(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156987
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】睡眠時呼吸改善装置
(51)【国際特許分類】
A61H 23/02 20060101AFI20251007BHJP
A61F 5/56 20060101ALI20251007BHJP
【FI】
A61H23/02 370
A61H23/02 330
A61F5/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059784
(22)【出願日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】新井 嘉則
【テーマコード(参考)】
4C074
4C098
【Fターム(参考)】
4C074AA02
4C074AA05
4C074BB05
4C074CC01
4C074DD01
4C074EE01
4C074GG11
4C098BB15
(57)【要約】
【課題】大型の本体装置を設ける必要がなく、睡眠中に刺激量を変更可能な睡眠時呼吸改善装置を提供する。
【解決手段】睡眠時呼吸改善装置1は、咽頭部に対する刺激の付与を選択的に行う咽頭刺激装置2bと、口腔内に装着可能であると共に、咽頭刺激装置2bを支持するマウスピース部2aとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
咽頭部に対する刺激の付与を選択的に行う咽頭刺激装置と、
口腔内に装着可能であると共に、前記咽頭刺激装置を支持する支持部と
を備えることを特徴とする睡眠時呼吸改善装置。
【請求項2】
舌根の沈下を検出する舌根沈下検出部と、
前記舌根沈下検出部によって前記舌根の沈下が検出された場合に、前記咽頭刺激装置に前記咽頭部を刺激させる制御装置と
を備えることを特徴とする請求項1記載の睡眠時呼吸改善装置。
【請求項3】
前記咽頭刺激装置は、前記咽頭部への刺激量を可変であり、
前記制御装置は、前記舌根沈下検出部の検出結果に基づいて、前記咽頭刺激装置から前記咽頭部への刺激量を調整する
ことを特徴とする請求項2記載の睡眠時呼吸改善装置。
【請求項4】
前記舌根沈下検出部は、
前記舌根が沈下していない状態で舌が接触されると共に前記舌根が沈下した状態で前記舌が離間する電極部と、
前記電極部と前記制御装置とを接続する配線部と
を備える
ことを特徴とする請求項2または3記載の睡眠時呼吸改善装置。
【請求項5】
前記咽頭刺激装置は、前記支持部に対してスライド可能に支持されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の睡眠時呼吸改善装置。
【請求項6】
前記咽頭刺激装置は、
振動を発生する振動発生部と、
先端部に前記振動発生部を収容すると共に前記支持部に支持された長尺袋体と
を備える
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の睡眠時呼吸改善装置。
【請求項7】
前記長尺袋体に収容されると共に唾液を検出する唾液検出部を備えることを特徴とする請求項6記載の睡眠時呼吸改善装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠時呼吸改善装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、加圧空気を患者の気道に送り込むCPAP装置が開示されている。CPAP装置は、睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられる装置であり、睡眠時の患者の気道を拡張することで、無呼吸を解消あるいは緩和しようとするものである。このようなCPAP装置は、患者が装着するマスクにホースを介して接続される本体装置を備え、本体装置から加圧空気をマスクに供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、CPAP装置の本体装置は、気道を拡張可能な程度の加圧空気を生成する必要があり、大型のファンとファンを駆動するためのモータとを備える必要がある。このため、必然的にCPAP装置の本体装置は、大型なものとなる。このようなCPAP装置は、無呼吸の改善のみならず、いびきの改善も期待できるが、大型の本体装置を備えるため、容易に自宅に導入することができない。
【0005】
