(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025157219
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】溶接可能な熱可塑性合成複合材
(51)【国際特許分類】
B29C 65/02 20060101AFI20251007BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20251007BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20251007BHJP
C09J 201/02 20060101ALI20251007BHJP
【FI】
B29C65/02
C09J201/00
C09J11/00
C09J201/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2025098537
(22)【出願日】2025-06-12
(62)【分割の表示】P 2022526143の分割
【原出願日】2020-11-06
(31)【優先権主張番号】62/932,760
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バックマン, ネーサン ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】バーソッティ, ロバート ジェイ.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、熱可塑性複合構造を熱可塑性又は熱硬化性構造に溶接するための接着層としての低Tg相溶性樹脂の使用に関する。
【解決手段】本発明は、風力タービンの半体及びスパーキャップなどの大型部品の溶接に特に良好である。有用な熱可塑性複合材は、反応性アクリル液体樹脂系、例えばArkemaのELIUM(登録商標)樹脂系による長繊維の注入及び硬化によって形成されるものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性複合構造(1)を熱可塑性若しくは熱硬化性構造、又は金属部品(2)に溶接するための中間層ポリマー組成物であって、120℃未満、110℃、好ましくは95℃未満、好ましくは90℃未満、より好ましくは85℃未満、より好ましくは80℃未満、75℃未満、さらには70℃未満、60℃未満、50℃未満、さらには40℃未満のTgを有する熱可塑性ポリマーを含み、前記構造(1)及び(2)と相溶性である、中間層ポリマー組成物。
【請求項2】
前記中間層が、(メタ)アクリルポリマー又は共重合体、スチレン系、ポリビニリデンフルオリド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)ポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリスチレン系、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、機能化ポリオレフィン、ビニルエステル、ポリ(ビニルエステル)、ポリエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される一次ポリマーを含む、請求項1記載の中間層ポリマー組成物。
【請求項3】
全中間層ポリマー組成物に対して1~60重量%、好ましくは10~40重量%の耐衝撃性改良剤をさらに含む、請求項1記載の中間層ポリマー組成物。
【請求項4】
1つ又は複数の官能化ポリマーを含む、請求項1記載の中間層ポリマー組成物。
【請求項5】
前記官能性が、エポキシ、カルボン酸、無水物、カルボキシレート、アミン、シロキサン、シリコーン、ウレタン、及びアミド基からなる群から選択される、請求項4記載の中間層ポリマー組成物。
【請求項6】
前記組成物が、一次マトリックスポリマーとして(メタ)アクリルポリマー又は共重合体を含む、請求項1記載の中間層ポリマー組成物。
【請求項7】
前記組成物が、安定剤、可塑剤、充填剤、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、UV安定剤、及び分散助剤からなる群から選択される1つ又は複数の添加剤をさらに含む、請求項1記載の中間層ポリマー組成物。
【請求項8】
複合構造であって、
a)複合材料である構造1と、
