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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015739
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】新規医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/194 20060101AFI20250123BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A61K31/194
A61P13/12
A61K9/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024200844
(22)【出願日】2024-11-18
(62)【分割の表示】P 2020553318の分割
【原出願日】2019-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2018195568
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018195810
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019032126
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019086945
(32)【優先日】2019-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019119297
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】000228590
【氏名又は名称】日本ケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】阿部 倫明
(72)【発明者】
【氏名】小柴 生造
(72)【発明者】
【氏名】西岡 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】川口 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 里美
(72)【発明者】
【氏名】寺中 康行
(57)【要約】
【課題】腎保護用医薬組成物を提供する。
【解決手段】クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む慢性腎臓病における腎保護用医薬組成物であって、錠剤である、医薬組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む慢性腎臓病における腎保護用医薬組成物であって、錠剤である、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む、腎保護用医薬組成物及び腎機能診断用医薬組成物に関する。
また、本発明は、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む、腎内レニン・アンジオテンシン系活性化を抑制すると共に、慢性腎臓病患者のアシドーシスを抑制する、又は酸性尿を改善するための医薬組成物に関する。
本願は、2018年10月17日に、日本に出願された特願2018-195568号、2018年10月17日に、日本に出願された特願2018-195810号、2019年2月25日に、日本に出願された特願2019-32126号、2019年4月28日に、日本に出願された特願2019-86945号、及び2019年6月27日に、日本に出願された特願2019-119297号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
透析や移植を必要とする末期腎不全(end-stage Kidney disease:ESKD)患者は世界的に増加している。日本においても増加傾向にあり、2014年末の透析患者数は32万人となっている。
このESKDの予備軍として認識されているのが慢性腎臓病(CKD)である。CKDは、原疾患を問わず、慢性に経過する腎臓病を包括する概念であり、糸球体濾過量(GFR)で表される腎機能の低下があるか、又は腎臓の障害を示唆する所見が慢性的(3ヶ月以上)に持続する病態全てを包含する概念である。CKDはESKDへの進行リスクであるばかりではなく、心血管疾患(CVD)等の強力な発症リスクであることから、CKDを早期に発見し適切な治療を行うことは非常に重要である。これまでに多くのCKD治療法が確立されているが、まだ不十分で、さらに腎保護剤の開発が求められている。
【0003】
進行したCKD患者では血中の重炭酸イオン(HCO3 -)濃度が低くなり、代謝性アシドーシスを発症することから、炭酸水素ナトリウムやクエン酸製剤等のアルカリ性化剤が投与される。そして、アルカリ性化剤である炭酸水素ナトリウムの投与によりCKDの進行が抑制されることが報告されている(非特許文献1)。また、蛋白質過負荷により惹起されるネフローゼ動物モデルにおいて、炭酸水素ナトリウムの経口投与が、酸性尿による尿細管細胞障害を抑制することが報告されている(非特許文献2)。また、早期のCKD患者にアルカリ性化剤を投与することによって、腎障害の進行を抑制すること、及び尿毒症物質の血中濃度を低下させることが知られている(特許文献1及び2)。
しかしながら、クエン酸製剤等のアルカリ化剤を用いて腎機能が評価可能であることは知られていない。
【0004】
一方、近年、CKD及び急性腎障害(AKI)における腎障害マーカーが数多く報告されている。
【0005】
腎臓内におけるレニン・アンジオテンシン系(reninangiotensin system;RASと略す場合がある)の活性化は高血圧だけでなく腎障害の進展にも深く関与していることが知られている。腎臓内におけるアンジオテンシノーゲンが高血圧や腎障害の発症進展機序に関与している。また、尿中に排泄されたアンジオテンシノーゲンが腎臓で発現しているアンジオテンシノーゲンと正の相関を示すことが報告されている(非特許文献3)。
【0006】
8-hydroxy-2’-deoxyguanosine(8-OHdG)は、現在最も広く用いられている酸化ストレスマーカーの1つであり、腎障害によって8-OHdG産生が増加することが知られている。
【0007】
しかしながら、CKD又はAKIの患者にアルカリ性化剤を投与することによって、尿中アンジオテンシノーゲン濃度の抑制又は酸化ストレス抑制が可能であることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2018/193648号
【特許文献2】国際公開第2018/193752号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Brito-Ashurst, I.D., et al.: Bicarbonate supplementation slows progression of CKD and improves nutritional status. J. Am. Soc. Nephrol., 20: 2075-2084, 2009.
【非特許文献2】Souma T., et al.: Luminal alkalinization attenuates proteinuria-induced oxidative damage in proximal tubular cells. J. Am. Soc. Nephrol., 22: 635-648, 2011.
【非特許文献3】J. Am. Soc. Nephrol, 18: pp.1558-1565, 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題の一つは、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む、腎保護用医薬組成物を提供することである。本発明の他の一つの課題は、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む腎機能診断用医薬組成物を提供することである。本発明の他の1つの課題は、腎内RAS活性化を抑制し、慢性腎臓病患者のアシドーシスの治療若しくは予防、又は腎内RAS活性化を抑制し、慢性腎臓病患者の賛成尿の改善に有用な医薬を提供することである。本発明の他の1つの課題は、腎における酸化ストレス抑制に有用な医薬を提供することである。本発明の他の1つの課題は、腎保護用又は酸化ストレス抑制用の食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を行ったところ、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む組成物が腎保護及び腎機能の評価に有用であることを見出し、本発明を完成させた。
また、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む組成物が、炭酸水素ナトリウムに比較した尿中アンジオテンシノーゲン濃度の増加抑制又は尿中8-OHdG濃度の抑制に有用であることを見出し、当該薬剤が、腎内RAS活性化を抑制すると同時に慢性腎臓病患者のアシドーシスを抑制するため、腎内RAS活性化を抑制すると同時に慢性腎臓病患者の酸性尿を改善するため、又は腎臓における酸化ストレスを抑制するために有用であることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明は1つの側面において、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む、慢性腎臓病における腎保護用医薬組成物を提供する。
本発明は1つの側面において、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む腎機能診断用医薬組成物を提供する。
本発明は1つの側面において、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む医薬組成物を被検者に投与すること、投与後の被検者の随時尿のpHを測定することを含む、腎機能の判定方法を提供する。
本発明は1つの側面において、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む医薬組成物を被検者に投与すること、投与前の被検者の早朝尿のpH及び投与後の被検者の随時尿のpHを測定することを含む、腎機能の判定方法を提供する。
本発明は一つの実施態様において、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む、高血圧を伴う慢性腎臓病患者のアシドーシス抑制用又は酸性尿の改善用医薬組成物を提供する。
本発明は一つの側面において、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む、腎臓における酸化ストレス抑制用医薬組成物を提供する。
本発明は一つの側面において、慢性腎臓病の進展に伴う、尿中8-OHdG濃度の増加抑制用、尿中β-マイクログロブリン濃度の増加抑制用、尿中アルブミン濃度増加抑制用又は随時尿中の蛋白濃度増加抑制用医薬組成物であって、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物含む医薬組成物を提供する。
本発明は一つの側面において、慢性腎臓病における尿細管機能の維持又は改善、又は慢性腎臓病における尿細管機能の低下抑制に有用な医薬組成物であって、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む医薬組成物を提供する。
