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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025157961
(43)【公開日】2025-10-16
(54)【発明の名称】追肥管理装置及び水耕栽培システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20251008BHJP
【FI】
A01G31/00 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060344
(22)【出願日】2024-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】北地 一成
(72)【発明者】
【氏名】藤原 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直樹
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA18
2B314MA51
2B314MA52
2B314PA03
2B314PA05
2B314PA17
2B314PA18
2B314PB27
2B314PB37
(57)【要約】
【課題】水耕栽培システム中に流れる肥料成分のうち、一部の肥料成分が低下している場合でも、精度良く肥料成分のバランスを改善できる追肥管理装置を提供する。
【解決手段】濃度管理装置11は、トリガイベント検出部113と、第2測定値取得部114と、第2肥料供給制御部115と、を有する。第2肥料供給制御部115は、トリガイベント検出部113がトリガイベントを検出した場合、検出されたトリガイベントの発生時とその1つ前に発生した前回トリガイベントの発生時とのイベント間隔のうち一部の対象期間内で第2肥料濃度センサ54によって測定された第2肥料の濃度の測定値に基づいて、第2肥料供給制御信号SIG13を生成して、第2肥料供給部40に出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料の溶媒を供給する溶媒供給部と、
前記肥料及び前記溶媒を混合する混合槽と、
前記混合槽から混合液が供給される供給経路及び前記混合槽に排出液を排出する排出経路によって前記混合槽に対して接続されている栽培ベッドと、を有する水耕栽培システムの追肥管理装置であって、
複数の肥料成分を含む第1肥料の前記混合槽への供給に関するトリガイベントを検出するトリガイベント検出部と、
前記第1肥料に含まれる一部の肥料成分を含む第2肥料の前記混合液における濃度を選択的に、所定間隔で測定する第2肥料濃度センサの測定値を取得する測定値取得部と、
前記第2肥料の供給を指示する第2肥料供給制御信号を生成して、前記第2肥料を前記混合槽に供給する第2肥料供給部に出力する第2肥料供給制御部と、
を有し、
前記第2肥料供給制御部は、前記トリガイベント検出部が前記トリガイベントを検出した場合、検出されたトリガイベントの発生時とその1つ前に発生した前回トリガイベントの発生時とのイベント間隔のうち一部の対象期間内で前記第2肥料濃度センサによって測定された前記第2肥料の濃度の前記測定値に基づいて、前記第2肥料供給制御信号を生成して、前記第2肥料供給部に出力する、
追肥管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の追肥管理装置において、
前記第2肥料供給制御部は、前記対象期間内で前記第2肥料濃度センサによって測定された前記第2肥料の濃度の複数の前記測定値の平均に基づいて、前記第2肥料供給制御信号を出力する、
追肥管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の追肥管理装置において、
前記第2肥料供給制御部は、前記イベント間隔のうちの後半の期間を前記対象期間として、前記測定値に基づいて、前記第2肥料供給制御信号を出力する、
追肥管理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の追肥管理装置において、
前記第2肥料供給制御部は、前記第2肥料を追肥しておらず、且つ、連続する複数のイベント間隔のそれぞれの一部を対象期間として、前記測定値に基づいて、前記第2肥料供給制御信号を出力する、
追肥管理装置。
【請求項5】
肥料の溶媒を供給する溶媒供給部と、
前記肥料及び前記溶媒を混合する混合槽と、
前記混合槽から混合液が供給される供給経路及び前記混合槽に排出液を排出する排出経路によって前記混合槽に対して接続されている栽培ベッドと、
を有する水耕栽培システムであって、
請求項1から4のいずれか一つに記載の追肥管理装置と、
前記第2肥料供給部と、
前記第2肥料濃度センサと、
前記第1肥料を前記混合槽に供給する第1肥料供給部と、
複数の肥料成分を含む第1肥料と前記第1肥料に含まれる一部の肥料成分を含む前記第2肥料と前記溶媒とを含む混合液における前記肥料の前記混合槽内における濃度を測定する濃度センサと、
前記溶媒供給部から前記溶媒が供給された場合、前記濃度センサによって測定された前記肥料の濃度の測定値に基づいて、前記第1肥料の前記混合槽への供給を制御する第1肥料供給制御部と、
を有する、
水耕栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培システムにおける肥料の濃度を管理する追肥管理装置及び水耕栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培システムにおいて、EC(Electrical Conductivity)調整、及び、pH調整によって養液の濃度管理を行うことが知られている。EC調整は、例えば、複数の肥料原液を調合した調合肥料の濃度をターゲットに行う。しかしながら、水耕栽培によって栽培する植物には、養液に含まれる成分のうち特定の成分の吸収が早い種類または個体がある。このため、EC調整だけでは、特定の成分が不足することによって、養液成分のバランスが崩れる可能性がある。養液成分のバランスが崩れた場合、植物の収量または品質が低下する可能性がある。
