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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156984
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/16 20060101AFI20251007BHJP
   B63B 11/04 20060101ALI20251007BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20251007BHJP
【FI】
B63B25/16 A
B63B25/16 D
B63B11/04 B
B63H21/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059780
(22)【出願日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】久間 康充
(72)【発明者】
【氏名】栗林 周平
(72)【発明者】
【氏名】田平 誠
(57)【要約】
【課題】貨物スペースの減少、船体の大型化及び復原性の悪化をそれぞれ抑える。
【解決手段】本開示に係る船舶は、船体と、船体に設けられて燃料を消費する燃料消費機器と、燃料消費機器に供給される燃料が貯留される燃料タンクと、を備え、燃料タンクは、燃料が貯留される燃料収容空間を区画する燃料タンク本体と、燃料タンク本体の上部に設けられて、燃料消費機器への燃料供給系統が接続される第一タンクコネクションスペースと、燃料タンク本体の上部における第一タンクコネクションスペースよりも船首側に設けられて、安全弁が設けられた第二タンクコネクションスペースと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体に設けられて燃料を消費する燃料消費機器と、
前記燃料消費機器に供給される燃料が貯留される燃料タンクと、を備え、
前記燃料タンクは、
前記燃料が貯留される燃料収容空間を区画する燃料タンク本体と、
前記燃料タンク本体の上部に設けられて、前記燃料消費機器への燃料供給系統が接続される第一タンクコネクションスペースと、
前記燃料タンク本体の上部における前記第一タンクコネクションスペースよりも船首側に設けられて、安全弁が設けられた第二タンクコネクションスペースと、
を備える船舶。
【請求項2】
前記第一タンクコネクションスペースは、前記燃料タンクの船首尾方向の中央位置よりも船尾に近い側に配置され、
前記第二タンクコネクションスペースは、前記燃料タンクの船首尾方向の中央位置よりも船首に近い側に配置されている
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記船体は、
船首尾方向に延びる一対の船側外板と、
上下方向に離れて配置され一対の前記船側外板を船幅方向に接続する船底外板及び上甲板と、
前記上甲板よりも下方に位置して車両が乗降可能な乗込み甲板と、
前記乗込み甲板と前記船底外板との間における船首尾方向の中央位置よりも船尾に近い位置に設けられ、前記燃料消費機器を収容する機関室と、
前記機関室の船首側に隣接して設けられ、前記燃料供給系統から導入された前記燃料を調整して前記燃料消費機器に送り込む燃料調整機器を収容する燃料調整室と、
前記乗込み甲板よりも下方で且つ、前記機関室よりも船首側に設けられ、前記燃料タンクを収容するタンク室と、を備える
請求項1に記載の船舶。
【請求項4】
前記燃料タンクは、IMOタンクタイプA又はIMOタンクタイプBの独立型方形タンクである
請求項1に記載の船舶。
【請求項5】
前記タンク室の天井と前記燃料タンクとの間に、船首尾方向に間隔をあけて複数設けられて前記燃料タンクを支持する燃料タンク支持部材を備え、
前記第一タンクコネクションスペースと、前記第二タンクコネクションスペースとは、船首尾方向に隣り合って配置された前記燃料タンク支持部材の間のスペースに設けられている
請求項3に記載の船舶。
【請求項6】
前記燃料タンクは、船首尾方向に複数並んで配置されている
請求項1に記載の船舶。
【請求項7】
前記燃料は、液化アンモニア又は液化石油ガスである
請求項1に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船が開示されている。この特許文献1の液化ガス燃料船は、液化ガスタンクとして円筒タンクを用いており、円筒タンクの長手方向と船首尾方向とを一致させた状態で乾舷甲板よりも下方の船体内に円筒タンクを配置させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-069934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されている円筒タンク等の燃料タンクには、燃料タンクへの配管接続部、燃料用の弁装置、安全弁、ポンプ及び計装機器等を収容するタンクコネクションスペースが設けられている。このタンクコネクションスペースは、船体内に燃料タンクを設置する場合、燃料タンクの上方に設置される場合が多い。
【0005】
また、一般的な船舶では、船首よりも船尾の喫水が深くなる船尾トリムの場合が多い。この場合、特許文献1のように、燃料タンクの長手方向を船首尾方向と一致させると、燃料タンクの船尾側が下がり、燃料タンク内の気相が船首側に位置する状態となる。その一方で、燃料タンクの安全弁は、燃料タンク内の液に浸からないように配置することがルールで規定されている。そのため、気相が形成される船首側にタンクコネクションスペースを配置することが考えられる。しかし、主機等の燃料消費機器を格納した機関室が船尾に近い位置に配置される場合が多いため、タンクコネクションスペースから燃料調整室を経由して船尾側の機関室に至る燃料供給系統が長くなり、重量やコストの増加を招いてしまう。
【0006】
そのため、船尾トリムの場合に、タンクコネクションスペースをできるだけ船尾側に配置しつつ液に浸からないよう安全弁を配置するために、タンクトップ等の凸部を燃料タンクに設けることで上方に向かって突出する空間を形成し、当該空間に安全弁を設置する場合がある。しかしながら、燃料タンクの燃料を貯留する部分の大きさを一定とした場合、凸部を形成する分だけ燃料タンクの高さが増加してしまい、タンク室上方の貨物スペース等を削減したり、貨物スペース等を維持する場合には船体を大型化したりする必要がある。
