(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156593
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】スイッチ装置および時計
(51)【国際特許分類】
G04B 43/00 20060101AFI20251002BHJP
G04B 37/10 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
G04B43/00 Z
G04B37/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025134263
(22)【出願日】2025-08-12
(62)【分割の表示】P 2023120673の分割
【原出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(74)【代理人】
【識別番号】100171882
【弁理士】
【氏名又は名称】北庄 麗絵子
(72)【発明者】
【氏名】中塚 義樹
(57)【要約】
【課題】 衝撃によるロック機構の破損を防ぐことができるスイッチ装置、およびそれを備えた時計を提供する。
【解決手段】 少なくとも一部が腕時計ケース1の貫通孔8に挿入される筒状部材10と、この筒状部材10の内部から筒状部材10の外部に亘って配置される操作部材11と、この操作部材11を筒状部材10にロックするロック機構27と、を備え、ロック機構27は、操作部材11の回転操作によって筒状部材10にロックされるロック部材28と、このロック部材28とは別部材であって操作部材11の回転操作に応じてロック部材28を回転させる回転伝達部材29と、を備えている。従って、ロック部材28が筒状部材10にロックされた状態で、操作部材11が外部から衝撃を受けた際に、ロック部材28に対して回転伝達部材29を軸方向にスライドさせることができるので、衝撃によるロック機構27の破損を防ぐことができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が設けられたケースと、
少なくとも一部が、前記ケースの前記貫通孔に挿入される筒状部材と、
前記筒状部材の内部から前記筒状部材の外部に亘って配置された操作部材と、
前記操作部材を前記筒状部材にロックするロック機構と、
を備え、
前記ロック機構は、前記操作部材の回転操作によって前記筒状部材にロックされるロック部材と、前記ロック部材とは別部材であって前記操作部材の回転操作に応じて前記ロック部材を回転させる回転伝達部材と、を備えている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチ装置において、
前記筒状部材は、前記ケースの前記貫通孔に挿入される小径筒部と、前記ケースの外部に突出する大径筒部と、を含み、
前記ロック部材は、前記回転伝達部材の内周面側に配置され、前記筒状部材の前記大径筒部にロックされる
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスイッチ装置において、
前記操作部材は、前記筒状部材内に配置される操作軸部と、前記操作軸部の外部に軸方向にスライド可能に取り付けられて前記筒状部材の前記大径筒部を覆う操作頭部と、を備えている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチ装置において、
前記操作部材の前記操作頭部内には、前記回転伝達部材が圧入によって固定されている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のスイッチ装置において、
前記ロック機構は、前記ロック部材を前記回転伝達部材に対してスライド可能な状態で、前記ロック部材と前記回転伝達部材とを一体的に回転させる空転止め部を備えている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項6】
請求項1に記載のスイッチ装置において、
前記ロック機構は、前記ロック部材が前記回転伝達部材から前記ケース側に向けて抜け出すのを防ぐ抜止め部を備えている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項7】
請求項3に記載のスイッチ装置において、
前記ロック機構の前記回転伝達部材および前記ロック部材とこれらが軸方向に対向する前記操作部材の前記操作頭部との間には、緩衝部材が設けられている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項8】
請求項2に記載のスイッチ装置において、
前記筒状部材の前記大径筒部の外周には、雄ねじが形成され、
前記ロック部材には、前記筒状部材の前記雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が形成されている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項9】
請求項1に記載されたスイッチ装置を備えていることを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腕時計などの電子機器に用いられるスイッチ装置、およびそれを備えた時計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、腕時計のスイッチ装置においては、特許文献1に記載されているように、時計ケースの貫通孔に固定パイプを取り付け、この固定パイプに操作部材を回転可能で且つ軸方向にスライド可能に取り付けた構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
この種の腕時計のスイッチ装置は、操作部材が外部から衝撃を受けた際に、操作部材が腕時計ケース内に押し込まれて、腕時計ケース内の時計モジュールを破損するのを防ぐために、操作部材を固定パイプにロックするロック機構を備えている。
【0005】
このようなスイッチ装置のロック機構は、腕時計ケースの外部に突出した固定パイプの外周に設けられた雄ねじ部と、操作部材の外端部に設けられた操作頭部の内面に設けられて固定パイプの雄ねじ部に螺合する雌ねじ部と、を備えている。
【0006】
これにより、ロック機構は、操作部材が腕時計ケースの内部に向けて押し込まれて、操作頭部が固定パイプに押し当てられた状態で、操作頭部を回転させて、操作頭部の雌ねじ部を固定パイプの雄ねじ部に螺合させることにより、操作部材を固定パイプにロックするように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような腕時計のスイッチ装置では、ロック機構によって操作部材が固定パイプにロックされた状態で、操作頭部が外部から衝撃を受けた際に、互いに螺合した状態の固定パイプの雄ねじ部と操作頭部の雌ねじ部とが衝撃によって破損するという問題がある。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、衝撃によるロック機構の破損を防ぐことができるスイッチ装置、およびそれを備えた時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、貫通孔が設けられたケースと、少なくとも一部が、前記ケースの前記貫通孔に挿入される筒状部材と、前記筒状部材の内部から前記筒状部材の外部に亘って配置された操作部材と、前記操作部材を前記筒状部材にロックするロック機構と、を備え、前記ロック機構は、前記操作部材の回転操作によって前記筒状部材にロックされるロック部材と、前記ロック部材とは別部材であって前記操作部材の回転操作に応じて前記ロック部材を回転させる回転伝達部材と、を備えていることを特徴とするスイッチ装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、外部からの衝撃によるロック機構の破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明を腕時計に適用した一実施形態を示した拡大正面図である。
