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特開2025-156941定着装置、及び外ケーブルの架設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156941
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】定着装置、及び外ケーブルの架設方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20251007BHJP
   E01D 19/16 20060101ALI20251007BHJP
   E01D 19/10 20060101ALI20251007BHJP
   E01D 19/02 20060101ALI20251007BHJP
【FI】
E01D22/00 B
E01D19/16
E01D19/10
E01D19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059719
(22)【出願日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】390029012
【氏名又は名称】株式会社エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪倉 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊亮
(72)【発明者】
【氏名】松岡 勤
(72)【発明者】
【氏名】園田 賢英
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059DD27
2D059GG40
(57)【要約】
【課題】橋梁周辺のスペースに制約がある場合にも、橋梁の下部構造を外ケーブル方式による補強工法で補強する際の施工性を向上することである。
【解決手段】橋梁の下部構造にプレストレスを導入する外ケーブルの定着装置であって、前記下部構造のプレストレス導入方向の一端を囲うように配置されるフレームと、該フレームの両端に設けられる一対のケーブル定着部と、を備え、前記ケーブル定着部は、前記外ケーブルが定着される定着板、及び該定着板からフレーム内に連続する前記外ケーブルを緊張する作業空間を含み、前記定着板は、前記下部構造のプレストレス導入方向に沿う側面の範囲内に配置されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の下部構造にプレストレスを導入する外ケーブルの定着装置であって、
前記下部構造のプレストレス導入方向の一端を囲うように配置されるフレームと、
該フレームの両端に設けられる一対のケーブル定着部と、を備え、
前記ケーブル定着部は、前記外ケーブルが定着される定着板を含み、
前記定着板は、前記下部構造のプレストレス導入方向に沿う側面の範囲内に配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、
前記フレームが、複数に分割可能に形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1に記載の定着装置において、
前記定着板から前記フレーム内に連続する領域に、前記外ケーブルを緊張する作業空間が設けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1に記載の定着装置において、
前記フレームと一対のケーブル定着部の組み合わせが、前記下部構造の高さ方向に複数連続して設けられることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1に記載の定着装置を用いた外ケーブルの架設方法であって、
前記定着装置を、前記フレームで前記下部構造のプレストレス導入方向の一端を囲うように配置する工程と、
一対の前記外ケーブルをそれぞれ、前記下部構造のプレストレス導入方向に平行な一対の側面に沿って配置する工程と、
前記定着板から前記フレーム内に連続する領域に設けた作業空間を利用して前記外ケーブルを緊張し、該外ケーブルの一端を前記定着板に定着させるする工程と、
を含むことを特徴とする外ケーブルの架設方法。
【請求項6】
請求項5に記載の外ケーブルの架設方法において、
前記定着装置を対をなして、前記下部構造のプレストレス導入方向の両端に配置し、
一対の前記外ケーブル各々の両端を、対をなす前記定着装置各々に備えた前記定着板に定着させることを特徴とする外ケーブルの架設方法。
【請求項7】
請求項5に記載の外ケーブルの架設方法において、
