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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156915
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】アンモニア分解触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/76 20060101AFI20251007BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20251007BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20251007BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20251007BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20251007BHJP
【FI】
B01J29/76 A ZAB
B01D53/86 228
B01D53/94 228
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059673
(22)【出願日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 竜児
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優里
(72)【発明者】
【氏名】田中 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】長久保 準基
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB05
3G091BA14
3G091FB02
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB09W
4D148AA08
4D148AB03
4D148BA03X
4D148BA06X
4D148BA07X
4D148BA11X
4D148BA19X
4D148BA30X
4D148BA31Y
4D148BA35X
4D148BA36X
4D148BA41X
4D148BA42X
4D148BB02
4D148BB16
4D148DA03
4D148DA11
4D148DA20
4G169AA03
4G169AA11
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC29A
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC69A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169CA03
4G169CA07
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169EA06
4G169EA12
4G169EA18
4G169EA27
4G169EB11
4G169EB12Y
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EB18Y
4G169EC02Y
4G169EC03Y
4G169EC04Y
4G169EC28
4G169EE06
4G169FC08
4G169ZA07A
4G169ZA11A
4G169ZA11B
4G169ZA14A
4G169ZA14B
4G169ZA19A
4G169ZA19B
4G169ZD01
4G169ZD06
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF07A
(57)【要約】
【課題】250~300℃の温度領域において、NHスリップを抑制でき、かつ、NO生成量が抑制されたアンモニア分解触媒を提供する。
【解決手段】基材と、前記基材上に設けられた第一層と、を備え、前記第一層は、第一ゼオライトと、前記第一ゼオライトに付着している白金族金属と、を含む、アンモニア分解触媒である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に設けられた第一層と、を備え、
前記第一層は、第一ゼオライトと、前記第一ゼオライトに付着している白金族金属と、を含む、アンモニア分解触媒。
【請求項2】
前記第一層の前記基材に対向する第一面と反対側の第二面上に設けられた第二層を更に備え、
前記第二層は、第二ゼオライトを含む、請求項1に記載のアンモニア分解触媒。
【請求項3】
前記第一ゼオライトは、遷移金属元素イオン交換ゼオライトである、請求項1に記載のアンモニア分解触媒。
【請求項4】
前記第二ゼオライトは、遷移金属元素イオン交換ゼオライトである、請求項2に記載のアンモニア分解触媒。
【請求項5】
前記遷移金属元素イオン交換ゼオライトは、銅でイオン交換されたゼオライトである、請求項3または請求項4に記載のアンモニア分解触媒。
【請求項6】
前記銅でイオン交換されたゼオライトの酸化銅で計算した場合の銅の含有率は、0.1質量%以上10質量%以下である、請求項5に記載のアンモニア分解触媒。
【請求項7】
前記第一ゼオライトは、CHA型、AEI型、AFX型、KFI型、SFW型、MFI型、ERI型およびBEA型からなる群より選択される1種以上の骨格構造を有する、請求項1または請求項2に記載のアンモニア分解触媒。
【請求項8】
前記第二ゼオライトは、CHA型、AEI型、AFX型、KFI型、SFW型、MFI型、ERI型およびBEA型からなる群より選択される1種以上の骨格構造を有する、請求項2に記載のアンモニア分解触媒。
【請求項9】
前記白金族金属は、白金またはパラジウムである、請求項1または請求項2に記載のアンモニア分解触媒。
【請求項10】
前記第一ゼオライトの質量に対する、前記白金または前記パラジウムの質量の百分率は、0.1%以上5%以下である、請求項9に記載のアンモニア分解触媒。