【0003】
養液成分のバランスを保つためには、水耕栽培システムにおける養液全体を入れ替えることも行われる場合がある。しかしながら、養液全体の入れ替えは、作業負担または資源ロスも大きく、さらには、コスト増加にもつながる。
【0004】
栽培する植物に必要な成分を適宜補充することが望まれている。例えば、特許文献1では、選択性イオン電極センサによって、養液中の特定の成分の濃度を定期的に検出した結果に応じて、前記特定の成分を補給する養液栽培装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02-308731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、水耕栽培システムにおいて、給水を行う場合、肥料の濃度が大きく変動する。前記特許文献1に開示されている養液栽培装置では、給水が行われる前提となっていない。このため、前記特許文献1に開示されている養液栽培装置において、給水時の測定値に基づいて補給を行うと、成分の誤差が大きくなる可能性がある。
【0007】
また、選択性イオン電極センサは、測定に時間がかかったり、精度が高くなかったりする。例えば、選択性イオン電極センサにおいて精度を高めるには、校正頻度を上げなければならない場合がある。また、上述のように、水耕栽培システムには、給水、EC調整等のイベントが発生するため、これらのイベントを前提とした養液成分の調整が望まれる。
【0008】
本発明の目的は、水耕栽培システム中に流れる肥料成分のうち、一部の肥料成分が低下している場合でも、精度良く肥料成分のバランスを改善できる追肥管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る追肥管理装置は、肥料の溶媒を供給する溶媒供給部と、前記肥料及び前記溶媒を混合する混合槽と、前記混合槽から混合液が供給される供給経路及び前記混合槽に排出液を排出する排出経路によって前記混合槽に対して接続されている栽培ベッドと、複数の肥料成分を含む第1肥料を前記混合槽に供給する第1肥料供給部と、前記混合槽内の混合液における前記肥料の濃度である第1測定値を測定する濃度センサと、を有する水耕栽培システムの追肥管理装置である。前記追肥管理装置は、複数の肥料成分を含む第1肥料の前記混合槽への供給に関するトリガイベントを検出するトリガイベント検出部と、前記第1肥料に含まれる一部の肥料成分を含む第2肥料の前記混合液における濃度を選択的に、所定間隔で測定する第2肥料濃度センサの測定値を取得する測定値取得部と、前記第2肥料の供給を指示する第2肥料供給制御信号を生成して、前記第2肥料を前記混合槽に供給する第2肥料供給部に出力する第2肥料供給制御部と、を有する。前記第2肥料供給制御部は、前記トリガイベント検出部が前記トリガイベントを検出した場合、検出されたトリガイベントの発生時とその1つ前に発生した前回トリガイベントの発生時とのイベント間隔のうち一部の対象期間内で前記第2肥料濃度センサによって測定された前記第2肥料の濃度の前記測定値に基づいて、前記第2肥料供給制御信号を生成して、前記第2肥料供給部に出力する(第1の構成)。
【0010】
上述の構成では、所定のトリガイベントが発生する間のイベント間隔の期間内に、第1肥料に含まれる一部の肥料成分が低下している場合でも、前記肥料成分を含む第2肥料を追肥することによって、前記肥料成分を補うことができる。また、前記イベント間隔のうちの一部を対象期間とすることにより、特定のタイミングで計測した計測値に基づいた制御に比べて、突発的な誤差の発生を抑制することができる。これにより、水耕栽培システム中に流れる肥料成分のうち、一部の肥料成分が低下している場合でも、肥料成分バランスを改善することができる。
【0011】
第1の構成において、前記第2肥料供給制御部は、前記対象期間内で前記第2肥料濃度センサによって測定された前記第2肥料の濃度の複数の前記測定値の平均に基づいて、前記第2肥料供給制御信号を出力する(第2の構成)。
【0012】
上述の構成では、対象期間内に測定された第2肥料の濃度の測定値の平均に基づいて精度よく第2肥料の濃度を制御できる。
【0013】
前記第1の構成において、前記第2肥料供給制御部は、前記イベント間隔のうちの後半の期間を前記対象期間として、前記測定値に基づいて、前記第2肥料供給制御信号を出力する(第3の構成)。
【0014】
上述の構成では、溶媒または第1肥料の供給の影響を受けにくい期間を対象期間として、第2肥料の濃度を制御できる。これにより、第2肥料の過剰施肥を抑えることができる。
【0015】
前記第1の構成において、前記第2肥料供給制御部は、前記第2肥料を追肥しておらず、且つ、連続する複数のイベント間隔のそれぞれの一部を対象期間として、前記測定値に基づいて、前記第2肥料供給制御信号を出力する(第4の構成)。
【0016】
上述の構成では、第2肥料供給制御部は、第2肥料供給制御信号の出力処理において、第2肥料の供給の影響が少ない複数のイベント間隔における第2肥料の濃度の測定値を参照する。これにより、参照する前記測定値の数を増やすことができる。このため、精度よく第2肥料の濃度を制御できる。
【0017】
本発明の一実施形態に係る水耕栽培システムは、肥料の溶媒を供給する溶媒供給部と、前記肥料及び前記溶媒を混合する混合槽と、前記混合槽から混合液が供給される供給経路及び前記混合槽に排出液を排出する排出経路によって前記混合槽に対して接続されている栽培ベッドと、を有する。前記水耕栽培システムは、第1から第4のいずれか一つの構成に係る追肥管理装置と、前記第2肥料供給部と、前記第2肥料濃度センサと、前記第1肥料を前記混合槽に供給する第1肥料供給部と、複数の肥料成分を含む第1肥料と前記第1肥料に含まれる一部の肥料成分を含む前記第2肥料と前記溶媒とを含む混合液における前記肥料の前記混合槽内における濃度を測定する濃度センサと、前記溶媒供給部から前記溶媒が供給された場合、前記濃度センサによって測定された前記肥料の濃度の測定値に基づいて、前記第1肥料の前記混合槽への供給を制御する第1肥料供給制御部と、を有する。(第5の構成)。