本発明は1つの側面において、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む、腎保護用又は腎における酸化ストレス抑制に有用な食品を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明が提供する医薬組成物又は食品組成物により、慢性腎臓病における腎臓が保護される。本発明が提供する医薬組成物により、腎機能の評価が可能である。
本発明が提供する医薬組成物又は食品組成物等により、慢性腎臓病患者において、腎内レニン・アンジオテンシン系活性化を抑制すると同時にアシドーシスを抑制すること、慢性腎臓病患者において、腎内レニン・アンジオテンシン系活性化を抑制すると同時に酸性尿を改善することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】コントロール群における随時尿のpHと、eGFRとの相関を示す図である。
図2】クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群における随時尿のpHと、eGFRとの相関を示す図である。
図3】炭酸水素ナトリウム製剤投与群における随時尿のpHと、eGFRとの相関を示す図である。
図4】コントロール群における随時尿と早朝尿とのpHの差と、eGFRとの相関を示す図である。
図5】クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群における随時尿と早朝尿とのpHの差と、eGFRとの相関を示す図である。
図6】炭酸水素ナトリウム製剤投与群における随時尿と早朝尿とのpHの差と、eGFRとの相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.医薬組成物
本発明が提供する医薬組成物は、有効成分として、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含むことができる。
クエン酸の薬学的に許容可能な塩の例としては、クエン酸アルカリ金属塩が挙げられる。クエン酸アルカリ金属塩の例としては、クエン酸カリウム及びクエン酸ナトリウムが挙げられ、それぞれ安定なクエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及びクエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)等の水和物であってもよい。
【0016】
本発明が提供する医薬組成物に含まれる、好ましい有効成分の例としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム若しくはその水和物又はそれらの混合物が挙げられ、例えば、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及びクエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)の混合物であってもよい。クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及びクエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)の混合比は、当業者が適宜設定でき、例えば、クエン酸カリウムの一水和物とクエン酸ナトリウムの二水和物のモル比を、クエン酸カリウムの一水和物1に対してクエン酸ナトリウムの二水和物を0.01~100とすることができる。クエン酸カリウム(例えば、クエン酸カリウムの一水和物)とクエン酸ナトリウム(例えば、クエン酸ナトリウムの二水和物)のモル比は当業者が適宜設定でき、例えば、0.85:1.15~1.15:0.85、0.90:1.10~1.10:0.90、0.95:1.05~1.05:0.95、又は0.99:1.01~1.01:0.99としてもよく、1:1が好ましい。

また、本発明が提供する医薬組成物に含まれる有効成分の他の例には、クエン酸ナトリウム又はその水和物が挙げられ、例えば、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)であってもよい。
【0017】
また、本発明が提供する医薬組成物に含まれる有効成分の他の例には、クエン酸カリウム又はその水和物が挙げられ、例えば、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)であってもよい。
一つの実施態様において、本発明の医薬組成物に含まれる有効成分は、クエン酸ナトリウム又はその水和物と、クエン酸カリウム又はその水和物との混合物を含んでいてもよい。
一つの実施態様において、本発明の医薬組成物に含まれる有効成分は、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム及びクエン酸(例えば、無水クエン酸)の混合物であってもよい。その場合、クエン酸(例えば、無水クエン酸)、クエン酸カリウム及びクエン酸ナトリウムの混合比は、当業者が適宜設定でき、例えば、1:1.7~2.3:1.7~2.3、1:1.9~2.1:1.9~2.1又は1:1.95~2.05:1.95~2.05としてもよく、1:2:2が好ましい。
一つの実施態様において、本発明の医薬組成物に含まれる有効成分は、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)及び無水クエン酸の混合物であってもよい。その場合、無水クエン酸、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及びクエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)の混合比は、当業者が適宜設定でき、例えば、1:1.7~2.3:1.7~2.3、1:1.9~2.1:1.9~2.1又は1:1.95~2.05:1.95~2.05としてもよく、1:2:2が好ましい。
一つの実施態様において、本発明の医薬組成物に含まれる有効成分は、クエン酸ナトリウム又はその水和物と、クエン酸カリウム又はその水和物との混合物のみから構成されていてもよい。
本明細書において、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物(例えば、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及び、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O))の重量について言及する時は、その重量は乾燥重量であり得る。
【0018】
本発明が提供する医薬組成物は、腎機能の診断に用いることができる。本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物は、有効成分として、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物(例えば、クエン酸ナトリウム又はその水和物と、クエン酸カリウム又はその水和物との混合物(例えば、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及びクエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)の混合物))を含むことができる。
よって、一つの実施態様において、本発明は、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む腎機能診断用医薬組成物を提供する。
また、一つの実施態様において、本発明は、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む腎機能診断用医薬組成物を被検者に投与すること、投与後の被検者の尿のpHを測定することを含む、被検者の腎機能の判定方法を提供する。
本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物における有効成分の配合量は、特に限定されないが、例えば腎機能診断用医薬組成物が錠剤の場合、1錠中にクエン酸カリウム(C6H5K3O7・H2O)231.5mg及びクエン酸ナトリウム水和物(C6H5Na3O7・2H2O)195.0mgを含んでもよい。
本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物は、糸球体ろ過機能診断用であり得、eGFRの改善又は悪化や、eGFRの指標となり得る。
本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物は、腎機能の評価が必要な対象に投与されることができ、例えば、慢性腎臓病患者、急性腎臓病患者に投与することができる。
一つの実施態様において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物を、尿のpHを測定する為の機器、試薬(例えば、pH試験紙)等と一緒に含むキットが提供される。
本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物は、腎機能の評価が必要な対象(例えば、ヒト)に投与され、投与後該対象の尿のpHを測定することにより、腎機能が評価され得る。投与は、朝、昼、夜のいつでもよく、投与回数にも特に制限はないが、好ましくは単回投与である。投与後、尿のpHを測定するタイミングも適宜設定され得、例えば、投与1時間後、投与2時間後、投与3時間後、投与4時間後、投与5時間後、投与6時間後であってもよい。尿のpHの測定は、当技術分野で公知の測定法で測定でき、例えば、pH試験紙で測定してもよい。好ましくは、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物を投与後、最初の尿のpHを測定することで、投与対象の腎機能が判定され得る。
一つの実施態様において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物は、慢性腎臓病又は急性腎臓病の治療又は予防を施された患者(例えば、慢性腎臓病又は急性腎臓病の治療又は予防用医薬(例えば、尿アルカリ化剤)を投与された患者)の腎機能の判定又は上記治療又は予防の効果の判定に用いることもできる。例えば、上記治療又は予防を施す(例えば、治療又は予防用医薬の投与する)前において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物を投与し、投与後に尿(例えば、投与後最初の随時尿)のpHを測定し(このpH値をA値とする)、上記治療又は予防を施した(例えば、治療又は予防用医薬を投与した)後において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物を投与し、投与後に尿(例えば、投与後最初の随時尿)のpHを測定し(このpH値をB値とする)、B値がA値より高値であれば、上記治療又は予防(例えば、治療又は予防用医薬の投与)により、腎機能が改善されたと判定できる。逆に、例えば、上記治療又は予防を施す(例えば、治療又は予防用医薬を投与する)前において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物を投与し、投与後に尿(例えば、投与後最初の随時尿)のpHを測定し(このpH値をA値とする)、上記治療又は予防を施した(例えば、治療又は予防用医薬を投与した)後において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物を投与し、投与後に尿(例えば、投与後最初の随時尿)のpHを測定し(このpH値をB値とする)、B値がA値より低値であれば、上記治療又は予防(例えば、治療又は予防用医薬の投与)により、腎機能が悪化したと判定できる。この実施態様において、上記治療又は予防用医薬(例えば、尿アルカリ化剤)は、連続投与されていてもよく(例えば、6週間、12週間、24週間、48週間、72週間連続投与されていてもよく)、連続投与の前後に、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物を投与し、投与後に尿(例えば、投与後最初の随時尿)のpHを測定し、腎機能の改善、悪化を判定してもよい。また、この実施態様において、投与された慢性腎臓病又は急性腎臓病の治療又は予防用医薬と本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物が同じ薬剤である場合、尿のpH測定の直前に投与された薬剤が、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物であり得る。