【請求項11】
前記アンモニア分解触媒は、前記基材と、前記基材上に設けられた前記第一層と、から構成され、
前記第一層の厚さは、5μm以上200μm以下である、請求項1に記載のアンモニア分解触媒。
【請求項12】
前記第一層の厚さは、5μm以上200μm以下であり、
前記第二層の厚さは、20μm以上250μm以下である、請求項2に記載のアンモニア分解触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア分解触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア(NH)は燃焼しても二酸化炭素を発生しないことから、近年のカーボンニュートラル社会に向けた社会動向の中で、化石燃料に代わるカーボンフリー燃料としての検討が進んでいる。例えば、電力分野では石炭火力発電へのアンモニア混焼や、アンモニアの専焼技術が検討されている。また、内燃機関分野では、アンモニアを外航船等の燃料に適用する技術が検討されている。
【0003】
アンモニアを燃料として用いる場合、排ガスとしてNO、NOが発生する。また、アンモニアは着火性が悪いことから、未燃のアンモニアがスリップして、排ガスに含まれる。
【0004】
これらの排ガス成分を浄化する手段として、例えば特許文献1に示されるような、SCR(Selective Catalytic Reduction:選択接触還元)触媒、および、アンモニア酸化触媒を含むアンモニア分解触媒の適用が想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-105849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SCR触媒は、排ガス中のNH、NOおよびNOをSCR反応により浄化する。しかし、アンモニアを燃料として用いる場合、排ガス中のアンモニア量が多いため、NHスリップを十分に抑制することが難しい。
【0007】
アンモニア酸化触媒は、NHスリップを抑制できる。一方、250~300℃の温度領域において、NHの酸化に伴い、COと比べて約300倍の地球温暖化係数を示すNOが生成されやすい。
【0008】
このため、アンモニアを燃料として利用する船舶や発電機等の設備において、NHスリップを抑制でき、かつ、NO生成量が抑制されたアンモニア分解触媒の開発が望まれている。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち本発明の目的は、250~300℃の温度領域において、NHスリップを抑制でき、かつ、NO生成量が抑制されたアンモニア分解触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
(1)基材と、前記基材上に設けられた第一層と、を備え、
前記第一層は、第一ゼオライトと、前記第一ゼオライトに付着している白金族金属と、を含む、アンモニア分解触媒。
【0011】
(2)前記第一層の前記基材に対向する第一面と反対側の第二面上に設けられた第二層をさらに備え、
前記第二層は、第二ゼオライトを含む、(1)に記載のアンモニア分解触媒。
【0012】
(3)前記第一ゼオライトは、遷移金属元素イオン交換ゼオライトである、(1)または(2)に記載のアンモニア分解触媒。
【0013】
(4)前記第二ゼオライトは、遷移金属元素イオン交換ゼオライトである、(2)に記載のアンモニア分解触媒。
【0014】
(5)前記遷移金属元素イオン交換ゼオライトは、銅でイオン交換されたゼオライトである、(3)または(4)に記載のアンモニア分解触媒。
【0015】
(6)前記銅でイオン交換されたゼオライトの酸化銅で計算した場合の銅の含有率は、0.1質量%以上10質量%以下である、(5)に記載のアンモニア分解触媒。
【0016】
(7)前記第一ゼオライトは、CHA型、AEI型、AFX型、KFI型、SFW型、MFI型、ERI型およびBEA型からなる群より選択される1種以上の骨格構造を有する、(1)~(6)のいずれかに記載のアンモニア分解触媒。
【0017】
(8)前記第二ゼオライトは、CHA型、AEI型、AFX型、KFI型、SFW型、MFI型、ERI型およびBEA型からなる群より選択される1種以上の骨格構造を有する、(2)に記載のアンモニア分解触媒。
【0018】
(9)前記白金族金属は、白金またはパラジウムである、(1)から(8)のいずれかに記載のアンモニア分解触媒。
【0019】
(10)前記第一ゼオライトの質量に対する、前記白金または前記パラジウムの質量の百分率は、0.1%以上5%以下である、(1)から(9)のいずれかに記載のアンモニア分解触媒。
【0020】
(11)前記アンモニア分解触媒は、前記基材と、前記基材上に設けられた前記第一層と、から構成され、
前記第一層の厚さは、5μm以上200μm以下である、(1)に記載のアンモニア分解触媒。
【0021】
(12)前記第一層の厚さは、5μm以上200μm以下であり、
前記第二層の厚さは、20μm以上250μm以下である、(2)に記載のアンモニア分解触媒。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、250~300℃の温度領域において、NHスリップを抑制でき、かつ、NO生成量が少ないアンモニア分解触媒を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1に係るアンモニア分解触媒のメカニズムを説明する図である。
図2】従来のアンモニア分解触媒のメカニズムを説明する図である。
図3】実施形態1に係るアンモニア分解触媒の模式的断面図である。
図4】実施形態2に係るアンモニア分解触媒の模式的断面図である。
図5】アンモニア分解触媒の断面の光学顕微鏡像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のアンモニア分解触媒の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さ等の寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、必ずしも実際の寸法関係を表すものではない。
