(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156764
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、演奏装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G10H 1/00 20060101AFI20251007BHJP
G10H 1/18 20060101ALI20251007BHJP
G10G 1/00 20060101ALI20251007BHJP
G09B 15/00 20060101ALI20251007BHJP
【FI】
G10H1/00 Z
G10H1/18 Z
G10G1/00
G09B15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059403
(22)【出願日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石岡 ゆき奈
【テーマコード(参考)】
5D182
5D478
【Fターム(参考)】
5D182AA24
5D182AB03
5D182AB10
5D478CC33
5D478KK12
(57)【要約】
【課題】ペダル操作時にどのようにして楽音が変化するかをユーザに直感的に理解させやすくすること。
【解決手段】情報処理装置は、表示部と、少なくとも1つのプロセッサと、を備える。少なくとも1つのプロセッサは、演奏装置のペダルに対する操作に応じた第1の演奏情報を取得すると、ペダルに対する操作に応じたダンパおよびハンマの動きを模した画像を、表示部に表示させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
少なくとも1つのプロセッサと、を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、演奏装置のペダルに対する操作に応じた第1の演奏情報を取得すると、前記ペダルに対する操作に応じたダンパおよびハンマの動きを模した画像を、前記表示部に表示させる、
情報処理装置。
【請求項2】
前記ペダルは、ダンパペダルを含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記ダンパペダルに対する操作に応じた前記第1の演奏情報を取得すると、全ての鍵に対応する前記ダンパを弦に対して上昇させる画像を、前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ペダルは、ソステヌートペダルを含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記ソステヌートペダルに対する操作に応じた前記第1の演奏情報を取得すると、前記演奏装置でユーザに押されている鍵に対応する前記ダンパを弦に対して上昇させる画像を、前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ペダルは、ソフトペダルを含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記ソフトペダルに対する操作に応じた前記第1の演奏情報を取得すると、前記ハンマを弦に対して所定量スライドさせる画像を、前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記ハンマを前記弦に対してスライドさせた画像において、前記演奏装置に対する押鍵操作に応じて前記ハンマに叩かれる弦と前記ハンマに叩かれない弦とを、異なる形態で表示する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
楽曲を構成する音高のなかで、最も低い音高、最も高い音高を、それぞれ最低音高、最高音高とし、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記楽曲の前記最低音高と前記最高音高を検知し、
前記演奏装置の鍵盤に含まれる全ての鍵に対応する前記ダンパおよび前記ハンマのうち、検知された前記最低音高の鍵から前記最高音高の鍵までの、前記ダンパおよび前記ハンマを、前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記演奏装置に対する鍵盤操作に応じた第2の演奏情報を取得すると、前記鍵盤操作に応じた前記ダンパおよび前記ハンマの動きを模した画像を前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の情報処理装置と、
鍵盤と、
前記ペダルと、を備える、
演奏装置。
【請求項9】
演奏装置のペダルに対する操作に応じた第1の演奏情報を取得すると、前記ペダルに対する操作に応じたダンパおよびハンマの動きを模した画像を、表示部に表示させる、処理を、コンピュータに実行させる、
方法。
【請求項10】
演奏装置のペダルに対する操作に応じた第1の演奏情報を取得すると、前記ペダルに対する操作に応じたダンパおよびハンマの動きを模した画像を、表示部に表示させる、処理を、コンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、情報処理装置、演奏装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ペダルの踏み込み量を表示部に表示する電子鍵盤楽器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の電子鍵盤楽器は、ペダルの踏み込み量を検知し、検知された踏み込み量と模範の踏み込み量とを並べて表示する。ユーザは、これらの踏み込み量を見比べることで、適切な踏み込み量を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電子鍵盤楽器では、ペダルの適切な踏み込み量をユーザに把握させることができたとしても、ペダル操作時にどのような原理によって楽音が変化(音の響き、音の柔らかさなどが変化)するかをユーザに直感的に理解させることが難しい。すなわち、特許文献1に記載の電子鍵盤楽器は、ペダル操作時にどのようにして楽音が変化するかをユーザに直感的に理解させるという観点において改良の余地がある。
