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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156634
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H10D 8/60 20250101AFI20251002BHJP
   H10D 64/64 20250101ALI20251002BHJP
   H10D 62/10 20250101ALI20251002BHJP
   H10D 8/50 20250101ALI20251002BHJP
   H10D 8/01 20250101ALI20251002BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
H10D8/60 M
H10D8/60 D
H10D8/60 E
H10D8/60 F
H10D64/64 B
H10D62/10 101G
H10D62/10 101V
H10D8/50 K
H10D8/50 F
H10D8/50 D
H10D8/01 S
H01L21/265 Q
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025135293
(22)【出願日】2025-08-15
(62)【分割の表示】P 2021064149の分割
【原出願日】2021-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 真弥
(72)【発明者】
【氏名】春山 沙和
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雅也
(57)【要約】
【課題】ショットキー接合を有する構成において、順方向電圧を低減できる半導体装置を提供する。
【解決手段】ショットキーバリアダイオード1は、半導体基板6と、半導体基板6上に形成されたn型(第1導電型)のエピタキシャル層7とを含む半導体層2と、アルミニウム合金およびアルミニウムのうち少なくとも一種を含有し、半導体層2上に形成されたアノード電極14と、エピタキシャル層7の表層部に形成され、エピタキシャル層7との間にpn接合PJを形成するp型(第2導電型)の不純物領域40とを備える。アノード電極14が、半導体層2の第1主面3に接し半導体層2との間にショットキー接合SJを形成するショットキー部15を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1導電型のエピタキシャル層とを含む半導体層と、
アルミニウム合金およびアルミニウムのうちの少なくとも一種を含有し、前記半導体層上に形成された表面電極であって、前記半導体層の表面に接し前記エピタキシャル層との間にショットキー接合を形成するショットキー部と、前記表面電極の厚さ方向から接続部材が接続される表面を有する接続部とを含む表面電極と、
前記エピタキシャル層の表層部に形成され、前記エピタキシャル層との間にpn接合を形成する第2導電型の不純物領域と、
前記接続部の表面の一部を前記接続部材との接続領域として露出させる開口を形成するように前記表面電極の一部を覆う絶縁層とを備え、
前記ショットキー部および前記接続部が、積層構造を形成しており、
前記表面電極が、前記ショットキー部および前記接続部の間に位置し、前記絶縁層に周縁部が接するバリア部をさらに含み、
前記ショットキー部および前記接続部が、同一の物質からなる単層構造を形成している、半導体装置。
【請求項2】
半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1導電型のエピタキシャル層とを含む半導体層と、
アルミニウム合金およびアルミニウムのうちの少なくとも一種を含有し、前記半導体層上に形成された表面電極であって、前記半導体層の表面に接し前記エピタキシャル層との間にショットキー接合を形成するショットキー部と、前記表面電極の厚さ方向から接続部材が接続される表面を有する接続部とを含む表面電極と、
前記エピタキシャル層の表層部に形成され、前記エピタキシャル層との間にpn接合を形成する第2導電型の不純物領域と、
前記接続部の表面の一部を前記接続部材との接続領域として露出させる開口を形成するように前記表面電極の一部を覆う絶縁層と、
前記半導体層の表面および前記ショットキー部の間に配置された層間絶縁膜とを備え、
前記ショットキー部および前記接続部が、積層構造を形成しており、
前記表面電極が、前記ショットキー部および前記接続部の間に位置し、前記絶縁層に周縁部が接するバリア部をさらに含み、
前記ショットキー部が、前記半導体層の表面を被覆する第1被覆部と、前記層間絶縁膜を被覆する第2被覆部とを含む、半導体装置。
【請求項3】
前記ショットキー部が、前記エピタキシャル層に直接接続する第1部分と、前記不純物領域に直接接続する第2部分とを含み、
前記第1部分の組成、および、前記第2部分の組成が同一である、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ショットキー部および前記接続部が、互いに異なる物質によって形成されており、互いに接している、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記バリア部が、チタンおよび窒化チタンのうちの少なくとも一種を用いて形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記接続部の厚さが、前記ショットキー部の厚さよりも大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記アルミニウム合金が、AlSi合金、AlCu合金およびAlSiCu合金のうちの一種である、請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1導電型のエピタキシャル層とを含む半導体層と、
