(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156786
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63B 11/04 20060101AFI20251007BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20251007BHJP
【FI】
B63B11/04 B
B63H21/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059448
(22)【出願日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】田平 誠
(72)【発明者】
【氏名】續 修広
(72)【発明者】
【氏名】久間 康充
(72)【発明者】
【氏名】宮本 温人
(72)【発明者】
【氏名】栗林 周平
(72)【発明者】
【氏名】溝口 裕三
(72)【発明者】
【氏名】松永 秀樹
(57)【要約】
【課題】船体の大型化及び復原性の悪化をそれぞれ抑えつつアンモニア又はLPGを燃料として航続距離を延ばす。
【解決手段】船舶は、一対の船側外板と、一対の船側外板を船幅方向に接続する船底外板及び上甲板と、上甲板よりも下方に位置して車両が乗降可能な乗込み甲板と、を有した船体と、船体における乗込み甲板より下方、且つ船底外板よりも上方に設けられて、船首尾方向に延びて燃料としての液化アンモニア又は液化石油ガスを貯留可能な燃料タンクと、を備え、燃料タンクは、船幅方向に対向する左側板および右側板と、上下方向に対向して左側板と右側板とを船幅方向に接続する天板及び底板と、を有した独立型のタンクであり、左側板は、左舷の船側外板から船幅の1/5以上離れて配置され、右側板は、右舷の船側外板から船幅の1/5以上離れて配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船首尾方向に延びる一対の船側外板と、上下方向に離れて配置され一対の前記船側外板を船幅方向に接続する船底外板及び上甲板と、前記上甲板よりも下方に位置して車両が乗降可能な乗込み甲板と、を有した船体と、
前記船体における前記乗込み甲板より下方、且つ前記船底外板よりも上方に設けられて、船首尾方向に延びて燃料としての液化アンモニア又は液化石油ガスを貯留可能な燃料タンクと、を備え、
前記燃料タンクは、
船幅方向に対向する左側板および右側板と、上下方向に対向して前記左側板と前記右側板とを船幅方向に接続する天板及び底板と、を有した独立型のタンクであり、
前記左側板は、左舷の前記船側外板から船幅の1/5以上離れて配置され、
前記右側板は、右舷の前記船側外板から船幅の1/5以上離れて配置されている
船舶。
【請求項2】
前記船体は、
前記乗込み甲板と前記船底外板との間における船首尾方向の中央位置よりも船尾に近い位置に設けられ、前記燃料を消費する燃料消費機器を収容する機関室と、
前記乗込み甲板と前記船底外板との間における船首尾方向の中央位置よりも船首に近い位置で、且つ船幅方向の船体中心線上に設けられた船首側ディープタンクと、
前記機関室と前記船首側ディープタンクとの間に設けられて前記燃料タンクを収容するタンク室と、を備える
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記機関室に対して船首側に設けられるとともに前記タンク室に対して船尾側に設けられて、前記液化アンモニア又は液化石油ガスを調整して前記燃料消費機器に送り込む燃料調整機器を収容する燃料調整室を、更に備え、
前記タンク室は、前記燃料調整室を船首尾方向に区画する燃調室隔壁のうちの最も前記船首に近い船首側燃調室隔壁から、前記船首側ディープタンクを船首尾方向に区画するタンク隔壁のうちの最も前記船尾に近い船尾側タンク隔壁に至るように設けられている
請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
前記タンク室は、前記機関室を船首尾方向に区画する機関室隔壁のうちの最も前記船首に近い船首側機関室隔壁から、前記船首側ディープタンクを船首尾方向に区画するタンク隔壁のうちの最も前記船尾に近い船尾側タンク隔壁に至るように設けられている
請求項2に記載の船舶。
【請求項5】
前記船体は、上下方向における前記タンク室と前記乗込み甲板との間に、車両を搭載可能な車両甲板を更に備える
請求項2に記載の船舶。
【請求項6】
前記機関室に対して船首側に設けられるとともに前記タンク室に対して船尾側に設けられて、前記液化アンモニア又は液化石油ガスを調整して前記燃料消費機器に送り込む燃料調整機器を収容する燃料調整室を、更に備え、
前記船体は、前記タンク室と前記船首側ディープタンクとの間に、車両を搭載可能な低層車両甲板を更に備える
請求項2に記載の船舶。
【請求項7】
前記タンク室は、前記機関室の船首側に設けられ、
前記船体は、前記タンク室と前記船首側ディープタンクとの間に、車両を搭載可能な低層車両甲板を更に備える
請求項2に記載の船舶。
【請求項8】
前記機関室に対して船首側に隣接して設けられて前記液化アンモニア又は液化石油ガスを調整して前記燃料消費機器に送り込む燃料調整機器を収容する燃料調整室を、更に備え、
前記タンク室は、前記船首側ディープタンクの船尾側に設けられ、
前記船体は、前記タンク室と前記燃料調整室との間に、車両を搭載可能な低層車両甲板を更に備える
請求項2に記載の船舶。
【請求項9】
前記タンク室は、前記船首側ディープタンクの船尾側に設けられ、
前記船体は、前記タンク室と前記機関室との間に、車両を搭載可能な低層車両甲板を更に備える
請求項2に記載の船舶。
【請求項10】
前記低層車両甲板は、上下に複数層設けられている
請求項6から9の何れか一項に記載の船舶。
【請求項11】
前記燃料タンクは、前記タンク室内に船首尾方向に複数並んで配置されている
請求項2に記載の船舶。
【請求項12】
前記燃料タンクは、船首に近づくにつれて船幅方向の大きさが漸次減少する幅減少部を有する
請求項1に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船が開示されている。この特許文献1では、液化ガスタンクとして円筒タンクを用いており、円筒タンクの長手方向と船首尾方向とを一致させて乾舷甲板よりも下方の船体内に配置させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている船舶では、円筒タンクを船体内の矩形のタンク区画に配置している。特許文献1以外の船舶においても、一般に、船体内の区画は矩形である場合が多い。このような船体内の断面矩形のタンク区画に断面円形である円筒タンクを配置すると、タンク区画の内面と円筒タンクの外面との間に無駄なスペースが生じてしまう。このような無駄なスペースは、円筒タンクの数量が多いほど増大する。また、円筒タンクを設置するためには、円筒タンクを支持するサドルを用いる必要があり、円筒タンクとタンク区画の左右壁面との間にサドルを設置するためのスペースが必要になり、タンク区画の内面と円筒タンクの外面との間の無駄なスペースが更に増大してしまう。
