(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156584
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】光硬化性組成物およびこれからなる成形体
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20251002BHJP
C08G 18/64 20060101ALI20251002BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20251002BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20251002BHJP
C08F 4/00 20060101ALI20251002BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20251002BHJP
C08F 283/00 20060101ALI20251002BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20251002BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20251002BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20251002BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20251002BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G18/64 015
C08G18/67
C08F20/10
C08F4/00
C08F2/44 C
C08F283/00
B29C64/124
B29C64/314
B33Y70/00
B33Y80/00
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025133829
(22)【出願日】2025-08-08
(62)【分割の表示】P 2022148320の分割
【原出願日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2021153498
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 崇博
(72)【発明者】
【氏名】黒田 賢一
(57)【要約】
【課題】成形体の機械的特性に優れる光硬化性組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の光硬化性組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、ビニルモノマーとして、ガラス転移温度が-100℃以上、20℃以下の第1モノマーと、ガラス転移温度が20℃超、150℃以下の第2モノマーとを含有し、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有率は、20質量%~80質量%であり、前記第1モノマーの含有率が15質量%~75質量%であり、前記第2モノマーの含有率が5質量%~65質量%であり、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとビニルモノマーとの合計含有率が100質量%であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、
ビニルモノマーとして、ガラス転移温度(Tg)が-100℃以上、20℃以下の第1モノマーと、ガラス転移温度(Tg)が20℃超、150℃以下の第2モノマーとを含有する光硬化性組成物であって、
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有率は、35質量%~60質量%の範囲であり、
前記第1モノマーの含有率が40質量%~75質量%の範囲であり、
前記第2モノマーの含有率が5質量%~65質量%の範囲であり、
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとビニルモノマーとの合計含有率が100質量%であり、
前記光硬化性組成物の硬化物の圧縮永久歪みが5%以下であることを特徴とする光造形用光硬化性組成物。
【請求項2】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものである請求項1に記載の光造形用光硬化性組成物。
【請求項3】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのガラス転移温度(Tg)は、-100℃~50℃である請求項1に記載の光造形用光硬化性組成物。
【請求項4】
ビニルモノマーは、一官能ビニルモノマー、二官能ビニルモノマー、三官能ビニルモノマー、および、四官能ビニルモノマーよりなる群から選択される少なくとも一種である請求項1に記載の光造形用光硬化性組成物。
【請求項5】
前記ビニルモノマーは、(メタ)アクリレートを含む請求項1に記載の光造形用光硬化性組成物。
【請求項6】
前記第1モノマーとして、2-エチルヘキシルアクリレートおよび/または(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートを含有する請求項1に記載の光造形用光硬化性組成物。
【請求項7】
前記第2モノマーとして、イソボルニルアクリレートを含有する請求項1に記載の光造形用光硬化性組成物。
【請求項8】
粘度(温度25℃、せん断速度100秒-1)が500mPa・s以上、6,000mPa・s以下である請求項1に記載の光造形用光硬化性組成物。
【請求項9】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのガラス転移温度(Tg)は、-100℃~10℃である請求項1に記載の光造形用光硬化性組成物。
【請求項10】