前記下部構造が、橋脚の梁部であることを特徴とする外ケーブルの架設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の下部構造にプレストレスを導入するために用いる外ケーブルの定着装置、及び定着装置を利用した外ケーブルの架設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート造の橋桁や橋脚に外ケーブルを用いてプレストレスを導入する外ケーブル方式の橋梁補強工法が知られている。例えば、特許文献1では、ケーブル支持部を備えた一対の鋼製ブラケット(定着装置)を既設橋桁の下部に間隔を設けて設置したのち、外ケーブルの両端をケーブル支持部(定着部)各々に定着させて、既設橋桁を補強している。
【0003】
具体的には、略コの字形状の鋼製ブラケットを一対用意し、これらを既設橋桁の下部であって長手方向中間部に間隔を設けて配置する。鋼製ブラケットは、既設橋桁の下部を嵌め入れた状態で、既設橋桁に設けた貫通孔を挿通する締結材を利用して、既設橋桁に締め付け固定する。こののち、外ケーブルを緊張して、鋼製ブラケットの下端に設けたケーブル支持部にその両端を定着する。
【0004】
特許文献1の鋼製ブラケットは、橋桁だけでなく橋脚の梁部などの構造物を、補強対象として採用することも可能であるが、補強対象となる構造物に、鋼製ブラケットを設置するための貫通孔を設ける工程が発生する。このような貫通孔を設ける工程は、鉄筋の干渉に配慮する必要があるなど作業が煩雑であり、施工性に課題が生じる。
【0005】
また、一対の鋼製ブラケットは、補強対象となる構造物の長手方向中間部に設ける態様となるため、補強対象となる既設構造物において、一対の鋼製ブラケットに挟まれた区間には、外ケーブルの緊張によるプレストレスが導入される。しかし、プレストレスが導入された区間の両側には引張力が発生することから、場合によってはこの両側を補強する構造を、別途設ける必要が生じる。
【0006】
このため、例えば特許文献2では、外ケーブルを利用して既設橋脚の梁部の両端に新設の梁部を一体化させつつ補強するにあたって、外ケーブルの端部を定着する定着部を、新設の梁部の端部に設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2023-141428号公報
【特許文献2】特開2014-234687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
橋脚の梁部において、外ケーブルを定着する定着部を端部に設ける場合、外ケーブルを緊張させる作業に必要な作業スペースや、緊張した外ケーブルを定着部に定着させる定着具の配置スペースが必要となる。ところが、これらのスペースは、梁部の端部から大きくはみ出た位置、つまりは道路橋から外側へはみ出た位置に設けることとなる。
【0009】
このため、周辺構造物や建築限界が道路橋に近接しているなどの制約があると、上記のスペースを確保できない。また、これらのスペースを確保できる場合であっても、外ケーブルの端部を定着させる定着部は、道路橋から外側へはみ出た雨雪などに晒されやすい位置に露出された状態に置かれるため、耐久性に課題が生じる。
【0010】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、橋梁周辺のスペースに制約がある場合にも、外ケーブルを緊張して橋梁の下部構造にプレストレスを導入する作業の作業性と、緊張した外ケーブルを定着する定着具の耐久性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するため本発明の定着装置は、橋梁の下部構造にプレストレスを導入する外ケーブルの定着装置であって、前記下部構造のプレストレス導入方向の一端を囲うように配置されるフレームと、該フレームの両端に設けられる一対のケーブル定着部と、を備え、前記ケーブル定着部は、前記外ケーブルが定着される定着板を含み、前記定着板は、前記下部構造のプレストレス導入方向に沿う側面の範囲内に配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の定着装置は、前記フレームが、複数に分割可能に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の定着装置は、前記定着板から前記フレーム内に連続する領域に、前記外ケーブルを緊張する作業空間が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の定着装置は、前記フレームと一対のケーブル定着部の組み合わせが、前記下部構造の高さ方向に複数連続して設けられることを特徴とする。
【0015】