b)120℃未満、110℃、好ましくは95℃未満、好ましくは90℃未満、より好ましくは85℃未満、より好ましくは80℃未満、及び70℃未満のTgを有する熱可塑性ポリマーを含む中間層組成物と、
c)熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー又は金属構造若しくは部品である構造2と
を順に含む、複合構造。
【請求項9】
前記構造1及び構造2の両方が熱可塑性複合材である、請求項8記載の複合構造。
【請求項10】
複合構造(1)を熱可塑性又は熱硬化性構造(2)に溶接する方法であって、
a)熱可塑性複合構造(1)と熱可塑性構造、熱硬化性構造、又は金属部品(2)との間に、かつ直接接触させて熱可塑性中間層組成物を配置する工程であって、前記中間層が、120℃未満、110℃、好ましくは95℃未満、好ましくは90℃未満、より好ましくは85℃未満、より好ましくは80℃未満のTgを有する熱可塑性ポリマーを含む、工程と、
b)有効量の前記熱可塑性中間層組成物にエネルギーを加えて、前記熱可塑性中間層組成物を溶融し、構造1を構造2に溶接する工程と、
c)前記エネルギーを取り除き、得られた溶接物品を冷却させる工程と
を含む方法。
【請求項11】
高温ガス溶接、高温くさび溶接、押出溶接、熱板溶接、赤外線溶接、レーザ溶接、スピン溶接、攪拌溶接、振動溶接、超音波溶接、抵抗/インプラント/電気融合溶接、誘導溶接、誘電溶接、及びマイクロ波溶接からなる群から選択される、請求項10記載の溶接方法。
【請求項12】
抵抗溶接又は誘導溶接から選択され、構造1と構造2との間に前記中間層を配置する前に、前記中間層組成物内にサセプターを埋め込む工程を含む、請求項11記載の溶接方法。
【請求項13】
前記サセプターが前記中間層組成物内に埋め込まれる、請求項12記載の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性複合部品又は熱硬化性複合部品を他の熱可塑性部品又は熱硬化性部品に、又は金属部品に溶接するための接着層としての低Tg相溶性樹脂の使用に関する。本発明は、熱可塑性複合部品を他の熱可塑性部品、特に風力タービンブレードセクションなどの非常に大きな部品に溶接するのに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
使用中に高い応力を吸収しなければならない機械部品又は構造化部品は、複合材料から広範囲にわたり製造されている。複合材料は、2つ以上の材料の巨視的な組み合わせである。典型的には、複合材料は、構造の凝集のための連続相を形成するマトリックス材料と、機械的特性のための様々な構造を有する補強材料とを含む。
【0003】
複合材料は、いくつかの産業分野、例えば、建築、自動車、航空宇宙、輸送、レジャー、エレクトロニクス、及びスポーツで広く使用されている。複合材料は、多くの場合、より密度の低い均質な材料と比較して、より良好な機械的性能(例えば、より高い引張強度、より高い引張弾性率、より高い破壊靱性など)を提供すると考えられる。
【0004】
商業的な工業規模では、量で最も重要なクラスの複合材は、有機マトリックスとの複合材であり、ここでマトリックス材料はポリマーである。ポリマー複合材料の主要なマトリックス又は連続相は、典型的には、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーのいずれかである。ポリマー複合材料製造の典型的な例では、プレポリマーは、典型的には、ガラスビーズ又は繊維など、プレポリマーで湿潤又は含浸される別の成分と混合され、その後組成物が後硬化される。
【0005】
熱硬化性ポリマーマトリックスは剛性である。熱可塑性ポリマーは、加熱すると軟化するか又は粘度が低下し、熱及び/又は圧力を加えることによって新しい形状をとることができる。
【0006】
多くの場合、複合物品は、最終物品を形成するために一緒に組み合わされなければならない2つ以上の部品又は構造で製造される。例えば、中空の風車ブレードは、まず、風車ブレードの上部及び下部、さらに上部ピースと下部ピースとの間を通る、機械的安定性及び強度を提供するためのスパーキャップ形成することによって形成される。次いで、これらの構造は、それぞれの接触面で互いに接着されて、強固な最終物品を形成する。現在、複合材ピースの接着の大部分は、接着剤を使用して行われている。スマートサセプター(米国特許出願公開第2017/0165902号)の使用を含む、超音波溶接(米国特許出願公開第2017/0355150号)及び抵抗インプラント溶接(米国特許出願公開第2018/0178457号)など、いくつかの溶接方法が熱硬化性部品を接合するために使用されてきた。
