(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156621
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】ポリエチレン多層基材、印刷基材、積層体及び包装材料
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20251002BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20251002BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B7/022
B32B7/12
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025134864
(22)【出願日】2025-08-13
(62)【分割の表示】P 2021166442の分割
【原出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】添田 有貴
(72)【発明者】
【氏名】今泉 真代
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 圭介
(57)【要約】
【課題】耐熱性に優れるポリエチレン多層基材を提供する。
【解決手段】第1のポリエチレン層と、第2のポリエチレン層と、第3のポリエチレン層とを厚さ方向にこの順に備え、第1のポリエチレン層の押込み弾性率が、第2のポリエチレン層の押込み弾性率の3.0倍以上であり、第3のポリエチレン層の押込み弾性率が、第2のポリエチレン層の押込み弾性率の3.0倍以上であり、延伸処理されてなる、ポリエチレン多層基材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも中密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンを含有する第1のポリエチレン層と、
少なくとも直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第2aのポリエチレン層と、
少なくとも直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第2のポリエチレン層と、
少なくとも直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第2bのポリエチレン層と、
少なくとも中密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンを含有する第3のポリエチレン層と
を厚さ方向にこの順に備える5層構成のポリエチレン多層基材であって、
前記5層のポリエチレン層のうち少なくとも1層が、密度の異なる少なくとも2種以上のポリエチレンのブレンドから構成されており、
前記第1のポリエチレン層の押込み硬度が、前記第2のポリエチレン層の押込み硬度の2.0倍以上であり、前記第3のポリエチレン層の押込み硬度が、前記第2のポリエチレン層の押込み硬度の2.0倍以上であり、
前記ポリエチレン多層基材は、長手方向(MD)および/又は横手方向(TD)の延伸倍率が、それぞれ2~10倍の倍率で延伸処理されてなる、
ポリエチレン多層基材。
【請求項2】
前記第2aのポリエチレン層の押込み硬度が、前記第2のポリエチレン層の押込み硬度の1.4倍以上であり、前記第2bのポリエチレン層の押込み硬度が、前記第2のポリエチレン層の押込み硬度の1.4倍以上である、
請求項1に記載のポリエチレン多層基材。
【請求項3】
前記第1のポリエチレン層及び前記第3のポリエチレン層の押込み硬度が、それぞれ独立に、45MPa以上150MPa以下である、請求項1又は2に記載のポリエチレン多層基材。
【請求項4】
前記第1のポリエチレン層が、前記ポリエチレン多層基材の一方側の表面層であり、
前記第3のポリエチレン層が、前記ポリエチレン多層基材の他方側の表面層である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエチレン多層基材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエチレン多層基材と、
前記ポリエチレン多層基材上に形成された印刷層と
を備える印刷基材。
【請求項6】
ポリエチレン多層基材と、
ポリエチレンを主成分として含有するヒートシール層と
を備える積層体であって、
前記ポリエチレン多層基材が、
少なくとも中密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンを含有する第1のポリエチレン層と、
少なくとも直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第2aのポリエチレン層と、
少なくとも直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第2のポリエチレン層と、
少なくとも直鎖状低密度ポリエチレンを含有する第2bのポリエチレン層と、
少なくとも中密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンを含有する第3のポリエチレン層と
を厚さ方向にこの順に備える5層構成であり、
前記5層のポリエチレン層のうち少なくとも1層が、密度の異なる少なくとも2種以上のポリエチレンのブレンドから構成されており、
前記ポリエチレン多層基材は、長手方向(MD)および/又は横手方向(TD)の延伸倍率が、それぞれ2~10倍の倍率で延伸処理されてなり、
前記第1のポリエチレン層の押込み硬度が、前記第2のポリエチレン層の押込み硬度の2.0倍以上であり、前記第3のポリエチレン層の押込み硬度が、前記第2のポリエチレン層の押込み硬度の2.0倍以上である、
積層体。
【請求項7】
前記第2aのポリエチレン層の押込み硬度が、前記第2のポリエチレン層の押込み硬度の1.5倍以上であり、前記第2bのポリエチレン層の押込み硬度が、前記第2のポリエチレン層の押込み硬度の1.5倍以上である、
請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記ポリエチレン多層基材上に印刷層をさらに備える、請求項6又は7に記載の積層体。
【請求項9】
前記ポリエチレン多層基材の表面、又は前記ヒートシール層の表面に形成されたバリア層をさらに備える、請求項6~8のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
前記ポリエチレン多層基材と前記ヒートシール層との間に、接着層をさらに備える、請求項6~9のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエチレン多層基材、請求項5に記載の印刷基材、又は請求項6~10のいずれか一項に記載の積層体を備える、包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリエチレン多層基材、印刷基材、積層体及び包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材料などは、樹脂材料から構成される樹脂フィルムを用いて製造されている。包装材料は、例えば、基材と、ヒートシール層とを備える。例えば、ポリエチレンから構成される樹脂フィルムは、柔軟性及び透明性を有すると共に、ヒートシール性に優れることから、包装材料におけるヒートシール層として広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、ポリエチレンは、他の熱可塑性樹脂と比較して、比較的低温で軟化する樹脂であるため、包装材料の基材として使用するとヒートシート加工する際に変形したり場合によっては溶融したりすることがある。また、ポリエチレンフィルムは、他の熱可塑性樹脂フィルムと比較して、強度が不充分であることがある。このため、包装材料の基材としては、ポリエステルフィルム及びナイロンフィルム等の強度及び耐熱性に優れる樹脂フィルムを使用するのが一般的である。例えば、ポリエステルフィルム及びナイロンフィルム等の基材とポリエチレンフィルムとを積層し、ポリエチレンフィルム側が包装袋の内側になるようにしてヒートシールすることにより製袋することが行われている(例えば、特許文献2の背景技術参照)。
【0004】
ところで、近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、包装材料をリサイクルして使用することが試みられている。しかしながら、上記のような異種の樹脂フィルムを貼り合わせて得られた積層体では、樹脂の種類ごとに分離することが難しく、リサイクルに適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-202519号公報
【特許文献2】特開2017-031233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本開示者らは、ポリエチレンから構成される樹脂フィルムの強度及び耐熱性を延伸処理により向上できることを見出し、基材として、ポリエチレンを含有する層を複数備え、延伸処理されてなるポリエチレン多層基材を用いることを検討した。
【0007】
包装材料などに使用される基材には、例えば、包装材料のヒートシール時に熱が付加される。しかしながら、本開示者らは、上記ポリエチレン多層基材を備える積層体は、熱付加による熱収縮が大きい場合があり、耐熱性が充分ではないことを見出した。
【0008】
本開示の一つの課題は、耐熱性に優れるポリエチレン多層基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のポリエチレン多層基材は、第1のポリエチレン層と、第2のポリエチレン層と、第3のポリエチレン層とを厚さ方向にこの順に備え、延伸処理されてなる。上記多層基材は、一実施形態において、第1のポリエチレン層の押込み弾性率が、第2のポリエチレン層の押込み弾性率の3.0倍以上であり、第3のポリエチレン層の押込み弾性率が、第2のポリエチレン層の押込み弾性率の3.0倍以上である。上記多層基材は、一実施形態において、第1のポリエチレン層の押込み硬度が、第2のポリエチレン層の押込み硬度の2.0倍以上であり、第3のポリエチレン層の押込み硬度が、第2のポリエチレン層の押込み硬度の2.0倍以上である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、耐熱性に優れるポリエチレン多層基材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示のポリエチレン多層基材の一実施形態を示す断面概略図である。
【
図2】本開示の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
【
図3】本開示の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
【
図4】本開示の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
【
図5】本開示の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
【
図6】積層体の熱収縮率の測定方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[用語]
以下、本開示において使用する用語を説明する。
「ポリエチレン」とは、エチレン由来の構成単位の含有割合が、全繰返し構成単位中、50モル%以上の重合体をいう。該重合体において、エチレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。上記含有割合は、核磁気共鳴法(NMR法)により測定する。
【0013】
「ポリエチレン層」とは、ポリエチレンを主成分として含有する層であり、すなわちポリエチレンを50質量%超の範囲で含有する層である。ポリエチレン層におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上である。
【0014】
高密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.945g/cm3を超える。高密度ポリエチレンの密度の上限は、例えば0.965g/cm3である。中密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.925g/cm3を超えて0.945g/cm3以下である。低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.900g/cm3を超えて0.925g/cm3以下である。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.900g/cm3を超えて0.925g/cm3以下である。超低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.900g/cm3以下である。超低密度ポリエチレンの密度の下限は、例えば0.860g/cm3である。ポリエチレンの密度は、JIS K7112、特にD法(密度勾配管法、23℃)、に準拠して測定する。
【0015】
本開示において、ポリエチレンとしては、例えば、エチレンの単独重合体、及びエチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。他のモノマーとしては、例えば、炭素数3以上20以下のα-オレフィン、酢酸ビニル、及び(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。炭素数3以上20以下のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン及び6-メチル-1-ヘプテンが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルが挙げられる。
