(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015735
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】プラスチックからベンゼン、トルエン、キシレン(BTX)などの低分子量芳香族化合物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 6/00 20060101AFI20250123BHJP
C07C 15/04 20060101ALI20250123BHJP
C07C 15/06 20060101ALI20250123BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20250123BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20250123BHJP
C08J 11/16 20060101ALI20250123BHJP
B01J 29/40 20060101ALI20250123BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
C07C6/00
C07C15/04
C07C15/06
C07C15/08
C08J11/12 ZAB
C08J11/16
B01J29/40 M
C08J11/12
C07C6/00 ZAB
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024200658
(22)【出願日】2024-11-18
(62)【分割の表示】P 2021560331の分割
【原出願日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】62/826,815
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19176932.2
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521440611
【氏名又は名称】バイオビーティーエックス・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ニールス・ヤン・スヘンク
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・ヘーレス
(72)【発明者】
【氏名】イノウク・クライゼ-マイゼベルト
(57)【要約】
【課題】本発明は、プラスチックからベンゼン、トルエン、及びキシレン(BTX)などの低分子量芳香族化合物を調製するための新規なプロセスに関する。
【解決手段】プラスチックを含む供給原料流から芳香族化合物を調製するための熱-触媒熱分解プロセスが提供され、そのプロセスは以下のステップを含む:a)プラスチックを含む供給原料流を600~1000℃の範囲内の熱分解温度において熱分解処理にかけて、熱分解蒸気を生成するステップ、b)任意選択により場合によっては、熱分解蒸気を熱分解温度よりも低い温度へと冷却するステップ、c)接触変換ステップにおいて、450~700℃の範囲内の芳香族化温度(芳香族化温度は熱分解温度より少なくとも50℃低い)において、蒸気相を芳香族化触媒と接触させて、芳香族化合物を含む変換生成物を生成するステップ、及びd)任意選択により場合によっては、その変換生成物から芳香族化合物を回収するステップ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを含む供給原料流から低分子量単環式芳香族化合物を調製するための2段階の熱-触媒熱分解プロセスであって、以下のステップ:
a)プラスチックを含む供給原料流を600~1000℃の範囲内の熱分解温度(Tpyr)において熱分解処理にかけて、熱分解蒸気を生成させるステップ;
b)任意選択により場合によっては、前記熱分解蒸気を、前記熱分解温度よりも低い温度まで積極的に冷却するステップ;及び
c)接触変換ステップにおいて、前記熱分解蒸気を、450~700℃の範囲内の芳香族化温度(Tarom)において芳香族化触媒と接触させて(ここで、前記芳香族化温度は前記熱分解温度より少なくとも50℃低い)、低分子量芳香族化合物を含む変換生成物を生じさせるステップ;及び
d)任意選択により場合によっては、前記変換生成物から、低分子量単環式芳香族化合物を回収するステップ、
を含む、プロセス。
【請求項2】
Tpyrが、650~950℃の範囲内、好ましくは700~850℃の範囲内にある、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップa)において、前記熱分解の反応器中での滞留時間が2分未満、好ましくは1分未満、より好ましくは30秒未満である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
Taromが、500~700℃、好ましくは500~650℃、より好ましくは500~600℃の範囲内にある、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
TaromがTpyrよりも少なくとも80℃低い、好ましくは少なくとも100℃低い、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
TaromがTpyrよりも最大で200℃低く、好ましくは最大で175℃低い、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
Tpyrが650~850℃の範囲内にあり、Taromが500~600℃の範囲内にある、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ステップc)において、芳香族化の反応器内での滞留時間が2分未満、好ましくは1分未満、より好ましくは30秒未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップd)が、前記変換生成物からベンゼン、トルエン、及びキシレン(BTX)を回収する工程を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
熱分解ステップa)及び接触変換ステップc)を2つの異なる反応器中で行う、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記芳香族化触媒が、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-35、ZSM-23、フェリエライト、ゼオライトベータ、ゼオライトY、ゼオライトX、モルデナイト、ゼオライトA、IM-5、SSZ-20、SSZ-55、MCM-22、TNU-9、金属で処理された、交換された、又は含浸された触媒、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
供給原料流が、ポリオレフィン、芳香族ポリマー、繊維強化複合材料、多層プラスチック、混合プラスチック 廃棄ポリアミド、及び/又はリサイクルごみ、又は前述の材料のいずれかの熱分解によって誘導される液体の流れを含めた、合成又は半合成ポリマー又はそれらの混合物を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
供給原料流が、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリスチレン(PS)、及びポリアミド(PA)のうちの1つ又は複数を含む、又はそれらの1つ又複数のみからなる、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ステップb)が、熱交換器の助けを借りて熱分解蒸気を冷却することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ステップc)が、熱担体を含む蒸気改質反応器(vapour upgrading reactor)内で行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