【0007】
課題
最終的な物品における異種材料の使用を回避するために、接着剤を使用せずに、大きな熱可塑性又は熱硬化性複合材料を一緒に接着することが望まれている。現在、大きな複合材ピースは、接着剤によって互いに接着されている。大きなピースでは、外部エネルギー源を使用すること、又は単に接触面材料を加熱するために構造物全体を加熱することは実用的ではない。さらに、接合される表面間に加熱プレートを使用するなどのいくつかの溶接方法は、加熱後にピースを一緒に合わせる工程を必要とし、非常に大きなピースではほとんど不可能な難題である。
【0008】
熱可塑性複合材及び熱硬化性複合材を含む複合材料の別の問題は、一般に、強力な溶接を形成するのに十分なマトリックス材料が利用できないことである。この問題は、表面積公差がそれほど厳しくなく、ピース間のギャップが不均一である厚い材料では増幅され、完全な表面被覆のために充填すべきより大きなギャップを有する接触面の領域を残す。
【0009】
溶接のための中間層として、余分な材料が追加されてもよい。しかしながら、複合マトリックス樹脂のみから作製された中間層は、多くの場合、あまりにも脆いので有効な中間層として機能することができず、破損を起こしやすいことが見出された。
【0010】
解決法
ここで、一緒に溶接される構造と相溶性である低Tgの熱可塑性ポリマー組成物が、効果的な溶接方法における中間層として使用され得ることが見出された。これは、複合構造を熱可塑性若しくは熱硬化性構造、又は金属部品、特に熱可塑性複合構造に溶接する場合に特に効果的である。
【0011】
相溶性の低Tg中間層熱可塑性組成物は加熱することができ、複合構造を流動させて結合する。この中間層及び溶接方法は、風力タービンブレード及び他の大きな複合構造を形成するのに特に有用である。
【発明の概要】
【0012】
本明細書では、明確かつ簡潔な明細書を記載することを可能にする方法で実施形態を説明してきたが、それは、実施形態が、本発明から逸脱することなく様々に組み合わせたり分離したりすることができることを意図しており、そのように理解されるであろう。例えば、本明細書に記載のすべての好ましい特徴は、本明細書に記載の本発明のすべての態様に適用可能であることが理解されよう。
【0013】
第1の態様では、本発明は、熱可塑性若しくは熱硬化性複合構造(1)を熱可塑性若しくは熱硬化性構造、又は金属部品(2)に溶接するための中間層ポリマー組成物であって、中間層が、100℃未満、好ましくは95℃未満、好ましくは90℃未満、より好ましくは85℃未満、より好ましくは80℃未満、75℃未満、さらには70℃未満のTgを有する熱可塑性ポリマーを含む、中間層ポリマー組成物に関する。
【0014】
第2の態様では、態様1の中間層ポリマー組成物は、(メタ)アクリルポリマー又はコポリマー、スチレン系、ポリビニリデンフルオリド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)ポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリスチレン系(耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を含む)、機能化ポリオレフィン、ビニルエステル、ポリ(ビニルエステル)ポリエステル、及びそれらの混合物、好ましくは(メタ)アクリルポリマー又は共重合体を含有する。
【0015】
第3の態様では、態様1又は2の中間層ポリマー組成物は、全中間層ポリマー組成物に対して1~60重量%、好ましくは10~40重量%の耐衝撃性改良剤をさらに含有してもよい。
【0016】
第4の態様では、前述の態様の中間層ポリマー組成物は、1つ又は複数の機能性ポリマーを含有してもよく、機能性は、好ましくはエポキシ、カルボン酸、無水物からなる群から選択される。
【0017】
第5の態様では、複合構造が提示され、複合構造は、
a)熱可塑性複合材又は熱硬化性複合材である構造1と、
b)100℃未満、好ましくは95℃未満、好ましくは90℃未満、より好ましくは85℃未満、より好ましくは80℃未満、70℃未満、さらには60℃、50℃、及び40℃未満のTgを有する熱可塑性ポリマーを含む中間層組成物と、
c)構造2であって、前記外側構造が、熱可塑性ポリマー若しくは熱硬化性ポリマー、又は金属部品である構造2とを順に有する。
