(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156714
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、異常判別方法、学習方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20251007BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059292
(22)【出願日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 祐希
(72)【発明者】
【氏名】西垣 森緒
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 睦弘
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE02
4C601EE21
4C601LL17
(57)【要約】
【課題】部品の取り付け異常を容易に判別することである。
【解決手段】情報処理装置としての超音波診断装置100は、送信部12~信号処理部15からなる取得部と、制御部18と、を備える。取得部は、超音波画像データを取得する。制御部18は、超音波診断装置100の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズを推定するための学習済の推定用データを用いて、取得した超音波画像データから、ノイズを推定する。制御部18は、超音波診断装置100のノイズに対応する部品の取り付け異常を判別する。制御部18は、判別の結果情報を出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像データを取得する取得部と、
超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズを推定するための学習済の推定用データを用いて、前記取得した超音波画像データから、ノイズを推定し、前記超音波診断装置の当該ノイズに対応する部品の取り付け異常を判別し、判別の結果情報を出力する制御部と、を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記部品の取り付け異常は、前記超音波診断装置の製造時の組立不良による異常、又は正常使用していても経時的な変化で生じてしまう部品の取り付けの不具合による異常である請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推定用データは、推定するノイズに対応する部品の取り付け異常の異常個所を推定するためのデータであり、
前記制御部は、前記推定用データを用いて、前記取得した超音波画像データから、前記超音波診断装置の部品の取り付け異常の異常個所を推定し、当該異常個所を含む結果情報を出力する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記異常個所の異常の修復に関する修復情報を出力する請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記推定用データは、許容範囲外の部品の取り付け異常に対応するノイズを推定するためのデータであり、
前記制御部は、前記推定用データを用いて、前記取得した超音波画像データから、前記超音波診断装置の許容範囲外の部品の取り付け異常に基づくノイズを推定する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記取得部は、画像モード及び設定パラメーターの少なくとも一つの設定情報に対応付けられた超音波画像データを取得し、
前記推定用データは、設定情報ごとに用意され、
前記制御部は、前記取得した超音波画像データの設定情報に対応する推定用データを用いて、当該超音波画像データから、前記超音波診断装置の当該ノイズに対応する部品の取り付け異常を判別する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記部品の取り付け異常は、アナログ部品以外の異常である請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記情報処理装置は、前記超音波診断装置であり、
前記取得部は、前記超音波画像データを生成して取得する請求項1から7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズの有/無しの超音波画像データを機械学習して、超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズを推定するための学習済の推定用データを生成する制御部を備える情報処理装置。
【請求項10】
超音波画像データを取得する取得工程と、
超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズを推定するための学習済の推定用データを用いて、前記取得した超音波画像データから、ノイズを推定し前記超音波診断装置の当該ノイズに対応する部品の取り付け異常を判別し、判別の結果情報を出力する制御工程と、を含む異常判別方法。
【請求項11】
超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズの有/無しの超音波画像データを機械学習して、超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズを推定するための学習済の推定用データを生成する制御部を備える学習方法。
【請求項12】
コンピューターを、
超音波画像データを取得する取得部、
超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズを推定するための学習済の推定用データを用いて、前記取得した超音波画像データから、ノイズを推定し前記超音波診断装置の当該ノイズに対応する部品の取り付け異常を判別し、判別の結果情報を出力する制御部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
コンピューターを、
超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズの有/無しの超音波画像データを機械学習して、超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズを推定するための学習済の推定用データを生成する制御部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、異常判別方法、学習方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波探触子により、超音波を被検体内部に照射し、その反射波を受信して解析することにより、被検体内部の超音波画像を表示する超音波診断装置が知られている。被検体は、患者の生体などである。
【0003】
超音波診断装置では、下記の様々な要因で画像にノイズが現れることがある。
・生体由来によるクラッタノイズと呼ばれるもの(故障ではない)。
・反射によって生じるアーチファクト(故障ではない)。