ステップa)の熱分解処理がクラッキング触媒の存在下で行われて、熱分解蒸気及びコークスが付着したクラッキング触媒を生成し、次に前記のコークスが付着したクラッキング触媒から前記熱分解蒸気を分離する、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記クラッキング触媒が、酸性又はアルカリ性の無機材料、及びアモルファス又は結晶性のシリカ-アルミナ含有材料からなる群から選択される、請求項16に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックから低分子量単環式芳香族化合物、例えば、ベンゼン、トルエン、及びキシレン(BTX)を調製するための新規な方法に関する。これらの化合物は、エチルベンゼン、クメン、シクロヘキサン、アジピン酸(ベンゼンから)、トルエンジイソシアネート、ベンズアルデヒド及び安息香酸(トルエンから)、並びにテレフタル酸(p-キシレンから)などの大量化学物質のための重要な出発物質である。
【背景技術】
【0002】
現在、上述した芳香族化合物は、主に、化石資源の精製工程で製造されている。一般的な方法には、スチームクラッキング、スチームリフォーミング、接触クラッキング(catalytic cracking)、及び接触リフォーミングが含まれる。あるいは、バイオマス、廃棄物、又はそれらの組み合わせが調製に使用される。混合廃プラスチックは、この目的のための関心がもたれる代替原料であると考えられている。化学合成及び/又は熱化学的変換によってバイオマス又は廃プラスチック材料を芳香族化合物に変換することができるいくつかの経路が提案されている。しかし、ごくわずかの技術しか、パイロットスケールあるいはそれ以上までスケールアップされていない。
【0003】
プラスチックを芳香族化合物に熱変換することは、プラスチックの廃棄を減らし、大量化学物質を生成するための有望な技術であり、特に、簡単にリサイクルすることができない混合プラスチック及び/又は汚染されたプラスチックの場合にそうである。ところが現在、これらのストリームは焼却されており、いくつかの場合には、プラスチックを代替燃料に変換するために使用されているが、化学産業のための化学ビルディングブロックへの変換は、これらの廃棄物ストリームに大いに価値を付与する。
【0004】
さまざまな記事や特許が、プラスチック、混合プラスチック廃棄物、バイオマスと混合されたプラスチック、及びそれらの混合物の、代替燃料及び大量化学物質への(触媒による(接触))熱分解について記述している。以下の5種類の変換を区別することができる:
1.非触媒熱分解(non-catalytic pyrolysis):不活性雰囲気中での昇温した温度おける材料の非接触(非触媒)熱分解。熱分解は化学組成の変化を含み、不可逆である。
2.イン・サイチュ(その場, in situ)での接触熱分解:上述した、触媒の直接存在下での熱分解。触媒は、必要とされる熱分解温度、生成物の組成、又はその両方を変えうる。
3.エクス・サイチュ(系外, ex situ)接触熱分解:上述した熱分解だが、その熱分解反応からの蒸気が、熱分解セクションとは区別可能なセクションにおいて触媒を使用して改質される(アップグレードされる)。
4.統合型カスケード接触熱分解(Integrated Cascading Catalytic Pyrolysis (ICCP)):上記2と3の組み合わせであり、すなわち、接触熱分解、典型的にはクラッキング触媒を使用した接触熱分解と、それに続く第二の触媒を用いる蒸気の改質(アップグレード)。
5.2ステップ非統合型プロセス:クラッキング触媒の助け有り又は無しでの熱分解と、それに続く凝縮、及びさらに続いての、少なくとも液体の画分の接触変換(catalytic conversion)。
【0005】
Lopezら(Renewable and Sustainable Energy Reviews, 73(2017), pp. 346-368)は、燃料及び化学物質へのプラスチックの熱変換に関する文献を概説(レビュー)している。 Miandadら(Process Safety and Environmental Protection, 102(2016), pp. 822-838)は、プラスチック廃棄物の接触熱分解に関する文献を概説している。
【0006】
さまざまな研究が、温度、加熱速度、滞留時間、触媒などの操作条件を選択して、熱分解又は接触熱分解による廃プラスチックからのBTXの製造に向けられてきた。たとえば、Bagri及びWilliams(Journal of Analytical and Applied Pyrolysis, 63, 1(2002), pp. 29-41)を参照されたい。彼らはポリエチレンの系外(ex situ)接触熱分解プロセスにおける温度効果を研究した。熱分解は500℃で行われ、熱分解ガスは400~600℃の範囲の温度において触媒床を含む第2の反応器へと送られた。芳香族含有量は、接触変換の温度の上昇とともに増加することが発見された。
【0007】
Takumaらは、375~550℃でのH-ガロシリケート触媒を用いる、ポリオレフィンの接触分解による芳香族炭化水素の生成を研究した。BTXの収率は温度に左右され、60.5%のBTX収率が525℃で得られることが発見された。しかし、H-ガロシリケート触媒は経済的に実現可能な方法で調製することができないので、このプロセスは工業規模での適用を可能にしない。いずれにせよ、Lopezらの文献における全体的な結論は、工業的規模が可能な方法を使用して報告されたBTXの収率は低く、通常は20%未満である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0247617号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0170739号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Lopezら, Renewable and Sustainable Energy Reviews, 73(2017), pp. 346-368
【非特許文献2】Miandadら, Process Safety and Environmental Protection, 102(2016), pp. 822-838
【非特許文献3】Bagri及びWilliams, Journal of Analytical and Applied Pyrolysis, 63, 1(2002), pp. 29-41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明者らは、BTXの商業的生産へとスケールアップすることを可能にするプロセス、特に、市販されている又は市販されるようにすることが可能である触媒の使用を含むプロセスにおいて、プラスチックを含む供給原料流から、低分子量芳香族化合物、特に単環式芳香族、例えばBTXの収率を向上させることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、プラスチックのエクス・サイチュ(ex situ)熱分解における熱分解温度を従来の熱分解温度よりも大幅に高くする、すなわち600~1000℃の範囲にし、次にその熱分解物蒸気を冷やし、その蒸気を450~700℃の範囲の温度において接触芳香族化(catalytic aromatization)工程にかけた場合(但し、その芳香族化温度は、熱分解温度よりも有意に低いことを条件とする)、これまでにないBTXの高収率を得ることができることが観察された。例えば、(混合)プラスチックを含む供給原料流を800℃において熱分解し、次に550℃において接触芳香族化することにより、40質量%より多いBTXを含む生成物流が得られた。
【発明を実施するための形態】
【0012】
したがって、本発明は、プラスチックを含む供給原料流から低分子量単環式芳香族化合物を調製するためのエクス・サイチュ接触熱分解(ex situ catalytic pyrolysis)あるいはICCPプロセスを提供し、そのプロセスは以下のステップを含む:
a)プラスチックを含む供給原料流を600~1000℃の範囲内の熱分解温度(Tpyr)において熱分解処理をして、熱分解蒸気を生成させるステップ;
