(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156876
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】強酸性カチオン交換樹脂の製造方法および製造設備、ならびに該強酸性カチオン交換樹脂の再利用方法
(51)【国際特許分類】
B01J 49/06 20170101AFI20251007BHJP
B01J 39/05 20170101ALI20251007BHJP
B01J 47/04 20060101ALI20251007BHJP
B01J 47/026 20170101ALI20251007BHJP
B01J 41/05 20170101ALI20251007BHJP
B01J 39/18 20170101ALI20251007BHJP
B01J 41/12 20170101ALI20251007BHJP
B09B 3/30 20220101ALI20251007BHJP
【FI】
B01J49/06
B01J39/05
B01J47/04
B01J47/026
B01J41/05
B01J39/18
B01J41/12
B09B3/30 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059613
(22)【出願日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 美和
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA47
4D004BA06
4D004BA10
4D004CA12
4D004CC12
4D004DA03
4D004DA10
(57)【要約】
【課題】使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂から、高純度の水質が要求される用途においても適用可能な再利用品の強酸性カチオン交換樹脂を製造する方法を提供する。
【解決手段】使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂から強酸性カチオン交換樹脂を製造する方法であって、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂に含まれる強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを分離する分離工程と、分離後の強酸性カチオン交換樹脂を、塩酸および硫酸から選択される1つ以上の再生剤を用いて再生する再生工程と、を有し、前記分離後の強酸性カチオン交換樹脂に混入している強塩基性アニオン交換樹脂の割合(異樹脂混入率)が、イオン交換樹脂の総体積に対して5体積%以下であることを特徴とする、強酸性カチオン交換樹脂の製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂から強酸性カチオン交換樹脂を製造する方法であって、
使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂に含まれる強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを分離する分離工程と、
分離後の強酸性カチオン交換樹脂を、塩酸および硫酸から選択される1つ以上の再生剤を用いて再生する再生工程と、
を有し、
前記分離後の強酸性カチオン交換樹脂に混入している強塩基性アニオン交換樹脂の割合(異樹脂混入率)が、イオン交換樹脂の総体積に対して5体積%以下であることを特徴とする、強酸性カチオン交換樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記再生工程において、
前記異樹脂混入率が、イオン交換樹脂の総体積に対して1体積%以下である場合は、塩酸および硫酸から選択される1つ以上の再生剤を用いて分離後の強酸性カチオン交換樹脂の再生を行い、
前記異樹脂混入率が、イオン交換樹脂の総体積に対して1体積%超、5体積%以下である場合は、硫酸を用いて分離後の強酸性カチオン交換樹脂の再生を行う、
請求項1に記載の強酸性カチオン交換樹脂の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法によって製造された強酸性カチオン交換樹脂を、単床カチオン交換樹脂または複床イオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂として再利用する、強酸性カチオン交換樹脂の再利用方法。
【請求項4】
使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂から強酸性カチオン交換樹脂を製造するための設備であって、
使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂に含まれる強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを分離する分離手段と、
分離後の強酸性カチオン交換樹脂を、塩酸および硫酸から選択される1つ以上の再生剤を用いて再生する再生手段と、
を有し、
前記分離後の強酸性カチオン交換樹脂に混入している強塩基性アニオン交換樹脂の割合(異樹脂混入率)が、イオン交換樹脂の総体積に対して5体積%以下であることを特徴とする、強酸性カチオン交換樹脂の製造設備。
【請求項5】
前記再生手段において、