また、燃料タンクの高さを増加させずに維持したい場合には、凸部を形成する分だけ、燃料を貯留する部分を低く形成する必要が生じ、燃料の貯留量が減少してしまう。そのため、船舶の航続距離を確保しようとすると、暴露甲板等のより上層のスペースに燃料タンクを追加する必要が生じ、船体の重心が上がり復原性が悪化するという課題がある。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、貨物スペースの減少、船体の大型化及び復原性の悪化をそれぞれ抑えることが可能な船舶を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
本開示の一態様によれば、船舶は、船体と、前記船体に設けられて燃料を消費する燃料消費機器と、前記燃料消費機器に供給される燃料が貯留される燃料タンクと、を備え、前記燃料タンクは、前記燃料が貯留される燃料収容空間を区画する燃料タンク本体と、前記燃料タンク本体の上部に設けられて、前記燃料消費機器への燃料供給系統が接続される第一タンクコネクションスペースと、前記燃料タンク本体の上部における前記第一タンクコネクションスペースよりも船首側に設けられて、安全弁が設けられた第二タンクコネクションスペースと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る船舶によれば、貨物スペースの減少、船体の大型化及び復原性の悪化をそれぞれ抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態における船舶の概略構成を示す船体中心線を含む垂直断面図である。
図2】本開示の実施形態における船舶の水線に沿う水平断面図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5】本開示の実施形態における図1の燃料タンクの拡大図である。
図6】本開示の実施形態における船尾トリム時の燃料タンクの図5に相当する拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本開示の実施形態に係る船舶を図面に基づき説明する。本実施形態では、船舶がPCTC(Pure Car and Truck Carrier)である場合を一例にして説明する。
<実施形態>
図1は、本開示の実施形態における船舶の概略構成を示す船体中心線を含む垂直断面図である。図2は、本開示の実施形態における船舶の水線に沿う水平断面図である。図3は、図1のIII-III線に沿う断面図である。図4は、図1のIV-IV線に沿う断面図である。
【0012】
図1から図3に示すように、実施形態における船舶100は、船体2と、燃料タンク50と、を少なくとも備えている。
<船体>
船体2は、船側外板4A,4Bと、船底外板5Aと、ショアランプ12と、複数の甲板10と、機関室20と、上部構造3と、船首側ディープタンク30と、タンク室40と、燃料調整室45と、を少なくとも有している。
<外板>
船側外板4A,4Bは、左舷及び右舷の船側部4をそれぞれ構成している。船底外板5Aは、船側外板4A,4Bを接続する船底部5を構成している。船体2の内部には、複数の甲板10が上下に間隔をあけて設けられている。本実施形態の船底部5は、二重底となっており、船底外板5Aの上方に間隔をあけて内底板5Bを備えている。
【0013】
<ショアランプ>
ショアランプ12は、船側部4等に開閉可能に設けられ、車両等の貨物を自走により搬入・搬出させるための走行路を形成する。本実施形態の船体2は、ショアランプ12として船尾2Aに設けられた船尾ランプ12Aと、船首尾方向FAの中間部に設けられたセンターランプ12Bとを備えている場合を例示している。ショアランプ12は、階層状に形成された船体2の甲板10のうち、中間層に配置された甲板10である乗込み甲板10Aに繋がっている。本実施形態では、乗込み甲板10Aが水密構造の隔壁甲板且つ乾舷甲板となっている。
【0014】
ショアランプ12を倒して展開させると、岸壁からショアランプ12を通じて乗用車やトラック等の車両(図示せず)が自走して乗込み甲板10Aに乗り込んだり、乗込み甲板10Aから岸壁に降りたりすることが可能となる。なお、ショアランプ12として船尾ランプ12Aとセンターランプ12Bを備える場合を一例にして説明したが、この構成に限られるものではない。船体2に設けられるショアランプ12としては、例えば、船首2Fに設けられた船首ランプであってもよい。
【0015】
ショアランプ12を通じて乗船した車両(図示せず)は、例えば、上下に隣り合う甲板10同士を繋ぐ傾斜路であるランプウェイ13を介して、それぞれ所定の階層の甲板10上の所定の搭載位置まで自走して停車する。そして、停車した車両は固縛される。隔壁甲板である乗込み甲板10Aよりも下方へ繋がるランプウェイ13は、例えば不使用時に乗込み甲板10Aの開口を閉塞して水密にすることが可能な、昇降式のランプウェイもしくは、水密扉(カバーを含む)のランプウェイとなっている。
【0016】
<機関室>
機関室20は、船体2内に設けられている。具体的には、機関室20は、乗込み甲板10Aの下方に設けられている。本実施形態の機関室20は、船体2の船首尾方向FAの中央位置C1よりも船尾2Aに近い位置に区画されている。さらに、本実施形態の機関室20は、乗込み甲板10Aの下方で且つ船体2の最下層に区画されている。機関室20は、主機9を収容している。
【0017】
本実施形態の機関室20は、乗込み甲板10A、船底部5、船側部4、機関室隔壁21によって区画されている。機関室隔壁21は、機関室20を船首尾方向FAに区画する。機関室隔壁21は、いわゆる左右の船側部4にわたって形成された横置隔壁であり、少なくとも機関室20の船首2Fに近い側に位置する船首側機関室隔壁22を含んでいる。ここで、船首側機関室隔壁22は、機関室20を船首尾方向FAに区画する機関室隔壁のうちの最も船首2Fに近い位置に設けられた機関室隔壁21である。
【0018】
<主機>