b)任意選択により場合によっては、上記の熱分解蒸気を、上記の熱分解温度よりも低い温度まで冷却するステップ;及び
c)接触変換ステップにおいて、a)又はb)で得られた(冷却された)熱分解蒸気を、450~700℃の範囲内の芳香族化温度(Tarom)において芳香族化触媒と接触させて(ここで、TaromはTpyrより少なくとも50℃低い)、低分子量芳香族化合物を含む変換生成物を生成させるステップ;
d)任意選択により場合によっては、上記の変換生成物から、低分子量単環式芳香族化合物を回収するステップ。
【0013】
本発明のエクス・サイチュ接触熱分解プロセス(ex-situ catalytic pyrolysis process)は、当技術分野では開示も示唆もされていない。プラスチックの非接触熱分解(non-catalytic pyrolysis)の「最適な」熱分解温度(Tpyr)は、一般に約500℃と考えられている。この温度において、凝縮可能な液体(油)の最高の収率が得られる。より低いTpyrはより多くのコークス生成量をもたらす一方で、より高いTpyrはより多くのガスを生成する。したがって、最高の油の収量を生み出したTpyrを選択することが、自明の選択である。一般に、500℃はまた、プラスチック研究のエクス・サイチュ接触熱分解のための最適なTpyrでもあると考えられ、特定の興味ある生成物、例えばBTXの収率を最適化することを目的とする研究は、通常、接触変換が起こる第2段階に焦点があてられる。実際に、芳香族化温度Taromを変えることによる効果は、さまざまな研究の対象となってきた。例えば、Bagriらの研究は、550℃においてプラスチックの熱分解を行っており、接触芳香族化の温度を400℃から600℃へ高くすることが、BTXの形成を多くすることができることを教示している。熱分解温度を変えること(高くすること)については全く言及されていない。さらに、実用上の理由から、TpyrとTaromが同じであるプロセスが、エクス・サイチュ熱分解においてしばしば利用されている。最適なTaromは、推定される最適なTpyrの範囲内にあるので、Tpyrを変えることによる影響を別に調査する動機付けは当技術分野にはなかった。
【0014】
米国特許出願公開第2017/0247617号明細書は、バイオマス供給原料流(これは(廃)プラスチックを含んでいてもよい)からBTXを生産するためのICCP/2ステッププロセスにおいて、Tpyr及びTaromの両方に対して300~1000℃の広い範囲を教示している。重要なことには、Taromより少なくとも50℃高い、現在この特許請求の範囲に記載している範囲内のTpyrを選択することについては何も言及されていない。むしろ、従来技術において一般的に保持されている見解に沿って、実施例は全て、500~550℃の従来の範囲内で実施されており、Tpyr及びTaromは(ほぼ)同じである(540/550℃及び500/500℃)。
【0015】
米国特許出願公開第2009/0170739号明細書は、流動点降下潤滑油基油成分を調製するための、廃プラスチックの熱分解を含むプロセスを開示している。熱分解は、450~700℃の範囲で、3~60分の熱分解滞留時間で行われて、熱分解物流が生成され、これを次に一般に約200℃~約475℃の温度において、異性化脱ロウ触媒と接触させる。本発明とは対照的に、米国特許出願公開第2009/0170739号明細書は、芳香族化触媒を使用せず、低分子量単環式芳香族化合物を含む変換生成物を生成しない。
【0016】
本発明の一実施形態では、Tpyrは、700~1000℃、好ましくは700~950℃の範囲である。たとえば、熱分解は、720、740、750、760、780、800、825、850、875、900、925、950、975、又は1000℃で実施される。一つの側面では、Tpyrは、750~950℃、例えば、800~950℃、850~950℃、750~900℃、750~875℃、750~850℃、750~825℃、750~800℃の範囲である。
【0017】
本発明による熱分解反応は、典型的には、わずか数分、例えば、3分以下の滞留時間の高速プロセスである。一実施形態では、熱分解反応器内の滞留時間は、0.1秒~3分、好ましくは1秒~2分の範囲、例えば、1、3、5、7、10、15、20、25、30、45、60、80、90、又は100秒である。本明細書に開示している比較的高いTpyrにおける熱分解反応は、低分子量のアルカン及びアルケンを含む熱分解蒸気を生成し、これらは次に芳香族化触媒の助けを借りてTaromにおいて低分子量単環式芳香族化合物、特にベンゼン、トルエン、及び/又はキシレンへと変換される。
【0018】
典型的には、本発明による芳香族化反応もまた、わずか数分、例えば3分以下の滞留時間の高速プロセスである。一実施形態では、芳香族化ゾーン内での滞留時間は、0.1秒~3分、好ましくは0.5秒~2分の範囲、より好ましくは30秒未満である。例示の滞留時間は、1、3、5、7、10、15、20、25、30、45、60、80、90、100、又は120秒である。
【0019】
本発明によれば、Taromは、Tpyrより少なくとも50℃低く、かつ450~700℃の範囲内である。たとえば、Taromは少なくとも80℃、好ましくは少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも150℃低くなっている。たとえば、少なくとも80、100、150、200、225、250、275、300、又は350℃低くなっている。本発明の2段階プロセスにおけるTpyrとTaromの間の最大差(ΔTpyr-Tarom)はいろいろな値となりうるが、典型的には最大約250℃である。
【0020】
しかし、興味深いことに、例えばポリプロピレン流から得られるBTX変換生成物中のキシレンの割合は、ΔTpyr-Taromが少なくとも50℃、しかし約200℃を超えない場合に最適であることが発見されている。キシレンは、通常、BTX生成物中に含まれる最も望ましい化合物である。したがって、一実施形態では、本発明は、プラスチック、好ましくはポリプロピレンを含む供給原料流から、低分子量単環式芳香族化合物、特にキシレンを調製するための2段階熱接触熱分解プロセス(two-step thermos-catalytic pyrolysis process)を提供し、そのプロセスは以下のステップを含む:
a)プラスチックを含む供給原料流に、600~1000℃の範囲内の熱分解温度において、好ましくは2分間以下の継続時間、熱分解処理をして、低分子量のアルカン及びアルケンを含む熱分解蒸気を生成させるステップ;
b)任意選択により場合によっては、上記の熱分解蒸気を熱分解温度よりも低い温度まで能動的に冷却するステップ;及び
c)触媒変換ステップ(接触変換ステップ)において、450~700℃、好ましくは500~650℃の範囲内の芳香族化温度において、上記の熱分解蒸気の相を芳香族化触媒と接触させて(ここでこの芳香族化温度は上記の熱分解温度よりも50~200℃、好ましくは50~150℃低い)、低分子量(単環式)芳香族化合物を含む変換生成物を生成させるステップ;及び
d)任意選択により場合によっては、上記の低分子量単環式芳香族化合物、好ましくは、キシレンを、上記の変換生成物から回収するステップ。
【0021】
一実施態様では、本明細書において提供されるプロセス中のTaromは、450~650℃の範囲内にある。たとえば、芳香族化は、450、480、500、525、550、575、600、625、650、675、又は700において実施される。例示のTaromの範囲には、450~650℃、500~700℃、450~600℃、550~650℃、500~600℃、450~550℃、500~550℃、550~600℃、600~700℃、及び550~700℃が含まれる。1つの好ましい側面では、Taromは、450~550℃、例えば500~550℃である。
【0022】
特にBTX収率及びキシレン収率に加えて、Taromを十分に低く保つことは追加の技術的利点を有し、特に芳香族化触媒がゼオライト触媒である場合にそうである。ゼオライト触媒は、高温でダメージを受け、その結果失活する傾向がある。したがって、本発明の温度条件を用いたプロセスは、触媒の寿命及びプロセスの経済性にとって有益である。さらに、Taromを比較的低く、すなわち最大600℃に保ちながら、高いBTX収率を可能にする本発明のプロセスは、より低品質の鋼(スチール)の使用を可能にする。これは、設備の資本コスト、したがってプロセスの経済性に大きな影響を及ぼす。
