IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナントクエスト インコーポレイテッドの特許一覧

特開2025-15816臍帯血からのCIK NKT細胞の作製方法
<>
  • 特開-臍帯血からのCIK  NKT細胞の作製方法 図1
  • 特開-臍帯血からのCIK  NKT細胞の作製方法 図2
  • 特開-臍帯血からのCIK  NKT細胞の作製方法 図3
  • 特開-臍帯血からのCIK  NKT細胞の作製方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015816
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】臍帯血からのCIK NKT細胞の作製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20250123BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20250123BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 35/51 20150101ALI20250123BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250123BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20250123BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20250123BHJP
   C07K 14/55 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
C12N5/0783
C07K14/54
C12N5/10
A61K35/51
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P31/12
A61P35/02
A61P35/00
C07K16/28
C07K19/00
C07K14/55
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024202837
(22)【出願日】2024-11-21
(62)【分割の表示】P 2022172004の分割
【原出願日】2019-07-01
(31)【優先権主張番号】62/696,131
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516104043
【氏名又は名称】イミュニティーバイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ダッガール ロヒット
(72)【発明者】
【氏名】シンハ ランジート
(57)【要約】
【課題】α-ガラクトシルセラミド(Gal-Cer)による活性化が不要である、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)療法を提供する。
【解決手段】Gal-Cerの非存在下で活性化され得るCIK NKT細胞が提供される。いくつかの態様においては、CIK NKT細胞集団中の細胞の50%超がCD56およびCD3を発現し、該集団中の細胞の10%未満がVa24を発現する。該集団に由来する複数のCIK NKT細胞を含む組成物およびキットもまた提供される。CIK NKT細胞を生成する方法、およびがんを処置するために該細胞を使用する方法もまた提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集団中の細胞の50%超がCD56およびCD3を発現し、集団中の細胞の10%未満がVa24を発現する、CIK NKT細胞の集団。
【請求項2】
CIK NKT細胞が、α-ガラクトシルセラミド (Gal-Cer) の非存在下で標的細胞を死滅させることができる、請求項1に記載のCIK NKT細胞の集団。
【請求項3】
標的細胞が、がん細胞である、請求項1に記載のCIK NKT細胞の集団。
【請求項4】
がん細胞株が、骨髄性白血病細胞、髄芽腫細胞、および単核球細胞からなる群より選択される、請求項1に記載のCIK NKT細胞の集団。
【請求項5】
がん細胞が、K562細胞、Daudi細胞、DAOY細胞、およびTHP-1細胞からなる群より選択される、請求項3に記載のCIK NKT細胞の集団。
【請求項6】
CIK NKT細胞が、1.0~10.0のEC50で、複数の標的細胞を死滅させる、請求項2に記載のCIK NKT細胞の集団。
【請求項7】
前記CIK NKT細胞が、Gal-Cerの存在下でCIK NKT細胞が標的細胞を死滅させる際のEC50の90%以上かつ110%以下であるEC50で、標的細胞を死滅させることができる、請求項6に記載のCIK NKT細胞の集団。
【請求項8】
請求項1のいずれか一項に記載のCIK NKT細胞の集団に由来する複数のCIK NKT細胞と、生理学的に許容される賦形剤とを含む、組成物。
【請求項9】
請求項1のいずれか一項に記載のCIK NKT細胞の集団に由来する複数のCIK NKT細胞を含む、がんを処置するためのキットであって、容器、および/または、キットががんを処置するためのものであることを示すラベルをさらに含む、前記キット。
【請求項10】
臍帯血試料からCIK NKT細胞を濃縮する方法であって、以下の段階を含む、方法:
臍帯血試料から単核細胞を単離する段階;ならびに
単離された単核細胞を、IL-7、ALT-803またはIL-15、FLT3リガンド、およびGal-Cerからなる群より選択される1つまたは複数の作用物質と接触させる段階であって、それによってCIK NKT細胞を濃縮する、段階。
【請求項11】
IL-7が、存在する場合に、5~20 ng/mLの範囲の濃度である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ALT-803が、存在する場合に、100~300 ng/mLの範囲の濃度である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
FLT3リガンドが、存在する場合に、5~20 ng/mLの範囲の濃度である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
Gal-Cerが、2~10μg/mLの範囲の濃度で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
臍帯血試料の残りから、濃縮されたCIK NKT細胞を単離する段階
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
CIK NKT細胞を拡大するために、単離されたCIK NKT細胞を抗CD3、抗CD28、およびIL2と接触させる段階
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
単離されたCIK NKT細胞をGal-Cerと接触させる段階
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
Gal-Cerが、Gal-Cer負荷CD1d四量体の形態で存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
抗CD3抗体が、5 ng/mL~60 ng/mLの量で存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
抗CD28抗体が、0.1μg/mL~2μg/mLの量で存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
IL-2が、50 ng/mL~500 ng/mLの濃度で存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
CIK NKT細胞の生成が、インターフェロン-γを含まない、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
それを必要とする患者においてがんまたはウイルス感染症を処置する方法であって、以下の段階を含む、方法:
請求項1~7のいずれか一項に記載のCIK NKT細胞の集団に由来するCIK NKT細胞の治療有効量を患者に投与する段階であって、それによってがんを処置する、段階。
【請求項24】
患者の体表面積1 m2当たり約1×108~約1×1011個の細胞が、患者に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
がんが、白血病、リンパ腫、真性多血症、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、肉腫、およびがん腫からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が、静脈内、腹腔内、および皮下からなる群より選択される経路により患者に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
抗体を投与する段階をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
請求項10に記載の方法によって生成されたCIK NKT細胞の集団。
【請求項29】