吸収帯の異なる光重合開始剤を2種以上含む請求項1に記載の光造形用光硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の光造形用光硬化性組成物の硬化物であって、ガラス転移温度(Tg)が20℃以下である硬化物。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の光造形用光硬化性組成物を硬化させてなる成形体。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の光造形用光硬化性組成物に光照射して硬化させて、立体的に造形することを特徴とする成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物に関するものであり、より好適には、光造形に好適に使用することができる光硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元構造物の設計データに基づいて、樹脂を積層及び硬化させて三次元構造物を製造する三次元積層造形装置(いわゆる、3Dプリンタ)が実用化されている。三次元積層造形装置によって製造される三次元構造物としては、樹脂製のものが一般に知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液状ゴムを含む三次元積層造形用ゴム組成物が開示されており、当該ゴム組成物は、三次元積層造形装置に適用して弾性成形体を好適に製造することができる。
【0004】
特許文献2には、液状ポリマー及びモノマーを含む、光造形用ポリマー組成物であって、前記光造形用ポリマー組成物は、温度25℃、相対湿度50%の環境下、E型粘度計を用いて、コーンプレートφ25mm、せん断速度100秒-1の条件で測定される粘度が、3,000mPa・s以下である光造形用ポリマー組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/154335号
【特許文献2】特開2021-75044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光造形に使用される従来の光硬化性組成物の硬化物の機械的特性は、十分とは言えない。本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、成形体の機械的特性に優れる光硬化性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光硬化性組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、
ビニルモノマーとして、ガラス転移温度(Tg)が-100℃以上、20℃以下の第1モノマーと、ガラス転移温度(Tg)が20℃超、150℃以下の第2モノマーとを含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有率は、20質量%~80質量%の範囲であり、
前記第1モノマーの含有率が15質量%~75質量%の範囲であり、
前記第2モノマーの含有率が5質量%~65質量%の範囲であり、
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとビニルモノマーとの合計含有率が100質量%であることを特徴とする。
【0008】
本発明の光硬化性組成物を硬化させてなる硬化物(成形体)は、ガラス転移温度(Tg)を、低くすることができ、機械的特性に優れる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光硬化性組成物は、光造形用として好適に使用できる。
本発明の光硬化性組成物から成形した成形体は、機械的強度に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の光硬化性組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、
ビニルモノマーとして、ガラス転移温度(Tg)が-100℃以上、20℃以下の第1モノマーと、ガラス転移温度(Tg)が20℃超、150℃以下の第2モノマーとを含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有率は、20質量%~80質量%の範囲であり、
前記第1モノマーの含有率が15質量%~75質量%の範囲であり、
前記第2モノマーの含有率が5質量%~65質量%の範囲であり、
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとビニルモノマーとの合計含有率が100質量%であることを特徴とする。
【0011】
1.ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー
ウレタン(メタ)アクリートオリゴマーとは、分子内に(メタ)アクリロイル基とウレタン結合とを有するオリゴマーである。(メタ)アクリロイル基は、メタクリロイル基および/またはアクリロイル基である。オリゴマーは、複数の化合物が結合してなる分子である。オリゴマーは、例えば、3~100個程度の化合物が結合してなる重合体であることが好ましく、3~50個程度の化合物が結合してなる重合体であることがより好ましく、3~40個程度の化合物が結合してなる重合体であることがさらに好ましい。
【0012】
ウレタン(メタ)アクリートオリゴマーは、例えば、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーにヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることにより得られるもの、ヒドロキシ基を有するウレタンプレポリマーにイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることにより得られもの、および、アミノ基を有するウレタンプレポリマーにイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることにより得られものなどを挙げることができる。本発明において(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0013】
前記ウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオールとの反応により形成されるものであることが好ましい。ウレタンプレポリマーの分子鎖には、ポリイソシアネートとポリオールとの反応によりウレタン結合が形成される。ウレタンプレポリマーは、分子鎖の末端にイソシアネート基またはヒドロキシ基を有する。また、ウレタンプレポリマーは、分子鎖の末端にアミノ基を有する場合もある。
【0014】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ウレタンプレポリマーに由来するポリイソシアネートとポリオールとを構成成分として有することが好ましく、ウレタンプレポリマーに由来するポリイソシアネートとポリオールとポリアミンとを構成成分として有してもよい。
【0015】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを構成するポリオール成分としては、分子量が500未満の低分子量ポリオールや数平均分子量が500以上の高分子量ポリオールを挙げることができる。
【0016】