【0018】
第6の態様では、態様5の複合構造は、熱可塑性複合材として構造1と構造2の両方を有する。
【0019】
本発明の第7の態様は、複合構造(1)を熱可塑性又は熱硬化性構造(2)に溶接する方法であって、
a)複合構造(1)と熱可塑性若しくは熱硬化性構造又は金属部品(2)との間に、かつ直接接触させて熱可塑性中間層組成物を配置する工程であって、前記中間層が、95℃未満、好ましくは90℃未満、より好ましくは85℃未満、より好ましくは80℃未満のTgを有する熱可塑性ポリマーを含む、工程と、
b)有効量の前記熱可塑性中間層組成物にエネルギーを加えて、前記熱可塑性中間層組成物を溶融し、構造1を構造2に溶接する工程と、
c)エネルギーを取り除き、得られた溶接物品を冷却させる工程と、を含む方法に関する。
【0020】
第8の態様では、態様7の溶接方法が、高温ガス溶接、高温くさび溶接、押出溶接、熱板溶接、赤外線溶接、レーザ溶接、スピン溶接、攪拌溶接、振動溶接、超音波溶接、抵抗/インプラント/電気融合溶接、誘導溶接、誘電溶接、及びマイクロ波溶接から選択される溶接方法を含む。
【0021】
第9の態様では、態様7及び8の溶接方法が、構造1と構造2との間に前記中間層を配置する前に、前記中間層組成物内にサセプターを埋め込む工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、少なくとも1つの構造が複合材料であり、好ましくは少なくとも1つの構造が熱可塑性複合材である、2つ以上の構造を一緒に溶接するために使用される低Tg中間層組成物に関する。本発明はまた、新規な中間層低Tg組成物を使用する溶接方法、及び新規な中間層組成物を使用して、少なくとも1つの構造が熱可塑性複合構造である、少なくとも2つの構造を一緒に溶接することによって形成された複合物品に関する。
【0023】
本明細書に引用されるすべての参考文献は、参照により組み込まれる。別途指定のない限り、すべての分子量は、ガス透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定される重量平均分子量であり、すべてのパーセンテージは重量パーセントである。
【0024】
本明細書で使用される「共重合体」という用語は、2つのコモノマーを含む、2つ以上の異なるモノマー単位で構成されるポリマー、ターポリマー、及び3つ以上の異なるモノマーを有するポリマーを示す。共重合体は、ランダム又はブロックであってもよく、不均一又は均一であってもよく、バッチ、半バッチ又は連続プロセスによって合成されてもよい。
【0025】
本明細書で使用される「(メタ)アクリル」又は「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。
【0026】
本発明の中間層組成物は、互いに溶接することを意図した構造と相溶性である少なくとも1つの低Tg熱可塑性ポリマー樹脂を含有する。
【0027】
低Tgとは、本明細書で使用される場合、N2中、10℃/分の加熱速度のDSCで測定されるガラス転移温度を意味し、そこでTgは、120℃未満、110℃、好ましくは95℃未満、好ましくは90℃未満、より好ましくは85℃未満、より好ましくは80℃未満、好ましくは75℃未満、さらに70℃未満、60℃未満、50℃未満、さらには40℃未満である。中間層のTgは、熱可塑性複合材のマトリックスポリマーのTgより低く、好ましくは少なくとも15℃未満、より好ましくは少なくとも10℃未満、さらには20℃未満である。
【0028】
本明細書で使用される「相溶性ポリマー」は、互いに不混和性であるが、ブレンドとして巨視的に均一な物理的特性を示すポリマーを指す。巨視的に均一な特性は、一般に、成分ポリマー間の十分に強い相互作用によって引き起こされる。
【0029】
本明細書で使用される「混和性ポリマー」は、単一のガラス転移温度を有する、単一相構造である均一なポリマーブレンドを形成する2つ以上のポリマーを指す。
【0030】