CIK NKT細胞が、CARおよび/またはサイトカインを発現する、請求項1に記載のCIK NKT細胞の集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年7月10日に出願された米国仮特許出願第62/696,131号の優先権の恩典を主張するものであり、この出願は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)は、ナチュラルキラー(NK)細胞表面マーカーを発現するTリンパ球のサブセットである。インバリアントNKT細胞 (iNKT) と称されるNKT細胞のサブセットは、高度に制限されたT細胞受容体 (TCR) を発現する。iNKT細胞は、自然免疫応答と適応免疫応答を結びつける上で重要な役割を果たしており、感染症、アレルギー、喘息、自己免疫、および腫瘍監視などの様々な疾患に関係づけられているが (Juno et al. PLoS Pathog. 2012;8(8)(非特許文献1))、それらの活性化には典型的に、CD1d拘束性脂質リガンドであるα-ガラクトシルセラミド (Gal-Cer) が必要である。Gal-Cerを(例えば、Gal-Cer/CD1d四量体の形態で)導入するのに必要な手順のせいで、これらのNKT細胞を使用して患者を処置するコストが大幅に増加し、場合によってはその治療上の有用性の範囲が限定され得る。したがって、広範囲の組織型を有する患者を処置するために使用することができる、安全でかつ費用対効果の高いNKT細胞療法の必要性が存続している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Juno et al. PLoS Pathog. 2012;8(8)
【発明の概要】
【0004】
概要
Gal-Cerの非存在下で活性化され得るCIK NKT細胞が、本明細書において提供される。いくつかの態様においては、CIK NKT細胞集団中の細胞の50%超がCD56およびCD3を発現し、該集団中の細胞の10%未満がVa24を発現する。該集団に由来する複数のCIK NKT細胞を含む組成物およびキットもまた提供される。CIK NKT細胞を生成する方法、およびがんを処置するために該細胞を使用する方法もまた提供される。
【0005】
本開示は、集団中の細胞の50%超がCD56およびCD3を発現し、集団中の細胞の10%未満がVa24を発現する、CIK NKT細胞の集団を提供する。
【0006】
任意で、CIK NKT細胞の集団は、α-ガラクトシルセラミド (Gal-Cer) の非存在下で標的細胞を死滅させることができる。任意で、標的細胞はがん細胞である。がん細胞株は、骨髄性白血病細胞、髄芽腫細胞、および単核球細胞からなる群より選択され得る。任意で、がん細胞は、K562細胞、Daudi細胞、DAOY細胞、およびTHP-1細胞からなる群より選択される。
【0007】
任意で、CIK NKT細胞は、1.0~10.0のEC50で、複数の標的細胞を死滅させる。任意で、CIK NKT細胞は、CIK NKT細胞がGal-Cerの存在下で標的細胞を死滅させる際のIC50の90%以上かつ110%以下であるEC50で、標的細胞を死滅させることができる。
【0008】
本開示はまた、上記のCIK NKT細胞の集団のいずれかに由来する複数のCIK NKT細胞と、生理学的に許容される賦形剤とを含む組成物を提供する。
【0009】
上記のCIK NKT細胞の集団のいずれかに由来する複数のCIK NKT細胞と、容器、および/または、キットががんを処置するためのものであることを示すラベルとを含む、がんを処置するためのキットもまた提供される。
【0010】
臍帯血試料からCIK NKT細胞を濃縮する方法であって、臍帯血試料から単核細胞を単離する段階;ならびに単離された単核細胞を、IL-7、ALT-803またはIL-15、FLT3リガンド、およびGal-Cerからなる群より選択される1つまたは複数の作用物質と接触させ、それによってCIK NKT細胞を濃縮する段階を含む方法もまた提供される。IL-7は、存在する場合に、5~20 ng/mLの範囲の濃度であってよい。ALT-803は、存在する場合に、100~300 ng/mLの範囲の濃度であってよい。FLT3リガンドは、存在する場合に、5~20 ng/mLの範囲の濃度であってよい。Gal-Cerは、存在する場合に、2~10μg/mLの範囲の濃度であってよい。
【0011】
任意で、前記方法はさらに、臍帯血試料の残りから、濃縮されたCIK NKT細胞を単離する段階を含む。任意で、本方法はさらに、CIK NKT細胞を拡大するために、単離されたCIK NKT細胞を抗CD3、抗CD28、およびIL2と接触させる段階を含む。任意で、本方法はさらに、分離されたCIK NKT細胞をGal-Cerと接触させる段階を含む。任意で、Gal-Cerは、Gal-Cer負荷CD1d四量体の形態で使用される。任意で、抗CD3抗体は、5 ng/mL~60 ng/mLの量で存在してよい。任意で、抗CD28抗体は、0.1μg/mL~2μg/mLの量で存在する。任意で、IL-2は、50 ng/mL~500 ng/mLの濃度で存在する。任意で、CIK NKT細胞の濃縮および/または拡大は、インターフェロン-γを含まない。
【0012】
上記のCIK NKT細胞を濃縮する、単離する、および拡大する方法によって生成されたCIK NKT細胞の集団もまた提供される。
【0013】
それを必要とする患者においてがんまたはウイルス感染症を処置する方法であって、以下の段階:上記のCIK NKT細胞の集団のいずれかに由来するCIK NKT細胞の治療有効量を患者に投与する段階であって、それによってがんを処置する段階、を含む方法もまた提供される。任意で、患者の体表面積1 m2当たり1×108~約1×1011個のCIK NKT細胞が、患者に投与される。任意で、がんは、白血病、リンパ腫、真性多血症、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、肉腫、およびがん腫からなる群より選択される。任意で、細胞は、静脈内、腹腔内、および皮下からなる群より選択される経路により患者に投与される。任意で、本方法はさらに、抗体を投与する段階を含む。
【0014】
CIK NKT細胞がCARおよび/またはサイトカインを発現し、かつCIK NKT細胞集団中の細胞の50%超がCD56およびCD3を発現し、該集団中の細胞の10%未満がVa24を発現する、請求項1に記載のCIK NKT細胞の集団もまた提供される。
【0015】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示的かつ説明的なものであり、本開示のさらなる説明を提供するよう意図されている。他の目的、利点、および新規な特徴は、当業者には容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
目的、特徴、および利点は、添付の図面と併せて考慮した場合に、以下の開示を参照することで、より容易に認識されるであろう。
図1】CIK NKT細胞が標的細胞を死滅させるために用いる経路の概略図である。
図2図2Aは、CD3、CD56、およびVa24で染色されたCIK NKT細胞のフローサイトメトリー解析の結果を示す。図2Aは前方散乱およびサイズ散乱図であり;図2BはCD3およびCD56図であり;図2CはVa24図である。
図3図3Aは、臍帯血CIK NKT細胞による、存在下(丸で表される)または非存在下(四角で表される)でのDAOY細胞の死滅を示す。図3Bは、臍帯血CIK NKT細胞(四角で表される)または末梢血iNKT細胞(丸で表される)による、ルシフェラーゼ発現THP1細胞の死滅を示す。
図4】臍帯血CIK NKT細胞による、K562細胞、DAOY細胞、およびDaudi細胞の死滅を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
概説
本出願は、非CD1d拘束性様式で、すなわちGal-Cer/CD1d四量体の形成に依存せずに、標的細胞を死滅させることができるサイトカイン誘導キラーNKT細胞(CIK NKT細胞)を提供する。CIK NKT細胞は、広範囲の標的細胞を標的指向するために使用することができ、移植片対宿主病 (GVHD) を誘発しない。GVHDは、腸、皮膚、および肝臓などの臓器に浸潤し、広範な炎症を引き起こすリンパ球の浸潤能力に起因して生じる。CIK NKTは、GVHD臓器への標的指向に重要なケモカイン受容体を発現しないが、腫瘍へのホーミングを促進する受容体を発現し、したがってGVHDを誘発しないことが示されている。通常、CD3+単一陽性細胞、CD56+単一陽性細胞、およびCD3+/CD56+二重陽性細胞からなり、二重陽性細胞が典型的に30%以下である不均一な集団が生じる、CIK NKT細胞を作製する既存の技術と比較して、本発明の方法では、主にCD3+/CD56+二重陽性細胞からなる細胞集団が生じる。1つの局面においては、該集団中のCIK NKT細胞の少なくとも50%が、CD56およびCD3の両方を発現し、該集団中の細胞の10%未満がVa24を発現する。CIK NKT細胞を生成する方法は、細胞をインターフェロン-γに曝露する必要がなく、これによって費用が抑えられる。したがって、本出願は、GVHDなどの臨床的に有害な症状を引き起こすことなく、例えばがんなどの様々な疾患を処置するために広く使用することができる、安全でかつ費用対効果の高いNKT細胞療法を提供する。
【0018】
本開示はまた、前記集団に由来する複数のCIK NKT細胞を含む組成物およびキットを提供する。CIK NKT細胞を生成する方法、およびがんを処置するためにCIK NKT細胞を使用する方法もまた提供される。
【0019】
専門用語
特に他で定義されない限り、本明細書で用いられる技術用語および科学用語はすべて、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲においては、以下の意味を有すると定義されるいくつかの用語が言及されるであろう。
【0021】
