(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156767
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】ゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20251007BHJP
【FI】
C01B39/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059417
(22)【出願日】2024-04-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.集会名: 第39回ゼオライト研究発表会 2.開催日: 令和5年12月1日 3.公開者: ▲高▼木 由紀夫、宮治 孝行 [刊行物等] 1.発行者名: 一般社団法人 日本ゼオライト学会 2.刊行物名: 第39回ゼオライト研究発表会講演予稿集 3.発行日: 令和5年11月30日 4.公開者: ▲高▼木 由紀夫、宮治 孝行
(71)【出願人】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 由紀夫
(72)【発明者】
【氏名】宮治 孝行
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA04
4G073BA05
4G073BA10
4G073BA11
4G073BA32
4G073BA36
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA70
4G073BA81
4G073BB36
4G073CZ49
4G073FB11
4G073GA03
4G073GA11
4G073GB02
4G073UA01
(57)【要約】
【課題】籾殻をアルカリ溶液と反応させる工程を必要とせずに、煤捕集性能と圧損の長期性能に優れるゼオライトの製造方法を提供する。
【解決手段】0.3~3.0重量%のカリウムを含む籾殻由来のシリカ源と構造規定剤とを含む混合物を準備する工程、上記混合物を加熱し、ゼオライト前駆体を得る工程、および上記ゼオライト前駆体を焼成する工程を含む、ゼオライトの製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.3~3.0重量%のカリウムを含む籾殻由来のシリカ源と構造規定剤とを含む混合物を準備する工程、
前記混合物を加熱し、ゼオライト前駆体を得る工程、および
前記ゼオライト前駆体を焼成する工程
を含む、ゼオライトの製造方法。
【請求項2】
前記準備工程が、
籾殻を焼成する工程、および
酸処理によって、前記シリカ源のカリウム量を0.3~3.0重量%にする工程
を含む工程により前記籾殻由来のシリカ源を得る工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記酸がクエン酸を少なくとも含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記構造規定剤が、四級アンモニウム化合物を少なくとも含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記構造規定剤が、テトラプロピルアンモニウム化合物およびジメチルジプロピルアンモニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記混合物が、フッ化物をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記混合物が籾殻由来シリカ源以外のアルカリ溶液を含まない、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記混合物が、モル比で以下の要件:
・0.001以下のAl2O3/SiO2
・0.0002~0.02のTPA+/SiO2
・0.02~0.2のDMDPA+/SiO2
・0.5~5のH2O/SiO2
・0.01~0.5のOH-/SiO2、および
・0.01~0.4のF-/SiO2
を満たす、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ゼオライトのSARが100以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ゼオライトがMFI型構造である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ゼオライトが、1モル%以下のアルミニウム元素を含むシリカライトである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ゼオライトが、中心部から柱状形状物が放射状に配置された略球状の形状を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記柱状形状物の長軸の平均値が5~15μmであり、アスペクト比(長軸/短軸)が2~8である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記略球状の直径が7~20μmである、請求項12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゼオライトを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、有機合成用触媒や、自動車排ガスからのPM粒子の除去フィルター、自動車用のNOxを低減する排ガス浄化触媒として様々に使用されている。
