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  • 特開-試験片の酸化の程度を評価する方法 図1
  • 特開-試験片の酸化の程度を評価する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156928
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】試験片の酸化の程度を評価する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/76 20060101AFI20251007BHJP
   G01N 33/44 20060101ALI20251007BHJP
   G01N 21/71 20060101ALI20251007BHJP
【FI】
G01N21/76
G01N33/44
G01N21/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059701
(22)【出願日】2024-04-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年7月27日に東北電子産業株式会社主催のウェビナーにて発表を行った。 令和5年8月22日に学会(第17回次世代ポリオレフィン総合研究会)にて発表を行った。 令和5年11月30日に株式会社三恵者が発行の次世代ポリオレフィン総合研究 Vol.16 11月に発表した。
(71)【出願人】
【識別番号】000222026
【氏名又は名称】東北電子産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】山田 理恵
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲
(72)【発明者】
【氏名】田沼 逸夫
(72)【発明者】
【氏名】細田 覚
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA14
2G043DA08
2G043EA06
2G043FA03
2G043NA01
(57)【要約】
【課題】酸化した高分子材料の酸化の程度を評価する方法を提供すること。
【解決手段】未酸化の高分子材料からなる標準片を酸素を含む雰囲気中で加熱しながらケミルミネッセンス法で測定して得られる第1積算発光量をA、酸化した前記高分子材料からなる試験片を酸素を含む雰囲気中で加熱しながらケミルミネッセンス法で測定して得られる第2積算発光量をBとすると、発光量変化率R=(A-B)/Aに基づいて前記試験片の酸化の程度を評価する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未酸化の高分子材料からなる標準片を酸素を含む雰囲気中で加熱しながらケミルミネッセンス法で測定して得られる第1積算発光量をA、酸化した前記高分子材料からなる試験片を酸素を含む雰囲気中で加熱しながらケミルミネッセンス法で測定して得られる第2積算発光量をBとすると、発光量変化率R=(A-B)/Aに基づいて前記試験片の酸化の程度を評価する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片の酸化の程度を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂等の高分子材料は、軽量でありながらある程度の機械的強度を有することなどから、製品の原材料として様々に使用されている。一方、マイクロプラスチックによる海洋環境破壊などの社会問題を背景として、プラスチック製品の廃棄物量の削減のため、高分子材料からなる製品のリユースやリサイクルが社会的に求められている。一般的に、高分子材料からなる廃製品等のリサイクルにおいては、これら廃製品等の粉砕物にバージン材料をブレンドしたものを主原料として再生製品が製造されている。
【0003】
廃製品等に含まれる高分子材料は、一般的に酸化劣化が進行していることが多い。一方、再生製品は、その使用用途によっては耐候性や耐熱性などの性能が要求されることもある。従って、再生製品が要求される耐候性等の性能を満たすように、再生製品の原料となる廃製品等の粉砕物の酸化の程度を予め把握しておく必要がある。高分子材料の劣化の程度の評価については、ラマンスペクトルを用いる方法(特許文献1)やマイクロ波の照射による方法(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-273334号公報
【特許文献2】特開2016-148627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2の評価方法は、高分子材料の劣化の程度を単に評価するものであり、酸化した高分子材料の酸化の程度を評価する方法ではない。即ち、酸化した高分子材料の酸化の程度を評価する方法として具体的なものは現段階では見当たらない。
【0006】