一方で、上述のような本体装置を必要としないマウスピース型の治療装置も用いられている。マウスピース型の治療装置としては、下顎の位置を前方に保持することで気道を拡張するものと、嘔吐反射を促す突部を有するものとがある。ただし、下顎の位置を前方に保持するマウスピース型の治療装置は、長期の使用により歯列や顎関節に負担がかかる。また、嘔吐反射を促す突部を有するマウスピース型の治療装置は、突部の突出量が固定されており、睡眠中に咽頭部への刺激量を変更することができず、効果が発揮できない場合も多い。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、大型の本体装置を設ける必要がなく、睡眠中に刺激量を変更可能な睡眠時呼吸改善装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
本発明の第1の態様は、睡眠時呼吸改善装置であって、咽頭部に対する刺激の付与を選択的に行う咽頭刺激装置と、口腔内に装着可能であると共に、上記咽頭刺激装置を支持する支持部とを備えるという構成を採用する。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、舌根の沈下を検出する舌根沈下検出部と、上記舌根沈下検出部によって上記舌根の沈下が検出された場合に、上記咽頭刺激装置に上記咽頭部を刺激させる制御装置とを備えるという構成を採用する。
【0010】
本発明の第3の態様は、上記第2の態様において、上記咽頭刺激装置が、上記咽頭部への刺激量を可変であり、上記制御装置が、上記舌根沈下検出部の検出結果に基づいて、上記咽頭刺激装置から上記咽頭部への刺激量を調整するという構成を採用する。
【0011】
本発明の第4の態様は、上記第2または第3の態様において、上記舌根沈下検出部が、上記舌根が沈下していない状態で舌が接触されると共に上記舌根が沈下した状態で上記舌が離間する電極部と、上記電極部と上記制御装置とを接続する配線部とを備えるという構成を採用する。
【0012】
本発明の第5の態様は、上記第1~第4のいずれかの態様において、上記咽頭刺激装置が、上記支持部に対してスライド可能に支持されているという構成を採用する。
【0013】
本発明の第6の態様は、上記第1~第5のいずれかの態様において、上記咽頭刺激装置が、振動を発生する振動発生部と、先端部に上記振動発生部を収容すると共に上記支持部に支持された長尺袋体とを備えるという構成を採用する。
【0014】
本発明の第7の態様は、上記第6の態様において、上記長尺袋体に収容されると共に唾液を検出する唾液検出部を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、咽頭刺激装置が、咽頭部に対する刺激の付与を選択的に行う。つまり、本発明によれば、睡眠中に咽頭部に対する刺激量が変化するため、突出量が固定の突部を有するマウスピース型の治療装置と比較して、効果的に睡眠時の呼吸を改善できる。また、本発明によれば、気道を拡張するような高圧の空気を生成する必要がなく、大型の本体装置を設置する必要がない。したがって、本発明は、大型の本体装置を設ける必要がなく、睡眠中に刺激量を変更可能な睡眠時呼吸改善装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態における睡眠時呼吸改善装置の概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における睡眠時呼吸改善装置が備える装着部の断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における睡眠時呼吸改善装置が備える装着部の下面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における睡眠時呼吸改善装置が備える制御ユニットの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】本発明の第1実施形態における睡眠時呼吸改善装置が備える制御処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の第2実施形態における睡眠時呼吸改善装置が備える装着部の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る睡眠時呼吸改善装置の一実施形態について説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1の概略構成図である。本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1は、例えば、睡眠時無呼吸症候群の治療装置として用いることが可能である。ただし、これに限定されるものではなく、本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1は、睡眠時のいびきを改善するために用いることもできる。つまり、ユーザは、睡眠時無呼吸症候群の治療ためや、睡眠時のいびきの改善のために本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1を用いることができる。このような本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1は、