特にアンモニアまたはアンモニア前駆体が還元剤として使用される選択的還元プロセス触媒(SCR触媒)には、ゼオライトが数多く含まれている。
【0003】
近年、自動車業界では、持続可能な社会のために、自動車に利用する再生プラの割合が新たな規制項目に加えられ、製造~廃棄までに係る温室効果ガスの排出量(LCA)についての規制が増えている。そのため、低LCAや低環境負荷な材料由来のゼオライトの需要が増えている。なかでも、非可食バイオマスであり、シリカ含有量の高い籾殻の灰をシリカ源に用いたゼオライトの研究が盛んに行われている。
【0004】
例えば、特許文献1では、籾殻をアルカリ性水溶液と反応させて得られるケイ素含有アルカリ性溶液をシリカ源として用いて水熱合成反応を行うゼオライトの合成方法が開示されている。
【0005】
また、ガソリン自動車用の排ガス浄化フィルター向けとしては、柱形MFI型ゼオライトを添加することで圧力損失が改善されることが特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平01-037412号公報
【特許文献2】特開2022―66003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で提案されているゼオライトの合成方法は、籾殻をアルカリ溶液と反応させる工程を含んでおり、その後の工程でH型にするためにイオン交換工程が追加で必要になるため、生産性の点で不利な場合がある。また、特許文献2で開示されているゼオライトは、煤捕集性能と圧損の長期性能で一定程度の効果が得られているものの、満足できるものではなかった。
【0008】
本開示は、上記課題に鑑み、籾殻をアルカリ溶液と反応させる工程を必要とせずに、煤捕集性能と圧損の長期性能に優れるゼオライトの製造方法を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示者は、鋭意検討した結果、籾殻由来のシリカ源におけるカリウム含量を所定範囲にすることで、煤捕集性能と圧損の長期性能に優れ、生産性に優れるゼオライトを製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本開示の一実施態様によれば、0.3~3.0重量%のカリウムを含む籾殻由来のシリカ源と構造規定剤とを含む混合物を準備する工程、上記混合物を加熱し、ゼオライト前駆体を得る工程、および上記ゼオライト前駆体を焼成する工程を含む、ゼオライトの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、籾殻をアルカリ溶液と反応させる工程を必要とせずに、煤捕集性能と圧損の長期性能に優れるゼオライトの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1ならびに比較例1および2のゼオライトについて粉末X線回折分析(XRD)を行った結果を示す。
【
図2】実施例1ならびに比較例1および2のゼオライトについて走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、ゼオライトの製造方法において、
0.3~3.0重量%のカリウムを含む籾殻由来のシリカ源と構造規定剤とを含む混合物を準備する工程、
上記混合物を加熱し、ゼオライト前駆体を得る工程、および
上記ゼオライト前駆体を焼成する工程
を含む、製造方法に関する。以下、本開示の製造方法について詳述する。
【0014】
[カリウムを含む籾殻由来のシリカ源と構造規定剤とを含む混合物の準備工程]
本開示の一実施態様によれば、0.3~3.0重量%のカリウムを含む籾殻由来のシリカ源と構造規定剤とを含む混合物を準備する工程(以下「準備工程」ともいう)が実施される。
【0015】
上記混合物は、籾殻由来のシリカ源と構造規定剤とが予め混合されたもの(例えば、市販されているもの)であってもよいし、籾殻由来のシリカ源と構造規定剤とを所望の条件で混合したものであってもよい。籾殻由来のシリカ源と構造規定剤とを混合する場合の条件は、当業者であれば適宜調整しうる。籾殻由来のシリカ源と構造規定剤とを混合する場合の温度は、例えば、0~100℃、好ましくは0~60℃、より好ましくは、0~40℃であってもよい。籾殻由来のシリカ源と構造規定剤とを混合する場合の時間は、例えば、0.5~72時間、好ましくは4~48時間、より好ましくは6~24時間であってもよい。
【0016】
[籾殻由来のシリカ源]
本開示の一実施態様によれば、籾殻由来のシリカ源は、0.3~3.0重量%のカリウムを含む。本開示における「籾殻」は、籾または籾米の最も外側にある外皮部分を意味する。籾殻は、種籾由来のものであってもよい。上記シリカ源は、0.3~3.0重量%のカリウムを含むものである限り特段限定されるものではなく、未処理の籾殻を使用してもよいし、加熱処理、酸処理等の処理をした籾殻であってもよい。上記シリカ源中のカリウム量は、公知の方法(例えば、XRD,ICP)により測定してもよい。
