(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156914
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 30/47 20250101AFI20251007BHJP
H10D 30/60 20250101ALI20251007BHJP
H10D 30/83 20250101ALI20251007BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/78 301B
H01L29/80 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059666
(22)【出願日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 秀樹
【テーマコード(参考)】
5F102
5F140
【Fターム(参考)】
5F102FA01
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GD04
5F102GD10
5F102GJ03
5F102GL04
5F102GM04
5F102GM08
5F102GQ01
5F102GR04
5F102GR07
5F102GR12
5F102GS04
5F102GT01
5F102HC01
5F102HC16
5F140BA06
5F140BA09
5F140BA17
5F140BB18
5F140BC12
5F140BC15
5F140BE10
5F140BH21
5F140BH30
5F140BH35
(57)【要約】
【課題】電流コラプスの発生を抑制できる半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る半導体装置は、第1半導体層と、第2半導体層と、第1電極と、第2電極と、ゲート電極と、第3半導体層と、を備える。第1半導体層は、Al
x1Ga
1-x1N(0≦x1<1)を含有する。第2半導体層は、Al
x2Ga
1-x2N(0<x2<1、x1<x2)を含有する。第2半導体層は、第1部分と、第1半導体層から第2半導体層に向かう第1方向に垂直な第2方向において第1部分から離れた第2部分と、を含む。第1電極は、第1部分の上に設けられている。第2電極は、第2部分の上に設けられている。ゲート電極は、第1電極と第2電極との間に設けられている。第3半導体層は、ゲート電極と第2電極との間に位置し、炭素及び窒化ガリウムを含有する。第3半導体層は、5.0×10
17cm
-3よりも高い炭素濃度を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含有する第1半導体層と、
前記第1半導体層の上に設けられ、Alx2Ga1-x2N(0<x2<1、x1<x2)を含有する第2半導体層であって、第1部分と、前記第1半導体層から前記第2半導体層に向かう第1方向に垂直な第2方向において前記第1部分から離れた第2部分と、を含む前記第2半導体層と、
前記第1部分の上に設けられた第1電極と、
前記第2部分の上に設けられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極と前記第2電極との間に位置し、炭素及び窒化ガリウムを含有し、5.0×1017cm-3よりも高い炭素濃度を有する第3半導体層と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記第3半導体層は、前記第2方向において前記ゲート電極から離れている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート電極と前記第3半導体層との間の前記第2方向における距離は、前記ゲート電極と前記第2電極との間の前記第2方向における距離の0.5倍以上である、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第3半導体層はp形である、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第3半導体層は、前記第2電極と接する、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2電極の一部は、前記第3半導体層の上に設けられた、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2半導体層は、前記第1部分と前記第2部分との間に位置する第3部分を含み、
前記ゲート電極は、前記第3部分の上に位置し、且つ前記第3部分と接し、
