(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015777
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】通過型振れ止めを備える旋盤
(51)【国際特許分類】
B23B 29/16 20060101AFI20250123BHJP
B23Q 1/76 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B23B29/16
B23Q1/76 R
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024201771
(22)【出願日】2024-11-19
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】522052749
【氏名又は名称】株式会社唐津プレシジョン
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 啓助
(57)【要約】
【課題】 摺動ガイドの数を増やしたり幅を広げたりすることなく、刃物台を搭載する往復台と振れ止めが干渉せず、切削加工時における刃物台の位置を安定させ、加工対象物に対する切削加工精度を維持する通過型振れ止めを備える旋盤を提供すること。
【解決手段】
ベッド2、主軸台3、心押台4、刃物台5を搭載した往復台6及び往復台6とすれ違える通過型振れ止め7を備える旋盤であって、ベッド2は摺動平面8、8’を設けた二条の摺動ガイド9、9’、クランプ溝10及び補助レール11を有し、往復台6及び通過型振れ止め7は摺動ガイド9、9’に沿って移動可能であり、通過型振れ止め7の上部には、加工対象物1の周囲を支持する上方支持部16及び下方支持部17が設けられ、通過型振れ止め7の下部には、クランプ溝10に係合し任意の位置で通過型振れ止め7を固定するためのクランプ部材13及びボルトが設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、ベッドの一端側に固定されている主軸台と、ベッド上で移動及び固定可能な心押台と、刃物台を搭載しベッド上で移動可能な往復台と、ベッド上で往復台とすれ違うことが可能な通過型振れ止めを備える旋盤であって、
前記ベッドには、上面にベッド摺動面を有する平行な二条の摺動ガイドが設けられ、側面に前記通過型振れ止めを案内するためのクランプ溝又は突条が設けられ、
前記往復台は、前記二条の摺動ガイドの間に跨り、一方のベッド摺動面及び他方のベッド摺動面の一方側に接しながら移動可能であり、
前記通過型振れ止めは、前記他方のベッド摺動面の他方側に接しながら移動でき、
前記通過型振れ止めの上部には、前記主軸台及び心押台で保持され前記刃物台で切削加工される加工対象物の長手方向中央付近を支持する振れ止め支持部が設けられ、
前記通過型振れ止めの下部には、前記クランプ溝又は前記突条に係合し、任意の位置で前記通過型振れ止めを固定するためのクランプ装置が設けられている
ことを特徴とする通過型振れ止めを備える旋盤。
【請求項2】
前記振れ止め支持部は、加工対象物の下方側を支持する下方支持部と、該加工対象物の上方側を支持し、前記下方支持部に対して着脱又は移動可能な上方支持部とからなる
ことを特徴とする請求項1に記載の通過型振れ止めを備える旋盤。
【請求項3】
前記ベッドには、側面に前記通過型振れ止めをベッドの長手方向に案内するための補助レールが設けられ、
前記通過型振れ止めは、前記補助レールに係合し前記ベッドの長手方向に移動可能な補助係合部を有している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通過型振れ止めを備える旋盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の加工対象物を取扱う旋盤であって、加工対象物と切削加工用の刃物台が当接する部分とは異なる部分で加工対象物を支持するとともに、旋盤の長手方向に刃物台と干渉せずに移動可能な通過型振れ止めを備える旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺の加工対象物を取扱う旋盤においては、加工対象物の一端及び他端をそれぞれ主軸台及び心押台で保持するとともに、加工対象物に撓みや振れ回りが生じないようにするために、加工対象物の中央付近を支持する振れ止めが配置されている。