【0017】
上記籾殻由来のシリカ源中に含まれるSiO2の量としては、例えば、上記籾殻の全重量を基準として、50~99重量%、好ましくは70~98.5重量%、より好ましくは90~98重量%、さらに好ましくは92~97.5重量%、よりさらに好ましくは95~97重量%であってもよい。
【0018】
本開示の好ましい一実施態様によれば、上記準備工程は、籾殻を焼成する工程(以下「籾殻の焼成工程」ともいう)を含む。上記籾殻の焼成工程を含むことで、OSDA不活性化の原因となる炭素分を除去することができ、本発明の形状のゼオライトが形成しやすくなる点で有利である。上記籾殻の焼成工程は、籾殻の少なくとも一部(好ましくは、実質的に籾殻のすべて)が灰になるまで実施することが好ましい。したがって、本開示のより好ましい実施態様によれば、上記準備工程は、籾殻を灰化する工程を含む。
【0019】
上記籾殻の焼成工程の条件(温度、時間、圧力等)は、本開示の目的を達成することができる限り特段限定されるものではなく、当業者であれば適宜調整しうる。焼成する際の温度としては、例えば、200~1000℃、好ましくは、300~600℃、より好ましくは、350~500℃であってもよい。焼成する際の時間としては、例えば、0.1~48時間、好ましくは、0.5~12時間、より好ましくは、1~6時間であってもよい。焼成する際の圧力としては、例えば、0.01MPa~10MPa、好ましくは0.05~1MPa、より好ましくは常圧である。
【0020】
本開示の好ましい一実施態様によれば、上記準備工程は、酸処理によって、上記シリカ源のカリウム量を0.3~3.0重量%にする工程(以下「酸処理工程」ともいう)を含む。上記酸処理工程を含むことは、籾殻中の酸化リン(例えば、P2O5)、酸化ナトリウム、塩化物等を除去可能な点で有利である。
【0021】
上記酸としては、これらに限定されるものではないが、例えば、塩酸、硝酸、亜硝酸、硫酸等の無機酸;酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、アスコルビン酸等の有機酸等が挙げられこれらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記酸は、製造工程における腐食性・安全性の観点からは、好ましくは有機酸であり、より好ましくはクエン酸である。
【0022】
上記酸の使用量としては、上記シリカ源のカリウム量を0.3~3.0重量%にすることが可能な量である限り特段限定されるものではなく、当業者であれば適宜調整しうる。また、上記酸の処理条件(温度、時間等)は、当業者であれば適宜調整しうる。上記酸を処理する際の温度としては、例えば、0~100℃、好ましくは0~60℃、より好ましくは、0~40℃であってもよい。上記酸を処理する際の時間は、例えば、5秒~24時間、好ましくは0.5分~12時間、より好ましくは1分~1時間であってもよい。
【0023】
本開示のより好ましい実施態様によれば、上記準備工程は、上記籾殻の焼成工程および上記酸処理工程を含む工程により上記籾殻由来のシリカ源を得る工程を含む。
【0024】
[構造規定剤]
本開示における「構造規定剤」(SDA:structure-directing agent)とは、本開示の方法により得られるゼオライトの構造の決定に寄与する材料を意味する。構造規定剤は、上記ゼオライトの鋳型として機能してもよい。
【0025】
構造規定剤としては、目的とするゼオライトが得られる限り特段限定されるものではないが、例えば、第四級アンモニウム化合物等の有機塩基が挙げられる。より具体的には、構造規定剤としては、例えば、テトラプロピルアンモニウム水酸化物等のテトラプロピルアンモニウム化合物、水酸化ジメチルジプロピルアンモニウム等のジメチルプロピルアンモニウム化合物、テトラエチルアンモニウム水酸化物等のテトラエチルアンモニウム化合物、またはそれらのリン酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物もしくは酢酸塩;ジプロピルアミン(DPA);トリエチルアミン;シクロヘキシルアミン;1-メチルアミダゾール;モルホリン;ピリジン;ピペリジン;ジエチルエタノールアミン(DEA)等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。構造規定剤は、好ましくは、第四級アンモニウム化合物を少なくとも含み、より好ましくは、テトラプロピルアンモニウム化合物およびジメチルジプロピルアンモニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含み、さらに好ましくは、テトラプロピルアンモニウム水酸化物および水酸化ジメチルジプロピルアンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0026】
[籾殻由来のシリカ源と構造規定剤とを含む混合物]