【
図2】
図1に示された腕時計のA-A矢視における要部の拡大断面図である。
【
図3】
図2に示されたスイッチ装置において、ロック機構による操作部材のロックを解除した状態を示した要部の拡大断面図である。
【
図4】
図2に示されたスイッチ装置を腕時計ケースの外部側から見た分解斜視図である。
【
図5】
図5に示されたスイッチ装置を腕時計ケースの内部側から見た分解斜視図である。
【
図6】
図2に示されたスイッチ装置において、操作部材がロックされた状態で外部から衝撃を受けた際における要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1~
図6を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、
図1に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の12時側と6時側とには、時計バンド(図示せず)が取り付けられるバンド取付部2がそれぞれ設けられている。
【0013】
この腕時計ケース1の2時側、4時側、8時側および10時側には、
図1に示すように、押釦スイッチ3がそれぞれ設けられている。また、この腕時計ケース1の3時側には、スイッチ装置4が設けられている。この腕時計ケース1の上側開口部には、
図2および
図3に示すように、時計ガラス5がガラスパッキン5aを介して設けられている。この腕時計ケース1の下部には、裏蓋6が防水パッキン6aを介して取り付けられている。
【0014】
また、この腕時計ケース1の内部には、
図2および
図3に示すように、時計モジュール7が設けられている。この時計モジュール7は、図示しないが、指針を運針させて時刻を指示表示する時計ムーブメント、時刻や日付、曜日などの情報を電気光学的に表示する平面型の表示装置、およびこれらを駆動して制御するための回路部など、時計機能に必要な各種の部品を備えている。
【0015】
この場合、腕時計ケース1は、
図2および
図3に示すように、ケース本体1aと、このケース本体1aの外周に配置される第1外装部材1bと、この第1外装部材1bの上部に位置してケース本体1aの上部外周に配置される第2外装部材1cと、を備えている。ケース本体1aは、金属または剛性の高い合成樹脂によって形成されている。第1外装部材1bは、ウレタン樹脂などの軟質の合成樹脂によって形成されている。第2外装部材1cは、金属または合成樹脂によって形成されている。
【0016】
ところで、腕時計ケース1の3時側に設けられたスイッチ装置4は、
図1~
図3に示すように、時刻修正、モード切替などの機能設定や選択を行うためのスイッチである。このスイッチ装置4は、腕時計ケース1のケース本体1aに設けられた貫通孔8に取り付けられる筒状部材10と、この筒状部材10にスライドおよび回転可能に取り付けられる操作部材11と、この操作部材11を筒状部材10にロックするロック機構27と、を備えている。
【0017】
筒状部材10は、
図2および
図3に示すように、ステンレスなどの剛性の高い金属によってほぼパイプ状に形成されている。この筒状部材10は、腕時計ケース1のケース本体1aの貫通孔8内に挿入される小径筒部12と、ケース本体1aの外部に突出して配置される大径筒部13と、を備えている。小径筒部12は、その外径がケース本体1aの貫通孔8の内径とほぼ同じ大きさに形成されている。また、この小径筒部12は、その内径が貫通孔8の内径よりも少し小さく形成されている。これにより、小径筒部12は、肉厚の薄いパイプ状に形成されている。
【0018】
この小径筒部12は、
図2および
図3に示すように、その軸方向の長さが貫通孔8の軸方向の長さよりも少し長く形成されている。これにより、小径筒部12は、大径筒部13が腕時計ケース1のケース本体1aの外面に当接して配置された際に、小径筒部12の内端部がケース本体1aの内部に突出するように構成されている。この場合、筒状部材10は、腕時計ケース1の内部に突出した小径筒部12の内端部における外周部と、ケース本体1aの貫通孔8の内端部の縁部とが、レーザ溶接などの溶接によってケース本体1aの貫通孔8の全周に亘って固着されるように構成されている。
【0019】
大径筒部13は、
図2および
図3に示すように、その外径が腕時計ケース1のケース本体1aの貫通孔8の内径よりも大きく、且つ腕時計ケース1の上下方向の長さ(高さ)よりも小さく形成されている。すなわち、この大径筒部13は、その外径が貫通孔8の内径の3倍程度の大きさで、且つ腕時計ケース1の上下方向の長さの半分程度の大きさで形成されている。また、この大径筒部13は、その内径が小径筒部12の内径と同じ大きさで形成されている。
【0020】
これにより、大径筒部13は、
図2および
図3に示すように、その内径と外径との間の長さ(肉厚)が小径筒部12の内径と外径との間の長さ(肉厚)よりも十分に長い(厚い)パイプ状に形成されている。また、この大径筒部13は、その軸方向の長さが腕時計ケース1のケース本体1aの貫通孔8の軸方向の長さとほぼ同じ長さで形成されている。
【0021】
この場合、大径筒部13は、
図2および
図3に示すように、腕時計ケース1の外側部の外径が腕時計ケース1側の内側部の外径よりも一段小さく形成されている。この大径筒部13は、腕時計ケース1側の一段大きい内側部とこれと反対側の一段小さい外側部との軸方向の各長さが、それぞれほぼ同じ長さで形成されている。この大径筒部13の一段小さい外側部の外周には、後述するロック機構27の雄ねじ部13aが設けられている。
【0022】
また、腕時計ケース1側の外面に対応する筒状部材10の大径筒部13の内端面には、
図2および
図3に示すように、大径筒部13の軸方向に窪む(深くなる)防水溝14が、小径筒部12の外周に沿って環状に設けられている。この防水溝14は、その断面形状が四角形状に形成されている。この防水溝14内には、防水部材である防水パッキン15が設けられている。
【0023】
この防水パッキン15は、
図2および
図3に示すように、ニトリルブタジエンゴム(NBR)などの合成ゴムやエラストマーなどの弾力性および吸湿性を有する材料によってリング形状に形成されている。この防水パッキン15は、防水溝14内に弾力的に押し潰されて配置される。これにより、防水パッキン15は、大径筒部13の内端面と腕時計ケース1の外面との間の防水を図るように構成されている。
【0024】
一方、筒状部材10に取り付けられる操作部材11は、
図2~