【0016】
上記共重合体としては、例えば、エチレンと、炭素数3以上20以下のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと、酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種との共重合体、並びに、エチレンと、炭素数3以上20以下のα-オレフィンと、酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種との共重合体が挙げられる。
【0017】
密度又は分岐が異なるポリエチレンは、重合方法を適宜選択することによって得ることができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒、又はメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合及び高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段又は2段以上の多段で重合を行うことが好ましい。
【0018】
シングルサイト触媒とは、均一な活性種を形成しうる触媒であり、通常、メタロセン系遷移金属化合物又は非メタロセン系遷移金属化合物と活性化用助触媒とを接触させることにより、調製される。シングルサイト触媒は、マルチサイト触媒に比べて、活性点の構造が均一であるため、高分子量かつ均一度の高い構造を有する重合体を得ることができるため好ましい。
【0019】
シングルサイト触媒としては、メタロセン触媒が好ましい。メタロセン触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒と、必要により有機金属化合物と、必要により担体とを含む触媒である。
【0020】
遷移金属化合物における遷移金属としては、例えば、ジルコニウム、チタン及びハフニウムが挙げられ、ジルコニウム及びハフニウムが好ましい。
【0021】
遷移金属化合物におけるシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、又は置換シクロペンタジエニル基である。置換シクロペンタジエニル基は、例えば、炭素数1以上30以下の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、及びハロシリル基から選択される少なくとも1種の置換基を有する。置換シクロペンタジエニル基は、1つ又は2つ以上の置換基を有し、置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、又はこれらの水添体を形成していてもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環が、さらに置換基を有していてもよい。
【0022】
遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を通常は2つ有する。各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は、架橋基により互いに結合していることが好ましい。架橋基としては、例えば、炭素数1以上4以下のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基などの置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基などの置換ゲルミレン基が挙げられる。これらの中でも、置換シリレン基が好ましい。
【0023】
助触媒とは、周期表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効に機能させえる成分、又は触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させえる成分をいう。助触媒としては、例えば、ベンゼン可溶のアルミノキサン又はベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有又は非含有のカチオンと非配位性アニオンとからなるイオン性化合物、酸化ランタンなどのランタノイド塩、酸化スズ、及びフルオロ基を含有するフェノキシ化合物が挙げられる。
【0024】
必要により使用される有機金属化合物としては、例えば、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、及び有機亜鉛化合物が挙げられる。これらの中でも、有機アルミニウム化合物が好ましい。
【0025】
遷移金属化合物は、無機又は有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。担体としては、無機又は有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイトなどのイオン交換性層状珪酸塩、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
ポリエチレンを得るための原料として、化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンを用いてもよい。バイオマス由来のポリエチレンは、カーボニュートラルな材料であるため、ポリエチレン多層基材を用いて製造される包装材料の環境負荷を低減できる。バイオマス由来のポリエチレンは、例えば、特開2013-177531号公報に記載されている方法により製造できる。市販されているバイオマス由来のポリエチレン(例えば、ブラスケム社から市販されているグリーンPE)を使用してもよい。
【0027】
メカニカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンを使用してもよい。メカニカルリサイクルとは、一般的に、回収されたポリエチレンフィルムなどを粉砕し、アルカリ洗浄してフィルム表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してフィルム内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、ポリエチレンからなるフィルムの汚れを取り除き、再びポリエチレンに戻す方法である。
【0028】
以下の説明において、登場する各成分(例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、添加剤、着色剤、樹脂材料、接着剤)は、それぞれ1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0029】
[ポリエチレン多層基材]
本開示のポリエチレン多層基材は、
第1のポリエチレン層と、
第2のポリエチレン層と、
第3のポリエチレン層と
を厚さ方向にこの順に備え、延伸処理されてなる。
以下、上記ポリエチレン多層基材を単に「多層基材」ともいう。
【0030】
本開示の多層基材は、第1のポリエチレン層及び第2のポリエチレン層の間に第2aのポリエチレン層と、第2のポリエチレン層及び第3のポリエチレン層の間に第2bのポリエチレン層と、をさらに備えてもよい。この場合の多層基材は、第1のポリエチレン層と、第2aのポリエチレン層と、第2のポリエチレン層と、第2bのポリエチレン層と、第3のポリエチレン層とを、厚さ方向にこの順に備える。第2aのポリエチレン層、第2のポリエチレン層及び第2bのポリエチレン層は、多層基材における中間層(多層中間層)を構成する。
【0031】
一実施形態において、多層基材の一方側の表面層が第1のポリエチレン層であり、多層基材の他方側の表面層が第3のポリエチレン層である。多層基材は、第1のポリエチレン層、第2aのポリエチレン層、第2のポリエチレン層、第2bのポリエチレン層及び第3のポリエチレン層における少なくとも一つの層間に他の層を備えてもよい。一実施形態において、多層基材は、第1のポリエチレン層、第2aのポリエチレン層、第2のポリエチレン層、第2bのポリエチレン層及び第3のポリエチレン層のみからなる。
【0032】
以下、ポリエチレン層を「PE層」ともいう。
【0033】
本開示の多層基材に含まれるポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン)、直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンが挙げられる。
【0034】
本開示の多層基材に含まれるポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、製膜性、及び多層基材の加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上50g/10分以下、より好ましくは0.2g/10分以上30g/10分以下、さらに好ましくは0.2g/10分以上15g/10分以下、よりさらに好ましくは0.2g/10分以上10g/10分以下、特に好ましくは0.2g/10分以上5g/10分以下である。本開示において、MFRは、ASTM D1238に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
【0035】
図1に、本開示の多層基材の一実施形態を示す。
図1の多層基材10は、
第1のPE層12と、
第2aのPE層18と、
第2のPE層20と、
第2bのPE層22と、
第3のPE層14と
を、厚さ方向にこの順に備える。
図1の多層基材10において、第2aのPE層18及び第2bのPE層22を省略してもよい。
【0036】
本開示において、第1のPE層、第2aのPE層、第2のPE層、第2bのPE層及び第3のPE層の押込み弾性率を、それぞれ、押込み弾性率1、押込み弾性率2a、押込み弾性率2、押込み弾性率2b及び押込み弾性率3とも記載する。第1のPE層の押込み弾性率と、第2のPE層の押込み弾性率との比を、比(弾性率1/弾性率2)とも記載する。その他の場合も同様である。
【0037】
本開示において、第1のPE層、第2aのPE層、第2のPE層、第2bのPE層及び第3のPE層の押込み硬度を、それぞれ、押込み硬度1、押込み硬度2a、押込み硬度2、押込み硬度2b及び押込み硬度3とも記載する。第1のPE層の押込み硬度と、第2のPE層の押込み硬度との比を、比(硬度1/硬度2)とも記載する。その他の場合も同様である。
【0038】
本開示の第1の態様の多層基材は、第1のPE層の押込み弾性率が、第2のPE層の押込み弾性率の3.0倍以上であり、第3のPE層の押込み弾性率が、第2のPE層の押込み弾性率の3.0倍以上であることを特徴とする。これにより、多層基材の耐熱性を向上でき、例えば、ヒートシール時などの熱付加時における多層基材の熱収縮を抑制できる。
【0039】
第1の態様の多層基材における比(弾性率1/弾性率2)及び比(弾性率3/弾性率2)は、それぞれ独立に、3.0以上であり、好ましくは4.0以上、より好ましくは5.0以上、さらに好ましくは6.0以上、よりさらに好ましくは7.0以上であり;好ましくは22.0以下、より好ましくは20.0以下、さらに好ましくは18.0以下、よりさらに好ましくは16.0以下、特に好ましくは14.0以下、13.0以下又は12.0以下である。比(弾性率1/弾性率2)の範囲、及び比(弾性率3/弾性率2)の範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば3.0以上22.0以下でもよい。
【0040】
本開示の第1の態様の多層基材において、第2aのPE層の押込み弾性率は、第2のPE層の押込み弾性率の2.0倍以上であることが好ましく、第2bのPE層の押込み弾性率は、第2のPE層の押込み弾性率の2.0倍以上であることが好ましい。これにより、例えば、ヒートシール時における多層基材の熱収縮をさらに抑制できる傾向にある。
【0041】
第1の態様の多層基材における比(弾性率2a/弾性率2)及び比(弾性率2b/弾性率2)は、それぞれ独立に、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上であり;好ましくは18.0以下、より好ましくは16.0以下、さらに好ましくは14.0以下、よりさらに好ましくは13.0以下、特に好ましくは12.0以下、11.0以下又は10.0以下である。比(弾性率2a/弾性率2)の範囲、及び比(弾性率2b/弾性率2)の範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば2.0以上18.0以下でもよい。
【0042】
第1の態様の多層基材における押込み弾性率1及び押込み弾性率3は、それぞれ独立に、好ましくは1.1GPa以上、より好ましくは1.15GPa以上、さらに好ましくは1.2GPa以上、よりさらに好ましくは1.4GPa以上であり;好ましくは6.0GPa以下、より好ましくは5.5GPa以下、さらに好ましくは5.0GPa以下、よりさらに好ましくは4.5GPa以下、特に好ましくは4.0GPa以下、3.5GPa以下又は3.0GPa以下である。これにより、例えば、ヒートシール時における多層基材の熱収縮をさらに抑制できる傾向にある。押込み弾性率1及び押込み弾性率3の範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば1.1GPa以上6.0GPa以下でもよい。
【0043】
