(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156870
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】脱臭フィルタ及びその再生方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/014 20060101AFI20251007BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20251007BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20251007BHJP
F24F 8/108 20210101ALI20251007BHJP
【FI】
A61L9/014
B01J20/10 C
B01J20/34 G
F24F8/108 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059602
(22)【出願日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506100990
【氏名又は名称】日本トーカンパッケージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 航歩
(72)【発明者】
【氏名】木村(三溝) 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】谷神 絃太
(72)【発明者】
【氏名】大橋 和彰
(72)【発明者】
【氏名】生田目 大輔
(72)【発明者】
【氏名】三輪 誠
(72)【発明者】
【氏名】洲脇 忠司
(72)【発明者】
【氏名】木下 浩輝
【テーマコード(参考)】
4C180
4G066
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB03
4C180BB04
4C180BB06
4C180BB07
4C180CC04
4C180CC13
4C180EA14X
4C180EA26X
4C180EA27X
4C180EA28X
4C180JJ02
4G066AA02B
4G066AA13D
4G066AA22A
4G066AA22B
4G066AA32A
4G066AA37A
4G066AB09D
4G066AB21D
4G066BA07
4G066CA02
4G066CA29
4G066DA03
4G066GA11
(57)【要約】
【課題】水洗い再生可能な吸着材を含むフィルタを再生するに際し、水洗い後のフィルタから効率よく水分を除去できるようにする。
【解決手段】設置対象に交換可能又は交換不要に設置され、水洗い再生可能な吸着材を含む厚さ方向に沿って通風可能なフィルタ部材1と、設置対象に設置した状態で、フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が、水平面に対して角度をなすようにフィルタ部材1を保持可能な保持具とを備える脱臭フィルタ。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置対象に交換可能又は交換不要に設置される脱臭フィルタであって、
水洗い再生可能な吸着材を含む厚さ方向に沿って通風可能なフィルタ部材と、
前記設置対象に設置した状態で、前記フィルタ部材の厚さ方向に直交する面が、水平面に対して角度をなすように前記フィルタ部材を保持可能な保持具と
を備えることを特徴とする脱臭フィルタ。
【請求項2】
前記フィルタ部材は、30セル/inch2以上、600セル/inch2以下のセル数で、厚さ方向に沿って貫通する複数の貫通孔を有する請求項1に記載の脱臭フィルタ。
【請求項3】
前記フィルタ部材は、前記フィルタ部材の厚さ方向に直交する面が、水平面に対して5°以上の角度をなすように保持される請求項1に記載の脱臭フィルタ。
【請求項4】
前記フィルタ部材は、前記フィルタ部材の厚さ方向に直交する面が水平面に対して垂直となるように前記フィルタ部材を保持したとして、その場合に前記フィルタ部材の最も上位に位置する部位から水平面に垂直に下した垂線の長さをh0とし、前記フィルタ部材の厚さ方向に直交する面が水平面に対して角度をなすように前記フィルタ部材を保持したときに、前記フィルタ部材の最も上位に位置する部位から水平面に垂直に下した垂線の長さをhとすると、h<h0なる関係が成り立つように保持される請求項1に記載の脱臭フィルタ。
【請求項5】
前記フィルタ部材は、外観が直方体状、又は立方体状の立体形状を呈するように形成される請求項1に記載の脱臭フィルタ。
【請求項6】
前記フィルタ部材は、縦方向を軸方向としたときに、前記フィルタ部材の厚さ方向に直交する面が水平面に対してなす角度θと、前記フィルタ部材の厚さTと、前記フィルタ部材の横方向の長さWとの間に、
Arcsin((W2-T2)/(W2+T2))>θ≧Arctan(T/W)
なる関係が成り立つように保持される請求項5に記載の脱臭フィルタ。
【請求項7】
前記水洗い再生可能な吸着材は、金属原子がドープされたメソポーラスシリカである請求項1~6のいずれか一項に記載の脱臭フィルタ。
【請求項8】
水洗い再生可能な吸着材を含むフィルタ部材を備える脱臭フィルタの再生方法であって、