図5に示すように、筒状部材10内にスライドおよび回転可能に配置されて筒状部材10の外部に突出する操作軸部16と、筒状部材10から突出した操作軸部16の外端部にその軸方向にスライド可能に取り付けられて、操作軸部16の外端部および筒状部材10の大径筒部13を覆う操作頭部17と、を備えている。操作軸部16は、ステンレスやチタン合金などの金属または硬質の合成樹脂によって形成されている。
【0025】
この操作軸部16は、
図2~
図5に示すように、筒状部材10内に挿入する軸本体部18と、この軸本体部18の外端部に設けられて筒状部材10の外部に突出する軸操作部19と、を備えている。軸本体部18は、その外径が筒状部材10の内径とほぼ同じ大きさに形成されている。また、この軸本体部18は、その軸方向の長さが筒状部材10の軸方向の長さとほぼ同じ長さで形成されている。
【0026】
これにより、軸本体部18は、
図2~
図5に示すように、外端部が筒状部材10の外端部に位置した際に、内端部が筒状部材10の内端部側に位置し、この状態で筒状部材10内に回転可能で且つスライド可能に配置されている。また、この軸本体部18の外周部には、複数の防水リング20が軸本体部18の外周に沿ってそれぞれ環状に設けられている。これら複数の防水リング20は、軸本体部18の外周面と筒状部材10の内周面との間の防水を図るように構成されている。
【0027】
また、軸操作部19は、
図2~
図5に示すように、筒状部材10の外端部に位置する軸本体部18の外端部に一体に設けられて、軸本体部18をスライド動作および回転動作させるように構成されている。すなわち、この軸操作部19は、軸本体部18の外端部に設けられた底部19aを有するほぼ円筒形状に形成されている。この軸操作部19の内部には、円形状の空洞凹部19bが操作部材11の軸方向に沿って設けられている。この空洞凹部19bは、その内径が筒状部材10の小径筒部12の外径と同じか、それよりも少し大きく形成されている。
【0028】
また、この軸操作部19は、
図2および
図3に示すように、外周部が小径の内側筒部21と、外周部が大径の外側筒部22と、を備えている。小径の内側筒部21は、その外径が筒状部材10の大径筒部13の外周に設けられた雄ねじ部13aの外径よりも少し小さい大きさ、つまり後述するロック機構27の雌ねじ部28aの内径よりも少し小さい大きさで形成されている。
【0029】
この場合、小径の内側筒部21は、
図2および
図3に示すように、その内端部つまり軸操作部19の底部19aが、筒状部材10の大径筒部13の外端部つまり雄ねじ部13aの外端面に接離可能に接近するように構成されている。これにより、小径の内側筒部21は、その内端部つまり軸操作部19の底部19aが、ロック部材28の雌ねじ部28aの外端面に当接しないように構成されている。この場合、小径の内側筒部21は、大径筒部13に対する操作頭部17のロックが解除された際に、ロック部材28の雌ねじ部28aが小径の内側筒部21の外周に移動して配置される。
【0030】
大径の外側筒部22は、
図2~
図5に示すように、その外径が大径筒部13の一段大きい内側部の外径とほぼ同じ大きさで、ロック部材28の外径よりも小さく、且つロック部材28の雌ねじ部28aの内径よりも大きく形成されている。これにより、大径の外側筒部22は、その内端部にロック部材28の外端面が当接するように構成されている。この場合、大径の外側筒部22の外径は、
図2および
図3において後述する第1空転止め部23の第1操作平面部23aが対応して設けられているため、小さく描かれている。
【0031】
すなわち、この大径の外側筒部22は、
図4および
図5に示すように、本来、その外径が小径の内側筒部21の外径よりも十分に大きく形成されている。これにより、大径の外側筒部22は、
図3に示すように、ロック機構27による操作頭部17のロックが解除された際に、ロック部材28の雌ねじ部28aが小径の内側筒部21の外周に移動して、ロック部材28の外端部が大径の外側筒部22の内端部に接離可能に当接するように構成されている。
【0032】
この場合、大径の外側筒部22は、
図2および
図3に示すように、操作頭部17内にその軸方向にスライド可能に配置されて、操作頭部17と共に回転するように構成されている。すなわち、この大径の外側筒部22の外周面と操作頭部17の内周面とには、外側筒部22を操作頭部17によって回転させるための第1空転止め部23が設けられている。
【0033】
一方、操作頭部17は、
図2~
図5に示すように、操作軸部16の軸操作部19が挿入して筒状部材10の大径筒部13を覆うカバー部24と、このカバー部24を腕時計ケース1の外部側に向けて押し出す方向に付勢する付勢部材であるばね部材25と、を備えている。カバー部24は、チタン合金などの金属によって外端部が塞がれたほぼ円筒形状に形成されている。
【0034】
このカバー部24は、
図2~
図5に示すように、その外径が筒状部材10の大径筒部13の外径よりも十分に大きく、且つ腕時計ケース1の上下方向の長さの2/3程度の大きさのほぼ円形状に形成されている。また、このカバー部24は、操作軸部16の軸操作部19が挿入する小径カバー部24aと、筒状部材10の大径筒部13およびロック機構27が挿入してこれらを覆う大径カバー部24bと、を備えている。
【0035】
この場合、第1空転止め部23は、
図2、
図3、
図5に示すように、軸操作部19の外側筒部22の外周面に設けられた第1操作平面部23aと、操作頭部17のカバー部24における小径カバー部24aの内周面に設けられて外側筒部22の第1操作平面部23aに対応して押し当てられる第1カバー平面部23bと、を備えている。
【0036】
これにより、第1空転止め部23は、
図2、
図3、
図5に示すように、外側筒部22の第1操作平面部23aと小径カバー部24aの第1カバー平面部23bとが対応して当接した状態で、大径の外側筒部22と操作頭部17とが軸方向に沿って相対的にスライド可能で、且つ外側筒部22と操作頭部17とを空転させずに一体的に回転させるように構成されている。
【0037】
また、カバー部24内には、
図2、
図3、
図5に示すように、ばねガイド部26が設けられている。このばねガイド部26は、ばね部材25をガイドするためのものであり、丸棒状に形成され、カバー部24の内端面のほぼ中心部にカバー部24の軸方向に沿って設けられている。すなわち、このばねガイド部26は、その外径が軸本体部18の外径とほぼ同じ大きさに形成されている。
【0038】
また、このばねガイド部26は、
図2、
図3、
図5に示すように、その軸方向の長さが軸操作部19の空洞凹部19bの軸方向の長さよりも短い長さで形成されている。これにより、ばねガイド部26は、カバー部24内に軸操作部19が挿入された際に、軸操作部19の空洞凹部19b内に接触することなく配置されている。
【0039】
ばね部材25は、
図2~
図5に示すように、コイルばねであり、ばねガイド部26の外周に配置された状態で、軸操作部19の空洞凹部19b内に配置されるように構成されている。すなわち、このばね部材25は、内径がばねガイド部26の外径よりも少し大きく、外径が軸操作部19の空洞凹部19bの内径よりも小さく形成されている。また、このばね部材25は、一端部が軸操作部19の空洞凹部19b内の底部19aの内面に当接し、他端部がカバー部24の外部側に位置する内端面に当接している。