アルミニウム合金およびアルミニウムのうちの少なくとも一種を含有し、前記半導体層上に形成された表面電極であって、前記半導体層の表面に接し前記エピタキシャル層との間にショットキー接合を形成するショットキー部を含む表面電極と、
前記エピタキシャル層の表層部に形成され、前記エピタキシャル層との間にpn接合を形成する第2導電型の不純物領域と、
前記ショットキー部に接するように前記エピタキシャル層の表層部に形成され、格子欠陥が前記エピタキシャル層よりも多い格子欠陥領域とを備え、
前記不純物領域が、前記格子欠陥領域に接するように前記格子欠陥領域の内側に配置された内側不純物領域を含む、半導体装置。
【請求項9】
前記エピタキシャル層の表層部に形成された第2導電型の環状のガード領域をさらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ガード領域が、第1ガード領域と、前記第1ガード領域を取り囲み前記第1ガード領域よりも幅狭である複数の第2ガード領域とを含む、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1導電型がn型であり、前記第2導電型がp型である、請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットキーバリアダイオードを備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、モリブデン(Mo)やチタン(Ti)によって構成される上層電極がドリフト層とショットキー接触する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-282972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の省電力化に伴って、ショットキーバリアダイオードの順方向電圧の低減が求められている。そこで、本発明の1つの目的は、ショットキー接合を有する構成において、順方向電圧を低減できる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1導電型のエピタキシャル層とを含む半導体層と、アルミニウム合金(Al合金)およびアルミニウム(Al)のうちの少なくとも一種を含有し、前記半導体層上に形成された表面電極と、前記エピタキシャル層の表層部に形成され、前記エピタキシャル層との間にpn接合を形成する第2導電型の不純物領域とを備える。前記表面電極が、前記半導体層の表面に接し前記エピタキシャル層との間にショットキー接合を形成するショットキー部と、接続部材が接続される表面を有する接続部とを含む。
【0006】
この構成によれば、半導体基板との間にショットキー接合を形成するショットキー部をその一部として含む表面電極が、Al合金およびAlのうちの少なくとも一種を用いて形成されている。そのため、順方向電圧を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係るショットキーバリアダイオードの要部の平面図である。
図2図2は、図1に示すII-II線に沿う断面図である。
図3図3は、図2に示すIII-III線に沿う断面図である。
図4図4は、図2に示すIV領域の拡大図である。
図5図5は、図2に示すV領域の拡大図である。
図6図6は、前記ショットキーバリアダイオードの製造方法のフローチャートである。
図7図7は、第2実施形態に係るショットキーバリアダイオードの要部の断面図である。
図8図8は、図7に示すVIII領域の拡大図である。
図9図9は、第2実施形態に係るショットキーバリアダイオードの製造方法のフローチャートである。
図10図10は、第3実施形態に係るショットキーバリアダイオードの要部の断面図である。
図11図11は、図10に示すXI領域の拡大図である。
図12図12は、第3実施形態に係るショットキーバリアダイオードの製造方法のフローチャートである。
図13図13は、第4実施形態に係るショットキーバリアダイオードの要部の断面図である。
図14図14は、図13に示すXIV-XIV線に沿う断面図である。
図15図15は、図13に示すXV領域の拡大図である。
図16A図16Aは、第4実施形態に係るショットキーバリアダイオードに含まれる内側不純物領域の周囲の電圧降下について説明するための回路図である。
図16B図16Bは、前記内側不純物領域の周囲の電圧降下について説明するための断面図である。
図17図17は、第4実施形態に係るショットキーバリアダイオードの製造方法のフローチャートである。
図18A図18Aは、第4実施形態に係るショットキーバリアダイオードの製造方法において、不純物領域および格子欠陥領域が形成される様子を説明するための模式図である。
図18B図18Bは、前記不純物領域および前記格子欠陥領域が形成される様子を説明するための模式図である。
図18C図18Cは、前記不純物領域および前記格子欠陥領域が形成される様子を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る半導体装置としてのショットキーバリアダイオード1の要部の平面図である。図2は、図1に示すII-II線に沿う断面図である。図3は、図2に示すIII-III線に沿う断面図である。図4は、図2に示すIV領域の拡大図である。図5は、図2に示すV領域の拡大図である。
【0009】
以下では、図1図5を参照して、ショットキーバリアダイオード1の構成について説明する。
図1を参照して、ショットキーバリアダイオード1は、4H-SiC(絶縁破壊電界が約2.8MV/cmであり、バンドギャップの幅が約3.26eVのワイドバンドギャップ半導体)が採用されたショットキーバリアダイオードであり、たとえば、平面視正方形のチップ状である。チップ状のショットキーバリアダイオード1の各辺の長さは0.5mm~20mmである。すなわち、ショットキーバリアダイオード1のチップサイズは、たとえば、0.5mm/□~20mm/□である。