第1の態様の多層基材における押込み弾性率2は、好ましくは0.03GPa以上、より好ましくは0.05GPa以上、さらに好ましくは0.1GPa以上、よりさらに好ましくは0.13GPa以上、特に好ましくは0.15GPa以上であり;好ましくは0.7GPa以下、より好ましく0.6GPa以下、さらに好ましくは0.5GPa以下、よりさらに好ましくは0.4GPa以下、特に好ましくは0.3GPa以下である。このような設計であると、例えば、延伸前積層物の延伸性がより優れる傾向にある。押込み弾性率2の範囲は、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば0.03GPa以上0.7GPa以下でもよい。
【0044】
第1の態様の多層基材における押込み弾性率2a及び押込み弾性率2bは、それぞれ独立に、好ましくは0.3GPa以上、より好ましくは0.4GPa以上、さらに好ましくは0.5GPa以上、よりさらに好ましくは0.6GPa以上であり;好ましくは4.0GPa以下、より好ましくは3.5GPa以下、さらに好ましくは3.0GPa以下、よりさらに好ましくは2.5GPa以下、特に好ましくは2.0GPa以下である。これにより、例えば、ヒートシール時における多層基材の熱収縮をさらに抑制できる傾向にある。押込み弾性率2a及び押込み弾性率2bの範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば0.3GPa以上4.0GPa以下でもよい。
【0045】
第1の態様の多層基材において、各PE層の押込み弾性率の大きさは、押込み弾性率1>押込み弾性率2a>押込み弾性率2の関係を満たすことが好ましく、押込み弾性率3>押込み弾性率2b>押込み弾性率2の関係を満たすことが好ましい。これにより、例えば、多層基材の耐熱性と延伸適性(加工性、生産性)とのバランスをさらに向上できる傾向にある。
【0046】
第1の態様の多層基材において、比(弾性率1/弾性率3)は、好ましくは0.6以上1.7以下、より好ましくは0.7以上1.4以下、さらに好ましくは0.8以上1.2以下、よりさらに好ましくは0.9以上1.1以下である。これにより、例えば、多層基材の層構成の対称性を向上でき、したがって、多層基材のカールを抑制でき、印刷及びラミネート等の加工性を向上できる傾向にある。
【0047】
第1の態様の多層基材において、比(弾性率2a/弾性率2b)は、好ましくは0.6以上1.7以下、より好ましくは0.7以上1.4以下、さらに好ましくは0.8以上1.2以下、よりさらに好ましくは0.9以上1.1以下である。これにより、例えば、多層基材の層構成の対称性を向上でき、したがって、多層基材のカールを抑制でき、印刷及びラミネート等の加工性を向上できる傾向にある。
【0048】
本開示の第2の態様の多層基材は、第1のPE層の押込み硬度が、第2のPE層の押込み硬度の2.0倍以上であり、第3のPE層の押込み硬度が、第2のPE層の押込み硬度の2.0倍以上であることを特徴とする。これにより、多層基材の耐熱性を向上でき、例えば、ヒートシール時などの熱付加時における多層基材の熱収縮を抑制できる。
【0049】
第2の態様の多層基材における比(硬度1/硬度2)及び比(硬度3/硬度2)は、それぞれ独立に、2.0以上であり、好ましくは2.2以上、より好ましくは2.4以上、さらに好ましくは2.6以上であり;好ましくは8.5以下、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.5以下、よりさらに好ましくは7.0以下、特に好ましくは6.5以下、6.0以下又は5.5以下である。比(硬度1/硬度2)の範囲、及び比(硬度3/硬度2)の範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば2.0以上8.5以下でもよい。第1の態様の多層基材が、比(硬度1/硬度2)及び比(硬度3/硬度2)に係る上記要件をさらに満たしてもよい。
【0050】
本開示の第2の態様の多層基材において、第2aのPE層の押込み硬度は、第2のPE層の押込み硬度の1.4倍以上であることが好ましく、第2bのPE層の押込み硬度は、第2のPE層の押込み硬度の1.4倍以上であることが好ましい。これにより、例えば、ヒートシール時における多層基材の熱収縮をさらに抑制できる傾向にある。
【0051】
第2の態様の多層基材における比(硬度2a/硬度2)及び比(硬度2b/硬度2)は、それぞれ独立に、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.7以上であり;好ましくは8.0以下、より好ましくは7.5以下、さらに好ましくは7.0以下、よりさらに好ましくは6.5以下、特に好ましくは6.0以下、5.5以下又は5.0以下である。これにより、例えば、ヒートシール時における多層基材の熱収縮をさらに抑制できる傾向にある。比(硬度2a/硬度2)の範囲、及び比(硬度2b/硬度2)の範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば1.4以上8.0以下でもよい。第1の態様の多層基材が、比(硬度2a/硬度2)及び比(硬度2b/硬度2)に係る上記要件をさらに満たしてもよい。
【0052】
第2の態様の多層基材における押込み硬度1及び押込み硬度3は、それぞれ独立に、好ましくは45MPa以上、より好ましくは47MPa以上、さらに好ましくは49MPa以上、よりさらに好ましくは54MPa以上であり;好ましくは150MPa以下、より好ましくは130MPa以下、さらに好ましくは110MPa以下、よりさらに好ましくは100MPa以下、特に好ましくは90MPa以下である。これにより、例えば、ヒートシール時における多層基材の熱収縮をさらに抑制できる傾向にある。押込み硬度1及び押込み硬度3の範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば45MPa以上150MPa以下でもよい。第1の態様の多層基材が、押込み硬度1及び押込み硬度3に係る上記要件をさらに満たしてもよい。
【0053】
第2の態様の多層基材における押込み硬度2は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、さらに好ましくは7MPa以上、よりさらに好ましくは10MPa以上、特に好ましくは15MPa以上であり;好ましくは40MPa以下、より好ましく35MPa以下、さらに好ましくは30MPa以下、よりさらに好ましくは26MPa以下、特に好ましくは23MPa以下である。このような設計であると、例えば、延伸前積層物の延伸性がより優れる傾向にある。押込み硬度2の範囲は、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば1MPa以上40MPa以下でもよい。第1の態様の多層基材が、押込み硬度2に係る上記要件をさらに満たしてもよい。
【0054】
第2の態様の多層基材における押込み硬度2a及び押込み硬度2bは、それぞれ独立に、好ましくは20MPa以上、より好ましくは25MPa以上、さらに好ましくは30MPa以上、よりさらに好ましくは32MPa以上、特に好ましくは34MPa以上であり;好ましくは140MPa以下、より好ましくは120MPa以下、さらに好ましくは100MPa以下、よりさらに好ましくは90MPa以下、特に好ましくは85MPa以下又は80MPa以下である。これにより、例えば、ヒートシール時における多層基材の熱収縮をさらに抑制できる傾向にある。押込み硬度2a及び押込み硬度2bの範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば20MPa以上140MPa以下でもよい。第1の態様の多層基材が、押込み硬度2a及び押込み硬度2bに係る上記要件をさらに満たしてもよい。
【0055】
第2の態様の多層基材において、各PE層の押込み硬度の大きさは、押込み硬度1>押込み硬度2a>押込み硬度2の関係を満たすことが好ましく、押込み硬度3>押込み硬度2b>押込み硬度2の関係を満たすことが好ましい。これにより、例えば、多層基材の耐熱性と延伸適性(加工性、生産性)とのバランスをさらに向上できる傾向にある。
【0056】
第2の態様の多層基材において、比(硬度1/硬度3)は、好ましくは0.6以上1.7以下、より好ましくは0.7以上1.4以下、さらに好ましくは0.8以上1.2以下、よりさらに好ましくは0.9以上1.1以下である。これにより、例えば、多層基材の層構成の対称性を向上でき、したがって、多層基材のカールを抑制でき、印刷及びラミネート等の加工性を向上できる傾向にある。
【0057】
第2の態様の多層基材において、比(硬度2a/硬度2b)は、好ましくは0.6以上1.7以下、より好ましくは0.7以上1.4以下、さらに好ましくは0.8以上1.2以下、よりさらに好ましくは0.9以上1.1以下である。これにより、例えば、多層基材の層構成の対称性を向上でき、したがって、多層基材のカールを抑制でき、印刷及びラミネート等の加工性を向上できる傾向にある。
【0058】
本開示において、各PE層の押込み弾性率及び押込み硬度は、例えば、各PE層に含まれるポリエチレンを適切に選択することにより調整できる。PE層において、例えば高密度ポリエチレンのように密度の高いポリエチレンの含有割合を高くすることにより、押込み弾性率及び押込み硬度は高くなる傾向にある。PE層において、例えば低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンのように密度の低いポリエチレンの含有割合を高くすることにより、押込み弾性率及び押込み硬度は低くなる傾向にある。各PE層の押込み弾性率及び押込み硬度は、また、延伸倍率により調整できる。例えば、延伸倍率を高くすると、各PE層の押込み弾性率及び押込み硬度は高くなる傾向にあり、例えば、延伸倍率を低くすると、各PE層の押込み弾性率及び押込み硬度は低くなる傾向にある。
【0059】
本開示において、各PE層の押込み弾性率及び押込み硬度は、ナノインデンテーション法により測定される。具体的には、ポリエチレン多層基材及び後述する積層体について、ナノインデンターを用いて、ポリエチレン多層基材の各PE層の後述するTD方向に平行な断面を測定面として、押込み弾性率及び押込み硬度を測定する。測定条件は、以下の通りである。ナノインデンターの圧子としては、Berkovich圧子(三角錐圧子)を用いる。10秒間かけて、ポリエチレン多層基材及び積層体のTD方向に平行な断面から押込み深さ200nmまで圧子をPE層に押し込み、その状態で5秒間保持し、続いて10秒間かけて除荷し、最大荷重Pmax、最大深さ時の接触投影面積A及び荷重-変位曲線を得る。得られた荷重-変位曲線から、弾性率及び硬度の値を算出する。測定は室温(25℃)環境下にて実施する。測定は同一断面において5箇所で実施し、弾性率の平均値を押込み弾性率とし、硬度の平均値を押込み硬度とする。測定条件の詳細は、実施例欄に記載する。
【0060】
例えば、第1のPE層は、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有してもよく、第3のPE層は、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有してもよい。中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンの量比を調整することにより、例えば、押込み弾性率及び押込み硬度の大きさを調整できる。これにより、多層基材のインキ密着性及び耐熱性をより向上できる。
【0061】
第1のPE層及び第3のPE層における、中密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの質量比(中密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン)は、それぞれ独立に、好ましくは1.1以上5以下、より好ましくは1.5以上3以下である。これにより、インキ密着性及び耐熱性のバランスをより向上できる。
【0062】
第1のPE層及び第3のPE層における、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンの合計含有割合は、それぞれ独立に、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。これにより、多層基材のインキ密着性及び耐熱性をより向上できる。
【0063】
例えば、第2のPE層は、直鎖状低密度ポリエチレンを含有してもよい。このような構成により、例えば、押込み弾性率及び押込み硬度を低い範囲に調整できる傾向にある。これにより、多層基材の前駆体である積層物の延伸性を向上できる。
【0064】
第2のPE層における直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上である。これにより、耐熱性、剛性及び延伸性のバランスをより向上できる。
【0065】
第2aのPE層及び第2bのPE層は、一実施形態において、それぞれ、高密度ポリエチレンを含有してもよい。このような構成により、例えば、押込み弾性率及び押込み硬度を高い範囲に調整できる傾向にある。これらの層は、多層基材の耐熱性の向上に寄与する。すなわち、第1のPE層及び第3のPE層に加えて、第2aのPE層及び第2bのPE層に高密度ポリエチレンを含有させることにより、多層基材の耐熱性を更に向上できる。
【0066】
第2aのPE層及び第2bのPE層は、一実施形態において、それぞれ、低密度ポリエチレンをさらに含有してもよい。このような構成により、例えば、押込み弾性率及び押込み硬度を調整してもよい。これにより、多層基材の耐熱性、剛性及び加工性のバランスをより向上できる。
【0067】
