(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015734
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】皮内適用のための新規局所製剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/445 20060101AFI20250123BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20250123BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20250123BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20250123BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20250123BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250123BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20250123BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20250123BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A61K31/445
A61K9/06
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/38
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/10
A61P37/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024200647
(22)【出願日】2024-11-18
(62)【分割の表示】P 2021535490の分割
【原出願日】2019-08-29
(31)【優先権主張番号】62/725,653
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521085157
【氏名又は名称】アークティック セラピューティクス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】ハーコン ハコナーソン
(72)【発明者】
【氏名】チャーリー カオ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ティー.キサク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エム.ニューサム
(72)【発明者】
【氏名】アバドヘシュ エス.クシュワハ
(57)【要約】
【課題】本発明は、ドネペジルの局所製剤を含む組成物、および経皮適用のためのその使用を提供する。
【解決手段】本発明の態様は、被験者にドネペジルを皮内的に送達するため(すなわち、薬物の皮膚内保持のため)局所投与用に処方された組成物を包含する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドネペジルを皮内に送達するために局所投与用に調製された組成物であって、
(i)ドネペジルまたはドネペジルHCl、
(ii)約5重量%~約40重量%の2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オール、
(iii)パルミチン酸イソプロピル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸(C10)トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、約5重量%~約15重量%の脂肪酸エステル、および
(iv)エタノール、セチルアルコール及びそれらの組合せからなる群から選択される、約4重量%~約50重量%の一価アルコール、
を含む組成物。
【請求項2】
(v)PEG400、PEG1450及びPEG600からなる群から選択される少なくとも1つのポリエチレングリコール、ここで前記少なくとも1つのポリエチレングリコールは、低分子量ポリエチレングリコールである、
を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オールに加えて少なくとも2つの一価アルコールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
末端ヒドロキシル基の代わりに少なくとも1つの末端アルコキシ基を有する、ジ-、オリゴ-またはポリ-エチレングリコールから成る群より選択された少なくとも2つのグリコールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、溶媒中のドネペジルの組成物により提供されるものの2倍である、経皮的に提供されるドネペジルの量に関するドネペジルの皮内濃度を送達する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物がドネペジル、エタノール、PEG400、PEG1450およびPEG600から成る群より選択された少なくとも2つのPEG、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オール、およびパルミチン酸イソプロピルを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
3%の量でヒドロキシプロピルセルロースを更に含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ドネペジルが0.5%~1.5%(重量/重量)の量で存在し、エタノールが30%~40%の量で存在し、PEG400が16%~26%の量で存在し、PEG1450またはPEG600のいずれか一方が5%の量で存在し、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オールが20%~30%の量で存在し、そしてパルミチン酸イソプロピルが5%の量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
ドネペジルが1%(重量/重量)の量で存在し、エタノールが40%の量で存在し、PEG400が16%の量で存在し、PEG600が5%の量で存在し、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オールが30%の量で存在し、そしてパルミチン酸イソプロピルが5%の量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
ドネペジルが1%(重量/重量)の量で存在し、エタノールが40%の量で存在し、PEG400が26%の量で存在し、PEG600が5%の量で存在し、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オールが20%の量で存在し、そしてパルミチン酸イソプロピルが5%の量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物がドネペジルHCl、水、セチルアルコール、PEG400、PEG1450およびPEG600から成る群より選択された少なくとも2つのPEG、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オール、カプリル酸グリセリドとカプリン酸(C10)グリセリドの混合物、ミリスチン酸イソプロピル、およびパルミチン酸イソプロピルを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
プロピレングリコールを7%の量で更に含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ドネペジルHClが1%(重量/重量)の量で存在し、水が40.3%の量で存在し、セチルアルコールが10%の量で存在し、ミリスチン酸イソプロピルが10%の量で存在し、カプリル酸トリグリセリドとカプリン酸(C10)トリグリセリドの混合物が10%の量で存在し、そしてパルミチン酸イソプロピルが7%の量で存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
ドネペジルHClが1%(重量/重量)の量で存在し、水が56.9%の量で存在し、セチルアルコールが3%の量で存在し、カプリル酸トリグリセリドとカプリン酸(C10)トリグリセリドの混合物が10%の量で存在し、そしてパルミチン酸イソプロピルが7%の量で存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
治療を必要とする哺乳動物において尋常性乾癬(psoriasis vulgaris)を治療するための医薬の製造における請求項5の組成物の使用であって、ここで(1)前記組成物がゲル、クリームおよび軟膏から成る群より選択された形態にあり;かつ(2)ドネペジルの濃度が該組成物の0.05重量%~2重量%である使用。
【請求項16】
治療を必要とする哺乳動物において尋常性乾癬(psoriasis vulgaris)を治療するための医薬の製造における請求項10の組成物の使用であって、ここで(1)前記組成物がゲル、クリームおよび軟膏から成る群より選択された形態にあり;かつ(2)ドネペジルHClの濃度が該組成物の0.05重量%~2重量%である使用。
【請求項17】
前記組成物が2~6週間の期間に渡り1日2回乾癬プラークに局所的に投与される、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
前記組成物が2~6週間の期間に渡り1日2回乾癬プラークに局所的に投与される、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
治療を必要とする哺乳動物においてアトピー性皮膚炎を治療するための医薬の製造における請求項5の組成物の使用であって、ここで(1)前記組成物がゲル、クリームおよび軟膏から成る群より選択された形態にあり;かつ(2)ドネペジルの濃度が該組成物の0.05重量%~2重量%である使用。
【請求項20】
治療を必要とする哺乳動物においてアトピー性皮膚炎を治療するための医薬の製造における請求項10の組成物の使用であって、ここで(1)前記組成物がゲル、クリームおよび軟膏から成る群より選択された形態にあり;かつ(2)ドネペジルHClの濃度が該組成物の0.05%~2重量%である使用。
【請求項21】
治療を必要とする哺乳動物においてざ瘡(ニキビ)を治療するための医薬の製造における請求項5の組成物の使用であって、ここで(1)前記組成物がゲル、クリームおよび軟膏から成る群より選択された形態にあり;かつ(2)ドネペジルの濃度が該組成物の0.05重量%~2重量%である使用。
【請求項22】
治療を必要とする哺乳動物においてざ瘡(ニキビ)を治療するための医薬の製造における請求項10の組成物の使用であって、ここで(1)前記組成物がゲル、クリームおよび軟膏から成る群より選択された形態にあり;かつ(2)ドネペジルの濃度が該組成物の0.05重量%~2重量%である使用。
【請求項23】
前記組成物がドネペジル、エタノール、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オール、およびパルミチン酸イソプロピルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
3%の量でヒドロキシプロピルセルロースを更に含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
ドネペジルが0.5~1.5%(重量/重量)の量で存在し、エタノールが30%~40%の量で存在し、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オールが20%~30%の量で存在し、パルミチン酸イソプロピルが5%の量で存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項26】
ドネペジルが1%(重量/重量)の量で存在し、エタノールが40%の量で存在し、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オールが30%の量で存在し、そしてパルミチン酸イソプロピルが5%の量で存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項27】
ドネペジルが1%(重量/重量)の量で存在し、エタノールが40%の量で存在し、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オールが20%の量で存在し、そしてパルミチン酸イソプロピルが5%の量で存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物がドネペジルHCl、水、セチルアルコール、PEG400、PEG1450およびPEG600から成る群より選択された少なくとも2つのPEG、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オール、カプリル酸およびカプリン酸(C10)トリグリセリドの混合物、およびパルミチン酸イソプロピルを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項29】
プロピレングリコールを7%の量で更に含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
ドネペジルHClが1%(重量/重量)の量で存在し、水が48.9%の量で存在し、セチルアルコールが11%の量で存在し、カプリル酸およびカプリン酸(C10)トリグリセリドの混合物が5%の量で存在し、そしてパルミチン酸イソプロピルが7%の量で存在する、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
ドネペジルHClが1%(重量/重量)の量で存在し、水が51%の量で存在し、セチルアルコールが9%の量で存在し、カプリル酸およびカプリン酸(C10)トリグリセリドの混合物が5%の量で存在し、そしてパルミチン酸イソプロピルが7%の量で存在する、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
ドネペジルHClが1%(重量/重量)の量で存在し、水が49%の量で存在し、セチルアルコールが11%の量で存在し、カプリル酸およびカプリン酸(C10)トリグリセリドの混合物が5%の量で存在し、そしてパルミチン酸イソプロピルが7%の量で存在する、請求項28に記載の組成物。
【請求項33】