【0040】
これにより、ばね部材25は、
図2~
図5に示すように、カバー部24を腕時計ケース1の外部に向けて押し出す方向に付勢し、カバー部24がロック機構27によってロックされているときに軸方向に圧縮され、ロック機構27によるカバー部24のロックが解除されたときに軸方向に伸びるように構成されている。
【0041】
ところで、操作軸部16は、
図2および
図3に示すように、軸本体部18の内端部に設けられた連結穴18aに巻芯(図示せず)が挿入して連結されるように構成されている。これにより、巻芯は、操作頭部17の操作によって操作軸部16がスライド動作および回転動作する際に、操作軸部16と共にスライド動作および回転動作するように構成されている。
【0042】
この場合、巻芯は、図示しないが、時計モジュール7内に押し込まれた際に、時計モジュール7に対して空転するように構成されている。また、この巻芯は、ロック機構27によるロックが解除された状態で、一段引き出された際に、時計モジュール7に連結され、この状態で操作頭部17の回転操作に応じて回転して、時刻修正、モード切替などの機能設定や選択を行うように構成されている。
【0043】
すなわち、操作軸部16は、
図2に示すように、軸本体部18が腕時計ケース1の内部側に押し込まれて、巻芯(図示せず)が時計モジュール7内に押し込まれた際に、時計モジュール7に対する巻芯の連結を解除し、この状態で軸操作部19が回転して、巻芯が回転しても、その回転が時計モジュール7に伝わらず、時刻修正、モード切替などの機能設定や選択が行われないように構成されている。
【0044】
また、この操作軸部16は、
図3に示す状態から軸本体部18が腕時計ケース1の外部側に引き出されて、巻芯(図示せず)が時計モジュール7内から引き出される方向にスライドした際に、巻芯が時計モジュール7に連結され、この状態で軸操作部19が回転して、巻芯が回転すると、その回転が時計モジュール7に伝わって、時刻修正、モード切替などの機能設定や選択が行われるように構成されている。
【0045】
一方、ロック機構27は、
図2~
図5に示すように、筒状部材10の大径筒部13に回転動作によってロックされるロック部材28と、このロック部材28が軸方向にスライド可能に取り付けられて操作部材11の回転操作に応じてロック部材28を回転させる回転伝達部材29と、を備えている。ロック部材28は、回転伝達部材29の内周面側に配置されている。このロック部材28は、ステンレスなどの金属によってリング状に形成されている。
【0046】
このロック部材28は、
図2~
図5に示すように、内周面に雌ねじ部28aが設けられている。この雌ねじ部28aは、筒状部材10の大径筒部13の外周に設けられた雄ねじ部13aが螺合するものである。このロック部材28は、軸方向の長さが筒状部材10の大径筒部13の雄ねじ部13aの軸方向の長さよりも少し長く形成されている。これにより、ロック部材28は、雄ねじ部13aに雌ねじ部28aが螺合した際に、ロック部材28の外端面が大径筒部13の外端面よりも腕時計ケース1の外部側に突出する。
【0047】
このロック部材28は、
図2~
図5に示すように、その外径が操作頭部17の小径カバー部24aの内径よりも大きく、且つ大径カバー部24b内径よりも小さく形成されている。これにより、ロック部材28は、筒状部材10の大径筒部13に対するロックが解除された際に、操作頭部17のカバー部24がばね部材25のばね力によって腕時計ケース1の外部側に向けて押し出される。
【0048】
このため、このロック部材28は、
図2~
図5に示すように、操作頭部17のカバー部24がばね部材25のばね力によって腕時計ケース1の外部側に向けて押し出された際に、ロック部材28の雌ねじ部28aが軸操作部19の小径の内側筒部21の外周に移動して対応し、この状態でロック部材28の外端部が大径の外側筒部22の内端面に対応して当接する。
【0049】
回転伝達部材29は、
図2~
図5に示すように、ステンレスなどの金属によってリング状に形成されている。この回転伝達部材29は、その内径がロック部材28の外径とほぼ同じ大きさで、軸方向の長さがロック部材28の軸方向の長さとほぼ同じ長さで形成されている。この回転伝達部材29は、外径が操作頭部17のカバー部24の大径カバー部24bの内径と同じか、それよりも僅かに大きく形成されている。
【0050】
これにより、回転伝達部材29は、
図2~
図5に示すように、その内部にロック部材28が配置された状態で、操作頭部17のカバー部24の大径カバー部24b内に圧入によって固着されている。このため、この回転伝達部材29は、カバー部24に対してスライドすることがなく、操作頭部17と共に一体的に回転し、その回転をロック部材28に伝達させて、ロック部材28を回転させるように構成されている。
【0051】
この場合、ロック部材28と回転伝達部材29とは、
図2~
図5に示すように、第2空転止め部30によって相対的にスライドすると共に、一体的に回転するように構成されている。すなわち、第2空転止め部30は、ロック部材28の外周面に設けられた第2ロック平面部30aと、回転伝達部材29の内周面に設けられてロック部材28の第2ロック平面部30aに対応して押し当てられる第2伝達平面部30bと、を備えている。
【0052】
これにより、第2空転止め部30は、
図4および
図5に示すように、ロック部材28の第2ロック平面部30aと回転伝達部材29の第2伝達平面部30bとが対応して当接した状態のときに、ロック部材28と回転伝達部材29とを軸方向に沿って相対的にスライド可能な状態で、ロック部材28と回転伝達部材29とを空転させずに一体的に回転させるように構成されている。
【0053】
また、ロック機構27は、
図2~
図6に示すように、回転伝達部材29に対するロック部材28の腕時計ケース1側への抜け出しを防ぐ抜止め部31を備えている。この抜止め部31は、ロック部材28の外周に設けられた大径当接部31aと、回転伝達部材29の内周に設けられた小径当接部31bと、を備えている。大径当接部31aは、ロック部材28の外周部における外側部に設けられている。また、小径当接部31bは、回転伝達部材29の内周部における内側部に設けられている。
【0054】
ロック部材28の大径当接部31aは、
図2~
図6に示すように、その外径が回転伝達部材29の内径と同じ大きさで、且つ回転伝達部材29の小径当接部31bの内径よりも大きく形成されている。また、回転伝達部材29の小径当接部31bは、その内径がロック部材28の外径と同じ大きさで、且つロック部材28の大径当接部31aの外径よりも小さく形成されている。
【0055】
この場合にも、大径当接部31aの外径は、
図2および
図3において第2空転止め部30の第2ロック平面部30aが対応して設けられているため、小さく描かれている。すなわち、この大径当接部31aは、
図4および
図5に示すように、本来、その外径が小径当接部31bの内径よりも十分に大きく形成されている。これにより、抜止め部31は、ロック部材28の大径当接部31aの内端面が回転伝達部材29の小径当接部31bの外端面に接離可能に当接する。
【0056】
このため、この抜止め部31は、