・部品故障時、組立不良による電気的接地が弱い場合や、超音波探触子ケーブルに電気デバイスを近づけるような使用環境に依存するノイズの混入。
これらは全て、超音波診断装置特有である。
【0004】
医師又は技師のユーザーは、ノイズが生じていないかの日常点検として、超音波画像の画像ノイズのチェックを行っている。画像ノイズは、その判定が目視により行われ、見るべきポイントがわからなければ見落としてしまう。これとともに、画像ノイズは、熟練者でなければ、異常か正常かわからないレベルのものもある。画像ノイズが発生したままでの超音波診断装置使用は、誤診に繋がるリスクがある。この状態での超音波診断装置の使用は、避けなければならない。この状態となった場合、サービス・修理要員により再現確認を行い、原因の切り分けや部品交換を行う。この際、ユーザーは超音波診断装置を診断に使えず、診断機会を失うことに繋がる。サービス要員の不足(特に熟練したサービス要員の不足)という社会的問題もあり、ユーザーだけでなくサービス要員でも簡便に検査を行なえることが望ましい。
【0005】
また、トランスデューサー又はシステムの障害状態をニューラルネットワークにより検出する超音波イメージングシステムが知られている(特許文献1参照)。超音波イメージングシステムは、障害状態の検出時にパラメーターを調整して画像データを補償する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の超音波イメージングシステムは、トランスデューサが落とされること又は相互接続ケーブルの物理的な損傷を主眼にしている。よって、当該超音波イメージングシステムは、トランスデューサまでの結線を対象として、部品故障による障害状態しか検出できない。
【0008】
このため、上記超音波イメージングシステムは、経時的な部品の取り付け部分のゆるみなどの部品の取り付け異常を検出できない。よって、熟練者の目視でしか部品の取り付け異常を判別できなかった。
【0009】
本発明の課題は、部品の取り付け異常を容易に判別することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明の情報処理装置は、
超音波画像データを取得する取得部と、
超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズを推定するための学習済の推定用データを用いて、前記取得した超音波画像データから、ノイズを推定し、前記超音波診断装置の当該ノイズに対応する部品の取り付け異常を判別し、判別の結果情報を出力する制御部と、を備える。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の情報処理装置において、
前記部品の取り付け異常は、前記超音波診断装置の製造時の組立不良による異常、又は正常使用していても経時的な変化で生じてしまう部品の取り付けの不具合による異常である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の情報処理装置において、
前記推定用データは、推定するノイズに対応する部品の取り付け異常の異常個所を推定するためのデータであり、
前記制御部は、前記推定用データを用いて、前記取得した超音波画像データから、前記超音波診断装置の部品の取り付け異常の異常個所を推定し、当該異常個所を含む結果情報を出力する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の情報処理装置において、
前記制御部は、前記異常個所の異常の修復に関する修復情報を出力する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の情報処理装置において、
前記推定用データは、許容範囲外の部品の取り付け異常に対応するノイズを推定するためのデータであり、
前記制御部は、前記推定用データを用いて、前記取得した超音波画像データから、前記超音波診断装置の許容範囲外の部品の取り付け異常に基づくノイズを推定する。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の情報処理装置において、
前記取得部は、画像モード及び設定パラメーターの少なくとも一つの設定情報に対応付けられた超音波画像データを取得し、
前記推定用データは、設定情報ごとに用意され、
前記制御部は、前記取得した超音波画像データの設定情報に対応する推定用データを用いて、当該超音波画像データから、前記超音波診断装置の当該ノイズに対応する部品の取り付け異常を判別する。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の情報処理装置において、
前記部品の取り付け異常は、アナログ部品以外の異常である。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記情報処理装置は、前記超音波診断装置であり、
前記取得部は、前記超音波画像データを生成して取得する。
【0018】
請求項9に記載の発明の情報処理装置は、
超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズの有/無しの超音波画像データを機械学習して、超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズを推定するための学習済の推定用データを生成する制御部を備える。
【0019】
請求項10に記載の発明の異常判別方法は、
超音波画像データを取得する取得工程と、
超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズを推定するための学習済の推定用データを用いて、前記取得した超音波画像データから、ノイズを推定し前記超音波診断装置の当該ノイズに対応する部品の取り付け異常を判別し、判別の結果情報を出力する制御工程と、を含む。
【0020】
請求項11に記載の発明の学習方法は、
超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズの有/無しの超音波画像データを機械学習して、超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズを推定するための学習済の推定用データを生成する制御部を備える。
【0021】
請求項12に記載の発明のプログラムは、
コンピューターを、
超音波画像データを取得する取得部、
超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズを推定するための学習済の推定用データを用いて、前記取得した超音波画像データから、ノイズを推定し前記超音波診断装置の当該ノイズに対応する部品の取り付け異常を判別し、判別の結果情報を出力する制御部、
として機能させる。
【0022】
請求項13に記載の発明は、プログラムにおいて、
コンピューターを、
超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズの有/無しの超音波画像データを機械学習して、超音波診断装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズを推定するための学習済の推定用データを生成する制御部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、部品の取り付け異常を容易に判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の超音波診断装置の概略図である。
