(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156939
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】作業車及び座席
(51)【国際特許分類】
B60N 2/38 20060101AFI20251007BHJP
【FI】
B60N2/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059716
(22)【出願日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 祐介
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CC06
(57)【要約】
【課題】下方に回動する座体の速度を緩めることが可能な作業車及び座席を提供する。
【解決手段】着座者が着座する座席5Fを備え、座席5Fは、座体51と、座体51を支持する脚部52と、を備え、座席5Fは、座体51の前部が上下方向に回動することで、座体51が前後方向に延びる使用姿勢P1と、座体51が上下方向に延びる収納姿勢P2と、に切り換え可能であり、座体51または脚部52のうち一方は、座席5Fの幅方向に突出する被案内部材51a、51bを有し、座体51または脚部52のうち他方は、少なくとも被案内部材51a、51bの一部が接触した状態で被案内部材51a、51bを案内する案内部材52d、52eを有する作業車。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者が着座する座席を備え、
前記座席は、座体と、
前記座体を支持する脚部と、を備え、
前記座席は、前記座体の前部が上下方向に回動することで、前記座体が前後方向に延びる使用姿勢と、前記座体が上下方向に延びる収納姿勢と、に切り換え可能であり、
前記座体または前記脚部のうち一方は、前記座席の幅方向に突出する被案内部材を有し、
前記座体または前記脚部のうち他方は、少なくとも前記被案内部材の一部が接触した状態で前記被案内部材を案内する案内部材を有する作業車。
【請求項2】
前記被案内部材は、前記座体が有するピン状の部材であり、
前記案内部材は、前記脚部が有し前記被案内部材が挿入される溝状の部材である請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記座席は、前記収納姿勢から前記座体の前部が下方に回動することで、前記使用姿勢に切り換え可能であり、
前記収納姿勢における前記被案内部材の位置は、前記使用姿勢における前記被案内部材の位置よりも下側である請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記案内部材は、前下がり傾斜状に延びている請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
前記案内部材は、前記収納姿勢における前記被案内部材の位置に形成され、前記案内部材から下方に膨出する係合部位を有する請求項4に記載の作業車。
【請求項6】
前記脚部は、前記座体の下方に位置し上下方向に延びる複数の第1部材と、前記座席の幅方向に延び複数の前記第1部材を連結する第2部材と、を有し、
前記第2部材は、前記使用姿勢において前記座体の下部が当接し、前記収納姿勢において前記第2部材の後端部が前記座体の前端部よりも前側に位置している請求項4に記載の作業車。
【請求項7】
前記座席は、背部を更に備え、
前記座体は、前記使用姿勢において前記背部側の端部である第1端部と、前記第1端部とは反対側の端部である第2端部と、を更に備え、
前記座体は、前記被案内部材として、第1被案内部材と、前記第1被案内部材よりも前記第2端部に対する距離が大きい第2被案内部材と、を有し、
前記脚部は、前記案内部材として、前上がり傾斜状に延び前記第1被案内部材を案内する第1案内部材と、前下がり傾斜状に延び前記第2被案内部材を案内する第2案内部材と、を有する請求項4に記載の作業車。
【請求項8】
側面視で前記第1案内部材の下端部から前記第2案内部材の後端部までの距離と、
側面視で前記第1案内部材の下端部から前記第2案内部材の前端部までの距離と、はほぼ等しい請求項7に記載の作業車。
【請求項9】
着座者が着座する座体と、前記座体を支持する脚部と、を備え、
前記座体の前部が上下方向に回動することで、前記座体が前後方向に延びる使用姿勢と、前記座体が上下方向に延びる収納姿勢と、に切り換え可能な座席であって、