図3に示すように、回転伝達部材29が操作頭部17のカバー部24と共に腕時計ケース1の外部側に向けて移動する際に、ロック部材28の大径当接部31aの内端面が回転伝達部材29の小径当接部31bの外端面に当接するので、ロック部材28が回転伝達部材29と共に移動し、ロック部材28が回転伝達部材29から腕時計ケース1側に抜け出さないように構成されている。
【0057】
この場合、操作頭部17のカバー部24における大径カバー部24b内には、
図2~
図6に示すように、緩衝部材32が設けられている。この緩衝部材32は、αゲルやシリコーンゴムなどの緩衝材料によってリング状に形成されている。すなわち、この緩衝部材32は、ロック部材28が回転伝達部材29内に配置された状態のロック機構27の外端面と、これが軸方向に対応するカバー部24の大径カバー部24bの外端面つまり大径カバー部24bと小径カバー部24aとの段差面と、の間に配置されている。
【0058】
これにより、緩衝部材32は、
図2および
図6に示すように、操作頭部17がロック機構27によってロックされた状態で、操作頭部17のカバー部24が外部から衝撃を受けた際に、カバー部24の大径カバー部24bとロック機構27のロック部材28との間に挟まれて軸方向に圧縮されることにより、外部からの衝撃を緩衝する。
【0059】
また、この緩衝部材32は、
図2および
図6に示すように、ロック機構27のロック部材28の雌ねじ部28aと大径筒部13の雄ねじ部13aとが螺合していても、外部からの衝撃によって緩衝部材32が軸方向に圧縮された際に、回転伝達部材29をカバー部24と共に腕時計ケース1側に向けて移動させて、雌ねじ部28aと雄ねじ部13aとに衝撃が加わらないように構成されている。
【0060】
このようなスイッチ装置4は、
図2に示すように、ロック機構27によって操作頭部17を筒状部材10にロックする際に、ばね部材25のばね力に抗して操作頭部17を筒状部材10の大径筒部13に向けて押し付けた状態で、操作頭部17のカバー部24を回転させると、そのカバー部24の回転と共に回転伝達部材29が回転してロック部材28を回転させ、このロック部材28の雌ねじ28aを筒状部材10の大径筒部13の雄ねじ13aに螺合させるように構成されている。
【0061】
すなわち、このスイッチ装置4は、
図2に示すように、ロック部材28の雌ねじ部28aが筒状部材10の大径筒部13の雄ねじ部13aに螺合する際に、第2空転止め部30のロック部材28の第2ロック平面部30aと回転伝達部材29の第2伝達平面部30bとが対応して当接して、操作頭部17の回転操作によって回転伝達部材29が回転してロック部材28を回転させ、このロック部材28の雌ねじ部28aを筒状部材10の大径筒部13の雄ねじ部13aに螺合させるように構成されている。
【0062】
また、このスイッチ装置4は、
図2および
図3に示すように、筒状部材10の大径筒部13に対する操作頭部17のロックを解除する際に、操作頭部17のカバー部24を逆方向に回転させて、ロック部材28の雌ねじ部28aと筒状部材10の大径筒部13の雄ねじ部13aとの螺合を解除させると、ばね部材25のばね力によって操作頭部17のカバー部24がロック機構27と共に腕時計ケース1の外部に向けて押し出されるように構成されている。
【0063】
また、このスイッチ装置4は、
図3に示すように、筒状部材10の大径筒部13に対する操作頭部17のロックが解除されて、ばね部材25のばね力によってカバー部24とロック機構27とが腕時計ケース1の外部に向けて押し出される際に、ロック機構27の抜止め部31によってロック部材28と回転伝達部材29とがカバー部24と共に腕時計ケース1の外部に向けて移動するように構成されている。
【0064】
すなわち、このスイッチ装置4は、
図3に示すように、筒状部材10に対する操作頭部17のロックが解除されて、ばね部材25のばね力によって操作頭部17のカバー部24とロック機構27とが腕時計ケース1の外部に向けて押し出される際に、抜止め部31におけるロック部材28の大径当接部31aの内端面が回転伝達部材29の小径当接部31bの外端面に当接するように構成されている。
【0065】
この場合、このスイッチ装置4は、
図3に示すように、筒状部材10に対する操作頭部17のロックが解除されて、ばね部材25のばね力によって操作頭部17のカバー部24とロック機構27とが腕時計ケース1の外部に向けて押し出される際に、操作軸部16が軸方向にスライドすることがなく、ロック部材28の雌ねじ部28aがばね部材25のばね力によって回転伝達部材29と共に操作軸部16の軸操作部19における小径の内側筒部21の外周に移動して、ロック部材28の外端部が大径の外側筒部22の内端部に押し当てられるように構成されている。
【0066】
さらに、このスイッチ装置4は、
図3に示すように、筒状部材10に対する操作頭部17のロックが解除されて、ばね部材25のばね力によって操作頭部17のカバー部24とロック機構27とが腕時計ケース1の外部に向けて押し出された状態で、操作頭部17を腕時計ケース1の外部に向けて一段引き出すと、軸操作部19における大径の外側筒部22の内端面にロック部材28の外端面が当接しているので、ロック部材28が操作軸部16を腕時計ケース1の外部に向けて引き出すように構成されている。
【0067】
この場合、このスイッチ装置4は、
図3に示す状態から、操作頭部17のカバー部24がロック機構27と共に操作軸部16を腕時計ケース1の外部に向けて引き出すと、軸本体部18の連結穴18aに連結された巻芯(図示せず)が時計モジュール7内から引き出される方向にスライドして、巻芯が時計モジュール7に連結されるように構成されている。
【0068】
また、このスイッチ装置4は、
図3に示す状態から巻芯(図示せず)が時計モジュール7内から引き出される方向にスライドして、巻芯が時計モジュール7に連結された際に、操作頭部17を回転させると、その回転が操作軸部16を介して巻芯に伝わり、この巻芯の回転が時計モジュール7に伝わって、時刻修正、モード切替などの機能設定や選択が行われるように構成されている。
【0069】
次に、このような腕時計を組み立てる場合について説明する。
この場合には、まず、腕時計ケース1の上側開口部に時計ガラス5をガラスパッキン5aと共に取り付ける。この状態で、腕時計ケース1の2時側、4時側、8時側および10時側に押釦スイッチ3をそれぞれ取り付けると共に、腕時計ケース1の3時側の貫通孔8にスイッチ装置4の筒状部材10を取り付ける。
【0070】
この場合には、予め、筒状部材10の大径筒部13の内側面に設けられた防水溝14内に防水パッキン15を配置させる。この状態で、筒状部材10の小径筒部12を腕時計ケース1のケース本体1aの貫通孔8に外部側から挿入させて、筒状部材10の大径筒部13の内側面をケース本体1aの外面に押し当てる。すると、防水溝14内に防水パッキン15が弾力的に押し潰されて押し込まれる。これにより、筒状部材10の外周面と貫通孔8の内周面との間の防水が確実に図れる。
【0071】
この場合には、筒状部材10の小径筒部12の内端部が腕時計ケース1のケース本体1aの内部に突出する。この状態で、ケース本体1aの内部に突出した小径筒部12の内端部における外周部と、ケース本体1aの貫通孔8の内端部の縁部とを、レーザ溶接などの溶接によって腕時計ケース1の貫通孔8の全周に亘って固着する。これにより、筒状部材10が腕時計ケース1の外部に抜け出すことなく、腕時計ケース1のケース本体1aの貫通孔8に強固に取り付けられる。
【0072】