前記高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)などが挙げられる。前記ポリエステルポリオールとしては、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などが挙げられる。前記ポリカプロラクトンポリオールとしては、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)などが挙げられる。前記ポリカーボネートポリオールとしては、ポリヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。前記高分子量ポリオールは、単独で、あるいは、2種以上を混合して使用しても良い。
【0017】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを構成するポリオール成分は、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、および、ポリカーボネートジオールよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0018】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを構成するポリオール成分の数平均分子量は、300以上が好ましく、より好ましくは500以上であり、さらに好ましくは、1000以上であり、10000以下が好ましく、より好ましくは8000以下、さらに好ましくは5000以下である。前記ポリオール成分の数平均分子量が500以上であれば、光硬化性組成物を硬化してなる成形体に柔軟性を付与することができる。前記ポリオール成分の数平均分子量が5000以下であれば、光硬化組成物を硬化してなる成形体に硬度を付与することができる。
【0019】
前記ポリオール成分の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして有機溶媒系GPC用カラム(例えば、昭和電工社製「Shodex(登録商標) KFシリーズ」など)を用いて測定すればよい。
【0020】
前記ポリオール成分には、分子量が500未満の低分子量ポリオールを含有してもよい。前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオールなどのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。前記低分子量ポリオールは、単独で、あるいは、2種以上を混合して使用しても良い。
【0021】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを構成し得るポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基を有するものであれば特に限定されない。前記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族系ポリアミン;イソホロンジアミン、ピペラジン等の脂環式系ポリアミン;および、芳香族ポリアミン等が挙げられる。
【0022】
前記芳香族ポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基が芳香環に直接または間接的に結合しているものであれば、特に限定されない。ここで、間接的に結合しているとは、アミノ基が、例えば低級アルキレン基を介して芳香環に結合していることをいう。前記芳香族ポリアミンとしては、例えば、1つの芳香環に2以上のアミノ基が結合している単環式芳香族ポリアミンでもよいし、少なくとも1つのアミノ基が1つの芳香環に結合しているアミノフェニル基を2個以上含む多環式芳香族ポリアミンでもよい。
【0023】
前記単環式芳香族ポリアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン等のアミノ基が芳香環に直接結合しているタイプ;キシリレンジアミンのようなアミノ基が低級アルキレン基を介して芳香環に結合しているタイプ等が挙げられる。また、前記多環式芳香族ポリアミンとしては、少なくとも2つのアミノフェニル基が直接結合しているポリ(アミノベンゼン)でもよいし、少なくとも2つのアミノフェニル基が低級アルキレン基やアルキレンオキシド基を介して結合していてもよい。これらのうち、低級アルキレン基を介して2つのアミノフェニル基が結合しているジアミノジフェニルアルカンが好ましく、4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びその誘導体が特に好ましい。
【0024】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを構成し得るポリイソシアネート成分としては、例えば、イソシアネート基を少なくとも2つ有する化合物を挙げることができる。前記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネート;およびこれらのポリイソシアネートの誘導体が挙げられる。本発明では、前記ポリイソシアネートとして、2種以上のポリイソシアネートを使用してもよい。
【0025】
前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、ジイソシアネートと多価アルコールとを反応させて得られるアダクト変性体;ジイソシアネートのイソシアヌレート変性体;ビュレット変性体;アロハネート変性体などが挙げられ、遊離ジイソシアネートが除去されているものがより好ましい。
【0026】
前記アダクト変性体とは、ジイソシアネートと多価アルコールとを反応させて得られるポリイソシアネートである。前記多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの低分子量トリオールが好ましい。前記アダクト変性体としては、例えば、ジイソシアネートとトリメチロールプロパンとを反応させて得られるトリイソシアネート;ジイソシアネートとグリセリンとを反応させて得られるトリイソシアネートが好ましい。
【0027】
前記アロハネート体とは、例えば、ジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させて形成されるウレタン結合にさらにジイソシアネートが反応して得られるトリイソシアネートである。
【0028】
分子鎖の末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとを反応させることにより、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリルオリゴマーが得られる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0029】