【0025】
本明細書において「A~B」という形式の表記は、A以上B以下を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
【0026】
[実施形態1:アンモニア分解触媒]
本発明の一実施形態(以下「実施形態1」とも記す。)に係るアンモニア分解触媒は、基材と、基材上に設けられた第一層と、を備え、第一層は、第一ゼオライトと、第一ゼオライトに付着している白金族金属と、を含む、アンモニア分解触媒である。
【0027】
実施形態1のアンモニア分解触媒は、250~300℃の温度領域において、NHスリップを抑制でき、かつ、NO生成量が抑制されている。この理由は、以下の通りと推察される。
【0028】
白金族金属は、NHを酸化する触媒である。NHは白金族金属の触媒能により酸化され、N、並びに、NOおよびNO(以下、NOおよびNOをまとめてNOとも記す。)が生成される。また、白金族金属は、NOとNHとを反応させる触媒でもある。NOとNHとが白金族金属の触媒能により反応すると、NOが生成される。
【0029】
ゼオライトは、NHを吸着し、ゼオライト上でNOとNHとを反応させ、NOをNに還元する。
【0030】
実施形態1のアンモニア分解触媒は、白金族金属を含むため、NHを酸化し、NHスリップを抑制できる。さらに、図1に示されるように、実施形態1のアンモニア分解触媒において、白金族金属3は第一ゼオライト2に付着しており、白金族金属3と第一ゼオライト2との距離が近い。これによると、白金族金属3により生成されたNOが第一ゼオライト2に吸着されているNHと反応しやすく、NOがNに還元されやすい。このため、白金族金属3によるNOとNHとの反応が抑制され、NOの生成が抑制される。
【0031】
特許文献1等の従来のアンモニア分解触媒では、図2に示されるように、白金族金属3は、第一ゼオライト2に付着せず、白金族金属3と第一ゼオライト2とは、離れて存在していた。このため、従来のアンモニア分解触媒では、白金族金属3により生成されたNOが、再び白金族金属3によりNHと反応し、NOが生成されやすい。
【0032】
<構造>
図3に示されるように、実施形態1のアンモニア分解触媒1は、基材10と、基材10上に設けられた第一層11と、を備える。図3に示されるように、アンモニア分解触媒1は、基材10と、基材10上に設けられた第一層11とからなることができる。この場合、第一層11の厚さは、5μm以上200μm以下が好ましく、10μm以上180μm以下がさらに好ましい。第一層11の厚さが5μm以上であると、NHスリップの抑制性能およびNO生成の抑制性能を向上させることができる。第一層11の厚さが200μm以下であると、排ガスが第一層11を通過する際の圧損を低減することができる。
【0033】
本開示において「第一層の厚さが5μm以上200μm以下である」とは、任意の5箇所のそれぞれで測定された第一層の厚さが、すべて5μm以上200μm以下の範囲内であることを意味する。後述の第二層の厚さについても、同様の意味である。
【0034】
任意の5箇所の第一層の厚さは、以下の手順で測定される。アンモニア分解触媒を第一層の厚さ方向に平行な断面で切り出し、第一層の断面が露出した測定用試料を得る。測定用試料を光学顕微鏡で30~300倍で観察して、観察像を得る。測定視野中の任意の5箇所で、第一層の基材側の界面を基準として、前記界面から第一層の表面までの最短距離を測定する。第一層の上に第二層が設けられている場合は、第一層の基材側の界面を基準として、前記界面から第一層の第二層側の界面までの最短距離を測定する。なお、測定視野中の第一層の厚さが、明らかにばらつきを有する場合は、任意の5箇所は、厚さが最も小さい箇所、および、厚さが最も大きい箇所を含むように設定される。
【0035】
図5は、基材10がハニカム構造体であるアンモニア分解触媒を、第一層11の厚さ方向に平行な断面で切り出して得られた測定用試料の光学顕微鏡像の一例である。図5では、第一層11の厚さにばらつきがあるため、任意の5箇所は、厚さが最も小さい箇所(図5において、a、bで示される箇所)、および、厚さが最も大きい箇所(図5において、c、dで示される箇所)を含むように設定される。
【0036】
後述の第二層の厚さにも、第一層と同様に測定される。
【0037】
<基材>
実施形態1のアンモニア分解触媒において、基材は、アンモニア分解触媒で汎用されているハニカム構造体を用いることができる。ハニカム構造体としては、コージェライト、シリコンカーバイド、窒化珪素等のセラミックモノリス担体、ステンレス製等のメタルハニカム担体、ステンレス製等のワイヤメッシュ担体、スチールウール状のニットワイヤ担体等が挙げられる。また、その形状も、特に限定されず、例えば角柱状、円筒状、球状、ハニカム状、シート状等の任意の形状のものが選択可能である。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
ハニカム構造体としては、気体流路が連通しているフロースルー型構造体と、気体流路の一部端面が目封じされ、かつ、気体流路の壁面を通して気体が流通可能になっているウォールフロー型構造体とが広く知られており、これらはいずれも適用可能である。
【0039】
<第一層>
実施形態1のアンモニア分解触媒において、第一層は基材上に設けられる。第一層は、基材の表面の少なくとも一部を被覆することが好ましく、基材の表面の全部を被覆することがさらに好ましい。本発明の効果を損なわない限りにおいて、基材の一部が第一層で被覆されていなくても、本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0040】
実施形態1のアンモニア分解触媒において、第一層は第一ゼオライトと、第一ゼオライトに付着している白金族金属と、を含む。
【0041】
≪第一ゼオライト≫