そして、腕時計ケース1内に時計モジュール7を組み込んで、スイッチ装置4の筒状部材10に操作部材11を組み付ける。この場合には、まず、操作軸部16の軸本体部18の外周に複数の防水リング20を取り付ける。この状態で、操作軸部16の軸操作部19に操作頭部17を取り付ける。このときには、予め、操作頭部17のカバー部24内に設けられたばねガイド部26の外周にばね部材25を配置させる。
【0073】
そして、操作軸部16の軸操作部19の空洞凹部19b内にカバー部24のばねガイド部26をばね部材25と共に挿入させる。このときには、軸操作部19の外側筒部22の外周面に設けられた第1空転止め部23の第1操作平面部23aと小径カバー部24aの内周面に設けられた第1カバー平面部23bとを対応させて、軸操作部19をカバー部24の小径カバー部24a内に挿入させる。これにより、軸操作部19は、カバー部24と一体的に回転すると共に、カバー部24内を軸方向にスライド可能な状態で配置される。
【0074】
この状態で、カバー部24の大径カバー部24b内にロック機構27を組み込む。このときには、予め、ロック機構27を組み立てる。この場合には、リング状のロック部材28をリング状の回転伝達部材29内に挿入させて配置させる際に、ロック部材28の外周面に設けられた第2空転止め部30の第2ロック平面部30aと回転伝達部材29の内周面に設けられた第2伝達平面部30bとを対応させる。
【0075】
この状態で、リング状のロック部材28をリング状の回転伝達部材29内に挿入させると、回転伝達部材29に対してロック部材28がスライド可能な状態で、回転伝達部材29と共にロック部材28が回転する。また、このときには、抜止め部31であるロック部材28の大径当接部31aの内端部に回転伝達部材29の小径当接部31bの外端部が当接する。これにより、ロック部材28が腕時計ケース1側に向けて抜け出さないように、ロック機構27が組み立てられる。
【0076】
そして、このように組み立てられたロック機構27を操作頭部17のカバー部24内に取り付ける際には、予め、カバー部24の大径カバー部24b内にリング状の緩衝部材32を配置させる。この状態で、ロック機構27の回転伝達部材29をカバー部24の大径カバー部24b内に圧入によって嵌め込んで、ロック機構27の回転伝達部材29をカバー部24の大径カバー部24b内に固着させる。
【0077】
この状態では、
図3に示すように、ばね部材25のばね力によって操作頭部17のカバー部24が腕時計ケース1の外部に向けて押し出される。このため、ロック機構27のロック部材28の雌ねじ部28aが操作部材11の軸操作部19における小径の内側筒部21の外周に移動して、雌ねじ部28aの外端部が大径の外側筒部22の内端部に当接する。これにより、操作部材11の操作頭部17が操作軸部16の軸操作部19から抜け出すことがなく軸操作部19に取り付けられる。
【0078】
このように、カバー部24に回転伝達部材29が圧入されているため、カバー部24と回転伝達部材29とは一体化して互いに外れない構造になっている。また、ロック部材28の外周面と回転伝達部材29の内周面とは共に段差が形成されており、回転伝達部材29の内周面の段差に、ロック部材28の外周面の段差が対応して配置されるため、軸方向の位置規制がなされている。
【0079】
そして、筒状部材10の内部に操作軸部16の軸本体部18を腕時計ケース1の外部から差し込む。このときには、予め、操作軸部16の軸本体部18の内端部に設けられた連結穴18aに巻芯(図示せず)の外端部を嵌め込んで連結させる。この状態で、巻芯を操作軸部16と共に筒状部材10内に挿入させて、時計モジュール7に差し込んで取り付ける。
【0080】
このときには、筒状部材10の小径筒部12内に操作軸部16の軸本体部18が挿入された際に、複数の防水パッキン15によって小径筒部12と軸本体部18との間の防水が図られる。また、このときには、操作頭部17のロック機構27が筒状部材10の大径筒部13の雄ねじ部13aに接近して配置された状態で、巻芯が時計モジュール7内にスライドおよび回転可能な状態で取り付けられる。
【0081】
この状態では、筒状部材10内に挿入された操作軸部16のスライド動作に応じて巻芯がスライドすると共に、操作軸部16の回転動作に応じて巻芯が回転する。これにより、スイッチ装置4が組み立てられる。この後、腕時計ケース1の下部に裏蓋6を防水パッキン6aと共に取り付けることにより、腕時計が組み立てられる。
【0082】
次に、このような腕時計のスイッチ装置4の作用について説明する。
この腕時計を腕に取り付けて使用する場合には、まず、スイッチ装置4の操作頭部17をロック機構27によって筒状部材10の大径筒部13にロックさせる。このときには、ばね部材25のばね力に抗して操作頭部17のカバー部24を大径筒部13に向けて移動させて、ロック部材28の雌ねじ部28aの内端部を大径筒部13の雄ねじ13aの外端部に押し付ける。
【0083】
この状態で、カバー部24を回転させると、ロック機構27の回転伝達部材29がカバー部24と共に回転し、この回転伝達部材29の回転が第1空転止め部23によってロック部材28に伝達されて、ロック部材28が回転する。このロック部材28の回転によってロック部材28の雌ねじ24aが大径筒部13の雄ねじ13aに螺合して締め付けられる。
【0084】
このときには、操作軸部16が筒状部材10内に押し込まれることなく、操作軸部16の軸操作部19の内端部である底部19aがばね部材25のばね力を受け止めて、ばね部材25を圧縮させる。このため、軸操作部19の底部19aが大径筒部13の外端部つまり雄ねじ13aの外端部に接近した状態を維持する。これにより、スイッチ装置4の操作頭部17が筒状部材10の大径筒部13にロックされる。
【0085】
このときには、操作軸部16の軸操作部19の内端部である底部19aが大径筒部13の外端部にばね部材25を圧縮させて接近しているので、操作軸部16の軸本体部18の内端部に設けられた連結穴18aに嵌め込まれて連結された巻芯(図示せず)が、時計モジュール7内に押し込まれることはない。また、この状態では、操作頭部17が筒状部材10の大径筒部13にロックされているので、操作部材11が回転しないため、巻芯が時計モジュール7内で回転することがない。
【0086】
この状態で、操作頭部17のカバー部24が外部から衝撃を受けた際には、その衝撃によってカバー部24の大径カバー部24bの外端部つまり大径カバー部24bと小径カバー部24aとの段差部が緩衝部材32に押し当てられる。このときには、大径カバー部24bの外端部である段差部とロック機構27のロック部材28の外端部との間に緩衝部材32が挟まれて圧縮される。これにより、緩衝部材32が衝撃を緩衝する。
【0087】
また、このときには、衝撃を受けたカバー部24と共にロック機構27の回転伝達部材29がロック部材28に対して軸方向にスライドする。このため、ロック部材28の雌ねじ部28aと筒状部材10の大径筒部13の雄ねじ部13aとが螺合していても、これら雌ねじ部28aと雄ねじ部13aとに衝撃が加わることがない。
【0088】
これにより、衝撃による雌ねじ部28aと雄ねじ部13aとの破損が防げる。また、カバー部24が受けた衝撃は、ばね部材25によっても緩衝されるので、操作軸部16が衝撃を受けることがない。これにより、衝撃によって巻芯(図示せず)が時計モジュール7内に押し込まれて、時計モジュール7を破損することがない。