主機9は、少なくとも液化ガスを燃料として駆動可能となっている。つまり、船舶100における主機9は、燃料を消費する燃料消費機器である。主機9の燃料となる液化ガスは、LPG(Liquefied Petroleum Gas;液化石油ガス)、アンモニア(NH)等を例示できる。本実施形態の主機9は、船尾2Aの下方に位置するスクリュー6を回転駆動することで船体2の推進力を発生させる。スクリュー6の後方には、舵7が設けられており、この舵7により船体2の進行方向が制御される。なお、主機9によりスクリュー6を回転駆動する場合について説明したが、この構成に限られない。例えば、主機9の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して電動機(図示せず)によりスクリュー6を回転駆動する構成であってもよい。
【0019】
<上甲板及び上部構造>
複数層の甲板10のうち、最も上層に配置された甲板10が上甲板10Bをなしている。本実施形態の上甲板10Bは、暴露甲板であり全通甲板でもある。上部構造3は、上甲板10Bの上に形成されている。上部構造3は、船橋3Aと居住区3Bとを備えている。
【0020】
<船首側ディープタンク>
船首側ディープタンク30は、船体2の船首尾方向FAの中央位置C1よりも船首2Fに近い側における船幅方向Dwの船体中心線C2(図3参照)上に設けられている。船首側ディープタンク30は、乗込み甲板10Aと船底部5との間に設けられたいわゆるディープタンク(図示せず)のうち、船首2Fに近い側の船体中心線と重なる位置に配置されたディープタンクである。船首側ディープタンク30には、バラスト水等の液体を貯留可能となっている。本実施形態の船首側ディープタンク30は、船首隔壁24よりも船尾2Aに近い側であり且つ、バウスラスタ25の船尾2A側に隣接するように設けられている。
【0021】
本実施形態の船体2は、乗込み甲板10Aの一つ下層に甲板10である車両甲板10Cを備えている。船首側ディープタンク30は、上下方向Dvにおける乗込み甲板10Aの一つ下層の車両甲板10Cと船底部5とに渡って形成されている。なお、車両甲板10Cと乗込み甲板10Aとの間には、ランプウェイ(図示せず)が設けられており、車両が自走により乗込み甲板10Aから車両甲板10Cに移動することが可能となっている。
【0022】
船首側ディープタンク30は、船首尾方向FAに区画する複数のタンク隔壁31を有している。これらタンク隔壁31のうち最も船尾2Aに近い側に、船首側ディープタンク30の外殻を形成する船尾側ディープタンク隔壁32を有している。船尾側ディープタンク隔壁32は、船幅方向Dwに延びる隔壁であり、船首側ディープタンク30と、その船尾2A側の空間とを区画している。言い換えれば、船尾側ディープタンク隔壁32は、船首側ディープタンク30を船首尾方向FAに区画するタンク隔壁のうちの最も船尾2Aに近い側のタンク隔壁である。なお、本実施形態では船首側ディープタンク30内が船首尾方向FAに複数に区切られている場合を示しているが、複数に区切られているものに限られない。
【0023】
<燃料調整室>
燃料調整室45は、液化アンモニア又は液化石油ガスを調整して主機9等の燃料消費機器に送り込む燃料調整機器(図示せず)を収容する。燃料調整室45に収容される燃料調整機器(図示せず)としては、圧縮機、気化器等を例示できる。この実施形態の燃料調整室45は、機関室20に対して船首2F側に隣接するとともにタンク室40に対して船尾2A側に隣接して設けられる。言い換えれば、燃料調整室45は、船首尾方向FAで機関室20及びタンク室40に挟まれるように配置されている。この実施形態で例示する燃料調整室45は、船側外板4Aから船側外板4Bに至るように形成されている。燃料調整室45の床は、内底板5Bにより構成されており、燃料調整室45の天井は、乗込み甲板10Aの一つ下層に設けられた車両甲板10Cにより構成されている。
【0024】
燃料調整室45は、燃調室隔壁46により船首尾方向FAに区画されている。燃料調整室45を船首尾方向FAに区画する燃調室隔壁46のうち、最も船尾2A側に配置された燃調室隔壁46は、機関室20を区画する船首側機関室隔壁22を兼ねている。さらに、燃調室隔壁46のうち最も船首2F側に配置された燃調室隔壁46である船首側燃調室隔壁47によって燃料調整室45とタンク室40とが船首尾方向FAに区画されている。この実施形態の燃料調整室45は、船首尾方向FAの長さよりも船幅方向Dwの長さの方が大きく形成されている。
【0025】
<タンク室>
タンク室40は、燃料タンク50を収容する水密区画である。タンク室40を区画する壁には、全て又は一部に低温鋼が用いられており、IMO(International Maritime Organization)により定められたIGCコード(International Code for the Construction and Equipment of Ships Carrying Liquefied Gases in Bulk)の独立タンクタイプA又はタイプBを収容する際の二次防壁として機能している。実施形態のタンク室40は、燃料調整室45の船首側燃調室隔壁47から、船尾側ディープタンク隔壁32に至る範囲内に設けられている。タンク室40は、船側外板4A、及び船側外板4Bから船幅方向Dwの内側に離れて配置された一対の縦通隔壁41A,41Bにより船幅方向Dwに区画されている。これら縦通隔壁41A,41Bの一端は、船首側燃調室隔壁47に接続され、縦通隔壁41A,41Bの他端は、船尾側ディープタンク隔壁32に接続されている。この実施形態のタンク室40の床は、内底板5Bにより構成されており、タンク室40の天井は、乗込み甲板10Aの一つ下層に設けられた車両甲板10Cにより構成されている。このようにして、タンク室40は、燃料調整室45の船首2F側に隣接して設けられている。
【0026】
上述したように、タンク室40は、上下方向Dvに対向する車両甲板10C及び内底板5Bと、船幅方向Dwに対向する縦通隔壁41A,41Bにより区画されているため、船幅方向Dwの船体中心線C2と交差する垂直断面の輪郭形状が、実質的に矩形をなす。より具体的には、この実施形態のタンク室40の船体中心線C2と交差する垂直断面の輪郭形状は、上下方向Dvよりも船幅方向Dwに長い矩形状をなしている。ここで、実質的に矩形状とは、厳密な矩形状に加えて、本実施形態で示すタンク室40のように、上記垂直断面における輪郭形状における矩形の四つの角部のうち、船底部5に近い側の二つの角部が斜めに面取りされた形状も含んでいる。これら面取りは、船型等に応じて適宜設ければよく省略してもよい。