治療を必要とする哺乳動物において尋常性乾癬(psoriasis vulgaris)を治療するための医薬の製造における請求項22の組成物の使用であって、ここで(1)前記組成物がゲル、クリームおよび軟膏から成る群より選択された形態にあり;かつ(2)ドネペジルの濃度が該組成物の0.05重量%~2重量%である使用。
【請求項34】
治療を必要とする哺乳動物において尋常性乾癬(psoriasis vulgaris)を治療するための医薬の製造における請求項31の組成物の使用であって、ここで(1)前記組成物がゲル、クリームおよび軟膏から成る群より選択された形態にあり;かつ(2)ドネペジルHClの濃度が該組成物の0.05%~2重量%である使用。
【請求項35】
前記組成物が2~6週間の期間に渡り1日2回乾癬プラークに局所的に投与される、請求項33に記載の使用。
【請求項36】
前記組成物が2~6週間の期間に渡り1日2回乾癬プラークに局所的に投与される、請求項34に記載の使用。
【請求項37】
治療を必要とする哺乳動物においてアトピー性皮膚炎を治療するための医薬の製造における請求項28の組成物の使用であって、ここで(1)前記組成物がゲル、クリームおよび軟膏から成る群より選択された形態にあり;かつ(2)ドネペジルHClの濃度が該組成物の0.05%~2重量%である使用。
【請求項38】
治療を必要とする哺乳動物においてざ瘡(ニキビ)を治療するための医薬の製造における請求項28の組成物の使用であって、ここで(1)前記組成物がゲル、クリームおよび軟膏から成る群より選択された形態にあり;かつ(2)ドネペジルHClの濃度が該組成物の0.05%~2重量%である使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、2018年8月31日出願の米国仮出願第62/725,653号に対する優先権を主張し、その出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
アセチルコリンは、中枢神経系(CNS)の外側にある多種多様な細胞に存在することがますます認識されてきている典型的な神経伝達物質である。アセチルコリンは線維芽細胞、メラニン形成細胞、内皮細胞および免疫系細胞において生産されることが示されている。アセチルコリンは、2つのクラスの受容体、すなわちニコチン性アセチルコリン受容体とムスカリン性受容体を介して細胞に作用して、そこでその細胞の多様な細胞機能を変化させることができる。ニコチン性アセチルコリン受容体は、5つのサブユニット:α3、α5、β2、β4サブユニット、およびα7サブユニット、により形成されるリガンドゲート型イオンチャネルであり、それら自身の機能的ニコチン性受容体を形成することができる。これらの構造体の存在、すなわちケラチン細胞における存在は、組織化学的方法、すなわちα3またはα7サブユニットに対する抗体により証明することができる。
【0003】
ドネペジル塩酸塩は、化学的には(±)-2,3-ジヒドロ-5,6-ジメトキシ-2-[[1-(フェニルメチル)-4-ピペリジニル]メチル]-1H-インデン-1-オン塩酸塩として知られる、アセチルコリンエステラーゼ酵素の可逆的阻害剤である。ドネペジル塩酸塩は、通常はE2020として薬理学文献中に言及される。それはC24H29NO3HClの示性式を有し、分子量は415.96である。ドネペジル塩酸塩は白色結晶質粉末であり、クロロホルムに易溶であり、水および氷酢酸に可溶であり、エタノールおよびアセトニトリルには難溶であり、酢酸エチルおよびn-ヘキサンには実質的に不溶である。
【0004】
ドネペジル塩酸塩は、アルツハイマー病の治療用にアリセプト(Aricept;登録商標)としてヒトへの治療が承認されている。それは経口投与される薬物である。経皮的に送達されるようにドネペジルを製剤化する試みが行われている。そのような製剤の目標は、アルツハイマー病や認知症および関連する精神疾患を治療するために全身投与用の迅速な経皮送達を達成することである。この経路は、経口投与形を用いる場合には患者コンプライアンスについて懸念があるために有利である。幾つかの経皮的実施形態は、経皮製剤がその中に付着または埋封されているパッチ形式を包含する。Choi等の米国特許第9,155,711号明細書およびKawakami他の米国特許第8,840,922号明細書は、高い皮膚浸透速度を示すだけでなく、治療上有効な血中濃度を少なくとも24時間継続的に維持する、アルツハイマー病の治療および経皮薬物送達システムについて論じている。更に、Kawakamiによる技術は、ラウリルアルコール、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、乳酸セチル、オレイルアルコール、ソルビタンモノオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ラウロマクロゴール、N-メチル-2-ピロリドンおよびトリアセチンから選択された吸収促進剤を用いる、経皮送達を介したアルツハイマーの治療のためのドネペジルを教示している。しかしながら、ドネペジルを皮内に送達できかつ皮内に送達すべきであるという教示は存在しない。
【0005】
局所適用のためのドネペジルの使用をさらに複雑にしているのは、アリセプト(ドネペジル塩酸塩)のヒト臨床試験の間に観察された1つの一般的な副作用(有害作用)が、湿疹および掻痒というネガティブな副作用であることが知られているからである。
【0006】
より最近の教示は、ドネペジル塩酸塩およびドネペジルを皮膚上に直接適用して、多数の皮膚疾患を治療することができることを示した。例えば、Snorrason他の米国特許9,186,345号および米国特許第9,730,919号明細書を参照されたい。
【0007】
ドネペジルやその塩を皮膚疾患の治療または緩和に使用できることは、当該技術分野において幾つかの教示が存在するが、皮内送達を達成するための局所製剤は知られておらず、それは合併症を伴う。皮膚は、分子送達に対する優れたバリアを提供することによって外因性分子、特に薬剤のような分子のフラックスを妨害するように進化してきた。経皮投与形態では少数の薬物分子のみが利用可能であり、例えば、30未満の薬物分子が経皮パッチに利用可能である。主障壁を通過して薬物分子を侵入させ、角質層と呼ばれる表皮の最外層に薬物を送達し、そして薬物の皮内濃度を維持することの取り組みは、まだなお困難を呈している。
【0008】
角質層を通過して活性薬剤を送達するために、幾つかのいわゆる物理的方法が記載されている。このような方法は、アブレーションによって角質層を除去するか、または角質層を損傷させたり、角質層を穿刺する。物理的方法は、イオン導入法またはエレクトロポレーション、超音波処理、および、皮下注射針またはマイクロニードルアレイのような電気的補助技術を含む。物理的方法に代わる好ましい代替法は、いわゆる受動的方法である。物理的デバイスにより損傷を与えるのではなく、受動的な方法は化学的または分子的手段を使用して角質層の透過性を高める。最も魅力的な受動的方法は、分子浸透促進剤、すなわちMPE(分子レベルで角質層の構造と相互作用して、幾つかの機序のうちの1つ以上により、例えば角質の脂質二重層を破壊することにより、分子の侵入を促進する分子である)の使用を必要とする。
【0009】
300種以上の物質がMPEとして同定されているが、市販の製剤中に好結果に配合されているのはごく一部に過ぎない。その理由は幾つかある。第一に、有力なMPEの多くは皮膚刺激性であり、よって実用的でなく、皮膚疾患を治療するという目標に反する。第二に、局所または経皮製剤中に新たな賦形剤を配合するには、そのような賦形剤の安全性を確立することの負担が、新規薬物分子に向かうことと双璧を成し得るので、相当な規制上の障害が存在する。第三に、最もよく機能するMPE系は、個別のMPEであるのは稀であってむしろ複数のMPEのカクテルである。第四に、高性能MPEは通常、多かれ少なかれ分子特異的である。1つの薬物分子に対して優れた機能を果たすMPE系は、通常、異なる薬物分子に対してはあまりよく機能しないだろう。第五に、一般に特定のベース製剤シャーシにおいてかつ特定の製剤形態において、どのMPEシステムが特定の薬物分子に最も良く機能するのかを予測することは不可能である。従って、局所または経皮送達に魅力がある各分子には、効果的なMPE系に対する巨大なニーズが存在する。さらに、分子の治療上有効な皮膚濃度を維持するのに追加の必要条件が存在する場合には、そのニーズは更に一層大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、ドネペジルおよびドネペジル塩酸塩に対する皮膚科学的用途の知識があっても、皮膚の皮膚層中への化合物の最大透過と保持を可能にする製剤を開発する必要がまだ依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様は、被験者にドネペジルを皮内的に送達するため(すなわち、薬物の皮膚内保持のため)局所投与用に処方された組成物を包含する。
【0012】
別の態様では、本発明は、ドネペジルを皮内的に送達するために局所投与用に調製された組成物であって、(i) ドネペジルまたは薬学的に許容されるその塩、(ii) 2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オール、(ii) 脂肪酸エステル、および(iv) 一価アルコールを含む組成物に関する。種々の実施形態では、組成物は更に少なくとも1つの低分子量ポリエチレングリコールを含む。幾つかの実施形態では、組成物は少なくとも2つの一価アルコールを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、末端ヒドロキシル基の代わりに少なくとも1つの末端アルコキシ基を有するジ-、オリゴ-またはポリ-エチレングリコールから成る群より選択された少なくとも2つの一価アルコールを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、溶媒中のドネペジルの組成物により提供されるものの少なくとも2倍である、経皮的に供給されるドネペジルの量に関するドネペジルの皮内濃度を送達する。幾つかの実施形態では、組成物はドネペジル、エタノール、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オール、およびパルミチン酸イソプロピルを含む。
【0013】
本発明の別の態様では、組成物は、ドネペジルHCl、水、セチルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オール、カプリル酸およびカプリン酸(C10)トリグリセリドの混合物、およびパルミチン酸イソプロピルを含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、治療を必要とする哺乳動物において尋常性乾癬(psoriasis vulgaris)を治療する方法であって、哺乳動物上の尋常性乾癬に本明細書中に記載の組成物を局所投与することを含み、ここで(1) 該組成物はゲル、クリームまたは軟膏から成る群より選択された形態であり;そして(2) ドネペジルまたはドネペジル塩酸塩の濃度が該組成物の0.05重量%~2重量%である方法を含む。幾つかの実施形態では、組成物は2~6週間の期間に渡り1日2回乾癬プラークに局所投与される。
【0015】
別の態様では、本発明は、治療を必要とする哺乳動物においてアトピー性皮膚炎を治療する方法であって、哺乳動物の皮膚に本明細書に記載の組成物を局所投与することを含み、ここで(1) 該組成物はゲル、クリームまたは軟膏から成る群より選択された形態であり;そして(2) ドネペジルまたはドネペジル塩酸塩の濃度が該組成物の0.05重量%~2重量%である方法を含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、治療を必要とする哺乳動物においてざ瘡(ニキビ)を治療する方法であって、哺乳動物の皮膚に本明細書に記載の組成物を局所投与することを含み、ここで(1) 該組成物はゲル、クリームまたは軟膏から成る群より選択された形態であり;そして(2) ドネペジルまたはドネペジル塩酸塩の濃度が該組成物の0.05重量%~2重量%である方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、1重量%(wt%)での純粋溶媒混合物中でのスクリーニングから得られたデータを表す棒グラフを示す。純粋なDMSO(Arctic F3)が最大量の活性物質(有効成分)を送達した。
【
図2】
図2は、DMSO+他の溶媒中でのスクリーニングから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図3】
図3は、DMSO+他の溶媒および他の溶媒混合物中でのスクリーニングから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図4】
図4は、DMSO+複数溶媒および他の溶媒混合物中でのスクリーニングから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図5】
図5は、同様な溶媒シャーシ中のドネペジルHClおよびドネペジル塩基をスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図6】
図6は、同様な溶媒シャーシ中のドネペジルHClおよびドネペジル塩基をスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図7】
図7は、エタノール/プロピレングリコールシャーシ中のドネペジル塩基をスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図8】
図8は、エタノール/プロピレングリコールシャーシ中のドネペジル塩基をスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図9】
図9は、エタノール/プロピレングリコールシャーシ中のドネペジル塩基をスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図10】
図10は、エタノール/プロピレングリコール/トランスクトールシャーシ中のドネペジル塩基をスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図11】
図11は、エタノール/プロピレングリコール/トランスクトールシャーシ中のドネペジル塩基をスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図12】
図12は、エタノール/プロピレングリコール/トランスクトールシャーシ中のドネペジル塩基をスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図13】
図13は、エタノール/プロピレングリコール/トランスクトールシャーシ中のドネペジル塩基をスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図14】
図14は、エタノール/プロピレングリコール/トランスクトールシャーシ中のドネペジル塩基をスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図15】