上記籾殻由来のシリカ源と上記構造規定剤とを含む混合物中の、上記籾殻由来のシリカ源の量は、本開示の目的を達成することができる限り特段限定されるものではない。上記混合物中の上記籾殻由来のシリカ源の量は、上記混合物の全重量を基準として、例えば、10~90重量%、好ましくは、30~85重量%、より好ましくは、50~80重量%、さらに好ましくは、55~75重量%であってもよい。
【0027】
上記混合物中の、上記構造規定剤の量は、本開示の目的を達成することができる限り特段限定されるものではない。上記混合物中の上記構造規定剤の量は、上記混合物の全重量を基準として、例えば、0.1~30重量%、好ましくは、1~25重量%、より好ましくは、5~20重量%、さらに好ましくは、8~18重量%であってもよい。
【0028】
上記混合物中の、上記籾殻由来のシリカ源と上記構造規定剤との比率は、本開示の目的を達成することができる限り特段限定されるものではない。上記混合物中の上記籾殻由来のシリカ源と上記構造規定剤との比率(上記籾殻由来のシリカ源/上記構造規定剤)は、上記混合物中これらの重量を基準として、例えば、0.3~100、好ましくは、1~50、より好ましくは、1.5~30、さらに好ましくは、2~10であってもよい。
【0029】
上記籾殻由来のシリカ源と上記構造規定剤とを含む混合物は、上記籾殻由来のシリカ源と上記構造規定剤以外に、本開示の目的を損なわない範囲において、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、溶媒等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ハロゲン化物としては、これらに限定されるものではないが、例えば、フッ化物(例えば、フッ化アンモニウム)、フッ化水素アンモニウム、フッ化ジメチル時プロピルアンモニウム等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本開示の一実施態様によれば、上記混合物は、フッ化物(好ましくはフッ化アンモニウム)を含む。上記混合物がフッ化物を含むことで、本発明のゼオライト形状が構成しやすくなる点で有利である。
【0031】
硫酸塩としては、これらに限定されるものではないが、例えば、硫酸アンモニウム等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
硝酸塩としては、これらに限定されるものではないが、例えば、硝酸アンモニウム等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機酸塩としては、これらに限定されるものではないが、例えば、酢酸アンモニウム等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
溶媒としては、これらに限定されるものではないが、例えば、水;メタノール、エタノール等のアルコール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等の極性溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、イソプロピールエーテル等の無極性溶媒等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
また、上記混合物は、籾殻由来シリカ源以外のアルカリ溶液を含まないことが好ましい。上記混合物が籾殻由来シリカ源以外のアルカリ溶液を含まないことで、H型ゼオライトを得る際にイオン交換工程を省略できる点で有利である。
【0035】
上記混合物は、これらに限定されるものではないが、例えば、SiO2、Al2O3、TPA+、DMDPA+、H2O、OH-、F-、NH4
+等の成分を含んでいてもよい。
【0036】
本開示の一実施態様によれば、上記混合物中に含まれる酸化アルミニウム(Al2O3)とSiO2のモル比(Al2O3/SiO2)は、0.001以下、好ましくは、0.0005以下、より好ましくは、0.0003以下である。
【0037】
本開示の一実施態様によれば、上記混合物中に含まれるTPA+とSiO2のモル比(TPA+/SiO2)は、0.0002~0.02、好ましくは、0.0004~0.01、より好ましくは、0.0006~0.002である。
【0038】
本開示の一実施態様によれば、上記混合物中に含まれるDMDPA+とSiO2のモル比(DMDPA+/SiO2)は、0.02~0.2、好ましくは、0.03~0.16、より好ましくは、0.04~0.12である。
【0039】
本開示の一実施態様によれば、上記混合物中に含まれるH2OとSiO2のモル比(H2O/SiO2)は、0.5~5、好ましくは、0.7~3、より好ましくは、0.9~2である。
【0040】
本開示の一実施態様によれば、上記混合物中に含まれるOH-とSiO2のモル比(OH-/SiO2)は、0.01~0.5、好ましくは、0.03~0.3、より好ましくは、0.06~0.15である。
【0041】
本開示の一実施態様によれば、上記混合物中に含まれるF―とSiO2のモル比(F―/SiO2)は、0.01~0.2、好ましくは、0.016~0.16、より好ましくは、0.02~0.12である。