前記異樹脂混入率が、イオン交換樹脂の総体積に対して1体積%以下である場合は、塩酸および硫酸から選択される1つ以上の再生剤を用いて分離後の強酸性カチオン交換樹脂の再生を行い、
前記異樹脂混入率が、イオン交換樹脂の総体積に対して1体積%超、5体積%以下である場合は、硫酸を用いて分離後の強酸性カチオン交換樹脂の再生を行う、
請求項4に記載の強酸性カチオン交換樹脂の製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂から強酸性カチオン交換樹脂を製造する方法および設備、ならびに該強酸性カチオン交換樹脂を再利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純水装置に使用されるイオン交換樹脂は、一定の使用期間を経た後、産業廃棄物として埋め立て処分や焼却処分により廃棄される。一方で、廃棄されるイオン交換樹脂を、脱水や加熱によって炭化させたり(特許文献1)、粉砕してろ過助剤として再利用したりする検討(特許文献2)も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-012312号公報
【特許文献2】特開昭57-099336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2に記載されるように、廃棄されるイオン交換樹脂を、イオン交換樹脂以外の用途で再利用する試みがなされている。しかしながら、環境面やコスト面を考慮すれば、廃棄されるイオン交換樹脂を、再度イオン交換樹脂として利用する方法の開発が望まれているのが現状である。イオン交換樹脂の再利用方法として、例えば、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂を構成する強酸性カチオン交換樹脂を、単床カチオン交換樹脂として再利用することが考えられる。しかし、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂に含まれるカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂との完全分離が困難であることに起因する対イオン交換樹脂の混入により、処理水の純度が低下するため、そのような再利用品のイオン交換樹脂は、高純度の水質が要求される用途には適用できないという課題があった。
【0005】
本発明は、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂から、高純度の水質が要求される用途においても適用可能な再利用品の強酸性カチオン交換樹脂を製造する方法および設備を提供することを目的とする。また、本発明は、上記方法によって得られた強酸性カチオン交換樹脂を再利用する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂から強酸性カチオン交換樹脂を製造する方法であって、
使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂に含まれる強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを分離する分離工程と、
分離後の強酸性カチオン交換樹脂を、塩酸および硫酸から選択される1つ以上の再生剤を用いて再生する再生工程と、
を有し、
前記分離後の強酸性カチオン交換樹脂に混入している強塩基性アニオン交換樹脂の割合(異樹脂混入率)が、イオン交換樹脂の総体積に対して5体積%以下であることを特徴とする、強酸性カチオン交換樹脂の製造方法である。
【0007】
また、本発明は、上記の方法によって製造された強酸性カチオン交換樹脂を、単床カチオン交換樹脂または複床イオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂として再利用する、強酸性カチオン交換樹脂の再利用方法である。
【0008】
さらに、本発明は、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂から強酸性カチオン交換樹脂を製造するための設備であって、
使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂に含まれる強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを分離する分離手段と、
分離後の強酸性カチオン交換樹脂を、塩酸および硫酸から選択される1つ以上の再生剤を用いて再生する再生手段と、
を有し、
前記分離後の強酸性カチオン交換樹脂に混入している強塩基性アニオン交換樹脂の割合(異樹脂混入率)が、イオン交換樹脂の総体積に対して5体積%以下であることを特徴とする、強酸性カチオン交換樹脂の製造設備である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂から、高純度の水質が要求される用途においても適用可能な再利用品の強酸性カチオン交換樹脂を得ることができる。得られた再利用品の強酸性カチオン交換樹脂は、単床カチオン交換樹脂または複床イオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂として再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る技術思想の一部を説明する模式図である。
【
図2】本発明に係る強酸性カチオン交換樹脂の製造設備の概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