この種の旋盤は、二条の摺動ガイドを有するベッドと、ベッドの一端側に固定されている主軸台と、摺動ガイド上で移動及び固定可能な心押台と、刃物台を搭載し摺動ガイド上で移動可能な往復台と、摺動ガイド上で移動及び固定可能な振れ止めとを備えたものが一般的である。
そして、主軸台と心押台との間に配置される往復台と振れ止めは、同じ摺動ガイド上で移動しすれ違うことができないため、加工対象物の一端又は他端から中央付近(往復台が振れ止めにぶつかる直前)まで切削加工した後、一旦加工対象物と振れ止めを機械から降ろして往復台を通過させ、再度振れ止めを乗せて加工対象物をセットし直す必要がある。
このような手間を省くため、特許文献1(実願平2-117253号(実開平4-76338号)のマイクロフィルム)には、ベッド(c)と、左側のベッドと中央のベッドの一部に跨って移動可能な刃物台(b)と、右側のベッドと中央のベッドの一部に跨って移動可能な振れ止め本体(1)を備えるとともに、アーム(3)を振れ止め本体(1)内から出し入れ可能とすることによって、刃物台(b)と振れ止め本体(1)とが干渉せず、すれ違うことのできる旋盤が記載されている(特に、第1図、第2図及び明細書第5頁第3~8行を参照)。
【0003】
また、特許文献2(特許第6628401号公報)には、1本のバイト用レール(43)と、2本の振れ止め装置用レール(53)と、バイト用レール(43)に沿って移動可能なバイト取付部(42)及びバイト(41)を有する切削部(4)と、振れ止め装置用レール(53)に沿って移動可能な受台部(52)、支持部(51)及び油供給部(54)を有する振れ止め装置(5)を備えるとともに、切削部(4)と振れ止め装置(5)の軸線A方向から見た断面が互いに重ならず、切削部(4)と振れ止め装置(5)とが干渉することがないようにした旋盤が記載されている(特に、
図3、段落0026~0027及び段落0049を参照)。
そして、特許文献1、2に記載されている旋盤は、両者とも通過型振れ止めを備える旋盤ではあるものの、特許文献1に記載のものは刃物台(b)と振れ止め本体(1)を移動させるためにベッド(c)を3列有し、特許文献2に記載のものもバイト取付部(42)と受台部(52)を移動させるために1本のバイト用レール(43)と2本の振れ止め装置用レール(53)を有しているので、いずれもベッドやレールを設置する箇所の幅が広くなってしまう。
また、特許文献2に記載の旋盤は、バイト取付部(42)が1本のバイト用レール(43)に沿って移動するため、バイト(41)による切削加工の精度が低くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実願平2-117253号(実開平4-76338号)のマイクロフィルム
【特許文献2】特許第6628401号公報(特開2017-64819号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑み、摺動ガイドの数を増やしたり幅を広げたりすることなく、刃物台を搭載する往復台と振れ止めが干渉しない通過型振れ止めを備える旋盤の提供が第1の課題であり、通過型振れ止めを備える旋盤において、切削加工時における刃物台の位置を安定させ、加工対象物に対する切削加工精度を維持することが第2の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、
ベッドと、ベッドの一端側に固定されている主軸台と、ベッド上で移動及び固定可能な心押台と、刃物台を搭載しベッド上で移動可能な往復台と、ベッド上で往復台とすれ違うことが可能な通過型振れ止めを備える旋盤であって、
前記ベッドには、上面にベッド摺動面を有する平行な二条の摺動ガイドが設けられ、側面に前記通過型振れ止めを案内するためのクランプ溝又は突条が設けられ、
前記往復台は、前記二条の摺動ガイドの間に跨り、一方のベッド摺動面及び他方のベッド摺動面の一方側に接しながら移動可能であり、
前記通過型振れ止めは、前記他方のベッド摺動面の他方側に接しながら移動でき、
前記通過型振れ止めの上部には、前記主軸台及び心押台で保持され前記刃物台で切削加工される加工対象物の長手方向中央付近を支持する振れ止め支持部が設けられ、
前記通過型振れ止めの下部には、前記クランプ溝又は前記突条に係合し、任意の位置で前記通過型振れ止めを固定するためのクランプ装置が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の通過型振れ止めを備える旋盤において、