アクリレートベースの熱可塑性複合構造と共に使用するための有用な中間層ポリマーには、(メタ)アクリレートポリマー及び共重合体(Arkemaから入手可能)、スチレン系、ポリビニリデンフルオリド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)ポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリスチレン系(耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を含む)、機能化ポリオレフィン、ビニルエステル、ポリ(ビニルエステル)、ポリエステル、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用されるアクリルポリマーには、アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位を含むホモポリマー、共重合体、及びターポリマーが含まれるが、これらに限定されない。アルキルメタクリレートモノマーは、好ましくはメチルメタクリレートであり、これはモノマー混合物の30~95重量パーセントを構成し得る。5~70%の他のアクリレート、メタクリレート、及び/又は他のビニルモノマーもモノマー混合物中に存在し得る。モノマー混合物に有用な他のメタクリレート、アクリレート、及び他のビニルモノマーには、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びエチルメタクリレート、ブチルアクリレート及びブチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート及びアクリレート、ラウリルアクリレート及びラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート及びステアリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びメタクリレート、メトキシエチルアクリレート及びメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート及びメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート及びメタクリレートモノマー、スチレン及びその誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
スチレン系ポリマーとしては、本明細書で使用される場合、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)共重合体、スチレンアクリロニトリル(SAN)共重合体、メタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック(SBS)共重合体及びそれらの部分的又は完全に水素化された誘導体、スチレン-イソプロペン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロック共重合体及びそれらの部分的又は完全に水素化された誘導体、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体、例えばスチレン-メチルメタクリレート共重合体(S/MMA)、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のスチレン系共重合体は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも25重量%のスチレンモノマー含有量を有する。
【0033】
当業者は、コモノマー比を選択して、所望の低Tg共重合体を提供することができる。
【0034】
中間層ポリマーマトリックスはまた、接着特性を改善し、架橋部位を提供するために使用することができる、いくつかの機能性モノマー単位を含有してもよい。有用な官能基には、エポキシ、カルボン酸、カルボキシレート、アミン、シロキサン、シリコーン、ウレタン、アミド及び無水物基が含まれるが、これらに限定されない。官能基は、一般に、共重合体又はターポリマーのTgを増加させるので、十分に低いTgのモノマーを含ませて、Tgを増加させる機能性モノマーと相殺しなければならないことに留意されたい。低レベルの架橋は、より良好な耐疲労性及び熱安定性を提供することができる。
【0035】
中間層組成物は、溶接される構造間の中間層組成物の流動性を提供するため、及び、より良好な接着をもたらす中間層の延性を高めるために低Tgが必要である。
【0036】
低Tg中間層組成物は、ポリマー及び添加剤を含む中間層組成物全体のTgを意味する。当業者は、可塑剤などの添加剤をポリマー組成物に添加して、組成物のより低いTgを提供することを認識するであろう。さらに、低Tgは、ポリマー組成物を隣接するポリマー構造間の接触面に流入させるために望ましいので、低Tg組成物は、低Tgポリマーと、より高いTgポリマーとの相溶性ブレンド、例えば、ArkemaからRNEW(登録商標)の商標で入手可能なポリ乳酸とポリメチルメタクリレートとのブレンドであってもよい。