【0018】
上述の構成では、所定のトリガイベントが発生する間のイベント間隔の期間内に、第1肥料に含まれる一部の肥料成分が低下している場合でも、前記肥料成分を含む第2肥料を追肥することによって、前記肥料成分を補うことができる。また、前記イベント間隔のうちの一部を対象期間とすることにより、特定のタイミングで計測した計測値に基づいた制御に比べて、突発的な誤差の発生を抑制することができる。これにより、水耕栽培システム中に流れる肥料成分のうち、一部の肥料成分が低下している場合でも、肥料成分バランスを改善することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態に係る追肥管理装置は、複数の肥料成分を含む第1肥料の前記混合槽への供給に関するトリガイベントを検出するトリガイベント検出部と、前記第1肥料に含まれる一部の肥料成分を含む第2肥料の前記混合液における濃度を選択的に、所定間隔で測定する第2肥料濃度センサの測定値を取得する測定値取得部と、前記第2肥料の供給を指示する第2肥料供給制御信号を生成して、前記第2肥料を前記混合槽に供給する第2肥料供給部に出力する第2肥料供給制御部と、を有する。前記第2肥料供給制御部は、前記トリガイベント検出部が前記トリガイベントを検出した場合、検出されたトリガイベントの発生時とその1つ前に発生した前回トリガイベントの発生時とのイベント間隔のうち一部の対象期間内で前記第2肥料濃度センサによって測定された前記第2肥料の濃度の前記測定値に基づいて、前記第2肥料供給制御信号を生成して、前記第2肥料供給部に出力する。
【0020】
これにより、水耕栽培システム中に流れる肥料成分のうち、一部の肥料成分が低下している場合でも、肥料成分バランスを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態1に係る水耕栽培システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、実施形態1に係る水耕栽培システムが有する濃度管理装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図3図3は、実施形態2に係る水耕栽培システムの概略構成を示す図である。
図4図4は、実施形態2に係る水耕栽培システムが有する濃度管理装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図5図5は、実施形態2に係る濃度管理装置による濃度管理方法の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、濃度管理方法における給水、EC調整、pH調整及び追肥のタイムラインを示す図である。
図7図7は、水位の時間推移を示すグラフである。
図8図8は、肥料全体の濃度の時間推移を示すグラフである。
図9図9は、管理を行わない場合における第2肥料の濃度の時間推移を示すグラフである。
図10図10は、管理を行う場合における第2肥料の濃度の時間推移を示すグラフである。
図11図11は、実施形態2に係る濃度管理装置の変形例における給水、EC調整、pH調整及び追肥のタイムラインを示す図である。
図12図12は、実施形態3に係る水耕栽培システムの概略構成を示す図である。
図13図13は、実施形態3に係る水耕栽培システムが有する濃度管理装置及び追肥管理装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0023】
<実施形態1>
(全体構成)
図1は、実施形態1に係る水耕栽培システム1の概略構成を示す図である。水耕栽培システム1は、植物を水耕栽培によって栽培するシステムである。水耕栽培システム1は、水供給部(溶媒供給部)20と、混合槽22と、栽培ベッド90と、第1肥料供給部30と、第2肥料供給部40と、レベルセンサ51と、濃度センサ52と、第2肥料濃度センサ54と、濃度管理装置(追肥管理装置)11と、撹拌装置81と、を有する。
【0024】
水供給部20は、原水槽21と、水供給ポンプP21とを有する。原水槽21は、肥料の溶媒としての水を貯留している。水供給ポンプP21は原水槽21に貯留されている水(溶媒)を、混合槽22に供給する。
【0025】
混合槽22は、肥料及び水を混合する槽である。
【0026】
栽培ベッド90は、植物を栽培する栽培槽と、栽培槽に流す養液の給液管と、栽培槽から養液を排出する排出管とを含む。栽培ベッド90は、養液の供給経路91及び排出経路92によって混合槽22に対して接続されている。供給経路91は、養液供給ポンプP22と、流量計F22と、制御弁B90とを含む。養液供給ポンプP22は混合槽22に貯留されている養液を、栽培ベッド90に供給する。流量計F22は、供給経路91における養液の流量を測定し、測定値を濃度管理装置11に送信する。制御弁B90は、濃度管理装置11から出力される制御信号に応じて開閉する。制御弁B90は、例えば、電磁弁により構成することができる。排出経路92は、第1排液管921と、排液槽23と、第2排液管922と、排液ポンプP23とを有する。
【0027】
第1排液管921は、前記排出管に一端が接続されているとともに、他端が排液槽23に配置されている。栽培ベッド90を通過した養液は、第1排液管921によって排液槽23に排出される。
【0028】
排液槽23は、栽培ベッド90から排出された養液を一時的に貯留する。
【0029】
第2排液管922は、一端が排液槽23に配置されているとともに、他端が混合槽22に配置されている。
【0030】
排液ポンプP23は、排液槽23に貯留されている養液を混合槽22に還流させる。
【0031】