前記第3部分におけるフッ素濃度は、前記第1部分におけるフッ素濃度よりも高く、前記第2部分におけるフッ素濃度よりも高い、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウムを含有する半導体装置がある。この半導体装置について、電流コラプスの発生を抑制できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、電流コラプスの発生を抑制できる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1半導体層と、第2半導体層と、第1電極と、第2電極と、ゲート電極と、第3半導体層と、を備える。前記第1半導体層は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含有する。前記第2半導体層は、前記第1半導体層の上に設けられている。前記第2半導体層は、Alx2Ga1-x2N(0<x2<1、x1<x2)を含有する。前記第2半導体層は、第1部分と、前記第1半導体層から前記第2半導体層に向かう第1方向に垂直な第2方向において前記第1部分から離れた第2部分と、を含む。前記第1電極は、前記第1部分の上に設けられている。前記第2電極は、前記第2部分の上に設けられている。前記ゲート電極は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられている。前記第3半導体層は、前記ゲート電極と前記第2電極との間に位置し、炭素及び窒化ガリウムを含有する。前記第3半導体層は、5.0×1017cm-3よりも高い炭素濃度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図4】
図4は、第3半導体層の構造を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態の第3変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態の第4変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法又は比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
図1は、実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る半導体装置100は、半導体基板10、第1半導体層11、第2半導体層12、第3半導体層13、ソース電極21(第1電極)、ドレイン電極22(第2電極)、及びゲート電極23を備える。
【0009】
実施形態の説明では、XYZ直交座標系を用いる。第1半導体層11から第2半導体層12に向かう方向をZ方向(第1方向)とする。Z方向に対して垂直であり、相互に直交する二方向をX方向(第2方向)及びY方向とする。また、説明のために、第1半導体層11から第2半導体層12に向かう方向を「上」と言い、その反対方向を「下」と言う。これらの方向は、第1半導体層11と第2半導体層12との相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0010】
第1半導体層11は、半導体基板10の上に設けられ、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含有する。半導体基板10は、例えばSi基板である。半導体基板10と第1半導体層11との間に、不図示のバッファ層が設けられても良い。第2半導体層12は、第1半導体層11の上に設けられ、Alx2Ga1-x2N(0<x2<1、x1<x2)を含有する。一例として、第1半導体層11はAlを実質的に含まないGaN層であり、第2半導体層12はAlGaN層である。
【0011】
第2半導体層12は、第1部分12a及び第2部分12bを含む。第1部分12aと第2部分12bは、X方向において互いに離れている。ソース電極21は、第1部分12aの上に設けられている。ドレイン電極22は、第2部分12bの上に設けられている。ソース電極21及びドレイン電極22は、第2半導体層12と電気的に接続されている。ソース電極21とドレイン電極22は、X方向において互いに離れている。
【0012】
ゲート電極23は、第2半導体層12の上にゲート絶縁層23aを介して設けられ、X方向においてソース電極21とドレイン電極22との間に位置する。ゲート電極23は、ソース電極21及びドレイン電極22から離れている。例えば、ドレイン電極22とゲート電極23との間の距離は、ソース電極21とゲート電極23との間の距離よりも長い。ソース電極21、ドレイン電極22、及びゲート電極23は、チタン、銅、又はアルミニウムなどの金属材料を含む。
【0013】
第3半導体層13は、第2半導体層12の上に設けられ、X方向においてドレイン電極22とゲート電極23との間に位置する。第3半導体層13は、炭素及び窒化ガリウムを含有する。例えば、第3半導体層13は、ゲート電極23から離れ、ドレイン電極22と接している。ドレイン電極22の一部は、第3半導体層13の上に設けられている。