そこで、本発明は、酸化した高分子材料の酸化の程度を評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者は、鋭意検討の結果、酸化した高分子材料からなる試験片を酸素を含む雰囲気中で加熱しながらでケミルミネッセンス法で測定して得られた積算発光量を、未酸化の当該高分子材料からなる標準片を同様の条件で測定して得られた積算発光量と比較することにより、酸化した高分子材料からなる試験片の酸化の程度を評価できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、第1の評価方法として、
未酸化の高分子材料からなる標準片を酸素を含む雰囲気中で加熱しながらケミルミネッセンス法で測定して得られる第1積算発光量をA、酸化した前記高分子材料からなる試験片を酸素を含む雰囲気中で加熱しながらケミルミネッセンス法で測定して得られる第2積算発光量をBとすると、発光量変化率R=(A-B)/Aに基づいて前記試験片の酸化の程度を評価する方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸化した高分子材料の酸化の程度を評価する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】標準片Yの発光強度の時間変化を示すグラフである。
図2】標準片X,Yにおける酸素量と積算発光量との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の本実施の形態による評価方法は、未酸化の高分子材料からなる標準片を酸素を含む雰囲気中で加熱しながらケミルミネッセンス法で測定して得られる第1積算発光量をA、酸化した上記高分子材料からなる試験片を酸素を含む雰囲気中で加熱しながらケミルミネッセンス法で測定して得られる第2積算発光量をBとすると、発光量変化率R=(A-B)/Aに基づいて上記試験片の酸化の程度を評価する方法である。
【0012】
具体的には、本実施の形態の評価方法は、以下のように実施される。
【0013】
まず、未酸化の高分子材料からなる標準片を準備する。ここで、未酸化の高分子材料からなる標準片とは、後述の試験片の酸化の程度の評価を行おうとする評価者が入手可能な、最も酸化劣化していない状態のサンプルを意味し、具体的には、原料ペレットであるか、又は原料ペレットを用いて製造された未使用の製品である。次に、未酸化の高分子材料からなる標準片の重量Wa1を測定する。その後、未酸化の高分子材料からなる標準片を酸素を含む雰囲気中で加熱しながらケミルミネッセンス法で測定し、第1積算発光量Aを取得する。最後に、測定終了後の標準片の重量Wa2を測定する。この測定中においては、標準片の酸化劣化が生じ、これに伴って発光が生じ、発光強度がピークを迎えた後、徐々に減光して発光が終了する。この測定開始から発光の終了時までの発光強度の時間積分値を、第1積算発光得量A´とし、A´/Wa1を第1積算発光量Aとする。この第1積算発光得量A´は、標準片の高分子材料の未酸化部分の総量に対応するものである。なお、ある程度の測定時間内で上記測定中の発光を終了させるため、標準片の上記測定前の重量Wa1は出来るだけ小さい方が好ましい。具体的には、標準片の上記測定前の重量は、50mg以下が好ましく、10mg以下や2mg以下がより好ましい。上記測定における加熱温度は、180℃以上である。また、上記測定における加熱温度は、350℃以上が好ましく、標準片がほぼ酸化分解する500℃以上がより好ましい。上記測定時の雰囲気は、酸素を含有する雰囲気であればよく、純酸素や空気が好ましい。また、上記測定時の雰囲気は、酸素と不活性ガス等の混合ガスで満たされた雰囲気であってもよい。上記測定は、密閉セル等の密閉系であってもよく、開放系であってもよい。なお、密閉セル等の密閉系で上記測定を実施する場合には、密閉系内の酸素が標準片と反応して枯渇しないだけの十分な量である必要がある。また、解放系で上記測定を実施する場合には、標準片に由来する分解生成物の蒸散を抑制するため、雰囲気ガスの流量を50ml/min以下とすることが望ましい。
【0014】
また、酸化した上記高分子材料からなる試験片を準備する。ここで、酸化した高分子材料からなる試験片は、未酸化の高分子材料からなる標準片と同じ高分子材料で構成されるものであって、より酸化劣化した状態のサンプルである。次に、酸化した上記高分子材料からなる試験片の重量Wb1を測定する。その後、酸化した上記高分子材料からなる試験片を酸素を含む雰囲気中で加熱しながらケミルミネッセンス法で測定し、第2積算発光量Bを取得する。この測定中においては、試験片の酸化劣化が生じ、これに伴って発光が生じ、発光強度がピークを迎えた後、徐々に減光して発光が終了する。最後に、測定終了後の試験片の重量Wb2を測定する。この測定開始から発光の終了時までの発光強度の時間積分値を、第2積算発光得量B´とし、B´/Wb1を第2積算発光量Bとする。この第2積算発光得量B´は、試験片の高分子材料の未酸化部分の総量に対応するものである。この第2積算発光得量B´は、試験片の高分子材料の未酸化部分の総量に対応するものである。試験片は、標準片よりも未酸化の部分が少ないため、第2積算発光量Bは第1積算発光量Aよりも小さくなる。なお、標準片と同様に、試験片の上記測定前の重量Wb1は出来るだけ小さい方が好ましい。具体的には、試験片の重量は、50mg以下が好ましく、10mg以下や2mg以下がより好ましい。上記測定における加熱温度は、180℃以上である。また、上記測定における加熱温度は、350℃以上が好ましく、標準片がほぼ酸化分解する500℃以上がより好ましい。上記測定時の雰囲気は、酸素を含有する雰囲気であればよく、純酸素や空気が好ましい。また、上記測定時の雰囲気は、酸素と不活性ガス等の混合ガスで満たされた雰囲気であってもよい。上記測定は、密閉セル等の密閉系であってもよく、開放系であってもよい。なお、密閉セル等の密閉系で上記測定を実施する場合には、密閉系内の酸素が標準片と反応して枯渇しないだけの十分な量である必要がある。また、解放系で上記測定を実施する場合には、標準片に由来する分解生成物の蒸散を抑制するため、雰囲気ガスの流量を50ml/min以下とすることが望ましい。