図1に示すように、装着部2と、制御ユニット3(制御装置)とを備えている。
【0019】
装着部2は、ユーザが装着するユニットである。
図2は、装着部2の断面図である。また、
図3は、装着部2の下面図である。装着部2は、後述するマウスピース部2aがユーザの上顎に取り付けられることで、ユーザの口腔内に装着される。
図1~
図3に示すように、装着部2は、マウスピース部2a(支持部)と、咽頭刺激装置2bと、舌根沈下検出部2cとを備えている。
【0020】
マウスピース部2aは、ユーザの口腔内に装着可能であり、咽頭刺激装置2b及び舌根沈下検出部2cを支持する。本実施形態では、マウスピース部2aは、上顎に取り付けられる。このようなマウスピース部2aは、口腔内に取り付け可能な材料で形成されており、例えばポリウレタン樹脂によって形成されている。
図1~
図3に示すように、本実施形態においてマウスピース部2aは、外縁部2a1と中央部2a2とを有する形状に形成されている。なお、マウスピース部2aは、ここで説明する形状に特に限定されるものではない。
【0021】
外縁部2a1は、上顎の歯列が上方から挿入される部位であり、上顎の歯列弓に合わせた形状に形成されている。このような外縁部2a1は、ユーザの歯型に基づいて形成することが好ましい。
【0022】
中央部2a2は、弓形に形成された外縁部2a1に囲まれた範囲に位置し、外縁部2a1に接続されている。中央部2a2は、板状に形成されており、外縁部2a1が上顎の歯列に装着された状態で、硬口蓋に下側から対向配置される。なお、中央部2a2と硬口蓋との間に咽頭刺激装置2bの後述する長尺袋体2b1が挿通可能なように、中央部2a2は硬口蓋に対して隙間を空けて対向配置される。
【0023】
また、
図1~
図3に示すように、中央部2a2には、貫通孔2a3が設けられている。貫通孔2a3は、中央部2a2を上下方向に貫通して設けられており、咽頭刺激装置2bの後述する長尺袋体2b1が挿通されている。貫通孔2a3は、中央部2a2の前後方向の中央位置よりも後方でかつ後縁2a4よりも前方に位置している。なお、貫通孔2a3の開口面積は、長尺袋体2b1を抜き差しするようにスライド移動可能とする大きさに形成されている。
【0024】
咽頭刺激装置2bは、咽頭部に対する刺激の付与を選択的に行う部位である。本実施形態では、咽頭刺激装置2bは、舌根が沈下した場合に咽頭部を刺激する振動を発生し、舌根が沈下していない場合には咽頭部を刺激する振動を発生しない。つまり、咽頭刺激装置2bは、舌根が沈下している場合と舌根が沈下していない場合とのうち、舌根が沈下している場合にのみ選択的に咽頭部に対して刺激を付与する。
【0025】
なお、咽頭刺激装置2bが刺激を付与する咽頭部の部位は、特に限定されないが、例えばユーザに睡眠を妨げない程度の嘔吐反射を生じさせる部位である。具体的には、中咽頭の口蓋垂と舌根とを咽頭刺激装置2bで刺激するとよい。
【0026】
咽頭刺激装置2bは、
図1~
図3に示すように、長尺袋体2b1と、振動モータ2b2と、振動モータ接続配線2b3とを有している。長尺袋体2b1は、振動モータ2b2及び振動モータ接続配線2b3を収容する袋体であり、振動モータ接続配線2b3が延びる方向に長い長尺状に形成されている。長尺袋体2b1は、先端部が閉塞端であり、この先端部に振動モータ2b2を収容している。長尺袋体2b1は、先端部の反対側の端部が口腔の外側に引き出し可能な長さを有している。
【0027】
口腔内に挿入可能かつ容易に変形可能な材料によって形成されており、例えばシリコン樹脂によって形成されている。長尺袋体2b1は、マウスピース部2aの中央部2a2に設けられた貫通孔2a3よりも手前側では、中央部2a2の下方に位置している。また、長尺袋体2b1は、先端部に向かうに連れて、貫通孔2a3に下方から上方に向けて挿入され、さらに中央部2a2の後縁2a4から下方に向けて引き出されている。このような長尺袋体2b1の先端部は、例えば中咽頭の口蓋垂と舌根との間に位置する。