図15は、エタノール/プロピレングリコール/トランスクトールシャーシ中のドネペジル塩基をスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図16】
図16は、パルミチン酸イソプロピルを含むエタノール/プロピレングリコール/トランスクトールシャーシ中のドネペジル塩基をスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。フラックス研究は、基層(substrate)として死体皮膚を使用して行われた。
【
図17】
図17は、パルミチン酸イソプロピルを含むエタノール/プロピレングリコール/トランスクトールシャーシ中のドネペジル塩基をスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。フラックス研究は、基板として死体皮膚を使用して行われた。末端に「G」を有する製剤は、それらの同等の製剤のゲル化形であった。
【
図18】
図18は、パルミチン酸イソプロピルを含むエタノール/プロピレングリコール/トランスクトールシャーシ中のドネペジル塩基およびドネペジルHClをスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図19】
図19は、パルミチン酸イソプロピルを含むエタノール/トランスクトールシャーシ中のドネペジル塩基およびドネペジルHClをスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。フラックスを遅くし、蓄積量を皮膚組織内により多く移行させるために、PEGを製剤に添加した。
【
図20】
図20は、パルミチン酸イソプロピルおよびPEGを含むエタノール/トランスクトールシャーシ中のドネペジル塩基およびドネペジルHClをスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。クリーム製剤(F149およびF150)も同様に試験した。
【
図21】
図21は、PEG/エタノール混合物を最適化することに焦点を当てて、パルミチン酸イソプロピルおよびPEGを含むエタノール/トランスクトールシャーシ中のドネペジル塩基ゲルをスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図22】
図22は、パルミチン酸イソプロピルおよびPEGを含むエタノール/トランスクトールシャーシ中のドネペジル塩基ゲルをスクリーニングすることから得られたデータを表す棒グラフを示す。PEG/エタノール混合物を更に最適化する。
【
図23】
図23は、パルミチン酸イソプロピル混合物を含むエタノール/PEG/トランスクトール中のドネペジル塩基ゲルの最終試験から得られたデータを表す棒グラフを示す。F162はドネペジルHClを用いたクリーム製剤である。
【
図24】
図24は、製剤Arct162A(またはArct162)、Arctl64A、Arctl64B、およびArctl64Cから得られたデータを表す棒グラフを示す。
【
図25A】
図25(
図25A~
図25Cを含む)は、膿胞状丘疹ざ瘡(ニキビ)を有する1名の男性患者と2名の女性患者における1日2回(b.i.d.)投与を伴う、F162クリーム製剤を用いた10日間治療の結果を示す。
図25Aは、アキュタン(Accutane)を含む別の治療に抵抗性である、左肩と背中にグレード3のざ瘡(ニキビ)を有する26歳の男性の写真画像パネルを示す(上のパネルはF162による治療の前であり、下のパネルはF162による10日間治療の後である)。
図25Bは、アキュタンを含む別の治療に抵抗性である、グレード3のざ瘡(ニキビ)を有する26歳の女性の写真画像パネルを示す。
図25Cは、アキュタンを含む別の治療に抵抗性であるグレード3のざ瘡(ニキビ)を有する28歳女性の写真画像パネルを示す。
【
図25B】
図25(
図25A~
図25Cを含む)は、膿胞状丘疹ざ瘡(ニキビ)を有する1名の男性患者と2名の女性患者における1日2回(b.i.d.)投与を伴う、F162クリーム製剤を用いた10日間治療の結果を示す。
図25Aは、アキュタン(Accutane)を含む別の治療に抵抗性である、左肩と背中にグレード3のざ瘡(ニキビ)を有する26歳の男性の写真画像パネルを示す(上のパネルはF162による治療の前であり、下のパネルはF162による10日間治療の後である)。
図25Bは、アキュタンを含む別の治療に抵抗性である、グレード3のざ瘡(ニキビ)を有する26歳の女性の写真画像パネルを示す。
図25Cは、アキュタンを含む別の治療に抵抗性であるグレード3のざ瘡(ニキビ)を有する28歳女性の写真画像パネルを示す。
【
図25C】
図25(
図25A~
図25Cを含む)は、膿胞状丘疹ざ瘡(ニキビ)を有する1名の男性患者と2名の女性患者における1日2回(b.i.d.)投与を伴う、F162クリーム製剤を用いた10日間治療の結果を示す。
図25Aは、アキュタン(Accutane)を含む別の治療に抵抗性である、左肩と背中にグレード3のざ瘡(ニキビ)を有する26歳の男性の写真画像パネルを示す(上のパネルはF162による治療の前であり、下のパネルはF162による10日間治療の後である)。
図25Bは、アキュタンを含む別の治療に抵抗性である、グレード3のざ瘡(ニキビ)を有する26歳の女性の写真画像パネルを示す。
図25Cは、アキュタンを含む別の治療に抵抗性であるグレード3のざ瘡(ニキビ)を有する28歳女性の写真画像パネルを示す。
【
図26】
図26は、Jan0919ArcFlxのドネペジル経皮分析の結果を示す。
【
図27】
図27は、Jan0919ArcFlxのドネペジル皮膚保持分析の結果を示す。
【
図28】
図28は、Jan0919ArcFlxのドネペジルフラックス分析の結果を示す。
【
図29】
図29は、Jan0919ArcFlx Q95のドネペジル経皮分析の結果を示す。
【
図30】
図30は、Jan0919ArcFlx Q95のドネペジル皮膚保持分析の結果を示す。
【
図31】
図31は、Jan0919ArcFlx Q95のドネペジルフラックス分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本発明の特定の実施形態が開示され説明される前に、本発明が本明細書に開示される特定の方法と材料に限定されるものではなく、それ自体ある程度変化し得ることを理解すべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用され、限定を意図するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ定義されるだろう。
【0019】
本発明を説明し特許請求する際には、以下の用語が使用される。
【0020】
単数形"a"、"an"および"the"は、文脈が明確に別段を指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「浸透促進剤」への言及は、そのような浸透促進剤の1または複数への言及を含む。
【0021】
本明細書中で用いる場合、用語「約」は、特定の数値が、その端点(エンドポイント)の「わずかに上」または「わずかに下」であってもよいことを示すことにより、数字的な範囲の端点に柔軟性を与えるために用いられる。この用語の柔軟性の程度は、特定の変数により記述することができ、それは経験と本明細書中の関連記載に基づいて決定することは当業者の知識の範囲内であろう。例えば、一実施形態では、柔軟性の程度は、数値の約±10%以内であり得る。別の実施形態では、柔軟性の程度は数値の約±5%以内であり得る。別の実施形態では、柔軟性の程度は数値の約±2%、±1%または±0.05%以内であり得る。
【0022】
本明細書中で用いる場合、「活性剤(活性物質)」という用語は、組成物に添加した時に、特定の治療効果をもたらす性質がある化合物または化合物の混合物を指し、本明細書中ではドネペジルまたはその塩の形である。
【0023】
本明細書中で用いる場合、用語「比較対照製剤」は、第一の化合物と第二の化合物が各々同量(重量%)の水で置き換えられていることを除いて、組成上同一である製剤である。本明細書中で用いる場合、「皮内」という用語は、皮膚の真皮区画中にあることを意味する。
【0024】
「皮内投与」という用語は、投与される剤の濃度が、その剤の別の皮膚区画中のまたは経皮的に適用される濃度に関して、比較対照製剤の場合よりも実質的に大きいように、皮膚の外部から皮膚の真皮区画中に投与することを意味する。活性剤の皮内投与は、その作用機序が真皮組織中で標的と相互作用する時に非常に望ましい。活性剤は角質と表皮を通過する分散によって真皮区画に到達するので、皮内投与は表皮組織中の活性剤の濃度を確立することを必然的に伴う。同様に、皮内投与は、皮膚を通過する道を全て透過する活性剤のごく一部を排除するわけではない。
【0025】
「分子浸透促進剤またはMPE」という用語は、本明細書中では、活性剤(例えば薬剤)のような分子の、皮膚の中または皮膚を通過する移行を向上させる剤を指す。様々な状態が、皮膚の中または下側のいずれかの様々な体の位置に発生する可能性があり、化合物の標的送達へのニーズを創出する。例えば、乾癬治療は、より深層の組織における治療薬レベルの送達から恩恵を受けるだろう。「浸透促進剤」は、活性剤を皮膚にもしくは下部組織に直接的に送達するかまたは全身への分布を通して罹患部位に間接的に送達する。浸透促進剤は純粋物質であってよく、または異なる化学的存在物の混合物を含んでもよい。本明細書では、「浸透促進剤」、「化学的浸透促進剤」、「分子浸透促進剤」および「MPE」は互換的に用いられる。
【0026】
本明細書中で用いる場合、「皮膚接触領域」という用語は、局所製剤が皮膚と接触する領域を指す。
【0027】
本明細書中で用いる場合の「対象(被験者)」という用語は、哺乳動物を含む動物界の全ての構成員を指し、最も典型的にはヒトを指す。
【0028】
用語「局所投与」は、その通常の意味では、治療上活性な物質などの物質を、皮膚にまたは体の局所的な外部領域、皮膚(無傷の、罹患した、潰瘍性のまたは破損した皮膚)並びに通常少なくとも部分的に空気にさらされる粘膜表面、例えば唇、生殖器および肛門粘膜、鼻粘膜および口腔粘膜を含む、粘膜表面へ送達させることを意味するために用いられる。薬物の局所投与はしばしば、例えば、種々の皮膚疾患または状態の治療において有利に適用することができる。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「局所製剤」は、身体の外部領域に適用することができ、皮膚に加えて、性器、肛門、鼻および口腔粘膜を含む粘膜表面、眼、または唇に適用することができる製剤を意味する。局所製剤は、例えば、患者に治療上の利益を付与しまたは消費者に美容上の利益を付与するために使用され得る。局所製剤は、物質の局所投与および経皮投与の両方に使用することができる。
【0030】
本明細書中で使用され、当技術分野でよく理解されているように、用語「治療する」または「治療」は、臨床結果を含めて有益または所望の結果を得るためのアプローチを意味する。有益または所望の臨床結果は、検出可能であるか検出不可能であるかにかかわらず、1つ以上の症状または状態の軽減または改善、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(すなわち悪化しない)、疾患の進行の遅延または遅延、疾患状態の改善または緩和、疾患の再発の減少、および寛解(部分的または全部)を含むことができるが、これらに限定されない。
【0031】
また、「治療する」または「治療」は、治療を受けていない場合に見込まれる生存と比較して生存を延長することを意味することができる。治療方法として有用であることに加えて、本明細書に記載の方法は、疾患の防御または予防に有用であり得る。
【0032】
本開示の組成物の組成物中の成分としての用語「水」は、薬学的に許容される水を指す。
【0033】
濃度、量、および他の数値データは、本明細書では、範囲形式で表現または提示することができる。このような範囲形式は単に便宜と簡潔さのために使用され、従って、範囲の限界として明示的に列挙された数値だけでなく、あたかも各数値および部分範囲が明示的に記載されているかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値または部分範囲を包含するように柔軟に解釈されるべきであることを理解すべきである。例示として、「約0.01 mm~2.0 mm」の数値範囲は、約0.01 mmから約2.0 mmの明示的に列挙された値だけでなく、指示された範囲内の個々の値および部分範囲を含むと解釈される。この数値範囲には、0.5 mm、0.7 mm、1.5 mm等の個々の値、0.5 mm以上1.7 mm以下、0.7 mm以上1.5 mm以下、1.0 mm以上1.5 mm以下等の部分範囲が含まれる。更に、このような解釈は、記載されている範囲の幅または特徴にかかわらず適用されるべきである。さらに、全ての%は、特に明記しない限り、重量%であることに留意されたい。
【0034】
本開示は、ドネペジルおよびドネペジル塩酸塩の局所的および皮内送達の分野における様々な製剤と方法に適用される。MPEは、活性剤ドネペジルおよびドネペジル塩酸塩の投与を改善し、そこに存在する活性剤ドネペジルおよびドネペジル塩酸塩の浸透を増加させるために使用することができる。
【0035】
本発明の態様は、ドネペジルを被験者の皮内に送達させる(真皮内の保持と共に)ために局所投与用に処方された組成物であって、(i)ドネペジルまたはその薬学的に許容される塩、(ii) 2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オール、(iii) 脂肪酸エステル、および(iv) 一価アルコール、を含む組成物を包含する。様々な実施形態において、該組成物は、少なくとも1つの低分子量ポリエチレングリコールを更に含む。幾つかの実施形態では、該組成物は、少なくとも2つの一価アルコールを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、末端ヒドロキシル基の代わりに少なくとも1つの末端アルコキシ基を有するジ-、オリゴ-またはポリ-エチレングリコールからなる群から選択された少なくとも2つのグリコールを含む。好ましくは、組成物は、比較対照製剤によって提供されるものの少なくとも2~3倍である、経皮的に提供されるドネペジルの量に対するドネペジルの皮内濃度を送達する。
【0036】
幾つかの実施形態では、組成物は、ドネペジル、エタノール、PEG 400、PEG 1450およびPEG 600からなる群より選択された少なくとも2つのPEG、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オール、並びにパルミチン酸イソプロピルを含む。このような組成物は、ヒドロキシプロピルセルロースを更に含むことができ、好ましくは3%の量である。
【0037】