【0027】
この実施形態におけるタンク室40内は、船首尾方向FAに所定の間隔で室内壁42(例えば、二つ)が設けられて複数(例えば、三つ)のタンク室内区画40A~40Cに区切られている。これら室内壁42は、タンク室40の天井を構成する車両甲板10Cを下方から支持するために設けられているため水密隔壁でなくてもよい。なお、この実施形態では二つの室内壁42が設けられて三つのタンク室内区画40A~40Cが形成されている場合を例示しているが、室内壁42の数、及びタンク室内区画の数は、船体2の規模や形に応じて適宜設けることができる。また、タンク室40の船幅方向Dwの外側、すなわち縦通隔壁41Aと船側外板4Aとの間、及び縦通隔壁41Bと船側外板4Bとの間には、ボイドスペースやディープタンク等(何れも図示せず)が設けられていてもよい。
【0028】
タンク室内区画40A~40Cのうち、最も船首2Fに近い位置に配置されたタンク室内区画40Cは、船首2Fに向かって船体2が痩せて船幅が減少するのに伴って、船首2Fに近づくにつれて船幅方向Dwの長さが漸次減少するように形成されている。言い換えれば、船首2Fに近づくにつれてタンク室内区画40Cを形成する縦通隔壁41A,41Bが、それぞれ船体中心線C2に近づくように形成されている。本実施形態では、縦通隔壁41A,41Bが船体中心線C2を基準にして左右対称に形成されている。
【0029】
<燃料タンク>
燃料タンク50は、燃料としての液化アンモニア又は液化石油ガスを貯留可能とされている。燃料タンク50は、上述したタンク室40に収容されている。つまり、燃料タンク50は、船体2における乗込み甲板10Aより下方、且つ船底外板5Aよりも上方に設けられ、船首尾方向FAに延びている。燃料タンク50は、IMOにより定められたIGCコードの独立タンクタイプA又はタイプBである。
【0030】
図1図3図4に示すように、燃料タンク50は、燃料タンク本体50aと、第一タンクコネクションスペース60と、第二タンクコネクションスペース61とを備えている。
<燃料タンク本体>
図1から図4に示すように、燃料タンク本体50aは、燃料を収容する燃料収容空間を形成している。燃料タンク本体50aは、船体中心線C2と交差する垂直断面の輪郭形状が実質的に矩形状をなした独立タンクを形成している。燃料タンク本体50aは、船幅方向Dwに対向する左側板51および右側板52と、上下方向Dvに対向して左側板51と右側板52とを船幅方向Dwに接続する天板53及び底板54と、を有している。さらに、燃料タンク本体50aは、船首尾方向FAに対向する平板状の前板55及び後板56を有している。燃料タンク50は、いわゆる方形タンクである。
【0031】
ここで、燃料タンク本体50aにおける「実質的に矩形状」とは、タンク室40の場合と同様に、厳密な矩形状に加えて、上記垂直断面における輪郭形状における矩形の四つの角部のうち、船底部5に近い側の二つの角部が斜めに面取りされた形状も含んでいる。燃料タンク本体50aの下半部は、タンク室40の下半部に沿うように形成されており、本実施形態で示す燃料タンク本体50aは、上記タンク室40と同様に面取りされている場合を例示している。これら燃料タンク本体50aの面取りされた形状は、タンク室40が面取りされている場合に設ければよく、タンク室40が面取りされていない場合には省略してもよい。また、上記「実質的に矩形状」は、船底部5に近い側の二つの角部が面取りされた形状に限られず、乗込み甲板10Aに近い側の二つの角部が面取りされた形状であってもよい。なお、面取りは平面に限られず、例えば、球面や曲面であってもよい。
【0032】
燃料タンク本体50aは、タンク室40と同様に、平面視で船幅方向Dwの船体中心線を基準にして左右対称に形成されている。燃料タンク本体50aの左側板51と縦通隔壁41Aとの間、右側板52と縦通隔壁41Bとの間、及び、底板54と船底部5の内底板5Bとの間には、それぞれ作業者が点検を行うためのスペース(例えば、1m程度)が設けられている。
【0033】
本実施形態の燃料タンク50は、タンク室40のタンク室内区画40A~40Cに一つずつ収容されている。すなわち、複数の燃料タンク50が船首尾方向FAに並んで配置されている。タンク室内区画40Cに収容された燃料タンク50A、言い換えれば、複数の燃料タンク50のうち、最も船首2Fに近い位置に配置された燃料タンク50Aは、幅減少部58を有している。
【0034】
図2に示すように、幅減少部58は、燃料タンク50Aのうち船首2Fに近い側の部分に形成され、船首2Fに近づくにつれて少なくとも船幅方向Dwの大きさが漸次減少する。本実施形態の幅減少部58は、船首2Fに向かって先細りするタンク室内区画40Cに対応した形状をなしている。言い換えれば、幅減少部58を形成する左側板51と右側板52とが、上述したタンク室内区画40Cを形成する船首2Fに近い側の縦通隔壁41A,41Bに沿って形成されている。なお、タンク室内区画40Cにおいても、左側板51と縦通隔壁41Aとの間、右側板52と縦通隔壁41Bとの間、及び、底板54と内底板5Bとの間には、それぞれ作業者が点検を行うためのスペース(例えば、1m程度)が設けられている。
【0035】
図2に示すように、燃料タンク本体50aの左側板51は、左舷の船側外板4Aから船幅Bの1/5以上離れて配置されている。同様に、燃料タンク本体50aの右側板52は、右舷の船側外板4Bから船幅Bの1/5以上離れて配置されている。幅減少部58における船側外板4A,4Bも同様に、船幅Bの1/5以上離れて配置されている。ここで、船幅Bの1/5とは、IGFコードにより規定された、外的要因によるダメージから燃料タンクを保護するためのいわゆる保護距離である。そして、船幅Bは、船体2の最大型幅である。
【0036】
図5は、本開示の実施形態における図1の燃料タンクの拡大図である。
<タンク内大骨>