【0042】
本開示の一実施態様によれば、上記混合物中に含まれるNH4
+とSiO2のモル比(NH4
+/SiO2)は、0.01~0.2、好ましくは、0.016~0.16、より好ましくは、0.02~0.12である。
【0043】
本開示の好ましい一実施態様によれば、上記混合物が、モル比で以下の要件:
・0.001以下のAl2O3/SiO2
・0.0002~0.02のTPA+/SiO2
・0.02~0.2のDMDPA+/SiO2
・0.5~5のH2O/SiO2
・0.01~0.5のOH-/SiO2、および
・0.01~0.4のF-/SiO2
を満たす。
【0044】
本開示のより好ましい一実施態様によれば、上記混合物が、モル比で以下の要件:
・0.001以下のAl2O3/SiO2
・0.0002~0.02のTPA+/SiO2
・0.02~0.2のDMDPA+/SiO2
・0.5~5のH2O/SiO2
・0.01~0.5のOH-/SiO2
・0.01~0.4のF-/SiO2、および
・0.01~0.2のNH4
+/SiO2
を満たす。
【0045】
本開示のさらに好ましい一実施態様によれば、上記混合物が、モル比で以下の要件:
・0.0003以下のAl2O3/SiO2
・0.0006~0.002のTPA+/SiO2
・0.04~0.12のDMDPA+/SiO2
・0.9~2のH2O/SiO2
・0.06~0.15のOH-/SiO2
・0.02~0.12のF-/SiO2、および
・0.02~0.12のNH4
+/SiO2
を満たす。
【0046】
[混合物を加熱し、ゼオライト前駆体を得る工程]
本開示の一実施態様によれば、上記籾殻由来のシリカ源と上記構造規定剤とを含む混合物を加熱し、ゼオライト前駆体を得る工程(以下「混合物加熱工程」ともいう)が実施される。上記混合物加熱工程では、水熱反応により上記混合物からゼオライト前駆体が得られる。本開示における「ゼオライト前駆体」とは、ゼオライトの元になる物質である。上記ゼオライト前駆体は、一般的には、構造規定剤の分子を中心として、その周囲をシリカ微粒子が取り囲んだような構造を有する。上記ゼオライト前駆体をさらに焼成等することで、構造規定剤の少なくとも一部が除去され、ゼオライトを得ることができる。
【0047】
上記混合物加熱工程における条件(温度、時間等)は、本開示の目的を達成することができる限り特段限定されるものではなく、当業者であれば適宜調整しうる。加熱する際の温度としては、例えば、80~500℃、好ましくは、100~300℃、より好ましくは、120~250℃であってもよい。また、加熱する際の時間としては、例えば、1~240時間、好ましくは、12~120時間、より好ましくは、24~100時間であってもよい。
【0048】
[ゼオライト前駆体を焼成する工程]
本開示の一実施態様によれば、上記ゼオライト前駆体を焼成する工程(以下「前駆体焼成工程」ともいう)が実施される。上記前駆体焼成工程は、上記ゼオライト前駆体中の構造規定剤の少なくとも一部が除去されるまで(好ましくは、実質的にすべての構造規定剤が除去されるまで)実施してもよい。
【0049】
上記前駆体焼成工程における条件(温度、時間、圧力等)は、本開示の目的を達成することができる限り特段限定されるものではなく、当業者であれば適宜調整しうる。焼成する際の温度としては、例えば、100~1000℃、好ましくは、200~900℃、より好ましくは、400~800℃であってもよい。また、焼成する際の時間としては、例えば、0.5~48時間、好ましくは、1~24時間、より好ましくは、2~12時間であってもよい。焼成する際の圧力としては、例えば0.01MPa~10MPa、好ましくは0.05~1MPa、より好ましくは常圧である。焼成後の物質(例えば、ゼオライト)中に残存する構造規定剤を公知の方法(例えば、XRD,ICP等)で測定することで、所望な程度に焼成が実施されたかを確認してもよい。
【0050】
上記した各工程以外にも、本開示の目的を達成することができる限り、必要に応じて他の工程(例えば、乾燥工程、洗浄工程等)を実施してもよい。このような他の工程は、上記した各工程の前後の任意のタイミングで実施してもよい。
【0051】
[ゼオライト]
本開示の製造方法によれば、所望のゼオライトを製造することができる。
【0052】
[ゼオライトの成分]
上記ゼオライトは、目的とするゼオライトを構成しうる限りにおいて任意の成分を含んでいてもよい。上記ゼオライトに含まれる成分としては、これらに限定されるものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、これらの複合酸化物等が挙げられる。
【0053】
本開示の一実施態様によれば、上記ゼオライトのSAR(シリカ/アルミナ比)は、100以上、好ましくは100~10000、より好ましくは400~5000である。このようなSARとすることで、ゼオライトの劣化原因の一つである脱アルミニウムの影響を低減できる点で有利である。なお、本開示におけるSARは、SiO2とAl2O3の組成比(酸化物のモル比ベース、SiO2/Al2O3)を意味する。
【0054】