【
図2】超音波診断装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】超音波診断装置本体の基板構成及びノイズ経路を示す概略図である。
【
図4】超音波診断装置本体の基板構成及びノイズ経路を示す概略図である。
【
図5】超音波診断装置本体の基板及び電源の構成を示す概略図である。
【
図6】第1の学習処理を示すフローチャートである。
【
図7】第1の異常判別処理を示すフローチャートである。
【
図8】第2の学習処理を示すフローチャートである。
【
図9】第2の異常判別処理を示すフローチャートである。
【
図10】第3の学習処理を示すフローチャートである。
【
図11】第3の異常判別処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の第1~第4の実施の形態を順に詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0026】
(第1の実施の形態)
図1~
図7を参照して、本発明の第1の実施の形態を説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、本実施の形態の装置構成を説明する。
図1は、本実施の形態の超音波診断装置100の概略図である。
図2は、超音波診断装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0027】
図1に示すように、超音波診断装置100は、病院などの医療施設に設けられ、患者の生体などの被検体に超音波を出射して超音波画像データを生成する。また、超音波診断装置100は、機械学習の学習済モデルを利用して超音波画像データから自機の異常を判別する。
【0028】
超音波診断装置100は、超音波診断装置本体1と、超音波探触子2と、を備える。超音波探触子2は、超音波診断装置本体1に接続される。超音波探触子2は、被検体内に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体内で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波探触子2は、超音波探触子本体21と、ケーブル22と、コネクター23と、を有する。超音波探触子本体21は、超音波探触子2のヘッド部であり、超音波を送受信する。ケーブル22は、超音波探触子本体21及びコネクター23に接続される。ケーブル22は、超音波探触子本体21用の駆動信号及び超音波の受信信号が流れるケーブルである。コネクター23は、超音波診断装置本体1のレセプタクルのコネクター(図示略)に接続するためのプラグのコネクターである。
【0029】
超音波診断装置本体1は、コネクター23、ケーブル22を介して、超音波探触子本体21と接続される。超音波診断装置本体1は、超音波探触子本体21に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子本体21に被検体に対して送信超音波を送信させる。超音波探触子2は、超音波探触子本体21にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて電気信号である受信信号を生成する。超音波診断装置本体1は、超音波探触子2で生成された受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像データとして画像化する。
【0030】
超音波探触子本体21は、先端側に振動子(図示略)を有する。各振動子の個数は、任意に設定することができ、実際には、例えば、192個である。各振動子は、例えば、走査方向(方位方向)に一次元アレイ状に複数配列されている。なお、各振動子は、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、本実施の形態では、超音波探触子2としてリニア走査方式の電子スキャンプローブを採用するものとする。しかし、超音波探触子2は、電子走査方式又は機械走査方式の何れでもよい。また、超音波探触子2は、リニア走査方式、セクタ走査方式又はコンベックス走査方式の何れでもよい。超音波診断装置本体1と超音波探触子2とは、ケーブル22を介する有線通信に代えて、無線通信する構成としてもよい。この無線通信は、UWB(Ultra Wide Band)などである。
【0031】
操作入力部11は、医師、技師などのユーザーからの各種操作入力を受け付けるコントロールパネルなどである。操作入力部11は、押しボタン、エンコーダー、レバースイッチ、ジョイスティック、トラックボール、キーボード、タッチパッド、マルチファンクションスイッチなどの操作要素を有する。
【0032】
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイなどの表示パネルを有する。表示部17は、超音波画像データなどの表示情報を表示パネルに表示する。
【0033】
図2に示すように、超音波診断装置本体1は、操作入力部11、送信部12、受信アンプ131、AD(Analog to Digital)変換器132、ビームフォーマー14、信号処理部15、表示部17、制御部18、記憶部19、通信部16を備える。受信アンプ131、AD変換器132、ビームフォーマー14は、受信部として機能する。アナログブロック30は、超音波診断装置100のうち、被検体への超音波の送受信を行い、アナログ信号で処理を行う回路素子のブロックである。アナログブロック30は、送信部12、超音波探触子2、受信アンプ131及びAD変換器132を有する。デジタルブロック40は、超音波診断装置100(超音波診断装置本体1)のうち、デジタル信号で処理を行う回路素子のブロックである。デジタルブロック40は、ビームフォーマー14、信号処理部15及び制御部18を有する。
【0034】
操作入力部11は、ユーザーからの各種操作入力を受け付け、その操作信号を制御部18に出力する。操作入力部11は、表示部17の表示画面に一体的に形成され、ユーザーからのタッチ入力を受け付けるタッチパネルを含む構成としてもよい。
【0035】
送信部12は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2に電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる。送信部12は、例えば、クロック発生回路、遅延回路、パルス発生回路を備える。クロック発生回路は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる。遅延回路は、振動子毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させる。遅延回路は、当該遅延により送信超音波によって構成される送信ビームを集束させる。パルス発生回路は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させる。送信部12は、例えば、超音波探触子2に配列された複数(例えば、192個)の振動子のうちの連続する一部(例えば、64個)を駆動して送信超音波を発生させる。そして、送信部12は、送信超音波を発生させる毎に駆動する振動子を走査方向にずらすことで走査(スキャン)する。