【0010】
ショットキーバリアダイオード1は、直方体形状のチップ状に形成されたSiCからなる半導体層2を備えている。半導体層2のオフ角は、4°以下であることが好ましい。半導体層2は、一方側の第1主面3、他方側の第2主面4(図2を参照)、ならびに、第1主面3および第2主面4を接続する側面5a,5b,5c,5dを有している。第1主面3および第2主面4は、それらの法線方向Zから見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において四角形状(この形態では正方形状)に形成されている。
【0011】
側面5aおよび側面5cは、この形態では、第1方向Xに沿って延び、第1方向Xに交差する第2方向Yに互いに対向している。側面5bおよび側面5dは、この形態では、第2方向Yに沿って延び、第1方向Xに互いに対向している。第2方向Yは、より具体的には第1方向Xに直交する方向である。
図2を参照して、半導体層2は、この形態では、n型(第1導電型)のSiCからなる半導体基板6およびn型のSiCからなるエピタキシャル層7を含む積層構造を有している。半導体基板6によって、半導体層2の第2主面4が形成されており、エピタキシャル層7によって、半導体層2の第1主面3が形成されている。第1主面3は、エピタキシャル層7において半導体基板6とは反対側の表面7aでもあり、半導体層2の第2主面4は、半導体基板6においてエピタキシャル層7とは反対側の表面6aである。n型不純物としては、たとえば、N(窒素)、P(リン)、As(ひ素)等が用いられる。
【0012】
ショットキーバリアダイオード1は、半導体層2の第2主面4(半導体基板6の表面6a)の全域を覆うように形成されたオーミック電極としてのカソード電極8をさらに備えている。カソード電極8は、n型のSiCとオーミック接合する金属からなる。n型のSiCとオーミック接合する金属としては、たとえば、Ti/Ni/AgやTi/Ni/Au/Agが挙げられる。
【0013】
半導体基板6の厚さTSは、40μm以上150μm以下であってもよい。厚さTSは、40μm以上50μm以下、50μm以上60μm以下、60μm以上70μm以下、70μm以上80μm以下、80μm以上90μm以下、90μm以上100μm以下、100μm以上110μm以下、110μm以上120μm以下、120μm以上130μm以下、130μm以上140μm以下または140μm以上150μm以下であってもよい。厚さTSは、40μm以上130μm以下であることが好ましい。
【0014】
エピタキシャル層7の厚さTEは、1μm以上50μm以下であってもよい。厚さTEは、1μm以上5μm以下、5μm以上10μm以下、10μm以上15μm以下、15μm以上20μm以下、20μm以上25μm以下、25μm以上30μm以下、30μm以上35μm以下、35μm以上40μm以下、40μm以上45μm以下または45μm以上50μm以下であってもよい。厚さTEは、5μm以上15μm以下であることが好ましい。
【0015】
エピタキシャル層7のn型不純物濃度は、半導体基板6のn型不純物濃度以下である。エピタキシャル層7のn型不純物濃度は、より具体的には、半導体基板6のn型不純物濃度未満である。半導体基板6のn型不純物濃度は、1.0×1018cm-3以上1.0×1021cm-3以下であってもよい。エピタキシャル層7のn型不純物濃度は、1.0×1015cm-3以上1.0×1018cm-3以下であってもよい。
【0016】
半導体層2の第1主面3(エピタキシャル層7の表面7a)には、アクティブ領域9および非アクティブ領域10が設定されている。アクティブ領域9は、平面視において半導体層2の側面5a~5dから内方領域に間隔を空けて半導体層2の第1主面3の中央部に設定されている。アクティブ領域9は、平面視において、半導体層2の側面5a~5dに平行な4辺を有する四角形状に設定されている。
【0017】
非アクティブ領域10は、半導体層2の側面5a~5dとアクティブ領域9の周縁との間に設定されている。非アクティブ領域10は、平面視においてアクティブ領域9を取り囲む無端状(この形態では四角環状)に設定されている。
ショットキーバリアダイオード1は、非アクティブ領域10において半導体層2の第1主面3の表層部(エピタキシャル層7の表面7aの表層部)に形成されたp型(第2導電型)のガード領域30をさらに備える。
【0018】
図3に示すように、ガード領域30は、平面視においてアクティブ領域9を取り囲む無端状(たとえば四角環状、角を面取りした四角環状または円環状)に形成されている。これにより、ガード領域30は、ガードリング領域として形成されている。アクティブ領域9は、この形態では、ガード領域30の内方端によって画定されている。
ガード領域30は、幅広の第1ガード領域31と、第1ガード領域31を取り囲み第1ガード領域31よりも幅狭である複数(図3の例では5つ)の第2ガード領域32とを含む。複数の第2ガード領域32は、等間隔に設けられている。図3の例とは異なり、ガード領域30が単一の無端状(たとえば四角環状、角を面取りした四角環状または円環状)の領域によって構成されていてもよい。
【0019】
図2を参照して、ショットキーバリアダイオード1は、半導体層2の第1主面3上に形成された層間絶縁膜としての環状のフィールド絶縁膜13をさらに備える。フィールド絶縁膜13は、非アクティブ領域10において半導体層2の第1主面3の一部を覆っている。フィールド絶縁膜13は、半導体層2の第1主面3の一部を露出させる開口12を有する。
【0020】
アクティブ領域9のアクティブサイズは、たとえば、0.1mm2以上400mm2以下である。フィールド絶縁膜13は、たとえば、酸化シリコン(SiO2)層または窒化シリコン(SiN)層からなる単層構造を有していてもよい。フィールド絶縁膜13の厚さは、たとえば、0.5μm以上3μm以下である。