本発明の外ケーブルの架設方法は、本発明の定着装置を用いた外ケーブルの架設方法であって、前記定着装置を、前記フレームで前記下部構造のプレストレス導入方向の一端を囲うように配置する工程と、一対の前記外ケーブルをそれぞれ、前記下部構造のプレストレス導入方向に平行な一対の側面に沿って配置する工程と、前記定着板から前記フレーム内に連続する領域に設けた作業空間を利用して前記外ケーブルを緊張し、該外ケーブルの一端を前記定着板に定着させるする工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の外ケーブルの架設方法は、前記定着装置を対をなして、前記下部構造のプレストレス導入方向の両端に配置し、一対の前記外ケーブル各々の両端を、対をなす前記定着装置各々に備えた前記定着板に定着させることを特徴とする。
【0017】
本発明の外ケーブルの架設方法は、前記下部構造が、橋脚の梁部であることを特徴とする。
【0018】
本発明の定着装置及び外ケーブルの架設方法によれば、フレームを下部構造のプレストレス導入方向の一端を囲うように配置するから、フレームの両端各々に設けられるケーブル定着部は、下部構造の端部より内側のプレストレス導入方向に沿う側面に対向する位置に配置される。すると、ケーブル定着部に含まれる定着板も、プレストレス導入方向に沿う側面の範囲内に配置される。
【0019】
これにより、例えば下部構造として橋脚の梁部にプレストレスを導入する場合に、プレストレス導入方向に沿う側面の範囲内に配置される定着板を橋脚の柱部側に寄せて配置すれば、定着板からフレーム内に連続する範囲に、外ケーブルの緊張する作業空間を大きく確保することができる。
【0020】
したがって、周辺構造物や建築限界が道路橋に近接しているなどの制約があっても、定着装置を配置可能な環境であれば、定着板からフレーム内に連続する作業空間を利用して、外ケーブルの緊張作業を効率よく実施することが可能となる。
【0021】
また、作業空間は、外ケーブルの緊張作業が終了したのち、緊張した外ケーブルを定着する定着具の収納空間として利用できる。これにより、定着具を外的接触による損傷から保護できる。また、定着装置が、直接風雨に晒される屋外環境であっても、作業空間に収納される定着具は、その影響を最小限にとどめて劣化要因となりかねない雨水侵入などを抑制でき、耐久性の向上を図ることが可能となる。
【0022】
さらに、作業空間に収納される外ケーブルの定着具は、積雪地などにおいて、定着具上に堆雪が生じる事態を回避できる。これにより、定着具の下方に第三者が立ち入ることができる環境にある場合に対応が求められていた、落雪災害のリスクを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、下部構造のプレストレス導入方向の一端を囲うように配置するフレームの両端部に、定着板を備えるケーブル定着部を設けるから、橋梁周辺のスペースに制約がある場合にも、定着板からフレーム内に連続する範囲に確保した作業空間を利用して、外ケーブルを緊張して橋梁の下部構造にプレストレスを導入する作業の作業性と、緊張した外ケーブルを定着する定着具の耐久性を、向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施の形態における定着装置を利用して外ケーブル方式により橋脚を補強する様子を示す図である。
図2】本実施の形態における定着装置のケーブル定着部を示す図である。
図3】本実施の形態における定着装置の詳細(斜視)を示す図である。
図4】本実施の形態における定着装置の詳細(平面視)平面を示す図である。
図5】本実施の形態における定着装置を用いた外ケーブルの架設方法を示す図である。
図6】本実施の形態における外ケーブルを緊張する様子を示す図である。
図7】本実施の形態における定着装置の他の事例を示す図である(その1)。
図8】本実施の形態における定着装置の他の事例を示す図である(その2)。
図9】本実施の形態における定着装置の他の事例を示す図である(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、外ケーブルを用いて橋梁の下部構造にプレストレスを導入し下部構造の耐力を回復もしくは向上させる、外ケーブル方式による補強工法に好適な装置である。以下に、橋脚の梁部を補強する場合を事例に挙げ、図1図9を参照しつつ、定着装置及び外ケーブルの架設方法を説明する。
【0026】
定着装置及び外ケーブルの架設方法を説明するに先立ち、まずは、外ケーブル方式による補強工法について、概略を説明する。
【0027】
≪≪外ケーブル方式による補強工法≫≫