【0037】
ポリマー配合物中に存在する典型的な添加剤は、典型的な有効レベルで中間層組成物に添加され得る。これらの添加剤には、安定剤、可塑剤、充填剤、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、UV安定剤及び分散助剤が含まれるが、これらに限定されない。可塑剤などのこれらの添加剤のいくつかは、中間層組成物の延性を改善するのにさらに役立つ。
【0038】
耐衝撃改良剤は、マトリックスポリマーの中間層組成物及びすべての添加剤の合計に基づいて、1~60重量%、好ましくは10~40重量%のレベルで存在してもよい。本発明において有用な耐衝撃改良剤には、コア-シェル粒子(硬質ドコア及び軟質コアの両方)、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体が含まれるが、これらに限定されない。耐衝撃改良剤は、中間層の延性を高めることができ、溶接の性能を向上させることができる。
【0039】
コア-シェル耐衝撃改良剤は、本明細書で使用される場合、少なくとも2つの層のコア/シェル粒子構造を有する多段式の連続生成ポリマーである。好ましくは、コア-シェル改良剤は、硬質コア層、1つ又は複数の中間エラストマー層、及び硬質シェル層から作製される3つの層を含む。硬質コア層の存在は、軟質コア層を有するコア/シェル改良剤では達成されない、良好な耐衝撃強度と高い弾性率との望ましいバランスを提供する。
【0040】
中間層は、溶接される構造と完全に接触するのに有効な厚さで存在する。厚さが十分に大きくなければ、溶接される構造間のギャップを満たさない。大型の部品の場合、公差は可変範囲であり、中間層は、最良の接着のためにギャップ全体を満たすことができなければならない。一般に、中間層は、0.1~10mmの間の厚さ、好ましくは0.2~5mm、より好ましくは0.25~3mmの厚さであるべきである。
【0041】
一実施形態では、中間層ポリマーは、後述するように、アクリル熱可塑性複合材を形成するために使用されるマトリックスプリプレグの組成物と同様の、重合開始剤と混合された液体アクリルポリマー/モノマー系であり、溶接プロセス中に硬化する。
【0042】
構造
本明細書で使用される「構造1及び2」とは、中間層によって形成された溶接部の両側に直接接する構造を意味する。各構造の、中間層溶接部と接触する層は、本明細書では外層と呼ばれる。構造1及び2は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
【0043】
構造1及び2の少なくとも一方、好ましくは両方が複合材である。好ましい熱可塑性複合材は、繊維強化熱可塑性樹脂、例えば、Arkema製の硬化ELIUM(登録商標)樹脂系などである。ELIUM(登録商標)樹脂系は、
(a)少なくとも70重量%のメチルメタクリレートモノマー単位と、0.3~30重量%の、メチルメタクリレートと共重合可能な少なくとも1つのエチレン不飽和を有する少なくとも1つのモノマーとを含む、少なくとも1つのアクリル共重合体からなるポリマー熱可塑性(メタ)アクリルマトリックス;
(b)ポリマー複合材料の総重量に基づいて、少なくとも30重量パーセントの繊維材料であって、繊維のアスペクト比が少なくとも1000である繊維を含むか、又は二次元巨視的構造を有する、補強材としての繊維材料、及び
c)開始剤、を有するものである。
【0044】
好ましい実施形態では、繊維材料及びポリマー熱可塑性(メタ)アクリルマトリックスを、ポリマー熱可塑性(メタ)アクリルマトリックスを形成するためのモノマーを含む液体シロップ剤で繊維材料を湿らせる工程によって重合前に接触さる。液体シロップ剤の25℃での動粘度は、閉鎖された不透明な型中で10mPa*s~10000mPa*sである。
【0045】
好ましい一実施形態では、本発明の溶接複合物品は、熱可塑性ポリマー複合材である少なくとも1つの構造を含む。溶接物品の第2の構造(2)は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性複合材、熱硬化性複合材又は金属であってもよい。溶接方法は、スパーキャップ又は補助構造などの構造を熱可塑性複合構造に取り付ける手段を提供する。典型的な熱硬化性複合マトリックスとしては、エポキシ、ビニルエステル及びポリウレタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