【0006】
本開示の実施形態は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ペダル操作時にどのようにして楽音が変化するかをユーザに直感的に理解させやすい情報処理装置、演奏装置、方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、表示部と、少なくとも1つのプロセッサと、を備える。少なくとも1つのプロセッサは、演奏装置のペダルに対する操作に応じた第1の演奏情報を取得すると、ペダルに対する操作に応じたダンパおよびハンマの動きを模した画像を、表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、ペダル操作時にどのようにして楽音が変化するかをユーザに直感的に理解させやすい情報処理装置、演奏装置、方法およびプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電子楽器の外観を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る電子楽器の構成を示すブロック図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る情報処理装置の画面に表示される画像例を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る情報処理装置の画面に表示される画像例を示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る情報処理装置の画面に表示される画像例を示す図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る情報処理装置の画面に表示される画像例を示す図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る情報処理装置の画面に表示される画像例を示す図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る情報処理装置の画面に表示される画像例を示す図である。
【
図10】本開示の一実施形態に係る情報処理装置の画面に表示される画像例を示す図である。
【
図11】本開示の一実施形態に係る情報処理装置の画面に表示される画像例を示す図である。
【
図12】本開示の一実施形態において情報処理装置のプロセッサが実行する処理のフローチャートである。
【
図13】本開示の変形例1に係る情報処理装置の画面に表示される画像例を示す図である。
【
図14】本開示の変形例2に係る情報処理装置の画面に表示される画像例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明は、本開示の一実施形態に係る情報処理装置、演奏装置、方法およびプログラムに関する。共通の又は対応する要素については、同一又は類似の符号を付して、重複する説明を適宜簡略又は省略する。
【0011】
図1に示される電子楽器1は、演奏装置の一例であり、例えば電子キーボードである。電子楽器1は、電子ピアノなど、電子キーボード以外の電子鍵盤楽器でもよい。
【0012】
本開示に係る演奏装置は電子楽器1に限らない。演奏装置は、例えば、電子楽器1を再現する楽器アプリがインストールされた情報処理装置でもよい。例示的には、演奏装置は、このような楽器アプリがインストールされたスマートフォン、タブレット端末、ノートPC(Personal Computer)、携帯ゲーム機、PDA(Personal Digital Assistant)でもよい。
【0013】
すなわち、本開示に係る演奏装置は、楽器アプリがインストールされた情報処理装置3(スマートフォン、タブレット端末、ノートPCなど)でもよい。この場合、ユーザは、例えば、楽器アプリ上で表示される鍵盤およびペダルを操作することで、楽曲を演奏することができる。
【0014】
電子楽器1は、コンピュータの一例である。電子楽器1は、
図2に示されるように、ハードウェア構成として、プロセッサ10、RAM(Random Access Memory)11、フラッシュROM(Read Only Memory)12、外部接続インタフェース13、鍵盤14、ペダルユニット15、ペダル用端子16、スイッチパネル17、キースキャナ18、LCD(Liquid crystal display)ユニット19、音源LSI(Large Scale Integration)20、D/Aコンバータ21およびアンプ22を備える。電子楽器1の各部は、バス23により接続される。
【0015】
プロセッサ10は、フラッシュROM12に格納されたプログラムおよびデータを読み出す。プロセッサ10は、RAM11をワークエリアとして用いることにより、電子楽器1を統括的に制御する。
【0016】
プロセッサ10は、例えばシングルプロセッサまたはマルチプロセッサであり、少なくとも1つのプロセッサを含む。複数のプロセッサを含む構成とした場合、プロセッサ10は、単一の装置としてパッケージ化されてもよく、また、電子楽器1内で物理的に分離した複数の装置で構成されてもよい。プロセッサ10は、例えば、制御部、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)またはMCU(Micro Controller Unit)と呼ばれてもよい。