【0019】
一つの実施態様において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物の投与に関係なく、腎機能の評価が必要な対象(例えば、ヒト)の早朝尿のpHを測定することにより、腎機能が評価され得る。この実施態様において、腎機能が評価される被験者は、慢性腎臓病又は急性腎臓病の治療又は予防を施された患者(例えば、慢性腎臓病又は急性腎臓病の治療又は予防用医薬(例えば、尿アルカリ化剤)を投与された患者)であってもよい。慢性腎臓病又は急性腎臓病の治療又は予防用医薬(例えば、尿アルカリ化剤)は、単回投与でも連続投与でも良いが、pHを測定する早朝尿は、慢性腎臓病又は急性腎臓病の治療又は予防用医薬(例えば、尿アルカリ化剤)の投与前日及び/又は投与翌日の早朝尿であり得る。
一つの実施態様において、慢性腎臓病又は急性腎臓病の治療又は予防を施された患者(例えば、慢性腎臓病又は急性腎臓病の治療又は予防用医薬(例えば、尿アルカリ化剤)を投与された患者)の腎機能の判定又は上記治療又は予防の効果の判定の為に、上記治療又は予防を施す(例えば、治療又は予防用医薬の投与する)前の早朝尿(例えば、上記治療又は予防を施す前最後の早朝尿)のpHを測定し(このpH値をA値とする)、上記治療又は予防を施した(例えば、治療又は予防用医薬を投与した)後の早朝尿(例えば、上記治療又は予防を施した後最初の早朝尿)のpHを測定し(このpH値をB値とする)、B値がA値より高値であれば、上記治療又は予防(例えば、治療又は予防用医薬の投与)により、腎機能が改善されたと判定できる。逆に、例えば、上記治療又は予防を施す(例えば、治療又は予防用医薬を投与する)前において、早朝尿(例えば、上記治療又は予防を施す前最後の早朝尿)のpHを測定し(このpH値をA値とする)、上記治療又は予防を施した(例えば、治療又は予防用医薬を投与した)後において、早朝尿(例えば、上記治療又は予防を施した後最初の早朝尿)のpHを測定し(このpH値をB値とする)、B値がA値より低値であれば、上記治療又は予防(例えば、治療又は予防用医薬の投与)により、腎機能が悪化したと判定できる。この実施態様において、上記治療又は予防用医薬(例えば、尿アルカリ化剤)は、連続投与されていてもよく(例えば、6週間、12週間、24週間、48週間、72週間連続投与されていてもよく)、連続投与の前後に、早朝尿のpHを測定し、腎機能の改善、悪化を判定してもよい。
【0020】
また、一つの実施態様において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物は、腎機能の評価が必要な対象(例えば、ヒト)に投与され、投与前の該対象の早朝尿(例えば、投与前最後の早朝尿)のpH及び投与後該対象の尿(例えば、投与後最初の随時尿)のpHを測定することにより、腎機能が評価され得る。投与は、朝、昼、夜のいつでもよいが好ましくは朝であり、投与回数にも特に制限はないが、好ましくは単回投与である。本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物の投与後、尿のpHを測定するタイミングも適宜設定され得、例えば、投与1時間後、投与2時間後、投与3時間後、投与4時間後、投与5時間後、投与6時間後であってもよく、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物を投与後最初の尿(随時尿)のpHを測定してもよい。早朝尿は、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物の投与前の最後の早朝尿であり得る。例えば、早朝尿は、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物の投与の1時間前までに、2時間前までに、3時間前までに、4時間前までに、5時間前までに、又は6時間前までに採取した早朝尿であってもよい。また、例えば、pHを測定する本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物を投与後最初の尿(随時尿)と本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物の投与前の最後の早朝尿は、同日の尿であり得る。
一つの実施態様において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物投与後の被検者の尿(例えば、投与後最初の随時尿)のpH値(このpH値をA値とする)と投与前の被検者の早朝尿(例えば、投与前最後の早朝尿)のpH値(このpH値をB値とする)の差(A値-B値)が-1以下であるとき、被検者のeGFR値は50未満と判定できる。
また、一つの実施態様において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物投与後の被検者の尿(例えば、投与後最初の随時尿)のpH値(このpH値をA値とする)と投与前の被検者の早朝尿(例えば、投与前最後の早朝尿)のpH値(このpH値をB値とする)の差(A値-B値)が1以上であるとき、被検者のeGFR値は50以上と判定できる。
また、一つの実施態様において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物は、慢性腎臓病又は急性腎臓病の治療又は予防を施された患者(例えば、慢性腎臓病又は急性腎臓病の治療又は予防用医薬(例えば、尿アルカリ化剤)を投与された患者)の腎機能の判定又は上記治療又は予防の効果の判定に用いることもできる。例えば、上記治療又は予防を施す(例えば、治療又は予防用医薬の投与する)前において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物を投与し、投与後の被検者の尿(例えば、投与後最初の随時尿)のpH値(このpH値をA値とする)と投与前の被検者の早朝尿(例えば、投与前最後の早朝尿)のpH値(このpH値をB値とする)の差(A値-B値)を求め、上記治療又は予防を施した(例えば、治療又は予防用医薬を投与した)後において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物を投与し、投与後の被検者の尿(例えば、投与後最初の随時尿)のpH値(このpH値をC値とする)と投与前の被検者の早朝尿(例えば、投与前最後の早朝尿)のpH値(このpH値をD値とする)の差(C値-D値)を求め、(C値-D値)が(A値-B値)より高値であれば、上記治療又は予防(例えば、治療又は予防用医薬の投与)により、腎機能が改善されたと判定できる。逆に、例えば、上記治療又は予防を施す(例えば、治療又は予防用医薬を投与する)前において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物を投与し、投与後の被検者の尿(例えば、投与後最初の随時尿)のpH値(このpH値をA値とする)と投与前の被検者の早朝尿(例えば、投与前最後の早朝尿)のpH値(このpH値をB値とする)の差(A値-B値)を求め、上記治療又は予防を施した(例えば、治療又は予防用医薬を投与した)後において、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物を投与し、投与後の被検者の尿(例えば、投与後最初の随時尿)のpH値(このpH値をC値とする)と投与前の被検者の早朝尿(例えば、投与前最後の早朝尿)のpH値(このpH値をD値とする)の差(C値-D値)を求め、(C値-D値)が(A値-B値)より低値であれば、上記治療又は予防(例えば、治療又は予防用医薬の投与)により、腎機能が悪化したと判定できる。この実施態様において、上記治療又は予防用医薬(例えば、尿アルカリ化剤)は、連続投与されていてもよく(例えば、6週間、12週間、24週間、48週間、72週間連続投与されていてもよく)、連続投与の前後に、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物を投与し、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物投与前の早朝尿(例えば、投与前最後の早朝尿)のpHと本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物投与後に尿(例えば、投与後最初の随時尿)のpHを測定し、腎機能の改善、悪化を判定してもよい。この実施態様において、pHを測定する本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物投与前の早朝尿と本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物投与後の随時尿は、同日の尿であり得る。また、この実施態様において、投与された慢性腎臓病又は急性腎臓病の治療又は予防用医薬と本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物が同じ薬剤である場合、尿のpH測定の直前に投与された薬剤が、本発明が提供する腎機能診断用医薬組成物であり得る。
【0021】
本発明が提供する医薬組成物は、また、慢性腎臓病における腎保護に用いることができる。腎保護には、腎組織の保護、及び腎機能の保護が含まれる。
例えば、本発明が提供する医薬組成物は、慢性腎臓病における腎組織の保護用医薬組成物、慢性腎臓病の進展に伴う腎組織障害の抑制用医薬組成物、慢性腎臓病における腎機能の維持又は改善用医薬組成物、又は慢性腎臓病の進展に伴う腎機能の低下抑制用医薬組成物であり得る。
本発明が提供する医薬組成物によって保護される腎組織の例には、尿細管(例えば、近位尿細管)が挙げられる。
また、本発明が提供する医薬組成物によって維持又は改善される腎機能の例には、尿細管機能(例えば、近位尿細管機能)が挙げられ、尿細管機能の例としては、尿濃縮能が挙げられる。
よって、本発明が提供する医薬組成物は、慢性腎臓病における尿細管機能の維持又は改善用医薬組成物、慢性腎臓病の進展に伴う尿細管機能の低下抑制用医薬組成物、慢性腎臓病における尿濃縮能の維持又は改善用医薬組成物、又は慢性腎臓病の進展に伴う尿濃縮能の低下抑制用医薬組成物であり得る。
このような本発明が提供する医薬組成物の効果は、本発明が提供する医薬組成物を投与した慢性腎臓病患者における、早朝尿中の8-OHdG濃度、早朝尿中のβ-マイクログロブリン濃度、早朝尿中アルブミン濃度、随時尿中のアルブミン濃度、随時尿中のタンパク質濃度及び/又は早朝尿浸透圧を、本分野で公知の方法で測定することにより評価することができる。