【0023】
当業者によって理解されるように、Tpyrの任意の例示の及び好ましい温度の値又は範囲は、Taromの任意の例の及び好ましい温度の値又は範囲と組み合わせることができる。
【0024】
特定の側面では、本発明は、プラスチックを含む供給原料流から低分子量単環式芳香族化合物を調製するためのエクス・サイチュ接触熱分解プロセス(ex situ catalytic pyrolysis process)を提供し、その方法は以下のステップを含む:
a)プラスチックを含む供給原料流を、650~850℃、好ましくは700~750℃の範囲内の温度Tpyrにおいて熱分解処理にかけて、熱分解蒸気を生成させるステップ;
b)任意選択により場合によっては、上記の熱分解蒸気をTpyrより低い温度まで冷却するステップ;
c)a)又はb)において得られた(冷却された)熱分解蒸気を、接触変換ステップ(catalytic conversion step)において、500~600℃の範囲内の温度Taromにおいて芳香族化触媒(aromatization catalyst)と接触させて、低分子量単環式芳香族化合物を含む変換生成物を生成させるステップ。
【0025】
本発明の方法は、廃プラスチック、例えば、使用済み廃プラスチック、規格外プラスチック、工業用スクラッププラスチックなどから、価値のある化学物質を製造することを可能にする。廃プラスチックは、単一のプラスチック、又は好ましくは、混合された廃プラスチックであることができる。供給原料流は、ヘテロ原子、例えば、酸素、硫黄、窒素だけでなく、ハロゲン、例えば、塩素や臭素も含んでいてもよい。特に、ポリマー骨格内に芳香族部分を含まない(混合された)プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)について、最初の熱分解ステップにおいて温度を上げる効果は、BTXの収率を有意に高くした。本発明の方法は、プラスチック供給原料流を、かなりの割合の低分子量芳香族化合物を含む変換生成物に変換することができ、好ましくは、前記の低分子量芳香族化合物は、ベンゼン、トルエン、及びキシレン(BTX)である。例えば、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも30質量%、より好ましくは少なくとも35質量%のBTXを含む変換生成物を得ることができる。
【0026】
供給原料流(feed stream)は、ポリオレフィン、芳香族ポリマー、繊維強化複合材料、多層プラスチック、混合プラスチック 廃棄ポリアミド、及び/又はリサイクル廃棄物を含めた、合成もしくは半合成ポリマー又はそれらの混合物を含むことができ、あるいは、先に挙げた材料のいずれかの熱分解に由来する液体流を含むことができる。この供給原料流は前処理をしてもよく、例えば、供給原料の前処理は、その供給原料流の液化、溶媒和、又はスラリー化からなる。いくつかの実施形態では、供給原料流は、その他の有機物質流、例えばバイオマス又は熱分解油などを含んでいてもよい。
【0027】
プラスチックは特定のポリマーから主に構成されており、プラスチックは一般にこの特定のポリマーによって命名される。好ましくは、プラスチックは、その総質量の25質量%より多い量の特定のポリマーを、好ましくは40質量%より多い量、より好ましくは50質量%より多い量の特定のポリマーを含む。プラスチック中のその他の成分は、例えば添加剤、例えば、充填剤、強化剤(補強材)、加工助剤、可塑剤、顔料、光安定剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、インク、酸化防止剤などである。一般に、プラスチックは1つより多くの添加剤を含む。本発明の方法に適したプラスチックは、例えば、ポリオレフィン及びポリスチレン、ポリプロピレン、並びにポリスチレンである。ここで、供給原料流は、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)を含めたポリエチレン(PE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリスチレン(PS)、MPB、及び発泡スチロールFB、並びにそれらの任意の混合物のうち1つ以上を含むか又は1つ以上のみからなる。主にポリオレフィン及びポリスチレンから構成された混合プラスチックも含まれる。ポリマーは、複合材料の形態、例えば、金属蒸着プラスチックバッグ(metallized plastic bag, MPB)、繊維強化ポリマー、多層プラスチック、ハイブリッド材料、又はその他のものであってもよい。
【0028】
ステップa)の熱分解処理は、不活性熱伝達媒体、分解触媒(クラッキング触媒)、酸除去材料、又はそれらの組み合わせを使用して実施することができる。
一実施形態では、熱分解処理ステップa)は分解触媒(クラッキング触媒)の存在下で実施されて、蒸気画分、及びコークスが付着した分解触媒を生じ、次に、蒸気相を芳香族化触媒と接触させる前に、その蒸気画分をコークスが付着した分解触媒から分離する。好ましくは、そのコークスが付着した分解触媒は、そのコークスが付着した分解触媒を酸素と接触させて、再生された分解触媒を生成することによって再生される。より好ましくは、再生された分解触媒は、ステップa)の熱分解処理にリサイクルされる。
【0029】
適切な分解触媒(クラッキング触媒)は、供給原料の熱分解にプラスの影響を及ぼし、それにより、形成される蒸気の量を増加させ、及び/又はより高い収量の芳香族が形成されるように蒸気相の組成を変える。そのような不活性材料には、例えば、これらに限定されないが、さまざまなタイプの砂、軽石、及び炭化ケイ素が含まれる。
【0030】
分解触媒(クラッキング触媒)は、好ましくは、酸性又はアルカリ性の無機材料及びそれらの組み合わせから選択される。アルカリ性耐火性酸化物には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化クロム、及びそれらの組み合わせが含まれ、したがって、これらは適切なクラッキング触媒を構成する。適切な酸性耐火性酸化物には、シリカ-アルミナ、ゼオライト、アルミナ、シリカ、又はそれらの組み合わせ、赤泥など、Co/Al2O3、Mn/Al2O3、カオリン、ハイドロカルサイトが含まれる。いくつかの実施形態では、その触媒は、金属及び/又は金属酸化物を含みうる。適切な金属及び/又は酸化物には、とりわけ、例えば、ニッケル、白金、バナジウム、パラジウム、マンガン、コバルト、亜鉛、銅、クロム、ガリウム、ナトリウム、ビスマス、タングステン、ジルコニウム、及び/又は任意のそれらの酸化物が含まれる。
【0031】
熱伝導媒体/クラッキング触媒(分解触媒)はまた、例えば、PVCに由来する塩酸などの酸化合物を除去することができる化合物、例えば、塩化鉄、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及び砕いたカキの殻、並びにその他のアルカリ性成分を含んでもよい。
【0032】
本発明の方法において、ステップc)はステップa)よりも低い温度において行われるので、ステップa)において得られる熱分解蒸気は、ステップc)において受動的に冷却されることが本来備わっている。しかしながら、熱分解蒸気を接触変換工程に送る前に、能動的冷却工程b)を実施することが好ましい。
【0033】
一実施形態では、熱分解工程a)及び接触変換工程(catalytic conversion step)c)は、2つの異なる反応器中で行われる。しかしながら、異なる反応器ゾーンを含み、各ゾーンが異なる温度で作動し、異なる(触媒)床を有する単一の反応器を使用することも含まれる。たとえば、米国特許出願公開第2013/261355号明細書を参照されたい。
【0034】