前記座体または前記脚部のうち一方は、当該座席の幅方向に突出する被案内部材を有し、
前記座体または前記脚部のうち他方は、少なくとも前記被案内部材の一部が接触した状態で前記被案内部材を案内する案内部材を有する座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車及び座席に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、座席支持台上に設けられ上向きに開口した物品収容部と、物品収容部を開閉するように座体の後部側の横支軸を中心に跳ね上げ可能である運転座席を構成する座体と、を備える多目的車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の座体は、跳ね上げられた状態から下方に回動する際に、座体の自重によって座体が下方に回動する速度が速くなる。下方に回動する座体の速度が速い場合、物品収容部などに配置された荷物に接触した場合の衝撃が大きくなる。
【0005】
本発明の目的は、下方に回動する座体の速度を緩めることが可能な作業車及び座席を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための作業車の特徴構成は、着座者が着座する座席を備え、前記座席は、座体と、前記座体を支持する脚部と、を備え、前記座席は、前記座体の前部が上下方向に回動することで、前記座体が前後方向に延びる使用姿勢と、前記座体が上下方向に延びる収納姿勢と、に切り換え可能であり、前記座体または前記脚部のうち一方は、前記座席の幅方向に突出する被案内部材を有し、前記座体または前記脚部のうち他方は、少なくとも前記被案内部材の一部が接触した状態で前記被案内部材を案内する案内部材を有する点にある。
【0007】
上記の特徴構成によれば、座体の前部が下方に回動する際に、被案内部材の一部が案内部材に接触した状態で被案内部材が案内される。これにより、下方に回動する座体の速度が緩まる。
【0008】
本発明に係る作業車の別の特徴構成は、前記被案内部材は、前記座体が有するピン状の部材であり、前記案内部材は、前記脚部が有し、前記被案内部材が挿入される溝状の部材である点にある。
【0009】
上記の特徴構成によれば、座席が上下方向に回動する際に、被案内部材が案内部材に挿入された状態で案内部材に沿って案内される。これにより、下方に回動する座体の速度が緩まる。
【0010】
本発明に係る作業車の別の特徴構成は、前記座席は、前記収納姿勢から前記座体の前部が下方に回動することで、前記使用姿勢に切り換え可能であり、前記収納姿勢における前記被案内部材の位置は、前記使用姿勢における前記被案内部材の位置よりも下側である点にある。
【0011】
上記の特徴構成によれば、座席が収納姿勢から使用姿勢に切り替えられる際に、被案内部材は、案内部材によって重力に反する方向に案内される必要がある。これにより、収納姿勢における被案内部材の位置が、使用姿勢における被案内部材の位置よりも上側である構成と比較して、下方に回動する座体の速度が緩まる。
【0012】
本発明に係る作業車の別の特徴構成は、前記案内部材は、前下がり傾斜状に延びている点にある。
【0013】
上記の特徴構成によれば、座席が収納姿勢から使用姿勢に切り替えられる際に、被案内部材は、座体の回動によって案内部に沿って斜め後上方に案内される。これにより、被案内部材が重力に反する方向に案内される必要があるので、座席が収納姿勢から使用姿勢に切り替わる際に下方に回動する座体の速度が緩まる。
【0014】
本発明に係る作業車の別の特徴構成は、前記案内部材は、前記収納姿勢における前記被案内部材の位置に形成され、前記案内部材から下方に膨出する係合部位を有する点にある。
【0015】
座席が収納姿勢である状態で作業車が急ブレーキを掛けた場合には、座体に前方方向の力が掛かる。これにより、座席が意図せず使用姿勢に切り替わる場合がある。上記の特徴構成によれば、収納姿勢において被案内部材は係合部位に係合する。これにより、座席が収納姿勢から使用姿勢に切り替えられる際に、座体が上方に持ち上げられることで、被案内部材が係合部位から離脱される必要がある。したがって、作業車が急ブレーキを掛けた際などに、座体が意図せず下方に回動しにくくなる。
【0016】
本発明に係る作業車の別の特徴構成は、前記脚部は、前記座体の下方に位置し上下方向に延びる複数の第1部材と、前記座席の幅方向に延び複数の前記第1部材を連結する第2部材と、を有し、前記第2部材は、前記使用姿勢において前記座体の下部が当接し、前記収納姿勢において前記第2部材の後端部が前記座体の前端部よりも前側に位置している点にある。