図5に示すように、本実施形態の燃料タンク本体50aには、その内面から燃料タンク本体50aの内側に突出するタンク内大骨64が設けられている。本実施形態のタンク内大骨64は、燃料タンク本体50aを区画する左側板51、右側板52、天板53、及び底板54の各内面に渡って連続して環状に延びている。左側板51及び右側板52の内面に形成されるタンク内大骨64は、上下方向Dvに延びており、天板53及び底板54の内面に形成されるタンク内大骨64は、船幅方向Dwに延びている。タンク内大骨64は、例えば、船首尾方向FAに間隔をあけて複数設けられている。本実施形態における複数のタンク内大骨64は、船首尾方向FAに等間隔に配置されるとともに互いに平行に配置されている。なお、タンク内大骨64は、船首尾方向FAに等間隔で配置されるものに限られない。例えば、タンク内大骨64は、船首尾方向FAに僅かに等間隔とはならない略等間隔に配置されていてもよい(以下、燃料タンク支持部材66、アンカー68も同様)。
【0037】
<仕切り壁>
図2に示すように、本実施形態の燃料タンク本体50aは、その内部に船幅方向Dwの船体中心線に沿って形成されて燃料タンク本体50a内の空間を左右に仕切る仕切り板57を有している。仕切り板57は、例えば、燃料タンク本体50a内の左右の空間を連通可能に形成されていてもよい。
<ベアリングシート>
図5に示すように、船底部5の内底板5B上には、燃料タンク本体50aを下方から支持する複数のベアリングシート65が船首尾方向FA及び船幅方向Dwに間隔をあけて設けられている。これらベアリングシート65により燃料タンクの底板54と船底部5の内底板5Bとの間のスペースが確保されている。
【0038】
<燃料タンク支持部材>
タンク室40の天井すなわち車両甲板10Cと燃料タンク本体50aの天板53との間には、燃料タンク支持部材66が設けられている。燃料タンク支持部材66は、船首尾方向FAに間隔をあけて複数設けられている。この実施形態の燃料タンク支持部材66は、後述する第一タンクコネクションスペース60及び第二タンクコネクションスペース61が設けられる位置を除いて、船首尾方向FAに等間隔で配置されている。燃料タンク支持部材66は、アンカー68と、位置決め部材69と、を備えている。
【0039】
<アンカー、主要支持部材、位置決め部材>
アンカー68は、燃料タンク本体50aの天板53の上面から上方に突出するように設けられている。アンカー68は、船幅方向Dwから見て、上記のタンク内大骨64と同一の船首尾方向FAの位置に配置されている。ここで、タンク室40の天井を構成する車両甲板10Cの下面には、船首尾方向FAに間隔をあけて複数の主要支持部材70が設けられている。これら複数の主要支持部材70は、車両甲板10Cを補強するための部材であり、車両甲板10Cの下面から下方に向かって突出するとともに、船幅方向Dwに延びている。これら主要支持部材70のうち、上下方向Dvでアンカー68と対向する位置に配置された主要支持部材70の下部には、位置決め部材69が一体に形成されている。位置決め部材69は、下方に向かって開口する凹部を備えており、この凹部内にアンカー68を収容することで、アンカーの上方への変位、及び船首尾方向FAへの変位、及び、船幅方向Dwへの変位をそれぞれ規制する。なお、アンカー68と位置決め部材69の形状は一例であって、この実施形態の形状に限られるものではない。
【0040】
<第一タンクコネクションスペース>
第一タンクコネクションスペース60は、燃料タンク本体50aに取り付けられている。第一タンクコネクションスペース60は、箱状に形成されて、燃料タンク本体50aに接続される配管の接続部(図示せず)及び、この接続部と燃料タンク本体50aとの間に設けられた弁装置等を収容している。ここで、本実施形態の第一タンクコネクションスペース60は、平面視で船首尾方向FAよりも船幅方向Dwに長い矩形をなしている。さらに、第一タンクコネクションスペース60の上下方向Dvの長さ(言い換えれば、高さ)は、第一タンクコネクションスペース60の船首尾方向FAの長さ及び船幅方向Dwの長さよりも短い。なお、第一タンクコネクションスペース60から天板53を貫通して積込・揚荷用の配管76が燃料タンク本体50a内を下方に向かって延びている。
【0041】
本実施形態の第一タンクコネクションスペース60は、タンク室内区画40A~40Cに収容された各燃料タンク本体50aに対して一つずつ設けられている。第一タンクコネクションスペース60は、それぞれ燃料タンク本体50aの天板53の鉛直上方に配置されている。つまり、第一タンクコネクションスペース60は、上下方向Dvで車両甲板10Cと天板53とに挟まれるタンク室40内の空間に配置されている。本実施形態では、第一タンクコネクションスペース60の下面が天板53の上面と接するように設けられている。
【0042】
第一タンクコネクションスペース60は、燃料タンク本体50aの船首尾方向FAの中央位置C3よりも船尾2Aに近い側に配置されている。言い換えれば、第一タンクコネクションスペース60は、燃料タンク本体50aの船首尾方向FAの中央位置C3よりも機関室20及び機関室20に隣接する燃料調整室45に近い位置に配置されている。
【0043】
第一タンクコネクションスペース60は、船首尾方向FAに隣り合って配置された燃料タンク支持部材66の間のスペースに設けられている。そして、第一タンクコネクションスペース60の下面は、アンカー68の上面よりも下方に配置されており、第一タンクコネクションスペース60の上面は、アンカー68の上面よりも上方に配置されている。つまり、本実施形態の第一タンクコネクションスペース60の高さは、アンカー68の高さよりも高い。
【0044】
本実施形態で例示する第一タンクコネクションスペース60の船首尾方向FAの大きさは、タンク内大骨64の間隔よりも大きい。そして、この第一タンクコネクションスペース60は、複数のタンク内大骨64のうち船尾2Aに近い側に配置された所定のタンク内大骨64aの上方に配置されている。つまり、本実施形態のアンカー68は、船首尾方向FAにおける第一タンクコネクションスペース60の配置されている所定のタンク内大骨64の上方にだけ設けられていない。
【0045】
<第二タンクコネクションスペース>