本明細書で用いられる専門用語は、特定の態様を説明することを目的としたにすぎず、限定することを意図したものではない。本明細書で用いられる場合、「1つの (a)」、「1つの (an)」、および「その」という単数形は、文脈上明白に別の意味を示していない限り、複数形も同様に含むことが意図される。したがって、例えば、「1つのナチュラルキラー細胞」への言及は、複数のナチュラルキラー細胞を含む。
【0022】
範囲を含めたすべての数値表記、例えば、pH、温度、時間、濃度、量、および分子量は、必要に応じて、0.1または1.0ずつ (+) または (-) に変化する近似値である。必ずしも明記されないが、すべての数値表記の前には「約」という用語を付すことができることが理解されるべきである。
【0023】
本明細書で用いられる場合、特定の細胞マーカーの存在を示すために使用される場合の「+」は、該細胞マーカーが、蛍光活性化細胞選別において、アイソタイプ対照と比較して検出可能な程度に存在するか;または定量的もしくは半定量的RT-PCRにおいて、バックグラウンドを上回って検出可能であることを意味する。
【0024】
本明細書で用いられる場合、特定の細胞マーカーの存在を示すために使用される場合の「-」は、該細胞マーカーが、蛍光活性化細胞選別において、アイソタイプ対照と比較して検出可能な程度には存在しないか;または定量的もしくは半定量的RT-PCRにおいて、バックグラウンドを上回るほど検出可能ではないことを意味する。
【0025】
当業者によって理解されるように、特に書面による説明を提供する観点から、ありとあらゆる目的のために、本明細書において開示されるすべての範囲はまた、ありとあらゆる可能な部分範囲およびそれらの部分範囲の組み合わせも包含する。列挙された範囲はいずれも、その同じ範囲が少なくとも均等に2分割、3分割、4分割、5分割、10分割等に分割されることを十分に表し、それを可能にすると、容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書において論じられる各範囲は、下側の3分の1、中間の3分の1、および上側の3分の1等に容易に分割され得る。やはり当業者によって理解されるように、「最大で~」、「少なくとも~」、「~を上回る」、「~未満」、および同様のものなどのすべての言語は、記述された数を含み、かつ上記のようにその後に部分範囲に分割され得る範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲はそれぞれ個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、または3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を有する群は、1、2、3、4、または5個の細胞を有する群を指し、以下同様である。
【0026】
必ずしも明記されないが、本明細書に記載される試薬は単なる例示であること、およびそのような試薬の同等物が当技術分野で公知であることもまた、理解されるべきである。
【0027】
「任意の」または「任意で」は、その後に記載される事象または状況が起こってもよいし、または起こらなくてもよいこと、ならびにその記載が、該事象または状況が起こる場合およびそれが起こらない場合を含むことを意味する。
【0028】
「含む」という用語は、組成物および方法が、列挙された要素を含むが、他の要素を排除しないことを意味することが意図される。組成物および方法を定義するために使用される場合の「~から本質的になる」は、その組み合わせにとって何らかの本質的に重要な他の要素を排除することを意味するものとする。例えば、本明細書において定義される要素から本質的になる組成物は、特許請求の範囲の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない他の要素を排除しない。「~からなる」は、微量を上回る量の他の成分および実質的方法段階を排除することを意味するものとする。これらの移行語の各々によって定義される態様は、本開示の範囲内である。
【0029】
本明細書で用いられる場合、NK細胞などのエフェクター細胞の活性を記載するために使用される場合の「細胞傷害性」および「細胞溶解性」という用語は、同義であることが意図される。一般に、細胞傷害活性は、種々の生物学的、生化学的、または生物物理学的機構のいずれかによる標的細胞の死滅に関連している。細胞溶解は、より具体的には、エフェクターが標的細胞の形質膜を溶解し、それによってその物理的完全性を破壊する際の活性を指す。これは標的細胞の死滅をもたらす。理論によって縛られることは望まないが、NK細胞の細胞傷害効果は細胞溶解によるものであると考えられる。
【0030】
細胞/細胞集団に関する「死滅させる」という用語は、その細胞/細胞集団の死を招く任意の種類の操作を含むように指向されている。
【0031】
「サイトカイン (cytokine)」または「サイトカイン (cytokines)」という用語は、免疫系の細胞に作用する生物学的分子の一般的クラスを指す。例示的なサイトカインには、FLT3リガンド、インターフェロン、およびインターロイキン (IL)、特にIL-2、IL-12、IL-15、IL-18、およびIL-21が含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
「患者」、「対象」、「個体」という用語、および同様のものは、本明細書において互換的に用いられ、本明細書に記載される方法に適している任意の動物、またはインビトロもしくはインサイチューにかかわらずその細胞を指す。ある特定の非限定的な態様において、患者、対象、または個体はヒトである。
【0033】
「処置する」または「処置」という用語は、ヒトなどの対象における本明細書に記載される疾患または障害の処置を網羅し、(i) 疾患もしくは障害を抑制すること、すなわち、その発症を停止させること;(ii) 疾患もしくは障害を緩和すること、すなわち、障害の退縮を引き起こすこと;(iii) 障害の進行を遅らせること;および/または (iv) 疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症状を抑制する、緩和する、もしくはその進行を遅らせることを含む。対象にモノクローナル抗体もしくはナチュラルキラー細胞を「投与する」または対象へのモノクローナル抗体もしくはナチュラルキラー細胞の「投与」という用語は、意図された機能を果たすために該抗体または細胞を導入または送達する任意の経路を含む。投与は、該細胞またはモノクローナル抗体の送達に適した任意の経路により行うことができる。したがって、送達経路は、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下送達を含み得る。いくつかの態様において、CIK NKT細胞は、例えば腫瘍内への注射によって腫瘍に直接投与される。いくつかの態様において、本明細書に記載される改変型CIK NKT細胞は、例えば、注射、注入、または移植(皮下、静脈内、筋肉内、小胞内、または腹腔内)により、非経口的に投与される。
【0034】
「発現」という用語は、遺伝子産物の産生を指す。
【0035】
本明細書で用いられる場合、NK細胞などのエフェクター細胞の活性を記載するために使用される場合の「細胞傷害性」という用語は、種々の生物学的、生化学的、または生物物理学的機構のいずれかによる標的細胞の死滅に関連している。
【0036】
「減少する」、「低下した」、「低下」、および「減少」という用語はすべて、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の減少、もしくは100%を含む最大100%の減少(すなわち、参照試料と比較して存在しないレベル)、または10~100%の間の任意の減少を指すように本明細書で用いられる。
【0037】
「がん」という用語は、白血病、がん腫、および肉腫を含む、哺乳動物において見られるあらゆる種類のがん、新生物、または悪性腫瘍を指す。例示的ながんには、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、頭頸部がん、肝臓がん、腎臓がん、肺がん、非小細胞肺がん、メラノーマ、中皮腫、卵巣がん、肉腫、胃がん、子宮がん、および髄芽腫が含まれる。さらなる例には、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、原発性脳腫瘍、がん、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱がん、前がん性皮膚病変、精巣がん、リンパ腫、甲状腺がん、神経芽細胞腫、食道がん、泌尿生殖器がん、悪性高カルシウム血症、子宮内膜がん、副腎皮質がん、膵内分泌部および膵外分泌部の新生物、ならびに前立腺がんが含まれる。
【0038】
「治療有効量」または「有効量」という用語は、未処置患者と比較して疾患の症状を改善するのに必要な量を指す。疾患を治療的処置する目的で本開示を実施するために用いられる活性化合物の有効量は、投与の様式、対象の年齢、体重、および一般的健康状態に応じて異なる。最終的には、担当医または担当獣医が適切な量および投与計画を決定する。そのような量は「有効」量と称される。
【0039】
表題または副題は、読者の便宜を図るために本明細書で使用され得るが、それらは本開示の範囲に影響を及ぼすことは意図されない。加えて、本明細書で用いられるいくつかの用語は、以下でより具体的に定義される。
【0040】
サイトカイン誘導キラーナチュラルキラーT細胞(CIK NKT細胞)
ナチュラルキラーT細胞は、T細胞とナチュラルキラー細胞の両方の特性を共有するT細胞の不均一な群である。例えば、NKT細胞は、αβT細胞受容体を発現するだけでなく、NKp44、NKp46、およびNKp30などの、典型的にNK細胞と関連する種々の分子マーカーも発現する。NKT細胞は、全末梢血T細胞の約0.1%しか構成していない。NKT細胞は、自己免疫および移植片拒絶の抑制、病原体に対する抵抗性の促進、ならびに腫瘍免疫の促進と関係づけられている。