第1肥料供給部30は、第1肥料貯留槽31,32と、第1肥料ポンプP31,P32とを有する。第1肥料貯留槽31,32は、互いに異なる肥料成分の肥料原液を貯留している。第1肥料貯留槽31は、窒素N(NO、NH)、リンP(PO)、カリウムK、カルシウムCa、マグネシウムMg、または、硫黄S(SO)等のうち、少なくとも1つの成分である第1肥料成分を含む肥料原液を貯留している。第1肥料貯留槽32は、窒素N(NO、NH)、リンP(PO)、カリウムK、カルシウムCa、マグネシウムMg、または、硫黄S(SO)等のうち少なくとも1つの成分を含み、前記第1肥料成分とは異なるバランスで配合された第2肥料成分を含む肥料原液を貯留している。また、第1肥料成分または第2肥料成分の少なくとも一方は、鉄Fe、マンガンMn、ホウ素B、亜鉛Zn、モリブデンMo、銅Cu等の微量要素のうち少なくとも1つの要素を含んでいてもよい。第1肥料ポンプP31は、第1肥料貯留槽31に貯留されている肥料原液を混合槽22に供給する。第1肥料ポンプP32は、第1肥料貯留槽32に貯留されている肥料原液を混合槽22に供給する。第1肥料供給部30によって、第1肥料成分及び第2肥料成分が混合槽22に供給される。言い換えれば、第1肥料貯留槽31に貯留されている第1肥料成分を含む肥料原液と、第1肥料貯留槽32に貯留されている第2肥料成分を含む肥料原液とが混合槽22において所定の割合で調合される。第1肥料供給部30によって供給される液肥を、以下では「第1肥料」と称する。第1肥料成分は、複数の肥料成分を含む。
【0032】
第2肥料供給部40は、第2肥料貯留槽41と、第2肥料ポンプP41とを有する。第2肥料貯留槽41には、第1肥料に含まれる一部の肥料成分を含む液肥が貯留されている。第2肥料貯留槽41には、第1肥料の第1肥料成分及び第2肥料成分のうちの一部の成分を含む第2肥料が貯留されている。第2肥料は、例えば、単肥である。第2肥料貯留槽41に貯留される第2肥料としては、例えば、第1肥料に含まれる複数の肥料成分のうち、窒素N(NO、NH)、リンP(PO)、カリウムK、カルシウムCa、マグネシウムMg、または、硫黄S(SO)等の1つの成分を含む肥料が挙げられる。第2肥料は、例えば、第1肥料に含まれる肥料成分のうち、栽培ベッド90で栽培されている植物による吸収が早い成分を含む。ただし、KNOなど成分が結合された材料を使う場合や、減少する成分が複数ある場合には成分を組み合わせてもよい。肥料として第2肥料ポンプP41は、第2肥料貯留槽41に貯留されている液肥を混合槽22に供給する。
【0033】
レベルセンサ51は、混合槽22内の混合液の水位を計測する。
【0034】
濃度センサ52は、混合槽22内の混合液における肥料の濃度を測定する。濃度センサ52は、例えば、電気伝導率に基づいて肥料の濃度を測定するECセンサによって構成できる。
【0035】
第2肥料濃度センサ54は、混合槽22内の混合液における第2肥料の濃度を、選択的に、所定間隔で測定する。第2肥料濃度センサ54は、例えば、選択性イオン電極センサによって構成できる。
【0036】
濃度管理装置11は、水耕栽培システム1の各種制御を行う。例えば、濃度管理装置11は、各ポンプに制御信号を出力することによって各ポンプを開閉制御する。また、濃度管理装置11は、撹拌装置81のモータM81の駆動を制御する。また、濃度管理装置11は、レベルセンサ51、濃度センサ52、第2肥料濃度センサ54及び流量計F22の測定データを定期的に取得し、図示しない記憶部に記憶する。濃度管理装置11の詳細については後述する。
【0037】
撹拌装置81は、混合槽22内の肥料及び溶媒を混合する。撹拌装置81は、例えば、モータM81の駆動力によって駆動する撹拌翼を有する。
【0038】
(濃度管理装置の詳細)
図2は、実施形態1に係る水耕栽培システム1が有する濃度管理装置11の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0039】
濃度管理装置11は、水供給制御部111と、第1肥料供給制御部112と、トリガイベント検出部113と、第2測定値取得部(測定値取得部)114と、第2肥料供給制御部115とを有する。
【0040】
水供給制御部111は、レベルセンサ51が測定した水位が、所定の水位になった場合、水の供給を指示する水供給制御信号SIG11を生成し、水供給部20に出力する。具体的には、水供給制御部111は、水供給制御信号SIG11を、水供給ポンプP21に出力する。
【0041】
第1肥料供給制御部112は、水供給部20から水が供給された場合、濃度センサ52によって測定された前記肥料の濃度の第1測定値(測定値)に基づいて、前記第1肥料の供給を指示する第1肥料供給制御信号SIG12を生成し、第1肥料供給部30に出力する。具体的には、第1肥料供給制御部112は、第1肥料ポンプP31,P32に第1肥料供給制御信号SIG12を出力する。
【0042】
トリガイベント検出部113は、前記第1肥料の混合槽22への供給に関するトリガイベントを検出する。前記トリガイベントは、例えば、水供給制御部111による給水である。
【0043】
第2測定値取得部114は、第2肥料濃度センサ54の第2測定値(第2肥料の濃度の測定値)を取得する。第2測定値取得部114は、取得した第2測定値を第2肥料供給制御部115に出力する。
【0044】
第2肥料供給制御部115は、トリガイベント検出部113が前記トリガイベントを検出した場合、検出されたトリガイベントの発生時と、その1つ前に発生した前回トリガイベントの発生時とのイベント間隔のうち一部の対象期間内で第2肥料濃度センサ54によって測定された前記第2肥料の濃度の第2測定値に基づいて、前記第2肥料の供給を指示する第2肥料供給制御信号SIG13を生成し、第2肥料供給部40に出力する。具体的には、第2肥料供給制御部115は、第2肥料供給制御信号SIG13を、第2肥料ポンプP41に出力する。
【0045】
上述したように、水耕栽培システム1の濃度管理装置11は、追肥管理装置としての機能を有する。すなわち、濃度管理装置11は、トリガイベント検出部113と、第2測定値取得部114と、第2肥料供給制御部115と、を有する。上述の構成では、所定のトリガイベントが発生する間のイベント間隔の期間内に、第1肥料に含まれる一部の肥料成分が低下している場合でも、前記肥料成分を含む第2肥料を追肥することによって、前記肥料成分を補うことができる。また、前記イベント間隔のうちの一部を対象期間とすることにより、特定のタイミングで計測した計測値に基づいた制御に比べて、突発的な誤差の発生を抑制することができる。これにより、肥料成分バランスを改善することができる。