上記ゼオライトは、国際ゼオライト学会(IZA:International Zeolite Association)によりアルファベット3文字のコードで特定されている任意の骨格構造を有するものであってもよい。上記ゼオライトの構造としては、これらに限定されるものではないが、例えば、MFI型、BEA型、ACO型、AEI型、AEN型、AFN型、AFT型、AFX型、ANA型、APC型、APD型、ATT型、CDO型、CHA型、DDR型、DFT型、EAB型、EDI型、EPI型、ERI型、GIS型、GOO型、IHW型、ITE型、ITW型、LEV型、KFI型、MER型、MON型、NSI型、OWE型、PAU型、PHI型、RHO型、RTH型、SAT型、SAV型、SIV型、THO型、TSC型、UEI型、UFI型、VNI型、YUG型、ZON型等が挙げられ、MFI型、AEI型、AEN型、APC型、APD型、ATT型、CDO型、GOO型、IHW型、ITE型、PHI型、UEI型、ZON型等の斜方晶系ゼオライトが好ましく用いられる。これらは単独のものであってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。本開示の一実施態様によれば、上記ゼオライトは、MFI型構造を少なくとも含む。本開示の好ましい実施態様によれば、上記ゼオライトは、MFI型構造である。上記ゼオライトの骨格構造は、例えば、国際ゼオライト学会 (IZA:International Zeolite Association)によって公開されているX線回折パターンとの整合をみることにより確認してもよい。
【0055】
本開示の一実施態様によれば、上記ゼオライトは、1モル%以下(好ましくは、0.3モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下)のアルミニウム元素を含むシリカライトである。
【0056】
[ゼオライトの形状]
本開示の一実施態様によれば、上記ゼオライトは、中心部から柱状形状物が放射状に配置された略球状の凝集体を少なくとも含む。本開示のゼオライトは、非晶質部分を実質的に含まないことが好ましい。本開示における「非晶質部分を実質的に含まない」とは、ゼオライト中に含まれる非晶質部分が、走査型電子顕微鏡(SEM)像から選ばれる任意のゼオライト100個を基準として、非晶質相当部が5%以下であることを意味する。
【0057】
上記ゼオライトの柱状形状物は、略角柱(例えば、略三角柱、略四角柱、略円柱)であってもよく、好ましくは略四角柱である。上記ゼオライトの柱状形状物は、長辺断面が略四角形であってもよく、好ましくは略長方形である。
【0058】
上記ゼオライトの上記柱状形状物の長軸、短軸および厚みの長さは、本開示の目的を達成することができる限り特段限定されるものではない。本開示において、上記柱状形状物の長軸は柱状形状物の平面(略四角形)の長辺を意味し、上記柱状形状物の短軸は柱状形状物の平面(略四角形)の短辺を意味し、上記柱状形状物の厚みは柱状形状物の平面(略四角形)の奥行きを意味する。上記ゼオライトの上記柱状形状物の長軸、短軸および厚みの長さは、例えば、走査型電子顕微鏡の画像に基づき測定したものであってもよいし、そのように測定した複数ポイントの平均値であってもよい。例えば、上記ゼオライトの上記柱状形状物の長軸の平均値は、5~15μm、好ましくは、5.5~13μm、より好ましくは、6~10μmであってもよい。例えば、上記ゼオライトの上記柱状形状物の短軸の平均値は、0.1~10μm、好ましくは、0.5~6μm、より好ましくは、1~3μmであってもよい。例えば、上記ゼオライトの上記柱状形状物の厚さの平均値は、0.1~2.0μm、好ましくは、0.1~1.5μm、より好ましくは、0.2~1.0μmであってもよい。また、上記ゼオライトのアスペクト比(長軸/短軸)は、例えば、2~8、好ましくは、3~7、より好ましくは、4~6であってもよい。上記ゼオライトが上記形状を有することで、球状粒子の内部にパーティクル(PM)をトラップする空間を確保しやくなり、煤捕集性能が向上しやすくなる点で有利である。
【0059】
本開示の一実施態様によれば、上記ゼオライトは、上記柱状形状物の長軸の平均値が5~15μmであり、アスペクト比(長軸/短軸)が2~8である。
【0060】
上記ゼオライトの上記略球形状の直径(粒径)は、本開示の目的を達成することができる限り特段限定されるものではない。上記ゼオライトの上記略球形状の直径は、例えば、走査型電子顕微鏡の画像に基づき測定したものであってもよいし、そのように測定した複数ポイントの平均値であってもよい。本開示の一実施態様によれば、上記ゼオライトの上記略球形状の直径は、7~20μm、好ましくは8~18μm、より好ましくは9~16μmである。
【0061】
上記ゼオライトの比表面積は、本開示の目的を達成することができる限り特段限定されるものではない。上記ゼオライトの比表面積は、例えば、窒素吸着法による比表面積測定におけるt-plot解析法により算出してもよい。本開示の一実施態様によれば、t-plot解析法による上記ゼオライトの比表面積は、200~600m2/g、好ましくは250~500」m2/g、より好ましくは300~450m2/gである。
【0062】