分子鎖の末端にヒドロキシ基またはアミノ基を有するウレタンプレポリマーとイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとを反応させることにより、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリルオリゴマーが得られる。イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名「カレンズMOI」昭和電工社製)、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名「カレンズAOI」昭和電工社製)、メタクリロイルオキシエチルイソシアネートエチルエーテル(商品名「カレンズMOIEG」昭和電工社製)などが挙げられる。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとを挙げることができる。脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを構成する成分が、脂肪族化合物である場合である。例えば、脂肪族ポリイソシアネートを構成成分とする場合である。芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを構成する成分が、芳香族化合物である場合である。例えば、芳香族ポリイソシアネートを構成成分とする場合である。
【0031】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、-100℃以上が好ましく、-90℃以上がより好ましく、-80℃以上がさらに好ましく、50℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましく、-20℃以下がさらに好ましく、-50℃以下が特に好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのガラス転移温度が、前記範囲であれば、光硬化性組成物を硬化してなる成形体のガラス転移温度(Tg)の上昇を抑えながら機械的強度を出すことができる。
【0032】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。一分子中の(メタ)アクリロイル基の個数は、特に限定されないが、2個以上が好ましく、10個以下が好ましく、4個以下がより好ましい。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの数平均分子量は、300以上が好ましく、1000以上がより好ましく、3000以上がさらに好ましく、30000以下が好ましく、20000以下がより好ましく、15000以下がさらに好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの数平均分子量が前記範囲内であれば、光造形法における作業性が良好である上に、光硬化性組成物を硬化してなる成形体の硬化収縮率や機械的強度が優れる。
【0034】
本発明の光硬化性組成物において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有率は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましく、80質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。
【0035】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有率が、80質量%を超えると、光硬化性組成物の粘度が高すぎて、光造形が困難になる。また、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有率が、20質量%未満になると、光硬化性組成物を硬化してなる成形体の機械的強度が低下する。
【0036】
2.「ビニルモノマー」
本発明において「ビニルモノマー」とは、分子中にラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合を有するモノマーのことをいう。前記ビニルモノマーは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が-100℃以上、20℃以下の第1モノマーと、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が20℃超、150℃以下の第2モノマーとを含有することが好ましい。ビニルモノマーが、低ガラス転移温度の第1モノマーと高ガラス転移温度の第2モノマーとを含有することにより、光硬化性組成物を硬化してなる成形体の機械的強度が優れる。
【0037】
前記第1モノマーのガラス転移温度(Tg)は、-100℃以上が好ましく、-70℃以上がより好ましく、-50℃以上がさらに好ましく、20℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましく、0℃以下がさらに好ましく、-20℃以下が特に好ましい。
【0038】
前記第2モノマーのガラス転移温度(Tg)は、20℃超が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましく、90℃以上が特に好ましく、150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、110℃以下がさらに好ましい。
【0039】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとビニルモノマーの合計含有率を100質量%となるようにしたときに、第1モノマーの含有率は、15質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、75質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。第1モノマーの含有率が、前記範囲内であれば、光硬化性組成物を硬化してなる成形体のガラス転移温度(Tg)を下げながら機械的強度を出すことができる。
【0040】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとビニルモノマーの合計含有率を100質量%としたときに、第2モノマーの含有率は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、65質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。第2モノマーの含有率が、前記範囲内であれば、光硬化性組成物を硬化してなる成形体として、機械的強度を出しながらガラス転移温度(Tg)の上昇を抑えることができる。