第2aのPE層及び第2bのPE層における、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの質量比(高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)は、それぞれ独立に、好ましくは1以上4以下、より好ましくは1.5以上3以下である。これにより、多層基材の耐熱性、剛性及び加工性のバランスをより向上できる。
【0068】
第2aのPE層及び第2bのPE層における、高密度ポリエチレンの含有割合は、それぞれ独立に、好ましくは50質量%超、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。これにより、多層基材の耐熱性をより向上できる。
【0069】
第2aのPE層及び第2bのPE層における、高密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンの合計含有割合は、それぞれ独立に、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。これにより、多層基材の耐熱性、剛性及び加工性のバランスをより向上できる。
【0070】
他の実施形態において、第2aのPE層は、中密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとを含有してもよく、第2bのPE層は、中密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとを含有してもよい。中密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンの量比を調整することにより、例えば、押込み弾性率及び押込み硬度の大きさを調整できる。これらの層は、多層基材の前駆体である積層物の延伸性の向上に寄与する。
【0071】
第2aのPE層及び第2bのPE層における、中密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの質量比(中密度ポリエチレン/直鎖状低密度ポリエチレン)は、それぞれ独立に、好ましくは0.25以上4以下、より好ましくは0.4以上2.4以下である。これにより、耐熱性、剛性及び延伸性のバランスをより向上できる。
【0072】
第2aのPE層及び第2bのPE層における、中密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンの合計含有割合は、それぞれ独立に、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。これにより、前駆体である積層物の延伸性をより向上できる。
【0073】
第1のPE層及び第3のPE層のそれぞれの厚さは、それぞれ独立に、好ましくは0.5μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上8μm以下、さらに好ましくは1μm以上5μm以下である。これにより、多層基材のインキ密着性及び耐熱性をより向上できる。
【0074】
第1のPE層及び第3のPE層のそれぞれの厚さは、第2aのPE層、第2のPE層及び第2bのPE層(以下、第2a、第2及び第2bの層をまとめて「多層中間層」ともいう)の合計厚さよりも小さいことが好ましい。第1のPE層及び第3のPE層のそれぞれの厚さと、多層中間層の合計厚さとの比(第1のPE層又は第3のPE層/多層中間層)は、好ましくは0.05以上0.8以下、より好ましくは0.1以上0.7以下、さらに好ましくは0.1以上0.4以下である。これにより、多層基材の剛性、強度及び耐熱性をより向上できる。
【0075】
第2のPE層の厚さは、好ましくは1μm以上50μm以下、より好ましくは2μm以上40μm以下、さらに好ましくは5μm以上30μm以下である。これにより、耐熱性、剛性及び延伸性のバランスをより向上できる。
【0076】
第2aのPE層及び第2bのPE層のそれぞれの厚さは、それぞれ独立に、好ましくは0.5μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上10μm以下、さらに好ましくは1μm以上8μm以下である。これにより、多層基材の耐熱性、又は前駆体である積層物の延伸性をより向上できる。
【0077】
第2aのPE層及び第2bのPE層の合計厚さと、第2のPE層の厚さとの比(第2aのPE層及び第2bのPE層の合計厚さ/第2のPE層の厚さ)は、好ましくは0.1以上10以下、より好ましくは0.2以上5以下、さらに好ましくは0.5以上2以下である。これにより、多層基材の剛性、強度及び耐熱性をより向上できる。
以上の各層の厚さは、いずれも延伸処理後の厚さである。
【0078】
多層基材を構成する各層は、それぞれ独立に、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料及び改質用樹脂が挙げられる。
【0079】
本開示の多層基材における第1のPE層、第2のPE層、及び第3のPE層から選ばれる少なくとも1つの層、具体的には、第1のPE層、第2aのPE層、第2のPE層、第2bのPE層、及び第3のPE層から選ばれる少なくとも1つの層は、スリップ剤を含有してもよい。これにより、例えば、多層基材の加工性を向上できる。例えば、第2のPE層がスリップ剤を含有してもよく、上記各層の全てがスリップ剤を含有してもよい。
【0080】
スリップ剤としては、例えば、アミド系滑剤、グリセリン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル、炭化水素系ワックス、高級脂肪酸系ワックス、金属石鹸、親水性シリコーン、シリコーン変性(メタ)アクリル樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性ポリエーテル、シリコーン変性ポリエステル、ブロック型シリコーン(メタ)アクリル共重合体、ポリグリセロール変性シリコーン及びパラフィンが挙げられる。
【0081】
滑剤の中でも、アミド系滑剤が好ましい。アミド系滑剤としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド及び芳香族ビスアミドが挙げられる。
【0082】
飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド及びヒドロキシステアリン酸アミドが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミドが挙げられる。置換アミドとしては、例えば、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド及びN-ステアリルエルカ酸アミドが挙げられる。メチロールアミドとしては、例えば、メチロールステアリン酸アミドが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドとしては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド及びN,N’-ジステアリルセバシン酸アミドが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドとしては、例えば、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド及びN,N’-ジオレイルセバシン酸アミドが挙げられる。脂肪酸エステルアミドとしては、例えば、ステアロアミドエチルステアレートが挙げられる。芳香族系ビスアミドとしては、例えば、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド及びN,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドが挙げられる。
スリップ剤の中でも、エルカ酸アミドが好ましい。
【0083】
各層を形成する樹脂組成物中でのスリップ剤の分散性を高くするために、スリップ剤とポリエチレンとを含有するマスターバッチを用いてもよい。マスターバッチにおけるスリップ剤の含有割合は、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは2質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上10質量%以下である。ポリエチレンとしては、上述した具体例が挙げられる。ポリエチレンが満たす好ましい物性(密度及びMFR等)も上述したとおりである。
【0084】
多層基材において、スリップ剤を含有する層におけるスリップ剤の含有割合は、例えば0.01質量%以上3質量%以下でもよく、0.03質量%以上1質量%以下でもよい。これにより、多層基材の加工性をより向上できる。
【0085】
一つの層中に、密度が異なるポリエチレンが複数種(n種;nは2以上の整数)含まれる場合は、上記JIS K7112に準拠して当該層を構成するポリエチレンの密度を測定してもよく、下記式(1)に従い計算された平均密度Davを、当該層を構成するポリエチレンの密度としてもよい。
【0086】
Dav = ΣWi×Di …(1)
式(1)中、Σは、iについて1~nまでWi×Diの和を取ることを意味し、nは2以上の整数であり、Wiはi番目のポリエチレンの質量分率を示し、Diはi番目のポリエチレンの密度(g/cm3)を示す。
【0087】
本開示の多層基材は、延伸処理されており、また特有の物性を有することから、従来のポリエチレンフィルムに比べて、剛性、強度及び耐熱性に優れ、またインキ密着性に優れる。したがって、本開示のポリエチレン多層基材は例えば包装材料の基材として使用でき、該多層基材の表面に、鮮明な画像を形成できる。
【0088】
多層基材のヘイズ値は、好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。ヘイズ値は小さいほど好ましいが、一実施形態において、その下限値は0.1%又は1%であってもよい。多層基材のヘイズ値は、JIS K7136に準拠して測定する。
【0089】
多層基材におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。これにより、多層基材のリサイクル性を向上できる。
【0090】
以下、ポリエチレン多層基材の具体的な実施形態について説明する。
第1の実施形態のポリエチレン多層基材は、第1のPE層と、第2aのPE層と、第2のPE層と、第2bのPE層と、第3のPE層とを、厚さ方向にこの順に備え、延伸処理されてなり、
第1のPE層が、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有し、
第2aのPE層が、高密度ポリエチレン及び任意に低密度ポリエチレンを含有し、
第2のPE層が、直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、
第2bのPE層が、高密度ポリエチレン及び任意に低密度ポリエチレンを含有し、
第3のPE層が、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する。
【0091】
第2の実施形態のポリエチレン多層基材は、第1のPE層と、第2aのPE層と、第2のPE層と、第2bのPE層と、第3のPE層とを、厚さ方向にこの順に備え、延伸処理されてなり、
第1のPE層が、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有し、
第2aのPE層が、中密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、
第2のPE層が、直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、
第2bのPE層が、中密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、
第3のPE層が、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する。
【0092】
第1のPE層に含まれる中密度ポリエチレンと、第3のPE層に含まれる中密度ポリエチレンとは、同一であっても異なってもよく、多層基材を容易に製造できるという観点から、同一であることが好ましい。
第1のPE層に含まれる高密度ポリエチレンと、第3のPE層に含まれる高密度ポリエチレンとは、同一であっても異なってもよく、多層基材を容易に製造できるという観点から、同一であることが好ましい。
【0093】
第1の実施形態において、第2aのPE層に含まれる高密度ポリエチレンと、第2bのPE層に含まれる高密度ポリエチレンとは、同一であっても異なってもよく、多層基材を容易に製造できるという観点から、同一であることが好ましい。
【0094】
第2の実施形態において、第2のPE層に含まれる直鎖状低密度ポリエチレンと、第2aのPE層及び第2bのPE層に含まれる直鎖状低密度ポリエチレンとは、同一であっても異なってもよい。
第2の実施形態において、第2aのPE層に含まれる中密度ポリエチレンと、第2bのPE層に含まれる中密度ポリエチレンとは、同一であっても異なってもよく、多層基材を容易に製造できるという観点から、同一であることが好ましい。
第2の実施形態において、第2aのPE層に含まれる直鎖状低密度ポリエチレンと、第2bのPE層に含まれる直鎖状低密度ポリエチレンとは、同一であっても異なってもよく、多層基材を容易に製造できるという観点から、同一であることが好ましい。
第2の実施形態において、第2aのPE層及び第2bのPE層に含まれる中密度ポリエチレンと、第1のPE層及び第3のPE層に含まれる中密度ポリエチレンとは、同一であっても異なってもよい。
【0095】
<ポリエチレン多層基材の製造方法>