【0017】
座席が使用姿勢から収納姿勢に切り替えられる際に、被案内部材は案内部材に沿って斜め前下方に案内される。つまり、収納姿勢における座体の一部は、使用姿勢の座体よりも下側に位置している。これにより、座席が使用姿勢から収納姿勢に切り替えられる際に、座体の一部が脚部に接触する場合がある。上記の特徴構成によれば、第2部材の後端部は、収納姿勢における座体の前端部よりも前側に位置するので、座席が使用姿勢から収納姿勢に切り替えられる際に、座体の一部が第2部材に接触しない。
【0018】
本発明に係る作業車の別の特徴構成は、前記座席は、背部を更に備え、前記座体は、前記使用姿勢において前記背部側の端部である第1端部と、前記第1端部とは反対側の端部である第2端部と、を更に備え、前記座体は、前記被案内部材として、第1被案内部材と、前記第1被案内部材よりも前記第2端部に対する距離が大きい第2被案内部材と、を有し、前記脚部は、前記案内部材として、前上がり傾斜状に延び前記第1被案内部材を案内する第1案内部材と、前下がり傾斜状に延び前記第2被案内部材を案内する第2案内部材と、を有する点にある。
【0019】
上記の特徴構成によれば、座席が収納姿勢から使用姿勢に切り替えられる際に、第1被案内部材は、第1案内部に沿って斜め前上方に案内される。また、第2被案内部材は、第2案内部に沿って斜め後上方に案内される。これにより、第1被案内部材及び第2被案内部材が重力に反する方向に案内される必要があるので、座席が収納姿勢から使用姿勢に切り替わる際に下方に回動する座体の速度が緩まる。
【0020】
本発明に係る作業車の別の特徴構成は、側面視で前記第1案内部材の下端部から前記第2案内部材の後端部までの距離と、側面視で前記第1案内部材の下端部から前記第2案内部材の前端部までの距離と、はほぼ等しい点にある。
【0021】
上記の特徴構成によれば、第1被案内部材と第2被案内部材との距離は一定である。つまり、第1案内部材における第1被案内部材が案内される部分と、第2案内部材における第2被案内部材が案内される部分と、の距離が一定であることで、第1被案内部材及び第2被案内部材が、第1案内部材及び第2案内部材に適切に案内されやすくなる。
【0022】
上記目的を達成するための座席の特徴構成は、着座者が着座する座体と、前記座体を支持する脚部と、を備え、前記座体の前部が上下方向に回動することで、前記座体が前後方向に延びる使用姿勢と、前記座体が上下方向に延びる収納姿勢と、に切り換え可能な座席であって、前記座体または前記脚部のうち一方は、当該座席の幅方向に突出する被案内部材を有し、前記座体または前記脚部のうち他方は、前記回転中心の周りに位置し、少なくとも前記被案内部材の一部が接触した状態で前記被案内部材を案内する案内部材を有する点にある。
【0023】
上記の特徴構成によれば、座体の前部が上下方向に回動する際に、被案内部材の一部が案内部材に接触した状態で被案内部材が案内される。これにより、下方に回動する座体の速度が緩まる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る作業車の一例である多目的車両について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、図面における矢印Fの方向を「前側」、矢印Bの方向を「後側」、矢印Uの方向を「上側」、矢印Dの方向を「下側」、矢印Rの方向を「右側」、矢印Lの方向を「左側」とする。
【0026】
〔全体構成について〕
図1に示すように、作業車の機体100は、機体フレーム1と、機体フレーム1を支持する走行装置2と、ボンネット3と、乗員が搭乗する搭乗部4と、ダンプ式の荷台6と、エンジンEと、を備える。
【0027】
走行装置2は、操舵可能、かつ、駆動可能な左右の前輪21と、操舵不能、かつ、駆動可能な左右の後輪22と、を備える。前輪21は、機体フレーム1の前部を支持している。後輪22は、機体フレーム1の後部を支持している。走行装置2は、左右の後輪22のみが駆動する二輪駆動状態と、左右の前輪21及び左右の後輪22が駆動する四輪駆動状態と、に切り替え可能に構成される。
【0028】
搭乗部4は、側面視で左右の前輪21と左右の後輪22との間に位置している。搭乗部4は機体フレーム1によって支持されている。
【0029】
ボンネット3は搭乗部4よりも前側に位置している。荷台6は搭乗部4よりも後側に位置している。ボンネット3には、エンジンE用の冷却水を冷却するラジエータ等が収納されている。
【0030】
エンジンEからの動力は、変速装置Tによって変速されたうえで前輪21または後輪22に伝達される。エンジンE及び変速装置Tは、荷台6の下方に位置している。