【0017】
RAM11は、データやプログラムを一時的に保持する。RAM11には、フラッシュROM12から読み出された各種プログラム、各種データが保持される。
【0018】
フラッシュROM12は、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)などの不揮発性の半導体メモリである。フラッシュROM12は、制御プログラム12Aを記憶する。プロセッサ10が制御プログラム12Aを実行することにより、本開示の一実施形態に係る電子楽器1の各種処理が実行される。
【0019】
外部接続インタフェース13は、例えば、プロセッサ10の制御下で、外部のMIDI(Musical Instrument Digital Interface)機器とMIDIデータ(MIDIメッセージ)をシリアル形式で入出力するインタフェースである。
【0020】
鍵盤14は、第1の演奏操作子である61個の鍵を備える。具体的には、鍵盤14は、36個の白鍵と25個の黒鍵を備える。各鍵は、それぞれ異なる音高と対応付けられている。電子楽器1は、鍵盤14が備える鍵に対する押鍵操作に応じて楽音を発音する。鍵盤14の鍵数は、61に限らない。鍵盤14は、88個の鍵、76個の鍵など、他の鍵数を備える構成としてもよい。
【0021】
なお、本開示において使用する「第1の」、「第2の」などの呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量または順序を全般的に限定しない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別するために便宜的に使用される。そのため、第1および第2の要素の参照は、例えば、2つの要素のみが採用されること、第1の要素が第2の要素に先行しなければならないこと、などを意味しない。
【0022】
ペダルユニット15は、ペダル用端子16に接続される。ペダルユニット15は、第2の演奏操作子である3本のペダルを備える。具体的には、ペダルユニット15は、ダンパペダル15A、ソステヌートペダル15B、ソフトペダル15Cを備える。ユーザがペダルを踏んだ状態で鍵盤14の鍵を押すと、電子楽器1は、踏まれているペダルに対応付けられた音響効果を楽音に付加して発音処理を行う。
【0023】
スイッチパネル17は、電子楽器1を操作するための各種操作子を含む。各種操作子には、電源、録音、再生/停止、音調調整、音色選択、音響効果(ビブラート、ピッチベンドなど)などの各種機能に対応する操作子が含まれる。
【0024】
キースキャナ18は、鍵盤14に対する押鍵および離鍵を監視する。キースキャナ18は、例えばユーザによる押鍵操作を検出すると、押鍵イベントをプロセッサ10に出力する。押鍵イベントには、押鍵操作に係る鍵の音高の情報(キーナンバ)が含まれる。キーナンバは、鍵番号、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)キー、ノートナンバと呼ばれることもある。音高は、ノートと呼ばれることもある。
【0025】
本実施形態では、鍵の押鍵速度(ベロシティ)を計測する手段が別途設けられており、この手段により計測されたベロシティも押鍵イベントに含まれる。例示的には、各鍵について複数の接点スイッチが設けられている。鍵が押される際の各接点スイッチが導通する時間の差により、ベロシティが計測される。ベロシティは、押鍵操作の強さを示す値ともいえ、また、楽音の大きさ(音量)を示す値ともいえる。
【0026】
LCDユニット19は、LCDおよびドライバを含む。プロセッサ10による制御信号に従ってドライバがLCDを駆動すると、制御信号に応じた画面が表示される。LCDは、有機EL(Electro Luminescence)などの、他の形態の表示装置に置き換えられてもよい。
【0027】
波形データは、フラッシュROM12または不図示の別のメモリに格納される。この波形データは、押鍵操作に応じて楽音が速やかに発音されるように、電子楽器1の起動処理時にRAM11にロードされる。プロセッサ10は、キースキャナ18で押鍵操作が検知されると、RAM11にロードされた波形データのなかから、対応する波形データの読み出しを音源LSI20に指示する。読み出し対象の波形データは、例えば、ユーザによる操作によって選択された音色および押鍵イベントに応じて決まる。
【0028】
音源LSI20は、プロセッサ10の指示のもと、RAM11から読み出した波形データに基づいて楽音を生成する。音源LSI20は、例えば128のジェネレータセクションを備えており、最大で128の楽音を同時に発音することができる。なお、本実施形態では、プロセッサ10と音源LSI20とが別々のプロセッサとして構成されるが、別の実施形態では、プロセッサ10と音源LSI20とが1つのプロセッサとして構成されてもよい。
【0029】
音源LSI20により生成されたデジタル楽音データは、D/Aコンバータ21によりアナログ信号に変換された後、アンプ22により増幅されて、例えばラインアウト端子から出力される。例えばラインアウト端子に接続されたスピーカで楽音が再生される。
【0030】
図1に示されるように、情報処理装置3は、譜面台2に置かれる。情報処理装置3は、コンピュータの一例である。情報処理装置3は、
図3に示されるように、プロセッサ30、フラッシュROM31、HMI(Human Machine Interface)32および通信インタフェース33を備える。
【0031】
プロセッサ30は、CPU、RAM、ROM等を含む素子である。プロセッサ30は、例えば、フラッシュROM31に記憶された制御プログラム31Aをはじめとする各種プログラムをワークエリアであるRAM上に展開し、展開されたプログラムに従って情報処理装置3を制御する。