図1(a)及び(b)で示すように、道路橋60の橋脚61には、梁部611の橋軸直角方向両端部に定着装置10が対をなして配置されている。また、梁部611には、橋軸直角方向に平行な両側面それぞれに沿うようにして、一対の外ケーブル70が配置されている。外ケーブル70は、複数のPC鋼より線を束ねて被覆材で被覆した緊張材であり、両端部に定着具80が設けられている。
【0028】
定着具80は、図2で示すように、外ケーブル70の端部が挿入されるマンション81と、マンション81が貫通されるアンカープレート82と、マンション81に螺合するナット83を備える。さらに、ナット83と、このナット83から突出するマンション81を保護する保護キャップ84を備える。
【0029】
この外ケーブル70の両端に設けられている定着具80がそれぞれ、図1(a)で示すように、対をなす定着装置10に定着されている。これは、図1(b)で示すように、梁部611の両側面に沿って配置されている一対の外ケーブル70いずれも同様である。そして、これら外ケーブル70は緊張した状態にあるため、梁部611は、対をなす定着装置10に締め付けられて、橋軸直角方向のプレストレスが導入される。外ケーブル方式による補強工法で、上記のように用いられる定着装置10の構成は次のとおりである。
【0030】
≪≪定着装置≫≫
定着装置10は、図1(b)及び図3(b)で示すように、一対のケーブル定着部20と、ケーブル定着部20を連結するフレーム30と、上被覆材40及び下被覆材50とを備えている。
【0031】
≪上被覆材及び下被覆材≫
上被覆材40は、図3(a)及び(b)で示すように、後述するフレーム30の上部とケーブル定着部20の作業空間23の上部とを覆うように配置され、平面視で略コの字形状に成形されている。下被覆材50も上被覆材40と同様の形状であり、フレーム30の下部とケーブル定着部20の作業空間23の下部とを覆うように配置されている。
【0032】
≪フレーム≫
フレーム30は、図3(a)及び図4で示すように、上被覆材40で被覆した状態の平面視で、梁部611の端部を囲うことの可能な略コの字形状に形成され、梁部611の端部に沿う端部壁31と、梁部611の側面に沿う一対の内側壁32と、フレーム補強壁33と、により構成されている。
【0033】
一対の内側壁32はそれぞれ、表面の長手方向一部分が梁部611の側面と対向し、長手方向の他の部分は梁部611から橋軸直角方向に張り出す態様となっている。この内側壁32各々の長手方向中間部に、端部壁31が接続されている。
【0034】
端部壁31は、表面が梁部611の端部に対向し、裏面の中間部にフレーム補強壁33が、端部壁31と直交するようにして接続されている。フレーム補強壁33は、一対の内側壁32各々の、梁部611から張り出した長手方向の他の部分と並列に配置された状態となっている。そして、図3(b)及び図4で示すように、表面が梁部611の側面と対向する内側壁32の裏面に、ケーブル定着部20が設けられている。
【0035】
≪ケーブル定着部≫
ケーブル定着部20は、図3(b)で示すように、内側壁32の裏面に直交して接続された定着板21と、定着板21を補強する補強部22と、外ケーブル70の定着具80の収納空間を兼ね備えた作業空間23とを備えている。
【0036】
定着板21は、外ケーブル70が定着具80を介して定着される板材であり、図1(a)で示すように、梁部611の端部より柱部612側に寄せて設置されている。この定着板21には、図4で示すように、外ケーブル70に設けた定着具80のマンション81が貫通する貫通孔21aが形成されるとともに、表面に定着具80のアンカープレート82が設置されている。よって、定着板21の表面側に定着具80の作業空間23が形成され、裏面側に補強部22が配置されている。
【0037】
補強部22は、定着板21に定着具80を介して緊張した外ケーブル70を定着させた際に生じるおそれのある定着板21の変形を抑制する部材である。その構造はいずれでもよいが、本実施の形態では、図3(b)で示すように、支持壁221と、一対のリブプレート222と、閉塞壁223と、を備える場合を事例に挙げている。
【0038】
支持壁221は、図3(b)及び図4で示すように、外ケーブル70を挟んで内側壁32と平行に設けられており、一端が定着板21の裏面に接続されている。リブプレート222は、図2及び図3(b)で示すように、内側壁32と支持壁221との間で、外ケーブル70を挟んだ上下に対をなして設けられており、一端が支持壁221の裏面に接続され、他端側が閉塞壁223に接続されている。
【0039】
閉塞壁223は、定着板21と間隔を設けて平行に配置されており、一対のリブプレート222、内側壁32、及び支持壁221で囲まれた空間を閉塞するようにして、これらに四辺が接続されている。閉塞壁223には、定着板21と同様に、外ケーブル70に設けた定着具80のマンション81が貫通する貫通孔223aが形成されている。