【0036】
受信アンプ131は、超音波探触子2から受信したアナログの電気信号である受信信号を受信する。受信アンプ131は、制御部18の制御に従って、任意のゲイン値(増幅率)で増幅する。AD変換器132は、受信アンプ131で増幅されたアナログの受信信号をデジタルの受信信号に変換する。
【0037】
ビームフォーマー14は、AD変換器132でAD変換されたデジタルの受信信号に対して、振動子毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整える。ビームフォーマー14は、これらの処理後の受信信号を加算(整相加算)して音線データを生成する。
【0038】
信号処理部15は、制御部18の制御に従って、ビームフォーマー14からの音線データに対して包絡線検波処理や対数圧縮などを実施する。信号処理部15は、さらに、これらの実施後の音線データにダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換する。信号処理部15は、当該輝度変換により、受信エネルギーとしての輝度値を有する画素からなるB(Brightness)モード画像データを生成する。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。また、信号処理部15は、画像モードとして、Bモードだけでなく、カラードプラモード、パルスドプラモードなど、他の画像モードの画像データを生成する構成としてもよい。
【0039】
また、信号処理部15は、画像メモリー部(図示略)を有する。画像メモリー部は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーにより構成されている。信号処理部15は、制御部18の制御に従って、Bモード画像データをフレーム単位で画像メモリー部に記憶する。信号処理部15は、画像メモリー部に記憶された超音波画像データを、所定時間毎に1フレーム分ずつ読み出す。
【0040】
信号処理部15は、例えば、DSC(Digital Scan Converter)を有する。信号処理部15は、制御部18の制御に従って、超音波画像データ(Bモード画像データ)に、座標変換などの処理を行って、表示用の画像信号に変換する。信号処理部15は、画像信号を表示部17に出力する。
【0041】
表示部17は、制御部18の制御に従って、信号処理部15から出力された画像信号に従って超音波画像を表示パネルに表示する。また、表示部17は、制御部18から入力される各種表示情報を表示パネルに表示する。
【0042】
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備える。制御部18は、ROMに記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムとCPUとの協働で、超音波診断装置100の各部を制御する。ROMは、半導体などの不揮発メモリーなどにより構成される。ROMは、超音波診断装置100に対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、ガンマテーブルなどの各種データなどを記憶する。特に、ROMは、後述する第1の学習処理を実行するための第1の学習プログラムと、後述する第1の異常判別処理を実行するための第1の異常判別プログラムと、を記憶している。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態でRAMに格納される。CPUは、RAM上の当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0043】
記憶部19は、超音波画像データなどの情報を書き込み及び読み出し可能に記憶するHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの記憶部である。特に、記憶部19は、機械学習の学習済モデルとしての推定用データが記憶される。推定用データは、超音波画像データから超音波診断装置100の部品の取り付け異常に基づく画像ノイズを推定するためのデータである。
【0044】
通信部16は、例えば、LAN(Local Area Network)などの通信ネットワークに接続されたネットワークカードである。例えば、制御部18は、通信部16を介して、通信ネットワーク上の外部機器と情報を送受信する。
【0045】
アナログブロック30は、被検体の生体からの微弱な信号を扱うため、感度の高い受信アンプ131を用いている。一方で、デジタルブロック40は、数ボルトのデジタル信号を用いて高速に演算を行なうため、(電気)ノイズの発生源となる。デジタルブロック40では、発生するノイズが極力抑えられ、また、発生したノイズがアナログブロック30に回りこまないよう対策が行われるのが通常である。
【0046】
図3~
図5を参照して、超音波診断装置100におけるノイズの発生例について説明する。
図3は、超音波診断装置本体1の基板構成及びノイズ経路を示す概略図である。
図4は、超音波診断装置本体1の基板構成及びノイズ経路を示す概略図である。
図5は、超音波診断装置本体1の基板及び電源の構成を示す概略図である。
【0047】
図3及び
図4に示すように、超音波診断装置本体1は、アナログ基板31、スタック32、デジタル基板41、スタック42、フレーム51、信号線52を備える。アナログ基板31は、アナログブロック30の回路素子が実装された基板である。デジタル基板41は、デジタルブロック40の回路素子が実装された基板である。スタック32は、フレーム51へのアナログ基板31の金属製の取付具である。スタック42は、フレーム51へのデジタル基板41の金属製の取付具である。フレーム51は、超音波診断装置本体1の金属製のフレームである。信号線52は、アナログ基板31の導電パターンの端子と、デジタル基板41の導電パターンの端子と、を電気的に接続する信号線である。
【0048】
図3に示すように、アナログ基板31は、スタック32を介して、フレーム51に取り付けられる。デジタル基板41は、スタック42を介して、フレーム51に取り付けられる。また、
図3の矢印のノイズ経路に示すように、デジタル基板41で発生した電気ノイズは、アナログ基板31に回りこまないようにされている。
【0049】
しかし、
図4に示すように、デジタル基板41がスタック42を用いてフレーム51にネジで取り付けられている構造を考える。この構造において、超音波診断装置100の移送中の振動などで当該ネジにゆるみが生じ、浮きが発生する場合がある。この場合、デジタル基板41からフレーム51に伝導していた電気ノイズの経路がなくなる。このため、
図4の矢印のノイズ経路に示すように、電気ノイズが信号線52を伝ってアナログ基板31に回り込む事態になり、表示画面の超音波画像に画像ノイズが発生する。
【0050】