フィールド絶縁膜13は、第1主面3に接する第1面13aと、第1面13aとは反対側の第2面13bと、第1面13aおよび第2面13bを接続する内側面13cおよび外側面13dとを有する。内側面13cは、内側面13cと第1主面3との間でフィールド絶縁膜13の内部に鋭角をなすように傾斜する傾斜面である。外側面13dは、外側面13dと第1主面3との間でフィールド絶縁膜13の内部に鋭角をなすように傾斜する傾斜面である。
【0021】
ショットキーバリアダイオード1は、アルミニウム合金およびアルミニウムのうちの少なくとも一種を用いて半導体層2の第1主面3上に形成された表面電極としてのアノード電極14をさらに含む。アルミニウム合金は、たとえば、AlSi合金、AlCu合金およびAlSiCu合金のうちの一種である。アノード電極14は、アルミニウム合金およびアルミニウムのみによって形成されている必要はなく、不純物として、僅かに他の成分を含有していてもよい。
【0022】
図2および図4を参照して、アノード電極14は、半導体層2の第1主面3上に形成され、半導体層2(エピタキシャル層7)との間でショットキー接合SJを形成するショットキー部15と、ボンディングワイヤ等の接続部材22が接続される表面16aを有する接続部16とを含む。ショットキー部15および接続部16が、同一の物質からなる単層構造を形成している。ショットキー接合SJは、ショットキー部15とエピタキシャル層7との接触界面付近に形成される。
【0023】
ショットキー部15は、アクティブ領域9において半導体層2の第1主面3上を被覆する第1被覆部18と、フィールド絶縁膜13を被覆する第2被覆部19とを含む。第2被覆部19は、フィールド絶縁膜13の内側面13cの全体と、第2面13bの一部とを覆っている。そのため、フィールド絶縁膜13は、半導体層2の第1主面3とショットキー部15との間に配置されている。
【0024】
第1ガード領域31は、ショットキー部15およびフィールド絶縁膜13に接しており、複数の第2ガード領域32は、フィールド絶縁膜13に接している(図5を参照)。
ショットキーバリアダイオード1は、アノード電極14の接続部16の上に形成された絶縁層としてのパッシベーション層20をさらに備える。パッシベーション層20は、酸化シリコン層または窒化シリコン層からなる単層構造を有していてもよいし、酸化シリコン層および窒化シリコン層からなる積層構造を有していてもよい。パッシベーション層20が積層構造を有している場合、酸化シリコン層が、窒化シリコン層の上に形成されていてもよいし、窒化シリコン層が、酸化シリコン層の上に形成されていてもよい。パッシベーション層20は、この形態では、窒化シリコン層からなる単層構造を有している。
【0025】
パッシベーション層20は、平面視において半導体層2の側面5a~5dから内方領域に間隔を空けて形成されている。パッシベーション層20には、アノード電極14の接続部16の表面16aの一部を接続部材22との接続領域23として露出させるサブパッド開口21が形成されている。接続部材22は、アノード電極14の厚さ方向Tから、接続領域23に接続されている。
【0026】
ショットキーバリアダイオード1は、ショットキー部15に接するようにアクティブ領域9において半導体層2の第1主面3(エピタキシャル層7の表面7a)の表層部に形成されたp型(第2導電型)の不純物領域40をさらに備える。不純物領域40は、半導体層2のエピタキシャル層7との間にpn接合PJを形成する。pn接合PJは、不純物領域40とエピタキシャル層7との接触界面付近に形成される。
【0027】
図3を参照して、不純物領域40は、ストライプ状に配置された複数の直線状不純物領域41を含む。不純物領域40のp型不純物濃度は、たとえば、10×1016cm-3以上10×1021cm-3以下である。
複数の直線状不純物領域41は、第2方向Yに等間隔に配置されており、各直線状不純物領域41は、第1方向Xに延びている。複数の直線状不純物領域41は、第1ガード領域31と一体を成している。詳しくは、第1方向Xにおける直線状不純物領域41の両端部は、第1ガード領域31の内方端部に接続されている。
【0028】
図4を参照して、各直線状不純物領域41の底部(不純物領域40の底部40a)は、エピタキシャル層7に接している。各直線状不純物領域41の底部は、半導体層2の第2主面4に向かう一対の湾曲部と、湾曲部同士を連結する平坦部とを含む。
第2方向Yにおける直線状不純物領域41の幅Wは、たとえば、0.5μm以上で、かつ、10μm以下である。直線状不純物領域41の深さDは、たとえば、0.3μm以上で、かつ、1.5μm以下である。第2方向Yにおける複数の直線状不純物領域41のピッチPは、たとえば、1.0μm以上で、かつ、5μm以下である。
【0029】
ショットキー部15の第1被覆部18は、エピタキシャル層7に直接接続する第1部分18Aと、不純物領域40に直接接続する第2部分18Bとを含む。第1部分18Aは、エピタキシャル層7と接触しており、第2部分18Bは、不純物領域40に接触している。ショットキー接合SJは、第1部分18Aとエピタキシャル層7との接触界面付近に形成されている。アノード電極14は、アルミニウム合金およびアルミニウムのうちの少なくとも一種を用いて形成されているため、アノード電極14の一部である第1部分18Aおよび第2部分18Bは、同一の物質によって形成されている。したがって、第1部分18Aの組成、および、第2部分18Bの組成が同一である。
【0030】
第1実施形態によれば、ショットキーバリアダイオード1では、ショットキー接合SJおよびpn接合PJの両方が設けられている。そのため、順方向過電流印加時には、pn接合PJからエピタキシャル層7に少数キャリアが注入される。これにより、エピタキシャル層7の抵抗が低下するため、発熱量が抑制でき、サージ耐量が向上する。
また、第1実施形態によれば、半導体層2との間にショットキー接合SJを形成するショットキー部15をその一部として含むアノード電極14が、アルミニウム合金またはアルミニウムを用いて形成されている。そのため、順方向電圧を低減できる。