高純度の純水や超純水が要求される液晶・半導体等の電子産業分野では、一次系の純水製造装置の末尾やサブシステムの純水製造装置において、極微量のイオンを除去するために非再生型イオン交換樹脂装置が設置されることが多い。非再生型イオン交換樹脂装置としては、単床式や複床式のイオン交換樹脂装置が使用されることもあるが、主に混床式のイオン交換樹脂装置が用いられる。本明細書において、混床式の非再生型イオン交換樹脂装置で用いられるイオン交換樹脂、すなわち、非再生型イオン交換樹脂装置において混床状態で使用されるイオン交換樹脂を、「非再生型混床イオン交換樹脂」と称する。混床式の非再生型イオン交換樹脂装置において使用された後の、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂を再利用する場合、まず、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂に含まれるカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを分離する必要がある。このカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを分離する工程においては、
図1に示すように、(a)カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを完全に分離することができず、一方の樹脂に他方の樹脂が一部混入するパターン(異樹脂混入パターン)と、(b)カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とをほぼ完全に分離できるパターン(完全分離パターン)と、の2つのパターンが生じる。本発明者らは、このように分離され、そして再生された使用済みの非再生型イオン交換樹脂の再利用方法について鋭意検討した。その結果、異樹脂の混入があることを前提として(上記(a))、使用済みの非再生型イオン交換樹脂を再利用するケースや、樹脂の混入がわずかであり、ほぼ完全分離された前提で(上記(b))、使用済みの非再生型イオン交換樹脂を再利用するケース等、様々な形での運用が可能であることを見出し、本発明を含む一連の発明を完成させた。
【0012】
これらの発明の中でも、本明細書は、異樹脂の混入があることを前提として、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂を再利用するケースに係る発明について説明するものである。具体的に、本明細書は、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂に含まれるカチオン交換樹脂を再利用する発明について説明するものである。以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
<強酸性カチオン交換樹脂の製造方法>
本発明に係る強酸性カチオン交換樹脂の製造方法は、少なくとも以下の工程を有する。使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂に含まれる強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを分離する分離工程。分離後の強酸性カチオン交換樹脂を、塩酸および硫酸から選択される1つ以上の再生剤を用いて再生する再生工程。
【0014】
[非再生型混床イオン交換樹脂]
上述のように、非再生型混床イオン交換樹脂とは、混床式の非再生型イオン交換樹脂装置において、混床状態で用いられる非再生型イオン交換樹脂である。そのような非再生型混床イオン交換樹脂としては、公知の混床イオン交換樹脂を用いることができる。混床イオン交換樹脂は、一般的に、H形の強酸性カチオン交換樹脂とOH形の強塩基性アニオン交換樹脂とを混合した混床イオン交換樹脂である。混床イオン交換樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ESP-2(商品名、オルガノ(株)製)、AmberTec UP6040 H/OH(商品名、デュポン・ド・ヌムール製)、DIAION SMT200L(商品名、三菱ケミカル(株)製)、UltraClean UCW9966(商品名、ピュロライト製)、LEWATIT UltraPure 1294MD(商品名、ランクセス製)等の市販品を用いることができる。混床イオン交換樹脂における強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂との混合割合(体積比)は限定されるものではなく、各樹脂を任意の混合割合で組み合わせることができる。なお、イオン交換樹脂の母体は、樹脂の有する細孔の径が小さく透明なゲル型および細孔の径が大きいマクロポアを有するマクロリテキュラー型(MR型)またはマクロポーラス型(ポーラス型もしくはハイポーラス型とも呼ばれる)のいずれであってもよい。
【0015】
[分離工程]