前記フィルタ部材が厚さ方向に沿って通風可能であり、
前記フィルタ部材の厚さ方向に直交する面が、水平面に対して角度をなすように前記フィルタ部材を保持した状態で水洗い後に乾燥することを特徴とする脱臭フィルタの再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭フィルタ及びその再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
悪臭などを除去する目的で使用される様々な脱臭フィルタが開発されている。
特許文献1には、活性炭混抄紙に金属フタロシアニン錯体と、弱アルカリ性の金属塩と、水溶性の銅化合物とを担持させたことに特徴のあるトイレ用消臭フィルターが開示されている。
空間内の空気環境を清浄に保つ空気清浄機にて使用する脱臭フィルターとして、特許文献2には、水熱合成で熟成したシリカゲル粉末を混抄した混抄紙を積層接着したコルゲーション基材からなり、水洗することによって、脱臭能力回復を狙った脱臭フィルターが開示されている。
また、特許文献3には、ハニカムのセル内に粒状脱臭剤を充填し、該ハニカムの両側の開孔面を通気性基材で封鎖してなる脱臭フィルターであって、該粒状脱臭剤が水洗再生に対応する脱臭剤であることを特徴とする脱臭フィルターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-025118号公報
【特許文献2】特開2008-036191号公報
【特許文献3】特開2004-041277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているトイレ用消臭フィルターは、複数種類の担持体により悪臭成分を分解または化学吸着するものであるが、高湿度環境下での使用や水洗いによって担持体が脱落し、脱臭性能が低下するという課題があった。
また、特許文献2および特許文献3に開示されている脱臭フィルターは、脱臭性能を回復させるために水洗いすると、フィルタの孔が水の毛管現象によって閉塞され、乾燥するまでの一定期間は脱臭性能が発現できなかった。濡れたままの状態が長時間続くと、使用環境によっては悪臭成分の濃化や細菌の繁殖、吸着材の脱離や分解などが起こり、脱臭性能がかえって低下してしまうといった不具合が生じる虞がある。
【0005】
脱臭性能を高くするには、空気の通り道の合計表面積を大きくし、消臭剤を高配合することが好ましい。フィルタサイズに制限があると仮定すると、フィルタの目開きは小さい方がよく、孔に内接する円の半径が小さい方が消臭には有利になる。また、フィルタの厚みは厚い方がよい。一方、水はけをよくするには、フィルタの目開きは大きい方がよく、フィルタの厚みは薄い方がよい。すなわち、消臭性能と乾燥性能とフィルタサイズの小型化は両立することが難しく、いずれかを妥協することが必要だった。
【0006】
このような背景技術に鑑みて、本発明者らは、水洗い再生可能な吸着材を含むフィルタを再生するに際し、水洗い後のフィルタから効率よく水分を除去できるようにするべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る脱臭フィルタは、設置対象に交換可能又は交換不要に設置される脱臭フィルタであって、水洗い再生可能な吸着材を含む厚さ方向に沿って通風可能なフィルタ部材と、前記設置対象に設置した状態で、前記フィルタ部材の厚さ方向に直交する面が、水平面に対して角度をなすように前記フィルタ部材を保持可能な保持具とを備える構成としてある。
【0008】
また、本発明に係る脱臭フィルタの再生方法は、水洗い再生可能な吸着材を含むフィルタ部材を備える脱臭フィルタの再生方法であって、前記フィルタ部材が厚さ方向に沿って通風可能であり、前記フィルタ部材の厚さ方向に直交する面が、水平面に対して角度をなすように前記フィルタ部材を保持した状態で水洗い後に乾燥する方法としてある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水洗い後の脱臭フィルタから効率よく水分を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る脱臭フィルタが備えるフィルタ部材の一例を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る脱臭フィルタが備えるフィルタ部材の他の一例を示す説明図である。
【
図3】フィルタ部材の厚さ方向に直交する面が水平面に対してなす角度を定める際の基準を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態に係る脱臭フィルタは、例えば、空気清浄機、冷蔵庫、衛生設備などを含む各種機器の脱臭装置を設置対象とし、悪臭の原因となる臭気成分を吸着して悪臭を除去するために利用することができる。脱臭フィルタを設置対象に設置するに際しては、設置対象の耐用年数に応じて交換可能又は交換不要に設置される。
【0013】
脱臭フィルタは、水洗い再生可能な吸着材を含み、厚さ方向に沿って通風可能なフィルタ部材1と、設置対象に設置した状態で、フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が水平面に対して角度をなすように、フィルタ部材1を保持可能な保持具とを備える。フィルタ部材1が、その厚さ方向に直交する面が水平面に対して角度をなして保持されるようにすることで、水洗い後の脱臭フィルタから効率よく水分を除去することができるが、このような本発明に特有の効果を奏する脱臭フィルタの構成について、より具体的に説明する。