幾つかの実施形態では、組成物は、ドネペジルを0.5%~1.5%(wt/wt%)の量で、エタノールを30%~40%の量で、PEG 400を16%~26%の量で、PEG 1450またはPEG 600のいずれかを5%の量で、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オールを20%~30%の量で、パルミチン酸イソプロピルを5%の量で含有する。幾つかの好ましい実施形態において、ドネペジルは、1%(wt/wt)の量で存在し、エタノールは40%の量で存在し、PEG 400は16%の量で存在し、PEG 600は5%の量で存在し、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オールは30%以下の量で存在し、そしてパルミチン酸イソプロピルは5%以下の量で存在することを特徴とする。ある好ましい実施形態では、ドネペジルは、1%(wt/w)の量、エタノールは40%の量、PEG 400は26%の量、PEG 600は5%の量、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オールは20%の量、そしてパルミチン酸イソプロピルは5%の量で存在する。
【0038】
他の実施形態では、組成物は、ドネペジルHCl、水、セチルアルコール、PEG 400、PEG 1450およびPEG 600から成る群より選択された少なくとも2つのPEG、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オール、カプリル酸およびカプリン酸(C10)トリグリセリドの混合物、ミリスチン酸イソプロピル、並びにパルミチン酸イソプロピルを含む。このような組成物は、プロピレングリコールを7%の量で更に含むことができる。幾つかの好ましい実施形態では、組成物は、ドネペジルHClが1%(wt/wt)の量で、水が40.3%の量で、セチルアルコールが10%の量で、ミリスチン酸イソプロピルが10%の量で、カプリル酸およびカプリン酸(C10)トリグリセリド混合物が10%の量で、そしてパルミチン酸イソプロピルが7%の量で存在する。一方で、幾つかの好ましい実施形態では、ドネペジルHClが1%(wt/wt)の量で、水が56.9%の量で、セチルアルコールが3%の量で、カプリル酸およびカプリン酸(C10)トリグリセリド混合物が5%の量で、そしてパルミチン酸イソプロピルが7%の量で存在する。
【0039】
幾つかの実施形態では、ドネペジルが0.5%~1.5%(wt/wt)の量で存在する。幾つかの実施形態では、ドネペジルは1%(wt/wt)の量で存在する。幾つかの実施形態では、エタノールは30%~40%の量で存在する。幾つかの実施形態では、エタノールは40%の量で存在する。幾つかの実施形態では、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オールは、20%~30%の量で存在する。幾つかの実施形態では、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オールは30%の量で存在する。幾つかの実施形態では、2-(2-エトキシエトキシ)エタン-1-オールは、20%の量で存在する。幾つかの実施形態では、パルミチン酸イソプロピルは5%の量で存在する。幾つかの実施形態では、水は48.9%の量で存在する。幾つかの実施形態では、水は51%の量で存在する。幾つかの実施形態では、水は49%の量で存在する。幾つかの実施形態では、セチルアルコールは11%の量で存在する。幾つかの実施形態では、セチルアルコールは9%の量で存在する。幾つかの実施形態では、カプリル酸およびカプリン酸(C10)トリグリセリド混合物は、5%の量で存在する。幾つかの実施形態では、パルミチン酸イソプロピルは、7%の量で存在する。
【0040】
別の態様では、本発明は、治療を必要とする哺乳動物における尋常性乾癬を治療する方法であって、該方法は本明細書中に記載の組成物を哺乳動物の皮膚に局所投与することを含み、(1) 該組成物が、ゲル、クリーム、および軟膏からなる群より選択された形態であり、かつ(2)ドネペジルまたはドネペジルHClの濃度が、組成物の0.05重量%~2重量%である方法を含む。幾つかの実施形態では、組成物は、2~6週間の間、1日2回、乾癬プラークに局所的に投与される。
【0041】
別の態様では、本発明は、治療を必要とする哺乳動物のアトピー性皮膚炎を治療する方法であって、該方法は、本明細書中に記載の組成物を哺乳動物の皮膚に局所投与することを含み、(1) 該組成物がゲル、クリームおよび軟膏からなる群より選択された形態であり、かつ、(2)ドネペジルまたはドネペジルHClの濃度が組成物の0.05重量%~2重量%である方法を含む。
【0042】
別の態様では、本発明は、治療を必要とする哺乳動物のざ瘡(ニキビ)を治療する方法であって、 (1) 該組成物がゲル、クリーム、および軟膏からなる群より選択される形態であり、かつ(2)ドネペジルまたはドネペジルHClの濃度が、組成物の0.05重量%~2重量%である方法を含む。
【0043】
活性成分
本発明により教示される活性剤は、ドネペジルまたはその薬学的に許容される塩、例えばドネペジル塩酸塩(ドネペジルHCl)またはそれらの混合物である。活性剤(活性成分)は、有効量の活性剤を皮内に送達する量で、記載の製剤中に存在することができる。活性成分は、0.1%~10%、0.1%~9%、0.1%~8%、0.1%~7%、0.1%~6%、0.1%~5%、0.1%~4%、0.1%~3%、0.1%~2%、0.1%~1%、0.5%~10%、0.5%~9%、0.5%~8%、0.5%~7%、0.5%~6%、0.5%~5%、0.5%~4%、0.5%~3%、0.5%~2%、0.5%~1%、1%~10%、1%~9%、1%~8%、1%~7%、1%~6%、1%~5%、1%~4%、1%~3%、1%~2%、1.5%~10%、1.5%~9%、1.5%~8%、1.5%~7%、1.5%~6%、1.5%~5%、1.5%~4%、1.5%~3%、1.5%~2%、2%~10%、2%~9%、2%~8%、2%~7%、2%~6%、2%~5%、2%~4%または2%~3%(wt/wt%)で製剤中に存在する。好ましい実施形態では、製剤中の有効成分の量は、0.1%、0.3%、0.5%、0.8%、1.0%、1.2%、1.4%、1.6%、1.8%または2%、より好ましくは1.0%である。
【0044】
溶媒
本発明の組成物は、含水アルコールシャーシを基にしており、従って、主溶媒として水とアルコールの混合物を含む。溶媒として水を使用する種々の実施形態では、製剤は重量/重量(wt/wt)で以下: 約0.1%~約75%、約10%~約65%、約15%~約60%、約20%~約55%の水、約25%~約55%、約30%~約55%、約35%~約55%、約40%~約52%、約45%~約52%の水を含む。幾つかの実施形態では、製剤中の水の量は約0.1%、0.5%、10%、22%、31%、47%、48%、48.9%、49%、50%、50.1%、50.3%、50.7%、58%、59%、60%、62%、65%、68%、73%または75%である。溶媒として水を使用する別の実施形態では、製剤は重量/重量(wt/wt)で以下: 約10%~約60%、約15%~約55%、約20%~約50%、または約30%~40%のアルコールを含む。
【0045】
一実施形態では、含有アルコールシャーシの水成分は緩衝化される。あるいはまたはそれに加えて、水成分はpH調整剤で調整される。幾つかの実施形態では、アルコールは一価アルコールである。更なる実施形態では、アルコールはエタノール、イソプロパノール、もしくは2-(2-エトキシエトキシ)エタノール(トランスクトール;Transcutol(商標))、またはその混合物である。幾つかの実施形態では、製剤中の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール(トランスクトール)の量は約0.1% ~25%;約2%~12%;約5%~10%;または約6%~8%である。幾つかの実施形態では、製剤中の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール(トランスクトール)の量は約 0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、18%、23%または25%である。
【0046】
一実施形態では、本発明の組成物は有機溶媒を用いて製剤化される。有機溶媒の例としては、酢酸;アセトン;アセトニトリル;1-ブタノール;2-ブタノール;2-ブタノン;tert-ブチルアルコール;シクロヘキサン;ジエチレングリコール;ジエチルエーテル;ジグリム(ジエチレングリコール);ジメチルエーテル;1,2-ジメトキシエタン(グリムまたは “DME”);ジメチルホルムアミド (“DMF”);DMSO;1,4-ジオキサン;エタノール;酢酸エチル;エチレングリコール;グリセリン;ヘプタン;ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA);ヘキサメチルリン酸トリアミド (HMPT);ヘプタン;メタノール;メチルt-ブチルエーテル(MTBE);塩化メチレン;N-メチル-2-ピロリジノン(“NMP”);ニトロメタン;ペンタン;石油エーテル(リグロイン);1-プロパノール;2-プロパノール;ピリジン;テトラヒドロフラン (“THF”);トルエン;トリエチルアミン;o-キシレン;m-キシレン;p-キシレンが挙げられる。当該組成物への使用に特に好ましい有機溶媒は、皮膚への適用に薬学的に許容される物質を含む。ある実施形態では、組成物は少なくとも2つの有機溶媒を含み、またある実施形態では、2より多くの(3以上の)有機溶媒を含む。更なる態様では、製剤は異なる揮発性を有してもよい。好ましい実施形態では、1つの溶媒が、製剤を被験者の皮膚に適用すると比較的迅速に相当量が乾燥するように高揮発性であり、そしてドネペジルまたはその塩が被験者の皮膚中に効率的に送達され続けることができるようにするために、第二の溶媒が、低揮発性でありかつドネペシルまたはその塩酸を実質的に可溶化形態に維持する働きをする。
【0047】
理論に縛られることなく、溶媒は付加的にまたは代替的に分子浸透促進剤として機能しうることが本発明の更なる態様である。
【0048】
MPE
本発明の組成物および製剤は、1または複数のMPEを含み得る。MPEの例としては、限定されないが、(+/-)-リモネン;1,3-ブタンジオール;α-テルピネオール;α-トコフェロール;ラウリル硫酸アンモニウム;二酸化ブチレン;カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;ヒマシ油;ニオイヒバ油;セテアレス-12;セテアレス-15;セテアレス-30;セテス-10;セテス-2;セテス-20;セテス-23;コレス-24;ココ-カプリレート/カプレート;ココジエタノールアミド;コーン油;シクロメチコン;ジクロロジフルオロメタン;ジエタノールアミン;ジエチレングリコールモノメチルエーテル;ジエチルセバセート;ジイソプロパノールアミン;アジピン酸ジイソプロピル;ジリノレイン酸ジイソプロピル;ジメチルイソソルビド;ジメチルスルホキシド;ジプロピレングリコール;酢酸エチル;オレイン酸エチル;エチレングリコール;脂肪酸;グリセリン;グリセロール;イソステアリン酸グリセリル;ラウリン酸グリセリル;モノオレイン酸グリセリル (Capmul(登録商標) GMO-50);モノステアリン酸グリセリル;パルミチン酸グリセリル;リシノレイン酸グリセリル;ステアリン酸グリセリル-ラウレス23;ヘキシレングリコール;水添ヒマシ油;イミドウレア;イソセテス(isoceteth)-20;イソプロピルアルコール;イソステアリン酸イソプロピル;ミリスチン酸イソプロピル;パルミチン酸イソプロピル;ラブラゾール(Labrasol;登録商標);乳酸;酸化ラウラミン;ラウレス-2;ラウレス-23;ラウレス-4;ラウリン酸ジエタノールアミド;ラウリン酸/ミリスチン酸ジエタノールアミド;酢酸ラウリル;乳酸ラウリル;レブリン酸;L-メントール;中鎖トリグリセリド;メトキシPEG-16;メチルアルコール;メチルグルセス-10;ラウリン酸メチル;サリチル酸メチル;ミリスチルアルコール;乳酸ミリスチル;オクチルドデカノール;オレイン酸;オレス-10;オレス-2;オレス-20;オレス-5;オレイルアルコール;オレイン酸オレイル;PEG-60水添ヒマシ油;PEGメチルエーテル;ペンタデカラクトン;ポリエチレングリコール400;ポリオキシル40水添ヒマシ油;ポリソルベート20;ポリソルベート40;ポリソルベート60;ポリソルベート65;ポリソルベート80;プロピレンカーボネート;プロピレングリコール;プロピレングリコールジアセテート;プロピレングリコールジカプリレート;プロピレングリコールモノラウレート;プロピレングリコールモノパルミトステアレート;SDアルコール408;乳酸ナトリウム;ラウレス-2硫酸ナトリウム;ラウレス-3硫酸ナトリウム;ラウリル硫酸ナトリウム;ソルビタンイソステアレート;ソルビタンモノラウレート;ソルビタンモノオレエート;ソルビタンモノパルミテート;ソルビタンモノステアレート;ソルビタンセスキオレエート;ソルビタントリステアレート;ソルビトール;大豆油;クジラ蝋;スクアレン;ステアレス-10;ステアレス-100;ステアレス-2;ステアレス-20;ステアレス-21;ステアレス-40;トコフェロール;トランスクトール(Transcutol;登録商標);トリデセス-10;ラウリル硫酸トリエタノールアミン;トロラミン;および尿素。
【0049】
好ましくは、本明細書中で用いられる製剤は、複数のMPEを含み、そして好ましくは一価アルコールと飽和脂肪酸との組み合わせを含む。同じく好ましくは、幾つかの実施形態で用いられるMPEは、乳酸ラウリル、リモネン、トランスクトール、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチルである。本明細書中に提供される好ましい実施形態では、好ましいMPEは、トランスクトール、パルミチン酸イソプロピル、およびミリスチン酸イソプロピルの組み合わせであり;より好ましくは、トランスクトールとパルミチン酸イソプロピルとの組み合わせである。前記組み合わせは、ドネペジル塩基製剤に好ましい。
アルコール
【0050】
1つの好ましい態様において、本明細書に提供される組成物および製剤は、一価アルコールを含む。好適な一価アルコールとしては、限定されないが、エタノール、プロパノール、プロパン-2-オール(イソプロパノール)、ブタノール、ブタン-2-オール(イソブタノール)、ペンタノール、ペンタン-2-オール、ペンタン-3-オール、3-メチル-2-ブタノール、ヘキサノール、ヘキサン-2-オール、ヘキサン-3-オール、ベンジルアルコール等、並びにその混合物が挙げられる。
【0051】
別の好ましい態様では、製剤は低級アルコールを含む。ある好ましい態様では、一価アルコールがエタノールである。ある好ましい態様において、エタノールは約90重量%までの量で存在する。より好ましくは、エタノールは約60重量%(%w/w)までまたは約40重量%まで(%w/w)の量で存在する。
【0052】