第二タンクコネクションスペース61は、第一タンクコネクションスペース60と同様に、燃料タンク本体50aに取り付けられている。第二タンクコネクションスペース61は、箱状に形成されて、少なくとも安全弁72を収容している。ここで、本実施形態の第二タンクコネクションスペース61は、平面視で第一タンクコネクションスペース60よりも小さい矩形をなしている。さらに、第二タンクコネクションスペース61の上下方向Dvの長さ(言い換えれば、高さ)は、第二タンクコネクションスペース61の船首尾方向FAの長さよりも大きい。なお、第二タンクコネクションスペース61の船幅方向Dwの長さは、安全弁72の形状や大きさに応じて適宜設定すればよい。
【0046】
本実施形態の第二タンクコネクションスペース61は、タンク室内区画40A~40Cに収容された各燃料タンク本体50aに対して一つずつ設けられている。第二タンクコネクションスペース61は、それぞれ燃料タンク本体50aの天板53の鉛直上方に配置されている。つまり、第二タンクコネクションスペース61は、第一タンクコネクションスペース60と同様に、上下方向Dvで車両甲板10Cと天板53とに挟まれるタンク室40内の空間に配置されている。本実施形態では、第一タンクコネクションスペース60と同様に、第二タンクコネクションスペース61の下面は、天板53の上面と接するように設けられている。
【0047】
第二タンクコネクションスペース61は、第一タンクコネクションスペース60よりも船首2F側に設けられている。そして、本実施形態の第二タンクコネクションスペース61は、燃料タンク本体50aの船首尾方向FAの中央位置C3よりも船首2Fに近い側に配置されている。ここで、本実施形態の燃料タンク本体50aは、第二タンクコネクションスペース61の配置される位置に、天板53から上方に向かって突出して燃料タンク本体50a内と連通する空間(気相)を形成する突部73を有している。この突部73内の空間には気相が位置するため、何時も安全弁72が液に浸からないようになっている。本実施形態の第二タンクコネクションスペース61は、突部73及び安全弁72を囲うように形成されている。
【0048】
第二タンクコネクションスペース61は、船首尾方向FAに隣り合って配置された燃料タンク支持部材66の間のスペースに設けられている。さらに、第二タンクコネクションスペース61は、船首尾方向FAで隣り合うタンク内大骨64の間のスペースに設けられている。言い換えれば、第二タンクコネクションスペース61は、燃料タンク本体50aの天板53上の船首尾方向FAに等間隔に配置されたアンカー68の間に配置されている。
【0049】
本実施形態の第二タンクコネクションスペース61の下面は、アンカー68の上面よりも下方に配置されており、第二タンクコネクションスペース61の上面は、アンカー68の上面よりも上方に配置されている。つまり、本実施形態の第二タンクコネクションスペース61の高さは、アンカー68の高さよりも大きい。なお、第二タンクコネクションスペース61の下面がアンカー68の上面よりも下方に配置されている場合を例示したが、第二タンクコネクションスペース61は、突部73の上に設置するようにしてもよい。
【0050】
図6は、本開示の実施形態における船尾トリム時の燃料タンクの図5に相当する拡大図である。
図6に示すように、第二タンクコネクションスペース61は、中央位置C3よりも船首2F側に配置されるとともに、船尾トリム時の燃料タンク本体50a内に存在する気相に接する位置に設けられている。つまり、第二タンクコネクションスペース61の配置は、船舶100の船尾トリムの設計値に応じて設定することができる。より具体的には、第二タンクコネクションスペース61の上面の位置、及び突部73の上面の位置は、船舶100の船尾トリムの設計値に基づいて求められる燃料タンク本体50aに燃料を満載にした際の液面Fよりも上方となるように設定される。
【0051】
<燃料供給系統>
燃料供給系統74は、燃料タンク本体50aから燃料消費機器である主機9に向けて液化ガスを供給する。本実施形態で例示する燃料供給系統74は、第一タンクコネクションスペース60のうち、船尾2A側を向く側面から船尾2Aに向かって延びている。燃料供給系統74は、タンク室40内におけるアンカー68よりも上方で且つ、車両甲板10Cの下面よりも下方の空間を、船首尾方向FAに延びている。本実施形態の燃料供給系統74は、タンク室40の船尾2A側の隔壁(例えば、船首側燃調室隔壁47)を貫通し、燃料調整室45を経由して、機関室20に収容された主機9に至っている。なお、燃料供給系統74は、船尾2A側を向く側面から船尾2Aに向かって延びるものに限られない。例えば、燃料供給系統74は、第一タンクコネクションスペース60の船幅方向Dwの外側を向く面から船幅方向Dwの外側に出た後、タンク室40内を経由して燃料調整室45や機関室20(主機9)に向かうようにしたり、縦通隔壁41Aと船側外板4Aの間のスペースや、縦通隔壁41Bと船側外板4Bの間のスペースを経由して燃料調整室45や機関室20(主機9)に向かうようにしたりしてもよい。この場合、燃料供給系統74は、タンク室40の船尾2A側の隔壁よりも船幅方向Dwの外側に位置する隔壁を貫通するようにしてもよい。また、燃料供給系統74は、アンカー68よりも上方を通らずに、例えば、天板53と車両甲板10Cとの間の空間等、アンカー68よりも下方を通るようにしてもよい。
【0052】
<ガス排出系統>
ガス排出系統75は、安全弁72により燃料タンク本体50aから排出された気体を、例えば、大気中に排出するベントポストやファンネル等に導く。ガス排出系統75は、第二タンクコネクションスペース61から上方に向かって延びており、船体2内を上下方向Dvに延びるケーシング(図示せず)内を経由して、ベントポストやファンネルに接続される。なお、ガス排出系統75は、気体を大気中に排出する装置に接続される場合に限られず、例えば、GCU(Gas Combustion Unit)等の装置に接続するようにしてもよい。
【0053】
<作用効果>
上記実施形態の船舶100では、燃料タンク50が、燃料タンク本体50aと、第一タンクコネクションスペース60と、第二タンクコネクションスペース61とを備えている。燃料タンク本体50aは、燃料が貯留される燃料収容空間を区画している。第一タンクコネクションスペース60は、燃料タンク本体50aの上部に設けられ、主機9への燃料供給系統74が接続されている。第二タンクコネクションスペース61は、安全弁72が設けられ、燃料タンク本体50aの上部における第一タンクコネクションスペース60よりも船首2F側に設けられている。