【0046】
<実施形態2>
(全体構成)
図3は、実施形態2に係る水耕栽培システム2の概略構成を示す図である。実施形態2に係る水耕栽培システム2は、pH調整を行う点で、実施形態1に係る水耕栽培システム1と異なる。以下では、実施形態1と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
水耕栽培システム2は、水供給部(溶媒供給部)20と、混合槽22と、栽培ベッド90と、第1肥料供給部30と、第2肥料供給部40と、pH調整剤供給部60と、レベルセンサ51と、濃度センサ52と、第2肥料濃度センサ54と、pHセンサ55と、濃度管理装置(追肥管理装置)12と、撹拌装置81と、を有する。
【0048】
pH調整剤供給部60は、pHアップ剤貯留槽61と、pHアップ剤ポンプP61と、pHダウン剤貯留槽62と、pHダウン剤ポンプP62とを有する。pHアップ剤貯留槽61は、pHアップ剤を貯留している。pHアップ剤ポンプP61は、pHアップ剤貯留槽61に貯留されているpHアップ剤を混合槽22に供給する。pHアップ剤には、水酸化カリウム等、pHを上げる公知の薬剤を使用できる。pHダウン剤貯留槽62は、pHダウン剤を貯留している。pHダウン剤には、例えば、正リン酸等、pHを下げる公知の薬剤を使用できる。pHダウン剤ポンプP62は、pHダウン剤貯留槽62に貯留されているpHダウン剤を混合槽22に供給する。
【0049】
pHセンサ55は、混合槽22内の混合液におけるpHを測定する。pHセンサには、公知のセンサを用いることができる。
【0050】
(濃度管理装置の詳細)
図4は、実施形態2に係る水耕栽培システム2が有する濃度管理装置12の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0051】
濃度管理装置12は、水供給制御部111と、第1肥料供給制御部112と、pH調整剤供給制御部121と、トリガイベント検出部113と、第2測定値取得部114と、第2肥料供給制御部115とを有する。
【0052】
pH調整剤供給制御部121は、pHセンサ55によって測定されたpH測定値に基づいて、pH調整剤の供給を指示するpH調整剤供給制御信号SIG21を生成し、pH調整剤供給部60に出力する。具体的には、pH測定値が目標値以上である場合、pH調整剤供給制御部121は、pHダウン剤ポンプP62にpH調整剤供給制御信号SIG21を出力する。また、pH測定値が目標値未満である場合、pH調整剤供給制御部121は、pHアップ剤ポンプP61にpH調整剤供給制御信号SIG21を出力する。
【0053】
pH調整剤供給制御部121によるpH値の調整によって、肥料の濃度が変化する場合にも対応できる。これにより、pH値の調整を行いつつ、第2肥料の濃度をより精度よく管理できる。
【0054】
(濃度管理装置による濃度管理方法)
図3及び図4に加えて、図5から図10を参照して、濃度管理装置12による濃度管理方法S1について説明する。図5は、実施形態2に係る濃度管理装置12による濃度管理方法S1の流れを示すフローチャートである。図6は、濃度管理方法S1における給水、EC調整、pH調整及び追肥のタイムラインを示す図である。なお、図6から図10の各図の「T」は、ある時の給水とその次の給水とのイベント間隔の単位を示している。言い換えれば、「T]は、給水の周期を表している。また、図6のタイムラインに示す目盛りは、例えば、各種の測定を行う周期である測定期間である。図6では、例示的に、1周期(=1T)が12の測定期間を含む。実際の給水のタイミングは、水位に基づくが、説明の便宜上、おおむね1Tごとに行われることを前提とする。すなわち、測定期間は時間間隔に基づく周期であるが、実際の給水の周期は水位に基づく周期であるため、測定期間の周期と、実際の給水の周期とは非同期である。このため、厳密には、測定のタイミングと給水のタイミングとにズレが生じる。このズレによる測定値の誤差は、無視可能な誤差の範囲とみなすことができる。
【0055】
以下に説明する濃度管理方法S1は、説明のための前提として、混合槽22の満水状態から開始する(図6から図10に示す「0T」の開始時刻のタイミング)。図7では、水位が満水状態に対してどの程度の割合であるかに応じて0から1までの指数値によって水位を表している。図7では、水位が満水状態の場合、水位指数は「1」である。
【0056】
濃度管理方法S1の処理を開始すると(START)、水供給制御部111は、給水の要否を判定する。図7は、水位の時間推移を示すグラフである。水供給制御部111は、レベルセンサ51によって計測される水位が、所定の給水水位Th1以上である場合、次の測定期間において給水の要否の判定をさらに継続する(S11において「NO」)。水供給制御部111は、レベルセンサ51によって計測される水位が、所定の給水水位Th1未満である場合(S11において「YES」)、水供給制御部111は、水供給部20を制御して給水を行う(S12)。図7の1Tの位置に示すように、水供給制御部111は、水位が満水になるまで給水制御を行う。
【0057】
次に、第1肥料供給制御部112が、第1肥料供給部30を制御して第1肥料を供給するとともに、pH調整剤供給制御部121が、pH調整剤供給部60を制御してpH調整剤を供給する(S13)。図8は、肥料全体の濃度の時間推移を示すグラフである。図8では、混合槽22の混合液中における肥料の濃度の目標値を指数化して示している。「1」が目標となる濃度指数の値である。濃度値は、濃度センサ52の第1測定値に基づいて調整される。第1測定値は、上述の通り、例えば、EC値である。図8に示すように、給水直後には、肥料の濃度が希釈されている。そこで、第1肥料供給制御部112は、第1肥料供給部30を制御することによって、EC調整を行う。EC調整では、目標となる第1肥料の濃度指数である「1」に対応するEC値となるように第1肥料が、第1肥料貯留槽31,32から投入される。これにより、図8に示すように、濃度指数が目標値「1」に調整される。なお、前述の図7及び図8では、グラフを簡略化して示しているが、実際には、植物による水分または肥料の吸収量が変動したり、調整に時間がかかったりするため、直線的に変化しない場合もある。また、pHについても、pH調整剤供給制御部121によって、目標値に調整される。