【0032】
プロセッサ30は、例えばシングルプロセッサ又はマルチプロセッサであり、少なくとも1つのプロセッサを含む。複数のプロセッサを含む構成とした場合、プロセッサ30は、単一の装置としてパッケージ化されたものでもよく、情報処理装置3内で物理的に分離した複数の装置で構成されてもよい。プロセッサ30は、「制御部」と呼ばれてもよい。
【0033】
フラッシュROM31は、不揮発性の半導体メモリであり、二次記憶装置又は補助記憶装置としての役割を担う。フラッシュROM31には、制御プログラム31Aをはじめとする、プロセッサ30が各種処理を行うために使用するプログラムおよびデータが格納される。プロセッサ10が制御プログラム31Aを実行することにより、本開示の一実施形態に係る情報処理装置3の各種処理が実行される。
【0034】
HMI32は、例えば、タッチパネル、メカニカル方式、静電容量無接点方式、メンブレン方式などのキースイッチ、ボタンなどを含む。ユーザがHMI32を操作すると、その操作内容を示す信号がプロセッサ30に出力される。プロセッサ30は、入力された信号に基づいて情報処理装置3を制御する。
【0035】
タッチパネルは、LCD(Liquid Crystal Display)パネル、有機EL(Electro Luminescence)パネル、LED(Light Emitting Diode)パネルなどで構成された画面32Aを含む。HMI32は、例えば、プロセッサ30が制御プログラム31Aを実行することで取得した画像を画面32Aに表示する。すなわち、HMI32は、画像を表示する表示部の一例である。なお、HMI32で表示される画像は、静止画または動画である。
【0036】
通信インタフェース33は、外部機器と通信を行うための無線および有線ユニットを備える。情報処理装置3は、外部接続インタフェース13に接続されたケーブルを介してまたは無線により外部機器(例えば電子楽器1)と通信可能に接続される。
【0037】
通信インタフェース33は、MIDI規格に準拠したインタフェースを含む。プロセッサ30は、通信インタフェース33を介して、外部機器の一例である電子楽器1より受信した演奏情報の入力を受け付ける。入力された演奏情報は、例えばプロセッサ30のRAMに保持される。
【0038】
ここで、グランドピアノにおいて、ユーザは、屋根を開けた状態でペダル操作を行うと、ペダル操作に応じたダンパやハンマの動きを直接見ることができる。ユーザは、ダンパやハンマの動きを直接見ることにより、ペダル操作時にどのような仕組みでどのように楽音が変化(音の響き、音の柔らかさなどが変化)するかを理解しやすい。
【0039】
これに対し、電子楽器1では、グランドピアノと異なり弦が無く、ペダル操作時に物理的にハンマが弦を叩くわけではない。そのため、内部構造が見えたとしてもペダル操作時にどのような仕組みでどのように楽音が変化するかを理解することがユーザには難しい。また、電子楽器1の場合、グランドピアノでいうところの屋根が無いことが多く、そもそもユーザは内部構造を見ることができない。ペダルの原理的な部分を把握していないまま練習をし続けるユーザも少なくなく、特に、初心者は、各ペダルの役割や使いどころを把握し難い。鍵盤演奏をある程度できるような中級者は、各ペダルの役割を把握していても原理をよく知らないままのことがある。そのため、使いどころが掴めず応用が利かない(場合によっては上達が止まってしまう)ことがある。附言するに、初心者や中級者は、各ペダルの使用場面や原理を把握していないことが多く、原理を知らないまま、そもそもペダルを使用しないまま、練習を継続することも少なくない。ユーザによっては、特定の音を持続させるスイッチ、音を弱くするスイッチ、などの感覚で、ペダルを操作してしまう。スイッチと同じ感覚でペダルを操作してしまうと、演奏の表現力を上げることが難しい。
【0040】
そこで、フラッシュROM31に記憶された制御プログラム31Aは、ペダルユニット15に対する操作に応じた第1の演奏情報(例えばコントロールチェンジメッセージ)を取得すると、ペダルユニット15に対する操作に応じたダンパおよびハンマの動きを模した画像を、HMI32(表示部の一例)に表示させる、という処理を、プロセッサ30に実行させる。
【0041】
ユーザは、このような画像を見ることで、ペダル操作時にどのような仕組みでどのように楽音が変化するかを直感的に理解することができる。別の観点では、ユーザは、視覚的な情報(ダンパの動きなど)と楽音の変化とを感覚的に結びつけることができる。ユーザは、ペダル操作の感覚が掴みやすくなり、ペダルを用いた際の演奏の表現力を上げることができる。
【0042】
例えば、HMI32の画面32Aに、
図4に示される画像100が表示される。画像100には、音高C2~C7のそれぞれ(言い換えると、鍵盤14の各鍵)に対応するハンマH1~H61が一列に並べて表示される。ハンマH1~H61のそれぞれの上方に、鍵盤14の各鍵に対応する弦Sが表示され、更に、ハンマH1~H61のそれぞれに対応するダンパD1~D61が一列に並べて表示される。便宜上、ハンマH1~H61を「ハンマH」と総称し、また、ダンパD1~D61を「ダンパD」と総称する。
【0043】
このように、画像100には、鍵盤14の鍵数(ここでは61鍵)に対応するダンパD、ハンマHおよび弦Sが表示される。画像100では、ダンパDおよびハンマHの動きをユーザに簡明に伝えるため、ダンパD、ハンマHおよび弦Sが模式的な図形で示される。
【0044】
画像100では、便宜上、全ての音高に対して弦Sが3本ずつ表示される。一般に、グランドピアノにおいて、低い音域では、張られる弦の本数が少ない。一例として、最も低い1オクターブの各音高に対しては、弦が1本ずつしか張られない。そのため、画像100においても、低い音域の音高に対しては、グランドピアノに合わせて、弦Sを1本または2本だけ表示してもよい。