【0005】
上記船舶にあっては、タンク容量を増やして航続距離を延ばすことが要望されている。しかし、円筒タンクは、IGFコードによりB/5より船内側に配置する必要があるため、船型が痩せた船首に近い位置等の狭隘部に配置できない。そのため、乾舷甲板よりも下方に円筒タンクを収容するための十分なスペースを確保できず、船体を大型化したり、乾舷甲板よりも上方のカーゴスペースや暴露甲板上等に円筒タンクを配置したりする必要が生じてしまう。乾舷甲板よりも上方に円筒タンクを配置した場合には、重心が上がり復原性が悪化するという課題もある。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、船体の大型化及び復原性の悪化をそれぞれ抑えつつアンモニア又はLPGを燃料として航続距離を延ばすことが可能な船舶を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
本開示の一態様によれば、船舶は、船首尾方向に延びる一対の船側外板と、上下方向に離れて配置され一対の前記船側外板を船幅方向に接続する船底外板及び上甲板と、前記上甲板よりも下方に位置して車両が乗降可能な乗込み甲板と、を有した船体と、前記船体における前記乗込み甲板より下方、且つ前記船底外板よりも上方に設けられて、船首尾方向に延びて燃料としての液化アンモニア又は液化石油ガスを貯留可能な燃料タンクと、を備え、前記燃料タンクは、船幅方向に対向する左側板および右側板と、上下方向に対向して前記左側板と前記右側板とを船幅方向に接続する天板及び底板と、を有した独立型のタンクであり、前記右側板は、右舷の前記船側外板から船幅の1/5以上離れて配置され、前記左側板は、左舷の前記船側外板から船幅の1/5以上離れて配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る船舶によれば、船体の大型化及び復原性の悪化をそれぞれ抑えつつアンモニア又はLPGを燃料として航続距離を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第一実施形態における船舶の概略構成を示す船体中心線を含む垂直断面図である。
【
図2】本開示の第一実施形態における船舶の船体中心線と交差する垂直断面図である。
【
図3】本開示の第一実施形態における船舶の水線に沿う水平断面図である。
【
図4】本開示の第一実施形態の第一変形例における船舶の水線に沿う水平断面図である。
【
図5】本開示の第一実施形態の第二変形例における船舶の概略構成を示す船体中心線を含む垂直断面図である。
【
図6】本開示の第一実施形態の第二変形例における船舶の船体中心線と交差する垂直断面図である。
【
図7】本開示の第一実施形態の第三変形例における船舶の概略構成を示す船体中心線を含む垂直断面図である。
【
図8】本開示の第一実施形態の第三変形例における船舶の船体中心線と交差する垂直断面図である。
【
図9】本開示の第二実施形態における船舶の概略構成を示す船体中心線を含む垂直断面図である。
【
図10】本開示の第二実施形態の第二変形例における船舶の概略構成を示す船体中心線を含む垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示の実施形態に係る船舶を図面に基づき説明する。本実施形態では、船舶がPCTC(Pure Car and Truck Carrier)である場合を一例にして説明する。
<第一実施形態>
図1は、本開示の第一実施形態における船舶の概略構成を示す船体中心線を含む垂直断面図である。
図2は、本開示の第一実施形態における船舶の船体中心線と交差する垂直断面図である。
図3は、本開示の第一実施形態における船舶の水線に沿う水平断面図である。
【0011】
図1から
図3に示すように、第一実施形態における船舶100は、船体2と、燃料タンク50と、を少なくとも備えている。
<船体>
船体2は、船側外板4A,4Bと、船底外板5Aと、ショアランプ12と、複数の甲板10と、機関室20と、上部構造3と、船首側ディープタンク30と、タンク室40と、燃料調整室45と、を少なくとも有している。
<外板>
船側外板4A,4Bは、左舷及び右舷の船側部4をそれぞれ構成している。船底外板5Aは、船側外板4A,4Bを接続する船底部5を構成している。船体2の内部には、複数の甲板10が上下に間隔をあけて設けられている。本実施形態の船底部5は、二重底となっており、船底外板5Aの上方に間隔をあけて内底板5Bを備えている。
【0012】
<ショアランプ>
ショアランプ12は、船側部4等に開閉可能に設けられ、車両等の貨物を自走により搬入・搬出させるための走行路を形成する。本実施形態の船体2は、ショアランプ12として船尾2Aに設けられた船尾ランプ12Aと、船首尾方向AFの中間部に設けられたセンターランプ12Bとを備えている場合を例示している。ショアランプ12は、階層状に形成された船体2の甲板10のうち、中間層に配置された甲板10である乗込み甲板10Aに繋がっている。本実施形態では、乗込み甲板10Aが水密構造の隔壁甲板且つ乾舷甲板となっている。
【0013】
ショアランプ12を倒して展開させると、岸壁からショアランプ12を通じて乗用車やトラック等の車両(図示せず)が自走して乗込み甲板10Aに乗り込んだり、乗込み甲板10Aから岸壁に降りたりすることが可能となる。なお、ショアランプ12として船尾ランプ12Aとセンターランプ12Bを備える場合を一例にして説明したが、この構成に限られるものではない。船体2に設けられるショアランプ12としては、例えば、船首2Fに設けられた船首ランプであってもよい。
【0014】
ショアランプ12を通じて乗船した車両(図示せず)は、例えば、上下に隣り合う甲板10同士を繋ぐ傾斜路であるランプウェイ13を介して、それぞれ所定の階層の甲板10上の所定の搭載位置まで自走して停車する。そして、停車した車両は固縛される。隔壁甲板である乗込み甲板10Aよりも下方へ繋がるランプウェイ13は、例えば不使用時に乗込み甲板10Aの開口を閉塞して水密にすることが可能な、昇降式のランプウェイもしくは、水密扉(カバーを含む)のランプウェイとなっている。
【0015】
<機関室>