例えば、本発明が提供する医薬組成物を慢性腎臓病患者に投与することにより、投与前に比較し、慢性腎臓病患者の早朝尿中の8-OHdG濃度が低下する場合、本発明が提供する医薬組成物により腎組織が保護されたと評価してもよい。
例えば、本発明が提供する医薬組成物を投与した慢性腎臓病患者が、本発明が提供する医薬組成物を投与しない慢性腎臓病患者に比較し、早朝尿中の8-OHdG濃度が低値である場合、本発明が提供する医薬組成物により慢性腎臓病の進展に伴う腎組織障害が抑制されたと評価してもよい。
例えば、本発明が提供する医薬組成物を慢性腎臓病患者に投与することにより、投与前に比較し、慢性腎臓病患者の早朝尿中のβ-マイクログロブリン濃度が低下する場合、本発明が提供する医薬組成物により尿細管組織が保護されたと評価してもよい。
例えば、本発明が提供する医薬組成物を投与した慢性腎臓病患者が、本発明が提供する医薬組成物を投与しない慢性腎臓病患者に比較し、早朝尿中のβ-マイクログロブリン濃度が低値である場合、本発明が提供する医薬組成物により慢性腎臓病の進展に伴う尿細管組織障害が抑制されたと評価してもよい。
例えば、本発明が提供する医薬組成物を慢性腎臓病患者に投与することにより、投与前に比較し、慢性腎臓病患者の早朝尿中アルブミン濃度、随時尿中のアルブミン濃度及び/又は随時尿中のタンパク質濃度が増加しない場合、本発明が提供する医薬組成物により腎機能が維持又は改善されたと評価してもよい。
例えば、本発明が提供する医薬組成物を投与した慢性腎臓病患者が、本発明が提供する医薬組成物を投与しない慢性腎臓病患者に比較し、早朝尿中アルブミン濃度、随時尿中のアルブミン濃度及び/又は随時尿中のタンパク質濃度が低値である場合、本発明が提供する医薬組成物により慢性腎臓病の進展に伴う腎機能低下が抑制されたと評価してもよい。
例えば、本発明が提供する医薬組成物を慢性腎臓病患者に投与することにより、投与前に比較し、慢性腎臓病患者の早朝尿の浸透圧が低下しない場合、本発明が提供する医薬組成物により尿細管機能の維持又は改善されたと評価してもよく、本発明が提供する医薬組成物により尿濃縮能の維持又は改善されたと評価してもよい。
例えば、本発明が提供する医薬組成物を投与した慢性腎臓病患者が、本発明が提供する医薬組成物を投与しない慢性腎臓病患者に比較し、早朝尿の浸透圧が高い場合、本発明が提供する医薬組成物により慢性腎臓病の進展に伴う尿細管機能の低下が抑制されたと評価してもよく、本発明が提供する医薬組成物により慢性腎臓病の進展に伴う尿濃縮能の低下が抑制されたと評価してもよい。
【0022】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、腎臓の酸化ストレスの指標となる8-OHdGの尿中濃度を低下させることから、慢性腎臓病患者の腎臓における酸化ストレス抑制用医薬組成物であり得る。8-OHdGの尿中濃度の低下は、本発明が提供する医薬組成物の投与前と投与後の比較、又は本発明が提供する医薬組成物の投与と非投与の比較において評価され得る。
【0023】
また、一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の投与により、腎内レニン・アンジオテンシン系の活性化が抑制されて、慢性腎臓病患者のアシドーシスが治療又は予防され得、酸性尿が改善され得ることから、本発明が提供する医薬組成物は、高血圧を伴う慢性腎臓病患者のアシドーシスの治療又は予防用医薬組成物又は高血圧を伴う慢性腎臓病患者の酸性尿の改善用医薬組成物であり得る。
「腎内レニン・アンジオテンシン系活性化の抑制」とは、本発明が提供する医薬組成物の投与前の尿中アンジオテンシノーゲン濃度に比較して、投与後の尿中アンジオテンシノーゲン濃度の増加が抑制されることで評価され得るか、又は、本発明が提供する医薬組成物の投与により、プラセボ投与若しくはコントロールに比較して、尿中アンジオテンシノーゲン濃度の増加が抑制されることで評価され得る。
また、一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の投与により、尿中(例えば、早朝尿中)8-OHdG濃度の増加、尿中(例えば、早朝尿中)アンジオテンシノーゲン濃度の増加、尿中(例えば、早朝尿中)β-マイクログロブリンの増加、尿中(例えば、早朝尿中)アルブミン濃度の増加、尿中(例えば、随時尿中)アルブミン濃度の増加、尿中(例えば、随時尿中)タンパク質濃度の増加又は尿(例えば、早朝尿)浸透圧の低下が抑制されるので、本発明が提供する医薬組成物は、尿中(例えば、早朝尿中)8-OHdG濃度の増加抑制用、尿中(例えば、早朝尿中)アンジオテンシノーゲン濃度の増加抑制用、尿中(例えば、早朝尿中)β-マイクログロブリンの増加抑制用、尿中(例えば、早朝尿中)アルブミン濃度の増加抑制用、尿中(例えば、随時尿中)アルブミン濃度の増加抑制用、尿中(例えば、随時尿中)タンパク質濃度の増加抑制用又は尿(例えば、早朝尿)浸透圧の低下抑制用医薬組成物であり得る。これらの効果も、本発明が提供する医薬組成物の投与前後の比較、本発明が提供する医薬組成物の投与群とプラセボもしくはコントロール群との比較において評価され得る。
【0024】
本明細書において、「抑制」とは、症状、状態又は疾患の悪化又は進行を、停止又は減速させること、及びそのためのことを含み、また、前記症状、状態又は疾患を改善すること、又はそのためのことを含む概念である。ここで、「改善」とは、「病的な」又は「異常な」症状、状態又は疾患を、「健常な」又は「正常な」状態に近づけること又はそのためのこと、及び「健常な」又は「正常な」状態にすること又はそのためのことを含む概念である。したがって、一つの実施態様において、「改善」とは、「病的な」又は「異常な」症状又は状態の指標となる数値が、前記「改善」に従って、小さくなるか、又は大きくなって、正常な値に近づくか、又は正常な値となることを含む。前記「症状、状態又は疾患の悪化又は進行」は、「病的な」又は「異常な」症状、状態又は疾患の悪化又は進行、及び「健常な」又は「正常な」状態から、「病的な」又は「異常な」症状、状態又は疾患への悪化又は進行を含む。一つの実施態様において、「抑制」とは、症状、状態又は疾患の悪化又は進行を、停止又は減速させること、又はそのためのことである。別の実施態様において、「抑制」とは、症状、状態又は疾患の悪化又は進行を、停止又は減速させることである。
【0025】
本明細書において、「健常」とは、急性若しくは慢性の疾患又は障害がない状態を表し、「正常」とは、健常な対象が、通常発現する状態にあることを表す。
ここで、前記症状、状態又は疾患は、本発明が提供する医薬組成物の投与前と投与後で比較されるか、又は本発明が提供する医薬組成物を投与したときと、コントロール若しくはプラセボを投与したときが比較される。
【0026】
本明細書において、「治療」とは、「病的な」又は「異常な」症状、状態又は疾患を、消失、完治、治癒又は寛解させること、及びそのためのことを含み、「病的な」又は「異常な」症状、状態又は疾患の悪化を「抑制」すること、及びそのためのことを含み、また、「改善」を含む概念である。ここで、「抑制」及び「改善」とは前記の意味を有する。一つの実施態様において、「治療」とは、「病的な」又は「異常な」症状、状態又は疾患を、消失、完治、治癒又は寛解させること、及びそのためのことである。別の実施態様において、「治療」とは、「病的な」又は「異常な」症状、状態又は疾患を、消失、完治、治癒又は寛解させることである。
【0027】
本明細書において、「予防」とは、「病的な」又は「異常な」症状、状態又は疾患の発症を未然に防止すること、及びそのためのことを含む概念である。
【0028】
本明細書において、「早朝尿」とは、起床して最初の尿を表し、「随時尿」とは、前記「早朝尿」以外の尿を表す。
【0029】
本発明が提供する医薬組成物は、ヒト又はその他の哺乳動物に経口又は非経口で投与され、非経口投与の例には、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、関節内投与、経粘膜投与、経皮投与、経鼻投与、直腸投与、髄腔内投与、腹腔内投与、局所投与が挙げられる。
【0030】
本発明が提供する医薬組成物は、有効成分である、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を、そのまま、又は薬学的に許容される担体、例えば、賦形剤(例えば、乳糖、D-マンニトール、結晶セルロース、ブドウ糖)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP))、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca))、希釈剤(例えば、注射用水、生理食塩水)、及び必要な場合はその他の添加剤(例えば、pH調整剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤)と混合して調製されてもよく、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、注射剤、坐薬等の製剤であり得る。例えば、錠剤とするには、有効成分である、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を、賦形剤(例えば、乳糖、D-マンニトール、結晶セルロース、ブドウ糖)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca))、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP))、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク)等と混合して製剤化してもよい。
【0031】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は錠剤である。本発明が提供する錠剤は、有効成分である、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物(例えば、クエン酸カリウム又はその水和物;クエン酸ナトリウム又はその水和物;クエン酸カリウムの一水和物及びクエン酸ナトリウムの二水和物の混合物;又は炭酸水素ナトリウム)の他、製薬分野において慣用の、薬学的に許容される添加剤を含んでもよい。このような添加剤の例としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、矯味剤、滑沢剤、pH調整剤、界面活性剤、安定化剤及び香料が挙げられる。
本発明が提供する錠剤における有効成分である、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物の含量は、錠剤に対し10~95重量%、好ましくは30~90重量%であってもよく、より好ましくは60~85重量%であってもよい。
【0032】
本発明が提供する医薬組成物は、製薬分野において公知の方法により製造することができる。
一つの実施態様において、得られる錠剤の硬度は、10~200N、好ましくは30~150Nであり得る。
【0033】
本発明が提供する医薬組成物中の有効成分である、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物の量は適宜設定され得る。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物中の有効成分である、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物の量は、有効成分である、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物の投与量がヒトに投与することにより痛風又は高尿酸血症における酸性尿が改善される量、又は、それより少ない量となるように設定されてもよく、例えば、痛風又は高尿酸血症における酸性尿の改善について日本で認可されている1日用量(例えば、1錠中にクエン酸カリウム(C6H5K3O7・H2O)231.5mg及びクエン酸ナトリウム水和物(C6H5Na3O7・2H2O)195.0mgを含む錠剤を1回2錠、1日3回経口投与、アルカリ性化剤が炭酸水素ナトリウムの場合:1日3~5g経口投与)の1~50%、又は10~20%となるように設定されてもよい。