前記振れ止め支持部は、加工対象物の下方側を支持する下方支持部と、該加工対象物の上方側を支持し、前記下方支持部に対して着脱又は移動可能な上方支持部とからなることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の通過型振れ止めを備える旋盤において、
前記ベッドには、側面に前記通過型振れ止めをベッドの長手方向に案内するための補助レールが設けられ、
前記通過型振れ止めは、前記補助レールに係合し前記ベッドの長手方向に移動可能な補助係合部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明の通過型振れ止めを備える旋盤によれば、ベッドの上面には平行な二条の摺動ガイドが設けられているだけなので、摺動部の数が増えず、幅が広がることもない。
そして、本発明の通過型振れ止めは、他方のベッド摺動面のうちの往復台が接する面を除く面に接しながら移動可能となっているので、往復台と干渉せずベッド上ですれ違うことができる。
また、刃物台を搭載している往復台は、二条の摺動ガイドの間に跨り、一方のベッド摺動面及び他方のベッド摺動面の一方側に接しながら移動可能であるので、切削加工時における刃物台の位置が安定し、加工対象物に対する切削加工精度を維持することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る発明の通過型振れ止めを備える旋盤による効果に加えて、振れ止め支持部が、加工対象物の下方側を支持する下方支持部と、加工対象物の上方側を支持し、下方支持部に対して着脱又は移動可能な上方支持部とからなっているので、上方支持部を外すか邪魔にならない位置に移動させた上で加工対象物をセットすることができ、作業効率を上げることができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は2に係る発明の通過型振れ止めを備える旋盤による効果に加えて、ベッドの側面には通過型振れ止めを案内するための補助レールが設けられ、通過型振れ止めは補助レールに係合しベッドの長手方向に移動可能な補助係合部を有しているので、より安定した状態で通過型振れ止めを移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例に係る通過型振れ止めを備える旋盤の斜視図。
【
図2】実施例に係る通過型振れ止めを備える旋盤の断面図。
【
図3】通過型振れ止めの上方支持部を開いた状態における旋盤の断面図。
【
図4】通過型振れ止めを固定するクランプ装置の動作を説明する図。
【
図5】旋盤に加工対象物をセットする手順を説明する図。
【
図6】往復台を通過型振れ止めとすれ違わせて切削加工するときの様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
【実施例0014】
図1は実施例に係る通過型振れ止めを備える旋盤の斜視図である。
図1に示すように、実施例に係る通過型振れ止めを備える旋盤は、長尺の加工対象物1を取扱う旋盤であって、ベッド2と、ベッド2の一端側に固定されている主軸台3と、ベッド2上で移動及び固定可能な心押台4と、刃物台5を搭載しベッド2上で移動可能な往復台6と、ベッド2に沿って移動できベッド2上で往復台6とすれ違うことが可能な通過型振れ止め7を備えている。
そして、ベッド2には、上面に摺動平面8、8’を有する平行な二条の摺動ガイド9、9’が設けられ、側面に通過型振れ止め7をベッド2の長手方向に案内するためのクランプ溝10と、補助レール11が設けられている。
また、往復台6の上面には、ベッド2の長手方向と直交する方向に、ほぞ状の突起12が設けてあり、刃物台5の下面に設けてある蟻溝(図示せず)と嵌合して、刃物台5を移動可能に保持できるようになっている。
【0015】
図2は実施例に係る通過型振れ止めを備える旋盤を、心押台4と往復台6との間において、加工対象物1の中心軸に直交する平面で切った状態の断面図である。
図2に示すように、往復台6は二条の摺動ガイド9、9’の間に跨り、一方の摺動部9の上部を包み込み、他方の摺動ガイド9’の一部(
図2では左側の部分)に嵌合しており、一方の摺動平面8及び他方の摺動平面8’の一方側に接しながら、二条の摺動ガイド9、9’に沿って移動可能となっている。
また、通過型振れ止め7は他方の摺動ガイド9’の一部(