実施形態1のアンモニア分解触媒において、第一ゼオライトは、アンモニア分解触媒で汎用されている各種ゼオライトを用いることができる。ゼオライトには、結晶性アルミノケイ酸塩の他、結晶性リン酸アルミニウム(ALPO:Alumino phosphate)や結晶性ケイ酸リン酸アルミニウム(SAPO:Silica-alumino phosphate)等の、ミクロ細孔を有しゼオライトと同様の層状構造を有する結晶性金属アルミノリン酸塩(Crystal metal aluminophosphate)が包含される。その具体例としては、SAPO-34やSAPO-18等の、アルミノリン酸塩(Alumino-phosphate)と呼ばれるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
一般にゼオライトには固体酸点として、カチオンがカウンターイオンとして存在し、そのカチオンとしては、アンモニウムイオンやプロトンが一般的である。第一ゼオライトは、ゼオライトのカチオンサイトを遷移金属元素とイオン交換した、遷移金属元素イオン交換ゼオライトが好ましい。遷移金属元素としては、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、ニッケル、コバルト、銅、鉄、マンガンが好ましく、銅、鉄がより好ましい。NO生成の抑制性能の向上の観点から、第一ゼオライトは、銅でイオン交換されたゼオライト、または、鉄でイオン交換されたゼオライトが好ましい。
【0043】
第一ゼオライトが遷移金属元素イオン交換ゼオライトの場合、ゼオライトのイオン交換率は、イオン交換サイトであるAlに対して、モル基準で1~100%が好ましく、10~95%がより好ましく、30~90%がさらに好ましい。イオン交換率が100%である場合には、ゼオライト中のカチオン種すべてが遷移金属元素イオンでイオン交換されていることを意味する。遷移金属元素は、そのすべてがイオン交換されていてもよいが、その一部が酸化銅や酸化鉄等の酸化物の状態で存在していてもよい。
【0044】
第一ゼオライトが銅でイオン交換されたゼオライトの場合、銅でイオン交換されたゼオライトの酸化銅(CuO)で計算した場合の銅の含有率は、0.1質量%以上10質量%が好ましく、1質量%以上7質量%以下がより好ましく、2質量%以上6質量%以下がさらに好ましい。前記銅の含有率は、蛍光X線や、ICP(Inductively Coupled Plasma)等の一般的な測定方法で計測することができる。
【0045】
第一ゼオライトが鉄でイオン交換されたゼオライトの場合、鉄でイオン交換されたゼオライトの酸化鉄(Fe)で計算した場合の鉄の含有率は、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上9質量%以下がより好ましく、2質量%以上8質量%以下がさらに好ましい。前記鉄の含有率は、蛍光X線や、ICP等の一般的な測定方法で計測することができる。
【0046】
第一ゼオライトを構成するゼオライトとしては、例えば、Y型、A型、L型、ベータ型、モルデナイト型、ZSM-5型、フェリエライト型、モルデナイト型、CHA型、AEI型、AFX型、KFI型、およびSFW型の骨格構造のゼオライト、および、SAPOやALPO等の結晶性金属アルミノリン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。第一ゼオライトは、これらのゼオライトの1種を単独で含んでもよく、または、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で含んでもよい。
【0047】
ゼオライトの骨格構造は、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association,以降では「IZA」と略称することがある。)においてデータベース化されており、そのIUPAC構造コード(以下、単に「構造コード」ともいう。)に規定されている構造を有するものを、特に制限なく用いることができる。これらの構造は、Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites,Fifth revised edition(2007)に記載の粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)パターン、または、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza-struture.org/databases/のZeolite Framework Typesに記載のXRDパターンのいずれかと比較することで、同定することができる。これらの中でも、耐熱性、各種公知の骨格構造を有するもの用いることが好ましい。
【0048】
第一ゼオライトは、酸素6員環構造、酸素二重6員環構造、酸素8員環構造、および/または酸素12員環構造を有するゼオライトが好ましい。第一ゼオライトは、CHA型、AEI型、AFX型、KFI型、SFW型、MFI型、ERI型およびBEA型からなる群より選択される1種以上の骨格構造を有するゼオライトが好ましい。第一ゼオライトは、NO生成の抑制性能の向上の観点から、CHA型の骨格構造を有するゼオライトがより好ましい。NO生成の抑制性能の向上の観点から、第一ゼオライトは、CHA型の骨格構造を有する遷移金属元素イオン交換ゼオライトが好ましく、CHA型の骨格構造を有する銅でイオン交換されたゼオライト(以下「CHA型Cuイオン交換ゼオライト」とも記す。)がより好ましい。
【0049】
ゼオライトは、SiO/Al比(=SAR)に応じてその酸点の数が異なり、一般的にSARが低いゼオライトは酸点の数が多いが水蒸気共存下での耐久において劣化度合いが大きく、逆にSARが高いゼオライトは耐熱性に優れているが酸点は少ない傾向にある。これらの観点から、第一ゼオライトのSARは1~500が好ましく、1~100がより好ましく、1~50がさらに好ましい。
【0050】