図5に示すように、電源構成を考慮すると、超音波診断装置本体1は、さらに、主電源61、電源部62,63を備える。主電源61は、フレーム51に実装された主電源である。電源部62は、アナログ基板31に実装された電源である。電源部62は、主電源61から供給された電源電力の電圧を変換してアナログ基板31の回路素子に供給する。電源部63は、デジタル基板41に実装された電源である。電源部63は、主電源61から供給された電源電力の電圧を変換してデジタル基板41の回路素子に供給する。
【0051】
このように、アナログ基板31、デジタル基板41は、それぞれ、回路素子に安定した電圧を供給するために、独自の電源部62,63を持っている。電源部62,63は、それぞれ、大元の主電源61から電源電力が供給される。アナログ基板31は、ノイズの少ない回路素子が要求される。このため、電源部62は、シリーズ電源などが用いられる。デジタル基板41は、大電流が供給される。このため、電源部63は、スイッチングレギュレーターなどのDC(Direct Current)-DCコンバーターが用いられることが多い。
【0052】
DC-DCコンバーターは、発振器を搭載しており、電流のオン-オフスイッチングを行うという原理上、スイッチングノイズが発生する。アナログ基板31は、スイッチングノイズが回りこまないように配慮されている。しかし、電源部63の経時的な変化/経年劣化により、例えばスイッチングの周波数が変わってしまうなどの異常が発生し、スイッチングノイズが、アナログ基板31まで伝わる場合がある。この場合、スイッチングノイズが、超音波画像の画像ノイズの発生に影響を与える。
【0053】
超音波診断装置100の部品取り付け異常に対応する部品は、スタック42、電源部62に限定されない。また、部品取り付け異常は、上記のような正常使用していても経時的な変化/経年劣化で生じてしまう異常の他に、製造時の超音波診断装置の組立不良などの部品故障以外の異常を含む。また、
図3~
図5に示したように、部品の取り付け異常は、アナログ基板31の部品(アナログ部品)以外の部品の取り付け異常であるものとする。
【0054】
つぎに、
図6及び
図7を参照して、本実施の形態の超音波診断装置100の動作を説明する。
図6は、第1の学習処理を示すフローチャートである。
図7は、第1の異常判別処理を示すフローチャートである。
【0055】
図6を参照して、超音波診断装置100で実行される第1の学習処理を説明する。第1の学習処理は、部品の取り付け異常に基づく画像ノイズの有/無しの超音波画像データを教師データとして取得して機械学習する処理である。ここでは、開発工程や製造工程においてノイズが発生した場合、もしくは意図的に取付け異常状態にしてノイズを発生させた場合について説明する。
【0056】
あらかじめ、超音波診断装置100は、部品の取り付け異常がない状態とする。超音波診断装置100において、例えば、操作入力部11を介して操作者から第1の学習処理の実行指示が入力される。制御部18は、当該実行指示に応じて、ROMに記憶された第1の学習プログラムに従い、第1の学習処理を実行する。操作者とは、超音波診断装置100の開発者や製造者とする。
【0057】
まず、制御部18は、部品の取り付け異常に基づく画像ノイズ(以下、単に「画像ノイズ」とする)無しの超音波画像データを取得し記憶部19に記憶する(ステップS11)。ステップS11において、制御部18は、送信部12~信号処理部15の制御により、被検体をスキャンして画像ノイズ無しの超音波画像データを生成して取得する。
【0058】
制御部18は、画像ノイズ有の超音波画像データを取得し記憶部19に記憶する(ステップS12)。ここで、画像ノイズ有の状態に関しては、操作者が、超音波診断装置の組立における不具合により画像ノイズが発生した場合や、意図的に部品の取り付けに不具合が生じるようにして画像ノイズを発生させる。以上が、開発工程や製造工程における画像ノイズ無し/有の学習方法であるが、例えば市場において画像ノイズが発生した場合に対応させることも考えられる。この場合において、超音波診断装置100は、通信ネットワークを介して、画像サーバーに通信接続されているものとする。画像サーバーは、部品の取付け異常が発生した超音波診断装置から、この状態で生成された当該異常に基づく画像ノイズ有の超音波画像データを受信し記憶している。この超音波診断装置は、超音波診断装置100と同じ機種のものが好ましい。ステップS12において、制御部18は、通信部16を介して、画像ノイズ有の超音波画像データを画像サーバーに要求し受信して取得する。また、画像サーバーは、画像ノイズ有/無しの超音波画像データを記憶する構成としてもよい。この構成では、ステップS11において、制御部18は、通信部16を介して、画像ノイズ無しの超音波画像データを画像サーバーに要求し受信して取得する。
【0059】
制御部18は、記憶部19に記憶された画像ノイズ有/無しの超音波画像データの蓄積データ数が、所定数以上であるか否かを判別する(ステップS13)。ステップS13の所定数は、画像ノイズ有/無しの超音波画像データの機械学習に十分な蓄積データ数である。機械学習は、例えば、記憶部19に蓄積された画像ノイズ有/無しの超音波画像データを教師データとしてその特徴量の境界を推定する。また、機械学習は、当該境界を用いて超音波画像データの部品の取付け異常に基づく画像ノイズの有/無しの推定用の学習済モデルを推定用データとして生成する。
【0060】
所定数未満である場合(ステップS13;NO)、処理はステップS11に移行される。所定数以上である場合(ステップS13;YES)、制御部18は、記憶部19の画像ノイズ有/無しの超音波画像データを用いて、機械学習する(ステップS14)。制御部18は、ステップS14の機械学習の学習結果から推定用データを抽出する(ステップS15)。ステップS15の推定用データは、入力される超音波画像データから、部品の取り付け異常に基づく画像ノイズ有無を推定する学習済モデルである。制御部18は、ステップS15で抽出された推定用データを記憶部19に記憶する(ステップS16)。第1の学習処理は、終了する。
【0061】
図7を参照して、超音波診断装置100で実行される第1の異常判別処理を説明する。第1の異常判別処理は、被検体をスキャンして超音波画像データを取得し、当該超音波画像データから部品の取り付け異常を判別してその結果情報を表示する処理である。
【0062】
第1の学習処理後、超音波診断装置100が、医療施設に納入され、医師、技師などのユーザーにより使用可能となる。超音波診断装置100において、第1の学習処理後、例えば、操作入力部11を介してユーザーから第1の異常判別処理の実行指示が入力される。制御部18は、当該実行指示に応じて、ROMに記憶された第1の異常判別プログラムに従い、第1の異常判別処理を実行する。
【0063】
まず、制御部18は、操作入力部11への設定情報の入力に応じて、送信部12~信号処理部15の制御により、被検体の超音波画像データを生成して取得する(ステップS21)。設定情報は、画像モード、設定パラメーターなどの超音波画像データの生成の設定条件である。制御部18は、学習済の推定用データを記憶部19から読み出す(ステップS22)。
【0064】
制御部18は、ステップS22の推定用データを用いて、ステップS21の超音波画像データの、部品の取り付け異常に基づく画像ノイズの有無を推定する(ステップS23)。ステップS23において、制御部18は、当該画像ノイズ有無に基づいて、部品の取り付け異常の有無を判別する。制御部18は、ステップS23の判別結果から、部品の取り付け異常があるか否かの結果情報を生成し、当該結果情報を表示部17に表示する(ステップS24)。第1の異常判別処理は、終了する。