【0015】
最後に、上記測定で取得された第1積算発光量A及び第2積算発光量Bに基づいて、発光量変化率R=(A-B)/Aを算出し、この発光量変化率Rに基づいて上記試験片の酸化の程度を数値として評価することができる。
【0016】
なお、第1積算発光量Aの代わりに、補正後第1積算発光量Acol=A´/(Wa1-Wa2)を、上記発光量変化率Rの算出に用いてもよい。また、第1積算発光量Aの代わりに、補正後第1積算発光量Acol´=A´/Wa2を、上記発光量変化率Rの算出に用いてもよい。加えて、標準片の測定前の面積をWas1とし、標準片の測定後の面積をWas2とすると、第1積算発光量Aの代わりに、第1積算発光量A=A´/Was1や、補正後第1積算発光量Acols=A´/(Was1-Was2)、補正後第1積算発光量Acol´=A´/Was2の何れかを、上記発光量変化率Rの算出に用いてもよい。なお、酸化の程度のより正確な判断の観点から、第1積算発光量Aの代わりに、補正後第1積算発光量Acol=A´/(Wa1-Wa2)を、上記発光量変化率Rの算出に用いるのが望ましい。
【0017】
同様に、第2積算発光量Bの代わりに、補正後第2積算発光量Bcol=B´/(Wb1-Wb2)を、上記発光量変化率Rの算出に用いてもよい。また、第2積算発光量Bの代わりに、補正後第2積算発光量Bcol´=B´/Wb2を、上記発光量変化率Rの算出に用いてもよい。加えて、試験片の測定前の面積をWbs1とし、試験片の測定後の面積をWbs2とすると、第2積算発光量Bの代わりに、第2積算発光量B=B´/Wbs1や、補正後第2積算発光量Bcols=B´/(Wbs1-Wbs2)、補正後第2積算発光量Bcol´=B´/Wbs2の何れかを、上記発光量変化率Rの算出に用いてもよい。なお、酸化の程度のより正確な判断の観点から、第2積算発光量Bの代わりに、補正後第2積算発光量Bcol=B´/(Wb1-Wb2)を、上記発光量変化率Rの算出に用いるのが望ましい。
【0018】
上記測定においては、標準片及び試験片に係る測定開始から発光の終了時までの発光強度の時間積分値を、第1積算発光得量A´及び第2積算発光得量B´としていたが、本発明はこれに限定されず、標準片及び試験片に係る測定開始から発光強度がピークに達した時点までの発光強度の時間積分値を、第1積算発光得量A´及び第2積算発光得量B´としてもよい。
【0019】
上記評価においては、算出された発光量変化率R=(A-B)/Aに基づいて上記試験片の酸化の程度を評価していたが、本発明はこれに限定されない。具体的には、酸素に対して十分な量の標準片について、酸素量を段階的に設定した複数の雰囲気中で上記測定を実施して、酸素量と積算発光量との相関を表す検量線を取得し、標準片及び試験片に係る上記測定で取得された第1積算発光量Aと第2積算発光量Bとの差分A-Bを上記検量線の相関式に導入して、試験片の未酸化部分の酸素量及び酸素割合を算出することにより、試験片の酸化の程度を評価してもよい。
【0020】
また、試験片のケミルミネッセンス法による上記測定の前に、試験片の前処理として、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で試験片を発光が終了するまで加熱処理してもよい。なお、この前処理における加熱は、試験片の高分子材料が熱分化しないような温度である300℃以下が好ましく、特に200℃以下がより好ましい。また、この前処理における加熱は、一定温度又は昇温で実施してもよく、上記測定の加熱温度と同じであってもよいし、異なっていてもよい。加えて、この前処理は、上記測定とは別のバッチ処理としてもよく、雰囲気のガス置換を伴って上記測定と連続的に実施されてもよい。このように試験片を前処理することにより、試験片が融解して形状が整えられるため好ましい。また、高分子材料の酸化劣化に伴って生成した過酸化物は、加熱分解時に発光するものであるが、試験片の酸化の程度を評価するための上記測定では、試験片に含まれる未酸化の高分子材料自体の酸化による発光のみを捕捉する必要があるため、上記測定前の試験片に含まれている過酸化物による発光は、上記測定の誤差となる虞がある。従って、上記前処理により、高分子材料の酸化劣化に伴って生成した過酸化物を事前に除去することが好ましい。なお、未酸化の高分子材料からなる標準片においても、標準片の形状を整えることや標準片の製造過程で生成した過酸化物が上記測定の誤差となる虞があることから、上記前処理を実施するのが好ましい。
【0021】