第一ゼオライトの平均粒子径D50は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。大きな比表面積を保持させるとともに耐熱性を高めて自身の触媒活性サイトの数を増大させる等の観点から、第一ゼオライトの平均粒子径D50は、0.5~100μmが好ましく、0.5~50μmがより好ましく、0.5~30μmがさらに好ましい。本明細書において、「平均粒子径D50」とは、体積基準の粒子径の累積分布において小粒径からの積算値が全体の50%に達したときの粒子径をいい、所謂メディアン径を意味する。平均粒子径D50は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(例えば、島津製作所社製、レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD-3100等)で測定される。
【0051】
第一ゼオライトのBET比表面積は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。大きな比表面積を保持させるとともに触媒活性を高める等の観点から、第一ゼオライトのBET一点法によるBET比表面積は、10~1000m/gが好ましく、50~1000m/gがより好ましく、100~1000m/gがさらに好ましい。ゼオライトは、各種グレードのものが国内外のメーカから数多く市販されており、要求性能に応じて各種グレードの市販品を用いることができる。また、当業界で公知の方法で製造することもできる。本明細書において、「BET比表面積」は、比表面積/細孔分布測定装置(商品名:BELSORP-mini II、マイクロトラック・ベル株式会社製)および解析用ソフトウェア(商品名:BEL_Master、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用い、BET一点法により求めた値とする。
【0052】
第一層における第一ゼオライトの担持量は、特に限定されないが、触媒性能や圧損のバランス等の観点から、アンモニア分解触媒1Lあたり10~100g/Lが好ましく、20~70g/Lがより好ましい。
【0053】
第一ゼオライトは、基材上に直接設けられていてもよい。また、第一ゼオライトは、バインダーや下地層等を介して基材上に設けられていてもよい。
【0054】
≪白金族金属≫
実施形態1のアンモニア分解触媒において、白金族金属は第一ゼオライトに付着している。白金族金属の第一ゼオライトへの付着形態は、第一ゼオライトの表面の少なくとも一部が外部に露出し、第一ゼオライトがアンモニアを含むガスと接することのできる限り、特に制限されない。第一ゼオライトの表面に、白金族金属を含む粒子が付着していてもよい。この場合、白金族金属を含む粒子の少なくとも一部は、第一ゼオライトの外部に露出して付着していてもよい。また、層状の白金族金属が第一ゼオライトの表面の一部を被覆するように設けられていてもよい。この場合、層状の白金族金属の少なくとも一部は、第一ゼオライトの外部に露出して付着していてもよい。白金金属が第一ゼオライトに付着していることは、走査電子顕微鏡(SEM)、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)、透過電子顕微鏡(TEM)等の一般的な電子顕微鏡にて観察することにより確認できる。
【0055】
白金族金属は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)およびオスミウム(Os)からなる群より選ばれる少なくとも1種からなることができる。白金族金属は、NH酸化性能及びNOの生成の抑制の観点から、白金またはパラジウムからなることが好ましい。
【0056】
白金族金属は、少なくとも一部が第一ゼオライトの外部に露出した白金族金属を含む粒子中に存在してもよい。粒子は、白金族金属からなる白金族金属粒子でもよい。また、粒子は、無機材料からなる母材粒子と、母材粒子上に担持された白金族金属とを有する複合粒子でもよい。白金族金属粒子および複合粒子は、それぞれ単独で用いることができる。また、白金族金属粒子および複合粒子は、任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
【0057】
白金族金属粒子は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよびオスミウムからなる群より選ばれる少なくとも1種からなることができる。白金族金属粒子は、NH酸化性能及びNO発生の抑制の観点から、白金またはパラジウムからなることが好ましい。白金族金属粒子は、本発明の効果を損なわない限り、不可避不純物を含んでもよい。
【0058】
白金族金属粒子の平均粒子径D50は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。大きな比表面積を保持させるとともに耐熱性を高めて自身の触媒活性サイトの数を増大させる等の観点から、白金族金属粒子の平均粒子径D50は、0.5~100μmが好ましく、1~100μmがより好ましく、1~50μmがさらに好ましい。
【0059】
複合粒子は、無機材料からなる母材粒子と、母材粒子上に担持された白金族金属とを含むことができる。母材粒子は、無機化合物からなることができる。無機化合物としては、ゼオライト、酸化セリウム(CeO)、セリア-ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物)等の酸素吸蔵放出材料(OSC)、γ-アルミナ、β-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ等の酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物等が挙げられるが、その種類は特に限定されない。また、これらは、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。これら母材粒子は、1種を単独で用いることができる。または、母材粒子は、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
【0060】