これにより、第二タンクコネクションスペース61を、第一タンクコネクションスペース60よりも船首2Fに配置することで、船尾トリムにより船首2F側に存在する気相の位置に安全弁72を配置し易くなる。したがって、安全弁72を第一タンクコネクションスペース60に配置する場合と比較して、安全弁72が液に浸かることを抑えつつ、第一タンクコネクションスペース60及び第二タンクコネクションスペース61の高さを抑制できる。その結果、貨物スペースの減少、船体2の大型化及び復原性の悪化をそれぞれ抑えることが可能となる。
【0054】
さらに、上記実施形態の船舶100では、第一タンクコネクションスペース60が燃料タンク本体50aの船首尾方向FAの中央位置C3よりも船尾2Aに近い側に配置され、第二タンクコネクションスペース61が、燃料タンク本体50aの船首尾方向FAの中央位置C3よりも船首2F側に配置されている。
そのため、第一タンクコネクションスペース60をより船尾2A側に配置できる。一方で、第二タンクコネクションスペース61をより船首2F側に配置することができる。したがって、燃料タンク本体50aに貯留される燃料の液面を下げずに、安全弁72が液に浸かることを抑制できるため、一つの燃料タンク本体50aに対する燃料の貯留量を増加させて、燃料タンク50のスペース効率を向上することができる。
【0055】
また、上記実施形態の船舶100では、船体2が、船側外板4A,4Bと、船底外板5A及び上甲板10Bと、乗込み甲板10Aと、を有している。そして、機関室20が、乗込み甲板10Aと船底外板5Aとの間における船首尾方向FAの中央位置C1よりも船尾2Aに近い位置に設けられている。また、燃料調整室45が機関室20の船首2F側に隣接して設けられている。さらに、タンク室40が、船体2における乗込み甲板10Aより下方、且つ機関室20よりも船首2F側に設けられている。
このような船舶100において、燃料タンク50の高さを抑えつつ、機関室20に対して近い位置に第一タンクコネクションスペース60を配置して燃料供給系統74が長くなることを抑制できる。したがって、燃料供給系統74の軽量化を図ることができる。
【0056】
さらに、上記実施形態の船舶100では、燃料タンク50がIMOタンクタイプA又はIMOタンクタイプBの独立型方形タンクである。
したがって、独立型の燃料タンク50の燃料タンク本体50aの船体中心線C2と交差する垂直断面の輪郭を、タンク室40の船体中心線C2と交差する垂直断面の輪郭と同様に、実質的に矩形にすることができるため、燃料タンク本体50aの周囲に無駄なスペースが生じることを抑えて、スペース効率を高めることができる。
【0057】
また、上記実施形態の船舶100では、第一タンクコネクションスペース60と、第二タンクコネクションスペース61とが、船首尾方向FAに隣り合って配置された燃料タンク支持部材66の間のスペースに設けられている。
そのため、第一タンクコネクションスペース60と、第二タンクコネクションスペース61とを、燃料タンク本体50aの天板53に接するように配置できるため、第一タンクコネクションスペース60と、第二タンクコネクションスペース61との上面をより低い位置に配置できる。したがって、上下方向Dvにおける燃料タンク本体50aの天板53とタンク室40の天井とをより近づけることができるため、燃料タンク本体50aの容量を増加させたり、車両甲板の層数を増やして燃料タンク50の設置に伴う搭載可能な車両台数の減少を抑えたりすることが可能となる。
【0058】
さらに、上記実施形態の船舶100では、燃料タンク50が、タンク室40内に、船首尾方向FAに並んで複数配置されている。
これにより、船首尾方向FAに隣り合う燃料タンク50の間に、タンク室40の天井を支える室内壁42を設けることができる。そのため、タンク室40内に一つの大きな区画を設けて、一つの大きな燃料タンク50を設置する場合と比較して、船首尾方向FAに延びるタンク室40の強度確保に伴うコスト増加を抑制できる。
【0059】
<他の実施形態>
本開示は上述した実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上記実施形態では、タンク室40が機関室20又は燃料調整室45と、船首側ディープタンク30との間に設けられている場合について説明したが、船首尾方向FAにおけるタンク室40の配置は、上記実施形態の配置に限られない。
【0060】
さらに、上記実施形態では、燃料タンク50の燃料タンク本体50aがいわゆる方形タンクである場合を一例にして説明したが、第一タンクコネクションスペース60及び第二タンクコネクションスペース61は、船首尾方向FAに延びる円筒型の燃料タンクに設けてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、船舶100がPCTCである場合を一例にして説明したが、船舶100の船種は、PCTCやPCC(Pure Car Carrier)に限られず、例えば、フェリー等であってもよい。
【0062】
<付記>
実施形態に記載の船舶は、例えば以下のように把握される。
【0063】
(1)第1の態様によれば船舶100は、船体2と、前記船体2に設けられて燃料を消費する燃料消費機器9と、前記燃料消費機器9に供給される燃料が貯留される燃料タンク50と、を備え、前記燃料タンク50は、前記燃料が貯留される燃料収容空間を区画する燃料タンク本体50aと、前記燃料タンク本体50aの上部に設けられて、前記燃料消費機器9への燃料供給系統74が接続される第一タンクコネクションスペース60と、前記燃料タンク本体50aの上部における前記第一タンクコネクションスペース60よりも船首2F側に設けられて、安全弁72が設けられた第二タンクコネクションスペース61と、を備える。
燃料消費機器9としては、例えば、主機、ボイラ、発電機用の外・内燃機関等が挙げられる。
【0064】