図2では右側の部分)に嵌合しており、他方の摺動平面8’の他方側に接しながら、他方の摺動ガイド9’に沿って移動可能であるとともに、加工対象物1を支持する位置において固定できるようになっている。
そして、通過型振れ止め7を任意の位置で固定できるようにするため、通過型振れ止め7の下部には、ベッド2の側面に設けられているクランプ溝10に係合するクランプ部材13と、クランプ部材13を上下動させるボルト14等からなるクランプ装置が設けられている。
なお、往復台6が接する他方の摺動平面8’の一方側と、通過型振れ止め7が接する他方の摺動平面8’の他方側との間には隙間があるため、往復台6と通過型振れ止め7は互いに干渉することなく、ベッド2の長手方向に自由に移動することができる。
さらに、通過型振れ止め7の下端部には、ベッド2の側面の補助レール11に係合する補助係合部15が設けられている。そのため、通過型振れ止め7をベッド2の長手方向に移動させる際に安定した状態で移動させることができる。
【0016】
図3は通過型振れ止め7の上方支持部16を開いた状態における旋盤の断面図である。
図2、3に示すように、実施例に係る通過型振れ止め7の上部には、加工対象物1の上側に位置させる上方支持部16と下側に位置させる下方支持部17が設けてある。
そして、摺動ガイド9、9’の上方右側部分において、往復台6の上面と下方支持部17の下面との間にも隙間があるため、下方支持部17が刃物台5に向かって張り出しているにもかかわらず、往復台6と下方支持部17が干渉することがない。
また、上方支持部16の左下部にある弧状部分の左端部には、弧状部分からの突出量を調整できる上部支持体18が設けてあり、下方支持部17の左上部にある弧状部分の左端部と上端部には、弧状部分からの突出量を調整できる下部支持体19が設けてある。
さらに、
図3に示すように、上方支持部16は下方支持部17の右上端部に蝶着されているので、切削加工にあたって加工対象物1を旋盤にセットする際には、上方支持部16の左側を持ち上げて開き、加工対象物1をクレーン等で真上から切削加工する位置に配置させ、その一端及び他端をそれぞれ主軸台3及び心押台4で保持させることができる。
その後、上方支持部16を元に戻して固定し、上部支持体18及び下部支持体19の突出量を調整すれば加工対象物1の周囲を3点で均等に押圧することができる。
【0017】
図4は通過型振れ止め7を固定するクランプ装置の動作を説明する図である。
図4(A)は通過型振れ止め7を固定していない状態を示しており、この状態においてはクランプ溝10とクランプ部材13との間に隙間があるので、通過型振れ止め7は他方の摺動ガイド9’に沿って移動することができる。
そして、
図4(A)の状態において、ボルト14を回転させて通過型振れ止め7の下面に設けられているネジ穴20にねじ込むと、クランプ部材13は上方に移動し、
図4(B)に示すように左上端部がクランプ溝10に密接し、通過型振れ止め7は他方の摺動ガイド9’に沿って移動できなくなり固定状態となる。
【0018】
図5は旋盤に加工対象物1をセットする手順を説明する図であり、
図5(A)は加工対象物1を旋盤に搬送する前の状態を示している。そして、次の(手順1)~(手順4)によって、加工対象物1を主軸台3及び心押台4で保持させた後、加工対象物1の長手方向中央付近を通過型振れ止め7の上部支持体18及び下部支持体19で支持させる。
(手順1)
図5(A)に示すように、通過型振れ止め7を切削加工する領域の中央付近に位置させ、ボルト14を締めてベッド2に対して固定する。
(手順2)
図5(B)に示すように、上方支持部16の左側を持ち上げて開き、下方支持部17の左上部にある弧状部分の上方を開放する。
(手順3)加工対象物1をクレーン等で搬送し、ベッド2の真上から下降させて、
図5(C)に示すように、下部支持体19に近接するように配置した後、加工対象物1の一端及び他端をそれぞれ主軸台3及び心押台4で保持させる。
(手順4)
図5(D)に示すように、上方支持部16を元に戻して固定し、上部支持体18及び下部支持体19の突出量を調整して加工対象物1の周囲を3点で均等に押圧する。
【0019】
図6は往復台6を通過型振れ止め7とすれ違わせた後、継続して切削加工するときの様子を示す図であり、
図6(A)は往復台6に搭載されている刃物台5によって通過型振れ止め7の手前側にある加工対象物1に切削加工を施している状態を示している。
図6(A)の状態において、加工対象物1に対する通過型振れ止め7の手前側における切削加工が終了した後、