機関室20は、船体2内に設けられている。具体的には、機関室20は、乗込み甲板10Aの下方に設けられている。本実施形態の機関室20は、船体2の船首尾方向AFの中央位置C1よりも船尾2Aに近い位置に区画されている。さらに、本実施形態の機関室20は、乗込み甲板10Aの下方で且つ船体2の最下層に区画されている。機関室20は、主機9を収容している。
【0016】
本実施形態の機関室20は、乗込み甲板10A、船底部5、船側部4、機関室隔壁21によって区画されている。機関室隔壁21は、機関室20を船首尾方向FAに区画する。機関室隔壁21は、いわゆる左右の船側部4にわたって形成された横置隔壁であり、少なくとも機関室20の船首2Fに近い側に位置する船首側機関室隔壁22を含んでいる。ここで、船首側機関室隔壁22は、機関室20を船首尾方向FAに区画する機関室隔壁のうちの最も船首2Fに近い位置に設けられた機関室隔壁21である。
【0017】
<主機>
主機9は、少なくとも液化ガスを燃料として駆動可能となっている。つまり、船舶100における主機9は、燃料を消費する燃料消費機器である。主機9の燃料となる液化ガスは、LPG(Liquefied Petroleum Gas;液化石油ガス)、アンモニア(NH3)等を例示できる。本実施形態の主機9は、船尾2Aの下方に位置するスクリュー6を回転駆動することで船体2の推進力を発生させる。スクリュー6の後方には、舵7が設けられており、この舵7により船体2の進行方向が制御される。なお、主機9によりスクリュー6を回転駆動する場合について説明したが、この構成に限られない。例えば、主機9の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して電動機(図示せず)によりスクリュー6を回転駆動する構成であってもよい。
【0018】
<上甲板及び上部構造>
複数層の甲板10のうち、最も上層に配置された甲板10が上甲板10Bをなしている。本実施形態の上甲板10Bは、暴露甲板であり全通甲板でもある。上部構造3は、上甲板10Bの上に形成されている。上部構造3は、船橋3Aと居住区3Bとを備えている。
【0019】
<船首側ディープタンク>
船首側ディープタンク30は、船体2の船首尾方向AFの中央位置C1よりも船首2Fに近い側における船幅方向Dwの船体中心線C2(
図3参照)上に設けられている。船首側ディープタンク30は、乗込み甲板10Aと船底部5との間に設けられたいわゆるディープタンク(図示せず)のうち、船首2Fに近い側の船体中心線C2と重なる位置に配置されたディープタンクである。船首側ディープタンク30には、バラスト水等の液体を貯留可能となっている。本実施形態の船首側ディープタンク30は、船首隔壁24(
図1参照)よりも船尾2Aに近い側であり且つ、バウスラスタ25の船尾2A側に隣接するように設けられている。
【0020】
本実施形態の船体2は、乗込み甲板10Aの一つ下層に甲板10である車両甲板10Cを備えている。船首側ディープタンク30は、上下方向Dvにおける乗込み甲板10Aの一つ下層の車両甲板10Cと船底部5とに渡って形成されている。なお、車両甲板10Cと乗込み甲板10Aとの間には、ランプウェイ(図示せず)が設けられており、車両が自走により乗込み甲板10Aから車両甲板10Cに移動することが可能となっている。
【0021】
船首側ディープタンク30は、船首尾方向FAに区画する複数のタンク隔壁31を有している。これらタンク隔壁31のうち最も船尾2Aに近い側に、船首側ディープタンク30の外殻を形成する船尾側タンク隔壁32を有している。船尾側タンク隔壁32は、船幅方向Dwに延びる隔壁であり、船首側ディープタンク30と、その船尾2A側の空間とを区画している。言い換えれば、船尾側タンク隔壁32は、船首側ディープタンク30を船首尾方向FAに区画するタンク隔壁のうちの最も船尾2Aに近い側のタンク隔壁である。なお、本実施形態では船首側ディープタンク30内が船首尾方向FAに複数に区切られている場合を示しているが、複数に区切られているものに限られない。
【0022】
<燃料調整室>
燃料調整室45は、液化アンモニア又は液化石油ガスを調整して主機9等の燃料消費機器に送り込む燃料調整機器(図示せず)を収容する。燃料調整室45に収容される燃料調整機器(図示せず)としては、圧縮機、気化器等を例示できる。この第一実施形態の燃料調整室45は、機関室20に対して船首2F側に配置されるとともにタンク室40に対して船尾2A側に配置されている。言い換えれば、燃料調整室45は、船首尾方向FAで機関室20及びタンク室40に挟まれるように配置されている。この第一実施形態で例示する燃料調整室45は、船側外板4Aから船側外板4Bに至るように形成されている。燃料調整室45の床は、内底板5Bにより構成されており、燃料調整室45の天井は、乗込み甲板10Aの一つ下層に設けられた車両甲板10Cにより構成されている。
【0023】
燃料調整室45は、燃調室隔壁46により船首尾方向FAに区画されている。燃料調整室45を船首尾方向FAに区画する燃調室隔壁46のうち、最も船尾2A側に配置された燃調室隔壁46は、機関室20を区画する船首側機関室隔壁22を兼ねている。さらに、燃調室隔壁46のうち最も船首2F側に配置された燃調室隔壁46である船首側燃調室隔壁47によって燃料調整室45とタンク室40とが船首尾方向FAに区画されている。この第一実施形態の燃料調整室45は、船首尾方向FAの長さよりも船幅方向Dwの長さの方が大きく形成されている。
【0024】
<タンク室>
タンク室40は、燃料タンク50を収容する水密区画である。タンク室40を区画する壁には、全て又は一部に低温鋼が用いられており、IMO(International Maritime Organization)により定められたIGCコード((International Code for the Construction and Equipment of Ships Carrying Liquefied Gases in Bulk)の独立タンクタイプA又はBを収容する際の二次防壁として機能している。
【0025】
第一実施形態のタンク室40は、燃料調整室45の船首側燃調室隔壁47から、船尾側タンク隔壁32に至る範囲内に設けられている。タンク室40は、船側外板4A、及び船側外板4Bから船幅方向Dwの内側に離れて配置された一対の縦通隔壁41A,41Bにより船幅方向Dwに区画されている。これら縦通隔壁41A,41Bの一端は、船首側燃調室隔壁47に接続され、縦通隔壁41A,41Bの他端は、船尾側タンク隔壁32に接続されている。ここで、タンク室40と燃料調整室45との間、及びタンク室40と車両積載区画との間には、コファダムを設けることが規則により要求されている。そのため、本実施形態の船体2には、タンク室40と燃料調整室45との間に、第一コファダム33が設けられ、タンク室40と乗込み甲板10Aの一つ下層に設けられた車両甲板10Cとの間には第二コファダム34が設けられている。
【0026】