【0045】
画像100では、補助情報として、音高を示す文字が各ハンマHに記されている。音高に代えてまたは加えて、キーナンバが各ハンマHに記されてもよい。このような補助情報はダンパDに記されてもよい。画像100の簡素化のため、このような補助情報は表示されなくてもよい。
【0046】
図5に示される画像100a~100cは、ペダルが踏まれていない状態で、ユーザが鍵を押してから離すまでの、ダンパDおよびハンマHの動きを示す。例えば、音高C#2の鍵が押されると、電子楽器1のプロセッサ10は、音高C#2の楽音の発音を音源LSI20に指示するとともに、この押鍵操作に応じたノートオンメッセージを情報処理装置3に出力する。
【0047】
情報処理装置3のプロセッサ30は、入力されたノートオンメッセージに基づいて、ダンパDおよびハンマHの動きを示す動画を作成する。作成された動画では、音高C#2に対応するハンマH2が上昇する。ハンマH2の始動から少し遅れてダンパD2が上昇を開始して、弦Sから離れる(
図5の画像100a参照)。
【0048】
上昇したハンマH2が弦Sを叩打する。ハンマH2は、弦Sを叩いた瞬間落下する(
図5の画像100b参照)。落下したハンマH2は、元の位置に戻る。ユーザは、ダンパD2による押さえが解除された状態の弦SがハンマH2で叩かれる様子を見ることで、音高C#2の楽音がどのようにして鳴るかを直感的に理解することができる。
【0049】
ユーザのより直感的な理解を深めるため、動画内においてハンマHで叩かれた弦Sを振動させてもよい。また、
図5の画像100bに示されるように、振動中の弦Sに対してエフェクトEFを表示してもよい。
図5の例示では、振動中の弦Sを矩形で囲うエフェクトEFが表示される。この矩形図形は、振動を示す表示形態(例えば、周期的に明滅する、周期的に色が変化する、など)で表示されてもよい。エフェクトEFはこれに限らない。エフェクトEFは、弦Sを周期的に明滅させたり弦Sの色を周期的に変化させたりするなど、別の表示形態のエフェクトでもよい。
【0050】
音高C#2の鍵から指が離されると、電子楽器1のプロセッサ10は、発音中の音高C#2の楽音の消音を音源LSI20に指示するとともに、この離鍵操作に応じたノートオフメッセージを情報処理装置3に出力する。
【0051】
情報処理装置3のプロセッサ30は、入力されたノートオフメッセージに基づいて、ダンパDおよびハンマHの動きを示す動画を作成する。作成された動画では、ダンパD2が下降して(
図5の画像100c参照)、弦Sを上から押さえる(
図4の画像100参照)。ユーザは、ダンパD2が弦Sを上から押さえる様子を見ることで、音高C#2の楽音がどのようにして消えるかを直感的に理解することができる。
【0052】
図6に示される画像101a~101bは、ダンパペダル15Aが踏まれたときの、ダンパDの動きを示す。例えば、ダンパペダル15Aが踏まれると、電子楽器1のプロセッサ10は、ダンパペダル15Aの操作に応じたコントロールチェンジメッセージ(ホールドメッセージ)を音源LSI20に送信するとともに、このホールドメッセージを情報処理装置3に出力する。
【0053】
情報処理装置3のプロセッサ30は、入力されたホールドメッセージに基づいて、ダンパDの動きを示す動画を作成する。作成された動画では、ホールドメッセージに含まれるダンパペダル15Aの踏み込み量を示す値に応じて、全てのダンパDが弦Sから上昇する。踏み込み量が小さいほどダンパDの上昇量が小さく(
図6の画像101a参照)、踏み込み量が大きいほどダンパDの上昇量が大きい(
図6の画像101b参照)。ダンパペダル15Aの踏み込みが解除されると、全てのダンパDが下降して弦Sを上から押さえる(
図4の画像100参照)。
【0054】
ユーザは、ダンパペダル15Aの踏み込みに伴って、全ての音域でダンパDによる弦Sの押さえが解除される様子を見ることで、全ての音域で楽音が響いて伸びることを直感的に理解することができる。ユーザは、ダンパペダル15Aの踏み込みの解除に伴って、全ての音域でダンパDが弦Sを押さえる様子を見ることで、全ての音域で楽音が通常の響きと伸びになることを直感的に理解することができる。
【0055】
図7に示される画像102a~102cは、ソステヌートペダル15Bが踏み込まれた状態で、ユーザが鍵を押してから離すまでの、ダンパDおよびハンマHの動きを示す。
【0056】
例えば、音高C#2の鍵が押された状態でソステヌートペダル15Bが踏み込まれると、電子楽器1のプロセッサ10は、ソステヌートペダル15Bの操作に応じたコントロールチェンジメッセージ(ソステヌートメッセージ)を音源LSI20に送信するとともに、このソステヌートメッセージを情報処理装置3に出力する。ソステヌートペダル15Bが踏み込まれている間、指定音である音高C#2の楽音が響いて伸びる。
【0057】
ソステヌートペダル15Bが踏み込まれると(例えば、ソステヌートメッセージに含まれるソステヌートペダル15Bの踏み込み量を示す値が64~127のとき)、ソステヌートペダル15Bの機能がオンとなり、ソステヌートペダル15Bによる音響効果が楽音に付加される状態となる。ソステヌートペダル15Bの踏み込みが解除されると(例えば、上記の値が0~63のとき)、ソステヌートペダル15Bの機能がオフとなり、ソステヌートペダル15Bによる音響効果が楽音に付加されない状態となる。
【0058】
情報処理装置3のプロセッサ30は、入力されたソステヌートメッセージに基づいて、ダンパDの動きを示す動画を作成する。作成された動画では、指定音に対応するダンパD2が上昇して所定位置(以下「所定上昇位置」と記す。)で固定される(
図7の画像102a参照)。動画内では、ダンパペダル15Aの場合と同様に、ソステヌートメッセージに含まれるソステヌートペダル15Bの踏み込み量を示す値に応じて、ダンパD2を上昇させてもよい。