【0041】
前記第1モノマーの含有率と第2モノマーの含有率はそれぞれ、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとビニルモノマーの合計含有率が100質量%となるように、前記範囲から適宜選択されることが好ましい。
【0042】
ビニルモノマーの具体例としては、芳香族ビニルモノマー、ヒドロキシ基を有するビニルモノマー、カルボキシル基を有するビニルモノマー、スルホン酸基を有するビニルモノマー、リン酸基を有するビニルモノマー、3級アミンを含有するビニルモノマー、4級アンモニウム塩基を含有するビニルモノマー、ヘテロ環を含有するビニルモノマー、ビニルアミド、エポキシ基を含有するビニルモノマー、カルボン酸ビニル、α-オレフィン、ジエン類、(メタ)アクリルモノマー等が挙げられる。
【0043】
前記ビニルモノマーとしては、例えば、単官能(一官能)モノマー、多官能モノマー(例えば、二官能モノマー、三官能モノマー、四官能モノマーなど)が挙げられ、光造形用に適した粘度としつつ、硬化によって得られる弾性成形体に優れた特性を発揮させる観点からは、好ましくは単官能から四官能のモノマーが挙げられる。単官能モノマーの使用は、光硬化性組成物の室温環境における粘度を低下させる観点で好ましい。また、多官能モノマーの使用は、成形体に優れた特性を発揮させる観点で好ましい。
【0044】
前記ビニルモノマーは、光造形用に適した粘度としつつ、光硬化反応性に優れることから、(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0045】
好ましい単官能モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレートが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート、メチル-2-アリルオキシメチルアクリレート、m-フェノキシベンジルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドを反応させたp-クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2-ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4-ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを複数モル変性させたフェノキシ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ビニルモノマー(例えばN-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等)が挙げられる。
【0046】
また、多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、プロポキシ化ペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化グリセリルトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0047】
前記ビニルモノマーのガラス転移温度(Tg)としては、例えば、以下のようなウエブサイトに開示されているガラス転移温度を参酌することができる。
https://www.saiden-chem.co.jp/t_sekkei_ema.html
https://www.kyoeisha.co.jp/product/kinou/lightester.php
https://www.kyoeisha.co.jp/product/kinou/lightacrylate.php
https://www.nitto.com/jp/ja/rd/base/adhesive/specificat/
【0048】
ガラス転移温度(Tg)が-100℃以上、20℃以下の第1モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート(8℃)、エチルアクリレート(-24℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(-70℃)、2-エチルヘキシルメタクリレート(-10℃)、イソデシルメタクリレート(-41℃)、n-ラウリルメタクリレート(-65℃)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(-15℃)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(-7℃)、フェノキシエチルアクリレート(-22℃)、ラウリルアクリレート(-3℃)、イソアミルアクリレート(-45℃)、ブチルアクリレート(-55℃)、エチルアクリレート(-24℃)、エトキシ-ジエチレングリコールアクリレート(-70℃)、メトキシ-トリエチレングリコールアクリレート(-50℃)、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート(-7℃)などが挙げられる。
【0049】
ガラス転移温度(Tg)が20℃超、150℃以下の第2モノマーとしては、例えば、イソボルニルアクリレート(97℃)、t-ブチルメタクリレート(107℃)、メチルメタクリレート(105℃)、アクリルアミド(165℃)、スチレン(100℃)、アクリル酸(106℃)、アクリロニトリル(97℃)などが挙げられる。
【0050】
本発明の光硬化性組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤を含むことにより、前述の光硬化性組成物の硬化を促進することができる。光重合開始剤としては、特に制限されず、光照射によってラジカルを発生させる、公知のものを使用することができる。
【0051】
前記光重合開始剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-(4-(メチルチオ)ベンゾイル)-2-(4-モルホリニル)プロパン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オンなどのアルキルフェノン系;
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド系;
1,2-オクタンジオン,1-(4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム))、エタノン,1-(9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル)-,1-(O-アセチルオキシム)などのオキシムエステル系などを挙げることができる。