【0034】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は錠剤であり、1錠剤中に、クエン酸カリウム一水和物又はクエン酸ナトリウム二水和物を10mg~1g、好ましくは、100mg~500mg、より好ましくは、400mg~500mgを含んでもよい。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は錠剤であり、1錠剤中に、クエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物を、それぞれ10mg~300mgで、合計20mg~600mg含んでもよく、好ましくは、それぞれ150~250mgで、合計400~500mg、より好ましくは、それぞれ190~240mgで、合計400~450mgを含んでもよい。
【0035】
一つの実施態様として、本発明が提供する医薬組成物は錠剤であり、クエン酸カリウム一水和物 231.5mg及びクエン酸ナトリウム二水和物 195.0mgを含み、添加剤として、無水クエン酸、結晶セルロース、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、マクロゴール6000、酸化チタン及びカルナウバロウを含んでもよい。
【0036】
一つの実施態様として、クエン酸カリウム一水和物 231.5mg及びクエン酸ナトリウム二水和物 195.0mgを含む錠剤を1投与単位としてもよい。
本明細書において、「投与単位」とは、製剤の単位を表し、「1投与単位」とは、製剤の最小単位を表す。したがって、例えば、錠剤であれば、投与単位は各錠剤であり、1投与単位は、1つの錠剤を表す。注射剤であれば、投与単位は、アンプル又はバイアル等の密封容器に入れられた注射剤であり、1投与単位は、1つのアンプル又はバイアル等の密封容器に入れられた注射剤を表す。
本発明が提供する医薬組成物が、ヒト又はその他の哺乳動物に投与される場合、1回あたり、1又は2以上の前記投与単位が投与されてもよく、前記1投与単位が分割されて投与されてもよい。
【0037】
有効成分である、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物の投与量は、投与方法、投与対象の年齢、体重、性別、症状、薬剤への感受性等に応じて適宜決定されるが、症状の改善の状況に応じて投与量を調節してよい。
一つの実施態様において、クエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物の混合物をヒトに経口投与する場合は、痛風並びに高尿酸血症における酸性尿の改善の為に日本で認可されている1日の投与量(例えば、クエン酸製剤の場合:1錠中にクエン酸カリウム(C6H5K3O7・H2O)231.5mg及びクエン酸ナトリウム水和物(C6H5Na3O7・2H2O)195.0mgを含む錠剤を1回2錠、1日3回経口投与)の半分量を1日の投与量としてもよい。
【0038】
一つの実施態様において、クエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物の混合物をヒトに経口投与する場合は、痛風並びに高尿酸血症における酸性尿の改善の為に日本で認可されている1日の投与量(例えば、クエン酸製剤の場合:1錠中にクエン酸カリウム(C6H5K3O7・H2O)231.5mg及びクエン酸ナトリウム水和物(C6H5Na3O7・2H2O)195.0mgを含む錠剤を1回2錠、1日3回経口投与)を1日の投与量としてもよい。
【0039】
一つの実施態様において、クエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物の混合物をヒトに経口投与する場合は、痛風並びに高尿酸血症における酸性尿の改善の為に日本で認可されている1日の投与量(例えば、クエン酸製剤の場合:1錠中にクエン酸カリウム(C6H5K3O7・H2O)231.5mg及びクエン酸ナトリウム水和物(C6H5Na3O7・2H2O)195.0mgを含む錠剤を1回2錠、1日3回経口投与)の半分量を1日の投与量として投与を開始し、その後投与量を痛風並びに高尿酸血症における酸性尿の改善の為に日本で認可されている1日の投与量まで増量してもよい。
【0040】
一つの実施態様において、有効成分である、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物の投与量は、有効成分である、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を経口投与することによりヒトの尿(例えば、早朝尿)のpHが、pH5.2~pH6.8、pH5.5~pH6.8、pH5.8~pH6.8、pH5.8~pH6.5、pH5.8~pH6.2、pH5.8以上pH6.2未満、pH6.0~pH6.5、pH6.0~pH6.4、pH6.0~pH6.3、pH6.0~pH6.2、pH6.0以上pH6.2未満、pH6.1~pH6.3、pH6.2~6.8、pH6.2~pH6.5又はpH6.5~6.8となるような投与量であってもよい。
【0041】
一つの実施態様において、有効成分である、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物の投与量は、有効成分である、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を経口投与することによりヒトの尿(例えば、早朝尿)のpHが、投与6週、12週又は24週後で、pH5.2~pH6.8、pH5.5~pH6.8、pH5.8~pH6.8、pH5.8~pH6.5、pH5.8~pH6.2、pH5.8以上pH6.2未満、pH6.0~pH6.5、pH6.0~pH6.4、pH6.0~pH6.3、pH6.0~pH6.2、pH6.0以上pH6.2未満、pH6.1~pH6.3、pH6.2~6.8、pH6.2~pH6.5又はpH6.5~6.8となるような投与量であってもよい。
【0042】
一つの実施態様において、有効成分としてクエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物の混合物をヒトに経口投与する場合は、クエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物を、それぞれ0.1~5g/日で合計0.2~10g/日、それぞれ0.1~3g/日で合計0.2~6g/日、それぞれ0.5~3g/日で合計1~6g/日、好ましくは、それぞれ0.5~1.5g/日で合計1~3g/日、それぞれ1~1.5g/日で合計2~3g/日、又はそれぞれ0.5~1g/日で合計1~2g/日を投与してもよく、1日1~5回、好ましくは1日3回に分けて投与してもよい。
【0043】
一つの実施態様において、有効成分としてクエン酸カリウム一水和物又はクエン酸ナトリウム二水和物をヒトに経口投与する場合は、1~10g/日、1~6g/日、2~5.5g/日、1~3g/日、2~3g/日又は1~1.5g/日を投与してもよく、1日1~5回、好ましくは1日3回に分けて投与してもよい。
【0044】
一つの実施態様において、有効成分である、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物は、長期に投与されてもよく、例えば、1週間、2週間、3週間、6週間、8週間、10週間、12週間、24週間、40週間、60週間、80週間、100週間、120週間、1週間以上、2週間以上、3週間以上、6週間以上、8週間以上、10週間以上、12週間以上、24週間以上、40週間以上、60週間以上、80週間以上、100週間以上、120週間以上、6週間以上24週間以下、12週間以上24週間以下、6週間以上30週間以下、12週間以上30週間以下、6週間以上40週間以下、12週間以上40週間以下、6週間以上60週間以下、12週間以上60週間以下、6週間以上80週間以下、12週間以上80週間以下、6週間以上100週間以下、12週間以上100週間以下、6週間以上120週間以下又は12週間以上120週間以下で投与される。
【0045】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、6週間の連続投与、12週間の連続投与、及び/又は24週間の連続投与により、慢性腎臓病の患者に有益な効果(例えば、腎保護効果)が検出され得る。
【0046】
慢性腎臓病(CKD)は、原疾患を問わず、慢性に経過する腎臓病を包括する概念であり、糸球体濾過量(GFR)で表される腎機能の低下があるか、又は腎臓の障害を示唆する所見が慢性的(3ヶ月以上)に持続する病態全てを包含する概念である。
【0047】
CKD診療ガイド2012(日腎会誌2012)によれば、慢性腎臓病の重症度は原因(Cause:C)、腎機能(GFR:G)、蛋白尿(アルブミン尿:A)による分類で評価される。
GFRの区分は、以下のようである。
G1:GFRが正常又は高値(≧90 mL/分/1.73 m2
G2:GFRが正常又は軽度低下(60~89 mL/分/1.73 m2
G3a:GFRが軽度~中程度低下(45~59 mL/分/1.73 m2
G3b:GFRが中等度~高度低下(30~44 mL/分/1.73 m2
G4:GFRが高度低下(15~29 mL/分/1.73 m2
G5:末期腎不全(ESKD)(<15 mL/分/1.73 m2
【0048】
蛋白尿(アルブミン尿:A)による区分は、原疾患が糖尿病である場合、尿アルブミン/クレアチニン(Cr)比を用いて以下のように分類される。
A1:正常(30 mg/gCr未満)
A2:微量アルブミン尿(30~299 mg/gCr)
A3:顕性アルブミン尿(300 mg/gCr以上)
また、蛋白尿(アルブミン尿:A)による区分は、原疾患が糖尿病以外の高血圧、腎炎、多発性嚢胞腎、移植腎、その他である場合、尿蛋白/クレアチニン(Cr)比を用いて以下のように分類される。
A1:正常(0.15 g/gCr未満)
A2:軽度蛋白尿(0.15~0.49 g/gCr)
A3:高度蛋白尿(0.50 g/gCr以上)
【0049】
CKD診療ガイド2012(日腎会誌2012)によれば、慢性腎臓病(CKD)の重症度分類は、上記C、G及びAを用いて、例えば、糖尿病G2A3、慢性腎炎G3bA1等と表記される。
しかしながら、従来、慢性腎臓病の重症度は、GFRで区分されるステージのみで表記されていたことが考慮され、慢性腎臓病の重症度を従来のように、G1、G2、G3a、G3b、G4及びG5というステージで表記することも可能としている。
【0050】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、重症度の低い、早期の慢性腎臓病患者に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、ステージG3b以下、好ましくは、ステージG2又はそれ以下の慢性腎臓病患者に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、ステージG2以上ステージG3b以下(例えば、ステージG2及びステージG3a;又はステージG2、ステージG3a及びステージG3b)である慢性腎臓病患者に投与される。