【0089】
一方、時刻修正、モード切替などの機能設定や選択を行う場合には、まず、ロック機構27による筒状部材10の大径筒部13に対する操作頭部17のロックを解除する。このときには、操作頭部17のカバー部24を逆方向に回転させて、ロック機構27の回転伝達部材29を回転させる。この回転伝達部材29は、第2空転止め部30によってロック部材28を同方向に回転させる。
【0090】
そして、ロック部材28が回転すると、大径筒部13の雄ねじ13aに対するロック部材28の雌ねじ28aの螺合が解除される。すると、操作頭部17がばね部材25のばね力によって腕時計ケース1の外部側に向けて押し出されて、ロック部材28の雌ねじ部28aが軸操作部19の小径の内側筒部21の外周に移動して対応する。この状態で、ロック部材28の外端部つまり雌ねじ部28aの外端部が操作軸部16の軸操作部19における大径の外側筒部22の内端部に当接する。
【0091】
このときには、操作軸部16が軸方向にスライドしないため、軸本体部18の連結穴18aに連結された巻芯(図示せず)もスライドしない。このため、巻芯は時計モジュール7内に空転状態で配置された状態を維持する。すなわち、操作頭部17のカバー部24が回転して操作軸部16が回転し、この操作軸部16の回転に伴って巻芯が回転しても、その巻芯の回転が時計モジュール7に伝わらないため、時刻修正、モード切替などの機能設定や選択が行われない。
【0092】
この状態で、操作頭部17を腕時計ケース1の外部側に向けて引き出す。このときには、カバー部24内のロック部材28の外端部が操作軸部16の軸操作部19における大径の外側筒部22の内端部に当接しているので、操作頭部17の引き出し操作によってロック機構27の回転伝達部材29がロック部材28と共に軸操作部19をばね部材25と共に引き出す。すると、操作軸部16の軸本体部18が軸方向にスライドして一段引き出され、この軸本体部18に連結された巻芯(図示せず)が引き出される。
【0093】
このように、巻芯が引き出されると、巻芯の回転が時計モジュール7に伝達される状態になる。この状態で、操作頭部17のカバー部24を回転させると、その回転が第1空転止め部23によって操作軸部16に伝達されて、操作軸部16の軸本体部18が回転する。すると、操作軸部16の回転に伴って巻芯が回転し、その回転が時計モジュール7に伝わるので、時刻修正、モード切替などの機能設定や選択が行われる。
【0094】
このように、この腕時計のスイッチ装置4によれば、貫通孔8が設けられた腕時計ケース1と、少なくとも一部が腕時計ケース1の貫通孔8に挿入される筒状部材10と、この筒状部材10の内部から筒状部材10の外部に亘って配置された操作部材11と、この操作部材11を筒状部材10にロックするロック機構27と、を備え、ロック機構27は、操作部材11の回転動作によって筒状部材10にロックされるロック部材28と、このロック部材28とは別部材であって操作部材11の回転操作に応じてロック部材28を回転させる回転伝達部材29と、を備えていることにより、外部からの衝撃によるロック機構27の破損を防ぐことができる。
【0095】
すなわち、この腕時計のスイッチ装置4では、ロック機構27が、操作部材11の回転動作によって筒状部材10にロックされるロック部材28と、このロック部材28とは別部材であって操作部材11の回転操作に応じてロック部材28を回転させる回転伝達部材29と、を備えていることにより、ロック部材28が筒状部材10にロックされた状態で、操作部材11が外部から衝撃を受けた際に、ロック部材28に対して回転伝達部材29を軸方向にスライドさせることができるので、衝撃がロック部材28と筒状部材10とに加わることがないため、衝撃によるロック機構27の破損を防ぐことができる。
【0096】
この場合、この腕時計のスイッチ装置4では、筒状部材10が、腕時計ケース1の貫通孔8に挿入される小径筒部12と、腕時計ケース1の外部に突出する大径筒部13と、を含み、ロック部材28が、回転伝達部材29の内周面側に配置され、筒状部材10の大径筒部13にロックされることにより、大径筒部13を腕時計ケース1の外部に突出させて腕時計ケース1の貫通孔8に確実に固定させることができ、この大径筒部13にロック部材28を確実に且つ良好に固定させることができる。
【0097】
また、この腕時計のスイッチ装置4では、操作部材11が、筒状部材10内に配置される操作軸部16と、この操作軸部16の外部に軸方向にスライド可能に取り付けられて筒状部材10の大径筒部13を覆う操作頭部17と、を備えていることにより、ロック機構27によって操作頭部17が大径筒部13にロックされた状態で、操作頭部17が外部から衝撃を受けた際に、ロック部材28に対する回転伝達部材29のスライドに伴って操作頭部17を操作軸部16に対してスライドさせることができるので、操作頭部17がスライドしても、衝撃が操作軸部16に伝わらないようにすることができ、これにより腕時計ケース1内の時計モジュール7の破損を防ぐことができる。
【0098】
この場合、この腕時計のスイッチ装置4では、操作頭部17を外部に向けて付勢する付勢部材であるばね部材25を備えていることにより、ロック機構27によって操作頭部17が大径筒部13にロックされた状態で、操作頭部17が外部から衝撃を受けた際に、操作頭部17が操作軸部16に対してスライドしても、ばね部材25のばね力によって衝撃を緩衝することができ、これにより衝撃が操作軸部16に伝わらないようにすることができるので、腕時計ケース1内の時計モジュール7の破損を防ぐことができる。
【0099】
また、この腕時計のスイッチ装置4では、操作軸部16を操作頭部17に対して軸方向にスライド可能な状態で、操作軸部16と操作頭部17とを一体的に回転させる第1空転止め部23を備えていることにより、第1空転止め部23によって操作頭部17を軸方向に沿ってスライドさせることができると共に、操作頭部17の回転を操作軸部16に確実に伝達させて操作軸部16を良好に回転させることができる。
【0100】
すなわち、第1空転止め部23は、操作軸部16の軸操作部19の外周面に設けられた第1操作平面部23aと、操作頭部17のカバー部24の内周面に設けられた第1カバー平面部23bと、を備えているので、第1操作平面部23aと第1カバー平面部23bとを対応させて当接させることができる。これにより、操作頭部17を操作軸部16に対して軸方向にスライドさせることができると共に、操作頭部17の回転を操作軸部16に確実に伝達させることができる。
【0101】
また、この腕時計のスイッチ装置4では、操作部材11の操作頭部17の内部にロック機構27の回転伝達部材29が圧入によって固定されていることにより、回転伝達部材29と操作頭部17とを一体的に回転させることができると共に、回転伝達部材29と操作頭部17とを一体的に軸方向に移動させることができる。これにより、操作頭部17の回転操作によって回転伝達部材29を回転させることができると共に、操作頭部17の軸方向への移動に伴って回転伝達部材29を同方向に移動させることができる。
【0102】