本開示のポリエチレン多層基材は、例えば、インフレーション法又はTダイ法により、複数のポリエチレン材料を製膜して積層物を形成し、得られた積層物を延伸することにより製造できる。延伸処理により、多層基材の透明性、剛性、強度及び耐熱性を向上でき、該多層基材を例えば包装材料の基材として好適に使用できる。
【0096】
第1の実施形態のポリエチレン多層基材は、例えば、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する層と、高密度ポリエチレンを含有する層と、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する層と、高密度ポリエチレンを含有する層と、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する層とを、厚さ方向にこの順に備える積層物(前駆体)を、延伸処理して得られる。
【0097】
具体的には、外側から、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する層と、高密度ポリエチレンを含有する層と、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する層と、高密度ポリエチレンを含有する層と、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する層とを、チューブ状に共押出して製膜し、積層物を製造できる。あるいは、外側から、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する層と、高密度ポリエチレンを含有する層と、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する層とをチューブ状に共押出し、次いで、対向する直鎖状低密度ポリエチレンを含有する層同士をゴムロールなどにより圧着することによって、積層物を製造できる。このような方法により積層物を製造することにより、欠陥品数を顕著に低減でき、生産効率を向上できる。
【0098】
第2の実施形態のポリエチレン多層基材やその他のポリエチレン多層基材についても、例えば、上述した方法により製造できる。
【0099】
Tダイ法により積層物を製造する場合、各層を構成するポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、製膜性、及び多層基材の加工適性という観点から、好ましくは3g/10分以上20g/10分以下である。
【0100】
インフレーション法により積層物を製造する場合、各層を構成するポリエチレンのMFRは、製膜性、及び多層基材の加工適性という観点から、好ましくは0.2g/10分以上5g/10分以下である。
【0101】
本開示の多層基材は、例えば、上述した積層物を延伸して得られる。なお、インフレーション製膜機において、積層物の延伸も合わせて行うことができる。これにより、多層基材を製造できることから、生産効率をより向上できる。
【0102】
本開示の多層基材は、一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであってもよい。多層基材は、一実施形態において、一軸延伸フィルムであり、より具体的には、長手方向(MD)に延伸処理された一軸延伸フィルムである。
【0103】
多層基材の長手方向(MD)の延伸倍率は、一実施形態において、2倍以上10倍以下が好ましく、3倍以上7倍以下がより好ましい。多層基材の横手方向(TD)の延伸倍率は、一実施形態において、2倍以上10倍以下が好ましく、3倍以上7倍以下がより好ましい。
【0104】
延伸倍率が2倍以上であると、例えば、多層基材の剛性、強度及び耐熱性を向上でき、多層基材へのインキ密着性を向上でき、また、多層基材の透明性を向上できる。延伸倍率が10倍以下であると、積層物を良好に延伸できる。
【0105】
積層物又は多層基材には、表面処理が施されていることが好ましい。これにより、多層基材の表面層と、多層基材に積層される層との密着性を向上できる。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス及び窒素ガスなどのガスを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理;並びに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
【0106】
積層物又は多層基材の表面には、従来公知のアンカーコート剤を用いて、アンカーコート層を形成してもよい。
【0107】
多層基材の総厚さは、好ましくは10μm以上60μm以下、より好ましくは15μm以上50μm以下である。多層基材の厚さが10μm以上であると、多層基材の剛性及び強度を向上できる。多層基材の厚さが60μm以下であると、多層基材の加工適性を向上できる。上述した効果が得られる範囲において、多層基材の厚さが小さいと、例えばコスト低減の観点から好ましい。
【0108】
[印刷基材]
本開示の印刷基材は、本開示のポリエチレン多層基材と、該多層基材上に形成された印刷層とを備える。印刷層は、例えば、多層基材における第1のPE層又は第3のPE層に形成される。多層基材はインキ密着性に優れることから、良好な画像を形成できる。多層基材は耐熱収縮性などの耐熱性に優れることから、印刷用途に好適である。
【0109】
印刷層は、例えば、画像を含む。画像としては、例えば、文字、図形、記号及びこれらの組合せが挙げられる。印刷層の形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法及びフレキソ印刷法が挙げられる。一実施形態において、環境負荷低減という観点から、フレキソ印刷法が好ましい。また、環境負荷低減という観点から、バイオマス由来のインキを用いて多層基材の表面に印刷層を形成してもよい。
【0110】
印刷層は、一実施形態において、着色剤を含有する。着色剤としては、例えば、無機顔料及び有機顔料等の顔料;酸性染料、直接染料、分散染料、油溶性染料、含金属油溶性染料及び昇華性色素等の染料が挙げられる。着色剤としては、紫外線を吸収することにより蛍光を発する紫外線発光材料、及び赤外線を吸収することにより蛍光を発する赤外線発光材料等の蛍光発光材料も挙げられる。
【0111】
印刷層は、一実施形態において、樹脂材料を含有してもよい。樹脂材料としては、例えば、セルロース樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ノルボルネン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
【0112】
[積層体]
本開示の積層体は、
ポリエチレン多層基材と、
ポリエチレンを主成分として含有するヒートシール層と
を備える積層体であって、
ポリエチレン多層基材が、
第1のPE層と、
第2のPE層と、
第3のPE層と
を厚さ方向にこの順に備え、延伸処理されてなる。
【0113】
ポリエチレン多層基材は、第1のPE層及び第2のPE層の間に第2aのPE層と、第2のPE層及び第3のPE層の間に第2bのPE層と、をさらに備えてもよい。この場合の多層基材は、第1のPE層と、第2aのPE層と、第2のPE層と、第2bのPE層と、第3のPE層とを、厚さ方向にこの順に備える。第2aのPE層、第2のPE層、及び第2bのPE層は、多層基材における中間層(多層中間層)を構成する。
【0114】
本開示の積層体を構成するポリエチレン多層基材は、一実施形態において、押込み弾性率及び押込み硬度を除いて上述した本開示のポリエチレン多層基材と同様であり、積層構成、並びに各層の組成及び厚さ等は上述したとおりであるから、本欄での詳細な説明は省略する。本開示の積層体を構成するポリエチレン多層基材における押込み弾性率及び押込み硬度については、以下に説明する。
【0115】
本開示の第1の態様の積層体は、第1のPE層の押込み弾性率が、第2のPE層の押込み弾性率の3.5倍以上であり、第3のPE層の押込み弾性率が、第2のPE層の押込み弾性率の3.5倍以上であることを特徴とする。これにより、積層体の耐熱性を向上でき、例えば、ヒートシール時などの熱付加時における積層体の熱収縮を抑制できる。
【0116】
第1の態様の積層体における比(弾性率1/弾性率2)及び比(弾性率3/弾性率2)は、それぞれ独立に、3.5以上であり、好ましくは4.0以上、より好ましくは4.5以上、さらに好ましくは5.0以上、よりさらに好ましくは5.5以上であり;好ましくは16.0以下、より好ましくは14.0以下、さらに好ましくは12.0以下、よりさらに好ましくは10.0以下、特に好ましくは9.0以下である。比(弾性率1/弾性率2)の範囲、及び比(弾性率3/弾性率2)の範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば3.5以上16.0以下でもよい。
【0117】
本開示の第1の態様の積層体において、第2aのPE層の押込み弾性率は、第2のPE層の押込み弾性率の2.0倍以上であることが好ましく、第2bのPE層の押込み弾性率は、第2のPE層の押込み弾性率の2.0倍以上であることが好ましい。これにより、例えば、ヒートシール時における積層体の熱収縮をさらに抑制できる傾向にある。
【0118】
第1の態様の積層体における比(弾性率2a/弾性率2)及び比(弾性率2b/弾性率2)は、それぞれ独立に、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上であり;好ましくは14.0以下、より好ましくは12.0以下、さらに好ましくは10.0以下、よりさらに好ましくは9.0以下、特に好ましくは8.5以下である。比(弾性率2a/弾性率2)の範囲、及び比(弾性率2b/弾性率2)の範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば2.0以上14.0以下でもよい。
【0119】
第1の態様の積層体における押込み弾性率1及び押込み弾性率3は、それぞれ独立に、好ましくは1.0GPa以上、より好ましくは1.05GPa以上、さらに好ましくは1.1GPa以上、よりさらに好ましくは1.15GPa以上、特に好ましくは1.3GPa以上であり;好ましくは4.5GPa以下、より好ましくは4.0GPa以下、さらに好ましくは3.5GPa以下、よりさらに好ましくは3.0GPa以下、特に好ましくは2.5GPa以下、2.0GPa以下又は1.8GPa以下である。これにより、例えば、ヒートシール時における積層体の熱収縮をさらに抑制できる傾向にある。押込み弾性率1及び押込み弾性率3の範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば1.0GPa以上4.5GPa以下でもよい。
【0120】
第1の態様の積層体における押込み弾性率2は、好ましくは0.03GPa以上、より好ましくは0.05GPa以上、さらに好ましくは0.1GPa以上、よりさらに好ましくは0.13GPa以上、特に好ましくは0.15GPa以上であり;好ましくは0.7GPa以下、より好ましく0.6GPa以下、さらに好ましくは0.5GPa以下、よりさらに好ましくは0.4GPa以下、特に好ましくは0.3GPa以下である。このような設計であると、例えば、延伸前積層物の延伸性がより優れる傾向にある。押込み弾性率2の範囲は、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば0.03GPa以上0.7GPa以下でもよい。
【0121】
第1の態様の積層体における押込み弾性率2a及び押込み弾性率2bは、それぞれ独立に、好ましくは0.3GPa以上、より好ましくは0.4GPa以上、さらに好ましくは0.5GPa以上、よりさらに好ましくは0.6GPa以上であり;好ましくは3.5GPa以下、より好ましくは3.0GPa以下、さらに好ましくは2.5GPa以下、よりさらに好ましくは2.0GPa以下、特に好ましくは1.5GPa以下である。これにより、例えば、ヒートシール時における積層体の熱収縮をさらに抑制できる傾向にある。押込み弾性率2a及び押込み弾性率2bの範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば0.3GPa以上3.5GPa以下でもよい。
【0122】
第1の態様の積層体において、各PE層の押込み弾性率の大きさは、押込み弾性率1>押込み弾性率2a>押込み弾性率2の関係を満たすことが好ましく、押込み弾性率3>押込み弾性率2b>押込み弾性率2の関係を満たすことが好ましい。これにより、例えば、多層基材の耐熱性と延伸適性(加工性、生産性)とのバランスをさらに向上できる傾向にある。
【0123】
第1の態様の積層体において、比(弾性率1/弾性率3)は、好ましくは0.6以上1.7以下、より好ましくは0.7以上1.4以下、さらに好ましくは0.8以上1.2以下、よりさらに好ましくは0.9以上1.1以下である。これにより、例えば、多層基材の層構成の対称性を向上でき、したがって、多層基材のカールを抑制でき、印刷及びラミネート等の加工性を向上できる傾向にある。
【0124】
第1の態様の積層体において、比(弾性率2a/弾性率2b)は、好ましくは0.6以上1.7以下、より好ましくは0.7以上1.4以下、さらに好ましくは0.8以上1.2以下、よりさらに好ましくは0.9以上1.1以下である。これにより、例えば、多層基材の層構成の対称性を向上でき、したがって、多層基材のカールを抑制でき、印刷及びラミネート等の加工性を向上できる傾向にある。
【0125】
本開示の第2の態様の積層体は、第1のPE層の押込み硬度が、第2のPE層の押込み硬度の2.0倍以上であり、第3のPE層の押込み硬度が、第2のPE層の押込み硬度の2.0倍以上であることを特徴とする。これにより、積層体の耐熱性を向上でき、例えば、ヒートシール時などの熱付加時における積層体の熱収縮を抑制できる。
【0126】