ステップa)の熱分解処理は、様々な反応器中で実施することができる。そのような反応器には、回転窯(ロータリーキルン)、連続撹拌タンク反応器(CSTR)、固定床反応器、移動床反応器、オーガー反応器(auger reactor)、スクリューコンベヤー反応器、同伴流反応器、回転コーン反応器、流動床反応器、噴流層反応器、及び循環流動床反応器。が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
比較的短い接触時間、及び供給原料流の成分の激しい混合を可能にする反応器が最も好ましい。これには流動床反応器があてはまるので、これらの反応器が特に好ましい。しかしながら、原料の粒子サイズが短い接触時間を可能にしない場合、例えば複合材料廃棄物の場合、比較的長い反応時間を可能にする反応器が好ましいことがありうる。
【0036】
熱分解反応器は、熱媒体を含みうる。一実施形態では、熱分解反応器は、塩酸などの酸化合物を除去することができる物質、例えば、塩化鉄、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及び砕いたカキ殻、及びその他のアルカリ性成分を含む。
【0037】
熱分解生成物を含む流れは、非蒸気成分を除去するための分離工程を受けさせてもよい。非蒸気であるコークス画分からの蒸気画分の分離は、固体及び/又は液体から蒸気を分離するための任意の公知の方法によって、分離システム中で実施することができる。その蒸気は、蒸気の温度を下げるために冷却システムにかけられてもよい。冷却システムは、例えば、非断熱配管、空冷熱交換器、又は液冷熱交換器であることができる。
このようにして得られた蒸気画分は、次に、芳香族化合物への変換に用いられる。
【0038】
いくつかの実施形態では、熱分解反応器は、非蒸気性物質を処理するためのシステムを備えている。処理は、酸化によるコークス除去、特定のサイズをもつ粒子の除去、特定の密度をもつ粒子の除去、エアロゾルの除去、又はそれらの組み合わせを含むことができる。その物質が触媒を含む場合、処理は、触媒の再生又は再活性化を含むことができる。
【0039】
本発明による熱分解によって得られた蒸気画分は、芳香族化合物への変換に非常に適しており、なぜなら、それは、適切な条件を用いて本発明の方法のステップc)において芳香族化合物へと容易に変換される飽和及び不飽和の(低分子量)炭化水素を含む傾向があるからである。
ステップc)は、a)又はb)において得られた(冷却された)熱分解蒸気を、接触変換ステップ(触媒変換ステップ)において、450~700℃の範囲内の芳香族化温度(Tarom)(ここで、TaromはTpyrより少なくとも50℃低い)で芳香族化触媒と接触させて、芳香族化合物を含む変換生成物を生じさせることを含む。これらの温度において、芳香族化が増大する傾向があり、蒸気相からの低分子量単環式芳香族化合物の形成が最適になる。圧力は適切には1~4バールの範囲である。
【0040】
ステップa)の熱分解処理の場合のように、本発明のステップc)の変換処理もまた、様々な反応器中で実施することができる。ステップc)の芳香族化処理は、固定床、移動床、又は流動床中で適切に実施される。これら2つの反応器は統合することができるが、統合する必要はない。
【0041】
芳香族化触媒は、ゼオライト触媒、非ゼオライト触媒、金属触媒、及び/又は金属酸化物触媒のうちの1つ又は複数を含みうる。特定の側面では、芳香族化触媒はゼオライト触媒であって、適切には、アルミノケイ酸塩(アルミノシリケート)、SAPO、ケイ酸塩(シリケート)、及びそれらの組み合わせから選択されるゼオライト触媒である。芳香族化触媒は好ましくは酸性であることが発見された。酸性度は、アルミノケイ酸塩の構造によって、かつまたアルミノケイ酸塩中のケイ酸塩部分とアルミン酸塩部分との間の比率によって影響を受けうる。酸性度は、例えば、芳香族化触媒とアンモニウム塩とのイオン交換及び続いてのそのか焼(焼成)によって達成される。N含有供給原料に対しては、塩基性触媒が好ましいことがありうる。適切なシリカ-アルミナ比は、5~100の範囲、好ましくは10~80、より好ましくは20~60の範囲にある比を含む。この触媒の性能において役割を果たしうる別の特徴は細孔径である。芳香族化触媒の細孔径が4.5~6.5Åの範囲、好ましくは5~6Åの範囲内にある場合に、特に良好な結果が得られることが発見されている。
【0042】
ゼオライト触媒は、(S)AlPO-31、EU-1、フェリエライト、IM-5、MCM-22、モデルナイト(modernite)、SSZ-20、SSZ-23、SSZ-55、SUZ-4、TNU-9、ゼオライトA、ゼオライトベータ、ゼオライトX、ゼオライトY、ZSM-11、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-5、ZSM-57、及びそれらの組み合わせからなる群から好ましくは選択され、かつ、芳香族化合物の収率を向上させるために、金属を用いて処理、交換、又は含浸させることもできる。特定の側面では、芳香族化触媒はZSM-5である。
金属は、とりわけ、ニッケル、白金、バナジウム、パラジウム、マンガン、コバルト、亜鉛、銅、クロム、ガリウム、ナトリウム、ビスマス、タングステン、ジルコニウム、インジウム、スズ、タリウム、鉛、モリブデン、及び/又はそれらの酸化物のいずれかから選択できる。
【0043】
ゼオライトは、アモルファスバインダー中に含まれていてもよい。したがって、触媒は、ゼオライトに加えてアモルファス結合剤を適切に含んでいてもよい。アモルファスバインダーは、そうして得られた粒子に強度、密度、形状を与え、触媒粒子に特定の粒子サイズをもたらす。したがって、アモルファスバインダーは、無機耐火性酸化物、特に、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、チタニア、ジルコニア、粘土、層状混合金属酸化物、リン酸塩、スルホン酸塩、及びそれらの混合物から適切に選択することができる。
【0044】
バインダーを用いる場合、そのような組み合わせ物中のバインダーの量は、広い範囲内の値をとりうる。適切には、ゼオライトの第2の触媒中のアモルファスバインダーの量は、ゼオライト及びアモルファスバインダーの質量に基づいて、30~80質量%、好ましくは40~70質量%の範囲である。このような比率は、満足できる機械的強度を粒子にもたらすだけでなく、シリカ-アルミナの場合には、比例するものとして予測される収率と比べて、増加した芳香族化合物の収率という相乗効果をもたらす。本発明によるプロセスにおいて、芳香族化触媒は、コークスが付着した触媒を酸素と接触させることによって再生されて、再生された芳香族化触媒を生成することができる。
【0045】
適切には、本プロセスは、連続プロセスとして実施される。したがって、本プロセスのステップc)は、固定床において実施することができる。蒸気画分は、この場合、上向きの流れ(アップフロー)又は下向きの流れ(ダウンフロー)の方向で固定床を通過することができる。しかしながら、芳香族化合物への変換は、触媒上にいくらかのコークスの堆積をもたらしうるので、そのような固定床において徐々に失活が起こりうる。したがって、交互に切り替わる形態(スイングモード)の2つ以上の固定床反応器の構成において、または移動床反応器又は流動床反応器において、変換処理を実施することが好ましい。流動床においては、触媒は、連続的に添加され、流動化された通路中を通って出口へと送られることができ、そのあいだに蒸気によって取り囲まれる。その蒸気は、最初は蒸気留分からの蒸気からなるが、時間の経過とともに、主に芳香族化合物、小さな炭化水素、その他のガス、コークス、及び触媒からなる芳香族化生成物の流れへと変換される。
【0046】
したがって、芳香族化生成物の流れは、完全に芳香族化合物のみで構成されてはいない。それは、ガス状化合物、例えば、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、水、低分子量アルカン、及びまた価値ある副生成物、例えば、オレフィン及び酸素化物を含むことになる。その(低分子量)芳香族化合物からオレフィンを別個に回収することが望ましいことがありうる。したがって、変換生成物は、好ましくは分画されて、別個の画分又は別個の複数の画分として芳香族化合物を、任意選択により場合によっては1つ又は複数のオレフィン画分、及び残留物を生成する。そのために、蒸気画分を冷却システム、例えばコンデンサーなどの熱交換機へと送ることができ、液体流及び蒸気流を生成する。