【0059】
例えば、ダンパD2が上昇した状態で、音高B6の鍵に対する押鍵、離鍵が順に行われると、電子楽器1のプロセッサ10は、ノートオンメッセージ、ノートオフメッセージを情報処理装置3に順に出力する。
【0060】
情報処理装置3のプロセッサ30は、順に入力されるノートオンメッセージ、ノートオフメッセージに基づいて、ダンパDおよびハンマHの動きを示す動画を作成する。作成された動画では、ハンマH60が、ダンパD60による押さえが解除された状態の弦Sを叩く(
図7の画像102b参照)。次いで、ハンマH60が落下する。更に、ダンパD60が下降して(
図7の画像102c参照)、弦Sを上から押さえる。この間、ソステヌートペダル15Bによる指定音(音高C#2の楽音)に対応するダンパD2は所定上昇位置で固定されたままである。
【0061】
ユーザは、ダンパD2が所定上昇位置で固定される様子を見ることで、ソステヌートペダル15Bを踏み込んでいる間、音高C#2の楽音が響いて伸びることを直感的に理解することができる。ユーザは、離鍵操作のタイミングでダンパD60が下降して弦Sを上から押さえる様子を見ることで、指を離した鍵に対応する音高B6の楽音が伸びずに消えることを直感的に理解することができる。
【0062】
図8に示される画像103a~103cは、ソフトペダル15Cが踏み込まれた状態で、ユーザが鍵を押してから離すまでの、ダンパDおよびハンマHの動きを示す。ソフトペダル15Cが踏み込まれると、電子楽器1のプロセッサ10は、ソフトペダル15Cの操作に応じたコントロールチェンジメッセージ(ソフトメッセージ)を音源LSI20に送信するとともに、このソフトメッセージを情報処理装置3に出力する。
【0063】
ソフトペダル15Cが踏み込まれると(例えば、ソフトメッセージに含まれるソフトペダル15Cの踏み込み量を示す値が64~127のとき)、ソフトペダル15Cの機能がオンとなり、ソフトペダル15Cによる音響効果が楽音に付加される状態となる。ソフトペダル15Cの踏み込みが解除されると(例えば、上記の値が0~63のとき)、ソフトペダル15Cの機能がオフとなり、ソフトペダル15Cによる音響効果が楽音に付加されない状態となる。
【0064】
情報処理装置3のプロセッサ30は、入力されたソフトメッセージに基づいて、ハンマHの動きを示す動画を作成する。作成された動画では、ハンマHが弦Sに対して所定量スライドする(
図8の画像103a参照)。
【0065】
例えば、ハンマHがスライドした状態で、音高C#2の鍵に対する押鍵、離鍵が順に行われると、電子楽器1のプロセッサ10は、ノートオンメッセージ、ノートオフメッセージを情報処理装置3に順に出力する。
【0066】
情報処理装置3のプロセッサ30は、順に入力されるノートオンメッセージ、ノートオフメッセージに基づいて、ダンパDおよびハンマHの動きを示す動画を作成する。作成された動画では、ハンマH2が、ダンパD2による押さえが解除された状態の弦Sを叩く(
図8の画像103b参照)。ハンマHが初期位置からスライドしているため、3本の弦Sのうち2本の弦SだけがハンマH2で叩かれる。次いで、ハンマH2が落下する。更に、ダンパD2が下降して(
図8の画像103c参照)、弦Sを上から押さえる。
【0067】
ユーザは、ハンマHのスライドに伴い、叩かれる弦Sの本数が減る様子を見ることで、楽音が柔らかくなる(別の観点では、楽音が弱くなる)ことを直感的に理解することができる。
図8の例示では、矩形のエフェクトEFは、3本中2本の弦Sを囲う。そのため、ユーザは、叩かれる弦Sの本数が3本から2本に減ったことを容易に理解することができる。
【0068】
図9に示される画像104aは、ダンパペダル15Aとソフトペダル15Cの両方が踏み込まれた状態で、ユーザが鍵を押したときの、ハンマHの動きを示す。画像104aでは、ダンパペダル15Aの踏み込みに伴って、全ての音域でダンパDによる弦Sの押さえが解除されている。更に、ソフトペダル15Cの踏み込みに伴って、全てのハンマHが初期位置からスライドしている。
【0069】
ユーザは、ダンパペダル15Aとソフトペダル15Cの両方の踏み込みに伴い、ダンパDによる弦Sの押さえが解除され且つハンマH2で叩かれる弦Sの本数がハンマH2のスライドによって減る様子を見ることで、何れの鍵が押された場合にも、通常よりも柔らかい楽音が響いて伸びることを直感的に理解することができる。
【0070】
図10に示される画像105aは、ソステヌートペダル15Bとソフトペダル15Cの両方が踏み込まれた状態で、ユーザが鍵を押したときの、ハンマHの動きを示す。画像105aでは、ソステヌートペダル15Bの踏み込みに伴って、指定音に対応するダンパD2による弦Sの押さえが解除されている。更に、ソフトペダル15Cの踏み込みに伴って、全てのハンマHが初期位置からスライドしている。
【0071】
ユーザは、ソステヌートペダル15Bとソフトペダル15Cの両方の踏み込みに伴い、指定音に対応するダンパD2による弦Sの押さえが解除され且つハンマH2で叩かれる弦Sの本数がハンマH2のスライドによって減る様子を見ることで、指定音に対応する鍵が押された場合に限り、通常よりも柔らかい楽音が響いて伸びることを直感的に理解することができる。
【0072】
図11に示される画像106a~106bは、ダンパペダル15Aとソステヌートペダル15Bのうち、ダンパペダル15Aの踏み込みだけ解除された場合の、ダンパDおよびハンマHの動きを示す。
【0073】
画像106aでは、ダンパペダル15Aの踏み込みに伴って、全てのダンパDが所定上昇位置で固定されている。画像106bでは、ダンパペダル15Aの踏み込みの解除に伴ってダンパDが下降し、弦Sを上から押えた状態に戻っている。但し、ソステヌートペダル15Bの踏み込み時に押鍵されていた鍵に対応するダンパD2(すなわち、指定音に対応するダンパD2)だけは所定上昇位置で固定されたままである。