母材粒子上に担持された白金族金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよびオスミウムからなる群より選ばれる少なくとも1種からなることができる。母材粒子上に担持された白金族金属は、NH酸化性能及びNO発生の抑制の観点から、白金またはパラジウムからなることが好ましい。白金族金属は、本発明の効果を損なわない限り、不可避不純物を含んでもよい。
【0061】
母材粒子の平均粒子径D50は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。大きな比表面積を保持させるとともに耐熱性を高めて触媒活性サイトの数を増大させる等の観点から、母材粒子の平均粒子径D50は、0.5~100μmが好ましく、1~100μmがより好ましく、1~50μmがさらに好ましい。
【0062】
母材粒子のBET比表面積は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、大きな比表面積を保持させるとともに触媒活性を高める等の観点から、BET一点法によるBET比表面積が10~500m/gが好ましく、20~300m/gがより好ましく、30~200m/gがさらに好ましい。
【0063】
複合粒子の白金族金属の含有率は、アンモニア分解性能の向上、母材粒子上での白金族元素の粒成長(シンタリング)の進行の抑制等の観点から、0.1~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましく、0.1~2質量%がさらに好ましい。
【0064】
第一層において、第一ゼオライトの質量に対する、白金族金属の質量の百分率は、NOの生成の抑制の観点から、0.1%以上5%以下が好ましく、0.1%以上3%以下がより好ましく、0.1%以上2%以下がさらに好ましい。第一層において、第一ゼオライトの質量に対する、白金またはパラジウムの質量の百分率は、NOの生成の抑制の観点から、0.1%以上5%以下が好ましく、0.1%以上3%以下がより好ましく、0.1%以上2%以下がさらに好ましい。
【0065】
第一層における白金族金属の担持量は、特に限定されないが、触媒性能や圧損のバランス等の観点から、アンモニア分解触媒1Lあたり0.01~2g/Lが好ましく、0.02~1g/Lがより好ましい。
【0066】
第一層において、全ての白金族金属が第一ゼオライトに付着していてもよい。また、第一層は、第一ゼオライトに付着した白金族金属とともに、第一ゼオライトに付着せず、単独で存在する白金族金属を含んでいてもよい。第一層において、白金族金属の少なくとも一部が第一ゼオライトに付着している限り、本発明の効果を奏することができる。第一層に含まれる白金族金属全体の質量に対する、第一ゼオライトに付着している白金族金属の質量の百分率は、特に制限されないが、例えば、10%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。
【0067】
≪バインダー≫
実施形態1のアンモニア分解触媒は、基材上に第一ゼオライトおよび白金族金属を固定するためのバインダーを含むことができる。バインダーとしては、公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。例えば、珪素(Si)、酸化セリウム(CeO)、セリア-ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物)等の酸素吸蔵放出材料(OSC)、γ-アルミナ、β-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ等の酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物等を用いることができる。第一層のバインダーの含有率は、特に限定されない。第一層のバインダーの含有率は、例えば、1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
【0068】
≪その他の成分≫
実施形態1のアンモニア分解触媒において、第一層は公知の他の触媒材料や助触媒、各種添加剤を含有していてもよい。例えば、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)等を含んでいてもよい。
【0069】
[実施形態2]
図4に示されるように、本発明の一実施形態(以下「実施形態2」とも記す。)に係るアンモニア分解触媒1は、基材10と、基材10上に設けられた第一層11と、第一層11の基材10に対向する第一面11Aと反対側の第二面11B上に設けられた第二層12と、を備え、第二層12は第二ゼオライトを含むことができる。実施形態2のアンモニア分解触媒は、第二層を備える点以外は、実施形態1と同様の構成とすることができる。
【0070】
実施形態2のアンモニア分解触媒は、第一層を含むため、実施形態1と同様の理由により、250~300℃の温度領域において、NHスリップを抑制でき、かつ、NO生成量が抑制されている。
【0071】
実施形態2のアンモニア分解触媒は、さらに、第二ゼオライトを含む第二層を備える。第二ゼオライトは、NHを吸着し、ゼオライト上でNOとNHとを反応させ、NOをNに還元する。よって、NHスリップをより抑制でき、かつ、NO生成量がより抑制される。
【0072】
実施形態2のアンモニア分解触媒において、基材および第一層は、実施形態1に記載の基材および第一層と基本的に同一の構成とすることができる。
【0073】
実施形態2のアンモニア分解触媒において、第一層の厚さは、5μm以上200μm以下が好ましく、10μm以上180μm以下がさらに好ましい。第二層の厚さは、20μm以上250μm以下が好ましく、25μm以上250μm以下がさらに好ましい。第一層および第二層の合計厚さは、30μm以上270μm以下が好ましく、35μm以上430μm以下がさらに好ましい。
【0074】
<第二層>