この第一実施形態のタンク室40の床は、内底板5Bにより構成されている。タンク室40の天井は、車両甲板10Cの下方に設けられた第二コファダム34の下壁により構成されている。また、タンク室40は、燃料調整室45の船首2F側に設けられた第一コファダム33に隣接している。
【0027】
上述したように、タンク室40は、上下方向Dvに対向する第二コファダムの下壁及び内底板5Bと、船幅方向Dwに対向する縦通隔壁41A,41Bにより区画されているため、船体中心線C2と交差する垂直断面の輪郭形状が、実質的に矩形をなしている。より具体的には、この第一実施形態のタンク室40の船体中心線C2と交差する垂直断面の輪郭形状(
図2参照)は、上下方向Dvよりも船幅方向Dwに長い矩形状をなしている。ここで、実質的に矩形状とは、厳密な矩形状に加えて、本実施形態で示すタンク室40のように、上記垂直断面における輪郭形状における矩形の四つの角部のうち、船底部5に近い側の二つの角部が斜めに面取りされた形状も含んでいる。これら面取りは、船型等に応じて適宜設ければよく省略してもよい。
【0028】
この第一実施形態におけるタンク室40内は、船首尾方向FAに所定の間隔で室内壁42(例えば、二つ)が設けられて複数(例えば、三つ)のタンク室内区画40A~40Cに区切られている。これら室内壁42は、タンク室40の天井を構成する第二コファダムの下壁を下方から支持するために設けられているため水密隔壁でなくてもよい。なお、この第一実施形態では二つの室内壁42が設けられて三つのタンク室内区画40A~40Cが形成されている場合を例示しているが、室内壁42の数、及びタンク室内区画の数は、船体2の規模や形に応じて適宜設けることができる。また、タンク室40の船幅方向Dwの外側、すなわち縦通隔壁41Aと船側外板4Aとの間、及び縦通隔壁41Bと船側外板4Bとの間には、ボイドスペースやディープタンク等(何れも図示せず)が設けられていてもよい。
【0029】
図3に示すように、タンク室内区画40A~40Cのうち、最も船首2Fに近い位置に配置されたタンク室内区画40Cは、船首2Fに向かって船体2が痩せて船幅が減少するのに伴って、船首2Fに近づくにつれて船幅方向Dwの長さが漸次減少するように形成されている。言い換えれば、船首2Fに近づくにつれてタンク室内区画40Cを形成する縦通隔壁41A,41Bが、それぞれ船体中心線C2に近づくように形成されている。本実施形態では、縦通隔壁41A,41Bが船体中心線C2を基準にして左右対称に形成されている。
【0030】
<燃料タンク>
燃料タンク50は、燃料としてのアンモニア又は液化石油ガスを貯留可能とされている。燃料タンク50は、上述したタンク室40に収容されている。つまり、燃料タンク50は、船体2における乗込み甲板10Aより下方、且つ船底外板5Aよりも上方に設けられ、船首尾方向FAに延びている。燃料タンク50は、IMOにより定められたIGCコードの独立タンクタイプA又はタイプBである。燃料タンク50は、船体中心線C2と交差する垂直断面の輪郭形状が実質的に矩形状をなした独立タンクである。
【0031】
図2に示すように、燃料タンク50は、船幅方向Dwに対向する左側板51および右側板52と、上下方向Dvに対向して左側板51と右側板52とを船幅方向Dwに接続する天板53及び底板54と、を有している。さらに、
図3に示すように、燃料タンク50は、船首尾方向FAに対向する平板状の前板55及び後板56を有している。ここで、燃料タンク50は、いわゆる方形タンクである。燃料タンク50について、上記「実質的に矩形状」とは、タンク室40の場合と同様に、厳密な矩形状に加えて、上記垂直断面(
図2参照)における輪郭形状における矩形の四つの角部のうち、船底部5に近い側の二つの角部が斜めに面取りされた形状も含んでいる。燃料タンク50の下半部は、タンク室40の下半部に沿うように形成されており、本実施形態で示す燃料タンク50は、上記タンク室40と同様に面取りされている場合を例示している。これら燃料タンク50の面取りは、タンク室40が面取りされている場合に設ければよく、タンク室40が面取りされていない場合には省略してもよい。また、上記「実質的に矩形状」は、船底部5に近い側の二つの角部が面取りされた形状に限られず、乗込み甲板10Aに近い側の二つの角部が面取りされた形状であってもよい。
【0032】
図3に示すように、燃料タンク50は、タンク室40と同様に、平面視で船体中心線C2を基準にして左右対称に形成されている。燃料タンク50の左側板51と縦通隔壁41Aとの間、右側板52と縦通隔壁41Bとの間、及び、底板54と船底部5の内底板5Bとの間には、それぞれ作業者が点検を行うためのスペース(例えば、1m程度)が設けられている。船底部5の内底板5B上には、燃料タンク50を下方から支持する複数のベアリングシート(何れも図示せず)が間隔をあけて設けられ、これらベアリングシートにより燃料タンクの底板54と内底板5Bとの間のスペースが確保されている。また、本実施形態の燃料タンク50は、その内部に船体中心線C2に沿って形成されて燃料タンク50内の空間を左右に仕切る仕切り板57を有している。仕切り板57は、例えば、燃料タンク50内の左右の空間を連通可能に形成されていてもよい。
【0033】
本実施形態の燃料タンク50は、タンク室40のタンク室内区画40A~40Cに一つずつ収容されている。すなわち、複数の燃料タンク50が船首尾方向FAに並んで配置されている。タンク室内区画40Cに収容された燃料タンク50A、言い換えれば、複数の燃料タンク50のうち、最も船首2Fに近い位置に配置された燃料タンク50Aは、幅減少部58を有している。
【0034】
幅減少部58は、燃料タンク50Aのうち船首2Fに近い側の部分に形成され、船首2Fに近づくにつれて少なくとも船幅方向Dwの大きさが漸次減少する。本実施形態の幅減少部58は、船首2Fに向かって先細りするタンク室内区画40Cに対応した形状をなしている。言い換えれば、幅減少部58を形成する左側板51と右側板52とが、上述したタンク室内区画40Cを形成する船首2Fに近い側の縦通隔壁41A,41Bに沿って形成されている。このタンク室内区画40Cにおいても、燃料タンク50Aの左側板51と縦通隔壁41Aとの間、右側板52と縦通隔壁41Bとの間、及び、底板54と内底板5Bとの間には、それぞれ作業者が点検を行うためのスペース(例えば、1m程度)が設けられている。
【0035】
燃料タンク50の左側板51は、左舷の船側外板4Aから船幅Bの1/5以上離れて配置されている。同様に、燃料タンク50の右側板52は、右舷の船側外板4Bから船幅Bの1/5以上離れて配置されている。幅減少部58における船側外板4A,4Bも同様に、船幅Bの1/5以上離れて配置されている。ここで、船幅Bの1/5とは、IGFコードにより規定された、外的要因によるダメージから燃料タンクを保護するためのいわゆる保護距離である。そして、船幅Bは、船体2の最大型幅である。