【0031】
順方向電圧を低減することで、逆方向のリーク電流が増大するおそれがある。そこで、不純物領域40の深さDを0.3μm以上で、かつ、1.5μm以下とし、不純物領域40のピッチPを1.0μm以上で、かつ、5μm以下とすることで、ショットキー接合SJに生じる電界強度を充分に低下させて、リーク電流を充分に抑制できる。
また、第1実施形態によれば、ショットキー部15および接続部16が同一の物質で単層構造を形成している。そのため、以下に示すように、使用する物質を変更することなく、ショットキー部15および接続部16を同一の工程で形成することができる。すなわち、ショットキー部15および接続部16が互いに異なる物質によって形成されている場合と比較して、製造方法を簡略化できる。
【0032】
ショットキーバリアダイオード1の製造方法は、以下の通りである。図6は、図1に示すショットキーバリアダイオード1の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
ショットキーバリアダイオード1を製造するにあたり、まず、n型の半導体基板6が準備される(ステップS1)。次に、半導体基板6からn型のエピタキシャル層7が成長する(ステップS2)。これにより、半導体層2が形成される。
【0033】
次に、たとえばイオン注入マスクを介するp型不純物の注入によって、不純物領域40が形成される(ステップS3)。p型不純物の注入によって、不純物領域40と同時に、ガード領域30も形成される。そして、たとえば、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法により、フィールド絶縁膜13がエピタキシャル層7の表面7a上に形成される(ステップS4)。次に、たとえばスパッタ法により、アノード電極14がエピタキシャル層7およびフィールド絶縁膜13の上に形成される(ステップS5)。これにより、単層構造を形成するショットキー部15および接続部16が形成される。次に、たとえば、CVD法により、パッシベーション層20がアノード電極14上に形成される(ステップS6)。そして、最後に、たとえば、スパッタ法により、半導体層2の第2主面4の全域にカソード電極8が形成される(ステップS7)。
【0034】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係るショットキーバリアダイオード1Pの要部の断面図である。図8は、図7に示すVIII領域の拡大図である。
図7および図8において、前述の図1図6に示された構成と同等の構成については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する(後述する図9においても同様)。
【0035】
図7および図8を参照して、第2実施形態に係るショットキーバリアダイオード1Pが、第1実施形態に係るショットキーバリアダイオード1と主に異なる点は、アノード電極14が積層構造を有している点である。第2実施形態に係るアノード電極14は、互いに接するように積層構造を形成するショットキー部15Pおよび接続部16Pを有する。
ショットキー部15Pは、半導体層2(エピタキシャル層7)との間でショットキー接合SJを形成する。ショットキー部15Pは、第1被覆部18および第2被覆部19を含む。接続部16Pは、接続部材22が接続される表面16aを有する。
【0036】
ショットキー部15Pおよび接続部16Pは、互いに異なる物質によって形成されている。具体的には、ショットキー部15Pは、アルミニウム、AlSi合金、AlCu合金およびAlSiCu合金のうちから選択された一種類の物質によって形成されており、接続部16Pは、アルミニウム、AlSi合金、AlCu合金およびAlSiCu合金のうちショットキー部15Pとは異なる物質から選択された一種類の物質によって形成されている。たとえば、ショットキー部15Pがアルミニウムによって形成されており、接続部16PがAlCu合金によって形成されていてもよい。
【0037】
ショットキー部15Pの第1被覆部18は、エピタキシャル層7に直接接続する第1部分18Aと、不純物領域40に直接接続する第2部分18Bとを含む。第1部分18Aは、エピタキシャル層7と接触しており、第2部分18Bは、不純物領域40に接触している。ショットキー部15Pは、アルミニウム合金およびアルミニウムのうちの少なくとも一種を用いて形成されているため、ショットキー部15Pの一部である第1部分18Aおよび第2部分18Bは、同一の物質によって形成されている。したがって、第1部分18Aの組成、および、第2部分18Bの組成が同一である。
【0038】
ショットキー部15Pの厚さT1は、接続部16Pの厚さT2よりも小さい。そのため、接続部材22が、接続部16Pを貫通してショットキー部15Pにまで達することを抑制できる。そのためには、ショットキー部15Pの厚さT1が、50nm以上で、かつ、500nm以下であることが好ましい。
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、ショットキーバリアダイオード1Pには、ショットキー接合SJおよびpn接合PJの両方が設けられているため、サージ耐量が向上する。さらに、アノード電極14が、アルミニウム合金またはアルミニウムを用いて形成されているため、順方向電圧を低減できる。
【0039】
第2実施形態によれば、ショットキー部15Pおよび接続部16Pは、互いに異なる物質によって形成されており、積層構造を形成している。そのため、ショットキー部15Pおよび接続部16Pのそれぞれの役割に適した物質を個別に選択することができる。
ショットキーバリアダイオード1Pの製造方法は、以下の通りである。図9は、図7に示すショットキーバリアダイオード1Pの製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0040】