この場合、ロック機構27の回転伝達部材29は、操作頭部17の内部に圧入によって固定されるので、操作頭部17内に操作軸部16の軸操作部19を配置させた状態で、回転伝達部材29をロック部材28と共に操作頭部17の内部に嵌め込んで取り付けることができる。このため、ロック機構27のロック部材28が操作軸部16の軸操作部19に対してスライド可能な状態で、操作軸部16が操作頭部17内から抜け出さないように取り付けることができる。
【0103】
また、この腕時計のスイッチ装置4では、ロック機構27が、ロック部材28を回転伝達部材29に対してスライド可能な状態で、ロック部材28と回転伝達部材29とを一体的に回転させる第2空転止め部30を備えていることにより、第2空転止め部30によって回転伝達部材29をロック部材28に対して軸方向に沿ってスライドさせることができると共に、回転伝達部材29の回転をロック部材28に確実に伝達することができる。
【0104】
すなわち、第2空転止め部30は、ロック部材28の外周面に設けられた第2ロック平面部30aと、回転伝達部材29の内周面に設けられた第2伝達平面部30bと、を備えているので、第2操作平面部30aと第2伝達平面部30bとを対応させて当接させることができ、これにより回転伝達部材29をロック部材28に対して軸方向にスライドさせることができると共に、回転伝達部材29の回転をロック部材28に確実に伝達させることができる。このように、ロック部材28の第2ロック平面部30aと、回転伝達部材29の第2伝達平面部30bと、が対応して当接しているので、面方向の回転を規制できる。
【0105】
また、この腕時計のスイッチ装置4では、ロック機構27のロック部材28が回転伝達部材29から腕時計ケース1側に向けて抜け出すのを防ぐ抜止め部31を備えていることにより、筒状部材10に対する操作部材11のロックが解除された際に、抜止め部31によって腕時計ケース1の外部側に向けてロック部材28を回転伝達部材29と共に移動させることができ、これにより良好にスイッチ操作させることができる。
【0106】
すなわち、この腕時計のスイッチ装置4では、操作頭部17の回転操作によってロック機構27のロック部材28を筒状部材10の大径筒部13にロックさせる際に、抜止め部31によってロック部材28を回転伝達部材29と共に腕時計ケース1側に向けて移動させることができ、これによりロック部材28を筒状部材10に対して確実にかつ良好にロックさせることができる。
【0107】
また、この腕時計のスイッチ装置4では、ロック機構27の回転伝達部材29およびロック部材28とこれらが軸方向に対向する操作部材11の操作頭部17の内端面との間に緩衝部材32が設けられていることにより、操作頭部17が外部からの衝撃を受けた際に、その衝撃を緩衝部材32によって緩衝することができる。
【0108】
すなわち、緩衝部材32は、衝撃を吸収する際に、衝撃に応じて圧縮されるので、その緩衝部材32の圧縮に応じてロック機構27の回転伝達部材29をロック部材28に対してスライドさせることができ、これによっても筒状部材10の大径筒部13の雄ねじ部13aとロック部材28の雌ねじ部28aとに衝撃が加わらないようにすることができるので、衝撃による雄ねじ部13aと雌ねじ部28aとの破損を防ぐことができる。
【0109】
さらに、この腕時計のスイッチ装置4では、ロック部材28が筒状部材10の大径筒部13の外周に設けられた雄ねじ部13aに螺合する雌ねじ部28aを有しているので、操作部材11の操作頭部17を回転させてロック部材28を回転させると、ロック部材28の回転に伴って雌ねじ部28aを大径筒部13の雄ねじ部13aに螺合させることができ、これにより操作頭部17を筒状部材10に確実にロックさせることができる。
【0110】
なお、上述した実施形態では、ロック機構27が雄ねじ部13aと雌ねじ部28aとの螺合によって操作頭部17を大径筒部13にロックするねじロック構造である場合について述べたが、この発明は、これに限らず、ロック部材28に係合突起を設け、大径筒部13に係合突起を係止する係止溝部を設けた簡易型のロック機構であっても良い。
【0111】
すなわち、この簡易型のロック機構は、操作頭部17を腕時計ケース1側に向けて押し付けて、ロック部材28の係合突起を大径筒部13の係止溝部の開口部から係止溝部内に挿入させ、この状態で操作頭部17を所定角度(例えば90°)回転させてロック部材28の係合突起を大径筒部13の係止溝部内で所定角度だけ回転移動させて開口部から離すことにより、ロック部材28の係合突起を大径筒部13の係止溝部内に係止させるように構成されていれば良い。
【0112】
また、上述した実施形態では、第1回転止め部23が、操作軸部16の軸操作部19における外側筒部22の外周面に設けられた第1操作平面部23aと、これに対応するカバー部24の小径カバー部24aの内周面に設けられた第1カバー平面部23bと、を備えている場合について述べたが、この発明は、これに限らず、外側筒部22の外周面とこれに対応する小径カバー部24aの内周面とを四角形、五角形などの多角形または楕円形などの非円形状に形成した構造であっても良い。
【0113】
また、上述した実施形態では、第2回転止め部30が、ロック部材28の外周面に設けられた第2ロック平面部30aと、これに対応する回転伝達部材29の内周面に設けられた第2伝達平面部30bと、を備えている場合について述べたが、この発明は、これに限らず、ロック部材28の外周面とこれに対応する回転伝達部材29の内周面とを四角形、五角形などの多角形または楕円形などの非円形状に形成した構造であっても良い。
【0114】
また、上述した実施形態では、スイッチ装置4が時計モジュール7内の巻芯(図示せず)を一段引き出す構造である場合について述べたが、この発明は、これに限らず、例えば、2段階以上、引き出せる構造であっても良い。
【0115】
また、上述した実施形態では、3時側のスイッチ装置4に適用した場合について述べたが、この発明は、これに限らず、2時側、4時側、8時側、および10時側の押釦スイッチ3にも適用することができる。
【0116】
さらに、上述した実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、この発明は必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の時計に適用することができる。また、この発明は、必ずしも時計である必要はなく、例えば携帯情報端末などの電子機器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0117】
1 腕時計ケース
3 押釦スイッチ
4 スイッチ装置
5 時計ガラス
5a ガラスパッキン
6 裏蓋
6a 防水パッキン
7 時計モジュール
8 貫通孔
10 筒状部材
11 操作部材
12 小径筒部
13 大径筒部
13a 雄ねじ部
14 防水溝
15 防水パッキン
16 操作軸部
17 操作頭部
18 軸本体部
18a 連結穴
19 軸操作部
19a 底部
19b 空洞凹部
20 防水リング
21 内側筒部
22 外側筒部
23 第1空転止め部
23a 第1操作平面部
23b 第1カバー平面部
24 カバー部
24a 小径カバー部
24b 大径カバー部
25 ばね部材
26 ばねガイド部
27 ロック機構
28 ロック部材
28a 雌ねじ部
29 回転伝達部材
30 第2空転止め部
30a 第2ロック平面部
30b 第2伝達平面部
31 抜止め部
31a 大径当接部
31b 小径当接部
32 緩衝部材