実施形態2のアンモニア分解触媒において、第二層は、第一層の基材に対向する第一面と反対側の第二面上に設けられる。第二層は、第一層の第二面の少なくとも一部を被覆することが好ましく、第一層の第二面の全部を被覆することがさらに好ましい。本発明の効果を損なわない限りにおいて、第一層の第二面の一部が第二層で被覆されていなくても、本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0075】
実施形態2のアンモニア分解触媒において、第二層は第二ゼオライトを含む。第二ゼオライトは、第一ゼオライトと同様の構成のものを用いることができる。第二ゼオライトは、CHA型、AEI型、AFX型、KFI型、SFW型、MFI型、ERI型およびBEA型からなる群より選択される1種以上の骨格構造を有するゼオライトが好ましい。第二ゼオライトと第一ゼオライトは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
O生成の抑制性能の向上の観点から、第二ゼオライトは、CHA型の骨格構造を有する遷移金属元素イオン交換ゼオライトが好ましく、CHA型の骨格構造を有する銅でイオン交換されたゼオライトがより好ましい。実施形態2のアンモニア分解触媒において、第一ゼオライトおよび第二ゼオライトは、CHA型の骨格構造を有する銅でイオン交換されたゼオライトが好ましい。
【0077】
第二層における第二ゼオライトの担持量は、特に限定されないが、触媒性能や圧損のバランス等の観点から、アンモニア分解触媒1Lあたり30~350g/Lが好ましく、50~200g/Lがより好ましい。
【0078】
第二ゼオライトは、第一層上に直接設けられていてもよい。また、第二ゼオライトは、バインダーや下地層等を介して第一層上に設けられていてもよい。
【0079】
実施形態2のアンモニア分解触媒は、第一層上に第二ゼオライトを固定するためのバインダーを含むことができる。バインダーとしては、実施形態1に記載のバインダーと同様の構成のものを用いることができる。第二層に含まれるバインダーと、第一層に含まれるバインダーとは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。第二層のバインダーの含有率は、特に限定されない。第二層のバインダーの含有率は、例えば、1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
【0080】
実施形態2のアンモニア分解触媒において、第二層は、第一層と同様の種類の公知の他の触媒材料や助触媒、各種添加剤を含有していてもよい。
【0081】
[用途]
本開示のアンモニア分解触媒は、例えば、アンモニアを燃料とする船舶や発電機等の設備において、好適に用いることができる。
【実施例0082】
本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本実施の形態が限定されるものではない。
【0083】
本実施例で用いる原料は、以下の通りである。
<触媒成分>
Pt:モノエタノールアミンPt(IV)六水酸化物の溶液(例えば水溶液)。以下、Pt塩とも記す。
Pt(0.3)/TiO(46):上記Pt塩を、TiO/SiO=90/10(質量比)の複合酸化物(BET=80m/g)に含浸し、PtをTiOに質量比でPt/TiO=0.3/46となるように担持をした材料。
Pt(0.07)/Al(29.17):上記Pt塩を、γ-アルミナ(BET=140m/g)に含浸し、PtをAlに質量比でPt/Al=0.07/29.17となるように担持をした材料。
MFI:FeをFe換算で4.0質量%となるようにイオン交換したMFI型ゼオライト(SAR=26)。
BEA:FeをFe換算で1.2質量%となるようにイオン交換したベータ型ゼオライト(SAR=25)。
SiAl:SiO/Al=1.5/98.5(質量比)の複合酸化物(BET=100m/g)。以下、Si/Al材料とも記す。
Cu-CHA:CHA型Cuイオン交換ゼオライト。酸化銅で計算した場合の銅の含有率3.2%。以下、Cu-CHA材料とも記す。
Pt(0.07)/Cu(6.112)/SiAl(22.878):上記Pt塩と酢酸銅水溶液とを、上記Si/Al材料に含浸し、PtおよびCuをSiAlに質量比でPt/Cu/SiAl=0.07/6.112/22.878となるように担持をした材料。
Pt(0.07)/Cu-CHA(29.17):上記Pt塩を、上記Cu-CHA材料に含浸し、PtをCu-CHAに質量比でPt/Cu-CHA=0.07/29.17となるように担持をした材料。
Pt(0.035)+Pd(0.035)/Cu-CHA(29.17):硝酸Pt溶液と硝酸パラジウム溶液とを、上記Cu-CHA材料に含浸し、PtおよびPdをCu-CHAに質量比でPt/Pd/Cu-CHA=0.035:0.035:29.17となるように担持をした材料。
Pd(0.07)/Cu-CHA(29.17):硝酸パラジウム溶液を、上記Cu-CHA材料に含浸し、PdをCu-CHAに質量比でPd/Cu-CHA=0.07:29.17となるように担持をした材料。
【0084】
<バインダー>
Si-Binder:シリカゾルバインダー。
Zr-Binder:酢酸ジルコニウム溶液。
Al-Binder:ベーマイトバインダー。
【0085】
<その他>
硝酸セリウム溶液。硝酸セリウム溶液中のセリウムは、SCRに担持することで、NOxの吸着機能を向上させる効果を有する。
【0086】
[アンモニア分解触媒の作製]
基材として、フロースルー型のコージェライトハニカムを準備した。基材のセル数は、300/平方インチ、壁厚は5mil、サイズはφ25.4mm×高さ76.2mm、容積は38.6ccである。全ての試料において、基材は同一である。
【0087】
各試料において、表1の「原料」の「第一層」欄に記載の原料を、()内に記載の質量比で混合して、第一層用スラリーを得た。例えば、試料1では、Pt/TiO:MFI:BEA:Si-Binder=(0.3+46):20:10:10の質量比で混合して第一層用スラリーを得た。第一層用スラリーを基材に塗布し、150℃の乾燥機で15時間乾燥後、450℃で30分間焼成し、基材上に第一層を形成した。全ての試料において、第一層の厚さは同等であり、5μm以上75μm以下であった。