【0028】
また、長尺袋体2b1は、マウスピース部2aに対してスライド可能に支持されている。長尺袋体2b1は、例えば、先端部を掴んで引っ張ることで、貫通孔2a3から先端部までの距離が長くなるようにマウスピース部2aに対してスライドされる。また、長尺袋体2b1は、先端部を反対側の端部を掴んで引っ張ることで、貫通孔2a3から先端部までの距離が短くなるようにマウスピース部2aに対してスライドされる。このような長尺袋体2b1の先端部の位置の調整は、ユーザが容易に行うことができる。
【0029】
振動モータ2b2は、長尺袋体2b1の内部に収容されており、長尺袋体2b1の先端部に位置している。振動モータ2b2は、振動モータ接続配線2b3を介して給電されることで、咽頭部を刺激するための振動を発生するモータである。振動モータ2b2は、例えば給電されている期間は振動を発生し、給電されていない期間は振動の発生を停止する。このため、振動モータ2b2への給電パターンを変化させることで、振動モータ2b2を任意のパターンで振動させることができる。
【0030】
例えば、咽頭刺激装置2bは、振動モータ2b2の一定期間における振動時間を長くすることでユーザへの刺激量を増加させることができる。また、咽頭刺激装置2bは、振動モータ2b2の一定期間における振動時間を短くすることでユーザへの刺激量を減少させることができる。このように、本実施形態において咽頭刺激装置2bは、咽頭部への刺激量が可変である。
【0031】
なお、振動モータ2b2の種類や長尺袋体2b1の内部の姿勢は特に限定されない。ただし、咽頭部への刺激の効果を高めて嘔吐反射を効率的に惹起させるためには、マウスピース部2aの板状の中央部2a2の表裏面と交差する方向が振幅方向となるように、振動モータ2b2の種類や姿勢を定めることが好ましい。また、振動成分に中央部2a2の表裏面と直交する方向への振動が含まれているのであれば、例えば長尺袋体2b1の先端部が回転するように振動モータ2b2が振動してもよい。
【0032】
振動モータ接続配線2b3は、振動モータ2b2と制御ユニット3とを接続する配線である。例えば、制御ユニット3は、振動モータ接続配線2b3を介して、直流電力を振動モータ2b2に供給する。
【0033】
また、振動モータ接続配線2b3は、長尺袋体2b1を支持可能な強度を有している。このため、長尺袋体2b1は、振動モータ接続配線2b3に支持されることで形状を保持可能である。また、振動モータ接続配線2b3は、ユーザ等が力を加えることで変形可能に形成されていることが好ましい。振動モータ接続配線2b3が変形可能であることで、長尺袋体2b1の形状を任意に変更することが可能となる。
【0034】
なお、振動モータ接続配線2b3と別に、長尺袋体2b1の形状を保持する骨材を長尺袋体2b1の内部に配置してもよい。このような場合には、振動モータ接続配線2b3は、長尺袋体2b1を支持可能な強度を有する必要はない。
【0035】
舌根沈下検出部2cは、ユーザの舌根の沈下を検出する。舌根沈下検出部2cは、舌検出電極部2c1と、配線部2c2と、不関電極部2c3とを有する。舌検出電極部2c1は、例えば配線部2c2の被覆を取り除き、内部の導体を露出させることで形成されている。配線部2c2は、舌検出電極部2c1と制御ユニット3とを電気的に接続されている。
【0036】
例えば
図3に示すように、舌検出電極部2c1は、配線部2c2の途中部位に設けられている。このような舌検出電極部2c1及び配線部2c2は、不図示の接着層等によって、長尺袋体2b1の下面に固着されている。舌検出電極部2c1は、ユーザの舌根が沈下していない状態(すなわち気道が確保されている状態)で舌が接触する位置に配置されている。具体的には、本実施形態では、マウスピース部2aの貫通孔2a3よりも前方に配置されている。
【0037】
不関電極部2c3は、ユーザの体の一部に常時接触する電極部である。本実施形態では、不関電極部2c3は、マウスピース部2aの外縁部2a1に固着されている。このような不関電極部2c3は、マウスピース部2aがユーザの上顎に装着された場合に、ユーザの例えば歯茎に常時接触する。なお、不関電極部2c3の位置は特に限定されるものではない。このような不関電極部2c3は、例えば手首や足首に接触するように配置してもよい。
【0038】