【0040】
作業空間23は、図2及び図3(b)で示すように、上記の定着板21と、内側壁32と、上被覆材40及び下被覆材50とにより形成された、定着板21からフレーム30内に連続する範囲を利用した空間である。したがって、定着板21を内側壁32の裏面に直交して接続する際、その位置を梁部611の端部より柱部612側に寄せて設置するよう調整すると、作業空間23を外ケーブル70の緊張方向(プレストレスの導入方向)に広く確保できる。
【0041】
このような作業空間23は、外ケーブル70を緊張させる際の作業空間として、また、外ケーブル70の定着具80を収納する空間として機能する。作業空間23を使用する方法は、後述する外ケーブル70の架設方法で説明する。
【0042】
≪≪外ケーブルの架設方法≫≫
上記の定着装置10を利用して外ケーブル70を架設する手順の事例を、図5を参照しつつ、以下に説明する。
【0043】
≪準備工程≫
例えば、定着装置10には、図3(b)及び図4で示すように、適所に吊り金具101を設けておく。また、橋脚61の梁部611に仮固定するため、例えばアングル部材などの仮固定部材102を設けておく。
【0044】
≪定着装置及び外ケーブルの配置工程≫
図5(a)及び(b)で示すように、一対の定着装置10をそれぞれ吊り金具101を利用して吊り下ろし、橋脚61の梁部611の端部を囲うようにして、所定の高さ位置に配置する。
【0045】
次に、図2及び図5(b)で示すように、仮固定部材102を利用して、定着装置10と梁部611の端部をボルト結合により仮固定する。こののち、図5(c)で示すように、外ケーブル70を梁部611の側面に沿って配置し、梁部611を挟んで対をなす定着装置10に架け渡す。
【0046】
そして、図5(c)及び図6で示すように、外ケーブル70の端部に定着具80を取り付け、この定着具80をケーブル定着部20の作業空間23に位置させる。また、作業空間23に牽引装置90を準備する。必要に応じて、定着装置10のフレーム30と橋脚61の梁部611との間に無収縮モルタルなどの間詰め材103を充填する。
【0047】
≪緊張工程≫
こののち、牽引装置90を利用して外ケーブル70を緊張し、緊張した状態の外ケーブル70を定着具80を介して定着板21に定着する。
【0048】
外ケーブル70の緊張作業は、例えば、図6で示すように作業空間23において、外ケーブル70のマンション81にテンションバー91を連結し、このテンションバー91をラムチェア92に固定したセンターホールジャッキ93に貫通させる。こののち、テンションバー91をけん引することにより外ケーブル70を緊張する。
【0049】
外ケーブル70を所定量緊張したのち、ナット83を定着板21に設けたアンカープレート82に当接するようにして締め付ける。こうして、外ケーブル70は、定着具80を介して定着板21に定着される。前述したように、アンカープレート82が設置されている定着板21は、その裏面に補強部22が設けられているから、変形などを生じることはない。
【0050】
上記のとおり、外ケーブル70を緊張する作業は、牽引装置90を設置するスペースなどが必要となるが、定着装置10では、定着板21からフレーム30内に連続する範囲を利用した作業空間23が確保されている。したがって、周辺構造物や建築限界が近接するなどスペースに制約がある場合にも、フレーム30を構築できる環境であれば、作業空間23を確保でき、緊張作業を効率よく実施することが可能となる。
【0051】
≪保護キャップ装着工程≫
こうして、緊張作業を終了したのちに牽引装置90を撤去し、図2で示すように、保護キャップ84を装着し、作業を終了する。
【0052】
上記のとおり、定着装置10を用いると、保護キャップ84を含む外ケーブル70の定着具80を、外ケーブル70の緊張作業に利用した作業空間23にコンパクトに収納でき、景観に配慮した構造とすることができる。
【0053】
また、定着具を外的接触による損傷から保護できる。さらには、定着装置10が、直接風雨に晒される屋外環境であっても、作業空間23に収納される定着具80は、その影響を最小限にとどめて劣化要因となりかねない雨水侵入などを抑制でき、耐久性の向上を図ることが可能となる。
【0054】
さらに、作業空間23に収納される外ケーブル70の定着具80は、積雪地などにおいて、定着具80上に堆雪が生じる事態を回避できる。これにより、定着具80の下方に第三者が立ち入ることができる環境にある場合に対応が求められていた、落雪災害のリスクを低減することが可能となる。
【0055】
本発明の定着装置10、及び外ケーブル70の架設方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0056】