【0052】
光造形法では、波長390nm~410nmに光強度のピーク波長を有する光源、特に波長405nmに光強度のピーク波長を有する光源が主に用いられる。このような光源の光の照射により、光硬化性組成物のラジカル重合を開始させるものであることが好ましい。光重合開始剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
前記のような光源を用いた光造形法において、光硬化性組成物を好適に硬化させる観点から、本発明の光硬化性組成物は、吸収帯の異なる光重合開始剤を少なくとも2種以上含むことが好ましい。例えば、405nmの波長領域に吸収帯を有する光重合開始剤と、300~380nmの波長領域に吸収帯を有する光重合開始剤とを併用することが好ましい。本発明では、光重合開始剤として、アルキルフェノン系光重合開始剤とアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とを併用することが好ましい。
【0054】
光重合開始剤の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとビニルモノマーとの合計含有量100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、2質量部以上がさらに好ましく、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、5質量部以下が特に好ましい。
【0055】
アルキルフェノン系光重合開始剤とアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とを併用する場合、これらの質量比(アルキルフェノン系/アシルフォスフィンオキサイド系)は、0.2以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましく、5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましい。
【0056】
本発明の光硬化性組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。本発明の光硬化性組成物がフィラーを含有する場合に、フィラーとポリマー成分との界面強度が高くなる。その結果、フィラーによる物性向上効果が高まる。
【0057】
前記シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリエトキシ-n-オクチルシランなどのアルキルアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノシラン;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのエポキシシラン;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのメタクリロキシシラン;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)などのメルカプトシランなどを挙げることができる。
【0058】
本発明の光硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において各種の添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、希釈ポリマー、光増感剤、フィラー、UV遮断剤、染料、顔料、レべリング剤、流動性調整剤、消泡剤、可塑剤、重合禁止剤、難燃化剤、分散安定化剤、保存安定化剤、酸化防止剤、金属、金属酸化物、金属塩、セラミックスなどが挙げられる。光硬化性組成物に含まれる添加剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0059】
前記フィラーとしては、シリカが好ましい。フィラーの含有量は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとビニルモノマーとの合計含有量100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。フィラーの含有量を前記範囲とすることにより、光硬化性組成物の粘度の上昇を抑えながら、光硬化性組成物を硬化してなる成形体の機械的強度を出すことができる。
【0060】
本発明の光硬化性組成物は、温度25℃、相対湿度50%の環境下、E型粘度計を用いて、コーンプレートφ25mm、せん断速度100秒-1の条件で測定される粘度が、100mPa・s以上であることが好ましく、500mPa・s以上であることがより好ましく、1,000mPa・s以上であることがさらに好ましく、6,000mPa・s以下であることが好ましく、3,000mPa・s以下であることがより好ましく、1,500mPa・s以下であることがさらに好ましい。光硬化性組成物の粘度が前記範囲であれば、室温環境における光造形法に適した粘度としつつ、硬化によって得られる成形体に弾性を付与させることができる。また、光硬化性組成物の粘度が前記範囲であれば、作業性が良好である。
【0061】
本発明の光硬化性組成物は、光造形用として好適に使用することができる。
【0062】
<成形体の製造方法>
本発明の成形体の製造方法は、本発明の光硬化性組成物に光照射して硬化させて、立体的に造形することを特徴とする。
【0063】
本発明の成形体の製造方法としては、例えば、SLA方式(光造形レーザ方式:Stereolithography Appratus)、DLP方式(光造形プロジェクタ(面露光)方式:Digital Light Processing)、LCD方式(光造形液状ディスプレイ方式:Liquid Crystal Display)などの各種方式の光造形法を採用することができる。
【0064】
本発明の成形体は、例えば、造形テーブル上に、本発明の光硬化性組成物を供給し、光硬化性組成物に光を照射し、光硬化性組成物を硬化させて1層目の硬化物を形成する工程と、1層目の硬化物の上に、2層目の硬化物を形成する光硬化性組成物を供給し、光硬化性組成物に光を照射し、光硬化性組成物を硬化させて2層目の硬化物を形成する工程と、2層目の硬化物を形成する工程と同様の工程を繰り返してN層まで形成して、3次元形状の成形体(光造形物)を製造する方法によって好適に製造される。光造形法には、公知の3Dプリンタを用いることができ、3Dプリンタとしては市販品を用いることもできる。
【0065】