本実施の形態の評価方法に適用可能な高分子材料としては、プラスチック、油脂、樹脂、ゴム、繊維、塗料などが挙げられる。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドなどのエンジニアリングプラスチック、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、BR、SBR、EPDM、ブチルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、松脂、グリセリン、ポリエチレンオキサイド、でんぷん、セルロースなどがある。なお、本実施の形態の評価方法は、上記の例に限らず、高分子材料全般に適用することができる。
【0022】
次に、本実施の形態の評価方法の実施例について、より詳細に説明する。
【0023】
(検量線の取得)
標準片Xとして、ポリプロピレン(PP)製のサイズが10mm×10mm×300μmであるシートを用いた。また、標準片Yとして、HALS(0.1wt%)及びUVA(0.1%)を添加した上記標準片Xと同材料、同サイズのシートを用いた。次に、これらの標準片X又は標準片Yを、φ20mmのアルミセルに入れたうえでこのアルミセルを密閉セル(内容積:6.69cm)に入れた。なお、この密封セルは、開閉可能となっており、上部にガラス窓が設けられていると共に、密封セルの内部の雰囲気のガス置換用のガスポートが設けられている。その後、酸素濃度が、0%,40%,60%,80%,100%の各濃度に調整されたガスを密閉セルに流入させ、密閉セル内部を各酸素濃度に調整したガスで置換して密閉セルを密閉した。また、空気(酸素濃度:21%)を密閉セルに流入させ、密閉セル内部を空気で置換して密閉セルを密閉した。なお、酸素濃度100%のガスで密封セル内を満たした場合、密封セル内の酸素量は0.299mmоlとなる。
【0024】
その後、ケミルミネッセンスアナライザー(東北電子産業(株)製)の試料室を200℃に昇温し、試料室を200℃に維持した状態で、標準片X又は標準片Yを収容した上記密閉セルを入れて、ケミルミネッセンス測定を開始した。
【0025】
標準片Yの測定結果を図1に示す。この結果から、酸素濃度により、発光の立ち上がり及び発光強度のピークの時間が異なっているが、測定開始から45分後にはいずれの酸素濃度においても発光が終了することが明らかとなった。これは、測定開始から45分後において、密閉セル内の酸素が標準片Yと全て反応したことによると考えられる。
【0026】
測定開始前の密閉セル内の酸素量Oと、酸素濃度0%の積算発光量に対する21%,40%,60%,80%,100%の各酸素濃度の積算発光量の増加分Iとの相関を、図2に示す。これにより、添加材を添加していない標準片X、添加剤を添加した標準片Yの双方において高い相関を示していることが分かった。なお、上述のように、測定開始前の密閉セル内の酸素は全て標準片X,Yと反応したと推定されることから、図2の相関を表す検量線(I=2408*10*О)を用いて、積算発光量の実測値から発光に関与した酸素量Oを推定できることとなる。
【0027】
(試験片の酸化の程度の評価)
まず、未酸化の高分子材料からなる標準片Aを準備した。具体的には、標準片Aは、上記標準片Xを、DSCセル(φ5mm×2mm)に入れ、本測定の際に誤差となる過酸化物を除去するために、150℃で流入窒素量50ml/minの窒素雰囲気下で10分間加熱処理して作成した。
【0028】
次に、酸化した高分子材料からなる試験片Bを準備した。具体的には、試験片Bは、上記標準片Xを、DSCセル(φ5mm×2mm)に入れ、180℃及び流入酸素量50ml/minの酸素雰囲気下で、表2に示される加熱時間hに亘って加熱処理した後、本測定の際に誤差となる過酸化物を除去するために、150℃で流入窒素量50ml/minの窒素雰囲気下で10分間加熱処理して作成した。
【0029】
本試験を実施する前に、標準片Aの重量Wa1を測定した。次に、標準片Aを、酸素を含む雰囲気中で200℃で加熱しながらケミルミネッセンス法により30分間に亘って積算発光得量A´を測定し、第1積算発光量A=A´/Wa1を算出した。測定結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
本試験を実施する前に、試験片Bの重量Wb1を測定した。次に、試験片Bを、酸素を含む雰囲気中で200℃で加熱しながらケミルミネッセンス法により30分間に亘って積算発光得量B´を測定し、第2積算発光量B=B´/Wb1を算出した。また、得られた第1積算発光量A及び第2積算発光量Bから、発光量変化率R=(A-B)/Aを算出し、この発光量変化率Rに基づいて試験片Bの酸化の程度を評価した。更に、得られた第1積算発光量A及び第2積算発光量Bの差分A-Bを、予め取得された上記検量線を用いて、上記差分に対応する発光に関与した酸素量O[mmol]に換算し、試験片Bの質量[mmol]に対する酸素割合Or[mmol%]を算出した。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表2から、加熱時間hの異なる試験片Bの酸化の程度を、発光量変化率R及び酸素割合Orのように、具体的な数値として夫々評価することができることが分かった。特に、表2から、発光量変化率R及び酸素割合Orが増大すると、試験片Bの酸化の程度も大きくなると評価できることが分かった。
図1
図2