【0065】
以上、本実施の形態によれば、情報処理装置としての超音波診断装置100は、取得部としての送信部12~信号処理部15(、超音波探触子2)と、制御部18と、を備える。送信部12~信号処理部15は、超音波画像データを生成して取得する。制御部18は、自装置の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズを推定するための推定用データを用いて、取得した超音波画像データから、画像ノイズを推定する。制御部18は、超音波診断装置100のノイズに対応する部品の取り付け異常を判別する。制御部18は、判別の結果情報を表示部17に表示する。
【0066】
制御部18は、超音波診断装置100の部品の取り付け異常に基づく超音波画像のノイズの有/無しの超音波画像データを機械学習する。制御部18は、超音波診断装置100の部品の取り付け異常に基づく超音波画像の画像ノイズを推定するための学習済の推定用データを生成する。
【0067】
このため、超音波診断装置100の部品の取り付け異常を容易に判別でき、その結果情報をユーザー、サービス要員などに提示できる。また、熟練者の目視でしか判断できない異常判別を超音波診断装置100自体が行なうことができ、省人化できる。
【0068】
部品の取り付け異常は、超音波診断装置100の製造時の組立不良による異常、又は正常使用していても経時的な変化で生じてしまう部品の取り付けの不具合による異常である。このため、ねじの締め忘れ、ケーブルが意図していない場所に接触しているなど、部品故障でなくても超音波画像診断に適切でない、部品の取り付け異常を判別できる。
【0069】
部品の取り付け異常は、アナログ部品以外の異常である。ここでアナログ部品とは、超音波探触子2の振動子からの信号を受信するブロック(いわゆるアナログフロントエンド)を構成する部品を指す。このため、アナログ部品以外の部品の取り付け異常を判別できる。例えば、電源部品の動作状態の異常を判別できる。
【0070】
(第2の実施の形態)
図8、
図9を参照して、本発明に係る第2の実施の形態を説明する。
図8は、第2の学習処理を示すフローチャートである。
図9は、第2の異常判別処理を示すフローチャートである。
【0071】
上記第1の実施の形態は、超音波診断装置100の部品の取り付け異常の有無の判別を行う構成であった。本実施の形態は、部品の取り付け異常の有無の判別とともに、異常がある場合の異常個所を推定する構成である。
【0072】
本実施の形態では、装置構成として、超音波診断装置100を用いるものとする。ただし、制御部18のROMには、後述する第2の学習処理を実行するための第2の学習プログラムと、後述する第2の異常判別処理を実行するための第2の異常判別プログラムと、が記憶されているものとする。
【0073】
つぎに、
図8、
図9を参照して、本実施の形態の超音波診断装置100の動作を説明する。
図8を参照して、超音波診断装置100で実行される第2の学習処理を説明する。
【0074】
本実施の形態において、学習用の部品の取り付け異常に基づく画像ノイズ有の超音波画像データは、設定情報及び異常個所に対応付けられて画像サーバーに記憶されているものとする。設定情報とは、超音波画像データの生成時の画像モード及び設定パラメーターである。画像モードは、Bモード、カラードプラモード、パルスドプラモードなどである。設定パラメーターは、送受信に用いる周波数、ゲイン設定、表示する画像のスケールなどである。異常個所は、超音波診断装置100における部品の取り付け異常が発生した箇所の情報である。
【0075】
超音波診断装置100において、例えば、操作入力部11を介して操作者から第2の学習処理の実行指示が入力される。制御部18は、当該実行指示に応じて、ROMに記憶された第2の学習プログラムに従い、第2の学習処理を実行する。
【0076】
まず、制御部18は、操作入力部11を介して、操作者から、生成する推定用データに対応する設定情報及び異常個所の指定入力を受け付ける(ステップS31)。制御部18は、ステップS11で入力された設定情報に対応し、部品の取り付け異常に基づく画像ノイズ無しの超音波画像データを取得し記憶部19に記憶する(ステップS32)。ステップS32において、制御部18は、送信部12~信号処理部15の制御により、設定情報に設定して被検体をスキャンする。制御部18は、当該スキャンにより、設定情報に対応する、画像ノイズ無しの超音波画像データを生成して取得する。
【0077】
制御部18は、ステップS31で入力された設定情報及び異常個所に対応し、画像ノイズ有の超音波画像データを取得し記憶部19に記憶する(ステップS33)。異常個所の異常に基づく画像ノイズありの状態に関しては、操作者が、超音波診断装置の組立における異常個所の不具合により画像ノイズが発生した場合や、意図的に異常個所の部品の取り付けに不具合が生じるようにして画像ノイズを発生させる。画像サーバーは、部品の取付け異常が発生した超音波診断装置100から、この状態で生成された当該異常個所の異常に基づく画像ノイズ有の超音波画像データを受信し記憶している。この場合、ステップS33において、制御部18は、通信部16を介して、入力された設定情報及び異常個所に対応する、画像ノイズ有の超音波画像データを画像サーバーに要求し受信して取得する。また、画像サーバーは、設定情報及び異常個所に対応する、画像ノイズ有/無しの超音波画像データを記憶する構成としてもよい。この構成では、ステップS32において、制御部18は、通信部16を介して、入力された設定情報に対応する、画像ノイズ無しの超音波画像データを画像サーバーに要求し受信して取得する。
【0078】
なお、市場において、上記に想定した以外の異常個所による画像ノイズが発生する場合もあり得る。この場合には画像ノイズが記録され、画像ノイズ有の超音波画像データが通信ネットワーク経由で画像サーバーに取得される、もしくは超音波診断装置100の修理時に取得される。同時にサービス要員により異常個所の特定がなされ、異常個所指定の超音波画像データとして用いられる。
【0079】
ステップS34は、
図6の第1の学習処理のステップS13と同様である。所定数以上である場合(ステップS34;YES)、制御部18は、操作入力部11を介する操作者からの全ての設定情報及び異常個所が指定済か否かの入力を受け付ける。制御部18は、当該入力に応じて、全ての設定情報及び異常個所が指定済か否かを判別する(ステップS35)。指定済でない場合(ステップS34;NO)、処理はステップS31に移行される。
【0080】
指定済である場合(ステップS34;YES)、処理はステップS36に移行される。制御部18は、記憶部19の設定情報及び異常個所ごとの、画像ノイズ有/無しの超音波画像データを用いて、機械学習する(ステップS36)。制御部18は、ステップS36の機械学習の学習結果から、設定情報及び異常個所ごとの推定用データを抽出する(ステップS37)。ステップS37の推定用データは、入力される超音波画像データから、各設定情報及び各異常個所の部品の取り付け異常に基づく画像ノイズ有無を推定する学習済モデルである。さらに、ステップS37の推定用データは、画像ノイズ有と推定した場合の当該画像ノイズの部品の取り付け異常に対応する異常個所を推定する学習モデルである。制御部18は、ステップS37で抽出された設定情報及び異常個所ごとの推定用データを記憶部19に記憶する(ステップS38)。第2の学習処理は、終了する。