第2実施形態に係るショットキーバリアダイオード1Pの製造方法が、第1実施形態に係るショットキーバリアダイオード1の製造方法(図6を参照)主に異なる点は、アノード電極14が段階的に形成される点である。
詳しくは、ショットキーバリアダイオード1Pの製造方法では、フィールド絶縁膜13がエピタキシャル層7上に形成された後(ステップS4)、たとえば、スパッタ法により、ショットキー部15Pがエピタキシャル層7およびフィールド絶縁膜13の上に形成される(ステップS10)。その後、スパッタ法により、接続部16Pがショットキー部15P上に形成される(ステップS11)。ショットキー部15Pおよび接続部16Pの形成が完了することによって、アノード電極14の形成が完了する。その後、第1実施形態に係るショットキーバリアダイオード1の製造方法と同様に、パッシベーション層20およびカソード電極8が順次に形成される。
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態に係るショットキーバリアダイオード1Qの要部の断面図である。図11は、図10に示すXI領域の拡大図である。
【0041】
図10および図11において、前述の図1図9に示された構成と同等の構成については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する(後述する図12においても同様)。
第3実施形態に係るショットキーバリアダイオード1Qが、第2実施形態に係るショットキーバリアダイオード1P(図7を参照)と主に異なる点は、アノード電極14がショットキー部15Pおよび接続部16Pの間に位置するバリア部17をさらに含む点である。
【0042】
図10および図11を参照して、バリア部17は、ショットキー部15Pと比較して化学的に安定な物質によって形成されていることが好ましい。バリア部17は、たとえば、チタン(Ti)および窒化チタン(TiN)のうちの少なくとも一種によって形成されている。ショットキー部15P、バリア部17および接続部16Pは、エピタキシャル層7側からこの順番で積層された積層構造を形成している。
【0043】
図10の例では、ショットキー部15Pおよび接続部16Pは、互いに接触しないようにバリア部17によって隔てられている。
第3実施形態に係るショットキー部15Pおよび接続部16Pは、第2実施形態とは異なり、同一の物質によって形成されていてもよく、互いに異なる物質によって形成されていてもよい。たとえば、ショットキー部15Pがアルミニウムによって形成されており、接続部16PがAlCu合金によって形成されていてもよいし、ショットキー部15Pおよび接続部16Pがともにアルミニウムによって形成されていてもよい。
【0044】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、ショットキーバリアダイオード1Qには、ショットキー接合SJおよびpn接合PJの両方が設けられているため、サージ耐量が向上する。さらに、アノード電極14が、アルミニウム合金またはアルミニウムを用いて形成されているため、順方向電圧を低減できる。
第3実施形態によれば、ショットキー部15Pおよび接続部16Pの間にバリア部17が位置している。そのため、接続部16Pに含有される物質がショットキー部15P内に拡散してショットキー部15Pの組成が変化されることを、抑制できる。これにより、ショットキー部15Pの組成が変化することによるショットキー障壁の変化を抑制できる。
【0045】
ショットキー部15P内に拡散する物質は、接続部16Pとしての機能を発現するために接続部16Pに含有されている物質(たとえば、AlCu合金中の銅)、および、接続部材22から接続部16P内に拡散した物質(たとえば、酸素)の少なくともいずれかを含む。
図10の例のように、ショットキー部15Pおよび接続部16Pが互いに接触しないようにバリア部17によって隔てられていれば、接続部16Pからショットキー部15P内への物質の拡散を一層抑制することができる。
【0046】
ショットキー部15Pおよび接続部16Pの間にバリア部17が位置している構成であれば、図10に示す例とは異なり、ショットキー部15Pおよび接続部16Pが全域において隔てられておらず、ショットキー部15Pおよび接続部16Pが部分的に互いに接触していてもよい。
第3実施形態によれば、ショットキー部15Pおよび接続部16Pは、互いに異なる物質によって形成されており、積層構造を形成している。そのため、ショットキー部15Pおよび接続部16Pのそれぞれの役割に適した物質を個別に選択することができる。
【0047】
ショットキーバリアダイオード1Qの製造方法は、以下の通りである。図12は、図10に示すショットキーバリアダイオード1Qの製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
第3実施形態に係るショットキーバリアダイオード1Qの製造方法が、第2実施形態に係るショットキーバリアダイオード1Pの製造方法(図9を参照)と主に異なる点は、ショットキー部15Pの形成(ステップS10)と、接続部16Pの形成(ステップS11)との間に、バリア部17の形成(ステップS20)が実行される点である。
【0048】
バリア部17は、たとえば、CVD法により、ショットキー部15P上に形成される(ステップS20)。次に、たとえば、スパッタ法により、接続部16Pがバリア部17上に形成される(ステップS11)。ショットキー部15P、バリア部17および接続部16Pの形成が完了することによって、アノード電極14の形成が完了する。その後、第2実施形態に係るショットキーバリアダイオード1Pの製造方法と同様に、パッシベーション層20およびカソード電極8が順次に形成される。
【0049】
<第4実施形態>
図13は、第4実施形態に係るショットキーバリアダイオード1Rの要部の断面図である。図14は、図11に示すXIV-XIV線に沿う断面図である。図15は、図13に示すXV領域の拡大図である。