【0014】
半導体装置100の動作を説明する。半導体装置100は、ノーマリーオン型の装置である。第1半導体層11と第2半導体層12との界面には、2次元電子ガス(2DEG)が発生する。ソース電極21に対してドレイン電極22に正の電圧が印加されると、2次元電子ガスに含まれる電子が、ソース電極21からドレイン電極22へ移動する。これにより、ソース電極21とドレイン電極22との間に電流が流れる。ゲート電極23に負の電圧が印加されると、ゲート電極23直下の領域の電子が排斥され、当該領域が空乏化する。これにより、半導体装置100がオフ状態となる。
【0015】
図2(a)、
図2(b)、
図3(a)、及び
図3(b)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
まず、半導体基板10を用意する。
図2(a)に示すように、半導体基板10の上に、有機金属気相成長法(MOCVD)により、第1半導体層11、第2半導体層12、及び第3半導体層13を順次形成する。第3半導体層13を形成する際、炭素が添加される。第3半導体層13の一部を反応性イオンエッチング(RIE)により除去する。これにより、
図2(b)に示すように、第2半導体層12の上面の一部が露出する。
【0016】
露出した第2半導体層12の上面に、化学気相成長法(CVD)により、ゲート絶縁層23aを形成する。
図3(a)に示すように、RIEにより、ゲート絶縁層23aの一部を除去する。
図3(b)に示すように、第3半導体層13から離れた位置にゲート電極23を形成するとともに、露出した第2半導体層12の上面にソース電極21及びドレイン電極22を形成する。ドレイン電極22の一部は、第3半導体層13の上にも形成される。以上の工程により、実施形態に係る半導体装置100が製造される。
【0017】
実施形態の利点を説明する。
半導体装置における電流コラプスは、半導体層中の結晶欠陥、半導体層の界面における電子のトラップなどに起因する。本発明の実施形態では、電流コラプスの発生を抑制するために、半導体装置100が第3半導体層13を備える。第3半導体層13は炭素及び窒化ガリウムを含有し、その炭素濃度は5.0×1017cm-3よりも高い。
【0018】
図4は、第3半導体層の構造を示す模式図である。
図4に示すように、第3半導体層13の大部分は、ガリウムと窒素の結晶構造を有する。そして、一部の窒素が、炭素に置換されている。窒素はV族の元素であり、炭素はIV族の元素である。窒素が炭素に置換されると、第3半導体層13において炭素はアクセプタとして機能する。すなわち、第3半導体層13は、p形の半導体層として機能する。第3半導体層13からは、第2半導体層12と第3半導体層13との界面へ、ホールが供給される。ホールの供給により、第2半導体層12と第3半導体層13との界面にトラップされた電子が中性化される。この結果、半導体装置100における電流コラプスが抑制される。特に、炭素濃度を5.0×10
17cm
-3よりも高めることで、第3半導体層13から、第2半導体層12と第3半導体層13との界面へ十分な量のホールが供給され、電流コラプスを好適に抑制できる。
【0019】
なお、窒化ガリウムに対するアクセプタとして、炭素以外に、カルシウム、亜鉛、ベリリウム、マグネシウムなどがありうる。しかし、カルシウム、亜鉛、及びベリリウムは、炭素に比べて、p形不純物としての活性化が難しいとされている。また、マグネシウムを用いる場合、マグネシウムとともに多量の水素が半導体層に取り込まれる。このため、半導体層から水素を脱離させるための処理が必要となる。水素が多量に取り込まれることで、半導体装置の信頼性にも影響しうる。したがって、炭素は、カルシウム、亜鉛、ベリリウム、マグネシウムなどの元素に比べて、より好ましい。
【0020】
炭素をアクセプタとして第3半導体層13に取り込ませる場合、第3半導体層13の形成において、窒化ガリウム結晶成長の際にオートドープ法又は外部ドープ法によって炭素を膜中に添加する方法がある。オートドープ法は原料となる有機金属ガス由来の炭素を利用し、成長温度及び成長速度によって炭素添加量をコントロールする必要性が生じるため成長条件に制約される技術課題がある。一方で、ドーパントガスとしてアセチレン(C2H2)ガスなどを用いた外部ドープによって炭素添加することで、成長温度又は成長速度のエピプロセスパラメータの自由度が上がるため、外部ドープによる炭素添加がより好ましい。より詳細な方法については、例えば、Xun Liら、“Precursors for carbon doping of GaN in chemical vapor deposition”、Journal of Vacuum Science & Technology B、2015年、33巻、2号で論じられている。又は、Yoshio Hondaら、“DAP emission band in a carbon doped (1-101)GaN grown on (001)Si substrate”、physica status solidi c、2009年、S2巻、p.S772~S775が参照されても良い。