【0014】
厚さ方向に沿って通風可能とされたフィルタ部材1は、水洗い後にフィルタ部材1の厚さ方向に沿った方向に下面側又は上面側から通風して乾燥させることができる。通風乾燥の方法は脱臭フィルタの設置環境によるため特に限定されず、例えば、加熱ヒーターを用いて20~70℃の熱風を通風して乾燥する方法が挙げられる。また、本発明によれば、水洗い後の脱臭フィルタから効率よく水分を除去することができるため、乾燥方法は加熱ヒーターを用いない通風乾燥や、加熱ヒーター及び送風機を用いない屋内自然乾燥でもよい。これにより、熱風や直射日光によって吸着材、フィルタ部材1及び保持具の劣化を抑制できる。また、加熱ヒーターや送風機を備えていない設置対象にも脱臭フィルタを適用できる。
【0015】
ここで、水洗い再生可能とは、消臭性能が低下した吸着材を任意の方法で水洗いして乾燥させることにより、消臭性能を回復させることができることを意味する。吸着材が水洗い再生可能であるか否かは、水洗い乾燥後と初期の吸着材の脱臭性能(吸着材が破過するまでに要する時間又は脱臭容量)を比較することで判断できる。例えば、硫化水素やメチルメルカプタンなどの硫黄含有化合物や、アンモニアやトリメチルアミンなどの窒素含有化合物に対して、吸着材の水洗い乾燥後の消臭性能が、初期消臭性能の50%以上となれば水洗い再生可能であるといえる。
なお、設置対象は、フィルタ部材1を通風乾燥するための機構を備えているのが好ましく、フィルタ部材1を通風乾燥するための機構とフィルタ部材1を水洗いするための機構との両方を備えているのがより好ましい。設置対象がフィルタ部材1を水洗いするための機構を備えていない場合、フィルタ部材1を取り出して水洗いした後に、設置対象に戻した状態で乾燥できるように設置対象が構成されているのが好ましい。
【0016】
本実施形態において、水洗い再生可能な吸着材としては、例えば、ゼオライト、アルミナ、活性炭、ポーラスシリカなどの多孔質材料が挙げられる。吸着材は、悪臭成分との接触効率が高いものを使用することが好ましい。吸着材の形状は、球状であってもよく、板状、薄片状、塊状などの非球状であってもよい。吸着材の粒子径は、D99が0.1~500μmであるのが好ましい。比表面積は、100~1500m2/gであるのが好ましい。吸着材として用いる多孔質材料の孔径は、2~50nmのメソ孔であることが好ましい。吸着材は金属化合物や消臭剤、悪臭成分分解剤などを担持したものであってもよいし、金属原子をドープしたものであってもよい。また、2種以上の吸着材を使用してもよい。
【0017】
本実施形態にあっては、上記吸着材の中でも特に、メソ孔を有するメソポーラスシリカを用いるのが好ましく、シリカ骨格を形成するシロキサン結合(-Si-O-)中のSi原子の一部を金属原子Mに置き換えることによって、シリカ細孔壁のシロキサン結合中に金属原子Mがドープされたメソポーラスシリカを用いるのがより好ましい。シリカ細孔壁のシロキサン結合中にドープする金属原子Mとしては、Cu、Mn、Co及びZnからなる群から選択される少なくとも一種であるのが好ましく、特にCuが好ましい。これらの金属原子Mをシリカ細孔壁のシロキサン結合中にドープすることで、硫黄含有化合物や窒素含有化合物など複数種類の臭気成分を大量に吸着できる。また、金属原子Mがドープされたメソポーラスシリカを用いれば、高湿度環境下での使用中や水洗い後の含水状態であっても、臭気成分に対する優れた吸着性能を発揮できる。
【0018】
メソポーラスシリカの比表面積は、500~1200m2/gであるのが好ましい。当該メソポーラスシリカの比表面積が500m2/g以上であれば、シリカ細孔壁のシロキサン結合中にドープされた金属原子Mと臭気物質との接触面積が十分に確保され、高い吸着率を得ることができる。一方、比表面積が1200m2/g以下であれば、細孔構造を維持するための強度も確保できる。
【0019】
このようなメソポーラスシリカにおいて、脱臭性能を向上させるためにシリカ細孔壁のシロキサン結合中にドープされる金属原子Mの含有率は、0.01~15質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.1~13質量%であり、特に好ましくは2~10質量%である。金属原子Mの含有量が0.01質量%以上であれば、十分な吸着性能を発揮することができる。一方、15質量%以下であれば、シリカ細孔壁のシロキサン結合中に金属原子Mがドープされたメソポーラスシリカを容易に合成することができる。
【0020】
また、シリカ細孔壁のシロキサン結合中に、金属原子Mの他にAl原子又はFe原子をドープするのが好ましい。すなわち、シリカ骨格を形成するシロキサン結合中のSi原子の一部を金属原子Mに置き換えるとともに、他の一部のSi原子をAl原子又はFe原子に置き換えるのが好ましい。このようにすることで、シロキサン結合からなるシリカ骨格の加水分解が抑制され、細孔構造が崩壊し難くなる。その結果、メソポーラスシリカの水熱耐久性が高められ、水洗いや熱風乾燥による劣化を抑制できる。また、Al原子やFe原子をドープすることで、吸着した臭気成分を水洗により脱離させ、脱臭性能を回復させる能力も向上する。