【0058】
次に、トリガイベント検出部113が前記第1肥料の供給に関するトリガイベントを検出したことに応じて、第2肥料の供給の要否を判断するために、第2肥料供給制御部115が、第2肥料の濃度を計算する(S14)。図9は、管理を行わない場合における第2肥料の濃度の時間推移を示すグラフである。図10は、管理を行う場合における第2肥料の濃度の時間推移を示すグラフである。なお、図9及び図10では、第2肥料の濃度の目標値を指数化して示している。「1」が目標となる濃度指数の値である。上述のように第1肥料の投入によってEC調整だけを行った場合、図9に示すように、第2肥料の濃度が減少することがある。なお、詳しくは説明しないが、上述の通りEC調整を行う場合、第2肥料の濃度が減少した分は、別の成分の割合が増加しているといえる。
【0059】
第2肥料の濃度は、植物が第2肥料に含まれる成分を吸収することによって減少する。このため、図9に示す例では、第2肥料の濃度は、目標値「1」に対して、時間の経過とともに、より乖離する。実際は、給水、EC調整またはpH調整が行われた場合、これらによる調整が循環系にいきわたるためには、養液が循環系を少なくとも1回巡回する程度以上の時間を要する。したがって給水の周期を考慮せずに濃度の測定データを使って平均すると測定誤差が大きくなる。なお、循環系とは、例えば、混合槽22と、供給経路91と、排出経路92と、栽培ベッド90とから構成される閉じた養液の経路のことを意味する。
【0060】
そこで、第2肥料供給制御部115は、以下のように対象期間を抽出し、第2肥料の追肥制御を行う。まず、第2肥料供給制御部115は、第2肥料の供給の要否を判断するために、例えば、検出されたトリガイベントの発生時と、その1つ前に発生した前回トリガイベントの発生時(0T)とのイベント間隔のうち一部の対象期間において第2肥料濃度センサ54によって測定された前記第2肥料の濃度の第2測定値の平均値を求める。図6に示す例では、前記対象期間は、トリガイベントの発生時(=1Tの開始時刻)から前の6つの測定期間DT1である。
【0061】
第2肥料供給制御部115は、第2肥料の濃度の第2測定値の前記平均値に基づいて、第2肥料の供給の要否を判定する(S15)。第2測定値の前記平均値が所定の閾値Th2以上である場合(S15において「NO」、図10も参照)、次の給水を待ち受ける(S11に戻る)。なお、S15では、閾値Th2は、目標値(=1)に一致していてもよい。第2測定値の前記平均値が、閾値Th2よりも低い場合(S15において「YES」)、第2肥料供給制御部115は、例えば、以下に説明するとおり、第2肥料の追肥量Vfを算出する(S16)。
【0062】
まず、式(1)に従って追肥濃度Caaを設定する。
Caa=2・(Ctg-Cm) ・・・ (1)
上述の式(1)及び以下に説明する式(2)及び(3)における記号の意味及び単位は以下の通りである。
目標濃度 Ctg (ppm)
追肥濃度 Caa (ppm)
測定値(平均濃度) Cm (ppm)
追肥量(容量) Vf (L)
養液容量 Vsol (L)
追肥原液濃度 Cund (ppm)
なお、上述の式(1)において「2倍」しているのは、追肥のタイミングが追肥量Vfの算出時よりも未来にあるので、その追肥時までにさらに成分が減少していることを予め織り込むためである。
【0063】
追肥後の養液全体の濃度は以下の式(2)に示す通り表すことができる。なお、以下では、説明の便宜上、ppm≒mg/Lとみなして計算している。
追肥後の濃度 = (Cm・Vsol + Cund・Vf)/(Vsol + Vf) = Cm+Caa ・・・ (2)
式(2)を追肥量Vfについて整理すると以下の式(3)を得る。
Vf=Vsol・Caa/(Cund-Cm-Caa) ・・・ (3)
次に、第2肥料供給制御部115は、第2肥料の追肥時刻まで待機する(S17)。追肥は、図6の第3周期2Tの開始時刻の位置に示す次の給水までに行う。例えば、追肥時刻は、以下に示す(A1)または(A2)の通り決定することができる。
(A1)処理開始における第1周期0Tの開始時刻と、対象期間の6つの測定期間DT1の中心時刻との間を時間t11とする。次の第2周期1Tの開始時刻からt11経過した時刻を追肥時刻t12とする(図6参照)。
(A2)満水水位から給水水位Th1(図7参照)の範囲の所定の水位になった時刻を追肥時刻とする。なお、給水水位Th1は、満水水位の1/4以下であってもよい。また、前記所定の水位は、例えば、水位が満水水位の1/4となる値とすることができる。
【0064】
現在時刻が、上述の(A1)または(A2)によって決定された追肥時刻となった場合(S17において「YES」)、第2肥料供給制御部115は、第2肥料供給部40を制御して、算出した追肥量の第2肥料を供給する(S18)。図10に示すように、第2周期1Tにおいて追肥が行われることで、第2肥料の濃度を目標値である「1」まで増加させることができる。
【0065】
処理は、再度、次の給水を待ち受ける(S11に戻る)。
【0066】
以上に説明したように、第2肥料供給制御部115は、前記イベント間隔のうちの後半の期間を前記対象期間として、前記第2測定値に基づいて、第2肥料供給制御信号SIG13を出力する。このため、給水、第1肥料によるEC調整またはpH調整の供給の影響を受けにくい期間を対象期間として、第2肥料の濃度を制御できる。これにより、第2肥料の過剰施肥を抑えることができる。
【0067】
また、第2肥料供給制御部115は、前記対象期間内で第2肥料濃度センサ54によって測定された前記第2肥料の濃度の複数の前記第2測定値の平均に基づいて、第2肥料供給制御信号SIG13を出力する。
【0068】