【0041】
NKT細胞は典型的に、T細胞受容体 (TCR) の使用の違いに基づいて、I型とII型に分類される。1型NKT細胞は、一般的にインバリアントNKT細胞とも称され、インバリアントTCRα鎖、Va24を含む高度に制限されたT細胞受容体を発現するNKT細胞である。
【0042】
インバリアントNKT細胞は典型的に、CD1dによって提示される脂質リガンドα-ガラクトシルセラミド (Gal-Cer) を認識することによって活性化される。CD1dは、様々な抗原提示細胞の表面上に発現されるCD1ファミリーの糖タンパク質のメンバーであり、脂質抗原の提示に関与している。タンパク質抗原をそれぞれCD8+およびCD4+ T細胞に提示するクラスIおよびII主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) 分子とは対照的に、CD1分子は、T細胞に提示するために、外来および自己脂質抗原の両方を捕捉し、プロセシングすることができる。Gal-Cerは典型的には、病原性細胞、例えば細菌に由来する。
【0043】
I型NKT細胞と比較して、II型NKT細胞は、より多様なTCRレパートリーおよびより高い配列多様性を有する。II型NKT細胞はGal-Cerに反応しない、すなわち、それらの活性化はGal-Cerの存在に依存しない。
【0044】
本明細書において開示されるCIK NKT細胞は、II型NKT細胞のカテゴリーに属する。CIK NKT細胞は、サイトカイン誘導を介して生成され得る。場合によっては、それらはサイトカイン誘導を介して、例えば臍帯血から生成される。場合によっては、それらは、臍帯血試料からiNKT細胞を濃縮または単離する過程で生成される。しかしながら、CIK NKT細胞は、いくつかの面で典型的なiNKT細胞とは異なる。表現型的に、TCR受容体のα鎖のマーカーであるVa24を発現し、Va24を発現するその細胞の割合が70%以上であり得るiNKT細胞とは異なり、CIK NKT細胞は、Va24の発現が減少している。例えば、Va24を発現するCIK NKT細胞の割合は、CIK NKT細胞の全集団の10%未満であってよい。細胞傷害性の点では、糖脂質であるαガラクトシルセラミド (Gal-Cer) を認識することによって活性化されるiNKT細胞とは異なり、CIK NKT細胞は、活性化されるためにGal-Cerを必要とせず、(Gal-Cer) の非存在下で細胞を死滅させることができる。図3および図4を参照されたい。
【0045】
したがって、表現型の点で、本明細書において提供されるCIK NKT細胞は典型的に、CD56およびCD3の高発現レベルならびにVa24の低発現を有する。場合によっては、臍帯血細胞から生成されたCIK NKT集団の少なくとも90%がCD56およびCD3を発現し、該集団中の細胞の10%未満がVα24を発現する。
【0046】
CIK NKT細胞を単離し培養する方法
臍帯血の採取
ヒト臍帯血は造血幹細胞の組成が高く、CIK NKT細胞を作製するための供給源として使用することができる。臍帯血を採取するには、一般的に、ヒト胎盤を出産後の胎盤排出の直後に回収する。胎盤は、無菌の断熱された輸送装置(胎盤の温度を20~28℃で維持する)内で、例えば米国特許第7,147,626号に実質的に記載されているような臍帯血採取キット内で、輸送することができる。好ましくは、胎盤は、分娩から4~24時間後に実験室に送達される。
【0047】
胎盤は、従来の臍帯血回収過程に供することができる。典型的には、針またはカニューレを使用して、重力の助けを借りて、胎盤を放血させる(例えば、Anderson、米国特許第5,372,581号;Hessel et al.、米国特許第5,415,665号を参照されたい)。針またはカニューレを通常は臍帯静脈内に留置し、胎盤を穏やかにマッサージして、胎盤からの臍帯血の排出を助けることができる。そのような臍帯血の回収は、商業的に、例えば、LifeBank Inc.、Cedar Knolls, N.J.、ViaCord、Cord Blood Registry、およびCryoCellにより行なわれてもよい。好ましくは、臍帯血を回収する間の組織破壊を最小限に抑えるために、胎盤を、それ以上操作することなく重力排出させる。
【0048】
臍帯血細胞を採取する方法は、例えばUS20150225697に記載されているように、周知である。臍帯血単核細胞 (Comics) は、当技術分野で周知の方法、例えばFicoll-Paqueを使用する密度勾配法を用いて、採取された臍帯血から単離することができる。Comicsを単離するのに適した試薬は、例えばStem cell Technology Inc.から市販されている。
【0049】
CIK NKT細胞の濃縮
CIK NKT細胞を濃縮するために、Comicsを様々なサイトカインの存在下で一定期間培養することができる。濃縮とは、不均一な細胞集団(例えば、Comics)中の標的細胞数の割合を増加させることを指す。濃縮期間は、2日~3週間、例えば、1~2週間、5~10日、または約2週間であってよい。例えば、Roswell Park Memorial Institute培地 (RPMI) またはダルベッコ変法イーグル培地 (DMEM) などの、様々な増殖培地を使用することができる。任意で、培地はヒトAB血清および/またはGal-Cerをさらに含む。任意で、ヒトAB血清は、5~15% v/v、例えば約10 % v/vで存在する。任意で、Gal-Cerは、2~10μg/mL、例えば約5μg/mLの濃度で存在する。培地に添加することができる適切なサイトカインは、幹細胞因子、FLT3リガンド、IL-7、およびALT-803またはIL-15からなる群より選択される1つまたは複数のサイトカインを含み得る。いくつかの態様において、FLT3リガンドは、5~20 ng/mLの範囲、例えば10 ng/mLの濃度で存在し;IL-7は、5~20 ng/mLの範囲、例えば10 ng/mLの濃度で存在し;および/またはALT-803は、100~300 ng/mLの範囲、例えば約175 ng/mLの濃度で存在する。
【0050】
FLT3リガンドは、造血性の4ヘリックス束サイトカインであり、幹細胞因子 (SCF) およびコロニー刺激因子1 (CSF-1) と構造的に相同である。他の増殖因子との相乗効果で、FLT3リガンドは、様々な血液前駆細胞の増殖および分化を刺激する。それは、樹状細胞の増殖を刺激する主要な増殖因子である。
【0051】
ALT-803は、ヒトIL-15変異体IL-15N72D(72位の残基置換体)およびIL-15Rα sushi-Fc融合タンパク質からなる複合体である(Zhu et al. J. Immunol. 2009; 183:3598-607を参照されたい、関連する開示は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0052】
CIK NKT細胞は、当技術分野で周知の方法、例えば、CIK NKT細胞が磁気ビーズに結合するように、TCRのVa24-J18鎖に対する抗体と結合した磁気ビーズを濃縮培養物と共にインキュベートし、続いて磁場の存在下でビーズに結合しているCIK NKT細胞を単離することによって、上記の濃縮培養物から単離することができる。使用され得る適切な抗体の一例は6B11抗体であり、これはBiolegend (San Diego, CA) などの供給業者から市販されている。CIK NKT細胞を単離するための適切な試薬は、Miltenyi Biotec, Germanyからのものである。CIK NKT細胞は典型的には、PBS含有血清(例えば、ヒトAB血清)中で単離する。任意で、単離溶液はまたEDTAを含有する。
【0053】
したがって、臍帯血からCIK NKT細胞を濃縮する方法であって、臍帯血試料から単核細胞を単離する段階;ならびに単離された単球を、IL-7、ALT-803、FLT3リガンド、およびGal-Cerからなる群より選択される1つまたは複数の作用物質と接触させて、CIK NKT細胞を濃縮する段階を含む方法が、本明細書において提供される。
【0054】
CIK NKT細胞の拡大
上記のように単離されたCIK NKT細胞は、適切な増殖培地中で拡大することができる。拡大とは、標的細胞の数が増加するように、標的細胞の単離された集団を増殖させることを指す。いくつかの態様において、増殖培地は、Miltenyi Biotec, Germanyから入手可能なNK Macs培地である。いくつかの態様においては、増殖培地に、NKT細胞の増殖に適した量のIL-2、抗CD3抗体、および/または抗CD28抗体を補充する。いくつかの態様において、抗CD3抗体は、5 ng/mL~60 ng/mL、例えば20 ng/mLの濃度で存在する。いくつかの態様において、抗CD28抗体は、0.1μg/mL~2μg/mL、例えば0.5μg/mLの濃度で存在する。いくつかの態様において、IL-2は、50 ng/mL~500 ng/mL、例えば200 ng/mLの濃度で存在する。いくつかの態様において、増殖培地はヒトAB血清(例えば、約10% v/v)を含む。いくつかの態様において、増殖培地はGal-Cer負荷CD1d四量体をさらに含む。いくつかの態様において、Gal-Cer負荷CD1d四量体は、例えばProImmune (Oxford, UK) から市販されている構築済みの四量体である。Gal-Cer負荷CD1d四量体を構築する方法は周知である。典型的には、Gal-Cer脂質を、四量体となるようにストレプトアビジン表面上でオリゴマー形成させたCD1dタンパク質と共インキュベートする。Gal-CerがCD1d複合体に結合したならば、それをカラム精製し、拡大のための試薬として使用する。Gal-Cer負荷CD1d四量体を調製する例示的な方法のいくつかは、www.proimmune.com/ecommerce/pdf_files/PS_DE000-RPE_V1.1%20%28CD1d%20Tetramer%20Empty%20%28R-PE%20Labeled%29%29.pdfおよびproimmune.com/ecommerce/pdf_files/STl4.pdfに記載されている。いくつかの態様において、Gal-Cer負荷CD1d四量体は、増殖培地中のGal-Cerの濃度が、約20~200 ng/mL、例えば、50~150 ng/mL、または80~120 ng/mL、または約100 ng/mLのGal-Cerとなるような量で使用される。いくつかの態様において、CIK NKT細胞は、様々な適用に適した量の細胞に到達するように、数日間または数週間にわたって増殖および拡大させる。