図6(B)に示すように、往復台6を移動させて通過型振れ止め7とすれ違わせ、往復台6をさらに移動させて通過型振れ止め7の奥側に位置させる。
次に、
図6(A)の状態で切削加工できない通過型振れ止め7の位置付近に対する切削加工を行うため、
図6(C)に示すように通過型振れ止め7を少々手前側に位置させる。
通過型振れ止め7の位置を変更するに際しては、まず、上部支持体18及び下部支持体19の突出量を調整して加工対象物1の表面から離し、ボルト14を緩めクランプ部材13を下方に移動させて固定状態を解除し、通過型振れ止め7を移動させる。その後、ボルト14を締めクランプ部材13を上方に移動させて固定し、上部支持体18及び下部支持体19の突出量を調整して周囲を3点で均等に押圧すれば良い。
そして、
図6(C)の状態で加工対象物1に切削加工を施せば、加工対象物1の全体に対する切削加工が終了する。
このように、往復台6と通過型振れ止め7とをすれ違わせる前と後で、主軸台3及び心押台4による加工対象物1の保持状態は全く変わらず、通過型振れ止め7の位置変更においても、上部支持体18及び下部支持体19の操作と、手前側への移動と固定(ボルト14の操作)を行うだけなので、短時間で往復台6を通過型振れ止め7の奥側に配置させることができ、かつ、加工対象物1と刃物台5との位置関係はほとんど変化しない。
【0020】
実施例の変形例を列記する。
(1)実施例における二条の摺動ガイド9、9’の上面には摺動平面8、8’が設けられていたが、心押台4、往復台6及び通過型振れ止め7がベッド2の長手方向に移動可能であれば平面でなくても良く、例えば、摺動ガイド9、9’の長手方向に平行な凸条を複数有する面でも良い。そのため、請求項1においては「ベッド摺動面」という表現を用いる。
(2)実施例のベッド2は、側面に通過型振れ止め7を案内するためのクランプ溝10を有していたが、クランプ溝10に代えて突条としても良い。
そうした場合、クランプ部材13は突条に係合する凹部を有する部材とする。
(3)実施例のベッド2は、側面に通過型振れ止め7を案内するためのクランプ溝10と補助レール11を有していたが、補助レール11及び補助係合部15を省略してクランプ溝10のみで通過型振れ止め7を案内するようにしても良い。
また、逆にクランプ溝10及びクランプ部材13を省略して補助レール11のみで通過型振れ止め7を案内するとともに、補助レール11に係合する補助係合部15をクランプ部材13のように上下動させ、通過型振れ止め7を任意の位置で固定できるようにしても良い。
なお、この態様は上記(2)の変形例において、補助レール11及び補助係合部15を省略し突条のみで通過型振れ止め7を案内するようにしたものと同様の態様となる。
さらに、補助係合部15を上下動させる代わりに、補助係合部15に補助レール11まで達するネジ穴を設けるとともに、ネジ穴にストッパーネジをねじ込んで通過型振れ止め7が移動できないようにしても良い。要するに、通過型振れ止め7の下部に、クランプ溝10又は突条(補助レール11)に係合し、任意の位置で通過型振れ止め7を固定するためのクランプ装置が設けられていれば良い。
【0021】
(4)実施例に係る通過型振れ止め7の上部には、加工対象物1の上側に位置させる上方支持部16と下側に位置させる下方支持部17が設けられ、上方支持部16は下方支持部17の右上端部に蝶着されていたが、蝶着に限らず上方支持部16を下方支持部17に対して着脱又は移動可能とし、下方支持部17の左上部にある弧状部分の上方を開放することができれば良い。
(5)実施例及び上記(4)の変形例においては、上方支持部16を下方支持部17に対して着脱又は移動可能としたが、上方支持部16を着脱又は移動しなくても加工対象物1をセットできる場合には、上方支持部16と下方支持部17は一体としても良い。
上方支持部16を着脱又は移動せずに加工対象物1のセットする方法としては、心押台4及び往復台6をベッド2の端部に退避させ、加工対象物1をベッド2の横方向から水平移動させて上部支持体18及び下部支持体19に近接するように配置し、加工対象物1を主軸台3及び心押台4で保持させる方法や、主軸台3又は心押台4をベッド2に対して横方向に退避できるようにし、加工対象物1をベッド2の縦方向から水平移動させて上部支持体18及び下部支持体19に近接するように配置し、主軸台3又は心押台4をベッド2上に戻して加工対象物1を主軸台3及び心押台4で保持させる方法等が考えられる。