【0036】
<タンクコネクションスペース>
図1、
図2に示すように、燃料タンク50には、タンクコネクションスペース60が取り付けられている。タンクコネクションスペース60は、箱状に形成されて、燃料タンク50に接続される配管の接続部(図示せず)及び、燃料タンク50に付随する弁等を収容している。本実施形態のタンクコネクションスペース60は、タンク室内区画40A~40Cに収容された各燃料タンク50に対して一つずつ設けられている。タンクコネクションスペース60は、それぞれ燃料タンク50の天板53の鉛直上方に配置されている。つまり、タンクコネクションスペース60は、上下方向Dvで車両甲板10Cと天板53とに挟まれるタンク室40内の空間に配置されている。
【0037】
<作用効果>
上記第一実施形態の船舶100では、船体2が、船側外板4A,4Bと、船底外板5A及び上甲板10Bと、乗込み甲板10Aと、を有している。そして、船体2における乗込み甲板10Aより下方、且つ船底外板5Aよりも上方に、船首尾方向FAに延びる燃料タンク50を備えている。さらに、燃料タンク50は、船幅方向Dwに対向する左側板51および右側板52と、上下方向Dvに対向して左側板51と右側板52とを船幅方向Dwに接続する天板53及び底板54と、を有した独立型のタンクであり、左側板51は、左舷の船側外板4Aから船幅Bの1/5以上離れて配置され、右側板52は、右舷の船側外板4Bから船幅Bの1/5以上離れて配置されている。
これにより、船体2の乗込み甲板10Aよりも下方の矩形の縦断面を有した区画に円筒タンクを設ける場合よりも、スペース効率を高めて燃料タンク50の船首尾方向FAの長さを拡大せずに燃料貯留量を増加できる。したがって、船体2の大型化を抑えつつ航続距離を延ばすことができる。また、燃料タンク50が、乗込み甲板10Aよりも下方に設けられるため、乗込み甲板10Aよりも上方に燃料タンクを設ける場合よりも重心を下げて復原性の悪化を抑えることができる。
【0038】
また、上記第一実施形態の船舶100では、船体2は、乗込み甲板10Aと船底外板5Aとの間における中央位置C1よりも船尾2Aに近い位置に、主機9を収容する機関室20を備えている。さらに、船体2は、乗込み甲板10Aと船底外板5Aとの間における、船首尾方向FAの中央位置C1よりも船首2Fに近い位置で、且つ船幅方向Dwの船体中心線C2上に船首側ディープタンク30を備えている。そして、機関室20と船首側ディープタンク30との間にタンク室40を備えている。
これにより、船首2Fや船尾2Aにタンク室を設けて燃料タンクを設置する場合と比較して、燃料タンク50の設置に伴う船体2のトリム増加を抑えることができる。したがって、トリム調整のためにバラストタンクの漲水が増加して排水量が増加することを抑制できるため、燃料消費率を低減して航続距離を延ばすことが可能となる。
【0039】
さらに、上記第一実施形態の船舶100では、機関室20に対して船首2F側、且つタンク室40に対して船尾2A側に燃料調整室45を、備えている。
これにより、乗込み甲板10Aよりも下方の燃料調整室45から船首側ディープタンク30に至る船首尾方向FAに延びるスペースの全域に燃料タンク50を配置できるため、重心の高さを抑えつつ、燃料の貯留量を増大することができる。
【0040】
上記第一実施形態の船舶100では、船体2は、上下方向Dvにおける前記タンク室40と乗込み甲板10Aとの間に、車両を搭載可能な車両甲板10Cを更に備えている。
これにより、燃料タンク50の設置に伴い車両を搭載可能な台数が低下することを抑制できる。
【0041】
また、上記第一実施形態の船舶100では、燃料タンク50が、タンク室40内に、船首尾方向FAに並んで複数配置されている。
これにより、船首尾方向FAに隣り合う燃料タンク50の間に、タンク室40の天井を支える室内壁42を設けることができる。そのため、タンク室40内に一つの大きな区画を設けて、一つの大きな燃料タンク50を設置する場合と比較して、船首尾方向FAに延びるタンク室40の強度確保に伴うコスト増加を抑制できる。
【0042】
さらに、上記第一実施形態の船舶100では、最も船首2Fに近い位置に配置された燃料タンク50Aが、船首2Fに近づくにつれて船幅方向の大きさが漸減するように形成された幅減少部58を備えている。
これにより、一般的な円筒タンクが配置できないような、乗込み甲板10Aよりも下方の船首2Fに近い狭隘なスペースも燃料タンク50を配置するスペースとして有効利用することができる。したがって、船舶100の重心高さを抑えつつ更なる燃料貯留量の増加を図ることができる。
【0043】
<第一実施形態の第一変形例>
図4は、本開示の第一実施形態の第一変形例における船舶の概略構成を示す船体中心線を含む垂直断面図である。
上記第一実施形態では、タンク室40が、燃料調整室45の船首側燃調室隔壁47から船尾側タンク隔壁32に至る範囲に設けられている場合について説明したが、この構成に限られるものではない。
【0044】
図4に示す第一実施形態の第一変形例の燃料調整室145のように、縦通隔壁41A,41Bよりも船幅方向Dwの外側で且つ機関室20の船首2F側に隣接するスペースに設けるようにしてもよい。縦通隔壁41A,41Bよりも船幅方向Dwの外側のスペースとは、船幅方向Dwにおける船側外板4Aと縦通隔壁41Aとの間のスペースや、船側外板4Bと縦通隔壁41Bとの間のスペースである。この場合、タンク室140と燃料調整室145との間には、コファダムとして第三コファダム35が設けられる。
図4では、船側外板4Aと縦通隔壁41Aとの間のスペースに燃料調整室145を配置する場合を例示したが、船側外板4Bと縦通隔壁41Bとの間のスペースに燃料調整室145を設けたり、船側外板4Aと縦通隔壁41Aとの間のスペースと、船側外板4Bと縦通隔壁41Bとの間のスペースとの両方に分けて配置したりしてもよい。
【0045】
機関室20とタンク室140との間には、コファダムとして第四コファダム36が設けられている。つまり、タンク室140は、機関室20の船首2F側に設けられた第四コファダム36に隣接している。そして、第一実施形態の第一変形例におけるタンク室140は、機関室20から、船首側ディープタンク30の船尾側タンク隔壁32に至る範囲に設けられている。
【0046】
上述した第一実施形態の第一変形例によれば、第一実施形態のタンク室40よりも、船首尾方向FAにタンク室140を拡大することができるため、タンク室140に設置された燃料タンク50の貯留量を増やして航続距離を延ばすことが可能となる。
【0047】
<第一実施形態の第二変形例>
図5は、本開示の第一実施形態の第二変形例における船舶の概略構成を示す船体中心線を含む垂直断面図である。