【0088】
各試料において、表1の「原料」の「第二層」欄に記載の原料を、()内に記載の質量比で混合して、第二層用スラリーを得た。第二層用スラリーを第一層上に塗布し、150℃の乾燥機で15時間乾燥後、450℃で30分焼成し、第一層上に第二層を形成して、アンモニア分解触媒を得た。全ての試料において、第二層の厚さは同等であり、100μm以上250μm以下であった。
【0089】
各試料の第一層および第二層に含まれる触媒成分の種類、および、触媒成分の担持量を表2に示す。また、各試料の第一層をSEMで観察し、触媒成分の存在形態を確認した。
【0090】
<第一層の触媒の存在形態>
試料1では、Ptが担持されたTiOおよびSiOの複合酸化物(Pt/TiO)、MFI型Feイオン交換ゼオライト(以下、「Fe-MFI」とも記す。)、BEA型Feイオン交換ゼオライト(以下、「Fe-BEA」とも記す。)が確認された。MFI型Feイオン交換ゼオライトおよびBEA型Feイオン交換ゼオライトには、白金族金属(Pt)は付着していなかった。
【0091】
試料2では、Ptが担持されたSiAl(Pt/SiAl)が確認された。
【0092】
試料3では、PtおよびCuが担持されたSiOおよびAlの複合酸化物(Pt/Cu-SiAl)が確認された。
【0093】
試料4では、Ptが担持されたγ-アルミナ(Pt/Al)が確認された。
【0094】
試料5および試料6では、Ptを含む粒子が付着しているCHA型Cuイオン交換ゼオライト(以下、「Pt付着Cu-CHA」とも記す。)が確認された。Ptを含む粒子の少なくとも一部は、ゼオライトの外部に露出していた。Pt付着Cu-CHAにおける、Cu-CHAの質量に対する、Ptの質量の百分率は、0.24%であった。
【0095】
試料7では、Ptを含む粒子およびPdを含む粒子が付着しているCHA型Cuイオン交換ゼオライト(以下、「PtおよびPd付着Cu-CHA」とも記す。)が確認された。Ptを含む粒子およびPdを含む粒子の少なくとも一部は、ゼオライトの外部に露出していた。PtおよびPd付着Cu-CHAにおける、Cu-CHAの質量に対する、Ptの質量の百分率は、0.12%であった。PtおよびPd付着Cu-CHAにおける、Cu-CHAの質量に対する、Pdの質量の百分率は、0.12%であった。
【0096】
試料8では、Pdを含む粒子が付着しているCHA型Cuイオン交換ゼオライト(以下、「Pd付着Cu-CHA」とも記す。)が確認された。Pdを含む粒子の少なくとも一部は、ゼオライトの外部に露出していた。Pd付着Cu-CHAにおける、Cu-CHAの質量に対する、Pdの質量の百分率は、0.24%であった。
【0097】
試料9では、Ptが担持されたSiAl(Pt/SiAl)、および、CHA型Cuイオン交換ゼオライト(Cu-CHA)が確認された。Cu-CHAには、白金族金属(Pt)は付着していなかった。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
[評価試験]
各試料のアンモニア分解触媒に、測定の前処理として、ガス組成(体積基準)がO;10%、N;90%のガスを500℃で10分流した。その後、各試料のアンモニア分解触媒に以下の条件でガスを流し、アンモニア分解活性を評価した。測定条件およびガスの分析方法は以下の通りである。
【0101】
<測定条件>
・触媒評価装置:CATA-8000-2(株式会社ベスト測器製)
・FT-IR分析計:BEX-1000FT(株式会社ベスト測器製)
・空間速度:24000/h
・全ガス流量:15.4L/min
・反応温度:200℃、250℃、300℃、または、350℃
・ガス組成(体積基準):NH;1000ppm、O;10%、HO;3%、NO;200ppm、N;Balance
【0102】
<ガスの分析方法>
アンモニア分解触媒にガスを流通させながら、電気炉にて触媒を上記の反応温度まで加熱した。各温度にて、アンモニア分解触媒入口、および、出口のNH、NO、NO、NOのガス濃度を計測し、NH浄化率、NO生成量、NO浄化率、NO生成量を算出した。算出方法は以下の通りである。
・NH浄化率(%):100-{(出口NH濃度)/(入口NH濃度)×100}
・NO生成量(ppm):(出口NO濃度)-(入口NO濃度)
・NO浄化率(%):100-{(出口NO濃度)/(入口NO濃度)×100}
・NO生成量(ppm):(出口NO濃度)-(入口NO濃度)
結果を表3~表4に示す。表3~表4において「ND」とはNo Date(未測定)を意味する。本評価試験において、NO生成量が50ppm未満の場合、NO生成量が抑制されていると判断される。また、NH浄化率が30%以上の場合、NHスリップが抑制されていると判断される。
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
[考察]
試料5~試料8のアンモニア分解触媒は、第一層が、白金族金属(PtおよびPdの一方または両方)が付着しているCHA型Cuイオン交換ゼオライトを含み、実施例に該当する。試料5~試料8のアンモニア分解触媒は、250~300℃の温度領域において、NHスリップを抑制でき、かつ、NO生成量が抑制されていることが確認された。中でも、試料5~試料6は、250~300℃の温度領域において、NHスリップも抑制されていることが確認された。
【0106】
試料1~試料4および試料9のアンモニア分解触媒は、第一層が、白金族金属が付着しているゼオライトを含まず、比較例に該当する。試料1~試料4および試料9のアンモニア分解触媒は、250~300℃の温度領域において、NO生成量が抑制されていなかった。
【0107】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形したりすることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0108】
1 アンモニア分解触媒
2 第一ゼオライト
3 白金族金属
10 基材
11 第一層
11A 第一面
11B 第二面
12 第二層
図1
図2
図3
図4
図5