【0055】
したがって、本開示は、臍帯血からCIK NKT細胞を増殖させる方法であって、臍帯血試料から単核細胞を単離する段階;ならびに単離された単球を、IL-7、ALT-803、FLT3リガンド、およびGal-Cerからなる群より選択される1つまたは複数の作用物質と接触させて、CIK NKT細胞を濃縮する段階を含む方法を提供する。
【0056】
CIK NKT細胞の表現型決定
ある特定の態様において、CIK NKT細胞集団は、1つまたは複数の機能的に関連するマーカー、例えばCD56およびCD3(NKT細胞のマーカー)ならびにTCR受容体Va24(この高発現は、NKT細胞がインバリアントNKT細胞であることを示す)を検出することによって評価することができる。
【0057】
いくつかの態様においては、典型的なインバリアントNKT細胞と比較して、より低い割合のVa24+細胞を含むCIK NKT細胞集団が、本明細書において提供される。CIK NKT細胞集団は、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%のVa24+細胞を含む。いくつかの態様において、CIK NKT細胞集団は、0~20%、5~10%、1~7%、または4~8%のVa24+細胞を含む。いくつかの態様において、CIK NKT細胞集団は、20%以下、15%以下、または10%以下のVa24+細胞を含む。
【0058】
いくつかの態様においては、典型的なインバリアントNKT細胞におけるものと実質的に類似している割合のCD56+細胞を含むCIK NKT細胞集団が、本明細書において提供される。CIK NKT細胞集団は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のCD56+細胞を含む。いくつかの態様において、CIK NKT細胞集団は、50~100%、70~100%、85~100%、90~100%、95~100%、または98~100%のCD56+細胞を含む。いくつかの態様において、CIK NKT細胞集団は、50%以上、70%以上、85%以上、90%以上、93%以上、または95%以上のCD56+細胞を含む。
【0059】
いくつかの態様においては、典型的なインバリアントNKT細胞におけるものと実質的に類似している割合のCD3+細胞を含むCIK NKT細胞集団が、本明細書において提供される。CIK NKT細胞集団は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のCD3+細胞を含む。いくつかの態様において、CIK NKT細胞集団は、50~100%、70~100%、85~100%、90~100%、95~100%、または98~100%のCD3+細胞を含む。いくつかの態様において、CIK NKT細胞集団は、50%以上、70%以上、85%以上、90%以上、93%以上、または95%以上のCD3+細胞を含む。
【0060】
いくつかの態様においては、典型的なインバリアントNKT細胞におけるものと実質的に類似している割合のCD56+ CD3+細胞を含むCIK NKT細胞集団が、本明細書において提供される。CIK NKT細胞集団は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のCD56+CD3+細胞を含む。いくつかの態様において、CIK NKT細胞集団は、50~100%、70~100%、85~100%、90~100%、95~100%、または98~100%のCD56+CD3+細胞を含む。いくつかの態様において、CIK NKT細胞集団は、50%以上、70%以上、85%以上、90%以上、93%以上、または95%以上のCD56+ CD3+細胞を含む。
【0061】
CIK NKT細胞の細胞傷害性
任意で、単離または濃縮されたナチュラルキラー細胞の細胞傷害活性を、例えば、腫瘍細胞、例えば、培養K562、DAOY、THP-1、LN-18、U937、WERI-RB-1、U-118MG、HT-29、HCC2218、KG-1、もしくはU266腫瘍細胞、または同様のものを標的細胞として使用する細胞傷害性アッセイにおいて評価することができる。本明細書において開示されるCIK NKT細胞は、MHC型に関係なく、およびαGal-Cerの存在に関係なく、標的細胞を死滅させることができる。
【0062】
細胞傷害性を評価するためのアッセイは周知であり、例えばMTTアッセイがある。これは、テトラゾリウム化合物MTTに基づくシステムである。簡潔に説明すると、標的細胞をCIK NKT細胞と接触させる処理期間の後、新たに希釈したMTT溶液 (2.5mg mL-1) を10 uLずつ各ウェルに添加し、プレートを、加湿した5% C02雰囲気中で、37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、培地を除去し、ホルマザン生成物を100μLのジメチルスルホキシドに溶解した。細胞生存率は、SUNRICE Tecan吸光度リーダー (Schoeller) を用いて、570 nmでの吸光度を測定することにより評価した。細胞生存 (%) 対 薬剤濃度 (μM) をプロットすることによって構築された曲線から、50%の細胞増殖阻害をもたらす化合物濃度 (IC50) を算出した。読み取り値を、対照に対する割合(細胞生存率)に変換した。細胞死滅アッセイの非限定的な方法には、その全体が参照により本明細書に組み入れられるwww.rsc.org/suppdata/mt/c4/c4mt00112e/c4mt00112e1.pdfにおいて記載されているようなスルホローダミンB (SRB) アッセイ、ニュートラルレッド (NR) アッセイが含まれる。
【0063】
標的細胞の死滅に及ぼすCIK NKT細胞の有効性は、EC50で評価することができる。本開示において使用されるEC50は、標的細胞の50%が死滅する場合のアッセイで使用されたエフェクター対標的比を指す。いくつかの態様において、CIK NKT細胞は、1~10、例えば、1~8、2~6、2~5.5、または3~7のEC50で、複数の標的細胞を死滅させることができる。いくつかの態様において、標的細胞はTHP-1であり、EC50は4.64である。いくつかの態様において、標的細胞はDAOYであり、IC50は3.69である。いくつかの態様において、標的細胞はK562であり、IC50は2.6である。
【0064】
CIK NKT細胞の改変
キメラ抗原受容体
上記のように生成されたCIK NKT細胞は、細胞表面上にキメラ抗原受容体 (CAR) を発現するようにさらに操作することができる。任意で、CARは腫瘍特異的抗原に特異的である。腫瘍特異的抗原は、非限定的な例として、US 2013/0189268;WO 1999024566 A1;US 7098008;およびWO 2000020460 A1に記載されており、これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。腫瘍特異的抗原には、非限定的に、NKG2D、CS1、GD2、CD138、EpCAM、EBNA3C、GPA7、CD244、CA-125、ETA、MAGE、CAGE、BAGE、HAGE、LAGE、PAGE、NY-SEO-1、GAGE、CEA、CD52、CD30、MUC5AC、c-Met、EGFR、FAB、WT-1、PSMA、NY-ESO1、AFP、CEA、CTAG1B、CD19、およびCD33が含まれる。さらなる非限定的な腫瘍関連抗原およびそれに関連する悪性腫瘍は、表1中に見出すことができる。
【0065】
(表1)腫瘍特異的抗原および関連する悪性腫瘍
【0066】
いくつかの態様において、CARはCD19、CD33、またはCSPG-4を標的とする。
【0067】
例において、変種ポリペプチドは、オリゴヌクレオチド媒介性(部位特異的)変異誘発、アラニンスキャニング、およびPCR変異誘発などの、当技術分野で公知の方法を用いて作製される。部位特異的変異誘発(Carter, 1986;Zoller and Smith, 1987)、カセット変異誘発、制限選択変異誘発 (Wells et al., 1985)、またはその他の公知の技法を、クローニングされたDNAに対して実施して、CD16変種を生成することができる(Ausubel, 2002;Sambrook and Russell, 2001)。
【0068】
任意で、CARは、特定のがん型と関連する抗原を標的とする。任意で、がんは、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病を含む))ならびに慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ性白血病)を含む)、真性多血症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、これらに限定されないが、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜種、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支原性がん、腎細胞がん、肝細胞がん、胆管がん、絨毛がん、精上皮種、胚性がん腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫 (menangioma)、メラノーマ、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫などの肉腫およびがん腫を含む固形腫瘍からなる群より選択される。