上記ゼオライトの空隙率は、本開示の目的を達成することができる限り特段限定されるものではない。上記ゼオライトの空隙率は、例えば、嵩比重により算出してもよい。嵩比重は、(真比重)×(1-空隙率)で表すことができる。本開示の一実施態様によれば、嵩比重から求める上記ゼオライトの空隙は、60~80%、好ましくは65~75%である。
【0063】
本開示の別の実施態様によれば、本開示の製造方法により製造された、ゼオライトが提供される。
【0064】
[ゼオライトの用途]
上記ゼオライトは、種々の用途に使用することができる。上記ゼオライトは、煤の捕集に使用可能であることから、例えば、排ガス浄化用触媒、ゼオライト固有のミクロ細孔を利用した選択的な吸着材料等に使用してもよい。
【0065】
本開示は、以下のものを包含する。
〔1〕0.3~3.0重量%のカリウムを含む籾殻由来のシリカ源と構造規定剤とを含む混合物を準備する工程、
上記混合物を加熱し、ゼオライト前駆体を得る工程、および
上記ゼオライト前駆体を焼成する工程を含む、
ゼオライトの製造方法。
〔2〕上記準備工程が、
籾殻を焼成する工程、および
酸処理によって、上記シリカ源のカリウム量を0.3~3.0重量%にする工程
を含む工程により上記籾殻由来のシリカ源を得る工程を含む、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕上記酸がクエン酸を少なくとも含む、請求項2に記載の製造方法。
〔4〕上記構造規定剤が、四級アンモニウム化合物を少なくとも含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕上記構造規定剤が、テトラプロピルアンモニウム化合物およびジメチルジプロピルアンモニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
〔6〕上記混合物が、フッ化物をさらに含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の製造方法。
〔7〕上記混合物が籾殻由来シリカ源以外のアルカリ溶液を含まない、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の製造方法。
〔8〕上記混合物が、モル比で以下の要件:
・0.001以下のAl2O3/SiO2
・0.0002~0.02のTPA+/SiO2
・0.02~0.2のDMDPA+/SiO2
・0.5~5のH2O/SiO2
・0.01~0.5のOH-/SiO2、および
・0.01~0.4のF-/SiO2
を満たす、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の製造方法。
〔9〕上記ゼオライトのSARが100以上である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の製造方法。
〔10〕上記ゼオライトがMFI型構造である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の製造方法。
〔11〕上記ゼオライトが、1モル%以下のアルミニウム元素を含むシリカライトである、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の製造方法。
〔12〕上記ゼオライトが、中心部から柱状形状物が放射状に配置された略球状の形状を含む、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の製造方法。
〔13〕上記柱状形状物の長軸の平均値が5~15μmであり、アスペクト比(長軸/短軸)が2~8である、〔12〕に記載の製造方法。
〔14〕上記略球状の直径が7~20μmである、〔12〕または〔13〕に記載の製造方法。
【実施例0066】
以下、実施例を用いて本開示の水素化分解触媒をより詳細に説明する。但し、以下の実施例は、本開示の水素化分解触媒を何ら限定することを意図するものではない。なお、特段の記載がない限り、本明細書中に記載のパーセンテージや比率は、質量による。また、特段の記載がない限り、本明細書中に記載の単位や測定方法は、日本工業規格(JIS)の規定による。
【0067】
[実施例1:籾殻シリカを用いたゼオライトの合成]
【0068】
籾殻燻炭(株式会社カインズ製、商品名:くん炭 3L)を400℃で2時間加熱し、種籾由来の灰を得た。得られた灰を、20%クエン酸溶液に接触させ、室温で15分攪拌し、乾燥することで、クエン酸処理した灰を得た。これを実施例1におけるシリカ源とした。なお、クエン酸処理前後におけるシリカ源の組成は、以下の表1のとおりである。したがって、クエン酸処理前のシリカ源は約3.2wt%のカリウムを含有し、クエン酸処理後のシリカ源は約1.6wt%のカリウムを含有していた。また、不純物であるCaO、P2O5、MgO、MnOおよびNa2Oについては、少ないほど好適であるところ、クエン酸処理によって後の合成系への悪影響が許容される程度の量まで減少した。
【0069】
【0070】
上記で得たシリカ源 9.20g(ドライベース)、40%テトラプロピルアンモニウム水酸化物水溶液 0.1g、40%水酸化ジメチルジプロピルアンモニウム 4.2g、フッ化アンモニウム(富士フイルム和光純薬社製) 0.3gを混合し、一晩撹拌保持した。得られた混合物(原料組成物)の組成は、以下の表2のとおりであった。なお、下記表の数値は、SiO2の物質量を1としたときの物質量(モル)比を意味する。