このような舌検出電極部2c1と不関電極部2c3とは、ユーザの舌が舌検出電極部2c1に接触している場合に導通される。また、舌検出電極部2c1と不関電極部2c3とは、ユーザの舌が舌検出電極部2c1に接触していない場合には、非導通状態となる。このような舌検出電極部2c1と不関電極部2c3とを有する舌根沈下検出部2cは、舌根が沈下して、舌が舌検出電極部2c1から離間すると、舌検出電極部2c1と不関電極部2c3とが非導通状態となったことを外部(制御ユニット3)に知らせることができる。つまり、舌根沈下検出部2cは、ユーザの舌根の沈下を検出することができる。
【0039】
制御ユニット3は、舌検出電極部2c1によって舌根の沈下が検出された場合に、咽頭刺激装置2bに咽頭部を刺激させる。
図4は、制御ユニット3の概略構成を示す機能ブロック図である。この図に示すように、制御ユニット3は、電源装置3aと、第1整流器3bと、参照抵抗3cと、第2整流器3dと、コンパレータ3eと、制御処理装置3fと、通信部3gとを備えている。
【0040】
電源装置3aは、装着部2の舌根沈下検出部2cと電気的に接続されている。例えば、電源装置3aは、舌検出電極部2c1に舌が接触している状態で、ユーザに微弱な電流(数マイクロアンペア程度の電流)が流れるように、舌根沈下検出部2cに電圧を印加する。
【0041】
本実施形態では、電源装置3aは、舌根沈下検出部2cに対して交流電力を供給する。例えば、電源装置3aは、不図示の直流電源と、不図示の交流発振器とを備えている。このように電源装置3aから舌根沈下検出部2cに対して交流電力を供給することで、舌検出電極部2c1が酸化することを抑制し、ユーザが金属の味を感じることを抑制できる。また、電源装置3aから舌根沈下検出部2cに対して交流電力を供給することで、舌検出電極部2c1の周囲で水が電気分解されることを抑制できる。なお、例えば電源装置3aは、制御処理装置3fに対しては直流電力を供給可能である。
【0042】
第1整流器3bは、装着部2の舌根沈下検出部2cに対して直列接続されている。第1整流器3bは、舌根沈下検出部2cから出力される電流の高周波成分を除去するローパスフィルタである。第1整流器3bは、入力端に舌根沈下検出部2cが接続され、出力端にコンパレータ3eが接続されている。
【0043】
電源装置3aは、舌根沈下検出部2cの舌検出電極部2c1と不関電極部2c3とのうち一方に接続されている。また、第1整流器3bは、舌根沈下検出部2cの舌検出電極部2c1と不関電極部2c3とのうち他方に接続されている。舌検出電極部2c1に舌が接触している場合には、電源装置3aから舌根沈下検出部2c及び第1整流器3bを介してコンパレータ3eに微弱電流が流れる。
【0044】
参照抵抗3c及び第2整流器3dと、舌根沈下検出部2c及び第1整流器3bとは並列的に接続されている。参照抵抗3cは、一端が電源装置3aに接続され、他端が第2整流器3dに接続されている。第2整流器3dは、入力端が参照抵抗3cに接続され、出力端がコンパレータ3eに接続されている。参照抵抗3c及び第2整流器3dには、電源装置3aから出力される交流電力が流れる。
【0045】
コンパレータ3eは、舌根沈下検出部2cを介して入力される信号電圧と、参照抵抗3cを介して入力される信号電圧とを比較して、その結果を出力する比較器である。本実施形態では、コンパレータ3eは、舌根沈下検出部2cから舌の検出信号が入力されている場合には、ローレベルを出力する。また、コンパレータ3eは、舌根沈下検出部2cから舌の検出信号が入力されていない場合には、ハイレベルを出力する。
【0046】
制御処理装置3fは、コンパレータ3e及び振動モータ2b2と電気的に接続されている。例えば、制御処理装置3fは、振動モータ2b2への給電可能な端子を備え、振動モータ2b2に給電することで振動モータ2b2を駆動可能である。なお、振動モータ2b2への給電は、電源装置3aから供給してもよい。この場合には、制御処理装置3fは、電源装置3aから振動モータ2b2への給電をスイッチングすることで、振動モータ2b2を駆動可能である。
【0047】
制御処理装置3fは、舌根沈下検出部2cによって舌根の沈下が検出された場合に、咽頭刺激装置2bの振動モータ2b2を用いて咽頭部を刺激する。具体的には、本実施形態において制御処理装置3fは、コンパレータ3eからハイレベルの信号が入力された場合には、振動モータ2b2に振動を発生させ、咽頭部を刺激する。一方で、本実施形態において制御処理装置3fは、コンパレータ3eからローレベルの信号が入力された場合には、振動モータ2b2を停止させ、咽頭部への刺激を停止する。
【0048】
このように、制御処理装置3fは、舌根沈下検出部2cによって舌根の沈下が検出されている(舌が検出されていない)場合(コンパレータ3eからハイレベルの信号が入力されている場合)には咽頭部を刺激し、舌根沈下検出部2cによって舌根の沈下が検出されていない(舌が検出されている)場合(コンパレータ3eからローレベルの信号が入力されている場合)には咽頭部の刺激を停止する。