1つの好ましい態様において、組成物および製剤はジオールを含む。好適なジオールとしては、限定されないが、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール等、並びにその混合物が挙げられる。一態様では、製剤は約50%までのジオール、好ましくは約35%までのジオールを含む。ある好ましい態様では、ジオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、またはそれらの混合物のようなグリコールである。より好ましくは、ジオールはプロピレングリコールである。幾つかの実施形態では、製剤中のプロピレングリコールの量は、約0.1%~25%;約2%~12%;約5%~10%;または約6%~8%である。製剤中のプロピレングリコールの量は、約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、18%、23%、または25%である。
【0053】
更に別の態様では、製剤は、少なくとも2種のアルコールを含む。製剤は、一価アルコールとジオールとを含むことが好ましい。一価アルコールがエタノールであることがより好ましい。より好ましくはジオールがプロピレングリコールである。更により好ましくは、一価アルコールがエタノールであり、ジオールがプロピレングリコールである。特に好ましい態様では、エタノールとプロピレングリコールがほぼ等量で存在する。
水
【0054】
特定の態様では、組成物は水を含む。好ましくは、水は約10重量%~95重量%(%w/w)、例えば、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90または95重量%(%w/w)で存在する。より好ましくは、組成物は約20重量%~60重量%、30~60重量%、約40~60重量%、約50~60重量%、約55重量%~60重量%(%w/w)の水を含む。幾つかの実施形態では、組成物は、約40%、45%、50%、55%、または60%w/wの水、好ましくは40.3%、55.5%、56.9%、または59.5%の水を含む。他の好ましい実施形態では、組成物は本質的に無水であり、水を含まないか、微量の水のみを含有している。幾つかの実施形態では、製剤中の水の量は約0.1%~75%、約10%~約65%、約15%~約60%、約20%~約55%、約25%~約55%、約30%~約55%、約35%~約55%、約40%~約52%、または約45%~約52%である。幾つかの実施形態では、製剤中の水の量は、約0.1%、0.5%、10%、22%、31%、47%、48%、48.9%、49%、50%、50.1%、50.3%、50.7%、58%、59%、60%、62%、65%、68%、73%、または75%である。
【0055】
ポリエーテル
1つの好ましい態様では、組成物および製剤はポリエチレングリコール(“PEG”)、すなわち一般式H-(O-CH2-CH2)n-OHを有するポリエーテル化合物(その分子量に応じてポリエチレンオキシド (“PEO”) またはポリオキシエチレン (“POE”)としても知られる)を含む。大部分のPEGは、分子量の分布を伴う多分散の分子である。適当なPEGには、約300ダルトンの平均分子量を有するもの(PEG 300と称される)、400ダルトンの平均分子量を有するもの(PEG 400)、600ダルトンの平均分子量を有するもの(PEG 600)、または1450ダルトンの平均分子量を有するもの(PEG 1450)が含まれる。好ましくは、ポリエーテルはPEG 400、PEG600またはPEG 1450である。
【0056】
幾つかの実施形態では、製剤は重量%(wt/wt%)で10%、15%、20%、25%、30%または35%;好ましくは26%のPEG 400を含む。幾つかの実施形態では、製剤は重量%(wt/wt%)で2%、4%、6%、8%、10%または12%;好ましくは5%のPEG 600を含む。幾つかの実施形態では、製剤は重量%(wt/wt%)で2%、4%、6%、8%、10%、12%;好ましくは5%のPEG 1450を含む。幾つかの好ましい実施形態では、製剤はポリエーテルの組み合わせ、好ましくはPEG 400とPEG 600の組み合わせを含む。
【0057】
トリグリセリド
1つの好ましい態様において、組成物および製剤は、トリグリセリド、すなわちグリセロールと3つの脂肪酸から誘導されるエステルを含む。
【0058】
1つの好ましい態様では、トリグリセリドは16、18または20個の炭素原子を含む1つ以上の脂肪酸を含む。別の好ましい態様では、トリグリセリドは完全に飽和したトリグリセリドである。特に好ましい態様では、トリグリセリドは、カプリル酸およびカプリン酸とグリセロールとのトリエステルであり、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(CAS 65381-09-1;Croda社(米国ニュージャージ州エジソン)製のクロダモール(CrodamolTM;商標)GTCC)である。好ましくは、製剤は重量%(wt/wt%)で4%、5%、6%、7%または8%、より好ましくは5%のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを含む。
脂肪アルコール
【0059】
1つの好ましい態様では、組成物および製剤は、脂肪アルコールを含む。好適な脂肪アルコールとしては、tert-ブチルアルコール;tert-アミルアルコール;3-メチル-3-ペンタノール;エスクロルビノール;1-オクタノール(カプリルアルコール);ペラルゴン酸アルコール(1-ノナノール);1-デカノール(デシルアルコール、カプリン酸アルコール);ウンデシルアルコール(1-ウンデカノール、ウンデカノール、ヘンデカノール);ラウリルアルコール(ドデカノール、1-ドデカノール);トリデシルアルコール(1-トリデカノール、トリデカノール、イソトリデカノール);ミリスチルアルコール(1-テトラデカノール);ペンタデシルアルコール(1-ペンタデカノール、ペンタデカノール);セチルアルコール(1-ヘキサデカノール);パルミトレイルアルコール(cis-9-ヘキサデセン-1-オール);ヘプタデシルアルコール(1-n-ヘプタデカノール、ヘプタデカノール);ステアリルアルコール(1-オクタデカノール);オレイルアルコール(1-オクタデセノール);ノナデシルアルコール(1-ノナデカノール);アラキジルアルコール(1-エイコサノール);ヘンエイコシルアルコール(1-ヘンエイコサノール);ベヘニルアルコール(1-ドコサノール);エルシルアルコール(cis-13-ドコセン-1-オール);リグノセリルアルコール(1-テトラコサノール);セリルアルコール(1-ヘキサコサノール);1-ヘプタコサノール;モンタニルアルコール、クルイチルアルコール、または1-オクタコサノール;1-ノナコサノール;ミリシルアルコール、メリシルアルコールまたは1-トリアコンタノール;1-ドトリアコンタノール(ラクセリルアルコール);ゲジルアルコール(1-テトラトリアコンタノール);およびセテアリルアルコールが挙げられる。
【0060】
好ましい実施態様は、脂肪アルコールとしてセチルアルコール、好ましくは重量パーセント(wt/wt%)で2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%または11%、より好ましくは3%、5%、9%、10%または11%のセチルアルコールを含む。
【0061】
増粘剤
1つの好ましい態様において、組成物および製剤の粘度は、増粘剤の混入によって調整される。例示的な増粘剤としては、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、セルロースポリマー、カルボマーポリマー(カルボポール)、カルボマー誘導体、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール、ポロキサマー(プルロニック(Pluronic;登録商標))、多糖類(例えば、キトサン等)、天然ゴム(例えばアラビアゴム(アカシア)、トラガカントゴム、キサンタンガム、グアーガム)、ゼラチン、ベントナイト、蜜蝋、ケイ酸マグネシウムアルミニウム(ビーガム(Veegum;登録商標)等)、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0062】
増粘剤の性質および増粘剤濃度は、当業者によく知られているように、所望の粘度の製剤をもたらすように選択される。ある好ましい態様では、増粘剤は、ヒドロキシプロピルセルロース("HPC")であり、その商品例は「HY119」ヒドロキシプロピルセルロースNF(CAS番号(Spectrum Chemical, Gardena CA))、またはHPMC(メトセル(Methocel)E4M)である。好ましくは、当該製剤は増粘剤HY119またはHPMCを含み、HY119は重量%(wt/wt%)で2%、3%、4%または5%、好ましくは3%で存在し、HPMCは重量%(wt/wt%)で0.3%、0.4%、0.5%、0.6%または0.7%、好ましくは0.5%で存在する。別の好ましい態様では、製剤中に増粘剤を含めることにより、ゲルまたは軽質ゲル(light gel)が得られる。
皮膚軟化剤(エモリエント)
【0063】
皮膚軟化剤は、組成物が皮膚に適用されたときに、製剤が角質層の水分含量(含水率)を維持または増加させることができるように、随意に本発明の製剤に添加することができる。皮膚軟化剤は、本明細書に記載の他の成分に加えて製剤に添加されてもよく、これはまた、使用者の皮膚の状態を維持するまたは改善するのを助けることができる。
【0064】
一態様では、添加された皮膚軟化剤は、約0.1~20重量%(%w/w)の濃度で本発明の組成物中に含まれる。別の態様では、添加された皮膚軟化剤は、約0.5%~10%w/wの濃度で組成物中に存在することができる。更に別の態様では、皮膚軟化剤濃度は、約1%~5%w/wの間であり得る。
【0065】
幾つかの実施形態では、皮膚軟化剤が蜜蝋である。幾つかの実施形態では、製剤中の蜜蝋の量は、約0.1%~約25%;約0.5%~約20%;約1%~約15%;約1%~約12%;約1%~約10%;約1%~約9%;約1%~約8%;約2%~約8%;約3%~約8%;約4%~約8%;または約4%~約7%である。幾つかの実施形態では、製剤中の蜜蝋の量は、約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、4.8%、4.9%、5%、5.1%、5.2%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%である。
【0066】
皮膚軟化剤は、一般に、それらの機能に基づいて2つの広いクラスに分離される。第1クラスの皮膚軟化剤は、角質層からの水の蒸発を防止するための閉塞バリアを形成することによって機能する。第2クラスの皮膚軟化剤は角質層中に浸透し、水を物理的に結合して蒸発を防止する。第1クラスの皮膚軟化剤は、室温でワックスである化合物と液状油である化合物とに細分される。第2クラスの皮膚軟化剤は、水溶性であり、しばしば湿潤剤と呼ばれるものを含む。
【0067】
適切な皮膚軟化剤は、当該技術分野で知られている任意のクラスから選択することができる。有用な皮膚軟化剤の一般的なリストは、例えば、米国特許第4,478,853号および欧州特許出願第0 522 624 A1号明細書中に、並びにThe Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association(ワシントンDC)により公表されたCTFA化粧品成分ハンドブック(CTFA Cosmetic Ingredient Handbook)中に、「皮膚コンディショニング剤」、「皮膚軟化剤(エモリエント)」、「湿潤剤」、「雑成分」および「閉塞物(occulsive)」の一覧表の下に記載されている。
【0068】
1つ以上の皮膚軟化剤の添加は、本発明の組成物の粘度および安定性に影響し得る。幾つかの実施形態では、単一の皮膚軟化剤を組成物に添加してもよい。他の実施形態では、2種以上の皮膚軟化剤を組成物に添加してもよい。様々な皮膚軟化剤の任意のものを本発明の製剤に添加することができるが、幾つかの実施形態は、単独でまたは水溶性皮膚軟化剤と組み合わせて、ワックスおよび油性タイプの皮膚軟化剤を含むだろう。本発明の幾つかの実施形態では、皮膚軟化剤系は、保湿効果を果たし、繰り返し使用時に皮膚の状態を維持し改善する濃度で、密封性ワックスおよび油性軟化剤に加えて保湿剤を含むことができる。皮膚軟化剤は、毛穴を塞がないタイプ(非コメド形成型)であってよく、皮膚刺激または過敏反応を回避するように選択されてもよい。
【0069】
脂肪酸
一態様では、本発明の製剤および組成物は、脂肪酸のエステルまたはトリグリセリド(グリセロールと3つの脂肪酸とから誘導されるエステル)を含むことができる。不飽和脂肪酸の例としては、限定されないが、α-リノレン酸(Cl8:3);ステアリドン酸(C18:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5);ドコサヘキサエン酸(C22:6);リノレイン酸(C18:2);リノールエライジン酸(C18:2);γ-リノレン酸(C18:3);ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3);アラキドン酸(C20:4);ドコサテトラエン酸(C22:4);パルミトレイン酸(C16:l);バクセン酸 (C18:l);パウリン酸 (C20:l);オレイン酸(C18:1);エライジン酸(C18:1);ゴンド酸(C20:l);エルカ酸(C22:1);ネルボン酸(C24:l);およびミード酸(C20:3)が挙げられる。
【0070】
飽和脂肪酸の例としては、限定されるものではないが、カプロン酸(C6:0);エナント酸 (C7:0);カプリル酸(C8:0)、ペラルゴン酸(C9:0);カプリン酸(C10:0);ウンデシル酸(Cl1:0);ラウリン酸(C12:0);トリデシル酸(C13:0);ミリスチン酸(C14:0);ペンタデシル酸(C15:0);パルミチン酸(C16:0);マルガリン酸(C17:0);ステアリン酸(C18:0);ノナデシル酸(Cl9:0);アラキジン酸(C20:0); ヘンエイコシル酸(C21:0);およびベヘン酸(C22:0)が挙げられる。
【0071】
脂肪酸エステル
一態様では、本発明の製剤および組成物は、脂肪酸エステルを含むことができる。
【0072】
本発明の脂肪酸エステルは、不飽和脂肪酸または飽和脂肪酸と一価アルコールとの組み合わせから形成される。特定の好ましい態様では、脂肪酸はラウリン酸(Cl2:0)、ミリスチン酸(Cl4:0)、またはパルミチン酸(Cl6:0)である。ある好ましい態様では、一価アルコールはイソプロピルアルコールである。特定の好ましい態様において、脂肪酸エステルは、パルミチン酸イソプロピルまたはミリスチン酸イソプロピルである。
【0073】