【0071】
【0072】
次いで、上記で得られた混合物(原料組成物)をステンレス製オートクレーブに入れ、攪拌しながら3時間かけて室温から170℃まで昇温し、その後、170℃を維持して69時間撹拌保持した。この水熱処理後の生成物をまとめて105℃乾燥し粉砕した後、600℃で5時間焼成して実施例1のゼオライトを得た。
【0073】
粉末X線回折分析(XRD、装置:スペクトリス株式会社製、XPert Pro Cu-Ka線45kV 40mA)を行った結果、実施例1のゼオライトは、MFI型ゼオライトの単相であった(
図1)。また、蛍光X線(XRF:X-ray Fluorescence、装置:スペクトリス株式会社製、Axios 解析ソフトUniQuant5)により組成分析をした結果、実施例1のゼオライトは、SARが4100であった。
走査型電子顕微鏡(SEM、装置:Phenom-World社製、ProX PREMIUM II)で評価した結果、実施例1のゼオライトは、中心部から柱状形状物が放射状に配置された略球状の凝集体であった(
図2)。また、画像からランダムに10点の柱状物の長さを測定した結果、長軸の平均値が7.5μm、短軸の平均値が1.5μm(アスペクト比(長軸/短軸):5)であり、球状物の直径が11μmであった(表3)。
【0074】
【0075】
[比較例1:ヒュームドシリカを用いたゼオライトの合成]
実施例1において、シリカ源としてクエン酸処理した籾殻由来の灰に替えて、ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、Aerosil 200)をSiO2の物質量が同等となるように添加したこと以外、同様の操作を繰り返して、比較例1のゼオライトを得た。使用したヒュームドシリカは、SiO2 95.00%、H2O 5.00%の組成であり、カリウム及びAl2O3を含有していなかった。なお、比較例1における原料組成物の組成は、表2のとおりであった。
【0076】
粉末X線回折分析(XRD)を行った結果、比較例1のゼオライトはMFI型ゼオライトであった(
図1)。
走査型電子顕微鏡(SEM)で評価した結果、比較例1のゼオライトは、柱状形状物の集合物であるものの、形状は不定形であった(
図2)。また、綿状の非晶質部分が認められた(
図2)。上記SEM画像からランダムに10点の柱状物の長さを測定した結果、長軸の平均値が37.5μm、短軸の平均値が10μm(アスペクト比(長軸/短軸):3.75)であった(表3)。
【0077】
[比較例2:沈降シリカを用いたゼオライトの合成]
実施例1において、シリカ源としてクエン酸処理した籾殻由来の灰に替えて、沈降シリカ(東ソー株式会社製、Nipsil ER)をSiO2の物質量が同等となるように添加したこと以外、同様の操作を繰り返して、比較例2のゼオライトを得た。使用した沈降シリカは、SiO2 91.67%、Al2O3 0.16%、H2O 8.17%の組成であり、カリウムを含有していなかった。なお、比較例2における原料組成物の組成は、表2のとおりであった。
【0078】
粉末X線回折分析(XRD)を行った結果、比較例2のゼオライトはMFI型ゼオライトであった(
図1)。
蛍光X線(XRF)により組成分析をした結果、比較例2のゼオライトは、SARが950であった。
走査型電子顕微鏡(SEM)で評価した結果、比較例2のゼオライトは、柱状形状物であった(
図2)。また、綿状の非晶質部分が認められた(
図2)。上記SEM画像からランダムに10点の柱状物の長さを測定した結果、長軸の平均値が28μm、短軸の平均値が5μm(アスペクト比(長軸/短軸):5.6)であった(表3)。
【0079】
実施例1では、シリカ源のカリウム含有量が所定の範囲内にあることから、柱状物が放射状に配置された球状体のゼオライトが得られた。一方、カリウム含有量が所定の範囲を超えるシリカ源(例えば、カリウム含有量が3.2wt%のもの)を使用した場合には、柱状物が放射状に配置された球状体のゼオライトは得られなかった。
【0080】
例えば、自動車用GPFにおいては、フィルター基材(担体)に触媒粒子を塗布することによってコート層が得られる。この場合、排気ガスは、触媒粒の間隙を通過する。微細な粒子(煤)が排気ガスに含まれていると、当該粒子は、流路の狭いところに引っ掛かって捕集されるが、その際流路の一部を塞ぐので圧力損失が上昇する。
例えば、比較例1の柱状物のゼオライトは、粒子の補足により主流路が部分閉塞となり、長時間の圧損抑制という効果が得られないと考えられる。また、比較例2のゼオライトは、柱状物の粒径が大きく、形状も不規則であることから、微細なパーティクルの捕捉性能が不十分であると考えられる。
一方、本開示のゼオライトは、中心部から柱状物が放射状に配置された球状体となっている。そのため、煤の捕集は主に放射状の柱状結晶部分が行うと考えられる。この柱状突起物の間に微細な粒子が捕捉されても球状体同士の間隙からなる主流路自体の部分閉塞とはならないため、圧力損失上昇の抑制が期待できる点で有利である。