【0049】
また、本実施形態において制御処理装置3fは、舌根沈下検出部2cにて舌が検出されていない期間が長くなるほど、単位時間あたりに咽頭部に付与する刺激量を増加する。つまり、制御処理装置3fは、舌根沈下検出部2cの検出結果に基づいて、咽頭刺激装置2bから咽頭部への刺激量を調整する。例えば、制御処理装置3fは、舌根沈下検出部2cにて舌が検出されていない期間が長くなるほど、単位時間における振動回数を段階的に増加させる。
【0050】
制御処理装置3fは、単位時間における振動回数が最大となった場合には、再度、単位時間における最大回数を最小とし、その後に増加させるようにしてもよい。なお、制御処理装置3fは、振動モータ2b2の振動振幅を大きくすることで、咽頭部に付与する刺激量を増加してもよい。
【0051】
通信部3gは、コンパレータ3eからの出力結果を外部機器に向けて送信する。例えば、通信部3gは、コンパレータ3eからの出力結果をユーザが所有するコンピュータやスマートフォン等に送信する。通信部3gからコンパレータ3eの出力結果を受信した外部機器は、例えば、睡眠中に舌根が沈下した期間と舌根が沈下していない期間とを可視化して表示する。これによって、ユーザが、睡眠中に舌根が沈下した期間(すなわち無呼吸の期間)を容易に把握することが可能となる。
【0052】
なお、外部機器にてコンパレータ3eの出力結果をどのように可視化するかは任意であるが、例えば、舌根が沈下した期間と舌根が沈下していない期間とを異なる色で表示して、時系列的に並べて表示することが考えられる。
【0053】
続いて、本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1を使用する場合の動作について説明する。上述のような睡眠時呼吸改善装置1は、睡眠時無呼吸症候群であるユーザやいびきの改善を求めるユーザが睡眠する場合に用いる。
【0054】
ユーザは、睡眠前に口腔内に装着部2を装着する。本実施形態では、ユーザは、装着部2のマウスピース部2aの外縁部2a1に上顎の歯列が上方から挿入されるように、マウスピース部2aを装着する。ユーザは、このようにして装着部2を装着した状態で睡眠する。
【0055】
睡眠中であっても、舌根が沈下せずに気道が確保されている状態が正常な状態である。このような正常な状態では、ユーザの舌は、舌根沈下検出部2cの舌検出電極部2c1に接触している。舌が舌検出電極部2c1に接触している状態では、電源装置3aから舌根沈下検出部2cを介してコンパレータ3eに微弱電流が流れる。この結果、コンパレータ3eからローレベルの信号が出力され、制御処理装置3fは、舌根が沈下していないと判断する。
【0056】
一方で、舌根が沈下して気道が狭くなると、ユーザの舌は、舌根沈下検出部2cの舌検出電極部2c1から離間する。舌が舌検出電極部2c1から離間すると、電源装置3aから舌根沈下検出部2cを介してコンパレータ3eに微弱電流が流れなくなる。この結果、コンパレータ3eからローレベルの信号が出力され、制御処理装置3fは、舌根が沈下していると判断する。
【0057】
制御処理装置3fは、舌根の沈下が検出されると、振動モータ2b2を振動させて、ユーザの咽頭部に刺激を付与する。この刺激によってユーザの嘔吐反射を惹起させる。ユーザが嘔吐反射を起こすと、舌根が持ち上がり気道が確保され、無呼吸やいびきが改善される。
【0058】
図5は、制御処理装置3fの概略的な動作を説明するためのフローチャートである。この図に示すように、制御処理装置3fは、上述のように舌根沈下検出部2cの検出結果に基づいて、舌根の沈下が検出しているか否かの判定を行う(ステップS1)。制御処理装置3fは、舌根の沈下が検出されていない場合には、ステップS1を繰り返すことで、舌根の沈下が検出されるまで待機する。
【0059】
制御処理装置3fは、舌根の沈下が検出されると、咽頭部を刺激する(ステップS2)。ここでは、制御処理装置3fは、振動モータ2b2を振動させることで、咽頭刺激装置2bに咽頭を刺激させる。続いて、制御処理装置3fは、舌根の沈下が継続しているか否かの判定を行う(ステップS3)。
【0060】
ここでは、制御処理装置3fは、舌根沈下検出部2cの検出結果に基づいて、舌根の沈下が継続しているか否かの判定を行う。舌根の沈下が継続していない場合には、制御処理装置3fは、ステップS1に戻る。
【0061】