【0021】
シリカ細孔壁のシロキサン結合中にAl原子又はFe原子をドープする場合、Al原子又はFe原子の含有率は、0.01~15質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.1~5質量%である。Al原子又はFe原子の含有量が0.01質量%以上であれば、シリカ骨格の加水分解が抑制され、保管に際し、経時的な比表面積の低下を抑制することができる。一方、15質量%以下であれば、比表面積500m2/g以上の高い比表面積を実現できる。
【0022】
このようなメソポーラスシリカなどの吸着材は、例えば、フィルタ部材1に吸着材を添着するための添着液を調製し、かかる添着液を用いてフィルタ部材1の全体又は一部に添着することができる。添着液を調製するに際しては、吸着材をフィルタ部材1に固定するために、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂系バインダーや、水ガラス、シリカ微粒子、ポリシラザン、シリコーンなどのシリカバインダーを用いてもよい。吸着材がポーラスシリカである場合、バインダー成分としてシリカ系バインダーを用いることで、水洗い及び乾燥によって吸着材がバインダーから脱落することを抑制できる。また、バインダー成分がアクリル樹脂などの有機微粒子やシリカ微粒子であれば、これらによる凹凸形状をフィルタ部材1の表面に付与できる。その結果、フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が水平面に対してなす角度が小さくても、良好な排水性を発現する。添着液中における吸着材とバインダー成分との質量比は特に限定されないが、吸着材をフィルタ部材1に添着した際に吸着材がバインダー成分に埋没されないように調整することが好ましく、通常、1:99~99:1であり、20:80~80:20であることが好ましく、より好ましくは20:80~50:50である。添着量は特に限定されないが、1~100g/m2であることが好ましい。また、pH調整剤、界面活性剤、粘度調整剤などが必要に応じて含まれるように添着液を調製することができる。添着液に用いる溶媒は、水であってもよく、ケトン系溶媒やエーテル系溶媒などの水混和性有機溶媒と水との混合溶媒であってもよく、水と混和しない有機溶媒であってもよい。
【0023】
また、フィルタ部材1に吸着材を添着させるには、例えば、フィルタ部材1を添着液に沈めてから引き上げた後に、又はフィルタ部材1に添着液をスプレーにより噴霧した後に、自然乾燥又は加熱乾燥させることによって添着させることができる。
【0024】
フィルタ部材1は、厚さ方向に沿って配設された隔壁部に囲まれて、厚さ方向に沿って貫通する複数の貫通孔を有しているのが好ましい。貫通孔は、フィルタ部材1の厚さ方向に沿って貫通していてもよいが、例えば、フィルタ部材1の厚さ方向に対して45°以下の角度を有していてもよい。フィルタ部材1を、フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が水平面HPに対して角度をなすように保持した際に、貫通孔の貫通方向と水平面HPとのなす角度が、好ましくは70°以上、より好ましくは80°以上、特に好ましくは90°(鉛直)となるようにフィルタ部材1が貫通孔を有していれば、水洗い後のフィルタからより効率よく水分を除去することができる。このような貫通孔内を通る空気中に含まれる臭気成分が、貫通孔の内面に露出する吸着材(例えば、貫通孔の内面に添着されたメソポーラスシリカ)に吸着されるように構成されていれば、より多くの臭気成分の吸着が可能になるため好ましいが、フィルタ部材1の具体的な構成は、特に限定されない。
【0025】
例えば、六角形セル、四角形セル、三角形セル、円形セルなどから成るハニカム構造が、フィルタ部材1の厚さ方向に沿って又は角度を有して貫通している構成が挙げられる。フィルタ部材1の一部又は全体が、1種又は2種以上の前記セル構造から構成されていてもよい。なお、多角形セルの各辺は、長さが同じでなくてもよく、直線でも曲がっていてもよい。また、多角形セルの各頂点は、内角が均等でなくてもよく、角が丸くてもよい。フィルタ部材1は、単位体積当たりの表面積(比表面積)が大きく、圧力損失が低い構造となるように構成することが好ましい。そのなかでも特に、平板状の隔壁部(ベースシート)11と波板状の隔壁部(波型シート)12とが交互に配設されて、これらの間に厚さ方向に沿って貫通する複数の貫通孔がセル状に形成されたコルゲートハニカム構造とするのが好ましい(
図1、
図2参照)。フィルタ部材1がコルゲートハニカム構造であれば、高い脱臭性能を発現し、特に水洗い後の乾燥初期段階において水分の除去効率が向上する。
【0026】
フィルタ部材1をコルゲートハニカム構造とする場合、ベースシート11は、例えば、
図1に示すように長手方向(横方向)と平行に配設されていてもよく、
図2に示すように短手方向(縦方向)と平行に配設されていてもよい。ベースシート11を配設する向きは、フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が水平面に対して角度をなすようにフィルタ部材1を保持したときの傾斜方向、すなわち、設置対象に設置した状態でフィルタ部材1の上位に位置する部位側から下位に位置する部位側に向かう方向を考慮して適宜設計するのが好ましい。例えば、