【0074】
ユーザは、ダンパD2が所定上昇位置で固定され続ける様子を見ることで、ダンパペダル15Aの踏み込みの解除後であってもソステヌートペダル15Bを踏み込んでいる限り、指定音の楽音だけは響いて伸びることを直感的に理解することができる。
【0075】
情報処理装置3のプロセッサ30は、演奏情報(例えばMIDIメッセージ)が入力されると、
図12のフローチャートに示される処理の実行を開始する。なお、本実施形態で示されるフローチャートの各ステップは、矛盾の無い範囲で、順序が入れ替えられてもよい。例えば、本開示では、例示的な順序を用いて様々なステップの処理を提示しているが、提示されたこの順序に限定されない。また、本実施形態で示されるフローチャートの各ステップは、矛盾の無い範囲で、並行してまたは並列で実行されてもよい。
【0076】
プロセッサ30は、入力されたMIDIメッセージがノートオンメッセージであるか否かを判定する(ステップS101)。入力されたMIDIメッセージがノートオンメッセージである場合(ステップS101:YES)、プロセッサ30は、ノートオンメッセージに含まれるノートナンバに対応するダンパDおよびハンマHが動く動画を作成して、HMI32の画面32Aに表示させる(ステップS102)。
【0077】
例えば、ペダル操作なしの状態で音高C#2に対応する鍵が押されると、
図5の画像100a~100bを含む動画がHMI32の画面32Aに表示される。ここで、動画のフレームレートは、例えば30fps(Frames Per Second)である。画像100aと画像100bとの間に、ダンパDおよびハンマHの途中の動きを示すフレーム画像が複数回表示される。そのため、ダンパDおよびハンマHは、画面32A上で滑らかな動きで表示される。
【0078】
例えば、ソステヌートペダル15Bが踏み込まれた状態で音高B6に対応する鍵が押されると、
図7の画像102bを含む動画がHMI32の画面32Aに表示される。すなわち、指定音に対応するダンパD2が所定上昇位置で固定された状態で、音高B6に対応するダンパD2およびハンマH2が動く動画が画面32Aに表示される。
【0079】
入力されたMIDIメッセージがノートオフメッセージである場合(ステップS101:NO、ステップS103:YES)、プロセッサ30は、ノートオフメッセージに含まれるノートナンバに対応するダンパDが動く動画を作成して、HMI32の画面32Aに表示させる(ステップS104)。
【0080】
例えば、ペダル操作なしの状態で音高C#2に対応する鍵から指が離されると、
図5の画像100cを含む動画がHMI32の画面32Aに表示される。すなわち、音高C#2に対応するダンパD2が所定上昇位置から弦Sを上から押える位置まで徐々に下降する動画が画面32Aに表示される。
【0081】
例えば、ソフトペダル15Cが踏み込まれた状態で音高C#2に対応する鍵から指が離されると、
図8の画像102cを含む動画がHMI32の画面32Aに表示される。すなわち、ハンマHがずれた状態で、音高C#2に対応するダンパD2が所定上昇位置から弦Sを上から押える位置まで徐々に下降する動画が画面32Aに表示される。
【0082】
このように、プロセッサ30は、電子楽器1(演奏装置の一例)に対する鍵盤操作に応じた第2の演奏情報(例えばノートオンメッセージまたはノートオフメッセージ)を取得すると、この鍵盤操作に応じたダンパDおよびハンマHの動きを模した画像をHMI32(表示部の一例)に表示させる。
【0083】
ユーザは、HMI32の画面32Aに表示される動画を見ることで、鍵盤操作時にどのような仕組みでどのように楽音が鳴ったり消えたりするかを直感的に理解することができる。
【0084】
入力されたMIDIメッセージがコントロールチェンジメッセージである場合(ステップS101:NO、ステップS103:NO、ステップS105:YES)、プロセッサ30は、コントロールチェンジメッセージに応じた動画(言い換えると、ペダル操作に応じた画像)を作成して、HMI32の画面32Aに表示させる(ステップS106)。
【0085】
ホールドメッセージの場合、全てのダンパDがダンパペダル15Aの踏み込み量に応じた位置まで上昇する動画がHMI32の画面32Aに表示される(例えば
図6の画像101a~101b参照)。ソステヌートメッセージの場合、指定音に対応するダンパDが所定上昇位置まで上昇する動画が画面32Aに表示される(例えば、
図7の画像102a、
図10の画像105a参照)。ソフトメッセージの場合、全てのハンマHが所定量スライドする動画が画面32Aに表示される(例えば、
図8の画像103a、
図9の画像104a、
図10の画像105a参照)。
【0086】
このように、プロセッサ30は、ダンパペダル15Aに対する操作に応じた第1の演奏情報(例えばホールドメッセージ)を取得すると、全てのダンパDを弦Sに対して上昇させる画像を、HMI32(表示部の一例)に表示させる。プロセッサ30は、ソステヌートペダル15Bに対する操作に応じた第1の演奏情報(ソステヌートメッセージ)を取得すると、電子楽器1(演奏装置の一例)でユーザに押されている鍵に対応するダンパDを弦Sに対して上昇させる画像を、HMI32に表示させる。プロセッサ30は、ソフトペダル15Cに対する操作に応じた第1の演奏情報(ソフトメッセージ)を取得すると、ハンマHを弦Sに対して所定量スライドさせる画像を、HMI32に表示させる。
【0087】
ユーザは、HMI32の画面32Aに表示される動画を見ることで、ペダル操作時にどのような仕組みでどのように楽音が変化(音の響き、音の柔らかさなどが変化)するかを直感的に理解することができる。ユーザは、ペダル操作(ペダルの使い分け、タイミング、踏み込み量など)の感覚が掴みやすくなり、ペダルを用いた際の演奏の表現力を上げることができる。