【0069】
いくつかの態様において、CARをコードするポリヌクレオチドは、CARの機能を変化させずに、CARをコードするアミノ酸配列を変更するように変異される。例えば、「非必須」アミノ酸残基でのアミノ酸置換をもたらすポリヌクレオチド置換を、上記で開示されたCARにおいて行うことができる。CARは、例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる特許公報番号、WO 2014039523;US 20140242701;US 20140274909;US 20130280285;およびWO 2014099671に記載されるように操作することができる。任意で、CARはCD19 CAR、CD33 CAR、またはCSPG-4 CARである。
【0070】
さらなる改変‐サイトカイン
いくつかの態様において、CAR発現CIK NKT細胞は、少なくとも1種のサイトカインを発現するようにさらに改変される。特定の態様において、少なくとも1種のサイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、またはそれらの変種である。好ましい態様において、サイトカインはIL-12である。IL-12の代表的なポリペプチドは、アクセッション番号IF45_A (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/1F45_A) に記載のアミノ酸配列およびアクセッション番号IF45_B (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/1F45_B) に記載のアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。
【0071】
治療適用
本開示はまた、任意の病期の対象における任意の種類のがんを処置する方法を提供する。適切ながんの非限定的な例には、がん腫、メラノーマ、または肉腫が含まれる。いくつかの態様において、本発明は、白血病またはリンパ腫などの造血系起源のがんを処置するために使用される。いくつかの態様において、がんは固形腫瘍である。
【0072】
いくつかの態様において、対象における任意の種類のがんを処置する方法は、治療有効量のCIK NKT細胞を患者に投与し、それによってがんを処置する段階を含む。CIK NKT細胞は、集団中の細胞の90%超がCD56およびCD3を発現し、集団中の細胞の10%未満がVa24を発現する、CIK NKT細胞の集団に由来する。
【0073】
本開示はまた、任意の種類のウイルス感染症を処置する方法であって、治療有効量のCIK NKT細胞を患者に投与し、それによってがんを処置する段階を含む方法を提供する。CIK NKT細胞は、集団中の細胞の90%超がCD56およびCD3を発現し、集団中の細胞の10%未満がVa24を発現する、CIK NKT細胞の集団に由来する。
【0074】
本明細書に記載されるようなCIK NKT細胞を用いて、それを必要とする対象を処置する方法もまた提供される。いくつかの態様において、対象または患者は、がんまたはウイルス感染症などの感染症に罹患している。
【0075】
CIK NKT細胞は、個体に細胞の絶対数で投与することができ、例えば、該個体に、約1000個の細胞/注射から最大で約100億個の細胞/注射まで、例えば、1回の注射につき約、少なくとも約、もしくは多くとも約1×108、1×107、5×107、1×106、5×106、1×105、5×105、1×104、5×104、1×103、5×103個(など)のCIK NKT細胞、またはいずれか2つの数字間の端点を含む任意の範囲を投与することができる。したがって、本開示はまた、細胞数が1×108、1×107、5×107、1×106、5×106、1×105、5×105、1×104、5×104、1×103、または5×103個(など)である、複数のCIK NKT細胞を含む組成物を提供する。
【0076】
他の態様においては、前記個体に、約1000個の細胞/注射/m2から最大で約100億個の細胞/注射/m2まで、例えば、1回の注射につき約、少なくとも約、もしくは多くとも約1×108個/m2、1×107個/m2、5×107個/m2、1×106個/m2、5×106個/m2、1×105個/m2、5×105個/m2、1×104個/m2、5×104個/m2、1×103個/m2、5×103個/m2(など)のCIK NKT細胞、またはいずれか2つの数字間の端点を含む任意の範囲を投与することができる。
【0077】
他の態様において、CIK NKT細胞は、そのような個体に細胞の相対数で投与することができ、例えば、該個体に、個体1キログラム当たり約1000個の細胞から最大で約100億個の細胞まで、例えば、個体1キログラム当たり約、少なくとも約、もしくは多くとも約1×108、1×107、5×107、1×106、5×106、1×105、5×105、1×104、5×104、1×103、もしくは5×103個(など)のCIK NKT細胞、またはいずれか2つの数字間の端点を含む任意の範囲を投与することができる。
【0078】
他の態様においては、総用量を体表面積のm2によって算出することができ、1 m2当たり約1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107個、またはいずれか2つの数字間の端点を含む任意の範囲を含む。平均的な人は約1.6~約1.8 m2である。好ましい態様においては、約10億個~約30億個のCIK NKT細胞が患者に投与される。他の態様においては、1用量につき注射されるCIK NKT細胞の量を、体表面積のm2によって算出することができ、1 m2当たり1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107個を含む。人の平均的な体表面積は1.6~1.8 m2である。
【0079】
他の態様において、CIK NKT細胞は、そのような個体に細胞の相対数で投与することができ、例えば、該個体に、個体1キログラム当たり約1000個の細胞から最大で約100億個の細胞まで、例えば、個体1キログラム当たり約、少なくとも約、もしくは多くとも約1×108、1×107、5×107、1×106、5×106、1×105、5×105、1×104、5×104、1×103、もしくは5×103個(など)のCIK NKT細胞、またはいずれか2つの数字間の端点を含む任意の範囲を投与することができる。
【0080】
CIK NKT細胞は、がん患者に1回投与することができ、または複数回、例えば、治療期間を通して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、もしくは23時間ごとに1回、または1、2、3、4、5、6、もしくは7日ごとに1回、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週、もしくはそれを超える週ごとに1回、またはいずれか2つの数字間の端点を含む任意の範囲ごとに1回、投与することができる。
【0081】
いくつかの態様において、CIK NKT細胞は、CIK NKT細胞とヒト血清またはその同等物などの媒体とを含む組成物で投与される。いくつかの態様において、媒体はヒト血清アルブミンを含む。いくつかの態様において、媒体はヒト血漿を含む。いくつかの態様において、媒体は約1%~約15%のヒト血清またはヒト血清同等物を含む。いくつかの態様において、媒体は約1%~約10%のヒト血清またはヒト血清同等物を含む。いくつかの態様において、媒体は約1%~約5%のヒト血清またはヒト血清同等物を含む。好ましい態様において、媒体は約2.5%のヒト血清またはヒト血清同等物を含む。いくつかの態様において、血清はヒトAB血清である。いくつかの態様においては、ヒト治療での使用に許容される血清代替物が、ヒト血清の代わりに用いられる。そのような血清代替物は、当技術分野において公知であるか、または今後開発され得る。15%を超える濃度のヒト血清を用いることができるが、約5%を上回る濃度は費用が高すぎることが企図される。いくつかの態様において、CIK NKT細胞は、CIK NKT細胞と細胞生存度を支持する等張溶液とを含む組成物で投与される。いくつかの態様において、CIK NKT細胞は、凍結保存試料から再構成された組成物で投与される。
【0082】
CIK NKT細胞を含む薬学的に許容される組成物は、種々の担体および賦形剤を含み得る。種々の水性担体、例えば、緩衝生理食塩水および同様のものが使用され得る。これらの溶液は無菌であり、かつ一般に望ましくない物質を含まない。適切な担体および賦形剤ならびにそれらの製剤化は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, David B. Troy, ed., Lippicott Williams & Wilkins (2005) に記載されている。薬学的に許容される担体とは、生物学的にまたはその他の点で望ましくないものではない材料を意味し、すなわち、該材料は、望ましくない生物学的作用を引き起こすことなく、またはそれが含まれる薬学的組成物のその他の構成成分と有害な様式で相互作用することなく、対象に投与される。対象に投与される場合、担体は任意で、活性成分の分解を最小限にし、かつ対象において有害な副作用を最小限にするように選択される。本明細書で用いられる場合、薬学的に許容されるという用語は、生理学的に許容されるおよび薬理学的に許容されると同義に用いられる。薬学的組成物は一般に、緩衝および貯蔵時の保存のための作用物質を含み、かつ投与経路に応じて、適切な送達のための緩衝液および担体を含み得る。