図6は、本開示の第一実施形態の第二変形例における船舶の船体中心線と交差する垂直断面図である。
【0048】
上記第一実施形態では、第二コファダム34がタンク室40と車両甲板10Cとの間に形成される場合について説明したが、この構成に限られない。
図5、
図6に示す第一実施形態の第二変形例のタンク室240のように、車両甲板10Cを設けずに第二コファダム34をタンク室240と乗込み甲板10Aとの間に形成するようにしてもよい。この場合、タンク室240に収容される燃料タンク50Bのうち、最も船首2Fに近い位置に配置される燃料タンク50BAは、幅減少部58を有している。
【0049】
この第一実施形態の第二変形例によれば、第一実施形態と同様に、垂直断面の輪郭形状が実質的に矩形をなすタンク室240に垂直断面の輪郭形状が実質的に矩形をなす燃料タンク50Bを設けることで、スペース効率を高めることができる。そして、スペース効率を高めつつタンク室240の高さ及び燃料タンク50Bの高さを増すことができるため、より一層、燃料の貯留量を増やして航続距離を延ばすことが可能となる。
【0050】
<第一実施形態の第三変形例>
図7は、本開示の第一実施形態の第三変形例における船舶の概略構成を示す船体中心線を含む垂直断面図である。
図8は、本開示の第一実施形態の第三変形例における船舶の船体中心線と交差する垂直断面図である。
【0051】
上記第一実施形態では、第二コファダム34がタンク室40と乗込み甲板10Aの一つ下層の車両甲板10Cとの間に形成される場合について説明したが、この構成に限られない。例えば、航続距離を延ばす必要がなく、第一実施形態の燃料タンク50よりも燃料の貯留量が少なくてもよい場合には、
図7、
図8に示す第一実施形態の第三変形例のように、高さを抑えた燃料タンク50C及びタンク室340を設けることができる。このような場合、タンク室340と乗込み甲板10Aとの間のスペースには、複数層の車両甲板10Cを設けてもよい。この場合、複数層の車両甲板10Cのうち最も下層の車両甲板10Cとタンク室340との間に第二コファダム34を形成すればよい。なお、この第三変形例では、乗込み甲板10Aよりも二つ下層の車両甲板10Cによってタンク室340の天井が構成されている場合を例示しているが、乗込み甲板10Aよりも下方に設けられる車両甲板10Cの層数は三つ以上であってもよい。
【0052】
第一実施形態の第三変形例によれば、第一実施形態と同様に、垂直断面の輪郭形状が実質的に矩形をなすタンク室340に垂直断面の輪郭形状が実質的に矩形をなす燃料タンク50Cを設けることで、スペース効率を高めることができる。そして、スペース効率を高めた分だけ燃料の貯留量を変えずに燃料タンク50Cの高さを抑えることで、タンク室340と乗込み甲板10Aとの間に車両甲板10Cを設けることができる。したがって、船体2内の乗込み甲板10Aの下方に燃料タンク50Cを設置した場合であっても、車両搭載台数の減少を抑制することができる。さらに、第一実施形態の燃料タンク50よりも燃料タンク50Cの高さを抑えることで、船体2の重心を下げて復原性を向上することが可能となる。
【0053】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態を図面に基づき説明する。この第二実施形態の船舶は、上述した第一実施形態の船舶に対して、低層車両甲板を設けている点で相違する。そのため、上述した第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
図9は、本開示の第二実施形態における船舶の概略構成を示す船体中心線を含む垂直断面図である。
【0054】
図9に示すように、この第二実施形態における船舶は、上述した第一実施形態の船舶と同様に、船体2と、燃料タンク50Dと、を少なくとも備えている。
<船体>
船体2は、船側外板4A,4Bと、船底外板5Aと、ショアランプ12と、複数の甲板10と、機関室20と、上部構造3と、船首側ディープタンク30と、タンク室440と、燃料調整室45と、を少なくとも有している。
【0055】
第二実施形態の船体2は、乗込み甲板10Aの一つ下層に甲板10である車両甲板10Cを備えている。さらに、車両甲板10Cよりも下層に甲板10として低層車両甲板80を備えている。
【0056】
<タンク室>
タンク室440は、燃料調整室45の船首側燃調室隔壁47から、船尾側タンク隔壁32に至る範囲内に設けられている。タンク室440は、第一実施形態のタンク室40と同様に、一対の縦通隔壁41A,41Bにより船幅方向Dwに区画されている。これら縦通隔壁41A,41Bの一端は、船首側燃調室隔壁47に接続され、縦通隔壁41A,41Bの他端は、船首側タンク室隔壁70に接続されている。船首側タンク室隔壁70は、一対の縦通隔壁41A,41Bを接続し、タンク室440を船首尾方向FAに区画している。タンク室440内には、第一実施形態の燃料タンク50のうち船尾2A側の二つの燃料タンク50と同様に船首尾方向FAに並んだ二つの燃料タンク50Dが配置されている。
【0057】
船首側タンク室隔壁70は、船首側ディープタンク30の船尾側タンク隔壁32よりも船尾2Aに近い位置に形成されている。この第二実施形態で例示する船首側タンク室隔壁70は、船首尾方向FAの中央位置C1よりも船首2Fに近い位置で、且つ、船首側ディープタンク30よりも船首尾方向FAの中央位置C1に近い位置に配置されている。第一実施形態と同様に、第二実施形態のタンク室440の床は、内底板5Bにより構成されており、第二実施形態のタンク室40の天井は、乗込み甲板10Aの一つ下層に設けられた車両甲板10Cとタンク室40との間に設けられる第二コファダム34の下壁により構成されている。このようにして、タンク室440は、燃料調整室45の船首2F側に設けられている。
【0058】
<低層車両甲板>
低層車両甲板80は、タンク室440と船首側ディープタンク30との間に設けられている。低層車両甲板80は、タンク室440の天井よりも低い位置に設けられている。低層車両甲板80には、乗用車等の車両が搭載可能とされている。タンク室440と低層車両甲板80との間には、コファダムとして第五コファダム37が設けられている。本実施形態の低層車両甲板80は、上下方向Dvに複数層設けられている。複数の低層車両甲板80の間には、ランプウェイ13が設けられており、車両が自走により乗込み甲板10Aから移動することが可能となっている。
【0059】
(作用効果)
上述した第二実施形態の船舶によれば、第一実施形態と同様に、垂直断面の輪郭形状が実質的に矩形をなすタンク室440に垂直断面の輪郭形状が実質的に矩形をなす燃料タンク50Dを設けることで、スペース効率を高めることができる。そして、スペース効率を高めた分だけ燃料の貯留量を変えずに、船首尾方向FAにおけるタンク室440の長さを短縮し、タンク室440と船首側ディープタンク30との間に低層車両甲板80を設けることができる。したがって、船体2内の乗込み甲板10Aの下方に燃料タンク50Dを設置した場合であっても、低層車両甲板80を設けた分だけ車両搭載台数の減少を抑制することができる。