第2の態様の積層体における比(硬度1/硬度2)及び比(硬度3/硬度2)は、それぞれ独立に、2.0以上であり、好ましくは2.2以上、より好ましくは2.4以上、さらに好ましくは2.6以上、よりさらに好ましくは2.8以上であり;好ましくは6.0以下、より好ましくは5.5以下、さらに好ましくは5.0以下、よりさらに好ましくは4.5以下、特に好ましくは4.0以下又は3.5以下である。比(硬度1/硬度2)の範囲、及び比(硬度3/硬度2)の範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば2.0以上6.0以下でもよい。第1の態様の積層体が、比(硬度1/硬度2)及び比(硬度3/硬度2)に係る上記要件をさらに満たしてもよい。
【0127】
本開示の第2の態様の積層体において、第2aのPE層の押込み硬度は、第2のPE層の押込み硬度の1.5倍以上であることが好ましく、第2bのPE層の押込み硬度は、第2のPE層の押込み硬度の1.5倍以上であることが好ましい。これにより、例えば、ヒートシール時における積層体の熱収縮をさらに抑制できる傾向にある。
【0128】
第2の態様の積層体における比(硬度2a/硬度2)及び比(硬度2b/硬度2)は、それぞれ独立に、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上、さらに好ましくは1.9以上であり;好ましくは6.0以下、より好ましくは5.5以下、さらに好ましくは5.0以下、よりさらに好ましくは4.5以下、特に好ましくは4.0以下又は3.5以下である。これにより、例えば、ヒートシール時における積層体の熱収縮をさらに抑制できる傾向にある。比(硬度2a/硬度2)の範囲、及び比(硬度2b/硬度2)の範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば1.5以上6.0以下でもよい。第1の態様の積層体が、比(硬度2a/硬度2)及び比(硬度2b/硬度2)に係る上記要件をさらに満たしてもよい。
【0129】
第2の態様の積層体における押込み硬度1及び押込み硬度3は、それぞれ独立に、好ましくは45MPa以上、より好ましくは48MPa以上、さらに好ましくは50MPa以上、よりさらに好ましくは52MPa以上であり;好ましくは110MPa以下、より好ましくは90MPa以下、さらに好ましくは80MPa以下、よりさらに好ましくは75MPa以下、特に好ましくは70MPa以下である。これにより、例えば、ヒートシール時における積層体の熱収縮をさらに抑制できる傾向にある。押込み硬度1及び押込み硬度3の範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば45MPa以上110MPa以下でもよい。第1の態様の積層体が、押込み硬度1及び押込み硬度3に係る上記要件をさらに満たしてもよい。
【0130】
第2の態様の積層体における押込み硬度2は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、さらに好ましくは7MPa以上、よりさらに好ましくは10MPa以上、特に好ましくは15MPa以上であり;好ましくは40MPa以下、より好ましく35MPa以下、さらに好ましくは30MPa以下、よりさらに好ましくは26MPa以下、特に好ましくは23MPa以下である。このような設計であると、例えば、延伸前積層物の延伸性がより優れる傾向にある。押込み硬度2の範囲は、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば1MPa以上40MPa以下でもよい。第1の態様の積層体が、押込み硬度2に係る上記要件をさらに満たしてもよい。
【0131】
第2の態様の積層体における押込み硬度2a及び押込み硬度2bは、それぞれ独立に、好ましくは20MPa以上、より好ましくは30MPa以上、さらに好ましくは35MPa以上、よりさらに好ましくは37MPa以上であり;好ましくは100MPa以下、より好ましくは80MPa以下、さらに好ましくは70MPa以下、よりさらに好ましくは65MPa以下、特に好ましくは60MPa以下である。これにより、例えば、ヒートシール時における積層体の熱収縮をさらに抑制できる傾向にある。押込み硬度2a及び押込み硬度2bの範囲は、それぞれ独立に、上記の下限値及び上限値の任意の組合せでもよく、例えば20MPa以上100MPa以下でもよい。第1の態様の積層体が、押込み硬度2a及び押込み硬度2bに係る上記要件をさらに満たしてもよい。
【0132】
第2の態様の積層体において、各PE層の押込み硬度の大きさは、押込み硬度1>押込み硬度2a>押込み硬度2の関係を満たすことが好ましく、押込み硬度3>押込み硬度2b>押込み硬度2の関係を満たすことが好ましい。これにより、例えば、多層基材の耐熱性と延伸適性(加工性、生産性)とのバランスをさらに向上できる傾向にある。
【0133】
第2の態様の積層体において、比(硬度1/硬度3)は、好ましくは0.6以上1.7以下、より好ましくは0.7以上1.4以下、さらに好ましくは0.8以上1.2以下、よりさらに好ましくは0.9以上1.1以下である。これにより、例えば、多層基材の層構成の対称性を向上でき、したがって、多層基材のカールを抑制でき、印刷及びラミネート等の加工性を向上できる傾向にある。
【0134】
第2の態様の積層体において、比(硬度2a/硬度2b)は、好ましくは0.6以上1.7以下、より好ましくは0.7以上1.4以下、さらに好ましくは0.8以上1.2以下、よりさらに好ましくは0.9以上1.1以下である。これにより、例えば、多層基材の層構成の対称性を向上でき、したがって、多層基材のカールを抑制でき、印刷及びラミネート等の加工性を向上できる傾向にある。
【0135】
本開示の積層体30は、
図2に示すように、ポリエチレン多層基材10と、ヒートシール層32とを備える。多層基材10において、第2のポリエチレン層、及び必要に応じて第2a、第2bのポリエチレン層を含む中間層を、中間層16と記載した。
【0136】
一実施形態において、積層体30は、多層基材10上に図示せぬ印刷層をさらに備える。印刷層は、通常、多層基材におけるヒートシール層が設けられる表面層上、例えば上述した第1のポリエチレン層上、に形成されている。印刷層の詳細は上述したとおりであり、本欄での説明は省略する。
【0137】
一実施形態において、
図3に示すように、積層体30は、多層基材10とヒートシール層32との間に、バリア層34及び接着層36を備える。この実施形態では、バリア層34は、多層基材10の表面に形成されている。
一実施形態において、
図4に示すように、積層体30は、多層基材10とヒートシール層32との間に、接着層36及びバリア層34を備える。この実施形態では、バリア層34は、ヒートシール層32の表面に形成されている。
一実施形態において、
図5に示すように、積層体30は、多層基材10とヒートシール層32との間に、接着層36を備える。
【0138】
本開示の積層体において、ポリエチレンの含有割合は、好ましくは90質量%以上である。これにより、積層体のリサイクル性を向上できる。なお、積層体におけるポリエチレンの含有割合とは、積層体を構成する各層における樹脂材料の含有量の和に対する、ポリエチレンの含有量の割合を意味する。
【0139】
本開示の積層体は、一実施形態において、以下の熱収縮率を示す。MDとは、積層体の長手方向又は流れ方向を指し、TDとは、MDに対して垂直な方向を指す。
【0140】
積層体のMDの熱収縮率(MD)は、例えば15%以下であり、好ましくは13%以下、より好ましくは11%以下、さらに好ましくは10%以下、よりさらに好ましくは8%以下、特に好ましくは7%以下である。熱収縮率(MD)の下限値は低いほど好ましいが、例えば0.5%、1%、2%又は3%でもよい。熱収縮率(MD)がこのように小さい積層体は、例えば、印刷適性や、ヒートシールにより包装袋を作製する際の製袋適性に優れる。
【0141】
積層体のTDの熱収縮率(TD)は、例えば15%以下であり、好ましくは13%以下、より好ましくは11%以下、さらに好ましくは10%以下、よりさらに好ましくは8%以下、特に好ましくは7%以下である。熱収縮率(MD)の下限値は低いほど好ましいが、例えば0.5%、1%、2%又は3%でもよい。熱収縮率(TD)がこのように小さい積層体は、例えば、印刷適性や、ヒートシールにより包装袋を作製する際の製袋適性に優れる。
【0142】
積層体の熱収縮率(MD)と熱収縮率(TD)との比(MD/TD)は、好ましくは0.5以上2.0以下、より好ましくは0.7以上1.4以下、さらに好ましくは0.8以上1.2以下、特に好ましくは0.9以上1.1以下である。比(MD/TD)がこのような範囲にあれば、積層体は熱処理を受けてもMD及びTDに比較的均一に収縮することから、例えば、積層体の印刷層における画像の歪みを抑制できる。
【0143】
積層体の熱収縮率は、以下の様にして測定する。積層体を、10cm×10cmにカットしてサンプル片を3つずつ作製する。各サンプル片のヒートシール層側が内側になるようにMD又はTDに平行に二つ折りにし、ヒートシールテスターを用いて、温度120℃、圧力1kgf/cm
2、1秒の条件にて1.5cm×10cmの領域をヒートシールする(
図6参照)。
図6において、斜線部はヒートシール部を示す。ヒートシール後、サンプルのシール幅を測定し、MDの収縮率(
図6(a)参照)及びTDの収縮率(
図6(b)参照)を算出する。3つのサンプル片の平均値を、各熱収縮率とする。
【0144】
各熱収縮率は、以下の式により算出される。
熱収縮率(MD)(%)={(積層体のヒートシール予定部のMD方向の長さ(1.5cm)-ヒートシール後の積層体のヒートシール部のMD方向の長さ)/積層体のヒートシール予定部のMD方向の長さ(1.5cm)}×100
熱収縮率(TD)(%)={(積層体のヒートシール予定部のTD方向の長さ(1.5cm)-ヒートシール後の積層体のヒートシール部のTD方向の長さ)/積層体のヒートシール予定部のTD方向の長さ(1.5cm)}×100
【0145】
一例を挙げると、1.5cmのヒートシールバーで積層体をシールした際に、サンプルのシール幅が1.4cmになっていた場合、熱収縮率は、(1.5-1.4)/1.5×100=6.7%となる。
【0146】
<ヒートシール層>
ヒートシール層は、ポリエチレンを主成分として含有する層であり、すなわちポリエチレンを50質量%超の範囲で含有する層である。ヒートシール層におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上である。このような構成とすることにより、充分な剛性、強度及び耐熱性を有し、かつリサイクル性に優れた、包装材料用の積層体が得られる。
【0147】
本開示の積層体は、ポリエチレン多層基材と、ポリエチレンを主成分として含有するヒートシール層(以下「ヒートシール性ポリエチレン層」ともいう)とを備える。一実施形態において、多層基材の少なくとも一方の面に印刷層(画像)が形成されている。画像の経時的な劣化を防止できることから、多層基材におけるヒートシール性ポリエチレン層が設けられる側に印刷層が形成されていることが好ましい。
【0148】
一実施形態において、第1のポリエチレン層又は第3のポリエチレン層が、積層体の一方側の表面層を構成し、ヒートシール層が、積層体の他方側の表面層を構成する。
【0149】
ポリエチレン多層基材とヒートシール性ポリエチレン層とを備える上記積層体において、該積層体に含まれる樹脂層は、一実施形態においていずれもポリエチレン層であり、該積層体は、ポリエステルフィルム及びナイロンフィルム等の異種の樹脂フィルムを備えない。また、ポリエチレン多層基材が包装材料の外層フィルムとして要求される剛性、強度及び耐熱性を満たし、ヒートシール性ポリエチレン層が包装化を可能とする。このため、上記積層体は、リサイクル性が求められる包装材料を構成する材料として適している。
【0150】
一実施形態において、本開示の積層体は、必要に応じて印刷層が形成されたポリエチレン多層基材と、ヒートシール性ポリエチレン層とのみからなる。これにより、本開示の積層体は、各樹脂層が同一材料であるポリエチレンにより構成されることから、リサイクル性を特に向上できる。
【0151】
ヒートシール層は、通常、延伸されていない層である。例えば、未延伸ポリエチレンフィルムを必要に応じて接着層を介して多層基材等の上に積層するか、或いはポリエチレンを含む樹脂材料を多層基材等の上に溶融押出しすることにより、ヒートシール層を形成できる。接着層としては、例えば、後述する接着層が挙げられる。
【0152】
ヒートシール層を構成するポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンが挙げられ、ヒートシール性という観点から、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンが好ましい。環境負荷低減という観点から、バイオマス由来のポリエチレン又はリサイクルされたポリエチレンを用いてもよい。
【0153】
ヒートシール層におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。これにより、積層体のリサイクル性を向上できる。
ヒートシール層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0154】
ヒートシール層は、1層であっても、2層以上であってもよい。一実施形態において、ヒートシール層の層数は、1層以上3層以下である。
ヒートシール層の厚さは、例えば、10μm以上300μm以下である。
ヒートシール層の厚さは、ヒートシール層の強度及び積層体の加工適性という観点から、本開示の積層体により例えば製造される包装材料に充填される内容物の質量に応じ適宜変更することが好ましい。
【0155】