養液の循環に伴って養液は均一化されるため、前記イベント間隔のうちの後半の期間には均一化が進む。養液の均一化が進んだ前記イベント間隔の後半に位置する複数の測定期間において測定を行って平均値を求めることで、濃度管理の精度を向上させることができる。よって、精度よく第2肥料の濃度を制御できる。また、第2肥料濃度センサ54を構成する選択性イオン電極センサを頻繁に校正しなくても、濃度管理の精度を保つことができる。
【0069】
(変形例)
図4に加えて、図11を参照して、実施形態2の変形例を説明する。図11は、実施形態2に係る濃度管理装置12の変形例における給水、EC調整、pH調整及び追肥のタイムラインを示す図である。
【0070】
図11に示すように、第2肥料供給制御部115は、前記第2肥料を追肥しておらず、且つ、連続する複数のイベント間隔のそれぞれの一部を対象期間として、前記第2測定値に基づいて、第2肥料供給制御信号SIG13を出力してもよい。例えば、第2周期1T及び第3周期2Tでは、追肥を行わなかった場合、第4周期3Tの給水時に、第2肥料供給制御部115は、第1周期0T、第2周期1T及び第3周期2Tのそれぞれの一部を対象期間として、前記対象期間の第2測定値に基づいて追肥量を算出する。なお、図11では、給水、EC調整及びpH調整を「給水等」と表している。
【0071】
より詳細には、第2肥料供給制御部115は、トリガイベントである第4周期の給水の発生時に、図11に示す第1周期0Tの第1測定期間DT11、第2周期1Tの第2測定期間DT12及び第3周期2Tの第3測定期間DT13において測定された第2測定値の平均値を算出する。第1測定期間DT11、第2測定期間DT12及び第3測定期間DT13は、例えば、それぞれの周期の後半である。第4周期3Tでは、第2測定値の平均値は所定の閾値Th2を下回っているので、第2肥料供給制御部115は、上述したように追肥量及び追肥時刻を決定する。第2肥料供給制御部115は、第4周期3Tにおいて追肥を行う。以後、第2肥料供給制御部115は、第5周期4T、第6周期5T及び第7周期6Tの測定期間DT21、DT22及びDT23の第2測定値の平均値に基づいて、第8周期7Tにおける追肥を決定する。第9周期8T以降も同様である。
【0072】
上述の構成では、第2肥料供給制御部115は、第2肥料供給制御信号SIG13の出力処理において、第2肥料の供給の影響が少ない複数のイベント間隔における第2測定値を使用する。平均値の算出に使用する測定値の数を増やすことができる。このため、精度よく第2肥料の濃度を制御できる。例えば、上述した測定値の誤差をより小さくするには、必要な精度に応じて、平均値の算出に使用する測定値の数を増やせばよい。
【0073】
<実施形態3>
(全体構成)
図12は、実施形態3に係る水耕栽培システム3の概略構成を示す図である。図13は、実施形態3に係る水耕栽培システム3が有する濃度管理装置13及び追肥管理装置14の概略構成を示す機能ブロック図である。実施形態3に係る水耕栽培システム3は、濃度管理装置13とは別に追肥管理装置14を有する点で、実施形態2に係る水耕栽培システム2と異なる。以下では、実施形態2と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態2と異なる部分についてのみ説明する。
【0074】
水耕栽培システム3は、水供給部20と、混合槽22と、栽培ベッド90と、第1肥料供給部30と、第2肥料供給部40と、pH調整剤供給部60と、レベルセンサ51と、濃度センサ52と、第2肥料濃度センサ54と、pHセンサ55と、濃度管理装置13と、追肥管理装置14と、撹拌装置81と、を有する。
【0075】
濃度管理装置13は、水耕栽培システム3において水供給制御、第1肥料供給制御及びph調整剤供給制御を行う。濃度管理装置13は、水供給制御部111と、第1肥料供給制御部112と、pH調整剤供給制御部121と、を有する。
【0076】
追肥管理装置14は、第2肥料の追肥を制御する。追肥管理装置14は、レベルセンサ51、濃度センサ52、第2肥料濃度センサ54及び流量計F22の測定データを定期的に取得し、図示しない記憶部に記憶してもよい。追肥管理装置14は、ネットワーク通信によって、濃度管理装置13から各種測定データを取得してもよい。追肥管理装置14は、トリガイベント検出部141と、第2測定値取得部142と、第2肥料供給制御部143とを有する。
【0077】
トリガイベント検出部141は、前記第1肥料の供給に関するトリガイベントを検出する。トリガイベント検出部141は、例えば、濃度管理装置13から給水を行った旨の通知を受信することによって、前記トリガイベントを検出してもよい。また、トリガイベント検出部141は、レベルセンサ51から、直接、水位の測定データを取得することによって、前記トリガイベントを検出してもよい。
【0078】
第2測定値取得部142は、第2肥料濃度センサ54の第2測定値を取得する。第2測定値取得部142は、取得した第2測定値を第2肥料供給制御部143に出力する。
【0079】
第2肥料供給制御部143は、第2測定値取得部142が取得した第2測定値に基づいて、第2肥料供給制御信号SIG13を生成し、第2肥料ポンプP41に出力する。
【0080】
上述の構成では、濃度管理装置13よって水供給制御、第1肥料供給制御及びph調整剤供給制御を行う水耕栽培システム3に追肥管理装置14を追加することにより、後付けで水耕栽培システム3に追肥制御機能を追加することができる。
【0081】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0082】
前記各実施形態では、特に説明しなかったが、追肥管理装置としての濃度管理装置は、水耕栽培システムの専用の制御装置であってもよいし、サーバ装置、PC(Personal Computer)端末、又は、タブレット端末等であってもよい。濃度管理装置は、演算装置及び記憶装置を有していてもよく、濃度管理装置における各種機能は、プログラムによってソフトウェア的に実現されていてもよい。また、濃度管理装置における各種機能は、専用の回路によってハードウェア的に実現されていてもよい。水耕栽培システムに含まれる各構成要素は、互いに、電気的に接続されていてもよいし、有線又は無線の通信ネットワークによって通信可能に接続されていてもよい。