【0021】
第3半導体層13における炭素濃度の上限は特に限定されないが、1.0×1020cm-3未満であることが好ましい。炭素濃度が1.0×1020cm-3以上であると、窒化ガリウム層中の炭素濃度の固溶限界以上となり、転位発生又は表面ピット等の結晶欠陥が現れて電流リークなどのデバイスの特性劣化を引き起こす。したがって、結晶品質及びデバイス特性の確保の観点から、第3半導体層13における炭素濃度は、5.0×1017cm-3よりも高く、1.0×1020cm-3未満であることが好ましい。より好ましくは、第3半導体層13における炭素濃度は、1.0×1018cm-3以上、1.0×1020cm-3未満である。
【0022】
第1半導体層11における炭素濃度及び第2半導体層12における炭素濃度は、第3半導体層13に比べて低いことが好ましい。例えば、第1半導体層11における炭素濃度及び第2半導体層12における炭素濃度は、5.0×1017cm-3以下であることが好ましい。より好ましくは、第1半導体層11における炭素濃度は、1.0×1016cm-3以上、3.0×1016cm-3以下であり、第2半導体層12における炭素濃度は、1.0×1015cm-3以上、1.0×1017cm-3以下である。
【0023】
第3半導体層13は、ゲート電極23から離れていることが好ましい。第3半導体層13がゲート電極23と接していると、第3半導体層13内に発生するキャリアによって、ゲート電極23とドレイン電極22の間が電気的に導通してしまう。そのため、電気的な分離が必要となる。例えば、ゲート電極23と第3半導体層13との間の距離D1は、ゲート電極23とドレイン電極22との間の距離D2の0.5倍以上である。より好ましくは、距離D1は距離D2の0.6倍以上であり、最も好ましくは、距離D1は距離D2の0.8倍以上である。
【0024】
(第1変形例)
図5は、実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
図5に示す半導体装置110は、ゲート電極23が第2半導体層12と接している点で、半導体装置100とは異なる。ゲート電極23は、仕事関数の高い金属を含み、第2半導体層12とゲート電極23との間には、ショットキー接合が形成されている。例えば、ゲート電極23は、Ni、Au、Pd、V、及びPtからなる群より選択される1つ以上を含む。半導体装置110によれば、第2半導体層12がゲート電極23へショットキー接触しているため、ゲート電極23直下の第1半導体層11及び第2半導体層12の領域に形成される空乏層幅をゲート電圧によって制御することで、ゲート機能を実現する。
【0025】
(第2変形例)
図6は、実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
図6に示す半導体装置120では、第2半導体層12が、第1部分12aと第2部分12bとの間に位置する第3部分12cを含む。第3部分12cにおけるフッ素濃度は、第1部分12aにおけるフッ素濃度よりも高く、第2部分12bにおけるフッ素濃度よりも高い。ゲート電極23は、第3部分12cの上に設けられ、第3部分12cと接している。
【0026】
第3部分12cは、第1半導体層11、第2半導体層12、及び第3半導体層13を形成した後、第3半導体層の一部をエッチング除去し、第2半導体層12の一部(第3部分12c)へフッ素イオンを注入すること、又はフッ素プラズマを照射することで形成される。
【0027】
第3部分12cにおけるフッ素濃度は、1.0×1019(atm/cm3)以上であることが好ましい。第3部分12cにおけるフッ素濃度は、第1部分12a又は第2部分12bにおけるフッ素濃度(atm/cm3)の40倍以上2000倍以下であることが好ましい。
【0028】
半導体装置120によれば、よりフッ素濃度の高い第3部分12cが第2半導体層12に設けられることで、ゲート電流値が低く抑えられ、またしきい電圧値の制御性がよくなる。
【0029】
(第3変形例)
図7は、実施形態の第3変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
図7に示す半導体装置130は、第2半導体層12とゲート電極23との間に第4半導体層14が設けられている点で、半導体装置100とは異なる。第4半導体層14は、p形の半導体層であり、第2半導体層12及びゲート電極23と接している。第4半導体層14は、X方向において、第3半導体層13及びソース電極21から離れている。第4半導体層14は、p形不純物として炭素及びマグネシウムからなる群より選択される1つ以上を含む。