【0083】
インビボまたはインビトロで使用するためのこれらの組成物は、細胞に用いられる滅菌技法によって滅菌され得る。該組成物は、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤、ならびに同様のものなどの、生理学的条件に近づけるために必要とされる許容される補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム、および同様のものを含有し得る。これらの製剤中の細胞および/またはその他の作用物質の濃度は変動してよく、選択される特定の投与方法および対象のニーズに従って、主に液量、粘性、体重、および同様のものに基づいて選択される。
【0084】
1つの態様において、CIK NKT細胞は、処置されるがんに対する1つまたは複数の他の処置または薬剤と併用して、患者に投与される。いくつかの態様において、処置されるがんに対する1つまたは複数の他の処置には、例えば、抗体、放射線、化学療法、幹細胞移植、またはホルモン療法が含まれる。
【0085】
いくつかの態様において、CIK NKT細胞とその他のがん薬剤/処置は、同時にまたはほぼ同時に(例えば、互いに約1、5、10、15、20、または30分以内に)施行される。いくつかの態様において、CIK NKT細胞とその他がんの薬剤/処置は、順次施行される。いくつかの態様において、その他のがん処置/薬剤は、CIK NKT細胞の投与の1日、2日、または3日後に施行される。
【0086】
1つの態様において、その他のがん薬剤は抗体である。1つの態様において、CIK NKT細胞は、罹患細胞を標的とする抗体と併用して投与される。1つの態様において、CIK NKT細胞と抗体は、患者に一緒に、例えば同じ製剤で;別々に、例えば別個の製剤で、同時に投与されるか;または別々に、例えば異なる投与スケジュールでもしくは1日の異なる時間に投与され得る。別々に投与する場合は、抗体を、静脈内または腫瘍内注射などの任意の適切な経路を介して投与することができる。
【0087】
いくつかの態様において、本開示のCIK NKT細胞は、治療用抗体および/またはその他の抗がん剤と組み合わせて使用される。治療用抗体を用いて、がん関連または腫瘍関連マーカーを発現している細胞を標的とすることができる。がん治療用モノクローナル抗体の例を表2に示す。
【0088】
(表2)例示的な治療用モノクローナル抗体
【0089】
このようなCIK NKT細胞の投与は、モノクローナル抗体の投与と同時に、または逐次的様式で実施することができる。いくつかの態様においては、対象をモノクローナル抗体で処置した後に、CIK NKT細胞を該対象に投与する。あるいは、CIK NKT細胞をモノクローナル抗体と同時に、例えば24時間以内に、投与することができる。
【0090】
いくつかの態様において、CIK NKT細胞は静脈内に投与される。いくつかの態様において、CIK NKT細胞は骨髄に直接注入される。
【0091】
したがって、本開示は、それを必要とする患者においてがんまたはウイルス感染症を処置する方法であって、本明細書において開示される方法を用いたCIK NKT細胞の集団に由来するCIK NKT細胞の治療有効量を患者に投与し、それによってがんを処置する段階を含む方法を提供する。
【0092】
キット
本明細書に記載されるようなある量のCIK NKT細胞を含む組成物を用いて、がんまたは感染症を処置するためのキットもまた開示される。いくつかの態様において、本開示のキットは、少なくとも1種のモノクローナル抗体もまた含み得る。
【0093】
ある特定の態様において、キットは、CIK NKT細胞の投与の前に、それと同時に、またはその後に投与されるべき、治療的活性化合物または薬物などの追加の化合物を含み得る。そのような化合物の例には、抗体、ビタミン、ミネラル、フルドロコルチゾン、イブプロフェン、リドカイン、キニジン、化学療法剤等が含まれる。
【0094】
様々な態様において、キットの使用説明書は、がんまたは感染症の処置においてキットの構成要素を使用するための指示を含む。説明書は、CIK NKT細胞の扱い方(例えば、融解および/または培養)に関する情報をさらに含み得る。説明書は、投与量および投与頻度に関するガイダンスをさらに含み得る。
【0095】
ある特定の態様において、キットは、本明細書に記載される1つまたは複数の組成物、例えば本明細書に記載されるようなCIK NKT細胞を含む組成物、が充填された、1つまたは複数の容器をさらに含む。任意で、このような容器には、該キットが、本明細書に記載されるようながんを処置するためのものであることを示すラベルを付随させることができる。任意で、ラベルは、医薬品または生物学的製品の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定される形式の通知もまた含み、この通知は、ヒト投与に関する製造、使用、または販売の政府機関による承認を反映する。
【0096】
本開示および実施例は、臍帯血試料に由来するCIK NKT細胞の生成および使用を例証するが、当業者は、CIK NKT細胞が、本明細書に記載されたものと同様のアプローチを使用して、他の造血前駆細胞試料からもまた作製することができることを認識するであろう。
【0097】
開示された方法および組成物に使用され得る、それらと併用して使用され得る、それらの調製において使用され得る、またはそれらの産物である、材料、組成物、および構成要素が開示される。これらおよびその他の材料が本明細書において開示されており、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループ等が開示される場合、これらの化合物の各種個別のおよび集合的な組み合わせおよび順列の具体的な言及が明確に開示されていない可能性があるが、各々が本明細書において具体的に企図され記載されていることが理解される。例えば、ある方法が開示および議論され、その方法を含むいくつかの分子に対してなされ得るいくつかの改変が議論される場合、その方法および可能な改変のありとあらゆる組み合わせおよび順列は、そうでないと具体的に示されない限り、具体的に企図される。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせもまた、具体的に企図され開示される。この概念は、開示された組成物を使用する方法における段階を含むがこれに限定されるものではない、本開示のすべての局面に適用される。したがって、実施できる種々の追加的段階が存在する場合、これらの追加的段階の各々が、開示された方法の任意の特定の方法段階または方法段階の組み合わせと共に実施できること、およびそのような組み合わせまたは組み合わせのサブセットの各々が具体的に企図され、開示されていると見なされるべきであることが理解される。
【0098】
実施例
本開示は以下の非限定的な態様を含む。
態様1.
集団中の細胞の50%超がCD56およびCD3を発現し、集団中の細胞の10%未満がVa24を発現する、CIK NKT細胞の集団。
態様2.
CIK NKT細胞が、α-ガラクトシルセラミド (Gal-Cer) の非存在下で標的細胞を死滅させることができる、態様1のCIK NKT細胞の集団。
態様3.
標的細胞が、がん細胞である、態様1のCIK NKT細胞の集団。
態様4.
がん細胞株が、骨髄性白血病細胞、髄芽腫細胞、および単核球細胞からなる群より選択される、態様1のCIK NKT細胞の集団。
態様5.
がん細胞が、K562細胞、Daudi細胞、DAOY細胞、およびTHP-1細胞からなる群より選択される、態様3のCIK NKT細胞の集団。
態様6.
CIK NKT細胞が、1.0~10.0のEC50で、複数の標的細胞を死滅させる、態様2~5のCIK NKT細胞の集団。
態様7.
前記CIK NKT細胞が、Gal-Cerの存在下でCIK NKT細胞が標的細胞を死滅させる際のEC50の90%以上かつ110%以下であるEC50で、標的細胞を死滅させることができる、態様6のCIK NKT細胞の集団。
態様8.
態様1~7のいずれかのCIK NKT細胞の集団に由来する複数のCIK NKT細胞と、生理学的に許容される賦形剤とを含む、組成物。
態様9.
態様1~7のいずれかのCIK NKT細胞の集団に由来する複数のCIK NKT細胞を含む、がんを処置するためのキットであって、容器、および/または、キットががんを処置するためのものであることを示すラベルをさらに含む、前記キット。
態様10.
臍帯血試料からCIK NKT細胞を濃縮する方法であって、以下の段階を含む、方法:
臍帯血試料から単核細胞を単離する段階;ならびに
単離された単核細胞を、IL-7、ALT-803またはIL-15、FLT3リガンド、およびGal-Cerからなる群より選択される1つまたは複数の作用物質と接触させる段階であって、それによってCIK NKT細胞を濃縮する、段階。
態様11.
IL-7が、存在する場合に、5~20 ng/mLの範囲の濃度である、態様10の方法。
態様12.
ALT-803が、存在する場合に、100~300 ng/mLの範囲の濃度である、態様10または11の方法。
態様13.
FLT3リガンドが、存在する場合に、5~20 ng/mLの範囲の濃度である、態様10~12のいずれかの方法。
態様14.
Gal-Cerが、2~10μg/mLの範囲の濃度で存在する、態様10~13のいずれかの方法。
態様15.
臍帯血試料の残りから、濃縮されたCIK NKT細胞を単離する段階
をさらに含む、態様10の方法。
態様16.
CIK NKT細胞を拡大するために、単離されたCIK NKT細胞を抗CD3、抗CD28、およびIL2と接触させる段階
をさらに含む、態様15の方法。
態様17.
単離されたCIK NKT細胞をGal-Cerと接触させる段階
をさらに含む、態様16の方法。
態様18.