【0081】
図9を参照して、超音波診断装置100で実行される第2の異常判別処理を説明する。第2の異常判別処理は、被検体をスキャンして超音波画像データを取得し、当該超音波画像データから部品の取り付け異常を判別し異常個所を推定してその結果情報を表示する処理である。
【0082】
第2の学習処理後、超音波診断装置100が、医療施設に納入され、ユーザーにより使用可能となる。超音波診断装置100において、例えば、操作入力部11を介してユーザーから第2の異常判別処理の実行指示が入力される。制御部18は、当該実行指示に応じて、ROMに記憶された第2の異常判別プログラムに従い、第2の異常判別処理を実行する。
【0083】
まず、制御部18は、操作入力部11を介するユーザーからの設定情報の入力を受け付ける(ステップS41)。ステップS41において、制御部18は、送信部12~信号処理部15の制御により、入力された設定情報に対応する被検体の超音波画像データを生成して取得する。制御部18は、ステップS41の設定情報に対応する学習済の各異常個所の推定用データを記憶部19から読み出す(ステップS42)。
【0084】
制御部18は、ステップS42の推定用データを用いて、ステップS41の超音波画像データの、部品の取り付け異常に基づく画像ノイズ有無を推定する(ステップS43)。ステップS43において、制御部18は、当該画像ノイズ有無に基づく部品の取り付け異常の有無を判別する。ステップS43において、制御部18は、ステップS42の推定用データを用いて、部品の取り付け異常がある場合の当該異常に対応する異常箇所を推定する。制御部18は、ステップS43の判別、推定結果から、部品の取り付け異常の有無及び異常個所の結果情報を生成し、当該結果情報を表示部17に表示する(ステップS44)。第2の異常判別処理は、終了する。
【0085】
以上、本実施の形態によれば、推定用データは、推定する画像ノイズに対応する部品の取り付け異常の異常個所を推定するためのデータである。制御部18は、推定用データを用いて、取得した超音波画像データから、超音波診断装置100の部品の取り付け異常の異常個所を推定し、当該異常個所を含む結果情報を表示部17に表示する。このため、ユーザー、サービス要員などは、部品の取り付け異常の異常個所を容易に認識でき、当該異常の対処を容易にできる。
【0086】
送信部12~信号処理部15(、超音波探触子2)は、画像モード及び設定パラメーターの設定情報に対応付けられた超音波画像データを生成して取得する。推定用データは、設定情報ごとに用意される。制御部18は、取得した超音波画像データの設定情報に対応する推定用データを用いて、当該超音波画像データから、超音波診断装置100の画像ノイズに対応する部品の取り付け異常を判別する。このため、設定情報ごとに適切に作成された推定用データを用いることができ、超音波画像データの設定情報に対応する画像ノイズを精度よく推定できる。よって、部品の取り付け異常の画像ノイズの判別の精度を高めることができる。さらに、画像ノイズを推定しやすい特定の画像モード(Bモード、カラードプラモード、パルスドプラモードなど)を指定することで、部品の取り付け異常の判別の精度をより高めることができる。
【0087】
なお、本実施の形態において、入力された超音波画像データの設定情報を推定するための学習済モデルをさらに用いる構成としてもよい。ステップS42において、本実施の形態の設定情報の学習済モデルを用いて推定された設定情報に対応する推定用データが記憶部19から読み出される。
【0088】
(第3の実施の形態)
図10を参照して、本発明に係る第3の実施の形態を説明する。
図10は、第3の学習処理を示すフローチャートである。
【0089】
上記第1の実施の形態は、超音波診断装置100の超音波画像データの画像ノイズに基づく部品の取り付け異常の有無の判別を行う構成であった。しかし、画像ノイズがある場合にも、診断の許容範囲内の部品の取り付け異常が発生しているケースもある。本実施の形態は、超音波画像データに許容範囲外の部品の取り付け異常が発生する画像ノイズがある場合に、部品の取り付け異常有を判別する構成である。
【0090】
本実施の形態では、装置構成として、超音波診断装置100を用いるものとする。ただし、制御部18のROMには、後述する第3の学習処理を実行するための第3の学習プログラムと、第1の異常判別プログラムと、が記憶されているものとする。
【0091】
つぎに、
図10を参照して、本実施の形態の超音波診断装置100の動作を説明する。
図10を参照して、超音波診断装置100で実行される第3の学習処理を説明する。
【0092】
本実施の形態において、学習用の画像ノイズ有の超音波画像データは、異常有無ラベルが付与されて画像サーバーに記憶されているものとする。異常有無ラベルは、付与先の超音波画像データの画像ノイズの許容範囲外の部品の取り付け異常有無を示すラベルである。このため、画像ノイズ有の超音波画像データであっても、許容範囲外の部品の取り付け異常無の異常有無ラベルが付与されているものもある。
【0093】
超音波診断装置100において、例えば、操作入力部11を介して操作者により第3の学習処理の実行指示が入力される。制御部18は、当該実行指示に応じて、ROMに記憶された第3の学習プログラムに従い、第3の学習処理を実行する。
【0094】
まず、制御部18は、部品の取り付け異常に基づく画像ノイズ無しの超音波画像データを取得し記憶部19に記憶する(ステップS51)。ステップS51において、制御部18は、送信部12~信号処理部15の制御により、設定情報に設定して被検体をスキャンする。制御部18は、当該スキャンにより、設定情報に対応する、画像ノイズ無しの超音波画像データを生成して取得する。
【0095】
制御部18は、画像ノイズ有の超音波画像データを取得し記憶部19に記憶する(ステップS52)。診断の許容範囲内/外の画像ノイズありの状態に関しては、操作者が、超音波診断装置の組立における不具合により画像ノイズが発生した場合や、意図的に部品の取り付けに不具合が生じるようにして画像ノイズを発生させてもよい。操作者は、画像ノイズが許容範囲外か内かを判断し、判別結果の内容の異常有無フラグを、画像ノイズを含む超音波画像データに付与する。画像サーバーは、部品の取付け異常が発生した超音波診断装置から、この状態で生成された当該異常に基づく異常有無フラグ付きの画像ノイズ有の超音波画像データを受信し記憶している。ステップS52において、制御部18は、通信部16を介して、異常有無フラグ付きの画像ノイズ有の超音波画像データを画像サーバーに要求し受信して取得する。また、画像サーバーは、画像ノイズ有/無しの超音波画像データを記憶する構成としてもよい。この構成では、ステップS52において、制御部18は、通信部16を介して、画像ノイズ無しの超音波画像データを画像サーバーに要求し受信して取得する。
【0096】
なお、市場において、上記で想定した以外の許容範囲外/内の異常個所による画像ノイズの発生が生じ、対応が必要な場合もあり得る。この場合には画像ノイズが記録され、画像ノイズ有の超音波画像データが通信ネットワーク経由で画像サーバーに取得される、もしくは超音波診断装置100の修理時に取得される。同時にサービス要員により、超音波画像データに部品取り付け異常の許容範囲内/外の異常有無フラグが付与される。また、異常個所の特定がなされ、異常個所指定の超音波画像データとして用いられてもよい。