例えば、包装材料が小袋である場合、ヒートシール層の厚さは、好ましくは20μm以上60μm以下である。この場合、例えば1g以上200g以下の内容物が小袋内に良好に充填される。
例えば、包装材料がスタンドパウチである場合、ヒートシール層の厚さは、好ましくは50μm以上200μm以下である。この場合、例えば50g以上2000g以下の内容物がスタンドパウチ内に良好に充填される。
【0156】
<バリア層>
一実施形態において、本開示の積層体は、多層基材とヒートシール層との間に、バリア層を備える。これにより、積層体のガスバリア性、具体的には、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上できる。バリア層は、多層基材の表面に形成してもよいし、ヒートシール層の表面に形成してもよい。また、多層基材とヒートシール層との間にバリア層を接着剤等を介して設けてもよい。
【0157】
一実施形態において、バリア層は、蒸着層である。蒸着層としては、例えば、アルミニウムなどの金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム及び酸化バリウムなどの無機酸化物から構成される。これらの中でも、アルミニウム蒸着層が好ましい。
【0158】
バリア層の厚さは、好ましくは1nm以上150nm以下、より好ましくは5nm以上60nm以下、さらに好ましくは10nm以上40nm以下である。バリア層の厚さを1nm以上とすることにより、積層体の酸素バリア性及び水蒸気バリア性をより向上できる。バリア層の厚さを150nm以下とすることにより、バリア層におけるクラックの発生を抑制できると共に、積層体のリサイクル性を向上できる。
【0159】
バリア層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法などの物理気相成長法(PVD法);並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法及び光化学気相成長法などの化学気相成長法(CVD法)が挙げられる。バリア層は、物理気相成長法及び化学気相成長法の両者を併用して形成される、異種の無機酸化物のバリア層を2層以上含む複合膜であってもよい。
【0160】
蒸着チャンバーの真空度としては、酸素導入前においては、10-2~10-8mbar程度が好ましく、酸素導入後においては、10-1~10-6mbar程度が好ましい。酸素導入量などは、蒸着機の大きさなどによって異なる。導入される酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス及び窒素ガスなどの不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。多層基材の搬送速度は、例えば、10~800m/min程度である。
【0161】
バリア層の表面には、上述した表面処理が施されていることが好ましい。これにより、バリア層と、隣接する層との密着性を向上できる。
【0162】
蒸着層が酸化アルミニウム及び酸化珪素などの無機酸化物から構成される場合は、蒸着層の表面にバリアコート層を設けて、蒸着層及びバリアコート層を備えるバリア層としてもよい。
【0163】
一実施形態において、バリアコート層は、ガスバリア性樹脂から構成される。ガスバリア性樹脂としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ナイロン6、ナイロン6,6及びポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、並びに(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0164】
バリアコート層の厚さは、好ましくは0.01μm以上10μm以下、より好ましくは0.1μm以上5μm以下である。バリアコート層の厚さを0.01μm以上とすることにより、ガスバリア性をより向上できる。バリアコート層の厚さを10μm以下とすることにより、積層体の加工適性を向上できる。また、モノマテリアル包装容器の作製に好適に使用可能な積層体とすることができる。
【0165】
バリアコート層は、例えば、ガスバリア性樹脂などの材料を水又は適当な有機溶剤に溶解又は分散させ、得られた塗布液を塗布、乾燥することにより形成できる。
【0166】
他の実施形態において、バリアコート層は、金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法触媒、水及び有機溶剤などの存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物又は金属アルコキシドの加水分解縮合物などを含む組成物から形成されるガスバリア性塗布膜である。
このようなバリアコート層を蒸着層上に設けることにより、蒸着層におけるクラックの発生を効果的に防止できる。
【0167】
一実施形態において、金属アルコキシドは、下記一般式で表される。
R1
nM(OR2)m
上記式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数1以上8以下の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す。
【0168】
R1及びR2で表される有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基及びイソブチル基などのアルキル基が挙げられる。金属原子Mとしては、例えば、珪素、ジルコニウム、チタン及びアルミニウムが挙げられる。
【0169】
上記一般式を満たす金属アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン(Si(OCH3)4)、テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4)、テトラプロポキシシラン(Si(OC3H7)4)、及びテトラブトキシシラン(Si(OC4H9)4)が挙げられる。
【0170】
上記金属アルコキシドと共に、シランカップリング剤を使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができる。
【0171】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール及びエチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましい。酸素バリア性、水蒸気バリア性、耐水性及び耐候性などの所望の物性に応じて、ポリビニルアルコール及びエチレン-ビニルアルコール共重合体のいずれか一方を用いてもよく、両者を併用してもよく、また、ポリビニルアルコールを用いて得られるガスバリア性塗布膜及びエチレン-ビニルアルコール共重合体を用いて得られるガスバリア性塗布膜を積層してもよい。
【0172】
ゾルゲル法触媒としては、酸又はアミン系化合物が好適である。
【0173】
上記組成物は、さらに酸を含んでいてもよい。酸は、ゾルゲル法触媒、主として金属アルコキシド及びシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。酸としては、例えば、硫酸、塩酸及び硝酸などの鉱酸、並びに酢酸及び酒石酸などの有機酸が挙げられる。
【0174】
上記組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びn-ブタノールが挙げられる。
【0175】
ガスバリア性塗布膜の厚さは、好ましくは0.01μm以上100μm以下、より好ましくは0.1μm以上50μm以下である。これにより、ガスバリア性をより向上できる。ガスバリア性塗布膜の厚さを0.01μm以上とすることにより、積層体の酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上でき、また、蒸着層におけるクラックの発生を防止できる。ガスバリア性塗布膜の厚さを100μm以下とすることにより、モノマテリアル包装容器の作製に好適に使用可能な積層体とすることができる。
【0176】
ガスバリア性塗布膜は、例えば、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコート及びアプリケータなどの従来公知の手段により、上記材料を含む組成物を塗布し、その組成物をゾルゲル法により重縮合することにより形成させることができる。
【0177】
以下、ガスバリア性塗布膜の形成方法の一実施形態について以下に説明する。
まず、金属アルコキシド、水溶性高分子、ゾルゲル法触媒、水、有機溶剤及び必要に応じてシランカップリング剤などを混合し、組成物を調製する。該組成物中では次第に重縮合反応が進行する。次いで、蒸着層上に、上記従来公知の手段により、上記組成物を塗布、乾燥する。この乾燥により、金属アルコキシド及び水溶性高分子(上記組成物がシランカップリング剤を含む場合は、シランカップリング剤も)の重縮合反応がさらに進行し、複合ポリマーの層が形成される。最後に、加熱することにより、ガスバリア性塗布膜を形成できる。
【0178】
<接着層>
一実施形態において、本開示の積層体は、任意の層間(例えば、多層基材とバリア層との間、バリア層とヒートシール層との間、又は多層基材とヒートシール層との間)に、接着層を備える。これにより、積層体に含まれる層間の密着性を向上できる。
【0179】
接着層は、接着剤を含有する。接着剤としては、例えば、1液硬化型の接着剤、2液硬化型の接着剤、及び非硬化型の接着剤が挙げられる。
【0180】
接着剤は、無溶剤型の接着剤であっても、溶剤型の接着剤であってもよく、環境負荷の観点から、無溶剤型の接着剤が好ましい。無溶剤型の接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤及びウレタン系接着剤が挙げられる。溶剤型の接着剤としては、例えば、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤、オレフィン系接着剤及びウレタン系接着剤が挙げられる。これらの中でも、2液硬化型のウレタン系接着剤が好ましい。
【0181】
アルミニウム蒸着層等のバリア層と隣接する接着層の場合は、ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物及びリン酸変性化合物を含有する樹脂組成物の硬化物により、該接着層を構成することが好ましい。接着層をこのような構成とすることにより、本開示の積層体の酸素バリア性及び水蒸気バリア性をより向上できる。
【0182】
接着層の厚さは、接着層の接着性及び積層体の加工適性という観点から、好ましくは0.5μm以上6μm以下、より好ましくは0.8μm以上5μm以下、さらに好ましくは1μm以上4.5μm以下である。
【0183】
接着層は、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法及びトランスファーロールコート法などの方法により、多層基材等の上に接着剤を塗布及び乾燥することにより形成できる。
【0184】
[用途]
本開示のポリエチレン多層基材、印刷基材及び積層体は、包装袋などの包装材料用途に好適に使用できる。本開示の包装材料は、本開示のポリエチレン多層基材、印刷基材又は積層体を備える。
【0185】
例えば、上記積層体を、多層基材が外側、ヒートシール層が内側に位置するように二つ折にして重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装材料を製造できる。また、複数の上記積層体をヒートシール層が対向するように重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装材料を製造できる。包装材料の全部が上記積層体で構成されていてもよく、包装材料の一部が上記積層体で構成されていてもよい。
【0186】
包装材料におけるヒートシールの形態としては、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、及びガゼット型が挙げられる。また、自立性包装用袋(スタンドパウチ)も可能である。ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、及び超音波シールが挙げられる。
【0187】
例えば、胴部及び底部を備えるスタンドパウチは、以下のようにして製造できる。まず、1つ又は複数の上記積層体を、ヒートシール層が内側となるように筒状にしてヒートシールすることにより胴部を形成する。次いで、更なる上記積層体を、ヒートシール層が外側となるようにV字状に折る。V字状の積層体を胴部の一端に挟み込み、ヒートシールすることにより底部を形成する。
【0188】
スタンドパウチにおいては、胴部のみが上記積層体により形成されていてもよく、底部のみが上記積層体により形成されていてもよく、胴部及び底部の両方が上記積層体により形成されていてもよい。
【0189】
包装材料に充填される内容物としては、例えば、液体、粉体及びゲル体が挙げられ、食品であっても、非食品であってもよい。包装材料中に内容物を充填した後、包装材料の開口をヒートシールすることにより、包装体が得られる。
【0190】
本開示は、例えば以下の[1]~[16]に関する。
[1]第1のポリエチレン層と、第2のポリエチレン層と、第3のポリエチレン層とを厚さ方向にこの順に備え、第1のポリエチレン層の押込み弾性率が、第2のポリエチレン層の押込み弾性率の3.0倍以上であり、第3のポリエチレン層の押込み弾性率が、第2のポリエチレン層の押込み弾性率の3.0倍以上であり、延伸処理されてなる、ポリエチレン多層基材。