図1に示す例を挙げて説明するに、短手方向(縦方向)を軸方向として図中手前側の部位が下位に位置するように、フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が水平面に対して角度をなすようにフィルタ部材1を保持したときに、その傾斜方向と平行となるようにベースシート11を配設するのが好ましい。すなわち、フィルタ部材1を設置対象に設置した状態で傾斜方向(排水方向)と平行にベースシートが配設されていれば、水分が波型シート12の凹部やベースシート11で堰き止められる回数が少なくなり、排水されやすい。さらに、脱臭フィルタを高湿度環境下で使用する際には、セルや吸着材の表面が凝結水で覆われにくくなるため脱臭性能が向上する。
【0027】
このような構造を以てフィルタ部材1を構成する場合、フィルタ部材1のセル数は、吸着材への臭気成分の吸着性、水洗い再生時の通水性、通風乾燥時の通風性などを考慮すると、30セル/inch2以上、600セル/inch2以下であるのが好ましく、より好ましくは80セル/inch2以上、400セル/inch2以下であり、特に好ましくは120セル/inch2以上、400セル/inch2以下である。また、水洗い再生時の通水性を考慮すると、構成する基材の通気度は、10~3000cm3/(cm2・s)であるのが好ましく、10~300cm3/(cm2・s)であるのがより好ましい。フィルタ部材1の素材の厚さは、0.01~5mmであるのが好ましい。
【0028】
また、フィルタ部材1の素材としては透水性を有するものであれば特に限定されないが、不織布、発泡樹脂、ガラス繊維やセラミックス繊維などの無機紙、水洗い再生可能な吸着材として機能する多孔質セラミックスなどの素材、アルミなどの金属素材、これらの複合素材などが挙げられる。これらの中でも、水洗いや加熱乾燥を繰り返しても素材が劣化しにくい耐水性の紙素材や多孔質セラミックスを用いることが好ましく、種々の形状、寸法に形成することが容易な耐水性の紙素材を用いることがより好ましい。また、透水性の高い無機紙は、フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が水平面に対してなす角度が低角度でも、より効率よく水分を除去できるため最適である。成形品は押出成形品などであってもよく、この場合、吸着材のみ又は吸着材と樹脂成分などとの混合物から成形されたものであってもよい。フィルタ部材1の形状も限定されず、水洗いのし易さや通風乾燥のし易さなどを考慮して、その外観が直方体状、立方体状、円柱状などの任意の立体形状を呈するように形成することができる。
【0029】
また、フィルタ部材1の厚さは、通風乾燥時の乾燥性を考慮すると、貫通孔の長さ(すなわち、臭気成分を含む空気が通る吸着経路)が十分に確保できずに吸着性能に支障が生じてしまわない範囲で可及的に短くするのが好ましい。例えば、直方体状の外観を呈するようにフィルタ部材1を形成する場合、フィルタ部材1の厚さは、厚さ方向に直交する面における短辺の長さ以下であるのが好ましい。フィルタ部材1の素材が紙素材である場合、フィルタ部材1を成形後の紙の厚みは1mm以下であることが好ましい。
【0030】
このようなフィルタ部材1を備える脱臭フィルタが、設置対象に設置した状態で、フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が、水平面(すなわち、鉛直方向に直交する面)HPに対して角度をなすようにフィルタ部材1を保持可能な保持具をさらに備えるのは前述した通りである。このようにしてフィルタ部材1を保持する保持具は、設置対象の一部として構成されるようにしてもよく、設置対象に設置したときに、フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が水平面HPに対して角度をなすように、フィルタ部材1が保持されていればよい。
【0031】
フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が水平面HPに対してなす角度θは、5°以上であるのが好ましく、より好ましくは10°以上である。より具体的には、例えば、直方体状の外観を呈するようにフィルタ部材1を形成した場合、次のように定めることができる。すなわち、縦方向(図示する例では、短手方向)を軸方向としたときに、横方向(図示する例では、長手方向)に対向する側面のうち下位に位置する側面の上端と、上位に位置する側面の下端とを含む面が水平となる角度を基準に(
図3参照)、所望の効果が得られる範囲で定めることができ、当該角度以上とするのが好ましい。換言すれば、フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が水平面HPに対してなす角度θと、フィルタ部材1の厚さTと、フィルタ部材1の横方向の長さWとの間に、次の関係が成り立つのが好ましい。
θ≧Arctan(T/W) ・・・・・(1)
【0032】