【0031】
〔搭乗部〕
図1、
図2に示すように、搭乗部4は、左右の前輪21を操舵操作するためのステアリングハンドル41と、開閉式のドア42と、乗員保護用のロプス(Rollover Protective Structure)43と、搭乗部4の床面を構成するフロアパネル44と、変速操作を行う変速レバー等の各種操作具と、を備える。
【0032】
搭乗部4は、運転者が着座する運転座席5Оと、運転座席5Оの横側方に位置し着座者が着座する前側座席5F(座席に相当する)と、運転座席5О及び前側座席5Fよりも後方に位置する後側座席5Rと、を備える。
【0033】
運転座席5Оは、ステアリングハンドル41の後方に位置している。
【0034】
運転座席5О及び前側座席5Fの機体100の横外側には、前側のドア42が位置している。また、後側座席5Rの機体100の横外側には、後側のドア42が位置している。
【0035】
搭乗部4の周囲にロプス43が設けられている。ロプス43の下端部は、機体フレーム1に連結されており、運転座席5О、前側座席5F及び後側座席5Rを囲んでいる。
【0036】
フロアパネル44は、機体フレーム1に支持されている。
【0037】
〔前側座席〕
図2、
図3に示すように、前側座席5Fは、着座者が着座する座体51と、座体51を支持する脚部52と、背部53と、シートベルトを固定可能なバックル54と、を備える。
【0038】
図3に示すように、前側座席5Fは、座体51の前部が上下方向に回動することで、座体51が前後方向に延びる使用姿勢P1と、座体51が上下方向に延びる収納姿勢P2と、座体51が使用姿勢P1の座体51と収納姿勢P2の座体51との中間に位置する中間姿勢P3と、に切り換え可能である。本実施形態において、前側座席5Fは、収納姿勢P2から座体51の前部が下方向に回動することで、使用姿勢P1に切り換え可能である。
【0039】
図2に示すように、座体51の左右中央の後部に凹部51fが形成されている。凹部51fは、座体51の後端部から座体51の前後中央側に向けて形成されている。
【0040】
〔脚部〕
脚部52は、運転座席5Оの座体及び前側座席5Fの座体51を支持する。
図3、
図4に示すように、脚部52は、座体51の下方に位置し上下方向に延びる複数の第1部材52aと、前側座席5Fの幅方向に延び複数の第1部材52aを連結する第2部材52bと、上下方向に延び第1部材52aよりも機体100の横内側に位置する第3部材52cと、第2部材52bよりも後側に位置し前側座席5Fの幅方向に延びる第4部材52iと、前側座席5Fの奥行方向に延び第2部材52bと第4部材52iとを連結する連結部材52hと、第1案内部材52d(案内部材に相当)と、第2案内部材52e(案内部材に相当)と、を備える。
【0041】
第1部材52aは、機体100の前後方向に延びる板状の部材である。
図2に示すように、左右の第1部材52aは、運転座席5О及び前側座席5Fの機体100の横外側に位置している。具体的には、右の第1部材52aは、前側座席5Fの右外側に位置している。また、左の第1部材52aは、運転座席5Оの左外側に位置している。
【0042】
第2部材52bと第4部材52iとは、前後に離間した位置に設けられている。第2部材52bの右側端部は、右の第1部材52aの前部に固定されている。また、第2部材52bの左側端部は、左の第1部材52aの前部に固定されている。
【0043】
第4部材52iの右側端部は、右の第1部材52aの後部に固定されている。第4部材52iの左側端部は、左の第1部材52aの後部に固定されている。また、第4部材52iの左右中間部分に、第3部材52cの上部が固定されている。
【0044】
〔案内部材〕
左右の第1案内部材52d及び左右の第2案内部材52eは、座体51の機体横外側に位置する溝状の部材である。具体的には、右の第1案内部材52d及び第2案内部材52eは、座体51の右外側に位置し、第1部材52aの上端部に固定された板状のブラケットに形成されている。また、左の第1案内部材52d及び第2案内部材52eは、座体51の左外側に位置し、連結部材52hに固定された板状のブラケットに形成されている。
【0045】
第1案内部材52dは、前上がり傾斜状に延びている。また、第2案内部材52eは、前下がり傾斜状に延びている。第2案内部材52eは、第2案内部材52eの前端部から下方に膨出する前側係合部位52f(係合部位に相当)と、第2案内部材52eの後端部から下方に膨出する後側係合部位52gと、を備える。
【0046】
〔背部〕