例えば、本実施の形態では、図3(b)で示すように、フレーム30及び作業空間23の側面を解放状態としているが、これに限定するものではない。図7で示すように、上被覆材40と下被覆材50の間に外側板110を設けて、フレーム30及び作業空間23の全体を被覆する構成としてもよい。こうすると、定着具80をより確実に保護することができる。
【0057】
このような外側板110は、あらかじめ設置しておき、作業空間23を被覆する部分を開閉式などにしてもよいし、外側板110を別部材として製作し、外ケーブル70を架設したのちに、現場で外側板110を設置する構造などにしてもよい。また、外側板110は、フレーム30及び作業空間23のいずれか一方のみを、被覆するように設置する構成としてもよい。
【0058】
さらに、本実施の形態では、図3(b)及び図4で示すように、定着板21の補強部22を略長方体形状に形成したが、定着板21を補強できればその形状はいずれでもよい。例えば、図8で示すように、リブプレート222を台形に形成し、補強部22を平面視台形形状の函体に形成するなどしてもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、定着装置10を平面視で略コの字形状に形成したが、これに限定するものではない。梁部611の橋軸直角方向の端部近傍に沿って、これを囲うように設置できれば、平面視形状はいずれでもよい。例えば、図9(a)では、梁部611の端部が平面視で半円形状となっている。このため、定着装置10のフレーム30を略C形状に形成し、その両端にケーブル定着部20を梁部611の側面に沿うように設けている。これに伴い、上被覆材40も平面視で略C形状に形成している。下被覆材50も同様である。
【0060】
加えて、定着装置10は、一体構造としてもよいし分割可能な構造としてもよい。例えば、図9(a)では、フレーム30の中央で半割となるように形成している。また、上被覆材40は、複数の被覆材本体41を連結した場合を例示している。このように、定着装置10を分割可能な構造とすれば、製造工場で定着装置10を製造したのち、分割した状態で工事車両に積載して施工現場に搬送し、施工現場で例えば、ボルト接合や溶接など任意の接続手段を採用して、組み立てることができる。
【0061】
また、定着装置10は、高さを大きく確保し、図9(b)で示すように、高さ方向に並列配置した2本の外ケーブル70を定着可能に構成してもよい。もしくは、定着装置10そのものを高さ方向に2段積み上げて、高さ方向に並列配置した2本の外ケーブル70を定着可能に構成してもよい。なお、高さ方向に並列配置する外ケーブルの本数は、2本以上であってもよく、定着装置10はその本数に対応可能な高さに製作する、もしくは対応する数だけ積層すればよい。
【0062】
さらに、定着装置10は、鋼製やコンクリート造などいずれの材料で製作してもよい。コンクリート造とした場合には、外ケーブル70を架設したのち、作業空間23に充填材を充填して外ケーブル70の定着具80を埋設してもよい。こうすると、屋外環境においても定着具80を確実に保護できるため、より耐久性を向上できる。
【0063】
そして、本実施の形態では、図1(a)で示すように、橋脚61の梁部611を挟んで定着装置10を対をなして配置し、外ケーブル70の両端をそれぞれ定着させた。しかし、外ケーブル70の一端のみに定着装置10に定着させ、他端は他の手段で定着させてもよい。
【0064】
また、本実施の形態では、図1(a)で示すように、外ケーブル70を一方向に延在するよう架設したが、これに限定するものではない。梁部611の任意の位置に、いわゆる偏向具を備える偏向装置を増設し、外ケーブル70の中間部を偏向させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 定着装置
101 吊り金具
102 仮固定部材
103 間詰め材
110 外側板(被覆部材)
20 ケーブル定着部
21 定着板
21a 貫通孔
22 補強部
221 支持壁
222 リブプレート
223 閉塞壁
223a 貫通孔
23 作業空間
30 フレーム
31 端部壁
32 内側壁
33 フレーム補強壁
40 上被覆材
41 被覆材本体
50 下被覆材
60 道路橋
61 橋脚(下部構造)
611 梁部
612 柱部
62 床版
70 外ケーブル
80 定着具
81 マンション
82 アンカープレート
83 ナット
84 保護キャップ
90 牽引装置
91 テンションバー
92 ラムチェア
93 センターホールジャッキ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9