【0047】
ベンゼンなどの化合物の公知の比較的高い蒸気圧によって、蒸気流はかなりの量のBTXを含むことが見込まれる。液体流から芳香族化合物を回収するための適切な方法は、変換生成物を抽出カラムに通し、そこで、主にBTXである軽い(すなわち低分子量の)芳香族化合物を液体流から抽出してBTXが富化された液体流とBTXが少なくなった液体流を生成する方法から構成される。
【0048】
一実施形態では、本発明の方法は、変換生成物などの芳香族化合物を含む蒸気流から芳香族化合物を回収することを含むこともでき、この方法は、蒸気流を液体炭化水素と接触させて芳香族化合物を含む炭化水素相及び酸素含有化合物相を得る工程、及び炭化水素相を酸素含有化合物相から分離する工程を含む。酸素含有化合物相は、プラスチックが酸素原子を含んでいる場合、及び/又は水がその材料中に存在する場合にのみ存在しうる。芳香族化合物は、蒸留又は分画を含めた任意の公知の方法によって炭化水素相から適切に回収することができる。液体炭化水素は、脂肪族、脂環式、芳香族、脂肪酸エステル、又はそれらの組み合わせであることができる。芳香族炭化水素を液体炭化水素として使用する場合、外部からの生成物をそのプロセスにおいて使用する必要がないという利点がある。この目的のために使用される芳香族炭化水素は、接触熱分解処理ステップa)からの生成物であってよい。言い換えれば、変換生成物から分離される芳香族化合物の画分(フラクション)を使用して、変換生成物からさらに芳香族化合物を抽出することができる。
【0049】
本発明のさらなる実施形態は、プラスチックを含む供給原料流から芳香族化合物を調製するためのプロセスに関し、このプロセスは、a)プラスチック又はプラスチックの混合物を含む供給原料流を上で開示したプロセスにかけて、芳香族化合物を含む変換生成物を与えるステップ;b)前記の変換生成物から芳香族化合物を回収するステップ;c)蒸留によって、ベンゼン、トルエン、及びキシレン(BTX)を含む低分子量画分から、多環式芳香族炭化水素(PAH)を含むより高い分子量の画分を分離するステップ;d)任意選択により場合によっては、前記のより高い分子量の画分を還元して、多環式脂肪族(polycyclic aliphatics, PCA)を含む還元された画分を得るステップ;及びe) ステップc)において得られたより高い分子量の画分、ステップd)において得られた還元された画分、又はそれらの混合物を、より低い分子量の芳香族(BTX)を得るためのプロセスにかけるステップ、を含む。
【0050】
典型的には、ステップa)は、安価なクラッキング触媒を使用して、700~950℃の範囲内、好ましくは750~850℃の範囲内の高温での、プラスチック供給原料の熱分解と、その後、こうして得られた蒸気をエクス・サイチュ接触芳香族化(ex situ catalytic aromatization)ステップに続いてかけることを含む。一実施形態では、ステップa)は、少なくとも1つのさらなる反応原料を供給原料流に添加することを含み、その反応原料は、オレフィン、アルコール、アルデヒド、ケトン、酸、及びそれらの組み合わせ物からなる群から選択される。例えば、そのさらなる反応原料は、1から6個の炭素原子を含み、好ましくはこの場合に、さらなる反応原料は、エテン、プロペン、ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘキセン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ヘキサノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ギ酸、及び酢酸からなる群から選択される。
【0051】
一実施形態では、ステップd)は接触水素化(catalytic hydrogenation)、好ましくはRu/C、Ni/C、Pd/C、Pt/C、MoS2、WS2、Co-Mo-S/Al2O3、Ni-W-S/Al2O3、Co-Mo/Al2O3、又は均一系触媒、例えば、ウィルキンソン触媒及びクラブトリー触媒からなる群から選択される触媒を使用する接触水素化を含む。前記の接触水素化は、適切には溶媒の添加なしで行われる。
【0052】
ステップe)は、有利には、ステップc)において得られたより高分子量の画分又はステップd)において得られた還元された画分をプラスチック供給原料流と混合し、得られた混合物を熱分解又は気化に供することを含む。
【0053】
図1は、本発明によるエクス・サイチュ熱触媒熱分解プロセスの主要ステップの概略図である。
プラスチックを含む供給原料流45は、熱分解反応器10に入り、そこで高温(600~1000℃の間のT
pyr)において熱分解処理を受けて、炭化水素、その他のガス成分、例えば、二酸化炭素、一酸化炭素、及び水素を含む熱分解蒸気61、並びに灰分(アッシュ)、無機物質、及びコークスを生成する。熱分解蒸気61は、その中に熱伝達媒体を含むことができる分離システム11中でコークス画分から分離されて、炭化水素、水、及びその他のガス成分を含む蒸気画分62を生成する。蒸気画分62は、冷却システム12の中で、T
pyrより低い温度まで能動的に冷却されて、蒸気相画分63が得られる。冷却システムは、熱交換器から構成されうる。蒸気相63は芳香族化反応器20の中へ供給され、そこで触媒と接触させられ、かつ450~700℃の範囲内のT
arom(この芳香族化温度は熱分解温度よりも少なくとも50℃低い)において変換処理されて、芳香族化合物、特に低分子量芳香族BTXを含む芳香族変換流64を生成する。
【0054】
図2は、本発明の一実施形態による接触熱分解プロセスの概略図を示す。
プラスチックを含む供給原料流41を、任意選択により場合によっては、その水分含有量を低下させるために、乾燥システム02にかけてもよい。水分画分51が除去され、乾燥された供給原料流42がもたらされる。供給原料流41又は乾燥された供給原料流42は、細断された供給原料流43をもたらす細断及び/又は粉砕システム03にかけても、かけなくてもよい。供給原料流41、乾燥供給原料流42、又は細断された供給原料流43は、成形された供給流44をもたらす、細断、粉砕、ペレット化、ふるい分け、及びその他の好適な方法などの材料成形システム04にかけても、かけなくてもよい。供給原料流41、乾燥された供給原料流42、細断された供給流43、又は成形された供給原料流44は、供給システム05に供される。その供給システムは、供給スクリュー、冷却された供給スクリュー、冷却あり又は冷却なしのいくつかの供給スクリュー、押出機、又は、供給原料流41、乾燥された供給原料流42、細断された供給原料流43、又は成形された供給原料流44を処理するのに適した任意の供給システムからなることができる。供給原料流45は、熱分解反応器10に入り、そこで、高温(600~1000℃のあいだのT
pyr)での迅速(通常、最大2分)な熱分解処理にかけられて、炭化水素(主に低分子量アルカン/アルケン)、その他のガス成分、例えば、二酸化炭素、一酸化炭素、及び水素を含む熱分解蒸気61、並びに灰分(アッシュ)、無機物質、及びコークスを生成する。熱分解蒸気61は、その中に熱伝達媒体を含んでもよい分離システム11において、コークス画分から分離されて、炭化水素、水、及びその他のガス成分を含む蒸気画分62を生成する。固形画分52は、取り除かれて、冷却され、そして貯蔵されてもよい。固体-ガス分離システム11は、1つ又は複数のサイクロン、フィルター、又はそれらの組み合わせからなることができる。蒸気画分62は、任意選択により使用してもよい冷却システム12においてT
pyrより低い温度まで能動的に冷却されて、蒸気相画分63を生成する。冷却システムは、熱交換器から構成されうる。熱伝達媒体は、空気、スチーム、又は液体であることができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、反応器10は、流動床又は循環流動床、又は移動床、又は床中である種の媒体を使用する同等のタイプの反応器である。任意選択により、流れ46は、コークス化床材料及びコークス粒子からなっていてもよい。任意選択により、流れ47は、未使用の、脱コークス化された、又は再生された床材料からなっていてもよい。いくつかの実施形態では、流れ46は、システム13において酸素化されて、脱コークス化かつ再生された床材料を生成する。システム13は、熱を生成することができ、その熱は利用できる。