[2]ポリエチレン多層基材が、第1のポリエチレン層及び第2のポリエチレン層の間に第2aのポリエチレン層と、第2のポリエチレン層及び第3のポリエチレン層の間に第2bのポリエチレン層と、をさらに備え、第2aのポリエチレン層の押込み弾性率が、第2のポリエチレン層の押込み弾性率の2.0倍以上であり、第2bのポリエチレン層の押込み弾性率が、第2のポリエチレン層の押込み弾性率の2.0倍以上である、上記[1]に記載のポリエチレン多層基材。
[3]第1のポリエチレン層及び第3のポリエチレン層の押込み弾性率が、それぞれ独立に、1.1GPa以上6.0GPa以下である、上記[1]又は[2]に記載のポリエチレン多層基材。
[4]第1のポリエチレン層と、第2のポリエチレン層と、第3のポリエチレン層とを厚さ方向にこの順に備え、第1のポリエチレン層の押込み硬度が、第2のポリエチレン層の押込み硬度の2.0倍以上であり、第3のポリエチレン層の押込み硬度が、第2のポリエチレン層の押込み硬度の2.0倍以上であり、延伸処理されてなる、ポリエチレン多層基材。
[5]ポリエチレン多層基材が、第1のポリエチレン層及び第2のポリエチレン層の間に第2aのポリエチレン層と、第2のポリエチレン層及び第3のポリエチレン層の間に第2bのポリエチレン層と、をさらに備え、第2aのポリエチレン層の押込み硬度が、第2のポリエチレン層の押込み硬度の1.4倍以上であり、第2bのポリエチレン層の押込み硬度が、第2のポリエチレン層の押込み硬度の1.4倍以上である、上記[4]に記載のポリエチレン多層基材。
[6]第1のポリエチレン層及び第3のポリエチレン層の押込み硬度が、それぞれ独立に、45MPa以上150MPa以下である、上記[4]又は[5]に記載のポリエチレン多層基材。
[7]第1のポリエチレン層が、ポリエチレン多層基材の一方側の表面層であり、第3のポリエチレン層が、ポリエチレン多層基材の他方側の表面層である、上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリエチレン多層基材。
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載のポリエチレン多層基材と、ポリエチレン多層基材上に形成された印刷層とを備える印刷基材。
[9]ポリエチレン多層基材と、ポリエチレンを主成分として含有するヒートシール層とを備える積層体であって、ポリエチレン多層基材が、第1のポリエチレン層と、第2のポリエチレン層と、第3のポリエチレン層とを厚さ方向にこの順に備え、延伸処理されてなり、第1のポリエチレン層の押込み弾性率が、第2のポリエチレン層の押込み弾性率の3.5倍以上であり、第3のポリエチレン層の押込み弾性率が、第2のポリエチレン層の押込み弾性率の3.5倍以上である、積層体。
[10]ポリエチレン多層基材が、第1のポリエチレン層及び第2のポリエチレン層の間に第2aのポリエチレン層と、第2のポリエチレン層及び第3のポリエチレン層の間に第2bのポリエチレン層と、をさらに備え、第2aのポリエチレン層の押込み弾性率が、第2のポリエチレン層の押込み弾性率の2.0倍以上であり、第2bのポリエチレン層の押込み弾性率が、第2のポリエチレン層の押込み弾性率の2.0倍以上である、上記[9]に記載の積層体。
[11]ポリエチレン多層基材と、ポリエチレンを主成分として含有するヒートシール層とを備える積層体であって、ポリエチレン多層基材が、第1のポリエチレン層と、第2のポリエチレン層と、第3のポリエチレン層とを厚さ方向にこの順に備え、延伸処理されてなり、第1のポリエチレン層の押込み硬度が、第2のポリエチレン層の押込み硬度の2.0倍以上であり、第3のポリエチレン層の押込み硬度が、第2のポリエチレン層の押込み硬度の2.0倍以上である、積層体。
[12]ポリエチレン多層基材が、第1のポリエチレン層及び第2のポリエチレン層の間に第2aのポリエチレン層と、第2のポリエチレン層及び第3のポリエチレン層の間に第2bのポリエチレン層と、をさらに備え、第2aのポリエチレン層の押込み硬度が、第2のポリエチレン層の押込み硬度の1.5倍以上であり、第2bのポリエチレン層の押込み硬度が、第2のポリエチレン層の押込み硬度の1.5倍以上である、上記[11]に記載の積層体。
[13]ポリエチレン多層基材上に印刷層をさらに備える、上記[9]~[12]のいずれかに記載の積層体。
[14]ポリエチレン多層基材の表面、又はヒートシール層の表面に形成されたバリア層をさらに備える、上記[9]~[13]のいずれかに記載の積層体。
[15]ポリエチレン多層基材とヒートシール層との間に、接着層をさらに備える、上記[9]~[14]のいずれかに記載の積層体。
[16]上記[1]~[7]のいずれかに記載のポリエチレン多層基材、上記[8]に記載の印刷基材、又は上記[9]~[15]のいずれかに記載の積層体を備える、包装材料。
【実施例0191】
本開示のポリエチレン多層基材及び積層体について実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本開示のポリエチレン多層基材及び積層体は実施例によって限定されるものではない。以下、「質量部」は単に「部」と記載する。
【0192】
以下の実施例及び比較例で用いるポリエチレンについて記載する。
・中密度ポリエチレン(以下「MDPE」と記載する):
商品名Enable4002MC
密度:0.940g/cm3、融点:128℃、MFR:0.25g/10分、
ExxonMobil社製
・高密度ポリエチレン(1)(以下「HDPE(1)」と記載する):
商品名Elite5960G
密度:0.960g/cm3、融点:134℃、MFR:0.8g/10分、
Dowchemical社製
・高密度ポリエチレン(2)(以下「HDPE(2)」と記載する):
商品名H619F
密度:0.965g/cm3、融点:135℃、MFR:0.7g/10分、
SCG社製
・直鎖状低密度ポリエチレン(以下「LLDPE」と記載する):
商品名Exceed XP8656ML
密度:0.916g/cm3、融点:121℃、MFR:0.5g/10分、
ExxonMobil社製
・低密度ポリエチレン(以下「LDPE」と記載する):
商品名LD2420F
密度:0.922g/cm3、融点:112℃、MFR:0.75g/10分、
PTT社製
・スリップ剤含有MB:
商品名SLIP61 10061-K
密度:0.910g/cm3、MFR:10g/10分、
ポリエチレンベース、エルカ酸アミド系スリップ剤5質量%含有、
Ampacet社製
【0193】
[ブレンドポリエチレンの作製]
・ブレンドポリエチレンA1
70部のMDPEと、30部のHDPE(1)とを混合して、平均密度0.948g/cm3のブレンドポリエチレンA1(以下「ブレンドPE(A1)」と記載する)を得た。
・ブレンドポリエチレンB1
70部のHDPE(2)と、30部のLDPEとを混合して、平均密度0.950g/cm3のブレンドポリエチレンB1(以下「ブレンドPE(B1)」と記載する)を得た。
・ブレンドポリエチレンB2
50部のMDPEと、50部のLLDPEとを混合して、平均密度0.929g/cm3のブレンドポリエチレンB2(以下「ブレンドPE(B2)」と記載する)を得た。・ブレンドポリエチレンC1
98部のLLDPEと、2部のスリップ剤含有MBとを混合して、平均密度0.916g/cm3のブレンドポリエチレンC1(以下「ブレンドPE(C1)」と記載する)を得た。
【0194】
[実施例1]
ブレンドPE(A1)、ブレンドPE(B1)及びブレンドPE(C1)を、インフレーション成形法により、ブレンドPE(A1)層(15μm)/ブレンドPE(B1)層(22.5μm)/ブレンドPE(C1)層(50μm)/ブレンドPE(B1)層(22.5μm)/ブレンドPE(A1)層(15μm)の層厚さ比で5層共押出しを行いチューブ状に製膜し、総厚さ125μmのポリエチレンフィルムを得て、チューブ状のフィルムをニップ箇所で折りたたみ、2枚重ねにした。括弧内の数値は層の厚さを示す。
【0195】
上記で作製したポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に5倍の延伸倍率で延伸し、さらに、片方の面のブレンドPE(A1)層(表面層)にコロナ放電処理を行った後、端部をスリットし、2枚に分けて、厚さ25μmのポリエチレン多層基材(延伸多層基材)を得た。
【0196】
[実施例2及び比較例1]
層構成を表5に記載したとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、ポリエチレンフィルム及び延伸多層基材を得た。
【0197】
[積層体の作製]
第一の直鎖状低密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、SP2520、密度:0.925g/cm3、融点:122℃)と、第二の直鎖状低密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、SP0510、密度:0.903g/cm3、融点:98℃)とを、インフレーション成形法により、多層押出製膜し、厚さ20μmの第一の直鎖状低密度ポリエチレン層と、厚さ20μmの第二の直鎖状低密度ポリエチレン層とを備える未延伸ポリエチレンフィルムを作製した。この未延伸ポリエチレンフィルムを、以下に説明するとおりヒートシール層として用いた。
【0198】
上記で作製した未延伸ポリエチレンフィルム(ヒートシール層)の第一の直鎖状低密度ポリエチレン層側と、実施例及び比較例において得られた延伸多層基材のコロナ放電処理面側とを、2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント社製、Ru-77T/H-7)を介してドライラミネートし、積層体を得た。接着層の厚さは3.0μmであった。
【0199】
[インキ密着評価]
実施例及び比較例において得られた延伸多層基材のコロナ放電処理面側に、油性グラビアインキ(DICグラフィックス(株)製、商品名:フィナート)を用いて、グラビア印刷法により、画像を形成した。延伸多層基材上に形成された画像を目視により観察し、以下の評価基準に基づいて、評価した。
【0200】
(評価基準)
AA:延伸多層基材の画像形成面側にセロテープ(登録商標)を貼り、剥がした際に、延伸多層基材へのインキ密着が良好で、セロテープ(登録商標)へのインキ剥離が発生しなかった。
BB:延伸多層基材の画像形成面側にセロテープ(登録商標)を貼り、剥がした際に、延伸多層基材へのインキ密着が弱く、セロテープ(登録商標)へのインキ剥離が発生した。
【0201】
[収縮評価]
上記で作製した積層体を、10cm×10cmにカットしてサンプル片を3つずつ作製した。各サンプル片のヒートシール層側が内側になるように二つ折りにし、ヒートシールテスターを用いて、温度120℃、圧力1kgf/cm2、1秒の条件にて1.5cm×10cmの領域をヒートシールした。ヒートシール後、サンプルのシール幅を測定し、MD及びTDの収縮率を算出した。3つのサンプル片の平均値を、各熱収縮率とした。
【0202】
[耐熱性評価]
耐熱性を以下の基準で評価した。
AA:印刷時、ドライラミネート時及び上記で作製した積層体のヒートシール時に延伸多層基材の大きな収縮が無く、目的物を綺麗に製造できた。
BB:印刷時、ドライラミネート時及び上記で作製した積層体のヒートシール時に延伸多層基材の大きな収縮が発生し、目的物を綺麗に製造できなかった。
【0203】
[ヘイズ評価]
実施例及び比較例において得られた延伸多層基材のヘイズ値を、JIS K7136に準拠し測定した。
【0204】
[剛性評価]
実施例及び比較例において得られた延伸多層基材を、10mm幅の試験片に切断し、ループスティフネス測定試験器(東洋精機製作所製、商品名:ループスティフネステスタ)により、試験片の剛性を測定した。ループの長さは、60mmとした。
【0205】
[強度評価]
実施例及び比較例において得られた延伸多層基材から、10mm幅のダンベル型試験片を切り出した。上記試験片のMD方向の引張強度を、引張試験機(オリエンテック社製、RTC-1310A)により測定した。チャック間距離は10mm、引張速度は300mm/分とした。
【0206】
[押込み弾性率、押込み硬度評価]
実施例及び比較例において得られた延伸多層基材及び積層体について、ナノインデンター(HYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」)を用いて、延伸多層基材の各ポリエチレン層のTD方向に平行な断面を測定面として、同一断面において5箇所で測定して得た弾性率の値及び硬度の値をそれぞれ平均して、押込み弾性率及び押込み硬度をそれぞれ求めた。ナノインデンターの圧子としては、Berkovich圧子(三角錐圧子)を用いて測定した。
【0207】
測定条件は、以下のとおりである。10秒間かけて、延伸多層基材及び積層体のTD方向に平行な断面から押込み深さ200nmまで圧子をポリエチレン層に押し込み、その状態で5秒間保持した。続いて10秒間かけて除荷した。これにより、最大荷重Pmax、最大深さ時の接触投影面積A及び荷重-変位曲線を得ることができ、得られた荷重-変位曲線から、弾性率及び硬度の値を算出した。測定は室温(25℃)環境下にて実施した。断面作製は、クライオウルトラミクロトームを用いて-100℃環境下にて、延伸多層基材及び積層体をTD方向と平行に切断することにより実施した。仕上げはダイヤモンドナイフにて実施した。各層の厚さも、上記断面を観察することにより測定できる。
【0208】
以上の評価結果を表1~表5に示す。なお、実施例及び比較例のポリエチレン多層基材において、第1のPE層と第3のPE層との押込み弾性率は同程度であり、第2aのPE層と第2bのPE層との押込み弾性率は同程度であることから、第2bのPE層及び第3のPE層の押込み弾性率の記載は省略した。押込み硬度についても同様である。
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】