分離工程は、被処理水の精製処理に用いられた後の、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂に含まれる強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを分離する工程である。強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを分離する手段としては、公知の手段を適宜選択して用いることができる。分離する手段としては、例えば、表面処理剤を用いて分離する方法や、イオン交換樹脂のイオン形を塩形に変換することにより分離する方法、および比重を用いて分離する方法が用いられる。なお、上述のとおり、本発明は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂のうちの一方の樹脂に、他方の樹脂が一部混入していることを前提とする発明である。このため、分離後の各イオン交換樹脂中に異樹脂が多く混入している場合、後述する再生工程において該異樹脂が再生剤により逆再生されて塩形イオンに変換される。その結果、再生後のイオン交換樹脂を再利用する場合に、精製対象液の純度に影響を与える可能性がある。以上から、分離工程を経て得られる、分離後の強酸性カチオン交換樹脂に混入している強塩基性アニオン交換樹脂の割合(「異樹脂混入率」ともいう)は、イオン交換樹脂の総体積(強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂の合計体積)100体積%に対して5体積%以下であり、1体積%以下であることが好ましく、0.2体積%以下であることがより好ましい。強酸性カチオン交換樹脂の異樹脂混入率が5体積%以下であれば、再生後の該強酸性カチオン交換樹脂を被処理水の精製に用いた場合の、処理水の純度低下を抑制することができる。なお、本発明において、異樹脂混入率は、通常、0体積%超である。
【0016】
[再生工程]
再生工程では、前記分離工程において分離した強酸性カチオン交換樹脂を、塩酸および硫酸から選択される1つ以上の再生剤を用いて再生する。なお、本発明は、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂に由来する強酸性カチオン交換樹脂を製造する方法であるため、分離工程で分離した強塩基性アニオン交換樹脂に関するその後の処理については限定されるものではない。再生工程は、塩酸および硫酸を併用して行うことも可能である。ただし、安全性や処理の効率等を考慮すれば、塩酸または硫酸のいずれかを用いて再生工程を行うことが好ましい。再生工程を行うことにより、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂に由来する強酸性カチオン交換樹脂(混入した強塩基性アニオン交換樹脂を含む)は、H形の強酸性カチオン交換樹脂に再生される。なお、分離後の強酸性カチオン交換樹脂には、分離工程において分離しきれなかった強塩基性アニオン交換樹脂(異樹脂)が混入しており、該アニオン交換樹脂中のアニオンは、この再生工程において、塩化物イオンまたは硫酸イオンとイオン交換される。そして、異樹脂混入に起因するこれらのアニオンが、被処理水の精製純度に影響を与えるため、本発明においては、異樹脂混入率を5体積%以下とする必要がある。
【0017】
再生工程においては、前記分離後の強酸性カチオン交換樹脂に混入している強塩基性アニオン交換樹脂の割合(異樹脂混入率)によって、再生剤の種類を選択することが好ましい。具体的には、前記分離後の強酸性カチオン交換樹脂中の異樹脂混入率が、イオン交換樹脂の総体積に対して1体積%以下である場合は、塩酸および硫酸から選択される1つ以上の再生剤を用いて分離後の強酸性カチオン交換樹脂の再生を行うことが好ましい。一方で、前記異樹脂混入率が、イオン交換樹脂の総体積に対して1体積%超、5体積%以下である場合は、硫酸を用いて分離後の強酸性カチオン交換樹脂の再生を行うことが好ましい。異樹脂混入率に応じて再生剤を選択することにより、被処理水を精製して得られる処理水の水質の悪化をより抑制することができる。
【0018】
再生工程は、公知の方法により行うことができる。具体的には、分離後の強酸性カチオン交換樹脂をイオン交換樹脂塔などの充填容器に充填して、再生剤を通薬することにより、再生工程を実施することができる。再生剤の濃度は特に限定されるものではないが、通常、1質量%~10質量%の濃度を有する再生剤が使用される。再生剤の使用量(再生レベル:RL)および通薬速度(SV)は適宜設定すればよく、例えば、RLを1~5eq/eq-Rとし、SVを1~10とすることができる。ここで、RLの単位「eq/eq-R」は、樹脂単位当量あたりに必要な化学当量を意味する。なお、再生剤を通薬した後、超純水または純水を通液することにより、イオン交換樹脂内に残存する再生剤を押し出し、洗浄する操作を行ってもよい。
【0019】
<強酸性カチオン交換樹脂の再利用方法>
上記再生工程を経て得られる再利用品の強酸性カチオン交換樹脂は、単床カチオン交換樹脂または複床イオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂として再利用することができる。
【0020】
<強酸性カチオン交換樹脂の製造設備>
本発明に係る強酸性カチオン交換樹脂の製造設備は、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂から強酸性カチオン交換樹脂を製造するための設備であって、以下の手段を有する。使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂に含まれる強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを分離する分離手段。分離後の強酸性カチオン交換樹脂を、塩酸および硫酸から選択される1つ以上の再生剤を用いて再生する再生手段。以下、
図2を参照して、各手段について説明する。
【0021】
[分離手段]