光造形法において、光硬化性組成物を硬化させる際の1層の厚みは、例えば0.01mm~0.5mm程度が好ましい。また、照射される光は、一般には紫外光であり、波長405nmの光を含むことが好ましい。また、照射される光の照度は、測定波長域405nmにおいて0.1mW/cm2~100mW/cm2程度が好ましい。1層の光硬化性組成物を硬化させる際の光照射時間については、光造形法の方式により異なり、適宜調整する。例えばDLP方式であれば、1秒~60秒程度である。本発明の成形体は、室温程度(例えば20~30℃)の環境で製造されることが好ましい。
【0066】
また、上記の光造形後に、必要に応じて追加で、高圧水銀ランプ照射、メタルハライドランプ照射、UV-LED照射、加熱等の一般的な2次処理をすることができる。これら2次処理によって造形後の表面を改質したり、強度を改善したり、硬化を促進させることができる。光造形の条件によって不要な場合があるため必ずしも必要なわけではないが、光造形と合わせて2次処理が可能である。
【0067】
(成形体および硬化物)
本発明には、本発明の光硬化性組成物を硬化させてなる硬化物および成形体が含まれる。
【0068】
本発明の光硬化性組成物を硬化させると、ガラス転移温度(Tg)の低い硬化物および成形体が得られる。本発明の光硬化性組成物の硬化物および成形体のガラス転移温度(Tg)は、-70℃以上であることが好ましく、-60℃以上であることがより好ましく、-50℃以上であることがさらに好ましく、20℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。光硬化性組成物の硬化物および成形体のガラス転移温度(Tg)が前記範囲であれば、硬化によって得られる硬化物および成形体に機械的強度と弾性を付与させることができる。
【0069】
本発明の硬化物および成形体は、機械的物性としてゴム弾性を有することが好ましい。本発明の硬化物および成形体は、例えば、以下のような機械的物性を有することが好ましい。
【0070】
本発明の硬化物および成形体の硬度は、ショアA硬度で、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、30以上がさらに好ましく、100以下が好ましく、90以下がより好ましく、80以下がさらに好ましい。本発明の硬化物および成形体の硬度が、前記範囲内であれば、ゴム弾性が必要となる代替となるからである。
【0071】
本発明の硬化物および成形体の引張破断強度は、0.5MPa以上が好ましく、1MPa以上がより好ましく、2MPa以上がさらに好ましく、30MPa以下が好ましく、25MPa以下がより好ましく、20MPa以下がさらに好ましい。本発明の硬化物および成形体の引張破断強度が、前記範囲内であれば、ゴム弾性が必要となる代替となるからである。
【0072】
本発明の硬化物および成形体の引張破断伸度は、100%以上が好ましく、150%以上がより好ましく、200%以上がさらに好ましい。本発明の硬化物および成形体の引張破断伸度が、前記範囲内であれば、ゴム弾性が必要となる代替となるからである。
【0073】
本発明の硬化物および成形体の圧縮永久歪みは、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。本発明の硬化物および成形体の圧縮永久歪みが、前記範囲内であれば、ゴム弾性が必要となる代替となるからである。
【0074】
本発明の硬化物および成形体の繰り返し疲労(回/mm)は、5000以上が好ましく、6000以上がより好ましく、7000以上がさらに好ましい。本発明の硬化物および成形体の繰り返し疲労が、前記範囲内であれば、ゴム弾性が必要となる代替となるからである。
【実施例0075】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0076】
1.評価方法 (光硬化性組成物の粘度)
光硬化性組成物について、温度25℃(誤差は±2℃)、相対湿度50%の環境下で、E型粘度計(Anton-Paar社製のMCR301)を用いて、コーンプレートφ25mm、せん断速度100秒-1の条件で粘度を測定した。
【0077】
(硬化物(成形体)のガラス転位温度Tg)
光硬化性組成物を硬化して得られた硬化物(成形体)について、元差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製のDSC7000X)を用いて、JIS K6240:2011に規定された方法に準拠して硬化物(成形体)のガラス転位温度Tgを測定した。
【0078】
(硬化物(成形体)の硬度)
光硬化性組成物を硬化して得られた硬化物(成形体)(JIS K6262:2013のφ29×12.5mmの圧縮玉の形状)について、JIS K6253-3:2012に規定された方法に準拠してショアA硬度を測定した。
【0079】
(硬化物(成形体)の引張試験)
光硬化性組成物を硬化して得られた硬化物(成形体)(JIS K6251:2017のダンベル状3号試験片の形状)について、JIS K6251:2017の規定に準拠して引張破断強度及び引張破断伸び率を測定した。引張破断強度の値が大きいほど硬化物(成形体)の強度が高く、引張破断伸び率の値が大きいほど伸びやすく、硬化物(成形体)の機械的特性が良好と判断される。
【0080】
(圧縮永久歪み)
光硬化性組成物を硬化して得られた硬化物(成形体)(JIS K6262:2013のφ29×12.5mmの圧縮玉の形状)について、JIS K6262:2013の規定に準拠し、温度23℃で22時間、25%の圧縮を行い、圧縮を解除してから0.5時間後の圧縮永久歪みを測定した。圧縮永久歪みの値が小さい程、硬化物(成形体)の復元力が良好と判断される。
【0081】
(繰り返し疲労試験)
光硬化性組成物を硬化して得られた硬化物(成形体)(JIS K6260:2017の試験片(寸法長さ150mm、幅25mm、中心部溝の曲率半径2.38mm、厚さ6.3mm))について、JIS K6260:2017の規定に準拠し、デマッチャ式屈曲試験機を用いて繰り返し疲労試験を行った。試験片の中心部溝に切込みを入れ、5Hz、中心部溝にかかる歪み50%で繰り返し屈曲を与えた時のき裂の成長度合いを測定した。き裂成長性(回/mm)は次式で算出される。き裂が1mm成長する屈曲回数を計測した。値が大きい程、き裂が1mm成長するのにより時間がかかり、繰り返し疲労試験の結果(耐屈曲き裂成長性)は良好と判断される。
き裂成長性(回/mm)=屈曲回数(回)/き裂長さ(mm)
【0082】
2.光硬化性組成物の製造
以下の材料を用いて、表1~2に記載の配合割合(質量部)となるように、自転・公転可能な攪拌機で混合、脱泡して、光硬化性組成物を作製した。作製した光硬化性組成物の粘度を測定した結果を表1~2に示した。各成分の混合は、各成分が均一になるように行った。表1~2において、「-」は、配合されていないことを示す。
【0083】
表1,2の材料としては、以下のものを使用した。
・ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー1:ダイセル・オルネクス(株)製EBECRYL230(脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、数平均分子量:5,000、25℃での粘度:40,000mPa・s、ガラス転移温度:-55℃)
・ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー2:ダイセル・オルネクス(株)製EBECRYL9270(脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(低粘度タイプ)、数平均分子量:1,000、25℃での粘度:7,500mPa・s、ガラス転移温度:2℃)
・第2モノマー:大阪有機化学工業(株)製IBXA(イソボルニルアクリレート、分子量:208.3,25℃での粘度:7.7mPa・s、ガラス転移温度:97℃)
・第1モノマーA:大阪有機化学工業(株)製MEDOL-10(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、分子量:200.2,25℃での粘度:5.1mPa・s、ガラス転移温度:-7℃)
・第1モノマーB:東京化成(株)製2-エチルヘキシルアクリレート(分子量:184.3,25℃での粘度:3mPa・s、ガラス転移温度:-70℃)
・光重合開始剤1:BASF社製Omnirad819(アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、分子量:418.5)
・光重合開始剤2:BASF社製Omnirad1173(アルキルフェノン系光重合開始剤、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、分子量:164.2,25℃での粘度:25mPa・s)
・シリカ:東ソー(株)製Nipsil KQ(非晶質ニ酸化ケイ素、一次粒子径14nm、BET比表面積220m2/g)
・シランカップリング剤::東京化成(株)製Triethoxy-n-octylsilane(ケイ素化合物アルキルシラン、トリエトキシ-n-オクチルシラン、分子量:276.5)
【0084】
【0085】
【0086】
3.成形体の製造
光硬化性組成物を用い、DLP方式の光造形法により、成形体に造形した。具体的には、ピーク波長405nmの光源(UV-LED)を備える3Dプリンタを用い、温度23℃、積層ピッチ0.05mm、照射時間1層当たり20秒間、波長405nmでの照度5.0mW/cm2の条件で、成形体に造形した。成形体として、それぞれ3種類の形状を作製した。1つ目は、前述の引張試験で用いたJIS K6251:2017のダンベル状3号試験片の形状であり、2つ目は、前述の硬度及び圧縮永久歪みの測定で用いたJIS K6262:2013のφ29×12.5mmの圧縮玉の形状であり、3つ目は、前述の繰り返し疲労試験で用いたJIS K6260:2017の試験片(寸法長さ150mm、幅25mm、中心部溝の曲率半径2.38mm、厚さ6.3mm)である。
【0087】
得られた成形体について、硬度、引張破断強度、引張破断伸度、圧縮永久歪み、繰り返し疲労試験を測定した結果を表1~2に示した。
【0088】
表1~2の結果から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、ビニルモノマーとして、ガラス転移温度(Tg)が-100℃以上、20℃以下の第1モノマーと、ガラス転移温度(Tg)が20℃超、150℃以下の第2モノマーとを含有し、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有率は、20質量%~80質量%の範囲であり、前記第1モノマーの含有率が15質量%~75質量%の範囲であり、前記第2モノマーの含有率が5質量%~65質量%の範囲であり、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとビニルモノマーとの合計含有率が100質量%である本発明の光硬化性組成物は、機械的特性に優れた成形体を与える。本発明の光硬化性組成物は、光造形用として好適に使用できることが分かる。
【0089】
光硬化性組成物No.17は、粘度が高いため、前記の条件では成形体に造形することができなかった。そのため、組成物の液の温度を40~80℃に高めることで見かけ粘度を下げたり、1層を作製する際のステージ昇降を通常の10倍ほどの距離に変更し、1/10のスピードで層の形成を行うなどして、成形体を得た。なお、市販の3Dプリンタをそのまま用いる場合、このような条件を採用して成形体を生産することは難しい。また、市販の3Dプリンタでは、温調の上限値が30℃程度であることから、市販の3Dプリンタを用いて光硬化性組成物No.17を光造形することは困難である。
本発明(1)の光硬化性組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、ビニルモノマーとして、ガラス転移温度(Tg)が-100℃以上、20℃以下の第1モノマーと、ガラス転移温度(Tg)が20℃超、150℃以下の第2モノマーとを含有し、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有率は、20質量%~80質量%の範囲であり、前記第1モノマーの含有率が15質量%~75質量%の範囲であり、前記第2モノマーの含有率が5質量%~65質量%の範囲であり、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとビニルモノマーとの合計含有率が100質量%であることを特徴とする。
本発明(3)は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのガラス転移温度(Tg)は、-100℃~50℃である本発明(1)または(2)に記載の光硬化性組成物である。
本発明(4)は、ビニルモノマーは、一官能ビニルモノマー、二官能ビニルモノマー、三官能ビニルモノマー、および、四官能ビニルモノマーよりなる群から選択される少なくとも一種である本発明(1)~(3)のいずれか一項に記載の光硬化性組成物である。
本発明(6)は、前記第1モノマーとして、2-エチルヘキシルアクリレートおよび/または(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタクリレートを含有する本発明(1)~(5)のいずれか一項に記載の光硬化性組成物である。
本発明(12)は、本発明(1)~(9)のいずれか一項に記載の光硬化性組成物に光照射して硬化させて、立体的に造形することを特徴とする成形体の製造方法である。