【0097】
ステップS53は、
図6の第1の学習処理のステップS13と同様である。所定数以上である場合(ステップS53;YES)、制御部18は、記憶部19の異常有無ラベル付きの画像ノイズ有/画像ノイズ無しの超音波画像データを用いて、機械学習する(ステップS54)。制御部18は、ステップS54の機械学習の学習結果から、推定用データを抽出する(ステップS55)。ステップS55の推定用データは、入力される超音波画像データから、許容範囲外の部品の取り付け異常に基づく画像ノイズ有無を推定する学習済モデルである。制御部18は、ステップS55で抽出された推定用データを記憶部19に記憶する(ステップS56)。第3の学習処理は、終了する。
【0098】
第3の学習処理後、超音波診断装置100が、医療施設に納入され、ユーザーにより使用可能となる。超音波診断装置100において、上記第1の実施の形態と同様に、第1の異常判別処理が実行される。ステップS23で、許容範囲内の部品の取り付け異常に基づく画像ノイズは、画像ノイズ無しと推定される。
【0099】
以上、本実施の形態によれば、推定用データは、異常有を示す異常有無ラベルに対応する、許容範囲外の部品の取り付け異常に対応する画像ノイズを推定するためのデータである。制御部18は、推定用データを用いて、取得した超音波画像データから、超音波診断装置100の許容範囲外の部品の取り付け異常に基づく画像ノイズを推定する。このため、画像ノイズがあるものの診断の許容範囲内の部品取り付け異常を異常として判別しないようにできる。なお、学習用の超音波画像データの設定者は、異常有無ラベルにより許容範囲を任意に設定できる。
【0100】
(第4の実施の形態)
図11を参照して、本発明に係る第4の実施の形態を説明する。
図11は、第3の異常判別処理を示すフローチャートである。
【0101】
上記第2の実施の形態は、超音波診断装置100の部品の取り付け異常の有無の判別及び異常個所の結果情報を表示する構成であった。本実施の形態は、超音波診断装置100の部品の取り付け異常有の場合に、その異常個所の修復方法なども表示する構成である。
【0102】
本実施の形態では、装置構成として、超音波診断装置100を用いるものとする。ただし、制御部18のROMには、第2の学習プログラムと、後述する第4の異常判別処理を実行するための第4の異常判別プログラムと、が記憶されているものとする。
【0103】
また、記憶部19には、超音波診断装置100の部品の取り付け異常の異常個所に対応付けられた修復情報が記憶されているものとする。修復情報は、各異常個所の修復に関する情報であって、修復方法、修復に必要な用具の情報、サポートセンターへ連絡するための異常の識別情報などを含む。
【0104】
つぎに、
図11を参照して、本実施の形態の超音波診断装置100の動作を説明する。超音波診断装置100において、第2の実施の形態と同様に、第2の学習処理が実行される。
【0105】
図11を参照して、超音波診断装置100で実行される第3の異常判別処理を説明する。第3の異常判別処理は、被検体をスキャンして超音波画像データを取得し、当該超音波画像データから部品の取り付け異常を判別してその修復情報及び結果情報を表示する処理である。
【0106】
第2の学習処理後、超音波診断装置100が、医療施設に納入され、ユーザーにより使用可能となる。超音波診断装置100において、例えば、操作入力部11を介してユーザーから第3の異常判別処理の実行指示が入力される。制御部18は、当該実行指示に応じて、ROMに記憶された第3の異常判別プログラムに従い、第3の異常判別処理を実行する。
【0107】
ステップS71~S73は、
図9の第2の異常判別処理のステップS41~S43と同様である。制御部18は、ステップS73で推定された異常個所に対応する修復情報を記憶部19から読み出す(ステップS74)。制御部18は、ステップS75を実行する。ステップS75において、ステップS73の判別、推定結果から、部品の取付け異常の有無及び異常個所の結果情報を生成する。ステップS75において、制御部18は、生成した結果情報とステップS74で読み出された修復情報とを表示部17に表示する。第3の異常判別処理は、終了する。
【0108】
以上、本実施の形態によれば、制御部18は、部品の取付け異常の異常個所の当該異常の修復に関する修復情報を表示部17に表示する。このため、ユーザー又はサービスマンが異常個所の修復情報を容易に確認でき、異常個所の修復を容易に進めることができる。
【0109】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る超音波診断装置、情報処理装置、超音波画像生成方法、超音波画像学習方法及びプログラムの一例であり、これに限定されるものではない。例えば、上記の各実施の形態の少なくとも2つを適宜組み合わせる構成としてもよい。
【0110】
上記各実施の形態は、画像用データとしての超音波画像データを機械学習して学習済の推定用データを生成する。しかし、この構成に限定されるものではない。画像用データとして、音線データや、音線データ生成と画像データ生成との間に生成される中間データを用いる構成としてもよい。
【0111】
また、上記各実施の形態において、情報処理装置としての超音波診断装置100が、自機で生成した又はサーバーから受信した超音波画像データを用いて機械学習を行う構成とした。しかし、この構成に限定されるものではない。例えば、超音波診断装置100又はサーバーに接続された通信ネットワーク上に情報処理装置としてのPC(Personal Computer)が設けられる構成としてもよい。PCの制御部は、超音波診断装置100又はサーバーから超音波画像データを受信して取得し、機械学習して推定用データを生成する。PCの制御部は、推定用データを超音波診断装置100に送信して記憶させる。又は、PCの制御部は、異常判別の対象の超音波画像データを超音波診断装置100から受信して取得する。PCの制御部は、推定用データを用いて、受信した超音波画像データから、超音波診断装置100の部品の取り付け異常を判別し結果情報を生成する。PCの制御部は、自機の表示部に結果情報を表示する。若しくは、PCの制御部は、超音波診断装置100に結果情報を送信して表示部17に表示させる。この構成によれば、PCによる遠隔の処理により、超音波診断装置100の部品の取り付け異常を判別できる。
【0112】
その他、上記実施の形態における超音波診断装置100の細部構成及び詳細動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0113】
100 超音波診断装置
1 超音波診断装置本体
11 操作入力部
12 送信部
131 受信アンプ
132 AD変換器
14 ビームフォーマー
15 信号処理部
16 通信部
17 表示部
18 制御部
19 記憶部
2 超音波探触子
21 超音波探触子本体
22 ケーブル
23 コネクター
30 アナログブロック
31 アナログ基板
32 スタック
40 デジタルブロック
41 デジタル基板
42 スタック
51 フレーム
52 信号線
61 主電源
62,63 電源部