分離手段は、上述の分離工程を実施する手段である。分離手段は、被処理水の精製処理に用いられた後の、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂に含まれる強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを分離することが可能な公知の手段であれば限定されない。分離手段としては、例えば、表面処理剤を用いて分離する方法や、イオン交換樹脂のイオン形を塩形に変換することにより分離する方法、および比重を用いて分離する方法が用いられる。分離手段は、具体的には、使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂を充填するイオン交換樹脂塔などの充填容器1と、薬液ラインL1を通して、分離に必要となる薬液等を通薬する手段と、を含む。例えば、
図2に示すように、イオン交換樹脂塔1内に充填された使用済みの非再生型混床イオン交換樹脂(強塩基性アニオン交換樹脂Aおよび強酸性カチオン交換樹脂B)に対して、薬液等を薬液ラインL1から通薬することにより、強酸性カチオン交換樹脂Aと強塩基性アニオン交換樹脂Bとを分離する。分離手段を経て得られる、分離後の強酸性カチオン交換樹脂に混入している強塩基性アニオン交換樹脂の割合は、イオン交換樹脂の総体積(強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂の合計体積)100体積%に対して、5体積%以下であり、1体積%以下であることが好ましく、0.2体積%以下であることがより好ましい。分離後の強酸性カチオン交換樹脂Bは、イオン交換樹脂塔1の下部から抜き出され、樹脂ラインL2を通して、再生手段としてのイオン交換樹脂塔2に移送される。樹脂の分離に用いた薬液等は、イオン交換樹脂塔1の下部から、廃液ラインL3を通して系外へ排出することができる。
【0022】
[再生手段]
再生手段は、上述の再生工程を実施する手段であり、前記分離手段を経て分離した強酸性カチオン交換樹脂を、塩酸および硫酸から選択される1つ以上の再生剤を用いて再生する手段である。再生手段としては、公知の再生手段を用いることができる。再生手段は、具体的には、分離後の強酸性カチオン交換樹脂Bを充填するイオン交換樹脂塔などの充填容器2と、再生剤ラインL4を通して再生剤を通薬する手段と、を含む。例えば、
図2に示すように、樹脂ラインL2を通してイオン交換樹脂塔2に充填された強酸性カチオン交換樹脂Bに対して、再生剤ラインL4から再生剤を通薬することにより、強酸性カチオン交換樹脂Bが再生される。再生剤を通薬した後は、純水ラインL5から超純水または純水を通液することにより、樹脂内に残存する再生剤を押し出し、洗浄する操作を行ってもよい。樹脂の再生に用いた再生剤および純水等は、イオン交換樹脂塔2の下部から、廃液ラインL6を通して系外へ排出することができる。
【0023】
その他、本発明に係る強酸性カチオン交換樹脂の製造設備については、上述の本発明に係る強酸性カチオン交換樹脂の製造方法についての各説明を、適宜適用することができる。
【実施例0024】
[実施例1~4および参考例1]
(1.使用樹脂)
H形の強酸性カチオン交換樹脂(以下、「カチオン」と略称する)およびOH形の強塩基性アニオン交換樹脂(以下、「アニオン」と略称する)として、それぞれ以下に示すイオン交換樹脂を用いた。
・カチオン:AMBERLITE HPR1500 H(商品名、デュポン社製)
・アニオン:AMBERLITE HPR4200 OH(商品名、デュポン社製)
【0025】
(2.組合せ)
各例において、それぞれ表1に示す量の上記樹脂を計量し、適宜混合した。なお、カチオンとアニオンとを混合した樹脂構成は、混床状態で使用した後、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを分離して得られる、混入した異樹脂(アニオン交換樹脂)を含むカチオン交換樹脂を模したものである。
【0026】
【0027】
(3.再生工程)
得られた樹脂をイオン交換樹脂塔に充填した後、それぞれ以下に示す2つの条件にて再生処理を行った。
〈再生条件1:塩酸処理〉
イオン交換樹脂塔に充填された樹脂に対して、4質量%の塩酸912g(RL=4eq/eq-R)をSV=4で通薬した後、超純水を、SV=10、BV=10で押し出し、洗浄した。
〈再生条件2:硫酸処理〉
イオン交換樹脂塔に充填された樹脂に対して、5.4質量%の硫酸889g(RL=4eq/eq-R)をSV=4で通薬した後、超純水を、SV=10、BV=10で押し出し、洗浄した。
【0028】
(4.評価)
以上のように再生した樹脂に対して、超純水をSV=50で通水し、表2に示す各時間経過後に、イオン交換樹脂塔出口から得られた処理水について、比抵抗計(商品名:Foxboro871CC、株式会社ティ・アンド・シー・テクニカル製)を用いて比抵抗を測定した。結果を表2に示す。
【0029】
【0030】
表2に示すように、再生剤として塩酸を用いた場合は、異樹脂混入率が1体積%を超えると、異樹脂混入率が1体積%以下である場合と比べて到達水質が劣ることが分かった。これらの結果から、異樹脂混入率が、イオン交換樹脂の総体積に対して1体積%以下とより少ない場合は、塩酸および硫酸から選択される1つ以上の再生剤を用いて強酸性カチオン交換樹脂の再生を行うことが好ましく、異樹脂混入率が、イオン交換樹脂の総体積に対して1体積%超、5体積%以下である場合は、硫酸を用いて強酸性カチオン交換樹脂の再生を行うことが好ましいことが明らかとなった。