また、フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が水平面HPに対してなす角度θの上限は、フィルタ部材1に厚さがあることを考慮して、設置対象に設置する際のスペースが大きくなり過ぎないように適宜定めることができる。例えば、フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が水平面HPに対して垂直となるようにフィルタ部材1を保持したとして、その場合にフィルタ部材1の最も上位に位置する部位から水平面HPに垂直に下した垂線の長さをh0とし、フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が水平面HPに対して角度θをなすようにフィルタ部材1を保持したときに、フィルタ部材1の最も上位に位置する部位から水平面HPに垂直に下した垂線の長さをhとすると、h<h0なる関係が成り立つようにフィルタ部材1が保持されるようにするのが好ましい。より具体的には、直方体状、又は立方体状の外観を呈するようにフィルタ部材1を形成した場合、水平面HPに対するフィルタ部材1の最も上位に位置する部位の高さ、すなわち、フィルタ部材1の最も上位に位置する部位から水平面HPに垂直に下した垂線の長さ(以下、「設置高さ」という)Hが、フィルタ部材1の横方向の長さWよりも短くなる角度とするのが好ましい。換言すれば、フィルタ部材1の厚さ方向に直交する面が水平面HPに対してなす角度θと、フィルタ部材1の厚さTと、フィルタ部材1の横方向の長さWとの間に、次の関係が成り立つのが好ましい。
θ<Arcsin((W2-T2)/(W2+T2)) ・・・・・(2)
【0033】
フィルタ部材1を垂直に立てたときの設置高さHは、フィルタ部材1の横方向の長さWと等しくなる。このため、上記式(2)で規定される上限を超える角度θでフィルタ部材1を保持すると、フィルタ部材1に厚さがあることから、その設置高さHはフィルタ部材1を垂直に立てたときよりも大きくなり、その分高さ方向にスペースを取ってしまう。したがって、上記式(2)で角度θの上限を規定することによって、そのような不具合を有効に回避することができる。
【0034】
ここで、上記式(2)は次のようにして導かれる。すなわち、
図4に示すように、フィルタ部材1の横方向に沿った側面の対角線の長さをF、当該対角線と横方向沿った長辺とのなす角度をθ
0とすると、これらと設置高さHとの間には、
H=F・sin(θ+θ
0) ・・・・・(3)
なる関係が成り立つ。よって、設置高さHが、フィルタ部材1の横方向の長さWよりも短くなるとき次式が成り立つ。
sin(θ+θ
0)<W/F ・・・・・(4)
上記式(4)を
θ+θ
0<Arcsin(W/F) ・・・・・(5)
と置き換えて、これをθについて順次解いていくと、
θ<Arcsin(W/F)-θ
0 ・・・・・(6)
θ<Arcsin(W/F)-Arcsin(T/F) ・・・・・(7)
θ<Arcsin((W/F)(1-(T/F)
2)
1/2-(T/F)(1-(W/F)
2)
1/2) ・・・・・(8)
θ<Arcsin((W/F)((F
2-T
2)/F
2)
1/2-(T/F)((F
2-W
2)/F
2)
1/2) ・・・・・(9)
となる。
そして、
F
2=W
2+T
2 ・・・・・(10)
なる関係が成り立つことから、上記式(9)を整理すると上記式(2)が導かれる。
【0035】
本実施形態において、保持具は、フィルタ部材1を上記のように保持できるように構成されていれば、その具体的な構成は限定されない。例えば、脱臭フィルタを設置対象に交換可能に設置する場合には、設置対象の設置部位の構造などに応じて、脱臭フィルタをカートリッジ式に着脱できるように構成することができる。通風乾燥時にフィルタ部材1を軸周りに回動させて、フィルタ部材1を上記のように保持した状態とする可動機構を備えるようにしてもよい。
【0036】
また、保持具は、フィルタ部材1の底面と接する場合、底面は閉塞しておらず、貫通穴を有するように形成するなどして、フィルタ部材1から除去された水の排水性が損なわれないようすることができる。格子状、網状、空洞などの構造で、フィルタ部材1から除去された水が、保持具の下方に垂れ落ちるようにすることができ、このとき格子の間隔や形状を工夫することで水はけをよりよくすることができる。このような保持具の表面は、平滑で水の滑りがよいことが望ましい。
【実施例0037】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0038】
まず、吸着材としてのメソポーラスシリカをフィルタ部材に添着するための添着液を次のように調製した。
【0039】
(添着液1)
50質量部のメソポーラスシリカ(株式会社シグマアルドリッチ製;MCM-41 type(hexagonal);製品番号643645)のスラリー(濃度20%)と、50質量部のシリカバインダーとを混合して、メソポーラスシリカとシリカ系バインダー成分との質量比が50:50の添着液1を調製した。
【0040】
(添着液2)
溶媒としての水に、界面活性剤としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、銅塩として塩化銅二水和物、アルミニウム塩として塩化アルミニウム六水和物を加え、100℃で1時間攪拌した。室温まで溶液を冷却した後、ミセルが形成された溶液に、シリカ源としてテトラエトキシシランを加え、攪拌した。次に、縮合触媒として水酸化ナトリウムを加え、攪拌した。各化合物の添加量は、テトラエトキシシラン1モルに対して、それぞれ以下の量とした。