好ましくは、製剤は、パルミチン酸イソプロピルまたはミリスチン酸イソプロピルの脂肪酸エステルを含み、前記パルミチン酸イソプロピルは重量%(w/w%)で2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%、より好ましくは7%で存在し、そしてミリスチン酸イソプロピルは重量%(w/w%)で5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、または13%、より好ましくは10%で存在する。幾つかの好ましい実施形態では、製剤中に含まれる脂肪酸エステルは、パルミチン酸イソプロピルとミリスチン酸イソプロピルとの組み合わせである。
【0074】
可溶化剤
一態様では、本発明の製剤および組成物は、可溶化剤を含むことができる。可溶化剤の例としては、限定されるものではないが、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;塩化セチルピリジニウム;Cremophor(登録商標)EL;ジメチルスルホキシド;ドキュセートナトリウム;エタノール;Gelucire 44/14;Labrasol;Nonoxynol(ノノキシノール)9;Octoxynol(オクトキシノール)9; PEG-60水添ヒマシ油(HCO-60);Poloxamer(ポロキサマー)124;ポロキサマー237;ポロキサマー338;ポロキサマー407;ポロキサマー;ポリエチレングリコール300(PEG 300);ポリエチレングリコール400 (PEG 400);Polyoxyl(ポリオキシル)10オレイルエーテル;ポリオキシル20セトステアリルエーテル;ポリオキシル35ヒマシ油;ポリオキシル40水添ヒマシ油;ポリオキシル40ステアレート;ポリソルベート20(またはTween(登録商標)20);ポリソルベート40;ポリソルベート60;ポリソルベート80(またはTween(登録商標)80);プロピレングリコール;ラウリル硫酸ナトリウム;タウロコール酸ナトリウム;ソルビタンモノラウレート(またはSpan(登録商標)20);ソルビタンモノオレエート(またはSpan(登録商標)80);ソルビタンモノパルミテート(またはSpan(登録商標)40);ソルビタンモノステアレート(またはSpan(登録商標)60):スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(Captisol(カプチゾル))、Transcutol(トランスクトール)P;Brij(登録商標)L23;Brij 4、Brij S20、およびTyloxapol(チロキサポール)が挙げられる。本明細書では、分子トランスクトールとトランクストールPは互換的に使用されているが、任意の医薬用途のために、薬用のトランスクトールPが好ましい。
【0075】
好ましくは、当該製剤は、可溶化剤トランスクトール(登録商標)、ポリソルベート20(またはTween(登録商標)20)、Tween(登録商標)80、ソルビタンモノラウレート(またはSpan(登録商標)20)、Brij(登録商標)L4、もしくはプロピレングリコール、またはそれらの組み合わせを含む。トランスクトールを有する実施形態では、トランスクトールの重量%(w/w%)は6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、または22%、より好ましくは7%である。ポリソルベート20(またはTween(登録商標)20)を有する実施形態では、ポリソルベート20(またはTween(登録商標)20)の重量%(wt/wt%)が1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、3.3%、4.2%、4.4%、5.2%、6.5%、または8.0%;より好ましくは2.0%、2.1%、2.2%、3.3%、4.2%、または4.4%である。Tween 80を有する実施形態では、好ましくはTween 80の重量%(wt/wt%)は3.0%、3.05%、3.1%、3.15%、3.2%、または3.25%であり;より好ましくは3.11%である。トランスクトールを有する実施形態では、好ましくはソルビタンモノラウレート(またはSpan(登録商標)20)の重量%(wt/wt%)は2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.8%、4.9%、5.2%、6.9%または8.0%であり;より好ましくは2.8%、2.9%、3.0%、3.6%、3.8%、または4.9%である。Brij(登録商標)4を有する実施形態では、好ましくはBrij 4の重量%(wt/wt%)は4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%であり;より好ましくは4.38%、4.386%または4.39%である。
【0076】
日焼け止め
一態様では、本発明の製剤はまた、日焼け止め剤を含有することができる。日焼け止め剤は、紫外光への暴露に起因する製剤中のビタミンDの分解を遅くするために含まれていてもよい。日焼け止め剤としては、p-アミノ安息香酸、パディメートO、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、シノキサート、ジオキシベンゾン、オキシベンゾン、ホモサレート、アントラニル酸メンチル、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、サリチル酸オクチル、スリソベンゾン、トロラミンサリチル酸、アボベンゾン、エカムスル、二酸化チタン、および酸化亜鉛等が挙げられる。他の日焼け止め剤としては、4-メチルベンジリデンカンフル、チノソーブ(登録商標;Tinosorb) M、チノソーブ S、チノソーブ A2B、ネオヘリオパン(慣用名;Neo Heliopan)AP、メギゾリル(登録商標;Mexoryl)XL、ベンゾフェノン-9、ユビナール(Uvinul;登録商標)T 150、ユビナールA Plus、ユバソーブ(登録商標;Uvasorb)HEB、パルソール(登録商標;Parsol)SLXおよびアミロキサート(慣用名;Amyloxate)が挙げられる。
【0077】
酸化防止剤
一態様では、製剤は、さらに酸化防止剤を含むことができる。本発明で使用するための好ましい酸化防止剤としては、アスコルビン酸、リノール酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、マレイン酸アスコルビルトコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸カルシウム、カロテノイド、コウジ酸およびその薬学的に許容される塩、没食子酸プロピル、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸およびその薬学的に許容される塩(例えば、アンモニウム塩)、トコフェロール(α、β、γおよびδ形を含む)、酢酸トコフェロール、トコフェレス(tocophereth)-12、トコフェレス-18、またはトコフェレス-80を含む。
【0078】
防腐剤
一態様では、幾つかの製剤は、少なくとも1つの防腐剤(保存剤)をさらに含む。本発明に用いられる好ましい防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、臭化セトリモニウム (別名:臭化セチルトリメチルアンモニウム)、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ベンジルアルコール、ステリルアルコール、安息香酸、ソルビン酸、クロロアセトアミド、トリクロロカルバン、チメロザール、イミドウレア、ブロノポール、クロルヘキシジン、4-クロロクレゾール、4-クロロキシレノール、ジクロロフェン、およびヘキサクロロフェン等が挙げられる。特に好ましいのは、塩化セチルピリジニウム、メチルパラベンおよびプロピルパラベン、またはそれらの混合物である。
【0079】
キレート剤
1態様において、製剤は、少なくとも1つのキレート剤を更に含む。好適なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸("EDTA")が挙げられる。
【0080】
pH
更に別の態様では、当該製剤は酸性である。特定の態様では、製剤のpHは、約7.5、6.5、5.5、4.5、3.5または2.5以下である。ある特定の別の態様では、製剤のpHは、約1.5~7、約2~7、約3~7、約4~7、または約5~7の範囲である。更に別の態様では、製剤のpHは、約1.5~5.5、約2.5~5.5、約3.5~5.5、または約4.5~5.5の範囲であってもよい。製剤は、その酸性pHを維持するためにpH調整剤を含むことができる。好ましくは、製剤は約4と7の間のpH値を有する。
【0081】
更に別の態様では、製剤は塩基性である。幾つかの態様では、該製剤は約7、8、9、10、11または12以上のpHを有する、製剤のpHは、約7~12.5、約7~11.5、約7~10.5、約7~9.5、または約7~8.5の範囲であり得る。更に別に態様では、製剤のpHは、約9~12.5、約9~11.5、約9~10.5、または約8.5~10の範囲であり得る。製剤は、その塩基性pHを維持するためにpH調整剤を含むことができる。好ましくは、製剤は約7と10の間のpH値を有する。
【0082】
更に別の態様では、製剤は中性である。ある態様では、製剤は約7のpHを有する。ある特定の別の態様では、製剤は約6~約8.5、約5.5~8、約6~8、約6.5~8.5、または約6.5~7.5のpHを有する。製剤はその中性pHを維持するためにpH調整剤を含むことができる。製剤は約6と8.5の間のpH値を有することが好ましい。一実施形態において、pH調整剤は、塩酸または酢酸のような酸である。別の実施形態では、pH調整剤は、水酸化ナトリウムのような塩基である。更なる実施形態では、pH調整剤は、緩衝剤、例えば、リン酸塩緩衝剤またはクエン酸緩衝剤である。
【0083】
更に別の態様では、製剤は大部分または完全に有機分子から構成されるので、そういった理由で、従来の意味でのpHは意味のある概念でないかもしれない。
【0084】
好ましい実施形態は、重量%(wt/wt%)で次の成分を有するドネペジル塩酸塩の製剤(製剤F160)を含む:
ドネペジル 好ましくは1.0%
エタノール 好ましくは40.0%
PEG 400 好ましくは26.0%
PEG 600 好ましくは5.0%
トランスクトール 好ましくは20.0%
パルミチン酸イソプロピル 好ましくは5.0%
HY119 好ましくは3.0%。
【0085】
好ましい実施形態は、重量%(wt/wt%)で次の成分を有するドネペジル塩酸塩の製剤(製剤F162)を含む:
ドネペジルHCl 好ましくは1.0%以下
水 好ましくは40.3%
トランスクトール 好ましくは7%
プロピレングリコール 好ましくは7%
セチルアルコール 好ましくは10%
ミリスチン酸イソプロピル 好ましくは10%
カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドGTCC 好ましくは10%
パルミチン酸イソプロピル 好ましくは7%
Brij(登録商標)4 好ましくは4.386%
Tween(登録商標)80 好ましくは3.114%
キサンタンガム 好ましくは0.2%。
【0086】
好ましい実施形態は、重量%(wt/wt%)で次の成分を有するドネペジル塩酸塩の製剤(製剤F165)を含む:
ドネペジルHCl 好ましくは1%
トランスクトール 好ましくは7%
プロピレングリコール 好ましくは7%
セチルアルコール 好ましくは3%
カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドGTCC 好ましくは5%
パルミチン酸イソプロピル 好ましくは7%
蜜蝋 好ましくは5%
Span(登録商標)20 好ましくは4.9%または4.8%
Tween(登録商標)20 好ましくは3.3%または3.2%
水 好ましくは56.9%。
【0087】
好ましい実施形態は、重量%(wt/wt%)で次の成分を有するドネペジル塩酸塩の製剤(製剤F164A)を含む:
ドネペジルHCl 好ましくは1.0%
セチルアルコール 好ましくは5%
カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドGTCC 好ましくは5%
パルミチン酸イソプロピル 好ましくは7%
白蝋 好ましくは7%
トランスクトール 好ましくは7%
プロピレングリコール 好ましくは7%
水 好ましくは55.5%
Span(登録商標)20 好ましくは2.9%
Tween(登録商標)20 好ましくは2.1%
HPMC 好ましくは0.5%。
【0088】
好ましい実施形態は、重量%(wt/wt%)で次の成分を有するドネペジル塩酸塩の製剤(製剤F164B)を含む:
ドネペジルHCl 好ましくは1.0%
セチルアルコール 好ましくは3%
カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドGTCC 好ましくは5%
パルミチン酸イソプロピル 好ましくは7%
白蝋 好ましくは5%
トランスクトール 好ましくは7%
プロピレングリコール 好ましくは7%
水 好ましくは59.5%
Span(登録商標)20 好ましくは3%
Tween(登録商標)20 好ましくは2%
HPMC 好ましくは0.5%以下。
【0089】
好ましい実施形態は、重量%(w/w%)で次の成分を有するドネペジル塩酸塩の製剤(製剤F164C)を含む:
ドネペジルHCl 好ましくは1.0%
セチルアルコール 好ましくは5%
パルミチン酸イソプロピル 好ましくは7%
白蝋 好ましくは5%
トランスクトロール 好ましくは7%
プロピレングリコール 好ましくは7%
水 好ましくは55.5%
Span(登録商標)20 好ましくは2.8%
Tween(登録商標)20 好ましくは2.2%
HPMC 好ましくは0.5%
鉱物油 好ましくは5.0%。
【0090】
好ましい実施形態は、重量%(w/w%)で次の成分を有するドネペジル塩酸塩の製剤(製剤F183)を含む:
ドネペジルHCl 好ましくは1%
トランスクトール 好ましくは7%
プロピレングリコール 好ましくは7%
セチルアルコール 好ましくは11%
カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドGTCC 好ましくは5%
パルミチン酸イソプロピル 好ましくは7%
蜜蝋 好ましくは5%
Span(登録商標)20 好ましくは4.9%または4.8%
Tween(登録商標)20 好ましくは3.3%または3.2%
水 好ましくは48.9%。
【0091】
好ましい実施形態は、重量%(w/w%)で次の成分を有するドネペジル塩酸塩の製剤(製剤F186)を含む:
ドネペジルHCl 好ましくは1%
トランスクトール 好ましくは7%
プロピレングリコール 好ましくは7%
セチルアルコール 好ましくは9%
カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドGTCC 好ましくは5%
パルミチン酸イソプロピル 好ましくは7%
蜜蝋 好ましくは5%
Span(登録商標)20 好ましくは3.9%または3.8%