【0051】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、ステージG3b以下であって、微量アルブミン尿である慢性腎臓病患者、好ましくは、ステージG2であって、微量アルブミン尿である慢性腎臓病患者に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、ステージG2以上ステージG3b以下(例えば、ステージG2及びステージG3a;又はステージG2、ステージG3a及びステージG3b)であって、微量アルブミン尿である慢性腎臓病患者に投与される。
【0052】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、ステージG3b以下であって、尿中蛋白排泄量が3.5g/gCr未満である慢性腎臓病患者、好ましくは、ステージG2であって、尿中蛋白排泄量が3.5g/gCr未満である慢性腎臓病患者に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、ステージG2以上ステージG3b以下(例えば、ステージG2及びステージG3a;又はステージG2、ステージG3a及びステージG3b)であって、尿中蛋白排泄量が3.5g/gCr未満である慢性腎臓病患者に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、進行性の慢性腎臓病患者に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、高血圧を伴う慢性腎臓病患者に投与される。
【0053】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、CKD診療ガイドに従った治療を施す患者に投与される。例えば、CKD診療ガイドに従った血圧管理(ARBやACE阻害薬などのRA系抑制薬、利尿薬、Ca拮抗薬の投与等)、蛋白尿対策(RA系抑制薬の投与等)、血糖値管理(αグルコシダーゼ阻害剤の投与等)、脂質管理(スタチン、フィブラートの投与等)、貧血管理(エリスロポエチンの投与等)及び/又は骨・ミネラル対策(ビスホスホネートの投与等)を施す患者に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、血圧降下薬(例えば、ARB、ACE阻害薬、利尿薬、Ca拮抗薬)と併用される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、石油系炭化水素由来の球形微粒多孔質炭素を高温にて酸化及び還元処理して得た球形吸着炭(クレメジン(登録商標)として日本で販売されている)と併用される。
【0054】
本発明の実施の他の形態の例としては以下が挙げられる。
1-1)慢性腎臓病に罹患している哺乳類対象(例えば、ヒト)における腎保護方法であって、腎保護が必要な対象に有効量のクエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を投与することを含む、方法;
1-2)哺乳類対象(例えば、ヒト)における慢性腎臓病に伴うアシドーシスの抑制又は酸性尿の改善方法であって、慢性腎臓病に伴うアシドーシスの抑制が必要な対象に有効量のクエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を投与することを含み、該対象の腎内でRAS活性化が抑制される、方法;
1-3)慢性腎臓病に罹患している哺乳類対象(例えば、ヒト)の腎臓における酸化ストレスの抑制方法であって、酸化ストレスの抑制が必要な対象に有効量のクエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を投与することを含む方法;
1-4)哺乳類対象(例えば、ヒト)における糸球体ろ過機能を判定する方法であって、該糸球体ろ過機能の判定が必要な対象に有効量のクエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む医薬組成物を投与すること、該当予前及び該投与後の尿のpHを測定すること、該投与後の尿のpHと該投与前の尿のpHの差を算出することを含む方法(例えば、該差が-1以下の時、eGFRは50未満と判定し、1以上の時、eGFRは50以上と判定する);
【0055】
2-1)慢性腎臓病に罹患している哺乳類対象(例えば、ヒト)における腎保護に使用するための、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む医薬組成物;
2-2)腎内RAS活性化を抑制し、慢性腎臓病に伴うアシドーシスの抑制又は酸性尿の改善に使用するための、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む医薬組成物;
2-3)慢性腎臓病に罹患している哺乳類対象(例えば、ヒト)の腎臓における酸化ストレスの抑制に使用するための、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む医薬組成物;
2-4)糸球体ろ過機能の判定に使用するための、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む医薬組成物;
【0056】
3-1)慢性腎臓病に罹患している哺乳類対象(例えば、ヒト)における腎保護用医薬組成物を製造するための、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物の使用;
3-2)腎内RAS活性化を抑制し、慢性腎臓病に伴うアシドーシスの抑制又は酸性尿の改善用医薬組成物を製造するための、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物の使用;
3-3)慢性腎臓病に罹患している哺乳類対象(例えば、ヒト)の腎臓における酸化ストレスの抑制用医薬組成物を製造するための、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物の使用;及び
3-4)糸球体ろ過機能の判定用医薬組成物を製造するための、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物の使用。
【0057】
2.食品組成物
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物は、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含み、腎臓の保護又は健康維持の効果を奏する。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物は、腎における酸化ストレスの抑制の効果を奏する。
有効成分については、上記「1.医薬組成物」で記載した有効成分を適用することができる。例えば、本発明が提供する食品組成物は、クエン酸アルカリ金属塩若しくはその水和物又はそれらの混合物、好ましくは、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及びクエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)の混合物を含む食品組成物であり得る。
【0058】
本発明が提供する食品組成物中のクエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物の含量は、食品の種類により、適宜決定され得る。食品組成物の例には、特定保健用食品、機能性表示食品、病院患者用食品、サプリメントが挙げられる。これら、食品組成物の形態としては、前記効果を奏するための有効量のクエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含み、経口的に摂取可能な形態であれば特に限定されるものではなく、通常の飲食品の形態であってもよいし、前記医薬組成物に適用され得る製剤のうち、経口投与に適した製剤、例えば、錠剤、カプセル剤、懸濁剤等の製剤として提供されてもよい。これらの製剤の構成及び製造方法については、本明細書において、上記「1.医薬組成物」で記載した医薬製剤の構成及び製造方法がそのまま適用できる他、医薬の製剤技術の分野において、それ自体公知の製剤技術を適用することができる。
【0059】
例えば、特定保健用食品、機能性表示食品、病院患者用食品又はサプリメントの場合、1食分の食品あたり、有効成分としてクエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物を合計で1~3gの1/3量含むか、又は有効成分として炭酸水素ナトリウムを1~6gの1/3量含んでいてもよい。特定保健用食品、機能性表示食品、病院患者用食品又はサプリメントが錠剤として提供される場合、例えば、1錠あたり、300mg~600mg の錠剤に、70~80重量%のクエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含んでいてもよい。
【0060】
本発明が提供する食品組成物が製剤化されず、通常の飲食品の形態として提供される場合、当該食品の種類により、当業者が適宜製造でき、例えば、食品素材にクエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を配合することにより製造され得る。
前記飲食品の形態としては、飲料、醤油、牛乳、ヨーグルト、味噌等の液状又は乳状又はペースト状食品;ゼリー、グミ等の半固形状食品;飴、ガム、豆腐、サプリメント等の固形状食品;又は粉末状食品等が挙げられる。
飲料としては、果汁・果実飲料、コーヒー飲料、烏龍茶飲料、緑茶飲料、紅茶飲料、麦茶飲料、野菜飲料、ソフトドリンクである炭酸飲料、果実エキス入り飲料、野菜エキス入りジュース、ニアウオーター、スポーツ飲料、ダイエット飲料等が挙げられる。
【0061】
飲料には、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を、単独又は組み合わせて配合することができる。
【0062】
上記「1.医薬組成物」で記載した、「投与」という用語は、本発明に係る「食品組成物」にも適用することができ、さらに、本発明に係る「食品組成物」については、用語「投与」を、「摂取」と読み替えることができる。したがって、例えば、用語「投与する」、「投与される」等は、「摂取させる」、「摂取する」、「摂取される」等と文脈に応じて語形変化させて読み替えることができる。
したがって、本発明に係る食品組成物の実施の形態としては以下が挙げられる。
【0063】
<1>クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む、腎臓の健康維持用の食品組成物;
<11>腎臓の健康を維持する方法であって、腎臓の健康維持が必要な対象に、有効量のクエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む食品組成物を摂取させる方法;
<111>腎臓の健康維持用の食品組成物を製造するための、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物の使用。
本発明に係る食品組成物は、その包装、容器、又は説明書に、腎臓の健康維持等の効果が表示されていることが好ましい。
【0064】
本発明の実施態様の他の例としては以下:
(1)
クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む慢性腎臓病における腎保護用医薬組成物;
(2)
腎組織を保護する、(1)に記載の医薬組成物;
(3)
腎機能を維持又は改善する、(1)又は(2)に記載の医薬組成物;
(4)