・界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド):0.225モル
・塩化銅二水和物:0.0204モル
・塩化アルミニウム六水和物:0.0482モル
・水:125モル
・水酸化ナトリウム:0.325モル
次いで、溶液中のミセルを前駆体として回収し、十分に乾燥した後、前駆体を焼成して有機成分を除去することによって、Cuを2wt%、Alを2wt%含有するメソポーラスシリカ(Cu2Al2)を作製した。
このようにして作製したメソポーラスシリカを用いた以外は添着液1と同様にして、添着液2を調製した。
【0041】
(添着液3)
溶媒としての水に、界面活性剤としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、銅塩として塩化銅二水和物、鉄塩として塩化鉄六水和物を加え、室温で30分間攪拌した。その後、ミセルが形成された溶液に、シリカ源としてテトラエトキシシランを加え、攪拌した。次に、縮合触媒として水酸化ナトリウムを加え、攪拌した。各化合物の添加量は、テトラエトキシシラン1モルに対して、それぞれ以下の量とした。
・界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド):0.225モル
・塩化銅二水和物:0.1202モル
・塩化鉄六水和物:0.0683モル
・水:125モル
・水酸化ナトリウム:0.8モル
次いで、生成した沈殿物を濾過して回収し、50℃で24時間乾燥した後、500℃で20時間焼成することで、Cuを10wt%、Feを5wt%含有するメソポーラスシリカ(Cu10Fe5)を作製した。
このようにして作製したメソポーラスシリカを用いた以外は添着液1と同様にして、添着液3を調製した。
【0042】
次いで、無機紙をベースにコルゲートハニカム構造に形成されたフィルタ部材又はABS樹脂をベースに四角形セルを配列したフィルタ部材を以下のように作製した。これらを添着液に沈め、引き上げてから自然乾燥させることによって、メソポーラスシリカを添着させたサンプルとした。メソポーラスシリカとシリカ系バインダーの添着量は、合計で1gであった。なお、ABS樹脂から作製したフィルタ部材は、過硫酸水溶液を用いて表面を親水化させた後に添着液で処理した。
【0043】
・フィルタ#120v
セル数が120セル/inch
2であって、各貫通孔の貫通する方向(目方向)が厚さ方向に対して10°傾斜するように作製した。ベースシートの配設は
図1の通りである。
・フィルタ#120s
セル数が120セル/inch
2であって、各貫通孔の貫通する方向(目方向)が厚さ方向に直交する面に対して垂直となるように作製した。ベースシートの配設は
図2の通りである。
・フィルタ#200v
セル数が200セル/inch
2であって、各貫通孔の貫通する方向(目方向)が厚さ方向に対して10°傾斜するように作製した。ベースシートの配設は
図1の通りである。
・フィルタ#200s
セル数が200セル/inch
2であって、各貫通孔の貫通する方向(目方向)が厚さ方向に直交する面に対して垂直となるように作製した。ベースシートの配設は
図2の通りである。
・フィルタABS
比較として3DプリンタでABS樹脂を基材とするフィルタを作製した。フィルタの壁の厚みは約1mmで、縦に26個、横に10個の均一な大きさの四角形のセルが配列している。
【0044】
なお、いずれのフィルタ部材も直方体状の外観を呈するように作製し、縦L×横W×厚さTが27mm×66mm×11mmの直方体状とした。
【0045】
次に、以下の実験を行った。いずれの実験においても、乾燥工程は室温20℃、50%RHの雰囲気下で、無風で行った。
【0046】
[実験1]
フィルタ#120vに添着液1を用いてメソポーラスシリカを添着させたサンプルを所定数用意し、100℃で1時間乾燥させた後、20℃、50%RHの条件で1時間吸湿させ重量を測定した。これを初期重量とした。次に、200mLの純水(約25℃)を入れた容量300mLの容器に40秒、貫通孔が開口する面が水面に平行となるように浸漬させた。貫通孔が開口する面を水面に平行にしたままサンプルを取り出した後、その厚さ方向に直交する面が、水平面に対して0°(比較例1)となるように保持したもの、縦方向を軸方向として水平面に対して10°(実施例1)、20°(実施例2)の角度をなすように保持したものの各々に対して、時間の経過によるサンプルの重量変化を測定した。サンプルは所望の角度でV字に張った2本の釣り糸の上に載せることで保持した。測定結果に基づいて、サンプル取り出し直後の含水量に対する3分間乾燥後の含水量の割合を算出した。その結果を表1に示す。比較例2-1,比較例2-2,比較例3として、フィルタABS、市販のセラミックスフィルタ(縦L×横W×厚さT:27mm×66mm×11mm、セル数110セル/inch2)についても同様の実験を行った。
【0047】
【0048】
これらの結果から、透水性のあるフィルタを水平面に対して角度をなすように保持することで、セル内に詰まった水分を効率よく除去できることが確認できた。また、角度0°ではフィルタ部材の素材によらず水はけが悪いことが確認できた。
【0049】
[実験2]