第二タンクコネクションスペース61を、第一タンクコネクションスペース60よりも船首2Fに配置することで、船尾トリムにより燃料タンク本体50a内の船首2F側に存在する気相の位置に安全弁72を配置し易くなる。したがって、安全弁72を第一タンクコネクションスペース60に配置する場合と比較して、安全弁72が液に浸かることを抑えつつ、第一タンクコネクションスペース60及び第二タンクコネクションスペース61の高さを抑制できる。その結果、貨物スペースの減少、船体2の大型化及び復原性の悪化をそれぞれ抑えることが可能となる。
【0065】
(2)第2の態様によれば船舶100は、(1)の船舶100であって、前記第一タンクコネクションスペース60は、前記燃料タンク50の船首尾方向FAの中央位置C3よりも船尾2Aに近い側に配置され、前記第二タンクコネクションスペース61は、前記燃料タンク50の船首尾方向FAの中央位置C3よりも船首2Fに近い側に配置されている。
【0066】
これにより、第一タンクコネクションスペース60をより船尾2A側に配置できる。一方で、第二タンクコネクションスペース61をより船首2F側に配置することができる。したがって、燃料タンク本体50aに貯留される燃料の液面を下げずに、安全弁72が液に浸かることを抑制できるため、一つの燃料タンク本体50aに対する燃料の貯留量を増加させて、燃料タンク50のスペース効率を向上することができる。
【0067】
(3)第3の態様によれば船舶100は、(1)又は(2)の船舶100であって、前記船体2は、船首尾方向FAに延びる一対の船側外板4A,4Bと、上下方向Dvに離れて配置され一対の前記船側外板4A,4Bを船幅方向Dwに接続する船底外板5A及び上甲板10Bと、前記上甲板10Bよりも下方に位置して車両が乗降可能な乗込み甲板10Aと、前記乗込み甲板10Aと前記船底外板5Aとの間における船首尾方向FAの中央位置C1よりも船尾2Aに近い位置に設けられ、前記燃料消費機器9を収容する機関室20と、前記機関室20の船首2F側に隣接して設けられ、前記燃料供給系統74から導入された前記燃料を調整して前記燃料消費機器9に送り込む燃料調整機器を収容する燃料調整室45と、前記乗込み甲板10Aよりも下方で且つ、前記機関室20よりも船首2F側に設けられ、前記燃料タンク50を収容するタンク室40と、を備える。
これにより、燃料タンク50の高さを抑えつつ、機関室20に対して近い位置に第一タンクコネクションスペース60を配置して燃料供給系統74が長くなることを抑制できる。したがって、燃料供給系統74の軽量化を図ることができる。
【0068】
(4)第4の態様によれば船舶100は、(1)から(3)の何れか一つの船舶100であって、前記燃料タンク50は、IMOタンクタイプA又はIMOタンクタイプBの独立型方形タンクである。
これにより、独立型の燃料タンク50の燃料タンク本体50aの船体中心線C2と交差する垂直断面の輪郭を、タンク室40の船体中心線C2と交差する垂直断面の輪郭と同様に、実質的に矩形にすることができるため、燃料タンク本体50aの周囲に無駄なスペースが生じることを抑えて、スペース効率を高めることができる。
【0069】
(5)第5の態様によれば船舶100は、(3)の船舶100であって、前記タンク室40の天井と前記燃料タンク50との間に、船首尾方向FAに間隔をあけて複数設けられて前記燃料タンク50を支持する燃料タンク支持部材66を備え、前記第一タンクコネクションスペース60と、前記第二タンクコネクションスペース61とは、船首尾方向FAに隣り合って配置された前記燃料タンク支持部材66の間のスペースに設けられている。
これにより、第一タンクコネクションスペース60と、第二タンクコネクションスペース61との上面をより低い位置に配置できる。したがって、上下方向Dvにおける燃料タンク本体50aの天板53とタンク室40の天井とをより近づけることができるため、燃料タンク本体50aの容量を増加させたり、車両甲板の層数を増やして燃料タンク50の設置に伴う搭載可能な車両台数の減少を抑えたりすることが可能となる。
【0070】
(6)第6の態様によれば船舶100は、(2)の船舶100であって、前記燃料タンク50は、船首尾方向FAに複数並んで配置されている。
これにより、船首尾方向FAに隣り合う燃料タンク50の間に、タンク室40の天井を支える室内壁42を設けることができる。そのため、タンク室40内に一つの大きな区画を設けて、一つの大きな燃料タンク50を設置する場合と比較して、船首尾方向FAに延びるタンク室40の強度確保に伴うコスト増加を抑制できる。
【0071】
(7)第7の態様によれば船舶100は、(1)から(6)の何れか一つの船舶100であって、前記燃料は、液化アンモニア又は液化石油ガスである。
これにより、燃料の貯留量を増加させることができるため、液化アンモニア又は液化石油ガスを燃料とした船舶100における航続距離を延ばすことが可能となる。
【符号の説明】
【0072】
2 船体
2A 船尾
2F 船首
3 上部構造
3A 船橋
3B 居住区
4 船側部
4A,4B 船側外板
5 船底部
5A 船底外板
5B 内底板
6 スクリュー
7 舵
9 主機(燃料消費機器)
10 甲板
10A 乗込み甲板
10B 上甲板
10C 車両甲板
12 ショアランプ
12A 船尾ランプ
12B センターランプ
13 ランプウェイ
20 機関室
21 機関室隔壁
22 船首側機関室隔壁
24 船首隔壁
25 バウスラスタ
30 船首側ディープタンク
31 タンク隔壁
32 船尾側ディープタンク隔壁
40 タンク室
40A~40C タンク室内区画
41A,41B 縦通隔壁
42 室内壁
45 燃料調整室
46 燃調室隔壁
47 船首側燃調室隔壁
50,50A 燃料タンク
50a 燃料タンク本体
51 左側板
52 右側板
53 天板
54 底板
55 前板
56 後板
57 仕切り板
58 幅減少部
60 第一タンクコネクションスペース
61 第二タンクコネクションスペース
64,64a タンク内大骨
65 ベアリングシート
66 燃料タンク支持部材
68 アンカー
69 位置決め部材
70 主要支持部材
72 安全弁
73 突部
74 燃料供給系統
75 ガス排出系統
76 配管
100 船舶
C1,C3 中央位置
C2 船体中心線
Dv 上下方向
Dw 船幅方向
FA 船首尾方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6