Gal-Cerが、Gal-Cer負荷CD1d四量体の形態で存在する、態様17の方法。
態様19.
抗CD3抗体が、5 ng/mL~60 ng/mLの量で存在する、態様16の方法。
態様20.
抗CD28抗体が、0.1μg/mL~2μg/mLの量で存在する、態様16~19のいずれかの方法。
態様21.
IL-2が、50 ng/mL~500 ng/mLの濃度で存在する、態様16~20のいずれかの方法。
態様22.
CIK NKT細胞の生成が、インターフェロン-γを含まない、態様16~21のいずれかの方法。
態様23.
それを必要とする患者においてがんまたはウイルス感染症を処置する方法であって、以下の段階を含む、方法:
態様1~7のいずれかのCIK NKT細胞の集団に由来するCIK NKT細胞の治療有効量を患者に投与する段階であって、それによってがんを処置する、段階。
態様24.
患者の体表面積1 m2当たり約1×108~約1×1011個の細胞が、患者に投与される、態様23の方法。
態様25.
がんが、白血病、リンパ腫、真性多血症、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、肉腫、およびがん腫からなる群より選択される、態様23の方法。
態様26.
前記細胞が、静脈内、腹腔内、および皮下からなる群より選択される経路により患者に投与される、態様25の方法。
態様27.
抗体を投与する段階をさらに含む、態様23~26のいずれかの方法。
態様28.
態様10~27のいずれかの方法によって生成されたCIK NKT細胞の集団。
態様29.
CIK NKT細胞が、CARおよび/またはサイトカインを発現する、態様1のCIK NKT細胞の集団。
【実施例0099】
以下の実施例は例示的目的にすぎず、限定として解釈されるべきではない。以下の実施例を同様に成功させることができる、当業者に利用可能な種々の代替技法および手法が存在する。
【0100】
実施例1:CIK-NKT細胞の表現型
臍帯血単核細胞 (Comics) を、Ficoll-PaqueおよびStem cell Technology Inc.からのSepmate(商標)を用いた密度勾配法により、臍帯血試料から単離した。Comicsを、10%ヒトAB血清を含むRPMI培地中で2週間、NKTを濃縮するためにGal-Cer (5μg/mL)、FLT3-L (10 ng/mL)、IL-7 (10 ng/mL)、およびALT-803 (175 ng/mL) と共にインキュベートした。NKT細胞を、Miltenyi Biotec, Germanyからの試薬を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより単離した。その後、単離された細胞を、10%ヒトAB血清を含むNK Macs培地中で、抗CD3抗体 (20 ng/mL)、抗CD28抗体 (0.5μg/mL)、およびIL2 (200 ng/mL) の存在下で拡大し、Gal-Cer負荷CD1d四量体で一晩活性化した。Gal-Cer負荷CD1d四量体は、ProImmune, Oxford, UKからのものであり、Gal-Cerが100 ng/mLの量で存在するような量で使用した。1週間の拡大の時点で、これらの細胞を、CD3、CD56、またはVa24を認識する抗体で染色した。結果から、細胞の大多数 (97.1%) がCD56およびCD3の両方について陽性であり(図2B)、細胞のわずかな割合 (6.45%) がVa24について陽性であることが示された(図2C)。このことから、臍帯血CIK NKT細胞のVa24の発現は低いが、CD3およびCD56の発現は元のままであることが示される。
【0101】
実施例2:CIK NKT細胞の細胞傷害性はGal-Cerに依存しない
実施例2に記載されたように調製されたNKT-CIK細胞を、がん細胞株DAOYに対する細胞傷害性について評価した。DAOY細胞を、1μg/mLのGal-Cerと共に一晩インキュベートした。Gal-Cerで処理したDAOY細胞を次いで、蛍光色素、カルシエン (Calcien) AMと共に30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、次いで表示通りの様々なエフェクター対標的比(最も高い比率は32:1であった)で、CB-NKT CIKと共に4時間インキュベートした。DAOY細胞の死滅を、細胞から放出されたカルシエンAM色素の量で表される細胞溶解によって測定した。図3Aは、CB-NKT CIKによって引き起こされた、DAOY細胞から放出されたカルシエンAM色素の量を示す。データは、標的細胞の%溶解として示された。結果から、標的細胞にGal-Cerを負荷した群とGal-Cer負荷しなかった群とでは、死滅の点で有意な差があったことが示され、Gal-Cer処理は死滅特異性を付与しなかったことが示唆される。
【0102】
図3Bは、上記のような臍帯血由来のNKT-CIK細胞(CB-CIK NKT細胞)とPBiNKT細胞(末梢血から単離されたiNKT細胞)のルシフェラーゼ発現THP1細胞に対する細胞傷害性を比較したものである。PBiNKT細胞は、供給源が臍帯血の代わりに末梢血であることを除いて、CB-CIK NKT細胞(実施例1を参照のこと)と同様の様式で単離した。THP1細胞を、表示通りの様々なエフェクター対標的比で、CB-CIK NKT細胞またはPBiNKT細胞と共培養し、最も高い比率は32:1であった。この実験では、Gal-Cerを使用しなかった。結果から、CB-CIK NKT細胞がPBiNKT細胞よりも、THP-1を死滅させる上でより強力であることが示される。
【0103】
実施例3:K562細胞およびDaudi細胞に対するCIK NKT細胞の細胞傷害性
上記のように得られたCB-NKT CIK細胞を、ルシフェラーゼを発現するがん細胞株、DAOY、Daudi、およびK562を死滅させる能力についてアッセイした(図4において、それぞれ三角、四角、および丸で表される)。末梢血から単離されたiNKTを対照として使用した(図4における逆三角形)。細胞死滅アッセイは、がん細胞とエフェクター細胞(CB CIK NKTまたはPBiNKT)の4時間の共培養後に実施した。がん細胞の死滅を、これらのがん細胞株におけるルシフェラーゼの消失で表される細胞溶解の割合(%)によって測定した。様々なエフェクター対標的比が表示通りに使用され、最も高いものは32:1であった。結果から、CB-CIK NKT細胞が、非CD1d/MHC拘束性様式で標的細胞を死滅させることが示される。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料から、集団中の90%超のCIK NKT細胞がCD56およびCD3を発現し、かつ10%未満のCIK NKT細胞がVa24を発現している、CIK NKT細胞の集団を入手する方法であって、以下の段階:
血液試料から単核細胞を単離する段階;ならびに
単離された単核細胞を、i)IL-7、ii)ALT-803またはIL-15、iii)FLT3リガンド、およびiv)Gal-Cerと接触させる段階
を含む、前記方法。
【請求項2】
IL-7が、5~20 ng/mLの範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ALT-803が、存在する場合に、100~300 ng/mLの範囲の濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
FLT3リガンドが、5~20 ng/mLの範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Gal-Cerが、2~10μg/mLの範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
血液試料の残りから、濃縮されたCIK NKT細胞を単離する段階
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
単離されたCIK NKT細胞を抗CD3抗体、抗CD28抗体、およびIL2と共に拡大する段階をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
Gal-Cerが、Gal-Cer負荷CD1d四量体の形態で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
抗CD3抗体が、5 ng/mL~60 ng/mLの量で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
抗CD28抗体が、0.1μg/mL~2μg/mLの量で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
IL-2が、50 ng/mL~500 ng/mLの濃度で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
CIK NKT細胞の入手が、インターフェロン-γを含まない、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
拡大させたCIK NKT細胞の集団が、Gal-Cerの非存在下で細胞傷害性を有する細胞傷害性エフェクター細胞を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
拡大させたCIK NKT細胞の集団の90%超がCD56およびCD3を発現し、かつ集団の10%未満がVa24を発現している、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
血液試料から、集団中の90%超のCIK NKT細胞がCD56およびCD3を発現し、かつ10%未満のCIK NKT細胞がVa24を発現している、CIK NKT細胞の集団を生成する方法であって、
1)血液試料から単核細胞を単離する段階;および単離された単核細胞を、IL-7、ALT-803もしくはIL-15、またはFLT3リガンド、およびGal-Cerと接触させ、それによってCIK NKT細胞を濃縮する段階;
2)血液試料の残りから、濃縮されたCIK NKT細胞を単離する段階;ならびに
3)単離されたCIK NKT細胞を抗CD3、抗CD28、IL2、およびGal-Cerと共に拡大する段階
を含む、前記方法。