フィルタ#120sに添着液1を用いてメソポーラスシリカを添着させたサンプルを所定数用意し、100℃で1時間乾燥させた後、20℃、50%RHの条件で1時間吸湿させ重量を測定した。これを初期重量とした。次に、200mLの純水(約25℃)を入れた容量300mLの容器に40秒、貫通孔が開口する面が水面に平行となるようにサンプルを浸漬させた。貫通孔が開口する面を水面に平行にしたままサンプルを取り出した後、その厚さ方向に直交する面が、水平面に対して0°(比較例4)、10°(実施例3)となるように保持したもの、縦方向を軸方向として水平面に対して20°(実施例4)の角度をなすように保持したものの各々に対して、時間の経過によるサンプルの重量変化を測定した。サンプルは所望の角度でV字に張った2本の釣り糸の上に載せることで保持した。測定結果に基づいて、サンプル取り出し直後の含水量に対する3分間乾燥後の含水量の割合を算出した。その結果を表2に示す。比較例5,実施例5,比較例6、実施例6として、フィルタ#200v、フィルタ#200sについても同様の実験を行った。
【0050】
【0051】
実験1と実験2との対比から、フィルタの目の向きは傾斜方向と平行にベースシートが配設されている方が、フィルタから効率よく水分を除去する効果が顕著であることが確認できた。また、その効果はセルの大きさによらず発揮された。
【0052】
[実験3]
フィルタ#120sに添着液1を用いてメソポーラスシリカを添着させたサンプルを所定数用意し、100℃で1時間乾燥させた後、20℃、50%RHの条件で1時間吸湿させ重量を測定した。これを初期重量とした。次に、200mLの純水(約25℃)を入れた容量300mLの容器に40秒、貫通孔が開口する面が水面に平行となるように浸漬させた。貫通孔が開口する面を水面に平行にしたままサンプルを取り出した後、その厚さ方向に直交する面が、水平面に対して40°(実施例7)、60°(実施例8)となるように保持し、時間の経過によるサンプルの重量変化を測定した。サンプルは釣り糸を格子状(マス目:5mm×5mm)に張った保持具により保持した。測定結果に基づいて、サンプル取り出し直後の含水量に対する3分間乾燥後の含水量の割合を算出した。その結果を表3に示す。実施例9、実施例10として、市販のセラミックスフィルタ(縦L×横W×厚さT:27mm×66mm×11mm、セル数110セル/inch2)についても同様の試験を行った。
【0053】
【0054】
実験3の結果から、透水性があるフィルタを使用すれば、フィルタを高角度に傾斜させて、貫通孔が水平面に対する鉛直方向から傾いた場合でも水はけがよいことがわかった。
【0055】
[実験4]
フィルタ#120vに添着液1を用いてメソポーラスシリカを添着させたサンプルを所定数用意し、100℃で1時間乾燥させた後、20℃、50%RHの条件で1時間吸湿させ重量を測定した。これを初期重量とした。次に、200mLの純水(約25℃)を入れた容量300mLの容器に40秒、貫通孔が開口する面が水面に平行となるように浸漬させた。貫通孔が開口する面を水面に平行にしたままサンプルを取り出した後、その厚さ方向に直交する面が、水平面に対して0°(比較例7)、60°(実施例11)となるように保持した。サンプルは、外周部をアクリル板で固定して保持した。時間の経過ごとに、水で閉塞していないセルの個数を数え、全セル数との比から開口率を算出した。その結果を表4に示す。比較例8、実施例12として、同様の実験を#120sについても実施した。
【0056】
【0057】
実験4の結果から、本発明におけるフィルタは、傾斜方向と平行にベースシートが配設されるように設置対象に設置することで、フィルタの目からより短時間に効率よく水分を除去できる効果が確認できた。また、ベースシートの配設方向によらず、角度0°ではフィルタの目から水分を除去しにくいことが確認できた。
【0058】
[吸着材の脱臭性]
<臭気試験>
フィルタ#120vに添着液1~3のそれぞれを用いてメソポーラスシリカを添着させた3種類のサンプルを2つずつ用意し、100℃で1時間乾燥させた。各サンプルに、アンモニアを5ppm含む気体と、硫化水素を1ppm含む気体とをそれぞれ通過させ、検知管で臭気濃度を測定して、初濃度と同等になるまでの時間を計測した。その結果を初期の時間として表5に示す。
なお、臭気を含む気体の通過風速は1.0m/秒とした。
<水洗い再生試験>
臭気試験後のサンプルを取り出して水洗いし、フィルタの厚さ方向に直交する面が、水平面に対して60°となるように室温下で1分間保持した。このときの含水率は水洗い直後に対して28%であり、目の貫通率は93%だった。その後、前記臭気試験を行った。その結果を水洗い後の時間として表5に示す。参考例1として、初期の未使用のフィルタを水洗いし、フィルタの厚さ方向に直交する面が、水平面に対して60°となるように室温下で1分間保持し、その後、前記消臭試験を行った。
【0059】
【0060】
初期と参考例1の比較より、当該シリカは含水状態であっても硫化水素、アンモニアに対して同等の消臭性能を発現することが確認できた。臭気試験及び水洗い再生試験の結果から、本発明におけるフィルタ部材はCuを10wt%、Feを5wt%含有するメソポーラスシリカを添着したフィルタであることが最も好ましいことが確認できた。また、当該フィルタは、水洗い直後の含水状態であってもほとんどの目が貫通しているため通風が可能であり、優れた脱臭性を発揮することが確認できた。
【0061】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。