【0056】
蒸気相(vaporous phase)63は芳香族化反応器20中に供給され、そこで触媒と接触させられ、450~700℃の範囲内のTarom(この芳香族化温度は、熱分解温度より少なくとも50℃低い)において変換処理にかけられて、低分子量の単環式芳香族化合物を含む芳香族変換流64が生成される。
【0057】
変換処理反応器20から出る芳香族変換流64は、そのまま使用することができる。あるいは、芳香族化合物は、その変換流から、例えば、別の固体ガス分離システム21、凝縮器(コンデンサー)31、1つ又は複数のスクラバー32、及び分離システム33を使用して、回収することができる。
【0058】
図2を参照すると、主に、芳香族化合物、小さな炭化水素、他のガス、コークス、及び触媒生成物64からなる芳香族変換流64は、分離ステップ21にかけることができる。触媒及びその他の固体からなる非蒸気流53は、セパレーター21中で蒸気芳香族変換流64から分離される。流れ(ストリーム)53を再生器22に送り、そこで酸素含有ガスと適切に接触させて、触媒上に堆積したコークスを除去してもよい。このように再生された触媒は、典型的には連続的に、流れ56として変換処理反応器20にリサイクルしてもよい。いくつかの実施形態において、触媒は、分離器を必要とすることなく、流れ55として反応器20から連続的に除去される。分離システム21における非蒸気コークス画分からの蒸気画分の分離は、固体及び/又は液体から蒸気を分離するための任意の公知の方法で実施することができる。
【0059】
蒸気の芳香族変換生成物65は、芳香族化合物のみからなるものではない。それは、ガス状化合物、例えば、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、水、低分子量アルカン、及びさらに価値ある副生成物、例えばオレフィンを含む。オレフィンを芳香族化合物とは別に回収することが望ましい場合がある。したがって、芳香族変換生成物65は分別にかけてもよく、それによって低分子量単環式芳香族化合物を別個の画分(1つ又は複数)として生じ、場合によって1つ以上のオレフィン画分、及び残留物を生じうる。したがって、蒸気画分65は、続いて冷却システム31へと送られ、液体流70及び流体流66を生成する。冷却システム31は、凝縮器などの熱交換器からなることができる。
【0060】
液体流70は、水がその液体流中に存在する場合は、水層54から有機液体71を分離するための油-水分離器35に導かれる。そのような油-水分離器は、例えば、デカンター、ハイドロサイクロン、又は遠心液-液分離器からなることができる。このプロセス中に形成される可能性のある水を含む酸素含有化合物は、変換生成物及び液体炭化水素の混合物から分離しうる。このようにして、芳香族炭化水素は、液体炭化水素と一緒に回収される。水を含めた酸素含有化合物を含む相から低MW芳香族化合物を含む液体炭化水素相を分離した後、液体炭化水素流71をセクション33において適切に分画(蒸留)にかけて、低分子量単環式芳香族化合物を得る。
【0061】
蒸留システム33は、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びその他の軽質芳香族化合物及び炭化水素からなるトップフラクション72を生成する。いくつかの実施形態では、蒸留システム33は、分別蒸留として装備され、ベンゼン、トルエン、及びキシレンを別々の画分として生成する。さまざまな低分子量単環芳香族化合物を別々に回収することが実現可能である。あるいは、すべての芳香族化合物を1つの画分中に回収することが実現可能である。芳香族化合物の必要性及び用途にしたがって、所望のレベルの分画を採用することができる。
【0062】
BTXリーンボトムフラクション73は、主に重質芳香族化合物及び置換された多環式芳香族炭化水素から構成されている。生成物流73は、燃料として使用することも、また、さらに下流の処理に使用することもできる。33からのボトム流の一部は、BTX収率を上げるためのリサイクル流として、又はスクラビング液としても使用できる。そうするためには、それは流れ74aとして分離され、熱交換器34に送られ、そこで、その流れは抽出システム32においてより効果的になるために冷却される。
【0063】
ベンゼンなどの化合物の既知の比較的高い蒸気圧のため、冷却システム31中で生成された流体流66は、かなりの量のBTXを含む可能性がある。流体流66から芳香族化合物を回収するための適切な方法は、変換生成物が抽出カラムを通過する方法によって構成される。例えば、冷却された液体炭化水素74bは、抽出システム32において生成物ストリーム66に噴霧され、それにより、変換生成物を冷却し、かつ芳香族化合物のための溶媒を提供する。抽出システム32において、主にBTXである低分子量芳香族化合物は、流体流66から抽出されて、BTXに富む液体流75及びBTXに乏しい流体流67を生成する。BTXに富む液体流75は、液体炭化水素流71と混合され、蒸留システム33に導かれる。
【0064】
流れ67は、流体処理セクション36に送ることができる。いくつかの実施形態では、より多くの芳香族、水溶性化合物、あるいはその他の化合物を回収するために、1つ又は複数の追加の気液抽出システムがシステム32とシステム36との間に存在してもよい。追加の気液抽出システムには、専用のストリッパーを備えていてもよい。
【0065】
本発明の方法はまた、ガスを熱分解反応器10中へ供給することによるガスのリサイクルを含むこともできる。得られたガスは、反応器中へのプラスチックの供給を助けるために、流動床用のキャリアガスとして、又はプロセスガスを使用することができるその他の目的のために使用することができる。形成されたガスは、プロセス全体での液体収量を増加させるために使用することもできる。流体処理セクション36では、流体流67の1つ又は複数の一般的な処理を適用することができ、それには軽質オレフィンを生成するための分画、ガスリサイクル流68と生成ガス流69aへの流れの分割、リサイクルガスの予熱などが含まれる。
【0066】
好ましくは、流体処理セクション36はまた、オレフィン画分69bを生成する。残留物を燃焼させて、様々な供給原料流及び中間生成物を加熱するためのエネルギーを生成してもよい。1つ又は複数のオレフィン画分の少なくとも一部は、流れ68と共に変換処理へとリサイクルしてもよい。 その1つ又は複数のオレフィン留分の少なくとも一部を熱分解処理へとリサイクルすることも可能である。したがって、オレフィン画分の少なくとも一部は、変換処理、熱分解処理、又はその両方へと適切にリサイクルされる。
【0067】
低分子量芳香族化合物の収率を増加させるための別の好ましい方法は、反応器10又は反応器20へ追加の反応原料を添加することによって構成される。そのような追加の反応原料は、オレフィン、アルコール、アルデヒド、ケトン、酸、及びそれらの組み合わせからなる群から適切に選択することができる。追加の反応原料は、一次供給原料よりも大きな有効水素指数(effective hydrogen index, EHI)を好適には有する。適切な追加の反応原料の例には、水素、ブタン、イソブテン、ペンテン、及びヘキセン、メタノール、エタノール、プロパノール、又はイソプロパノール、及びヘキサノール、ホルムアルデヒド、及びアセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ギ酸、酢酸、多環式脂肪族、及び部分的に還元された多環式芳香族が含まれる。
【0068】
本プロセスの生成物として回収される芳香族化合物は、従来の用途に使用することができる。それらには、燃料(ガソリン、ディーゼルなど)としての用途だけでなく、ポリマー及び化学中間体のための前駆体としての用途も含まれる。
BTXの蒸留後に得られる多環式芳香族炭化水素画分73は、次に、熱分解プロセスにおいて(再)利用(リサイクル)されることができ、それによって、BTX及び高級芳香族の混合物が得られる(国際公開第2017/222380号を参照されたい)。
【0069】