【0060】
<第二実施形態の第一変形例>
上記第二実施形態では、タンク室440が、燃料調整室45の船首2F側に配置されている場合について説明したが、この構成に限られるものではない。例えば、第一実施形態の第一変形例と同様に、燃料調整室45は、縦通隔壁41A,41Bよりも船幅方向Dwの外側で且つ機関室20の船首2F側に隣接するスペースに設けるようにしてもよい。この場合、第一実施形態の第一変形例と同様に、タンク室440と燃料調整室45との間に、第三コファダム35が設けられ、機関室20とタンク室440との間には、コファダムとして第四コファダム36が設けられる。つまり、タンク室440は、機関室20の船首2F側に設けられた第四コファダム36に隣接している。このように構成することで、第二実施形態のタンク室440よりも、船尾2A側にタンク室440を配置することができるため、船首尾方向FAにおける低層車両甲板80の長さを拡大して車両搭載台数を増加させることが可能となる。また、燃料調整室45が無い分だけ、第二実施形態よりもタンク室440を船尾2A側に拡大させることも可能となる。この場合、低層車両甲板80の長さを削減せずに燃料の貯留量を増加することができる。
【0061】
<第二実施形態の第二変形例>
図10は、本開示の第二実施形態の第二変形例における船舶の概略構成を示す船体中心線を含む垂直断面図である。
上記第二実施形態では、タンク室440と船首側ディープタンク30との間に低層車両甲板80が設けられている場合について説明したが、低層車両甲板80の配置は第二実施形態の配置に限られない。
図10に示す第二実施形態の第二変形例のように、船首側ディープタンク30の船尾2A側に隣接してタンク室540を設けるとともに、船首尾方向FAにおけるタンク室540の船尾側タンク室隔壁71と燃料調整室45との間に、低層車両甲板80を備えるようにしてもよい。タンク室540と低層車両甲板80との間には、コファダムとして第六コファダム38が設けられている。また、低層車両甲板80と燃料調整室45との間には、コファダムとして第七コファダム39が設けられている。この場合、タンク室540に収容される燃料タンク50Eのうち、最も船首2Fに近い位置に配置される燃料タンク50EAは、幅減少部58を有している。
【0062】
第二実施形態の第二変形例によれば、第二実施形態と同様に、船体2内の乗込み甲板10Aの下方に燃料タンク50Eを設置した場合であっても、低層車両甲板80を設けた分だけ車両搭載台数の減少を抑制することができる。また、燃料タンク50Eを船首2Fに近い側に配置できるため、トリム調整を行う際の船首側ディープタンク30への漲水を減少させることができる。その結果、燃料消費率を低減して航続距離を延ばすことができる。
【0063】
なお、第二実施形態の第二変形例のタンク室540を備えつつ、第二実施形態の第一変形例と同様の燃料調整室45の配置とすることもできる。この場合、低層車両甲板80は、タンク室540と機関室20との間に設けることができるため、車両搭載台数の減少をより一層抑制することが可能となる。
【0064】
<他の実施形態>
本開示は上述した各実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した各実施形態では、船舶100がPCTCである場合を一例にして説明したが、船舶100の船種は、PCTCやPCC(Pure Car Carrier)に限られず、例えば、フェリー等であってもよい。
【0065】
<付記>
実施形態に記載の船舶は、例えば以下のように把握される。
【0066】
(1)第1の態様によれば船舶100は、船首尾方向FAに延びる一対の船側外板4A,4Bと、上下方向Dvに離れて配置され一対の前記船側外板4A,4Bを船幅方向Dwに接続する船底外板5A及び上甲板10Bと、前記上甲板10Bよりも下方に位置して車両が乗降可能な乗込み甲板10Aと、を有した船体2と、前記船体2における前記乗込み甲板10Aより下方、且つ前記船底外板5Aよりも上方に設けられて、船首尾方向FAに延びて燃料としての液化アンモニア又は液化石油ガスを貯留可能な燃料タンク50,50A,50B,50C,50D,50E,50EAと、を備え、前記燃料タンク50,50A,50C,50D,50E,50EAは、船幅方向Dwに対向する左側板51および右側板52と、上下方向Dvに対向して前記左側板51と前記右側板52とを船幅方向Dwに接続する天板53及び底板54と、を有した独立型のタンクであり、前記左側板51は、左舷の前記船側外板4Aから船幅の1/5以上離れて配置され、前記右側板52は、右舷の前記船側外板4Bから船幅の1/5以上離れて配置されている。
【0067】
これにより、スペース効率を高めて燃料タンク50,50A,50B,50C,50D,50E,50EAの船首尾方向FAの長さを拡大せずに燃料貯留量を増加できる。したがって、船体2の大型化を抑えつつ航続距離を延ばすことができる。また、燃料タンク50,50A,50B,50C,50D,50E,50EAが、乗込み甲板10Aよりも下方に設けられるため、乗込み甲板10Aよりも上方に燃料タンクを設ける場合よりも重心を下げて復原性の悪化を抑えることができる。
【0068】
(2)第2の態様によれば船舶100は、(1)の船舶100であって、前記船体2は、前記乗込み甲板10Aと前記船底外板5Aとの間における船首尾方向FAの中央位置C1よりも船尾2Aに近い位置に設けられ、前記燃料を消費する燃料消費機器を収容する機関室20と、前記乗込み甲板10Aと前記船底外板5Aとの間における船首尾方向FAの中央位置C1よりも船首2Fに近い位置で、且つ船幅方向Dwの船体中心線C2上に設けられた船首側ディープタンク30と、前記機関室20と前記船首側ディープタンク30との間に設けられて前記燃料タンク50,50A,50B,50C,50D,50E,50EAを収容するタンク室40,140,240,340,440,540と、を備える。
【0069】
これにより、機関室20から船首側ディープタンク30に至る範囲にタンク室40,140,240,340,440,540が配置されるため、燃料タンク50,50A,50B,50C,50D,50E,50EAの設置に伴う船体2のトリム増加を抑えることができる。したがって、トリム調整のためにバラストタンクの漲水が増加して排水量が増加することを抑制できるため、燃料消費率を低減して航続距離を延ばすことができる。
【0070】