【0088】
ノートオンメッセージ、ノートオフメッセージ、コントロールチェンジメッセージの何れにも該当しない場合(ステップS101:NO、ステップS103:NO、ステップS105:NO)、プロセッサ30は、動画を作成することなく
図12に示される処理を終了する。
【0089】
以上が本開示の例示的な実施形態の説明である。本開示の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本開示の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本開示の実施形態に含まれる。
【0090】
上記の実施形態では、動画がHMI32の画面32Aに表示されるが、別の実施形態では、静止画が画面32Aに表示されてもよい。一例として、ダンパペダル15Aが踏み込まれたとき、
図6の画像101bが静止画で画面32Aに表示されてもよい。この場合、プロセッサ30の画像処理負荷が動画を表示させる場合と比べて軽減される。ユーザは、このような静止画を見ることによっても、全ての音域で楽音が響いて伸びることを直感的に理解することができる。
【0091】
上記の実施形態では、部品(ダンパD、ハンマH、弦S)がそれぞれ左右方向に一列に並べて表示されるが、部品の表示形態はこれに限らない。例えば、白鍵に対応する部品と黒鍵に対応する部品とが上下方向にずれて表示されてもよい。この場合、ユーザは、操作した鍵と動作する部品との対応関係をより把握しやすくなる。
【0092】
上記の実施形態では、白鍵に対応する部品と黒鍵に対応する部品とが区別なく表示されるが、部品の表示形態はこれに限らない。例えば、白鍵に対応する部品と黒鍵に対応する部品とが異なる形態(色、形など)で表示されてもよい。この場合も、ユーザは、操作した鍵と動作する部品との対応関係をより把握しやすくなる。
【0093】
画像には、視覚的効果が付加されてもよい。例えば、押鍵または離鍵された鍵に対応する部品が他の部品と異なる形態(色、形など)で表示されてもよい。この場合も、ユーザは、操作した鍵と動作する部品との対応関係をより把握しやすくなる。
【0094】
部品の動きを示す画像は、LCDユニット19の画面に表示されてもよい。すなわち、電子楽器1のプロセッサ10が、情報処理装置3のプロセッサ30と同様の処理を行ってもよい。この場合、電子楽器1が、本開示に係る演奏装置として動作するとともに本開示に係る情報処理装置として動作する。そのため、情報処理装置3を電子楽器1に接続する必要がなくなる。
【0095】
本開示の変形例1においてHMI32の画面32Aに表示される画像例を
図13を用いて説明する。
図13に示される画像107aでは、ソフトペダル15Cの踏み込みに伴って、全てのハンマHが初期位置からスライドしている。画像107aでは、ハンマHが上昇しても叩かれない弦S1と、ハンマHが上昇したときに叩かれる弦S2と、が異なる色で表示される。更に別の変形例では、弦S1と弦S2とが異なる形で表示されてもよい。
【0096】
例えば、画面サイズの都合上、ソフトペダル15CによるハンマHの横ずれ量が表示上では微々たるものである場合がある。そこで、変形例1では、プロセッサ30は、ハンマHを弦Sに対してスライドさせた画像において、電子楽器1(演奏装置の一例)に対する押鍵操作に応じてハンマHに叩かれる弦S2とハンマHに叩かれない弦S1とを、異なる形態で表示する。ユーザは、異なる形態で表示される弦S1と弦S2とを視認することで、ソフトペダル15Cを踏み込むことに伴い、叩かれる弦S2の本数が減ることを、視覚を通じて瞬時に把握することができ、楽音が柔らかくなることを、より直感的に理解することができる。
【0097】
本開示の変形例2においてHMI32の画面32Aに表示される画像例を
図14を用いて説明する。変形例2では、フラッシュROM12に格納された内蔵ライブラリの楽曲を電子楽器1が再生する場合を説明する。便宜上、変形例2において再生対象となる内蔵ライブラリの楽曲を構成する音高のなかで、最も低い音高、最も高い音高を、それぞれ「最低音高」、「最高音高」と記す。
【0098】
図14に示される画像108aには、部品(ダンパD、ハンマH、弦S)を示す図形だけでなく、全体
図F1が含まれる。全体
図F1は、鍵盤14の全体を模式的に示す図である。全体
図F1では、鍵盤14全体のうち、楽曲内の最低音高の鍵から最高音高の鍵までの範囲を分かりやすく示すため、個々の鍵の図示が省略される。
【0099】
プロセッサ30は、例えば、再生対象の楽曲データを予めサーチして、最低音高(例えば音高C3)と最高音高(例えば音高C5)を検知する。プロセッサ30は、次いで、全体
図F1をHMI32の画面32Aに表示させる。具体的には、プロセッサ30は、鍵盤14の全体のうち、最低音高の鍵から最高音高の鍵までの範囲(音高C4~C5)を、これ以外の範囲(音高C2~B3および音高C#5~C7)と異なる色で表示する。プロセッサ30は、更に、全ての鍵の部品でなく、最低音高の鍵から最高音高の鍵までの範囲の部品(ダンパD25~D37およびハンマH25~H37ならびに当該範囲内の弦S)を画面32Aに表示させる。
【0100】
このように、変形例2では、画面32Aに表示する部品の数を減らすことができる。そのため、例えば、部品の1つ1つをより大きいサイズで表示することができる。視認性が向上するため、ユーザは、例えば、ペダル操作時にどのような仕組みでどのように楽音が変化するかを、より直感的に理解しやすくなる。また、ユーザは、全体
図F1を通じて、全体のなかでどのあたりに位置する部品が動くかを把握することができる。
【符号の説明】
【0101】
1:電子楽器、3:情報処理装置、15:ペダルユニット、15A:ダンパペダル、15B:ソステヌートペダル、15C:ソフトペダル、30:プロセッサ、HMI:32、D:ダンパ、H:ハンマ、S:弦