Tween(登録商標)20 好ましくは4.1%または4.2%
水 好ましくは51.9%。
【0092】
好ましい実施形態は、重量%(w/w%)で次の成分を有するドネペジル塩酸塩の製剤(製剤F187)を含む:
ドネペジルHCl 好ましくは1%
トランスクトール 好ましくは7%
プロピレングリコール 好ましくは7%
セチルアルコール 好ましくは11%
カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドGTCC 好ましくは5%
パルミチン酸イソプロピル 好ましくは7%
蜜蝋 好ましくは5%
Span(登録商標)20 好ましくは3.7%または3.6%
Tween(登録商標)20 好ましくは4.3%または4.4%
水 好ましくは49.0%。
【0093】
このように、本発明は、本明細書に記載のドネペジルまたはドネペジルHClの製剤の少なくとも1つを罹患部位または問題の部位へ局所投与することにより、哺乳動物(ヒトでもよい)の皮膚疾患または問題を治療する方法からなる。
【実施例0094】
以下の実験例を参照して本発明を更に詳細に説明する。これらの例は例示のみの目的で提供され、特に明記しない限り限定を意図するものではない。従って、本発明は、以下の実施例に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになる、ありとあらゆる変形を包含すると解釈されるべきである。
【0095】
更なる説明なしに、当業者は、先の説明および以下の例示的な実施例を使用して、本発明を製造および利用し、特許請求される方法を実施することができると考えられる。従って、以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘するものであり、本開示の残りの部分を限定するものとして解釈されるべきではない。
実施例1:分析方法
【0096】
高性能液体クロマトグラフィー("HPLC")法を用いて、ドネペジルおよびドネペジル塩酸塩の濃度をアッセイした。移動相、カラムおよびクロマトグラフィー条件は、ドネペジル塩酸塩とドネペジル塩基の両方に類似していた。本方法の概要を以下の表1に与える。
【0097】
【表1】
実施例2:製剤の調製
表2A~表2Gに列挙されるように、多数の被験物質製剤を調製した(製剤は、それらを試験した分散試験に従ってグループ分けした)。製剤Arctic F1~Arctic F133は、全て流動性(free-flowing)溶液である(ヒドロキシプロピルセルロースの付加を有する末端部に「G」を有する製剤を除いて)。有効成分(Active)を含む全ての成分を一緒に添加し、全ての成分が溶解して完全に分散されるまで超音波処理することにより、単純な溶液製剤を調製した。製剤Arctic F134~F165は、クリームまたはゲル製剤から構成された。
【0098】
増粘剤を除いて全ての成分を最初に混合し、成分が完全に分散/溶解するまで超音波処理/ボルテックス(渦動攪拌)してゲル製剤を調製した。この溶液に増粘剤を添加した。次いで、生成した混合物を、ジェランガム(gallant)が完全に膨潤し、製剤が完全に混合されるまで、回転機rotisserie上で回転させておいた(典型的には、約24時間)。
【0099】
脂性相(脂溶性成分から成る)と水性相(水溶性成分から成る)とを別々に調製してクリーム製剤を調製した。60℃で製剤を加熱しながら、二相をオーバーヘッド式ミキサーで混合し、次いで、追加の共溶媒(例えば、エタノール、トランスクトール(Transcutol;登録商標)、およびプロピレングリコール)を加え、得られた混合物を更に均質になるまで混合した。
表2A:全ての製剤が流動性溶液であった。対応するフラックス試験は、それらを実施した日付つきの試験コード(例えばMay0l17ArcTor Q95)に従って一覧表にした。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
表2E:Arctic F61~Arctic F122は流動性溶液である。Arctic F88G、F131GおよびF132Gは、溶液製剤(ヒドロキシプロピルセルロースを添加して調製した)のゲル化形である。Arctic F134~F139もまたゲル化製剤である。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
表2F:Arctic F140 ~F150 は、ゲル(F140~F143 とF146~F148)およびクリーム(F144、F145、F149およびF150)から構成される。HPMC=ヒドロキシプロピルメチルセルロース(MethocelTM E4M)、PVP 40=ポリビニルピロリドン40(Povidone 540)、およびHY119=ヒドロキシプロピルセルロース(Spectrum社製HY119)。
【0121】
【0122】
【0123】
表2G:Arctic F151~F161は、ゲル(F151~F161)およびクリーム(F162)から構成される。HPMC=ヒドロキシプロピルメチルセルロース(MethocelTM E4M)、PVP 40=ポリビニルピロリドン40(Povidone 40)、およびHY119=ヒドロキシプロピルセルロース(Spectrum社製HY119)。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
実施例3:アレイ形式におけるブタ皮膚透過性スクリーニング測定のための一般手順
【0130】
米国特許第8,277,762号明細書に教示されるように、マトリックス形式で配列された24個または48個の小型拡散セルを含むブロックが、皮膚透過性と保有性の初期スクリーニングのために使用される。1.2 mmの均一な厚さにトリミングしたブタ皮膚の1枚の連続切片を、2枚の48ウェルプレートの間に導入した(ブタ皮膚は、必要なサイズにおいてより容易に入手でき、ヒト皮膚よりも低コストである。ブタ皮膚は、通常、ヒト皮膚よりもわずかに透過性が低いが、ブタ皮膚での透過性結果により、ヒト皮膚の性能を予測できる)。
【0131】
各製剤組成物は、典型的には、20 μLの疑似確定用量で、0.30 cm2のアドレス指定皮膚領域に、24ウェルまたは48ウェル拡散セルプレートの適当なセットのドナーウェルを縦横交差した6倍複製(6重反復試験)において0.30 cm2のアドレス指定皮膚領域に適用された。
【0132】
0.01%のアジ化ナトリウム(防腐剤)を含有するpH 7.4のリン酸塩緩衝生理食塩水("PBS")を、レセプターウェル液として使用した。この液体は、試験全体を通してドネペジルのためのシンク条件を提供するものとしてバリデートされている。該レセプターウェルプレートを実験中32(±0.5)℃に維持し、各レセプターウェルを攪拌しそして磁気攪拌棒を用いて攪拌した。24時間の段階(マーク)で、各アドレス指定皮膚領域を洗浄し、次いでQチップで乾燥した。24または48ウェルプレートを分解し、各レセプターウェルをサンプリングし、皮膚におけるドネペジルの保有率をDMSO中への抽出により評価し、続いてバリテートされた高性能液体クロマトグラフィー("HPLC")法を用い、270 nmでの紫外線("UV")検出を用いて分析を行った。
【0133】
ブタ皮膚を用いたこのスクリーニング方法を利用して、表2A~表2EのAug2417ArctFlxの表に示された製剤の透過性について試験した。
【0134】
実施例4:垂直型拡散セルを用いたヒトおよびブタの皮膚透過性測定のための一般手順
【0135】
フランツ(Franz)型拡散セル試験法を用いて、ヒト皮膚を通過する本発明の下に教示される組成物からのドネペジルのフラックス速度を分析した。フランツ型拡散セルは、経皮フラックス速度を測定するための一般的な周知の方法である。一般的なフランツ型セル手順はFranzにより記載されている{Franz,1975 #108}。
【0136】
本明細書に記載の実施例では、3.3 mLのレセプターウェル容積を有するフランツ型拡散セル ("FDC")を、ブタ皮膚またはヒト死体皮膚のいずれかで使用した。
【0137】
ブタの皮膚の場合、約10週齢の雌のヨークシャー種ブタ(この透過性試験とは無関係な目的で屠殺された)からの副産品の背側皮膚は、Thomas D Morris (Reistertown、MD)によって提供された。ブタ皮膚をドライアイス上にのせ、試験当日の朝まで-20℃に維持した。試験の当日に、ブタ皮膚を冷凍庫から取り出し、卓上で室温に解凍させておいた。次いで、皮膚スカイビング加工システムを使用して、ブタ皮膚を約1 mmの設定厚さに採皮した。
【0138】
ヒト死体皮膚の場合は、分層ヒト死体皮膚(0.015"-0.018"(インチ))を、AlloSource(Centennial、CO)または皮膚バンクNew York Firefighters (New York、NY)から入手した。皮膚組織は、組織バンクによって、250 μmほどの厚さに採皮され、ドライアイス上で凍結状態で輸送された。組織の入手源、ドナー情報、身体の部分、組織の状態、および受け取り前の貯蔵時間に関係する、死体皮膚供給元から入手可能な全ての情報は、試験ファイルに保存した。ドナー皮膚を受け取ったら直ちに、皮膚片を使用するまで-20℃に保存した。使用前に、皮膚片を冷凍庫から取り出し、周囲温度で完全に解凍した。
【0139】
ドナーウェルは、約0.55 cm2の皮膚領域をアドレス指定する。レセプターウェルに、0.01%アジ化ナトリウム(防腐剤)を含有するPBSを満たし(「レセプター液」)、この液体を、試験全体を通してドネペジルの浸漬条件を提供するものとして確認した。FDCのレセプターウェルを、磁気攪拌棒を用いて、レセプターウェル内のレセプター液(Receptor Fluid)の連続的な攪拌を伴って、攪拌乾燥ブロック中で37℃に維持した(皮膚表面の温度は、32(±0.5)℃である)。ドナーおよびレセプターチャンバーを、ピンチクランプ(SS #18 VWR 80073-350)を使用して、均一な圧力下で皮膚片の周囲にクランプ止めした。
【0140】
FDCを集成した後、皮膚をレセプター液と接触させた状態で20分間水和させた。この期間中の任意の漏れが証明されたFDCはいずれも廃棄した。
【0141】
各皮膚片の健常性(integrity)と品質は、トリチウム水(三重水素化水)の経皮フラックス(flux)または経表皮電気抵抗("TEER")の測定を通して、試験製剤の適用前に試験した(皮膚の健常性は、通常、ブタ皮膚片については試験しなかった)。TEER測定を以下のように行った。各FDCドナーウェルに、PBSの150 μLアリコートを導入した。10分後、平坦な電極プローブをドナーウェル内に配置し、自重で皮膚の表面上に軽く静止させた。次いで、第2の電極を、FDCのレセプターチャンバー上のサンプルポートを介してレセプター液の中に挿入した。波形発生器を使用して、100 Hzで100 mVの実効値("RMS")の交流("AC")信号を皮膚に印加し、次いでデジタル・マルチメータでインピーダンスを測定し、その結果をkΩ(キロオーム)単位で記録した。異常に低いインピーダンス(見かけ上<2kΩ)を示す任意のFDCを廃棄し、測定されたインピーダンスの読みの大きさに従って、FDCをランク付けした。次いで被験物質を、それぞれの被験物質についての複製物がそれぞれほぼ同等の平均経皮電気抵抗値を有する皮膚片に適用されるように、FDCのバッチに割り当てた。
【0142】
皮膚膜健常性試験が完了し、セルが適切に選別された後、被験物質のサンプルを皮膚の角質層に適用した。試験には単回投与レジメンを使用した。各試験製剤の6重複製物が、典型的には、合計36個のFDCのバッチにおいて検査される。
【0143】
ニチリョー(Nichiro)製容積式ピペッターを用いて投与量を適用した。投与量はピペッターから皮膚に分配され、それをガラスロッドの平滑末端を使用して表面上に縦横に塗布した。典型的な吸引用量は、ほとんどの実験についてセル1個当たり製剤10μLであった。製剤自体は、典型的には1重量%(wt%)で製造された。皮膚に適用される10μL用量が、製剤を塗布する時にガラスロッドへ付着するロスが全くなく、製剤中の比重が1.0であり、そしてセルあたり0.55 cm2の表面積であると仮定すると、各FDCは約181.8μg/cm2のドネペジルで投与されたことになる。
【0144】
サンプルを予め設定された時間で、典型的には24時間で、各レセプターウェルから取り出した。目盛り付きハミルトン型注射器を用いて、各FDCのサンプリングポートから24時間目に300μLアリコートを抽出した。抽出された各アリコートを96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェルに導入した。試料をHPLC分析の前に4~8℃で冷蔵庫に貯蔵した。サンプルは採取時から5日以内に分析した。
【0145】
24時間目に、セロハン(登録商標)テープで3回皮膚をテープ剥離(ストリッピング)した。各回のテープ剥離は、1枚のセロハン(登録商標)テープ片を軽い圧力で皮膚に貼り、次いでそのテープを剥がすことにより、角質層の最上層を組織的に取り出した。テープストリップは廃棄した。
【0146】
テープ剥離が完了した後、残った皮膚を一対のスパチュラを用いて表皮区画と真皮区画に分割した。必要に応じて、60℃に設定したホットプレート上に皮膚を1分間置いて、皮膚の分離を助けた。次いで、表皮区画と真皮区画を別々にガラスバイアルに入れ、そこに3 mLのDMSOを加えた。続いて皮膚片を穏やかに攪拌しながら、40℃で24時間インキュベートした。24時間のインキュベーション期間の後、サンプルを回収した。
【0147】
次いで、レセプターウェルから抽出されたサンプルおよび皮膚抽出物を、Chemstation(登録商標)ソフトウェアを使用して、バリデーションされたHPLC法によって分析した。ドネペジルのAUCを記録し、較正標準のAUC値および既知濃度値から作成された検量線を用いて、μg/mL値に変換した。これらのμg/ml値を試験結果のエクセル(Excel)ワークブックにインポートした。次いで、これらの濃度値に、レセプター容積(3.3 mL)または皮膚抽出容積(3 mL)を乗じ、そしてレセプター液に曝露された皮膚の表面積 (0.55 cm2)で除算し、最終累積量をμg/cm2として得た。有効成分(Active)の濃度をアッセイし、各例についてレポートした。
【0148】
ヒト死体皮膚を使用したこのスクリーニング方法を利用して、表2EのAug3017ArctFlx Q95から表2Hまでに示された製剤について試験した。
【0149】
材料および試薬
この試験には、以下の材料および試薬を使用した。
【0150】
【0151】
【0152】
結果
図1~6に示されるスクリーニングの第一ラウンドから、幾つかの結論を作出した。純粋なDMSOが、単独で使用した時にエンハンサーとして最も良好に機能した(Arctic F3-
図1)。
【0153】
DMSOと他の溶媒との混合物(
図3&4)は、非DMSO溶媒混合物よりも有意には性能が優れていなかった(F20対F14に基づく)。
【0154】
エタノール/プロピレングリコール混合物(Arctic F20:ドネペジル塩酸塩を含有する製剤、後方のArctic F34:ドネペジル塩基を含有する製剤)を、改善のためのベースコントロールシャーシとして選択した。