好ましい一実施形態では、第1及び第2の構造(1及び2)の両方が、同じポリマー化学的性質又は異なる化学的性質であり得る熱可塑性複合材である。構造1及び構造2の化学的性質は、各構造(マトリックスポリマー)が中間層と相溶性であれば、互いに相溶性である必要はない。
【0047】
最も好ましい実施形態は、同じ又はほぼ同じ組成の2つの熱可塑性複合材の溶接、例えば、風力ブレードの上半分及び下半分の溶接を含む。
【0048】
本発明によって、以下の構造を溶接するための中間層の使用が予想される。
a.熱可塑性複合材を熱可塑性複合材へ
b.熱可塑性(非複合)を熱可塑性複合材へ
c.熱可塑性複合材を熱硬化性複合材へ
d.熱可塑性複合材を熱硬化性非複合材へ
e.熱硬化性複合材を熱可塑性複合材へ
f.熱硬化性複合材を熱硬化性非複合材へ
g.熱硬化性複合材を熱可塑性非複合材へ
h.熱可塑性複合材を金属部品へ
i.熱硬化性複合材を金属部品へ
【0049】
上記の各構造のマトリックスポリマーは、中間層ポリマー組成物と相溶性である必要がある。構造のマトリックスポリマー同士の相溶性が好ましいが、必須ではない。
【0050】
溶接方法
中間層を使用して、2つ以上の異なる構造を一緒に溶接する。いくつかの異なる溶接方法を使用することができ、溶接方法の選択は、構造のサイズ、利用可能な機器、及び他の考慮事項に依存し得る。いくつかの有用な方法は、高温ガス溶接、高温くさび溶接、押出溶接、熱板溶接、赤外線溶接、レーザ溶接、スピン溶接、攪拌溶接、振動溶接、超音波溶接、抵抗/インプラント/電気融合溶接、誘導溶接、誘電溶接、及びマイクロ波溶接を含むが、これらに限定されない。これらの方法により、熱可塑性アクリル複合材料を迅速に接合し、所望の機械的性能を満たす結合を提供することができる。
【0051】
一実施形態では、溶接方法は、外部電源によって電力供給されるステンレス鋼メッシュなどのサセプターを使用して中間層を加熱し、それが溶接される構造間を流動できるようにする、抵抗溶接又は誘導溶接方法である。サセプターは、溶接される構造間に挿入する前に中間層組成物に封入されてもよい。封入は、コーティング又は溶融積層によるものであってもよく、又は中間層の層が接合部内のサセプターの両側に配置されてもよい。反応性液体樹脂組成物の場合、サセプターに液体反応性樹脂組成物を注入し、硬化させて対合する接触面に単一成分を生成することができる。
【0052】
一実施形態では、所望の接合部以外での中間層の流動を減らすために、溶接される領域の側面にゴムストリップを配置することができる。
【実施例0053】
各実施例では、重ね剪断接着試験、ASTM D5868を使用する。
【0054】
実施例1
ELIUM(登録商標)188O系及びbiaxガラス繊維を使用した真空注入によって、2枚の平坦な1/8インチ厚の複合シートを作製した。シートを、63℃のHDTで0.5mmアクリルフィルム、Solarkote(登録商標)P600の単層の間に一緒に挟んだ。サンドイッチ状のものを、上部プラテンを197℃に加熱し、下部プラテンを99℃に加熱したCarverプレス機に入れた。圧力を加えることなくプラテンを閉じた。1分後、サンドイッチ状のものを加熱プレス機から取り出し、常温のcarverプレス機に移し、1000ポンドの圧力を2分間かけた。得られた厚さ0.2595インチのパネルの重ね剪断試験は、破断時における27MPA応力という結果であった。
【0055】
実施例2
熱板を使用して重ね剪断試料を溶接した。この場合、実施例1で使用した同じELIUM(登録商標)樹脂系注入複合シートを、同じフィルムを挟んで熱板上に置いた。熱板を250℃に加熱し、200℃の部品温度を記録した。クランプを使用して積み重ねを一緒に保持し、連続的な圧力を加えた。部品を2分間加熱し、次いでクランプしながら2分間冷却した。重ね剪断試験の結果は、厚さ0.217インチの試料の破断時応力が、46MPAであった。
熱可塑性複合構造(1)を熱可塑性若しくは熱硬化性構造、又は金属部品(2)に溶接するための中間層ポリマー組成物であって、120℃未満、110℃、好ましくは95℃未満、好ましくは90℃未満、より好ましくは85℃未満、より好ましくは80℃未満、75℃未満、さらには70℃未満、60℃未満、50℃未満、さらには40℃未満のTgを有する熱可塑性ポリマーを含み、前記構造(1)及び(2)と相溶性である、中間層ポリマー組成物。