【0083】
前記各実施形態では、栽培ベッド90は、植物を栽培する栽培槽を含む。しかしながら、栽培ベッドは、植物を栽培する培地を含んでいてもよい。
【0084】
前記各実施形態では、特に説明しなかったが、図6等に示すイベント間隔の1周期(=1T)は、例えば、24時間であってもよいし、12時間であってもよいし、その他の時間であってもよい。また、前記1周期は、12個の測定期間に分割されている。測定期間は、2時間であってもよいし、0.5時間であってもよいし、その他の時間であってもよい。また、前記実施形態2では、対象期間とする測定期間の数は、6である。しかしながら、測定期間の数は、1から5、または、7以上であってもよい。
【0085】
前記各実施形態では、特に説明しなかったが、排出経路は、排出された養液の殺菌を行う殺菌装置を含んでいてもよい。殺菌装置は、第2排液管に位置していてもよい。殺菌装置は、紫外線を照射して殺菌を行う機能を有していてもよい。濃度管理装置は、殺菌装置における紫外線の照射を制御してもよい。また、排出経路は、排出された養液をろ過するろ過装置を有していてもよい。
【0086】
前記各実施形態では、第1肥料供給部30と、第2肥料供給部40とは、液肥を供給する。しかしながら、第1肥料供給部と、第2肥料供給部とは、固体または粉体の肥料を供給してもよい。
【0087】
前記各実施形態では、第1肥料供給部30の第1肥料貯留槽32に貯留されている肥料原液の第2肥料成分は、第1肥料貯留槽31に貯留されている肥料原液の前記第1肥料成分とは配合バランスが異なる。しかしながら、前記第1肥料成分の配合バランスと前記第2肥料成分の配合バランスとは、一致していてもよい。すなわち、2つの第1肥料貯留槽は、互いに同じ成分の肥料原液を貯留していてもよい。
【0088】
前記各実施形態では、前記トリガイベントは、給水である。しかしながら、前記トリガイベントは、第1肥料の供給によるEC調整であってもよいし、pH調整であってもよい。
【0089】
前記各実施形態では、第1肥料供給部30は、2つの貯留槽である第1肥料貯留槽31,32を有する。しかしながら、第1肥料供給部は単一の貯留槽に複数の成分の肥料を貯留していてもよい。
【0090】
前記各実施形態では、第2肥料供給制御部115は、イベント間隔のうち一部の対象期間において第2肥料濃度センサ54によって測定された前記第2肥料の濃度の第2測定値に基づいて追肥を決定する。しかしながら、第2肥料供給制御部は、給水、EC調整及びpH調整が実施されていないタイミングまたは前記タイミングから所定期間が経過してから測定された第2測定値を抽出してもよい。第2肥料供給制御部は、給水、EC調整及びpH調整が実施されていないタイミングを、濃度管理装置が制御を行っているか否かを検出して判断してもよい。第2肥料供給制御部は、各種ポンプの制御信号の出力を検出してもよい。例えば、第2肥料供給制御部は、濃度管理装置が水供給制御信号、第1肥料供給制御信号、第2肥料供給制御信号またはpH調整剤供給制御信号を出力しているかどうかを検出してもよい。第2肥料供給制御部は、流量計によって計測される養液の流量に基づいて濃度管理装置が制御を行っているか否かを判断してもよい。第2肥料供給制御部は、制御弁の開閉に基づいて、濃度管理装置が制御を行っているか否かを判断してもよい。
【0091】
前記各実施形態では、第2肥料は、例えば、第1肥料に含まれる複数の肥料成分のうち、所定の1つの成分を含む単肥である。しかしながら、減少する成分が複数ある場合には減少する複数の成分にそれぞれ対応する複数の単肥を組み合わせた混合物を第2肥料として第2肥料貯留槽に貯留してもよい。第2肥料供給制御部は、前記複数の成分のうち、最も減少する成分に対応する単肥の濃度に基づいて、前記複数の単肥の組み合わせの第2肥料を追肥してもよい。すなわち、第2肥料供給制御部は、前記複数の成分のうち、最も減少する成分に対応する単肥を追肥したことに連動して、残りの成分に対応する単肥を追肥してもよい。なお、水耕栽培システムは、それぞれが前記単肥を個別に貯留する複数の第2肥料貯留槽を有していてもよい。水耕栽培システムは、複数の成分それぞれに対応する濃度を計測するセンサを有していてもよい。この場合、第2肥料供給制御部は、前記センサの各濃度の計測値に基づいて、対応する単肥の追肥制御をそれぞれ行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、水耕栽培システムにおける肥料の濃度を管理する追肥管理装置及び水耕栽培システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1、2、3 水耕栽培システム
11、12、13 濃度管理装置
14 追肥管理装置
20 水供給部
21 原水槽
22 混合槽
23 排液槽
30 第1肥料供給部
31、32 第1肥料貯留槽
40 第2肥料供給部
41 第2肥料貯留槽
51 レベルセンサ
52 濃度センサ
54 第2肥料濃度センサ
55 pHセンサ
60 pH調整剤供給部
61 pHアップ剤貯留槽
62 pHダウン剤貯留槽
81 撹拌装置
90 栽培ベッド
91 供給経路
92 排出経路
111 水供給制御部
112 第1肥料供給制御部
113、141 トリガイベント検出部
114、142 第2測定値取得部
115、143 第2肥料供給制御部
121 pH調整剤供給制御部
921 第1排液管
922 第2排液管
B90 制御弁
F22 流量計
M81 モータ
P21 水供給ポンプ
P22 養液供給ポンプ
P23 排液ポンプ
P31、P32 第1肥料ポンプ
P41 第2肥料ポンプ
P61 pHアップ剤ポンプ
P62 pHダウン剤ポンプ
SIG11 水供給制御信号
SIG12 第1肥料供給制御信号
SIG13 第2肥料供給制御信号
SIG21 pH調整剤供給制御信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13