第4実施形態に係るショットキーバリアダイオード1Rが、第1実施形態に係るショットキーバリアダイオード1(図2を参照)と主に異なる点は、格子欠陥領域60がエピタキシャル層7の表面7aの表層部に形成されている点である。
【0050】
図13図15を参照して、格子欠陥領域60は、格子欠陥がエピタキシャル層7よりも多い領域である。格子欠陥領域60は、エピタキシャル層7にアルゴン(Ar)等の希ガス原子が注入されることによって形成された領域である。そのため、格子欠陥領域60は、希ガス含有領域ともいう。格子欠陥領域60の不純物濃度は、たとえば、10×1019cm-3以上10×1021cm-3以下である。
【0051】
格子欠陥領域60は、ショットキー部15に接している。希ガス原子がエピタキシャル層7に注入されることによって、エピタキシャル層7を構成するSiCの結晶格子が破壊され、格子欠陥が発生する。そのため、格子欠陥領域60は、ショットキー部15に接しているにもかかわらず、ショットキー部15との間にショットキー接合を形成せず、ショットキー部15からエピタキシャル層7へ電流が流れることを阻害する。言い換えると、格子欠陥領域60は、エピタキシャル層7と比較して格子欠陥が多いため、エピタキシャル層7と比較して抵抗が高い高抵抗層である。
【0052】
格子欠陥領域60は、複数の直線状不純物領域41のうちの1つの直線状不純物領域41の周囲に設けられている。
詳しくは、不純物領域40は、格子欠陥領域60に接するように格子欠陥領域60の内側に配置される内側不純物領域45と、格子欠陥領域60の外側に配置される外側不純物領域46とを含む。そして、複数の直線状不純物領域41のうち、格子欠陥領域60の内側に位置する直線状不純物領域41が内側不純物領域45として機能し、複数の直線状不純物領域41のうち、格子欠陥領域60の外側に位置する直線状不純物領域41が外側不純物領域46として機能する。内側不純物領域45は、格子欠陥領域60によって第2方向Yの両側から挟まれている。
【0053】
外側不純物領域46は、格子欠陥領域60に接するように、格子欠陥領域60を挟んで内側不純物領域45とは反対側に配置された一対の外側接触不純物領域47と、格子欠陥領域60から離間するように、格子欠陥領域60を挟んで内側不純物領域45とは反対側に配置された複数の外側離間不純物領域48とを含む。
格子欠陥領域60は、第2方向Yの両側から内側不純物領域45に接している。図14の例では、第1方向Xにおける格子欠陥領域60の両端部は、第1ガード領域31に内方端に接している。図14の例とは異なり、第1方向Xにおける格子欠陥領域60の両端部は、第1ガード領域31に内方端に接しておらず、エピタキシャル層7を介して、第1ガード領域31と対向していてもよい。
【0054】
格子欠陥領域60は、第1方向Xに直線状に延び第2方向Yの一方側から内側不純物領域45に接する第1格子欠陥領域61と、第1方向Xに直線状に延び第2方向Yの他方側から内側不純物領域45に接する第2格子欠陥領域62とを含む。
第2方向Yの一方側の外側接触不純物領域47は、平面視において、第1格子欠陥領域61とエピタキシャル層7とに挟まれている。第2方向Yの他方側の外側接触不純物領域47は、平面視において、第2格子欠陥領域62とエピタキシャル層7とに挟まれている。
【0055】
格子欠陥領域60の底部60aは、半導体基板6に向かう一対の湾曲部と、湾曲部同士を連結する平坦部とを含む。格子欠陥領域60の底部60aの平坦部は、内側不純物領域45の底部45aの平坦部、および、外側接触不純物領域47の底部47aの平坦部と面一に形成されている。
図15に示す例とは異なり、格子欠陥領域60の底部60aの平坦部は、内側不純物領域45の底部45aの平坦部、および、外側接触不純物領域47の底部47aの平坦部よりも第1主面3側に位置していてもよい。逆に、格子欠陥領域60の底部60aの平坦部は、内側不純物領域45の底部45aの平坦部、および、外側接触不純物領域47の底部47aの平坦部よりも第2主面4側に位置していてもよい。
第4実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、ショットキーバリアダイオード1Rには、ショットキー接合SJおよびpn接合PJの両方が設けられているため、サージ耐量が向上する。さらに、アノード電極14が、アルミニウム合金ま
たはアルミニウムを用いて形成されているため、順方向電圧を低減できる。
【0056】
ここで、第1実施形態に係るショットキーバリアダイオード1のように格子欠陥領域60が設けられていない構成では、エピタキシャル層7の厚さTEが大きい場合には、エピタキシャル層7による電圧降下が大きくなり、pn接合PJにかかる電圧が小さくなる。
そこで、第4実施形態のように、格子欠陥領域60を設けることで、格子欠陥領域60に流れる電流I1を抑制し、電流I1を、ショットキー接合SJに流れる電流I2よりも小さくすることができる。これにより、図16Aに示すように、エピタキシャル層7において格子欠陥領域60の近傍に位置する第1近傍部分70による電圧降下V1は、低減されて、エピタキシャル層7においてショットキー接合SJの近傍に位置する第2近傍部分71による電圧降下V2よりも小さくなる。
【0057】
そのため、エピタキシャル層7において内側不純物領域45の近傍に位置する部分の電圧降下も、第1近傍部分70による電圧降下V1と同様に小さくなる。そのため、内側不純物領域45とエピタキシャル層7との間に形成されるpn接合PJ1にかかる電位差VPを、ショットキー接合SJにかかる電位差VSよりも大きくすることができる。したがって、内側不純物領域45とエピタキシャル層7との間に形成されるpn接合PJ1にかかる電位差VPを充分に確保することができる。したがって、サージ耐性を向上させることができる。
【0058】
図16Bに示すように、ショットキー接合SJと内側不純物領域45と間の距離Lが、エピタキシャル層7の厚さTEよりも大きければ、エピタキシャル層7において、内側不純物領域55と半導体基板6との間に位置する部分に電流が流れることを一層抑制できる。