背部53は、座体51よりも後ろ側に位置し、斜め後上方に延びている。
図5に示すように、背部53は、機体100の左右方向に延びる棒状の支持部材53aによって、左右のロプス43に固定されている。また、背部53は、機体100の上下方向に延びる棒状の支持部材53aによって、第4部材52iに固定されている。
【0047】
図2に示すように、バックル54は、座体51の左右中央に位置している。バックル54は、前側座席5Fの幅方向に延びる軸芯A1周りに回動可能である。バックル54は、上方に回動する座体51の上面が接触することで、座体51とともに上方へ回動する。
【0048】
バックル54は、平面視で座体51の凹部51fに対応する箇所に位置している。バックル54は、座体51の凹部51fを通って、座体51の上面よりも上側に突出している。
【0049】
〔座体〕
図3、
図4に示すように、座体51は、複数人が着座可能な幅を有する。座体51は、座体51の下部に位置する座体フレーム51cと、前側座席5Fの幅方向に突出する第1被案内部材51a(被案内部材に相当)と、前側座席5Fの幅方向に突出する第2被案内部材51b(被案内部材に相当)と、を有する。
【0050】
〔被案内部材〕
図3、
図4に示すように、第1被案内部材51a及び第2被案内部材51bは、機体100の横外側に延びるピン状の部材である。左右の第1被案内部材51a及び左右の第2被案内部材51bは、座体51の横外側部分に設けられている。具体的には、右の第1被案内部材51a及び第2被案内部材51bは、座体51の右外側端部に設けられている。左の第1被案内部材51a及び第2被案内部材51bは、座体51の左外側端部に設けられている。第1被案内部材51aの基端部及び第2被案内部材51bの基端部は、座体フレーム51cに固定されている。
【0051】
第1案内部材52dに、第1被案内部材51aが挿入される。第1案内部材52dは、少なくとも第1被案内部材51aの一部が第1案内部材52dに接触した状態で第1被案内部材51aを案内する。換言すると、第1被案内部材51aは、第1案内部材52dに沿って案内される。
【0052】
第2案内部材52eに、第2被案内部材51bが挿入される。第2案内部材52eは、少なくとも第2被案内部材51bの一部が第2案内部材52eに接触した状態で第2被案内部材51bを案内する。換言すると、第2被案内部材51bは、第2案内部材52eに沿って案内される。
【0053】
座体51、脚部52、第1被案内部材51a、第2被案内部材51b、第1案内部材52d及び第2案内部材52eによってリンク機構が構成されている。第1被案内部材51a及び第2被案内部材51bは一定の距離を保っている。
【0054】
図3に示すように、座体51は、使用姿勢P1において、背部53側の側端部である第1端部51dと、第1端部51dとは反対側の側端部である第2端部51eと、を備える。第2被案内部材51bは、第1被案内部材51aよりも第2端部51eに対する距離が大きい。
【0055】
図6に示すように、側面視で第1案内部材52dの下端部から第2案内部材52eの後端部までの距離L1と、側面視で第1案内部材52dの下端部から第2案内部材52eの前端部までの距離L2と、はほぼ等しい。距離L1及び距離L2は、第1被案内部材51aにおける第2被案内部材51b側の端部から、第2被案内部材51bにおける第1被案内部材51aとは反対側の端部までの距離に相当する。また、側面視で第1案内部材52dの上端部から第2案内部材52eの前後中間部までの距離L3は、第1被案内部材51aにおける第2被案内部材51bとは反対側の端部から、第2被案内部材51bにおける第1被案内部材51aとは反対側の端部までの距離に相当する。
【0056】
〔前側座席の姿勢変更について〕
図6、
図7、
図8に示すように、座体51の前部が人為操作によって回動されることで、第1被案内部材51aが第1案内部材52d内を移動するように構成されている。また、第2被案内部材51bは第2案内部材52e内を移動するように構成されている。
【0057】
図6に示すように、使用姿勢P1における第1被案内部材51aは、第1案内部材52dの下端部に位置にする。また、使用姿勢P1における第2被案内部材51bは、第2案内部材52eの後端部に位置にする。第2被案内部材51bは、使用姿勢P1において、後側係合部位52gに係合する。換言すると、後側係合部位52gは、使用姿勢P1における第2被案内部材51bの位置に形成されている。使用姿勢P1において、座体51の上面は上方を向いている。
図3に示すように、第2部材52bの前端部は、使用姿勢P1における座体51の前後中間部よりも後側に位置している。