例えば、本発明の方法は、多環式芳香族炭化水素(PAH)を含む高MW画分73を、ベンゼン、トルエン、及びキシレン(BTX)を含む低MW画分72から蒸留によって分離し、前記の高MW画分の少なくとも一部を還元して、多環式脂肪族(PCA)を含む還元された画分を得るステップ;及び、得られた高MW画分、還元された画分、又はそれらの混合物を、低MW芳香族(BTX)を得るためのプロセスにかけるステップを含む。
【0070】
一実施形態では、上述した高分子量画分(部分的又は完全に還元されているか又は還元されていない)を、プラスチック又はそれらの混合物と一緒に供給し、それにより、BTXの有意に高い収率をもたらす。BTXは容易に蒸留されることができ、残りのより高級な芳香族の画分は再び熱分解に利用することができ、あるいは、最初に脂肪族/芳香族画分へと還元し、熱分解工程において再利用することができる。上記の手順を繰り返すことにより、プラスチックからBTXへの高い変換率がもたらされる。
【0071】
本明細書で使用される場合、単数形の単語(外国語明細書における「a」、「an」および「the」)は、文脈が明らかに別のことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。「及び/又は」という用語は、関連する列挙された事項の1つ又は複数のありとあらゆる組み合わせを含む。「含む」及び/又は「含んでいる」という用語はその述べられた特徴の存在を規定するが、1つ又は複数のその他の特徴の存在又は追加を排除するものではないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】
図1は、本発明による接触熱分解プロセス(catalytic pyrolysis process)の概略図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による接触熱分解プロセスの概略図を示す。
【
図3】
図3は、プラスチックである、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート(PBT-PET)の混合物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン-ポリプロピレン混合物(PP-PE混合物)、多層プラスチックバッグ(MPB)のエクス・サイチュ(ex situ)熱分解における、熱分解に対するT
pyr(500、700、又は800℃)の効果を示す。
【
図4】
図4は、プラスチックであるポリプロピレンのエクス・サイチュ(ex situ)熱分解における、熱分解に対するT
pyr(600、650、700、750、800、850、又は900℃)の効果を示しており、ここで、T
aromは550℃で一定である。
【
図5】
図5は、キシレンの収率に対するT
pyr(600、650、700、750、800、850、又は900℃)及びT
arom(450、500、550、600、650、700℃)の差の影響を示している。
【実施例0073】
実験セクション
【0074】
<材料及び方法>
実験は、シングルショットサンプラー(PY1-1040)を備えたFrontier Labのタンデムμ-リアクター(Rx-3050TR)で実施した。反応器とインターフェースの両方の温度は別々に制御して、熱分解(第1のリアクター(反応器))と芳香族化ユニット(第2のリアクター(反応器))に対して異なる反応条件を可能にした。キャリアガス注入口を第1の反応器の上部に接続して、反応器を通ってGC-MSのなかへのキャリアガスの流れをもたらした。全体のシステムを、GC-MSの上部にあるドッキングステーションによって接続し、ゴム製セプタムを介して注入針によって接続した。
【0075】
実験の前に、約80 mgのH-ZSM-5(23)触媒(サイズ212-425μm)を第2の反応器内部の石英ライナー中に入れた。その後、そのシステムを不活性キャリアガス(ヘリウム)で150 kPaに加圧して、漏れをチェックした。リークチェック後、50 mL/分のヘリウム流量を用いて圧力を50 kPaに戻し、そのシステムを所望のTpyr及びTaromに加熱した。
【0076】
実験Aでは:リアクター1(Tpyr):500℃、700℃、又は800℃、リアクター2(Tarom):550℃、及び両方のインターフェース:300℃。
実験Bでは:リアクター1(Tpyr):600、650、700、750、800、850、又は900℃、リアクター2(Tarom):550℃、及び両方のインターフェース:300℃。
実験Cでは:リアクター1(Tpyr):600、650、700、750、800、850、又は900℃、リアクター2(Tarom):450、500、550、600、650、700℃、及び両方のインターフェース:300℃。
【0077】
各リアクター中での滞留時間は以下の通りだった:リアクター1は3秒未満であると見積もられ、リアクター2は0.09秒であると見積もられた。
【0078】
薄いステンレス鋼のカップを、さまざまな種類のプラスチックを含む供給原料ストリームで満たし、第1のリアクターの少し上にぶら下げられているサンプル注入器に取り付けた。システムを閉じ、ヘリウムガスで3分間フラッシュした。フラッシュ後、カップを第1のリアクターの中に落とし入れて、熱分解反応を開始した。蒸気生成物は、GC-MSに入る前にZSM-5(23)触媒床を通過する。
【0079】
実験Aにおいて得られたBTXの総収率(並びに個々の化合物であるベンゼン、トルエン、m、p-キシレン、及びo-キシレンの寄与)を、2回の測定の平均として
図3に示し、プラスチック中に存在する有機画分に基づく質量%で表した。それは、熱分解の温度を従来の500℃からより高い温度、例えば700又は800℃に高めることによって、BTXの収率が顕著に増加することを明確に示している。
【0080】
実験Bで得られたBTXの総収率(並びに個々の化合物であるベンゼン、トルエン、及びm、p、o-キシレンの寄与)を
図4に示し、プラスチック中に存在する有機画分に基づく質量%(wt%)で表している。BTX、ベンゼン、及びトルエンの収率は、熱分解の温度を従来の600℃からより高い温度、例えば900℃に高めることにより、顕著に増加することを明確に示している。また、キシレンの収率は、熱分解の温度を600℃から700℃に上げると最初は増加するが、800℃より上では熱分解の温度を高くすると減少することも示している。
【0081】
図4は、T
aromを550℃で一定に保ちながら、T
pyrが高くにつれて、BTX、ベンゼン、トルエン、及びキシレンの収率が顕著に増加することを示している。さらに、キシレンについては、T
pyrは800℃より高くするべきではないことを示している。
【0082】
実験Cで得られたm、p、o-キシレン(キシレン類)の総収率を
図5に示し、プラスチック中に存在する有機画分に基づく質量%(wt%)で表している。
図5は、T
pyr及びT
aromのあいだの温度差を0(ゼロ)から150℃へと大きくすることによって、キシレンの収率が上昇することを明確に示している。
【0083】
図5は、ポリプロピレンの接触熱分解によるキシレンの収率を、T1(T
pyr)-T2(T
arom)(T1とT2の差)の関数として示しており、ここでT1は600~900℃の範囲内、かつT2は450~700℃の範囲内である。データは、少なくとも50℃のΔT
pyrT
aromが、キシレン収率の顕著な増加をもたらすことを示している。150℃までのΔT
pyrT
aromのさらなる増加は、なおさらに高いキシレン収率をもたらし、その後、曲線の平坦化が観察される。
供給原料流が、ポリオレフィン、芳香族ポリマー、繊維強化複合材料、多層プラスチック、混合プラスチック 廃棄ポリアミド、及び/又はリサイクルごみ、又は前述の材料のいずれかの熱分解によって誘導される液体の流れを含めた、合成又は半合成ポリマー又はそれらの混合物を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
供給原料流が、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリスチレン(PS)、及びポリアミド(PA)のうちの1つ又は複数を含む、又はそれらの1つ又複数のみからなる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。