【0155】
F34対F20で示されるように、ドネペジル塩基はドネペジル塩酸塩よりも、皮膚をより容易に透過する傾向があった(
図4~6)。
【0156】
第I相試験におけるスクリーニングの追加のラウンドに基づいて(
図7~15に示されている)、さらに幾つかの改変がベース製剤に対して行われた:
シャーシをエタノール/プロピレングリコール/トランスクトール混合物(F61対F34に基づく)に変更し、パルミチン酸イソプロピルを更に添加した(F88対F61に基づく)。
更なる最適化のためにリード製剤をArctic F88として特定した。
【0157】
ヒト皮膚死体およびフランツ型セル手順(
図16~24)を用いた研究の結果に基づいて、以下の知見が得られた:
エタノール/PEG/トランスクトール/パルミチン酸イソプロピル製剤は、対照製剤よりも約5倍より多くのドネペジルを皮膚に送達することができた(真皮に保持された)。リードF160ゲル製剤を同定した。
【0158】
24時間の時点で、F160製剤の場合、皮膚を通過する道の全てに浸透するのではなく、表皮または真皮に約10倍よりも多くの有効成分(Active)が残っていた。
また、ドネペジルHClクリームも処方され、対照よりも約3倍ほど多く皮膚に送達した。
【0159】
【0160】
実施例5:好ましいゲル製剤およびクリーム製剤を用いた尋常性乾癬の治療
当該製剤が対照製剤に対して試験される:
対照
HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)3%
PVP-40(ポリビニルピロリドン)1%
ドネペジル塩酸塩 0.1%または1.0%
H20バランス。
【0161】
乾癬治療のための患者は、病変の表面を覆っている銀鱗をもつ尋常性乾癬の診断から選択された。これらの患者はいずれも関節炎を有していなかった。
【0162】
乾癬は、角化細胞の分化を変化させる過増殖性疾患である。乾癬皮膚病変の角化細胞は成熟速度の増加を有し、正常な3~4週間と比較して、乾癬の基底細胞が角質層に到達するのに3~4日間を要する。
【0163】
2週間から1ヶ月間まで変動しうる局所治療は、病変のスケーリング、サイズ、厚さ、および紅斑の外観を改善することができる。これらの患者の病変はすべて対称性であり、各患者は、一方の側で本発明の製剤により治療し、他方の側で対照で処置することができる。
この処置は、ゲル製剤F160もしくはF161、またはクリーム製剤F162、F165、F164A、F164BもしくはF164Cのいずれかを局所的に適用することからなる。ゲル製剤F160とクリーム製剤F162およびF165が好ましい。
【0164】
実施例6:しわ
しわを治療するために、実施例5aと同様の試験を行った。50歳と60歳の間の被験者は、1日1回週3回で8週間処置することができる。次いで皮膚のキメの改善と、細い線の減少について患者を観察することができ、この映像は、担当の皮膚科医によって共有された。
【0165】
実施例7:創傷治癒
創傷治癒のために、実施例5aと同様の試験を実施した。慢性潰瘍または治癒が十分にならなかった創傷を有する患者は、最長4週間まで治療することが可能であった。
この処置は、ゲル製剤F160もしくはF161、またはクリーム製剤F162、F165、F164A、F164BもしくはF164Cを局所的に適用することから成った。ゲル製剤F160と、クリーム製剤F162およびF165 が好ましい。
【0166】
実施例8:掻痒(かゆみ)
実施例5aと同様の試験を、ひどい日焼けを有する者の群において実施し、痛み、紅斑、およびかゆみを抑える効果を調べた。
この処置は、ゲル製剤F160もしくはF161、またはクリーム製剤F162、F165、F164A、F164BもしくはF164Cのいずれかを局所的に適用することから成った。ゲル製剤F160と、クリーム製剤F162およびF165が好ましい。
【0167】
実施例9:浮腫
実施例5aと同様の試験を、外傷により生じた浮腫を有する被験者において実施した。局所処置は、特に炎症の急性期に、外傷によって生じた浮腫を減少させることが期待される。
【0168】
この処置は、ゲル製剤F160もしくはF161、またはクリーム製剤F162、F165、F164A、F164BもしくはF164Cのいずれかを局所的に適用することから成った。ゲル製剤F160と、クリーム製剤F162およびF165が好ましい。
【0169】
実施例10:ざ瘡(ニキビ)の治療
図25のパネルA)(
図25A)に示すように、他の治療薬(商品名アキュテインを含む)に抵抗性である左肩と背中にグレード3の膿疱状丘疹ニキビを有する年齢26歳の男性において、ざ瘡(ニキビ)の分布およびサイズに著しい改善が認められた(上のパネルはF162での治療前であり、下のパネルはF162での10日間の治療後である)。パネルB)とC)は、それぞれ、他の治療薬(アキュテインを含む)に抵抗性である、年齢26歳と28歳の女性における顔面の膿疱状丘疹ざ瘡(ニキビ)の同様な改善を証明している。どちらの女性も、F162による10日間の治療後にグレード1のざ瘡(ニキビ)にまで改善し、以前のざ瘡(ニキビ)から生じた跡にも有意な改善が認められた。
【0170】
F162 クリーム製剤は、3名の患者の各々について10日間にわたりざ瘡(ニキビ)患部の上に1日2回局所適用した。
【0171】
実施例11:イヌのアトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎を有する顧客所有のイヌにおけるドネペジルHClの安全性と有効性
【0172】
試験目標:
アトピー性皮膚炎を有するイヌの治療用のピペリジン系可逆性アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の有効性と安全性を評価すること。
【0173】
試験評価項目:
包含基準
・顧客所有の短毛種のイヌ
・年齢12か月齢以上
・3~80 kg
・非季節性環境誘発性アトピー皮膚炎を有するイヌ
他の包含項目を満たしている場合には一部食品誘導性アトピー性皮膚炎を有するイヌも試験に登録することができる。
・いずれかのレベルの掻痒性(すなわち咀嚼、ひっかく、なめる、こする、または旋回する動作)。
・登録前少なくとも8週間使用しており、試験期間中未変更のままであった糖質コルチコイド不含有の薬用シャンプーや耳かきを除いて、皮膚炎のいずれかの治療用の薬物療法(下記に列挙)を取り止めなければならない。
経口用糖質コルチコイド: 2週間
注射用糖質コルチコイド: 6週間
経口用シクロスポリン: 2週間
オクラシチニブ: 2週間
IL-31モノクローナル抗体: 2週間
経口用抗ヒスタミン製剤: 1週間
必須脂肪酸: 1週間
局所用糖質コルチコイド: 1週間
・同時発生病状を有するイヌは、登録前の6週間の間および試験期間の終了まで治療が変わらなかった場合に限り許容されるだろう。
・試験前の少なくとも8週間の間はイヌに同じ食事を与えるべきであり、この食事を試験期間を通して維持すべきである。
【0174】
除外基準
・悪性新生物、毛嚢虫、ノミアレルギー、免疫機能に影響を及ぼし得る状態(例えば甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、リケッチア病、特発性血小板減少症、フォンビルブランド病)。
・細菌性毛嚢炎または真菌性皮膚炎のための全身性抗菌剤療法を受けているイヌ、泌乳している雌イヌ、または繁殖動物としての使用を目的にしたイヌ(雄または雌)。
・それらの処置前の全血球数、血清化学または尿検査において臨床的に関連する異常を有するイヌは、本試験から除外した。
【0175】
取下げ基準
・所有者はいつでも自身のペットを試験から取り下げる(撤退する)ことを選択することができる。
・治療の施行および評価の来院に関する所有者のコンプライアンスが欠如する場合。
・介入を必要とする臨床徴候の有意な悪化が認められる場合。
・治療に関連すると推定される副作用の存在、または試験期間中に許容されない薬物を必要とする場合。
【0176】
試験
スプレーおよびゲルの形で提供されるアセチルコリンエステラーゼの1%ピペリジン系の可逆的阻害剤(ドネペジルHCl)
【0177】
試験プロトコル
イヌに、水中1%ドネペジルHClを1日2回、14日間噴霧する。試験来院時には、スプレーの後にゲルが塗布される。家庭において所有者は、スプレーの後にゲルを塗布することを選択することができる。動物が傷口を舐めるのを防ぐために、適用後20~30分間、イヌにエリザスカラー(Elizabethan collar)(E-カラー)を着用させる。所有者は、Eカラーに代わるものとして20~30分間イヌを近くで観察するかまたは散歩させることができる。
【0178】
試験来院:
0日目:登録、身体検査、掻痒と皮膚炎の評価、採血および採尿。血漿サンプルは、薬物動態試験(PK)のためにバンクに登録される。試験スタッフはスプレー剤とゲル剤を配布する。スプレーは必須であり、ゲルは任意である。
【0179】
7日目:全評価に対する再検査予約、PK用の血漿のための採血。所有者は、予約が完了するまでスプレー剤とゲル剤の適用を延期するよう要求されるだろう。試験スタッフは、来院時にスプレー剤とゲル剤を適用する。所有者は、この試験用スプレー剤とゲル剤を、説明責任に持っていき、必要に応じてより多くを受け取ることができる。
【0180】
14日目:全評価に対する最終予約、採血と採尿。血漿サンプルは、薬物動態(PK)のためにバンクに預けられる。所有者は、予約が完了するまでスプレー剤とゲル剤の適用を延期するよう要求される。試験スタッフは、来院時にスプレー剤とゲル剤を適用する。所有者は、この来院時に全ての試験用スプレー剤とゲル剤を返却する。
【0181】
試験評価:
ベースライン(基準)データ(人口統計学的、身体検査、掻痒性と皮膚炎の評価)が、0日目の登録時に収集される。CBC、血清化学、尿検査は、0日目と14日目に収集される。
【0182】
所有者評価:
1. 掻痒性を評価する視覚アナログスケール(PVAS)
2cm間隔でワード・ディスクリプタ(単語記述子)を有する長さ10 cmの線からなるPVASは、イヌの所有者によって使用され、「掻痒感」(かゆみ)の重症度を評価する。所有者は、イヌが掻痒感を最もよく顕示する位置のところでPVAS線上にマークを付けるように指示される。終了時に、その線上の基底部(「正常のイヌ」)から線上の所有者の付けた印までの距離(センチメートル)を測定して記録する。所有者は、0日目、7日目、14日目にPVAS評価を実行する。
【0183】
2. 所有者(飼い主)が報告した治療効果(OGATE)
所有者は、28日目(試験終了時)に、治療に対する全体的応答をどのように等級付けるか?という質問を受けるだろう。
0-応答なし
1-わずかな応答
2-正当な応答
3-良好な応答
4-優れた応答
【0184】
獣医学的評価:
臨床医が、0日目、7日目および14日目に皮膚炎を評価するためにCADESI-04のスコアが使用される。
標本サイズ:
15 匹のイヌ
【0185】
アウトカムの判定基準:
・CADESI-04
現行の治療群および本発明者らの治療群の標準について、正常(すなわちCADESI 0~9)の範囲内に獣医学的に評価された皮膚病変スコアを有するイヌ、または軽度ADを有するイヌ(すなわちCADESI 10~35)の割合が記録される。
・PVAS
試験終了時に正常(0.0~1.9)範囲内に所有者が評価した掻痒性を有するイヌおよび軽度AD を有するイヌ(すなわちPVAS 2.0~3.5)の割合を評価した。
・OGATE
イヌの所有者が治療に対する全体的応答を「良好」または「最良」と評価したイヌの百分率(すなわち、それぞれスコア3または4)。
【0186】
実施例12:Jan0919ArctFlxの分析
Jan0919ArctFlxを、QTest(95%)を用いて以下のパラメータについて分析した:
ドネペジルの経皮送達
ドネペジルの皮膚保持
ドネペジル送達率
ドネペジルのフラックス(流束)
経過時間24時間
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
実施例13:Jan0919ArcFlx 095の分析
Jan0919ArcFlxを次のパラメータについてQTest(95%)を使って分析した。
ドネペジル経皮
ドネペジル皮膚保持
ドネペジル送達率
ドネペジルフラックス
経過時間24時間
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
実施例13:アトピー性皮膚炎を有するクライアントの飼いイヌにおけるピペリジン系アセチルコリンエステラーゼ可逆的阻害剤の安全性と有効性
実施例13に記載の研究は、主目的がイヌのアトピー性皮膚炎に関連する臨床徴候(すなわち、皮膚炎と掻痒)を改善することに際してピペリジン系アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の有効性を評価することである、主概念の(principal of concept)非盲検臨床試験である。この試験には、11匹のアトピー性皮膚炎を有するクライアント所有のイヌが登録された。研究者は、バリデーションされたスコアリング法(イヌのアトピー性皮膚炎の程度および重症度の指数(Canine Atopic Dermatitis Extent and Severity Index)-4回反復;CADESI-4)を使用して、0日目、7日目および14日目の皮膚病変の重症度と程度を評価した。同じ試験来院時において、所有者は、バリデートされた痒みの視覚アナログスケール(PVAS)法を用いてイヌの掻痒レベルを評価した。さらに、14日目(試験終了時)には、所有者は、5点スケール(すなわち、0=無応答;1=貧弱な応答;2=穏当な応答;3=良好な応答;4=最良な応答)を用いて、治療奏効の総合評価(OGATE)を行った。
【0217】
0日目、7日目および14日目の平均CADESI-4スコアは、それぞれ252、119および139であった。0日目、7日目および14日目のPVASスコアは71.6、59.2および55.4であった。CADESI-4スコアとPVASスコアについての平均差の信頼区間が表9に示される。0日目と14日目の間には皮膚の炎症(CADESI:P<0.00048、PVAS:P<0.0108)および掻痒レベル(PVAS:P<0.009、PVAS:P<0.012)に有意な減少が認められた。3名のイヌ所有者が、自身のイヌの臨床的改善を最良と評価し、5名が良好と評価し、1名が適正と評価し、1名が貧弱と評価し、1名が無応答と評価した。
【0218】
【0219】
本試験の間にPVASスコアに有意な減少が求められたという事実にもかかわらず、ほとんどの所有者は、痒み(掻痒)レベルが減少しなかったとコメントした。
【0220】
軟膏の14日間適用の間に全く有害な作用は認められなかった。
【0221】
要約すると、本試験結果は、この非盲目臨床試験において試験したアセチルコリンエステラーゼのピペリジン系可逆的阻害剤が、イヌのアトピー性皮膚炎に関連する臨床徴候を抑制するのに有益であり得ることを示している。二重盲検プラセボ対照試験もまた、これらの結果をさらに確証するために実施される。