【0058】
使用姿勢P1の前側座席5Fは、座体51の前部が人為操作によって、斜め前上方に持ち上げられたうえで上方に回動されることで収納姿勢P2となる。具体的には、使用姿勢P1において、座体51の前部が斜め前上方に持ち上げられることで、第1被案内部材51aは、第1案内部材52d内を斜め前上方向へ案内される。また、使用姿勢P1において、座体51の前部が斜め前上方に持ち上げられることで、第2被案内部材51bは、後側係合部位52gから上方に離脱する。
【0059】
次に、座体51の前部が人為操作によって、上方に回動されることで、第1被案内部材51aに反時計回り方向の力が掛かる。第1被案内部材51aは、第1案内部材52dに沿って斜め前上方に移動する。第1被案内部材51aが斜め前上方に移動するのに伴って、第2被案内部材51bは第2案内部材52eに沿って斜め前下方に移動する。第1被案内部材51aは、第1案内部材52dの上端部に当接して一時的に停止する。
【0060】
図7に示すように、使用姿勢P1から座体51の前部が上方に回動されると、中間姿勢P3となる。中間姿勢P3において、座体51の上面は機体100の斜め後上方を向いている。
図3に示すように、側面視において、使用姿勢P1の座体51の下端部に沿って延びる線V1と、中間姿勢P3の座体51の下端部に沿って延びる線V3と、でなす角θ1の角度は約50度である。
【0061】
第1被案内部材51aは、中間姿勢P3において第1案内部材52dの上端部に位置している。また、第2被案内部材51bは、中間姿勢P3において第2案内部材52eの前後中間部に位置にする。
【0062】
中間姿勢P3の座体51の前部が上方に回動されることで、第1被案内部材51aに反時計回り方向の力が掛かる。第1被案内部材51aは、第1案内部材52dによって反時計回り方向への移動が制限されている。これにより、第2被案内部材51bに、第1被案内部材51aを支点として反時計回り方向の力が掛かる。換言すると、第2被案内部材51bは、第2案内部材52eの内を斜め前下方に移動する。第2被案内部材51bが斜め前下方に移動するのに伴って、第1被案内部材51aは第1案内部材52dに沿って斜め後下方に移動する。第1被案内部材51aは、第1案内部材52dの下端部に当接して停止する。また、第2被案内部材51bは、第2案内部材52eの前端部に当接して停止する。
【0063】
図8に示すように、座体51の上面が背部53に当接することで座体51が停止する。収納姿勢P2において、座体51の上面は機体100の後方を向いている。
図3に示すように、側面視において、使用姿勢P1の座体51の下端部に沿って延びる線V1と、収納姿勢P2の座体51の下端部に沿って延びる線V2と、でなす角θ2の角度は約100度である。これにより、座体51は、角θ2が90度である構成と比較して座体51の重心が後方に移動するので、座体51の自重によって角θ2が広がる方向に回動しやすくなる。換言すると、座体51が前下方に回動しにくくなる。したがって、収納姿勢P2の前側座席5Fが、意図せず使用姿勢P1に変更されにくくなるので好ましい。
【0064】
第1被案内部材51aは、収納姿勢P2において第1案内部材52dの下端部に位置している。第2被案内部材51bは、収納姿勢P2において第2案内部材52eの前端部に位置にする。第2被案内部材51bは、収納姿勢P2において、前側係合部位52fに係合する。換言すると、前側係合部位52fは、収納姿勢P2における第2被案内部材51bの位置に形成されている。収納姿勢P2における第2被案内部材51bの位置は、使用姿勢P1における第2被案内部材51bの位置よりも下側である。
【0065】
図8に示すように、第2部材52bの後端部は、収納姿勢P2における座体51の前端部よりも前側に位置している。座体51の第1端部51dは、第2部材52bと第4部材52iとの間に位置している。前側座席5Fが収納姿勢P2となることで、第2部材52bの前端部と、フロアパネル44と、前側座席5Fの前方のフロントパネルと、で囲まれた領域に荷物を載置することができる。
【0066】
収納姿勢P2の前側座席5Fは、座体51の前部が人為操作によって、斜め前上方に持ち上げられたうえで下方に回動されることで使用姿勢P1となる。つまり、収納姿勢P2において、座体51の前部が斜め前上方に持ち上げられることで、第1被案内部材51aは、第1案内部材52d内を斜め前上方向に案内される。また、収納姿勢P2において、座体51の前部が斜め前上方に持ち上げられることで、第2被案内部材51bは、前側係合部位52fから上方に離脱する。
【0067】