一方で、舌根の沈下が継続している場合には、制御処理装置3fは、現在付与している刺激量が最大であるか否かを判定する(ステップS4)。刺激量が最大でない場合には、制御処理装置3fは、刺激量を増加し(ステップS5)、ステップS2に戻る。このため、本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1では、舌根の沈下が継続している場合には、ステップS5が繰り返し実行され、刺激量が徐々に増大する。
【0062】
なお、ステップS4にて刺激量が最大である場合には、制御処理装置3fは、刺激量を初期化し(ステップS6)、ステップS2に戻る。ここで、刺激量を初期化するとは、舌根の沈下が検出された直後の刺激量に戻すことを意味し、本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1では最小の刺激量に変更することである。
【0063】
以上のような本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1は、咽頭刺激装置2bと、マウスピース部2aとを備えている。咽頭刺激装置2bは、咽頭部に対する刺激の付与を選択的に行う。マウスピース部2aは、口腔内に装着可能であると共に、咽頭刺激装置2bを支持する。
【0064】
本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1によれば、咽頭刺激装置2bが、咽頭部に対する刺激の付与を選択的に行う。つまり、本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1によれば、睡眠中に咽頭部に対する刺激量が変化するため、突出量が固定の突部を有するマウスピース型の治療装置と比較して、効果的に睡眠時の呼吸を改善できる。また、本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1によれば、気道を拡張するような高圧の空気を生成する必要がなく、大型の本体装置を設置する必要がない。このように、本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1は、大型の本体装置を設ける必要がなく、睡眠中に刺激量を変更可能である。
【0065】
また、本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1は、舌根沈下検出部2cと、制御ユニット3とを備える。舌根沈下検出部2cは、舌根の沈下を検出する。制御ユニット3は、舌根沈下検出部2cによって舌根の沈下が検出された場合に、咽頭刺激装置2bに咽頭部を刺激させる。
【0066】
このような本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1によれば、舌根の沈下を検出することができ、舌根が沈下している場合に咽頭部を刺激することが可能となる。このため、気道を拡張する必要がある場合のみ咽頭部を刺激でき、不必要に咽頭部を刺激することを防止できる。
【0067】
また、本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1において咽頭刺激装置2bは、咽頭部への刺激量を可変である。また、制御ユニット3は、舌根沈下検出部2cの検出結果に基づいて、咽頭刺激装置2bから咽頭部への刺激量を調整する。
【0068】
このような本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1によれば、例えば、嘔吐反射によって舌根の沈下が解消されるまで、刺激量を増加することができる。個人差やユーザの体調によって嘔吐反射が生じる刺激量は変化する。本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1によれば、嘔吐反射が惹起されるまで刺激量を増加させることができ、突出量が固定しているマウスピース型の治療装置と比較して、より確実に嘔吐反射を惹起することが可能になる。
【0069】
また、本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1において舌根沈下検出部2cは、舌検出電極部2c1と、配線部2c2とを備える。舌検出電極部2c1は、舌根が沈下していない状態で舌が接触されると共に舌根が沈下した状態で舌が離間する。配線部2c2は、舌検出電極部2c1と制御ユニット3とを接続する。
【0070】
このような本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1によれば、舌の舌検出電極部2c1に対する接触状態に基づいて舌根の沈下を検出することができる。このため、例えば舌根の位置を直接検出する場合等と比較して、簡易な構成によって、舌根の沈下を検出することができる。