(3)第3の態様によれば船舶100は、(2)の船舶100であって、前記機関室20に対して船首2F側に設けられるとともに前記タンク室40,240,340、440に対して船尾2A側に設けられて、前記液化アンモニア又は液化石油ガスを調整して前記燃料消費機器に送り込む燃料調整機器を収容する燃料調整室45を、更に備え、前記タンク室40,240,340、440は、前記燃料調整室45を船首尾方向FAに区画する燃調室隔壁46のうちの最も前記船首2Fに近い船首側燃調室隔壁47から、前記船首側ディープタンク30を船首尾方向FAに区画するタンク隔壁31のうちの最も前記船尾2Aに近い船尾側タンク隔壁32に至るように設けられている。
これにより、乗込み甲板10Aよりも下方の燃料調整室45から船首側ディープタンク30に至る船首尾方向FAに延びるスペースの全域に燃料タンク50を配置できるため、重心の高さを抑えつつ、燃料の貯留量を増大することができる。
【0071】
(4)第4の態様によれば船舶100は、(2)の船舶100であって、前記タンク室140は、前記機関室20を船首尾方向FAに区画する機関室隔壁21のうちの最も前記船首2Fに近い船首側機関室隔壁22から、前記船首側ディープタンク30を船首尾方向FAに区画するタンク隔壁31のうちの最も前記船尾2Aに近い船尾側タンク隔壁32に至るように設けられている。
これにより、船首尾方向FAにタンク室140を拡大することができるため、燃料の貯留量を増やして航続距離を延ばすことが可能となる。
【0072】
(5)第5の態様によれば船舶100は、(2)の船舶100であって、前記船体2は、上下方向Dvにおける前記タンク室40,140,340,440,540と前記乗込み甲板10Aとの間に、車両を搭載可能な車両甲板10Cを更に備える。
これにより、燃料タンク50の設置に伴い車両を搭載可能な台数が低下することを抑制できる。
【0073】
(6)第6の態様によれば船舶100は、(2)の船舶100であって、前記機関室20に対して船首2F側に設けられるとともに前記タンク室440に対して船尾2A側に設けられて、前記液化アンモニア又は液化石油ガスを調整して前記燃料消費機器に送り込む燃料調整機器を収容する燃料調整室45を、更に備え、前記船体2は、前記タンク室440と前記船首側ディープタンク30との間に、車両を搭載可能な低層車両甲板80を更に備える。
これにより、燃料タンク50の設置に伴い車両を搭載可能な台数が低下することを抑制できる。
【0074】
(7)第7の態様によれば船舶100は、(2)の船舶100であって、前記タンク室440は、前記機関室20の船首2F側に設けられ、前記船体2は、前記タンク室440と前記船首側ディープタンク30との間に、車両を搭載可能な低層車両甲板80を更に備える。
これにより、燃料タンク50の設置に伴い車両を搭載可能な台数が低下することを抑制できる。
【0075】
(8)第8の態様によれば船舶100は、(2)の船舶100であって、前記機関室20に対して船首2F側に隣接して設けられて前記液化アンモニア又は液化石油ガスを調整して前記燃料消費機器に送り込む燃料調整機器を収容する燃料調整室45を、更に備え、前記タンク室540は、前記船首側ディープタンク30の船尾2A側に設けられ、前記船体2は、前記タンク室540と前記燃料調整室45との間に、車両を搭載可能な低層車両甲板80を更に備える。
これにより、燃料タンク50の設置に伴い車両を搭載可能な台数が低下することを抑制できる。
【0076】
(9)第9の態様によれば船舶100は、(2)の船舶100であって、前記タンク室540は、前記船首側ディープタンク30の船尾2A側に設けられ、前記船体2は、前記タンク室540と前記機関室20との間に、車両を搭載可能な低層車両甲板80を更に備える。
これにより、燃料タンク50の設置に伴い車両を搭載可能な台数が低下することを抑制できる。
【0077】
(10)第10の態様によれば船舶100は、(6)から(9)の何れか一つの船舶100であって、前記低層車両甲板80は、上下に複数層設けられている。
これにより、燃料タンク50の設置に伴い車両を搭載可能な台数が低下することをより一層抑制できる。
【0078】
(11)第11の態様によれば船舶100は、(2)から(10)の何れか一つの船舶100であって、前記燃料タンク50は、前記タンク室40,140,240,340,440,540内に船首尾方向FAに複数並んで配置されている。
これにより、船首尾方向FAに隣り合う燃料タンク50の間に、タンク室40の天井を支える室内壁42を設けることができる。そのため、タンク室40,140,240,340,440,540内に一つの大きな区画を設けて、一つの大きな燃料タンク50を設置する場合と比較して、船首尾方向FAに延びるタンク室40の強度確保に伴うコスト増加を抑制できる。
【0079】
(12)第12の態様によれば船舶100は、(1)から(5),(8),(9)、及びこれら(1)から(5),(8),(9)の何れかを引用する(10)の何れか一つの船舶100であって、前記燃料タンク50Aは、船首2Fに近づくにつれて船幅方向Dwの大きさが漸次減少する幅減少部58を有する。
これにより、一般的な円筒タンクが配置できないような、乗込み甲板10Aよりも下方の船首2Fに近い狭隘なスペースも燃料タンク50Aを配置するスペースとして有効利用することができる。したがって、船舶100の重心高さを抑えつつ更なる燃料貯留量の増加を図ることができる。
【符号の説明】
【0080】
2 船体
2A 船尾
2F 船首
3 上部構造
3A 船橋
3B 居住区
4 船側部
4A,4B 船側外板
5 船底部
5A 船底外板
5B 内底板
6 スクリュー
7 舵
9 主機
10 甲板
10A 乗込み甲板
10B 上甲板
10C 車両甲板
12 ショアランプ
12A 船尾ランプ
12B センターランプ
13 ランプウェイ
20 機関室
21 機関室隔壁
22 船首側機関室隔壁
24 船首隔壁
25 バウスラスタ
30 船首側ディープタンク
31 タンク隔壁
32 船尾側タンク隔壁
33 第一コファダム
34 第二コファダム
35 第三コファダム
36 第四コファダム
37 第五コファダム
38 第六コファダム
39 第七コファダム
40,140,240,340,440,540 タンク室
40A~40C タンク室内区画
41A,41B 縦通隔壁
42 室内壁
45,145 燃料調整室
46 燃調室隔壁
47 船首側燃調室隔壁
50 燃料タンク
50A,50B,50BA,50C,50CA,50D,50E,50EA 燃料タンク
51 左側板
52 右側板
53 天板
54 底板
55 前板
56 後板
57 仕切り板
58 幅減少部
60 タンクコネクションスペース
70 船首側タンク室隔壁
71 船尾側タンク室隔壁
80 低層車両甲板
100 船舶
B 船幅
C1 中央位置
C2 船体中心線
Dv 上下方向
Dw 船幅方向
FA 船首尾方向