尿細管組織を保護する、(1)~(3)のいずれかに記載の医薬組成物;
(5)
尿細管機能を維持又は改善する、(1)~(4)のいずれかに記載の医薬組成物;
(6)
尿濃縮能を維持又は改善する、(1)~(5)のいずれかに記載の医薬組成物;
(7)
腎臓における酸化ストレスを抑制する、(1)~(6)のいずれかに記載の医薬組成物;
(8)
クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはその水和物又はそれらの混合物を含む、高血圧を伴う慢性腎臓病におけるアシドーシスの治療又は予防用、又は酸性尿の改善用医薬組成物;
(9)
クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物が、クエン酸ナトリウム又はその水和物と、クエン酸カリウム又はその水和物との混合物である、(1)~(8)のいずれかに記載の医薬組成物;
(10)
さらに、無水クエン酸を含む、(1)~(9)のいずれかに記載の医薬組成物;
(11)
クエン酸、クエン酸の医薬的に許容可能な塩、若しくはその水和物又はそれらの混合物が1~3g/日で投与される、(1)~(10)のいずれかに記載の医薬組成物;
(12)
クエン酸、クエン酸の医薬的に許容可能な塩、若しくはその水和物又はそれらの混合物が1~1.5g/日で投与される、(1)~(11)のいずれかに記載の医薬組成物;
(13)
ステージG2以上G3b以下の慢性腎臓病患者に投与される、(1)~(12)のいずれかに記載の医薬組成物;
(14)
クエン酸、クエン酸の医薬的に許容可能な塩、若しくはその水和物又はそれらの混合物が6週間以上投与される、(1)~(13)のいずれかに記載の医薬組成物;
(15)
クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含む腎機能診断用医薬組成物;
(16)
腎機能が、糸球体ろ過機能である、(15)に記載の医薬組成物;
(17)
慢性腎臓病患者に投与され、慢性腎臓病患者の腎機能診断用医薬組成物である、(15)又は(16)に記載の医薬組成物;
(18)
クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物が、クエン酸ナトリウム又はその水和物と、クエン酸カリウム又はその水和物との混合物である、(15)~(17)のいずれかに記載の医薬組成物;
(19)
さらに、無水クエン酸を含む、(15)~(18)のいずれかに記載の医薬組成物;
(20)
クエン酸、クエン酸の医薬的に許容可能な塩、若しくはその水和物又はそれらの混合物が1~3g/日で投与される、(15)~(19)のいずれかに記載の医薬組成物;
(21)
クエン酸、クエン酸の医薬的に許容可能な塩、若しくはその水和物又はそれらの混合物が1~1.5g/日で投与される、(15)~(20)のいずれかに記載の医薬組成物;
(22)
ステージG2以上G3b以下の慢性腎臓病患者に投与される、(15)~(21)のいずれかに記載の医薬組成物;
(23)
(15)~(22)のいずれかに記載の医薬組成物及びヒト尿のpHを測定する為の試験紙を含む、腎機能診断用医薬キット;
(24)
(15)~(22)のいずれかに記載の医薬組成物を被検者に投与すること、投与後の被検者の尿のpHを測定することを含む、腎機能の判定方法;
(25)
投与後の被検者の尿が、投与後の最初の被検者の尿である、(24)に記載の方法;
(26)
投与後の被検者の尿が、投与2~5時間後の被検者の尿である、(24)又は(25)に記載の方法;
(27)
被検者が、アルカリ性化剤を含む医薬組成物を連続投与された慢性腎臓病患者である、(24)~(26)のいずれかに記載の方法;
(28)
被検者が、アルカリ性化剤を含む医薬組成物を連続投与された慢性腎臓病患者であり、アルカリ性化剤の連続投与前に、(15)~(22)のいずれかに記載の医薬組成物を投与して、その後採取した被検者の尿のpH値に比較して、アルカリ性化剤の連続投与後に(15)~(22)のいずれかに記載の医薬組成物を投与して、その後採取した被検者の尿のpH値が高い場合に被検者の腎機能が改善されたと判定する、(24)~(27)のいずれかに記載の方法;
(29)
(15)~(22)のいずれかに記載の医薬組成物を被検者に投与すること、投与前の被検者の早朝尿のpH及び投与後の被検者の尿のpHを測定することを含む、腎機能の判定方法;
(30)
投与前の被検者の早朝尿が、投与前の最後の被検者の早朝尿である、(29)に記載の方法;
(31)
投与前の被検者の尿が、投与3時間前までの被検者の早朝尿である、(29)又は(30)に記載の方法;
(32)
投与後の被検者の尿が、投与後の最初の被検者の尿である、(29)~(31)のいずれかに記載の方法;
(33)
投与後の被検者の尿が、投与2~5時間後の被検者の尿である、(29)~(32)のいずれかに記載の方法;
(34)
被検者が、アルカリ性化剤を含む医薬組成物を連続投与された慢性腎臓病患者である、(29)~(33)のいずれかに記載の方法;
(35)
被検者が、アルカリ性化剤を含む医薬組成物を連続投与された慢性腎臓病患者であり、連続投与後と連続投与前を比較して、(15)~(22)のいずれかに記載の医薬組成物の投与後の被検者の尿のpHから(15)~(22)のいずれかに記載の医薬組成物の投与前の被検者の早朝尿のpHを引き算した差が大きい場合に被検者の腎機能が改善されたと判定する、(29)~(34)のいずれかに記載の方法;
(36)
(15)~(22)のいずれかに記載の医薬組成物の投与後の被検者の尿のpHから(15)~(22)のいずれかに記載の医薬組成物の投与前の被検者の早朝尿のpHを引き算した差が-1以下である場合eGFRが50未満と判定する、(29)~(35)のいずれかに記載の方法;及び
(37)
(15)~(22)のいずれかに記載の医薬組成物の投与後の被検者の尿のpHから(15)~(22)のいずれかに記載の医薬組成物の投与前の被検者の早朝尿のpHを引き算した差が1以上である場合eGFRが50以上と判定する、(29)~(36)のいずれかに記載の方法、
が挙げられる。
【0065】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0066】
経口アルカリ性化剤であるクエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤及び重曹製剤の経口投与による効果を検討する為に、ヒト臨床試験を実施した。
【0067】
1.方法
ステージG2~G3bの慢性腎臓病患者(eGFR:30~89 ml/min/1.73m2)47名をクエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群(A群:16名)、重曹(炭酸水素ナトリウム)製剤投与群(B群:16名)及びコントロール群(C群:15名)に無作為に分けた。各群に、年齢、性別、糖尿病の有無、eGFRが偏らないように患者を割り付けした。各群には、「CKD診療ガイド-治療のまとめ」に基づく治療(以下、標準治療と称す)を行った。
【0068】
コントロール群にはアルカリ性化剤を投与しなかった。A群には、クエン酸カリウム(C6H5K3O7・H2O)231.5 mg及びクエン酸ナトリウム水和物(C6H5Na3O7・2H2O)195.0 mgを含有する錠剤を1日3錠、1日3回(朝、昼、夕)、24週間経口投与した。なお、経時的に早朝尿のpH管理を行い、早朝尿がpH6.5未満の症例には、適宜、医師の判断で1日6錠、1日3回(朝、昼、夕)まで増量できることとした。B群には、炭酸水素ナトリウム500 mgを含む錠剤を1日3錠、1日3回(朝、昼、夕)、24週間経口投与した。なお、経時的に早朝尿のpH管理を行い、早朝尿がpH6.5未満の症例には、適宜、医師の判断で1日6錠、1日3回(朝、昼、夕)まで増量できることとした。
【0069】
投与開始前、投与開始後6週、12週、24週の早朝尿、随時尿及び血液を採取し、各検体は-80℃で保存した。
尿中の8-OHdG濃度、アンジオテンシノーゲン濃度は、ELISA法で測定した。
血清の鉄濃度はニトロソ-PSAP法で、フェリチン濃度はCLEIA(化学発光酵素免疫測定法)法で測定した。
尿中のβ2-マイクログロブリン量を、LZテスト‘栄研’β2-M及びLZ-β2-M標準U‘栄研’(栄研化学、東京、日本)を用いたラテックス凝集免疫法で測定した。
尿の浸透圧は氷点降下法を用いて測定した。
尿中のアルブミン濃度、タンパク質濃度は、免疫比濁法、比色法を用いて測定した。
尿中のクレアチニン濃度は、酵素法により測定した。
統計解析は、群間比較にはMann-Whitney検定を使用し、経時変化の比較にはWilcoxon検定を使用した。また、相関性に関してはPearson検定を使用した。
【0070】
2.結果
測定結果から、A群(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群)、B群(炭酸水素ナトリウム製剤投与群)及びC群(コントロール群)の各患者について、以下を算出した:
(i)投与開始前の早朝尿中の8-OHdG及びアンジオテンシノーゲンの各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値
(ii)投与開始後6週、12週、24週の早朝尿中の8-OHdG及びアンジオテンシノーゲンの各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値
(iii)投与開始後6週、12週、24週における早朝尿中の8-OHdGの各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値と、投与開始前の早朝尿中の8-OHdGの各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値の比(投与開始後6週、12週、24週における早朝尿中の8-OHdGの各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値/投与開始前の早朝尿中の8-OHdGの各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値)
【0071】
(iv)投与開始前の早朝尿中のβ-マイクログロブリン及びアルブミンの各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値
(v)投与開始後6週、12週、24週の早朝尿中のβ-マイクログロブリン及びアルブミンの各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値
(vi)投与開始後6週、12週、24週における早朝尿中のβ-マイクログロブリン及びアルブミンの各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値から、投与開始前の早朝尿中のβ-マイクログロブリン及びアルブミンの各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値を差し引いた差(投与開始後6週、12週、24週における早朝尿中のβ-マイクログロブリン及びアルブミンの各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値-投与開始前の早朝尿中のβ-マイクログロブリン及びアルブミンの各濃度を尿中クレアチニン濃度で引き算した値)
(vii)投与開始前の随時尿中のアルブミン及びタンパク質の各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値
(viii)投与開始後6週、12週、24週の早朝尿中のアルブミン及びタンパク質の各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値