ショットキー接合SJと内側不純物領域45と間の距離Lは、外側接触不純物領域47の幅W1と第1格子欠陥領域61の幅W2(第2格子欠陥領域62の幅)との和に相当する。
【0059】
ショットキー接合SJと外側接触不純物領域47およびエピタキシャル層7の間に形成されるpn接合PJ2との境界73から、エピタキシャル層7の厚さTEと同じ幅だけ内側不純物領域45側に移動した位置よりも内側を内側領域IRといい、内側領域IRよりも外側を外側領域ORという。内側領域IRでは、エピタキシャル層7に流れる電流が格子欠陥領域60によって効果的に抑制される。ショットキー接合SJと内側不純物領域45と間の距離Lがエピタキシャル層7の厚さTEよりも大きければ、エピタキシャル層7に内側領域IRが設定される。言い換えると、ショットキー接合SJと内側不純物領域45と間の距離Lがエピタキシャル層7の厚さTEよりも大きければ、第1近傍部分70が内側領域IR内に位置する。
【0060】
次に、第4実施形態に係るショットキーバリアダイオード1Rの製造方法について説明する。図17は、第4実施形態に係るショットキーバリアダイオード1Rの製造方法のフローチャートである。
ショットキーバリアダイオード1Rの製造方法は、第1実施形態に係るショットキーバリアダイオード1の製造方法とは異なり、不純物領域40が形成された後(ステップS3の後)、格子欠陥領域60が形成される(ステップS30)。その後、フィールド絶縁膜13、アノード電極14、パッシベーション層20およびカソード電極8が順次に形成される。
【0061】
次に、不純物領域40および格子欠陥領域60が形成される様子について詳しく説明する。図18A図18Cは、不純物領域40および格子欠陥領域60が形成される様子を説明するための模式図である。
図18Aに示すように、エピタキシャル層7が成長した後(ステップS2の後)、所定パターンを有するレジストマスク80がエピタキシャル層7上に形成される。イオン注入法によって、エピタキシャル層7の表面7aの表層部においてレジストマスク80によって被覆されていない部分にp型不純物を導入することによって、ガード領域30とともに、不純物領域40(複数の直線状不純物領域41)が形成される(ステップS3)。その後、レジストマスク80が除去される。
【0062】
レジストマスク80が除去された後、図18Bに示すように、格子欠陥領域60が形成されるべき領域を露出させそれ以外の領域を被覆するパターンを有するレジストマスク81が、エピタキシャル層7上に形成される。
具体的には、レジストマスク81は、エピタキシャル層7の表面7aの表層部において内側不純物領域45のベースとなる直線状不純物領域41の両側方を露出させる。次に、図18Cに示すように、イオン注入法によって、エピタキシャル層7の表面7aの表層部においてレジストマスク81によって被覆されていない部分に希ガス原子を導入することによって、内側不純物領域45のベースとなる直線状不純物領域41の両側方に格子欠陥領域60が形成される(ステップS30)。格子欠陥領域60の形成によって、直線状不純物領域41が内側不純物領域45となる。
【0063】
その後、レジストマスク81が除去され、フィールド絶縁膜13がエピタキシャル層7上に形成される(ステップS4)。
<その他の実施形態>
たとえば、第2実施形態および第3実施形態においても、第4実施形態と同様に、格子欠陥領域60を設けることができる。
【0064】
また、上述の各実施形態では、不純物領域40は、複数の直線状不純物領域41によって構成されている。しかしながら、不純物領域40は、平面視においてエピタキシャル層7を行列状に区画するように網目状に形成されていてもよい。
上述の各実施形態のショットキーバリアダイオード1,1P,1Q,1Rでは、半導体基板6およびエピタキシャル層7がn型のSiCからなっており、不純物領域40がp型不純物領域である。しかしながら、上述の実施形態とは異なり、半導体基板6およびエピタキシャル層7がp型のSiCからなっており、不純物領域40がn型不純物領域であってもよい。
【0065】
また、第2実施形態では、ショットキー部15および接続部16は、互いに異なる物質によって形成されており、これらが積層することで積層構造を形成している。しかしながら、ショットキー部15および接続部16が同一の物質によって形成されていても互いに別の層を形成できる場合には、ショットキー部15および接続部16が、積層構造を形成している。
【0066】
上述の各実施形態では、第1部分18Aの組成、および、第2部分18Bの組成は、同一であるとしたが、第1部分18Aの組成、および、第2部分18Bの組成は、完全に同一である必要はなくほぼ同一であればよい。ほぼ同一とは、組成の95%以上が同一であることを意味する。
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0067】
1 :ショットキーバリアダイオード
1P :ショットキーバリアダイオード
1Q :ショットキーバリアダイオード
1R :ショットキーバリアダイオード
2 :半導体層
3 :第1主面(表面)
7 :エピタキシャル層
13 :フィールド絶縁膜(層間絶縁膜)
15 :ショットキー部
15P :ショットキー部
16 :接続部
16P :接続部
16a :表面
17 :バリア部
18 :第1被覆部
18A :第1部分
18B :第2部分
19 :第2被覆部
20 :パッシベーション層(絶縁層)
21 :サブパッド開口
22 :接続部材
30 :ガード領域
31 :第1ガード領域
32 :第2ガード領域
40 :不純物領域
60 :格子欠陥領域
PJ :pn接合
PJ1 :pn接合
PJ2 :pn接合
SJ :ショットキー接合
T :厚さ方向
T1 :ショットキー部の厚さ
T2 :接続部の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図18C