次に、座体51の前部が下方に回動されることで、第1被案内部材51aに時計回り方向の力が掛かる。第1被案内部材51aは、第1案内部材52dに沿って斜め前上方に移動する。第1被案内部材51aが斜め前上方に移動するのに伴って、第2被案内部材51bは第2案内部材52eに沿って斜め後上方に移動する。以下、上述とは反対の手順によって前側座席5Fは使用姿勢P1となる。使用姿勢P1において座体51の下部は第2部材52bの上面に当接する。これにより、使用姿勢P1において座体51の回動が停止する。
【0068】
〔別実施形態〕
本発明は、上述した実施形態に限られない。例えば、以下の別実施形態のように構成しても良い。以下に説明する別実施形態では実施形態と同じ構成には上述した実施形態と共通の番号、符号を付している。
【0069】
〔1〕上述の実施形態では、前側座席5Fは、使用姿勢P1と収納姿勢P2とに切り換え可能である。これに限らず、運転座席5Оが使用姿勢P1と収納姿勢P2とに切り換え可能であってもよい。また、後側座席5Rが使用姿勢P1と収納姿勢P2とに切り換え可能であってもよい。
【0070】
〔2〕上述の実施形態では、座体51は、第1被案内部材51a及び第2被案内部材51bを備え、脚部52は、第1案内部材52d及び第2案内部材52eを有する。これに限らず、座体51は、第1案内部材及び第2案内部材を備え、脚部52は、第1被案内部材及び第2被案内部材を有してもよい。この場合、第1案内部材及び第2案内部材は、座体フレーム51cの左右の横外側端部に形成されている。また、第1被案内部材及び第2被案内部材は、機体100の横内側に延びるピン状の部材である。
【0071】
〔3〕上述の実施形態では、座体51の前部が人為操作によって回動されることで、第1被案内部材51aが第1案内部材52d内を移動するように構成されている。また、第2被案内部材51bは第2案内部材52e内を移動するように構成されている。これに限らず、第1被案内部材51aが固定軸であり、座体51が第1被案内部材51aを中心に回動してもよい。この場合、脚部52は第1案内部材52dを備えていなくてもよい。また、座体51が第1被案内部材51aを中心に回動されるのに伴って、第2被案内部材51bが第2案内部材52e内を移動するように構成されてもよい。
【0072】
〔4〕上述の実施形態では、第1案内部材52dは、前上がり傾斜状に延びている。また、第2案内部材52eは、前下がり傾斜状に延びている。これに限らず、第1案内部材52dは、前下がり傾斜状に延びていてもよい。また、第2案内部材52eは、前上がり傾斜状に延びていてもよい。
【0073】
〔5〕上述の実施形態では、使用姿勢P1の前側座席5Fは、座体51の前部が上方に回動されることで収納姿勢P2となる。これに限らず、使用姿勢P1の前側座席5Fは、座体51の前部が下方に回動されることで収納姿勢P2となってもよい。この場合、収納姿勢P2において、座体51の上面は機体100の前方を向いている。
【0074】
〔6〕第2案内部材52eは、前側係合部位52fまたは後側係合部位52gのうち一方のみを有していてもよい。また、第2案内部材52eは、前側係合部位52f及び後側係合部位52gの両方を有していなくてもよい。
【0075】
〔7〕上述の実施形態では、使用姿勢P1の座体51の下端部に沿って延びる線V1と、収納姿勢P2の座体51の下端部に沿って延びる線V2と、でなす角θ2の角度は約100度である。これに限らず、側面視で角θ2の角度は、100度よりも大きくてもよい。また、角θ2の角度は、90度から100度の間の任意の角度であってもよい。
【0076】
〔8〕上述の実施形態では、作業車の一例として多目的車両が示されている。これに限らず、本発明は、例えば、コンバイン、トラクタ、田植機、水田直播機、トウモロコシ収穫機、ジャガイモ収穫機、ニンジン収穫機、サトウキビ収穫機、建設作業機等の作業車に適用可能である。
【0077】
〔9〕上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、作業車及び座席に適用できる。
【符号の説明】
【0079】
5F :前側座席(座席)
5R :後側座席(座席)
5О :運転座席(座席)
51 :座体
51a :第1被案内部材(被案内部材)
51b :第2被案内部材(被案内部材)
51d :第1端部
51e :第2端部
52 :脚部
52a :第1部材
52b :第2部材
52d :第1案内部材(案内部材)
52e :第2案内部材(案内部材)
52f :前側係合部位(係合部位)
53 :背部
L1 :距離
L2 :距離
P1 :使用姿勢
P2 :収納姿勢