(ix)投与開始後6週、12週、24週における早朝尿中のアルブミン及びタンパク質の各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値から、投与開始前の早朝尿中のアルブミン及びタンパク質の各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値を差し引いた差(投与開始後6週、12週、24週における早朝尿中のアルブミン及びタンパク質の各濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値-投与開始前の早朝尿中のアルブミン及びタンパク質の各濃度を尿中クレアチニン濃度で引き算した値)
(x)投与開始前の早朝尿の浸透圧値
(xi)投与開始後6週、12週、24週の早朝尿の各浸透圧値
【0072】
そして、上記(i)~(xii)につき、各群の平均値とSDを算出した。
結果を以下の表に示した。なお、表中及び図中では、A群:クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群を“Citrate”、B群:炭酸水素ナトリウム製剤投与群を“Bicarbonate”と記載した。
【0073】
表1に、投与開始後6週、12週、24週における早朝尿中の8-OHdGの濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値と、投与開始前の早朝尿中の8-OHdGの濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値との比(%)を示す。
【0074】
【表1】
【0075】
A群(Citrate:クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群)では、B群(Bicarbonate:炭酸水素ナトリウム製剤投与群)及びC群(Control:コントロール群)に比較し、投与6、12及び24週後の早朝尿中の8-OHdGの濃度が低値であった(表1参照)。A群では、B群、C群に比較し、投与6~24週における早朝尿中8-OHdGの濃度は有意に低下した(表1参照)。尿中の8-OHdG濃度は、組織障害の指標である8-OHdGの腎における蓄積を反映する。上記結果より、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤の投与が、慢性腎臓病患者の腎臓での酸化ストレスの抑制に有用であること、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤の投与により、腎組織保護効果が発揮されることが示された。
【0076】
表2に、投与開始前、投与後6、12、24週及び6~24週における、早朝尿中のアンジオテンシノーゲン量を尿中クレアチニン濃度で割り算した値(μg/gCr)を示す。
【0077】
【表2】
【0078】
B群(Bicarbonate:炭酸水素ナトリウム製剤投与群)では、A群(Citrate:クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群)に比較し、、投与6~24週における早朝尿中アンジオテンシノーゲンの濃度が有意に高値であった(表2参照)。炭酸水素ナトリウム投与は、腎内レニン・アンジオテンシン系を亢進させる方向に作用する一方、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤の投与は、そのような作用が無いことが示された。
【0079】
表3に、投与開始後6週、12週、24週における早朝尿中のβ-マイクログロブリンの濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値から、投与開始前の早朝尿中のβ-マイクログロブリンの濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値を差し引いた差(μg/gCr)を示す。
【0080】
【表3】
【0081】
A群(Citrate:クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群)では、C群(Control:コントロール群)に比較し、投与6~24週の早朝尿中のβ2マイクログロブリンの濃度が低値である傾向が認められた(表3参照)。このような傾向はB群(Bicarbonate:炭酸水素ナトリウム製剤投与群)では認められなかった(表3参照)。クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤の投与は、コントロール群に比較して、尿細管組織保護効果を発揮することが示唆された。
【0082】
表4に、投与開始後6週、12週、24週における早朝尿中アルブミンの濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値から、投与開始前の早朝尿中のアルブミンの濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値を差し引いた差(mg/gCr)を示す。
【0083】
【表4】
【0084】
A群(Citrate:クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群)では、投与開始前に比較し投与後の早朝尿中のアルブミン濃度が低値となる傾向が認められた。このような傾向は、B群(Bicarbonate:炭酸水素ナトリウム製剤投与群)及びC群(Control:コントロール群)では認められなかった(表4参照)。
また、A群(Citrate:クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群)では、B群(Bicarbonate:炭酸水素ナトリウム製剤投与群)及びC群(Control:コントロール群)に比較し、投与6~24週の早朝尿中のアルブミンの濃度が有意に低値であった(表4参照)。クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤の投与により腎機能が保護されることが示された。
【0085】
表5に、投与開始後6週、12週、24週における随時尿中アルブミンの濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値から、投与開始前の随時尿中のアルブミンの濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値を差し引いた差(mg/gCr)を示す。
【0086】
【表5】
【0087】
A群(Citrate:クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群)では、投与開始前に比較し投与後の随時尿中のアルブミン濃度が低値となる傾向が認められた。このような傾向は、B群(Bicarbonate:炭酸水素ナトリウム製剤投与群)及びC群(Control:コントロール群)では認められなかった(表5参照)。
また、A群(Citrate:クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群)では、B群(Bicarbonate:炭酸水素ナトリウム製剤投与群)及びC群(Control:コントロール群)に比較し、投与6~24週の早朝尿中のアルブミンの濃度が低値であった(表5参照)。クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤の投与により、腎機能が保護されることが示された。
クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤の投与により、早朝尿においても(表4参照)、随時尿においても(表5参照)、C群(Control:コントロール群)に比較し尿中アルブミン濃度の低下が認められたことから、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤は、1日を通して腎機能保護効果を発揮することが示された。
【0088】
表6に、投与開始後6週、12週、24週における随時尿中のタンパク質の濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値から、投与開始前の随時尿中のタンパク質の濃度を尿中クレアチニン濃度で割り算した値を差し引いた差(mg/gCr)を示す。
【0089】
【表6】
【0090】
A群(Citrate:クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群)では、投与開始前に比較し投与後の随時尿中のタンパク質濃度が低値となる傾向が認められた。このような傾向は、B群(Bicarbonate:炭酸水素ナトリウム製剤投与群)及びC群(Control:コントロール群)では認められなかった(表6参照)。
また、A群(Citrate:クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群)では、B群(Bicarbonate:炭酸水素ナトリウム製剤投与群)及びC群(Control:コントロール群)に比較し、投与6~24週の早朝尿中のタンパク質の濃度が低値であり、腎機能が保護されることが示された。
【0091】
表7に、投与開始後6週、12週、24週における早朝尿の浸透圧値(mOsm/kg HO)を示す。
【0092】
【表7】
【0093】
A群(Citrate:クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群)では、投与開始前に比較し投与後の早朝尿の浸透圧が維持又は高くなる傾向が認められた。B群(Bicarbonate:炭酸水素ナトリウム製剤投与群)においても、投与開始前に比較し投与後の早朝尿の浸透圧が維持される傾向が認められたが、C群(Control:コントロール群)では投与開始前に比較し投与後の早朝尿の浸透圧が低下する傾向が認められた(表7参照)。
クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤の投与により、尿細管機能としての尿濃縮能が維持又は改善することが示唆された。
【0094】
また、A群(Citrate:クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群)、B群(Bicarbonate:炭酸水素ナトリウム製剤投与群)及びC群(Control:コントロール群)のそれぞれについて、朝の薬剤服用2~5時間後に採取した尿(随時尿:図1~3中のSpot)のpHを測定し、eGFRの関係をプロットした(図1~3)。また、朝の薬剤服用2~5時間後に採取した尿(随時尿)のpHと早朝尿のpHを測定し、その差(随時尿のpH-早朝尿のpH:図4~6中のSpot-Morning)とeGFRの関係をプロットした(図4~6)。その結果、A群(Citrate:クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤投与群)でのみ、「随時尿のpH」の値とeGFRとの関係に有意な相関関係が認められ(図2)、「随時尿のpH-早朝尿のpH」の値とeGFRとの関係に有意な相関関係が認められた(図5)。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明が提供する医薬組成物により、腎が保護され、尿細管機能が維持又は改善する。また、本発明が提供する医薬組成物により、腎臓の機能が評価される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6