【0071】
また、本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1において咽頭刺激装置2bは、マウスピース部2aに対してスライド可能に支持されている。このような本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1によれば、咽頭部に対する咽頭刺激装置2bの位置をユーザ等が容易に変更することができる。
【0072】
また、本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1において咽頭刺激装置2bは、振動モータ2b2と、長尺袋体2b1とを備える。振動モータ2b2は、振動を発生する。長尺袋体2b1は、先端部に振動モータ2b2を収容すると共にマウスピース部2aに支持されている。
【0073】
このような本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1は、長尺袋体2b1に振動モータ2b2を収容しているため、振動モータ2b2を容易にユーザの口腔内の奥側に配置することができる。
【0074】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、
図6を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0075】
図6は、本実施形態の睡眠時呼吸改善装置1が備える装着部2Aの下面図である。この図に示すように、本実施形態において装着部2Aは、唾液検出部2dを備えている。唾液検出部2dは、長尺袋体2b1の内部に収容されており、唾液を検出可能である。例えば、唾液検出部2dは、唾液に接触することで導通可能となる。このため、唾液検出部2dが導通した場合に唾液が検出されたと判断できる。
【0076】
このような唾液検出部2dは、制御処理装置3fに接続されている。制御処理装置3fは、唾液検出部2dで唾液が検出された場合には、舌根沈下検出部2cで舌根の沈下が検出されても振動モータ2b2の振動を停止した状態とする。
【0077】
例えば、長尺袋体2b1の一部が破れた場合には、長尺袋体2b1の内部にユーザの唾液が侵入する。この結果、唾液検出部2dが唾液を検出し、振動モータ2b2が振動しない状態となる。したがって、本実施形態によれば、長尺袋体2b1が破れた状態で振動モータ2b2が振動することを防止できる。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0079】
例えば、上記実施形態においては、咽頭刺激装置2bが振動にて咽頭部に刺激を付与する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、咽頭刺激装置2bは、振動以外の手段(例えば押圧)によって咽頭部に刺激を付与してもよい。例えば、咽頭刺激装置2bは、小型のバルーンを膨らますことで咽頭部を刺激してもよい。このような小型のバルーンは、大型のファンを用いることなく膨張可能であるため、CPAP装置よりも小型の外部装置で膨らませることができる。
【0080】
また、上記実施形態においては、舌根沈下検出部2cが舌検出電極部2c1に舌が接触しているか否かで舌根の沈下を検出する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、舌根沈下検出部2cは、心拍数、血液中酸素飽和度、いびきの有無等に基づいて、舌根の沈下を検出してもよい。
【0081】
また、上記実施形態においては、上顎に装着するマウスピース部2aを用いて咽頭刺激装置2bを支持する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、口腔内にて咽頭刺激装置2bを支持可能であれば、支持部の形状は変更可能である。
【符号の説明】
【0082】
1……睡眠時呼吸改善装置、2……装着部、2a……マウスピース部(支持部)、2A……装着部、2a1……外縁部、2a2……中央部、2a3……貫通孔、2a4……後縁、2b……咽頭刺激装置、2b1……長尺袋体、2b2……振動モータ(振動発生部)、2b3……振動モータ接続配線、2c……舌根沈下検出部、2c1……舌検出電極部(電極部)、2c2……配線部、2c3……不関電極部、2d……唾液検出部、3……制御ユニット(制御装置)、3a……電源装置、3b……第1整流器、3c……参照抵抗、3d……第2整流器、3e……コンパレータ、3f……制御処理装置、3g……通信部