【0030】
第4半導体層14が設けられることで、ゲート電極23に電圧が印加されていない状態では、第2半導体層12におけるゲート電極23直下の領域が空乏化する。ゲート電極23に閾値以上の電圧が印加されると、ゲート電極23から直下の領域にホールが注入され、半導体装置130がオン状態となる。すなわち、半導体装置130は、ノーマリーオフ型の装置である。
【0031】
(第4変形例)
図8は、実施形態の第4変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
図8に示す半導体装置140は、第1部分12aと第2部分12bとの間にゲート電極23が位置する点で、半導体装置100とは異なる。ゲート電極23は、Z方向において、ゲート絶縁層23aを介して第1半導体層11と対面している。ゲート電極23は、X方向において、ゲート絶縁層23aを介して第2半導体層12と対面している。半導体装置140は、リセスゲート構造を有する。
【0032】
半導体装置140では、ソース電極21の直下に発生する2DEGと、ドレイン電極22の直下に発生する2DEGと、がゲート絶縁層23aによって分断されている。このため、半導体装置140は、ノーマリーオフ型の装置である。ゲート電極23に閾値以上の電圧が印加されると、第1半導体層11において、ゲート絶縁層23a近傍の領域にチャネルが形成される。これにより、ソース電極21とドレイン電極22との間に電流が流れる。
【0033】
半導体装置140の製造方法では、
図2(b)に示す工程を実行して第3半導体層13を形成した後、第2半導体層12の一部及び第1半導体層11の一部が除去され、トレンチが形成される。このトレンチの内部に、ゲート絶縁層23a及びゲート電極23を形成することで、半導体装置140が製造される。
【0034】
上述した半導体装置110、120、130、又は140のいずれにおいても、第3半導体層13が設けられることで、電流コラプスの発生を抑制できる。
【0035】
本発明の実施形態は、以下の特徴を含む。
(特徴1)
Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含有する第1半導体層と、
前記第1半導体層の上に設けられ、Alx2Ga1-x2N(0<x2<1、x1<x2)を含有する第2半導体層であって、第1部分と、前記第1半導体層から前記第2半導体層に向かう第1方向に垂直な第2方向において前記第1部分から離れた第2部分と、を含む前記第2半導体層と、
前記第1部分の上に設けられた第1電極と、
前記第2部分の上に設けられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極と前記第2電極との間に位置し、炭素及び窒化ガリウムを含有し、5.0×1017cm-3よりも高い炭素濃度を有する第3半導体層と、
を備えた半導体装置。
(特徴2)
前記第3半導体層は、前記第2方向において前記ゲート電極から離れている、特徴1に記載の半導体装置。
(特徴3)
前記ゲート電極と前記第3半導体層との間の前記第2方向における距離は、前記ゲート電極と前記第2電極との間の前記第2方向における距離の0.5倍以上である、特徴1又は2に記載の半導体装置。
(特徴4)
前記第3半導体層はp形である、特徴1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
(特徴5)
前記第3半導体層は、前記第2電極と接する、特徴1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
(特徴6)
前記第2電極の一部は、前記第3半導体層の上に設けられた、特徴1~5のいずれか1つに記載の半導体装置。
(特徴7)
前記第2半導体層は、前記第1部分と前記第2部分との間に位置する第3部分を含み、
前記ゲート電極は、前記第3部分の上に位置し、且つ前記第3部分と接し、
前記第3部分におけるフッ素濃度は、前記第1部分におけるフッ素濃度よりも高く、前記第2部分におけるフッ素濃度よりも高い、特徴1~6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0036】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態及びその変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
10:半導体基板、 11:第1半導体層、 12:第2半導体層、 12a:第1部分、 12b:第2部分、 12c:第3部分、 13:第3半導体層、 14:第4半導体層、 21:ソース電極、 22:ドレイン電極、 23:ゲート電極、 23a:ゲート絶縁層、 100,110,120,130,140:半導体装置、 D1,D2:距離