D3)硫黄系酸化防止剤(スミライザーTPD(住友化学社製))
【0103】
[実施例及び比較例のホットメルト接着剤の調製]
上述の成分(A)~成分(D)を表1に示す割合で配合し、約150℃で2時間かけて万能攪拌機を用いて溶融混合し、実施例および比較例のホットメルト接着剤を調製した。表に示されるホットメルト接着剤の組成(配合)に関する数値は全て質量部である。
【0104】
【0105】
【0106】
このようにして得られた実施例及び比較例のホットメルト接着剤について、溶融粘度、塗工性、糸ゴムの貼付長さ保持性を調べた。その評価結果を表に示す。尚、上記特性は、以下の方法により評価した。
【0107】
[溶融粘度]
ホットメルト接着剤を加熱して溶融し、140℃、160℃及び180℃で溶融状態の粘度をブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)で測定した。
【0108】
[塗工性]
Vスリット塗工でホットメルト接着剤を糸ゴムに塗布し、糸ゴムを延伸させて不織布に貼り合せたものを塗工サンプルとした。塗工温度を160℃とした。塗布装置のオープンタイムは0.4秒、塗布量は0.04g/m(吐出量は12g/分)であった。
【0109】
尚、糸ゴム及び不織布は、以下に示す市販品を使用した。
糸ゴム:東レ・オペレンテックス社製 「ライクラ」(登録商標)、620detexのウレタン糸
不織布:FITESA社製、ポリ乳酸含有率100質量%のポリ乳酸系不織布
また、糸ゴムの延伸倍率は3.0倍とした。評価基準は以下のとおりである。
【0110】
A(良):ホットメルト接着剤の飛び散りや、ボタ落ちがなく、糸ゴムへの均一塗工が可能(160℃の溶融粘度が2000~8000mPa.s)
B(可):ホットメルト接着剤が高粘度のため、糸ゴムへの均一塗工が困難(160℃の溶融粘度が8000~50000mPa.s)
C(不可):ホットメルト接着剤が低粘度のため、糸ゴムへの塗工時に染み出し発生(160℃の溶融粘度が2000mPa.s未満)
D(悪い):ホットメルト接着剤の粘度が高すぎ、ノズルからの吐出が難しく、塗工が不可能(160℃の溶融粘度が50000mPa.sを超える)
【0111】
[ポリエチレンフィルムに対するピール強度(接着性)]
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにホットメルト接着剤を塗布し、厚さ50μmの接着剤層を作製した。これを幅25mmに成形し、それを試験体とした。この試験体を厚さ100μmのポリエチレンフィルムに20℃で貼り合せた。貼り合わせの際には、重さ2kgのローラーを速度5mm/秒でPETフィルムに接触させた。20℃で試験体を1日間放置した。放置後、40℃、引張速度300mm/分の条件で剥離試験を行い、ポリエチレン(PE)フィルムから試験体が剥離する際の強度を測定した。評価基準は以下のとおりである。
【0112】
A(良):剥離強度が1000(g/25mm)を超える
B(可):剥離強度が800(g/25mm)以上、1000 (g/25mm)以下
C(不可):剥離強度が400(g/25mm)以上、800(g/25mm)未満
D(悪い):剥離強度が400(g/25mm)未満
【0113】
[ポリ乳酸系不織布を用いた糸ゴムの貼付長さ保持性評価(耐クリープ性)]
糸ゴムをポリ乳酸(PLA)系不織布に貼り合せたものをサンプルとし、このサンプルを250mm~300mmの長さにカットし、完全に延伸させた状態でダンボール板に貼り付けた。次いで、貼り付けた試験体のゴム長さが200mmとなるような任意の2点に油性ペンで印をつけ、この印のところでゴムをカットし、40℃で4時間放置した。
【0114】
4時間後、延伸貼付した糸ゴムの長さを測定し、糸ゴムの貼付長さ保持率を算出した。保持率を算出する式を以下に示す。評価基準は以下のとおりである。
【0115】
[数1]
保持率(%)=4時間後のゴム長さ(mm)×100/200
【0116】
A(良):4時間後の貼付長さ保持率が90%を超える
B(可):4時間後の貼付長さ保持率が85%以上、90%以下
C(不可):4時間後の貼付長さ保持率が80%以上、85%未満
D(悪い):4時間後の貼付長さ保持率が80%未満
【0117】
【0118】
【0119】
表3及び4に示されるように、実施例1~8のホットメルト接着剤は塗工性、接着性(剥離強度)、糸ゴムの貼付長さ保持率(耐クリープ性)のバランスが良好であり、比較例1~6のホットメルト接着剤は塗工性、接着性(剥離強度)、糸ゴムの貼付長さ保持率(耐クリープ性)のいずれかがC又はDと評価されている。
【0120】
ホットメルト接着が成分(A1)、成分(A2)、成分(B1)を含み、成分(B1)の配合量が高い場合に、ホットメルト接着剤の塗工性、接着性、糸ゴムの貼付長さ保持率のバランスが向上することが立証された。
本発明は、ホットメルト接着剤およびそのホットメルト接着剤が塗布されて得られる使い捨て製品を提供する。本発明に係るホットメルト接着剤は、使い捨て製品を製造するのに適しており、特に、伸縮性材料を生分解性プラスチックを含む材料に保持できる。生物分解プラスチックの一種であるポリ乳酸系不織布を具備する使い捨て製品本体は、廃棄し易く、環境に与える負荷が小さいものとなる。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、質量部及び質量%の基準としている。但し、実施例8は参考例である。